説明

抄紙機用織物

【課題】抄紙機のウェブ形成領域で使用され、織物の紙側上のウェブ構造を改善する。
【解決手段】抄紙機用織物31は、第1の糸2、4、6〜24、34〜45でつくられた第1の織物層32と、第2の糸1、3、5〜23、46〜57でつくられた第2の織物層33とを有している。前記2つの織物層は、結合ポイントで、構造的第2の糸46〜57によって形成された結合糸によって結合されかつナックル58〜69を有している。ナックルは、紙側平面と平行する頂点平面を構成している頂点71を有している。結合糸と交差してのびている前記第1の糸2、4、6〜24のテンションによって、頂点平面が内側平面よりも紙側平面に近くなり、その結果、少なくとも1つの前記第1の糸34〜45が、その横方向に変位させられるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機用織物、特に、成形織物に関する。この織物は、第1の織物層および第2の織物層を有しており、前記第1の織物層は、前記織物の外側で紙側を形成しかつ第1の糸でつくられており、前記第1の糸は、互いに織り合わされて、第1の織り反復の繰り返しおよび紙側平面をそれぞれ形成しており、前記第2の織物層は、前記織物の外側で、機械側を形成しかつ第2の糸でつくられており、前記第2の糸は、互いに織り合わされて、第2の織り反復の繰り返しを形成しており、前記2つの織物層は、一緒に、前記織物の全体的織りの繰り返しを形成しかつ結合ポイントで、第2の織り繰り返しとなる構造的第2の糸によって形成された結合糸によって互いに結合されており、上記において、1つの結合糸および1つの第1の糸が、紙側で、それらと交差してのびている第1の糸を結合しており、前記結合糸は、結合ポイントで、ナックルを形成しており、前記ナックルは、頂点を有しており、前記頂点は、紙側平面と平行する頂点平面を構成しており、前記第1の糸は、紙側に、凹状内側屈曲部をもつナックルを形成しており、前記結合ポイントは、紙側平面と平行する内側平面を構成する紙側平面に最も近いところに位置させられているものである。
【背景技術】
【0002】
抄紙機用織物の目的は、製紙機械における紙ウエブをサポートするセクションにおいて用いられることにある。それは、製紙機械を循環する縫い目によってつながれた無端織物である。製紙機械の最初のセクションにおいて、紙パルプが最初に配置される一番上のストランドに、成形布が用いられる。そして、紙パルプは、紙ウエブを形成するために成形布により脱水される。そこにおいて、脱水は、特に、布の下または内側に配置された吸引ボックスによって行われる。
【0003】
抄紙機用織物は、堆積された紙繊維を高率で支持しかつ保持するために、紙側上に、微細構造を有しなければならない。一方では、この種布の機械側は、疲労に耐えて、十分な寿命を提供するのに十分耐久性がなければならなくて、引張り力に抵抗するのに十分強く、排水を提供するのに十分開口していなければならない。これらの基準を満たすことは、一般に、少なくとも2枚の織物層が異なるサイズおよび/または異なる織りパターンを利用して重ねることが必要である。
【0004】
製紙機械の成形セクションのために使用される3つのタイプの抄紙機用織物は、一般に公知である。第1のタイプは、横糸から上下の層から造られ、両方の層の糸は、対をなして重ねられる。織物層は、大部分が上層と織り合わされ、その一部が付加的に下層と織り合わされた縦糸により結合され、その下層の糸は、好ましくは、縦糸よりも大きい厚みである。この種の成形織物は、一般に、二重層織物と呼ばれている。
【0005】
織物の第2のタイプは、2つの異なった織物から構築される。その一方は、紙側のために要求される特性をもち、その他方は、機械側のために要求される特性を有する。2つの織物は、両方の層の縦および横糸により形成された織物繰り返しに属さない追加または独立した結合糸によって、縫われるか、または、結合される。この種の抄紙機用織物は、一般に、3層織物と呼ばれている。
【0006】
抄紙機用織物の第3のタイプは、第2のタイプに基づくものである。すなわち、これは、それぞれ互いに織り合わされた縦および横糸からなる2つの異なった織物層を有する。3層織物とは異なり、この種の織物は、追加的または独立的結合糸をもたない。2つの層の結合は、自分自身の糸、すなわち、いわゆる「構造である」か、「固有である」か、「織物生まれの」糸によって、できている。これらは、織物またはその織りの反復パターンの不可分な部分である糸である。これらのタイプの複合織物は、一般に、SSB(シート支持バインダ)織物と呼ばれている。
【0007】
前記の3つ織物の相違は、特許文献1の欄1および2、特許文献2の欄1〜3並びに特許文献3の欄1〜3に記載されている。
【0008】
SSB複合タイプの抄紙機用織物は、以下の通り、公知である。2つの層間の結合は多くの対をなす構造的結合糸により達成される。1つの結合糸が一方の層から、対称形の方法で、他の層まで変化する場合、1つの層の1つの結合糸の結合は、対をなす結合糸の他方の結合糸によって続けられる。(特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7)。また、複合抄紙機用織物の実施例は、以下の通り、公知である、2つの層は、第1の織物層に属する構造的結合糸により結合される(特許文献8、特許文献9、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13および特許文献14)。後者の文献において、実施例は、以下通り、開示されている。2つの層は、機械側層を形成している第2の織物層の結合糸により結合される。
【0009】
特許文献15の図面に開示された抄紙機用織物は、第1の織物層が、紙側のために提供されて、互いに織り合わされた第1の縦および横糸でできており、第2の織物層が、機械側のために提供されて、互いに織り合わされた第2の縦および横糸でできているものである。2つの織物層は、互いに結合糸によって、関連する第1の糸にそってその下をのびている構造的な第2の糸によって形成された結合ポイントで結合されている。結合糸および関連する第1の糸の双方は、紙側上の結合ポイントで、交差するようにのびている第1の織物層の第1の糸を結合する。そこには、結合糸および更には第1の糸が結合ポイントでナックルを形成する。結合糸のナックルはそれらの紙側上のピークを有する。その全てのピークは紙側と平行してピーク平面を構成する。関連する第1の糸のナックルは、凹状内側屈曲部を有しており、紙側に最も近いところにあるその結合ポイントは、紙側と平行して内側平面を構成する。結合糸に交差するようにのびている第1の糸のテンションによって、上記の内側平面が紙側により近くなるか、または、遠くても、ピークの平面と同レベルとなり、その結果、それぞれに、結合糸および関連する第1の糸は、結合ポイントで、重ね合わせた対を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US 5,152,326
【特許文献2】US 5,052,448
【特許文献3】US 4,554,953
【特許文献4】US 5,152,326
【特許文献5】US 2008/0035230 A1
【特許文献6】EP 1 605 095 A1
【特許文献7】EP 1 365 066 A1
【特許文献8】US 5,052,448
【特許文献9】US 4,554,953
【特許文献10】EP 2 314 762 A1
【特許文献11】US 4,564,051
【特許文献12】特公昭49−10281号公報
【特許文献13】DE 298 07 274 U1
【特許文献14】EP 1 365 066 A1
【特許文献15】特開昭62−78294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、抄紙機用織物を以下の通りに設計することであり、それは、とくに、抄紙機のウェブ形成領域で使用され、織物の紙側上のウェブ構造を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、本発明によって達成され、それは、前記結合糸と交差してのびている前記第1の糸のテンションによって、前記頂点平面が内側平面よりも紙側平面に近くなり、その結果、前記結合ポイントの領域における各結合糸と隣接してのびている少なくとも1つの前記第1の糸が、その横方向に変位させられるようになっているものである。したがって、本発明の基本概念は、結合糸と交差している第1の糸に適当なテンションをかけることによって、結合糸のナックルを持ち上げて、結合ポイントで、隣接した第1の糸の少なくとも1つを押しのけて、これらの糸の横方向変位をもたらせることである。このことにより、結合糸は、紙側にさらされて、排水するために、かなりより大きい抵抗を与えて、ウェブ構造の重要な改善を創造するのである。
【0013】
本発明には、2つの一般的概念がある。1つの実施例において、結合糸は、同一方向にのびて、それぞれ垂直方向に積み重ねられた1つの第1の糸の下方に配置されている。好ましくは、それらの第1の糸は、前記結合ポイントの領域において横方向変位を形成する前記結合ポイントで、対応する結合糸と隣り合わせで前記横糸を結合している。その場合、第1の糸は、結合糸および第1の糸間の直接的接触によって、押しのけられる。その第1の糸は、結合ポイントで、それらと交差して並んでのびている別の第1の糸を結合している。
【0014】
あるいは、それに対して、同一方向にのびている前記結合糸および前記第1の糸は、互いにオフセットして配置されうる。例えば、結合糸と同じ方向にのびている第2および第1の糸の数が同じである場合、2つの織物層をシフトすることによって。他の例では、結合糸と同じ方向にのびている第1の糸の数より少ない数の第2の糸を提供することによって、オフセットが理解される。好ましくは、これらの第1の糸の数が奇数で、第2の糸の数が、織りの繰り返し毎に等しいか、または、その逆である場合。好ましくは、前記結合ポイントで、前記第1の糸は、前記結合糸と同一方向にのびかつ結合糸にその側とは反対側で隣接させられており、その側で、前記結合糸の方向にのびている前記隣接する第1の糸が、前記第1の糸を、それらの紙側で結合しており、前記第1の糸は、結合ポイントの領域において横方向変位を形成する前記横方向第1の糸の下側を通されている。オフセットによって、結合糸と同じ方向に隣接してのびている第1の糸は、押しのけられる。その場合、結合糸と直接接触せず、第1の糸によって分離される。その第1の糸は、結合糸と交差してのびかつ結合糸および隣接する第1の糸間をのびている。
【0015】
前記第1の糸の横方向変位は、これらの第1の糸の長さ方向において、全体的織り反復長さの少なくとも10%から最大90%までの範囲の経路長さをカバーすべきである。さらに、前記第1の糸の横方向変位の一部は、前記織物平面における前記結合糸の幅の100%以上、とくに、少なくとも10%である。
【0016】
当該技術分野で既知のように、前記第2の糸の一部、とくに、前記結合糸は、前記第1の糸より大きい横断面を有しているべきである。しかしながら、第1および第2の糸の断面積が同等またはそうでない場合、本発明についての基本的な考えは、また、現実になりうる。
【0017】
本発明の好ましい実施例において、結合糸は、結合糸と交差してのびている1つだけの第1の糸を結合する。そして、あらゆる全体的織り繰り返しにおいて、1つだけの第1の糸だけを結合することで、十分である。しかしながら、結合糸は、1つの結合ポイントで、2つ以上の第1の糸を、あるいは、あらゆる全体的織り繰り返しにおいて、2つ以上の第1の糸を結合するかもしれない。
【0018】
本発明の別の実施例では、一方向へ伸びている全ての第2の糸は、結合糸として織られている。これは、全ての第2の糸が、結合糸、例えば、ただ1つだけの第2または第3の構造糸として織られるという実施例を排除しない。
【0019】
更なる実施例において、結合糸および/またはこれと交差する糸と同じ方向に伸びる第1の糸の数は、前記結合糸と交差する糸と同じ方向に伸びる少なくとも第2の糸の数ほぼ同じ数を含んでおり、とくに、これらの第1および第2の糸の数の比率は、4:3、3:2、2:1、1:1、1:2、2:3である。勿論、これの限定されず、他の比率も、可能である。
【0020】
好ましい実施例において、第1の糸は、互いに、平織で、織り合わされている。この提案は、平織り以外の織りを除外しない。
【0021】
さらなる態様において、結合糸は、抄紙機用織物の所与の経路方向に伸びている。そして、特に、縦糸として編まれる。本発明についての基本的な考えは、また、前記方向と交差する方向に伸びている結合糸によっても、現実になりうる。
【0022】
本発明によれば、前記抄紙機用織物は、少なくとも8つのハーネスに、とくに、最大100のハーネスに織られていることが示唆される。
【0023】
糸のための適切な材料は、通常、抄紙機用織物、とくに、成形布においてに用いられ合成物の全てである。有利には、抄紙機用織物の所与の経路方向にのびている糸は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタタレート(PEN)またはこれらの材料の混合物または共重合体でできている。前記所与の経路と交差する糸は、PET、ポリアミド(PA)、または、これらの材料の混合物または共重合体、または、これらの材料およびポリウレタン(PU)の混合物でできている。
【0024】
糸の断面形状に関しては、全ての周知の断面形状であってよく、とくに、円形、楕円形、方形、または、それらにさまざまな形状を付加したものでよい。さらに、ねじられるか、または、少なくとも2つのモノフィラメントまたはマルチフィラメントから編まれた糸が提供れる。最後に、糸は、コーティングが施され、コーティングは、特に、ウレタンまたはアクリルでできているか、ナノ粒子を備えていることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明による抄紙機用織物の12の縦断面図であって、その左半分に、第1の織物布における12の連続的第1の縦糸の経路および結合を示し、その右半分に、実質的に、全て結合糸を形成している、第2の織物布における対応する12の第2の縦糸の経路および結合を示す縦断面図である。
【図2】図1に開示した抄紙機用織物の横断面図であって、12対の連続的な第1および第2の横糸の経路および結合を示す横断面図である。
【図3】図2を拡大して示す第2の横断面図である。
【図4】図1〜3に示す抄紙機用織物の平面図である。
【図5】本発明による抄紙機用織物の他の実施例による横断面図であって、第1および第2の横糸の経路および結合を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1および2は、抄紙機用織物31を示す。織物は、成形織物を形成するために使用されるもので、成形織物の外側で紙側を形成する第1の織物層32と、成形織物の外側で機械側を形成する第2の織物層33とを有している。第1の織物層32は、偶数2〜24の付けられた1つの総合的パターンの第1の横糸を有している。これらの第1の横糸2、4、6〜24は、図2においも分かるように、第1の縦糸34〜45と平織りで織り合わされている。この図において、第1の縦糸34〜45は、結合ポイントだけで参照番号を付与されている。
【0027】
第2の織物層33は、奇数1〜23の付けられた第2の横糸から成る。これらの第2の横糸1、3、5〜23は、図1の右半部に示されるように、第2の縦糸46〜57と織り合わされている。第2の横糸1、3、5〜23は、第1の横糸2、4、6〜24の径よりも大きい径をもつ円形横断面を有している。第1の横糸2、4、6〜24の数は、第2の横糸1、3、5〜23の数に等しく、第2の横糸1、3、5〜23のそれぞれは、第1の横糸2、4、6〜24の下に垂直に積み重ねられてのびている。
【0028】
図1の右半部から分かるように、第2の縦糸46〜57は、以下の経路を通っている。1つの第2の縦糸46〜57は、5つの連続的第2の横糸1、3、5〜23上に浮上り、1つの第2の横糸1、3、5〜23を結合して機械側にナックルを形成し、2つの連続的第2の横糸1、3、5〜23上に浮上り、1つの第1の横糸2、4、6〜24を結合して、結合点のそれぞれで、紙側にナックル58〜69を形成している。その後、この第2の縦糸46〜57は、2つの連続的第2の横糸1、3、5〜23上に浮上し、そして、機械側で、他の第2の横糸1、3、5〜23を結合する。全ての第2の縦糸1、3、5〜23は、第1の横糸2、4、6〜24を結合しているので、それらは、全て、結合糸として機能する。
【0029】
図2に示されているように、1つの第2の横糸1、3、5〜23は、機械側で、5つの第2の縦糸46〜57の下に繰り返しに浮上し、それから、他方の側で、1つの第2の縦糸46〜57を結合して、それから、5つの第2の縦糸46〜57の下に浮上する。この図において、第2の縦糸46〜57は、結合ポイントで、それらのナックル58〜69の参照番号だけによって、示されている。
【0030】
抄紙機用織物31の所与の走る方向に対して直角な方向において、各第1の縦糸34〜45は、第2の縦糸46〜57の上をのびて、対(34および46、35および47等々)を形成している。その対は、結合糸を形成している1つの第2の縦糸46〜57と、1つの第1の縦糸34〜45とよりなる。
【0031】
各結合ポイントで、1つの第2の縦糸46〜57は、第1の横糸2、4、6〜24を、紙側で、1つの第1の縦糸34〜45と隣り合わせで結合している。図1を参照すると、例えば、第2の縦糸46は、ナックル58を形成している第1の横糸4を、ナックル70を形成している関連の第1の縦糸34と一緒に結合している。図2において、この状況は、第1の横糸4および第2の横糸3を示す上記から考慮される第2の横断面で認識できる。第1の横糸2、4、6〜24のテンションは、非常に強くて、結合ポイントで、第1の織物織物層32の平面に持ち上げられ、その結果、それぞれに隣接する第1の縦糸34〜45が、対応する第2の縦糸46〜57の真上からその第2の縦糸46〜57の斜め上の位置まで、横に押しのける。図2の図示に反して、これらの第1の縦糸34〜45は、もちろん、結合ポイントで、それぞれの第2の縦糸46〜57と接触する。
【0032】
図3は、上記から考慮される図2の第2の横断面図の拡大した表現を示す。第1の横糸4は、結合ポイントで、第1の縦糸34のナックル70と共に、第2の縦糸46のナックル58において、紙側へ結合される。ナックル58は、第1の縦糸34〜45の外側の頂点73により構成される紙側平面72に最も近くにある頂点71を形成する。各ナックル58〜69はこの種の頂点71を有しており、全ての頂点71は頂点面74を形成する。他の面は、第1の縦糸34〜45の紙側のナックルによって、すなわち、紙側に最も近くにある凹状内側屈曲部でありかつ内側面を構成するポイントによって、形成される。図3に示すことは、頂点面74が、各結合ポイントで、上記記載の内側平面75より、紙側平面72に近くて、第2の縦糸46〜57によって、第1の縦糸34〜45の横方向の変位を引き起こしていることである。
【0033】
図4は、抄紙機用織物31の紙側を示す。第1の織物織物層32は、第1の縦糸34〜45と織り合わされた第1の横糸2、4、6〜24よりなる。結合ポイントで、第2の縦糸46〜57は、1つの第1の横糸2〜24の上をのびており、それぞれに、ナックル58〜69を形成しており、それでもって、関連の第1の縦糸34〜45を横向きに押しており、その結果、第2の縦糸46〜57が、排水流に対する抵抗を与えかつウェブ構造を支持する紙側にさらされている。第1の縦糸34〜45が振れて結合ポインの周囲において横方向の変位を形成することが、認識できる。2つの連続する結合ポイントの間で、第1の縦糸34〜45は、対応する第2の縦糸46〜57の真上の位置に戻る。そのうえ、このことは、結合ポイントで、第1の縦糸34〜45が、しばし、対応する第2の縦糸46〜57の左側に変位し(例えば、ナックル59、65、67および69によって形成された結合点を参照、)、そして、しばし、右側に変位する(例えば、ナックル58、60、61、62、63、64、66、68によって形成された結合ポイントで)。
【0034】
図5は、上記から考慮される図2の第1の横断面と同じ横断面平面における抄紙機用織物81を示す。それは、外側で紙側を形成している第1の織物層82およびその外側で機械側を形成している第2の織物層83を有している。第1の織物層82は、第1の横糸84を有しており、これは第1の縦糸85〜96と平織りされている。第2の織物層83は、第2の横糸97と、第2の縦糸98〜109とよりなる。そして、これらは、図1〜4による抄紙機用織物31の第2の織物層33と同様に、織り合わされている。
【0035】
第1の縦糸85〜96の数は、第2の縦糸98〜109の数に等しい。しかしながら、図1〜4に示す実施例に反して、第1の縦糸85〜96は、第2の縦糸98〜109にオフセット配置されている。すなわち、それらは、垂直に積み重ねられていない。全ての第2の縦糸98〜109は、抄紙機用織物31におけるものと同じ方法で、第1の横糸84を結合している結合糸を形成しており、その結果、第2の縦糸98〜109の方向は、図1の右半部に開示される経路と同じになっている
各結合ポイントで、1つの第2の縦糸98〜109は、紙側上で、第1の縦糸85〜96と一緒にかつ隣り合わせで、第1の横糸84を結合している。図5において認識される結合ポイントおいて、第2の縦糸105は、紙側上で、第1の横糸84を結合しており、これは、隣接する第1の縦糸92と一緒にナックル110を形成している。隣接する第1の縦糸92は、その上に、紙側上で、ナックル111を形成している。第1の横糸84のテンションは、強くて、第2の縦糸105が第1の織物織物層82の平面に持ち上げられ、その結果、縦方向第1および第2の縦糸92、105のナックル110、111が実質的に同じレベルとなっている。
【0036】
図1〜4において、開示されている製紙織物31の実施例に反して、第1の縦糸92は、第2の縦糸105によって、押しのけられていない。その理由は、2つの織物層82、83のオフセットである。これにより、以下のことがもたらされる。第1および第2の縦糸92、105の下方における第1の横糸84の浮上は、第1の縦糸92に関して逆方向にのびている第1の縦糸91を、第2の縦糸104のほぼ真上の通常の位置から、押しのけることなる。これは、第1および第2の縦糸92、105が第1の横糸を結合している結合ポイントで繰り返される。
【0037】
第2の縦糸105のナックル110は、第1の縦糸85〜96の外側頂点により構成された紙側平面113に最も近い頂点112を形成する。各第2の縦糸98〜109は、結合ポイントに、その種の頂点112を有する。そして、全てのこれらの頂点112は頂点平面を形成し、それは、この実施例において、紙側平面113と同一である。
【0038】
他の平面は、第1の縦糸85〜96の紙側ナックル、すなわち、紙側に最も近くにありかつ内側平面114を構成する凹状内側屈曲ポイントによって形成される。図5は、内側平面114が第2の縦糸98〜109の頂点112により定義される頂点の平面と同一の紙側平面113までの距離を有することを示す。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明による抄紙機用織物は、織物の紙側上のウェブ構造を改善することを達成するのに適している。
【符号の説明】
【0040】
31、81 抄紙機用織物
32、82 第1の織物層
33、83 第2の織物層
2、4、6〜24、34〜45、84〜96 第1の糸
1、3、5〜23、46〜57、97〜109 第2の糸
72、113 紙側平面
75、114 内側平面
74 頂点平面
46〜57、98〜109 構造的第2の糸
58〜69、110 ナックル
73、111 ナックル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形布である抄紙機用織物(31、81)であって、第1の織物層(32、82)および第2の織物層(33、83)を有しており、前記第1の織物層は、前記織物(31、81)の外側で紙側を形成しかつ第1の糸(2、4、6〜24、34〜45、84〜96)でつくられており、前記第1の糸は、互いに織り合わされて、第1の織り反復の繰り返しおよび紙側平面(72、113)をそれぞれ形成しており、前記第2の織物層は、前記織物の外側で、機械側を形成しかつ第2の糸(1、3、5〜23、46〜57、97〜109)でつくられており、前記第2の糸は、互いに織り合わされて、第2の織り反復の繰り返しを形成しており、前記2つの織物層(32、33、82、83)は、一緒に、前記織物(31、81)の全体的織りの繰り返しを形成しかつ結合ポイントで、第2の織り繰り返しとなる構造的第2の糸(46〜57、98〜109)によって形成された結合糸によって互いに結合されており、上記において、同一方向に隣接してのびている1つの結合糸および1つの第1の糸(34〜45、85〜96)が、紙側で、それらと交差して並んでのびている第1の糸(2、4、6〜24、84)を結合しており、前記結合糸は、結合ポイントで、ナックル(58〜69、110)を形成しており、前記ナックルは、紙側に、頂点(71、112)を有しており、前記頂点は、紙側平面(72、113)と平行する頂点平面(74)を構成しており、前記第1の糸は、紙側に、凹状内側屈曲部をもつナックル(73、111)を形成しており、前記結合ポイントは、紙側平面(72、113)と平行する内側平面(75、114)を構成する紙側平面(72、113)に最も近いところに位置させられている抄紙機用織物において、
前記結合糸と交差してのびている前記第1の糸(2、4、6〜24、84)のテンションによって、前記頂点平面(74)が内側平面(75、114)よりも紙側平面(72、113)に近くなり、その結果、前記結合ポイントの領域において、各結合糸と隣接してこれと同一方向にのびている少なくとも1つの前記第1の糸(34〜45、85〜96)が、その横方向に変位させられるようになっていることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項2】
請求項1の抄紙機用織物であって、前記結合糸は、互いに同一方向にのびて垂直に重ねられた1つの第1の糸(34〜45)の下方に配置されており、それらの第1の糸(34〜45)は、前記結合ポイントの領域において横方向変位を形成する前記結合ポイントで、対応する結合糸と隣り合う前記横方向にのびた糸を結合していることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項3】
請求項1の抄紙機用織物であって、前記結合糸および前記第1の糸(85〜96)は、同一方向にのびて、互いにオフセットして配置されており、前記結合ポイントで、前記第1の糸(85〜96)は、前記結合糸と同一方向にのびかつ結合糸にその側とは反対側で隣接させられており、その側で、前記結合糸の方向にのびている前記隣接する第1の糸(85〜96)が、前記横方向にのびた第1の糸を、それらの紙側で結合しており、前記第1の糸(85〜96)は、結合ポイントの領域において横方向変位を形成する前記横方向にのびた第1の糸の下側を通されていることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つの抄紙機用織物であって、前記第1の糸(34〜45、85〜96)の横方向変位は、これらの第1の糸(34〜45、85〜96)の長さ方向において、全体的織り反復長さの少なくとも10%から最大90%までの範囲の経路長をカバーすることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つの抄紙機用織物であって、前記第1の糸(34〜45、85〜96)の横方向変位の一部は、前記織物平面における前記結合糸の幅の10%以上であることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つの抄紙機用織物であって、前記第2の糸(34〜45、85〜96)の一部である前記結合糸は、前記第1の糸(2、4、6〜24、34〜45、85〜96)より大きい横断面を有していることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つの抄紙機用織物であって、前記結合糸は、あらゆる全体的織り反復において、1つだけの第1の糸(2、4、6〜24、84)を結合していること特徴とする抄紙機用織物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つの抄紙機用織物であって、一方向にのびている全ての第2の糸(46〜57、98〜109)は、結合糸として織られていることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つの抄紙機用織物であって、結合糸および/またはこれと交差する糸と同じ方向に伸びる第1の糸(34〜45、85〜96)は、前記結合糸と交差する糸(2、4、6〜24、84)と同じ方向に伸びる少なくとも第2の糸(46〜47、97〜109)の数と同程度の数であり、これらの第1および第2の糸(34〜45、2,4,6〜24、46〜57、85〜109)の数の比率は、4:3、3:2、2:1、1:1、1:2、2:3であることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つの抄紙機用織物であって、第1の糸(2、4、6〜24、34〜45、84〜96)は、互いに、平織で、織り合わされていることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つの抄紙機用織物であって、前記結合糸は、あらゆる全体的織り反復における前記結合糸と交差する方向にのびている少なくとも2つの第2の糸(1、3、5〜23、97)を結合して、綾織りまたはサテン織りを形成していることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つの抄紙機用織物であって、前記抄紙機用織物(31、81)は、8〜100のハーネスに織られていることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1つの抄紙機用織物であって、前記結合糸は、抄紙機用織物(31、81)の所与の経路方向に伸びていることを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1つの抄紙機用織物であって、前記結合糸は、縦方向にのびた糸として織られるということを特徴とする抄紙機用織物。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1つの抄紙機用織物であって、抄紙機用織物(31、81)の所与の経路方向にのびている前記糸(34〜45、46〜57、85〜96、98〜109)は、PET、PENまたはこれらの材料の混合物または共重合体でできており、前記所与の経路と交差する前記糸(1、3、5〜23、2, 4, 6〜24、84、97)は、PET、PA、これらの材料の混合物または共重合体、または、これらの材料およびPUの混合物でできているか、または、前記糸は、コーティング、とくに、ウレタンまたはアクリルでできているコーティング、または、これにナノ粒子を使用したコーティングを施されていることを特徴とする抄紙機用織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87409(P2013−87409A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−223089(P2012−223089)
【出願日】平成24年10月5日(2012.10.5)
【出願人】(507085276)ハイムバッハ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲー (2)
【Fターム(参考)】