説明

把持部材

【課題】 作業性に優れ、施工費を削減できる把持部材を提供する。
【解決手段】 コンクリート部材15に埋設されるとともに、内側に吊金具10が嵌合される鋼製の把持部材1であって、内面に前記吊金具10の雄ねじ部11を嵌合させる雌ねじ部3が形成され、外面に前記雌ねじ部3に対応する凹凸部4が形成された筒状の本体部2を有し、該本体部2の基端3aが前記コンクリート部材15の表面16から深さ方向に所定の距離離れた位置に位置するように、前記コンクリート部材15に埋設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持部材に関し、特に、セグメント等のコンクリート部材に埋設され、コンクリート部材を吊り下げる吊金具を取り付ける把持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シールド掘進機でトンネルを構築する場合、シールド掘進機によって地盤を掘進しながら、シールド掘進機に搭載したエレクターによりセグメントを組み立て、掘削した部分の内壁面をセグメントで覆工することが行われている。
【0003】
このようなトンネルの覆工作業に用いられるセグメントには、中央部に筒状の把持部材(把持金物)が埋設されており、この把持部材に吊金具を嵌合させることにより、吊金具を介してセグメントをエレクターに取り付けることができる。
【0004】
把持部材の一例を図20に示す。この把持部材21は、厚肉鋼管22の内面に雌ねじ部23を設け、この厚肉鋼管22の長手方向の奥側端部の外周面にアンカー筋24を巻き付け、このアンカー筋24を厚肉鋼管22の外周面に溶接によって一体に固定したものであって、厚肉鋼管22の開口端面は、通常、セグメント組立後にその開口部を塞ぐキャップが取り付けられる。取り付け後、キャップの頭がセグメント15の表面16と面一となるように、表面16から厚さ方向に円錐台形状の空間が設けられたところに埋設されている。
【0005】
また、図21に把持部材の他例を示す。この把持部材25は、鋳鉄製であって、内面に雌ねじ部27が設けられた筒状部26と、筒状部26の長手方向の奥側端部の外周面に一体に設けられた環状のフランジ28とを備え、筒状部26の開口端面は、通常、セグメント組立後にその開口部を塞ぐキャップが取り付けられる。取り付け後、キャップの頭がセグメント15の表面16と面一となるように、表面16から厚さ方向に円錐台形状の空間が設けられたところに埋設されている。
【0006】
さらに、把持部材の他例が特許文献1に記載されている。この把持部材は、繊維強化樹脂製の成形品であって、外面に環状の突起が多段に設けられ、内面に雌ねじが設けられた筒状の本体を有し、この本体がセグメントに埋設されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−270291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、図20及び図21に記載の把持部材21、25にあっては、把持部材21、25に吊金具(図示せず)を嵌合させて、吊金具を介してセグメント15を吊り下(上)げる場合に、把持部材21、25にかかる引張力に対して、吊金具を抜け出させない抵抗力と把持部材21、25そのものがセグメント15から抜け出ない定着力が必要である。そのため、嵌合させるねじは厚い肉厚が必要な台形ねじが施されている。または、定着させるため、把持部材21の場合は、「段落0004」に記載の通り、アンカー筋24を巻き付けてあり、把持部材25は、「段落0005」に記載の通り、環状のフランジ28が設けられ、これらの部分から図20、図21のコーン状の部分Aで把持部材21、25が抜け出す抵抗となり、密着を図っている。それぞれが把持部材21、25の重量を重くしている。把持部材21においては、極厚肉鋼管のねじ加工に加えてアンカー筋24の材料及び溶接加工、把持部材25においては、ねじ部27の筒状部26と環状のフランジ28を一体で成型するため、鋳造で成型している。何れも製作に手間がかかり、かつ、重量が重いため、セグメント15に把持部材21、25を埋設する際の作業性が悪くなり、セグメント15の製作費用を押し上げている。
【0009】
一方、特許文献1に記載の把持部材は、図20及び図21に示す把持部材21、25のような重量の問題は生じないが、合成樹脂製であるために耐火性が劣り、また、コンクリートとの密着性が鉄よりは悪いため、漏水が発生することもあり、使用可能な環境条件が狭い範囲に制限されてしまう。
【0010】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、セグメントの製作費を削減できるとともに、使用可能な環境条件が狭い範囲に制限されることがない、把持部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、コンクリート部材に埋設されるとともに、内側に吊金具が嵌合される鋼製の把持部材であって、内面に前記吊金具の雄ねじ部を嵌合させる雌ねじ部が形成され、外面に前記雌ねじ部に対応する凹凸部が形成された筒状の本体部を有し、該本体部の基端が前記コンクリート部材の表面から深さ方向に所定の距離離れた位置に位置するように、前記コンクリート部材に埋設されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の把持部材によれば、本体部に吊金具を嵌合させて、吊金具の雄ねじ部と本体部の雌ねじ部とを螺合させることにより、吊金具を介してコンクリート部材を吊り下げることができる。
この場合、本体部にかかる引張力に対しては、本体部の外面側の凹凸部のコンクリートに対する付着力と、凹凸部とコンクリートとの間のせん断抵抗力とにより、抵抗することができる。また、吊金具からの引張力に対しては、その引張力が吊金具の雄ねじ部、本体部内面の雌ねじ部、及び本体部の外面側の凹凸部を介してコンクリートに伝達され、それらの間に生じる支圧力によって抵抗することができる。
従って、引張力に抵抗するために、本体部の厚さを厚くする必要がないので、本体部の軽量化を図ることができ、コンクリート部材に埋設する際の作業性を向上させることができ、コンクリート部材の製作費用を削減することができる。
【0013】
また、本発明において、前記本体部の基端には、内外面に凹凸のない筒状又はテーパ筒状のねじ導入部が一体に設けられていることとしてもよい。
【0014】
本発明の把持部材によれば、ねじ導入部の外面のコンクリートへの付着力によっても、本体部にかかる引張力に抵抗することができる。また、本体部に吊金具を嵌合させ、吊金具でコンクリート部材を吊り下げ、コンクリート部材の組み立て等が完了した後に、ねじ導入部にキャップを取り付けることにより、コンクリート部材の開口部を閉塞することができ、コンクリート部材の見栄えをよくすることができる。
【0015】
さらに、本発明において、前記コンクリート部材の表面と前記本体部の基端との間、又は前記コンクリート部材の表面と前記ねじ導入部との間には、前記本体部の基端、又は前記ねじ導入部に取り付けられるキャップよりも大径の円柱状又は円錐台形状の空間からなる逃げ部が設けられていることとしてもよい。
【0016】
本発明の把持部材によれば、本体部に吊金具を嵌合させ、吊金具でコンクリート部材を吊り下げる場合に、円柱状又は円錐台形状の空間からなる逃げ部により、本体部とコンクリート部材の表面との間、又はねじ導入部とコンクリート部材の表面との間にひび割れが発生するのを防止できる。
この場合、逃げ部の深さは、本体部又はねじ導入部に取り付けられるキャップの頭部の高さに相当する深さに設定するか、或いは、把持部材のコンクリート部材への定着力を高めるために、逃げ部の深さをキャップの頭部の高さよりも深くする設定する。逃げ部の深さをキャップの頭部の高さよりも深く設定することにより、吊金具からコンクリート部材に応力を伝達する本体部の凹凸部を深く埋設することになり、従来の把持部材において、コーン状の部分が大きいほど定着力が増す原理と同じ効果で定着力を増すことができ、コンクリート部材にひび割れが発生するのを効果的に防止できる。
【0017】
さらに、本発明において、前記本体部及び前記ねじ導入部には、径方向外方に凹む被嵌合部が設けられ、該被嵌合部に前記本体部及び前記ねじ導入部に取り付けられるキャップの嵌合部が嵌合されることとしてもよい。
【0018】
本発明の把持部材によれば、本体部及びねじ導入部の被嵌合部にキャップの嵌合部を嵌合させることにより、キャップが本体部及びねじ導入部に取り付けられた状態に固定される。
【0019】
さらに、本発明において、コンクリート部材は、セグメントであることとしてもよい。
【0020】
この場合、例えば、セグメントを通常のコンクリートよりも引張強度の高い鋼繊維補強コンクリート製とすることにより、同じ大きさ、重量の通常のコンクリート製セグメントに使用する把持部材よりも小さな把持部材で対応することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上、説明したように、本発明の把持部材によれば、引張力に抵抗するために、肉厚を厚くする必要がなく、軽量化を図ることができるので、価格も安く、且つコンクリート部材に埋設させる作業性を高めることができ、製作費用を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による把持部材の第1の実施の形態の全体を示した概略断面図である。
【図2】吊金具の平面図である。
【図3】吊金具を取り付けたコンクリート部材の全体を示した概略断面図である。
【図4】図3の部分拡大図である。
【図5】セグメント供試体の平面図である。
【図6】図5の正面図である。
【図7】図5の右側面図である。
【図8】本発明による把持部材の第2の実施の形態の全体を示した概略断面図である。
【図9】図8の断面図である。
【図10】図8の部分斜視図である。
【図11】第2の実施の形態に使用する吊金具の正面図である。
【図12】図11の断面図である。
【図13】本発明による把持部材の第3の実施の形態の全体を示した概略断面図である。
【図14】図13の断面図である。
【図15】図13の部分斜視図である。
【図16】第3の実施の形態の変形例を示した概略断面図である。
【図17】本発明による把持部材の第4の実施の形態の全体を示した概略断面図である。
【図18】図17の断面図である。
【図19】第4の実施の形態に使用する吊金具の全体を示した概略図である。
【図20】従来の把持部材の一例を示した概略図である。
【図21】従来の把持部材の他例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図4には、本発明による把持部材の第1の実施の形態が示されている。図1は把持部材の全体を示す概略断面図、図2は吊金具の平面図、図3は吊金具を取り付けたコンクリート部材(セグメント)の全体を示す概略断面図、図4は図3の部分拡大図である。
【0024】
すなわち、本発明の把持部材は、各種のコンクリート部材を吊金具で吊り下げる場合に適用可能なものであって、本実施の形態においては、図3及び図4に示すように、トンネルの内壁面の覆工に用いられるコンクリート製のセグメント15を吊金具10で吊り下げる場合に適用している。
【0025】
コンクリート製のセグメント(以下、「セグメント15」という。)は、中央部に本実施の形態の把持部材1が埋設され、この把持部材1に吊金具10が取り付けられるようになっている。本実施の形態においては、例えば、重量が8トン〜10トンのセグメント15を想定している。
【0026】
把持部材1は、薄肉鋼管(例えば、機械構造用炭素鋼管(STKM11A))を材料として機械加工等によって形成されるものであって、図1に示すように、内面に雌ねじ部3が形成され、外面に雌ねじ部3の溝に対応した形状の凹凸部4が形成される筒状の本体部2と、本体部2の雌ねじ部3の基端3aに一体に設けられる内外面に凹凸のない筒状のねじ導入部5と、本体部2の雌ねじ部3の終端3bに一体に設けられる内外面に凹凸のない筒状の余長部7とから構成されている。なお、ねじ導入部5は、上端にいくに従って順次大径となるテーパ筒状であってもよい。
【0027】
図4に示すように、把持部材1の本体部2内面の雌ねじ部3には、吊金具10の雄ねじ部11が螺合されるようになっている。なお、本体部2の雌ねじ部3は、せん断強度に優れる台形ねじ状が好ましい。
【0028】
ねじ導入部5の内面には、被嵌合部である径方向外方に凹む環状の凹部6が設けられ、この凹部6にセグメント15の円錐台形状の空間部17、又は把持部材1の入口を閉塞するキャップ(図示せず)の嵌合部である突起を嵌合させることにより、キャップをセグメント15の空間部17に固定することができる。なお、凹部6は、台形ねじ状でもよい。
【0029】
余長部7は、本体部2内面の雌ねじ部3と吊金具10の雄ねじ部11の先端部の不完全ねじ部とが干渉するのを避けるためのものであって、図4に示すように、吊金具10の雄ねじ部3を本体部2内面の雌ねじ部3に螺合させて嵌合させた際に、この余長部7に吊金具10の雄ねじ部11の先端部の不完全ねじ部を逃すようになっている。さらに、余長部7は、把持部材1内部へコンクリート流入を防ぐためのキャップ(図示せず)の取付口となっている。
【0030】
把持部材1は、図3及び図4に示すように、セグメント15の中央部に、軸線がセグメント15の厚さ方向を向くように、かつ、本体部2の雌ねじ部3の基端3aがセグメント15の表面16から厚さ方向に所定の距離離れた位置に位置するように、セグメント15に埋設されている。
【0031】
図4に示すように、把持部材1のねじ導入部5の上端(先端)とセグメント15の表面16との間には、円錐台形状の空間である逃げ部18が設けられている。逃げ部18は、内周面が5°以上のテーパ面18aに形成され、このテーパ面18aの下端に把持部材1のねじ導入部5の上端が連続して配置されるように、把持部材1のねじ導入部5の上端とセグメント15の表面16との間に設けられている。この逃げ部18により、把持部材1に吊金具10を取り付け、吊金具10を介してセグメント15を吊り下げた場合に、吊金具10からの引張力によってセグメント15の表面16側にひび割れが生じるのを防止できる。
【0032】
なお、本実施の形態においては、逃げ部18を円錐台形状の空間によって構成しているが、逃げ部18を円柱状の空間によって構成してもよい。要は、把持部材1の雌ねじ部3の基端3aとセグメント15の表面16との間に所定の長さの空間を構成すればよい。
【0033】
上記のように構成した本実施の形態の把持部材1を埋設したセグメント15の表面16側から把持部材1の内側に吊金具10を挿入し、吊金具10の雄ねじ部11を把持部材1の本体部2内面側の雌ねじ部3に螺合させて嵌合させることにより、吊金具10を把持部材1に取り付けることができる。
【0034】
そして、吊金具10を介してセグメント15をシールド掘進機のエレクターに取り付け、エレクターを操作することにより、シールド掘進機によって掘削した地盤の内壁面にセグメント15を組み立て、内壁面をセグメント15によって覆工することができる。
【0035】
以上説明した本実施の形態の把持部材1にあっては、吊金具10を介してセグメント15を吊り下げた場合に、把持部材1にかかる引張力に対しては、本体部2の外面側の凹凸部4のコンクリートに対する付着力と、凹凸部4とコンクリートとの間のせん断抵抗力とにより、抵抗することができる。また、吊金具10からの引張力に対しては、その引張力が吊金具10の雄ねじ部11、本体部2内面の雌ねじ部3、及び本体部2外面側の凹凸部4を介してコンクリートに伝達され、それらの間に生じる支圧力によって抵抗することができる。
【0036】
従って、引張力に抵抗するために、従来のもののように把持部材1の厚さを非常に厚くする必要がないので、把持部材1の軽量化を図ることができるため、把持部材1をセグメント15に埋設する際の作業性を向上させることができ、しかも、価格も安いためセグメント15の製作費用を大幅に削減することができる。しかも、部材の軽量化は、省資源に繋がり、地球温暖化防止に貢献するものである。
【0037】
図8〜図12には、本発明による把持部材の第2実施の形態が示されている。本実施の形態の把持部材1は、本体部2の内面側に、周方向に120°間隔毎に雌ねじ部3cと非ねじ部3dとを交互に設けるとともに、本体部2の外面側に、周方向に120°間隔毎に雌ねじ部3cに対応する形状の凹凸部4aと非ねじ部3dに対応する形状の非凹凸部4bとを交互に設けたものであって、その他の構成は前記第1の実施の形態に示すものと同様である。
【0038】
また、本実施の形態の把持部材1に使用される吊金具は、図11及び図12に示すように、把持部材1の本体部2の内面側の雌ねじ部3c及び非ねじ部3dに対応するように、周方向に120°間隔毎に雄ねじ部11aと非ねじ部11bとを交互に設けた形状としている。
【0039】
そして、上記のような構成の把持部材1に吊金具10を取り付けるには、把持部材1の本体部2の雌ねじ部3c及び非ねじ部3dの位置に吊金具10の非ねじ部11b及び雄ねじ部11aをそれぞれ合わせ、この状態で吊金具10を把持部材1の本体部2の内側に奥まで挿入し、吊金具10を60°回して吊金具10の雄ねじ部11aを把持部材1の雌ねじ部3cに係合させればよい。
なお、図示はしないが、吊金具10の基端部に全周ねじを複数条設けてもよい。その場合には、吊金具10を把持部材1の本体部2の内側に挿入した後に、全周ねじ部の条数の分だけ吊金具10を回転させればよい。
【0040】
上記のように構成した本実施の形態による把持部材1にあっても、前記第1の実施の形態に示すものと同様の作用効果を奏する他、把持部材1へ吊金具10を取り付ける際に、吊金具10を把持部材1の内側に挿入して60°回すだけでよいので、吊金具10の把持部材1への取り付け作業性を向上させることができる。
【0041】
図13〜図15には、本発明による把持部材の第3の実施の形態が示されている。本実施の形態の把持部材1は、本体部2の外面側の非凹凸部3dに対応する部分に凹凸部4cを設け、さらに、ねじ導入部5の内面にねじ部6aを設け、このねじ部6aにキャップ側のねじ部を嵌合させるように構成したものであって、その他の構成は前記第2の実施の形態に示すものと同様である。
なお、図16に示すように、ねじ導入部5の内面にねじ部6aの代わりに凹部6を設け、この凹部6にキャップ側の突起を嵌合させるように構成してもよい。
【0042】
そして、本実施の形態の把持部材1にあっても、前記第2の実施の形態に示すものと同様の作用効果を奏する他、本体部2の外面側の非凹凸部3dに凹凸部4cを設けているので、把持部材1の本体部2とコンクリートとの付着性を高めることができる。
【0043】
図17〜図19には、本発明による把持部材の第4の実施の形態が示されている。本実施の形態の把持部材1は、本体部2の内面側の先端部に全周に亘る雌ねじ部3cを設け、それに対応する本体部2の外面側の先端部に全周に亘る凹凸部4aを設けたものであって、その他の構成は前記第3の実施の形態に示すものと同様である。
【0044】
また、本実施の形態の把持部材1に使用する吊金具10は、図19に示すように、基端部に全周ねじが複数条設けられているので、吊金具10を把持部材1の本体部2の内側に挿入した後に、全周ねじの条数分だけ吊金具10を回転させる必要がある。
【0045】
そして、本実施の形態の把持部材にあっても、前記第3の実施の形態に示すものと同様の作用効果を奏する。
【0046】
次に、本発明による把持部材の引抜き試験の結果を示す。
(1)把持部材
把持部材1は、図1に示すように、材質;STKM11A、厚さ(t);1.5mm、外径(R1);86mm内径(R2);83mm、全長(l);155mm、キャップ取付部長さ(l1);50mm、本体部(雌ねじ部)長さ(l2);95mm、80mm、余長部長さ(l3);10mm、雌ねじ部;吊金具の雄ねじ部(台形ねじ;Tr82×P10)と嵌合可能な形状とした。
【0047】
(2)セグメント供試体
セグメント供試体15は、図5〜図7に示すように、厚さ(h);400mm、幅(b);1000mm、長さ(l)1300mmとし、図1に示す把持部材1を中央部に埋設し、把持部材1の先端とセグメント供試体15の表面16との間に円錐台形状の空間である逃げ部18を設けた。逃げ部18は、図4に示すように、深さ(h1);75mm、外側径;110mm、内側径;95mmの円錐台形状の空間とし、セグメント供試体15の表面16から把持部材1の本体部2の雌ねじ部3の基端3aまでの距離(h1+l1);125mmとした。コンクリートは、設計基準強度f´ck=42N/mmの鋼繊維補強高流動コンクリートを使用し、主鉄筋としてD16を上下にそれぞれ8本配置した。
【0048】
(3)試験方法
台形ねじに加工したφ82mmの引抜き治具(吊金具10)使用し(図2、図4参照)、センターホールジャッキによる引抜き試験を行った。支持スパンは、エレクターの補助ジャッキの間隔を想定して700mmとし、載荷ピッチを20kNとして引抜き力を作用させた。
【0049】
(4)上記の引抜き試験の結果を表1に示す。
【表1】

ここで、実かん合長は、引抜き治具(吊金具10)と把持部材1とのねじ部(雄ねじ部11及び雌ねじ部3)のとり合い長を示している。ケース2−1では、把持部材1を完全に引き抜き、ケース2−2では、把持部材1の挿入量(実かん合長さ)を減じて実施した。
ひび割れ発生荷重は、ケース1で最小で400kN、ケース2−2のかん合長を減じたケースでも360kNであった。いずれのケースも把持部材1からセグメント供試体15の幅方向にひび割れが発生した。
引抜き耐力は、ケース1の最小で597kN、ケース2−1で506kN、ケース2−2で402kNであった。実嵌合長が長くなるほど引抜き耐力が増加する傾向が見られた。
【0050】
セグメント15の重量8トン(安全率5倍)〜10トン(安全率4倍)とした場合、ケース1−1〜ケース2−2の何れにおいても、十分な引抜き耐力を有していることが分かり、本発明の把持部材1が有効であることが実証され、セグメント15組み立て時の安全性を確保でき、大型のセグメント15も含めて適用可能であることが確認された。
【0051】
なお、前記各実施の形態においては、本発明による把持部材1をコンクリート製のセグメント15に適用したが、鋼繊維補強コンクリート製のセグメント15に本発明による把持部材1を適用してもよい。その場合には、同じ大きさ、重量のコンクリート製のセグメント15よりも小さい把持部材1で対応することができ、さらに、セグメント15の製作費を削減することができる。
さらに、セグメント15に限らず、他のコンクリート部材に本発明による把持部材1を適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。
【符号の説明】
【0052】
1 把持部材
2 本体部
3 雌ねじ部
3a 基端
3b 終端
3c 雌ねじ部
3d 非ねじ部
4 凹凸部
4a 凹凸部
4b 非凹凸部
4c 凹凸部
5 ねじ導入部
6 凹部
7 余長部
10 吊金具
11 雄ねじ部
11a 雄ねじ部
11b 非ねじ部
15 セグメント(セグメント供試体)
16 表面
17 空間部
18 逃げ部
18a テーパ面
21 把持部材
22 厚肉鋼管
23 雌ねじ部
24 アンカー筋
25 把持部材
26 筒状部
27 雌ねじ部
28 フランジ
A コーン状の部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート部材に埋設されるとともに、内側に吊金具が嵌合される鋼製の把持部材であって、
内面に前記吊金具の雄ねじ部を嵌合させる雌ねじ部が形成され、外面に前記雌ねじ部に対応する凹凸部が形成された筒状の本体部を有し、
該本体部の基端が前記コンクリート部材の表面から深さ方向に所定の距離離れた位置に位置するように、前記コンクリート部材に埋設されていることを特徴とする把持部材。
【請求項2】
前記本体部の基端には、内外面に凹凸のない筒状又はテーパ筒状のねじ導入部が一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の把持部材。
【請求項3】
前記コンクリート部材の表面と前記本体部の基端との間、又は前記コンクリート部材の表面と前記ねじ導入部との間には、前記本体部の基端、又は前記ねじ導入部に取り付けられるキャップよりも大径の円柱状又は円錐台形状の空間からなる逃げ部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の把持部材。
【請求項4】
前記本体部及び前記ねじ導入部には、径方向外方に凹む被嵌合部が設けられ、該被嵌合部に前記本体部及び前記ねじ導入部に取り付けられるキャップの嵌合部が嵌合されることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の把持部材。
【請求項5】
前記コンクリート部材は、セグメントであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の把持部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−25605(P2011−25605A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175653(P2009−175653)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【出願人】(501122850)株式会社アイ・エル・シー (8)
【Fターム(参考)】