説明

投写形ブラウン管

【課題】投写形テレビ受像機のコンパクト化を図るために、投写形テレビ受像機における投写形ブラウン管を偏平とした投写形ブラウン管
【解決手段】蛍光面ガラスパネル16と、この内面に形成された蛍光面12と、この蛍光面に対向して設けられた前面ガラスパネル19と、蛍光面に画像を形成するための電子銃24を備え、蛍光面12を電子銃24が配置される管軸25に対して傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写形テレビ受像機のコンパクト化を図った投写形ブラウン管に関する。
【背景技術】
【0002】
大型の表示装置の1つに陰極線管を使用した投射形の表示装置がある。投射形表示装置に使用される陰極線管(以下「投射形ブラウン管」という。)は、パネル対角の寸法が5.5インチや7インチのものがある。投射形の画像表示装置は、この投射形ブラウン管のパネル部に形成される画像を40から50インチ程度のスクリーンに投写している。スクリーンにカラー画像を表示する場合は、赤色画像を表示するブラウン管と、緑色画像を表示するブラウン管と、青色画像を表示するブラウン管とが使用され、スクリーン上で各色を重ね合わせている。
【0003】
また、投写形ブラウン管は、前面パネル内面に蛍光面が形成され、蛍光面での発光光が前面パネルを通過してブラウン管の外に導かれている。
【0004】
投射形ブラウン管は、例えば、対角7インチのパネルに写し出される画像を対角50インチのスクリーンに拡大しなければならない。スクリーン上で十分明るい画像を表示するために、投射形ブラウン管のパネル上での輝度は、直視型ブラウン管のそれと比べて、かなり高くなっている。
【0005】
また、投射形ブラウン管は、パネル上の画像をスクリーンに投射しても画像が粗くならないように、電子ビームをフォーカスさせる必要がある。フォーカスを向上させるためには、電子銃の電子レンズを大きくし、また、電子銃の主レンズと蛍光面との距離を長くすれば良い。
【0006】
投射形ブラウン管は、高輝度の画像を前面パネルに表示するため、パネル前面は高温となる。パネル前面の温度上昇を抑制するためパネル前面には冷却液を配置している。さらに、冷却液の前側には画像を拡大する為の光学レンズが複数取り付けられている。
【0007】
従来の投射形の画像表示装置においては、投射形ブラウン管で形成した画像は冷却液、光学レンズ、を通過した後、ミラーにより反射させてスクリーンに投写されている。
【0008】
下記特許文献1には、投写形ブラウン管と投写レンズの間隙を液体で埋め、オプティカルカップリングと蛍光面の冷却をすることが記載されている。また、下記特許文献2には、投写用陰極線管のガラスバブルの前面壁によって像面湾曲収差を補正することが記載されている。
【特許文献1】特開昭62−8423号公報(米国特許第4,731,557号明細書)
【特許文献2】特開昭58−44657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の投写形ブラウン管は全長が長く、通常270mm程度である。また、投写形ブラウン管は光学レンズとの軸合わせが必要である。投写形ブラウン管とレンズとは直線上に配置されるため、投写レンズを合わせた全長は長くなる。投写形ブラウン管、液体カップリング部分、投写レンズを合わせた全長は380mm程度である。
【0010】
投写形ブラウン管の蛍光面に出画した画像は、投写形ブラウン管の前方部へ出射されるため、投写形テレビ受像機のキャビネット寸法を小さくできない。このため、据え置き形タイプでは薄型が実現できず、また、テーブルトップ形ではスクリーン下の部分(コンソール部)が小さくできない。
【0011】
本発明は、投写形テレビ受像機のコンパクト化を図るために、投射形テレビ受像機における投写形ブラウン管を偏平とした投写形ブラウン管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の投写形ブラウン管は、パネル部と、電子ビームを出射する電子銃を備えたネック部と、パネル部とネック部とをつなぐファンネル部とにより真空外囲器を構成する。パネル部は、電子銃から出射された電子ビームにより発光する蛍光面と、蛍光面を内面に備えた蛍光面ガラスパネルと、蛍光面ガラスパネルの蛍光面に対向して設けられた前面ガラスパネルとを有する。蛍光面の中心軸は電子銃が配置された管軸に対して傾斜し、蛍光面での発光光は前面ガラスパネルを通過して真空外囲器の外部に投射される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る投写形ブラウン管は、蛍光面を管軸に対して傾斜させる扁平管としたため、画像を管後方上部に投写でき、投写形テレビ受像機のコンパクト化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の投写形ブラウン管は、蛍光面ガラスパネルの内面に形成したアルミ等から成るメダルバック膜と、この膜上に形成した蛍光膜と、さらに、この蛍光膜の上に形成した導電膜とからなる蛍光面を有し、蛍光面の垂線が管軸(電子銃の中心軸に一致する)に対して傾斜している。電子銃の中心軸と蛍光面の垂線のなす角θを30度〜60度にすると良い。さらに、蛍光面は球面、又は非球面を成し、全体的に凹形状をしている。
【0015】
蛍光面に対向した側には、湾曲収差を補正する湾曲した前面ガラスパネルを配置し、この湾曲したパネルの内外表面には無反射コーティングを施す。前面ガラスパネルを湾曲させることで、真空外囲器を構成する部品と湾曲収差の補正レンズを兼用することができる。そのため、湾曲収差の補正レンズを前面ガラスパネルとスクリーンの間に配置する必要がなく、前面ガラスパネルとスクリーンとの距離を短くできる。
【0016】
蛍光面の外側には、冷却のため液冷却部分又は放熱フィンを配置する。前面ガラスパネルとスクリーンとの間に冷却部が介在していないために、画像の映出を劣化させることがない。
【0017】
本発明の投写形ブラウン管は、蛍光膜が蛍光面ガラスパネル内面に形成したメタルバック膜上に形成されるため、電子線によるパネル部のブラウニングの影響がなくなり、輝度劣化が抑制される。
【0018】
さらに、蛍光面ガラスパネルのガラス厚さを薄くでき、また、蛍光面ガラスパネルの外面で冷却が可能なため、蛍光膜を効率よく冷却でき、これにより動作中の蛍光膜温度を下げられるため、輝度劣化が改善される。また、冷却を放熱フィンでも可能で、この場合、冷却構造が簡単となり、コスト低減が可能になる。
【0019】
本発明に係る投写形ブラウン管は、コンパクトであるため、汎用の投写形ブラウン管、ブラウン管式背面投写形テレビ受像機に好適である。
【0020】
以下、図面を用いて、本発明の実施例を説明する。
【実施例】
【0021】
図1(a)は、本発明に係る投写形ブラウン管の構成図、図1(b)は、本発明に係る投写形ブラウン管の寸法(単位mm)の概略図寸法を記入した構成図である。
【0022】
図1(a)に示す投写形ブラウン管10の真空外囲器は、パネル部と、電子ビームを出射する電子銃24を備えたネック部22と、パネル部とネック部とをつなぐファンネル部21とからなり、その内部は真空に保たれている。パネル部は、蛍光面ガラスパネル16と、真空領域を介して蛍光面ガラスパネル16と対向して配置された前面ガラスパネル19と、これらのパネル間を包囲する側面ガラス20から構成されている。
【0023】
また、蛍光面ガラスパネル16の内面には、電子銃から出射された電子ビームが衝突して発光する蛍光面12が形成されている。この蛍光面12は、蛍光面ガラスパネル16の内面に蛍光面ガラスパネル16の内面側からメタルバック膜13、蛍光膜14、導電膜15の順に配置されている。蛍光面で発生した光は真空外囲器内の真空領域を介して対向配置された前面ガラスパネル19を通過してブラウン管10の外部に導かれる。
【0024】
本発明の投写形ブラウン管は、蛍光膜が蛍光面ガラスパネル内面に形成したメタルバック膜上に形成されるため、電子線によるパネル部のブラウニングの影響がなくなり、輝度劣化が抑制される。また、蛍光面ガラスパネルにブラウニングが発生したとしても、蛍光面で発生した光は蛍光面ガラスパネルを通過しないので、スクリーンに映し出される画像には影響しない。つまり、本発明の投写形ブラウン管はブラウニングによる画像の輝度劣化及び着色の問題は無い。
【0025】
電子銃24は、ネック部22内に配置され、かつ、電子銃24の中心軸軸25は蛍光面ガラスパネル16の中央部の法線26に対して傾斜して配置される。つまり、蛍光面中央部の法線と管軸とのなす角θが0°<θ<90°である。図1(b)の投写形ブラウン管では、管軸25と垂線26とのなす角度θを45度とした。この角度θは、30度〜60度であれば、画像の歪みが少なく、フォーカスを良好に保つことができる。30度より小さくなると、ネック部と投写レンズとが干渉し、画像の表示が難しくなる。60度より大きくなると、電子ビームの蛍光面への入射角が大きくなり、蛍光面上で電子ビームスポットが楕円形になり、解像度が劣化する。
【0026】
本発明の投写形ブラウン管は、蛍光面を管軸に対して傾斜させる扁平管であるため、画像を管後方上部に投写でき、投写形テレビ受像機のコンパクト化が図れる。
【0027】
なお、本発明の投写形ブラウン管を備えた46形ワイドタイプの投写形テレビ受像機において、据え置き形の投写形テレビ受像機では奥行きが380mm、テーブルトップ形の投写形テレビ受像機ではコンソール寸法が250mmとすることができた。
【0028】
また、本発明の投写形ブラウン管を備えた51形ワイドタイプの据え置き形の投写形テレビ受像機では奥行きを400mmにすることができた。従来の51形ワイドタイプの据え置き形の投写形テレビ受像機では奥行きが500mmなので、本発明の投写形ブラウン管を用いた投写形テレビ受像機は従来のものより100mm短くできた。
【0029】
また、本発明の投写形ブラウン管を備えた51形ワイドタイプのテーブルトップ形の投写形テレビ受像機ではコンソール寸法を250mmにできた。従来の51形ワイドタイプのテーブルトップ形の投写形テレビ受像機はコンソール寸法が400mmなので、本発明の投写形ブラウン管を用いた投写形テレビ受像機は従来のものより150mm短くできた。
【0030】
なお、ネック部22の外側には、図示していないが、電子ビーム形状補正用マグネット組立てが取り付けられている。
【0031】
さらに、蛍光面ガラスパネル16の外側には、動作中の蛍光膜14の温度を下げるための冷却液18が満たされた冷却部17が配置されている。投射形ブラウン管は、高輝度の画像を前面パネルに表示するため、電子ビームの衝突する蛍光面は高温となる。蛍光面ガラスパネル裏面に冷却液18を配置したことで、蛍光面ガラスパネルの温度上昇を抑制することができる。また、蛍光面に映し出された画像が冷却液を通過することなくスクリーンに投写できるので、冷却液による画像の歪みが無い。
【0032】
電子銃24から出射された電子ビームは、偏向手段23により水平・垂直方向に偏向され蛍光面12の蛍光膜14を発光させることで画像を形成する。蛍光膜14で形成された画像は、メタルバック膜13で反射されると共に、高電圧が印加された導電膜15を透り、前面ガラスパネル19を通過して真空外囲器の外部に導かれる。投写形ブラウン管から出射した光は、投写レンズ11及び反射ミラー32(図2(b)に示す。)を経てスクリーン31(図2(b)に示す。)に投写される。
【0033】
内外表面に無反射コーティングが施された前面ガラスパネル19及び投写レンズ11は、投写光学系を構成する。前面ガラスパネル19は、湾曲収差を補正する湾曲した形状である。また、前面ガラスパネル19と投写レンズ11の間に冷却液がないので、良好な画像をスクリーンに投写することができる。
【0034】
蛍光面は凹形状の曲面である。さらに、蛍光面は曲率350mm程度の球面又は非球面を成し、全体的に凹形状をしている。
【0035】
従来の投写形ブラウン管の蛍光面は、ブラウン管の内側に凸形状の前面ガラスパネル内面に形成されていた。そのため、電子ビームの蛍光面への入射角がパネル周辺ほど大きくなり、画面周辺で画像がぼやけていた。
【0036】
本発明の投写形ブラウン管の蛍光面は、前面ガラスパネルと蛍光面とを分離して形成したため、蛍光面の径状を任意に設定できる。よって、前面ガラスパネル内面形状にとらわれない最良の蛍光面形状を形成できる。本実施例では、蛍光面を凹形状とした。これにより、画面周辺部での画像のぼやけを改善することができた。
【0037】
図2(a)は、本発明に係る投写形ブラウン管を用いた投写形テレビ受像機の正面図、図2(b)は本発明に係る投写形ブラウン管を用いた投写形テレビ受像機の側面の断面図である。
【0038】
投写形テレビ受像機30の内部には、図示していないが、赤・緑・青の3本の投写形ブラウン管10が設置されている。各投写形ブラウン管10は、投写レンズ11を有し、各投写形ブラウン管の蛍光面12に形成された画像は、各投写レンズ11で拡大され、反射ミラー32でスクリーン31上に合成される。
【0039】
本発明の投写形ブラウン管を備えた投写形テレビ受像機は、図2(b)に示すとおり、蛍光面の法線と電子銃の中心軸とが一致していない。よって、画像を管後方上部に投写でき、投写形テレビ受像機のコンパクト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る投写形ブラウン管の概略図
【図2】投写形テレビ受像機の概略図
【符号の説明】
【0041】
10…投写形ブラウン管、11…投写レンズ、12…蛍光面、13…メタルバック膜、14…蛍光膜、15…導電膜、16…蛍光面ガラスパネル、17…冷却部、18…冷却液、
19…前面ガラスパネル、20…側面ガラス、21…ファンネル、22…ネック部、23…偏向手段、24…電子銃、25…管軸、26…垂線、30…投写形テレビ受像機、31…スクリーン、32…反射ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネル部と、電子ビームを出射する電子銃を備えたネック部と、前記パネル部と前記ネック部とをつなぐファンネル部とにより真空外囲器を構成する投写形ブラウン管であって、
前記パネル部は、前記電子銃から出射された電子ビームにより発光する蛍光面と、前記蛍光面を内面に備えた蛍光面ガラスパネルと、前記蛍光面ガラスパネルの蛍光面に対向して設けられた前面ガラスパネルとを有し、
前記蛍光面の中心軸は電子銃が配置された管軸に対して傾斜し、
前記蛍光面での発光光は前記前面ガラスパネルを通過して真空外囲器の外部に投射されることを特徴とする投写形ブラウン管
【請求項2】
前記傾斜の角度が、30度ないし60度であることを特徴とする請求項1に記載の投写形ブラウン管
【請求項3】
前記蛍光面が、蛍光面ガラスパネル内面に前記蛍光面ガラスパネル内面側からメタルバック膜、蛍光膜、導電膜の順に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の投写形ブラウン管
【請求項4】
前記蛍光面が凹形状の曲面であることを特徴とする請求項1又は3に記載の投写形ブラウン管
【請求項5】
前記前面ガラスパネルが、湾曲収差を補正する湾曲した形状であることを特徴とする請求項1に記載の投写形ブラウン管
【請求項6】
前記前面ガラスパネルの内外表面には、無反射コーティングが施されていることを特徴とする請求項1又は5に記載の投写形ブラウン管
【請求項7】
前記蛍光面ガラスパネルの外側に、冷却部を設けることを特徴とする請求項1に記載の投写形ブラウン管

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−134653(P2006−134653A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320770(P2004−320770)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】