説明

把持器、持針器及びアタッチメント

【課題】狭小空間等において、効率的な把持が可能な把持器、安全で効率的な運針、縫合が可能な持針器、及びこれら把持器、持針器を構成するためのアタッチメントを提供すること。
【解決手段】支持ピン10Cを支点として開閉可能とされ、開閉により形成される対向面12L、12Rが前記保持部12を構成する第1のアーム10Lと第2のアーム10Rとを備え、前記第1のアーム10L及び第2のアーム10Rの保持部12には、一対の挟持部材16L、16Rが支持点16Cを介して前記保持部材12に対してそれぞれ回動可能に連結され、前記それぞれの挟持部材16L、16Rは前記支持点16Cからオフセットされた位置に前記回動操作部17が接続され、前記接続された位置に変位を付与することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、狭小空間等において、効率的な把持操作が可能な把持器、効率的な運針、縫合が可能な持針器及びこれら把持器、持針器を構成するためのアタッチメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、外科手術においては、狭小空間をはじめとする種々の環境条件で、生体の把持、穿孔、縫合等が必要とされ、そのために、鉗子、持針器等をはじめとする把持器が用いられている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。例えば、持針器を用いて縫合手技を行なう場合、縫合針を持針器の長手方向と直交する方向(以下、横方向という場合がある)に運針することが一般的である。
【0003】
一方、近年、外科手術の分野では、鏡視下手術を必要とする低侵襲手術が増大しており、低侵襲手術では、狭小視野における効率的な把持操作や効率的な縫合手技が必要とされている。このような狭小視野が対象とする狭小空間において、効率的な低侵襲手術を行なうためには、例えば、生体の把持や穿孔等の手技を正確に行ったり、縫合針を持針器の長手方向(以下、垂直接線方向という場合がある)に運針する等、術野の状況に応じた適切な手技をする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-038492号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8C%81%E9%87%9D%E5%99%A8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、挟小空間における対象物の姿勢変更、持替え等、把持器による柔軟な把持や、持針器による垂直接線方向の運針は容易ではなく、挟小空間における対象物の柔軟な把持操作や、垂直接線方向、好適には縫合部位の状況に応じて横方向と交差する方向に運針が可能な技術に対する強い要請がある。
【0007】
本発明は、かかる事情を考慮してなされたものであり、狭小空間等において、効率的な把持が可能な把持器、効率的な運針、縫合が可能な持針器、及びこれら把持器、持針器を構成するためのアタッチメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、対象物を把持する把持器であって、操作部と、保持部とを有し、前記操作部を操作することで前記保持部が開閉可能、かつ前記保持部が閉じて対象物を保持する把持器本体と、前記保持部に保持された対象物の姿勢を制御する姿勢制御部とを備え、前記姿勢制御部は、前記保持部に設けられ、前記対象物を挟持するとともに前記対象物を挟持した状態で保持部に対する姿勢が変更可能とされる挟持部と、前記挟持部と接続され、前記挟持部の姿勢を操作する姿勢操作部とを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、操作部と、保持部とを有し、前記操作部を操作することで前記保持部が開閉可能、かつ前記保持部が閉じて対象物を保持する把持器本体に用いるアタッチメントであって、前記保持部に、保持された対象物の姿勢を制御する姿勢制御部を備え、前記姿勢制御部は、前記保持部に設けられ、前記対象物を挟持するとともに前記対象物を挟持した状態で保持部に対する姿勢が変更可能とされる挟持部と、前記挟持部と接続され、前記挟持部の姿勢を操作する姿勢操作部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る把持器、アタッチメントによれば、挟持部で挟持された対象物(持針器の場合には縫合針、以下同じ)の姿勢を姿勢操作部により変更できるので、狭小空間での対象物の姿勢変更を効率的に行なうことができる。その結果、例えば、生体の把持や穿孔等の手技を正確に行ったり、垂直接線方向をはじめとする横方向(持針器の長手方向と直交する方向)と交差する姿勢での運針を安全かつ効率的に行うことができる。
【0011】
また、本発明に係るアタッチメントによれば、鉗子タイプ、カストロヴェーホタイプ、ピンセット、腹腔手術用把持鉗子をはじめとする従来タイプの把持装置(本発明の把持器本体に相当)に付加して、容易かつ効率的に把持器を構成することができる。その結果、対象物の姿勢を容易かつ効率的に変更することができる。
また、この明細書において、対象物とは、生体(一部を含む)や組織、穿孔器具、切開器具、縫合針等を含むものとする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の把持器であって、前記挟持部は、前記保持部に回動可能に支持され、前記姿勢操作部は、前記挟持部に回動を付与する回動操作部とされていることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のアタッチメントであって、前記挟持部は、前記保持部に回動可能に支持され、前記姿勢操作部は、前記挟持部に回動を付与する回動操作部とされていることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る把持器、アタッチメントによれば、挟持部が、保持部に回動可能に支持され、回動操作部により挟持部を回動させるように構成されているので、対象物を回動させて対象物の姿勢を容易かつ効率的に変更することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の把持器であって、前記把持器本体は、連結部において連結されるとともに前記連結部を支点として開閉可能とされ、開閉により形成される対向面が前記保持部を構成する第1のアームと第2のアームとを備え、前記第1のアーム及び第2のアームの保持部には、前記挟持部を構成する一対の挟持部材が支持点を介してそれぞれ前記保持部材に対して回動可能に連結され、前記それぞれの挟持部材は前記支持点からオフセットされた位置に前記回動操作部が接続され、前記接続された位置に変位を付与することを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のアタッチメントであって、前記把持器本体が、連結部において連結されるとともに前記連結部を支点として開閉可能とされ、開閉により形成される対向面が前記保持部を構成する第1のアームと第2のアームと、を備えた構成とされる場合に、前記第1のアーム及び第2のアームのそれぞれに対応して取付け可能とされ、前記第1のアーム及び第2のアームに対して支持点により回動可能とされる一対の挟持部材と、前記それぞれの挟持部材の前記支持点からオフセットされた位置に接続され、前記接続された位置に変位を付与する回動操作部とを備えることを特徴とする。
【0017】
この発明に係る把持器、アタッチメントによれば、鉗子タイプ、カストロヴェーホタイプ等、第1のアームと第2のアームが開閉されることで保持部が構成される従来タイプの把持装置(把持器本体)に挟持部、回動操作部等が付加された簡単な構成により対象物を回動させて、対象物の姿勢を容易かつ効率的に変更することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、持針器であって、請求項1〜3のいずれか1項に記載の把持器を備え、前記対象物が縫合針であることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明は、アタッチメントであって、請求項5〜7のいずれか1項に記載の把持器本体が、前記対象物を縫合針とする持針器であることを特徴とする。
【0020】
この発明に係る持針器、アタッチメントによれば、持針器が縫合針を挟持する挟持部と姿勢操作部とを備えていて、挟持部の姿勢を変更可能とされているので、縫合針の姿勢を効率的に変更して、安全かつ効率的に運針、縫合することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る把持器、アタッチメントによれば、挟持部で挟持された対象物の姿勢を姿勢操作部により変更できるので、狭小空間での対象物の姿勢変更を効率的に行なうことができる。
また、本発明に係るアタッチメントによれば、把持器本体に付加して、容易かつ効率的に把持器を構成することができる。その結果、対象物の姿勢を容易かつ効率的に変更することができる。
また、本発明に係る持針器によれば、挟持部と回動操作部とを備えていて、挟持部の姿勢を変更可能とされているので、縫合針の姿勢を効率的に変更して、安全かつ効率的に運針、縫合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る持針器の概略構成を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係る持針器の作用を説明する図である。
【図3】第1の実施形態に係る持針器の作用を説明する図である。
【図4】第1の実施形態に係る持針器の作用を説明する図である。
【図5】第1の実施形態に係る持針器の作用を説明する図である。
【図6】第2の実施形態に係る持針器の概略構成を示す図である。
【図7】第3の実施形態に係る把持器の概略構成を示す図である。
【図8】第3の実施形態に係る把持器の使用形態の一例を示す図である。
【図9】第4の実施形態に係る持針器の概略構成を示す図である。
【図10】第5の実施形態に係る把持器及びアタッチメントの概略構成を示す図である。
【図11】第6の実施形態に係る把持器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図1から図5を参照して、この発明の第1の実施形態に係る持針器(把持器)について説明する。図1は、第1の実施形態に係る持針器の概略構成を示す図であり、符号1は持針器を、符号100は持針器1が取り扱う縫合針を示している。
【0024】
持針器1は、図1に示すように、持針器本体(把持器本体)10と、姿勢制御部15とを備え、縫合針100を保持して運針することにより、例えば、生体の傷口等の開口を縫合可能とされている。
持針器本体10は、第1のアーム10Lと、第2のアーム10Rと、支持ピン(連結部)10Cとを備え、第1のアーム10L、第2のアーム10Rは、それぞれ環状部が形成された操作部11と、保持部12と、ラチェット部13とを有しており、第1のアーム10L、第2のアーム10Rは、支持ピン10Cを介して回動可能に連結されている。
【0025】
また、持針器本体10は、操作部11を操作して、第1のアーム10L、第2のアーム10Rを回動させることにより、保持部12が支持ピン10C周りに開閉され、閉操作により第1のアーム10L側の保持面(対向面)12Lと、第2のアーム10R側の保持面(対向面)12Rとが対向可能とされている。
【0026】
また、操作部11の閉操作により保持部12を閉じると、ラチェット部13が係合してロックされて持針器1の閉状態が維持されるようになっていて、一旦、ロックされたラチェット部13は、ラチェット部13を構成するラチェット片13L、13Rを互いに離間する側に弾性変形させてロック状態を解除するようになっている。
【0027】
姿勢制御部15は、保持部12に設けられる挟持部16と、挟持部16と接続され挟持部16に回動を付与する回動操作部(姿勢操作部)17とを備えている。
挟持部16は、保持面12L、12Rと対応する挟持部材16L、16Rを備え、第1の実施形態において、挟持部材16L、16Rは、例えば、矩形形状の隣接する角部にカット(面取り)を形成した板片とされ、保持面12L、12Rに取付けるための取付孔が中央部近傍に形成され、この取付孔からオフセットした位置に回動操作孔が形成されている。
【0028】
また、挟持部材16L、16Rは、それぞれ支持部材16Cを介して保持面12L、12Rに回動自在に取付けられている。
支持部材16Cは、例えば、挟持部材16L,16Rに形成された取付孔を貫通し保持部12に形成されたネジ孔に固定されるネジにより構成され、ネジの頭部が挟持部材16L,16Rが保持面12L、12Rから外れるのを防止するようになっている。なお、必要に応じて軸受やベアリングを装着してもよい。
【0029】
回動操作部17は、ワイヤ18と、操作ボタン19とを備え、ワイヤ18は挟持部材16L、16Rの回動操作孔を通して形成された環状部と直線部とを有していて、直線部は操作ボタン19を通じて操作部11側に伸びて形成され、ワイヤ18を進退することにより挟持部材16L、16Rに回動を付与するようになっている。
【0030】
操作ボタン19は、例えば、第2のアーム10Rに配置されていて、ワイヤ18の直線部は、第2のアーム10Rに形成された外れ防止部材10Eを通過していて、第2のアーム10Rに対して矢印S1、S2方向にスライド可能とされている。
【0031】
かかる構成により、持針器1は、操作部11を矢印T1方向に操作すると、保持部12とともに挟持部16が矢印J1方向に閉じられて縫合針100を挟持し、操作部11を矢印T2方向に操作すると保持部12とともに挟持部16が矢印J2方向に開かれて縫合針100を放すように構成されている。
また、持針器1は、操作ボタン19を矢印S1方向に操作することにより挟持した縫合針100を矢印R1方向に回動し、操作ボタン19を矢印S2方向に操作することにより挟持した縫合針100を矢印R2方向に回動して姿勢を変更できるようになっている。
【0032】
次に、図2〜図5を参照して、第1の実施形態に係る持針器1の作用を説明する。
(1)まず、図2に示すように、例えば、回動操作部17の操作ボタン19を操作して挟持部材16L、16Rの長手を持針器本体10の長手方向と交差(例えば、直交)させた状態で保持部12を開口させ、その後、操作部11を操作して挟持部材16L、16Rを近接させて縫合針100を挟持する。
このとき、縫合針100は、例えば、持針器1の長手方向と直交する向きに挟持する。
(2)次に、図3に示すように、挟持部16で挟持した縫合針100を、手術等で形成した生体の開口Kから矢印V方向に挿入して、狭小空間内の傷口(縫合対象)に到達させる。
(3)次いで、図4に示すように、持針器1を矢印W方向に移動させて縫合針100の先端を生体に突刺す。縫合針100の先端を生体に突刺したら、操作ボタン19を矢印S1方向にスライドさせて、縫合針100を挟持部16とともに矢印R1方向に回動して縫合針100を運針、縫合する。
(4)次に、図5に示すように、操作部11を矢印T2方向に移動させて保持部12を開口し、縫合針100を手放すとともに縫合針100の先端側を、例えば、ピンセット110で引き出して生体を縫合する。そして、縫合針100を、持針器1の操作部11、姿勢制御部15を操作して新たに挟持し、縫合針100を次の縫合位置に移動する。
傷口の縫合が完了するまで(3)、(4)を繰り返し、傷口の縫合が完了したら持針器1を縫合針100とともに開口Kから取出す。
【0033】
なお、上記(3)においては、操作ボタン19を操作して縫合針100を回動することにより、生体内に縫合針100を通過させて、縫合する場合について説明したが、例えば、狭小空間において、操作ボタン19を操作して縫合針100の姿勢を変えた後に、持針器1を図4に示す矢印W方向に移動して生体に突刺してから運針する手順としてもよい。
【0034】
持針器1によれば、挟持部16が、保持部12に回動可能に支持され、回動操作部17により回動されるように構成されているので、縫合針100を回動させて容易かつ効率的に縫合針100の姿勢を変更することができる。
【0035】
また、持針器1によれば、簡単な構成により、縫合針100を容易かつ効率的に回動させて姿勢を変更し、安全かつ効率的に運針することができる。
【0036】
次に、図6を参照して、この発明の第2の実施形態に係る持針器(把持器)2について説明する。
持針器2が、持針器1と異なるのは、持針器2が、持針器1において用いた支持部材16Cにより支持された略矩形の挟持部材16L、16Rからなる挟持部16を備えた姿勢制御部15に代えて、支持部材26Cにより回動可能に支持される円板状の挟持部材26L、26Rからなる挟持部26を備えた姿勢制御部25を備えている点である。その他は、第1の実施形態に係る持針器1と同様であるので、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0037】
持針器2によれば、挟持部材26L、26Rが円板状に形成されているので、挟持部材26L、26Rの回動角度を変えても持針器2の外形上の変化が小さいので、任意の回動角度で縫合針100を挟持して、縫合針100を運針する際の姿勢を容易に制御することができる。
また、挟持部材26L、26Rが円板状に形成されて角部がないため、開口K周辺、開口Kから狭小空間に通じる経路、狭小空間における生体への傷つきを抑制することができる。
【0038】
次に、図7を参照して、この発明の第3の実施形態に係る把持器3について説明する。
ここで、図7(A)は、持針器3の概略構成を、図7(B)は、姿勢制御部の詳細構成の一部を示す図である。
把持器3が持針器2と異なるのは、図7(A)に示すように、把持器3が、姿勢制御部15に代えて姿勢制御部35を備え、把持する対象物が生体や切開に用いる器具等とされている点である。
【0039】
姿勢制御部35は、図7(A)、(B)に示すように、挟持部26と、回動操作部37とを備え、回動操作部37が、ウォーム(ネジ歯車)38R及び挟持部材26Lに支持部材26Cと同心に形成されたホイール(はす歯歯車)38Pからなるウォームギア機構38と、第2のアーム10Rに対して図示しない支持部材により回動可能に設けられ、連結ロッドによりウォーム38Rと連結された操作レバー39とを備えている。
かかる構成により、操作レバー39を矢印M1方向に操作して挟持部材26L、26Rを矢印R1方向に回動させ、又は操作レバー39を矢印M2方向に操作して挟持部材26L、26Rを矢印R2方向に回動させることで、対象物を回動、姿勢制御するようになっている。その他は、第1の実施形態に係る持針器1と同様であるので、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0040】
把持器3によれば、回動操作部37がウォームギア機構38を備えているので、操作レバー39の操作により、挟持部26の回動角度、ひいては対象物の姿勢を容易かつ正確に変えることができる。また、操作する指を操作レバー39から離しても操作レバー39及び挟持部26の位置が保持されるので、例えば、中間的な回動角度(例えば、把持器3の先端側をゼロ度とした場合に、ゼロを超え±90°未満の任意の向き)で保持可能とされ、指を操作レバー39から離した状態で、穿孔等の手技をすることができる。
その結果、例えば、狭小空間等において、対象物の姿勢を正確に制御することができる。
【0041】
なお、把持器3を持針器として用いてもよく、かかる場合、縫合針100を姿勢を容易かつ正確に変え、縫合針100を任意の向きに向けるとともに指を操作レバー39から離して自由にした状態で効率的な運針、縫合ができる。また、例えば、開口Kから狭小空間までの縫合針100の姿勢や、挟小空間での縫合針100の姿勢を正確に制御して、縫合手技における安全性、効率を向上することができる。
【0042】
次に、図8を参照して、第3の実施形態に係る把持器3の使用方法の一例について説明する。
図8において、符号120は、腹腔手術において、腹腔内に把持器3等を挿入する際に用いるトロカーを示しており、例えば、腹腔内において生体(例えば、臓器等)Y1、Y2の奥側に位置する血管Y3の向きを変える例を示す図である。
まず、図8(A)に示すように、血管Y3を挟持部26により把持する。
次に、図8(B)に示すように、操作ボタン39を矢印M1方向に回動して挟持部26を支持ピン26C周りに回動し、血管Y3の向きを変える。
以上のように、把持器3を操作して、例えば、生体の一部や組織の姿勢を変えることにより、挟小空間内において、小さなスペースにおける向き変更等、困難な手技を効率的に行うことができる。
【0043】
次に、図9を参照して、この発明の第4の実施形態に係る持針器(把持器)4について説明する。図9に示したのは、例えば、カストロヴェーホタイプの持針器本体40に適用した持針器4を示す図である。なお、図9において、姿勢制御部45は、持針器本体40に取付け可能とされるアタッチメントを構成している。
【0044】
持針器4は、図9に示すように、持針器本体40と、姿勢制御部45とを備え、縫合針100を保持して運針することにより、例えば、生体の傷口等の開口を縫合可能とされている。
持針器本体40は、第1のアーム40Lと、第2のアーム40Rと、支持ピン(連結部)40Cとを備え、第1のアーム40L、第2のアーム40Rは、操作者の手元側の連結部40Dで連結されており、操作部41と、保持部42とを有しており、第1のアーム40L、第2のアーム40Rは、支持ピン40Cを介して回動可能に連結されている。
【0045】
また、第1のアーム40L、第2のアーム40Rは、支持ピン40Cと連結部40Dの間が弾性変形可能とされ、操作部41の操作により、第1のアーム40L、第2のアーム40Rが支持ピン40C周りに回動して、保持部42が開閉されルようになっている。
【0046】
すなわち、操作部41を矢印T1方向に押圧すると、第1のアーム40L、第2のアーム40Rが支持ピン40C周りに回動して、第1のアーム40Lの保持面(対向面)42Lと、第2のアーム40Rの保持面(対向面)42Rが閉じるようになっている。また、操作部41の押圧を緩めると、第1のアーム40L、第2のアーム40Rは弾性により復元され、保持部42が開くようになっている。なお、操作部41には操作をし易くするための把持部ラバー40Fが形成されていて、この把持部ラバー40Fを第1のアーム40L、第2のアーム40Rに装着することにより、アタッチメントを持針器本体40に取付ける構成としてもよい。
【0047】
姿勢制御部45は、保持部42に設けられる挟持部26と、挟持部26と接続され挟持部26に回動を付与する回動操作部47とを備えている。
挟持部26は、保持面42L、42Rと対応する挟持部材26L、26Rを備え、回動操作部47は、ワイヤ48と、操作ボタン49とを備え、ワイヤ48は、第2のアーム40Rに形成された外れ防止部材40Eを通過している。挟持部材26、回動操作部47は、第2の実施形態に係る持針器2の場合と同様の構成とされている。
【0048】
かかる構成により、持針器4は、押圧操作のみにより縫合針100を挟持することができ、また、操作ボタン49を矢印S1方向に操作することにより挟持した縫合針100を矢印R1方向に回動し、操作ボタン49を矢印S2方向に操作することにより挟持した縫合針100を矢印R2方向に回動して姿勢を変更することができる。
【0049】
また、姿勢制御部45により構成されるアタッチメントによれば、挟持部26と回動操作部47とを備えていて、挟持部26が保持部42に対して、ネジ等により回動可能に取付けることができるので、第4の実施例においては、カストロヴェーホタイプの従来型持針装置(本発明の持針器本体に相当)に付加して、容易かつ効率的に持針器4を構成することができる。その結果、縫合針100を容易かつ効率的に回動させて姿勢を変更し、安全かつ効率的に運針することができる。
【0050】
次に、図10を参照して、この発明の第5の実施形態に係る把持器5について説明する。
把持器5は、図10に示すように、ピンセット(把持器本体)50と、姿勢制御部55とを備え、保持した対象物の姿勢を変更可能とされている。
ピンセット50は、第1のアーム50Lと、第2のアーム50Rと、連結部50Cと、操作部51と、保持部52とを備え、第1のアーム50L及び第2のアーム50Rは可撓性を有していて、連結部50Cの弾性変形により、第1のアーム50L、第2のアーム50Rが開閉し、保持部52の保持面(対向面)52L、52Rが対向するようになっている。
【0051】
すなわち、第1のアーム50L及び第2のアーム50Rの操作部51を操作者が把持し、矢印T1方向に押圧すると、連結部50Cが湾曲されて第1のアーム50L及び第2のアーム50Rが矢印J1方向に閉じられ、操作者が操作部51の押圧をやめると、連結部50Cの弾性変形が解除されて、第1のアーム50L、第2のアーム50R及び保持部52が矢印T2、J2方向に移動するようになっている。
【0052】
この実施形態では、ピンセット50を把持器5とするアタッチメントが、姿勢制御部55とサック54(54L、54R)とにより構成されており、姿勢制御部55は、例えば、サック54Lに設けられている。アタッチメントは、サック54を矢印N方向に移動させてピンセット50に装着するようになっている。
【0053】
姿勢制御部55は、保持部52に設けられる挟持部26と、挟持部26と接続され挟持部26に回動を付与する回動操作部57とを備え、挟持部26は、それぞれ保持面52L、52Rと対応し、支持部材26Cにより回動可能とされた挟持部材26L、26Rと、回動操作部57とを備えている。挟持部材26は、第2の実施形態と同様に構成されている。
【0054】
回動操作部57は、ウォーム(ネジ歯車)58R及び挟持部材26Lに支持部材26Cと同心に形成されたホイール(はす歯歯車)58Pからなるウォームギア機構58と、図示しない支持部材で第2のアーム10Rに設けられ、ウォーム58Rと連結ロッドにより連結された操作レバー59とを備えている。
【0055】
把持器5によれば、操作レバー59を矢印M1方向に操作して挟持部材26L、26Rを矢印R1方向に回動させ、又は操作レバー59を矢印M2方向に操作して挟持部材26L、26Rを矢印R2方向に回動させることで対象物を回動、姿勢を制御するようになっている。
【0056】
次に、図11を参照して、この発明の第6の実施形態に係る把持器6について説明する。
把持器6は、図11に示すように、把持器本体60と、姿勢制御部65とを備え、例えば、腹腔手術等において生体等の対象物を把持可能とされている。
把持器本体60は、操作部本体(筐体)から延出する2つの操作レバー(操作部)61と、保持部62とを有しており、保持部62は、第1のアーム60Lと、第2のアーム60Rと、連結部60Cとを有していて、第1のアーム60L及び第2のアーム60Rは、連結部60C介して回動可能に連結されている。
【0057】
操作レバー61は、腹腔内の保持部62を生体外部から操作するのに適したロッド63等に収容された図示しない伝達機構を介して保持部62と連結されており、操作レバー61を矢印T1方向に押圧すると、第1のアーム60L、第2のアーム60Rは矢印J1に閉じ、操作レバー61の押圧をやめると、操作レバー61はT2方向に戻り、第1のアーム60L、第2のアーム60Rは矢印J2方向に開くようになっている。
【0058】
姿勢制御部65は、挟持部26と、挟持部26と接続され挟持部26に回動を付与する回動操作部67とを備えている。
挟持部26は、第1のアーム60L、第2のアーム60Rと対応し、支持部材26Cにより回動可能とされた挟持部材26L、26Rを備えている。また、回動操作部67は、ウォーム(ネジ歯車)68R及び挟持部材26Lに支持部材26Cと同心に形成されたホイール(はす歯歯車)68Pからなるウォームギア機構68と、操作ボタン69とを備え、ウォーム68Rは、例えば、ロッド63内に配置されたワイヤ等の伝達機構を介してモータ(不図示)に接続されて、操作ボタン69の操作により回動するようになっている。挟持部材26は、第2の実施形態と同様に構成されている。
【0059】
かかる構成により、把持器6は、操作ボタン61を押圧して対象物を挟持部26により挟持することができ、例えば、操作ボタン69を矢印S1、S2方向に操作して挟持した対象物を矢印R1、矢印R2方向に回動して姿勢変更することができる。
【0060】
なお、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることができる。
例えば、第1、2、4の実施形態を持針器として、第3、5、6の実施形態を把持器として説明したが、上述のように持針器は把持器の一使用形態であり、いずれの形態で使用するかは、任意に選択することができる。
【0061】
また、上記実施の形態においては、第4、5の実施形態において、持針器4、把持器5を構成するアタッチメントについて説明したが、例えば、持針器4、把持器5以外の挟持部及び回動操作部に基づいてアタッチメントを構成してもよい。
また、持針器4、把持器5がアタッチメントを装着して構成されるのではなく、完成品の持針器4、把持器5として流通してもよい。また、かかる場合に、アタッチメントの構成として、支持部材を含めるかどうかは任意に設定可能である。
【0062】
また、上記実施の形態においては、鉗子タイプ、カストロヴェーホタイプ、ピンセット、腹腔手術用の把持器本体に適用される場合について説明したが、上記以外の把持器本体(持針器本体を含む)に適用してもよい。
また、把持器本体等へのアタッチメントの装着は、把持器本体等の一部又は全部を収納し、または把持器本体等のいずれかの部位に係合させて取付けてもよく、取付けに際しては、ネジ、溶接、接着等、周知の取付手段を用いることができる。
【0063】
また、上記実施の形態においては、挟持部材16が、矩形形状の隣接角部にカット(面取り)を形成した板片とされ、挟持部材26が円板状に形成されている場合について説明したが、例えば、上記以外の形状に形成された板片を適用してもよいし、縫合針を確実に挟持するための単数又は複数の凹溝が形成され、又は複数の凸部が分散配置された構成としてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態においては、挟持部16、26が支持部材16C、26Cに支持されて±90°回動される場合について説明したが、挟持部16、26の回動角度は任意に設定可能であり、又回動可能な角度を調整可能とし、又任意の角度で停止可能に構成してもよい。
【0065】
また、上記実施の形態においては、姿勢制御部15、25、35、45、55、65が、挟持部16、26を、1つの軸周りに回動可能な支持部材16C、26Cにより支持する場合について説明したが、例えば、挟持部を多軸(例えば、X軸&Y軸)周り回動可能な支持部材、または極座標系の支持部材、スライド機構や捻り等を含む支持部材により支持させて、複数軸周り又はその他の姿勢に制御する構成としてもよい。
【0066】
また、上記実施の形態においては、回動操作部17、47がワイヤ18、48を用いて挟持部16、46を回動し、回動操作部37、57、67がウォームギア機構(ウォーム38R及ホイール38P、ウォーム58R及ホイール58P、ウォーム68R及ホイール68P)を用いて挟持部材26L、26Rを回動する場合について説明したが、例えば、ワイヤ18、48やウォームギア機構に代えて、ギア、ラック&ピニオン、カム、アクチュエータ(例えば、形状記憶合金、圧電素子、モータ等)、バネを用いて挟持部16、26の姿勢を制御する構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明に係る把持器、持針器、及びアタッチメントによれば、対象物を効率的に把持することができるので、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0068】
Y3 血管(対象物)
1、2、4 持針器(把持器)
3、5、6 把持器
10、40、50、60 把持器本体
10C、40C、60C 支持ピン(支点)
10L、40L、50L、60L 第1のアーム
10R、40R、50R、60R 第2のアーム
11、41、51、61 操作部
12、42、52、62 保持部
16、26 挟持部
16L、16R、26L、26R 挟持部材
16C、26C、46C 支持部材(支持点)
15、25、35、45、55、65 姿勢制御部
17、37、47、57、67 回動操作部
100 縫合針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持する把持器であって、
操作部と、保持部とを有し、前記操作部を操作することで前記保持部が開閉可能、かつ前記保持部が閉じて対象物を保持する把持器本体と、
前記保持部に保持された対象物の姿勢を制御する姿勢制御部と、を備え、
前記姿勢制御部は、
前記保持部に設けられ、前記対象物を挟持するとともに前記対象物を挟持した状態で保持部に対する姿勢が変更可能とされる挟持部と、
前記挟持部と接続され、前記挟持部の姿勢を操作する姿勢操作部と、を備えることを特徴とする把持器。
【請求項2】
請求項1に記載の把持器であって、
前記挟持部は、前記保持部に回動可能に支持され、
前記姿勢操作部は、前記挟持部に回動を付与する回動操作部とされていることを特徴とする把持器。
【請求項3】
請求項2に記載の把持器であって、
前記把持器本体は、
連結部において連結されるとともに前記連結部を支点として開閉可能とされ、開閉により形成される対向面が前記保持部を構成する第1のアームと第2のアームと、を備え、
前記第1のアーム及び第2のアームの保持部には、前記挟持部を構成する一対の挟持部材が支持点を介してそれぞれ前記保持部材に対して回動可能に連結され、前記それぞれの挟持部材は前記支持点からオフセットされた位置に前記回動操作部が接続され、前記接続された位置に変位を付与することを特徴とする把持器。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の把持器を備え、前記対象物が縫合針であることを特徴とする持針器。
【請求項5】
操作部と、保持部とを有し、前記操作部を操作することで前記保持部が開閉可能、かつ前記保持部が閉じて対象物を保持する把持器本体に用いるアタッチメントであって、
前記保持部に、保持された対象物の姿勢を制御する姿勢制御部を備え、
前記姿勢制御部は、
前記保持部に設けられ、前記対象物を挟持するとともに前記対象物を挟持した状態で保持部に対する姿勢が変更可能とされる挟持部と、
前記挟持部と接続され、前記挟持部の姿勢を操作する姿勢操作部と、を備えることを特徴とするアタッチメント。
【請求項6】
請求項5に記載のアタッチメントであって、
前記挟持部は、前記保持部に回動可能に支持され、
前記姿勢操作部は、前記挟持部に回動を付与する回動操作部とされていることを特徴とするアタッチメント。
【請求項7】
請求項6に記載のアタッチメントであって、
前記把持器本体が、連結部において連結されるとともに前記連結部を支点として開閉可能とされ、開閉により形成される対向面が前記保持部を構成する第1のアームと第2のアームと、を備えた構成とされる場合に、
前記第1のアーム及び第2のアームのそれぞれに対応して取付け可能とされ、前記第1のアーム及び第2のアームに対して支持点により回動可能とされる一対の挟持部材と、
前記それぞれの挟持部材の前記支持点からオフセットされた位置に接続され、前記接続された位置に変位を付与する回動操作部と、を備えることを特徴とするアタッチメント。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項に記載の把持器本体が、前記対象物を縫合針とする持針器であることを特徴とするアタッチメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−111119(P2013−111119A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257950(P2011−257950)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【特許番号】特許第4972224号(P4972224)
【特許公報発行日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(000200677)泉工医科工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】