説明

抑制コアを備えた通信チャンネル

【課題】エーリアン漏話抑制コアを使用し、通信チャンネルのエーリアン漏話を減少する。
【解決手段】電気通信ケーブルには、エーリアン漏話抑制コアを設けられてもよい。エーリアン漏話抑制コアは、フェライト抑制コアであってもよく、通信ケーブル内の幾つかの又は全ての撚線対に別々に設置される。エーリアン漏話抑制コアは、通信ケーブルが互いに近接して設置される場合に高周波数通信におけるANEXT及びAFEXTを減少する。エーリアン漏話抑制コアは、更に、通信ジャック内のPCB等の他の通信チャンネル構成要素に組み込まれてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2005年1月19日に出願された「抑制コアを備えた通信チャンネル」という表題の米国仮特許出願第60/645,412号の恩恵を主張するものである。
【0002】
本発明は、全体として通信チャンネルに関し、更に詳細には、エーリアン漏話抑制コアを持つ通信チャンネルに関する。
【背景技術】
【0003】
多数の撚線対を含む通信ケーブルは一般的であり、4対ケーブルが広く使用されている。高速データネットワークでは、通信ケーブル内で、及び近くの通信ケーブル間で漏話が生じる。ケーブル内で発生する漏話には、近端漏話(NEXT)及び遠端漏話(FEXT)が含まれ、ケーブル間で生じるエーリアン漏話(alien crosstalk)には、エーリアン近端漏話(ANEXT)及びエーリアン遠端漏話(AFEXT)が含まれる。通信チャンネルにおけるエーリアン漏話を抑制することは重要である。これは、エーリアン漏話が通信チャンネルのS/N比を低下し、チャンネルのビット誤り率を高めてしまうためである。通信帯域幅が増大するに従って、通信ケーブルでエーリアン漏話等のノイズを減少することが益々重要になっている。
【0004】
高帯域幅通信の用途では、通信ケーブルは、互いに側部と側部とを向き合わせて一緒に設置され、隣接した、即ち近くの通信ケーブル間でANEXT及びAFEXTが生じる。ANEXT及びAFEXTは、300MHz以上の周波数で更に問題になり、高い周波数でのANEXT及びAFEXTは、10ギガビットのエザーネット信号(Ethernet signaling)等の高速データ伝送システムに存在する。300MHz以上の周波数でエーリアン漏話を減少するのが望ましい。
【特許文献1】米国仮特許出願第60/645,412号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エーリアン漏話抑制コアを備えた改良通信ケーブルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例によれば、改良通信パッチコードがエーリアン漏話抑制コアを備えている。
本発明の幾つかの実施例によれば、エーリアン漏話抑制コアを、電気通信パッチコードに、このパッチコードの端部と近接した位置に配置する。
【0007】
エーリアン漏話抑制コアを、特定の導体対の周囲に配置してもよい。例えば、本発明の一つの8導線(4対)パッチコードの実施例では、エーリアン漏話抑制コアを二対の導体に配置する。
【0008】
幾つかの実施例では、エーリアン漏話抑制コアを特定の導体対に配置してもよい。例えば、一実施例では、エーリアン漏話抑制コアを、4対パッチコードの1−2対及び7−8対に配置する。
【0009】
本発明によるエーリアン漏話抑制コアを、通信プラグ等の通信チャンネルの他の構成要素に組み込んでもよい。
本発明の幾つかの実施例によれば、エーリアン漏話抑制コアはフェライト材料で形成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施例による通信パッチコードの側面図である。
【図2】図2は、パッチコードの二つの撚線対に設置したエーリアン漏話抑制コアを示す、通信パッチコードの断面図である。
【図3】図3は、エーリアン漏話抑制コアが設置されていない位置での通信パッチコードの断面図である。
【図4】図4は、フェライトフィルムを導電性トレースの上に配置したプリント回路基板表面の平面図である。
【図5】図5は、プリント回路基板に設けられた、フェライトフィルムを備えた導電性トレースを示す、プリント回路基板の断面図である。
【図6】図6は、プリント回路基板に通したフェライトコアを示す、プリント回路基板の断面図である。
【図7】図7は、エーリアン漏話抑制コアアッセンブリが設けられたパッチコードのセグメントの部分分解斜視図である。
【図8】図8は、パッチコードのセグメント内に設置した、図7のエーリアン漏話抑制コアアッセンブリの斜視図である。
【図9】図9は、オーバーモールド及び応力解放部材を備えた図8のパッチコードの斜視図である。
【図10】図10は、パッチコードの平面図である。
【図11】図11は、通信プラグの側断面図である。
【図12】図12は、抑制コアを備えた通信プラグの側断面図である。
【図13】図13は、別の抑制コアを備えた通信プラグの側断面図である。
【図14】図14は、抑制コアの斜視図である。
【図15】図15は、別の抑制コアの斜視図である。
【図16】図16は、更に別の抑制コアの斜視図である。
【図17】図17は、二つの抑制コアの斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ANEXT及びAFEXTは、コネクタでの導体対間のアンバランスな接続により生じ
る。8本の導体を含む撚線対チャンネルでは、導体は以下のように対をなしている。
第1対=第4導線及び第5導線
第2対=第1導線及び第2導線
第3対=第3導線及び第6導線、及び
第4対=第7導線及び第8導線。
【0012】
例えば、第3対(即ち3−6対、これは、8本の導体を含む撚線対チャンネルの第3導線及び第6導線の対と対応する)がクロスオーバー対(crossover pair)であり、コネクタの中央第1対の両側に分割されており且つ配置された撚線対チャンネルでは、コネクタにおける第2対(即ち1−2対)と第3導線との間の接続は、第2対と第6導線との間の接続よりも大きい。同様に、コネクタにおける第4対(即ち7−8対)と第6導線との間の接続は、第4対と第3導線との間の接続よりも大きい。フェライト抑制コア等の抑制コアを通信チャンネルの特定の撚線対又は特定の撚線対と関連した導線に設置することより、通信チャンネル間のエーリアン漏話を減少できる。
【0013】
ANEXT及びAFEXTに対する第2対及び第4対の寄与は、本発明の幾つかの実施例では、エーリアン漏話抑制コアをこれらの撚線対に配置することによって減少できる。図1は、エーリアン漏話抑制コア12を第2撚線対14及び第4撚線対16に配置したパッチコード10を示す。一実施例によれば、エーリアン漏話抑制コア12はフェライトコアである。
【0014】
図2は、図1の2−2線に沿った、パッチコード10の断面図である。エーリアン漏話抑制コア12は、第2撚線対14及び第4撚線対16の各々を取り囲んでいる。第1撚線対18及び第3撚線対20は、エーリアン漏話抑制コアを備えていない。別の実施例では、全ての4つの撚線対にエーリアン漏話抑制コアを別々に設けてもよい。エーリアン漏話抑制コアを、実際上できる限りプラグやジャックに近付けて配置してもよい。図3は、エーリアン漏話抑制コアが設置されていない別の部分でのパッチコード10の断面を示す。図1、図2、及び図3に示す構造は、水平方向ケーブル(holizontal cable)に適用してもよい。
【0015】
本発明の原理は、通信チャンネルの他の構成要素で使用してもよい。例えば、通信ジャック内のプリント回路基板(PCB)にエーリアン漏話抑制装置を組み込んでもよい。図4は、第2導体対24及び第4導体対26と対応する導電性トレースを備えたPCB22の平面図である。エーリアン漏話抑制フィルム28がトレース24及び26の上に配置してある。一実施例によれば、エーリアン漏話抑制フィルム28はフェライトフィルムである。図5は、PCB22の断面図であり、上フェライトフィルム30及び下フェライトフィルム32がPCB22の両側に第2導体対トレース24及び第4導体対トレース26の位置に配置してある。
【0016】
図6に示すように、PCB22を通してエーリアン漏話抑制コア34を挿入してもよい。エーリアン漏話抑制コア34は、それだけで使用してもよいし、フェライトフィルムと組み合わせて使用し、導電性トレースを取り囲んでもよい。
【0017】
図7は、エーリアン漏話抑制アッセンブリ37を備えたパッチコード等の通信ケーブルのセグメント36の部分分解図である。撚線対は、単一の構成要素として簡略化して示してある。セグメント36は、ケーブルの第2撚線対14及び第4撚線対16に設置されたエーリアン漏話抑制コア38を有する。エーリアン漏話抑制コア38の各々は、二つの半部40でできている。エーリアン漏話抑制コア38の半部40は、撚線対14及び16を受け入れるための窪み42を有する。導線の単一の撚線対の周囲に位置決めされた二つのコア半部40が撚線対を取り囲む。ハウジング44は、エーリアン漏話抑制コアを備えていない撚線対を含む撚線対を離間し且つ通す。ハウジング44は、更に、エーリアン漏話抑制コア38を、ケーブルの特定の撚線対の周囲で所望の位置及び配向で収容する。
【0018】
エーリアン漏話抑制アッセンブリ37は、先ず最初に、ケーブルの各端から所定距離のところでケーブルから所定長さの外装を除去することによってケーブルに設置してもよい。撚線対の各組をその最初のレイから分離し、扇状に拡げ、ケーブルの露呈された区分の中央を開放する。これは、ケーブルの露呈された区分でだけ行われ、好ましくは、この状態でケーブルの外装内にとどまっている撚線対に対する外乱を減少するように行われる。充填体、リップコード、又はセパレータテープ等のケーブルの任意の追加の構成要素を、ケーブルの露呈された区分から除去する。露呈された扇状に拡げた撚線対の中央にハウジング44を挿入する。スプリットエーリアン漏話抑制コア38を特定の撚線対上に組み立て、ハウジング44に挿入し、抑制コアを備えていない撚線対を抑制コアの外側でハウジングに通す。次いで、丈夫な外ハウジングを製作し、ケーブルの露呈された区分、ハウジング44、及びエーリアン漏話抑制コア38上に適用し即ち組み立て、エーリアン漏話抑制アッセンブリを収容し、位置決めし、そして保護する。
【0019】
現存の水平方向ケーブルを含む現存のケーブル工場は、本発明によるエーリアン漏話抑制コアで改装できる。
図8は、エーリアン漏話抑制アッセンブリ37を備えたケーブルのセグメント36を示す。このセグメント36は、ケーブルの外装46が除去してある。図9は、エーリアン漏話抑制アッセンブリ37を覆う外ハウジング48を被せて型成形した、即ちオーバーモールドしたケーブルのセグメント36を示す。オーバーモールドした外ハウジング48の両端に応力解放部材50が設けられている。これらの応力解放部材50は、ケーブル外装46の切断した端部に対して適切な応力解放を提供し、ケーブルの変更部分の曲げ半径を標準の仕様に従って適切に制御する。オーバーモールドした外ハウジング48は、オーバーモールド位置及びアッセンブリ特徴52を備えていてもよい。
【0020】
本発明による外ハウジングは、
熱収縮性チューブ又は同様の材料を、ケーブルの露呈された部分、ハウジング、及び抑制コアに被せ、エーリアン漏話抑制アッセンブリを収容し、位置決めし、保護し、
熱可塑性材料を、ケーブルの露呈された部分、ハウジング、及び抑制コア上で、オーバーモールドにより直接形成し、又は
丈夫なハウジングを提供するため、熱可塑性材料製の個々の構成要素を使用することによって形成されるが、これらに限定されない。
【0021】
図10は、エーリアン漏話抑制アッセンブリを覆う外ハウジング48をオーバーモールドした通信用パッチコード54の平面図である。
本発明の幾つかの実施例では、エーリアン漏話抑制コアを通信プラグに組み込んでもよい。図11は、通信プラグ56の概略側断面図であり、通信ケーブル58及び第1撚線対18、第2撚線対14、第3撚線対20、第4撚線対16を示す。絶縁体除去接点(IDC)59が撚線対内の導線と接触する。図12は、第2撚線対14及び第4撚線対16を取り囲むエーリアン漏話抑制コア62を持つ通信プラグ60の概略側断面図である。図13は、ケーブル58の4つの撚線対全てを個々に取り囲むエーリアン漏話抑制コア66を持つ別の通信プラグ64の概略側断面図である。
【0022】
通信プラグに組み込むことができるエーリアン漏話抑制コアの様々な実施例を図14乃至図17に示す。図14は、4対のチャンネルのうちの1−2対及び7−8対を取り囲むようになった二つの通路70を持つエーリアン漏話抑制コア68を示す。図15のエーリアン漏話抑制コア72は、4対のチャンネルのうちの1−2対及び7−8対を取り囲むようになった第1通路対74、及び4対のチャンネルのうちの3−6対及び4−5対を取り囲むようになった第2通路対76を有する。図16は、4対のチャンネルのうちの1−2対及び7−8対を取り囲むようになった二つの通路80を持つ別のエーリアン漏話抑制コア78を示す。図16のエーリアン漏話抑制コア78は、窪み81を有する。図17は、第1及び第2の通路86及び88を持つ一対のエーリアン漏話抑制コア82及び84を示す。通路86及び88は、4対のチャンネルのうちの1−2対及び7−8対の各々を取り囲むようになっている。図14乃至図17のエーリアン漏話抑制コアは、プラグ、ジャック、又はこれらの両方に組み込むことができる。
【0023】
本発明をパッチコードに関して説明したが、本発明によるエーリアン漏話抑制コアは、水平方向ケーブル等の別の種類の通信ケーブルに適用してもよいということは理解されるべきである。更に、本発明の幾つかの実施例では、エーリアン漏話抑制コア及びフィルムは、配線キャップやプラグに組み込んでもよいし、絶縁体除去接点の周囲に配置してもよい。
【0024】
本発明の一実施例によれば、パッチコード、水平方向ケーブル、プラグ、及び通信チャンネルのジャックにエーリアン漏話抑制コアを組み込むことによって、エーリアン漏話を減少する。
【0025】
本発明の特定の実施例及び用途を例示し且つ説明したが、本発明は、本明細書中に開示した正確な構造及び構成に限定されず、本明細書の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変形及び変更が以上の説明から明らかになるということは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0026】
10 パッチコード
12 エーリアン漏話抑制コア
14 第2撚線対
16 第4撚線対
18 第1撚線対
20 第3撚線対
22 プリント回路基板(PCB)
24 第2導体対
26 第4導体対
28 エーリアン漏話抑制フィルム
30 上フェライトフィルム
32 下フェライトフィルム
34 エーリアン漏話抑制コア
37 エーリアン漏話抑制アッセンブリ
36 セグメント
38 エーリアン漏話抑制コア
40 半部
42 窪み
44 ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ケーブルにおいて、
複数の導体対と、
少なくとも二つのエーリアン漏話抑制コアとを有し、
前記エーリアン漏話抑制コアの各々は、前記通信ケーブルの一部で、前記複数の導体対の一つを取り囲み、前記エーリアン漏話抑制コアの各々は二つの半部を含み、これらの半部は、前記導体対の周囲に設置され且つハウジング内に取り付けられる、通信ケーブル。
【請求項2】
請求項1に記載の通信チャンネルにおいて、
前記エーリアン漏話抑制コアは、フェライトコアである、通信チャンネル。
【請求項3】
請求項1に記載の通信チャンネルにおいて、更に、
前記漏話抑制コアの周囲に組み立てられる外ハウジングを有する、通信チャンネル。
【請求項4】
請求項3に記載の通信チャンネルにおいて、更に、
前記外ハウジングの端部に位置決めされた応力解放部材を有する、通信チャンネル。
【請求項5】
通信コネクタにおいて、
前記コネクタ内に延びる複数の導体対と、
前記コネクタ部分内に取り付けられた少なくとも一つのエーリアン漏話抑制コアとを有し、
前記エーリアン漏話抑制コアは複数のチャンネルを有し、これらのチャンネルの各々は前記複数の導体対の一つを取り囲む、通信コネクタ。
【請求項6】
請求項5に記載の通信コネクタにおいて、更に、
プリント回路基板を有し、前記エーリアン漏話抑制コアは前記回路基板に設置される、通信コネクタ。
【請求項7】
請求項6に記載の通信コネクタにおいて、
4つの前記導体対が前記コネクタ内に延びており、前記エーリアン漏話抑制コアは、4つのチャンネルを持つ単一のコアを含み、前記4つのチャンネルの各々が前記導体対のうちの一つの導体対を取り囲む、通信コネクタ。
【請求項8】
請求項6に記載の通信コネクタにおいて、
4つの前記導体対が前記コネクタ内に延びており、前記エーリアン漏話抑制コアは、二つのチャンネルを持つ単一のコアを含み、前記二つのチャンネルの各々が前記導体対のうちの一つの導体対を取り囲む、通信コネクタ。
【請求項9】
請求項8に記載の通信コネクタにおいて、
前記エーリアン漏話抑制コアには、その長さに沿って窪みが設けられている、通信コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−213184(P2012−213184A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−120722(P2012−120722)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2007−552244(P2007−552244)の分割
【原出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(507202736)パンドウィット・コーポレーション (70)
【Fターム(参考)】