抄紙用ドライヤーカンバス
【課題】汚れ物質の付着・滞留、経糸の層間剥離によるささくれ発生、接紙面・反接紙面の摩耗損傷、フラッタリング・バルーニングの発生に対して、一層高い対策機能を兼ね備えたオープンメッシュの抄紙用ドライヤーカンバスを提供する。
【解決手段】扁平断面モノフィラメントの経糸11と、円形断面モノフィラメントの緯糸12を用い、緯単層、かつ緯糸が経糸1本と交絡後ロングクリンプする組織に織成し、経糸の充填率を40〜70%の範囲内とし、接紙面側では、緯糸12のロングクリンプの頂部14を経糸11のクリンプ頂部15より湿紙側に位置させ、反接紙面側では、経糸11のロングクリンプの頂部17を緯糸12のクリンプ頂部18より湿紙から遠く位置させるとともに、経糸11間の離隔部13と緯糸12間の隙間とで構成するメッシュ開口部20の緯糸方向寸法を経糸方向寸法より長くする。
【解決手段】扁平断面モノフィラメントの経糸11と、円形断面モノフィラメントの緯糸12を用い、緯単層、かつ緯糸が経糸1本と交絡後ロングクリンプする組織に織成し、経糸の充填率を40〜70%の範囲内とし、接紙面側では、緯糸12のロングクリンプの頂部14を経糸11のクリンプ頂部15より湿紙側に位置させ、反接紙面側では、経糸11のロングクリンプの頂部17を緯糸12のクリンプ頂部18より湿紙から遠く位置させるとともに、経糸11間の離隔部13と緯糸12間の隙間とで構成するメッシュ開口部20の緯糸方向寸法を経糸方向寸法より長くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機のドライパートに使用する抄紙用ドライヤーカンバス(以下、単に「カンバス」という)に関し、緯単層組織でオープンメッシュとした抄紙用ドライヤーカンバスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙工程においては、古紙原料が一定の割合で使用されるため、紙粉ならびに古紙原料中の粘着物質(ガム質ピッチ)、製紙用内添・外添の薬剤であるサイズ液、塗工液、夾雑物などが、カンバスの表面や内部に付着する。この汚れが経時的に堆積すると、カンバスが目詰まりを引き起こし、通気性が著しく低下してその乾燥作用を発揮し得なくなることから、カンバスにおける汚れは従来から問題であった。
【0003】
そこで、この汚れがカンバス表面に付着しにくく、また、汚れが付着してもその汚れを落とし易いように単層の平織に織成した目の粗い多孔性のカンバスが提案されている。
【0004】
特許文献1のカンバスは、太さ0.6〜1.2mmφの合成樹脂モノフィラメントをそれぞれ経糸および緯糸とし、経糸密度と緯糸密度をともに8〜15本/2.54cmの超オープンメッシュにして単層の平織に織成したものである。経糸および緯糸をともにその組織点で同程度の波形状に湾曲固定するように緊張下のヒートセット加工を施し、通気度を30,000cm3/cm2・分以上としている。上記カンバスは、極めて目を粗くしたことから、湿紙と接触する経糸と緯糸、およびその交絡点が少なくなるので、汚れ物質の付着が少なくなる。また、目が粗いので、たとえ汚れ物質が付着しても、洗浄などによって容易に取り除くことができる優れたカンバスである。
【0005】
特許文献2のカンバスは、円形断面の合成樹脂モノフィラメントを経糸および緯糸として単層の平織に織成したカンバスであって、緯糸に太さが異なるモノフィラメントを交互に配したものである。なお、経糸には特許文献1のカンバスと同じ太さの範囲の糸を用いている。このカンバスは、表面で湿紙と接触する経糸と緯糸、およびその交絡点(交錯点)を事実上半分に減少させることができるので、汚れ物質の付着量を大幅に減少できる優れたカンバスである。
【0006】
しかし、これら特許文献1,2の対象カンバスは、防汚性に優れた効果を有すのであるが、使用している間に、経糸の層間剥離による、ささくれ損傷が目立つようになってきた(図8参照)。この原因は、抄紙高速化条件での走行中の屈曲疲労によるものである。
【0007】
そこで、上記経糸の損傷対策として、特許文献3のカンバスが提案されるに至った。このカンバスは、経糸に楕円断面のモノフィラメント(例えば、短径0.60mm×長径0.95mm) を使い、緯糸に円形断面のモノフィラメント(例えば直径0.90mm)を用いている。この文献には、楕円断面のモノフィラメント糸を経糸に用いることにより、経糸と緯糸の交絡が強い割には、経糸方向に優れた屈曲柔軟性を示し、経糸の層間剥離による、ささくれ発生(フィブリル化)を防止する効果を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭58−55280号公報
【特許文献2】特開平9−310291号公報
【特許文献3】特開平10−317295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年では、環境保護や資源再利用の観点から、特に板紙の抄紙などで、製紙原料としての古紙使用量がますます増加しており、古紙原料比100%といった操業も一般的になっている。古紙原料比が極めて高い抄紙では、他の抄紙の場合に比べて原料中の粘着物質(ガム質ピッチ)と微細繊維の混合物による汚れが多くあり、また内添剤や塗工剤の使用量も多いので、填料、夾雑物等も増加している。結果として、これら汚れ物質が、カンバスの表面や経糸と緯糸の交絡点付近に付着、滞留する量は多くなる。
【0010】
カンバスに付着、滞留した汚れ物質のオンマシンでの除去方法として、高圧水洗浄や薬品を用いた洗浄方法が一般に行われている。この洗浄により、カンバス表面から飛散・脱離する汚れがある一方で、カンバスを貫通して裏面に抜け出し、裏面で留まったりカンバスと接するロール類に不均一に固着する汚れがあり、ロール錆と併せてカンバス裏面の摩耗の原因になっている。また、カンバス表面の付着物を掻き落とすために、金属製のスパイラル線で編成したネット、あるいはスクレーパーが設置される場合もある。この場合には、それらとの接触によりカンバス表面の摩耗が一層進展する。したがって、カンバス接紙面、反接紙面の耐摩耗性の向上ならびにカンバスの強力や形態保性の維持も、前記防汚性や洗浄回復性の向上と併せて必要になっている。
【0011】
さらに、抄紙機の高生産性や高抄速化に伴い、オープンメッシュで通気度が非常に高いカンバスを使用する抄紙においては、抄紙機が上下2枚のカンバスを使用するコンベンショナルランの場合、図9に示す湿紙54が上部シリンダー51から下部シリンダー52に移行するときのオープンドロー(フリーラン)53で、湿紙54がカンバス55・55’の随行無しで単独走行する(この様な箇所は多数存在する)部分がある。抄速を上げると、カンバスの走行に伴って運ばれる空気の流れ(随伴流)56が多くなり、オープンドローでカンバス55を抜けた随伴流(図中に太線矢印で示す)に煽られて湿紙54がフラッタリング(はためく=バタつき)を起こすと、断紙を多発させる恐れがある。また、抄紙機がシングルランの場合は、図10に示すシリンダー61にカンバス62が接し、その上を湿紙63が位置する箇所で、カンバス62による随伴流65の遮断が不充分になって、バルーニング(湿紙がカンバスから部分的に離れて膨らむ状態)64が生じ易くなり、通紙が正常にできなくなる恐れがある。
【0012】
以上述べたように、近年の抄紙環境から、汚れ物質の付着・滞留、経糸の層間剥離によるささくれ発生、接紙面・反接紙面の摩耗損傷、フラッタリング・バルーニングの発生に対しては、前記した特許文献の出願当時より、一層高い対策機能を兼ね備えたカンバスが要求されるようになってきており、この要求に応えることが急務になっている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決するために、まず、2種類のカンバスの汚れ物質付着状況について調査をした。その結果、使用済みカンバスの汚れ物質は、特に走行方向糸つまり経糸の接紙面側に多く付着し、堆積してメッシュ開口部を目詰まりさせていることが解った。以下、調査の具体的な内容を説明する。
【0014】
図11は、従来型の平織オープンメッシュカンバス(以下、従来品)の汚れ付着状況を示す顕微鏡写真(a図)及びこの写真の模式図(b図)である。一方、図12は、緯糸が接紙面側でロングクリンプする組織のオープンメッシュカンバス(以下、試作品)の顕微鏡写真(a図)及びこの写真の模式図(b図)である。何れの写真及び図も、上下方向が走行方向(経糸方向)である。これらの写真及び図から、試作品は、従来品と比べて汚れ物質(模式図中に散点で示す)の付着が少なく、特に、経糸側の汚れ物質の付着が少ないことが解る。なお、この試作品は、本発明に係る開発研究の初期段階のものであって、緯糸が接紙面側でロングクリンプする組織であるが、本発明のカンバスの構成を示すものではない。また、ロングクリンプとは、交絡する相手方の糸を複数本越えて長浮きした部分のことを言う。
【0015】
また、これらの使用済みカンバスを高圧水洗浄すると、従来品は、経糸側に付着した汚れ物質が残存しているが、緯糸側に付着した汚れ物質は大半除去できていることが解った。一方、試作品は、全体として十分な洗浄効果が認められた。
【0016】
上述のことから、汚れ物質の付着・滞留は、次のように進行すると考えられる。接紙面側に経糸が浮いた組織では、汚れ物質は経糸の幅方向両サイドに付着し、これが滞留成長して、少し凹んだ経糸と緯糸の交絡部にまで及ぶ。また、接紙面側で経糸のクリンプ頂部と緯糸のクリンプ頂部の高低差がほとんどない組織の場合は、前述の経糸が浮いた組織の場合に加えて、緯糸の走行方向前側にも汚れ物質が付着滞留する。そして、経糸の両サイドの滞留物と合体し、やがてはメッシュ開口部を覆うまでに成長する。
【0017】
このように考えると、汚れ物質の滞留量が多い経糸と、経糸と緯糸の交絡部を接紙面から沈めるようにし、緯糸をロングクリンプさせ、かつ経糸よりも浮き上がらせば、汚れ物質は、緯糸のロングクリンプ部の走行方向前側に付着し、経糸や、経糸と緯糸の交絡部への付着は少なくなるので、メッシュ開口部の目詰まり進行を遅らせることが期待できる。また、早期洗浄をすれば、緯糸の片側サイド(走行方向前側)に片持のような状態で付着した汚れ物質は除去しやすいと考えられる。
【0018】
このことから、本件の主課題となる防汚対策としては、経糸密度をさらに減少させるか、経糸を複数本ずつまとめて経糸の無い部分を広く設計する対処法が考えられる。加えて、メッシュ開口部において、接紙面側に緯糸をロングクリンプさせ、かつ、その頂部が経糸のクリンプ頂部よりも湿紙側により張り出させる構成とすれば、防汚効果が大きくなると推察される。この張り出し緯糸と経糸の頂部の位置の差は、微小でもあれば一定の効果が期待できるが、出来るだけ大きな差とすることが好ましい。
【0019】
一方、経糸の層間剥離のささくれ損傷は、カンバス周回走行時の屈曲疲労によるもので、従来から用いられてきた円形断面モノフィラメントの断面直径、より詳しくはカンバス厚さ方向の寸法が大きいことが起因している。改善方法としては、経糸の断面直径を小さくし、柔軟性を増して屈曲耐性を向上させればよいが、そうすると、織密度の低いオープンメッシュカンバスでは強度・剛性不足となることは明らかである。そこで、経糸は、長方形断面糸や楕円断面糸などの扁平糸に切り替えて、同等断面積を維持すべきとの判断に至った。経糸を扁平糸にすれば、緯糸との交絡接触部が増してカンバスの構造がより安定するが、反面、メッシュ開口部の開口面積が縮小してしまうことになる。そこで、複数本の経糸を近接させた経糸群を多数形成すると共に、前記経糸群とこれに隣接する経糸とを離隔させて多数の離隔部を形成とすれば、同じ本数の経糸を均等に配列する場合と比べて、大きなメッシュ開口部を確保することができる。尚、カンバスに極少数(例えば1箇所)の経糸群や離隔部を形成しても、大きなメッシュ開口部は十分に形成されないため、経糸群や離隔部は多数形成する必要があり、例えば全経糸の半数以上の経糸で経糸群を構成すればよい。
【0020】
つぎに、カンバス反接紙面側の摩耗に対しては、カンバス裏面から接するロール類との走行接触面積をより広くし、かつ、経糸の柔軟性を増すことで、接触単位面積当たりの摩擦力や、ロール類とのスリップを減じる方策を講じることとした。具体的には、経糸を扁平糸とし、反接紙面側でロングクリンプする組織の採用である。
【0021】
つぎに、フラッタリングやバルーニング対策について述べる。緯単層組織はカンバスの厚さが比較的薄いので、本来的にその現象発生は少ない。しかし、本発明のカンバスの構造は、接紙面側で緯糸を長く露出させ、かつ張り出させた形態になるので、走行中に緯糸が空気抵抗を受けやすく、乱気流を発生させて随伴流が多くなると予測される。
【0022】
この問題に対しては、上述の経糸群に隣接する離隔部が、反接紙面側走行方向のほぼ全長に、経糸群間による溝状空間を形成するという副次的構成によってそのリスクを減じることができる。この溝状空間は、図9のカンバスロール57・57’とカンバス55・55’の界面に気流を逃がし得る空間となり、随伴流の一部58は、この空間を通ってドライヤーポケット59側に吹き出さずに流出するのでフラッタリングが抑制できる。また、シングルラン方式でも、図10のドライヤーシリンダー61に直接カンバス62が接し、そのカンバス62の外側に湿紙63が配置される場合では、空気流65の一部が、前記溝状空間を通って流出するので、バルーニングを抑えることも可能である。
【0023】
一般にモノフィラメント製カンバスの接紙面側は、経糸がロングクリンプする平滑面を持つ組織、もしくはせいぜい平織組織が採用されることがほとんどである。ところが、本発明者は、接紙面側を円形断面モノフィラメントの緯糸の方をロングクリンプさせて張り出させつつ、経糸は沈ませる表面状態とし、逆に、反接紙面側は経糸の扁平断面モノフィラメントをロングクリンプさせて平滑面を持つ組織とする奇抜発想を想起している。また、その試作・試験によって発現する作用効果が本願課題を解決することを併せて確認している。
【0024】
なお、接紙面側摩耗に対しては、摩耗を直接受ける浮き出し緯糸の断面直径を0.7mmφ以上の太いモノフィラメントにすることで対応可能と確認している。
【0025】
すなわち、本発明のカンバスは、合成繊維の扁平断面モノフィラメントの経糸と、合成繊維の円形断面モノフィラメントの緯糸を用い、緯単層、かつ緯糸が経糸1本と交絡後にロングクリンプする組織に織成し、複数本の経糸を近接させた経糸群を多数形成すると共に、前記経糸群とこれに隣接する経糸とを離隔させて多数の離隔部を形成した抄紙用ドライヤーカンバスにおいて、前記経糸の充填率を40〜70%の範囲内とし、接紙面側では、前記緯糸のロングクリンプの頂部を経糸のクリンプ頂部より湿紙側に位置させ、反接紙面側では、前記経糸のロングクリンプの頂部を緯糸のクリンプ頂部より湿紙から遠く位置させるとともに、経糸間の前記離隔部と、隣接緯糸間の隙間とで構成するメッシュ開口部の緯糸方向寸法を経糸方向寸法より長くしたことを特徴とする(請求項1)。
【0026】
上記において、「近接」とは、接紙面側上方から見て、離隔させて配した経糸と比べて、経糸間の距離が狭く配置されていることを意味し、接触状態も含むものとする。「経糸の充填率」とは、単位長さ(例えば1インチ)内の経糸の本数にその経糸のカンバス幅方向の外径寸法を乗じた数値と、同単位長さとの比(100分率)とする。
【0027】
また、前記緯単層の織組織が1/3綾織であって、前記経糸群が経糸2本で形成されていることを特徴とする(請求項2)。
【0028】
すなわち、経糸が接紙面側で緯糸1本の上を通過後、反接紙面側に回り、反接紙面側で緯糸3本の外方(カンバス厚さ中央部に対して外側)を長浮きした後、接紙面側に戻る組織を1リピートとし、順次隣り合う経糸が、その組織をずらせて配置する組織で、正綾織の他、破れ綾織を含むものである。この規定組織において、経糸が2本ずつ近接した状態の織物構造を指すものである。
【0029】
また、前記接紙面側での緯糸のロングクリンプ頂部と経糸のクリンプ頂部の高低差が、0.07〜0.25mmの範囲内であって、前記反接紙面側での経糸のロングクリンプ頂部と緯糸のクリンプ頂部の高低差が、0.1〜0.25mmの範囲内であることを特徴とする(請求項3)。尚、「高低差」とは、カンバス厚さ方向における距離のことを言う。
【0030】
また、前記メッシュ開口部の開口寸法が、経糸方向×緯糸方向で0.5〜0.8mm×1.2〜2.5mmの範囲内であることを特徴とする(請求項4)。
【0031】
また、前記経糸の断面形状が長方形であって、その短辺×長辺の寸法が0.4〜0.7mm×0.7〜1.1mmであり、前記緯糸の断面直径が、0.7〜1.2mmφであることを特徴とする(請求項5)。ただし、経糸の長方形断面形状は紡糸上、各頂点部が僅かに丸みを持つ場合の形状を含むものとする。
【0032】
また、前記経糸の断面形状が略楕円形であって、その短径×長径の寸法が0.4〜0.7mm×0.7〜1.1mmであり、前記緯糸の断面直径が、0.7〜1.2mmφであることを特徴とする(請求項6)。ただし、断面形状は紡糸上、正楕円が若干膨れるなど変形した場合の形状を含むものとする。
【0033】
また、前記ドライヤーカンバスの反接紙面側において、前記経糸間に形成された離隔部で、走行方向に延びた溝状空間を形成していることを特徴とする(請求項7)。
【0034】
なお、溝状空間とは、経糸のロングクリンプ部と、経糸間の離隔部を横切る緯糸とで形成されるカンバス緯糸方向断面における凹部が、カンバスの走行方向に伸びている帯状部を指し、経糸間の離隔部の数だけ形成される。
【発明の効果】
【0035】
本発明のカンバスは、緯単層織のオープンメッシュで、メッシュ開口を大きく取り、接紙面側で緯糸がロングクリンプして、経糸より浮き出ているので、汚れ物質が経糸に付着しにくく、緯糸に付着した汚れ物質は除去しやすい。また、経糸は扁平断面のモノフィラメントであるので、走行方向に柔軟性があり、走行時の屈曲疲労によるささくれ損傷が発生しにくい。加えてこの経糸は、反接紙面側でロングクリンプして、走行接触面積を大きく取るので、カンバス反接紙面側の単位面積あたりの摩擦力が少なくなる。さらに、本カンバスは単層で薄く、かつ、反接紙面側において、走行方向のほぼ全長に伸びる多数の溝状空間が形成されているため、随伴流の逃げる流路となって、フラッタリングやバルーニングの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態にかかるカンバスの接紙面側の平面図である。
【図2】図1のカンバスの緯糸方向断面図である。
【図3】図1のカンバスの経糸方向断面図である。
【図4】図1のカンバスの反接紙面側の平面図である。
【図5】(a)は、2本の扁平断面経糸上に形成された緯糸のクリンプ頂部付近を示す緯糸方向断面図、(b)は2本の円形断面の経糸上に形成された緯糸のクリンプ頂部付近を示す緯糸方向断面図、(c)は1本の円形断面の経糸上に形成された緯糸のクリンプ頂部付近を示す緯糸方向断面図である。
【図6】実施例に係るカンバスの諸元を示す表である。
【図7】比較例に係るカンバスの諸元を示す表である。
【図8】経糸にささくれ損傷が生じる様子を示す図である。
【図9】コンベンショナルラン方式の抄紙機による抄紙工程(乾燥工程)を示す図である。
【図10】シングルラン方式の抄紙機による抄紙工程(乾燥工程)を示す図である。
【図11】(a)は、平織オープンメッシュカンバスの汚れ付着状況を示す顕微鏡写真、(b)は同模式図である。
【図12】(a)は、緯糸が接紙面側でロングクリンプする組織のオープンメッシュカンバスの汚れ付着状況を示す顕微鏡写真、(b)は同模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明のカンバスの基本構成について、構成ポイントを整理すると、
(1)オープンメッシュとして、メッシュ開口部を十分大きく取ること。
(2)経糸には、太めの扁平モノフィラメントを用いること。
(3)オープンメッシュのメッシュ開口部の形状を、緯糸側を長辺とする長方形とすること。
(4)接紙面側は緯糸をロングクリンプさせ、かつその頂部を経糸より浮き上げること。
(5)反接紙面側は、経糸をロングクリンプさせ、かつその頂部を緯糸より外方にして、走行面との接触面積を大きくすること。
(6)上記構成として、反接紙面側に全長に亘る溝状空間を確保すること。
である。上記について、具体的に説明する。
【0038】
図1〜4は、本発明のカンバスの一例を示す図であって、図1はカンバスの接紙面の一部を示す概念図、図2は緯糸方向断面の一部を示す概念図、図3は経糸方向断面の一部を示す概念図、図4は反接紙面の一部を示す概念図である。オープンメッシュカンバスの織組織としては、薄手が基本のため緯単層織を採用し、メッシュ開口部を大きく取るために、複数本の経糸を近接させた経糸群を多数形成すると共に、前記経糸群とこれに隣接する経糸とを離隔させて多数の離隔部を形成した。本実施形態では、全ての経糸11を複数本ずつ近接させて(図示例では2本ずつ接触させて)経糸群10を多数構成し、その経糸群10間を広げて離隔部13を多数形成している。これにより、経糸11の織密度を不当に減少させずして、大きいメッシュ開口部20を確保することができる。大きいメッシュ開口部20を得るためには、前記した「近接」距離は、接触状態の0mmが最も好ましいが、実製造上は少し離れる場合があり、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以下を目安にすればよい。緯糸12の織密度は、緯糸12の繊度やカンバスの幅に係る必要な剛性を勘案して決定すればよいが、一般にオープンメッシュカンバスとして設計される、10〜20本/インチ程度の粗密度とする。大きいメッシュ開口部20とすることは、後述する接紙面側の緯糸12を十分ロングクリンプさせ、その頂部14を湿紙側(図2では上側、図3では左側)へ浮き出させる点、さらには、汚れ物質を洗浄除去しやすくする点で重要である。ただし、カンバスの幅方向の剛性は、走行しわが発生しないように確保しておく必要があるので、緯糸密度は、必要以上に粗密度にならないように注意する必要がある。
【0039】
尚、図示例では、経糸群10の経糸11同士を接触させている場合を示しているが、これに限らず、離隔部13よりもはるかに幅の小さい隙間を介して経糸群10を構成してもよい。また、図示例では2本の経糸11で経糸群10を構成しているが、これに限らず、3本以上の経糸で経糸群10を構成してもよい。さらに、図示例では経糸群10間を広げて離隔部13を形成しているが、経糸群10の間に1本又は複数本の経糸を配し、この経糸と経糸群10との間に離隔部13を形成してもよい。
【0040】
以上より、本発明では、メッシュ開口部20の形状は、緯糸方向を長辺とする長方形とすることが好ましく、また、その方が緯糸密度に係る剛性を考慮した織物設計もしやすくなる。具体的には、短長辺比率で1:2〜3程度のメッシュ開口部20とすることが現実的な目安で好ましく、寸法としては、経糸方向×緯糸方向で0.5〜0.8mm×1.2〜2.5mm程度の寸法、より好ましくは0.55〜0.75mm×1.4〜2.1mmの範囲である。
【0041】
経糸11には、扁平断面のモノフィラメントを用いる(図2参照)。扁平断面とはその断面において、カンバス厚さ方向の寸法(短辺)がカンバス幅方向の寸法(長辺)より小さい断面形状を指す。その中では、長方形、楕円形の断面形状が好ましい。具体寸法としては、その形状の短辺×長辺の寸法が0.4〜0.7mm×0.7〜1.1mm程度が好ましく、短辺:長辺の比が1:1.3〜1:1.8程度のバランスがよい。短辺寸法が小さすぎると摩損耐性が不十分であり、大きすぎると屈曲柔軟性が失われる。また、長辺寸法はカンバスへの要求通気度を考慮して決定すれば良いが、オープンメッシュカンバスとして構成させることから、扁平度が高すぎるとメッシュ開口部20の大きさを十分確保するのに適さない。
【0042】
緯糸12には、円形断面のモノフィラメントを用いる(図3参照)。緯糸12の太さとしては、その断面直径が0.7〜1.2mmφの範囲が好ましく、より好ましくは、0.9〜1.2mmφの範囲である。カンバスに剛性を持たせ、スパイラルネットやスクレーパーとの接触摩耗に対応させるために、出来るだけ太いモノフィラメントを選定する。
【0043】
次に、経糸11の充填率について説明する。カンバスの空隙率の観点からは、高通気度を維持するために、緯糸分を除いて少なくともカンバス平面の30%以上の空隙確保が必要と判断している。結果として、経糸11の充填率は40〜70%の範囲を確保すべきで、より好ましくは、40〜60%の範囲である。緯糸12のロングクリンプ長は可能な限り長くとる方がよいが、長すぎると経糸11による支持スパンが伸びて、織物としての形態保持が危うくなる。また、経糸11の充填率が70%を超えるようになると、高通気度が維持できなくなり、また、緯糸12のロングクリンプ頂部14の張り出しが不十分になる。
【0044】
次に、緯糸12をロングクリンプさせるためには、カンバスの織組織を緯単層で1/2〜1/4の綾織を採用する。特に好ましくは、十分なロングクリンプ長を確保できる点で、1/3の綾織である。経糸11・緯糸12に比較的太いモノフィラメントを用いる場合、1/2のロングクリンプでは緯糸12のロングクリンプ長と湿紙側への浮き出し高さが不足する場合があり、注意が必要である。単層で1/4以上のロングクリンプの組織とすれば、経糸11と緯糸12の交絡数が少なくなり、特に1/5以上ではカンバスの形態保持が事実上難しい。
【0045】
接紙面側において、緯糸12のロングクリンプの頂部14を経糸11のクリンプ頂部15より湿紙側に位置させる具体手段としては、上記織組織を採用した上で、製織時や製織後のヒートセット加工時に経糸方向の張力を高める方法があるが、この方法では十分ではない場合がある。本発明では、この構成をより確実に得るために、経糸11に扁平断面モノフィラメントを用い、さらにこれを複数本ずつ近接させて配列させている。以下にその理由を説明する。
【0046】
例えば図5(c)に示すように、1本の円形断面モノフィラメントの経糸11’’に緯糸12’’をクリンプさせた場合、緯糸12’’のクリンプ頂部14’’は、経糸11’’から緯糸12’’の厚さ分だけ上方(湿紙側)に位置する。これに対し、図5(b)に示すように、2本の円形断面モノフィラメントの経糸11’を近接させて経糸群10’を構成し、これらの上方で緯糸12’をロングクリンプさせた場合、緯糸12’は経糸群10’の緯糸方向に離隔した2点16’で支持され、経糸群10’の中央部にロングクリンプ頂部14’が形成される。このとき、緯糸12’は自身の剛性により湾曲するため、図5(c)に示す場合と比べて、緯糸12’のロングクリンプ頂部14’を湿紙側に持ち上げることができる。さらに、本実施形態のカンバスの構成を示す図5(a)のように、経糸11を扁平断面(矩形断面)のモノフィラメントを用い、これを複数本近接させて経糸群10を構成すれば、緯糸12が経糸群10のカンバス幅方向両端のコーナー部16付近で支持されることになる。これにより、緯糸12のロングクリンプ頂部14の支持スパンSを、円形断面モノフィラメント経糸11’を用いた場合における緯糸12’のロングクリンプ頂部14’の支持スパンS’(図5(b)参照)よりも長くとれるので、緯糸12のロングクリンプ頂部14をより高く(より湿紙側に)持ち上げることができる。
【0047】
抄紙工程においては、汚れ物質の発生事態は避けられないので、本発明構成は、これをカンバスに付着しにくく、また、除去されやすくすることを狙いとしている。この狙いの達成のためには、従来カンバスにおいて経糸に沿って付着した汚れ物質を減じ、可能な限り緯糸側に多く付着させることがポイントとなる。この作用を生み出す構成として、特に、接紙面側の緯糸12の張り出し形態は重要である。この緯糸12の張り出し程度としては、接紙面側での緯糸12のロングクリンプ頂部14と経糸11のクリンプ頂部15の高低差a(図2及び図3参照)が、0.07mm以上、より好ましくは0.08mm以上である。0.07mmの差があれば、経糸11は、湿紙やスクレーパーなどとほとんど接触することが無くなるが、これを下回ると、汚れ物質の付着度合いが経糸沿い・緯糸沿いで差が無くなる。前記高低差の有効上限は、上記作用の適否上では限界を設けることはないが、実製作上は0.25mm以上の高低差を設けることは現実的に難しい。
【0048】
反接紙面側では、接紙面側とは逆に、経糸11をロングクリンプさせてその頂部17が緯糸12のクリンプ頂部18より湿紙に対して遠く(すなわち外方に)位置させる。この経糸ロングクリンプの形態と経糸断面の扁平形態により、カンバスの反接紙面側で、走行摩耗に対して比較的広い接触面積が確保でき、かつ走行方向の屈曲柔軟性も兼ね備えるので、摩損やささくれ損傷を遅らせる効果が有効になる。
【0049】
次に、フラッタリングやバルーニングの抑制効果について述べる。随伴流のドライヤーポケット59(図9参照)への過度の流入や、吹き出しによる乱気流の発生を抑えるためには、この不具合を発生させる過剰気流を逃がし得る前述した反接紙面側の溝状空間を十分確保して、その抑制効果を高める。すなわち、図4に示すように、カンバスの反接紙面側では、経糸11間の離隔部13と、離隔部13を横切る緯糸12とで、経糸方向に延びる溝状空間19が形成される。尚、経糸11は反接紙面側で緯糸12と交絡するために、緯糸12のクリンプ頂部18部分で経糸11がカンバス内部(接紙面側)に沈み込むが、経糸11を複数本近接させて経糸群10を構成することにより、経糸群10を構成する何れかの経糸11がロングクリンプを成してカンバス外部(接紙面から離れる側)に突出しているため、溝状空間19は経糸方向にほぼ連続的に形成される。特に、図示例では、経糸11がカンバス内部に沈み込む緯糸12のクリンプ頂部18に隣接して、経糸11のロングクリンプ頂部17が配されるため、溝状空間19を経糸方向全長にわたって途切れることなく形成することができる。
【0050】
溝状空間19の容積を十分に確保するためには、溝状空間19の溝幅(すなわち経糸群10間の離隔部13の幅、メッシュ開口部20の長辺)を1.2〜2.5mm程度の範囲に設定するのが好ましい。また、溝状空間19の深さは、より深い方が空間を稼げるので好ましく、反接紙面側における経糸11のロングクリンプ頂部17と緯糸12のクリンプ頂部18の高低差b(図2及び図3参照)を0.1〜0.25mm、より好ましくは、0.15〜0.25mm程度を確保する。この頂部の高低差bは数値的には小さいが、溝状空間19の最も浅い部分を指す寸法であって、緯糸12が接紙面側にロングクリンプして位置するので、その下方で形成される溝状空間19の容積は十分稼ぐことができる。ただし、反接紙面側における経糸と緯糸の頂部の高低差が0.1mmより小さいと、溝状空間19の容積が十分とは言えない。
【実施例】
【0051】
本発明に係るカンバスの具体例を、実施例1及び実施例2として示す(図6参照)。また、参考として、本発明に含まれないカンバスの具体例を、比較例1及び比較例2として示す(図7参照)。以下、各実施例及び比較例について詳しく説明する。
【0052】
[実施例1]
緯単層で製織仕込み時に、経糸を変則的に筬入れすることにより、2本ずつ近接させて群とし、さらに群間が広がる配列とした。また、経糸が反接紙面側で緯糸に対し3本分、外方に長浮きする1/3破れ綾の組織とした。経糸には、短辺×長辺が、0.58mm×0.88mmの長方形断面の扁平モノフィラメントを用い、緯糸には、直径が1mmφの円形断面モノフィラメントを用いた。材質はいずれもポリエステルである。製織時と製織後のヒートセット加工において、経糸方向張力を少し高めて製作したが、当業者常識範囲内の張力である。仕上がった原反は、織密度が経×緯で、15×15.5(本/インチ)、メッシュ開口部の形状は見かけ長方形で、走行方向×幅方向で、0.64×1.58mmの寸法であった。経糸と緯糸の浮き状態は、接紙面側で、緯糸のロングクリンプ頂部が経糸のクリンプ頂部より0.13mm浮いた状態であり、反接紙面側で経糸のロングクリンプ頂部が緯糸のクリンプ頂部より0.20mm浮いた状態であった。この測定は、表面形状を高精度に測定可能な3次元レーザー測定器により行い、測定サンプル2cm2の経糸と緯糸の全交絡点付近について測定した平均値である。
【0053】
[実施例2]
実施例1と同一の組織形態および経糸配列とし、経糸には、短辺×長辺が、0.63mm×0.78mmの長方形断面の扁平モノフィラメントを用い、緯糸には、直径が1.1mmφの円形断面モノフィラメントを用いた。材質はいずれもポリエステルである。製織時と製織後のヒートセット加工の方法は実施例1に準じた。仕上がった原反は、織密度が経×緯で、15×14.5(本/インチ)、メッシュ開口部は走行方向×幅方向で、0.65×1.77mmの寸法、経糸と緯糸の浮き状態は、接紙面側で、緯糸のロングクリンプ頂部が経糸のクリンプ頂部より0.15mm浮いた状態であり、反接紙面側で経糸のロングクリンプ頂部が緯糸のクリンプ頂部より0.22mm浮いた状態であった。
【0054】
[比較例1]
前記特許文献1に近い構成のカンバスである。単層平織で、経糸には、直径が0.8mmφの円形断面モノフィラメントを用い、緯糸には、直径が0.9mmφの円形断面モノフィラメントを用いた。材質はいずれもポリエステルである。製織時と製織後のヒートセット加工の方法は実施例1に準じ、従来型オープンメッシュカンバスを製作した。仕上がった原反は、織密度が経×緯で、12.5×12.5(本/インチ)、メッシュ開口部は走行方向×幅方向で、1.13×1.23mmの寸法であった。経糸と緯糸の浮き状態は、接紙面側と反接紙面側ともに、緯糸のクリンプ頂部の方が経糸のクリンプ頂部より外方に浮いた状態ではあるが、その高低差は0.05mm程度と小さいものであった。
【0055】
[比較例2]
前記特許文献2に近い構成のカンバスである。単層平織で、緯糸に太さにおいて2種の緯糸を1本ずつ交互に配列する、比較例1の改良型カンバスを製作した。経糸には、直径が0.8mmφの円形断面モノフィラメントを用い、緯糸には、直径が0.9mmφの円形断面モノフィラメントと、直径が0.6mmφの円形断面モノフィラメントとを用い、1本ずつ交互に配列した。材質はいずれもポリエステルである。製織、ヒートセット要領は、実施例1と同等とした。仕上がった原反は、織密度が経×緯で、12.0×12.5(本/インチ)、メッシュ開口部は走行方向×幅方向で、1.27×1.32mmの寸法であった。経糸と緯糸の浮き状態は、接紙面側と反接紙面側ともに、クリンプ頂部の高さに差が無く、面一の状態であった。なお、このクリンプ頂部の高低差は、経糸と太い方の緯糸との関係についてのみ測定した。
【符号の説明】
【0056】
10 経糸群
11 経糸
12 緯糸
13 離隔部
14 緯糸のロングクリンプ頂部
15 経糸のクリンプ頂部
17 経糸のロングクリンプ頂部
18 緯糸のクリンプ頂部
19 溝状空間
20 メッシュ開口部
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機のドライパートに使用する抄紙用ドライヤーカンバス(以下、単に「カンバス」という)に関し、緯単層組織でオープンメッシュとした抄紙用ドライヤーカンバスの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
抄紙工程においては、古紙原料が一定の割合で使用されるため、紙粉ならびに古紙原料中の粘着物質(ガム質ピッチ)、製紙用内添・外添の薬剤であるサイズ液、塗工液、夾雑物などが、カンバスの表面や内部に付着する。この汚れが経時的に堆積すると、カンバスが目詰まりを引き起こし、通気性が著しく低下してその乾燥作用を発揮し得なくなることから、カンバスにおける汚れは従来から問題であった。
【0003】
そこで、この汚れがカンバス表面に付着しにくく、また、汚れが付着してもその汚れを落とし易いように単層の平織に織成した目の粗い多孔性のカンバスが提案されている。
【0004】
特許文献1のカンバスは、太さ0.6〜1.2mmφの合成樹脂モノフィラメントをそれぞれ経糸および緯糸とし、経糸密度と緯糸密度をともに8〜15本/2.54cmの超オープンメッシュにして単層の平織に織成したものである。経糸および緯糸をともにその組織点で同程度の波形状に湾曲固定するように緊張下のヒートセット加工を施し、通気度を30,000cm3/cm2・分以上としている。上記カンバスは、極めて目を粗くしたことから、湿紙と接触する経糸と緯糸、およびその交絡点が少なくなるので、汚れ物質の付着が少なくなる。また、目が粗いので、たとえ汚れ物質が付着しても、洗浄などによって容易に取り除くことができる優れたカンバスである。
【0005】
特許文献2のカンバスは、円形断面の合成樹脂モノフィラメントを経糸および緯糸として単層の平織に織成したカンバスであって、緯糸に太さが異なるモノフィラメントを交互に配したものである。なお、経糸には特許文献1のカンバスと同じ太さの範囲の糸を用いている。このカンバスは、表面で湿紙と接触する経糸と緯糸、およびその交絡点(交錯点)を事実上半分に減少させることができるので、汚れ物質の付着量を大幅に減少できる優れたカンバスである。
【0006】
しかし、これら特許文献1,2の対象カンバスは、防汚性に優れた効果を有すのであるが、使用している間に、経糸の層間剥離による、ささくれ損傷が目立つようになってきた(図8参照)。この原因は、抄紙高速化条件での走行中の屈曲疲労によるものである。
【0007】
そこで、上記経糸の損傷対策として、特許文献3のカンバスが提案されるに至った。このカンバスは、経糸に楕円断面のモノフィラメント(例えば、短径0.60mm×長径0.95mm) を使い、緯糸に円形断面のモノフィラメント(例えば直径0.90mm)を用いている。この文献には、楕円断面のモノフィラメント糸を経糸に用いることにより、経糸と緯糸の交絡が強い割には、経糸方向に優れた屈曲柔軟性を示し、経糸の層間剥離による、ささくれ発生(フィブリル化)を防止する効果を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実公昭58−55280号公報
【特許文献2】特開平9−310291号公報
【特許文献3】特開平10−317295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年では、環境保護や資源再利用の観点から、特に板紙の抄紙などで、製紙原料としての古紙使用量がますます増加しており、古紙原料比100%といった操業も一般的になっている。古紙原料比が極めて高い抄紙では、他の抄紙の場合に比べて原料中の粘着物質(ガム質ピッチ)と微細繊維の混合物による汚れが多くあり、また内添剤や塗工剤の使用量も多いので、填料、夾雑物等も増加している。結果として、これら汚れ物質が、カンバスの表面や経糸と緯糸の交絡点付近に付着、滞留する量は多くなる。
【0010】
カンバスに付着、滞留した汚れ物質のオンマシンでの除去方法として、高圧水洗浄や薬品を用いた洗浄方法が一般に行われている。この洗浄により、カンバス表面から飛散・脱離する汚れがある一方で、カンバスを貫通して裏面に抜け出し、裏面で留まったりカンバスと接するロール類に不均一に固着する汚れがあり、ロール錆と併せてカンバス裏面の摩耗の原因になっている。また、カンバス表面の付着物を掻き落とすために、金属製のスパイラル線で編成したネット、あるいはスクレーパーが設置される場合もある。この場合には、それらとの接触によりカンバス表面の摩耗が一層進展する。したがって、カンバス接紙面、反接紙面の耐摩耗性の向上ならびにカンバスの強力や形態保性の維持も、前記防汚性や洗浄回復性の向上と併せて必要になっている。
【0011】
さらに、抄紙機の高生産性や高抄速化に伴い、オープンメッシュで通気度が非常に高いカンバスを使用する抄紙においては、抄紙機が上下2枚のカンバスを使用するコンベンショナルランの場合、図9に示す湿紙54が上部シリンダー51から下部シリンダー52に移行するときのオープンドロー(フリーラン)53で、湿紙54がカンバス55・55’の随行無しで単独走行する(この様な箇所は多数存在する)部分がある。抄速を上げると、カンバスの走行に伴って運ばれる空気の流れ(随伴流)56が多くなり、オープンドローでカンバス55を抜けた随伴流(図中に太線矢印で示す)に煽られて湿紙54がフラッタリング(はためく=バタつき)を起こすと、断紙を多発させる恐れがある。また、抄紙機がシングルランの場合は、図10に示すシリンダー61にカンバス62が接し、その上を湿紙63が位置する箇所で、カンバス62による随伴流65の遮断が不充分になって、バルーニング(湿紙がカンバスから部分的に離れて膨らむ状態)64が生じ易くなり、通紙が正常にできなくなる恐れがある。
【0012】
以上述べたように、近年の抄紙環境から、汚れ物質の付着・滞留、経糸の層間剥離によるささくれ発生、接紙面・反接紙面の摩耗損傷、フラッタリング・バルーニングの発生に対しては、前記した特許文献の出願当時より、一層高い対策機能を兼ね備えたカンバスが要求されるようになってきており、この要求に応えることが急務になっている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記課題を解決するために、まず、2種類のカンバスの汚れ物質付着状況について調査をした。その結果、使用済みカンバスの汚れ物質は、特に走行方向糸つまり経糸の接紙面側に多く付着し、堆積してメッシュ開口部を目詰まりさせていることが解った。以下、調査の具体的な内容を説明する。
【0014】
図11は、従来型の平織オープンメッシュカンバス(以下、従来品)の汚れ付着状況を示す顕微鏡写真(a図)及びこの写真の模式図(b図)である。一方、図12は、緯糸が接紙面側でロングクリンプする組織のオープンメッシュカンバス(以下、試作品)の顕微鏡写真(a図)及びこの写真の模式図(b図)である。何れの写真及び図も、上下方向が走行方向(経糸方向)である。これらの写真及び図から、試作品は、従来品と比べて汚れ物質(模式図中に散点で示す)の付着が少なく、特に、経糸側の汚れ物質の付着が少ないことが解る。なお、この試作品は、本発明に係る開発研究の初期段階のものであって、緯糸が接紙面側でロングクリンプする組織であるが、本発明のカンバスの構成を示すものではない。また、ロングクリンプとは、交絡する相手方の糸を複数本越えて長浮きした部分のことを言う。
【0015】
また、これらの使用済みカンバスを高圧水洗浄すると、従来品は、経糸側に付着した汚れ物質が残存しているが、緯糸側に付着した汚れ物質は大半除去できていることが解った。一方、試作品は、全体として十分な洗浄効果が認められた。
【0016】
上述のことから、汚れ物質の付着・滞留は、次のように進行すると考えられる。接紙面側に経糸が浮いた組織では、汚れ物質は経糸の幅方向両サイドに付着し、これが滞留成長して、少し凹んだ経糸と緯糸の交絡部にまで及ぶ。また、接紙面側で経糸のクリンプ頂部と緯糸のクリンプ頂部の高低差がほとんどない組織の場合は、前述の経糸が浮いた組織の場合に加えて、緯糸の走行方向前側にも汚れ物質が付着滞留する。そして、経糸の両サイドの滞留物と合体し、やがてはメッシュ開口部を覆うまでに成長する。
【0017】
このように考えると、汚れ物質の滞留量が多い経糸と、経糸と緯糸の交絡部を接紙面から沈めるようにし、緯糸をロングクリンプさせ、かつ経糸よりも浮き上がらせば、汚れ物質は、緯糸のロングクリンプ部の走行方向前側に付着し、経糸や、経糸と緯糸の交絡部への付着は少なくなるので、メッシュ開口部の目詰まり進行を遅らせることが期待できる。また、早期洗浄をすれば、緯糸の片側サイド(走行方向前側)に片持のような状態で付着した汚れ物質は除去しやすいと考えられる。
【0018】
このことから、本件の主課題となる防汚対策としては、経糸密度をさらに減少させるか、経糸を複数本ずつまとめて経糸の無い部分を広く設計する対処法が考えられる。加えて、メッシュ開口部において、接紙面側に緯糸をロングクリンプさせ、かつ、その頂部が経糸のクリンプ頂部よりも湿紙側により張り出させる構成とすれば、防汚効果が大きくなると推察される。この張り出し緯糸と経糸の頂部の位置の差は、微小でもあれば一定の効果が期待できるが、出来るだけ大きな差とすることが好ましい。
【0019】
一方、経糸の層間剥離のささくれ損傷は、カンバス周回走行時の屈曲疲労によるもので、従来から用いられてきた円形断面モノフィラメントの断面直径、より詳しくはカンバス厚さ方向の寸法が大きいことが起因している。改善方法としては、経糸の断面直径を小さくし、柔軟性を増して屈曲耐性を向上させればよいが、そうすると、織密度の低いオープンメッシュカンバスでは強度・剛性不足となることは明らかである。そこで、経糸は、長方形断面糸や楕円断面糸などの扁平糸に切り替えて、同等断面積を維持すべきとの判断に至った。経糸を扁平糸にすれば、緯糸との交絡接触部が増してカンバスの構造がより安定するが、反面、メッシュ開口部の開口面積が縮小してしまうことになる。そこで、複数本の経糸を近接させた経糸群を多数形成すると共に、前記経糸群とこれに隣接する経糸とを離隔させて多数の離隔部を形成とすれば、同じ本数の経糸を均等に配列する場合と比べて、大きなメッシュ開口部を確保することができる。尚、カンバスに極少数(例えば1箇所)の経糸群や離隔部を形成しても、大きなメッシュ開口部は十分に形成されないため、経糸群や離隔部は多数形成する必要があり、例えば全経糸の半数以上の経糸で経糸群を構成すればよい。
【0020】
つぎに、カンバス反接紙面側の摩耗に対しては、カンバス裏面から接するロール類との走行接触面積をより広くし、かつ、経糸の柔軟性を増すことで、接触単位面積当たりの摩擦力や、ロール類とのスリップを減じる方策を講じることとした。具体的には、経糸を扁平糸とし、反接紙面側でロングクリンプする組織の採用である。
【0021】
つぎに、フラッタリングやバルーニング対策について述べる。緯単層組織はカンバスの厚さが比較的薄いので、本来的にその現象発生は少ない。しかし、本発明のカンバスの構造は、接紙面側で緯糸を長く露出させ、かつ張り出させた形態になるので、走行中に緯糸が空気抵抗を受けやすく、乱気流を発生させて随伴流が多くなると予測される。
【0022】
この問題に対しては、上述の経糸群に隣接する離隔部が、反接紙面側走行方向のほぼ全長に、経糸群間による溝状空間を形成するという副次的構成によってそのリスクを減じることができる。この溝状空間は、図9のカンバスロール57・57’とカンバス55・55’の界面に気流を逃がし得る空間となり、随伴流の一部58は、この空間を通ってドライヤーポケット59側に吹き出さずに流出するのでフラッタリングが抑制できる。また、シングルラン方式でも、図10のドライヤーシリンダー61に直接カンバス62が接し、そのカンバス62の外側に湿紙63が配置される場合では、空気流65の一部が、前記溝状空間を通って流出するので、バルーニングを抑えることも可能である。
【0023】
一般にモノフィラメント製カンバスの接紙面側は、経糸がロングクリンプする平滑面を持つ組織、もしくはせいぜい平織組織が採用されることがほとんどである。ところが、本発明者は、接紙面側を円形断面モノフィラメントの緯糸の方をロングクリンプさせて張り出させつつ、経糸は沈ませる表面状態とし、逆に、反接紙面側は経糸の扁平断面モノフィラメントをロングクリンプさせて平滑面を持つ組織とする奇抜発想を想起している。また、その試作・試験によって発現する作用効果が本願課題を解決することを併せて確認している。
【0024】
なお、接紙面側摩耗に対しては、摩耗を直接受ける浮き出し緯糸の断面直径を0.7mmφ以上の太いモノフィラメントにすることで対応可能と確認している。
【0025】
すなわち、本発明のカンバスは、合成繊維の扁平断面モノフィラメントの経糸と、合成繊維の円形断面モノフィラメントの緯糸を用い、緯単層、かつ緯糸が経糸1本と交絡後にロングクリンプする組織に織成し、複数本の経糸を近接させた経糸群を多数形成すると共に、前記経糸群とこれに隣接する経糸とを離隔させて多数の離隔部を形成した抄紙用ドライヤーカンバスにおいて、前記経糸の充填率を40〜70%の範囲内とし、接紙面側では、前記緯糸のロングクリンプの頂部を経糸のクリンプ頂部より湿紙側に位置させ、反接紙面側では、前記経糸のロングクリンプの頂部を緯糸のクリンプ頂部より湿紙から遠く位置させるとともに、経糸間の前記離隔部と、隣接緯糸間の隙間とで構成するメッシュ開口部の緯糸方向寸法を経糸方向寸法より長くしたことを特徴とする(請求項1)。
【0026】
上記において、「近接」とは、接紙面側上方から見て、離隔させて配した経糸と比べて、経糸間の距離が狭く配置されていることを意味し、接触状態も含むものとする。「経糸の充填率」とは、単位長さ(例えば1インチ)内の経糸の本数にその経糸のカンバス幅方向の外径寸法を乗じた数値と、同単位長さとの比(100分率)とする。
【0027】
また、前記緯単層の織組織が1/3綾織であって、前記経糸群が経糸2本で形成されていることを特徴とする(請求項2)。
【0028】
すなわち、経糸が接紙面側で緯糸1本の上を通過後、反接紙面側に回り、反接紙面側で緯糸3本の外方(カンバス厚さ中央部に対して外側)を長浮きした後、接紙面側に戻る組織を1リピートとし、順次隣り合う経糸が、その組織をずらせて配置する組織で、正綾織の他、破れ綾織を含むものである。この規定組織において、経糸が2本ずつ近接した状態の織物構造を指すものである。
【0029】
また、前記接紙面側での緯糸のロングクリンプ頂部と経糸のクリンプ頂部の高低差が、0.07〜0.25mmの範囲内であって、前記反接紙面側での経糸のロングクリンプ頂部と緯糸のクリンプ頂部の高低差が、0.1〜0.25mmの範囲内であることを特徴とする(請求項3)。尚、「高低差」とは、カンバス厚さ方向における距離のことを言う。
【0030】
また、前記メッシュ開口部の開口寸法が、経糸方向×緯糸方向で0.5〜0.8mm×1.2〜2.5mmの範囲内であることを特徴とする(請求項4)。
【0031】
また、前記経糸の断面形状が長方形であって、その短辺×長辺の寸法が0.4〜0.7mm×0.7〜1.1mmであり、前記緯糸の断面直径が、0.7〜1.2mmφであることを特徴とする(請求項5)。ただし、経糸の長方形断面形状は紡糸上、各頂点部が僅かに丸みを持つ場合の形状を含むものとする。
【0032】
また、前記経糸の断面形状が略楕円形であって、その短径×長径の寸法が0.4〜0.7mm×0.7〜1.1mmであり、前記緯糸の断面直径が、0.7〜1.2mmφであることを特徴とする(請求項6)。ただし、断面形状は紡糸上、正楕円が若干膨れるなど変形した場合の形状を含むものとする。
【0033】
また、前記ドライヤーカンバスの反接紙面側において、前記経糸間に形成された離隔部で、走行方向に延びた溝状空間を形成していることを特徴とする(請求項7)。
【0034】
なお、溝状空間とは、経糸のロングクリンプ部と、経糸間の離隔部を横切る緯糸とで形成されるカンバス緯糸方向断面における凹部が、カンバスの走行方向に伸びている帯状部を指し、経糸間の離隔部の数だけ形成される。
【発明の効果】
【0035】
本発明のカンバスは、緯単層織のオープンメッシュで、メッシュ開口を大きく取り、接紙面側で緯糸がロングクリンプして、経糸より浮き出ているので、汚れ物質が経糸に付着しにくく、緯糸に付着した汚れ物質は除去しやすい。また、経糸は扁平断面のモノフィラメントであるので、走行方向に柔軟性があり、走行時の屈曲疲労によるささくれ損傷が発生しにくい。加えてこの経糸は、反接紙面側でロングクリンプして、走行接触面積を大きく取るので、カンバス反接紙面側の単位面積あたりの摩擦力が少なくなる。さらに、本カンバスは単層で薄く、かつ、反接紙面側において、走行方向のほぼ全長に伸びる多数の溝状空間が形成されているため、随伴流の逃げる流路となって、フラッタリングやバルーニングの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態にかかるカンバスの接紙面側の平面図である。
【図2】図1のカンバスの緯糸方向断面図である。
【図3】図1のカンバスの経糸方向断面図である。
【図4】図1のカンバスの反接紙面側の平面図である。
【図5】(a)は、2本の扁平断面経糸上に形成された緯糸のクリンプ頂部付近を示す緯糸方向断面図、(b)は2本の円形断面の経糸上に形成された緯糸のクリンプ頂部付近を示す緯糸方向断面図、(c)は1本の円形断面の経糸上に形成された緯糸のクリンプ頂部付近を示す緯糸方向断面図である。
【図6】実施例に係るカンバスの諸元を示す表である。
【図7】比較例に係るカンバスの諸元を示す表である。
【図8】経糸にささくれ損傷が生じる様子を示す図である。
【図9】コンベンショナルラン方式の抄紙機による抄紙工程(乾燥工程)を示す図である。
【図10】シングルラン方式の抄紙機による抄紙工程(乾燥工程)を示す図である。
【図11】(a)は、平織オープンメッシュカンバスの汚れ付着状況を示す顕微鏡写真、(b)は同模式図である。
【図12】(a)は、緯糸が接紙面側でロングクリンプする組織のオープンメッシュカンバスの汚れ付着状況を示す顕微鏡写真、(b)は同模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明のカンバスの基本構成について、構成ポイントを整理すると、
(1)オープンメッシュとして、メッシュ開口部を十分大きく取ること。
(2)経糸には、太めの扁平モノフィラメントを用いること。
(3)オープンメッシュのメッシュ開口部の形状を、緯糸側を長辺とする長方形とすること。
(4)接紙面側は緯糸をロングクリンプさせ、かつその頂部を経糸より浮き上げること。
(5)反接紙面側は、経糸をロングクリンプさせ、かつその頂部を緯糸より外方にして、走行面との接触面積を大きくすること。
(6)上記構成として、反接紙面側に全長に亘る溝状空間を確保すること。
である。上記について、具体的に説明する。
【0038】
図1〜4は、本発明のカンバスの一例を示す図であって、図1はカンバスの接紙面の一部を示す概念図、図2は緯糸方向断面の一部を示す概念図、図3は経糸方向断面の一部を示す概念図、図4は反接紙面の一部を示す概念図である。オープンメッシュカンバスの織組織としては、薄手が基本のため緯単層織を採用し、メッシュ開口部を大きく取るために、複数本の経糸を近接させた経糸群を多数形成すると共に、前記経糸群とこれに隣接する経糸とを離隔させて多数の離隔部を形成した。本実施形態では、全ての経糸11を複数本ずつ近接させて(図示例では2本ずつ接触させて)経糸群10を多数構成し、その経糸群10間を広げて離隔部13を多数形成している。これにより、経糸11の織密度を不当に減少させずして、大きいメッシュ開口部20を確保することができる。大きいメッシュ開口部20を得るためには、前記した「近接」距離は、接触状態の0mmが最も好ましいが、実製造上は少し離れる場合があり、好ましくは0.5mm以下、より好ましくは0.2mm以下を目安にすればよい。緯糸12の織密度は、緯糸12の繊度やカンバスの幅に係る必要な剛性を勘案して決定すればよいが、一般にオープンメッシュカンバスとして設計される、10〜20本/インチ程度の粗密度とする。大きいメッシュ開口部20とすることは、後述する接紙面側の緯糸12を十分ロングクリンプさせ、その頂部14を湿紙側(図2では上側、図3では左側)へ浮き出させる点、さらには、汚れ物質を洗浄除去しやすくする点で重要である。ただし、カンバスの幅方向の剛性は、走行しわが発生しないように確保しておく必要があるので、緯糸密度は、必要以上に粗密度にならないように注意する必要がある。
【0039】
尚、図示例では、経糸群10の経糸11同士を接触させている場合を示しているが、これに限らず、離隔部13よりもはるかに幅の小さい隙間を介して経糸群10を構成してもよい。また、図示例では2本の経糸11で経糸群10を構成しているが、これに限らず、3本以上の経糸で経糸群10を構成してもよい。さらに、図示例では経糸群10間を広げて離隔部13を形成しているが、経糸群10の間に1本又は複数本の経糸を配し、この経糸と経糸群10との間に離隔部13を形成してもよい。
【0040】
以上より、本発明では、メッシュ開口部20の形状は、緯糸方向を長辺とする長方形とすることが好ましく、また、その方が緯糸密度に係る剛性を考慮した織物設計もしやすくなる。具体的には、短長辺比率で1:2〜3程度のメッシュ開口部20とすることが現実的な目安で好ましく、寸法としては、経糸方向×緯糸方向で0.5〜0.8mm×1.2〜2.5mm程度の寸法、より好ましくは0.55〜0.75mm×1.4〜2.1mmの範囲である。
【0041】
経糸11には、扁平断面のモノフィラメントを用いる(図2参照)。扁平断面とはその断面において、カンバス厚さ方向の寸法(短辺)がカンバス幅方向の寸法(長辺)より小さい断面形状を指す。その中では、長方形、楕円形の断面形状が好ましい。具体寸法としては、その形状の短辺×長辺の寸法が0.4〜0.7mm×0.7〜1.1mm程度が好ましく、短辺:長辺の比が1:1.3〜1:1.8程度のバランスがよい。短辺寸法が小さすぎると摩損耐性が不十分であり、大きすぎると屈曲柔軟性が失われる。また、長辺寸法はカンバスへの要求通気度を考慮して決定すれば良いが、オープンメッシュカンバスとして構成させることから、扁平度が高すぎるとメッシュ開口部20の大きさを十分確保するのに適さない。
【0042】
緯糸12には、円形断面のモノフィラメントを用いる(図3参照)。緯糸12の太さとしては、その断面直径が0.7〜1.2mmφの範囲が好ましく、より好ましくは、0.9〜1.2mmφの範囲である。カンバスに剛性を持たせ、スパイラルネットやスクレーパーとの接触摩耗に対応させるために、出来るだけ太いモノフィラメントを選定する。
【0043】
次に、経糸11の充填率について説明する。カンバスの空隙率の観点からは、高通気度を維持するために、緯糸分を除いて少なくともカンバス平面の30%以上の空隙確保が必要と判断している。結果として、経糸11の充填率は40〜70%の範囲を確保すべきで、より好ましくは、40〜60%の範囲である。緯糸12のロングクリンプ長は可能な限り長くとる方がよいが、長すぎると経糸11による支持スパンが伸びて、織物としての形態保持が危うくなる。また、経糸11の充填率が70%を超えるようになると、高通気度が維持できなくなり、また、緯糸12のロングクリンプ頂部14の張り出しが不十分になる。
【0044】
次に、緯糸12をロングクリンプさせるためには、カンバスの織組織を緯単層で1/2〜1/4の綾織を採用する。特に好ましくは、十分なロングクリンプ長を確保できる点で、1/3の綾織である。経糸11・緯糸12に比較的太いモノフィラメントを用いる場合、1/2のロングクリンプでは緯糸12のロングクリンプ長と湿紙側への浮き出し高さが不足する場合があり、注意が必要である。単層で1/4以上のロングクリンプの組織とすれば、経糸11と緯糸12の交絡数が少なくなり、特に1/5以上ではカンバスの形態保持が事実上難しい。
【0045】
接紙面側において、緯糸12のロングクリンプの頂部14を経糸11のクリンプ頂部15より湿紙側に位置させる具体手段としては、上記織組織を採用した上で、製織時や製織後のヒートセット加工時に経糸方向の張力を高める方法があるが、この方法では十分ではない場合がある。本発明では、この構成をより確実に得るために、経糸11に扁平断面モノフィラメントを用い、さらにこれを複数本ずつ近接させて配列させている。以下にその理由を説明する。
【0046】
例えば図5(c)に示すように、1本の円形断面モノフィラメントの経糸11’’に緯糸12’’をクリンプさせた場合、緯糸12’’のクリンプ頂部14’’は、経糸11’’から緯糸12’’の厚さ分だけ上方(湿紙側)に位置する。これに対し、図5(b)に示すように、2本の円形断面モノフィラメントの経糸11’を近接させて経糸群10’を構成し、これらの上方で緯糸12’をロングクリンプさせた場合、緯糸12’は経糸群10’の緯糸方向に離隔した2点16’で支持され、経糸群10’の中央部にロングクリンプ頂部14’が形成される。このとき、緯糸12’は自身の剛性により湾曲するため、図5(c)に示す場合と比べて、緯糸12’のロングクリンプ頂部14’を湿紙側に持ち上げることができる。さらに、本実施形態のカンバスの構成を示す図5(a)のように、経糸11を扁平断面(矩形断面)のモノフィラメントを用い、これを複数本近接させて経糸群10を構成すれば、緯糸12が経糸群10のカンバス幅方向両端のコーナー部16付近で支持されることになる。これにより、緯糸12のロングクリンプ頂部14の支持スパンSを、円形断面モノフィラメント経糸11’を用いた場合における緯糸12’のロングクリンプ頂部14’の支持スパンS’(図5(b)参照)よりも長くとれるので、緯糸12のロングクリンプ頂部14をより高く(より湿紙側に)持ち上げることができる。
【0047】
抄紙工程においては、汚れ物質の発生事態は避けられないので、本発明構成は、これをカンバスに付着しにくく、また、除去されやすくすることを狙いとしている。この狙いの達成のためには、従来カンバスにおいて経糸に沿って付着した汚れ物質を減じ、可能な限り緯糸側に多く付着させることがポイントとなる。この作用を生み出す構成として、特に、接紙面側の緯糸12の張り出し形態は重要である。この緯糸12の張り出し程度としては、接紙面側での緯糸12のロングクリンプ頂部14と経糸11のクリンプ頂部15の高低差a(図2及び図3参照)が、0.07mm以上、より好ましくは0.08mm以上である。0.07mmの差があれば、経糸11は、湿紙やスクレーパーなどとほとんど接触することが無くなるが、これを下回ると、汚れ物質の付着度合いが経糸沿い・緯糸沿いで差が無くなる。前記高低差の有効上限は、上記作用の適否上では限界を設けることはないが、実製作上は0.25mm以上の高低差を設けることは現実的に難しい。
【0048】
反接紙面側では、接紙面側とは逆に、経糸11をロングクリンプさせてその頂部17が緯糸12のクリンプ頂部18より湿紙に対して遠く(すなわち外方に)位置させる。この経糸ロングクリンプの形態と経糸断面の扁平形態により、カンバスの反接紙面側で、走行摩耗に対して比較的広い接触面積が確保でき、かつ走行方向の屈曲柔軟性も兼ね備えるので、摩損やささくれ損傷を遅らせる効果が有効になる。
【0049】
次に、フラッタリングやバルーニングの抑制効果について述べる。随伴流のドライヤーポケット59(図9参照)への過度の流入や、吹き出しによる乱気流の発生を抑えるためには、この不具合を発生させる過剰気流を逃がし得る前述した反接紙面側の溝状空間を十分確保して、その抑制効果を高める。すなわち、図4に示すように、カンバスの反接紙面側では、経糸11間の離隔部13と、離隔部13を横切る緯糸12とで、経糸方向に延びる溝状空間19が形成される。尚、経糸11は反接紙面側で緯糸12と交絡するために、緯糸12のクリンプ頂部18部分で経糸11がカンバス内部(接紙面側)に沈み込むが、経糸11を複数本近接させて経糸群10を構成することにより、経糸群10を構成する何れかの経糸11がロングクリンプを成してカンバス外部(接紙面から離れる側)に突出しているため、溝状空間19は経糸方向にほぼ連続的に形成される。特に、図示例では、経糸11がカンバス内部に沈み込む緯糸12のクリンプ頂部18に隣接して、経糸11のロングクリンプ頂部17が配されるため、溝状空間19を経糸方向全長にわたって途切れることなく形成することができる。
【0050】
溝状空間19の容積を十分に確保するためには、溝状空間19の溝幅(すなわち経糸群10間の離隔部13の幅、メッシュ開口部20の長辺)を1.2〜2.5mm程度の範囲に設定するのが好ましい。また、溝状空間19の深さは、より深い方が空間を稼げるので好ましく、反接紙面側における経糸11のロングクリンプ頂部17と緯糸12のクリンプ頂部18の高低差b(図2及び図3参照)を0.1〜0.25mm、より好ましくは、0.15〜0.25mm程度を確保する。この頂部の高低差bは数値的には小さいが、溝状空間19の最も浅い部分を指す寸法であって、緯糸12が接紙面側にロングクリンプして位置するので、その下方で形成される溝状空間19の容積は十分稼ぐことができる。ただし、反接紙面側における経糸と緯糸の頂部の高低差が0.1mmより小さいと、溝状空間19の容積が十分とは言えない。
【実施例】
【0051】
本発明に係るカンバスの具体例を、実施例1及び実施例2として示す(図6参照)。また、参考として、本発明に含まれないカンバスの具体例を、比較例1及び比較例2として示す(図7参照)。以下、各実施例及び比較例について詳しく説明する。
【0052】
[実施例1]
緯単層で製織仕込み時に、経糸を変則的に筬入れすることにより、2本ずつ近接させて群とし、さらに群間が広がる配列とした。また、経糸が反接紙面側で緯糸に対し3本分、外方に長浮きする1/3破れ綾の組織とした。経糸には、短辺×長辺が、0.58mm×0.88mmの長方形断面の扁平モノフィラメントを用い、緯糸には、直径が1mmφの円形断面モノフィラメントを用いた。材質はいずれもポリエステルである。製織時と製織後のヒートセット加工において、経糸方向張力を少し高めて製作したが、当業者常識範囲内の張力である。仕上がった原反は、織密度が経×緯で、15×15.5(本/インチ)、メッシュ開口部の形状は見かけ長方形で、走行方向×幅方向で、0.64×1.58mmの寸法であった。経糸と緯糸の浮き状態は、接紙面側で、緯糸のロングクリンプ頂部が経糸のクリンプ頂部より0.13mm浮いた状態であり、反接紙面側で経糸のロングクリンプ頂部が緯糸のクリンプ頂部より0.20mm浮いた状態であった。この測定は、表面形状を高精度に測定可能な3次元レーザー測定器により行い、測定サンプル2cm2の経糸と緯糸の全交絡点付近について測定した平均値である。
【0053】
[実施例2]
実施例1と同一の組織形態および経糸配列とし、経糸には、短辺×長辺が、0.63mm×0.78mmの長方形断面の扁平モノフィラメントを用い、緯糸には、直径が1.1mmφの円形断面モノフィラメントを用いた。材質はいずれもポリエステルである。製織時と製織後のヒートセット加工の方法は実施例1に準じた。仕上がった原反は、織密度が経×緯で、15×14.5(本/インチ)、メッシュ開口部は走行方向×幅方向で、0.65×1.77mmの寸法、経糸と緯糸の浮き状態は、接紙面側で、緯糸のロングクリンプ頂部が経糸のクリンプ頂部より0.15mm浮いた状態であり、反接紙面側で経糸のロングクリンプ頂部が緯糸のクリンプ頂部より0.22mm浮いた状態であった。
【0054】
[比較例1]
前記特許文献1に近い構成のカンバスである。単層平織で、経糸には、直径が0.8mmφの円形断面モノフィラメントを用い、緯糸には、直径が0.9mmφの円形断面モノフィラメントを用いた。材質はいずれもポリエステルである。製織時と製織後のヒートセット加工の方法は実施例1に準じ、従来型オープンメッシュカンバスを製作した。仕上がった原反は、織密度が経×緯で、12.5×12.5(本/インチ)、メッシュ開口部は走行方向×幅方向で、1.13×1.23mmの寸法であった。経糸と緯糸の浮き状態は、接紙面側と反接紙面側ともに、緯糸のクリンプ頂部の方が経糸のクリンプ頂部より外方に浮いた状態ではあるが、その高低差は0.05mm程度と小さいものであった。
【0055】
[比較例2]
前記特許文献2に近い構成のカンバスである。単層平織で、緯糸に太さにおいて2種の緯糸を1本ずつ交互に配列する、比較例1の改良型カンバスを製作した。経糸には、直径が0.8mmφの円形断面モノフィラメントを用い、緯糸には、直径が0.9mmφの円形断面モノフィラメントと、直径が0.6mmφの円形断面モノフィラメントとを用い、1本ずつ交互に配列した。材質はいずれもポリエステルである。製織、ヒートセット要領は、実施例1と同等とした。仕上がった原反は、織密度が経×緯で、12.0×12.5(本/インチ)、メッシュ開口部は走行方向×幅方向で、1.27×1.32mmの寸法であった。経糸と緯糸の浮き状態は、接紙面側と反接紙面側ともに、クリンプ頂部の高さに差が無く、面一の状態であった。なお、このクリンプ頂部の高低差は、経糸と太い方の緯糸との関係についてのみ測定した。
【符号の説明】
【0056】
10 経糸群
11 経糸
12 緯糸
13 離隔部
14 緯糸のロングクリンプ頂部
15 経糸のクリンプ頂部
17 経糸のロングクリンプ頂部
18 緯糸のクリンプ頂部
19 溝状空間
20 メッシュ開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成繊維の扁平断面モノフィラメントの経糸と、合成繊維の円形断面モノフィラメントの緯糸を用い、緯単層、かつ緯糸が経糸1本と交絡後にロングクリンプする組織に織成し、複数本の経糸を近接させた経糸群を多数形成すると共に、前記経糸群とこれに隣接する経糸とを離隔させて多数の離隔部を形成した抄紙用ドライヤーカンバスにおいて、
前記経糸の充填率を40〜70%の範囲内とし、接紙面側では、前記緯糸のロングクリンプの頂部を前記経糸のクリンプ頂部より湿紙側に位置させ、反接紙面側では、前記経糸のロングクリンプの頂部を前記緯糸のクリンプ頂部より湿紙から遠く位置させるとともに、経糸間の前記離隔部と、隣接緯糸間の隙間とで構成するメッシュ開口部の緯糸方向寸法を経糸方向寸法より長くしたことを特徴とする抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項2】
前記緯単層の織組織が1/3綾織であって、前記経糸群が経糸2本で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項3】
前記接紙面側での緯糸のロングクリンプ頂部と経糸のクリンプ頂部の高低差が、0.07〜0.25mmの範囲内であって、前記反接紙面側での経糸のロングクリンプ頂部と緯糸のクリンプ頂部の高低差が、0.1〜0.25mmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項4】
前記メッシュ開口部の開口寸法が、経糸方向×緯糸方向で0.5〜0.8mm×1.2〜2.5mmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項5】
前記経糸の断面形状が長方形であって、その短辺×長辺の寸法が0.4〜0.7mm×0.7〜1.1mmであり、前記緯糸の断面直径が、0.7〜1.2mmφであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項6】
前記経糸の断面形状が楕円形であって、その短径×長径の寸法が0.4〜0.7mm×0.7〜1.1mmであり、前記緯糸の断面直径が、0.7〜1.2mmφであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項7】
前記ドライヤーカンバスの反接紙面側において、前記経糸間に形成された離隔部で、走行方向に延びた溝状空間を形成していることを特徴とする請求項5または6に記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項1】
合成繊維の扁平断面モノフィラメントの経糸と、合成繊維の円形断面モノフィラメントの緯糸を用い、緯単層、かつ緯糸が経糸1本と交絡後にロングクリンプする組織に織成し、複数本の経糸を近接させた経糸群を多数形成すると共に、前記経糸群とこれに隣接する経糸とを離隔させて多数の離隔部を形成した抄紙用ドライヤーカンバスにおいて、
前記経糸の充填率を40〜70%の範囲内とし、接紙面側では、前記緯糸のロングクリンプの頂部を前記経糸のクリンプ頂部より湿紙側に位置させ、反接紙面側では、前記経糸のロングクリンプの頂部を前記緯糸のクリンプ頂部より湿紙から遠く位置させるとともに、経糸間の前記離隔部と、隣接緯糸間の隙間とで構成するメッシュ開口部の緯糸方向寸法を経糸方向寸法より長くしたことを特徴とする抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項2】
前記緯単層の織組織が1/3綾織であって、前記経糸群が経糸2本で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項3】
前記接紙面側での緯糸のロングクリンプ頂部と経糸のクリンプ頂部の高低差が、0.07〜0.25mmの範囲内であって、前記反接紙面側での経糸のロングクリンプ頂部と緯糸のクリンプ頂部の高低差が、0.1〜0.25mmの範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項4】
前記メッシュ開口部の開口寸法が、経糸方向×緯糸方向で0.5〜0.8mm×1.2〜2.5mmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項5】
前記経糸の断面形状が長方形であって、その短辺×長辺の寸法が0.4〜0.7mm×0.7〜1.1mmであり、前記緯糸の断面直径が、0.7〜1.2mmφであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項6】
前記経糸の断面形状が楕円形であって、その短径×長径の寸法が0.4〜0.7mm×0.7〜1.1mmであり、前記緯糸の断面直径が、0.7〜1.2mmφであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項7】
前記ドライヤーカンバスの反接紙面側において、前記経糸間に形成された離隔部で、走行方向に延びた溝状空間を形成していることを特徴とする請求項5または6に記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−12362(P2011−12362A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157788(P2009−157788)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000238234)シキボウ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000238234)シキボウ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】
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