説明

把持搬送装置および把持搬送方法

【課題】把持機構を支持する支持移動体と障害物の衝突を検知できるとともに、衝突時のオーバートラベル量による支持移動体の損傷を防止できる把持搬送装置を提供する。
【解決手段】支持移動体5の外面に取り付けられる衝撃吸収センサ9を備える。衝撃吸収センサ9は、弾性体と、該弾性体に組み込まれた衝突検出部と、を有する。衝突検出部は、該弾性体の弾性変形により衝突信号を出力する。衝突信号を受けることで、前記支持移動体5の移動を停止させる制御を行う制御装置11をさらに備える。支持移動体5が設定速度で移動している時に衝突信号が出力されてから、支持移動体5が停止するまでに支持移動体5が移動する距離をオーバートラベル量として、弾性体の最大弾性変形量は、オーバートラベル量以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物を把持して搬送する把持搬送装置および把持搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
把持搬送装置(例えば、ロボットハンド)は、対象物を把持する把持機構と、把持機構を動作可能に支持して3次元的に移動する支持移動体(例えば、ロボットアーム)とを備える。対象物を把持する時に、把持機構が対象物を把持できる位置まで支持移動体を移動させる。この移動中に、支持移動体が、障害物と衝突することがある。
【0003】
そのため、衝突センサを支持移動体に取り付けている。支持移動体が、障害物と衝突したことを衝突センサが検出すると、衝突センサから衝突信号が出力される。この衝突信号に基づいて、制御装置が、支持移動体の移動を停止させる制御を行う。
【0004】
本願の先行技術文献として、下記の特許文献1〜3がある。特許文献1では、支持移動体が障害物に衝突したことを検出する衝突センサを用いている。特許文献2、3には、支持移動体が衝撃を受けた場合に、衝撃を吸収する衝撃吸収機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−15511号公報
【特許文献2】特開2010−29991号公報
【特許文献3】特開昭61−270095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、支持移動体の移動中に、支持移動体が障害物に衝突した場合に、支持移動体を直ちに停止することができない。すなわち、衝突信号が出力されてから、制御装置により支持移動体を停止させるまでの間に、支持移動体は移動し続ける。当該移動距離(以下、オーバートラベル量という)により、支持移動体を変形させようとする力が障害物から支持移動体に作用する。従って、オーバートラベル量により支持移動体が損傷してしまう。
【0007】
そこで、本発明の目的は、支持移動体と障害物の衝突を検知できるとともに、当該衝突時のオーバートラベル量による支持移動体の損傷を防止できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明によると、対象物を把持して搬送する把持搬送装置であって、
対象物を把持する把持機構と、
前記把持機構を支持して、設定速度で移動する支持移動体と、
支持移動体の外面に取り付けられる衝撃吸収センサと、を備え、
前記衝撃吸収センサは、弾性体と、該弾性体に組み込まれた衝突検出部と、を有し、該衝突検出部は、該弾性体の弾性変形により衝突信号を出力し、
前記衝突信号を受けることで、前記支持移動体の移動を停止させる制御を行う制御装置をさらに備え、
支持移動体が前記設定速度で移動している時に前記衝突信号が出力されてから、支持移動体が停止するまでに支持移動体が移動する距離をオーバートラベル量として、前記弾性体の最大弾性変形量は、オーバートラベル量以上である、ことを特徴とする把持搬送装置が提供される。
【0009】
また、本発明によると、上述の把持搬送装置を用いた対象物の把持搬送方法であって、
(A)前記衝撃吸収センサとして第1の衝撃吸収センサを前記支持移動体の外面に取り付けた状態で、前記支持移動体を第1の設定速度で移動させることで、第1種類の対象物を把持できる位置へ把持機構を移動させて、該把持機構により当該対象物を把持し、さらに、前記支持移動体を移動させることで、当該対象物を搬送し、
(B)搬送する対象物を第1種類の対象物から第2種類の対象物に変更することに合わせて、前記支持移動体の外面に取り付ける前記衝撃吸収センサを第1の衝撃吸収センサから第2の衝撃吸収センサに交換し、
(C)次いで、第2の衝撃吸収センサを前記支持移動体の外面に取り付けた状態で、前記支持移動体を第2の設定速度で移動させることで、第2種類の対象物を把持できる位置へ把持機構を移動させて、該把持機構により当該対象物を把持し、さらに、前記支持移動体を移動させることで、当該対象物を搬送し、
支持移動体が第1の設定速度で移動している時に前記衝突信号が出力されてから、支持移動体が停止するまでに支持移動体が移動する距離を第1のオーバートラベル量として、第1の衝撃吸収センサの前記弾性体の最大弾性変形量は、第1のオーバートラベル量以上であり、
支持移動体が第2の設定速度で移動している時に前記衝突信号が出力されてから、支持移動体が停止するまでに支持移動体が移動する距離を第2のオーバートラベル量として、第2の衝撃吸収センサの前記弾性体の最大弾性変形量は、第2のオーバートラベル量以上である、ことを特徴とする把持搬送方法が提供される。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によると、前記弾性体は、線状に延びている。
【0011】
また、本発明の好ましい実施形態によると、前記衝撃吸収センサは、支持移動体に着脱可能である。
【0012】
また、本発明の好ましい実施形態によると、支持移動体は、前記把持機構が設けられた底面と、当該底面に対する側面であって当該底面の外周縁が延びている方向に延びている外周面とを有し、
前記弾性体は、当該外周面に取り付けられて、当該外周面を一周するように線状に延びている。
【0013】
好ましくは、前記最大弾性変形量は、オーバートラベル量と同じであるか、または、オーバートラベル量よりも若干大きい。
【発明の効果】
【0014】
上述した本発明によると、前記衝撃吸収センサは、弾性体と、該弾性体の弾性変形により衝突信号を出力する衝突検出部と、を有するので、支持移動体と障害物の衝突を検知できる。
【0015】
また、衝突信号が出力されてから、支持移動体が停止されるまでに支持移動体が前記設定速度で移動する距離をオーバートラベル量として、前記弾性体の最大弾性変形量は、オーバートラベル量以上であるので、オーバートラベル量の分だけ弾性体は弾性変形する。従って、オーバートラベル量による支持移動体の損傷を防止できる。
【0016】
さらに、衝突検出部は、弾性体に組み込まれているので、衝突を検出する機能を持つ衝突検出部と、オーバートラベル量による損傷を防止する機能を持つ弾性体とが一体化されている。従って、一体化された衝撃吸収センサは、取り扱いが便利である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態による把持搬送装置の構成図である。
【図2】(A)は、図1の部分拡大図であり、(B)は、(A)のB−B矢視図である。
【図3】(A)は、図2(B)のIIIA−IIIA矢視断面図であり、(B)は、図2(B)のIIIB−IIIB矢視断面図であり、(C)は、(A)の状態から弾性体が弾性変形した場合を示す。
【図4】本発明の実施形態による把持搬送方法を示すフローチャートである。
【図5】第1種類または第2種類の対象物を搬送する手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態による把持搬送装置10の構成図である。図2(A)は、図1の部分拡大図であり、図2(B)は、図2(A)のB−B矢視図である。
【0020】
把持搬送装置10は、対象物1を把持して搬送先へ搬送する装置であって、把持機構3と、支持移動体5と、駆動機構7、衝撃吸収センサ9、および制御装置11を備える。
【0021】
把持機構3は、複数の把持爪3a、3bを有する。複数の把持爪3a、3bは、互いに離間し近接する動作を行って対象物1を把持する。図1の例では、対象物1は、円筒状のものであり、複数の把持爪3a、3bは、支持移動体5の移動により対象物1の内周面1aの中に挿入された状態で、互いに離間する方向に駆動され、これにより、内周面1aに押し付けられることで対象物1を把持する。複数の把持部3a、3bは、この状態から、互いに近接する方向に駆動されると、把持している対象物1を解放する。この例では、複数の把持部3a、3bは、それぞれ、図2(B)に示す往復動方向Da、Dbにおいて、支持移動体5に設けられたガイドレール(図示せず)に沿って往復動することで、上述のように対象物1を把持したり、解放したりする。
【0022】
支持移動体5は、把持機構3(把持爪3a、3b)を支持して、設定速度で移動する。すなわち、支持移動体5は、把持機構3が、対象物1を把持できる位置へ設定速度で移動させられ、把持機構3が当該対象物1を把持した状態で、搬送先へ当該対象物1を搬送するように移動させられる。
【0023】
駆動機構7は、支持移動体5を移動させ、支持移動体5の姿勢を変化させる。この駆動機構7は、例えば、図1に示す多関節ロボットのアーム機構を有する。この場合、アーム機構は、図1の例では、第1〜第4のアーム13a〜13d、および第1〜第3の関節15a〜15cを備える。第1のアーム13aには、支持移動体5が結合されている。また、第1のアーム13aは、第1の関節15aを介して第2のアーム13bに連結されているとともに、第1の関節15aの回転軸C1(図1の紙面と垂直な軸)周りに第2のアーム13bに対して回転可能である。第2のアーム13bは、第2の関節15bを介して第3のアーム13cに連結されているとともに、第2の関節15bの回転軸C2(図1の紙面と垂直な軸)周りに第3のアーム13cに対して回転可能である。第3のアーム13cは、第3の関節15cを介して第4のアーム13dに連結されているとともに、第3の関節15cの回転軸C3(図1の紙面と垂直な軸)周りに第4のアーム13dに対して回転可能である。第4のアーム13dは、自身の中心軸である回転軸C4周りに回転可能に設置台8に支持されている。
【0024】
駆動機構7は、第1〜第4のアーム13a〜13dを、対応する回転軸C1〜C4周りに回転駆動する回転用アクチュエータ(図示せず)を有する。これら回転駆動が、制御装置11によって制御されることで、上述のように支持移動体5を移動させたり、支持移動体5の姿勢を変更することができる。
【0025】
図3(A)は、図2(B)のIIIA−IIIA矢視断面図であり、図3(B)は、図2(B)のIIIB−IIIB矢視断面図である。
【0026】
衝撃吸収センサ9は、弾性体9aと、該弾性体9aに組み込まれた衝突検出部9bと、を有する。衝突検出部9bは、弾性体9aの弾性変形により衝突信号を出力する。
衝突検出部9bは、弾性体9aに組み込まれているので、衝突を検出する機能を持つ衝突検出部9bと、後述のオーバートラベル量による損傷を防止する機能を持つ弾性体9aとが一体化されている。このように一体化された衝撃吸収センサ9は、取り扱いが便利である。従って、本実施形態では、支持移動体5の外面5aに対する衝撃吸収センサ9の取付位置を簡単に調整できるとともに、衝撃吸収センサ9を簡単に交換できる。
【0027】
衝撃吸収センサ9は、支持移動体5の外面5aに取り付けられている。図2の例では、衝撃吸収センサ9は、支持移動体5の外周面5a1と、支持移動体5の底面5a2とに取り付けられている。底面5a2は、把持機構3が設けられた面であり、外周面5a1は、底面5a2に対する側面であって底面5a2の外周縁が延びている方向に延びている面である。外周面5a1に取り付けた衝撃吸収センサ9と、底面5a2に取り付けた衝撃吸収センサ9とは、互いに独立している。
【0028】
底面5a2に取り付けられた弾性体9aは、線状に延びている。外周面5a1に取り付けられた弾性体9aは、支持移動体5の外周面5a1を一周するように線状に延びている。この点以外について、外周面5a1に取り付けた衝撃吸収センサ9と、底面5a2に取り付けた衝撃吸収センサ9とは、同様の構成を有する。
【0029】
なお、弾性体9aを線状にすることより、小型の衝撃吸収センサ9で、効率的に衝突を検出できる。
【0030】
衝突検出部9bは、弾性体9aの弾性変形を検出できる構成を有する。図3(A)、図3(B)の例では、衝突検出部9bは、電流を通す1対の導電性板(例えば、銅板)17a、17bと、信号出力部19とを有する。なお、底面5a2に取り付けられた弾性体9aと、外周面5a1に取り付けられた弾性体9aとは、それぞれ、線状に延びている方向と直交する平面による断面構造が、当該方向のいずれの位置においても、図3(A)、図3(B)と同じ構造になる。
【0031】
1対の導電性板17a、17bは、隙間を置いて対向し、スイッチとして機能する。導電性板17a、17bは、弾性体9a(例えば、ゴム)の内部に形成された空間21に配置される。空間21を区画する弾性体9aの内面23には、導電性板17aが接合されており、空間21を区画する弾性体9aの内面24には、導電性板17bが接合されている。内面23は、支持移動体5の外面5a(外周面5a1または底面5a2)と対向するように位置し、内面24は、内面23と対向するように位置する。また、各導電板には導線25a、25bが接続されている。
【0032】
信号出力部19は、導線25a、25bを介して1対の導電性板17a、17bに接続されており、後述のように1対の導電性板17a、17bが互いに接触すると(すなわち、スイッチが閉じると)、上述の衝突信号を出力する。
【0033】
衝撃吸収センサ9は、次のように作動する。支持移動体5が障害物に衝突すると、弾性体9aは、図3(C)のように、支持移動体5の外面5a(5a1,5a2)側へ弾性変形する。これにより、導電性板17a、17b同士が接触することで、導電性板17a、17bからなるスイッチが閉じる。その結果、導線25a、25bに電流が流れるので、信号出力部19は、当該電流が流れたことを検出することで、衝突信号を制御装置11に出力する。
【0034】
衝撃吸収センサ9(弾性体9a)は、支持移動体5の外面5aに着脱可能とすることができる。例えば、弾性体9aを、接着剤または両面テープにより支持移動体5の外面5aに取り外し可能に取り付けることができる。これにより、衝撃吸収センサ9(弾性体9a)を、支持移動体5の外面5aにおける任意の位置に簡単に取り付けることができる。
【0035】
弾性体9aの最大弾性変形量(最大弾性変位量)は、オーバートラベル量以上である。オーバートラベル量は、支持移動体5が設定速度で移動している時に前記衝突信号が出力されてから、制御装置11により支持移動体5が停止されるまでに支持移動体5が移動する距離である。好ましくは、弾性体9aの最大弾性変形量は、オーバートラベル量と同じであるか、または、オーバートラベル量よりも若干大きい。このように、弾性体9aの大きさは、オーバートラベル量を基準に定められる。最大弾性変形量は、弾性体9aの大きさに応じて変化するので、弾性体9aの最大弾性変形量を、オーバートラベル量と同じであるか、または、オーバートラベル量よりも若干大きいようにすることで、弾性体9aの大きさ(図3(A)または図3(B)の断面寸法)を小さく抑えることができる。なお、弾性体9aの最大弾性変形量に関する弾性変形方向(弾性変位方向)は、弾性体9aが取り付けられている外面5aと垂直な方向であってよい。
【0036】
制御装置11は、前記衝突信号を受けることで、支持移動体5の移動を停止させる制御を行う。具体的には、制御装置11は、前記衝突信号を受けると、駆動機構7(例えば、回転用アクチュエータ)の動作を停止させる制御を行う。これにより、駆動機構7の動作が停止し、その結果、支持移動体5も停止する。
【0037】
上述した把持搬送装置10を用いた対象物1の把持方法を説明する。図4は、本実施形態による把持方法を示すフローチャートである。
【0038】
この把持方法では、以下のように、最初に第1種類の対象物1を第1の設定速度で搬送し、その後、第1種類の対象物1と重さが異なる第2種類の対象物1を第2の設定速度で搬送する。例えば、第2種類の対象物1が第1種類の対象物1よりも重い場合には、第2の設定速度は第1の設定速度よりも遅く、第2種類の対象物1が第1種類の対象物1よりも軽い場合には、第2の設定速度は第1の設定速度よりも早い。
【0039】
ステップS1において、衝撃吸収センサ9として第1の衝撃吸収センサ9を支持移動体5の外面5aに取り付け、この状態で、支持移動体5を第1の設定速度で移動させることで、図1のボックス4内にある第1種類の対象物1を把持できる位置へ把持機構3を移動させて、該把持機構3により当該対象物1を把持する。次いで、支持移動体5を第1の設定速度で移動させることで、当該対象物1を搬送先へ搬送する。当該搬送先では、把持機構3は、把持している第1種類の対象物1を解放することで、当該対象物1を搬送先に引き渡す。その後、再び、支持移動体5を移動させることで、ボックス4内にある第1種類の別の対象物1を把持できる位置へ把持機構3を移動させて、上述のように当該対象物1を搬送先へ搬送する。このような動作を繰り返すことで、複数の第1種類の対象物1を搬送する。
【0040】
ここで、支持移動体5が第1の設定速度で移動している時に前記衝突信号が出力されてから、支持移動体5が停止するまでに支持移動体5が移動する距離を第1のオーバートラベル量として、第1の衝撃吸収センサ9の弾性体9aの最大弾性変形量は、第1のオーバートラベル量以上である。好ましくは、第1の衝撃吸収センサ9の弾性体9aの最大弾性変形量は、第1のオーバートラベル量と同じであるか、または、第1のオーバートラベル量よりも若干大きい。
【0041】
ステップS2において、搬送する対象物1を第1種類の対象物1から第2種類の対象物1に変更する場合に、支持移動体5の外面5aに取り付ける衝撃吸収センサ9を第1の衝撃吸収センサ9から第2の衝撃吸収センサ9に交換する。具体的には、外面5aから第1の衝撃吸収センサ9の弾性体9aを取り外し、外面5aに、第2の衝撃吸収センサ9の弾性体9aを取り付ける。
【0042】
ステップS2において、第2種類の対象物1の寸法と形状が、第1種類の対象物1の寸法と形状と異なる場合に、第2種類の対象物1の寸法と形状に合わせて、第2の衝撃吸収センサ9の弾性体9aを支持移動体5の外面5aに取り付ける位置を調整することができる。すなわち、外面5aにおける第2の衝撃吸収センサ9の弾性体9aの取付位置を、外面5aにおける第1の衝撃吸収センサ9の弾性体9aの取付位置と異なるようにすることができる。
【0043】
ステップS3において、第2の衝撃吸収センサ9を支持移動体5の外面5aに取り付けた状態で、支持移動体5を第2の設定速度で移動させることで、ボックス4内にある第2種類の対象物1を把持できる位置へ把持機構3を移動させて、該把持機構3により当該対象物1を把持する。次いで、支持移動体5を第2の設定速度で移動させることで、当該対象物1を搬送先へ搬送する。当該搬送先では、把持機構3は、把持している第2種類の対象物1を解放することで、当該対象物1を搬送先に引き渡す。その後、再び、支持移動体5を移動させることで、ボックス4内にある第2種類の別の対象物1を把持できる位置へ把持機構3を移動させて、上述のように当該対象物1を搬送先へ搬送する。このような動作を繰り返すことで、複数の第2種類の対象物1を搬送する。
【0044】
ここで、支持移動体5が第2の設定速度で移動している時に前記衝突信号が出力されてから、支持移動体5が停止するまでに支持移動体5が移動する距離を第2のオーバートラベル量として、第2の衝撃吸収センサ9の弾性体9aの最大弾性変形量は、第2のオーバートラベル量以上である。好ましくは、第2の衝撃吸収センサ9の弾性体9aの最大弾性変形量は、第2のオーバートラベル量と同じであるか、または、第2のオーバートラベル量よりも若干大きい。
【0045】
ステップS1またはS3において、制御装置11は、自身に設定されている第1または第2の設定速度に基づいて、支持移動体5が第1または第2の設定速度で移動するように駆動装置7を制御する。
【0046】
また、ステップS1またはS3において、支持移動体5が障害物(例えば、ボックス3や、把持しようとする対象物1に近接する他の対象物1)に衝突すると、衝撃吸収センサ9から衝突信号が出力される。これにより、制御装置11は、上述のように支持移動体5を停止させる。この時、支持移動体5のオーバートラベル量は、衝撃吸収センサ9の弾性体9aの最大変位量よりも小さいので、当該オーバートラベル量の分だけ、弾性体9aが図3(C)のように弾性変形する。これにより、支持移動体5が損傷することが防止される。
【0047】
図5は、ステップS1またはS3の動作を示すフローチャートである。ステップS1またはS3は、ステップS11〜S15を有する。
【0048】
ステップS11において、CCDカメラなどの撮像装置により、対象物1を含む範囲を撮像して画像データを取得し、画像処理装置により、当該画像データから対象物1の位置および姿勢に関する認識データを取得する。なお、ステップS11において、画像処理装置の代わりに、レーザ距離計を用いて、対象物1の位置および姿勢を計測して、対象物1の位置および姿勢に関する認識データを取得してもよい。
【0049】
ステップS12において、ステップS11で取得した認識データに基づいて、制御装置11が、駆動機構7を制御することで、上述のように、ボックス4内の対象物1を把持できる位置へ把持機構3を移動させ、この状態で、把持機構3が当該対象物1を把持する。
【0050】
ステップS13において、ステップS12の最中に、衝撃吸収センサ9から衝突信号が出力された場合には、ステップS11へ戻り、そうでない場合には、ステップS14へ進む。ステップS12の最中に、衝撃吸収センサ9から衝突信号が出力された場合には(特に、支持移動体5がボックス4内に位置する時に衝撃吸収センサ9から衝突信号が出力された場合には)、ボックス4内にバラ積みされている対象物1と支持移動体5が衝突して、ボックス4内の複数の対象物1の位置と姿勢が変化したとみなせる。そのため、この場合には、ステップS11へ進み、対象物1の位置および姿勢を再認識するようにステップS11〜S13を再び行う。
【0051】
ステップS14において、ステップS13で把持した対象物1を搬送先へ搬送し、把持機構3は搬送先で当該対象物1を解放する。その後、ステップS15へ進む。
【0052】
ステップS15において、搬送すべきボックス4内の複数の対象物1をすべて搬送した場合には、対象物1の把持と搬送を終了し、そうでない場合には、ステップS11へ戻り、ステップS11〜S15を再び行う。
【0053】
このようにして、ステップS1またはS3において、例えば、図1のように、上面が開口しているボックス4内にバラ積みされた複数の第1種類の対象物1または複数の第2種類の対象物1を、上述のように1つずつ把持して搬送する。
【0054】
なお、支持移動体5が一定の速度で移動する場合には、上述の設定速度は、当該一定の速度である。一方、支持移動体5が移動中に、支持移動体5の移動速度が変化する場合には、上述の設定速度は、当該移動速度の最大値である。
【0055】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変更例1〜5を、任意に組み合わせて採用してもよいし、以下の変更例1〜5のいずれかを単独で採用してもよい。この場合、他の点は、上述と同じであってよい。
【0056】
(変更例1)
対象物1は、円筒形以外の形状を有するものであってもよい。
【0057】
(変更例2)
上述では、把持機構3は、複数の把持爪3a、3bであったが、対象物1を把持できる他の構成を有するものであってもよい。例えば、把持機構3は、吸引により対象物1を吸着して把持する吸着パッドであってもよい。この場合、把持機構3は、例えば、吸引動作を停止することで、把持した対象物1を解放する。
【0058】
(変更例3)
把持機構3は、1対の把持爪3a、3bを有し、当該1対の把持爪3a、3が、互いに近接する閉動作により対象物1を挟み込むことで、対象物1を把持し、互いに離間する開動作により、把持した対象物1を解放するものであってもよい。
【0059】
(変更例4)
上述では、衝突検出部は、1対の導電性板17a、17bを有するものであったが、他の構成を有するものであってもよい。例えば、弾性体9aの弾性変形により力が作用するように弾性体9a内に組み込まれた圧電素子であってもよい。この場合、圧電素子は、力が作用すると、電圧信号を発生し、この電圧信号に反応して、信号出力部19は、上述の衝突信号を制御装置11に出力する。
【0060】
(変形例5)
上述では、衝撃吸収センサ9は、外周面5a1と底面5a2の両方に取り付けたが、外周面5a1と底面5a2のいずれか一方に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 対象物、1a 内周面、3 把持機構、4 ボックス、5 支持移動体、5a 外面、5a1 外周面、5a2 底面、7 駆動機構、8 設置台、9 衝撃吸収センサ、9a 弾性体、9b 衝突検出部、10 把持搬送装置、11 制御装置、13a〜13d 第1〜第4のアーム、15a〜15c 第1〜第3の関節、17a、17b 導電性板、19 信号出力部、21 空間、23、24 内面、25a、25b 導線


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持して搬送する把持搬送装置であって、
対象物を把持する把持機構と、
前記把持機構を支持して、設定速度で移動する支持移動体と、
支持移動体の外面に取り付けられる衝撃吸収センサと、を備え、
前記衝撃吸収センサは、弾性体と、該弾性体に組み込まれた衝突検出部と、を有し、該衝突検出部は、該弾性体の弾性変形により衝突信号を出力し、
前記衝突信号を受けることで、前記支持移動体の移動を停止させる制御を行う制御装置をさらに備え、
支持移動体が前記設定速度で移動している時に前記衝突信号が出力されてから、支持移動体が停止するまでに支持移動体が移動する距離をオーバートラベル量として、前記弾性体の最大弾性変形量は、オーバートラベル量以上である、ことを特徴とする把持搬送装置。
【請求項2】
前記弾性体は、線状に延びている、ことを特徴とする請求項1に記載の把持搬送装置。
【請求項3】
前記衝撃吸収センサは、支持移動体に着脱可能である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の把持搬送装置。
【請求項4】
支持移動体は、前記把持機構が設けられた底面と、外周面とを有し、
前記弾性体は、当該外周面に取り付けられて、当該外周面を一周するように線状に延びている、ことを特徴とする請求項1または3に記載の把持搬送装置。
【請求項5】
前記最大弾性変形量は、オーバートラベル量と同じであるか、または、オーバートラベル量よりも若干大きい、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の把持搬送装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の把持搬送装置を用いた対象物の把持搬送方法であって、
(A)前記衝撃吸収センサとして第1の衝撃吸収センサを前記支持移動体の外周面に取り付けた状態で、前記支持移動体を第1の設定速度で移動させることで、第1種類の対象物を把持できる位置へ把持機構を移動させて、該把持機構により当該対象物を把持し、さらに、前記支持移動体を移動させることで、当該対象物を搬送し、
(B)搬送する対象物を第1種類の対象物から第2種類の対象物に変更することに合わせて、前記支持移動体の外面に取り付ける前記衝撃吸収センサを第1の衝撃吸収センサから第2の衝撃吸収センサに交換し、
(C)次いで、第2の衝撃吸収センサを前記支持移動体の外面に取り付けた状態で、前記支持移動体を第2の設定速度で移動させることで、第2種類の対象物を把持できる位置へ把持機構を移動させて、該把持機構により当該対象物を把持し、さらに、前記支持移動体を移動させることで、当該対象物を搬送し、
支持移動体が第1の設定速度で移動している時に前記衝突信号が出力されてから、支持移動体が停止するまでに支持移動体が移動する距離を第1のオーバートラベル量として、第1の衝撃吸収センサの前記弾性体の最大弾性変形量は、第1のオーバートラベル量以上であり、
支持移動体が第2の設定速度で移動している時に前記衝突信号が出力されてから、支持移動体が停止するまでに支持移動体が移動する距離を第2のオーバートラベル量として、第2の衝撃吸収センサの前記弾性体の最大弾性変形量は、第2のオーバートラベル量以上である、ことを特徴とする把持搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−16780(P2012−16780A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155459(P2010−155459)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】