説明

投射型受像機

【課題】冷媒液体の温度膨張・収縮の体積変化に対応して、シール部材の位置を変化させ、内部圧力を一定に保つことで、簡単な構造で安価、高信頼性の調圧機構を可能とした。
【解決手段】本発明の投写形受像機は、陰極線管のフェ−ス面とその前方に配置した投写レンズとの空間に液体を充填した容器を形成し、前記液体の温度膨張・収縮の体積変化に対応して、前記陰極線管と前記容器及び前記投写レンズと前記容器間の結合部を密閉する各シール部材の両方又は一方の位置を変化させ、前記容器の内部圧力を一定に保つことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受像機に映出された画像を、投写レンズを用いて拡大投写する投写形受像機の陰極線管及びレンズ周辺の光学部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投写形受像機において、CRT(陰極線管)の冷却や投写画面におけるコントラストの向上を目的として、オプティカルカッブリング部を形成する構成が主流となっている。
【0003】
オプティカルカッブリング部は透明液体を充填する容器(以下、ラジエタと記す)が陰極線管と投写レンズとをカップリング固定し、その間に透明液体をシ−ル封入する機能を有している。
【0004】
また、通電時には高温となる陰極線管に透明液体が温められ熱膨脹による内部圧力上昇を防ぐ目的で、膜状の弾性体よりなる調圧弁をラジエタの一部に配設することが一般的に行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以下、従来のオプティカルカッブリング部について、図を用いて説明する。図9は従来のオプティカルカッブリング部の構成の一例を示す要部断面図である。陰極線管1と投写レンズ2とはラジエタ−4によってカップリングされ、冷媒液体3が充填されている。ラジエタ4はアルミダイガスト製である。冷媒液体3はエチレングリコ−ル等の透明な有機化合物の溶剤である。陰極線管1はラジエタ4にビス留めされた陰極線管固定ばね8により、Oリング5を介して、ラジエタ4に密着固定されている。レンズ2はラジエタ4にビス留めされたレンズ固定板9により、Oリング6を介して、ラジエタ4に密着固定されている。ラジエタ4の一部には弾性体よりなる膜状弾性体7が弾性体固定板10により密着固定されている。
【特許文献1】特開平01−318473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1記載の投射型受像機は前記膜状弾性体を前記ラジエタに密着固定させるため、前記弾性体固定板とそれを前記ラジエタに結合させるためのネジ等の固定部材を必要とする。このことは部品点数の増加、及び組立て工数の増加に伴うコストアップにつながる。また構造が複雑化することによる前記冷媒液体のシール信頼性を低下させる不安定要因につながるという欠点を有していた。
【0007】
また前記膜状弾性体は前記ラジエタ内の前記冷媒液体の圧力上昇を小さく抑えるため、低付加圧力で伸びを大きくする必要から一般に薄肉厚とされる。このことは、一般にゴム素材等で作成される前記膜状弾性体の気体透過性を必然的に高めることになる。その場合、前記冷媒液体が前記液体容器内で気体化したものが前記膜状弾性体を透過して外部に放散され、前記冷媒液体が損失する。その結果、冷却能力の低下や光学性能の低下につながるという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は冷媒液体の温度膨張・収縮の体積変化に応じて、シール部材の位置を変化させ、内部圧力を一定に保つことを特徴とする。
【0009】
また、シール部材をOリングとし、その形状がシール平面上で蛇行形状をなすこと、Oリング断面径が不均一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単な構造で、安価で、高信頼性な投射型受像機を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は冷媒液体の温度膨張・収縮の体積変化に対応して、シール部材の位置を変化させ、内部圧力を一定に保つことを特徴とする投写形受像機であり、簡単な構造で安価、高信頼性を実現した。
【0012】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施例1における投写形受像機について、図1、図2を用いて説明する。図1は本発明の一実施例における投写形受像機の要部断面図、図2は図1のシール部材のひとつをシール面上からみた形状図を示す。
【0013】
陰極線管1と投写レンズ2とを結ぶラジエタ4の中には冷媒液体3が充填されている。冷媒液体3は一般に、エチレングリコ−ル等の成分を主体とし、その体積は温度により膨張・収縮し変化する。レンズ2とラジエタ4はOリング6を介して剛体である固定板9で封止(シール)、固定されている。陰極線管1はその台座部をラジエタ4に固定された固定板8でラジエタ4に圧接されることによりOリング5を介してシ−ル固定されている。Oリング5及び6はラジエタ4に形成されたOリング溝11及び12内にそれぞれ配設されている。受像機の非通電時、常温状態では、Oリング5及び6はOリング溝11及び12内の中立基準位置に位置する。
【0014】
次に、受像機の通電時、陰極線管1が発熱し、その温度が上昇するに伴い冷媒液体3が体積膨張し、内圧が高まり、Oリング5及び6を外側に押す力が働く。その力によりOリング5及び6がOリング溝11及び12内で外側に移動し、その結果ラジエタ4内の体積が増加したことに相当し、冷媒液体3の体積膨張分を吸収し、内圧は一定に保たれる。
【0015】
また、非通電時、温度が低くなった場合、冷媒液体3は収縮し、負圧が発生し、Oリング5及び6には内側への力がかかり、Oリング溝11及び12内を内側へ移動し、常温では元の位置にもどることにより、内圧は一定に保たれる。さらに周囲温度が下がり、常温より下がった場合も同様であり、Oリング5及び6がOリング溝11及び12内をそれぞれ内側に移動し、冷媒液体3の体積収縮を吸収する。
【0016】
Oリング5は図2のようにシール面に対し蛇行形状をなすことにより、Oリング5はOリング溝11内での移動をOリング5自体が伸縮することなく、Oリング5の蛇行形状の変形だけで、冷媒液体3の体積膨張・収縮を吸収できる。このことは、Oリング5の伸縮疲労を回避でき、Oリング5の信頼性、寿命を通常使用のOリングと同等並みに高めることができる。
【0017】
また、Oリング5の径を全周均一では無く、一部任意の位置で標準径よりも若干小さくすることにより、その位置でのみOリングを可動させることも可能である。これはOリング5の移動は冷媒液体3の内圧により受ける力がOリング5の接触部材間の摩擦力を上回るときに起こるため、Oリング径を小さくした部位では摩擦力が小さくなる特性によりなされる。たとえば、Oリング節13の径よりもOリング腹14の径を若干小さくすれば、Oリング5はOリング節13を固定点とし、Oリング腹部14のみの繰り返し移動だけを行なわせることが可能である。Oリング径は十分なシール機能を有する程度(一般的につぶししろ8〜35%の範囲)に設定しておく必要がある。
【0018】
本発明の実施の形態1によれば、冷媒液体圧力調整機構を安価、高信頼性で実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の投射型受像機は冷媒液体圧力調整機構を安価、高信頼性で実現でき、体積変化を伴う媒体の密閉構造を有する機械構造物に汎用的に適用できる圧力調整機構である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例における投写形受像機の要部断面図
【図2】図1のシール部材のひとつをシール面上からみた形状図
【図3】従来の投写形受像機の要部を示す断面図
【符号の説明】
【0021】
1 陰極線管
2 投写レンズ
3 透明液体(冷媒)
4 液体容器(ラジエタ)
5、6 Oリング
7 膜状弾性体
8 陰極線管固定ばね
9 レンズ固定板
10 弾性体固定板
11、12 Oリング溝
13 Oリング節
14 Oリング腹

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極線管のフェ−ス面とその前方に配置した投写レンズとの空間に液体を充填した容器を形成し、前記液体の温度膨張・収縮の体積変化に対応して、前記陰極線管と前記容器及び前記投写レンズと前記容器間の結合部を密閉する各シール部材の両方又は一方の位置を変化させ、前記容器の内部圧力を一定に保つことを特徴とする投写形受像機。
【請求項2】
シール部材にOリングを用いたことを特徴とする請求項1記載の投写形受像機。
【請求項3】
Oリングがシール平面上で蛇行形状をなすことを特徴とする請求項2記載の投写形受像機。
【請求項4】
Oリング径が全周同一では無く、周上の一部において異なることを特徴とする請求項3記載の投写形受像機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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