説明

把持装置

【課題】 ボトルの先端部を保持することができ、かつ、コンパクトなボトルの把持装置を提供する。
【解決手段】 中心軸5と、中心軸5に取り付けられた内筒3と、内筒3の外周部分に取り付けられ開閉自在な3本以上の指部材2と、指部材2を開方向に付勢して開状態を保持する開保持手段23と、指部材2に対し移動することで、指部材2を閉方向に付勢する外筒4とを備え、各指部材2の内周面には、各々、周方向に互いに分割されオネジ部B1に嵌り込む分割メネジ21が形成され、内筒3が中心軸5の軸方向Zの双方向に移動自在に取り付けられていることで、指部材2が閉方向に閉じる際に指部材2が軸方向Zに移動して分割メネジ21がオネジ部B1に嵌り込むのを可能としたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボトルの把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、従来のボトルの把持装置の一例を示している。図6に示すように、従来のボトルの把持装置101は、縦横に複数個設けられており、複数本のボトルBを一度に把持して移動させる移動装置に装着されて用いられる。そのため、各把持装置101の幅を小さくしたいという需要がある。
この把持装置101は、図6に示す所定の把持位置PCにおいて縦横に整列された複数本のボトルBの位置に各々対応して、搬送装置100に複数台取り付けられている。搬送装置100とは別の搬送手段によりボトルBが搬送されてくる間、各把持装置1は、把持位置PCの上方の待機位置で待機している。縦横に整列されたボトルBが把持位置PCに搬送されると、待機位置から搬送装置100が下降することで、複数の把持装置1が下降される。
一方、近年、ボトルBの先端部以外の外側に、樹脂コーティング等のコーティングを施すことが行われている。かかるコーティングを施すために、ボトルBの内側にゴムや合成樹脂性などの保持棒を挿入することにより、ボトルBの内側を保持する保持具が提案されている。(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭48−87987号公報 (図3、図4)
【発明の開示】
【0003】
しかし、特許文献1では、該保持具に用いたゴムや合成樹脂などが劣化し、ボトルB内に付着するおそれがある。
【0004】
したがって、本発明の目的は、ボトルの先端部を保持することができ、かつ、コンパクトなボトルの把持装置を提供することである。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の把持装置は、ボトルの先端部に形成されたオネジ部を把持するボトルの把持装置であって、前記ボトルの先端部と同軸上に設けられる中心軸と、前記中心軸に取り付けられた筒状の内筒と、前記内筒の外周部分に取り付けられ前記オネジ部を把持する空間を形成すると共に開閉自在な3本以上の指部材と、前記指部材を開方向に付勢して前記空間内にボトルの先端部が侵入するのを許容した開状態を保持する開保持手段と、前記指部材を概ね全周にわたって取り囲むように形成され、かつ、前記指部材に対し移動することで、前記指部材を閉方向に付勢する外筒とを備え、前記各指部材の内周面には、各々、周方向に互いに分割され前記オネジ部に嵌り込む分割メネジが形成され、前記内筒が前記中心軸の軸方向の双方向に移動自在に取り付けられていることで、前記指部材が閉方向に閉じる際に前記指部材が前記軸方向に移動して前記分割メネジが前記オネジ部に嵌り込むのを可能としたことを特徴とする。
本発明によれば、ボトルの回転角にかかわらず、つまり、ボトルのオネジ部に対し分割メネジがズレていても、オネジ部をつかむことができる。また、ゴムや合成樹脂をボトルの口部内に挿入する必要がないので、異物がボトル内に付着するおそれがない。
【0006】
本発明においては、前記中心軸の外周には、前記内筒を軸方向の第1の方向に向って付勢する第1コイルスプリングと、前記内筒を軸方向の第2の方向に向って付勢する第2コイルスプリングとが設けられているのが好ましい。
かかる態様によれば、内筒の軸方向への移動がスムースになるので、分割メネジがボトルのオネジ部にスムースに嵌まり込むから、ボトルを確実に把持することができる。
【0007】
前記分割メネジが前記オネジ部に嵌まり込んだ把持状態においては、前記中心軸の先端面に前記ボトルの先端面が当接している。
このように、ボトルと中心軸の先端面同士が当接していると、ボトルのぐらつきを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施例1:
以下、本発明の実施例1を図面に従って説明する。
本発明の把持装置1は、たとえば、図6に示すボトルBを搬送するための搬送装置100に取り付けられ、所定の把持位置PCでボトルBを把持し、前記搬送装置100による移送後に、前記把持位置PCとは別の所定の移送位置PRでボトルBを解放するものである。
【0009】
把持装置1:
図1は、非把持状態の持本把持装置1を示す正面断面図である。
図1に示すように、把持装置1は、網点で示すボトルBの先端部BSに形成されたオネジ部B1を、図4に示すように把持するための装置であり、指部材2、内筒3、外筒4、中心軸5および取付部6を備えている。
【0010】
図2(a)は下方から見た把持装置1の斜視図である。図1および図2(a)に示すように、外筒4は下部が内方に向って狭められた円筒形に形成されている。
図2(b)は、外筒4を外した状態の把持装置1の斜視図である。前記取付部6は、図示しない取付部材を介して、本把持装置1を搬送装置100(図6)に取り付けるための部材であり、略円柱形に形成されている。
【0011】
中心軸5:
図1に示す前記取付部6の底部には、中心軸5が固定されている。中心軸5は略円柱形に形成されており、中心軸5の上部を取付部6の底部に螺合させることで、該取付部6に固定されている。中心軸5は、取付部6の径方向Rの概ね中央に固定されていると共に、ボトルBの先端部BSと同軸上に設けられている。前記中心軸5の先端面50は、把持動作開始から把持動作中において、ボトルBの先端面に当接した状態となっている。
【0012】
内筒3:
前記中心軸5の側面の周囲には、内筒3が設けられている。内筒3は、中心軸5に対して該中心軸5の軸方向(上下方向)Zに摺動自在に設けられている。内筒3の内部には、バネ座31が中心軸5側に突出して形成されている。
【0013】
前記バネ座31と中心軸5の下端部との間には、第1コイルスプリングS1が圧縮状態で挿入されており、内筒3は該第1スプリングS1により第2方向(上方向)Z2に付勢されている。一方、バネ座31と取付部6の下端部との間には、第2コイルスプリングS2が圧縮状態で挿入されており、内筒3は、該第2スプリングS2により第1方向(下方向)Z1に付勢されている。
こうして、内筒3は第1および第2スプリングS1,S2によって、中心軸5の軸方向Zの双方向に移動自在に取り付けられている。
【0014】
指部材2:
図2(b)に示すように、内筒3の外周部分には、前記ボトルBの先端部BSを把持するための4本の指部材2が設けられている。各指部材2の内周面には、ボトルBのオネジ部B1に嵌り込む分割メネジ21が形成されている。
【0015】
図3(a)は把持装置1を横倒の状態で描いた斜視図であり、図3(b)は外筒4および指部材2の一部を取り外した状態の斜視図である。
図3(b)に示すように、内筒3の外周部には、各指部材2の取付部26が嵌合する切欠凹部30が形成されている。指部材2の取付部26および内筒3の外周には、取付孔24,33がそれぞれ穿孔されており、図2(b)の破線に示すように、該取付孔24,33には、支持ピン22が挿入されている。したがって、各指部材2は支持ピン22を中心に回動自在に取り付けられている。
【0016】
開保持手段:
図1に示すように、各指部材2において、前記分割メネジ21の形成された端部とは反対側の端部(上端部)には、リング23が掛け渡されている。前記リング23は、たとえば、コイルスプリングなどの弾性部材で形成されており、リング23の収縮力により、各指部材2は、支持ピン22を中心にそれぞれ開方向、すなわち、指部材2の分割メネジ21が形成された下部がボトルの先端部BSの外周から遠ざかる方向に付勢されている。したがって、リング23は、指部材2を開状態(非把持状態)に保持する開保持手段を構成している。
【0017】
外筒4:
前記外筒4は、指部材2を概ね全周に渡って取り囲むように形成されている。外筒4は、円柱形の取付部6の外周に沿って軸方向Zに摺動自在に設けられている。図2(b)に示すように、取付部6には長孔61が開口されており、外筒4は該長孔61を貫通するボルト60により、取付部6に取り付けられている。
【0018】
図1に示すように、指部材2の下端部の外側面には、第1方向Z1に行くに従い窄まるよう(末窄まり)に形成されたテーパー部25が形成されている。一方、外筒4の下端部の内側面には、指部材2の前記テーパー部25に概ね沿うように形成された傾斜部45が形成されている。そのため、外筒4が、図1から図4のように、外筒4が指部材2に対して相対的に上昇し、指部材2のテーパー部25が外筒4の傾斜部45に沿って中心に向かって回転する(支持ピン22を中心に回転する)ことにより、指部材2の下部同士が互いに近づく閉方向に移動される。
【0019】
ここで、図2(a)は、外筒4が第2方向Z2に移動した閉状態を示す。図2(a)に示すように、指部材2の分割メネジ21は、かかる閉状態において、各分割メネジ21が螺旋状に互いに概ね連なることにより、メネジを構成するように形成されている。当該メネジは、ボトルBのオネジ部B1に合致するように形成される。したがって、前記閉状態では、指部材2の分割メネジ21が、ボトルBのオネジ部B1に嵌まり込み、各指部材2によりボトルBの先端部BSをしっかりと把持することが可能である。
【0020】
把持方法:
図5は、指部材2の把持方法を示す指部材2付近の部分端面図である。
図5(a)に示すように、指部材2の分割メネジ21とボトルBのオネジ部B1とが合致する位置にある場合は、前記指部材2が支持ピンを中心に回転してオネジ部B1に嵌まり込み、指部材2によりボトルBが把持される。
一方、ボトルBの周方向C(図2(b))の回転角によっては、指部材2の把持動作の際に、図5(b),(c)の実線で示すように、指部材2の分割メネジ21と、ボトルBのオネジ部B1とが噛み合わない場合が生じる。かかる場合には、分割メネジ21がオネジ部B1に嵌まる位置まで、指部材2が第1または第2方向Z1,Z2に移動される。
【0021】
すなわち、図5(b)のような場合には、指部材2が支持ピン22を中心に閉方向に回動する際に、第2および第1スプリングS2,S1(図1)が伸縮し、矢印Z1で示すように、指部材2がボトルBに対して下降しながら閉方向に回転し、ボトルBのオネジ部B1に指部材2の分割メネジ21が嵌り込む。
一方、図5(c)のような場合には、指部材2が支持ピン22を中心に閉方向に回動する際に、第1および第2スプリングS1,S2(図1)が伸縮し、矢印Z2で示すように、指部材2がボトルBに対して上昇しながら閉方向に回転し、ボトルBのオネジ部B1に指部材2の分割メネジ21が嵌り込む。
【0022】
このように、ボトルBの回転角に拘わらず、ボトルBのオネジ部B1に指部材2の分割メネジ21が嵌まり込むことが可能である。
【0023】
ボトルBの搬送動作:
図1の把持装置1は開状態を保ったまま、中心軸5の先端面50がボトルの先端面に当接するように下降する。
この下降の際、各把持装置1は、図1に示すように、指部材2が開状態に保持されているので、ボトルBの先端部BSが指部材2内に嵌挿される。
【0024】
各ボトルBが指部材2内に嵌挿されると、外筒4のみが図示しない引上具によって図4の第2方向Z2に移動される。外筒4の移動により、各指部材2が支持ピン22のまわりに回転し、各指部材2が閉方向に移動される。かかる回転移動(揺動)により、指部材2の分割メネジ21がボトルBのオネジ部B1に嵌まり込み、把持装置1がボトルBを把持する。
【0025】
ここで、前述したように、前記分割メネジ21は、閉方向に回転されることにより、ボトルBのオネジ部B1に対応するメネジが嵌まり込む。したがって、ボトルBのオネジ部B1に指部材2の分割メネジ21がしっかりと嵌合し、指部材2にボトルBの先端部BSが把持されるので、ボトルBのぐらつきが防止される。
【0026】
なお、図5(b),(c)に示すように、指部材2の分割メネジ21がボトルBのオネジ部B1に嵌まらない位置にある場合には、前述したように、分割メネジ21にオネジ部B1とが嵌まり合う位置まで、指部材2が第1または第2方向Z1,Z2に移動しながら、閉方向に回動する。
【0027】
前記把持装置1によりボトルBが把持されると、把持装置1は図示しない搬送装置により上昇される。その後、搬送装置によりボトルBが所定の移送位置まで移送される。当該移送位置において、図4の外筒4が取付部6に対して相対的に第1方向Z1に移動され、図1のリング23の収縮力により、各指部材2が開方向に回動してボトルBが解放され、ボトルBの移載が完了する。
ボトルBの移載が完了すると、搬送装置100は移動し、前記待機位置に復帰して待機する。
【0028】
以上説明したように、本把持装置1は、ボトルBの先端部BSのみをしっかりと把持することができる。そのため、ボトルBの外側に樹脂コーティング等を容易に施すことができる。
また、把持装置1は、外筒4の移動(上下動)のみでボトルBを把持するので、各把持装置1の幅がコンパクトになり、複数台の把持装置1を取り付けた場合でも、搬送装置100全体を小型化することができる。
【0029】
なお、前記実施例では、外筒4を第2方向Z2に上昇させることで指部材2を閉状態に移行することとしたが、外筒4を第1方向Z1に下降させることにより指部材2を閉状態に設定するようにしてもよいし、外筒4を回転させて指部材2を閉じさせてもよい。
また、指部材2を3個設けたが、指部材2は3個以上であればよい。
さらに、第2スプリングS2は必ずしも設ける必要はなく、一方のスプリングのみであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、酒瓶やビール瓶、ペットボトルなどのボトルの先端部を把持するのに適した把持装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例にかかる把持装置の部分断面図である。
【図2】同装置の斜視図である。
【図3】同装置の斜視図である。
【図4】把持状態の把持装置を示す部分断面図である。
【図5】指部材の動作を示す部分端面図である。
【図6】従来の把持装置の動作を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0032】
1:把持装置
2:指部材
3:内筒
4:外筒
5:中心軸
50:先端面
21:分割メネジ
23:リング(開保持手段)
B:ボトル
B1:オネジ部
BS:先端部
S1:第1コイルスプリング
S2:第2コイルスプリング
Z:軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトルの先端部に形成されたオネジ部を把持するボトルの把持装置であって、
前記ボトルの先端部と同軸上に設けられる中心軸と、
前記中心軸に取り付けられた筒状の内筒と、
前記内筒の外周部分に取り付けられ前記オネジ部を把持する空間を形成すると共に開閉自在な3本以上の指部材と、
前記指部材を開方向に付勢して前記空間内にボトルの先端部が侵入するのを許容した開状態を保持する開保持手段と、
前記指部材を概ね全周にわたって取り囲むように形成され、かつ、前記指部材に対し移動することで、前記指部材を閉方向に付勢する外筒とを備え、
前記各指部材の内周面には、各々、周方向に互いに分割され前記オネジ部に嵌り込む分割メネジが形成され、
前記内筒が前記中心軸の軸方向の双方向に移動自在に取り付けられていることで、前記指部材が閉方向に閉じる際に前記指部材が前記軸方向に移動して前記分割メネジが前記オネジ部に嵌り込むのを可能としたことを特徴とする把持装置。
【請求項2】
請求項1において、前記中心軸の外周にコイルスプリングが設けられ、前記コイルスプリングを介して前記内筒が前記中心軸の軸方向の双方向に移動自在に取り付けられている把持装置。
【請求項3】
請求項1において、前記中心軸の外周には、前記内筒を軸方向の第1の方向に向って付勢する第1コイルスプリングと、前記内筒を軸方向の第2の方向に向って付勢する第2コイルスプリングとが設けられている把持装置。
【請求項4】
請求項2もしくは3において、前記分割メネジが前記オネジ部に嵌まり込んだ把持状態においては、前記中心軸の先端面に前記ボトルの先端面が当接している把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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