説明

払拭清浄体、および払拭清浄体の製造方法

【課題】ロール状に整形された払拭清浄体でありながら、少ない手間で一気に枚葉シート状に展開できるようにして、払拭清浄体を展開する手間を省く。
【解決手段】前辺2と、後辺3と、第1側辺4と、第2側辺5を備えた左右に長いシート体1を、渦巻状に巻き込んでロール状に整形された払拭清浄体である。ロール状の払拭清浄体において、第1側辺4および第2側辺5のそれぞれを、ロール中心軸P方向の異なる位置においてロール周面に露出させる。使用時には、ロール周面に露出する展開始端6・7を摘んで左右に引っ張ることにより、ロール形状を解除しながら折りたたみ形状を展開する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手拭き用の紙お絞り、あるいは体を払拭して清浄化するための濡れタオルなどの使い捨て使用される払拭清浄体に関し、なかでもロール状に整形した状態で提供される払拭清浄体と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関して、払拭清浄体をロール状に整形することは、たとえば特許文献1に公知である。そこでは、矩形の払拭シートの左3分の1の領域、および右3分の1の領域をそれぞれ中央3分の1の領域へ向かって折りたたんで3重にする。つぎに、3重の重畳シートの前側3分の1の領域を上面側へ折り曲げ、折り曲げ端を中心にして重畳シートを渦巻状に巻き込んでロール状に整形している。このように、ロール状に整形した払拭清浄体は、幾重にも折りたたまれた払拭清浄体に比べて、取扱いが容易であり、さらに、使用時にはより少ない手間で枚葉シート状に展開できる利点がある。
【0003】
同様のロールお絞りは特許文献2にも開示されている。そこでは、左右に長い不織布製のシート材を長手方向の中央で二つ折りにしたのち、折りたたみ端を中心にして渦巻状に巻き込んでロール状に整形している。使用時には、ロール状のお絞りのロール層を平坦な状態に解きほぐしたのち、二つ折り状態のシート材の両側縁を摘んで左右に引っ張り操作することにより枚葉シート状に展開することができる。
【0004】
特許文献3の濡れタオルには、ロール状に整形された払拭清浄体を、より簡単に枚葉シート状に展開するための折りたたみ構造が提案されている。そこでは、左右横長のタオルを長手方向の中央近傍で二つ折りにするが、そのとき、タオルの左側縁を右側縁よりも外側方へ突出させた状態にする。つぎに、二つ折りにしたタオルを、もう一度山折り状に折りたたんで、一度目の折りたたみ縁を左側縁の端部寄りの下面側に位置させる。この状態のタオルの生地面は4重になっており、4重の重畳体の左側にタオルの左側縁が突出し、タオルの右側縁が重畳体の上面に露出している。最後に、4重の重畳体の前縁を中心にして渦巻状に巻き込んで、濡れタオルをロール状に整形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平06−003191号公報(段落番号0007、図1〜図5)
【特許文献2】特開平07−250776号公報(段落番号0032、図5)
【特許文献3】特開平09−294689号公報(段落番号0019、図2〜図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の紙お絞りを使用する場合には、そのロール層を平坦な状態に解きほぐしたうえで、3重の重畳シートを枚葉シート状に展開しなければならない。そのため、ロール状に整形した紙お絞りを枚葉シート状に展開するのに手間が掛かり煩雑であった。たとえば、医療や介護等の臨床現場においては、感染を防ぐ必要上使い捨てできる紙お絞りや濡れタオルを使用することがあるが、先のようにロール状の紙お絞りをシート状に展開するのに手間が掛かるようでは、患者の状況や要望に対応して迅速に対応できない。
【0007】
その点、特許文献2のロールお絞りを使用する場合には、お絞りのロール層を平坦な状態に解きほぐしたのち、二つ折り状態の重畳シートを枚葉シート状に展開すればよいので、特許文献1の紙お絞りに比べて、シート状に展開する手間をある程度は省くことができる。しかし、ロール状に整形されたお絞りには、たとえば殺菌剤や防腐剤を含む精製水が含浸させてあるため、隣接するシート同士が吸着して分離しにくく、ロール層を平坦な状態に解きほぐすのに少なからず手間が掛かる。また、二つ折りにした重畳シートの折りたたみ端を始端にして渦巻状に巻き込むので、大きなサイズの素材シートをロール状に整形した場合の払拭清浄体の外形寸法が大きくなるのを避けられず、お絞りのような小サイズの払拭清浄体にしか適用できない。
【0008】
特許文献3の濡れタオルは、特許文献2のロールお絞りと同様に特許文献1の紙お絞りに比べて、シート状に展開する手間がさらに少なくて済む。しかし、使用時にはロール層を平坦な状態に解きほぐしたのち、4重の重畳体をシート状に展開しなければならず、ロール層を平坦な状態に解きほぐすのに手間が掛かる。これは、ロール状の濡れタオルにおいては、タオルの左側縁の隅部は最外面に露出しているが、タオルの右側縁の隅部が左側縁の内面に位置しているため、両側縁の隅部を摘んで一気に枚葉シート状に展開できないからである。詳しくは、両側縁の隅部を摘んで左右へ引っ張るとき、外側に位置する左側縁に連なるシート面が、内側に位置する右側縁に連なるシート面を展開するときの邪魔になるからである。
【0009】
本発明の目的は、ロール状に整形された払拭清浄体を、少ない手間で一気に枚葉シート状に展開でき、したがって、医療や介護等の臨床現場において、患者の状況や要望に対応して迅速に対応できる拭清浄体と、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る払拭清浄体は、前辺2と、後辺3と、第1側辺4と、第2側辺5を備えた不織布製のシート体1を、渦巻状に巻き込んでロール状に整形する。払拭清浄体は、シート体1が概ね平行な折り線11・13・14に沿って複数回折りたたまれて、前辺2および後辺3のいずれか一方を巻き込み始端にして、第1側辺4と第2側辺5のそれぞれが外面に露出する状態で渦巻状に巻き込んでロール状に整形する。図3に示すように、ロール状に整形した払拭清浄体においては、第1側辺4および第2側辺5と、展開始端6・7とが、払拭清浄体のロール中心軸P方向の異なる位置においてロール周面に露出していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る別の払拭清浄体は、前辺2と、後辺3と、第1側辺4と、第2側辺5を備えた不織布製のシート体1を、渦巻状に巻き込んでロール状に整形する。払拭清浄体は、シート体1が概ね平行な折り線11・13・14に沿って複数回折りたたまれて、前辺2および後辺3のいずれか一方を巻き込み始端にして、第1側辺4と第2側辺5のそれぞれが外面に露出する状態で渦巻状に巻き込んでロール状に整形する。図9(c)、図9(d)に示すように、ロール状に整形した払拭清浄体においては、ロール周面に沿って第1側辺4と第2側辺5とが交差し、展開始端6・7が払拭清浄体のロール周面の周方向の異なる位置に露出していることを特徴とする。
【0012】
払拭清浄体には、消毒用アルコール、イソプロピルアルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、次亜塩素酸ナトリウム、アクリノール、ポピドンヨード、グルタールアルデヒド、過酸化水素から選ばれた1種または2種以上を混合した液を含浸させる。
【0013】
本発明に係る払拭清浄体の製造方法は、前辺2と、後辺3と、第1側辺4と、第2側辺5を備えた不織布製のシート体1を、渦巻状に巻き込んでロール状に整形してある払拭清浄体を対象としており、以下の第1工程と、第2工程と、第3工程を含んで形成する。第1工程では、図1(a)および図1(b)に示すように、シート体1の左右幅に一致するウェブWを、その左右中央から左右いずれか一方へ偏寄した位置で二つ折りにして、第1側辺4と第2側辺5とが左右方向へずれた状態の前段重畳シート10を形成する。第2工程では図1(c)に示すように、前段重畳シート10を、第1側辺4と第2側辺5のそれぞれが外面に露出する状態で折りたたんで次段重畳シート12を形成する。第3工程では図1(d)に示すように、次段重畳シート12を所定の長さで切断し、第1側辺4と第2側辺5のそれぞれが外面に露出する状態で、前辺2および後辺3のいずれか一方の側から他方へ向かって渦巻状に巻き込んでロール状に整形する。これらの工程を経て形成された払拭清浄体は、たとえば、図3および図6(d)に示すように形成される。なお、「前辺2および後辺3のいずれか一方の側から」とは、前辺2が巻き始端である場合と、後辺3が巻き始端である場合と、前辺2あるいは後辺3の近傍を折り曲げて、この折り曲げ部分を巻き始端とする場合のいずれをも含むこととする。
【0014】
本発明に係る別の払拭清浄体の製造方法は、前辺2と、後辺3と、第1側辺4と、第2側辺5を備えた矩形状の不織布製のシート体1を形成素材にして、ロール状の払拭清浄体を第1工程と、第2工程と、第3工程を含んで形成する。第1工程では、シート体1を、その左右中央の近傍で、前辺2および後辺3に対して斜めに交差する折り線11に沿って二つ折りにして、前段重畳シート10を形成する。第2工程では、前段重畳シート10を、折り線11と概ね平行な折り線13・14に沿って折りたたんで次段重畳シート12を形成する。第3工程では、次段重畳シート12を、前辺2および後辺3のいずれか一方から他方へ向かって渦巻状に巻き込んでロール状に整形する。これらの工程を経て形成された払拭清浄体は、たとえば図9(d)に示すように形成される。
【0015】
図1(c)に示すように、第2工程において、前段重畳シート10を折り線13・14に沿って断面Z字状に折りたたんで次段重畳シート12を形成する。
【0016】
第2工程における折り線13・14を、第1工程における折り線11と平行にして次段重畳シート12を形成する。さらに、第3工程における巻き込み中心軸15を、第1工程および第2工程における折り線11・13・14と直交する状態で次段重畳シート12を渦巻状に巻き込む(図1(c)、図9(c)参照)。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ロール状に整形された払拭清浄体において、第1、第2の各側辺4・5と展開始端6・7を、払拭清浄体のロール中心軸P方向の異なる位置においてロール周面に露出させて、展開始端6・7を容易に摘めるようにした。さらに各側辺4・5の展開始端6・7摘んで、左右に引っ張り操作するとき、一方の側辺に連なるシート面と、他方の側辺に連なるシート面のそれぞれがく字状に展開して、両シート面が互いに容易に分離できるようにシート体1が折りたたまれている。したがって、本発明の払拭清浄体によれば、ロール状の払拭清浄体を、少ない手間で一気に枚葉シート状に展開することができ、これにより、医療や介護等の臨床現場において、患者の状況や要望に対応して迅速に対応できる拭清浄体を提供できる。
【0018】
本発明に係る別の払拭清浄体においては、ロール状に整形された払拭清浄体のロール周面に沿って第1側辺4と第2側辺5とが交差し、展開始端6・7を払拭清浄体のロール周面の周方向の異なる位置に露出させるようにした。このように、展開始端6・7をロール周面の周方向の異なる位置に露出させると、第1側辺4と第2側辺5との、いずれか一方に連なるシート面をロール周面に大きく露出させることができる。したがって、ロール状の払拭清浄体をさらに容易に枚葉シート状に展開することができる。
【0019】
ウイルスや感染症対策用の払拭清浄体には、殺菌消毒剤として、70〜80%の消毒用アルコールやイソプロピルアルコール、0.01〜3vol%の塩化ベンザルコニウム、0.01〜0.5vol%の塩化ベンゼトニウム、0.02〜0.1vol%のグルコン酸クロルヘキシジン、0.01〜0.1vol%の次亜塩素酸ナトリウム、0.05〜0.2vol%のアクリノール、7.5〜10vol%のポピドンヨード、約2vol%のグルタールアルデヒド、2vol%の過酸化水素などから選ばれた1種または2種以上を混合したものを含浸させることができる。ウイルスや感染症対策には、患者の体や手指だけでなく、ベッド周りや容器、機器類等まで幅広い範囲を迅速に殺菌消毒する必要があり、殺菌消毒剤を含浸させた本清浄体は、非常に有用である。
【0020】
本発明に係る払拭清浄体の製造方法では、第1工程においてシート体1の左右幅に一致するウェブWを二つ折りにして、第1側辺4と第2側辺5とが左右方向へずれた状態の前段重畳シート10を形成した。第2工程においては、前段重畳シート10を、第1側辺4と第2側辺5のそれぞれが外面に露出する状態で折りたたんで次段重畳シート12を形成した。第3工程では、次段重畳シート12を所定の長さで切断し、切断された重畳ブランクを、第1側辺4と第2側辺5のそれぞれが外面に露出する状態で、渦巻状に巻き込んでロール状に整形した。このように第1工程と、第2工程と、第3工程を経て払拭清浄体を形成すると、第1、第2の各側辺4・5と展開始端6・7が、ロール中心軸P方向の異なる位置においてロール周面に露出する払拭清浄体を、連続して的確に形成できる。したがって、より少ない手間で一気に枚葉シート状に展開でき、しかも使い勝手に優れた払拭清浄体を低コストで提供できる。
【0021】
本発明に係る別の払拭清浄体の製造方法では、第1工程において、シート体1を前辺2および後辺3に対して斜めに交差する折り線11に沿って二つ折りにして、前段重畳シート10を形成した。第2工程では、前段重畳シート10を、折り線11と概ね平行な折り線13・14に沿って折りたたんで次段重畳シート12を形成した。第3工程では、次段重畳シート12を、前辺2および後辺3のいずれか一方から他方へ向かって渦巻状に巻き込んでロール状に整形した。このように第1工程と、第2工程と、第3工程を経て払拭清浄体を形成すると、ロール周面に沿って第1側辺4と第2側辺5とが交差し、展開始端6・7が払拭清浄体のロール周面の周方向の異なる位置に露出する払拭清浄体をより少ない手間で的確に形成できる。したがって、より少ない手間で一気に枚葉シート状に展開でき、しかも使い勝手に優れた払拭清浄体を低コストで提供できる。
【0022】
第2工程において、前段重畳シート10を折り線13・14に沿って断面Z字状に折りたたんで次段重畳シート12を形成すると、サイズが大きなシート体1であっても、ロール状に整形した払拭清浄体のロール中心軸P方向の長さを小さくできる。したがって、払拭清浄体の外形をコンパクトにまとめて、その占有スペースを小さくでき、包装コストや輸送コストを削減できる。
【0023】
第2工程における折り線13・14を、第1工程における折り線11と平行にして次段重畳シート12を形成し、さらに、第3工程における巻き込み中心軸15を、先の折り線11・13・14と直交させるようにすると、ロール状の払拭清浄体の外形を小さくできる。詳しくは、第3工程において次段重畳シート12を渦巻状に巻き込むとき、その左右両側に位置する折り線13・14がロール端面を形成する状態で、次段重畳シート12をコンパクトにしかも緻密に巻き込むことができる。したがって、ロール状に整形した払拭清浄体の外形をさらにコンパクトにまとめて、その占有スペースを小さくでき、包装コストや輸送コストをさらに削減できる。因みに、第3工程における巻き込み中心軸15を、先の折り線11・13・14と斜めに交差する状態で、次段重畳シート12を渦巻状に巻き込むと、次段重畳シート12が螺旋状に巻き込まれて、ロール中心軸P方向の長さが大きくなるのを避けられない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1に係る払拭清浄体の製造工程を示す説明図である。
【図2】図1(c)におけるA−A線断面図である。
【図3】実施例1に係る払拭清浄体の斜視図である。
【図4】実施例1に係る払拭清浄体を包装した状態の斜視図である。
【図5】実施例1に係る払拭清浄体の使用法を示す斜視図と、払拭清浄体を展開した状態の正面図である。
【図6】実施例2に係る払拭清浄体の製造工程を示す説明図である。
【図7】図6(c)におけるB−B線断面図である。
【図8】実施例2に係る製造工程の一部を変更した払拭清浄体の断面図である。
【図9】実施例3に係る払拭清浄体の製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(実施例1) 図1ないし図5は本発明に係る払拭清浄体の実施例1を示す。払拭清浄体は、図1に示すように不織布製の原反ウェブを複数回折りたたんで重畳シートを形成し、重畳シートを切断したのち、渦巻状に巻き込んでロール状に整形したものである。切断された重畳シートを展開した状態のシート体1は、前辺2と、後辺3と、第1側辺(左側辺)4と、第2側辺(右側辺)5を備えている。シート体1の外形形状は左右に長い長方形であり、その左右長さは60cm、前後長さは30cmである。また前辺2および後辺3と、第1側辺4および第2側辺5とは、それぞれ平行で、互いに直交する関係にある。
【0026】
シート体1の構成繊維は、綿やレーヨンなどの天然由来繊維、あるいはポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリアミドなどの合成繊維のいずれであってもよく、天然由来繊維と合成繊維を含むものであってもよい。また必要があれば、2種の合成繊維で形成した複合芯鞘繊維であってもよい。図示していないが、柔らかな肌触りを発揮できるようにするために、シート体1にはエンボス加工が施してある。シート体1の秤量は、払拭清浄体の用途に応じて25〜120g/cm2 の範囲で適宜選択すればよい。この実施例においては、シート体1をお絞りとして使用することを想定しているので、秤量が40〜80g/cm2 の不織布を適用する。なお、払拭清浄体をより大きなサイズの濡れタオルとして使用する場合には、より大きな秤量のシート体1を用いるとよい。
【0027】
払拭清浄体は、以下に説明する工程を経て製造する。
(第1工程) この工程では、図1(a)に示すように、不織布製の原反ウェブを繰り出しながら、ウェブWをその左右中央から左右いずれか一方へ偏寄した位置で二つ折りにして、第1側辺4と第2側辺5とが左右方向へずれた状態の前段重畳シート10を形成する。この実施例では、折り線11をシート体1の左右中央よりも第2側辺5側へ偏寄させて、折り線11が前辺2および後辺3に対して直交する状態で、シート体1を二つ折りにした。第1側辺4と第2側辺5の左右方向のずれ量Eは20mmとした。ウェブWの幅はシート体1の左右幅に一致させるか、広幅のウェブを60cmの幅に分断して供給するとよい。
【0028】
(第2工程) この工程では、図1(b)に示すように、第1側辺4と第2側辺5のそれぞれが外面に露出する状態で、前段重畳シート10を断面Z字状に折りたたんで次段重畳シート12を形成する。詳しくは、折り線11を含む前段重畳シート10の側端を、折り線11と平行な左側の折り線13に沿って山折りし、さらに折り線11と平行な右側の折り線14に沿って谷折りして次段重畳シート12を形成する。このときの山折り加工と谷折り加工とは同時に行われる。左側の折り線13と第1工程における折り線11との左右間隔は、右側の折り線14と第1側辺4との左右間隔と同じであり、さらに、左側の折り線13と右側の折り線14との左右間隔よりも僅かに小さくした。得られた次段重畳シート12は、図2に示すように断面がZ字状に折りたたまれている。
【0029】
(第3工程) この工程では、図1(c)に示すように、次段重畳シート12を前辺2から30cmの位置で切断して重畳ブランク(図示していない)を形成する。この重畳ブランクの切断端Cが先のシート体1の後辺3となる。つぎに、重畳ブランクを第1側辺4と第2側辺5のそれぞれが外面に露出する状態で、前辺2および後辺3のいずれか一方から他方へ向かって渦巻状に巻き込んでロール状に整形する。この実施例では後辺3側を巻き込み始端にして、巻き込み中心軸線15が各折り線11・13・14と直交する状態で、重畳ブランクを渦巻状に巻き込んでロール状に整形した。
【0030】
得られた払拭清浄体は、図1(d)および図3に示すように、第1側辺4および第2側辺5と、各側辺4・5の前端の展開始端6・7とのそれぞれが、払拭清浄体のロール中心軸P方向の異なる位置においてロール周面に露出している。詳しくは、第1側辺4が左側のロール端面寄りで露出しているのに対して、第2側辺5は払拭清浄体のロール周面のほぼ中央で露出している。また、第1側辺4の展開始端6、および第2側辺5の展開始端7のそれぞれが、ロール周面に露出している。この状態の払拭清浄体の左側のロール端面は折り線13によって形成され、右側のロール端面は折り線14によって形成される。
【0031】
ロール状に整形された払拭清浄体は、たとえば殺菌剤や防腐剤を含む精製水を吹き掛けて含浸させたのち、図4に示すように、包装袋18に個別包装した状態で市販する。あるいは、ロール状に整形した乾燥状態の払拭清浄体を包装袋18に封入した状態で市販する。その場合には、使用時にロール状の払拭清浄体や展開した枚葉シートに、先の精製水や清拭液などを含ませる。なお、払拭清浄体は包装袋18に複数個を封入した状態で市販に供してもよい。また、殺菌剤や防腐剤を含む精製水は、ロール状に整形する前の重畳ブランクや次段重畳シート12に含浸させてもよい。
【0032】
殺菌消毒剤としては、70〜80%の消毒用アルコールやイソプロピルアルコール、0.01〜3vol%の塩化ベンザルコニウム、0.01〜0.5vol%の塩化ベンゼトニウム、0.02〜0.1vol%のグルコン酸クロルヘキシジン、0.01〜0.1vol%の次亜塩素酸ナトリウム、0.05〜0.2vol%のアクリノール、7.5〜10vol%のポピドンヨード、約2vol%のグルタールアルデヒド、2vol%の過酸化水素などから選ばれた1種または2種以上を混合した水溶液を使用することができる。
【0033】
包装袋18は、ポリプロピレン延伸フィルムと未延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートした複合フィルム、あるいはアルミニウム箔の片面にポリエチレンフィルム、またはポリプロピレンフィルムをラミネートしたフィルム複合体などで通気不能な袋として形成する。包装袋18の左右両端はシール部19で密封してあり、シール部19に臨む袋端に開封用の切込縁20が連続山形状に形成してある。
【0034】
使用時には、左右いずれか一方の切込縁20を引き裂いて包装袋18を開封し、ロール状の払拭清浄体を取り出す。つぎに、図5(a)に示すように、第1側辺4の展開始端6を左手の親指と人差し指とで摘み、第2側辺5の展開始端7を右手の親指と人差し指とで摘んだ状態で、払拭清浄体を持ち上げながら、矢印で示すように第1側辺4と第2側辺5を左右に引き離し操作する。
【0035】
すると、払拭清浄体は、自重によってロール層を平坦な状態に解きほぐしながら落下する。同時に、第1側辺4に連なるシート面と、第2側辺5に連なるシート面とが互いに離れる向きへ引っ張られて、各折り線14・13・11を記載順に展開させながら、払拭清浄体の全体を図5(b)に示すように枚葉シート状に展開できる。このとき、第2側辺5に連なるシート面は右側へ引っ張られて、折りたたまれた状態の折り線14をく字状に展開して、第1側辺4に連なるシート面が、第2側辺5に連なるシート面から離れるのを助ける。同様に、第1側辺4に連なるシート面は、左側へ引っ張られて、折りたたまれた状態の折り線13をく字状に展開して、第2側辺5に連なるシート面が、第1側辺4に連なるシート面から離れるのを助ける。
【0036】
上記のように、本発明に係る払拭清浄体は、ロール状の払拭清浄体を平坦な状態に解きほぐす動作と、重畳された状態のシートを展開する動作とを同時進行的に連続して行うことができる。また、重畳されたシートを展開する過程では、第1側辺4に連なるシート面と第2側辺5に連なるシート面とが、互いに分離動作を補助しあって、各シート面の展開動作を促進する。したがって、従来のこの種の払拭清浄体とは異なり、ロール状の払拭清浄体を一気に枚葉シート状に展開できる。医療や介護等の臨床現場においては、患者の状況や要望に応じて、払拭清浄体を迅速に展開して手指や肌面を払拭し、あるいは患部などを清浄にすることができる。
【0037】
なお、第1側辺4と第2側辺5の展開始端6・7に、摘み位置を明確化するための表示を設けておくと、誤って折り線13の隅部分を摘んで展開操作するのを防止できる。摘み位置を示す表示は印刷して形成するのが簡便であるが、シート体1の該当する隅部分に穴をあけて、あるいは該当する隅部分を外面側へ向かって折り曲げて摘み位置を示す表示とすることができる。
【0038】
(実施例2) 図6、図7は本発明に係る払拭清浄体の実施例2を示す。そこでは、第1工程において、実施例1と同様に不織布製の原反ウェブを繰り出しながら、ウェブWを二つ折りにして、第1側辺4と第2側辺5とが左右方向へずれた状態の前段重畳シート10を形成する。第2工程において、第1側辺4と第2側辺5のそれぞれが外面に露出する状態で、前段重畳シート10を二つ折りにして次段重畳シート12を形成する。詳しくは、前段重畳シート10を、その左右中央よりも第1側辺4側へ偏寄する折り線13に沿って谷折りして次段重畳シート12を形成する。図7に重畳された次段重畳シート12の断面を示している。
【0039】
以後は、実施例1と同様にして、次段重畳シート12を前辺2から所定の位置で切断して重畳ブランクを形成する。最後に、第1側辺4と第2側辺5のそれぞれが外面に露出する状態で、重畳ブランクを渦巻状に巻き込んでロール状に整形する。得られた払拭清浄体は、実施例1の払拭清浄体に比べて直径が小さく、しかもロール中心軸P方向の長さが大きなものとなる。他は先の実施例1と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付して、その説明を省略する。上記のように、前段重畳シート10を二つ折りにして次段重畳シート12を形成すると、重畳構造が6層であった実施例1の払拭清浄体に比べて、払拭清浄体の重畳構造を4層に簡素化できる。したがって、ロール状の払拭清浄体をさらに確実に、しかも迅速に枚葉シート状に展開できる。この重畳構造は、お絞りやハンカチサイズの比較的小さなサイズの払拭清浄体を形成するのに適している。
【0040】
実施例2で説明した払拭清浄体の次段重畳シート12は、図8(a)および図8(b)のように形成することができる。図8(a)における次段重畳シート12は、前段重畳シート10を、その左右中央の折り線13に沿って谷折りしたものであり、これにより第1側辺4が折り線11の真上に位置する次段重畳シート12が得られる。このように、第1側辺4が折り線11の真上に位置する状態の次段重畳シート12をロール状に巻き込むと、第1側辺4と第2側辺5のみをロール周面に露出させることができるので、誤って折り線11の前端を摘んで展開操作するのを防止できる。
【0041】
図8(b)における次段重畳シート12は、前段重畳シート10を、その左右中央よりも折り線11側へ偏寄する折り線13に沿って谷折りしたものであり、これにより第1側辺4が折り線11より外側方へ突出した状態の次段重畳シート12が得られる。このように、第1側辺4が外側方へ突出する状態の次段重畳シート12をロール状に巻き込むと、折り線11によって形成されるロール端面より外側に、第1側辺4によって形成されるロール端面を形成できる。したがって、図8(a)で説明した払拭清浄体と同様に、誤って折り線11の前端を摘んで展開操作するのをさらに確実に防止できるうえ、第1側辺4が径方向へ変形できるので、払拭清浄体を展開操作するときの、第1側辺4の展開始端6の捕捉をさらに簡便に行える。なお、図8(a)および図8(b)で説明した次段重畳シート12における第1側辺4の位置の変更は、実施例1で説明した次段重畳シート12においても同様に適用できる。
【0042】
(実施例3) 図9は本発明に係る払拭清浄体の実施例3を示す。そこでは、横長長方形状の不織布製のシート体1を出発材料にして、ロール状の払拭清浄体を形成する。第1工程においては、シート体1を折り線11に沿って二つ折りにするが、折り線11を前辺2および後辺3に対して斜めに交差させる点が、実施例1の払拭清浄体と異なる。この実施例では、シート体1を、シート体1の左右中央の前後方向の中心線Qに対して7度傾斜する折り線11に沿って二つ折りした。さらに、実施例1と同様にして断面がZ字状の次段重畳シート12を形成し、さらに第3工程において次段重畳シート12をロール状に巻き込むようにした。第2工程における折り線13・14は、それぞれ折り線11と平行にした。また、巻き込み中心軸線15は各折り線11・13・14に対して直交させた。
【0043】
得られた払拭清浄体は、図9(d)に示すように、第1側辺4および第2側辺5の巻き終端部分が、ロール中心軸P方向の異なる位置においてロール周面に露出しており、さらに展開始端6・7が、払拭清浄体のロール周面の周方向の異なる位置に露出することになる。このように構成した払拭清浄体は、第1側辺4に連なるシート面をロール周面に大きく露出させることができ、しかも周方向にずれた位置にある展開始端6・7を摘んで展開操作できるので、実施例1の払拭清浄体に比べてさらに展開しやすい払拭清浄体とすることができる。
【0044】
上記の各実施例では、重畳ブランクを後辺3側から巻き込むようにしたが、その必要はなく前辺2側から巻き込むことができる。その場合には、第1側辺4の後端と第2側辺5の後端のそれぞれを展開始端6・7にして、払拭清浄体を展開操作できる。巻き込み中心軸15は、各折り線11・13・14に対して直交していることが好ましいが、必要があれば、巻き込み中心軸15が各折り線11・13・14に対して斜めに交差する状態で、重畳ブランクを渦巻状に巻き込むことができる。
【0045】
実施例3におけるシート体1は横長四角形状に形成するのが好ましいが、必要があれば、正方形や、横長の平行四辺形状や、横長の台形状などの四角形状に形成することができる。因みに、正方形のシート体1を出発材料とする場合には、シート体1を前後二つ折りにして横長四角形状に形成したのち、第1工程、第2工程、第3工程を経てロール状の払拭清浄体を形成するとよい。また、各実施例において、ロール状の払拭清浄体を枚葉シート状に展開した状態におけるシート体1は、予め二つ折り、あるいは三つ折りしたシートであってもよく、あるいは、複数枚のシートを重ねた積層シートであってもよい。前辺2、後辺3、第1側辺4、第2側辺5は、それぞれ突弧状や凹弧状に形成してあってもよく、シート体1の四隅部分は丸めてあってもよい。
【0046】
払拭清浄体に含浸させる液体としては、手指、顔、首、足などを払拭するのに使用されるウェットティッシュの含浸液と同様の、殺菌消毒剤を含む精製水や、抗菌剤を含む精製水であってもよい。さらに、保湿剤、ローション、乳液などの化粧液であってもよい。実施例1、および実施例2の製造方法は、ウェブWを出発素材にしてロール状に整形された払拭清浄体を連続して製造できるが、拭清浄体のサンプルや、小ロットの拭清浄体を製造する場合などには、実施例3の拭清浄体と同様に矩形シートからなるシート体1を出発素材にして形成することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 シート体
2 前辺
3 後辺
4 第1側辺
5 第2側辺
10 前段重畳シート
11 折り線
12 次段重畳シート
13・14 折り線
P ロール中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前辺(2)と、後辺(3)と、第1側辺(4)と、第2側辺(5)を備えた不織布製のシート体(1)を、渦巻状に巻き込んでロール状に整形してある払拭清浄体であって、
払拭清浄体は、シート体(1)が概ね平行な折り線(11・13・14)に沿って複数回折りたたまれて、前辺(2)および後辺(3)のいずれか一方を巻き込み始端にして、第1側辺(4)と第2側辺(5)のそれぞれが外面に露出する状態で渦巻状に巻き込んでロール状に整形されており、
第1側辺(4)および第2側辺(5)と、展開始端(6・7)とが、払拭清浄体のロール中心軸(P)方向の異なる位置においてロール周面に露出させてあることを特徴とする払拭清浄体。
【請求項2】
前辺(2)と、後辺(3)と、第1側辺(4)と、第2側辺(5)を備えた不織布製のシート体(1)を、渦巻状に巻き込んでロール状に整形してある払拭清浄体であって、
払拭清浄体は、シート体(1)が概ね平行な折り線(11・13・14)に沿って複数回折りたたまれて、前辺(2)および後辺(3)のいずれか一方を巻き込み始端にして、第1側辺(4)と第2側辺(5)のそれぞれが外面に露出する状態で渦巻状に巻き込んでロール状に整形されており、
ロール周面に沿って第1側辺(4)と第2側辺(5)とが交差し、展開始端(6・7)が払拭清浄体のロール周面の周方向の異なる位置に露出していることを特徴とする払拭清浄体。
【請求項3】
消毒用アルコール、イソプロピルアルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロルヘキシジン、次亜塩素酸ナトリウム、アクリノール、ポピドンヨード、グルタールアルデヒド、過酸化水素から選ばれた1種または2種以上を混合した液を含浸させたことを特徴とする請求項1または2に記載の払拭清浄体。
【請求項4】
前辺(2)と、後辺(3)と、第1側辺(4)と、第2側辺(5)を備えた不織布製のシート体(1)を、渦巻状に巻き込んでロール状に整形してある払拭清浄体の製造方法であって、
シート体(1)の左右幅に一致するウェブ(W)を、その左右中央から左右いずれか一方へ偏寄した位置で二つ折りにして、第1側辺(4)と第2側辺(5)とが左右方向へずれた状態の前段重畳シート(10)を形成する第1工程と、
前段重畳シート(10)を、第1側辺(4)と第2側辺(5)のそれぞれが外面に露出する状態で折りたたんで次段重畳シート(12)を形成する第2工程と、
次段重畳シート(12)を所定の長さで切断し、第1側辺(4)と第2側辺(5)のそれぞれが外面に露出する状態で、前辺(2)および後辺(3)のいずれか一方の側から他方へ向かって渦巻状に巻き込んでロール状に整形する第3工程を含む払拭清浄体の製造方法。
【請求項5】
前辺(2)と、後辺(3)と、第1側辺(4)と、第2側辺(5)を備えた矩形状の不織布製のシート体(1)を形成素材にしてロール状に整形してある払拭清浄体の製造方法であって、
シート体(1)を、その左右中央の近傍で、前辺(2)および後辺(3)に対して斜めに交差する折り線(11)に沿って二つ折りにして、前段重畳シート(10)を形成する第1工程と、
前段重畳シート(10)を、折り線(11)と概ね平行な折り線(13・14)に沿って折りたたんで次段重畳シート(12)を形成する第2工程と、
次段重畳シート(12)を、前辺(2)および後辺(3)のいずれか一方から他方へ向かって渦巻状に巻き込んでロール状に整形する第3工程を含む払拭清浄体の製造方法。
【請求項6】
第2工程において、前段重畳シート(10)を折り線(13・14)に沿って断面Z字状に折りたたんで次段重畳シート(12)を形成する請求項4または5に記載の払拭清浄体の製造方法。
【請求項7】
第2工程における折り線(13・14)を、第1工程における折り線(11)と平行にして次段重畳シート(12)を形成し、
第3工程における巻き込み中心軸(15)が、第1工程および第2工程における折り線(11・13・14)と直交する状態で次段重畳シート(12)を渦巻状に巻き込む請求項4、5または6のいずれかひとつに記載の払拭清浄体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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