説明

把持用ケースを備えたキーおよびその塗装方法

【課題】所有者の好みの色彩または模様を呈した把持用ケースを備えたキーおよびその塗装方法を提供する。
【解決手段】把持用ケース2を備えたキー1は、把持用ケース2の表面に所望の色彩または模様が施された塗装層3が形成されているため、所有者の好みの色彩または模様を呈した把持用ケース2を備えたキー1が構成できる。また、把持用ケース2を備えたキー1の塗装方法は、把持用ケース2の表面に下地塗装層を形成する工程と、下地塗装層の表面にカラー塗装層を形成する工程と、カラー塗装層の表面にクリア塗装層7を形成する工程とを有しているため、所望の色彩を呈する塗装層3を把持用ケース2の表面に鮮明かつ確実に定着させることができる共に、強度を備えキズが付きにくい塗装層3を形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用キーなど把持用ケースを備えたキーおよびその塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、リモコンケースなどの把持用ケースを備えたキーが提供されている。この把持用ケースは黒色の樹脂ケースが大半で、色彩的または模様的に意匠性に欠けていた。また、自動車用キーの場合、購入時に自動車の色は選定できても、把持用ケースの大半は黒色で提供されるため色彩的に車色との統一性を欠いていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の課題は、所有者の好みの色または模様を呈した把持用ケースを備えたキーおよびその塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するものは、把持用ケースを備えたキーであって、前記把持用ケースの表面には所望の色彩または模様が施された塗装層が形成されていることを特徴とする把持用ケースを備えたキーである。
【0005】
前記塗装層は、前記把持用ケースの表面に形成された下地塗装層と、該下地塗装層の表面に形成されたカラー塗装層と、該カラー塗装層の表面に形成されたクリア塗装層とを有していることが好ましい。前記カラー塗装層の表面には模様を形成するための模様形成用シート材が貼着されていてもよい。
【0006】
また、上記課題を解決するものは、把持用ケースを備えたキーの前記把持用ケースの表面に塗装を施す塗装方法であって、前記把持用ケースの表面に下地塗装層を形成する工程と、前記下地塗装層の表面にカラー塗装層を形成する工程と、前記カラー塗装層の表面にクリア塗装層を形成する工程とを有していることを特徴とする把持用ケースを備えたキーの塗装方法である。
【0007】
前記把持用ケースを備えたキーおよびその塗装方法は、前記下地塗装層の表面にカラー塗装層を形成する工程と、前記カラー塗装層の表面にクリア塗装層を形成する工程との間に、前記カラー塗装層の表面に模様を形成するための模様形成用シート材を貼着する工程を有していてもよい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、所有者の好みの色彩または模様を呈した把持用ケースを備えたキーが構成できる。
請求項2に記載した発明によれば、所望の色彩を呈する塗装層を把持用ケースの表面に鮮明かつ確実に定着させることができると共に、強度を備えキズが付きにくい塗装層を形成できる。
請求項3に記載した発明によれば、所望の模様を呈した塗装層を把持用ケースの表面に確実に定着させることができると共に、その表面にクリア塗装層を形成することにより模様形成用シート材を貼着したことによる段差を無くすことができる。
請求項4に記載した発明によれば、所望の色彩を呈する塗装層を把持用ケースの表面に鮮明かつ確実に定着させることができる共に、強度を備えキズが付きにくい塗装層を形成できる。
請求項5に記載した発明によれば、所望の模様を呈した塗装層を把持用ケースの表面に確実に定着させることができると共に、その表面にクリア塗装層を形成することにより模様形成用シート材を貼着したことによる段差を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の把持用ケースを備えたキーの一実施例の正面図である。
【図2】図1に示した把持用ケースを備えたキーの把持用ケースを表裏分解した分解図である。
【図3】本発明の把持用ケースを備えたキーの塗装方法を説明するための説明図である。
【図4】図3のA−A線部分端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、把持用ケース2の表面に所望の色彩または模様が施された塗装層3を形成したことで、所有者の好みの色彩または模様を呈した把持用ケース2を備えたキー1を実現した。
【実施例1】
【0011】
本発明の把持用ケースを備えたキーを図1ないし図4に示した一実施例を用いて説明する。
この実施例の把持用ケース2を備えたキー1は、把持用ケース2の表面に所望の色彩または模様が施された塗装層3を有している。以下、各構成について順次詳述する。
【0012】
この把持用ケース2を備えたキー1は自動車用キーであって、図1に示すように、金属製の鍵部4とその基端部を被包した樹脂製の把持用ケース2とから構成されている。ただし、本発明の把持用ケースを備えたキーは自動車用キーに限定されるものではなく、把持用ケースを備えたキーであれば、例えば家の鍵等どのような用途で使用されるものであってもよい。また、この実施例のキー1は鍵部4を有しているが、これに限定されず、鍵部を有さず把持用ケースのみからなるリモコンキー等も本発明の範疇に包含される。さらに、この実施例のキー1の把持用ケース2は樹脂材料にて形成されているが、これに限定されるものではなく、例えばアルミニウムなどの金属材料等樹脂以外の他の材料で形成されたものも本発明の範疇に包含される。
【0013】
把持用ケース2は、図2に示すように、表側ケース2aと、鍵部4の基端部を内部で保持した裏側ケース2bとから構成されており、これら表側ケース2aと裏側ケース2bの表面に塗装層3がそれぞれ形成されている。
【0014】
塗装層3は、キー1の所有者の好みにより選択された所望の色彩または模様が施された層であり、この実施例の塗装層3は、図4に示すように、把持用ケース2の表面に形成された下地塗装層5と、下地塗装層5の表面に形成されたカラー塗装層6と、カラー塗装層6の表面に形成されたクリア塗装層7とから構成されている。
【0015】
下地塗装層5は、表面の細かい傷を埋め表面を平滑にすることを目的とした層であり、目止め剤(サーフェイサー)を塗布することにより形成されている。なお、下地塗装層5を形成する前に把持用ケース2の表面に塗料密着性向上剤を塗布してもよい。
【0016】
カラー塗装層6は、キー1の所有者の好みにより選択された色彩で着色された層であり、水性塗料、油性塗料、またはマジョーラ(日本ペイント株式会社の登録商標)などで形成してもよい。
【0017】
クリア塗装層7は、艶出しや表面保護、手触りをよくするなどの目的で塗装された層であり、色の着いていない樹脂(ラッカーやウレタンなど)で形成され、あるいはマニキュアコート施工などにより形成してもよい。
【0018】
このように、塗装層3を、下地塗装層5、カラー塗装層6およびクリア塗装層7の三層で形成することにより、所望の色彩を呈する塗装層を把持用ケースの表面に鮮明かつ確実に定着させることができると共に、強度を備えキズが付きにくい塗装層を形成することができる。
【0019】
また、カラー塗装層6の表面には、図4に示すように、模様を形成するための模様形成用シート材8が貼着されている。模様形成用シート材8には、例えば所有者の氏名や各国の国旗など所望の模様が印刷されており、この模様形成用シート材8をカラー塗装層6の表面に貼着した上でクリア塗装層7を形成することで、所望の模様を呈した塗装層を把持用ケースの表面に確実に定着させることができると共に、模様形成用シート材8を貼着したことによる段差を無くすことができる。ただし、所有者の変更等で模様形成用シート材8を後に剥がす必要がある場合は、クリア塗装層7の上面に模様形成用シート材8を貼着してもよい。
【0020】
つぎに、把持用ケース2を備えたキー1の塗装方法について説明する。
把持用ケース2を備えたキー1の塗装方法は、把持用ケース2をパーツ毎に分解する工程と、把持用ケース2の各パーツをクリーニングする工程と、把持用ケース2の各パーツを修復する工程と、塗装を施さない部位をマスキングする工程と、脱脂する工程と、把持用ケース2の表面に塗料密着性向上剤を塗布する工程と、把持用ケース2の表面に下地塗装層5を形成する工程と、下地塗装層5の表面を平滑化する工程と、脱脂する工程と、下地塗装層5の表面にカラー塗装層6を形成する工程と、マスキングを除去する工程と、カラー塗装層5の表面に模様を形成するための模様形成用シート材8を貼着する工程と、カラー塗装層5の表面にクリア塗装層7を形成する工程と、クリア塗装層7を乾燥させる工程とを経て把持用ケース2を塗装する方法である。以下、各工程について順次詳述する。
【0021】
把持用ケース2をパーツ毎に分解する工程では、図2に示すように、把持用ケース2を表側ケース2aと裏側ケース2bに分解する。これは不必要な部位に塗料を付着させないためであると共に、リモコンキーの場合は電池交換の際に分解が必要となるため分解可能な状態で塗装する必要があるためである。
【0022】
把持用ケース2の各パーツをクリーニングする工程では、各パーツに付着している油分や汚れを布や表面処理用ペーパーなどで除去する。これにより、塗装層3の剥離を防止できる。
【0023】
把持用ケース2の各パーツを修復する工程では、各パーツのキズ、カケまたは割れなどを補修する。キズ、カケまたは割れなどにはパテを充填し、表面処理用ペーパーで成形を行いながら補修を行う。
【0024】
塗装を施さない部位をマスキングする工程では、図3に示すように、塗装を施さない部位(例えば中央の商標部位や鍵部4)にマスキングテープ10にて塗料が付着しないように被覆する。特に中央の商標部位は慎重なマスキングが必要でマスキングテープ10を大きめに貼付した後、輪郭に沿ってカッターナイフで不要なマスキングテープ10を切り取り除去する。
【0025】
脱脂する工程では、把持用ケース2の表面に付着した油分や汚れを脱脂剤を用いて拭き取る。
【0026】
把持用ケース2の表面に塗料密着性向上剤を塗布する工程では、塗料を把持用ケース2の表面により密着させるために、必要に応じて塗料密着性向上剤を塗布する。
【0027】
把持用ケース2の表面に下地塗装層5を形成する工程では、把持用ケース2の表面全体にサーフェイサーをスプレーで塗布する。また、爪で引っ掛からない程度のキズはこの工程で表面処理用ペーパーをかけて消去する。
【0028】
下地塗装層5の表面を平滑化する工程では、ザラザラな部分がなくなるまで、目の細かい表面処理用ペーパーをかける。
【0029】
脱脂する工程では、再度、把持用ケース2の表面に付着した油分や汚れを脱脂剤を用いて取り除く。
【0030】
下地塗装層5の表面にカラー塗装層6を形成する工程では、所有者の希望する色彩の塗料をスプレーで塗布する。使用する塗料は水性塗料、油性塗料のいずれでもよい。一般に水性塗料と油性塗料とを双方塗布して塗装層を形成することはないが、水性塗料をドライヤーで十分乾かした後、後述する油性塗料であるクリア塗装層7を形成すれば剥離することはなく水性塗料の使用が可能である。
【0031】
マスキングを除去する工程では、塗装を施さない部位に貼付したマスキングテープ10を剥がして除去する。マスキングテープ10の剥離に伴って境目の塗料が剥がれないようにカッターナイフ等を使用して注意深く除去する。一般にマスキングテープ10の除去は、後述するクリア塗装層7を形成した後に行うが、カラー塗装層6がマスキングテープ10の除去に伴って、特にその境目部分で剥離しないようにこの段階でマスキングテープ10の除去を行う。
【0032】
カラー塗装層6の表面に模様を形成するための模様形成用シート材8を貼着する工程では、図4に示すように、例えば所有者の氏名や各国の国旗など所望の模様が印刷された模様形成用シート材8をカラー塗装層6の表面に貼着する。
【0033】
カラー塗装層6の表面にクリア塗装層7を形成する工程では、カラー塗装層6および模様形成用シート材8の表面全体に二液型の油性クリア塗料をスプレーで塗布してクリア塗装層7を形成する。これにより、強度に優れキズが付き難くカラー塗装層6が剥離しない塗装層3を形成できる。
【0034】
また、模様形成用シート材8をカラー塗装層6とクリア塗装層7との間に介在させることで、所望の模様を呈した塗装層3を把持用ケースの表面に確実に定着させることができると共に、模様形成用シート材8を貼着したことによる段差を無くすことができる。より具体的には、クリア塗装後に表面処理用ペーパーをかけ、これらの工程を繰り返すことにより、模様形成用シート材8分の厚みよる段差をなくし平らにする。なお、所有者の変更等で模様形成用シート材8を後に剥がす必要がある場合は、クリア塗装層7の上面に模様形成用シート材8を貼着してもよい。
【0035】
クリア塗装層7を乾燥させる工程では、塗料を完全に硬化させるために、赤外線を30分程度照射して乾燥させる。
把持用ケース2を備えたキー1は以上の工程を経て塗装されている。
【符号の説明】
【0036】
1 把持用ケースを備えたキー
2 把持用ケース
3 塗装層
4 鍵部
5 下地塗装層
6 カラー塗装層
7 クリア塗装層
8 模様形成用シート材
10 マスキングテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持用ケースを備えたキーであって、前記把持用ケースの表面には所望の色彩または模様が施された塗装層が形成されていることを特徴とする把持用ケースを備えたキー。
【請求項2】
前記塗装層は、前記把持用ケースの表面に形成された下地塗装層と、該下地塗装層の表面に形成されたカラー塗装層と、該カラー塗装層の表面に形成されたクリア塗装層とを有している請求項1に記載の把持用ケースを備えたキー。
【請求項3】
前記カラー塗装層の表面には模様を形成するための模様形成用シート材が貼着されている請求項2に記載の把持用ケースを備えたキー。
【請求項4】
把持用ケースを備えたキーの前記把持用ケースの表面に塗装を施す塗装方法であって、前記把持用ケースの表面に下地塗装層を形成する工程と、前記下地塗装層の表面にカラー塗装層を形成する工程と、前記カラー塗装層の表面にクリア塗装層を形成する工程とを有していることを特徴とする把持用ケースを備えたキーの塗装方法である。
【請求項5】
前記把持用ケースを備えたキーおよびその塗装方法は、前記下地塗装層の表面にカラー塗装層を形成する工程と、前記カラー塗装層の表面にクリア塗装層を形成する工程との間に、前記カラー塗装層の表面に模様を形成するための模様形成用シート材を貼着する工程を有している請求項4に記載の把持用ケースを備えたキーの塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−127066(P2012−127066A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277553(P2010−277553)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(510329084)
【Fターム(参考)】