説明

抑泡作用を有するポリマー、および分散剤としてのその使用

本発明は、モノマー(A)、(B)および(D)、および場合により(C)から誘導される構造単位を含有するポリマーであって、
(A)が式(I)
[式中、
AはC〜C−アルキレンを表し、
BはAとは異なるC〜C−アルキレンを表し、
Rは水素またはメチルを表し、
mは1〜500の数を表し、
nは1〜500の数を表す]
で表されるモノマーであり、
(B)が、少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むエチレン性不飽和モノマーであり、
(C)が、場合により、(A)および(B)とは異なる別のエチレン性不飽和モノマーであり、
(D)が式(II)
[式中、
DはC〜C−アルキレンを表し、
EはDとは異なるC〜C−アルキレン基を表し、
FはEとは異なるC〜C−アルキレン基を表し、
Rは水素またはメチルを表し、
oは1〜500の数を表し、
pは1〜500の数を表し、
qは1〜500の数を表す]
で表されるモノマーであり、そして
モノマーの重量比が、モノマー(A)が35〜98.5%であり、モノマー(B)が0.5〜45%であり、モノマー(C)が0〜20%であり、そしてモノマー(D)が1〜20%である、
ポリマー、および無機固体懸濁液用の消泡剤としての前記ポリマーの使用に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抑泡作用を有するポリマーおよびその製造、ならびに無機固体懸濁液、特に顔料懸濁液用の分散剤、水硬化性セメント系、コンクリート、モルタル、石膏懸濁液および無水石膏バインダー配合物用の、粘土、カオリン、長石および石英鉱物からのセラミック材料用の、塗料産業およびラッカー産業、皮革産業における無機白色顔料および有色顔料の顔料調製物用の可塑剤および流動化剤(Fliessmittel)としての、ならびに、洗剤および洗浄剤産業におけるスケール防止剤(Kalksteinverhinderer)、分散剤および金属イオン封鎖剤ならびに水の浄化としての、その使用に関する。本発明のポリマーは、調製物への消泡剤の添加が必要ないことを特徴とする。前記ポリマーの製造では、追加のモノマーが使用され、それが消泡作用を発揮する。
【背景技術】
【0002】
固体懸濁液は、通常、無機固体の流動化および分散のために、分散剤または流動化剤を含有する。そのような固体は、建設業においてはセメント、石膏、半水石膏、フライアッシュ、カオリンであることができ、塗料およびラッカー産業においては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、硫酸バリウム、亜硫酸亜鉛、バナジン酸ビスマス、酸化鉄顔料、二酸化クロム、コバルトスピネル顔料および他の無機有色顔料であることができる。また、加工性を可能にし、石膏型に圧粉体(Gruenling)を圧入するために、粘土、カオリン、長石および石英鉱物からのセラミックス材料に、ソーダおよび/または水ガラスと一緒に分散剤が添加される。
【0003】
カオリン、二酸化チタンおよび炭酸カルシウムの分散のためには、通常、アクリル酸の低分子量ポリマー、またはアクリル酸およびマレイン酸のコポリマー、ならびにこれらのナトリウム、カリウムまたはアンモニウム塩が使用される。
【0004】
建設業では、通常、床張り、プレキャストコンクリート(Betonsteinen)の製造用の、レディーミクストコンクリートおよび軽量コンクリート用のコンクリートの流動化のために、流動化剤が使用される。
【0005】
リグニンスルホン酸ナトリウムは、水硬結合性建設材料組成物中のセメント用の、および漆喰、壁モルタル材料、石膏ボードにおける半水石膏用の、および無水石膏舗装床(Anhydritestriche)用の、一般的な流動化剤である。
【0006】
特許文献1は、ナフタレンスルホン酸誘導体およびホルムアルデヒドの縮合により製造されるセメント用分散剤を記載している。
【0007】
特許文献2は、コンクリート用流動化剤としてのスルホン基含有メラミン樹脂の使用を記載している。
【0008】
特許文献3は、メラミン−ホルムアルデヒド縮合生成物および/またはスルホン化ホルムアルデヒド−ナフタレン縮合物および/またはリグニンスルホネートをベースとする流動化剤、およびバインダーとして一緒に粉砕されたポルトランドセメント、粘土含有石灰質泥灰岩、粘土および低温焼成クリンカーを含む舗装床用水硬性モルタルを記載している。
【0009】
特許文献4は、無機バインダーおよび建設材料用の添加剤としての、水溶性ナフタレンスルホン酸ナトリウム‐ホルムアルデヒド縮合物の使用を記載している。これらの添加剤は、例えばセメント、無水石膏または石膏等のバインダーの流動性の改善、およびそれを用いて製造される建設材料に関して記載されている。
【0010】
本質的にカルボン酸基およびスルホン酸基を含有する純アニオン性分散剤の他に、通常アニオン性電荷を主鎖に有し、非イオン性ポリアルキレングリコール側鎖を含有する弱アニオン性の櫛型ポリマーが記載されている。
【0011】
特許文献5は、ビニル基含有モノマーのラジカル重合により製造され、主成分としてポリアルキレンオキシド基を含有するこれらの水性鉱物懸濁液用の弱アニオン性分散剤および粉砕助剤を記載している。
【0012】
特許文献6および特許文献7は、不飽和ジカルボン酸誘導体およびオキシアルキレングリコールアルケニルエーテルをベースとするコポリマー、ならびに、水硬性バインダー、特にセメント用の添加剤としてのその使用を記載している。
【0013】
特許文献8は、水性顔料調製物の製造のための、ビニル官能化ポリエーテルを有する類似のコポリマーの使用を記載している。これらのコポリマーは、特にビニルポリアルキレングリコールエーテルおよび無水マレイン酸および他のモノマーのラジカル重合によって製造され、有機および無機顔料、フィラーの分散に、および顔料濃厚物、顔料ペーストおよび顔料調製物の製造に好適である。
【0014】
建設業における流動化剤の添加の目的は、コンクリートの可塑性を向上させること、または、同じ加工条件で、セメントスラリー、フライアッシュおよび骨材(Zuschlagstoffen)の混合物に必要な水の量を減少させることである。
【0015】
リグニンスルホネート、メラミンスルホネートおよびポリナフタレンスルホネートをベースとする流動化剤は、弱アニオン性ポリアルキレングリコールエーテル含有コポリマーよりもその効果が低いことがわかった。これらのコポリマーは、建設業において、ポリカルボキシレートエーテル(PCE)とも呼ばれる。情報小冊子である非特許文献1には、このポリカルボキシレートエーテルの使用および利点が記載されている。
【0016】
ポリカルボキシレートエーテルは、無機顔料粒子を、主鎖に含有されるアニオン性基(カルボキシレート基、スルホネート基)によって静電荷で分散させるだけでなく、さらに、分散された粒子をポリアルキレングリコールエーテル側鎖による立体効果により安定化させるが、それは、水分子の吸収により顔料粒子の周りに安定化保護層を形成する。
【0017】
それによって、従来の流動化剤と比較して、ある特定のコンシステンシーに調製するために必要な水の量を減少させることができるか、または、ポリカルボキシレートエーテルの添加により、低い水/セメント比で自己充填コンクリートが製造できるように加水した建設材料混合物の可塑性が低下する。またポリカルボキシレートエーテルを使用すると、より長時間にわたってポンプ圧送可能なレディーミクストコンクリートの製造、または低い水/セメント比に調節することによる高強度のコンクリートの製造が可能である。
【0018】
従って、産業界がなおも、コンクリート可塑剤(Betonverfluessiger)および無機顔料用の分散剤としての使用に適した好適なポリマーを探求していることは、不思議なことではない。
【0019】
特許文献9は、コンクリート用の減水助剤として好適な分散剤を記載している。特に、分散剤の製造には、DMC(複合金属シアン化物)触媒の存在下でのヒドロキシアルキルアクリレートおよび−メタクリレートのアルコキシル化により得られるマクロモノマーが使用される。
【0020】
多くの調製物において、消泡剤の添加が必要である。しかしながら、消泡剤の添加はしばしば不利な効果を引き起こす。ここで顔料調製物ではしばしば、表面損傷(例えば、クレーター)およびレべリング性および流動特性(例えば、オレンジ肌)の低下が生じ、それによって、消泡剤により引き起こされたこれらの問題を取り除くために、より多くの場合に界面活性剤を添加しなければならない。また、コンクリートへの高流動化剤(Verfluessiger)としての公知の櫛型ポリマーの添加は、消泡剤の添加なしで済ませることはできない。組み込みの際の、これらのポリマーの櫛様の界面活性剤構造により、相当量の空気が鉱物性の建設材料に導入され得る。そのような気泡により、コンクリート中において空洞が形成され、それにより、コンクリートの機械的性質および安定性の悪化が生じ得る。
【0021】
さらに、多くの消泡剤は、通常それらが調製物において可溶性でないために、分離しやすい傾向がある。これには、鉱油またはシリコーン油をベースとする消泡剤も含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】独国特許出願公開第1 238 831号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第1 671 017号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第2 948 698号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3 530 258号明細書
【特許文献5】国際公開第01/96007号
【特許文献6】独国特許出願公開第19 513 126号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第19 834 173号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第10 017 667号明細書
【特許文献9】国際公開第02/066528号
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】“Modern Superplasticisers in Concrete Technology, Januar 2007” des Vereins Deutsche Bauchemie e.V., Frankfurt am Main
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従って、本発明の課題は、追加的なポリマー成分の添加により泡形成を防ぎ、従って消泡剤の添加が不要であることによって、コンクリート高流動化剤および無機顔料用分散剤として使用するのに好適な改善されたポリマーを見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明は、モノマー(A)、(B)および(D)、および場合により(C)から誘導される構造単位を含有するポリマーであって、
(A)が式(I)
【0026】
【化1】

【0027】
[式中、
AはC〜C−アルキレンを表し、
BはAとは異なるC〜C−アルキレンを表し、
Rは水素またはメチルを表し、
mは1〜500の数を表し、
nは1〜500の数を表す]
で表されるモノマーであり、
(B)が、少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むエチレン性不飽和モノマーであり、
(C)が、場合により、(A)および(B)とは異なる別のエチレン性不飽和モノマーであり、
(D)が式(II)
【0028】
【化2】

【0029】
[式中、
DはC〜C−アルキレンを表し、
EはDとは異なるC〜C−アルキレン基を表し、
FはEとは異なるC〜C−アルキレン基を表し、
Rは水素またはメチルを表し、
oは1〜500の数を表し、
pは1〜500の数を表し、
qは1〜500の数を表す]
で表されるモノマーであり、そして
モノマーの重量比が、モノマー(A)が35〜98.5%であり、モノマー(B)が0.5〜45%であり、モノマー(C)が0〜20%であり、そしてモノマー(D)が1〜20%である、
ポリマーに関する。
【0030】
本発明はさらに、無機固体懸濁液用の消泡剤および分散剤としての上記のポリマーの使用に関する。
【0031】
本発明はさらに、無機固体懸濁液に前記ポリマーを添加することによる、無機固体懸濁液の消泡および分散のための方法に関する。
【0032】
前記アルキレンオキシド単位(A−O)および(B−O)は、ランダム状に、または、好ましい実施形態の場合のように、ブロック状に配置されていてもよい。好ましい実施形態において、(A−O)はプロピレンオキシド単位、そして(B−O)はエチレンオキシド単位を表すか、あるいは、(A−O)はエチレンオキシド単位、そして(B−O)はプロピレンオキシド単位を表し、その際、前記エチレンオキシド単位のモル比は、エチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位の合計(100%)を基準として、好ましくは50〜99%、特に60〜99%、特に好ましくは70〜99%である。
【0033】
mは好ましくは1〜150の数、特に2〜10である。nは好ましくは3〜300の数、特に5〜150である。アルキレンオキシド単位の合計n+mは、好ましくは2〜500、特に好ましくは10〜150である。
【0034】
好ましいモノマー(B)としては、特にモノエチレン性不飽和モノマーが挙げられる。その例としては、3〜8個のC原子を有するモノエチレン性不飽和モノ−およびジカルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸およびフマル酸が挙げられる。
【0035】
好ましいモノマー(C)としては、モノエチレン性不飽和スルホン酸およびホスホン酸ならびにそれらの塩、特にそれらのアルカリ金属塩、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルオキシエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2−アクリルオキシエタンホスホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸が挙げられる。さらに、モノマー(C)としてはモノアリルポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0036】
アルキレンオキシド単位(D−O)、(E−O)および(F−O)は、ランダム状に、または、好ましい実施形態の場合のように、ブロック状に配置されていてもよい。好ましい実施形態において、(D−O)はプロピレンオキシド単位、(E−O)はエチレンオキシド単位、そして(F−O)はプロピレンオキシド単位を表し、その際、前記エチレンオキシド単位のモル比は、エチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位の合計(100%)を基準として、好ましくは10〜90%、特に20〜80%、特に好ましくは30〜70%である。
【0037】
oは好ましくは1〜100の数、特に2〜10である。pは好ましくは1〜100の数、特に5〜50である。qは好ましくは1〜100の数、特に2〜40である。アルキレンオキシド単位の合計o+p+qは、好ましくは3〜500、特に好ましくは10〜100である。
【0038】
好ましい実施形態において、(A)、(B)および(D)の重量比は合計で100重量%となる。
【0039】
好ましい実施形態において、(A)、(B)、(C)および(D)の重量比は合計で100重量%となる。
【0040】
別の好ましい実施形態において、ポリマーにおけるモノマー(A)の重量比は50〜80重量%である。
【0041】
別の好ましい実施形態において、ポリマーにおけるモノマー(B)の重量比は5〜25重量%である。
【0042】
別の好ましい実施形態において、ポリマーにおけるモノマー(C)の重量比は1〜25重量%である。
【0043】
別の好ましい実施形態において、ポリマーにおけるモノマー(D)の重量比は3〜25重量%である。
【0044】
本発明のコポリマーは、ラジカル重合の開始により、または連鎖移動反応により、または連鎖停止反応により生じる一般的な末端基、例えば、プロトン、ラジカル開始剤に由来する基、または連鎖移動剤に由来する硫黄含有基を有することができる。
【0045】
本発明のポリマーは、好ましくは10g/mol〜10g/mol、特に10g/mol以下、殊に10g/molの分子量を有する。
【0046】
本発明のポリマーが有する基本的な特性は、ポリマーのポリアルキレングリコール側鎖が純粋なポリエチレングリコールまたはポリプロプレングリコールではないことである。代わりに、ポリアルキレングリコールは、プロピレンオキシド単位およびエチレンオキシド単位からなるランダムまたはブロックポリアルキレングリコールである。
【0047】
本発明のポリマーの製造は、モノマー(A)、(B)、(D)、および場合により(C)のラジカル重合により行うことができる。モノマー(A)、(B)、(D)、および場合により(C)から誘導される構造単位は、モノマー(A)、(B)、(D)、および場合により(C)をそれらのエチレン性二重結合を用いて導入することにより生じるポリマーの構造単位であると理解される。重合反応は、連続的に、非連続的にまたは半連続的に行うことができる。
【0048】
重合反応は好ましくは、沈殿重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合またはゲル重合として実施される。本発明のコポリマーの特性プロファイルのために特に有利なのは、溶液重合である。
【0049】
重合反応のための溶剤としては、ラジカル重合反応に関して十分に不活性な挙動を示す全ての有機または無機溶剤、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチルまたは酢酸1−メトキシ−2−プロピル、およびアルコール、例えばエタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−エチレンヘキサノールまたは1−メトキシ−2−プロパノール、同様にジオール、例えばエチレングリコールおよびプロピレングリコールを利用することができる。ケトン、例えばアセトン、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノンおよびメチルエチルケトン、酢酸、プロピオン酸および酪酸のアルキルエステル、例えば酢酸エチル、酢酸ブチルおよび酢酸アミル、エーテル、例えばテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、およびエチレングリコール−およびポリエチレングリコール−モノアルキルエーテルおよび−ジアルキルエーテルも使用することができる。同様に芳香族の溶剤、例えばトルエン、キシレンまたはより高沸点のアルキルベンゼンを使用することができる。同様に、溶剤混合物の使用が考えられ、その場合に1つまたは複数の溶剤の選択は、本発明のコポリマーの使用目的による。好ましくは水;低級アルコール;好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソ−、sec−およびt−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ブチルグリコールおよびブチルジグリコール、特に好ましくはイソプロパノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール、ブチルグリコールおよびブチルジグリコール;5〜30個の炭素原子を有する炭化水素、および上記化合物の混合物およびエマルションが使用される。
【0050】
重合反応は、好ましくは、0〜180℃、特に好ましくは10〜100℃の温度範囲で、常圧でも、加圧もしくは減圧下でも実施される。場合により、重合は、保護ガス雰囲気下、好ましくは窒素下で行うこともできる。
【0051】
重合を引き起こすために、高エネルギー電磁放射線、力学的エネルギー、または一般的な化学的重合開始剤、例えば、有機過酸化物、例えば、ベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、クモイルペルオキシド(Cumoylperoxid)、ジラウロイルペルオキシド(DLP)、またはアゾ開始剤、例えば、アゾジイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスアミドプロピルヒドロクロリド(ABAH)および2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)を使用することができる。同様に、無機ペルオキシ化合物、例えば、(NH、KまたはH(場合により、還元剤(例えば亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸、硫酸鉄(II))と組み合わせたもの)、または還元成分として脂肪族もしくは芳香族スルホン酸(例えばベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸)を含む酸化還元系も好適である。
【0052】
分子量調整剤(Molekulargewichtsregler)としては、通常の化合物が使用される。好適な公知の調整剤は、例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノールおよびアミルアルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アルキルチオール類、例えばドデシルチオールおよびtert−ドデシルチオール、チオグリコール酸、イソオクチルチオグリコレート、2−メルカプトエタノール、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、およびいくつかのハロゲン化合物、例えば四塩化炭素、クロロホルムおよび塩化メチレンである。
【0053】
本発明のポリマーは、意図する目的のために、好ましくは、分散剤、流動化剤、金属イオン封鎖剤、または可塑剤として、5〜50%の水溶液として、特に好ましくは20〜45%の水溶液として提供される。
【0054】
本発明のポリマーの別の提供形態は、重合により得られるポリマーの溶液の乾燥によって製造される粉末または顆粒である。
【0055】
本発明のポリマーは、鉱物、無機顔料用の分散剤および流動化剤として、顔料調製物、壁塗料用着色ペースト、印刷インキ用の分散剤、顔料分散体(例えば二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク)用の分散剤、セラミックス製造における分散剤として、スケール堆積防止のために、洗浄剤用添加剤として、テキスタイル産業、製紙産業および皮革産業において、および産業用水用および排水浄化におけるスケール防止剤として好適である。
【0056】
本発明のポリマーは、水硬性セメント系、例えば、ポルトランドセメント、石灰質泥灰岩、コンクリート、舗装床用モルタル(Estrichmoertel)、石膏懸濁液および無水石膏バインダー配合物用の、粘土、カオリン、長石および石英鉱物、ステアリン酸カルシウム、および水に難溶性の2価および多価の他のカチオンの脂肪酸塩用の可塑剤および流動化剤として好適である。
【0057】
本発明のポリマーはさらに、無機顔料用の分散剤および解膠剤として適切であり、無機顔料は例えば二酸化チタン類、硫化亜鉛類、酸化亜鉛類、酸化鉄類、磁鉄鉱類、酸化鉄マンガン類、酸化クロム類、群青、ニッケルもしくはクロムアンチモンチタン酸化物類、マンガンチタンルチル類、酸化コバルト類、コバルトとアンモニウムの混合酸化物、ルチル混合相顔料、希土類元素の硫化物、ニッケルおよび亜鉛とコバルトのスピネル、銅、亜鉛およびマンガンを含む鉄およびクロムに基づくスピネル、バナジン酸ビスマス類である。特に、カラーインデックス顔料の、ピグメントイエロー184、ピグメントイエロー53、ピグメントイエロー42、ピグメントイエローブラウン24、ピグメントレッド101、ピグメントブルー28、ピグメントブルー36、ピグメントグリーン50、ピグメントグリーン17、ピグメントブラック11、ピグメントブラック33およびピグメントホワイト6が使用される。好ましくは、無機顔料の混合物もしばしば使用される。有機顔料と無機顔料の混合物も同様にしばしば使用される。本発明のポリマーを用いて製造される顔料分散剤は、塗料産業およびラッカー産業において、セラミック産業において、ならびに特にテキスタイル産業および皮革産業において、着色ペースト、顔料スラリー、顔料分散剤または顔料調製物として使用することができる。
【0058】
本発明のポリマーは特に、透明な酸化鉄顔料用の分散剤として使用され、それを用いることにより、木材コーティング用の透明な水性もしくは溶媒含有塗料を製造することができる。
【0059】
本発明のポリマーは、好ましくは、水硬性バインダー、二水石膏(Gipshydrat)(建設業)および上記の鉱物および無機顔料を含む無機顔料の重量を基準として、0.01〜15重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で使用される。特に、塗料およびコーティング、顔料濃厚物、スラリーおよび顔料調製物における無機顔料の分散のために、無機顔料を基準として0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜5重量%で使用される。
【0060】
本発明のポリマーの好ましい実施形態は、水性エマルション塗料における分散剤としての使用である。水性エマルション塗料には、種々の白色顔料、特に二酸化チタン、硫酸バリウムおよび亜硫酸亜鉛、上記のような有色顔料、特に、酸化鉄顔料、二酸化クロムおよびコバルトスピネル顔料、フィラー、例えば天然もしくは沈降炭酸カルシウム、タルク、カオリン、石英粉末および他の鉱物顔料が含まれる。白色顔料用のバインダー、およびフィラーとしては、エマルションポリマー類が使用される。これらのエマルションポリマー類は、通常、スチレン、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸ジエステル、酢酸ビニル、イソデカン酸ビニルエステル、ネオデカン酸ビニルエステル、イソノナン酸ビニルエステル、塩化ビニル、ブタジエンおよび他のオレフィン性不飽和モノマーのポリマーまたはコポリマーからなる。さらなるバインダーは、水性アルキド樹脂分散剤、ポリウレタン分散剤、シリケート塗料用カリウム水ガラス、シリコーン樹脂分散剤および他の水性ポリマー分散剤である。
【0061】
通常、本発明のポリマーは、無機顔料およびフィラーを基準として0.05〜5重量%の使用量で水性塗料に添加され、好ましい実施形態において、無機顔料およびフィラーを基準として0.1〜1重量%の使用量で水性塗料に添加される。
【0062】
産業用水および廃水において、テキスタイル産業、皮革産業および製紙産業において、ならびに家庭用および業務用洗浄剤において、スケール防止用添加剤が使用される。本発明のポリマーは、水に難溶性のアルカリ土類金属炭酸塩および−硫酸塩用の分散剤および金属イオン封鎖剤として好適である。好ましい使用量は、産業用水および廃水において0.001〜0.1重量%のポリマー、あるいはテキスタイル産業、皮革産業および製紙産業においてまたは衛生領域において使用される使用液体を基準として、0.01〜2重量%のポリマーである。
【0063】
本発明のポリマーは特に、テキスタイルの、特に綿、亜麻布、羊毛および合成繊維、ならびにこれらの混織物を含む布帛の前処理、漂白、糊抜き、煮沸、マーセル化における使用に、ならびにテキスタイルの染色および高品位仕上げに好適である。特に、前処理および漂白において、本発明のポリマーは、布帛および機械要素上への堆積を防止するために好適である。
【0064】
本発明のポリマーは同様に、アニオン性、非イオン性、両性およびカチオン性界面活性剤を含む液体の洗浄剤調製物の製造に好適であり、本発明のポリマーは、使用液体におけるスケール形成を防止する役割を果たす。本発明のポリマーの使用例としては、乗り物用手入れ剤、業務用洗浄剤、酪農用洗浄剤、食肉業用洗浄剤、家庭用床手入れ剤、食器用洗剤、テキスタイル用の液体および粉末状の家庭用洗剤、衛生用洗浄剤、トイレ用洗浄剤、ならびに家庭領域におけるまたは業務もしくは産業領域における他の洗浄剤が挙げられる。
【0065】
通常、スケール防止剤として、アクリル酸のポリマー、マレイン酸およびアクリル酸からのコポリマー、またはキレート剤、たとえばアミノ三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、アミノトリスメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸およびそれらのナトリウム塩およびカリウム塩が使用され、これらはそのイオン性の特性により、界面活性剤物質とはあまり混和性ではない。一方、本発明のポリカルボキシレートは、アニオン性、非イオン性、両性およびカチオン性界面活性剤との良好な相容性を特徴とし、従って、液体の洗浄剤調製物の製造に好適である。
【0066】
研磨剤用、例えば炭化ケイ素用の分散剤としての本発明のポリマーのさらなる使用は、シリコンウエハーの化学機械研磨(化学的機械的平坦化)が挙げられる。
【0067】
分散剤およびスケール防止剤としての本発明のポリマーのさらなる使用領域は、植物保護調製物、金属加工における冷却潤滑剤、廃水浄化、石油採取(Erdoelfoerderung)、石油分解(Erdoelspaltung)および選鉱である。
【0068】
場合により、本発明のポリマーは、さらなる界面活性剤物質と組み合わされる。この組み合わせの目的は、使用調製物の特性の改善である。好適な界面活性剤は、例えば、建設業における湿潤剤、ならびに塗料およびラッカー産業における、および顔料調製物、−スラリーまたは−分散剤のためのさらなる湿潤添加剤および分散添加剤である。
【0069】
好ましい実施形態における本発明の使用調製物は、場合により、アルキルフェノールポリエチレングリコールエーテル、スチレン置換フェノールポリエチレングリコールエーテル、アルキルポリエチレングリコールエーテル、8〜22個のC原子の炭素鎖長を有する第1級アルキルアミンのアルキルアミンエトキシレート、脂肪酸ポリエチレングリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコシド、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドとブロック状に反応させたC〜C22−アルコールのアルキルポリアルキルグリコールエーテル、エチレンオキシドと反応させ、塩化メチル、塩化ブチルもしくは塩化ベンジルでエーテル化したC〜C22−アルコールの末端基がキャップされたアルキルエトキシレート、エチレン/プロピレングリコール−ブロックポリマー、およびソルビタンエステルポリエチレングリコールエーテルの群からの1種またはそれ以上の非イオン性界面活性剤を含有する。
【0070】
他の好ましい実施形態において、本発明の使用調製物は、場合により、脂肪酸のナトリウム−、カリウム−およびアンモニウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、オレフィンスルホン酸ナトリウム、ポリナフタレンスルホン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、−カリウムおよび−アンモニウム、アルキルポリエチレングリコールエーテル硫酸ナトリウム、−カリウムおよび−アンモニウム、アルキルフェノールポリエチレングリコールエーテル硫酸ナトリウム、−カリウムおよび−アンモニウム、モノ−およびジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、−カリウムおよび−アンモニウム、モノアルキルポリオキシエチルスルホコハク酸ナトリウム、−カリウムおよび−アンモニウム、およびアルキルポリエチレングリコールエーテルリン酸モノ−、ジ−およびトリエステル、およびこれらの混合物、およびアルキルフェノールポリエチレングリコールエーテルリン酸モノ−、ジ−およびトリエステル、およびこれらの混合物、およびこれらのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、アルキルポリエチレングリコールエーテルカルボン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、スチレン置換フェノールエトキシレートの硫酸半エステルおよびリン酸エステル、スチレン置換フェノールポリエチレングリコールエーテルカルボン酸およびそのナトリウム塩、カリウム塩およびアンモニウム塩、脂肪酸イセチオン酸ナトリウム、脂肪酸メチルタウリドナトリウムおよび脂肪酸サルコシドナトリウムの群からの1種またはそれ以上のアニオン性界面活性剤を含む。
【0071】
さらなる好ましい実施形態において、本発明の使用調製物は、場合により、グリコールエーテル、特に200〜2,000g/モルの平均モル質量を有するポリエチレングリコールエーテルまたはポリプロピレングリコールエーテル、モノ−、ジ−およびトリエチレングリコール、モノ−、ジ−またはトリプロピレングリコール、1、2、3もしくはそれ以上のエチレングリコール−もしくはプロピレングリコール単位を有するメチル−、エチル−、プロピル−、ブチル−または高官能性アルキルポリアルキレングリコールエーテル、例えば、メトキシプロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ブチルポリエチレングリコールエーテル、プロピルポリエチレングリコールエーテル、エチルポリエチレングリコールエーテル、メチルポリエチレングリコールエーテル、ジメチルポリエチレングリコールエーテル、ジメチルポリプロピレングリコールエーテル、200〜20,000g/モルの分子量を有するグリセリンエトキシレート、ペンタエリトリトールアルコキシレート、または他のエトキシル化およびアルコキシル化生成物、および1価または高官能性アルコールへのエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの付加により製造されたランダムまたはブロックコポリマーの群からの1種またはそれ以上の溶剤、ハイドロトロープ性物質、粘度調整剤または湿潤剤を含む。
【0072】
本発明のコポリマーと組み合わせることができ、そして場合により、溶剤、コンシステンシー付与剤またはレオロジー添加剤として使用される他の水溶性の有機もしくはハイドロトロープ物質は、例えば、ホルムアミド、尿素、テトラメチル尿素、ε−カプロラクタム、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、N−メチルピロリドン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、チオジグリコール、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、ブチルモノグリコール硫酸ナトリウム、ゼラチン誘導体、セルロース誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースエーテル、メトキシエチルセルロースエーテル、メトキシプロピルセルロースエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルイミダゾール、およびビニルピロリドン、酢酸ビニルおよびビニルイミダゾールからのコポリマーおよびターポリマーであり、引き続いて、酢酸ビニル構成要素を有する前記ポリマーはビニルアルコールへの加水分解に付すことができる。
【0073】
さらなる通常の添加物質としては、沈降防止剤、光安定剤、酸化防止剤、フィラー、粉砕助剤、粘度安定剤、およびレオロジーに有利に影響を及ぼす添加剤が挙げられる。粘度調節のための剤としては、例えば、デンプン誘導体およびセルロース誘導体、および疎水変性エトキシル化ウレタン(HEUR)増粘剤が挙げられる。pH調節剤としては、有機または無機塩基および酸が使用される。好ましい有機塩基は、アミン、例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、アミノメチルプロパノールまたはジメチルアミノメチルプロパノールである。好ましい無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムまたはアンモニアである。
【実施例】
【0074】
【表1】

【0075】
モノマーAの組成:
ポリグリコール1 ポリアルキレングリコールモノメタクリル酸エステル(式(I)、m=5、n=36〜38;(A−O)は(CHCH(CH)O))、(B−O)は(CHCHO)、モル質量約2,000 g/mol
ポリグリコール2 ポリアルキレングリコールモノメタクリル酸エステル(式(I)、m=5、n=104〜106;(A−O)は(CHCH(CH)O))、(B−O)は(CHCHO))、モル質量約5,000 g/mol。
【0076】
モノマーDの組成:
ポリグリコール5 ポリアルキレングリコールモノメタクリル酸エステル(式(II)、o=4〜5、p=19〜21、q=15−17;(D−O)は[CHCH(CH)O)]、(E−O)は(CHCHO)、(F−O)は[CHCH(CH)O)]、モル質量約2,200 g/mol
ポリグリコール6 ポリアルキレングリコールモノメタクリル酸エステル(式(II)、o=4〜5、p=9〜11、q=15〜17;(D−O)は[CHCH(CH)O)]、(E−O)は(CHCHO)、(F−O)は[CHCH(CH)O)]、モル質量約1,700 g/mol
ポリグリコール7 ポリアルキレングリコールモノメタクリル酸エステル(式(II)、o=4〜5、p=19〜21、q=21〜23;(D−O)は[CHCH(CH)O)]、(E−O)は(CHCHO)、(F−O)は[CHCH(CH)O)]、モル質量約2,500 g/mol。
【0077】
ポリマーの合成
ガラスフラスコにおいて、モノマー(A)、モノマー(B)、モノマー(C)、モノマー(D)および調整剤(Regler)を溶剤中に、窒素下で仕込む。その後、反応混合物を75℃に加熱し、開始剤(6.35重量%の濃度が得られるように水に溶解した上述の量)を計り入れる。完全に添加した後に、さらに1時間75℃で撹拌する。引き続いて、室温まで冷却し、水酸化ナトリウム溶液(50重量%水溶液)を用いてpH値を5.5に調節する。ポリマー溶液を40%の活性成分含有量に調節した。
【0078】
モノマー(D)なしの比較例:表参照:ポリマーNo.1、5、9および13
【0079】
使用例
以下の例においては、特に言及しない限り、パーセント表示は重量パーセントである。
【0080】
使用例1
ポリマーの泡挙動を、フリット試験(Frittentest)によって調べ、モノマー(D)なしで製造したポリマーの泡挙動と比較した。試験溶液は、NaOH(0.8%)でpH12に調節され、CaCl・2HO(0.4%)で150°dHの水硬度に調節し、そしてTylose H100000(0.7%)で濃化した、完全に脱塩した水(98.1%)からなる。この溶液に、試験すべきポリマー溶液を加え(1Lの試験溶液に5gのポリマー溶液)、その後、フリットにより、30L/hの体積流量で空気を送り込んだ。泡形成を1分後に、続いて泡の崩壊を1、2および5分後に記録した。
【0081】
【表2】

【0082】
使用例2
モルタルにおける泡形成は、高い気泡含有率をもたらす。ポリマーに組み込まれたモノマー(D)の、モルタル中の泡の抑制における作用を示すために、これらのコポリマーを高流動化剤としてモルタルに添加し、気泡含有率を、このモノマー(D)を含まない対応のコポリマーを使用したモルタルのものと比較した。モルタルにおける気泡含有率の測定のために、まず、以下の組成を有するモルタルを製造した:
540g セメント(CEM II/A−S 32.5 R)
1350g CEN標準砂(DIN EN 196−1に従う)
221.5g 水
2.6g ポリマー溶液。
【0083】
その後、フレッシュなモルタルの空気量を、気泡測定ポット(Luftporen−Messtopf)において、DIN EN 1015−7と同様に等圧法(Druckausgleichsverfahren)によって測定した:
【0084】
【表3】

【0085】
さらに、高流動化剤の性能がモノマー(D)の組み込みによって損なわれないことを示すために、ポリマー溶液添加後5、30および60分後にこれらのモルタルのスランプ(Ausbreitmass)を測定した(DIN EN 1015−3と同様に測定)。その結果より、モノマー(D)のポリマーへの組み込みがスランプに対してほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。
【0086】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー(A)、(B)および(D)、および場合により(C)から誘導される構造単位を含有するポリマーであって、
(A)が式(I)
【化1】

[式中、
AはC〜C−アルキレンを表し、
BはAとは異なるC〜C−アルキレンを表し、
Rは水素またはメチルを表し、
mは1〜500の数を表し、
nは1〜500の数を表す]
で表されるモノマーであり、
(B)が、少なくとも1つのカルボン酸官能基を含むエチレン性不飽和モノマーであり、
(C)が、場合により、(A)および(B)とは異なる別のエチレン性不飽和モノマーであり、
(D)が式(II)
【化2】

[式中、
DはC〜C−アルキレンを表し、
EはDとは異なるC〜C−アルキレン基を表し、
FはEとは異なるC〜C−アルキレン基を表し、
Rは水素またはメチルを表し、
oは1〜500の数を表し、
pは1〜500の数を表し、
qは1〜500の数を表す]
で表されるモノマーであり、そして
モノマーの重量比が、モノマー(A)が35〜98.5%であり、モノマー(B)が0.5〜45%であり、モノマー(C)が0〜20%であり、そしてモノマー(D)が1〜20%である、
ポリマー。
【請求項2】
(A−O)がプロピレンオキシド単位を、そして(B−O)がエチレンオキシド単位を表すか、あるいは、(A−O)がエチレンオキシド単位を、そして(B−O)がプロピレンオキシド単位を表し、そして、前記エチレンオキシド単位のモル比が、全てのエチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位(A−O)および(B−O)の合計(100%)を基準として50〜99%である、請求項1記載のポリマー。
【請求項3】
mが1〜150の数である、請求項1または2に記載のポリマー。
【請求項4】
nが3〜300の数である、請求項1〜3のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項5】
n+mが2〜500である、請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項6】
モノマー(B)が、3〜8個のC原子を有するモノエチレン性不飽和モノカルボン酸およびジカルボン酸から選択される、請求項1〜5のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項7】
モノマー(C)が、モノエチレン性不飽和スルホン酸、ホスホン酸および/またはそれらの塩、ならびにモノアリルポリアルキレングリコールから選択される、請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項8】
前記モノマー(C)が少なくとも0.5重量%の量で、そして前記モノマー(A)が最大で98重量%の量で存在する、請求項1〜7のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項9】
アルキレンオキシド単位(D−O)、(E−O)および(F−O)がブロック状に配置されており、そして(D−O)がプロピレンオキシド単位、(E−O)がエチレンオキシド単位、(F−O)がプロピレンオキシド単位を表し、そして、前記エチレンオキシド単位のモル比が、エチレンオキシド単位およびプロピレンオキシド単位(D−O)、(E−O)および(F−O)の合計(100%)を基準として10〜90%である、請求項1〜8のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項10】
oが1〜100の数である、請求項1〜9のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項11】
pが1〜100の数である、請求項1〜10のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項12】
qが1〜100の数である、請求項1〜11のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項13】
o+p+qの合計が3〜500である、請求項1〜12のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項14】
10g/mol〜10g/mol、特に10g/mol以下、殊に10g/molの分子量を有する、請求項1〜13のいずれか1つに記載のポリマー。
【請求項15】
無機固体懸濁液の重量を基準として0.01〜15重量%の量にある請求項1〜14のいずれか1つに記載のポリマーの、無機固体懸濁液のための消泡剤および分散剤としての使用。
【請求項16】
無機固体懸濁液の重量を基準として0.01〜15重量%の量にある請求項1〜14のいずれか1つに記載の少なくとも1種のポリマーを無機固体懸濁液に添加することによる、無機固体懸濁液の消泡および分散のための方法。


【公表番号】特表2013−520538(P2013−520538A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554243(P2012−554243)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000684
【国際公開番号】WO2011/103970
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】