説明

抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置

【課題】 抄紙機のプレスロールに供給する湿紙Wのための剥離剤の供給量を、プレス速度または抄紙速度の変動や抄造する紙の銘柄や坪量の変化に迅速に対応して調整できるようにした抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置を提供する。
【解決手段】 センターロールCのドクターブレード5を洗浄するドクターシャワー水を供給するシャワー水供給管7aに接続された剥離剤供給管10に容積式の流量計13を設けて、剥離剤のドクターシャワー水への添加量を計量する。その計量値に基づいて、剥離剤を給送する定量ポンプ11の吐出量を調整する。流量計13に容積式のものを用いることにより微量な剥離剤を計量でき、プレス速度または抄紙速度の変化に高精度に追随させて添加量を調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抄紙機のプレスパートにおいて、プレスロールから湿紙の剥離を円滑に行わせるためにプレスロールに供給される剥離剤の供給量を、例えば抄造する紙の銘柄等に応じて調整する抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、長網式抄紙機では、ワイヤーパートにおいて無端循環移動する金網で形成されたワイヤに製紙材料が溶融された水が噴射され、ワイヤの走行に伴われて水分が脱水されながら紙層が形成される。その後、プレスパートでプレスロールにより圧潰されて搾水され、ドライパートで過熱蒸気が内部に供給されているドライヤシリンダに巻回されながら乾燥される。その後、カレンダーパートで平滑性や光沢が付与されて紙が製造される。次いで、製造された紙はリールパートでリールに巻き取られて巻取が形成される。
【0003】
前記プレスパートでは、適宜本数のプレスロールとこれらプレスロールに掛け渡されて走行するフェルトとで湿紙を押圧して圧潰することにより搾水している。このとき、フェルトによる案内が解除されて湿紙が、いわゆるフリーランとなる部分を有するプレスパートでは、プレスロールに押圧された湿紙が所定の剥離位置で当該プレスロールから剥離される必要がある。剥離位置で剥離されない場合には、湿紙に不測の張力が生じて断紙の原因となったり、湿紙に撓みが生じて紙層が崩れて紙質を低下させてしまうおそれがある。このため、湿紙が所定の位置、すなわち、後続のプレスロールに移送されるのに適宜な張力を生じ、余分な撓みが生じない位置で当該プレスロールから円滑に剥離するよう、プレスロールに剥離剤を供給している。他方、プレスロールには湿紙が巻回するため、プレスロールの表面に湿紙くずや異物が付着する場合があり、表面からこれら湿紙くず等を掻き落とすドクターブレードがプレスロールの表面に臨んで設けられており、掻き落とされた湿紙くず等をドクターブレードの先端から洗い落とすためにドクターシャワー水が吹き付けられている。前記剥離剤は、このドクターシャワー水に添加してプレスロールの表面に吹き付けている。
【0004】
例えば、特許文献1には湿紙の剥離向上のための剥離剤に用いられる機能性組成物を用いた湿紙の剥離性向上方法が開示されている。この特許文献1においては、機能性組成物である剥離剤を噴射するスプレーノズルを、プレスパートのセンターロールおよびトップロールに備えている構造が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−197885
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した剥離剤の供給装置は、定量ポンプで流量設定して供給量を調整しているが、実際の流量の測定を行っていないため、正確な供給量(添加量)の把握ができず、プレス速度または抄紙速度に応じた適正な添加量の調整を行いにくかった。また、抄造する銘柄や坪量に応じて湿紙の剥離特性が変化するから、適正な添加量に調整する必要があるが、定量ポンプによるため、適正な吐出量とするまで時間がかかってしまい、安定して操業するまで時間がかかるおそれがある。また、前述したように、剥離剤はドクターシャワー水に添加して供給される。このドクターシャワー水は約20kg/cm2に調整された清水(工業用水)であり、このドクターシャワー水の圧力が変動すると、剥離剤の添加量が変動してしまうが、圧力の変動に迅速に対応できず、添加量が過剰となったりあるいは不足してしまうおそれがある。
【0007】
そこで、この発明は、剥離剤の供給量が微量であっても測定できるようにし、プレス速度や抄紙速度の変動、抄造する紙の坪量等の変更に迅速に剥離剤の供給量を調整して対応することができ、加えてドクターシャワー水に圧力変動があってもその影響を受けることを極力抑制することができるようにした抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置を提供することを目的としている。また、万一、湿紙の剥離状態が不安定となった場合にも、迅速に剥離剤の添加量を調整できるようにした抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置は、抄紙機のプレスパートのプレスロール用のドクターシャワー水に定量ポンプにより剥離剤を添加して、ドクターシャワー水と共に剥離剤がプレスロールに吹き付けられる抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置において、前記定量ポンプの吐出径路に容積式の流量計を設け前記容積式流量計の入口側に逆止弁を設け、前記容積式流量計の出口側をドクターシャワー水の供給径路に接続し、前記容積式流量計による計量値に基づいて前記定量ポンプの吐出量の調整を行うことを特徴としている。
【0009】
剥離剤の供給量、すなわちドクターシャワー水への添加量を容積式流量計で計量することにより、添加量が微量であっても確実に計量できるようにしたものである。この容積式流量計を通過した剥離剤は、出口側の圧力が高くなった場合に押し戻されようとするが、容積式流量計の入口側に設けられた逆止弁により、逆流が阻止される。容積式流量計を通過した剥離剤は、ドクターシャワー水に添加され、ドクターシャワー水と共にプレスロールに吹き付けられることになる。
【0010】
容積式流量計によって計量された添加量に基づいて前記定量ポンプの吐出量を調整する。したがって、所定の量の剥離剤がドクターシャワー水に添加されることになる。
【0011】
また、請求項2の発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置は、前記定量ポンプの吐出量は、前記プレスパートのプレス速度または抄紙速度のいずれかの速度との関係に基づき、前記計量値に対応させて調整することを特徴としている。
【0012】
プレスパートを走行する湿紙のプレス速度の大きさに応じて、必要とされる剥離剤の添加量が変動するから、例えば、抄造する紙の銘柄や坪量等に応じてプレス速度の大きさに対応させて予め必要となる剥離剤の添加量を求めておく。そして、そのときに抄造している銘柄等についてのプレス速度との関係から必要となる剥離剤の添加量となるように、前記流量計の計量値をもとに調整するものである。また、抄紙機の抄造に要する抄紙速度と前記プレス速度とは、抄造される紙の銘柄や坪量に応じて所定の関係にあるから、プレス速度に代えて抄紙速度の大きさに基づいて剥離剤の添加量を予め求めておき、前記計量値をもとに剥離剤の添加量を調整することもできる。すなわち、プレス速度または抄紙速度のいずれか一方との関係に対応させて定量ポンプの吐出量を調整するようにしたものである。
【0013】
また、請求項3の発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置は、前記定量ポンプの吐出量を、抄紙銘柄に応じて予め設定された設定値に基づき、前記計量値に対応させて調整することを特徴としている。
【0014】
必要とされる剥離剤の量は、抄造される紙の種類、すなわち抄紙銘柄に応じて異なっている。このため、抄紙銘柄毎に予め剥離剤の量を求めて設定値として保存し、前記流量計による計量値を当該時に抄造する紙の銘柄に応じた前記設定値に対応させて調整するようにしたものである。
【0015】
前記予め求める設定値は、抄紙銘柄とプレス速度または抄紙速度との関係等を対応させたテーブル化してあれば、プレス速度または抄紙速度に変動があった場合に、当該時の抄紙銘柄に応じて迅速に剥離剤の供給量を調整できる。
【0016】
また、請求項4の発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置は、前記定量ポンプの吐出量は、抄紙幅に応じて、前記計量値に対応させて調整することを特徴としている。
【0017】
例えば、プレスパートの出口における張力が強い場合には、紙幅が収縮することがあり、取幅が十分でなくなってしまって所望の幅員の製品を製造できないおそれがある。このため、抄紙幅に応じて剥離剤の量を調整して、紙幅の収縮を抑制しようとするものである。
【0018】
また、請求項5の発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置は、前記ドクターシャワー水の供給径路にインラインミキサーを主供給径路に並列して配設し、前記容積式の流量計の出口側を該インラインミキサーに連通させてあることを特徴としている。
【0019】
ドクターシャワー水と剥離剤とを均等に混合するための混合装置として、インラインミキサーを用いるようにしたものである。ドクターシャワー水用の清水(工業用水)と剥離剤とをインラインミキサーを通過させることにより、これらが混合する。なお、インラインミキサーはドクターシャワー水の主供給径路に対して並列させて設け、ドクターシャワー水の一部をこのインラインミキサーに導入するようにする。この場合、インラインミキサーの出口側は、ドクターシャワー水の主供給径路に接続させて、この主供給径路を流通するドクターシャワー水と、インラインミキサーを通過したドクターシャワー水と剥離剤との混合液とを合流させる。
【0020】
また、請求項6の発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置は、前記プレスロールの外周面であって、湿紙が離脱する剥離位置を撮影する監視カメラを配設し、撮影された剥離位置の画像により、前記定量ポンプの吐出量を調整することを特徴としている。
【0021】
前記監視カメラで剥離位置を撮影して、この撮影画像により剥離位置の変動を監視するものである。剥離位置は定常状態であればプレスロールの軸方向に沿ったほぼ直線上に出現する。この直線の位置の変動を監視することにより剥離位置の変動を把握することができる。前記直線の位置の変動は、撮影された画像を処理することにより行い、変動の許容範囲を予め設定し、許容範囲を超えた場合には前記定量ポンプの吐出量を増減させて調整する。また、監視カメラとしては、CCD(電荷結合素子)カメラを用いることが、設置スペースに制限されにくく好ましい。
【発明の効果】
【0022】
この発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置によれば、容積型流量計によって添加量を計量するようにしたから、剥離剤が微量であっても確実に計量することができる。したがって、プレス速度または抄紙速度の変動等により必要とされる剥離剤の添加量を高精度に計量して、確実にプレス速度または抄紙速度の変動等に追随させることができる。しかも、前記逆止弁によって剥離剤の逆流が阻止されているから、定量ポンプにより吐出された剥離剤は確実にドクターシャワー水に添加することができる。
【0023】
また、請求項2の発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置によれば、抄造する紙の銘柄や坪量とが変更された場合であっても、迅速に対応させて、剥離剤の添加量を調整することができる。
【0024】
また、請求項3の発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置によれば、抄紙銘柄の変更に対しても迅速に剥離剤の供給量の調整を行うことができる。
【0025】
また、請求項4の発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置によれば、抄造する紙の抄紙幅が変更された場合であっても、プレスパート出口における紙の幅方向の収縮を抑制することができて、所望の幅員の紙を製造することができる。
【0026】
また、請求項5の発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置によれば、剥離剤とドクターシャワー水とを簡単な構造の装置により確実に混合させることができ、プレスロールへの剥離剤の供給を均一にできる。主供給径路に並列させて配してあるから、例えば、ドクターシャワー水の圧力が大きくなって変動した場合でも、インラインミキサーへの圧力の影響がないように弁を絞ることにより、剥離剤の供給が影響されることがなく、確実にインラインミキサーに供給されてドクターシャワー水を混合させることができる。このため、剥離剤の供給量の調整の正確性が向上し、信頼性の高い剥離剤供給量制御装置とすることができる。
【0027】
また、請求項6の発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置によれば、監視カメラによって剥離位置の変動を実際に確認できるので、抄紙機の実際の運転状況に応じて剥離剤の供給量の制御を行うことができる。このため、より制御の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいて、この発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置を具体的に説明する。
【0029】
図1は、この剥離剤供給量制御装置をプレスパートに実施した場合の概略の構成を示す図であり、プレスロールのうちのセンターロールCと第3プレス部P3のトップロールTとに剥離剤を添加したドクターシャワー水を噴射するようにした場合について示している。プレスパートでは、前記センターロールCと第1プレスロール1とにより第1プレス部P1が、第2プレスロール2とにより第2プレス部P2が、前記トップロールTとボトムロール3とにより前記第3プレス部P3がそれぞれ構成されている。湿紙Wは図1において矢標Q方向へ走行し、前記第1プレス部P1に導入されるまでは、前記第1プレスロール1に巻回したフェルトFaとプレスロール1aに巻回されたフェルトFbとにより挟持された状態で、いわゆるダブルフェルトで搾水される。第1プレス部Pを通過した湿紙WはセンターロールCを巻回しながら走行して第2プレス部P2に供される。第2プレス部P2では、湿紙WはセンターロールCと、第2プレスロール2に巻回したフェルトF2とに挟持されて搾水される。第2プレス部P2を通過した湿紙WはセンターロールCから剥離し、離脱する。この湿紙Wはガイドロール4に案内されて、第3プレス部P3に導入される。このとき、湿紙Wはガイドロール4から前記ボトムロール3に巻回されるフェルトF3に委ねられる。すなわち、センターロールCから剥離された湿紙WはフェルトF3に至る間で、いわゆるフリーランの状態となる。湿紙Wは、第3プレス部P3においてトップロールTとフェルトF3とに挟持されて搾水された後、後続するドライパートに給送されるため、トップロールTから剥離される。
【0030】
前記センターロールCとトップロールTとから湿紙Wは円滑に剥離される必要があり、剥離された湿紙Wの湿紙くず等の異物がこれらセンターロールCやトップロールTの表面に付着してしまうおそれがあるから、これら異物をロール表面から掻き落とすためのドクターブレード5が、その先端をロール表面に臨ませた配されている。また、ロール表面から掻き落とされてこれらドクターブレード5の先端部に付着した異物を除去するために、該先端部を洗浄するためのドクターシャワー水を噴射するシャワーノズル6がドクターブレード5の先端を臨んで配設されている。
【0031】
前記ドクターシャワー水には約20kg/cm2の清水(工業用水)が使われており、シャワー水供給装置7から供給されている。なお、図1にはセンターロールC用のドクターブレード5へ噴射するドクターシャワー水の供給径路のみを示している。シャワー水供給装置7の出口側に接続された主供給径路であるシャワー水供給管7aには、フレキシブルホース8が接続されて、このフレキシブルホース8に前記シャワーノズル6が接続されている。シャワー水供給管7aには、第1弁71と第2弁72とが設けられており、これら第1弁71と第2弁72との間で分岐管7bにより分岐されている。この分岐管7bには入口側弁73を介してインラインミキサー9が接続されており、このインラインミキサー9の出口側が出口側弁74を介して、前記第2弁72の下流側の前記シャワー水供給管7aに接続されている。すなわち、前記インラインミキサー9は、前記第2弁72を含むシャワー水供給管7aと並列に接続されている。一方、前記入口側弁73とインラインミキサー9との間の分岐管7bには、ドクターシャワー水に剥離剤を添加するための剥離剤供給管10が接続されている。
【0032】
前記剥離剤供給管10は定量ポンプ11の吐出口に接続されており、この定量ポンプ11の吸込口は剥離剤タンク12に連通させてある。すなわち、定量ポンプ11の動作により剥離剤タンク12の剥離剤が吸込口から吸い込まれ、吐出口から剥離剤供給管10に吐出される。なお、定量ポンプ11としては、ダイヤフラム式やベーン式、ルーツ式等が用いられるが、剥離剤と接触する部分が限定されるダイヤフラム式が好ましい。
【0033】
前記剥離剤供給管10には容積式の流量計13が設けられており、この流量計13の入口側には入口弁14と共に逆止弁15が配されている。したがって、流量計13に給送された剥離剤は、逆止弁15により逆流することが阻止されている。この流量計13には、容積式の流量計であれば利用できる。なお、定量ポンプ11と逆止弁15とは、フレキシブルホース16により連通させてある。
【0034】
前記流量計13の計量値信号が表示装置21に入力されて、計量値が表示される。また、この表示装置21から制御装置22に計量値信号が入力されており、この計量値信号に基づいて前記定量ポンプ11の駆動源を制御して該定量ポンプ11の吐出量を調整するようにしてある。また、制御装置22には剥離剤タンク12の液位表示器23の液位信号が入力されており、この液位信号に基づいて剥離剤タンク12の液位が所定の位置よりも低下しないようにしてある。
【0035】
また、前記センターロールCの一部であって、湿紙Wが剥離する部分である剥離位置の画像を撮影する監視カメラ26が配されており、その監視画像が前記表示装置21、あるいは画像監視用の表示装置(図示せず)に表示されている。前記表示装置21に表示する場合には、画像信号が前記制御装置22に入力されており、入力された画像の処理が行われる。この処理は、湿紙Wが所定の位置で剥離されている場合には、ほぼ一定の画像が取得されているから、取得された画像の変化を監視することにより剥離位置の変化を把握することができる。剥離位置が所定の範囲以上に変化した場合には、剥離状態が不正となった状態を判断して、剥離剤の増減を行うべく、前記定量ポンプ11の吐出量を変更させる。
【0036】
以上により構成されたこの発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置の作用を、以下に説明する。なお、プレスパートを湿紙Wが走行する途中では、前述したように、センターロールCとトップロールTのロール表面から剥離される。センターロールCから剥離した後は、前記フェルトF3に移行し、トップロールTから剥離した後はドライパートに移行する。いずれのロールC、Tについてもこの抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置を実施することができる。以下の説明は、センターロールCの場合について行う。
【0037】
センターロールCに配された前記ドクターブレード5で、センターロールCの表面に付着した湿紙Wのくずや異物等を掻き落として除去する。掻き落とされた異物等はドクターブレード5の先端部に前記シャワーノズル6から噴射されるドクターシャワー水によって除去される。このドクターシャワー水の前記分岐管7bには前記剥離剤供給管10が接続されているため、ドクターシャワー水に剥離剤が添加されることになる。添加された剥離剤は、ドクターシャワー水と共に前記インラインミキサー9を流動しながら混合される。このドクターシャワー水と剥離剤との混合水は、ドクターシャワー水の前記シャワー水供給管7aに、前記第2弁72の下流で合流し、前記フレキシブルホース8を通ってシャワーノズル6から噴射される。
【0038】
前記剥離剤は、剥離剤タンク12から前記定量ポンプ11により吸い込まれて前記剥離剤供給管10に吐出される。この剥離剤供給管10には、容積式の流量計13が設けられており、微量な剥離剤であっても計量される。しかも、流量計13の入口側には前記逆止弁15が配されているから、流量計13に流入した剥離剤が逆流してしまうことがない。このため、流量計13を通過した剥離剤の総量が確実にドクターシャワー水に添加される。したがって、ドクターシャワー水の圧力に変動があっても所定の量の剥離剤が確実に添加されて、ドクターブレード5の先端に噴射されると共に前記センターロールCに吹き付けられることになる。しかも、前記第1弁71の開度を調整することにより、ドクターシャワー水の圧力が大きくなっても、分岐管7b内の圧力への影響が抑制されるから、剥離剤は支障なく分岐管7bに供給することができる。
【0039】
一方、前記流量計13の計量に係る出力信号は前記表示装置21に入力されて、計量値が表示されると共に前記制御装置22に入力されている。制御装置では、例えば、図2に示すように、プレス速度との関係で剥離剤の適切な添加量を求めて、前記定量ポンプ11の吐出量を調整する。なお、プレス速度と抄紙速度とは所定の関係にあるから、プレス速度に代えて抄紙速度との関係に基づいて剥離剤の添加量を求めるものであっても構わない。この吐出量の調整は、剥離剤の計量を確実に行うことができるために、湿紙Wの剥離にとって適切な量を吐出させることができ、しかも、剥離位置の変動に対して迅速に対応することができる。
【0040】
そして、図2に示す、プレス速度と剥離剤の添加量との関係を、抄造する紙の銘柄や坪量等に応じたデータを取得しておき、抄造する紙の種類に応じてデータをもとに、前記流量計13での計量値に応じて定量ポンプ11の吐出量を調整すればよい。なお、プレス速度に代えて抄紙速度を用いるものであっても構わない。
【0041】
また、抄紙幅に応じてプレスパート出口における収縮が発生しない場合の剥離剤の添加剤を予め求めておき、抄紙幅に応じて前記計量計13での計量値に応じて定量ポンプ11の吐出量を調整するようにすることもできる。
【0042】
また、前記監視カメラ26により剥離位置の画像データを取得する。取得された画像データは前記表示装置21に表示されると共に、制御装置22に送出される。湿紙WのセンターロールCに対する剥離位置は、定常な状態で抄紙されている場合には、ほとんど変動することがない。例えば、プレス速度または抄紙速度が変化して剥離位置に変動が生じた場合には画像が変化する。この画像の変化を検知することにより、剥離剤の添加量が適切でないと判断して、定量ポンプ11の吐出量を調整することができる。
【0043】
また、前記監視カメラ26により取得された画像の変動に基づく場合には、その画像データを前記定量ポンプ11の吐出量の調整に用いる以外にも利用することができる。例えば、剥離位置の変動の原因の一つには、プレス速度または抄紙速度に変動が生じたことが考えられるから、プレス速度または抄紙速度、例えばセンターロールCの回転速度を調整するデータとして利用とすることもできる。
【0044】
以上の実施形態では、プレスロール用剥離剤の供給量に用いた制御装置について説明したが、剥離剤供給量制御装置以外であっても、この制御装置値を利用することができる。例えば、ワイヤーピッチ除去剤や、フェルト洗浄剤あるいはピッチ除去剤、ドライヤーシリンダー汚れ防止剤、カンバス汚れ防止剤、消泡剤等についても用いることができる。
【0045】
前記ワイヤーピッチ除去剤は、ワイヤ表面に付着するピッチ等の除去を目的として、ワイヤ表面にかけている高圧洗浄シャワーラインもしくは低圧シャワーラインに添加するものである。供給量の制御としては、ワイヤ速度との比例による制御や抄紙銘柄による制御その他が考えられる。なお、ワイヤ速度と抄紙速度とは抄造される紙の銘柄や坪量等に対応して所定の関係にあるから、ワイヤ速度に代えて抄紙速度に基づいて制御することもできる。
【0046】
また、前記フェルト洗浄剤やフェルトピッチ除去剤は、フェルトへのピッチや炭カル等の汚れ付着の防止を目的として、フェルト表面にかけている低圧のウェッティングシャワーラインに添加するものである。供給量の制御としては、プレス速度または抄紙速度との比例による制御や抄紙銘柄による制御その他が考えられる。
【0047】
また、前記ドライヤーシリンダー汚れ防止剤は、ドライヤーシリンダー表面へのピッチ、繊維トラレ等の汚れ付着の防止もしくはドライヤーシリンダーの表面強度アップを目的として、ドライヤーシリンダー表面に直接散布するものである。供給量の制御としては、ドライヤー速度との比例による制御や抄紙銘柄による制御その他が考えられる。
【0048】
また、前記カンバス汚れ防止剤は、カンバスへのピッチ、繊維トラレ等の汚れ付着の防止を目的として、カンバス表面に薬剤を直接散布するものである。供給量の制御としては、ドライヤー速度との比例による制御や抄紙銘柄による制御その他が考えられる。なお、前記ドライヤーシリンダ汚れ防止剤やカンバス汚れ防止剤の供給量は、ドライヤー速度と抄紙速度とが、抄造する紙の銘柄や坪量等とに対応して所定の関係にあるから、ドライヤー速度に代えて抄紙速度に基づいて制御することもできる。
【0049】
さらに、前記消泡剤は、白水系もしくは、カラー系の泡発生の防止を目的としている。白水系であればサイロ、ワイヤ下ピット、キャナル等に直接添加するものである。カラー系であれば、カラー回収ライン、カラーサービスタンク等に直接添加するものである。供給量の制御としては、白水流量、カラー流量との比例による制御などが考えられる。
【0050】
すなわち、前記ワイヤピッチ除去剤やカンバス汚れ防止剤等の抄紙機の円滑な運転のために用いられる薬剤や、抄紙原料の調整に用いられる前記消泡剤等についても、本願発明に係る剥離剤供給量制御装置を用いることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
この発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置によれば、容積式の流量計を用いることにより剥離剤の添加量をほぼ正確に計量でき、プレス速度や抄紙速度の変動や抄造する紙の銘柄、坪量の変更等に確実に対処して適正な添加量に調整することができるから、抄造される紙の性質の均一化に寄与すると共に、歩留まりの向上に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】この発明に係る抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置の概略の構成を説明する図である。
【図2】プレス速度と剥離剤の添加量との関係の例示するグラフであり、剥離剤の添加量の調整をこのグラフに示す関係に基づいて行う。
【符号の説明】
【0053】
C センターロール
T トップロール
F フェルト
P プレス部
1 第1プレスロール
2 第2プレスロール
5 ドクターブレード
6 シャワーノズル
7 シャワー水供給装置
7a シャワー水供給管(主供給径路)
7b 分岐管
71 第1弁
72 第2弁
73 入口側弁
74 出口側弁
9 インラインミキサー
10 剥離剤供給管
11 定量ポンプ
12 剥離剤タンク
13 容積式流量計
14 入口弁
15 逆止弁
21 表示装置
22 制御装置
23 液位表示器
26 監視カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抄紙機のプレスパートのプレスロール用のドクターシャワー水に定量ポンプにより剥離剤を添加して、ドクターシャワー水と共に剥離剤がプレスロールに吹き付けられる抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置において、
前記定量ポンプの吐出径路に容積式の流量計を設け
前記容積式流量計の入口側に逆止弁を設け、
前記容積式流量計の出口側をドクターシャワー水の供給径路に接続し、
前記容積式流量計による計量値に基づいて前記定量ポンプの吐出量の調整を行うことを特徴とする抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置。
【請求項2】
前記定量ポンプの吐出量は、前記プレスパートのプレス速度または抄紙速度のいずれかの速度との関係に基づき、前記計量値に対応させて調整することを特徴とする請求項1に記載の抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置。
【請求項3】
前記定量ポンプの吐出量は、抄紙銘柄に応じて予め設定された設定値に基づき、前記計量値に対応させて調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置。
【請求項4】
前記定量ポンプの吐出量は、抄紙幅に応じて、前記計量値に対応させて調整することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置。
【請求項5】
前記ドクターシャワー水の供給径路にインラインミキサーを主供給径路に並列して配設し、前記容積式の流量計の出口側を該インラインミキサーに連通させてあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかに記載の抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置。
【請求項6】
前記プレスロールの外周面であって、湿紙が離脱する剥離位置を撮影する監視カメラを配設し、撮影された剥離位置の画像により、前記定量ポンプの吐出量を調整することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかに記載の抄紙機のプレスロール用剥離剤供給量制御装置。

【図1】
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【図2】
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