説明

投射型表示装置及び投射型表示装置の制御方法

【課題】認証不成立の場合でも、盗難されていない状況では使用できるようにした投射型表示装置及び投射型表示装置の制御方法を提供する。
【解決手段】パスワード認証が成立した場合(ステップS3:YES)、環境設定情報の変更を受け付けると共に変更後の設定情報に基づき画像投射する通常モード(機能非制限モード)で動作し(ステップS10)、パスワード認証が不成立の場合(ステップS3:NO)、環境設定情報の変更を不可にすると共に設定情報に基づき画像投射する機能制限モードで動作するようにした(ステップS11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスワードによるプロテクト機能を搭載した投射型表示装置及び投射型表示装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
投射型表示装置(プロジェクター)には、パスワード認証によるプロテクト機能を搭載したものがある。このプロテクト機能には、パスワードの入力を3回連続で失敗すると入力ロックされ、電源再投入からやり直しとなり、パスワードがわからない場合は、サポートセンターに連絡して顧客確認できた場合に通知される解除コードを取得し、この解除コードを用いてパスワード解除できるようにしたものがある。また、多数回連続でパスワード入力を失敗すると、所定の手続をとらない限り、ユーザーが一切使用できない完全ロック状態に維持するようにしている。
また、投射型表示装置に限定されないプロテクト機能には、入力内容がキーワードと一致しなくても単純な入力ミスであるか否かの判定を行い、単純ミスと判断された場合は正しい入力であったとみなすものがある(例えば、特許文献1参照)。また、パスワードの入力を連続で失敗するとパスワードの入力を禁止し、設定された時間が経過した後に再びパスワードの入力が可能になるものもある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−119896号公報
【特許文献2】特開2002−229608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパスワード認証不成立時に使用不能にする構成では、正規のユーザーであっても投射型表示装置を使用できるまでにかなりの時間がかかってしまい、正規のユーザーにとって不便であった。
一方、単純ミスと判断された場合に正しい入力とみなす構成では、投射型表示装置のようにリモートコントローラーなどから入力された数字の組み合わせをパスワードとしている場合は、単純な入力ミスか否かの識別は困難であり、盗難にあっている場合でも不正の第三者が使用できてしまうおそれが生じ、セキュリティ面に不安がある。
また、時間が経過した後に毎回パスワードの入力が可能になる構成では、正規のユーザーであっても入力ミスが続く限り、利用することができず、また、盗難にあっていれば、そのうちパスワードが判明して使用できてしまうリスクがあった。
【0005】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、認証不成立の場合でも、盗難されていない状況では使用できるようにした投射型表示装置及び投射型表示装置の制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、投射型表示装置において、使用環境に合わせて設定される環境設定情報を含む設定情報が記憶される記憶手段と、前記設定情報に従って投射面に向けて画像を投射する画像投射手段と、認証情報が入力される入力手段と、前記認証情報の認証が成立した場合、前記環境設定情報の変更を受け付けると共に変更後の前記設定情報に基づき画像投射する機能非制限モードで動作させ、不成立の場合、前記環境設定情報の変更を不可にすると共に前記設定情報に基づき画像投射する機能制限モードで動作させる制御手段とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、認証情報の認証が成立した場合、環境設定情報の変更を受け付けると共に変更後の設定情報に基づき画像投射する機能非制限モードで動作させ、不成立の場合、環境設定情報の変更を不可にすると共に設定情報に基づき画像投射する機能制限モードで動作させるので、認証不成立の場合でも、盗難されていない状況では使用でき、盗難された状況では使用困難にすることができる。
【0007】
上記構成において、前記制御手段は、前記投射型表示装置が電源ONされた場合に、前記認証情報の認証処理を行い、認証が成立した場合に前記機能非制限モードで動作するように起動し、不成立の場合に前記機能制限モードで動作するように起動するようにしてもよい。この構成によれば、使用開始時に、認証結果に応じて起動する動作モードを設定でき、盗難状況での使用開始を適切に規制することができる。
また、上記構成において、前記制御手段は、入力された前記認証情報が連続して認証不成立の場合に、前記機能制限モードで起動するようにしてもよい。この構成によれば、正規のユーザーに対して数回の認証情報入力ミスを許容することができる。
【0008】
また、上記構成において、前記制御手段は、認証が不成立の場合、前記機能制限モードに移行するか否かを問い合わせる処理を行い、その問い合わせ結果に応じて前記機能制限モードで動作させるか動作を停止させるようにしてもよい。この構成によれば、ユーザーの希望を反映することができる。
また、上記構成において、使用環境の変化を検出する環境変化検出手段を有し、前記制御手段は、前記環境変化検出手段の検出結果に基づいて動作状態を補正する自動補正機能を有し、前記環境変化検出手段によって使用環境の変化を検出した場合、前記機能制限モードであれば動作を停止させるようにしてもよい。この構成によれば、機能制限モードで動作中に使用環境が変わっていれば強制的に使用不能にでき、盗難された状況での使用を確実に禁止させることができる。
【0009】
また、本発明は、使用環境に合わせて設定される環境設定情報を含む設定情報を記憶し、この設定情報に従って投射面に向けて画像を投射する画像投射手段を備える投射型表示装置の制御方法であって、入力手段に入力された認証情報の認証が成立した場合、前記環境設定情報の変更を受け付けると共に変更後の前記設定情報に基づき画像投射する機能非制限モードで動作し、不成立の場合、前記環境設定情報の変更を不可にすると共に前記設定情報に基づき画像投射する機能制限モードで動作することを特徴とする。
この構成によれば、入力された認証情報の認証が成立した場合、前記環境設定情報の変更を受け付けると共に変更後の前記設定情報に基づき画像投射する機能非制限モードで動作し、不成立の場合、前記環境設定情報の変更を不可にすると共に前記設定情報に基づき画像投射する機能制限モードで動作するので、認証不成立の場合でも、盗難されていない状況では使用でき、盗難された状況では使用困難にすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、認証不成立の場合でも、盗難されていない状況では使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るプロジェクターの機能的構成を示す図である。
【図2】パスワード関連情報の内容を示す図である。
【図3】設定情報の内容を示す図である。
【図4】プロテクト処理(第1プロテクト処理)を示すフローチャートである。
【図5】他のプロテクト処理(第2プロテクト処理)を示すフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るプロジェクター(投射型表示装置)10の機能的構成を示す図である。
このプロジェクター10は、画像を表す画像光を投射して投射面となるスクリーンSCに画像(投射画像)を表示させる装置であり、主要部品を収容する装置本体12と、ユーザーが把持して当該プロジェクター10を操作可能なリモートコントローラー(以下、リモコンという)13とを備えている。
【0013】
装置本体12には、主に光学系を構成する画像投射部21と、画像処理系を構成する画像処理部22とが配設される。
画像投射部21は、スクリーンSCに向けて画像を投射する光学系を構成し、光源として機能する光源装置21Aと、液晶パネル(液晶ライトバルブとも言う)21Bと、投射光学系21Cとを備えている。
光源装置21Aは、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ又はLED(Light Emitting Diode)などを備え、光源駆動部23により駆動されて照明光を出射する。液晶パネル21Bは、複数の画素をマトリクス状に配置した透過型液晶パネルであり、液晶パネル駆動部24の駆動によって各画素の光透過率を変化させることにより、光源装置21Aからの照明光を画像を表す画像光へと変調する。
【0014】
投射光学系21Cは、液晶パネル21Bによって画像光へと変調された光を拡大投射するものであり、投射レンズなどの光学部品を有する。投射光学系駆動部25は、この投射光学系21Cのズーム倍率や焦点距離を調整する駆動部である。
ここで、プロジェクター10が3LCD式プロジェクターで構成される場合には、R,G,Bの3色に対応する3枚の液晶パネル21B及び光源装置21Aの光の分離及び合成をするミラーやプリズムなどが配設される。本実施形態では、説明の便宜上、1枚の液晶パネル21Bを備えた構成としている。なお、この画像投射部21には、公知の構成を広く適用することが可能である。
【0015】
制御部31は、記憶部32に記憶された制御プログラムを実行することにより、プロジェクター10の各部を制御するコンピューターとして機能する。本実施形態では、この制御部31及び画像処理部22が液晶パネル21Bの表示を制御する表示制御部として機能する。
記憶部32には、制御プログラムの他、各種データが記憶されており、パスワード関連情報32Aや設定情報32Bなどが記憶されている。また、プロジェクター10の装置本体12には、操作部33と、画像入力34と、傾きセンサー(傾斜センサーとも称する)35とが設けられる。
操作部33は、複数の操作子を有する操作パネル33Aと、リモコン13から送られた信号(リモコン信号)SSを受信する受信部33B、33Cとを備え、これらを介してユーザー操作を制御部31に通知する。操作パネル33Aの操作子には、電源ON/OFFを指示するスイッチなどがある。
【0016】
本構成のプロジェクター10は、その設置状態をフロント/天吊り/リアから選ぶことができるように構成されており、フロント設置は、スクリーンSC前方に床置き(台置きを含む)する設置であり、天吊り設置は、天井から吊り下げた設置であり、リア設置は、スクリーンSC後方への設置である。
受信部33B,33Cは、フロント/天吊り/リアのいずれの設置状態でもリモコン13から操作できるように異なる位置に配置されている。具体的には、受信部33Bは、プロジェクター10前部に配置された前側受信部(第1受信部)であり、受信部33Cは、プロジェクター10後部に設置された後側受信部(第2受信部)となっている。
【0017】
画像入力部34は、装置本体12にケーブル接続された映像ソース機器である外部機器(パーソナルコンピューターやDVDプレーヤーなど)15から映像信号を入力する。この画像入力部34は、HDMI(High−Definition Multimedia Interface)入力端子などの映像信号入力端子と、ネットワークシステムに接続するためのネットワーク端子とを備えている。
画像処理部22は、制御部31の制御の下、映像信号SAに対し、各種画像処理を行うものであり、フレームレート(フレーム周波数)変換処理、OSD(On Screen Display)処理、画質や映像に関する画像処理などをデジタル処理で行う。
また、この画像処理部22には、スクリーンSCに対してプロジェクター10の投射軸を傾けた状態で投射した場合に生じる投射画像の台形歪みを補正する台形歪み補正部22Aと、投射画像のズーム倍率を画像処理で変更する電子ズーム部22Bとが設けられる。
【0018】
台形歪み補正部22Aは、制御部31から出力される制御情報の一つである台形歪み補正量に基づいて、台形歪み補正処理(縦台形歪み補正処理)を行う。この台形歪み補正量は、傾きセンサー35により検出したプロジェクター10の傾斜角度(装置本体12の傾斜角度に相当)に基づいて制御部31が算出する。これによって、このプロジェクター10は、プロジェクター10の傾きに応じて自動的に台形歪みを補正する自動台形歪み補正機能を具備している。なお、この台形歪み補正部22A及び台形歪み補正量の算出に関しては、公知の構成を適用可能である。
電子ズーム部22Bは、制御部31から出力される制御情報の一つである電子ズーム情報に基づいて、投射画像のズーム倍率(拡大率,縮小率)を変更する電子ズーム処理を行う。この電子ズーム部22Bに関しても、公知の構成を適用可能である。
【0019】
傾きセンサー35は、上記したように自動台形歪み補正機能に使用され、制御部31の制御の下、上下の傾斜角度を制御部31に出力する。
リモコン13は、ユーザーが把持して簡単に持ち運び可能な小型リモコンに構成され、複数の操作子を有する操作パネル13Aと、操作パネル13Aの操作に応じた信号(リモコン信号)SSを送信する送信部13Bとを備えており、ユーザー操作をプロジェクター10に離れた位置から通知する。操作パネル33Aの操作子には、電源ON/OFFを指示するスイッチ、パスワード(認証情報)を入力するための操作キー(数字キー)などがある。
【0020】
本構成のプロジェクター10は、盗難防止機能の一つであるパスワード認証によるプロテクト機能を搭載している。
上記したように、記憶部32には、パスワード関連情報32Aが記憶されており、このパスワード関連情報32Aには、少なくとも予め設定された正規のパスワードが記述される。制御部31は、プロジェクター10が電源ONされると、パスワード入力画面を表示させ、ユーザーに対してパスワードの入力を促し、このパスワードがパスワード関連情報32A内に予め登録された正規のパスワードと一致するか否かの認証を行い、認証されない場合は一定の制限をかける(以下、この処理をプロテクト処理という)。
【0021】
図2は、パスワード関連情報32Aの内容を示している。
この図に示すように、パスワード関連情報32Aには、正規のパスワードと、入力されたパスワードの連続失敗回数(入力失敗回数)と、パスワードロックのON/OFF情報とが記憶されている。そして、制御部31は、プロジェクター10が電源ONされた場合に、上記ON/OFF情報を参照し、パスワードロックONに設定されている場合に、上記プロテクト処理を開始する。また、制御部31は、パスワードの認証が不成立の場合に、パスワードの連続失敗回数を更新し、認証が成立した場合に、パスワードの連続失敗回数を零にリセットする。
【0022】
このプロジェクター10において、パスワードの認証が成立した場合、制御部31は、記憶部32に記憶された設定情報32Bに基づいてプロジェクター10の各部を制御し、画像入力部34を介して入力した映像信号に対応する画像を、画像処理部22及び画像投射部21を介してスクリーンSCに表示させる。
また、パスワードの認証が成立した場合、制御部31は、リモコン13或いは操作部33の操作によりメニュー表示指示が入力されると、画像処理部22を制御し、スクリーンSCにメニュー画面を表示し、メニュー画面の表示中における操作部33の操作により、パスワード関連情報32Aの変更及び設定情報32Bの変更を受け付ける。つまり、制御部31は、パスワード関連情報32A及び設定情報32Bを設定する設定手段としても機能する。
【0023】
図3は、設定情報32Bの内容を示している。なお、図中、枠Wで囲んで示した設定情報は、全ての設定情報32Bのうち、使用環境に合わせて設定される設定情報(以下、環境設定情報という)32B1である。
詳述すると、プロジェクター10の設定情報32Bは、「画質調整の設定情報」、「映像の設定情報」、「基本設定情報」、「拡張設定情報」、「ネットワーク設定情報」などに分類されている。各分類の設定情報には公知の設定項目に対応する情報を用いることができ、例えば、「画質調整の設定情報」は、映像の輝度、色、コントラスト、色の濃さなどの画質に関する設定項目の情報であり、「映像の設定情報」は、入力解像度、トラッキングなどの入力映像に関する設定項目の情報である。
また、「基本設定情報」は、自動台形補正(自動台形歪み補正による補正)、自動台形補正のON/OFF、手動台形補正(投射映像の4つの角を指定して行う台形補正(4点投射領域補正とも言う))、リモコン受信部(前側/後側)のON/OFFなどの基本設定に関する設定項目の情報である。
【0024】
また、「拡張設定情報」は、設置モード(フロント/天吊り/リア)、待機モード(スタンバイ状態のときにネットワーク監視・制御機能を働かせるモード)のON/OFF、プロジェクターID(複数台のプロジェクター使用時に各プロジェクターを個別にリモコン操作するための識別情報)、表示する言語などの基本設定以外の設定に関する設定項目の情報である。
また、「ネットワーク設定情報」は、ネットワークシステムに接続するための各種設定項目の情報である。
そして、これら情報のうち、視聴室の明るさ、スクリーンSCとの位置関係、ネットワークにつなげるか否かなどの使用環境に合わせて設定される情報が、枠W内に示した環境設定情報32B1として示されている。
【0025】
ところで、一般のプロジェクターのプロテクト機能では、パスワード認証が不成立の場合に、プロジェクター10を使用不能にしている。このため、プロジェクター10が盗難されていない場合でも、認証不成立であれば使用できなくなり、直ぐにプロジェクターを使用したい正規のユーザーにとって不便な事態が生じていた。
そこで、本構成では、認証不成立の場合に、環境設定情報32B1の変更を不可にする環境ロックだけを行うプロテクト処理(第1プロテクト処理)を実行することにより、盗難されていない状況(使用環境)では使用できるようにし、盗難された状況、つまり、使用環境が異なる状況では使用困難にしている。
【0026】
図4は、本プロジェクター10のプロテクト処理(第1プロテクト処理)を示すフローチャートである。なお、このプロテクト処理は、プロジェクター10の電源がリモコン13や操作部33の操作によってONされた場合に、制御部31によって実行される。
まず、制御部31は、記憶部32に記憶されたパスワード関連情報32Aを参照し、パスワードロックがON(有効)か否かを判定し(ステップS1)、ON(有効)であれば、続くステップS2の処理へ移行する一方、OFF(無効)であれば、通常モードで動作するように起動する(ステップS10)。
ここで、通常モードは、何らロックをかけていない動作モードであり、リモコン13及び操作部33の操作を受け付けて設定情報32Bの変更や入力映像に対応する画像を投射する動作などが可能であり、機能や動作を制限しない機能非制限モードに相当している。
【0027】
ステップS2では、制御部31は、画像処理部22によりパスワード入力画面を表示させ、ユーザーに対してパスワードの入力を促す。そして、入力されたパスワードが所定回数以内(本実施形態では3回以内)にパスワード関連情報32A内のパスワードと一致したか否かを判定し(ステップS3)、一致した場合(ステップS3:YES)、制御部31は、ステップS10の処理へと移行する。
一方、入力されたパスワードが所定回数内に一致しなかった場合(ステップS3:NO)、制御部31は、環境設定をロックして利用するか否かの問い合わせ処理(本実施形態ではメッセージ表示処理)を行う(ステップS4)。
そして、ユーザーが利用しない旨を示す所定操作をした場合(ステップS5:NO)、制御部31は、プロジェクター10を動作停止させる旨を報知する警告画面表示処理を行い(ステップS6)、所定時間が経過するのを待って(ステップS7)、プロジェクター10を電源OFFに制御する(ステップS8)。
すなわち、パスワード認証が不成立で、かつ、ユーザーから使用しないとの意思確認がとれた場合に、プロジェクター10が使用不能になる。
【0028】
これに対し、ユーザーが利用する旨の所定操作をした場合(ステップS5:YES)、制御部31は、機能制限モードで動作するように起動する(ステップS11)。
この機能制限モードは、環境設定情報32B1の変更を不可にした点が通常モード(機能非制限モード)とは異なる動作モードであり、それ以外は機能や動作を制限せず、リモコン13及び操作部33の操作を受け付けて設定情報32B(環境設定情報32B1以外の設定情報)の変更や入力映像に対応する画像を投射する動作などが可能である。
すなわち、パスワード認証が不成立で、かつ、ユーザーから使用するとの意思確認がとれた場合に、環境設定をロックした状態でプロジェクター10が使用可能になる。
【0029】
このように環境設定をロックした状態では、プロジェクター10の使用環境が変わっていない限り、プロジェクター10を通常通り使用できる一方で、プロジェクター10の使用環境が変わっていれば、以下の不具合が生じる。
例えば、スクリーンSCとの位置関係や設置状態(フロント/天吊り/リア)が変わっていれば、プロジェクター10の投射画像がスクリーンSCに適切に表示されなくなったり、受信部33B,33CのいずれかがOFFのためにリモコン操作が受け付けられなくなったりする。また、視聴室の明るさが変わっていれば、投射画像の輝度の明るさが不足するなどで適正画像が表示されなくなる。
さらに、使用される国やネットワーク環境が変わっていれば、その国とは異なる言語で各種の表示がされて表示内容が判りにくくなり、また、そのネットワークを介して投射画像を表示させることが困難である。
これにより、機能制限モードでは、盗難されていない状況では使用できるようにしながら、盗難されて使用環境が変わった状況では使用困難にすることができる。
【0030】
続いて、このプロジェクター10が電源ONで投射画像を投射中の間に行われる他のプロテクト処理(第2プロテクト処理)を説明する。
図5は、このプロテクト処理(第2プロテクト処理)を示すフローチャートである。
まず、制御部31は、プロジェクター10が起動して動作中(投射画像を投射中)の間、傾きセンサー35により検出される傾斜角度を監視する(ステップS21)。そして、傾きの変化を検出すると(ステップS21:YES)、制御部31は、機能制限モードで動作中か否かを判定し(ステップS22)、機能制限モードでなければ(ステップS22:NO)、ステップS23の処理へと移行する。
ステップS23では、自動台形歪み補正がON(有効)であれば台形歪み補正処理を行い、その後にステップS21の処理へと移行する。
なお、自動台形歪み補正がOFF(無効)であれば台形歪み補正処理を行わずにステップS21の処理へと移行する。
【0031】
ここで、上記ステップS21で判定する傾きの変化は、前回の台形歪み補正を行ったときの傾斜角度からの変化であり、この前回の傾斜角度の情報は、記憶部32に記憶されている。
一方、ステップS22の判定で機能制限モードで動作中であった場合(ステップS22:YES)、制御部31は、プロジェクター10を動作停止させる旨を報知する警告画面表示処理を行い(ステップS24)、所定時間が経過するのを待って(ステップS25)、プロジェクター10を電源OFFに制御する(ステップS26)。
すなわち、プロジェクター10の使用環境が変化したことを検出した場合、機能制限モードではプロジェクター10が使用不能となる。これにより、盗難されて使用環境が変わった場合に、プロジェクター10の使用を禁止できる。
本構成では、台形歪み補正に使用する傾きセンサー35を環境変化を検出する環境変化検出手段に兼用するので、部品点数を増やすことなく、環境変化時にプロジェクター10の使用を積極的に禁止することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施の形態によれば、パスワード認証が成立した場合、環境設定情報32B1の変更を受け付けると共に変更後の設定情報32Bに基づき画像投射する通常モード(機能非制限モード)で動作し、パスワード認証が不成立の場合、環境設定情報32B1の変更を不可にすると共に設定情報32Bに基づき画像投射する機能制限モードで動作するので、認証不成立の場合でも、使用環境が同じ環境では、つまり、盗難されていない状況では、使用することができ、盗難されて使用環境が異なる状況では、使用し難くすることができる。
従って、正規のユーザーにとってパスワード忘れ時に長期間使用できなくなってしまう、といった不便を解消し、かつ、十分な盗難対策を図ることができる。
【0033】
しかも、プロジェクター10が電源ONされた場合に、パスワード認証処理を行い、認証結果に応じて通常モード又は機能制限モードで起動するので、使用開始時に、認証結果に応じて起動する動作モードを設定でき、盗難状況での使用開始を適切に規制することができる。
また、制御部31は、入力されたパスワードが連続して認証不成立の場合に機能制限モードで起動するので、正規のユーザーに対して数回のパスワード入力ミスを許容することができる。
【0034】
また、制御部31は、認証不成立の場合、機能制限モードに移行するか否かを問い合わせる処理(図4のステップS4に相当)を行い、その問い合わせ結果に応じて機能制限モードで動作させるか動作を停止させるので、ユーザーの希望を反映することができる。例えば、正規のユーザーがパスワードの入力ミスをして認証不成立になった場合、動作を停止させることで、電源ONで再びパスワード認証からやり直すことができる。
また、本実施形態では、環境変化検出手段として機能する傾きセンサー35を備え、傾きセンサー35によって使用環境の変化に対応する傾斜角度の変化を検出した場合、通常モードであれば台形補正を行い、機能制限モードであれば動作を停止させるので、機能制限モードで動作中に使用環境が変わっていれば強制的に使用不能にでき、盗難された状況での使用を確実に禁止させることができる。
【0035】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上述の実施形態では、認証情報としてパスワードを用いる場合を説明したが、これに限らず、公知の認証情報を広く適用することが可能である。
また、上述したプロジェクター10は、透過型の液晶パネル21Bを用いて画像をスクリーンSCに投射するタイプであったが、反射型液晶パネルを用いたプロジェクターであってもよいし、デジタルミラーデバイスを用いたDMD方式のプロジェクターであってもよい。また、1つの液晶パネル21Bによりカラー画像を投射するプロジェクターに限らず、3つの液晶パネル21Bによりカラー画像を投射する3LCD方式のプロジェクター、カラーホイールを備えた単板DMD方式のプロジェクター、及び、3DMD方式のプロジェクターのいずれにも本発明を適用可能である。
【0036】
また、上述したプロジェクター10の各機能部について、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、プロジェクター10の具体的な細部構成についても、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。また、本発明は、このような装置が実行するプログラムとして実現することも可能である。
【符号の説明】
【0037】
10…プロジェクター(投射型表示装置)、13…リモートコントローラー(リモコン)、21…画像投射部(画像投射手段)、22…画像処理部、31…制御部(制御手段)、32…記憶部、32A…パスワード関連情報、32B…設定情報、32B1…環境設定情報、35…傾きセンサー(環境変化検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用環境に合わせて設定される環境設定情報を含む設定情報が記憶される記憶手段と、
前記設定情報に従って投射面に向けて画像を投射する画像投射手段と、
認証情報が入力される入力手段と、
前記認証情報の認証が成立した場合、前記環境設定情報の変更を受け付けると共に変更後の前記設定情報に基づき画像投射する機能非制限モードで動作させ、不成立の場合、前記環境設定情報の変更を不可にすると共に前記設定情報に基づき画像投射する機能制限モードで動作させる制御手段と
を備えることを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記投射型表示装置が電源ONされた場合に、前記認証情報の認証処理を行い、認証が成立した場合に前記機能非制限モードで動作するように起動し、不成立の場合に前記機能制限モードで動作するように起動することを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記制御手段は、入力された前記認証情報が連続して認証不成立の場合に、前記機能制限モードで起動することを特徴とする請求項2に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記制御手段は、認証が不成立の場合、前記機能制限モードに移行するか否かを問い合わせる処理を行い、その問い合わせ結果に応じて前記機能制限モードで動作させるか動作を停止させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の投射型表示装置。
【請求項5】
使用環境の変化を検出する環境変化検出手段を有し、
前記制御手段は、前記環境変化検出手段の検出結果に基づいて動作状態を補正する自動補正機能を有し、前記環境変化検出手段によって使用環境の変化を検出した場合、前記機能制限モードであれば動作を停止させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の投射型表示装置。
【請求項6】
使用環境に合わせて設定される環境設定情報を含む設定情報を記憶し、この設定情報に従って投射面に向けて画像を投射する画像投射手段を備える投射型表示装置の制御方法であって、
入力手段に入力された認証情報の認証が成立した場合、前記環境設定情報の変更を受け付けると共に変更後の前記設定情報に基づき画像投射する機能非制限モードで動作し、不成立の場合、前記環境設定情報の変更を不可にすると共に前記設定情報に基づき画像投射する機能制限モードで動作することを特徴とする投射型表示装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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