説明

投光装置およびセンサ

【課題】光源からの光を高い結合効率で光ファイバに結合することが可能な投光装置、およびそれを備えるセンサを提供する。
【解決手段】開口角光線11は発光点Pから出射され、レンズ212の半球面212aにより屈折され、光軸Xと平行な軸X2に対して、投光側光ファイバ180の開口角に等しい角度θ3で入射端面180aに到達する。外縁光線12は、発光点Pから出射され、レンズ212を経て、コア領域180bの外縁部184に到達する。外縁光線12がコア領域180bの外縁部184に到達したときの角度θ3′が開口角以下となるように、発光面162a、レンズ212および投光側光ファイバ180の配置、ならびにレンズ212の屈折力が選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投光装置およびセンサに関し、特に、光源からの光を光ファイバに結合するよう構成された投光装置、およびその投光装置を備えるセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光源と光ファイバとを備え、光ファイバの端面に光源からの光を結合させるように構成された投光装置が知られている。光源から広角度で光が放射される場合、光ファイバには光源からの光の一部しか入射しないので結合効率が小さくなる。したがって、結合効率を高めるための様々な技術がこれまでに提案されている。
【0003】
たとえば、特開2005−24617号公報(特許文献1)は、送信効率の変動を少なくすることが可能な光送信器を開示する。この光送信器では、発光素子から出射された光がレンズによって平行な光に変換されて光ファイバに結合される。さらに、その平行光により光ファイバの端面に生じた光スポットの大きさがその端面におけるコア部の面積よりも大きくなるように、発光素子、レンズおよび光ファイバの位置関係が設定される。この構成によれば、発光素子、レンズおよび光ファイバの位置が設計位置からずれても発光素子と光ファイバとの光学的な結合効率が変化しないために、送信効率の変動を少なくできる。これにより送信効率の最悪値が向上するため、結果として送信効率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−24617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2005−24617号公報には、結合効率の変動を小さくできることが説明されているものの、結合効率そのものを向上させる点については明示的に説明されていない。
【0006】
したがって、本発明は上記の課題を解決するためのものであって、本発明の目的は、光源からの光を高い結合効率で光ファイバに結合することが可能な投光装置、およびそれを備えるセンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は要約すれば、投光装置であって、発光面を有する発光素子と、発光面から出射された光が入射される入射端面を有する光ファイバと、発光素子の発光面と、光ファイバの入射端面との間に配置されるレンズとを備える。発光素子、光ファイバ、およびレンズは、1つの光軸上に配置される。光ファイバは、屈折率が均一な単一のコアを含む領域または屈折率が均一な複数のコアを集合的に含む領域であるコア領域を含む。レンズは、発光面から出射された拡散光を、広がり方がより緩やかな拡散光に変換する。発光面の光軸上の点から出射され、レンズを経て、光ファイバの入射端面におけるコア領域の外縁部に到達する光線を外縁光線と定義したときに、外縁部に到達したときの外縁光線が光軸となす角度が光ファイバの開口角よりも小さく、かつ発光面から出射したときの外縁光線が光軸となす角度が、開口角よりも大きいという条件が満たされるように、発光面、レンズおよび光ファイバの配置、ならびにレンズの屈折力が選ばれている。
【0008】
好ましくは、前記条件が満たされる場合において、発光面から出射されたときの外縁光線が光軸となす角度は、開口角の1.1倍から85°までの範囲内である。
【0009】
好ましくは、前記条件が満たされる場合において、発光面から出射されたときの外縁光線が光軸となす角度は、開口角の1.2倍から85°までの範囲内である。
【0010】
好ましくは、前記条件が満たされる場合において、外縁部に到達したときの外縁光線が光軸となす角度は、開口角の0.3倍から開口角までの範囲内である。
【0011】
好ましくは、前記条件が満たされる場合において、外縁部に到達したときの外縁光線が光軸となす角度は、開口角の0.5倍から開口角までの範囲内である。
【0012】
好ましくは、レンズは、屈折力を担う面として、光ファイバの入射端面に向けられた単一の凸面を含む。
【0013】
好ましくは、投光装置は、第1の反射部材をさらに備える。第1の反射部材は、反射面を含む。反射面は、発光面と光ファイバの入射端面との間にレンズを囲むように配置され、かつ、レンズから出射された光を反射させる。
【0014】
好ましくは、投光装置は、第2の反射部材をさらに備える。第2の反射部材は、反射面を含む。反射面は、発光素子の周囲に設けられて、発光素子から出射された光を反射させる。
【0015】
好ましくは、発光素子は、発光ダイオードチップである。
好ましくは、入射端面におけるコア領域の形状は、円形である。
【0016】
好ましくは、投光装置は、保持部材をさらに備える。保持部材は、光ファイバの入射端面の周縁に突き当たる突き当たり面を含む。保持部材は、入射端面の周縁が突き当たることにより、入射端面の光軸上の位置を保持する。
【0017】
本発明の他の局面に従うと、センサであって、上述のいずれかに記載の投光装置を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光源からの光を高い結合効率で光ファイバに結合することが可能な投光装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態に従う投光装置を備える光ファイバ型光電センサの一例を示す概略斜視図である。
【図2】図1に示した本体部101の内部構成の一例を示した図である。
【図3】図2に示したLEDパッケージ160の周辺拡大図である。
【図4】シングルコアファイバの一例を示す断面図である。
【図5】マルチコアファイバの一例を示した断面図である。
【図6】LEDチップ162から出射される光線を説明する図である。
【図7】外縁光線12が投光側光ファイバ180のコア部181を伝達するための条件を説明する図である。
【図8】発光点Pから出射された開口角光線と光軸Xとのなす角度の条件を説明するための図である。
【図9】本実施の形態の比較例としての平行光学系を示す模式図である。
【図10】単一の屈折面による光線の屈折での屈折角度の限界を説明する図である。
【図11】平行光学系による光ファイバの入射端面への光結合を説明する図である。
【図12】本実施の形態に係る発散光学系を説明するための図である。
【図13】本実施の形態による光学系でのレンズによる光の屈折を示す模式図である。
【図14】光源から出射された拡散光をより発散させる光学系を示す模式図である。
【図15】リフレクタ164および202による効果を説明するための図である。
【図16】リフレクタ202による効果をより詳細に説明するための図である。
【図17】本実施の形態の投光装置による結合効率の測定結果の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
本実施の形態に従う投光装置は、たとえば、投光素子として発光ダイオードチップ(以下LEDチップと称する)がパッケージング化された発光ダイオードパッケージ(以下、LEDパッケージと称する)を利用した光ファイバ型光電センサに用いられる。
【0022】
図1は、本実施の形態に従う投光装置を備える光ファイバ型光電センサの一例を示す概略斜視図である。図1を参照して、光ファイバ型光電センサ100は、本体部101と、ヘッド部102と、本体部101とヘッド部102とを光学的に接続する投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190とを備える。
【0023】
本体部101は、本体ケーシング110と、本体ケーシング110に回動自在に取付けられた開閉カバー114と、本体ケーシング110の内部に収容されたフレーム116とを主として有しており、開閉カバー114の開状態において露出するフレーム116の上面に表示部103および操作部104を有している。本体部101の前面に位置する本体ケーシング110の前壁部分には、投光側光ファイバ180が挿し込まれる開口部と受光側光ファイバ190が挿し込まれる開口部とが設けられており、これら2つの開口部に投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190がそれぞれ挿し込まれている。
【0024】
本体部101の背面からは、電源ラインや信号ライン等の芯線が一体化された電気コード105が引き出されている。また、本体部101の上面の所定位置には、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を本体部101へ固定する際に操作する回動レバー130が設けられている。本体部101の内部には、光源としてのLEDパッケージ(図2等参照)および受光部としてのPDパッケージ等が収容されている。
【0025】
投光側光ファイバ180は、LEDパッケージから発せられた光をヘッド部102に伝送する。受光側光ファイバ190は、ヘッド部102に入射した光をPDパッケージへと伝送する。
【0026】
ヘッド部102は、投光側光ファイバ180によって伝送された光を検出対象物に対して投光するとともに、検出対象物に投光された光の反射光を捉え、この反射光を受光側光ファイバ190によって本体部101へと伝送する。
【0027】
図2は、図1に示した本体部101の内部構成の一例を示した図である。図3は、図2に示したLEDパッケージ160の周辺拡大図である。図2を参照して、本体部101の内部構成を説明し、図2および図3を参照して、本実施の形態に係る投光装置の構成を詳細に説明することにする。
【0028】
図2に示すように、本体ケーシング110の内部にはフレーム116が収容されている。フレーム116の前面と本体ケーシング110の前壁部分との間には所定の大きさの空間が形成されており、当該空間に各種の構成部品が配置されている。具体的には、当該空間には、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を保持するホルダ部材120と、ホルダ部材120によって保持された投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を本体部101に固定する光ファイバ固定部材140と、LEDパッケージ160およびPDパッケージ170が実装された実装基板150とが主として配置されている。
【0029】
ホルダ部材120はフレーム116の前面に固定されている。ホルダ部材120には、一対の貫通孔が形成される。一対の貫通孔の一方は、ホルダ部材120の背面に形成された空間125に通じ、一対の貫通孔の他方はホルダ部材120の背面に形成された空間126に通じている。
【0030】
投光側光ファイバ180は、本体ケーシング110に設けられた開口部111および光ファイバ固定部材140に設けられた上部側中空部を経由して、ホルダ部材120に設けられた貫通孔に挿し込まれる。ホルダ部材120に形成された貫通孔の内壁121によって、投光側光ファイバ180の入射端部が保持される。同様に、受光側光ファイバ190は、本体ケーシング110に設けられた開口部112および光ファイバ固定部材140に設けられた下部側中空部を経由して、ホルダ部材120に設けられた貫通孔に挿し込まれる。ホルダ部材120に形成された貫通孔の内壁122によって、受光側光ファイバ190の出射端部が保持される。
【0031】
ホルダ部材120の上方前端部分には、ヒンジ部123が設けられている。このヒンジ部123は、上述の回動レバー130に設けられた回動軸131を軸支することにより、回動レバー130を回動可能に支持している。また、ホルダ部材120の前面には、回動レバー130の操作にリンクして、ガイド部材(図示せず)によって案内されて上下方向にスライド移動するスライダー134と、スライダー134によって押圧されて弾性変形することにより投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を挟持して固定する光ファイバ固定部材140とが組み付けられている。
【0032】
回動レバー130、スライダー134および光ファイバ固定部材140は、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を同時に本体部101に固定するための固定機構を構成する。光ファイバ固定部材140は、所望の弾性を有するように、たとえば樹脂部材によって形成されており、投光側光ファイバ180が挿通される上部側中空部を規定する上部側固定部141と、受光側光ファイバ190が挿通される下部側中空部を規定する下部側固定部143とを有している。
【0033】
ユーザが回動レバー130を回動させた場合、スライダー134はガイド部材により案内されて下方にスライド移動する。スライダー134が下方に移動することによって、光ファイバ固定部材140では、上部側固定部141の上部および下部側固定部143の上部がそれぞれ下方に向けて弾性変形する。上部側固定部141の弾性変形により投光側光ファイバ180が挟持され、下部側固定部143の弾性変形により受光側光ファイバ190が挟持される。なお、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190を挟持するための構成は図2に示した構成に限定されず、他の構成を採用することも可能である。
【0034】
実装基板150は、ホルダ部材120の背面に固定されている。実装基板150の主面には、LEDパッケージ160とPDパッケージ170とが実装されている。LEDパッケージ160およびPDパッケージ170は、ホルダ部材120の背面に形成された空間125,126にそれぞれ収容されている。LEDパッケージ160の発光面は、投光側光ファイバ180の入射端面に向けられ、PDパッケージ170の受光面は受光側光ファイバ190の出射端面に向けられている。
【0035】
図2および図3を参照して、本実施形態の投光装置は、発光素子としてのLEDチップ162を含むLEDパッケージ160と、レンズ212と、リフレクタ202と、投光側光ファイバ180とを備える。
【0036】
LEDチップ162は発光面162aを有する。レンズ212は、発光面162aと投光側光ファイバ180の入射端面との間に配置される。
【0037】
LEDチップ162、レンズ212および投光側光ファイバ180は、光軸X上に配置される。光軸Xは、LEDチップ162の発光面162a、レンズ212および、投光側光ファイバ180の入射端面180aのコア部を貫く軸である。光軸Xは、投光側光ファイバ180の入射端面180aのコア部の中心点を通る軸であることが好ましい。さらに好ましくは、光軸Xは、投光側光ファイバ180の光軸およびレンズ212の光軸に一致する。発光面162a上の点Pは、発光面162aと光軸Xとの交点に対応する。
【0038】
LEDパッケージ160は、上記LEDチップ162に加えて、基材161と、透光性樹脂163と、リフレクタ164とを含む。LEDチップ162およびリフレクタ164は基材161の主表面に搭載され、かつ透光性樹脂163により封止される。
【0039】
LEDチップ162は主として発光面162aから拡散光を出射する。ただしLEDチップ162の側面からも光が出射される場合がある。リフレクタ164は、LEDチップ162の側面を囲む反射面164aを有する。たとえばLEDチップ161の側面から出射した光は、その反射面164aにより反射されてレンズ212に導かれる。
【0040】
レンズ212は、半球面212aおよび平面212bを有する。半球面212aは投光側光ファイバ180の入射端面180aに向けられた単一の凸面であり、レンズ212の屈折力を担う面である。ここで屈折力とは、軸中心に回転対称な光学系(たとえばレンズ)における屈折の度合いを意味する。平面212bは、レンズ212において、発光面162aから出射された拡散光の入射面である。
【0041】
レンズ212は、その入射面(平面212b)にLEDチップ161からの拡散光を受ける。レンズ212は、入射した拡散光がより緩やかに広がるように、自身に入射した拡散光を屈折させて出射する。換言すると、レンズ212は、発光面162aから出射された拡散光を、広がり方がより緩やかな拡散光に変換する。レンズ212は、発光面162aの中心(光軸上の点)から出射された光については、出射されたときよりも光軸Xに対して小さな角度で広がるように、その拡散光を屈折させて出射する。たとえばLEDチップ162の発光面162aの位置をレンズ212の焦点位置よりもレンズ212側に近い位置となるように設計することによって、上記のレンズの機能を発現させることができる。
【0042】
リフレクタ202はLEDパッケージ160と投光側光ファイバ180との間に配置される。リフレクタ202には貫通孔203が形成され、その貫通孔203に半球状のレンズ212が挿入される。
【0043】
LEDパッケージ160から出射した光は、レンズ212によってより緩やかに広がるように変換され、リフレクタ202に形成された貫通孔203を通って投光側光ファイバ180の入射端面180aに結合される。貫通孔203の内周面203aは、レンズ212から出射した光の一部を反射して、その反射光を投光側光ファイバ180の入射端面180aに導くための反射面として機能する。なお、本実施の形態では、レンズ212のレンズ径は投光側光ファイバ180のコア部の径(コア径)にほぼ等しい。
【0044】
リフレクタ202は金属(たとえばアルミニウム)の板によって形成される。また、貫通孔203の内周面203aは、鏡面反射面として形成されている。鏡面反射面とは、巨視的に見て反射の法則に従う反射面のことであり、入射光の角度と等しい角度で反射光が反射する反射面を意味する。この鏡面反射面を実現する方法は特に限定されない。たとえばプレス加工等の方法より金属板に貫通孔を形成してもよい。この貫通孔の内周面を上記の鏡面反射面として用いることが可能である。
【0045】
リフレクタ202は、さらに投光側光ファイバ180の入射端面180aに向けられた主表面202aと、LEDパッケージ160に向けられた主表面202bとを有する。主表面202aは投光側光ファイバ180の入射端面180aの周縁部分に突き当たる。一方、主表面202bはLEDパッケージ160の表面に接し、LEDパッケージ160は、ホルダ部材120に取付けられた実装基板150の主面に固定されている。LEDパッケージ160はホルダ部材120および実装基板150によって、光軸X方向の位置が変動しないよう固定されている。したがって発光面162aと投光側光ファイバ180の入射端面180aとの間隔が変動することを抑制できる。
【0046】
さらにLEDパッケージ160の表面にはレンズ212が接着されるので、発光面162aおよびレンズ212との光軸X方向の相対的な位置関係が変動することを抑制できる。以上の理由により、発光面162a、レンズ212および投光側光ファイバ180の光軸X方向の相対的な位置関係が変動するのを抑制できる。
【0047】
特に、本実施の形態では、投光側光ファイバ180の入射端面180aの周縁部分をリフレクタ202の主表面202aに接触させた状態で投光側光ファイバ180を固定できるので、本体ケーシング110に対する投光側光ファイバ180の着脱を繰返しても、投光側光ファイバ180の着脱のたびに発光面162a、レンズ212および投光側光ファイバ180の相対的な位置関係が変動することを抑制できる。
【0048】
またLEDパッケージ160とレンズ212とが接着されることによって、反射等により生じる投光量のロスを低減できる。
【0049】
図2を参照して、PDパッケージ170と受光側光ファイバ190の出射端面との間にはリフレクタ204が配置される。リフレクタ204は、リフレクタ202と同様に、金属(たとえばアルミニウム)の板により形成される。リフレクタ204には、貫通孔が形成され、その貫通孔に半球状のレンズ214が挿入される。レンズ214の球面は、受光側光ファイバ190の出射端面に向けられる。受光側光ファイバ190の出射端面から出射した光は、リフレクタ204に形成された貫通孔を通り、レンズ214に入射する。レンズ214に入射した光は集光されてPDパッケージ170に入射する。PDパッケージ170に入射した光は、フォトダイオードチップの受光面に結合される。
【0050】
投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190の各々は、光が通る部分であるコア部と、コア部の周囲に設けられてコア部よりも屈折率が小さいクラッド部と、クラッド部の外表面(側面)を覆う外皮とを含む。具体的には、投光側光ファイバ180は、コア部181と、クラッド部182と、外皮183とを含む。受光側光ファイバ190は、コア部191と、クラッド部192と、外皮193とを含む。
【0051】
投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190の各々においては、コア部の屈折率に比べてクラッド部の屈折率が小さい。光ファイバの光軸に対して所定角度以下の入射角度でコア部に入射した光は、コア部とクラッド部との界面で全反射することによりコア部を伝搬する。この所定角度を以下では「開口角」と呼ぶ。
【0052】
投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190としては、口径が大きいコアを有する光ファイバであることが好ましい。これにより、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190の各々が伝搬する光の光量を多くできる。本実施の形態では、投光側光ファイバ180および受光側光ファイバ190として、プラスチック光ファイバを適用できる。プラスチック光ファイバは、一般に、石英系光ファイバに比較してコアの径が大きいため、本実施の形態の投光装置に好適に用いることができる。
【0053】
また、プラスチック光ファイバの種類としては、一般に、単一のコアを備えるシングルコアファイバおよび複数のコアを備えるマルチコアファイバがある。以下においては投光側光ファイバ180にシングルコアファイバを適用した構成を説明するが、投光側光ファイバ180にマルチコアファイバを適用することもできる。
【0054】
図4は、シングルコアファイバの一例を示す断面図である。図4に示すように投光側光ファイバ180は、単一のコアを含む。このコアが図2および図3に示したコア部181に対応する。なお光軸Xはシングルコアファイバの中心軸に等しいものとする。
【0055】
光ファイバの断面(入射端面と置き換えてもよい、以下同様)において、コア部181が占める部分をコア領域とし、光ファイバの断面においてコア領域の外側の領域をクラッド領域とする。コア領域の外縁部184は、コア領域の内側かつコア領域とクラッド領域との境界に沿う部分である。図4では、コア領域とクラッド領域との境界を境界線185により便宜的に示している。コア領域とクラッド領域との境界は、たとえばコア領域に入射した光の全反射する反射面と定めてもよいし、コア領域とクラッド領域との屈折率の差に基づいて定めてもよい。
【0056】
なお、本実施の形態では、シングルコアファイバに含まれるコア部181の屈折率は均一である。またコア領域の形状は円形である。
【0057】
図5は、マルチコアファイバの一例を示す断面図である。図5に示すように投光側光ファイバ180は複数のコア181Aを含む。なお、光軸Xは、マルチコアファイバの中心軸に等しいものとする。コア部181は、マルチコアファイバにおいて複数のコア181Aを包含し、かつ光軸Xに対してマルチコアファイバの半径方向に最も離れた位置にあるコアと内接する領域である。すなわちマルチコアファイバの断面(端面と置き換えてもよい、以下同様)におけるコア領域は複数のコア181Aの断面を集合的に含む領域である。また、光ファイバの断面においてコア領域の外側の領域をクラッド領域とする。
【0058】
さらに、コア領域とクラッド領域との境界を示す境界線185は複数のコア181Aのうち、光軸Xからマルチコアファイバの半径方向に最も離れた位置にあるコアと接する。光軸Xに対して軸対称に複数のコア181Aが配置されているのであれば、図5に示すように、境界線185は複数のコア181Aの断面の包絡線であり、かつ円周となる。またシングルコアファイバと同様に、マルチコアファイバのコア領域の外縁部184とは、コア領域の内側、かつコア領域とクラッド領域との境界に沿う部分である。
【0059】
複数のコア181Aの屈折率は同じであり、かつ各コア181Aでは屈折率が均一である。したがってシングルコアファイバのコア部と同様に、マルチコアファイバのコア部181は屈折率が均一な領域である。
【0060】
次に図6〜図8を参照しながら本実施の形態に係る投光装置についてより詳細に説明する。既に説明したように、レンズ212は、入射した拡散光を、発光面162aの中心から出射された光の出射時よりも光軸Xに対して小さな角度で広がるように屈折させて出射する。すなわち本実施の形態に係る投光装置としては発散光学系が適用される。図6〜図8では、この発散光学系を説明するために本実施の形態に係る投光装置の構成を概略的に示す。具体的には、図6〜図8では本実施形態に係る投光装置の構成要素のうち、LEDパッケージ160と、レンズ212と、投光側光ファイバ180とを示す。
【0061】
図6は、LEDチップ162から出射される光線を説明する図である。図6に示すように、まず、発光面162aの中心(光軸上)の発光点Pから出射される光線として、開口角光線11および外縁光線12を定義する。
【0062】
開口角光線11は、発光点Pから出射され、レンズ212を経て、光軸Xに対して開口角に対して等しい角度で入射端面180a中のコア領域180bに入射する光線である。具体的に説明すると、開口角光線11は発光点Pから光軸Xに対してθ1の角度で出射され、レンズ212の半球面212aにより屈折される。開口角光線11は、光軸Xと平行な軸X1に対してθ2の角度で半球面212aから出射されて、光軸Xと平行な軸X2に対してθ3の角度で入射端面180aに到達する。角度θ3は投光側光ファイバ180の開口角に等しい。
【0063】
ここで角度θ1は角度θ2よりも大きい。また、軸X1,X2が平行であり、かつ、レンズ212と投光側光ファイバ180の入射端面180aの間では開口角光線11は直進する。したがってθ2=θ3との関係が成立する。要するに、角度θ1,θ2,θ3については、θ1>θ2=θ3との関係が成立する。
【0064】
外縁光線12は、発光点Pから出射され、レンズ212を経て、コア領域180bの外縁部184に到達する光線である。外縁光線12は光軸Xと平行な軸X3に対してθ3′の角度で外縁部184に到達するものとする。
【0065】
本実施の形態では、開口角光線11が、投光側光ファイバ180の入射端面180aにおけるコア領域180b内に到達するように、発光面162a、レンズ212および投光側光ファイバ180の配置、ならびにレンズ212の屈折力が選ばれている。あるいは、図7によって説明するように、本実施の形態では外縁光線12がコア領域180bの外縁部184に到達したときの角度θ3′が開口角以下となるように、発光面162a、レンズ212および投光側光ファイバ180の配置、ならびにレンズ212の屈折力が選ばれている。
【0066】
図6では、開口角光線11が、投光側光ファイバ180の入射端面180aにおけるコア領域180b内に到達するように、発光面162a、レンズ212および投光側光ファイバ180の配置、ならびにレンズ212の屈折力が選ばれた状態を示している。開口角光線11は、コア領域180b内に到達し、かつその入射角が開口角であるのでコア部181の中を進むことができる。一方、外縁光線12は入射端面180aの径方向に対して開口角光線11よりも外側を進むため、外縁光線12と軸X3とのなす角度θ3′はθ3よりも大きい。したがって外縁光線12はコア領域180bの外縁部184に到達してもコア部181の中を進むことができない。
【0067】
たとえば、発光面162aおよびレンズ212の間隔が変わらないものとする。本実施の形態では、レンズ212はLEDパッケージ160に接着されているのでこのような状態が得られる。この状態のまま発光面162aおよびレンズ212を投光側光ファイバ180の入射端面180aに近づけていくと、開口角光線11が投光側光ファイバ180の入射端面180aにおけるコア領域180bの内側に到達する一方で、外縁光線12が開口角光線11よりも入射端面180aの径方向に対して外側を進む状態が得られる。
【0068】
図7は、外縁光線12が投光側光ファイバ180のコア部181を伝達するための条件を説明する図である。図7を参照して、外縁光線12は発光点Pから光軸Xに対してθ1′の角度で出射される。発光点Pから出射された外縁光線12はレンズ212によって屈折され、コア領域180bの外縁部184に到達する。角度θ1′は角度θ3′より大きく、かつ、角度θ3′は開口角(θ2またはθ3)よりも小さい。このような条件を満たすように発光面162a、レンズ212および投光側光ファイバ180の配置、ならびにレンズ212の屈折力が選ばれることでコア領域180bの外縁部184に入射した外縁光線12はコア部181の中を進むことができる。
【0069】
なお、図7に示した開口角光線11は、入射端面の径方向に対して外縁光線12よりも外側を進む。したがって開口角光線11は、入射端面においてコア領域180bの外側の領域に到達する。このため開口角光線11はコア部181の中を進むことができない。なお、上記説明における「入射端面」とは、投光側光ファイバ180の入射端面180a(すなわち物理的に実在する入射端面)のみならず、入射端面180aを超えた仮想的な面も含む。すなわち、「開口角光線11が入射端面の径方向に対して外縁光線12よりも外側を進む場合」とは、物理的に実在する入射端面を外れた範囲に開口角光線11が到達する場合も含む。
【0070】
たとえば発光面162aおよびレンズ212の光軸X上での間隔が変わらないまま発光面162aおよびレンズ212を投光側光ファイバ180の入射端面180aから遠ざけていくとする。この場合、外縁光線12が開口角光線11よりも入射端面180aの径方向に対して内側を進む状態が得られる。
【0071】
次に、開口角光線11および外縁光線12の各々の発光点Pからの出射角度(θ1,θ1′)について説明する。
【0072】
図8は、発光点Pから出射された開口角光線と光軸Xとのなす角度の条件を説明するための図である。図8を参照して、レンズによる屈折作用が存在しないと仮定した場合、発光点Pからの出射光は、その出射角θ4が開口角θ3よりも小さい場合は、コア部181に到達すればコア部181の中を伝搬するが、その出射角θ4が開口角θ3よりも大きい場合には、コア部181に到達しても、その中を伝搬できない。
【0073】
これに対し、レンズ212の屈折作用が存在する場合には、出射角θ1で発光点Pから出射した光がコア領域内に開口角θ3で到達すれば、θ1はコア部181を伝搬できる最大の出射角となる。すなわちθ1は開口角光線の出射角である。出射角θ1は開口角θ3よりも大きいので、レンズ212の屈折作用が存在しない場合に比べて、より大きな光量の光をコア部181に伝搬させることができるようになる。好ましくは、開口角光線が発光点Pから出射されるときの開口角光線と光軸Xとのなす角度(図8中のθ1)が開口角の1.1倍以上となるようにする。さらに好ましくは、開口角光線と光軸Xとのなす角度は開口角の1.2倍以上である。
【0074】
しかしながら、開口角光線の、発光点Pからの出射角θ1はいくらでも大きくできるわけではない。発光点Pから光軸Xに対して90°の方向に光線が出射されたと仮定する。この場合には、投光側光ファイバ180の入射端面180aへの入射角が投光側光ファイバ180の開口角と等しく、かつ、コア領域180b内に開口角光線が入射するように、その光線をレンズ212により屈折させることは現実的に不可能である。実用面での観点から、発光点Pからの開口角光線の出射角の上限は85°程度である。
【0075】
すなわち、本実施の形態では、発光点Pから開口角光線が出射されるときの開口角光線と光軸Xとのなす角度θ1は、投光側光ファイバ180の開口角の1.1倍から85°までの範囲内であり、より好ましくは投光側光ファイバ180の開口角の1.2倍から85°までの範囲内である。このように角度θ1を設定することで、開口角光線11を投光側光ファイバ180の入射端面180aにおけるコア領域180b内に到達させることができる。したがって、開口角光線11をコア部181に伝搬させることができる。
【0076】
また、開口角光線11が投光側光ファイバ180の入射端面180aにおけるコア領域180b外に到達する場合における、外縁光線12が発光点Pから出射されたときの光軸Xと外縁光線12とのなす角度θ1′についても上記の条件が成立する。
【0077】
レンズ212による屈折作用が存在しないと仮定した場合、発光点Pからの出射光は、その出射角が開口角θ3よりも小さい場合は、コア部181に到達すればコア部181の中を伝搬するが、その出射角が開口角θ3よりも大きい場合には、コア部181に到達しても、その中を伝搬できない。これに対し、レンズ212の屈折作用が存在する場合には、出射角θ1′で発光点Pから出射した光が外縁部184(実質的には境界線185に等しい)に、光軸Xに対する角度θ3′で到達したときに角度θ3′が開口角θ3より小さければ、θ1′はコア部181を伝搬できる最大の出射角となる。この場合の出射角θ1′は外縁光線の出射角である。出射角θ1′が開口角θ3よりも大きければ、レンズ212の屈折作用が存在しない場合に比べて、より大きな光量の光をコア部181に伝搬させることができるようになる。また、光軸Xに対して90°で発光点Pから光線が出射された場合には、その光線をレンズ212の屈折によって、コア領域180bの外縁部184に入射させることは現実的に不可能である。実用面での観点から、発光点Pからの外縁光線の出射角の上限は85°程度である。
【0078】
すなわち、本実施の形態では、発光点Pから外縁光線が出射されるときの外縁光線と光軸Xとのなす角度θ1′は、投光側光ファイバ180の開口角の1.1倍から85°までの範囲内であり、より好ましくは投光側光ファイバ180の開口角の1.2倍から85°までの範囲内である。このように角度θ1′を設定することで外縁光線12をコア部181に伝搬させることができる。
【0079】
さらに、本実施の形態では、レンズ212からの出射光は拡散光となるようにしている。拡散の程度は、外縁光線12のコア領域180bへの入射角(θ3′)が開口角の0.3倍以上となるのが好ましい。さらに好ましくは角度θ3′は開口角の0.5倍以上となるようにする。いうまでもなく、開口角光線がコア領域外に到達する状態においては、角度θ3′は開口角以下である。
【0080】
本実施の形態では、発散光学系を用いることによって、平行光学系よりも光ファイバの入射端面のコア領域に高効率で光を結合させることができる。結合効率の点において発散光学系が平行光学系よりも有利となる理由について、図9から図12を参照しながら説明する。
【0081】
図9は、本実施の形態の比較例としての平行光学系を示す模式図である。
図9を参照して、近軸幾何光学(近軸理論)によれば、レンズ300の焦点位置P1にある光源から出射した拡散光のすべてをレンズ300により平行光に変換して光ファイバ310のコア部320へ結合させることができる。しかしながら現実には図9に示した光結合を実現することはできない。
【0082】
特に、単一の屈折面による光線の屈折においては、光線を屈折させることが可能な角度に原理的かつ現実的な限界がある。この角度はスネルの法則によって導き出すことができ、光線の入射側の媒体の屈折率および出射側の媒体の屈折率によって定まる。
【0083】
図10は、単一の屈折面による光線の屈折での屈折角度の限界を説明する図である。
図10を参照して、角度αは、光線の屈折の限界角度である。角度αを以下では「最大屈折角α」とも呼ぶことにする。最大屈折角αは、媒体330への光線の入射角θが臨界角であるときの、入射光線に対する出射光線の角度である。
【0084】
媒体330の屈折率をnとし、媒体340の屈折率をnとする。スネルの法則により、以下の式が成立する。
【0085】
×sinθ=n×sinθ
ここでθ=90°であるので、上記式の右辺は、n×sin(90°)=nとなる。
【0086】
次に、屈折率をn,nを具体的にn=2.0、n=1.0として、最大屈折角αを求める。最大屈折角αは以下の計算により求められる。
【0087】
2sinθ=1
sinθ=0.5
θ=30°
∴α=90°−θ=60°
次に現実的に可能な最大屈折角を考える。上記のように入射側の媒体330の屈折率を2.0、出射側の屈折率を1.0として最大屈折角αを考えるとαは60°となる。このαが90°未満の有限の最大屈折角となる。
【0088】
なお、上記計算では、n=2.0としたが、一般的なレンズの屈折率は1.4〜1.7程度である。このため、本実施形態における最大屈折角αは、60°よりも小さな角度となる。
【0089】
しかし、レンズの設計等の手法を用いて光を屈折により制御する場合、この最大屈折角付近で光を制御することは難しい。したがって最大屈折角αが60°である場合には、光を制御可能な屈折角は最大でも40°程度となる。最大屈折角付近で光を制御することが難しくなる理由はスネルの法則からも導かれるが、入射角が臨界角に近づくにつれて、入射角に対する出射角の変化率が急激に変化するためである。
【0090】
図11は、平行光学系による光ファイバの入射端面への光結合を説明する図である。図11に示すように、レンズの焦点位置P1にある光源から出射された光は媒体330を進み、レンズ面350で屈折して平行光となる。しかし、前述のとおり、光の制御を可能にするために、有限の屈折角(最大40°)が定義される。すなわち平行光学系では光源からの光を全て取り込むことはできなくなる。
【0091】
しかし、光ファイバは開口角以下の角度でコア部320に入射した光を導光できるため、コア部320に平行光を導入する必要は無い。図12に示すように、光源をレンズ焦点位置P1からレンズ面350側に近づけた位置P2に配置すると、レンズに取り込まれる光源からの光が増加し、その一方で、レンズ面350から出射される光は発散光となる。ただし、その発散光のコア部320への入射角度が開口角以下であれば、発散光を光ファイバ310(コア部320)に結合させることができる。
【0092】
本実施の形態に係る発散光学系は、たとえば、図12に示したように発光面の位置を凸レンズの焦点位置よりもレンズ面に近づけることで実現できる。一般的に凸レンズの焦点の内側(焦点と凸レンズとの間)に物体を置いた場合、物体のある1点から出た光は凸レンズにより1点に集まらない。しかし、凸レンズから出た光線の向きと逆向きの線は1点で交わる。したがって、発光面の位置を凸レンズの焦点位置よりもレンズ面に近づけることで発散光学系が実現可能となる。
【0093】
なお、図11に示す平行光学系において、光ファイバ310に取り込むことが可能な最大限の光が発光点(焦点位置P1にある光源)から出射されたときの、光軸Xに対する角度をθaとする。一方、図12に示す発散光学系において、光ファイバ310に取り込むことが可能な最大限の光が発光点(位置P2にある光源)から出射されたときの、光軸Xに対する角度をθbとする。角度θbは角度θaよりも大きい。
【0094】
すなわち発散光学系を採用することによって、発光点から出射される光において、光ファイバに結合される光の角度が大きくなる。したがって光ファイバに結合される光量を増加させることができる。本実施の形態によれば、広い範囲に出射された出射光を光ファイバに結合させることができるので、光ファイバに結合される光量を増加させることができる。よって本実施の形態によれば、結合効率を高めることが可能になる。
【0095】
また、本実施の形態では、レンズ212に入射した拡散光は、より緩やかに広がるように屈折させる。したがって本実施の形態によれば、レンズに入射した拡散光がより大きく広がるように屈折される場合に比較して結合効率を高めることができる。この点について、図13および図14を参照しながら説明する。
【0096】
図13を参照して、本実施の形態による光学系では、θ1>θ3(θ3は投光側光ファイバ180の開口角に等しい)となるよう開口角光線11が出射される。すなわち発光点Pから出射された拡散光は、レンズ212によってより緩やかに広がるように屈折する。開口角光線11よりも内側を進む光線13はθ3よりも小さい角度でコア領域180bに到達するので、光線13はコア部180の内部を進むことができる。これにより投光側光ファイバ180に結合される光量を増加させることができる。したがって本実施の形態によれば、結合効率を高めることが可能になる。
【0097】
図14は、光源から出射された拡散光をより発散させる光学系を示す模式図である。図14を参照して、この光学系では、発光点Pから角度θ1で出射された光線14はレンズ360のレンズ面360aにより屈折され、投光側光ファイバ180のコア領域180bに対して角度θ3で入射する。θ1,θ3についてはθ1<θ3の関係が成立する。すなわち発光点Pから出射された拡散光は、レンズ360のレンズ面360aにより発散する方向に屈折する。
【0098】
光線14よりも内側を進む光線15は、レンズ面360aでの屈折によって、θ3よりも小さい角度でコア領域180bに到達する。したがって光線15はコア部180の内部を進むことができる。一方、光線14よりも外側を進む光線16は、θ3よりも大きい角度でコア領域180bに到達するか、あるいは、投光側光ファイバ180の入射端面におけるコア領域の外側の部分に到達する。なおここでの「入射端面」とは、物理的に実在する入射端面180aおよびそれを超える仮想的な面を含む。このため光線16はコア部180の内部を進むことができない。
【0099】
したがって、この光学系では光線14およびその内側を進む光線15がコア部180の内部を進むことができる。しかしレンズ面360aは入射した拡散光をより大きく広げるよう屈折させるので、投光側光ファイバ180に結合される光量は本実施の形態に比較して少なくなる。
【0100】
以上の理由により、本実施の形態による光学系では、図14に示した光学系に比べて角度θ1が大きくなり、かつ結合効率が大きくなる。
【0101】
さらに図15に示すように、本実施の形態によれば、LEDチップ162の周囲にリフレクタ164が設けられる。これによりLEDチップ162の側面から発せられた光線11bをリフレクタ164の反射面164aで反射させてレンズ212に導くことが可能になる。光線11bはレンズ212により屈折されて、光軸Xに対して平行な軸X4に対して角度θ5で投光側光ファイバ180の入射端面に到達する。角度θ5が投光側光ファイバ180の開口角以下であれば、光線11bはコア部181の内部を進むことができる。したがって、LEDチップ162の周囲にリフレクタ164を設けることで結合効率をより高めることが可能になる。
【0102】
さらに本実施の形態によれば、レンズ212の周囲にリフレクタ202が設けられる。レンズ212から出射された光線11cはリフレクタ202の反射面(貫通孔の内周面203a)で反射され、光軸Xに平行な軸X5に対して角度θ6で投光側光ファイバ180の入射端面に到達する。角度θ6が投光側光ファイバ180の開口角以下であれば、光線11cはコア部181の内部を進むことができる。したがって、レンズ212の周囲にリフレクタ202を設けることで結合効率をより高めることが可能になる。
【0103】
図16は、リフレクタ202による効果をより詳細に説明するための図である。図16を参照して、本実施の形態ではレンズ212(すなわち屈折光学系)によって、入射した拡散光をより緩やかに拡散する。したがって既に説明したように、本実施の形態によれば結合効率を高めることができる。レンズ212から出射される光は拡散光であるので、レンズ212の径はコア領域180bの径よりも小さいことが好ましい。
【0104】
しかしLEDチップ(発光面162a)とレンズ212とは有限の間隔を設ける必要がある。また発光面162aは1点ではなく一定の面積を有する。したがって結合効率の観点からはレンズ径をなるべく大きくする必要がある。したがって、レンズ径とコア領域の径とはほぼ同じ大きさであることが好ましい。なお本実施の形態ではレンズ径とコア領域の径とはほぼ同じ大きさである。
【0105】
ここで、投光側光ファイバ180のコア領域180bにできるだけ多くの光が入射できるよう、たとえば位置Aにコア領域180bがあれば好ましい。しかしながらレンズ212の厚みのため、レンズ212と投光側光ファイバ180の入射端面180aとの間には空間370が生じる。本実施の形態では、リフレクタ202の貫通孔203が図16の空間370に対応する。レンズ212のレンズ面(半球面212a)から出射された発散光は、この空間307を進む間に広がる。リフレクタ202を設けていない場合、レンズ面(半球面212a)から出射された発散光の一部(光線17)はコア領域に入射できなくなる。
【0106】
本実施の形態では、レンズ212の周囲に円筒状のリフレクタ202を設けることでこの問題を解決できる。リフレクタ202は、レンズ212によって制御された角度を維持しつつ光を反射することができるので、レンズ212によって制御された光をコア部180に入射させることができる。さらに、リフレクタ202の反射面(貫通孔の内周面203a)に、光ファイバ側に近づくほど内周面203aの直径が大きくなるように角度をつけることによって、光線のコア部180への入射角度を補正できる。したがって、コア部180への入射角度が開口角より小さくなるようレンズ212のみでは制御できない光(光線18)も、リフレクタ202での反射によってコア部180に入射させることができる。したがって、結合効率をより高めることが可能となる。
【0107】
なお、リフレクタ164,202の各々の反射面の光軸Xに対する角度は、上記効果が奏せられるよう適切に設定される。
【0108】
図17は、本実施の形態の投光装置による結合効率の測定結果の一例を説明する図である。なお、図17は発光点Pの光軸X上の位置を、結合効率が最大となる位置に設定した場合の結合効率の測定結果を示す。図17を参照して、LEDパッケージからの光が光ファイバに直接結合される場合の結合効率を基準値(すなわち1)とする。この場合、レンズ212は設けられておらず、したがって、リフレクタ202による光の反射も生じない。
【0109】
LEDパッケージ160からの光をレンズ212を介して投光側光ファイバに結合させた場合、結合効率は約1.6となった。さらに、レンズ212から出た光をリフレクタ202に反射させることによって結合効率は約2.97となった。このことからも、本実施の形態の投光装置は、結合効率を向上させることが可能であることが示される。
【0110】
なお、上述した本実施の形態においては、投光器と受光器とが一体化された光ファイバ型光電センサを例示して説明を行なったが、投光器と受光器とが一体化されておらず、それぞれ異なるケーシングに収容された光ファイバ型光電センサとすることも当然に可能である。
【0111】
また、本実施の形態に係るセンサは、反射型の光ファイバ型光電センサにも適用可能であるし、透過型の光ファイバ型光電センサにも適用可能である。
【0112】
また、上述した本実施の形態においては、光ファイバが本体ケーシングに着脱可能に構成された光電センサに本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、光ファイバが本体ケーシングに固定されていても本発明は当然に適用可能である。
【0113】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0114】
11,11a 開口角光線、11b,11c,13〜18 光線、12 外縁光線、100 光ファイバ型光電センサ、101 本体部、102 ヘッド部、103 表示部、104 操作部、105 電気コード、110 本体ケーシング、111 開口部、112 開口部、114 開閉カバー、116 フレーム、120 ホルダ部材、121,122 内壁、123 ヒンジ部、125,126 空間、130 回動レバー、131 回動軸、134 スライダー、140 光ファイバ固定部材、141 上部側固定部、143 下部側固定部、150 実装基板、160 LEDパッケージ、161 基材、162 LEDチップ、162a 発光面、163 透光性樹脂、164,202,204
リフレクタ、164a 反射面、170 PDパッケージ、180 投光側光ファイバ、180a 入射端面、180b コア領域、181,191 コア部、181A コア、182,192 クラッド部、183,193 外皮、184 外縁部、185 境界線、190 受光側光ファイバ、202a,202b 主表面、203 貫通孔、203a 内周面、212,214,300,360 レンズ、212a 半球面、212b 平面、310 光ファイバ、320 コア部、330,340 媒体、350,360a
レンズ面、370 空間、P 発光点、P1 焦点位置、P2 位置、X 光軸、X1〜X5 軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光面を有する発光素子と、
前記発光面から出射された光が入射される入射端面を有する光ファイバと、
前記発光素子の前記発光面と、前記光ファイバの前記入射端面との間に配置されるレンズとを備え、
前記発光素子、前記光ファイバ、および前記レンズは、1つの光軸上に配置され、
前記光ファイバは、
屈折率が均一な単一のコアを含む領域または屈折率が均一な複数のコアを集合的に含む領域であるコア領域を含み、
前記レンズは、前記発光面から出射された拡散光を、広がり方がより緩やかな拡散光に変換し、
前記発光面の前記光軸上の点から出射され、前記レンズを経て、前記光ファイバの前記入射端面における前記コア領域の外縁部に到達する光線を外縁光線と定義したときに、
前記外縁部に到達したときの前記外縁光線が前記光軸となす角度が前記光ファイバの開口角よりも小さく、かつ前記発光面から出射したときの前記外縁光線が前記光軸となす角度が、前記開口角よりも大きいという条件が満たされるように、
前記発光面、前記レンズおよび前記光ファイバの配置、ならびに前記レンズの屈折力が選ばれている、投光装置。
【請求項2】
前記条件が満たされる場合において、前記発光面から出射されたときの前記外縁光線が前記光軸となす角度は、前記開口角の1.1倍から85°までの範囲内である、請求項1に記載の投光装置。
【請求項3】
前記条件が満たされる場合において、前記発光面から出射されたときの前記外縁光線が前記光軸となす角度は、前記開口角の1.2倍から85°までの範囲内である、請求項2に記載の投光装置。
【請求項4】
前記条件が満たされる場合において、前記外縁部に到達したときの前記外縁光線が前記光軸となす角度は、前記開口角の0.3倍から前記開口角までの範囲内である、請求項1から3のいずれか1項に記載の投光装置。
【請求項5】
前記条件が満たされる場合において、前記外縁部に到達したときの前記外縁光線が前記光軸となす角度は、前記開口角の0.5倍から前記開口角までの範囲内である、請求項4に記載の投光装置。
【請求項6】
前記レンズは、前記屈折力を担う面として、前記光ファイバの前記入射端面に向けられた単一の凸面を含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の投光装置。
【請求項7】
前記投光装置は、
前記発光面と前記光ファイバの前記入射端面との間に前記レンズを囲むように配置され、かつ、前記レンズから出射された光を反射させる反射面を含む第1の反射部材をさらに備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の投光装置。
【請求項8】
前記投光装置は、
前記発光素子の周囲に設けられて、前記発光素子から出射された光を反射させる反射面を含む第2の反射部材をさらに備える、請求項1から7のいずれか1項に記載の投光装置。
【請求項9】
前記発光素子は、発光ダイオードチップである、請求項1から8のいずれか1項に記載の投光装置。
【請求項10】
前記入射端面における前記コア領域の形状は、円形である、請求項1から9のいずれか1項に記載の投光装置。
【請求項11】
前記投光装置は、
前記光ファイバの前記入射端面の周縁に突き当たる突き当たり面を含み、前記入射端面の周縁が突き当たることにより、前記入射端面の前記光軸上の位置を保持する保持部材をさらに備える、請求項1から10のいずれか1項に記載の投光装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の投光装置を備える、センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−54383(P2013−54383A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264165(P2012−264165)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2010−178427(P2010−178427)の分割
【原出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】