説明

投与可能組成物

本発明は、薬理学的に許容し得る液体担体全体に分散された薬理学的に許容し得る微粒子材料を含む被験体への投与に好適な組成物であって、微粒子材料は立体安定剤によって分散状態に維持され、立体安定剤は、その一方または両方が、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含むポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントは固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、微粒子材料の表面に対して親和性を有し、安定剤を微粒子材料に固定する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験体に対する投与に好適な組成物、特に、液体担体全体に分散された微粒子材料を含む投与可能組成物に関する。本発明による組成物は、造影技術における投与可能組成物としての使用に特に適するため、この用途に重点を向けて本発明を説明するのが便利である。しかし、該組成物を様々な他の医薬または診断用途に使用できることが理解されるべきである。
【背景技術】
【0002】
被験体(例えば動物またはヒト)に対する投与に好適である、液体担体全体に分散された微粒子材料を含む組成物は、医薬の分野で長きにわたって使用されてきた。例えば、特定の医薬剤を、薬剤が液体担体全体に分散または懸濁された投与可能組成物の形で提供することができる。造影技術のための造影剤も、典型的には、薬剤が液体担体全体に分散または懸濁された投与可能組成物の形で提供される。
【0003】
当該組成物において、少なくとも組成物が投与されるまで分散体が安定性を維持すること(すなわち、微粒子材料が担体液全体に分散された状態を維持すること)が一般的に重要である。例えば、配合が不十分な医薬分散体は、医薬剤を液体担体から沈殿として沈降させることにより、分散体における薬剤の治療濃度を低下させ得る。これは、当然のことながら、患者の治療を大きく損ない得る患者への過小投与または過剰投与を招き得る。
【0004】
微粒子材料が分散状態を維持する重要性は、組成物が被験体に投与された後も継続し得る。例えば、非経口投与された造影剤は、インビボで分散状態を維持することが特に重要である。特に、インビボでの造影剤の凝集は、被験体にとって致命的になり得る。
【0005】
微粒子材料を分散状態に維持するのを助けるために安定剤が広く採用されている。安定剤は、典型的には、(a)微粒子材料および周囲の液体環境(すなわち組成物の液体担体またはインビボの液体担体)と相互作用し、(b)微粒子材料を分散状態に維持するのを助ける静電および/または立体反発力を与えることによって機能する。天然および合成由来の様々な当該安定剤が既知である。
【0006】
しかし、一定の状況下では、微粒子材料を液体担体全体に分散した形で維持することが困難であり得る。比較的高いイオン強度(例えば、インビボのイオン強度に匹敵するイオン強度-等張性)を有する液体担体を含む投与可能組成物を製造することがときには望ましく、または必要である。その場合、いくつかの安定剤は、液体担体全体に微粒子材料を安定に分散させるのに単に効果がないか、または不十分である。この問題は、組成物の投与後も存在し得る。特に、インビボで微粒子物質に与えられた液体担体も比較的高いイオン強度を有することが可能である。
【0007】
所定の液体環境が、微粒子材料を分散状態に維持する安定剤の能力に与える影響に加えて、またはその影響とは別に、液体環境における微粒子材料自体の濃度もこの能力に影響を与え得る。特に、典型的には、従来の安定剤と微粒子材料との相互作用と周囲の液体環境との間に平衡状態が発生することを当業者なら理解するであろう。したがって、周囲の液体環境の容量が所定の安定化微粒子材料と比較して大きくなると、平衡状態は、液体環境と結合するより多くの時間を費やす安定剤に有利にシフトすることによって、微粒子材料が凝集するか、または単に分散体から脱落する機会を増やすことができる。この平衡状態は、周囲の液体の容量が所定の安定化微粒子材料と比較して小さくなる(すなわち、周囲の液体における微粒子材料の濃度が増加する)と逆転するが、それでも多くの安定剤は、40重量%程度を上回る濃度で分散および容易に流動可能な状態に微粒子材料を維持することができない。
【0008】
当該濃度効果は、その投与前の組成物自体および/または投与された組成物に適用され得る。組成物を被験体に投与する希釈効果は、任意の長さの時間にわたって、微粒子材料をインビボで安定状態に維持することに関して特に問題になり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Martin、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、(1990)
【非特許文献2】Greenlee、R.Z.、Polymer Handbook第3版、(Brandup, J.およびImmergut. E.H.編) Wiley:New York、1989、11/53頁
【非特許文献3】Moad and Solomon、「the Chemistry of Free Radical Polymerisation」、Pergamon、London、1995、53〜95頁
【非特許文献4】Preparation of aqueous magnetic liquids in alkaline and acidic media. IEEE Transactions on Magnetics、1981. MAG-17(2):1247〜1248頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、既存の投与可能組成物に伴う1つまたは複数の欠点または短所に対処し、またはそれらを改善するか、あるいは少なくとも従来の投与可能組成物の有用な代替を提供する機会が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、薬理学的に許容し得る液体担体全体に分散された薬理学的に許容し得る微粒子材料を含む被験体への投与に好適な組成物であって、微粒子材料は立体安定剤によって分散状態に維持され、立体安定剤は、その一方または両方が、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含むポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントは固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、微粒子材料の表面に対して親和性を有し、安定剤を微粒子材料に固定する組成物を提供する。
【0012】
本発明による組成物は、有利には、高いイオン強度を有する液体担体を含む多様な液体担体全体にわたって高濃度および低濃度で特に安定した微粒子材料の分散体を示すことが判明した。本発明による組成物を、有利には、有機および/または無機組成物を有する様々な微粒子材料を使用して製造することもできる。
【0013】
本発明による組成物は、被験体に投与されると、有利には、微粒子材料をインビボで分散状態に維持することを可能にする形で微粒子材料を被験体に送達することもできる。
【0014】
したがって、本発明は、また、インビボの液体担体全体に分散された微粒子材料であって、該微粒子材料は立体安定剤によって分散状態に維持され、立体安定剤は、その一方または両方が、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含むポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントは固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、微粒子材料の表面に対して親和性を有し、安定剤を微粒子材料に固定する微粒子材料を提供する。
【0015】
理論によって制限されることを望まないが、本発明に従って使用される立体安定剤は、微粒子材料と強い結合を形成し、液体担体全体に特に安定した微粒子材料の分散体を提供することが考えられる。微粒子材料と立体安定剤との強い結合は、固定セグメントと微粒子材料との結合相互作用のための複数の部位を提供する安定剤の固定セグメントのポリマー特性に起因すると考えられる。安定剤の立体安定化ポリマーセグメントは、微粒子材料を、立体反発力を与えることによって多様な液体担体全体に分散状態で維持することを可能にすると考えられる。
【0016】
理論によって制限されることを望まないが、異なる立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを有する立体安定剤を提供することによって、各ポリマーセグメントを、有利には、立体安定化セグメントの場合は所定の液体担体における立体安定化を最大にし、固定セグメントの場合は立体安定剤を所定の微粒子材料に固定を最大にするように調整することができる。
【0017】
立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントの少なくとも一方は、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される。少なくとも1つの当該セグメントを採用すると、立体安定剤の安定化特性が向上すると考えられる。
【0018】
本発明による組成物を有利には様々な医薬、治療および診断用途に応用することができる。例えば、微粒子材料が医薬活性薬(例えば薬物)である場合は、該組成物を使用して被験体の疾患または状態を治療することができる。微粒子材料が診断薬(例えば造影剤または放射性同位体)である場合は、本発明による組成物を診断造影などの診断用途に使用することができる。微粒子材料が治療薬(例えば磁性粒子または放射性同位体)である場合は、本発明による組成物を温熱療法または放射線療法などの治療用途に使用することができる。
【0019】
したがって、本発明は、また、薬理学的に許容し得る液体担体全体に分散された微粒子材料の形の医薬剤を含む被験体への投与に好適な医薬組成物であって、微粒子材料は立体安定剤によって分散状態に維持され、立体安定剤は、その一方または両方が、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含むポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントは固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、微粒子材料の表面に対して親和性を有し、安定剤を微粒子材料に固定する医薬組成物を提供する。
【0020】
本発明は、さらに、薬理学的に許容し得る液体担体全体に分散された微粒子材料の形の診断薬を含む被験体への投与に好適な診断組成物であって、微粒子材料は立体安定剤によって分散状態に維持され、立体安定剤は、その一方または両方が、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含むポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントは固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、微粒子材料の表面に対して親和性を有し、安定剤を微粒子材料に固定する診断組成物を提供する。
【0021】
一実施形態において、本発明による組成物を使用して、被験体の対象となる領域の画像を得ることを容易にする。
【0022】
したがって、本発明は、また、被験体の対象となる領域の画像を提供するための方法であって、本発明による組成物を該被験体に投与するステップと、診断造影技術を使用して、対象となる領域の画像を得るステップとを含む方法を提供する。その場合、微粒子材料は、一般には、造影剤または放射性同位体などの診断薬の形であるか、または当該診断薬を含むことになる。
【0023】
分散診断薬を含む本発明による組成物は、超音波法、X線法、コンピュータ断層撮影(CT)法、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)法、陽電子放射型断層撮影(PET)法および磁気共鳴造影(MRI)法の分野に採用されると特に有用であることが期待される。
【0024】
本発明の投与可能組成物の医薬用途は、医薬剤を使用する治療だけでなく、(例えば温熱療法または放射線療法のための)磁性または放射性微粒子材料を使用する治療も包含することを意図する。
【0025】
したがって、本発明は、また、薬理学的に許容し得る液体担体全体に分散された微粒子材料の形の治療薬を含む被験体への投与に好適な治療組成物であって、微粒子材料は立体安定剤によって分散状態に維持され、立体安定剤は、その一方または両方が、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含むポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントは固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、微粒子材料の表面に対して親和性を有し、安定剤を微粒子材料に固定する治療組成物を提供する。
【0026】
本発明のさらなる態様は、以下の本発明の詳細な説明で明らかになる。
【0027】
以下の非限定的な図面を参照しながら本発明を本明細書に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】固定ポリマーセグメント(B)および微粒子材料(P)と、液体担体に可溶化された立体安定化セグメント(A)との複数の結合相互作用を示す非縮尺概略図である。
【図2】固定ポリマーセグメント(B)および微粒子材料(P)と、液体担体に可溶化された立体安定化セグメント(A)との複数の結合相互作用を示す非縮尺概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明による組成物は、被験体への投与に好適である。「被験体」という用語は、動物またはヒト被験体を指す。「動物」は、霊長類、(ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタおよびヤギを含む)家畜動物、(イヌ、ネコ、ウサギおよびモルモットを含む)コンパニオン動物ならびに(動物園環境に広く見られる動物を含む)捕獲性野生動物を指す。ウサギ、マウス、ラット、モルモットおよびハムスターなどの実験動物も、便利な試験システムを提供することができるため考えられる。いくつかの実施形態において、被験体は、ヒト被験体である。
【0030】
被験体への投与に「好適」である組成物は、被験体への組成物の投与が、アレルギー反応および疾患状態を含む許容し得ない毒性をもたらさないことを意味する。
【0031】
被験体への組成物の「投与」は、微粒子材料を被験体に伝達できるように組成物が提供されることを意味する。投与の方式に特定の制限はないが、これは、一般には、経口投与、(皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、静脈内投与、鞘内投与および脊髄内投与を含む)非経口投与、(噴霧を含む)吸入、局部投与、直腸投与および膣投与方式によるものである。
【0032】
本発明による組成物は、薬理学的に許容し得る液体担体全体に分散された薬理学的に許容し得る微粒子材料を含む。「薬理学的に許容し得る」とは、微粒子材料、液体担体または組成物の他の構成成分(例えば立体安定剤)がそれ自体被験体への投与に好適であることを意味する。換言すれば、微粒子材料、液体担体または組成物の他の成分の被験体への投与は、アレルギー反応および疾患状態を含む許容し得ない毒性をもたらさない。
【0033】
単に手引きとして、当業者は、「薬理学的に許容し得る」を、連邦または州政府の管理機関によって承認された物質、あるいは米国薬局方、または動物、特にヒトにおける使用に対する他の広く認識された薬局方に掲載されている物質と見なすことができる。
【0034】
すなわち、被験体への投与のための組成物の適切さ、ならびに所定の微粒子材料または液体担体が薬理学的に許容し得ると見なされるか否かは、選択される投与方式にある程度依存することを当業者なら理解するであろう。したがって、所定の組成物が被験体への投与に好適であるか、または薬理学的に許容し得るか否かを評価するときは、投与方式を考慮する必要があり得る。
【0035】
液体担体「全体に分散」されている微粒子材料は、微粒子材料が、それ自体微粒子材料に対して連続的な液体媒体または相として存在する液体担体全体にわたる分散相として存在することを意味する。換言すれば、組成物は、液体媒体全体にわたる微粒子材料の懸濁物または分散体を含むものと記載され得る。
【0036】
本明細書に使用されているように、液体担体の文脈における「液体」という用語は、微粒子材料が全体に分散された媒体であって、少なくとも本発明による組成物の意図する使用の温度において液体状態である媒体を指す。典型的には、液体担体は、安定剤の不在下で、担体全体に分散された微粒子材料が凝集または担体から沈降して沈殿を形成することができる場合は、「液体」状態であると見なされる。換言すれば、微粒子材料が媒体内を比較的自由に移動できる場合は、それは「液体」と見なされる。
【0037】
本発明の組成物に使用される液体担体を1つまたは複数の異なる液体で構成することができる。好適な薬理学的に許容し得る液体担体は、Martin、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、(1990)に記載されており、水、ならびに落花生油、大豆油、鉱油およびゴマ油等の石油、動物、植物、鉱物または合成起源のものを含む油などの滅菌できる液体を含むが、それらに限定されない。他の液体担体としては、メチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールが挙げられる。水または可溶性生理食塩水ならびにデキストロースおよびグリセロール水溶液は、好ましくは、特に注射可能液のための液体担体として採用される。
【0038】
本発明の組成物は、当業者に既知の1つまたは複数の薬理学的に許容し得る添加剤を含むことができる。例えば、液体担体は、湿潤剤、消泡剤、界面活性剤、緩衝剤、電解質、防腐剤、着色剤、香料および甘味料などの1つまたは複数の添加剤を含むことができる。
【0039】
微粒子材料が医薬剤である場合は、組成物に含まれる添加剤は、添加剤が薬剤の効果または効力を向上させることができるという点で医薬助剤であってよい。
【0040】
液体担体および(存在すれば)その中の任意の添加剤の具体的な性質は、一部に、組成物の意図する用途に応じて決まる。当業者は、組成物の意図する用途に対応する好適な液体担体および(存在すれば)添加剤を選択することが可能である。
【0041】
(組成物の一部としての)本明細書に記載の微粒子材料を、適宜、治療、抑制または診断有効量で投与することができる。治療、抑制または診断有効量は、所望の投与計画に従って投与されると、治療および/または診断されている特定の状態の症候を緩和すること、その発生を予防または遅延すること、その進行を抑制または緩慢化すること、それを診断すること、あるいはその発生または進行を完全に停止または逆転させることの1種または複数を含む所望の治療または診断効果を達成する量を含む。
【0042】
これを達成するための好適な投与量および投与計画は、担当医によって決定され、治療または診断されている特定の状態、状態の重度ならびに被験体の概略の年齢、健康状態および体重に左右され得る。
【0043】
投与は、分間隔、時間間隔、日間隔、週間隔、月間隔もしくは年間隔、またはこれらの期間のいずれか1つにわたって連続的に行われてよい。微粒子材料自体の好適な投与量は、投与毎に体重1kg当たり約0.1ngから体重1kg当たり1gの範囲内であってよい。投与量は、投与毎に体重1kg当たり1mgから1gの範囲のように投与毎に体重1kg当たり1μgから1gの範囲であってよい。一実施形態において、投与量は、投与毎に体重1kg当たり1mgから500mgの範囲であってよい。別の実施形態において、投与量は、投与毎に体重1kg当たり1mgから250mgの範囲であってよい。さらに別の実施形態において、投与量は、投与毎に体重1kg当たり50mgまでのように投与毎に体重1kg当たり1mgから100mgの範囲であってよい。
【0044】
本発明による組成物を単一の投与量または一連の投与量で投与することができる。
【0045】
本発明による組成物が非経口投与に好適である場合は、それらは、一般には、組成物を意図する被験体の血液と等張させる抗酸化剤、緩衝剤、殺菌剤または溶質の1種または複数を含むことができる水性または非水性等張性無菌注射液の形になる。当該組成物を単位投与または多投与密封容器、例えばアンプルおよびバイアルで提供することができる。
【0046】
本発明による組成物は、投与されると、インビボで希釈されてよい。例えば、組成物が蛍光または非経口投与された場合に希釈され得る。その場合、組成物の液体担体は、微粒子材料がその全体に分散された周囲の液体環境が、元来の液体担体よりインビボの液体(すなわち被験体内の生体液/流体)をより多く有するようにインビボで希釈されてよい。例えば、経口投与されると、組成物からの微粒子材料は、組成物の元来の液体担体でなく胃液全体に分散されていると記載される方が妥当であり得る。非経口投与されると、組成物からの微粒子材料は、組成物の元来の液体担体でなく血液全体に分散されていると記載される方が妥当であり得る。これらの状況下では、微粒子材料を、インビボの液体担体(すなわち被験体内の生体液/流体)全体に分散されているものとして示すのが便利である。本発明による組成物の液体担体とインビボの液体担体とのあらゆる組成の差異を除いては、該組成物の液体担体に関連して本明細書に記載される事項は、インビボの液体担体にも概ね適応する。
【0047】
本明細書に使用されているように、「微粒子材料」という表現は、液体担体全体に分散することが可能であり、安定剤を固定できる表面を提供する、医薬/診断用途に効果を有する任意の材料を包含することを意図する。液体担体全体に分散することができるのであれば、微粒子材料は、任意の形状または大きさを有することができる。所定の微粒子材料の大きさは、一般には、組成物の意図する用途に左右されることになる。微粒子材料の最大の直径は、一般には、約10ミクロン以下であり、好ましくは約2ミクロン以下である。
【0048】
本発明による組成物は、サブミクロン粒子、例えば、0.5ミクロン未満、0.25ミクロン未満、0.1ミクロン未満、0.01ミクロン未満、さらには0.005ミクロン未満の粒子安定した分散体を形成するのに特に効果的であることが判明した。したがって、微粒子材料は、コロイダル材料を包含することを意図する。
【0049】
液体担体全体に分散する能力を有することによって、微粒子材料は、組成物が効果的な作用を有することができるように、微粒子材料の液体担体への不溶性が十分になることが理解されるであろう。したがって、微粒子材料は、投与前に液体担体に実質的に不溶であってよいが、投与後に少なくともある程度の可溶性、例えば、インビボの液体担体へのある程度の可溶性を示し得る。このように、医薬として活性の微粒子材料を、被験体に投与すると、インビボで放出することができる。
【0050】
微粒子材料は、一次粒子の形、または一次粒子の凝集体の形であってよい。
【0051】
疑問を避けるために、微粒子材料の「径」の本明細書における言及は、所定の粒子の最大寸法に基づく粒子の平均の径を表すことを意図する。約1ミクロン以上の径を有する微粒子材料は、光学顕微鏡によって測定されるのに対して、約1ミクロン未満の径を有する微粒子材料は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定される。
【0052】
疑問を避けるために、微粒子材料が一次粒子の凝集体の形であるときは、当該材料の径の言及は、凝集体を形成する一次粒子でない凝集体の最大寸法の言及であることを意図する。
【0053】
微粒子材料は、典型的には、その意図する用途に使用されたときに組成物が典型的に経験する温度で固体である外面を少なくとも有する。それらの意図する用途において使用中および使用前の貯蔵中に組成物が経験し得る温度を考慮すると、微粒子材料の少なくとも外面は、一般には、少なくとも約40℃まで、好ましくは約50℃まで固体の状態である。微粒子材料は、組成物全体にわたって当該固体の状態を当然のことながら有してよく、いくつかの実施形態では当該固体の状態を有する(すなわち固体微粒子材料である)。
【0054】
医薬または診断効果を有することの他に、微粒子材料の組成に特別な制限はない。微粒子材料は、有機組成物または無機組成物またはそれらの組合せを有することができる。微粒子材料は、医薬として活性の化合物(例えば薬物)、金属、金属合金、金属塩、金属錯体、金属酸化物、放射性同位体および/またはそれらの組合せから選択されるか、それらを含み得る。
【0055】
好適な微粒子材料は、金、銀および塩、それらの錯体もしくは酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト、酸化マンガン、オキシ水酸化鉄、オキシ水酸化クロム、オキシ水酸化コバルト、オキシ水酸化マンガン、二酸化クロム、他の遷移金属酸化物、オージェ電子エミッタ、αエミッタおよびβエミッタから選択される放射性同位体、ならびにそれらの組合せを含むことができる。
【0056】
オージェ電子エミッタの例としては、51Cr、67Ga、71Ge、75Se、77Br、80mBr、99mTc、103Pd、103mRh、111In、113mIn、115mIn、117mSn、119Sb、123I、125I、131Cs、161Ho、165Er、193mPt、195mPt、201Tlおよび203Pbが挙げられる。
【0057】
αエミッタの例としては、211Atおよび213Biが挙げられる。
【0058】
βエミッタの例としては、191Os、35S、33P、45Ca、199Au、169Er、67Cu、47Sc、177Lu、161Tbおよび105Rhなどの低エネルギーβエミッタ; 131I、153Sm、77As、143Pr、198Au、159Gd、109Pd、186Re、111Agおよび149Pmなどの中エネルギーβエミッタ;ならびに165Dy、89Sr、32P、166Ho、188Re、114mIn、142Pr、90Yおよび76Asなどの高エネルギーβエミッタが挙げられる。
【0059】
放射線療法に使用できる放射性同位体の例としては、32P、153mS、90Y、125I、192Ir、103Pd、111In、166Hoおよび213Biが挙げられる。
【0060】
診断薬として使用できる放射性同位体の例としては、99mTc、67Ga、64Cu、89Zrおよび18Fが挙げられる。
【0061】
放射性同位体が本発明に従って使用される場合は、放射性核種をそのまま微粒子材料として使用することができ、あるいは1つまたは複数の他の好適な微粒子材料と組み合わせることができる。換言すれば、微粒子材料は、1つまたは複数の放射性同位体を含むことができる。例えば、67Gaを、酸化鉄微粒子材料と組み合わせた形で使用することができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態において、微粒子材料が磁性であることが好適である。本発明に従って使用できる磁性微粒子材料は、一般には、1ミクロン未満の粒径を有する。粒子の組成および/または粒径がそれらの磁気特性に影響し得ることを当業者なら理解するであろう。磁性微粒子材料は、一般には、強磁性、フェリ磁性または超常磁性を示す。
【0063】
使用される磁性微粒子材料の具体的な粒径は、一般には、組成物の意図する用途に左右される。いくつかの用途では、磁性微粒子材料が、約500nm未満、例えば約100nm未満、または約50nm未満の粒径を有することが望ましい。
【0064】
本発明に従って使用できる磁性微粒子材料の種類に特別の制限はない。好適な磁性材料の例としては、鉄、ニッケル、クロム、コバルト、それらの酸化物、またはこれらのいずれかの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。好適な酸化鉄磁性微粒子材料としては、γ-酸化鉄(すなわち、磁赤鉄鉱としても知られるγ-Fe2O3)および磁鉄鉱(Fe3O4)が挙げられる。
【0065】
いくつかの用途において、超常磁性(すなわちナノ超常磁性粒子)である磁性材料を使用するのが望ましい。本明細書に使用されているように、「超常磁性」という用語は、以下の特性、すなわち(i)保磁力、(ii)残留磁気、または(iii)印加磁場の変化率が準静的であるときのヒステリシスループを有さない磁性粒子を指すことを意図する。
【0066】
磁性材料は、好ましくは、MがFe、Co、Ni、Mn、Be、Mg、Ca、Ba、Sr、Cu、Zn、Ptもしくはそれらの混合物などの二価金属である一般式MO.Fe2O3のフェライト、またはMが大きな二価イオン、金属イオン、コバルトもしくはニッケルである一般式MO.6Fe2O3のマグネットプランバイト型酸化物から選択される。また、それらは、純粋のFe、Ni、CrもしくはCoまたはこれらの酸化物の粒子であり得る。あるいは、それらは、これらのいずれかの混合物であり得る。
【0067】
一実施形態において、磁性微粒子混合物は、粒径が好ましくは50nm未満、例えば1から40nmである磁鉄鉱(Fe3O4)または磁赤鉄鉱(γ-Fe2O3)などの酸化鉄であるか、または当該酸化鉄を含む。
【0068】
本発明に従って使用される微粒子材料を、便利には、当該技術分野で既知の技術を使用して製造することができる。
【0069】
本発明によれば、微粒子材料は、立体安定剤によって分散状態に維持される。この文脈において、「維持される」とは、立体安定剤が存在しなければ、微粒子材料が凝集するか、または沈殿として液体担体から沈降することを意味する。換言すれば、立体安定剤は、微粒子材料を分散状態に維持するように機能する。
【0070】
微粒子材料が分散状態に維持される結果として、本発明による投与可能組成物は、液体担体全体に微粒子材料の安定な分散体を提供すると考えられる。この文脈において、「安定な」分散体は、分散微粒子材料が、組成物の推定貯蔵寿命にわたって望ましくない程度まで凝集しない分散体であると考えられる。単に手引きとして、安定な分散体は、分散体が高いイオン強度を有する溶液、例えば0.15MのNaCl溶液で希釈されたときに、分散微粒子材料が、凝集を通じて、動的光散乱によって測定されたその粒径を、約12カ月にわたって、または約2週間にわたって20%を超える割合、好ましくは10%を超える割合、より好ましくは5%を超える割合、最も好ましくは1%を超える割合で増大させない分散体と見なされ得る。
【0071】
本発明によれば、立体安定剤は、微粒子材料を分散状態に維持するように機能する。「立体」安定剤とは、液体担体全体にわたる微粒子材料の安定化が立体反発力の結果として生じることを意味する。すなわち、立体安定剤は、同様に微粒子材料の安定化に役立つ静電反発力を提供することができる。しかし、当該静電反発力は、比較的高いイオン強度を有する液体担体において安定化機能を提供するとしてもごくわずかであることを当業者なら理解するであろう。したがって、本発明に従って使用される安定剤の立体安定化機能は、微粒子材料を液体担体全体に分散状態に維持することを可能にする上で重要な役割を果たす。
【0072】
本発明に従って使用される立体安定剤は、ポリマー組成物を有する。立体安定剤の分子量に特別な制限はなく、安定剤のこの特徴は、一部に、本発明による組成物を被験体に投与する方式に左右され得る。立体安定剤は、例えば、約50000までの数平均分子量を有することができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態において、立体安定剤の数平均分子量は、約30000未満、または約20000未満、または約10000未満、またはさらに約5000未満であることが好ましい。立体安定剤の数平均分子量は、約1000から約3000の範囲であってもよい。
【0074】
数平均分子量が比較的小さい(例えば、約5000未満、好ましくは約1000から約3000の範囲である)、本発明に従って使用される立体安定剤は、微粒子材料、特にサブミクロンの微粒子材料(すなわち、微粒子材料の最大寸法が1ミクロン未満である場合)を安定化させるのに効果的であることが判明した。
【0075】
本明細書に定義される分子量の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を使用して測定された値である。
【0076】
本発明に従って使用される立体安定剤は、微粒子材料の安定化を液体担体における微粒子材料の低濃度および高濃度の両方で達成できるという点において、高効率の安定化特性を示すことが判明した。立体安定剤は、また、高いイオン強度を有する液体担体(例えば0.15MのNaCl溶液、および室温における飽和NaCl溶液と同程度のモル数のNaCl溶液)全体にわたって、かつ広いpH範囲にわたって微粒子材料を安定に分散させることが判明した。
【0077】
本発明による投与可能組成物(例えば、造影のために非経口投与される組成物)の特定の用途では、投与された微粒子材料(例えば造影剤)が小さな安定化コロナ(すなわち、安定剤が微粒子材料付近に占める容量)を有することが望ましいことがある。本発明に従って使用される立体安定剤は、比較的小さい数平均分子量を有しながら効率的かつ効果的に機能することができるため、小さい安定化コロナの存在の恩恵を受けることができる用途での使用に特に適する。
【0078】
被験体に投与されると、インビボで取り込まれた本発明による組成物の成分は、究極的には代謝され、かつ/または被験体によって排泄されることになる。立体安定剤に関して、その数平均分子量を小さくすると、有利には、このプロセスを容易にすることもできる。
【0079】
微粒子材料に対する立体安定剤の使用量は、微粒子材料の性質、特にその粒径に応じて異なる。例えば、1gの5nmの微粒子材料は、その表面積が大きいために1gの1ミクロンの微粒子より多くの安定剤を必要とすることになる。当業者は、所定の微粒子材料に対して必要な安定剤の量を決定することが可能である。
【0080】
立体安定剤を構成する立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントの少なくとも一方は、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される。好適なリビング重合技術については以下にさらに詳細に記載する。それらのセグメントの一方のみがこのように誘導される場合は、他方のセグメントは、当業者に既知の任意の他の従来の重合技術によって誘導され得る。
【0081】
「立体安定化ポリマーセグメント」とは、ポリマー(すなわち少なくとも1つの種類のモノマーの重合によって形成されたポリマー)であり、立体安定剤の立体安定化機能を提供する立体安定剤のセグメントまたは領域を指す。便宜上、立体安定化ポリマーセグメントは、以後、ポリマーセグメント「A」と称することができる。
【0082】
以上に言及されているように、立体安定化ポリマーセグメントは、立体反発力を提供することによって、微粒子材料を液体担体全体にわたって安定化させるように機能する。
【0083】
ポリマーであることにより、立体安定化セグメントは、重合モノマー残留物を含むことが理解されるであろう。したがって、該セグメントは、必要な立体安定化特性をもたらす重合モノマー残留物を含む。立体安定化ポリマーセグメントを構成する重合モノマー残留物は同一であっても異なっていてもよい。
【0084】
立体安定化ポリマーセグメントは、部分(例えば本明細書に記載の任意の置換基)で置換されていてよく、または静電安定化特性を与える重合モノマー残留物を含むことができる。
【0085】
所望の立体安定化効果を提供するために、立体安定化ポリマーセグメントは、組成物の少なくとも液体担体に可溶である。所定の液体担体に対する所定の立体安定化ポリマーセグメントの溶解度を、単にポリマーセグメントを分離した形で調製し、選択した液体担体での好適な溶解試験を実施することによって容易に測定することができる。
【0086】
立体安定剤は、全体的に、所定の液体担体に可溶であってもなくてもよいが、立体安定化ポリマーセグメントを提供する。
【0087】
当業者は、立体安定化ポリマーセグメントとして採用できるポリマー材料を、当該ポリマーを形成するために重合することができるモノマーに関して理解するであろう。例えば、好適なポリマー材料としては、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドンおよびそれらのコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。安定化ポリマーセグメントを形成するために使用できる好適なモノマーとしては、アルキルアミド、エチレンオキシド、ヒドロキシエチルアクリレート、n-イソプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ビニルピロリドンおよびそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0088】
立体安定剤の一部として使用される特定の立体安定化ポリマーセグメントは、当然のことながら、液体担体の性質に左右されることになる。例えば、水性液体担体が使用される場合は、立体安定化ポリマーセグメントは、水性媒体に可溶でなければならない。当業者は、選択された液体担体に対して適切な立体安定化ポリマーセグメントを選択することが可能である。
【0089】
固定ポリマーセグメントと無関係に特定の立体安定化ポリマーセグメントを選択することが可能であることによって、本発明に従って使用される立体安定剤を、有利には、特定の液体担体に適するように調整設計することによって、立体安定剤の立体安定特性を最大にすることができる。
【0090】
重合技術を使用して立体安定化セグメントを調製することができる。リビング重合技術は、立体安定化ポリマーセグメントを調製するのに特に有用であることが判明した。「リビング重合」は、連鎖移動を実質的に伴わず、デッドポリマー鎖をもたらす停止を実質的に伴わずに連鎖成長を伝搬する付加重合の形であることを当業者なら理解するであろう。「デッドポリマー鎖」とは、モノマーがさらに付加され得ないものを指す。
【0091】
リビング重合において、典型的にはすべてのポリマー鎖が、重合の開始時点で発生し、重合の後の段階で発生する新たな鎖は最小限にとどめられる。この発生プロセスの後に、すべてのポリマー鎖が実質的に同じ速度で成長する。リビング重合の特徴および特性は、一般には、(i)変換とともにポリマーの分子量が増大すること、(ii)ポリマー鎖の長さの分布が狭いこと(すなわち、それらが同様の分子量を有すること)および(iii)さらなるモノマーをポリマー鎖に付加してブロックコポリマー構造を生成できることを含む。したがって、リビング重合は、リビング重合以外の方法では達成することができない、得られたポリマーの分子量、ポリマー鎖構造および多分散度に対する優れた制御を可能にする。
【0092】
好適なリビング重合技術をイオン重合および制御ラジカル重合(CRP)から選択することができる。CRPの例としては、イニファーター重合、安定フリーラジカル媒介重合(SFRP)、原子移動ラジカル重合(ATRP)および可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合が挙げられるが、それらに限定されない。
【0093】
リビングイオン重合は、動力学的連鎖担体をイオンまたはイオン対にする付加重合の形である。重合は、陰イオンまたは陽イオン動力学的連鎖担体を介して進行する。換言すれば、伝搬種は、負または正電荷を運ぶため、それぞれ付随する対陽イオンまたは対陰イオンも存在することになる。例えば、陰イオン重合の場合は、Iが有機陰イオン(例えば場合により置換されたアルキル陰イオン)を表し、Mが付随する対陽イオンを表すI-M+で表される部分を使用することによって重合を実施することができ、あるいはリビング陽イオン重合の場合は、その成分を、Iが有機陽イオン(例えば場合により置換されたアルキル陽イオン)を表し、Mが付随する対陰イオンを表すI+M-で表すことができる。陰イオンおよび陽イオンリビング重合を実施するための好適な成分は、当業者に周知である。
【0094】
リビング重合技術は、CRP技術であってよい。
【0095】
イニファーター重合は、CRPから周知であり、以下のスキーム1に例示されるメカニズムで進行することが広く理解されている。
【0096】
【化1】

【0097】
スキーム1を参照すると、イニファーターABが化学的、熱的または光化学的に解離して、反応性ラジカル種Aおよび一般に相対的に安定なラジカル種Bを生成する(対称イニファーターでは、ラジカル種Bは、ラジカル種Aと同じである)(ステップa)。ラジカル種Aは、(ステップbにおいて)モノマーMの重合を開始することができ、(ステップcにおいて)ラジカル種Bとのカップリングによって不活性化され得る。(ステップdにおいて)イニファーターに移動し、かつ/または(ステップeにおいて)休眠ポリマーに移動した後で(ステップfにおいて)停止することがイニファーターの化学の特徴である。
【0098】
イニファーター重合を実施するための好適な部分は、当業者に周知であり、ジチオカーボネート、二硫化物および二硫化チウラム部分を含むが、それらに限定されない。
【0099】
SFRPは、CRPから周知であり、以下のスキーム2に例示されるメカニズムによって進行することが広く理解されている。
【0100】
【化2】

【0101】
スキーム2を参照すると、SFRP部分CDが解離して、活性ラジカル種Cおよび安定ラジカル種Dを生成する。活性ラジカル種Cは、モノマーMと反応し、得られた伝搬連鎖が安定ラジカル種Dと再結合し得る。SFRP部分は、イニファーター部分と異なり、移動ステップがない。
【0102】
SFRPを実施するための好適な部分は、当業者に周知であり、フェノキシおよびニトロオキシラジカルを生成することが可能な部分を含むが、それらに限定されない。部分がニトロオキシラジカルを生成する場合は、重合技術は、ニトロオキシド媒介重合(NMP)としてより広く知られる。
【0103】
フェノキシラジカルを生成することが可能なSFRP部分の例としては、tert-アルキル(例えばt-ブチル)、フェニルもしくはジメチルベンジルなどの嵩高い基によって2および6位が置換され、アルキル、アルキルオキシ、アリールもしくはアリールオキシ基によって、またはジメチルアミノもしくはジフェニルアミノ基などの基を含むヘテロ原子(例えばS、NもしくはO)によって4位が場合により置換されたフェノキシ基を含むものが挙げられる。
【0104】
ニトロオキシラジカルを生成することが可能なSFRP部分としては、R1およびR2が三級アルキル基であり、またはR1およびR2がN原子と一緒になって、好ましくはN原子に対するα位に三次分岐を有する環式構造を形成する置換基R1R2N-O-を含むものが挙げられる。当該ニトロオキシ置換基の例としては、2,2,5,5-テトラアルキルピロリジンオキシル、ならびに5員複素環式環が脂環式もしくは芳香族環に縮合されたもの、ヒンダード脂肪族ジアルキルアミノオキシルおよびイミノオキシル置換基が挙げられる。SFRPに採用される一般的なニトロオキシ置換基は、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシである。
【0105】
ATRPは、CRPから周知であり、以下のスキーム3に例示されるように、ハロゲン原子などの移動可能原子もしくは基を伝搬ポリマー鎖に移動させることにより、金属触媒の酸化状態を低下させることによって伝搬ラジカルを可逆的に不活性化するために遷移金属触媒を一般に採用する。
【0106】
【化3】

【0107】
スキーム3を参照すると、移動可能基または原子(X、例えば、ハロゲン化物、ヒドロキシル、C1〜C6-アルコキシ、シアノ、シアナト、チオシアナトもしくはアジド)は、有機化合物(E)(例えば、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたアルキルアリールまたはポリマー鎖)から、モノマー(M)との重合を開始するラジカル種を形成させる酸化数(n)を有する遷移金属触媒(Mt、例えば、銅、鉄、金、銀、水銀、パラジウム、プラチナ、コバルト、マンガン、ルテニウム、モリブデン、ニオビウムまたは亜鉛)に移される。このプロセスの一部として、金属錯体が酸化される(Mtn+1X)。次いで、伝搬ポリマー鎖と休眠X末端封止ポリマー鎖との間に同様の反応シーケンスが確立される。
【0108】
RAFT重合は、当該技術分野で周知であり、以下のスキーム4に概要が示されるメカニズムを介して作用すると考えられる。
【0109】
【化4】

【0110】
スキーム4を参照すると、RAFT重合は、伝搬ラジカルを有するRAFT部分(1)の反応を含む初期反応シーケンス(a)を介して進行すると考えられる。形成される不安定な中間ラジカル種(2)が細分化して、RAFT部分から誘導されたラジカル(R)とともに、一時的に不活性化された休眠ポリマー種(3)を形成する。次いで、このラジカルは、モノマー(M)の重合を促進することによって、重合を再開させることができる。次いで、伝搬ポリマー鎖は、休眠ポリマー種(3)と反応して、反応シーケンス(a)と類似した反応シーケンス(b)を促進させる。したがって、不安定な中間ラジカル(4)が形成され、続いて細分化して、さらなる連鎖成長が可能なラジカルとともに、休眠ポリマー種を形成する。
【0111】
RAFT部分は、一般には、(-C(S)S-で表される二価の部分である)チオカルボニルチオ基を含み、キサンテート、ジチオエステル、ジチオカーボネート、ジチオカルバネートおよびトリチオカーボネートを含む。
【0112】
立体安定化ポリマーセグメントを1種類のモノマーまたは2種以上の異なるモノマーの組合せの重合によって形成することができる。よって、立体安定化ポリマーセグメントは、ホモポリマーセグメントまたはコポリマーセグメントであってよい。
【0113】
安定化ポリマーセグメントが、その数平均分子量の点で、立体安定化ポリマーセグメントを定めるのでなく立体安定剤の一部のみを形成するのであれば、セグメントを集合的に形成する重合モノマー単位の数を参照することが有用であり得る。したがって、立体安定化ポリマーセグメントを集合的に形成する当該単位の数に特別な制限はないが、本発明のいくつかの実施形態において、立体安定剤は、比較的低平均分子量を有することが望ましい。その場合、立体安定化ポリマーセグメントは、セグメント全体を構成する約50個未満、より好ましくは約40個未満、最も好ましくは約10から約30個の重合モノマー残留物を有するのが好ましい。
【0114】
「固定ポリマーセグメント」とは、ポリマーであり、微粒子材料の表面に対して親和性を有し、微粒子材料に立体安定剤を固定するように機能する立体安定剤のセグメントまたは領域を指す。便宜上、固定ポリマーセグメントは、以降、ポリマーセグメント「B」と称することができる。
【0115】
ポリマーであることによって、固定セグメントは、重合モノマー残留物を含むことが理解されるであろう。特に、セグメントは、微粒子材料に対する必要な結合親和性をもたらす重合モノマー残留物を含む。固定ポリマーセグメントを構成する重合モノマー残留物は同一であっても異なっていてもよい。
【0116】
微粒子材料とも結合相互作用のための複数の部位を提供する固定セグメントの能力は、少なくとも一部に、立体安定剤によって提供される優れた安定化特性をもたらす。
【0117】
一般に、固定セグメントは、微粒子材料との結合のための部位をそれぞれ提供する少なくとも2つの重合モノマー残留物、好ましくは少なくとも3つ、より好ましくは少なくとも5つ、さらにより好ましくは少なくとも7つ、最も好ましくは少なくとも10個の当該重合モノマー残留物を有する。固定セグメントを構成する重合モノマー残留物のすべてが、必ずしも微粒子材料との結合相互作用をもたらす必要がなく、固定セグメントを構成する重合モノマー残留物のすべてでなくても大多数が微粒子材料との結合相互作用をもたらすことが一般的に好適である。
【0118】
したがって、固定セグメントは、安定剤を微粒子材料に集合的に固定する複数の部位を有するものと記載され得る。
【0119】
固定ポリマーセグメントを、微粒子材料との結合相互作用をもたらすことができる、またはできない部分(例えば本明細書に記載の任意の置換基)で置換することもできる。
【0120】
所望の固定効果を提供するために、固定ポリマーセグメントは、微粒子材料に対する結合親和性を有する。固定セグメントを微粒子材料に結合させる具体的な方式は、特に重要でなく、例えば、静電力、水素結合、イオン電荷、ファンデルワールス力、またはそれらの組合せによるものであり得る。固定ポリマーセグメントによって提供される特定の利点は、微粒子材料との結合相互作用のための複数の部位を提供できることである。したがって、所定の結合部位が微粒子材料との比較的弱い相互作用しか提供しない場合でも、セグメント内の複数の当該部位の存在は、それが全体的に微粒子材料と固定的に結合することを可能にする。
【0121】
必要とされる具体的な固定ポリマーセグメントは、それが結合する微粒子材料の性質に左右される。固定ポリマーセグメントと微粒子材料との相互作用を説明するときは、該セグメントおよび微粒子材料の親水性および疎水性に言及するのが便利であり得る。したがって、概して、好適な結合相互作用は、該セグメントおよび微粒子材料が類似の親水性または疎水性を有するときに生じる。例えば、微粒子材料が比較的親水性の表面を有する場合(例えば、その表面を水溶液で湿らせることができる場合)は、親水性を有する固定ポリマーセグメントを使用して良好な結合が達成されるはずである(例えば、その分離された形では、セグメントは、水性媒体に可溶である)。当該例は、微粒子材料がその表面に電荷を形成できるタイプである場合に実現され得る。その場合、該セグメントは、該セグメントと微粒子材料の間のイオン結合を促進するように、やはり電荷を形成することができるモノマーの重合残留物(例えばイオン性モノマーの残留物)を含むことが望ましい。安定剤および微粒子材料が残留する液体担体のpHを調整することによって、当該帯電種の形成の促進を容易にすることができる。
【0122】
「イオン性モノマー」という用語は、溶液中でイオン化されて陽イオンまたは陰イオン基を形成することができる官能基を含むことを意味する。当該官能基は、一般に、陽子の損失または受容を通じて酸性または塩基性条件下でイオン化することが可能である。概して、官能基は酸基または塩基基(すなわち、それぞれH原子を供与または授与できる基)である。例えば、カルボン酸官能基は、塩基性条件下でカルボン酸陰イオンを形成することができ、アミン官能基は、酸性条件下で四級アンモニウム陽イオンを形成することができる。官能基は、イオン交換プロセスを介してイオン化することも可能であり得る。
【0123】
酸基を有する好適なイオン性モノマーの例としては、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、p-スチレンカルボン酸、p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、リン酸モノアクリルオキシエチル、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸およびマレイン酸が挙げられるが、それらに限定されない。塩基基を有する好適なイオン性モノマーの例としては、アクリル酸およびメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピル、ならびに対応するアクリル酸およびメタクリル酸3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0124】
当業者は、所定の微粒子材料の表面と結合する適切な固定ポリマーセグメントを選択することが可能である。
【0125】
立体安定化ポリマーセグメントとは無関係に特定の固定ポリマーセグメントを選択することができることによって、本発明に従って使用される立体安定剤を、有利には、特定の微粒子材料に適応させることによって立体安定剤の固定特性を最大に高めるように調整設計することができる。例えば、固定ポリマーセグメントは、カルボン酸、ホスフィネート、ホスホネートおよび/またはホスフェート官能基を含むことが望ましい。固定セグメントが結合する微粒子材料が鉄を含む場合(例えば磁性酸化鉄微粒子材料)、該セグメントがホスフィネート、ホスホネートおよび/またはホスフェート官能基を含むことが望ましい。当該セグメントは、一般には、亜リン酸官能基を含むモノマーを使用して形成されることになる。
【0126】
当業者は、固定ポリマーセグメントとして採用できる様々なポリマー材料を、当該ポリマーを形成するために重合することができるモノマーに関して理解するであろう。例えば、好適なポリマー材料としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリイタコン酸、ポリ-p-スチレンカルボン酸、ポリ-p-スチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリモノアクリルオキシエチルホスフェート、ポリ-2-(メチルアクリロイルオキシ)エチルホスフェート、ポリエタクリル酸、ポリ-α-クロロアクリル酸、ポリクロトン酸、ポリフマル酸、ポリシトラコン酸、ポリメサコン酸、ポリマレイン酸、ポリ-2-(ジメチルアミノ)エチル、ならびにプロピルアクリレートおよびメタクリレート、対応するポリ-3-(ジエチルアミノ)エチル、ならびにプロピルアクリレートおよびメタクリレート、疎水性アクリレートおよびメタクリレートポリマー、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ならびにそれらのコポリマーが挙げられるが、それらに限定されない。したがって、固定ポリマーセグメントを形成するのに使用できる好適なモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、p-スチレンカルボン酸、p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、リン酸モノアクリルオキシエチル、リン酸2-(メチルアクリルオキシ)エチル、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピル、対応するアクリル酸およびメタクリル酸3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピル、スチレン、疎水性アクリレートおよびメタクリレートモノマー、ジメチルアミノエチルメタクリレートならびにそれらの組合せが挙げられるが、それらに限定されない。
【0127】
本明細書に記載されているものなどのリビング重合技術は、固定ポリマーセグメントを調製する上で特に有用であることが判明した。立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントは、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される。それらのセグメントの一方のみがこのように誘導される場合は、それは、好ましくは固定セグメントである。
【0128】
固定ポリマーセグメントを、1種類のモノマーまたは2種以上の異なるモノマーの組合せの重合によって形成することができる。よって、固定ポリマーセグメントは、ホモポリマーセグメントまたはコポリマーセグメントであってよい。
【0129】
固定ポリマーセグメントが、その数平均分子量の観点で固定ポリマーセグメントを定めるのでなく立体安定剤の一部のみを形成するのであれば、そのセグメントを集合的に形成する重合モノマー単位の数を参照することが有用であり得る。したがって、固定ポリマーセグメントを集合的に形成する当該単位の数に特別の制限はないが、本発明のいくつかの実施形態において、立体安定剤は、数平均分子量が比較的小さいことが望ましい。その場合、固定ポリマーセグメントは、セグメント全体を構成する約50個未満、より好ましくは約40個未満、さらにより好ましくは約30個未満、さらにより好ましくは約5から約25個、最も好ましくは約5から約15個の重合モノマー残留物単位を有することが好ましい。
【0130】
立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメント、またはそれらを調製するのに使用できるモノマーを選択するときは、組成物の意図する用途の文脈でそれぞれのポリマーセグメントの特性を考慮することが望ましい。例えば、一方または両方のポリマーセグメントを、それらが生分解性および/または生体適合性を有するように選択することができる。
【0131】
安定剤が本明細書に記載されているように機能するのであれば、安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントをどのように空間配置するかということに対する特別な制限はない。
【0132】
立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを任意の好適な手段によって互いにカップリングさせて、本発明に従って使用される立体安定剤を形成することができる。例えば、立体安定剤を、Aが立体安定化ポリマーセグメントを表し、Bが固定ポリマーセグメントを表し、Cがカップリング部分を表すA-C-B構造として、または当該構造を含むものとして示すことができる。あるいは、立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを、共有結合を介して互いに直接カップリングすることができるため、安定剤を簡潔にA-Bブロックコポリマーとして、または当該コポリマーを含むものとして示すことができる。その場合、Aは、立体安定化ポリマーセグメントを表し、Bは、固定ポリマーセグメントを表す。
【0133】
以上の説明から、AおよびBの各々は独立してホモポリマーまたはコポリマー(例えばランダム、ブロック、テーパ等)であり得ることが理解されるであろう。安定剤は、1個を超える立体安定化ポリマーセグメント(A)および1個を超える固定ポリマーセグメント(B)を含むことができる。例えば、安定剤を、A-B-Aブロックコポリマーとして、または当該コポリマーを含むものとして示すことができる。その場合、各Aは、同一であっても異なっていてもよい立体安定化ポリマーセグメントを表し、Bは、固定ポリマーセグメントを表す。安定剤をB-A-Bブロックコポリマーとして、または当該コポリマーを含むものとして示すこともでき、その場合、各Bは、同一であっても異なっていてもよい固定ポリマーセグメントを表し、Aは、それが、液体担体に伸びる「ループ」を形成し、その安定化の役割を果たすように十分な鎖長を有する立体安定化ポリマーセグメントを表す。
【0134】
安定剤は、星型および櫛形ポリマー構造などのより複雑な構造を有することもできる。その場合、固定ポリマーセグメントBは、複数の立体安定化ポリマーセグメントAが結合した当該構造の主ポリマー骨格を表すことができる。
【0135】
(A-Bブロックコポリマー構造の形の)本発明に従って使用される立体安定剤と液体担体における微粒子材料との相互作用は、図1に示す非縮尺概略図に例示され得る。
【0136】
図1を参照すると、A-Bブロックコポリマーによって表される立体安定剤は、固定ポリマーセグメント(B)を介して微粒子材料(P)の表面に対して親和性を示す。したがって、固定ポリマーセグメント(B)は、立体安定剤を微粒子材料に固定する。固定ポリマーセグメント(B)は、セグメントと微粒子材料との結合相互作用のための複数の部位を提供する。セグメント(B)と異なる立体安定化ポリマーセグメント(A)は、液体担体に可溶であり、微粒子材料を液体担体全体に分散した状態に維持するように機能する。実際、微粒子材料の表面には多くの立体安定剤が固定されていること、およびこれらは、明確にするために、図1の図から省略されていることが理解されるであろう。
【0137】
本発明に従って使用される立体安定剤がA-B-Aブロックコポリマーの形である、図1の図と同様の図を図2に示す。
【0138】
立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントの少なくとも1つは、イオン重合、イニファーター重合、SFRP、ATRPおよびRAFT重合などのリビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される。これらのリビング重合技術のなかでもRAFT重合が好適である。
【0139】
上述のように、RAFT重合は、十分に確定された分子構造および低い多分散度を有するポリマーを製造することを可能にする周知のラジカル重合技術である。RAFT重合は、RAFT部分またはRAFT剤を使用して実施され、RAFT剤の制御下で形成されたポリマー(すなわち、ポリマーを形成するためのRAFTメカニズムを介して重合されたポリマー)は、便利には、「RAFTポリマー」または「RAFT誘導ポリマー」と称することができる。
【0140】
本発明の一実施形態において、立体安定剤は、RAFT誘導ポリマーである。
【0141】
RAFT剤は、一般構造Z-C(S)-S-Rを有するものとして一般的に示されること、およびRAFT誘導ポリマーは、形成されると、RAFT剤の反応残留物を含むことを当業者なら理解するであろう。したがって、本発明に従って使用される立体安定剤は、一般式(I):
【0142】
【化5】

【0143】
[式中、Xは、単独で、またはR1もしくはZとともに、(例えば、先述のA-BまたはA-B-Aブロックコポリマー構造等を有する)立体安定剤のポリマー構造を表し、R1およびZは、立体安定剤を製造するのに使用されるRAFT剤から誘導され、それがXを与えるモノマーの重合におけるRAFT剤として機能できるように独立して選択される]によって示される構造を有する。
【0144】
R1もしくはZが立体安定剤の一部として機能する場合は、それは、一般には、立体安定化ポリマーセグメントとして機能することになり、その場合、Xは固定ポリマーセグメントを表す。当該実施形態において、R1もしくはZは、本明細書に記載の立体安定化特性を表し、Xは、RAFT重合によって形成された本明細書に記載の固定ポリマーセグメントである。
【0145】
1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーの重合においてRAFT剤として機能するために、R1は、典型的には、採用される重合条件下でフリーラジカル脱離基として機能し、さらにフリーラジカル脱離基として、重合を再開する能力を保持する有機基であることを当業者なら理解するであろう。同様に、Zは、典型的には、重合を過度に遅延させる程度にRAFT付加ラジカルの細分の速度を低下させることなく、フリーラジカル付加に向けたRAFT剤におけるC=S部分の適度に高い反応性を与えるように機能する有機基であることを当業者なら理解するであろう。
【0146】
好適なR1基の例としては、それぞれが1つまたは複数の親水性基で場合により置換されたアルキル、アルキルアリール、アルコキシアリール、アルコキシヘテロアリールおよびポリマー鎖が挙げられる。
【0147】
好適なR1基のより具体的な例としては、それぞれが-CO2H、-CO2RN、-SO3H、-OSO3H、-SORN、-SO2RN、-OP(OH)2、-P(OH)2、-PO(OH)2、-OH、-ORN、-(OCH2-CHR)w-OH、-CONH2、CONHR'、CONR'R"、-NR'R"、-N+R'R"R'"[Rは、C1〜C6アルキルから選択され、wは1から10であり、R'、R"およびR'"は、-CO2H、-SO3H、-OSO3H、-OH、-(COCH2-CHR)w-OH、-CONH2、-SORおよびSO2R、ならびにそれらの塩から選択される1つまたは複数の親水性置換基で場合により置換されたアルキルおよびアリールから独立して選択され、Rおよびwは以上に定義されている通りである]から選択される1つまたは複数の親水性基で場合により置換されたC1〜C6アルキル、C1〜C6アルコキシアリールまたはヘテロアリール、ならびに水溶性ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシドポリマーおよびそれらのアルキル末端封止誘導体から選択されるポリマー鎖を挙げることができる。好適なR1基としては、-CH(CH3)CO2H、-CH(CO2H)CH2CO2H、-C(CH3)2CO2H、-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nHおよび-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nCH3[nは約5から約50または約10から約25の範囲である]が挙げられるが、それらに限定されない。
【0148】
好適なZ基を場合により置換されたアルコキシ、場合により置換されたアリールオキシ、場合により置換されたアルキル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアリールアルキル、場合により置換されたアルキルチオ、場合により置換されたアリールアルキルチオ、ジアルコキシもしくはジアリールオキシホスフィニル[-P(=O)OR22]、ジアルキルもしくはジアリールホスフィニル[-P(=O)OR22]、場合により置換されたアシルアミノ、場合により置換されたアシルイミノ、場合により置換されたアミノ、R1-(X)-S-[R1およびXは以上に定義されている通りであり、R2は、場合により置換されたC1〜C18アルキル、場合により置換されたC2〜C18アルケニル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアラルキルおよび場合により置換されたアルカリールから選択される]およびポリマー鎖、例えば、水溶性ポリエチレングリコールもしくはポリプロピレングリコールなどのポリアルキレンオキシドポリマーおよびそれらのアルキル末端封止誘導体から選択されるものから選択することができる。好適なZ基としては、-CH2(C6H5)、C1〜C20アルキル、
【0149】
【化6】

【0150】
[式中、eは2から4である]、-SR3[R3は、C1からC20のアルキルから選択される]が挙げられるが、それらに限定されない。
【0151】
R2およびZ基に対する好適な任意の置換基としては、エポキシ、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、カルボキシ(および塩)、スルホン酸(および塩)、アルコキシもしくはアリールオキシカルボニル、イソシアネート、シアノ、シリル、ハロおよびジアルキルアミノが挙げられる。
【0152】
式(I)のR1およびZ基の両方を選択する際に、好適なR1およびZ基のいずれの組合せも好適である。
【0153】
親水基が-N+R'R"R'"である場合は、付随する対陰イオンが存在することになる。
【0154】
R1は、1つまたは複数の疎水性基で場合により置換された有機基であってもよい。その場合、Zは、好ましくは、1つまたは複数の親水性基で場合により置換された有機基である。
【0155】
本明細書に使用されているように、「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、それぞれ1つまたは複数の芳香族または複素芳香族環を含みまたはからなり、環原子を介して結合された任意の置換基を指す。環は、単環式または多環式環系であってよいが、単環式または二環式5または6員環が好適である。好適な環の例としては、それぞれ場合により置換されていてよいベンゼン、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフタレン、テトラヒドロナフタレン、1-ベンジルナフタレン、アントラセン、ジヒドロアントラセン、ベンズアントラセン、ジベンズアントラセン、フェナントラセン、ペリレン、ピリジン、4-フェニルピリジン、3-フェニルピリジン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ナフトチオフェン、チアントレン、フラン、ベンゾフラン、ピレン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサンチイン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドール、インドリジン、イソインドール、プリン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、キノキサリン、キナゾリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イソチアゾール、イソオキサゾールおよびフェノキサジン等が挙げられるが、それらに限定されない。
【0156】
本明細書において、「場合により置換された」とは、基が、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアリール、ヒドロキシ、アルコキシ、アルケニルオキシ、アリールオキシ、ベンジルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、アセチレノ、カルボキシミジル、ハロアリールオキシ、イソシアノ、シアノ、ホルミル、カルボキシ、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロアリール、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ベンジルアミノ、イミノ、アルキルイミン、アルケニルイミン、アルキニルイミノ、アリールイミノ、ベンジルイミノ、ジベンジルアミノ、アシル、アルケニルアシル、アルキニルアシル、アリールアシル、アシルアミノ、ジアシルアミノ、アシルオキシ、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルフェニルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロアミノ、ハロヘテロシクリル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキルソルフィニル、アリールスルフィニル、カルボアルコキシ、アルキルチオ、ベンジルチオ、アシルチオ、スルホンアミド、スルファニル、スルホ、ならびにホスフェート、ホスファイトおよびホスフェートなどのリン含有基、アルコキシシリル、シリル、アルキルシリル、アルキルアルコキシシリル、フェノキシシリル、アルキルフェノキシシリル、アルコキシフェノキシシリル、アリールフェノキシシリル、アロファニル、グアニジノ、ヒダントイル、ウレイドおよびウレイレンから選択されるが、それらに限定されない1つまたは複数の基でさらに置換されていてもいなくてもよいことを意味する。
【0157】
他に指定する場合を除いて、本明細書に使用されている「ハロゲン」および「ハロ」という用語は、I、Br、ClおよびFを指す。
【0158】
本明細書において、単独で、または「アルケニルオキシアルキル」、「アルキルチオ」、「アルキルアミノ」および「ジアルキルアミノ」などの複合語で使用される「アルキル」という用語は、直鎖状、分枝状または環式アルキル、好ましくはC1〜20アルキルまたはシクロアルキルを表す。直鎖状および分枝状アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アミル、イソアミル、sec-アミル、1,2-ジメチルプロピル、1,1-ジメチル-プロピル、ヘキシル、4-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、1,1-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、3,3-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、1,2,2,-トリメチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、ヘプチル、5-メトキシヘキシル、1-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、4,4-ジメチルペンチル、1,2-ジメチルペンチル、1,3-ジメチルペンチル、1,4-ジメチル-ペンチル、1,2,3,-トリメチルブチル、1,1,2-トリメチルブチル、1,1,3-トリメチルブチル、オクチル、6-メチルヘプチル、1-メチルヘプチル、1,1,3,3-テトラメチルブチル、ノニル、1-、2-、3-、4-、5-、6-または7-メチル-オクチル、1-、2-、3-、4-または5-エチルヘプチル、1-、2-または3-プロピルヘキシル、デシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-および8-メチルノニル、1-、2-、3-、4-、5-または6-エチルオクチル、1-、2-、3-または4-プロピルヘプチル、ウンデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-または9-メチルデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-または7-エチルノニル、1-、2-、3-、4-または5-プロピルオクチル、1-、2-または3-ブチルヘプチル、1-ペンチルヘキシル、ドデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-、9-または10-メチルウンデシル、1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-または8-エチルデシル、1-、2-、3-、4-、5-または6-プロピルノニル、1-、2-、3-または4-ブチルオクチル、1-2-ペンチルヘプチルなどが挙げられる。環式アルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルおよびシクロデシル等の単環式または多環式アルキル基が挙げられる。
【0159】
本明細書に使用されているように、「塩」という用語は、イオン化された形の種を指し、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含む。RAFTポリマーを形成するという文脈において、好適な塩は、RAFT化学作用に干渉しない塩である。
【0160】
本明細書に使用されているように、「対陰イオン」という用語は、対応する陽イオンの電荷のバランスをとるために負電荷を提供することが可能な種を指す。対陰イオンの例としては、Cl-、I-、Br-、F-、NO3-、CN-およびPO3-が挙げられる。
【0161】
本明細書に使用されているように、「アルコキシ」という用語は、直鎖状または分枝状アルコキシ、好ましくはC1〜20アルコキシを指す。アルコキシの例としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシおよび異なるブトキシ異性体が挙げられる。
【0162】
本明細書に使用されているように、「アルケニル」という用語は、既に定義されているエチレン一、二もしくは多不飽和アルキルまたはシクロアルキル基を含む直鎖状、分枝状もしくは環式アルケンから形成された基、好ましくはC2〜20アルケニルを指す。アルケニルの例としては、ビニル、アリル、1-メチルビニル、ブテニル、イソ-ブテニル、3-メチル-2-ブテニル、1-ペンテニル、シクロペンテニル、1-メチル-シクロペンテニル、1-ヘキセニル、3-ヘキセニル、シクロヘキセニル、1-ヘプテニル、3-ヘプテニル、1-オクテニル、シクロオクテニル、1-ノネニル、2-ノネニル、3-ノネニル、1-デセニル、3-デセニル、1,3-ブタジエニル、1-4,ペンタジエニル、1,3-シクロペンタジエニル、1,3-ヘキサジエニル、1,4-ヘキサジエニル、1,3-シクロヘキサジエニル、1,4-シクロヘキサジエニル、1,3-シクロヘプタジエニル、1,3,5-シクロヘプタトリエニルおよび1,3,5,7-シクロオクタテトラエニルが挙げられる。
【0163】
本明細書に使用されているように、「アルキニル」という用語は、既に定義されているアルキルおよびシクロアルキル基と構造的に類似したものを含む直鎖状、分枝状もしくは環式アルキンから形成された基、好ましくはC2〜20アルキニルを指す。アルキニルの例としては、エチニル、2-プロピニルおよび2-もしくは3-ブチニルが挙げられる。
【0164】
本明細書に使用されているように、「アシル」という用語は、単独で、または「アシルオキシ」、「アシルチオ」、「アシルアミノ」もしくは「ジアシルアミノ」などの複合語で、カルバモイル、脂肪族アシル基、および芳香族アシルと称する芳香族環または複素環式アシルと称する複素環式環を含むアシル基、好ましくはC1〜20アシルを指す。アシルの例としては、カルバモイル:ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2-メチルプロパノイル、ペンタノイル、2,2-ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイルおよびイコサノイルなどの直鎖状または分枝状アルカノイル;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t-ブトキシカルボニル、t-ペンチルオキシカルボニルおよびヘプチルオキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル;シクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニルおよびシクロヘキシルカルボニルなどのシクロアルキルカルボニル;メチルスルホニルおよびエチルスルホニルなどのアルキルスルホニル;メトキシスルホニルおよびエトキシスルホニルなどのアルコキシスルホニル;ベンゾイル、トルオイルおよびナフトイルなどのアロイル;フェニルアルカノイル(例えば、フェニルアセチル、フェニルプロパノイル、フェニルブタノイル、フェニルイソブチリル、フェニルペンタノイルおよびフェニルヘキサノイル)ならびにナフチルアルカノイル(例えば、ナフチルアセチル、ナフチルプロパノイルおよびナフチルブタノイル)などのアラルカノイル;フェニルアルケノイル(例えば、フェニルプロペノイル、フェニルブテノイル、フェニルメタクリロイル、フェニルペンテノイルおよびフェニルヘキセノイル)ならびにナフチルアルケノイル(例えば、ナフチルプロペノイル、ナフチルブテノイルおよびナフチルペンテノイル)などのアラルケノイル;フェニルアルコキシカルボニル(例えば、ベンジルオキシカルボニル)などのアラルコキシカルボニル;フェノキシカルボニルおよびナフチルオキシカルボニルなどのアリールオキシカルボニル;フェノキシアセチルおよびフェノキシプロピオニルなどのアリールオキシアルカノイル;フェニルカルバモイルなどのアリールカルバモイル;フェニルチオカルバモイルなどのアリールチオカルバモイル;フェニルグリオキシロイルおよびナフチルグリオキシロイルなどのアリールグリオキシロイル;フェニルスルホニルおよびナフチルスルホニルなどのアリールスルホニル;複素環式カルボニル;チエニルアセチル、チエニルプロパノイル、チエニルブタノイル、チエニルペンタノイル、チエニルヘキサノイル、チアゾリルアセチル、チアジアゾリルアセチルおよびテトラゾリルアセチルなどの複素環式アルカノイル;複素環式プロペノイル、複素環式ブテノイル、複素環式ペンテノイルおよび複素環式ヘキセノイルなどの複素環式アルケノイル;ならびにチアゾリルグリオキシロイルおよびチエニルグリオキシロイルなどの複素環式グリオキシロイルが挙げられる。
【0165】
本明細書に使用されているように、それ自体で、または「複素環式アルケノイル」、「ヘテロシクロオキシ」または「ハロヘテロシクリル」などの用語の一部として使用される「複素環式」、「ヘテロシクリル」および「複素環」という用語は、N、SおよびOから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含み、場合により置換されていてよい芳香族、擬似芳香族および非芳香族環または環系を指す。好ましくは、環または環系は、3から20個の炭素原子を有する。環または環系を、「ヘテロアリール」の定義に関して以上に記載されているものから選択することができる。
【0166】
式(I)の好適な立体安定剤としては、以下の一般式(II)から(X):
【0167】
【化7】

【0168】
各構造における一方または両方の-CO2H基が-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nHまたは-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nCH3によって置換された構造(II)から(IX)、R3が-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nHまたは-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nCH3によって置換された構造(II)、(III)、(VI)および(X)、PhCH2-が-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nHまたは-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nCH3によって置換された構造(VII)および(VIII)、5員窒素複素環が-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nHまたは-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nCH3によって置換された構造(IV)および(V)[各式において、nは約5から約50、または約10から約25の範囲であり、R3およびXは、既に定義されている通りである]が挙げられるが、それらに限定されない。
【0169】
一般式(I)のZ-C(S)-S-およびR1-部分が、本発明に従って使用される立体安定剤にその有利な特性を付与することに関して特に重要でない場合は、これらの部分の一方または両方(またはその一部)を、当該技術分野で既知の技術を使用して除去または変性することができる。RAFT誘導ポリマーからZ-C(S)-S-部分またはその一部を除去または変性(例えば、硫黄含有基の除去)することが知られる多くの技術が存在する。例えば、RAFT誘導ポリマーと過酸化ベンゾイルとを反応させることができる。
【0170】
RAFT重合による立体安定剤の製造は、少なくとも1つの立体安定化ポリマーセグメント(A)を調製するための(i)1種または複数のエチレン不飽和モノマーおよび少なくとも1つの固定ポリマーセグメント(B)を調製するための(ii)1種または複数の異なるモノマーをRAFT剤の制御下で重合するステップを含むことができる(すなわち、AおよびBが構造(I)におけるXを集合的に形成する場合)。あるいは、RAFT重合によって製造された立体安定剤は、少なくとも1つの立体安定化ポリマーセグメント(A)を調製するための(i)1種または複数のエチレン不飽和モノマー、または少なくとも1つの固定ポリマーセグメント(B)を調製するための(ii)1種または複数の異なるモノマーをRAFT剤の制御下で重合することを含むことができる(すなわち、AおよびBの一方のみが構造(I)におけるXを形成し、R1が実際に他方を表す場合)。便利には、RAFT重合の技術分野の当業者によって既知の技術、条件および試薬を使用して、当該安定剤前駆体を製造することができる。
【0171】
立体安定剤を製造するための好適なRAFT剤としては、一般式(IA):
【0172】
【化8】

【0173】
[式中、R1およびZは既に定義されている通りである]のものが挙げられるが、それらに限定されない。
【0174】
式(IA)のRAFT剤のためにR1およびZ基の両方を選択する際に、好適なR1およびZ基の組合せから得られる薬剤も好適である。
【0175】
立体安定剤を製造するための好適なRAFT剤としては、以下の一般式(XI)から(IXX):
【0176】
【化9】

【0177】
によって表されるもの、各構造における一方または両方の-CO2H基が-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nHまたは-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nCH3によって置換された構造(XI)から(XVIII)、R3が-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nHまたは-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nCH3によって置換された構造(XI)、(XII)、(XV)および(IXX)、PhCH2-が-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nHまたは-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nCH3によって置換された構造(XVI)および(XVII)、5員窒素複素環が-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nHまたは-CH(CH3)CO2(CH2CH2O)nCH3によって置換された構造(XIII)および(XIV)[各式において、nは約5から約50、または約10から約25の範囲であり、R3およびXは、既に定義されている通りである]が挙げられるが、それらに限定されない。
【0178】
RAFT重合を含む任意の重合技術によって立体安定剤のブロックコポリマー構造体を調製する場合は、各セグメントを適切なモノマーの重合によって順次形成することができることを当業者なら理解するであろう。あるいは、予め形成されたポリマーをそれらのセグメントの一方として採用し、他方のセグメントを適切なモノマーの重合によってそれにグラフトすることができる。
【0179】
ビーズのポリマーマトリックスならびに立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを調製するのに使用できるモノマーの必要な属性に関する上記説明に関して、概して使用できる好適なモノマーは、フリーラジカル法によって重合できるモノマーである。好適なモノマーは、また、他のモノマーと重合することが可能でなければならない。様々なモノマーの共重合性を決定づける要因は、当該技術分野において十分に述べられている。例えば、Greenlee、R.Z.、Polymer Handbook第3版、(Brandup, J.およびImmergut. E.H.編) Wiley:New York、1989、11/53頁を参照されたい。
【0180】
以上に挙げたモノマーを含む当該モノマーを、一般式(XX)を有するモノマーから選択することができる。
【0181】
【化10】

【0182】
[式中、
UおよびWは、-CO2H、-CO2R1、-COR1、-CSR1、-CSOR1、-COSR1、-CONH2、-CONHR1、-CONR12、水素、ハロゲンおよび場合により置換されたC1〜C4アルキルからなる群から独立して選択され、あるいはUおよびWは、一緒になって、それ自体が場合により置換されていてよいラクトン、無水物またはイミド環を形成し、置換基は、ヒドロキシ、-CO2H、-CO2R1、-COR1、-CSR1、-CSOR1、-COSR1、-CN、-CONH2、-CONHR1、-CONR12、-OR1、-SR1、-O2CR1、-SCOR1および-OCSR1からなる群から独立して選択され;
Vは、水素、R2、-CO2H、-CO2R2、-COR2、-CSR2、-CSOR2、-COSR2、-CONH2、-CONHR2、-CONR22、-OR2、-SR2、-O2CR2、-SCOR2および-OCSR2からなる群から選択され;
R2は、場合により置換されたC1〜C18アルキル、場合により置換されたC2〜C18アルケニル、場合により置換されたアリール、場合により置換されたヘテロアリール、場合により置換されたカルボシクリル、場合により置換されたヘテロシクリル、場合により置換されたアラルキル、場合により置換されたヘテロアリールアルキル、場合により置換されたアルカリル、場合により置換されたアルキルヘテロアリールおよびポリマー鎖からなる群から選択され、置換基は、それらの塩および誘導体を含めて、アルキレンオキシジル(エポキシ)、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、ホルミル、アルキルカルボニル、カルボキシ、スルホン酸、ホスホネート、ホスファイトおよびホスフェートなどのリン含有基、アルコキシ-もしくはアリールオキシ-カルボニル、イソシアナト、シアノ、シリル、ハロ、アミノからなる群から独立して選択される。]。好適なポリマー鎖としては、ポリアルキレンオキシド、ポリアリーレンエーテルおよびポリアルキレンエーテルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0183】
一般式(XX)のモノマーのいくつかの例としては、無水マレイン酸、N-アルキルマレイミド、N-アリールマレイミド、フマル酸ジアルキルおよび環化重合性モノマー、アクリル酸およびメタクリル酸エステル、アクリル酸およびメタクリル酸、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミドおよびメタクリロニトリルならびにこれらのモノマーと他のモノマーとの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0184】
一般式(XX)のモノマーのさらなる例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(すべての異性体)、メタクリル酸ブチル(すべての異性体)、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリロニトリル、α-メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(すべての異性体)、アクリル酸ブチル(すべての異性体)、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(すべての異性体)、メタクリル酸ヒドロキシブチル(すべての異性体)、メタクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリエチレングリコールから選択される官能性メタクリレート、無水イタコン酸、イタコン酸、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル(すべての異性体)、アクリル酸ヒドロキシブチル(すべての異性体)、アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N-ジエチルアミノエチル、アクリル酸トリエチレングリコール、メタクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-tert-ブチルメタクリルアミド、N-n-ブチルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-エチロールメタクリルアミド、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-n-ブチルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-エチロールアクリルアミド、ビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノスチレン(すべての異性体)、α-メチルビニル安息香酸(すべての異性体)、ジエチルアミノα-メチルスチレン(すべての異性体)、p-ビニルベンゼンスルホン酸、p-ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、メ
タクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸トリブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、ビニルホスホン酸、リン酸モノアクリルオキシエチル、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、無水マレイン酸、N-フェニルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカルバゾール、ブタジエン、エチレンおよびクロロプレンが挙げられる。このリストは網羅的でない。
【0185】
所定の微粒子材料に対する結合親和性を有するように固定ポリマーセグメントを選択する場合は、微粒子材料および固定セグメントの親水性/疎水性特性を考慮することが便利であり得る。
【0186】
立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを形成するために重合されるモノマーの種類が、セグメントの親水性/疎水性を大きく左右することを当業者なら理解するであろう。当業者がセグメントの親水性をもたらすと考え得るエチレン不飽和モノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ビニルホスホン酸、リン酸モノアクリルオキシエチル、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシエチル、N-メチルアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチルまたはビニルピロリドンが挙げられるが、それらに限定されない。当業者がセグメントの疎水性をもたらすと考え得るエチレン不飽和モノマーの例としては、酢酸ビニル、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、スチレン、α-メチルスチレン、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エチルヘキシル、メタクリル酸クロチル、メタクリル酸シナミル、メタクリル酸オレイル、メタクリル酸リシノレイル、酪酸ビニル、tert-酪酸ビニル、ステアリン酸ビニルまたはラウリル酸ビニルが挙げられるが、それらに限定されない。
【0187】
エチレン不飽和モノマーのフリーラジカル重合によって立体安定剤を製造するときは、重合は、フリーラジカル源から開始することを必要とし得る。開始ラジカル源を、好適な化合物(過酸化物、ペルオキシエステルまたはアゾ化合物などの熱開始剤)の熱誘起均一開裂、モノマー(例えばスチレン)からの自然生成、酸化還元開始系、光化学開始系または電子ビーム、X線もしくはγ放射線などの高エネルギー放射などの、フリーラジカルを生成する任意の好適な方法によって提供することができる。開始系は、反応条件下で、開始剤または開始ラジカルと存在する他の試薬との実質的な有害な相互作用が存在しないように選択される。
【0188】
熱開始剤は、重合の温度で適切な半減期を有するように選択される。これらの開始剤は、以下の化合物の1種または複数を含むことができる。
2,2'-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2-シアノブタン)、ジメチル2,2'-アゾビス(イソブチレート)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2-(t-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-エチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2'-アゾビス(2,2,4-トリメチルペンタン)、2,2'-アゾビス(2-メチルプロパン)、t-ブチルペルオキシアセテート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシイソブチレート、t-アミルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシピバレート、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート、ジシクロヘキシルペルオキシジカーボネート、ジクミルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジラウロイルペルオキシド、ペルオキソ二硫酸カリウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、次亜硝酸ジ-t-ブチル、次亜硝酸ジクミル。このリストは網羅的でない。
【0189】
光化学開始剤系は、反応媒体への必要な溶解度を有し、重合の条件下でラジカル生成のための適切な量子収率を有するように選択される。例としては、ベンゾイン誘導体、ベンゾフェノン、アシルホスフィン酸化物および光酸化還元系が挙げられる。
【0190】
酸化還元開始剤系は、反応媒体への必要な溶解度を有し、重合の条件下で適切なラジカル生成速度を有するように選択される。これらの開始系としては、以下の酸化剤および還元剤の組合せを挙げることができるが、それらに限定されない。
酸化剤:カリウム、ペルオキシ二流酸塩、過酸化水素、t-ブチルヒドロペルオキシド。
還元剤:鉄(II)、チタン(III)、チオ亜硫酸カリウム、重亜硫酸カリウム。
【0191】
他の好適な開始系は、最近の文献に記載されている。例えば、Moad and Solomon、「the Chemistry of Free Radical Polymerisation」、Pergamon、London、1995、53〜95頁を参照されたい。
【0192】
水などの親水性反応媒体への相当の溶解度を有する好適な開始剤としては、4,4-アゾビス(シアノ吉草酸)、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2'-アゾビス(N,N'-ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-エチル]プロピオンアミド}、2,2'-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2'-アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、およびそれらの誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0193】
疎水性反応媒体への相当の溶解度を有する好適な開始剤は、反応媒体の極性に応じて異なり得るが、典型的には、周知の物質2,2'-アゾビスイソブチロニトリルによって例示されるアゾ化合物などの油溶性開始剤を含む。他の容易に入手可能な開始剤は、アセチルペルオキシドおよびベンゾイルペルオキシドなどのアシル過酸化物、ならびにクミルペルオキシドおよびt-ブチルペルオキシドなどのアルキル過酸化物である。t-ブチルヒドロペルオキシドおよびクミルヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシドを使用することもできる。
【0194】
本発明による組成物を使用して、被験体の対象の領域の画像の取得を容易にすることができる。
【0195】
「対象の領域」とは、被験体全体または被験体の特定の箇所もしくは部分を指す。造影の目的で、被験体の対象の領域は、一般には、被験体の内部領域である。
【0196】
被験体の対象の領域の画像は、一般には、診断造影技術を使用して得られる。「診断造影」とは、被験体の疾患または他の状態の存在を特定または判断するのに使用できる造影技術を指す。好適な診断造影技術としては、超音波、X線、コンピュータ断層撮影(CT)法、単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)法、陽電子放射型断層撮影(PET)法および磁気共鳴造影(MRI)法が挙げられるが、それらに限定されない。
【0197】
本発明による組成物は、診断造影に使用されるときは、典型的には、微粒子材料として診断薬を含む。「診断薬」とは、被験体における疾患または他の状態が存在するか否かを判断する目的で、被験体の選択された領域の診断画像の取得に関連して使用できる任意の薬剤を指す。好適な診断薬としては、造影剤および放射性同位体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0198】
微粒子材料として診断薬を含む本発明による組成物は、便宜的に、「診断組成物」と称することができる。
【0199】
本発明による好適な診断組成物は、微粒子材料の形で、またはその一部として造影剤または放射性同位体を含む。好適な造影剤としては、金属酸化物、より好ましくは常磁性または超常磁性金属酸化物が挙げられるが、それらに限定されない。特に好適な実施形態において、金属酸化物は酸化鉄である。診断薬として、またはその一部として使用できる放射性同位体の例としては、99mTc、67Ga、64Cu、89Zrおよび18Fが挙げられる。
【0200】
微粒子材料として、またはその一部として金属酸化物造影剤を含む本発明による診断組成物において、液体担体は、好ましくは、水性液体担体であり、立体安定剤の立体安定化ポリマーセグメントは、好ましくは、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドンおよびそれらのコポリマーから選択されるポリマーセグメントを含み、立体安定剤の固定ポリマーセグメントは、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートおよびそれらのコポリマーから選択されるポリマーセグメントを含む。
【0201】
被験体に投与すると、微粒子材料として、またはその一部として造影剤または放射性同位体を含む本発明による診断組成物は、造影剤の全身半減期を延ばすことが期待される。特に、微粒子材料は、立体安定剤によってインビボの液体担体全体に分散状態で維持され、先述の有害な希釈および液体環境の影響を受けにくいと考えられる。
【0202】
一実施形態において、本発明による組成物は、組成物の微粒子が診断薬である診断造影に向けられる。
【0203】
さらなる実施形態において、組成物の微粒子材料が診断薬である診断造影のための本発明による組成物の使用が提供される。
【0204】
別の実施形態において、被験体の対象の領域の診断画像を取得する方法であって、本発明による組成物を被験体に投与するステップと、診断造影技術を使用して前記対象領域の画像を取得するステップとを含み、組成物の微粒子材料は診断薬である方法が提供される。
【0205】
さらなる実施形態において、組成物の微粒子材料が診断薬である、診断画像を得るための製剤の製造における本発明による組成物の使用が提供される。
【0206】
本発明の組成物に使用される微粒子材料が磁性である場合は、該組成物を、有利には、温熱療法などの治療に使用することができる。温熱療法は、患部組織の治療として提案された。温熱療法は、癌の成長を含む疾患の治療に有効であることを示唆する証拠がある。温熱療法の治療上の利点は、2つの主たるメカニズムに媒介される。第1に、温熱療法は、温度を約41または42℃を超える温度まで上昇させて癌細胞に不可逆的な損傷をもたらすことによって、組織に対する直接的な殺腫瘍効果有する。第2に、温熱療法は、癌細胞を放射線療法の効果および特定の化学療法薬に対して敏感にすることが知られる。
【0207】
放射線療法または化学療法と対照的に、温熱療法は、累積的な毒性効果の傾向がない。
【0208】
しかしながら、微粒子材料が放射性同位体であるか、または放射性同位体を含む場合は、本発明による組成物を放射線療法(本明細書では放射線治療と称することもできる)に使用することができる。
【0209】
温熱療法または放射線療法の場合は、組成物は、一般には、微粒子材料を標的部位に集中させるように投与される。例えば、組成物を、腫瘍内、腫瘍周囲または血管内、静脈内、腹腔内、皮下投与、クモ膜下腔内注射または表面散布を介して投与することができる。温熱療法では、組成物は、好ましくは、動脈または静脈血液供給を介して投与される。
【0210】
本発明による組成物を使用して、被験体における対象の標的部位に対して温熱療法または放射線療法を施すことができる。
【0211】
本明細書に使用されているように、「被験体における対象の標的部位」は、温熱療法または放射線療法が有効であると考えられる被験体の領域を指すことを意図する。標的部位は、一般には、癌組織などの患部組織である。
【0212】
温熱療法を促進するために、少なくとも標的部位が、磁性粒子に標的部位で熱を放射させる臨床的に許容し得る周波数および強度の磁場に曝露される。「臨床的に許容し得る周波数および強度」の磁場とは、磁場自体、または熱を放射する磁性粒子に対するその効果から、治療されている被験体における許容し得ない、または望ましくない生理的応答をもたらさない磁場を指す。
【0213】
一般に、採用される磁場は、交流またはAC磁場である。
【0214】
一実施形態において、本発明による組成物は、組成物の微粒子材料が磁性である温熱療法に向けられる。
【0215】
さらなる実施形態において、組成物の微粒子材料が磁性である温熱療法のための本発明による組成物の使用が提供される。
【0216】
別の実施形態において、被験体における対象の標的部位に対して温熱療法を実施する方法であって、本発明による組成物を被験体に投与するステップと、臨床的に許容し得る周波数および強度の磁場に少なくとも標的部位を曝露して温熱療法を促進するステップとを含み、組成物の微粒子材料は磁性である方法が提供される。
【0217】
さらなる実施形態において、組成物の微粒子材料が磁性である、温熱療法を実施するための製剤の製造における本発明による組成物の使用が提供される。
【0218】
別の実施形態において、本発明による組成物は、組成物の微粒子材料が1つまたは複数の放射性同位体を含む放射線療法に向けられる。
【0219】
さらなる実施形態において、組成物の微粒子材料が1つまたは複数の放射性同位体を含む放射線療法のための本発明による組成物の使用が提供される。
【0220】
別の実施形態において、被験体における対象の標的部位に対して放射線療法を実施する方法であって、本発明による組成物を被験体に投与するステップを含み、組成物の微粒子材料は1つまたは複数の放射性同位体を含む方法が提供される。
【0221】
さらなる実施形態において、組成物の微粒子材料が1つまたは複数の放射性同位体を含む、放射線療法を実施するための製剤の製造における本発明による組成物の使用が提供される。
【0222】
本発明による組成物の診断または治療作用を促進または向上させるために、微粒子材料がその表面に結合されていてもよく、かつ/または立体安定剤は、置換基として、被験体内での微粒子材料の送達を導く1つまたは複数のリガンドを含むことができる。この文脈における「リガンド」とは、被験体の標的分子または細胞と結合または相互作用する分子を指す。例えば、リガンドは、小分子、ホルモン、成長因子、ステロイド、タンパク質、抗体、抗体断片、ペプチドもしくはポリペプチドまたはそれらの擬態であり得る。したがって、リガンドは、標的細胞の表面に発現された受容体、または標的細胞の表面に発現された分子に結合することができる分子であってよい。リガンドの具体的な化学組成は、主として、診断または治療すべき疾患または状態に基づいて選択される。
【0223】
リガンドをそれと結合するように選択できる標的としては、例えば、細胞信号伝達分子、抗体および抗体断片、タンパク質ならびに細胞表面受容体を含む広範な分子が挙げられる。
【0224】
微粒子材料および/または立体安定剤に、微粒子材料の送達を導く1つまたは複数のリガンドを供給することによって、磁性粒子などの微粒子材料は、細胞を標的とするだけでなくエンドサイトーシスにより細胞に取り込まれ得る。エンドサイトーシスにより取り込まれた磁性粒子を効果的で効率的な温熱治療に使用できることを当業者なら理解するであろう。
【0225】
当該リガンドを含む本発明による組成物は、診断または治療用途に特に有用であり得る。
【0226】
次に、本発明のいくつかの好適な実施形態を例示する以下の実施例を参照しながら本発明を説明する。しかし、以下の説明の詳細は、本発明の要旨の記載の一般性を超えないことが理解されるべきである。
【0227】
(実施例)
(実施例1:ポリ(アクリル酸)10-ブロック-ポリ(アクリルアミド)20マクロRAFT剤を使用する水性分散体における酸化鉄ナノ粒子の立体安定化)
パート(a):酸性媒体中で安定する希釈水性強磁性流体の調製
Massartの方法(Preparation of aqueous magnetic liquids in alkaline and acidic media. IEEE Transactions on Magnetics、1981. MAG-17(2):1247〜1248頁)に従って磁鉄鉱ナノ粒子を製造した。典型的な反応において、80mlの2MのHCl中1MのFeCl3・6H2Oと40mlの2MのHCl中1MのFeCl2・4H2Oとを2リットルビーカー内で混合し、混合物をMQ水で1.2Lまで希釈した。次いで、250mlのNH4OH(28%(w/w))をビーカーに迅速に添加し、混合物を30分間激しく撹拌した。NH4OHを添加すると、混合物の色がすぐにオレンジ色から黒色に変化し、磁鉄鉱の形成を示唆した。次いで、磁鉄鉱を硝酸鉄と90℃で約1時間加熱することによって酸性媒体中で磁赤鉄鉱に酸化させた。懸濁物の色が黒色から赤茶色に変化した。次いで、赤鉄鉱粒子を磁気デカントし、アセトンで洗浄し、最後に水で解膠させて、安定な分散体(5重量%)を得た。分散体のpHは約1.5〜2であった。
【0228】
パート(b):2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]-スルファニル}プロパン酸を使用するポリ(アクリル酸)10-ブロック-ポリ(アクリルアミド)20マクロRAFT剤の調製
ジオキサン(18g)および水(9g)中2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]-スルファニル}プロパン酸(0.75g、3.1mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.05g、0.17mmol)、アクリルアミド(4.48g、63mmol)の溶液を100mLの丸底フラスコ中で調製した。これを磁気撹拌し、15分間にわたって窒素を散布した。次いで、フラスコを80℃で2時間加熱した。この時間の終了時に、アクリル酸(2.27g、31mmol)および4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.05g、0.17mmol)をフラスコに添加した。混合物を脱酸素化し、80℃でさらに3時間加熱を継続した。コポリマー溶液は、21.8%の固形分を有していた。次いで、それをMQ水で0.7重量%まで希釈し、0.1MのNaOHを使用して希釈コポリマー溶液のpHを5に調整した。
【0229】
パート(c):パート(a)の水性強磁性流体およびパート(b)のマクロRAFT剤からの立体安定化酸化鉄ナノ粒子の調製
パート(a)で調製されたナノ粒子分散体(40g)をMQ水で200gまで希釈して1重量%のナノ粒子分散体を得た。次いで、このナノ粒子分散体のpHを、0.1M水酸化ナトリウムを使用して5に上昇させた。次いで、実施例1パート(b)のマクロ-RAFTコポリマー溶液(100g)を添加した。混合物を室温で2時間激しく撹拌した。次いで、ナノ粒子分散体を透析して、塩、残留溶媒、望ましくない低分子量反応副産物および未結合ポリマーを除去した。分散体における比較的大きい粒子を超遠心によって除去した。次いで、精製ナノ粒子分散体を蒸留して水性強磁性流体分散体における固体含有量を約70重量%まで増大させた。得られた水性強磁性流体は、60%の硝酸アンモニウム溶液中で安定していることが判明した。
【0230】
(実施例2:ポリ(アクリル酸)10-ブロック-ポリ(NIPAM)20マクロRAFT剤を使用する水性分散体における酸化鉄ナノ粒子の立体安定化)
パート(a):2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]-スルファニル}プロパン酸を使用するポリ(アクリル酸)10-ブロック-ポリ(NIPAM)20マクロRAFT剤の調製
ジオキサン(15g)および水(7.5g)中2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]-スルファニル}プロパン酸(0.55g、2.3mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.03g、0.11mmol)、n-イソプロピルアクリルアミド(5.27g、46mmol)の溶液を100mLの丸底フラスコ中で調製した。これを磁気撹拌し、15分間にわたって窒素を散布した。次いで、フラスコを80℃で2時間加熱した。この時間の終了時に、アクリル酸(1.67g、23mmol)および4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.03g、0.11mmol)をフラスコに添加した。混合物を脱酸素化し、80℃でさらに3時間加熱を継続した。コポリマー溶液は、32%の固形分を有していた。次いで、それをMQ水で0.52重量%まで希釈した。0.1MのNaOHを使用して希釈コポリマー溶液のpHを5に調整した。
【0231】
パート(b):実施例1パート(a)の水性強磁性流体および実施例2パート(a)のマクロRAFT剤からの立体安定化酸化鉄ナノ粒子の調製
実施例1パート(a)で調製されたナノ粒子分散体(40g)をMQ水で200gまで希釈して1重量%のナノ粒子分散体を得て、0.1M水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを5に調整した。次いで、パート(a)のマクロ-RAFTコポリマー溶液(100g)を添加した。混合物を室温で2時間激しく撹拌した。このpHにおいて、コポリマーは部分的に中和されているが、ナノ粒子は、それらのゼロ電荷の点を十分に上回っていても安定する。次いで、ナノ粒子分散体を透析して、塩、残留溶媒、望ましくない低分子量反応副産物および未結合ポリマーを除去した。分散体における比較的大きい粒子を超遠心によって除去した。次いで、精製ナノ粒子分散体を蒸留して水性強磁性流体分散体における固体含有量を約70重量%まで増大させた。得られた水性強磁性流体は、1Mの塩化ナトリウム溶液中で安定していることが判明した。
【0232】
(実施例3:ポリ(アクリル酸)10-ブロック-ポリ(エチレンオキシド)17マクロRAFT剤を使用する水性分散体における酸化鉄ナノ粒子の立体安定化)
パート(a):2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸を用いたポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテルのエステル化
メトキシPEG(Mn:約798)を加温し、撹拌してそれを液化および均質化し、次いで19.95g(25.0mmol)を250mlの三口丸底フラスコに秤取り、次いで固化させた。2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]スルファニル}プロパン酸(6.96g、29.3mmol)および4-ジメチルアミノピリジン(360mg、2.9mmol)をフラスコに添加し、磁気撹拌棒を導入し、フラスコを窒素でパージした。乾燥ジクロロメタン(75mL)を添加し、固体がすべて溶解するまで混合物を撹拌した。次いで、フラスコを氷浴で冷却し、次いで乾燥ジクロロメタン(25mL)中N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(6.03g、29.3mmol)の溶液を1時間にわたって滴加した。反応物を氷浴中でさらに10分間、次いで室温で24次間撹拌した。得られた黄色スラリーを1:1ヘキサン-エーテル(100mL)で希釈し、焼結ガラス漏斗で濾過した。フィルタ残渣を白色になるまでさらに少量の1:1ヘキサン-エーテルで洗浄し、一緒にした濾液を蒸発させて、濁った砂状の鈍いオレンジ色の油を得た。粗製物をジクロロメタン(75mL)に溶解し、固体のシュウ酸(4g)とともに1時間撹拌し、次いでヘキサン(70mL)で希釈し、沈降させて凝集白色沈殿を生成させた。混合物を濾過し、蒸発させ、粗製油を2:1のヘキサン-ジクロロメタン(150mL)に溶解させ、アルミニウムのプラグ(40g)に通した。さらなる2:1ヘキサン-ジクロロメタンによる溶離を溶離液が無色になるまで継続した。一緒にした溶離液を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、蒸発させて透明な薄オレンジ色の油(24.69g、97%)を得た。
【0233】
パート(b):実施例3パート(a)で調整されたポリエチレンオキシド系RAFT剤を使用するポリ(アクリル酸)10-ブロック-ポリ(エチレンオキシド)17マクロRAFT剤の調製
ジオキサン(7.5g)および水(3.75g)中実施例3パート(a)のマクロRAFT(2.0g、1.9mmol)、アクリル酸(1.41g、19mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.03g、0.11mmol)の溶液を100mLの丸底フラスコ中で調製した。これを磁気撹拌し、15分間にわたって窒素を散布した。次いで、フラスコを80℃で2時間加熱した。得られたコポリマー溶液は、23.7%の固形分を有していた。次いで、溶液をMQ水で0.29重量%まで希釈した。希釈コポリマー溶液のpHを0.1MのNaOHで5に調整した。
【0234】
パート(c):実施例1パート(a)の水性強磁性流体および実施例3パート(b)のマクロRAFT剤による立体安定化酸化鉄ナノ粒子の調製
実施例1パート(a)で調製されたナノ粒子分散体(5重量%、40g)をMQ水で200gまで希釈して1重量%のナノ粒子分散体を得て、0.1Mの水酸化ナトリウム溶液を使用してpHを5に調整した。次いで、実施例3パート(b)のマクロRAFTコポリマー溶液(0.29重量%、100g)を添加した。混合物を室温で2時間激しく撹拌した。このpHにおいて、コポリマーは部分的に中和されているが、ナノ粒子は、それらのゼロ電荷の点を十分に上回っていても安定する。次いで、得られた分散体を透析して、塩、残留溶媒、望ましくない低分子量反応副産物および未結合ポリマーを除去した。分散体における比較的大きい粒子を超遠心によって除去した。次いで、精製ナノ粒子分散体を蒸留して水性強磁性流体分散体における固体含有量を約70重量%まで増大させた。得られた水性強磁性流体は、1Mの塩化ナトリウム溶液中で安定していることが判明した。
【0235】
(実施例4:ポリ(リン酸モノアクリルオキシエチル)10-ブロック-ポリ(エチレンオキシド)17マクロRAFT剤を使用し、実施例3パート(a)で調製されたポリ(エチレンオキシド)RAFT剤に基づく水性分散体中における酸化鉄ナノ粒子の立体安定化)
パート(a):実施例3パート(a)で調製されたポリエチレンオキシド系RAFT剤を使用するポリ(リン酸モノアクリルオキシエチル)10-ブロック-ポリ(エチレンオキシド)17マクロRAFT剤の調製
ジオキサン(15g)および水(7.5g)中実施例3パート(a)のマクロRAFT(1.0g、0.9mmol)、リン酸モノアクリルオキシエチル(1.92g、9.8mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.018g、0.06mmol)の溶液を100mLの丸底フラスコ中で調製した。これを磁気撹拌し、15分間にわたって窒素を散布した。次いで、フラスコを80℃で2時間加熱した。コポリマー溶液は、11.5%の固形分を有していた。次いで、それをMQ水で1.2重量%まで希釈する。希釈コポリマー溶液のpHを0.1MのNaOHで5に調整した。
【0236】
パート(b):実施例1パート(a)の水性強磁性流体および実施例4パート(a)のマクロRAFT剤からの立体安定化酸化鉄ナノ粒子の調製
実施例1パート(a)で調製された40gのナノ粒子分散体(5重量%)を200gのMQ水で希釈して1重量%のナノ粒子分散体を得た。次いで、この調製ナノ粒子分散体のpHを5まで上昇させた。次いで、実施例4パート(a)のやはりpH5の100gのマクロRAFTコポリマーの1.2重量%溶液を、同じpHに維持された1重量%の酸化鉄分散体に添加した。混合物を室温で2時間激しく撹拌した。このpHにおいて、コポリマーは部分的に中和されているが、ナノ粒子は、それらのゼロ電荷の点を十分に上回っていても安定する。コポリマーのポリ(リン酸モノアクリルオキシエチル)ブロックからのリン酸イオンは、粒子表面に化学的に吸着して、水中ナノ粒子の安定な立体安定化分散体を生成した。次いで、分散体を透析して、塩、残留溶媒、望ましくない低分子量反応副産物および未結合ポリマーを除去した。分散体における比較的大きい粒子を超遠心によって除去した。次いで、精製ナノ粒子分散体を蒸留して水性強磁性流体分散体における固体含有量を約70重量%まで増大させた。得られた水性強磁性流体は、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液中で安定していることが判明した。
【0237】
(実施例5:インビトロの卵巣癌細胞への実施例1パート(c)の酸化鉄ナノ粒子の誘導)
パート(a):フォレート-N-ヒドロキシスクシンイミドエステルの調製
無水DMSO(20ml)に対してトリエチルアミン(0.5ml)およびフォレート(1グラム)を順に添加した。透明な溶液が得られると、さらにNヒドロキシスクシンイミド(NHS、0.52g)および1,3-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.70g)を順に添加した。得られた溶液を暗所にて室温で終夜撹拌した。沈殿した副産物であるジシクロヘキシル尿素を遠心および上澄みの濾過によって除去した。溶液を4℃で保管した。
【0238】
パート(b):実施例1-パート(c)の酸化鉄粒子の安定剤の改質
実施例1-パート(c)により調製されたコーティングナノ粒子(7.8g)にNHS(14.4mg)、次いで1-エチル-3-(3-ジメチルアミノ-プロピル)カルボジイミド(EDTA、20mg)を添加し、振盪によって混合し、室温で2時間反応させた。次いで、ジアミン(1mlの水中90mgの2,2'-(エチレンジオキシ)ビス-(エチルアミン))の溶液を反応混合物に添加し、さらに3.5時間反応させた。次いで、溶液を、過剰の水に対して何度も交換しながら透析して、遊離EDACおよび反応副産物を除去した。
【0239】
パート(c):実施例5-パート(b)の酸化鉄ナノ粒子に対する蛍光イソチオシアネート(FITC)の結合
水酸化ナトリウム溶液を使用して、実施例5-パート(b)の磁性ナノ粒子(3.3ml)をpH8.0に調整した。次いで、0.044mlのFITC溶液(7.3mg/mlの水)を添加した。サンプルを磁気撹拌せずに迅速に混合し、暗所にて終夜インキュベートした。遊離未結合FITCが検出できなくなるまで生成物をミリQ水に対して透析した。
【0240】
パート(d):実施例5-パート(b)の酸化鉄ナノ粒子に対する蛍光イソチオシアネート(FITC)およびパート(a)の葉酸エステルの結合
水酸化ナトリウム溶液を使用して、実施例5-パート(b)の粒子(3.3ml)をpH8.0に調整した。次いで、0.044mlのFITC溶液(7.3mg/mlの水)およびパート(a)の葉酸エステル溶液(86mg)を添加した。サンプルを磁気撹拌せずに迅速に混合し、暗所にて終夜インキュベートした。遊離未結合FITCが検出できなくなるまで生成物をミリQ水に対して透析した。
【0241】
パート(e):インビトロのヒト卵巣癌細胞A2780へのパート(c)および(d)の酸化鉄ナノ粒子の誘導
5%のCO2を含む37℃の加湿インキュベータにて、A2780細胞を、5%のウシ胎児血清、2mMのグルタミンおよび100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンが補給されたダルベッコー修飾イーグル培地(DMEM)に単層として維持した。細胞を、1ウェル当たり約2×105個の密度で、6ウェルフラスコにおける22mmのガラスカバースリップ上に接種した。24時間後、単層をリン酸緩衝食塩水(PBS、pH7.4)で3回洗浄し、次いで5%のウシ胎児血清、2mMのグルタミンおよび100μg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンが補給された無フォレートRPMI培地(Invitrogen)にて培養した。さらに18〜24時間後、細胞をPBSで3回洗浄し、次いで無フォレートRPMI溶液中ナノ粒子の1ml溶液(2.5mlのRPMI溶液中パート(c)または(d)の1mlのナノ粒子)とともに、5%のCO2を含む37℃の加湿インキュベータにて2時間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで3回洗浄し、PBS中4%パラホルムアルデヒドの新たな溶液を使用して室温で10分間固定した。PBS中サイト-ブルー溶液(濃度約100nM)を使用して細胞を染色した。
【0242】
共焦点顕微鏡を使用して固定細胞を調べた。実質的な量の緑色蛍光が、パート(d)のFITC+フォレート結合ナノ粒子で処理された可視内部細胞であり、パート(c)のFITC結合ナノ粒子で処理された細胞に殆ど存在しないことが確認された。ターゲティング剤としてフォレートを有するナノ粒子は、エンドサイトーシスにより卵巣癌細胞A2780に取り込まれることが示された。
【0243】
(実施例6:放射性造影によるホワイトニュージーランドラビットにおける磁性ナノ粒子の静脈内注射および体内分布)
パート(a):酸性媒体で安定した酸化鉄の結晶格子への放射性Ga67含有希釈水性強磁性流体の調製
Massartの方法(Preparation of aqueous magnetic liquids in alkaline and acidic media. IEEE Transactions on Magnetics、1981. MAG-17(2):1247〜1248頁)に従って磁性ナノ粒子を製造した。典型的な反応において、4mlの2MのHCl中0.1MのFeCl3・6H2Oと2mlの2MのHCl中0.1MのFeCl2・4H2Oと200Mbqの放射性Ga67とを40mlのシンチレーションバイアル内で混合し、混合物をMQ水で12mlまで希釈した。次いで、11mlのNH4OH(28%(w/w))をビーカーに迅速に添加し、混合物をボルテックスミキサーで30分間激しく撹拌した。NH4OHを添加すると、混合物の色がすぐにオレンジ色から黒色に変化し、磁鉄鉱の形成を示唆した。次いで、磁鉄鉱を硝酸鉄と90℃で約1時間加熱することによって酸性媒体中で磁赤鉄鉱に酸化させた。懸濁物の色が黒色から赤茶色に変化した。次いで、赤鉄鉱粒子を磁気デカントし、アセトンで洗浄し、最後に水中で解膠させて、安定な分散体(0.5重量%)を得た。分散体のpHは約1.5〜2であった。
【0244】
パート(b):実施例6パート(a)の水性強磁性流体および実施例4パート(a)のマクロRAFT剤からの立体安定化酸化鉄ナノ粒子の調製
実施例6パート(a)で調製された10gのナノ粒子分散体(0.5重量%)をミリ-Q水で希釈して20gまで希釈して0.25重量%のナノ粒子分散体を得た。次いで、この調製ナノ粒子分散体のpHを5まで上昇させた。次いで、実施例4パート(a)のやはりpH5の4.5gのマクロRAFTコポリマーの1.2重量%溶液を、同じpHに維持された0.5重量%の酸化鉄分散体に添加した。混合物を室温で2時間激しく撹拌した。このpHにおいて、コポリマーは部分的に中和されていたが、ナノ粒子は、それらのゼロ電荷の点を十分に上回っていても安定していた。コポリマーのポリ(リン酸モノアクリルオキシエチル)ブロックからのリン酸イオンは、粒子表面に化学的に吸着して、水中ナノ粒子の安定な立体安定化分散体を生成した。次いで、分散体を透析して、塩、残留溶媒、望ましくない低分子量反応副産物および未結合ポリマーを除去した。分散体における比較的大きい粒子を超遠心によって除去した。次いで、精製ナノ粒子分散体を蒸留して水性強磁性流体分散体における固体含有量を約0.5重量%まで増大させた。得られた水性強磁性流体は、リン酸緩衝食塩水(PBS)溶液中で安定していることが判明した。
【0245】
パート(c):ラビットにおける磁性ナノ粒子の体内分布
1.5ミリキュリーの放射能の実施例6パート(b)の磁性ナノ粒子(3ml)を3.9Kgのニュージーランドホワイトラビットの耳静脈に注射した。注射前にナノ粒子分散体を220nmフィルタで濾過した。体の異なる部分におけるナノ粒子の分布を臨床γカメラで監視した。肝臓、脾臓、骨髄ならびに肺および頭蓋の小部分などの体の様々な部分を成功裡に画像化した。ナノ粒子は、約45分間にわたって体内を循環してから細網内皮系の部分に取り込まれた、ウサギが実験終了時に正常な活動を再開したことから毒性は検知されなかった。
【0246】
(実施例7:ラットにおける立体安定化酸化鉄ナノ粒子分散体の毒性試験)
実施例4-パート(b)の磁性ナノ粒子を、以下に記載するように、意図する造影投与量および意図する造影投与量の5倍の量で毒性試験に使用した。
【0247】
磁性ナノ粒子造影剤の急性毒性を若成体スプラーグドーリーラットにて調査した。3匹の雄および3匹の雌のラットのグループに2.5または12.5mg/kgの投与量で0.9%の無菌生理食塩水の対照または磁性ナノ粒子試験品の単一投与物を投与した。これらの投与量は、造影試験のための意図する投与量に匹敵する低投与量、および意図する臨床投与量の約5倍に対応する高投与量として設計された。それらの投与物をボーラス静脈注射によって5mL/kgの投与量で側方尾静脈に投与した。投与物投与の直後に4時間にわたって、そしてその後7日間の観察期間にわたって毎日ラットを毒性の臨床的徴候について監視した。観察期間中、毎日投与前に重量測定も行った。試験8日目に、ラットの重量を測定してから、二酸化炭素窒息によって安楽死させた。次いで、重要器官の重量の測定を含む総合的な死体検査を行った。
【0248】
試験品による処理には、毒性の臨床的徴候が伴わなかった。試験品処理に関連しない偶発的な毒性の結果には、投与後1日目の試験日におけるすべてのグループの軽度の起毛が含まれていた。試験品処理は、体重に対する影響にも無関係であった。試験品処理に伴う総合的な病変または器官重量の変化が認められなかった。
【0249】
2.5および12.5mg/kgの磁性ナノ粒子造影剤の単一ボーラス静脈注射による処理は、7日間の観察期間にわたって成体の雄および雌スプラーグドーリーラットに十分に許容された。
【0250】
(実施例8:ポリ(アクリル酸)7-コ-ポリ(スルホン酸スチレン)3-ブロック-ポリ(アクリルアミド)20マクロRAFTマクロ-RAFT剤を使用する水性分散体における硫酸バリウムの立体安定化)
パート(a):2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]-スルファニル}プロパン酸を使用するポリ(アクリル酸)7-コ-ポリ(スルホン酸スチレン)3-ブロック-ポリ(アクリルアミド)20マクロ-RAFTの調製
ジオキサン(15g)および水(15g)中2-{[(ブチルスルファニル)カルボノチオイル]-スルファニル}プロパン酸(0.65g、2.7mmol)、4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.08g、0.3mmol)、アクリルアミド(3.87g、54.3mmol)の溶液を100mLの丸底フラスコ中で調製した。これを磁気撹拌し、15分間にわたって窒素を散布した。次いで、フラスコを80℃で2時間加熱した。この時間の終了時に、アクリル酸(1.68g、23.3mmol)、4-スチレンスルホン酸(1.37g、6.6mmol)および4,4'-アゾビス(4-シアノ吉草酸)(0.05g、0.17mmol)をフラスコに添加した。混合物を脱酸素化し、80℃でさらに3時間加熱を継続した。コポリマー溶液は、31%の固形分を有していた。次いで、それをMQ水で0.4重量%まで希釈し、0.1MのHClを使用して希釈コポリマー溶液のpHを2.2に調整した。
【0251】
パート(b):実施例8パート(a)のマクロ-RAFT剤を使用する立体安定過硫酸バリウムの調製
水中10グラムの硫酸バリウム分散体(1重量%)を100mlの丸底フラスコに採取した。0.1MのHClを使用して分散体のpHを2.2に調整した。次いで、実施例8パート(a)のマクロ-RAFTコポリマー溶液(10g)を添加した。混合物を室温で2時間激しく撹拌した。次いで、ナノ粒子分散体を透析して、塩、残留溶媒、望ましくない低分子量反応副産物および未結合ポリマーを除去した。そのように形成された分散体は、2.2のpHで安定していた。
【0252】
本明細書および以下の請求項全体を通じて、文脈がそうでないことを必要とする場合を除いて、用語「含む(comprise)」ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変形は、指定の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを含むが、任意の他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループを排除しないことを示唆することが理解されるであろう。
【0253】
本明細書における先行文献(もしくはそれから導かれる情報)または既知の事項の言及は、先行文献(もしくはそれから導かれる情報)または既知の事項が、本明細書に関連する活動の分野における常識の一部を形成することを認めるもの、承認するもの、または示唆するものと捉えられず、かつ捉えられるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬理学的に許容し得る液体担体全体に分散された薬理学的に許容し得る微粒子材料を含む被験体への投与に好適な組成物であって、微粒子材料は立体安定剤によって分散状態に維持され、立体安定剤は、その一方または両方が、リビング重合技術によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される立体安定化ポリマーセグメントおよび固定ポリマーセグメントを含むポリマー材料であり、立体安定化ポリマーセグメントは固定ポリマーセグメントと異なり、固定ポリマーセグメントは、微粒子材料の表面に対して親和性を有し、安定剤を微粒子材料に固定する組成物。
【請求項2】
前記立体安定剤が、約30000未満の数平均分子量を有するブロックコポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ブロックコポリマーが、約1000から約3000の範囲の数平均分子量を有する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記リビング重合技術が、イオン重合および制御ラジカル重合(CRP)から選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記固定ポリマーセグメントが、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合によって重合された1つまたは複数のエチレン不飽和モノマーから誘導される、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記立体安定化ポリマーセグメントが、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリN-イソプロピルアクリルアミド、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリビニルピロリドンまたはそれらのコポリマーを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記立体安定化ポリマーセグメントが、該セグメントを集合的に形成する約50個以下の重合モノマー単位を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記固定ポリマーセグメントが、1つまたは複数のイオン性モノマーの重合残留物を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記イオン性モノマーが、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、p-スチレンカルボン酸、p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、リン酸モノアクリルオキシエチル、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル、エタクリル酸、α-クロロアクリル酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、マレイン酸、アクリル酸およびメタクリル酸2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピル、ならびにアクリル酸およびメタクリル酸3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピルから選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記固定ポリマーセグメントが、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリスチレン、ポリイタコン酸、ポリ-p-スチレンカルボン酸、ポリ-p-スチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルホスホン酸、ポリモノアクリルオキシエチルホスフェート、ポリ-2-(メチルアクリロイルオキシ)エチルホスフェート、ポリエタクリル酸、ポリ-α-クロロアクリル酸、ポリクロトン酸、ポリフマル酸、ポリシトラコン酸、ポリメサコン酸、ポリマレイン酸、ポリ-2-(ジメチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリレートおよびメタクリレート、ポリ-3-(ジエチルアミノ)エチルおよびプロピルアクリレートおよびメタクリレート、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、またはそれらのコポリマーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記固定ポリマーセグメントが、該セグメントを集合的に形成する約50個以下の重合モノマー単位を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記固定ポリマーセグメントが、前記安定剤を前記微粒子材料に固定するように機能する部位をそれぞれ提供する少なくとも5つの重合モノマー残基を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記微粒子材料が、粒径が0.5ミクロン未満である、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記微粒子材料が、医薬活性化合物、金属、金属合金、金属塩、金属錯体、金属酸化物、放射性同位体またはそれらの組合せを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記微粒子材料が、金、銀またはそれらの塩、錯体もしくは酸化物、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト、酸化マンガン、オキシ水酸化鉄、オキシ水酸化クロム、オキシ水酸化コバルト、オキシ水酸化マンガン、二酸化クロム、オージェ電子エミッタ、αエミッタおよびβエミッタから選択される1つまたは複数の放射性同位体、あるいはそれらの組合せを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記微粒子材料が磁性である、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記磁性微粒子材料が、磁鉄鉱(Fe3O4)、磁赤鉄鉱(γ-Fe2O3)またはそれらの組合せを含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
前記液体担体が、水、石油、動物油、植物油、鉱油、メチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコールまたはそれらの組合せを含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記微粒子材料および/または前記立体安定剤が、被験体の標的分子または細胞と結合することが可能である1つまたは複数のリガンドを含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
前記微粒子材料が、放射性同位体を含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
被験体の対象の領域の診断画像を取得する方法であって、請求項1に記載の組成物を該被験体に投与するステップと、診断造影技術を使用して前記対象領域の画像を取得するステップとを含み、該組成物の微粒子材料は診断薬である方法。
【請求項22】
被験体における対象の標的部位に対して温熱療法を実施する方法であって、請求項1に記載の組成物を該被験体に投与するステップと、臨床的に許容し得る周波数および強度の磁場に少なくとも標的部位を曝露して温熱療法を促進するステップとを含み、該組成物の微粒子材料は磁性である方法。
【請求項23】
被験体における対象の標的部位に対して放射線療法を実施する方法であって、請求項1に記載の組成物を該被験体に投与するステップを含み、該組成物の微粒子材料は1つまたは複数の放射性同位体を含む方法。
【請求項24】
温熱療法および/または放射線療法を実施する方法における、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項25】
被験体の対象領域の診断画像を取得する方法における、請求項1に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−520816(P2011−520816A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508773(P2011−508773)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【国際出願番号】PCT/AU2009/000620
【国際公開番号】WO2009/137890
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(501305257)ザ・ユニバーシティ・オブ・シドニー (6)
【Fターム(参考)】