投射型表示装置
【課題】小型化を図りつつユーザの利便性を向上させることが可能な投射型表示装置を提供する。
【解決手段】投射型表示装置は、光源部と、この光源部から出射された光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、この光変調素子により変調された光を被投射面に対して投射する投射レンズとを備え、以下の[1]式および[2]式を満たす。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.015 ……[1]
W’≦0.5 ……[2]
【解決手段】投射型表示装置は、光源部と、この光源部から出射された光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、この光変調素子により変調された光を被投射面に対して投射する投射レンズとを備え、以下の[1]式および[2]式を満たす。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.015 ……[1]
W’≦0.5 ……[2]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、投射レンズを用いた映像表示を行う投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ(投射型表示装置)の主要部品の1つである光学モジュールは、一般に、光源を含む照明光学系(照明装置)と、光変調素子および投射レンズを含む投射光学系(投影光学系)とから構成されている。
【0003】
このようなプロジェクタの分野では、近年、マイクロプロジェクタと呼ばれる小型(手のひらサイズ)かつ軽量な携帯型プロジェクタが普及し始めている。また、最近ではユーザ(使用者)の利便性向上を図るため、オート・フォーカス(AF:Auto Focus)機構を内蔵したプロジェクタも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3960972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1のようなAF機構を備えたプロジェクタでは、装置内にそのような機構(メカ的な機構)が設けられている。このため、例えば上記したマイクロプロジェクタに適用する場合、AF機構によってフォーカス・フリー化を実現できるものの、小型化(軽量化,低コスト化)の阻害要因となってしまうという問題がある。したがって、小型化を図りつつ、実質的なフォーカス・フリー化を実現してユーザの利便性を向上させることを可能とする手法の提案が望まれる。
【0006】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化を図りつつユーザの利便性を向上させることが可能な投射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の投射型表示装置は、光源部と、この光源部から出射された光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、この光変調素子により変調された光を被投射面に対して投射する投射レンズとを備え、以下の[1]式および[2]式を満たすようにしたものである。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.015 ……[1]
W’≦0.5 ……[2]
但し、Fは投射レンズのFナンバーであり、W’は光変調素子における対角方向のサイズ(インチ数)であり、phは光変調素子における一辺方向の画素数であり、Tは装置自身のスローレシオ(=投影距離s/被投射面上における投影像の上記一辺方向の距離L)であり、Rは投射レンズにおける射出瞳半径であり、Iは、投射レンズにおける射出瞳内の光量分布において、半径方向に沿って射出瞳半径Rまで光量を積算して得られる積算光量であり、I’(=I/2)は、射出瞳内の光量分布において、その光量分布の重心を中心として半径方向に沿って所定の半径R’まで光量を積算して得られる積算光量である。
【0008】
本開示の投射型表示装置では、光源部から出射された光が映像信号に基づいて光変調素子により変調され、この変調された光が投射レンズによって被投射面へ投射される。ここで、上記[1]式および[2]式を満たすことにより、装置内にAF機構等を内蔵することなく、被写界深度が広くなって実質的なフォーカス・フリー化が実現される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の投射型表示装置によれば、上記[1]式および[2]式を満たすようにしたので、装置内にAF機構等を内蔵することなく、実質的なフォーカス・フリー化を実現することができる。よって、小型化を図りつつユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の一実施の形態に係る投射型表示装置の全体構成を表す図である。
【図2】図1に示した光変調素子の詳細構成例を表す模式図である。
【図3】投射型表示装置におけるスローレシオについて説明するための模式図である。
【図4】投影距離sと手前側投影距離s1および奥側投影距離s2との関係の一例を表す特性図である。
【図5】擬似FナンバーF’の定義について説明するための模式図である。
【図6】擬似FナンバーF’を用いて規定した際の実質的なフォーカス・フリー範囲の一例を表す特性図である。
【図7】投射レンズにおける射出瞳内の光量分布例を表す模式図である。
【図8】変形例に係る光変調素子の構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(光変調素子における各画素が正方形状である場合の例)
2.変形例(光変調素子における各画素が長方形状である場合の例)
3.その他の変形例
【0012】
<実施の形態>
[投射型表示装置3の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る投射型表示装置(投射型表示装置3)の全体構成を表すものである。この投射型表示装置3は、スクリーン30(被投射面)に対して映像(映像光)を投射する表示装置(プロジェクタ)であり、照明装置1と、この照明装置1からの照明光を用いて映像表示を行うための光学系(表示光学系)とを備えている。
【0013】
(照明装置1)
照明装置1は、赤色レーザ11R、緑色レーザ11G、青色レーザ11B、レンズ12R,12G,12B、ダイクロイックプリズム131,132、光学素子14、駆動部15、コリメータレンズ16、フライアイレンズ17およびコンデンサレンズ18を備えている。なお、図中に示したZ0は光軸を表している。
【0014】
赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、赤色レーザ光、緑色レーザ光または青色レーザ光を発する3種類の光源である。これらのレーザ光源により光源部が構成されており、ここでは、これら3種類の光源がいずれもレーザ光源となっている。赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えば半導体レーザや固体レーザ等からなる。なお、例えばこれらのレーザ光源がそれぞれ半導体レーザである場合、一例として、赤色レーザ光の波長λr=600〜700nm程度、緑色レーザ光の波長λg=500〜600nm程度、青色レーザ光の波長λb=400〜500nm程度である。
【0015】
ここで、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えばパルス発光を行うようになっている。すなわち、赤色レーザ11Rは、所定の発光周波数f1r[Hz](発光周期Tr=1/f1r)により間欠的(断続的)に赤色レーザ光を出射する。緑色レーザ11Gは、所定の発光周波数f1g[Hz](発光周期Tg=1/f1g)により間欠的に緑色レーザ光を出射する。青色レーザ11Bは、所定の発光周波数f1b[Hz](発光周期Tb=1/f1b)により間欠的に青色レーザ光を出射する。そして、例えば、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光の順に時分割的に順次発光されるようになっている。ここで、これらの発光周波数f1r,f1g,f1bは、各々の基本周波数を意味している。なお、ここでは一例として、発光周波数f1r,f1g,f1bは互いに等しくなっているものとする(以下では適宜、f1r=f1g=f1b=f1として示す)。また、このときの発光周波数f1は、典型的にはf1=60〜120[Hz]程度であるが、これには限定されず、プロジェクタ(投射型表示装置3)における表示画質等に応じて決定されればよい。
【0016】
レンズ12R,12Gは、赤色レーザ11Rから出射された赤色レーザ光および緑色レーザ11Gから出射された緑色レーザ光をそれぞれコリメートして(平行光として)、ダイクロイックプリズム131と結合するためのレンズ(結合レンズ)である。同様に、レンズ12Bは、青色レーザ11Bから出射されたレーザ光をコリメートして(平行光として)、ダイクロイックプリズム132と結合するためのレンズ(結合レンズ)である。なお、これらのレンズ12R,12G,12Bによって、ここでは入射した各レーザ光をコリメートしている(平行光としている)が、この場合には限られず、レンズ12R,12G,12Bによってコリメートしなくてもよい(平行光としてなくてもよい)。ただし、上記のようにコリメートしたほうが装置構成の小型化を図ることができるため、より望ましいと言える。
【0017】
ダイクロイックプリズム131は、レンズ12Rを介して入射した赤色レーザ光を選択的に透過させる一方、レンズ12Gを介して入射した緑色レーザ光を選択的に反射させるプリズムである。ダイクロイックプリズム132は、ダイクロイックプリズム131から出射した赤色レーザ光および緑色レーザ光を選択的に透過させる一方、レンズ12Bを介して入射した青色レーザ光を選択的に反射させるプリズムである。これにより、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光に対する色合成(光路合成)がなされるようになっている。
【0018】
光学素子14は、光源とフライアイレンズ17との間の光路上(具体的には、ダイクロイックプリズム132とコリメータレンズ16との間の光路上)に配置されている。この光学素子14は、いわゆるスペックルノイズ(干渉パターン)を低減するための光学素子であり、図中に示した光軸Z0上を進行するレーザ光がこの光学素子14を通過するようになっている。すなわち、この光学素子14には、光源部(赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11B)から発光周波数f1(=f1r,f1g,f1b)により間欠的に出射される各レーザ光(赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光)が通過する。
【0019】
駆動部15は、光学素子14とフライアイレンズ17との間の相対位置を変位させることにより、フライアイレンズ17の入射面内において、レーザ光の入射位置および入射角度のうちの少なくとも一方(入射位置、入射角度、または、入射位置および入射角度の双方)を変化させるものである。この駆動部15は、例えば光学素子14を振動(微小振動)させることにより、上記相対位置を変位させるようになっている。なお、このような駆動部15は、例えば、コイルおよび永久磁石(例えば、ネオジム(Nd)や鉄(Fe)、ホウ素(ボロン;B)等の材料からなる永久磁石)等を含んで構成されている。
【0020】
コリメータレンズ16は、光学素子14とフライアイレンズ17との間の光路上に配置されており、光学素子14から出射した光をコリメートして平行光とするためのレンズである。
【0021】
フライアイレンズ17は、基板上に複数のレンズが2次元配置された光学部材(インテグレータ)であり、これらのレンズの配列に応じて入射光束を空間的に分割して出射させるものである。これにより、このフライアイレンズ17からの出射光が均一化され(面内の強度分布が均一化され)、照明光として出射されるようになっている。
【0022】
コンデンサレンズ18は、フライアイレンズ17により均一化されて入射した光(照明光)を集光するためのレンズである。
【0023】
(表示光学系)
前述した表示光学系は、偏光ビームスプリッタ(PBS;Polarization Beam Splitter)22、光変調素子21および投射レンズ23(投射光学系)を用いて構成されている。
【0024】
偏光ビームスプリッタ22は、特定の偏光(例えばs偏光)を選択的に透過させると共に、他方の偏光(例えばp偏光)を選択的に反射させる光学部材である。これにより、照明装置1からの照明光(例えばs偏光)が選択的に反射されて光変調素子21へ入射すると共に、この光変調素子21から出射した映像光(例えばp偏光)が選択的に透過し、投射レンズ23へ入射するようになっている。
【0025】
光変調素子21は、照明装置1からの照明光を、図示しない表示制御部から供給される映像信号に基づいて変調することにより映像光を出射する素子である。このような光変調素子21は、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の液晶素子(反射型液晶素子)や、DMD(Digital Micromirror Device)などからなる。なお、このとき光変調素子21では、入射時と出射時とにおける各偏光(例えば、s偏光またはp偏光)が異なるものとなるように、反射がなされるようになっている。
【0026】
投射レンズ23は、光変調素子21により変調された照明光(映像光)をスクリーン30に対して投射(拡大投射)するためのレンズである。
【0027】
[実質的なフォーカス・フリー化を実現するための詳細構成]
ここで、以下、本実施の形態の投射型表示装置3において、実質的なフォーカス・フリー化を実現するための詳細構成について説明する。
【0028】
(条件式の算出方法について)
まず、例えば図2に示したように、光変調素子21において、平面形状が正方形の複数の画素210がマトリクス状に配置されているものとする。ここで、この光変調素子21における横方向(水平方向,Z軸方向)の長さをH’、縦方向(垂直方向,Y軸方向)の長さをV’、対角方向のサイズ(インチ数)をW’、水平方向(一辺方向)の画素数(画素210の個数)をph、垂直方向(一辺方向)の画素数をpvとする。
【0029】
また、例えば図3に示したように、投射型表示装置3からスクリーン30上に投射された投影像4において、横方向(水平方向,Z軸方向)の長さ(投影横幅)をH、縦方向(垂直方向,Y軸方向)の長さ(投影縦幅)をV、対角方向のサイズ(インチ数)をWとする。また、投射型表示装置3からスクリーン30(投影像4)までの距離(投影距離)をsとすると、図3中に示したように、投射型表示装置3自身のスローレシオT=(投影距離s/投影像4における一辺方向の距離L(ここでは、投影横幅H))となる。
【0030】
このとき、投射レンズ23における焦点距離をf[mm]、許容錯乱円をεとすると、前側被写界深度a1[mm]および後側被写界深度a2[mm]はそれぞれ、以下の(1)式および(2)式により表わされる。ここで、投射型表示装置3内の投射レンズ23のFナンバー(幾何Fナンバー)を、Fとしている。なお、上記した投影距離sは、投射レンズ23の前側主点からの距離を表すものとする。
【0031】
【数1】
【0032】
したがって、焦点が合っているとみなされる焦点距離は、手前側投影距離をs1、奥側投影距離をs2とすると、以下の(3)式および(4)式により表わされる。
【0033】
【数2】
【0034】
ここで、像倍率をβ、投射レンズ23の後側主点から光変調素子21までの距離をs’とすると、以下の(5)式および(6)式が成り立つことから、焦点距離fは、以下の(7)式により表わされる。
【0035】
【数3】
【0036】
この(7)式により規定される焦点距離fを、上記した(3)式および(4)式にそれぞれ代入すると、以下の(8)式および(9)式がそれぞれ得られる。
【0037】
【数4】
【0038】
ここで、像倍率βは、前述した光変調素子21における対角方向のサイズ(インチ数)W’および投影像4における対角方向のサイズ(インチ数)Wを用いて、以下の(10)式のように表わされる。
β=(W/W’) ……(10)
【0039】
また、この投影像4における横縦比を(投影横幅H:投影縦幅V)とし、前述したスローレシオTを、対角方向のサイズW[インチ]から投影横幅H[mm]への変換係数kを用いて、以下の(11)式および(12)式のように表すと、以下の(13)式が成り立つ。
【0040】
【数5】
【0041】
ここで、以下の(14)式および(15)式によってα,γをそれぞれ規定すると、投影距離sに対する挙動は、これら2種類の装置固有の値α,γによって規定されることとなる。なお、例えば稼動ズーム機構をもつ場合には、α,γともにズームによって数値が異なることが考えるが、ここでは簡易化のため、中心ズームの値を用いて考えることとする。
【0042】
【数6】
【0043】
これらのことから、前述した手前側投影距離s1および奥側投影距離s2はそれぞれ、以下の(16)式および(17)式により表わされる。
【0044】
【数7】
【0045】
ここで、一般には、投影距離sは200mm以上であるのに対し、上記したαは、(投影横幅H:投影縦幅V)=16:9,スローレシオT=1.00,光変調素子21における対角方向のサイズ(インチ数)W’=0.2インチとしても、0.2程度であり、(2/α)=10と比べて十分に大きい。よって、s≫(2/α),s≫(1/α)と仮定することが可能である。これらのことを考慮すると、手前側投影距離s1および奥側投影距離s2はそれぞれ、以下の(18)式および(19)式のように表すことができる。
【0046】
【数8】
【0047】
ここで、αおよびγについては、掛け合わさっている項は同等であるが、αは2乗で効き、γは線形に影響が増すと言える。図4は、α2γの値を変化させた場合に、投影距離sの値に応じて手前側投影距離s1および奥側投影距離s2がどのように変化するのかを示す特性例を表したものである。
【0048】
この図4において、α2γの値が大きくなるのに応じて被写界深度が大きく(広く)なり(図4中の矢印G1,G2参照)、フォーカスの調整をしなくても済む範囲(実質的なフォーカス・フリー化が実現される範囲)が拡大しているのが分かる。なお、ここでは投影距離sは主点からの距離を考えているものの、鏡筒端から主点までの距離は、鏡筒端−投影像間の距離に比べればほとんど無視してもかまわないため、鏡筒端からの距離と考えても差し支えない。
【0049】
ここで、投影被写界内における手前側投影距離s1および奥側投影距離s2はそれぞれ、フォーカス(焦点)が合う投影インチサイズをWmin[inch],Wmax[inch]とすると、以下の(20)式および(21)式により表わされる。
【0050】
【数9】
【0051】
ここで、前述した(18)式および(19)式を、α2γについて解くと、以下の(22)式のようになる。このため、手前側投影距離s1および奥側投影距離s2の境界を達成することが可能なα2γは、以下の(23)式により表わされる。したがって、以下の(24)式が成り立たなければ、所望の範囲内におけるフォーカス・フリー化が実現されないことが分かる。
【0052】
【数10】
【0053】
ここで、許容錯乱円ε[mm](直径)は、光変調素子21における画素210のサイズ(画素サイズ)d[mm]が2倍に広がってかぶるとボケ認識ができなくなるため、ε=(2.0×d)程度が限界であると考えられる。このとき、画素サイズdを、前述した光変調素子21における水平方向の画素数phを用いて表すと、以下の(25)式のようになる。このため、以下の条件式((26)式)が成り立つことになる。
【0054】
【数11】
【0055】
(条件式における各パラメータの範囲について)
ここで、投射型表示装置3における実用上使用範囲としては、例えば、投影像4における対角方向のサイズW=20〜50[inch]程度の範囲内において、フォーカス・フリー化が実現することが望ましいと言える。これは、この範囲よりも小さいサイズWでは投影自体のメリットが薄まってくることと、この範囲よりも大きいサイズWでの投影は、光量の観点から厳しくなってくることとに起因する。
【0056】
このことから、上記(26)式における(右辺)=0.015となり、以下の条件式((27)式)が成り立つことになる。
{(2F)/(W’Tph)}≧0.015 ……(27)
【0057】
ところで、投射レンズ23におけるFナンバーとしては、これまで説明した幾何的なFナンバー(ここではFナンバーF)を用いるのが基本であるものの、投射レンズ23における瞳光量分布(射出瞳内の光量分布)の影響で、実質的なFナンバーが増大して見えることがある。そこで以下では、このような実質的なFナンバーを、擬似FナンバーF’と定義して用いるものとする。
【0058】
図5は、この擬似FナンバーF’の定義について説明するための模式図であり、投射レンズ23における射出瞳内の光量分布の一例を示している。ここで、投射レンズ23における射出瞳半径をRとし、投射レンズ23における射出瞳内の光量分布において、半径方向に沿って射出瞳半径Rまで光量(図5中に示したφの領域内での光量)を積算して得られる積算光量をIとし、射出瞳内の光量分布において、その光量分布の重心Gを中心として半径方向に沿って所定の半径R’まで光量(図5中に示したF内の領域での光量)を積算して得られる積算光量をI’(=I/2)とする。このような射出瞳半径Rと、I’=I/2を満たす半径Rとを用いると、投射レンズ23における擬似FナンバーF’は、以下の(28)式により定義される。
F’={(2FR’)/R} ……(28)
【0059】
この擬似FナンバーF’は、簡易的に通常の幾何FナンバーFと同等の効果を与えることが、実験的に確認されている。図6(A),(B)は、その一例を示したものである。これらの図6(A),(B)はそれぞれ、例えば図7(A)〜(C)に示したような多種多様な光量分布(射出瞳内の光量分布)について、擬似FナンバーF’とその際のフォーカス距離(s2−s1)とを示したものである。図6(A),(B)ではそれぞれ、横軸が前述したα2γを示し、縦軸がフォーカス距離(s2−s1)を示している。これらの図6(A),(B)により、フォーカスの範囲(実質的なフォーカス・フリー化が実現される範囲)は、幾何的計算結果と略一致していることが確認できる。
【0060】
なお、図6(A)は、ε=2.0d,s=290mmとした場合の結果であり、計算値と実測値とが略一致している。ただし、フォーカスの範囲の見え方は主観的なものであり、より厳しく見ることも可能である。例えば、ε=1.0d程度で計算した値と実測値とが合うような厳しい目で見た場合、各フォーカス範囲でのシャープさが増加し、データプロジェクタ等の用途でも使用できるほど解像感が上がり、より望ましいと言える。図6(B)は、この場合(ε=1.0d,s=600mm)の結果に対応し、計算値と実測値とが略一致している。このことから、より望ましくはε=1.0dを使用してフォーカス範囲を規定するとよい。
【0061】
このように、これまでに説明してきたFナンバーFを擬似FナンバーF’に置換することで、照明分布が一様でない場合についても考慮することが可能となる。具体的には、前述した(27)式は、擬似FナンバーF’を用いて規定すると、以下の(29)式のようになる。すなわち、擬似FナンバーF’を用いた場合、この(29)式で規定される条件式を満たすようにすればよい。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.015 ……(29)
【0062】
ここで、例えば、光変調素子21における水平方向の画素数ph=640である場合、擬似FナンバーF’=2.0,スローレシオT=1.0,光変調素子21における対角方向のサイズW’=0.2[inch]とすると、上記(29)式における(左辺)=0.031となる。すなわち、この(29)式で規定される条件を満たすことになり、上記した対角方向のサイズW=20〜50[inch]程度の範囲内において、フォーカス・フリー化が実現されることとなる。
【0063】
ここで、フォーカス度合に影響を及ぼすパラメータは、スローレシオT,光変調素子21における対角方向のサイズW’,光変調素子21における水平方向の画素数phである。これらのパラメータは、(27)式および(29)式中の分母にあり、影響が大きいためである。
【0064】
ところで、小型化を目的とした投射型表示装置3の場合、光変調素子21における対角方向のサイズW’[inch]については、以下の(30)式が成り立つ程度の大きさであることが多いため、(27)式および(29)式における左辺が大きくなり易いというメリットがある。このことから、本実施の形態の投射型表示装置3では、(27)式および(30)式の双方、あるいは、(29)式および(30)式の双方を満たすように設定されている。
W’≦0.5 ……(30)
【0065】
ただし、(27)式または(29)式を満たす(実質的なフォーカス・フリー化を実現する)には、対角方向のサイズW’[inch]を更に小さくし、FナンバーF(擬似FナンバーF’)を大きくし、スローレシオTを小さくすることが望ましい。
【0066】
ここで、これらのパラメータのうち、スローレシオTについては、投射レンズ23の設計に依存しており、コストを十分に低減するには0.8≦T程度が限界であると考えられる。また、光変調素子21における対角方向のサイズW’[inch]の限界値は、この光変調素子21における耐光性および製造プロセスに大きく依存する。特に、光変調素子21として有機配向膜を有する液晶素子を用いた場合において、液晶面に青色レーザ光が照明される場合には、耐光性の観点からW’を小さくすることが困難となる。このため、フォーカス・フリー化を実現しつつ、映像光の明るさ(投影像4の明るさ)を向上させるには、光変調素子21として、無機配向膜を有する液晶素子、あるいはDMDを用いるのが望ましいと言える。これらの無機配向膜を有する液晶素子およびDMDのうちでは、高画質化の観点からは、前者のほうが特にプロセス上適していると言える。
【0067】
また、光変調素子21における対角方向のサイズW’[inch]を小さくするには、照明効率の観点からは、予め指向性の強い光を用いなければ収集光率が悪化する。このため、投射型表示装置3内の光源部としては、本実施の形態のように、レーザ光源(ここでは、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11B)を含むようにすることが望ましいと言える。
【0068】
このように、実質的なフォーカス・フリー化を実現するには、投射型表示装置3内の光学系の要素や仕様のみではなく、各デバイスの種類をも制約することになる。例えば、投射レンズ23からスクリーン30へ向けて投射される光(映像光)の光束が30[lm]程度以上である投射型表示装置3では、光変調素子21における水平方向の画素数ph≧1000を満たして高画質化を実現したうえで、実質的なフォーカス・フリー化を実現するには、以下の条件を満たすのが望ましい。すなわち、対角方向のサイズW’=0.2[inch]程度である光変調素子21(無機配向膜を有する液晶素子)を用いると共に、スローレシオT=1.0程度の広角設計をしたうえで、更に光学系では、投射レンズ23のFナンバーF(擬似FナンバーF’)≧2.0程度とするのが望ましい。
【0069】
ところで、実質的なフォーカス・フリー化を実現するには、投影像4の大きさ(インチ数)だけでなく、投影距離sについても重要である。すなわち、手前側投影距離s1および奥側投影距離s2についても、投射型表示装置3における明るさや使用用途の観点からは、所定の範囲内であることが望ましい。この意味では、スローレシオTの値が小さいほど、フォーカス・フリー化を実現し易いと言える。例えば、投影距離s=50[inch]として、奥側投影距離s2=1500[mm]程度であると、様々な場面での使用が容易になるうえ、前述した小型化を目的とした投射型表示装置3における使用範囲として適正である。この場合、スローレシオTの範囲としては、T<1.36程度となる。
【0070】
また、投射レンズ23のFナンバーF(擬似FナンバーF’)の値については、大きければ大きいほど、焦点深度は広くなる。ところが、このFナンバーF(擬似FナンバーF’)の値が大きくなると、それに応じて投射型表示装置3のサイズが大型化するか、あるいはインテグレータ(ここではフライアイレンズ17)の密度が増大し、加工ロスが増大するおそれがある。このため、FナンバーF≦3.0(擬似FナンバーF’≦10.0)程度であるのが望ましいと言える。
【0071】
ここで、この場合、擬似FナンバーF’に対して投射レンズ23のFナンバーF(幾何Fナンバー)はなるべく小さいほうが、ビネッティングによる光量ロスを抑えることができ、より望ましいと言える。一方で、このFナンバーF(幾何Fナンバー)の値があまりにも小さい場合、投射レンズ23におけるレンズ鏡筒サイズが無駄に大きくなってしまう。そこで、おおよその目安として、以下の(31)式を満たすようにするのが望ましいことが、実験的に判明している。
0.4≦(F/F’)≦0.8 ……(31)
【0072】
ここで、これまでの説明では、投影像4における対角方向のサイズW=20〜50[inch]程度の範囲であるものとしたが、ユーザにおける利便性を更に向上させる(より使用し易くする)には、以下の範囲とすることも考えられる。すなわち、対角方向のサイズW=20〜70[inch]程度、あるいは、W=15〜70[inch]程度とすることが考えられる。また、小型化を目的とした投射型表示装置3における投影距離sの範囲は、投射レンズ23の設計の難易度から下限値が10インチ程度である一方、投影サイズがあまりにも大きいと実用的ではないことから上限値は100インチ程度である。これらの場合、前述した(26)式における(右辺)の値はそれぞれ、以下のようになる。
・W=20〜70[inch]の場合: (右辺)=0.018
・W=15〜70[inch]の場合: (右辺)=0.026
・W=10〜100[inch]の場合:(右辺)=0.045
【0073】
すなわち、これらの場合には、擬似FナンバーF’を用いて規定すると、以下の(32)式、(33)式または(34)式を満たすようにするのが望ましいと言える。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.018 ……(32)
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.026 ……(33)
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.045 ……(34)
【0074】
ここで、前述したように、光変調素子21における水平方向の画素数ph=640,擬似FナンバーF’=2.0,スローレシオT=1.0,光変調素子21における対角方向のサイズW’=0.2[inch]であるときには、W=15〜70[inch]の場合において、実質的なフォーカス・フリー化が実現されることが分かる。ただし、この場合の高画質化条件は厳しく、光変調素子21における水平方向の画素数ph=1280の場合、擬似FナンバーF’=3.3,スローレシオT=1.0,光変調素子21における対角方向のサイズW’=0.2[inch]の条件でようやく成り立つことになる。なお、この場合には光学系条件が厳しくなり、小型化に不利なことが容易に想定される。
【0075】
[投射型表示装置3の作用・効果]
この投射型表示装置3では、図1に示したように、まず照明装置1において、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bからそれぞれ出射された光(レーザ光)が、レンズ12R,12G,12Bによってそれぞれコリメートされ、平行光となる。次いで、このようにして平行光とされた各レーザ光(赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光)は、ダイクロイックプリズム131,132によって色合成(光路合成)がなされる。光路合成がなされた各レーザ光は、光学素子14を通過したのち、コリメータレンズ16によってコリメートされて平行光となり、フライアイレンズ17へ入射する。この入射光は、フライアイレンズ17によって均一化(面内の強度分布の均一化)がなされて出射したのち、コンデンサレンズ18によって集光される。このようにして、照明装置1から照明光が出射される。
【0076】
次いで、この照明光は、偏光ビームスプリッタ22によって選択的に反射され、光変調素子21へ入射する。光変調素子21では、この入射光が映像信号に基づいて変調されつつ反射されることにより、映像光として出射する。ここで、この光変調素子21では、入射時と出射時とにおける各偏光が異なるものとなるため、光変調素子21から出射した映像光は選択的に偏光ビームスプリッタ22を透過し、投射レンズ23へと入射する。そして、この入射光(映像光)は、投射レンズ23によって、スクリーン30に対して投射(拡大投射)される。
【0077】
この際、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えば図2に示したように、所定の発光周波数f1(=f1r,f1g,f1b)による間欠的な発光動作を行う。これにより、各レーザ光(赤色レーザ光,緑色レーザ光,青色レーザ光)が、時分割的に順次出射される。そして、光変調素子21では、各色成分(赤色成分、緑色成分、青色成分)の映像信号に基づいて、対応する色のレーザ光が時分割的に順次変調される。このようにして、映像信号に基づくカラー映像表示が投射型表示装置3においてなされる。
【0078】
ここで、本実施の形態の投射型表示装置3では、上記(27)式および(30)式の双方、あるいは、(29)式および(30)式の双方を満たすことにより、装置内にAF機構等を内蔵することなく、被写界深度が広くなって実質的なフォーカス・フリー化が実現される。
【0079】
以上のように本実施の形態では、上記(27)式および(30)式の双方、あるいは、(29)式および(30)式の双方を満たすようにしたので、装置内にAF機構(物理的なAF機構)等を内蔵することなく、実質的なフォーカス・フリー化を実現することができる。よって、小型化(軽量化,低コスト化)を図りつつ、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0080】
また、深さのある立体物の投影も容易に行うことができ、ユーザ・インターフェース面での改善を図ることも可能となる。
【0081】
なお、これまで説明した擬似FナンバーF’は、投射レンズ23における射出瞳内の光量分布(プロファイル)の形状に応じて、縦方向、横方向あるいは斜め方向に沿った値が異なることがある。この場合でも各方向に沿った擬似FナンバーF’の値が変化すると、その方向に応じた解像度のフォーカス深度が変わることとなる。一般的には、投影像は縦方向および横方向とも同等のフォーカス範囲とすることが望ましいため、ビームプロファイルは円形とするのが望ましい。ただし、擬似FナンバーF’の値が方向によって異なっている場合でも、いずれかの一方向について本実施の形態で説明した条件を満たすようにすれば、その方向でのフォーカス範囲を保つことが可能となる。
【0082】
また、フォーカス深度の実際の幅は、画面の像高が高い部分(画面の端など)等において、これまで説明した値よりも低下することがある。これは、高い像高ほど収差低減がなされづらいためであるが、本実施の形態において説明した範囲によっておおよそのフォーカス深度を見極めることは可能であり、また推定フォーカス深度が最大になると言える。
【0083】
<変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例について説明する。なお、実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0084】
図8は、変形例に係る光変調素子21の平面構成例を模式的に表したものである。ここで、上記実施の形態の光変調素子21では、例えば図2に示したように、各画素210の平面形状が正方形となっている。そして、上記実施の形態では、水平方向(横方向)および垂直方向(縦方向)のうちの少なくとも一方について、前述した(27)式および(30)式の双方、あるいは、(29)式および(30)式の双方を満たすように設定されている。
【0085】
これに対して本変形例の光変調素子21では、例えば図8に示したように、各画素210の平面形状が長方形(ここでは、垂直方向が長軸方向であり、水平方向が短軸方向)となっている。そして、本変形例では、各画素210の短軸方向(ここでは垂直方向)について、前述した(27)式および(30)式の双方、あるいは、(29)式および(30)式の双方を満たすように設定されている。
【0086】
このように構成することにより、本変形例においても上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。すなわち、装置内にAF機構等を内蔵することなく、実質的なフォーカス・フリー化を実現することができ、小型化(軽量化,低コスト化)を図りつつユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0087】
<その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示の技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0088】
例えば、上記実施の形態等では、光学素子14の一例として、プリズムアレイ、回折素子、レンズおよびレンズアレイを挙げて説明したが、これら以外の他の光学素子を用いてもよい。同様に、インテグレータとして、上記実施の形態等で説明したフライアイレンズ17以外の光学部材(例えば、ロッドインテグレータなど)を用いてもよい。
【0089】
また、上記実施の形態等では、複数種類(赤色用,緑色用,青色用)の光源がいずれもレーザ光源である場合について説明したが、この場合には限られない。すなわち、例えば、複数種類の光源のうちの少なくとも1つがレーザ光源である(光源部内に、レーザ光源と他の光源(例えばLED(Light Emitting Diode)等)とを組み合わせて設ける)ようにしてもよい。また、光源部内にレーザ光源が含まれない(LED等の他の光源だけが設けられている)ようにしてもよい。
【0090】
更に、上記実施の形態等では、異なる波長の光を発する3種類の光源を用いた場合について説明したが、例えば3種類の光源ではなく、1種類や2種類,4種類以上の光源を用いるようにしてもよい。
【0091】
加えて、上記実施の形態等では、照明装置および表示装置の各構成要素(光学系)を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。具体的には、例えばダイクロイックプリズム131,132の代わりに、ダイクロイックミラーを設けるようにしてもよい。
【0092】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
<1>
光源部と、
前記光源部から出射された光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調された光を被投射面に対して投射する投射レンズと
を備え、
以下の[1]式および[2]式を満たす
投射型表示装置。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.015 ……[1]
W’≦0.5 ……[2]
但し、
F: 前記投射レンズのFナンバー
W’: 前記光変調素子における対角方向のサイズ(インチ数)
ph: 前記光変調素子における一辺方向の画素数
T: 装置自身のスローレシオ(=投影距離s/前記被投射面上における投影像の前記一辺方向の距離L)
R: 前記投射レンズにおける射出瞳半径
I: 前記投射レンズにおける射出瞳内の光量分布において、半径方向に沿って前記射出瞳半径Rまで光量を積算して得られる積算光量
I’(=I/2): 前記射出瞳内の光量分布において、その光量分布の重心を中心として半径方向に沿って所定の半径R’まで光量を積算して得られる積算光量
<2>
T<1.36を満たす
上記<1>に記載の投射型表示装置。
<3>
前記投射レンズにおける擬似FナンバーをF’(={(2FR’)/R})としたとき、
0.4≦(F/F’)≦0.8を満たす
上記<1>または<2>に記載の投射型表示装置。
<4>
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.018を満たす
上記<1>ないし<3>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<5>
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.026を満たす
上記<4>に記載の投射型表示装置。
<6>
F’≦10.0を満たす
上記<1>ないし<5>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<7>
前記投射レンズから前記被投射面へ向けて投射される光の光束が、30[lm]以上である
上記<1>ないし<6>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<8>
前記[2]式および以下の[3]式を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
{(2F)/(W’Tph)}≧0.015 ……[3]
<9>
前記光源部がレーザ光源を含む
上記<1>ないし<8>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<10>
前記光変調素子が、DMDまたは液晶素子からなる
上記<9>に記載の投射型表示装置。
<11>
前記光変調素子が、無機配向膜または有機配向膜を有する液晶素子からなると共に、ph≧1000を満たす
上記<10>に記載の投射型表示装置。
<12>
前記レーザ光源が、青色レーザである
上記<9>ないし<11>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<13>
前記光変調素子における各画素の平面形状が正方形であり、
前記一辺方向としての水平方向および垂直方向のうちの少なくとも一方について、前記[1]式および前記[2]式を満たす
上記<1>ないし<12>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<14>
前記光変調素子における各画素の平面形状が長方形であり、
前記一辺方向としての各画素の短軸方向について、前記(1)式および前記(2)式を満たす
上記<1>ないし<12>のいずれかに記載の投射型表示装置。
【符号の説明】
【0093】
1…照明装置、11R…赤色レーザ、11G…緑色レーザ、11B…青色レーザ、12R,12G,12B…レンズ、131,132…ダイクロイックプリズム、14…光学素子、15…駆動部、16…コリメータレンズ、17…フライアイレンズ、18…コンデンサレンズ、21…光変調素子、210…画素、22…偏光ビームスプリッタ、23…投射レンズ、3…投射型表示装置、30…スクリーン、4…投影像、Z0…光軸。
【技術分野】
【0001】
本開示は、投射レンズを用いた映像表示を行う投射型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ(投射型表示装置)の主要部品の1つである光学モジュールは、一般に、光源を含む照明光学系(照明装置)と、光変調素子および投射レンズを含む投射光学系(投影光学系)とから構成されている。
【0003】
このようなプロジェクタの分野では、近年、マイクロプロジェクタと呼ばれる小型(手のひらサイズ)かつ軽量な携帯型プロジェクタが普及し始めている。また、最近ではユーザ(使用者)の利便性向上を図るため、オート・フォーカス(AF:Auto Focus)機構を内蔵したプロジェクタも提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3960972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1のようなAF機構を備えたプロジェクタでは、装置内にそのような機構(メカ的な機構)が設けられている。このため、例えば上記したマイクロプロジェクタに適用する場合、AF機構によってフォーカス・フリー化を実現できるものの、小型化(軽量化,低コスト化)の阻害要因となってしまうという問題がある。したがって、小型化を図りつつ、実質的なフォーカス・フリー化を実現してユーザの利便性を向上させることを可能とする手法の提案が望まれる。
【0006】
本開示はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化を図りつつユーザの利便性を向上させることが可能な投射型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の投射型表示装置は、光源部と、この光源部から出射された光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、この光変調素子により変調された光を被投射面に対して投射する投射レンズとを備え、以下の[1]式および[2]式を満たすようにしたものである。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.015 ……[1]
W’≦0.5 ……[2]
但し、Fは投射レンズのFナンバーであり、W’は光変調素子における対角方向のサイズ(インチ数)であり、phは光変調素子における一辺方向の画素数であり、Tは装置自身のスローレシオ(=投影距離s/被投射面上における投影像の上記一辺方向の距離L)であり、Rは投射レンズにおける射出瞳半径であり、Iは、投射レンズにおける射出瞳内の光量分布において、半径方向に沿って射出瞳半径Rまで光量を積算して得られる積算光量であり、I’(=I/2)は、射出瞳内の光量分布において、その光量分布の重心を中心として半径方向に沿って所定の半径R’まで光量を積算して得られる積算光量である。
【0008】
本開示の投射型表示装置では、光源部から出射された光が映像信号に基づいて光変調素子により変調され、この変調された光が投射レンズによって被投射面へ投射される。ここで、上記[1]式および[2]式を満たすことにより、装置内にAF機構等を内蔵することなく、被写界深度が広くなって実質的なフォーカス・フリー化が実現される。
【発明の効果】
【0009】
本開示の投射型表示装置によれば、上記[1]式および[2]式を満たすようにしたので、装置内にAF機構等を内蔵することなく、実質的なフォーカス・フリー化を実現することができる。よって、小型化を図りつつユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本開示の一実施の形態に係る投射型表示装置の全体構成を表す図である。
【図2】図1に示した光変調素子の詳細構成例を表す模式図である。
【図3】投射型表示装置におけるスローレシオについて説明するための模式図である。
【図4】投影距離sと手前側投影距離s1および奥側投影距離s2との関係の一例を表す特性図である。
【図5】擬似FナンバーF’の定義について説明するための模式図である。
【図6】擬似FナンバーF’を用いて規定した際の実質的なフォーカス・フリー範囲の一例を表す特性図である。
【図7】投射レンズにおける射出瞳内の光量分布例を表す模式図である。
【図8】変形例に係る光変調素子の構成例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(光変調素子における各画素が正方形状である場合の例)
2.変形例(光変調素子における各画素が長方形状である場合の例)
3.その他の変形例
【0012】
<実施の形態>
[投射型表示装置3の全体構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る投射型表示装置(投射型表示装置3)の全体構成を表すものである。この投射型表示装置3は、スクリーン30(被投射面)に対して映像(映像光)を投射する表示装置(プロジェクタ)であり、照明装置1と、この照明装置1からの照明光を用いて映像表示を行うための光学系(表示光学系)とを備えている。
【0013】
(照明装置1)
照明装置1は、赤色レーザ11R、緑色レーザ11G、青色レーザ11B、レンズ12R,12G,12B、ダイクロイックプリズム131,132、光学素子14、駆動部15、コリメータレンズ16、フライアイレンズ17およびコンデンサレンズ18を備えている。なお、図中に示したZ0は光軸を表している。
【0014】
赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、赤色レーザ光、緑色レーザ光または青色レーザ光を発する3種類の光源である。これらのレーザ光源により光源部が構成されており、ここでは、これら3種類の光源がいずれもレーザ光源となっている。赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えば半導体レーザや固体レーザ等からなる。なお、例えばこれらのレーザ光源がそれぞれ半導体レーザである場合、一例として、赤色レーザ光の波長λr=600〜700nm程度、緑色レーザ光の波長λg=500〜600nm程度、青色レーザ光の波長λb=400〜500nm程度である。
【0015】
ここで、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えばパルス発光を行うようになっている。すなわち、赤色レーザ11Rは、所定の発光周波数f1r[Hz](発光周期Tr=1/f1r)により間欠的(断続的)に赤色レーザ光を出射する。緑色レーザ11Gは、所定の発光周波数f1g[Hz](発光周期Tg=1/f1g)により間欠的に緑色レーザ光を出射する。青色レーザ11Bは、所定の発光周波数f1b[Hz](発光周期Tb=1/f1b)により間欠的に青色レーザ光を出射する。そして、例えば、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光の順に時分割的に順次発光されるようになっている。ここで、これらの発光周波数f1r,f1g,f1bは、各々の基本周波数を意味している。なお、ここでは一例として、発光周波数f1r,f1g,f1bは互いに等しくなっているものとする(以下では適宜、f1r=f1g=f1b=f1として示す)。また、このときの発光周波数f1は、典型的にはf1=60〜120[Hz]程度であるが、これには限定されず、プロジェクタ(投射型表示装置3)における表示画質等に応じて決定されればよい。
【0016】
レンズ12R,12Gは、赤色レーザ11Rから出射された赤色レーザ光および緑色レーザ11Gから出射された緑色レーザ光をそれぞれコリメートして(平行光として)、ダイクロイックプリズム131と結合するためのレンズ(結合レンズ)である。同様に、レンズ12Bは、青色レーザ11Bから出射されたレーザ光をコリメートして(平行光として)、ダイクロイックプリズム132と結合するためのレンズ(結合レンズ)である。なお、これらのレンズ12R,12G,12Bによって、ここでは入射した各レーザ光をコリメートしている(平行光としている)が、この場合には限られず、レンズ12R,12G,12Bによってコリメートしなくてもよい(平行光としてなくてもよい)。ただし、上記のようにコリメートしたほうが装置構成の小型化を図ることができるため、より望ましいと言える。
【0017】
ダイクロイックプリズム131は、レンズ12Rを介して入射した赤色レーザ光を選択的に透過させる一方、レンズ12Gを介して入射した緑色レーザ光を選択的に反射させるプリズムである。ダイクロイックプリズム132は、ダイクロイックプリズム131から出射した赤色レーザ光および緑色レーザ光を選択的に透過させる一方、レンズ12Bを介して入射した青色レーザ光を選択的に反射させるプリズムである。これにより、赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光に対する色合成(光路合成)がなされるようになっている。
【0018】
光学素子14は、光源とフライアイレンズ17との間の光路上(具体的には、ダイクロイックプリズム132とコリメータレンズ16との間の光路上)に配置されている。この光学素子14は、いわゆるスペックルノイズ(干渉パターン)を低減するための光学素子であり、図中に示した光軸Z0上を進行するレーザ光がこの光学素子14を通過するようになっている。すなわち、この光学素子14には、光源部(赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11B)から発光周波数f1(=f1r,f1g,f1b)により間欠的に出射される各レーザ光(赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光)が通過する。
【0019】
駆動部15は、光学素子14とフライアイレンズ17との間の相対位置を変位させることにより、フライアイレンズ17の入射面内において、レーザ光の入射位置および入射角度のうちの少なくとも一方(入射位置、入射角度、または、入射位置および入射角度の双方)を変化させるものである。この駆動部15は、例えば光学素子14を振動(微小振動)させることにより、上記相対位置を変位させるようになっている。なお、このような駆動部15は、例えば、コイルおよび永久磁石(例えば、ネオジム(Nd)や鉄(Fe)、ホウ素(ボロン;B)等の材料からなる永久磁石)等を含んで構成されている。
【0020】
コリメータレンズ16は、光学素子14とフライアイレンズ17との間の光路上に配置されており、光学素子14から出射した光をコリメートして平行光とするためのレンズである。
【0021】
フライアイレンズ17は、基板上に複数のレンズが2次元配置された光学部材(インテグレータ)であり、これらのレンズの配列に応じて入射光束を空間的に分割して出射させるものである。これにより、このフライアイレンズ17からの出射光が均一化され(面内の強度分布が均一化され)、照明光として出射されるようになっている。
【0022】
コンデンサレンズ18は、フライアイレンズ17により均一化されて入射した光(照明光)を集光するためのレンズである。
【0023】
(表示光学系)
前述した表示光学系は、偏光ビームスプリッタ(PBS;Polarization Beam Splitter)22、光変調素子21および投射レンズ23(投射光学系)を用いて構成されている。
【0024】
偏光ビームスプリッタ22は、特定の偏光(例えばs偏光)を選択的に透過させると共に、他方の偏光(例えばp偏光)を選択的に反射させる光学部材である。これにより、照明装置1からの照明光(例えばs偏光)が選択的に反射されて光変調素子21へ入射すると共に、この光変調素子21から出射した映像光(例えばp偏光)が選択的に透過し、投射レンズ23へ入射するようになっている。
【0025】
光変調素子21は、照明装置1からの照明光を、図示しない表示制御部から供給される映像信号に基づいて変調することにより映像光を出射する素子である。このような光変調素子21は、例えば、LCOS(Liquid Crystal On Silicon)等の液晶素子(反射型液晶素子)や、DMD(Digital Micromirror Device)などからなる。なお、このとき光変調素子21では、入射時と出射時とにおける各偏光(例えば、s偏光またはp偏光)が異なるものとなるように、反射がなされるようになっている。
【0026】
投射レンズ23は、光変調素子21により変調された照明光(映像光)をスクリーン30に対して投射(拡大投射)するためのレンズである。
【0027】
[実質的なフォーカス・フリー化を実現するための詳細構成]
ここで、以下、本実施の形態の投射型表示装置3において、実質的なフォーカス・フリー化を実現するための詳細構成について説明する。
【0028】
(条件式の算出方法について)
まず、例えば図2に示したように、光変調素子21において、平面形状が正方形の複数の画素210がマトリクス状に配置されているものとする。ここで、この光変調素子21における横方向(水平方向,Z軸方向)の長さをH’、縦方向(垂直方向,Y軸方向)の長さをV’、対角方向のサイズ(インチ数)をW’、水平方向(一辺方向)の画素数(画素210の個数)をph、垂直方向(一辺方向)の画素数をpvとする。
【0029】
また、例えば図3に示したように、投射型表示装置3からスクリーン30上に投射された投影像4において、横方向(水平方向,Z軸方向)の長さ(投影横幅)をH、縦方向(垂直方向,Y軸方向)の長さ(投影縦幅)をV、対角方向のサイズ(インチ数)をWとする。また、投射型表示装置3からスクリーン30(投影像4)までの距離(投影距離)をsとすると、図3中に示したように、投射型表示装置3自身のスローレシオT=(投影距離s/投影像4における一辺方向の距離L(ここでは、投影横幅H))となる。
【0030】
このとき、投射レンズ23における焦点距離をf[mm]、許容錯乱円をεとすると、前側被写界深度a1[mm]および後側被写界深度a2[mm]はそれぞれ、以下の(1)式および(2)式により表わされる。ここで、投射型表示装置3内の投射レンズ23のFナンバー(幾何Fナンバー)を、Fとしている。なお、上記した投影距離sは、投射レンズ23の前側主点からの距離を表すものとする。
【0031】
【数1】
【0032】
したがって、焦点が合っているとみなされる焦点距離は、手前側投影距離をs1、奥側投影距離をs2とすると、以下の(3)式および(4)式により表わされる。
【0033】
【数2】
【0034】
ここで、像倍率をβ、投射レンズ23の後側主点から光変調素子21までの距離をs’とすると、以下の(5)式および(6)式が成り立つことから、焦点距離fは、以下の(7)式により表わされる。
【0035】
【数3】
【0036】
この(7)式により規定される焦点距離fを、上記した(3)式および(4)式にそれぞれ代入すると、以下の(8)式および(9)式がそれぞれ得られる。
【0037】
【数4】
【0038】
ここで、像倍率βは、前述した光変調素子21における対角方向のサイズ(インチ数)W’および投影像4における対角方向のサイズ(インチ数)Wを用いて、以下の(10)式のように表わされる。
β=(W/W’) ……(10)
【0039】
また、この投影像4における横縦比を(投影横幅H:投影縦幅V)とし、前述したスローレシオTを、対角方向のサイズW[インチ]から投影横幅H[mm]への変換係数kを用いて、以下の(11)式および(12)式のように表すと、以下の(13)式が成り立つ。
【0040】
【数5】
【0041】
ここで、以下の(14)式および(15)式によってα,γをそれぞれ規定すると、投影距離sに対する挙動は、これら2種類の装置固有の値α,γによって規定されることとなる。なお、例えば稼動ズーム機構をもつ場合には、α,γともにズームによって数値が異なることが考えるが、ここでは簡易化のため、中心ズームの値を用いて考えることとする。
【0042】
【数6】
【0043】
これらのことから、前述した手前側投影距離s1および奥側投影距離s2はそれぞれ、以下の(16)式および(17)式により表わされる。
【0044】
【数7】
【0045】
ここで、一般には、投影距離sは200mm以上であるのに対し、上記したαは、(投影横幅H:投影縦幅V)=16:9,スローレシオT=1.00,光変調素子21における対角方向のサイズ(インチ数)W’=0.2インチとしても、0.2程度であり、(2/α)=10と比べて十分に大きい。よって、s≫(2/α),s≫(1/α)と仮定することが可能である。これらのことを考慮すると、手前側投影距離s1および奥側投影距離s2はそれぞれ、以下の(18)式および(19)式のように表すことができる。
【0046】
【数8】
【0047】
ここで、αおよびγについては、掛け合わさっている項は同等であるが、αは2乗で効き、γは線形に影響が増すと言える。図4は、α2γの値を変化させた場合に、投影距離sの値に応じて手前側投影距離s1および奥側投影距離s2がどのように変化するのかを示す特性例を表したものである。
【0048】
この図4において、α2γの値が大きくなるのに応じて被写界深度が大きく(広く)なり(図4中の矢印G1,G2参照)、フォーカスの調整をしなくても済む範囲(実質的なフォーカス・フリー化が実現される範囲)が拡大しているのが分かる。なお、ここでは投影距離sは主点からの距離を考えているものの、鏡筒端から主点までの距離は、鏡筒端−投影像間の距離に比べればほとんど無視してもかまわないため、鏡筒端からの距離と考えても差し支えない。
【0049】
ここで、投影被写界内における手前側投影距離s1および奥側投影距離s2はそれぞれ、フォーカス(焦点)が合う投影インチサイズをWmin[inch],Wmax[inch]とすると、以下の(20)式および(21)式により表わされる。
【0050】
【数9】
【0051】
ここで、前述した(18)式および(19)式を、α2γについて解くと、以下の(22)式のようになる。このため、手前側投影距離s1および奥側投影距離s2の境界を達成することが可能なα2γは、以下の(23)式により表わされる。したがって、以下の(24)式が成り立たなければ、所望の範囲内におけるフォーカス・フリー化が実現されないことが分かる。
【0052】
【数10】
【0053】
ここで、許容錯乱円ε[mm](直径)は、光変調素子21における画素210のサイズ(画素サイズ)d[mm]が2倍に広がってかぶるとボケ認識ができなくなるため、ε=(2.0×d)程度が限界であると考えられる。このとき、画素サイズdを、前述した光変調素子21における水平方向の画素数phを用いて表すと、以下の(25)式のようになる。このため、以下の条件式((26)式)が成り立つことになる。
【0054】
【数11】
【0055】
(条件式における各パラメータの範囲について)
ここで、投射型表示装置3における実用上使用範囲としては、例えば、投影像4における対角方向のサイズW=20〜50[inch]程度の範囲内において、フォーカス・フリー化が実現することが望ましいと言える。これは、この範囲よりも小さいサイズWでは投影自体のメリットが薄まってくることと、この範囲よりも大きいサイズWでの投影は、光量の観点から厳しくなってくることとに起因する。
【0056】
このことから、上記(26)式における(右辺)=0.015となり、以下の条件式((27)式)が成り立つことになる。
{(2F)/(W’Tph)}≧0.015 ……(27)
【0057】
ところで、投射レンズ23におけるFナンバーとしては、これまで説明した幾何的なFナンバー(ここではFナンバーF)を用いるのが基本であるものの、投射レンズ23における瞳光量分布(射出瞳内の光量分布)の影響で、実質的なFナンバーが増大して見えることがある。そこで以下では、このような実質的なFナンバーを、擬似FナンバーF’と定義して用いるものとする。
【0058】
図5は、この擬似FナンバーF’の定義について説明するための模式図であり、投射レンズ23における射出瞳内の光量分布の一例を示している。ここで、投射レンズ23における射出瞳半径をRとし、投射レンズ23における射出瞳内の光量分布において、半径方向に沿って射出瞳半径Rまで光量(図5中に示したφの領域内での光量)を積算して得られる積算光量をIとし、射出瞳内の光量分布において、その光量分布の重心Gを中心として半径方向に沿って所定の半径R’まで光量(図5中に示したF内の領域での光量)を積算して得られる積算光量をI’(=I/2)とする。このような射出瞳半径Rと、I’=I/2を満たす半径Rとを用いると、投射レンズ23における擬似FナンバーF’は、以下の(28)式により定義される。
F’={(2FR’)/R} ……(28)
【0059】
この擬似FナンバーF’は、簡易的に通常の幾何FナンバーFと同等の効果を与えることが、実験的に確認されている。図6(A),(B)は、その一例を示したものである。これらの図6(A),(B)はそれぞれ、例えば図7(A)〜(C)に示したような多種多様な光量分布(射出瞳内の光量分布)について、擬似FナンバーF’とその際のフォーカス距離(s2−s1)とを示したものである。図6(A),(B)ではそれぞれ、横軸が前述したα2γを示し、縦軸がフォーカス距離(s2−s1)を示している。これらの図6(A),(B)により、フォーカスの範囲(実質的なフォーカス・フリー化が実現される範囲)は、幾何的計算結果と略一致していることが確認できる。
【0060】
なお、図6(A)は、ε=2.0d,s=290mmとした場合の結果であり、計算値と実測値とが略一致している。ただし、フォーカスの範囲の見え方は主観的なものであり、より厳しく見ることも可能である。例えば、ε=1.0d程度で計算した値と実測値とが合うような厳しい目で見た場合、各フォーカス範囲でのシャープさが増加し、データプロジェクタ等の用途でも使用できるほど解像感が上がり、より望ましいと言える。図6(B)は、この場合(ε=1.0d,s=600mm)の結果に対応し、計算値と実測値とが略一致している。このことから、より望ましくはε=1.0dを使用してフォーカス範囲を規定するとよい。
【0061】
このように、これまでに説明してきたFナンバーFを擬似FナンバーF’に置換することで、照明分布が一様でない場合についても考慮することが可能となる。具体的には、前述した(27)式は、擬似FナンバーF’を用いて規定すると、以下の(29)式のようになる。すなわち、擬似FナンバーF’を用いた場合、この(29)式で規定される条件式を満たすようにすればよい。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.015 ……(29)
【0062】
ここで、例えば、光変調素子21における水平方向の画素数ph=640である場合、擬似FナンバーF’=2.0,スローレシオT=1.0,光変調素子21における対角方向のサイズW’=0.2[inch]とすると、上記(29)式における(左辺)=0.031となる。すなわち、この(29)式で規定される条件を満たすことになり、上記した対角方向のサイズW=20〜50[inch]程度の範囲内において、フォーカス・フリー化が実現されることとなる。
【0063】
ここで、フォーカス度合に影響を及ぼすパラメータは、スローレシオT,光変調素子21における対角方向のサイズW’,光変調素子21における水平方向の画素数phである。これらのパラメータは、(27)式および(29)式中の分母にあり、影響が大きいためである。
【0064】
ところで、小型化を目的とした投射型表示装置3の場合、光変調素子21における対角方向のサイズW’[inch]については、以下の(30)式が成り立つ程度の大きさであることが多いため、(27)式および(29)式における左辺が大きくなり易いというメリットがある。このことから、本実施の形態の投射型表示装置3では、(27)式および(30)式の双方、あるいは、(29)式および(30)式の双方を満たすように設定されている。
W’≦0.5 ……(30)
【0065】
ただし、(27)式または(29)式を満たす(実質的なフォーカス・フリー化を実現する)には、対角方向のサイズW’[inch]を更に小さくし、FナンバーF(擬似FナンバーF’)を大きくし、スローレシオTを小さくすることが望ましい。
【0066】
ここで、これらのパラメータのうち、スローレシオTについては、投射レンズ23の設計に依存しており、コストを十分に低減するには0.8≦T程度が限界であると考えられる。また、光変調素子21における対角方向のサイズW’[inch]の限界値は、この光変調素子21における耐光性および製造プロセスに大きく依存する。特に、光変調素子21として有機配向膜を有する液晶素子を用いた場合において、液晶面に青色レーザ光が照明される場合には、耐光性の観点からW’を小さくすることが困難となる。このため、フォーカス・フリー化を実現しつつ、映像光の明るさ(投影像4の明るさ)を向上させるには、光変調素子21として、無機配向膜を有する液晶素子、あるいはDMDを用いるのが望ましいと言える。これらの無機配向膜を有する液晶素子およびDMDのうちでは、高画質化の観点からは、前者のほうが特にプロセス上適していると言える。
【0067】
また、光変調素子21における対角方向のサイズW’[inch]を小さくするには、照明効率の観点からは、予め指向性の強い光を用いなければ収集光率が悪化する。このため、投射型表示装置3内の光源部としては、本実施の形態のように、レーザ光源(ここでは、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11B)を含むようにすることが望ましいと言える。
【0068】
このように、実質的なフォーカス・フリー化を実現するには、投射型表示装置3内の光学系の要素や仕様のみではなく、各デバイスの種類をも制約することになる。例えば、投射レンズ23からスクリーン30へ向けて投射される光(映像光)の光束が30[lm]程度以上である投射型表示装置3では、光変調素子21における水平方向の画素数ph≧1000を満たして高画質化を実現したうえで、実質的なフォーカス・フリー化を実現するには、以下の条件を満たすのが望ましい。すなわち、対角方向のサイズW’=0.2[inch]程度である光変調素子21(無機配向膜を有する液晶素子)を用いると共に、スローレシオT=1.0程度の広角設計をしたうえで、更に光学系では、投射レンズ23のFナンバーF(擬似FナンバーF’)≧2.0程度とするのが望ましい。
【0069】
ところで、実質的なフォーカス・フリー化を実現するには、投影像4の大きさ(インチ数)だけでなく、投影距離sについても重要である。すなわち、手前側投影距離s1および奥側投影距離s2についても、投射型表示装置3における明るさや使用用途の観点からは、所定の範囲内であることが望ましい。この意味では、スローレシオTの値が小さいほど、フォーカス・フリー化を実現し易いと言える。例えば、投影距離s=50[inch]として、奥側投影距離s2=1500[mm]程度であると、様々な場面での使用が容易になるうえ、前述した小型化を目的とした投射型表示装置3における使用範囲として適正である。この場合、スローレシオTの範囲としては、T<1.36程度となる。
【0070】
また、投射レンズ23のFナンバーF(擬似FナンバーF’)の値については、大きければ大きいほど、焦点深度は広くなる。ところが、このFナンバーF(擬似FナンバーF’)の値が大きくなると、それに応じて投射型表示装置3のサイズが大型化するか、あるいはインテグレータ(ここではフライアイレンズ17)の密度が増大し、加工ロスが増大するおそれがある。このため、FナンバーF≦3.0(擬似FナンバーF’≦10.0)程度であるのが望ましいと言える。
【0071】
ここで、この場合、擬似FナンバーF’に対して投射レンズ23のFナンバーF(幾何Fナンバー)はなるべく小さいほうが、ビネッティングによる光量ロスを抑えることができ、より望ましいと言える。一方で、このFナンバーF(幾何Fナンバー)の値があまりにも小さい場合、投射レンズ23におけるレンズ鏡筒サイズが無駄に大きくなってしまう。そこで、おおよその目安として、以下の(31)式を満たすようにするのが望ましいことが、実験的に判明している。
0.4≦(F/F’)≦0.8 ……(31)
【0072】
ここで、これまでの説明では、投影像4における対角方向のサイズW=20〜50[inch]程度の範囲であるものとしたが、ユーザにおける利便性を更に向上させる(より使用し易くする)には、以下の範囲とすることも考えられる。すなわち、対角方向のサイズW=20〜70[inch]程度、あるいは、W=15〜70[inch]程度とすることが考えられる。また、小型化を目的とした投射型表示装置3における投影距離sの範囲は、投射レンズ23の設計の難易度から下限値が10インチ程度である一方、投影サイズがあまりにも大きいと実用的ではないことから上限値は100インチ程度である。これらの場合、前述した(26)式における(右辺)の値はそれぞれ、以下のようになる。
・W=20〜70[inch]の場合: (右辺)=0.018
・W=15〜70[inch]の場合: (右辺)=0.026
・W=10〜100[inch]の場合:(右辺)=0.045
【0073】
すなわち、これらの場合には、擬似FナンバーF’を用いて規定すると、以下の(32)式、(33)式または(34)式を満たすようにするのが望ましいと言える。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.018 ……(32)
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.026 ……(33)
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.045 ……(34)
【0074】
ここで、前述したように、光変調素子21における水平方向の画素数ph=640,擬似FナンバーF’=2.0,スローレシオT=1.0,光変調素子21における対角方向のサイズW’=0.2[inch]であるときには、W=15〜70[inch]の場合において、実質的なフォーカス・フリー化が実現されることが分かる。ただし、この場合の高画質化条件は厳しく、光変調素子21における水平方向の画素数ph=1280の場合、擬似FナンバーF’=3.3,スローレシオT=1.0,光変調素子21における対角方向のサイズW’=0.2[inch]の条件でようやく成り立つことになる。なお、この場合には光学系条件が厳しくなり、小型化に不利なことが容易に想定される。
【0075】
[投射型表示装置3の作用・効果]
この投射型表示装置3では、図1に示したように、まず照明装置1において、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bからそれぞれ出射された光(レーザ光)が、レンズ12R,12G,12Bによってそれぞれコリメートされ、平行光となる。次いで、このようにして平行光とされた各レーザ光(赤色レーザ光、緑色レーザ光および青色レーザ光)は、ダイクロイックプリズム131,132によって色合成(光路合成)がなされる。光路合成がなされた各レーザ光は、光学素子14を通過したのち、コリメータレンズ16によってコリメートされて平行光となり、フライアイレンズ17へ入射する。この入射光は、フライアイレンズ17によって均一化(面内の強度分布の均一化)がなされて出射したのち、コンデンサレンズ18によって集光される。このようにして、照明装置1から照明光が出射される。
【0076】
次いで、この照明光は、偏光ビームスプリッタ22によって選択的に反射され、光変調素子21へ入射する。光変調素子21では、この入射光が映像信号に基づいて変調されつつ反射されることにより、映像光として出射する。ここで、この光変調素子21では、入射時と出射時とにおける各偏光が異なるものとなるため、光変調素子21から出射した映像光は選択的に偏光ビームスプリッタ22を透過し、投射レンズ23へと入射する。そして、この入射光(映像光)は、投射レンズ23によって、スクリーン30に対して投射(拡大投射)される。
【0077】
この際、赤色レーザ11R、緑色レーザ11Gおよび青色レーザ11Bはそれぞれ、例えば図2に示したように、所定の発光周波数f1(=f1r,f1g,f1b)による間欠的な発光動作を行う。これにより、各レーザ光(赤色レーザ光,緑色レーザ光,青色レーザ光)が、時分割的に順次出射される。そして、光変調素子21では、各色成分(赤色成分、緑色成分、青色成分)の映像信号に基づいて、対応する色のレーザ光が時分割的に順次変調される。このようにして、映像信号に基づくカラー映像表示が投射型表示装置3においてなされる。
【0078】
ここで、本実施の形態の投射型表示装置3では、上記(27)式および(30)式の双方、あるいは、(29)式および(30)式の双方を満たすことにより、装置内にAF機構等を内蔵することなく、被写界深度が広くなって実質的なフォーカス・フリー化が実現される。
【0079】
以上のように本実施の形態では、上記(27)式および(30)式の双方、あるいは、(29)式および(30)式の双方を満たすようにしたので、装置内にAF機構(物理的なAF機構)等を内蔵することなく、実質的なフォーカス・フリー化を実現することができる。よって、小型化(軽量化,低コスト化)を図りつつ、ユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0080】
また、深さのある立体物の投影も容易に行うことができ、ユーザ・インターフェース面での改善を図ることも可能となる。
【0081】
なお、これまで説明した擬似FナンバーF’は、投射レンズ23における射出瞳内の光量分布(プロファイル)の形状に応じて、縦方向、横方向あるいは斜め方向に沿った値が異なることがある。この場合でも各方向に沿った擬似FナンバーF’の値が変化すると、その方向に応じた解像度のフォーカス深度が変わることとなる。一般的には、投影像は縦方向および横方向とも同等のフォーカス範囲とすることが望ましいため、ビームプロファイルは円形とするのが望ましい。ただし、擬似FナンバーF’の値が方向によって異なっている場合でも、いずれかの一方向について本実施の形態で説明した条件を満たすようにすれば、その方向でのフォーカス範囲を保つことが可能となる。
【0082】
また、フォーカス深度の実際の幅は、画面の像高が高い部分(画面の端など)等において、これまで説明した値よりも低下することがある。これは、高い像高ほど収差低減がなされづらいためであるが、本実施の形態において説明した範囲によっておおよそのフォーカス深度を見極めることは可能であり、また推定フォーカス深度が最大になると言える。
【0083】
<変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例について説明する。なお、実施の形態と同一の構成要素については同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0084】
図8は、変形例に係る光変調素子21の平面構成例を模式的に表したものである。ここで、上記実施の形態の光変調素子21では、例えば図2に示したように、各画素210の平面形状が正方形となっている。そして、上記実施の形態では、水平方向(横方向)および垂直方向(縦方向)のうちの少なくとも一方について、前述した(27)式および(30)式の双方、あるいは、(29)式および(30)式の双方を満たすように設定されている。
【0085】
これに対して本変形例の光変調素子21では、例えば図8に示したように、各画素210の平面形状が長方形(ここでは、垂直方向が長軸方向であり、水平方向が短軸方向)となっている。そして、本変形例では、各画素210の短軸方向(ここでは垂直方向)について、前述した(27)式および(30)式の双方、あるいは、(29)式および(30)式の双方を満たすように設定されている。
【0086】
このように構成することにより、本変形例においても上記実施の形態と同様の効果を得ることが可能である。すなわち、装置内にAF機構等を内蔵することなく、実質的なフォーカス・フリー化を実現することができ、小型化(軽量化,低コスト化)を図りつつユーザの利便性を向上させることが可能となる。
【0087】
<その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示の技術を説明したが、本技術はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0088】
例えば、上記実施の形態等では、光学素子14の一例として、プリズムアレイ、回折素子、レンズおよびレンズアレイを挙げて説明したが、これら以外の他の光学素子を用いてもよい。同様に、インテグレータとして、上記実施の形態等で説明したフライアイレンズ17以外の光学部材(例えば、ロッドインテグレータなど)を用いてもよい。
【0089】
また、上記実施の形態等では、複数種類(赤色用,緑色用,青色用)の光源がいずれもレーザ光源である場合について説明したが、この場合には限られない。すなわち、例えば、複数種類の光源のうちの少なくとも1つがレーザ光源である(光源部内に、レーザ光源と他の光源(例えばLED(Light Emitting Diode)等)とを組み合わせて設ける)ようにしてもよい。また、光源部内にレーザ光源が含まれない(LED等の他の光源だけが設けられている)ようにしてもよい。
【0090】
更に、上記実施の形態等では、異なる波長の光を発する3種類の光源を用いた場合について説明したが、例えば3種類の光源ではなく、1種類や2種類,4種類以上の光源を用いるようにしてもよい。
【0091】
加えて、上記実施の形態等では、照明装置および表示装置の各構成要素(光学系)を具体的に挙げて説明したが、全ての構成要素を備える必要はなく、また、他の構成要素を更に備えていてもよい。具体的には、例えばダイクロイックプリズム131,132の代わりに、ダイクロイックミラーを設けるようにしてもよい。
【0092】
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
<1>
光源部と、
前記光源部から出射された光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調された光を被投射面に対して投射する投射レンズと
を備え、
以下の[1]式および[2]式を満たす
投射型表示装置。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.015 ……[1]
W’≦0.5 ……[2]
但し、
F: 前記投射レンズのFナンバー
W’: 前記光変調素子における対角方向のサイズ(インチ数)
ph: 前記光変調素子における一辺方向の画素数
T: 装置自身のスローレシオ(=投影距離s/前記被投射面上における投影像の前記一辺方向の距離L)
R: 前記投射レンズにおける射出瞳半径
I: 前記投射レンズにおける射出瞳内の光量分布において、半径方向に沿って前記射出瞳半径Rまで光量を積算して得られる積算光量
I’(=I/2): 前記射出瞳内の光量分布において、その光量分布の重心を中心として半径方向に沿って所定の半径R’まで光量を積算して得られる積算光量
<2>
T<1.36を満たす
上記<1>に記載の投射型表示装置。
<3>
前記投射レンズにおける擬似FナンバーをF’(={(2FR’)/R})としたとき、
0.4≦(F/F’)≦0.8を満たす
上記<1>または<2>に記載の投射型表示装置。
<4>
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.018を満たす
上記<1>ないし<3>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<5>
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.026を満たす
上記<4>に記載の投射型表示装置。
<6>
F’≦10.0を満たす
上記<1>ないし<5>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<7>
前記投射レンズから前記被投射面へ向けて投射される光の光束が、30[lm]以上である
上記<1>ないし<6>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<8>
前記[2]式および以下の[3]式を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
{(2F)/(W’Tph)}≧0.015 ……[3]
<9>
前記光源部がレーザ光源を含む
上記<1>ないし<8>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<10>
前記光変調素子が、DMDまたは液晶素子からなる
上記<9>に記載の投射型表示装置。
<11>
前記光変調素子が、無機配向膜または有機配向膜を有する液晶素子からなると共に、ph≧1000を満たす
上記<10>に記載の投射型表示装置。
<12>
前記レーザ光源が、青色レーザである
上記<9>ないし<11>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<13>
前記光変調素子における各画素の平面形状が正方形であり、
前記一辺方向としての水平方向および垂直方向のうちの少なくとも一方について、前記[1]式および前記[2]式を満たす
上記<1>ないし<12>のいずれかに記載の投射型表示装置。
<14>
前記光変調素子における各画素の平面形状が長方形であり、
前記一辺方向としての各画素の短軸方向について、前記(1)式および前記(2)式を満たす
上記<1>ないし<12>のいずれかに記載の投射型表示装置。
【符号の説明】
【0093】
1…照明装置、11R…赤色レーザ、11G…緑色レーザ、11B…青色レーザ、12R,12G,12B…レンズ、131,132…ダイクロイックプリズム、14…光学素子、15…駆動部、16…コリメータレンズ、17…フライアイレンズ、18…コンデンサレンズ、21…光変調素子、210…画素、22…偏光ビームスプリッタ、23…投射レンズ、3…投射型表示装置、30…スクリーン、4…投影像、Z0…光軸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
前記光源部から出射された光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調された光を被投射面に対して投射する投射レンズと
を備え、
以下の(1)式および(2)式を満たす
投射型表示装置。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.015 ……(1)
W’≦0.5 ……(2)
但し、
F: 前記投射レンズのFナンバー
W’: 前記光変調素子における対角方向のサイズ(インチ数)
ph: 前記光変調素子における一辺方向の画素数
T: 装置自身のスローレシオ(=投影距離s/前記被投射面上における投影像の前記一辺方向の距離L)
R: 前記投射レンズにおける射出瞳半径
I: 前記投射レンズにおける射出瞳内の光量分布において、半径方向に沿って前記射出瞳半径Rまで光量を積算して得られる積算光量
I’(=I/2): 前記射出瞳内の光量分布において、その光量分布の重心を中心として半径方向に沿って所定の半径R’まで光量を積算して得られる積算光量
【請求項2】
T<1.36を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記投射レンズにおける擬似FナンバーをF’(={(2FR’)/R})としたとき、
0.4≦(F/F’)≦0.8を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.018を満たす
請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.026を満たす
請求項4に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
F’≦10.0を満たす
請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記投射レンズから前記被投射面へ向けて投射される光の光束が、30[lm]以上である
請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記(2)式および以下の(3)式を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
{(2F)/(W’Tph)}≧0.015 ……(3)
【請求項9】
前記光源部がレーザ光源を含む
請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項10】
前記光変調素子が、DMDまたは液晶素子からなる
請求項9に記載の投射型表示装置。
【請求項11】
前記光変調素子が、無機配向膜または有機配向膜を有する液晶素子からなると共に、ph≧1000を満たす
請求項10に記載の投射型表示装置。
【請求項12】
前記レーザ光源が、青色レーザである
請求項9に記載の投射型表示装置。
【請求項13】
前記光変調素子における各画素の平面形状が正方形であり、
前記一辺方向としての水平方向および垂直方向のうちの少なくとも一方について、前記(1)式および前記(2)式を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項14】
前記光変調素子における各画素の平面形状が長方形であり、
前記一辺方向としての各画素の短軸方向について、前記(1)式および前記(2)式を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項1】
光源部と、
前記光源部から出射された光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、
前記光変調素子により変調された光を被投射面に対して投射する投射レンズと
を備え、
以下の(1)式および(2)式を満たす
投射型表示装置。
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.015 ……(1)
W’≦0.5 ……(2)
但し、
F: 前記投射レンズのFナンバー
W’: 前記光変調素子における対角方向のサイズ(インチ数)
ph: 前記光変調素子における一辺方向の画素数
T: 装置自身のスローレシオ(=投影距離s/前記被投射面上における投影像の前記一辺方向の距離L)
R: 前記投射レンズにおける射出瞳半径
I: 前記投射レンズにおける射出瞳内の光量分布において、半径方向に沿って前記射出瞳半径Rまで光量を積算して得られる積算光量
I’(=I/2): 前記射出瞳内の光量分布において、その光量分布の重心を中心として半径方向に沿って所定の半径R’まで光量を積算して得られる積算光量
【請求項2】
T<1.36を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記投射レンズにおける擬似FナンバーをF’(={(2FR’)/R})としたとき、
0.4≦(F/F’)≦0.8を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項4】
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.018を満たす
請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
{(4FR’)/(W’TphR)}≧0.026を満たす
請求項4に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
F’≦10.0を満たす
請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項7】
前記投射レンズから前記被投射面へ向けて投射される光の光束が、30[lm]以上である
請求項3に記載の投射型表示装置。
【請求項8】
前記(2)式および以下の(3)式を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
{(2F)/(W’Tph)}≧0.015 ……(3)
【請求項9】
前記光源部がレーザ光源を含む
請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項10】
前記光変調素子が、DMDまたは液晶素子からなる
請求項9に記載の投射型表示装置。
【請求項11】
前記光変調素子が、無機配向膜または有機配向膜を有する液晶素子からなると共に、ph≧1000を満たす
請求項10に記載の投射型表示装置。
【請求項12】
前記レーザ光源が、青色レーザである
請求項9に記載の投射型表示装置。
【請求項13】
前記光変調素子における各画素の平面形状が正方形であり、
前記一辺方向としての水平方向および垂直方向のうちの少なくとも一方について、前記(1)式および前記(2)式を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項14】
前記光変調素子における各画素の平面形状が長方形であり、
前記一辺方向としての各画素の短軸方向について、前記(1)式および前記(2)式を満たす
請求項1に記載の投射型表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2013−92745(P2013−92745A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37017(P2012−37017)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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