説明

投写型表示装置

【目的】 複数の照明光源を用いることにより、スクリーンに投写される映像の高輝度化を達成するとともに、スクリーン上の映像に光のむらを発生させることのない投写型表示装置を提供する。
【構成】 各照明光源21,22からの照明光を集光光学系31,32により、対応する反射手段27,28の反射面上に集光させ、この反射手段27,28によりそれぞれ集光レンズ系33に反射させる。各反射面上の照明光の集光位置は、互いに接近しており、かつ、集光レンズ系33の物点の近くに設定してあるため、各照明光は互いに重なり合った状態で集光レンズ系33に入射され、平行光となる。集光レンズ系33を通って光強度変調手段14に入力される照明光は複数の照明光源21,22からの照明光が重なり合った光度の高いものとなり、投影光学系16によりスクリーン上に投写される映像の輝度を高くできる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高輝度のスクリーン映像を得るために複数の照明光源を用いた投写型表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】投写型表示装置は、周知のように、液晶表示パネル等をライトバルブとし、照明光源からの照明光をこのライトバルブにより光強度変調して所定の画像を得た後、この画像を投影光学系によりスクリーン上に投写させるもので、大画面が得られることから各種の表示装置として広く用いられるようになってきている。
【0003】そして、このような投写型表示装置では、スクリーン上に投写される映像の輝度を高くすることが大きな課題であり、複数光源を用いて高輝度化を図っている。
【0004】一方、たとえば特開昭60−2916号公報に記載の単光源単板式の投写型表示装置も知られている。この特開昭60−2916号公報記載の構成は、図5R>5に示すように、照明光源11から生じる照明光をパラボラ型のリフレクタ12により平行光とした後、赤外線および紫外線をカットするフィルタ13を通してライトバルブなどの液晶表示パネル14に入射させている。そして、この液晶表示パネル14により光源からの照明光を光強度変調し、所定の画像を得た後、この画像を集光レンズ15および投影光学系16を介してスクリーン17上に投写させている。
【0005】しかしながら、この特開昭60−2916号公報に記載の構造のものは、単光源であるために十分な光強度が得られず、スクリーン17上に投写された画像が明るさに欠けるという問題を有している。
【0006】そこで、たとえば図4で示す特願平4−155189号公報に記載されているような、複数の照明光源21,22を用いた複数光源単板式のものが提案されている。
【0007】この複数光源単板式の表示装置は、複数の照明光源21,22を対向させて配置しており、これら各照明光源21,22からの照明光を、対応するパラボラ型のリフレクタ23,24により平行光にしている。そして、この平行光は赤外線(IR)および紫外線(UV)をカットするフィルタ25,26を経た後、それぞれ対応する反射手段27,28により液晶表示パネル14に向って反射される。この場合、一方の照明光源21からの照明光は液晶表示パネル14のパネル面の半分を照射し、他方の照明光源22からの照明光は同液晶表示パネル14のパネル面の残りの半分を照射するように構成されている。さらに、これらの照明光は液晶表示パネル14により光強度変調され、所定の画像に変調された後、集光レンズ15および投影光学系16を介してスクリーン17上に投写される。
【0008】このように構成すると、照明光源が複数であるため、照明光源1つ当りの光量が同じであれば、図5R>5で示した単光源型の構成に比べ、液晶表示パネル14に入射される光量は2倍になるので、スクリーン17上には高輝度の映像が映し出される。このため、高輝度化は達成されるが、照明光源21,22の明るさが同等でない場合、スクリーン17に投写される映像の明るさが不均一となり、明るさのむらが生じてしまう。
【0009】なお、各照明光源の明るさが完全に同等となるように管理すればこのようなむらは生じないが、実際上このような管理は困難である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】このように、上記特願平4−155189号公報に記載の従来の複数の照明光源を用いた投写型表示装置では、各照明光源の明るさのばらつきにより、スクリーンに映し出される映像に明るさのむらが生じてしまうという問題を有している。
【0011】本発明の目的は、複数の照明光源を用いることにより、スクリーンに投写される映像の高輝度化を達成するとともに、スクリーン上の映像に光のむらを発生させることのない投写型表示装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明による投写型表示装置は、複数の照明光源と、これら各照明光源毎に設けられ、互いに接近して結像点位置が設定され、対応する照明光源からの光を前記結像点位置にそれぞれ集光させる集光光学系と、これら集光光学系の前記各結像点位置近くに物点を有する集光レンズ系と、前記各集光光学系により前記結像点位置に集光された前記各照明光源から光を互いに平行に前記集光レンズ系に向けて反射させる反射手段と、前記集光レンズ系の結像点位置に入射瞳が位置し、前記各照明光源からの光を投影面上に投影させる投影光学系と、この投影光学系と前記反射手段との間に配置され前記各照明光源からの照明光の光強度を変調して所定の画像を得る光強度変調手段とを備えたものである。
【0013】
【作用】本発明は、各照明光源からの照明光をそれぞれ集光光学系により反射手段の反射面上に集光させ、この反射手段により集光レンズ系に反射させている。ここで、各反射面上における照明光の集光位置は、互いに接近しており、かつ、集光レンズ系の物点の近くに設定してあるため、反射手段から集光レンズ系に反射される各照明光は互いに重なり合わされ照度に高い照明光となる。したがって、この照度の高い照明光を光強度変調手段に入力しその光強度を変調するとともに集光レンズ系を通して、投影光学系からスクリーン上に投影することにより、輝度の高い映像を得ることができる。
【0014】
【実施例】以下、本発明の投写型表示装置の一実施例を図面を参照して説明する。なお、図4および図5に対応する部分には、同一符号を付して説明する。
【0015】まず、図1に示す複数光源単板式の実施例を説明する。この図1に示す実施例も、図4で示した構成と同様に、複数の照明光源21,22を有し、これら照明光源21,22を向い合わせに配置している。そして、これら各照明光源21,22は、楕円形状の集光光学系としてのリフレクタ31,32をそれぞれ有している。すなわち、図4R>4で示したパラボラ型リフレクタ23,24による反射光は平行光束となるが、楕円形状のリフレクタ31,32は、このリフレクタ31,32の曲率によって定まる結像点31f ,32f を有し、これら結像点31f ,32f に対向して対応する照明光源21,22からの照明光を集光させる。
【0016】また、各照明光源21,22毎に反射手段27,28を設け、対応する照明光源21,22からの照明光を集光レンズ系33に向けて反射させている。そして、各反射手段27,28は、上述のように、対応する照明光源21,22からの照明光を反射させるが、対応するリフレクタ31,32の結像点31f ,32f が、集光レンズ系33の入射光軸33a にできるだけ近い反射面上に位置するように、すなわち、各結像点が互いに接近した位置関係となるように、位置設定している。
【0017】このように位置設定すると、各リフレクタ31,32の結像点31f ,32f 、すなわち、反射手段27,28における反射点が互いに接近するので、反射手段27,28による反射光は互いに重ね合わされて拡散する。
【0018】また、集光レンズ系33は、反射手段27,28による反射光を平行光とするために、各リフレクタ31,32の各結像点31f ,32f の近くに物点が位置する集光レンズ33L と、この集光レンズ33L による平行光を結像させるための集光レンズ15とから構成される。
【0019】そして、集光レンズ15の射出側には、この集光レンズ15の結像点位置の近くに入射瞳が位置する投影光学系16と、投影面としてのスクリーン17とが配置されている。
【0020】すなわち、集光レンズ系33は、投影光学系16の入射瞳と各リフレクタ31,32の結像点位置とが互いに共役となるように配置される。
【0021】なお、集光レンズ33L と集光レンズ15との間には、図4に示す投写型表示装置と同様に、赤外線(IR)および紫外線(UV)をカットするフィルタ13、光強度変調手段としてのたとえば液晶表示パネル14が配置されている。
【0022】また、上記構成において、各照明光源21,22により照射された照明光は、対応するリフレクタ31,32により、対応する反射手段27,28の反射面上に集光される。そして、この反射手段27,28により反射されるが、各反射点が互いに接近しているので、反射光は互いに重ね合わされ、拡散する。この重ね合わされて拡散状態となった反射光は、集光レンズ33L に入射され、ほぼ平行な光束に収束され、図示左側に出射される。
【0023】集光レンズ33L を経て平行光となった白色光は、フィルタ13により赤外線および紫外線がカットされて可視光線のみが透過され、光強度変調手段として用いられる液晶表示パネル14に入射される。そして、別途加えられる画像信号に基づき光強度変調され、所定の投影画像となる。この投影画像は、集光レンズ15により集光され、投影光学系16によりスクリーン17上に投写される。
【0024】このように、液晶表示パネル14に入射される光は、複数の照明光源21,22からの照明光が重ね合わされた光度の高いものであり、スクリーン17上に投写される映像の輝度を高くすることができる。
【0025】次に、図2を参照して複数光源の3板式の実施例を説明する。この実施例では、複数の照明光源21,22からフィルタ13までの構成は、図1で示した構成と同様である。
【0026】この図2に示す実施例は、カラー画像を得るべく液晶表示パネル14としてそれぞれ入射側にコンデンサレンズを取付けている赤(R)、緑(G)、青(B)用の3枚の液晶表示パネル14R ,14G ,14B を用いた、いわわゆる3板式のものである。
【0027】ここで、複数の照明光源21,22からの照明光は集光光学系により反射手段27,28の反射面上に集光され、互いに重ね合わされた状態で集光レンズ33L の入射側に反射される。そして、この集光レンズ33L により平行光となった後、フィルタ13により赤外線および紫外線がカットされ可視光線のみが透過される。また、フィルタ13を透過した光の光路中には、光分離手段としての2枚のダイクロイックミラー42,43が順次配設されている。さらに、ダイクロイックミラー42は、たとえば青色の光を反射し緑および赤色の光を透過させるものとし、また、ダイクロイックミラー43は、たとえば緑色の光を反射し赤色の光を透過させるものとする。
【0028】そして、ダイクロイックミラー42により反射された青色の光は、反射ミラー44により全反射された後、光路中に設けられた集光レンズ15B および青色用液晶表示パネル14B を通過し、この液晶表示パネル14B に加わっている画像信号に基づいて光強度変調され、さらに、光合成用の2枚のダイクロイックミラー46,47を通過する。また、光合成用ダイクロイックミラー46は、たとえば緑色の光を反射し青色の光は透過させるものとし、さらに、光合成用ダイクロイックミラー47は、たとえば赤色の光を反射し青色および緑色の光は透過させる。
【0029】また、光分離用ダイクロイックミラー43により反射された緑色の光は、その光路中に設けられた集光レンズ15G および緑色用液晶表示パネル14G を通過し、この液晶表示パネル14G に加わっている画像信号に基づいて光強度変調され、光合成用ダイクロイックミラー46によって反射された後、後続の光合成用ダイクロイックミラー47を通過する。
【0030】さらに、光分離用ダイクロイックミラー43を透過した赤色の光は、その光路中に設けられた集光レンズ15R および赤色用液晶表示パネル14R を通過し、この液晶表示パネル14R に加わっている画像信号に基づいて光強度変調され、反射ミラー50により全反射された後、光合成用ダイクロイックミラー47により反射され、光合成用ダイクロイックミラー46からの緑色および青色の光と合成される。
【0031】そして、このようにして合成された光は、投影光学系16によりスクリーン17上に、カラー映像として投写される。
【0032】このように、3板式のものでは、光源装置からの光を分離して3枚の液晶表示パネル14R ,14G ,14B にそれぞれ透過させるため、光源装置としては高光度のものが望まれる。上述の実施例では、複数の照明光源21,22からフィルタ13までの部分を光源装置としているので、複数の照明光源21,22の照明光が重ね合わされることとなり、3板式に適した充分に高光度の光源装置として構成することができる。
【0033】次に、複数光源単板式の実施例を図3を参照して説明する。
【0034】この実施例は、図1で示した複数光源単板式のものに対し、リフレクタ31,32の構成のみが異なっており、他の部分は同様である。すなわち、図1におけるリフレクタ31,32は、楕円形状のみであるのに対し、図3の実施例のリフレクタ31,32は、パラボラ型で、集光レンズ31b ,32b と組合わせたものである。これは、パラボラ型のリフレクタ31a ,32a では、対応する照明光源21,22からの光が平行光になり、集光しないためである。このため、集光レンズ31b ,32b を設けて、平行光を対応する反射手段27,28の反射面上に設定した結像点位置に集光させている。もちろん、各リフレクタ31,32の結像点である反射点は、後段に位置する集光レンズ系33の入射光軸33a にできるだけ近い反射面上に位置するように、言い換えると各結像点が互いに接近した位置関係となるように、位置設定する。
【0035】このように構成しても、各照明光源21,22により照射された照明光は、対応するリフレクタ31,32により、対応する反射手段27,28の反射面上に集光され、互いに重ね合わされた状態で反射される。そして、この重ね合わされ拡散状態となった反射光は、集光レンズ系33により平行な光束に収束され、フィルタ13により可視光線のみとなった後、液晶表示パネル14により光強度変調され、所定の投影画像となり、集光レンズ15および投影光学系16によりスクリーン17上に投写される。
【0036】この場合も、液晶表示パネル14に入射される光は、複数の照明光源21,22からの照明光が重ね合わされた光度の高いものであり、スクリーン17上に投写される映像の輝度を高くすることができる。
【0037】なお、上記の実施例に示される反射手段は、照明光源の数に対応した数が備えられているが、照明光源の数に対応した面数の角錐の外側面を反射面として使用すれば、反射手段を一部材とすることができる。
【0038】
【発明の効果】本発明の投写型表示装置によれば、複数の照明光源を用い、これら照明光源からの光を重ね合わせて光強度変調手段に供給し、この光強度変調手段により得られる画像をスクリーンに投写させるようにしたため、光強度変調手段に入力される照明光は複数の光源からの照明光が重なり合った照度の高いものとなるので、スクリーン上の映像に光のむらを生じることはなく、高輝度化を達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の投写型表示装置の一実施例を示す構成図である。
【図2】同上他の実施例を示す構成図である。
【図3】同上さらに他の実施例を示す構成図である。
【図4】従来例の複数光源単板式の投写型表示装置を示す構成図である。
【図5】同上単光源単板式を示す構成図である。
【符号の説明】
14 光強度変調手段としての液晶表示パネル
16 投影光学系
17 投影面としてのスクリーン
21,22 照明光源
27,28 反射手段
31,32 集光光学系としてのリフレクタ
33 集光レンズ系

【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の照明光源と、これら各照明光源毎に設けられ、互いに接近して結像点位置が設定され、対応する照明光源からの光を前記結像点位置にそれぞれ集光させる集光光学系と、これら集光光学系の前記各結像点位置近くに物点を有する集光レンズ系と、前記各集光光学系により前記結像点位置に集光された前記各照明光源から光を互いに平行に前記集光レンズ系に向けて反射させる反射手段と、前記集光レンズ系の結像点位置に入射瞳が位置し、前記各照明光源からの光を投影面上に投影させる投影光学系と、この投影光学系と前記反射手段との間に配置され前記各照明光源からの照明光の光強度を変調して所定の画像を得る光強度変調手段とを備えたことを特徴とする投写型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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