説明

把持装置及び吊り上げ搬送具

【課題】 吊り上げ搬送物たる屈撓性シート体の製造において負担を負わせることなく的確に該屈撓性シート体を吊り上げることができ、しかも構造を簡素化できる把持装置を提供する。
【解決手段】 吊り上げ状態にあるときに、作動力伝達機構U2としての支持板33、支持軸34、規制軸36が、開閉機構U1としての一対の作動レバー9,10、リンク機構21に、該開閉機構U1及び一対の把持板13,31の重量を作動力として作用させ、一対の把持板13,31を閉状態とする。これにより、特別にシリンダユニット等の駆動源を用いなくても、吊り上げ時に、一対の把持板13,31をもって屈撓性シート体Sの周縁部を挟持(把持)し、屈撓性シート体Sの周縁部に特別にリング状の引っ掛け具等を設けなくても、その屈撓性シート体Sを吊り上げるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置及び吊り上げ搬送具に関する。
【背景技術】
【0002】
吊り上げ搬送物を吊り上げ搬送する際に、その吊り上げ搬送物を把持するものとして把持装置が用いられている。把持装置としては多くのものが提案されており、基本的には、特許文献1に示すように、開閉可能とされる一対の把持板とシリンダユニットとを連係させ、そのシリンダユニットを作動させることにより、一対の把持部材を閉じて吊り上げ搬送物を挟持(把持)するものとなっている。これにより、この把持装置を吊り上げ搬送具に取付け、その把持装置を用いれば、吊り上げ搬送物を把持しつつ搬送できることになる。しかし、このような把持装置は、シリンダユニット等の駆動源が必要となり、装置自体が大掛かりならざるを得ない。
【0003】
このため、把持装置の簡素化を図るべく、吊り上げ搬送物(例えば屈撓性シート体)を把持しつつ吊り上げ搬送するに際しては、その吊り上げ搬送物の周縁部に複数の引っ掛け具を取付ける一方、吊り上げ搬送具から複数のチェーンを垂下させ、その各チェーンの下端部にフックをそれぞれ取付け、その各フックを吊り上げ搬送物における各引っ掛け具に引っ掛けて、吊り上げ搬送することが行われている。
【特許文献1】特開平7−48086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような場合、吊り上げ搬送物の吊り上げ搬送を確実に行うことができるものの、吊り上げ搬送物の周縁部に複数の引っ掛け具を取付けなければならず、吊り上げ搬送物の製造において負担を負うことになっている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その第1の技術的課題は、吊り上げ搬送物の製造において負担を負わせることなく的確に該吊り上げ搬送物を吊り上げることができ、しかも構造を簡素化できる把持装置を提供することにある。
第2の技術的課題は、上記把持装置を利用した吊り上げ搬送具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第1の技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)にあっては、
吊り上げ搬送具に取付けられる把持装置であって、
一対の把持板と、
前記一対の把持板に機械的に連係され、その作動に基づき該一対の把持板を開閉動させる開閉機構と、
前記開閉機構に機械的に連係され、吊り上げ状態にあるとき、該開閉機構及び前記一対の把持板の重量を作動力として該開閉機構に作用させて該一対の把持板を閉状態とする作動力伝達機構と、
を備えている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2〜11の記載の通りとなる。
【0007】
上記第2の技術的課題を達成するために本発明(請求項12に係る発明)にあっては、
構造体に把持装置が取付けられ、該把持装置が、屈撓性シート体を保持する際に、該屈撓性シート体の周縁部を把持する吊り上げ搬送具であって、
前記把持装置が、前記屈撓性シート体の周縁部を挟持するための一対の把持板と、前記一対の把持板に機械的に連係されその作動に基づき該一対の把持板を開閉動させる開閉機構と、前記開閉機構に機械的に連係され、吊り上げ状態にあるとき、該開閉機構及び前記一対の把持板の重量を作動力として該開閉機構に作用させて該一対の把持板を閉状態とする作動力伝達機構と、を備えている構成とされている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によれば、吊り上げ状態にあるときに、作動力伝達機構が、開閉機構に該開閉機構及び一対の把持板の重量を作動力として作用させて該一対の把持板を閉状態とすることから、特別にシリンダユニット等の駆動源を用いなくても、吊り上げ時に、一対の把持板をもって吊り上げ搬送物の周縁部を挟持できることになり、吊り上げ搬送物の周縁部に特別にリング状の引っ掛け具等を設けなくても、その吊り上げ搬送物を吊り上げることができることになる。このため、吊り上げ搬送物の製造において負担を負わせることなく的確に該吊り上げ搬送物を吊り上げることができ、しかも構造を簡素化できる把持装置を提供できることになる。
【0009】
請求項2に係る発明によれば、一対の把持板が、吊り上げ搬送具に屈撓性シート体を保持する際に、該屈撓性シート体の周縁部を把持するものであるであることから、吊り上げ搬送物が屈撓性シート体であるときも、的確に前記請求項1と同様の作用効果を得ることができることになる。
【0010】
請求項3に係る発明によれば、支持軸が、一対の把持板、リンク機構及び一対の作動レバーを略水平方向に並べた状態から該支持軸を介して吊り上げたとき、該支持軸を中心として、該一対の把持板、該リンク機構及び該一対の作動レバーを、該一対の把持板を開状態とする一方の作動レバーの揺動方向に回動させるように配置されていることから、吊り上げ状態において、その回動により一方の作動レバーが規制部材に当接した後は、未だ回動させようとする回動力を反作用として利用して、一対の作動レバーに対して接近動させる方向の力を加え続けることができることになる。このため、吊り上げ状態において、シリンダユニット等の駆動源を用いることなく、一対の把持板、リンク機構及び一対の作動レバーの重量を利用して、一対の把持板により屈撓性シート体を挟持(把持)し続けることができることになり、屈撓性シート体の製造において負担を負わせることなく的確に該屈撓性シート体を吊り上げることができると共に構造を簡素化できる把持装置を具体的に提供できることになる。
【0011】
請求項4に係る発明によれば、一方の作動レバーが、一対の作動レバーのうちの上側配置の作動レバーとされ、支持軸が、一対の把持板、リンク機構及び一対の作動レバーを略水平方向に並べた状態から該支持軸を介して吊り上げたとき、該支持軸を中心として、該一対の把持板、該リンク機構及び該一対の作動レバーを、上側配置の作動レバーの揺動方向であって一対の作動レバーのうちの下側配置の作動レバーに対して離間する方向に回動させるように配置されていることから、規制部材と一方の作動レバーとが当接状態にあるときには、一対の把持板がリンク機構や一対の作動レバーよりも下側に位置することになり、屈撓性シート体を挟持し続け易い姿勢とすることができることになる。
また、規制部材と一方の作動レバーとが当接状態にあるときには、一対の把持板が、リンク機構や一対の作動レバーよりも下側に位置する姿勢を採るだけでなく、支持軸から水平方向にずれて位置することになり、屈撓性シート体側の荷重(重量)をも、一対の把持板、リンク機構及び一対の作動レバーを回動させようとする回動力として取り込むことができることになり、一対の把持板の挟持力を高めることができることになる。このため、屈撓性シート体側の荷重が増えても、それに伴って一対の把持板の挟持力を高めることができ、屈撓性シート体側の重量の変化に的確に対応できることになる。
【0012】
請求項5に係る発明によれば、上側配置の作動レバーの外縁が、該上側配置の作動レバーの長手方向外端側に向って順に、第1外縁と、該第1外縁よりも下側配置の作動レバーから離間する方向に起き上がった第2外縁と、を有するように設定され、規制部材が、支持軸を介して一対の把持板、リンク機構及び一対の作動レバーが吊り上げられている状態において該一対の把持板が閉状態のとき、第2外縁に当接するように設定されていることから、支持軸から水平方向にずれる一対の把持板等のずれ量(モーメント腕長さ)の低下を抑制して、一対の把持板、リンク機構及び一対の作動レバーを回動させようとする回動力が低下することをできるだけ抑えることができることになる。このため、屈撓性シート体に対する一対の把持板の挟持力を適正な状態で確保できることになる。
【0013】
請求項6に係る発明によれば、リンク機構が四節リンク機構を構成し、上側配置の作動レバー及び下側配置の作動レバーが、四節リンク機構のリンク部材として利用されていることから、部品点数の低減を図ることができることになる。
【0014】
請求項7に係る発明によれば、一対の把持板のうちの一方の把持板及び該一対の把持板のうちの他方の把持板が、その各内面において柱状部材をそれぞれ有し、一方の把持板に対する他方の把持板の閉動作に基づく該他方の把持板における柱状部材の移動領域に、一方の把持板における柱状部材が存在しないように設定されていることから、一対の把持板が閉状態にあるときにおいて、その一対の把持板間に互いに干渉させることなく柱状部材を存在させることができることになる。このため、各柱状部材と各把持板の内面とにより屈撓性シート体を局部的に挟持できることになり、その局部的な挟持力をもって屈撓性シート体を一対の把持板に強固に挟持できることになる。
【0015】
請求項8に係る発明によれば、最もリンク機構に近い側に位置する円柱状部材同士を当接させて一対の把持板を予め所定の開状態にしておくことができることになり、一連の屈撓性シート体の把持作業の軽減を図ることができることになる。
また、一対の作動レバーを通じて所定以上の外力を加えることにより、最もリンク機構に近い側に位置する円柱状部材同士を擦りながら相対移動させて、その当接関係を解除すれば、節度感を得ることができ、その節度感をもって屈撓性シート体の把持工程が適正に所定段階を経たことを認識することができることになる。
さらに、最もリンク機構に近い側に位置する円柱状部材同士が擦りながら相対移動して、その当接関係を解除したときには、以後、その両円柱状部材同士の擦れ関係が一種のストッパ(抵抗)として働き、一対の把持板が閉状態から開動作に移行することを規制することになる。このため、吊り上げに基づく回動力が働くまでの間、一対の把持板をもって屈撓性シート体を仮把持することができることになる。
【0016】
請求項9に係る発明によれば、上側配置の把持板と下側配置の把持板とが、該各把持板の内面において、円柱状部材を、該円柱状部材の軸心を支持軸の軸心方向に延ばすようにして有し、各円柱状部材の外周面に複数の突部が設けられ、各突部が、各円柱状部材の外周全周に亘って延ばされていると共に、該円柱状部材の軸心方向に所定間隔毎に配置されていることから、各円柱状部材だけの場合よりも、各突部が屈撓性シート体に対する食い込みを高めることになり、一層、屈撓性シート体に対する局部的な挟持力を高めることができることになる。
【0017】
請求項10に係る発明によれば、上側配置の把持板と下側配置の把持板とが、該各把持板の内面において、円柱状部材を、該円柱状部材の軸心を支持軸の軸心方向に延ばすようにして有し、各円柱状部材の外周面に複数の突部が設けられ、各突部が、各円柱状部材の軸心方向に延ばされていると共に、該各円柱状部材の周回り方向に所定間隔毎に配置されていることから、屈撓性シート体に対する各突部の食い込みによって、単に、屈撓性シート体に対する局部的な挟持力を高めることができるだけでなく、各突部が支持軸の軸心方向と同方向に長く延びていることをもって、屈撓性シート体の抜け方向の抵抗を高め、屈撓性シート体が一対の把持板から抜けることを効果的に防止できることになる。
【0018】
請求項11に係る発明によれば、下側配置の作動レバーが、略真っ直ぐに延びていると共に、該下側配置の作動レバーの内面に、リンク機構よりも前側において下側配置の把持板が固定され、下側配置の作動レバーの前端面が、該下側配置の作動レバーの内面側から外面側に向かうに従って後側に引っ込むように傾斜されていることから、下側配置の作動レバーを施工面に降ろした状態で上側配置の作動レバーを、一対の把持板が開状態となる方向に揺動させれば、傾斜した上側配置の作動レバーの前端面が施工面に当接して当該把持装置が前側に移動することを規制することから、上側配置の作動レバーの操作だけで一対の把持板の開操作(屈撓性シート体の把持解除操作)を行うことができることになる。
しかもこの場合、下側配置の把持板が、その前端側が後端側に比して下側に位置するように傾斜することから、屈撓性シート体を容易に一対の把持板から抜くことができることになる。さらには、上側配置の作動レバーの揺動操作に伴って、下側配置の作動レバーが起き上がって、その下側配置の作動レバーを持ちやすくなることから、両作動レバーをもって屈撓性シート体の把持解除操作を確実に行うことができることになる。
またこの場合、吊り上げ状態の場合に比して、上側配置の作動レバーの開操作の範囲を広げることができ、上記下側配置の把持板の傾斜状態と相まって、一対の把持板の開状態を大きくとることができることになる。このため、屈撓性シート体を一対の把持板間に取り込む作業も容易に行うことができることになる。
【0019】
請求項12に係る発明によれば、構造体に把持装置が取付けられ、該把持装置が、屈撓性シート体を保持する際に、該屈撓性シート体の周縁部を把持する吊り上げ搬送具であって、前記把持装置が、前記屈撓性シート体の周縁部を挟持するための一対の把持板と、前記一対の把持板に機械的に連係されその作動に基づき該一対の把持板を開閉動させる開閉機構と、前記開閉機構に連係され、吊り上げ状態にあるとき、該開閉機構及び前記一対の把持板の重量を作動力として該開閉機構に作用させて該一対の把持板を閉状態とする作動力伝達機構と、を備えていることから、前記請求項1に係る把持装置を利用した吊り上げ搬送具を提供できることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図12は第1実施形態を示す。この第1実施形態において、符号1は吊り上げ搬送具で、この吊り上げ搬送具1は、構造体2と、その構造体2に取付けられる複数の把持装置3とを備えている。
【0021】
前記構造体2は、本実施形態においては、図1に示すように、真っ直ぐに延びる第1構造材4と、その第1構造材4の両端部に水平状態を保ちつつ対向するように一体化される一対の第2構造材5とを備えている。第1構造材4は、その長手方向長さが、吊り上げ搬送すべき土木構築物用ユニット(屈撓性シート体Sの表面に塊状部材を取付けたもの)の長さを考慮して決められており、その長手方向長さに応じた強度、特に曲げ強度が確保されている。各第2構造材5も、真っ直ぐに延びる形状とされており、その各第2構造材5の上面には、その長手方向両端部において半リング状の連結具6が取付けられている。その各連結具6は、チェーン7を介してクレーン(図示略)に連結されており、構造体2は、クレーンにより、チェーン7を介して吊り上げられることになっている。一方、この各第2構造材5の下面側には、複数のチェーン8が取付けられている。その各チェーン8は、各第2構造材5において、その長手方向に所定間隔毎に垂下されており、その各チェーン8の下端部には、前記把持装置3が取付けられている。
【0022】
前記各把持装置3は、図2に示すように、一対の把持板13,31と、開閉機構U1と、作動力伝達機構U2とを備えており、これらは、機械的に連係されて一体化されている。
【0023】
前記一対の把持板13,31は、土木構築物用ユニットの屈撓性シート体Sの周縁部を挟持すべく、図2〜図5に示すように、当該把持装置3の前側において上下に配置されている。この一対の把持板13,31である下側配置の把持板13と上側配置の把持板31とは、開閉機構U1により、接近、離間動されることになっており、この接近、離間動に基づき、一対の把持板13,31は開閉されることになっている。この下側配置の把持板13の内面には、複数の円柱部材Sdが設けられ、上側配置の把持板31の内面には、複数の円柱部材Suが設けられている。本実施形態においては、下側配置の把持板13の内面に2本の円柱部材Sdが、その各軸心方向を該把持板13の前後方向(図2,図4中、左右方向)に直交するようにした状態で溶接等により固定されており、その2本の円柱部材Sdは、把持板13の前後方向内方側において、その前後方向に一定間隔、離間された状態とされている。この把持板13の2本の円柱部材Sdを、把持板13の後端側から前端側に向けて順に、符号Sd1,Sd2をもって示す。上側配置の把持板31の内面には3本の円柱部材Suが、その各軸心方向を該把持板31の前後方向に直交するようにした状態で溶接等により固定されており、その3本の円柱部材Suは、把持板31の前後方向両側及びその前後方向中央部に配置され、隣り合う円柱部材Suは互いに離間された状態とされている。この上側配置の把持板31の3本の円柱部材Suを、把持板の後端側から前端側に向けて順に、符号Su1,Su2,Su3をもって示す。
【0024】
また、本実施形態においては、図3,図5,図6に示すように、各円柱部材Su1,Su2,Su3(Sd1,Sd2)の外周面には、把持対象物たる屈撓性シート体Sに対する保持面積を高めるべく、複数の突部32が形成されている。各突部32は、若干の突出状態をもって円柱部材Su1,Su2,Su3(Sd1,Sd2)の全周に亘って形成されており、その各突部32は、円柱部材の軸心方向に一定間隔毎に配置されている。このような各円柱部材Su1,Su2,Su3(Sd1,Sd2)は、図6に示すように、隣り合う円柱部材との関係において、各突部32が、円柱部材の軸心方向にずれた位置関係となっており、このうち特に、円柱部材Su1とSd1との関係については、円柱部材Su1が円柱部材Sd1に対して擦れることになっており(詳細については後述)、そのときには、一方の円柱状部材Su1(又はSd2)の突部32が、他方の円柱状部材Sd2(又はSu2)の隣り合う突部32間においてその他方の円柱部材Sd2(又はSu2)表面をこすることになっている。
【0025】
前記開閉機構U1は、図2〜図5に示すように、前記一対の把持板13,31に対する開閉操作を行うための一対の作動レバー9,10と、その一対の作動レバー9,10の動作を前記一対の把持板13,31に開閉動として伝達するリンク機構21とを備えている。
【0026】
前記一対の作動レバー9,10は、図3,図4に示すように、上下方向に離間させて配置されている。このうち、下側配置の作動レバー9は、真っ直ぐに延びる形状とされており、その延び方向は、当該把持装置3の前後方向と略同方向とされている。この下側配置の作動レバー9は、その延び方向後端側の部分が、円柱状に形成されており、その円柱状部分よりも前端側の部分は、板面を側方に向けつつ帯状をもって延びる形状に形成されている。この下側配置の作動レバー9には、その後端側の円柱状部分において、ゴム、樹脂等の被覆材が被覆されて、把手部12が形成されており、その下側配置の作動レバー9における前端部の内面(図4中、上面)には、前記下側配置の把持板13が固定されている。しかも、この下側配置の作動レバー9の前端面は傾斜面11として形成されており、その傾斜面11は、その下側配置の作動レバー9の内面側(図4中、上側)から外面側(図4中、下側)に向うに従って該下側配置の作動レバー9の後端側に向けて引っ込むように傾斜されている。
また、この下側配置の作動レバー9の内面側には、把持板13と把手部12との間において、後述のリンク機構21の構成部材として、起立板14が一体化されている。この起立板14は、その板面を下側配置の作動レバー9における前端側の板面と同方向に向けつつ起立されており、その起立板14の起立端部には、2個所の連結部15,16が形成されている。この2個所の連結部15,16は、起立板14の起立端部において、前後方向に離間した状態で位置されており、その両連結部15,16は、起立端部のその他の部分よりも高く突出することになっている。尚、符号41は、起立板14を下側配置の作動レバー9に取付けるための留め具である。
【0027】
前記一対の作動レバー9,10のうち、上側配置の作動レバー10は、図3〜図5に示すように、帯材を用いて、基本的に略真っ直ぐに延びる形状とされ、その配置は、多少、上下に傾きつつあるも、その延び方向は当該把持装置3の前後方向に向けられている。この上側配置の作動レバー10の延び方向後方側部分17は、その延び方向前方側部分18に比して下側配置の作動レバー9よりも離間することになっており、その延び方向後方側部分には、ゴム、樹脂等の被覆材が被覆されて把手部19が形成されている。上側配置の作動レバー10における延び方向前方側部分18は、その延び方向後方側部分17に対して多少、外側に屈曲されており、その部分18は、後述のリンク機構21の構成部材として機能すべく、下側配置の作動レバー9における起立板14の上方側に位置されている。
【0028】
また、上側配置の作動レバー10は、図4に示すように、外縁20(図4中、上縁)として角度の異なる第1,第2外縁20a,20bを有している。この第1,第2外縁20a,20bは、把手部19側に向うに従って連続的に形成されており、その第2外縁20bは、第1外縁20aに対して起き上がるように傾斜されている。
【0029】
前記リンク機構21は、図3,図4に示すように、前記上側配置の作動レバー10の延び方向前方側部分18と、前記下側配置の作動レバー9における起立板14と、リンク部材22と、リンク部材23とによって四節リンクが構成されている。リンク部材22は、真っ直ぐに延びる形状とされており、その一端部が前記起立板14の連結部15に回転軸24を介して回動可能に支持され、その他端部は、上側配置の作動レバー10における延び方向前方側部分18に回転軸25を介して回転可能に連結されている。本実施形態においては、リンク部材22は、一対のリンク部材22とされており、その一対のリンク部材22は、上側配置の作動レバー10における延び方向前方側部分18及び起立板14の連結部15を挟持する配置となっている。
【0030】
一方、リンク部材23は、図3,図4に示すように、屈曲されて略L字状(略直角形状)に形成されており、その一方側の端部が起立板14の連結部16に回転軸26を介して回動可能に支持され、そのリンク部材23の屈曲部が前記上側配置の作動レバー10における延び方向前方側部分18の外端部に回転軸27を介して回動可能にされている。これにより、リンク部材23の他方側は、上側配置の作動レバー10の延び方向前方側部分18の外方へと延びることになる。本実施形態においては、リンク部材23に関しても、一対のリンク部材23が用いられており、その一対のリンク部材23の一方側は、上側配置の作動レバー10における延び方向前方側部分18の外端部と起立板14の連結部16とを挟持するように配置されている。尚、一対のリンク部材23の他方側間は、連結部28をもって連結されている。
【0031】
このリンク部材23の他方側には、連結軸29を介して前記上側配置の把持板31が取付けられている。具体的には、連結軸29は、突出量調整を可能とすべく、一対のリンク部材23間を貫通され、その連結軸29に螺合された一対のナット30が一対のリンク部材23を、その幅方向(図4中、上下方向)において挟持することになっており、その連結軸29の突出端部には、下側配置の把持板13が存在する側において把持板31が溶接等により固定されている。これにより、上側配置の把持板31が、下側配置の把持板13の上方側に配置されることになり、一対の作動レバー9,10の揺動操作、その揺動操作を開閉動として伝達するリンク機構21に基づき、上側配置の把持板31と下側配置の把持板13とは、接近、離間動(開閉動)して、屈撓性シート体Sを挟持(把持)することになる。
【0032】
上記一連の機構の作動を具体的に、図4に示す矢印により説明すれば、次の通りとなる。
上側配置の作動レバー10を、その把手部19が下側配置の作動レバー9の把手部12に近づくように揺動させれば、リンク部材22がその一端部を中心として図4中、反時計方向に回動することになり、上側配置の作動レバー10における延び方向前方側部分18が前側に向けて変位動することになる。これに伴い、リンク部材23が、その一方側の端部(回転軸26)を中心として図4中、反時計方向に回動することになり、把持板31は、下側配置の作動レバー9における把持板13に接近し、その両把持板31,13は、その両板面が対向した状態で近接位置をとることになる。このような状態から逆に、上側配置の作動レバー10を、その把手部19が下側配置の作動レバー9の把手部12から離間するように揺動させれば、上述とは逆の作動により、上側配置の把持板31は、下側配置の把持板13から離間することになる。
【0033】
また、本実施形態においては、前述した如く、上側配置の把持板31の内面には円柱状部材Su1,Su2,Su3が備えられ、下側配置の把持板13の内面には円柱状部材Sd1,Sd2が備えられているが、これらは、基本的には、上述の一対の把持板13,31の接近、離間動に伴って干渉しない関係(配置)となっている。しかし、把持板31の円柱状部材Su1と把持板13の円柱状部材Sd1とに関しては、作業性等を高める観点から、一定関係が設定されている。具体的に図7〜図9をもって説明する。
【0034】
把持板31と13とが開状態のときには、それに伴って、把持板31の円柱状部材Su1,Su2,Su3と把持板13のSd1,Sd2とが離間した状態になる一方(図7参照)、把持板31と13とが閉状態のときには、把持板31(13)の後端側(図中、右端)から前端側(図中、左端側)に向けて順に、円柱状部材Su1,Sd1,Su2,Sd2,Su3が、隣り合う円柱状部材間に多少の間隙をあけつつ並ぶことになっている(図9参照)。これにより、把持板31と13とが開状態において、その両者31,13間に把持(挟持)対象物である屈撓性シート体Sを取り込み、把持板31と13とを閉じたときには、シート状物Sは、各円柱状部材Su1,Sd1,Su2,Sd2,Su3に案内されて蛇腹状になり、各円柱状部材Su1(Sd1,Su2,Sd2,Su3)と、その各各円柱状部材Su1(Sd1,Su2,Sd2,Su3)が取付けられていない側の把持板13(31)とにより挟持されることになる。この結果、屈撓性シート体Sは、閉状態の把持板31と13との間から引き抜けないことになる。
【0035】
この場合、本実施形態においては、把持板31と13とが開状態のときから、把持板31を把持板13に接近動させた場合(所定の開状態時)には、先ず、把持板31の円柱状部材Su1と把持板13の円柱状部材Sd1とだけが当接し、外力を加えない限り、その状態が維持されることになっている(図8参照)。この状態から、作動レバー9,10の把手部12,19間の距離を近づける操作を行った場合には、把持板31と13とがさらに接近動し、円柱状部材Su1とSd1とは擦れる状態となる。この擦れ状態は、作動レバー10における把手部19と作動レバー9における把手部12との間の距離を近づける操作をさらに続けることにより、解除され、その後、さらなる操作に基づくわずかな変位動によって、円柱状部材Su1が把持板13の内面に擦れる状態で当接することになる。
このため、屈撓性シート体Sを把持するに際して、円柱状部材Su1とSd1との擦れ状態から円柱状部材Su1と把持板13内面との擦れ状態へ移行した後は、円柱状部材Su1と把持板13の内面との擦れ関係に基づき、少なくとも、円柱状部材Su1と把持板13の内面との局部的挟持力によって屈撓性シート体Sを確実に把持(挟持)状態に維持でき、しかも、その状態は、円柱状部材Su1とSd1との間の擦れ関係を一種のストッパ(抵抗)として利用することにより、簡易的に維持できること(簡単には一対の把持板13,31が開かないこと)になる。本実施形態においては、円柱状部材Su1以外の円柱状部材Su2,Su3,Sd1,Sd2に関しては、その各円柱状部材を取付けていない側の把持板13又は31に対して若干、隙間があけられているものの、上記状態においては、円柱状部材Su2,Su3と把持板13内面、円柱状部材Sd1,Sd2と把持板31とによっても、屈撓性シート体Sを局部的に把持(挟持)できるように設定されている。
【0036】
またこのとき、円柱状部材Su1とSd1とが擦れる関係は、節度感を得るためにも利用されている。円柱状部材Su1とSd1との擦れ関係を経ると、そのとき、節度感を得ることができることになり、その節度感を、一対の把持板13,31を閉とするときに得たときには、把持作業のための所定の段階を経たことを認識でき、その節度感を、一対の把持板13,31を開とするときに得たときには、把持作業の解除がなされたことを認識できることになる。
【0037】
前記作動力伝達機構U2は、吊り上げ時に、前記一対の把持板13,31及び前記開閉機構U1の重量を該開閉機構U1に作用させて該一対の把持板を閉状態とするべく、支持板33と、支持軸34と、規制部材としての規制軸36と、を備えている。
【0038】
前記一対の帯状の支持板33は、上側配置の作動レバー10,起立板14等を間に挟みつつ、上下方向に延びるように配設されている。この両支持板33の上端部は、吊り上げ搬送具1に対する取付け部とするべく、支持軸35により連結されており、この支持軸35には、前述の吊り上げ搬送具1から垂下するチェーン8がシャックル等の連結具37を介して連結される。
【0039】
前記支持軸34は、当該把持装置3を吊り上げ可能とすべく、図3〜図5に示すように、前記起立板14を貫通すると共に、その支持軸34の両端部は、前記一対の支持板33の両下端部をも連結している。この場合、起立板14と一対の支持板33とは支持軸34を介して回転可能となっており、その態様としては、支持軸34の両端部を一対の支持板33の下端部に固定した上で、その支持軸34に起立板14を回転可能に貫通させる態様、支持軸34を起立板14に回転不能に貫通させた上で、その支持軸34の両端部に対して支持板33を回転可能に支持する態様のいずれか又は両方が採られる。
【0040】
前記支持軸34の位置は、当該把持装置3を支持板33を介して吊り上げたとき、一対の把持板13,31及び開閉機構U1の重量に基づき、支持軸34を中心として、その一対の把持板13,31及び開閉機構U1に回動力を付与することになるように配置(設定)されている。
すなわち、当該把持装置3に関し、その把持装置3を水平面上に載置した状態においては、支持軸34よりも前側部分(一対の把持板13,31等が存在する側)の荷重W1は、支持軸34よりも後側部分の荷重W2よりも格段に重くなっており、下側配置の作動レバー9が水平状態に載置された状態から当該把持装置3が吊り上げられたとき、一対の把持板13,31等の前側部分は、その荷重に基づき、支持軸34を中心として、図4中、反時計方向に回動するように設定されている。
【0041】
前記規制軸36は、図3,図4,図10に示すように、前記一対の支持板33の延び方向内方側において、該一対の支持板33を連結している。この規制軸36は、一対の支持板33間を通る上側配置の作動レバー10よりもその上端部側に位置され、その位置は、一対の把持板13,31を開状態とする方向の作動レバー10の揺動領域に臨んでいる。このため、上述のように、吊り上げに際して、把持装置3が連結ピン34を中心として、図4中、反時計方向に回動しても、上側配置の作動レバー10の外縁20が規制軸36に当接して、一対の把持板13,31及び開閉機構U1は、所定姿勢状態で、それ以上の回動が規制されることになる。これは、一対の把持板13,31の閉状態において、当該把持装置3を吊り上げたとき、さらに回動させようとする回動力を規制軸36に作用させ、その反作用として、一対の作動レバー9,10に対して、その両把手部12,19を近づけさせようとする力を働かせ、一対の把持板13,31間の挟持力を高めようとしているのである。このため、この構成の下では、屈撓性シート体Sの周縁部を一対の把持板13,31で挟持した状態で当該把持装置3のみが吊り上げられ、屈撓性シート体S側の荷重が未だ働かない状態(吊り上げ初期状態)においては、当該把持装置3の一対の把持板13,31及び開閉機構U1の荷重が回動力として利用され、その回動力により屈撓性シート体Sに対する一対の把持板13,31の挟持力が確保される。そしてこの後、さらに吊り上げて、屈撓性シート体S側の荷重Wも吊り上げ荷重として作用するに至ったときには、それに伴い、回動力が大きくなり、把持板の31と13との把持力は、荷重Wが加わった分だけ大きくなって、その重量物を的確に把持することになる。
勿論、この吊り上げ状態においては、一対の把持板13,31及び開閉機構U1の荷重、さらには、吊り上げ搬送物の荷重が支持板34に作用して、チェーン8及び支持板3が緊張状態にあることから、回動力が作動レバー10を介して規制軸36に作用しても、規制軸36の位置が変わって把持装置3の姿勢が変わることはない。
【0042】
また、本実施形態においては、一対の把持板13,31の開状態と閉状態とでは、規制軸36に対する上側配置の作動レバー10の当接位置が異なることに着目し、一対の把持板13,31の開状態から閉状態に移行させることに伴って、回動力をできるだけ低下させない工夫が施されている。
すなわち、一対の把持板13,31の開状態から閉状態に移行させるときには、上側配置の作動レバー10における延び方向前方側部分18が、図4中、時計方向に回動すると共に前側に移動して、上側配置の作動レバー10に対する規制軸36の当接点が上側配置の作動レバー10における延び方向後方に移動することから、この場合には、第2外縁20bを規制軸36に当接させて、上記変位量をできるだけ短くし、支持軸34よりも前側部分の荷重Wの荷重点のずれ量(モーメント腕)をできるだけ長く確保し、図10中、反時計方向に把持装置3を回動させようとする回動力をなるべく低下させないようにしているのである。これにより、上述した如く、その回動力に基づき上側配置の作動レバー10が規制軸36に押し付けられ、その反作用として、一対の作動レバー9,10に、その両把手部12,19を互いに近づけさせようとする力が働くことになり、把持板31,13の把持力が低下することが抑制されることになる。この点、第1,第2外縁を20a,20bを第1外縁を20aの状態のまま真っ直ぐにした場合には(図10中、仮想線参照)、上記場合よりもLだけ余計に回動して、前記荷重点が、水平方向において、支持軸34を通る鉛直線に近づくことになり、上側配置の作動レバー10を規制軸36に押し付ける回動力は低下して、一対の把持板31,13の把持力は、上記場合に比して低下することになる。
【0043】
次に、このような把持装置3を吊り下げた吊り上げ搬送具1を用いて、土木構築物用ユニットを搬送する場合について具体的に説明する。
ここで、吊り上げ搬送物としての土木構築物用ユニットは、樹脂ネット等の屈撓性シート体にブロック、自然石等の塊状部材を複数取付けた構成となっており、その構成要素のうちの屈撓性シート体Sが、把持装置3による把持対象物となる。
【0044】
先ず、クレーンを用いて、吊り上げ搬送具1が土木構築物用ユニットの保管場所に移動され、その吊り上げ搬送具1は、把持装置3を用いて土木構築物の屈撓性シート体Sに対して把持作業を行える高さまで降ろされる。
【0045】
このとき、把持装置3は、通常、図11に示すように、把持板31,13が開いた状態となっているものの、円柱状部材Su1とSd1とが当接した状態となっていて、円柱状部材Su1とSd1との間に屈撓性シート体Sの周縁部を通すことができない状態となっている。このため、このような場合には、下側配置の作動レバー9の把手部12を握って、連結ピン34を中心として下方に揺動させる。これにより、把持装置3全体が同方向に揺動し、上側配置の作動レバー10は、規制軸36から離間する。この離間距離を利用して、下側配置の作動レバー9の把手部12を握りつつ、上側配置の作動レバー10の把手部19を握って、上側配置の作動レバー10の把手部19を上方に揺動させれば(把手部19と12とを離間させるように作動させること)、把持板31が、把持板13に対してさらに開き、円柱状部材Su1とSd1との間が開くことになる。これにより、その状態を維持しつつ、把持装置3を移動させ、屈撓性シート体Sの周縁部を、円柱状部材Su1とSd1との間を通ってその奥にまで入れる。
【0046】
次に、両作動レバー9,10の把手部12,19を握りつつ、両者12,19を近づくように揺動させる。これにより、図10に示すように、一対の把持板31,13間に円柱状部材Su1,Sd1,Su2,Sd2,Su3が把持板31(13)の前後方向に並ぶことになり、これに伴い、屈撓性シート体Sは、各円柱状部材Su1(Sd1,Su2,Sd2,Su3)に案内されて蛇腹状の形態をとることになり、その屈撓性シート体Sは、各円柱状部材Su1(Sd1,Su2,Sd2,Su3)と、その各円柱状部材Su1(Sd1,Su2,Sd2,Su3)が固定されていない側の把持板13(31)との間で局部的な挟持力をもって強固に挟持されることになる。
この場合、この把持状態に至るに際して、円柱状部材Su1とSd1とが擦りつつ移動する時があることから、そのときの節度感をもって、把持状態に至るまでの順序を踏んでいることを認識できると共に、その円柱状部材Su1とSd1との擦れを一種のストッパ(抵抗)として、閉じた把持板31と13とが開くことを簡易的に抑制できることになる。このため、円柱状部材Su1と把持板13内面とによる挟持状態は勿論、その他の円柱状部材Sd1,Su2,Sd2,Su3と、その各円柱状部材が取付けられない側の把持板31(13)内面との挟持状態に関しても、維持されることになる(仮把持)。
【0047】
次に、作業者が両レバー部材9,10の把手部12,19から手を離すと、支持軸34を中心として、一対の把持板13,31及び開閉機構U1が回動し、その回動は、図10に示すように、上側配置の作動レバー10における外縁20bが規制軸36に当接することにより規制される。このため、この未だ回動させようとする回動力は、規制軸36に対する反作用に基づき、両作動レバー9,10の把手部12,19を互いに近づける力に変換され、屈撓性シート体Sに対する把持板31,13の把持状態(挟持状態)が保持されることになる。
このとき、土木構築物全体を未だ吊り上げず、屈撓性シート体Sのみを把持する状態にあり、把持装置3には土木構築物の荷重は加わっていない。このため、このときには、一対の把持板13,31及び開閉機構U1の荷重によってのみ屈撓性シート体3の把持状態が保持されることになる。
【0048】
また、上記のように、把持板31,13を開状態から閉状態(把持状態)にした場合には、それに伴い、上側配置の作動レバー10が揺動及び変位動する結果、その上側配置の作動レバー10の外縁20と規制軸36との間で新たに回動させなければならない回動量が生じるが、前述した如く、規制軸36に第2外縁20bを当接させることにより、支持軸34よりも前側部分の荷重Wの荷重点のずれ量(モーメント腕)をできるだけ長く確保し、図10中、反時計方向に把持装置3を回動させようとする回動力をなるべく低下させないようにされる。
【0049】
次に、上記のように把持装置3による屈撓性シート体Sの把持を、全ての把持装置3において終えると、吊り上げ搬送具1は、さらに吊り上げられる。これにより、土木構築物用ユニットの荷重Wも当該把持装置3を回動させるための回動力として加わることになり、これに伴い、前述の作動に基づき、下側配置の作動レバー9の把手部12と上側配置の作動レバー10の把手部19とを互いに近づけようとする力が増加することになる。このため、吊り上げ搬送物である土木構築物用ユニットの荷重Wが加わることに伴い把持板31の把持力は高まることになり、土木構築物用ユニットの荷重Wが作用するとしても、屈撓性シート体Sに対する把持板31,13による把持は的確に維持されることになる。これにより、土木構築物用ユニットは、施工面上の設置個所まで的確に吊り上げ搬送される。
【0050】
土木構築物用ユニットが設置個所に吊り上げ搬送されると、その設置個所に土木構築物用ユニットは、降ろされる。この後、一対のレバー部材9,10の把手部12,19を互いに離間する方向に押し開けば、把持板31,13も開き、土木構築物用ユニットの屈撓性シート体Sの把持を解除される。この一対の把持板31,13を開くに際して、円柱状部材Su1とSd1とが一時的に擦れることになるが、そのとき生じる節度感をもって把持解除状態を認識することができることになる。
【0051】
また、施工面上に土木構築物用ユニットを降ろすに伴い、把持装置3も施工面上に降ろされることがあるが、その場合には、図11に示すように、上側配置の作動レバー10の把手部19を持って当該把持装置3を前側に倒し、下側配置の作動レバー9における傾斜面11を施工面40に当接させる。そして、その状態でさらに上側配置の作動レバー10の把手部19を上方側に揺動させれば、一対の把持板31,13は開くことになり、屈撓性シート体Sに対する把持が解除されることになる、この場合、把持板13の内面が前側に向かって傾斜していることから、その状態を維持しつつ、把持装置3を後方に移動させることにより、屈撓性シート体Sを一対の把持板31,13間から容易に引き抜くことができることになる。勿論この場合、上側配置の作動レバー10の把手部19を上側に揺動させることに伴い、下側配置の作動レバー9の把手部12が施工面40から離間して、握りやすくなることから、その把手部12をも握って作動させることにより、屈撓性シート体Sの解除操作を確実に行うことができることになる。このようにして、全ての把持装置3において、把持解除操作を終えると、当該吊り上げ搬送具1は、次の土木構築物用ユニットを搬送するために土木構築物の保管場所に戻される。
【0052】
尚、図12に示すように、下側配置の作動レバー9における傾斜面11を施工面11に載置された状態においては、支持板33が吊り上げられず、支持板33は、支持軸34を中心として回動可能な状態となることから、上側配置の作動レバー10を、図12中、反時計方向に大きく揺動させることができ、それに伴い、把持板31を把持板13に対して大きく開くことができることになる。このため、この状態を、土木構築物の屈撓性シート体Sを把持するに際しても利用すれば、一対の把持板31,13間への屈撓性シート体Sの取り込みを容易に行うことができることになる。
【0053】
したがって、このような把持装置3を備えた吊り上げ搬送具1を用いれば、特別にシリンダユニット等の駆動源を用いなくても、吊り上げ時に、一対の把持板13,31をもって屈撓性シート体Sの周縁部を挟持(把持)できることになり、屈撓性シート体Sの周縁部に特別にリング状の引っ掛け具等を設けなくても、土木構築物用ユニット(屈撓性シート体S)を吊り上げることができることになる。
【0054】
図13は第2実施形態を示す。この第2実施形態において、前記第1実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0055】
図12に示す第2実施形態は、円柱状部材Su(Sd)の変形例を示す。この第2実施形態においては、各円柱状部材Su(Sd)が、前記第1実施形態同様、各把持板31,13の内面に、把持板31(13)の前後方向に直交するようにしつつ、離間した状態で固定されているものの、その各円柱状部材Su(Sd)の外周面における複数の突部32は、各円柱状部材Su(Sd)の軸心方向に延ばされ、その複数の突部32は、外周面上において、周回り方向に所定間隔毎に配置されている。このため、この各突部32により、屈撓性シート体Sとの接触面積(食い込み面積)を高めることができるだけでなく、円柱状部材Su(Sd)の軸心方向に長く延びる形状に基づき効果的に屈撓性シート体に対して引き抜き抵抗を与えることができることになり、本実施形態においても、高い把持力を確保できることになる。
【0056】
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次のような態様を包含する。
(1)屈撓性シート体Sとしては、樹脂ネットの他に、金網、不織布等のシートをも対象とすること。
(2)吊り上げ搬送具1としては、当該把持装置3を備えていれば、どのような構造のものでもよいこと。
(3)円柱状部材Su(Sd)が、シボや突起付きのものであること。
(4)円柱状部材Su(Sd)の素材が、摩擦係数の大きなゴム、樹脂であること。
(5)円柱状部材Su(Sd)が、表面を滑りにくく加工したものであること。
(6)実施形態では、把持板13(31)の前側両端部に対して、図3,図5に示すように、面取りを施したが、面取りを施さずに、把持板13(31)を長方形状又は正方形状とすること。
(7)当該把持装置1は、自重(一対の把持板13,31、開閉機構U1)に基づき支持軸34を中心として回動させる必要上、鉄材等の金属材により形成することが好ましいが、自重を利用して回動させることができる限り、どのような材質を用いてもよいこと。
(8)一対の把持板13,31による把持は、挟持する態様だけでなく、一対の把持板13,31により直接的又は間接的に動かないようにしっかりと保持される広義の態様を含むこと。
【0057】
尚、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましい或いは利点として記載されたものに対応したものを提供することをも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1実施形態に係る吊り上げ搬送具を示す斜視図。
【図2】第1実施形態に係る把持装置の概念を示す概念図。
【図3】第1実施形態に係る把持装置を示す斜視図。
【図4】把持しない状態で吊り上げられている第1実施形態に係る把持装置を示す一部断面側面図。
【図5】第1実施形態に係る把持装置を斜め上方から見た図。
【図6】一対の把持板に取付けられる円柱状部材の関係を説明する説明図。
【図7】一対の把持板の動作を説明する動作説明図。
【図8】図7に続く動作説明図。
【図9】図8に続く動作説明図。
【図10】屈撓性シート体を把持した状態で吊り上げられている把持装置を示す一部断面側面図。
【図11】吊り上げられた状態で、屈撓性シート体を把持する作業を説明する説明図。
【図12】屈撓性シート体の把持を解除する工程又は屈撓性シート体を把持する工程を説明する説明図。
【図13】第2実施形態に係る円柱状部材を示す説明図。
【0059】
1 吊り上げ搬送具
2 構造体
3 把持装置
9 下側配置の作動レバー
10 上側配置の作動レバー(一方の作動レバー)
11 傾斜面
13 下側配置の把持板
20 上側配置の作動レバーにおける外縁
20a 第1外縁
20b 第2外縁
21 リンク機構
31 上側配置の把持板
32 突部
33 支持板
34 支持軸
36 規制軸
U1 開閉機構
U2 作動力伝達機構



【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り上げ搬送具に取付けられる把持装置であって、
一対の把持板と、
前記一対の把持板に機械的に連係され、その作動に基づき該一対の把持板を開閉動させる開閉機構と、
前記開閉機構に機械的に連係され、吊り上げ状態にあるとき、該開閉機構及び前記一対の把持板の重量を作動力として該開閉機構に作用させて該一対の把持板を閉状態とする作動力伝達機構と、
を備えている、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記一対の把持板が、吊り上げ搬送具に屈撓性シート体を保持する際に、該屈撓性シート体の周縁部を把持するものである、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記一対の把持板が、下側配置の把持板と、該下側配置の把持板よりも上側に配置される上側配置の把持板と、からなり、
前記開閉機構が、上下方向に離間させて配置され上下方向の操作力に基づき揺動可能とされる一対の作動レバーと、該一対の作動レバーと前記一対の把持板との間に配設され該一対の作動レバーの離間、接近動を前記一対の把持板に開、閉動として伝達するリンク機構と、を備え、
前記作動力伝達機構が、前記開閉機構の構成要素に支持され該開閉機構及び前記一対の把持板を吊り上げるために用いられる支持軸と、該支持軸に支持され該支持軸よりも上側が吊り上げ搬送具に対する取付け部とされる支持板と、該支持板に、前記一対の作動レバーのうちの一方の作動レバーの揺動領域であって前記一対の把持板を開状態とする方向の領域において設けられ該一方の作動レバーとの当接によって該一方の作動レバーの揺動を規制する規制部材と、を備え、
前記前記リンク機構の構成要素と前記支持板とが前記支持軸を介して回動可能に支持され、
前記支持軸が、前記一対の把持板、前記リンク機構及び前記一対の作動レバーを略水平方向に並べた状態から該支持軸を介して吊り上げたとき、該支持軸を中心として、該一対の把持板、該リンク機構及び該一対の作動レバーを、該一対の把持板を開状態とする前記一方の作動レバーの揺動方向に回動させるように配置されている、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記一方の作動レバーが、前記一対の作動レバーのうちの上側配置の作動レバーとされ、
前記支持軸が、前記一対の把持板、前記リンク機構及び前記一対の作動レバーを略水平方向に並べた状態から該支持軸を介して吊り上げたとき、該支持軸を中心として、該一対の把持板、該リンク機構及び該一対の作動レバーを、前記上側配置の作動レバーの揺動方向であって前記一対の作動レバーのうちの下側配置の作動レバーに対して離間する方向に回動させるように配置されている、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記上側配置の作動レバーの外縁が、該上側配置の作動レバーの長手方向外端側に向って順に、第1外縁と、該第1外縁よりも前記下側配置の作動レバーから離間する方向に起き上がった第2外縁と、を有するように設定され、
前記規制部材が、前記支持軸を介して前記一対の把持板、前記リンク機構及び前記一対の作動レバーが吊り上げられている状態において該一対の把持板が閉状態のとき、前記第2外縁に当接するように設定されている、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記リンク機構が四節リンク機構を構成し、
前記上側配置の作動レバー及び前記下側配置の作動レバーが、前記四節リンク機構のリンク部材として利用されている、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項7】
請求項2において、
前記一対の把持板のうちの一方の把持板及び該一対の把持板のうちの他方の把持板が、その各内面において柱状部材をそれぞれ有し、
前記一方の把持板に対する前記他方の把持板の閉動作に基づく該他方の把持板における柱状部材の移動領域に、前記一方の把持板における柱状部材が存在しないように設定されている、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項8】
請求項4において、
前記上側配置の把持板と前記下側配置の把持板とが、該各把持板の内面において、円柱状部材を、該円柱状部材の軸心を前記支持軸の軸心方向に延ばすようにして有し、
前記上側配置の把持板が、前記一対の作動レバー操作に基づく閉動作時において、前記下側配置の把持板に対して近づくに従って前記リンク機構側に移動するように設定され、
前記上側配置の把持板における円柱状部材と前記下側配置の把持板における円柱状部材とは、該両把持板が所定の開状態にあるときにおいて、最もリンク機構に近い側に位置するもの同士が当接して、所定以上の外力を加えない限り、該両把持板の接近動が規制されるように設定されている、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項9】
請求項3において、
前記上側配置の把持板と前記下側配置の把持板とが、該各把持板の内面において、円柱状部材を、該円柱状部材の軸心を前記支持軸の軸心方向に延ばすようにして有し、
前記各円柱状部材の外周面に複数の突部が設けられ、
前記各突部が、前記各円柱状部材の外周全周に亘って延ばされていると共に、該円柱状部材の軸心方向に所定間隔毎に配置されている、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項10】
請求項3において、
前記上側配置の把持板と前記下側配置の把持板とが、該各把持板の内面において、円柱状部材を、該円柱状部材の軸心を前記支持軸の軸心方向に延ばすようにして有し、
前記各円柱状部材の外周面に複数の突部が設けられ、
前記各突部が、前記各円柱状部材の軸心方向に延ばされていると共に、該各円柱状部材の周回り方向に所定間隔毎に配置されている、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項11】
請求項6において、
前記下側配置の作動レバーが、略真っ直ぐに延びていると共に、該下側配置の作動レバーの内面に、前記リンク機構よりも前側において前記下側配置の把持板が固定され、
前記下側配置の作動レバーの前端面が、該下側配置の作動レバーの内面側から外面側に向かうに従って後側に引っ込むように傾斜されている、
ことを特徴とする把持装置。
【請求項12】
構造体に把持装置が取付けられ、該把持装置が、屈撓性シート体を保持する際に、該屈撓性シート体の周縁部を把持する吊り上げ搬送具であって、
前記把持装置が、前記屈撓性シート体の周縁部を挟持するための一対の把持板と、前記一対の把持板に機械的に連係されその作動に基づき該一対の把持板を開閉動させる開閉機構と、前記開閉機構に連係され、吊り上げ状態にあるとき、該開閉機構及び前記一対の把持板の重量を作動力として該開閉機構に作用させて該一対の把持板を閉状態とする作動力伝達機構と、を備えている、
ことを特徴とする吊り上げ搬送具。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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