説明

投影装置、投影方法及びプログラム

【課題】入力される画像の階調値における明るさを忠実に再現した光像を形成して投影する。
【解決手段】光源となるLEDアレイ17及びこれを駆動するRドライバ22,Gドライバ23及びBドライバ24と、光源からの光を用いて光像を形成し、形成した光像を投影する投影系13〜16,20,21と、投影系13〜16,20,21で表現し得る全階調値に対する明るさを測定する照度センサ26と、その測定結果に基づき、得られた明るさの順序に従って全階調値を記憶する階調記憶部15aと、階調記憶部15aで記憶される全階調値の記憶順序に従い、画像の階調値を書換えて投影系13〜16,20,21で投影させる投影画像処理部15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばLEDを光源とするプロジェクタ装置等に好適な投影装置、投影方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
LEDを光源とした投影装置など、瞬時点灯が可能で、温度により発光量が変化する光源を用いる場合、光源の出力を一定に保っても画像1フレーム分の期間内で光量が変化する。
【0003】
図6は、LEDを光源とするDLP(Digital Light Processing)(登録商標)方式のプロジェクタ装置で画像を投影する場合について説明する図である。図6(A)に示すようにカラー画像1フレーム分をR(赤色),G(緑色),B(青色)の3色のLEDの時分割点灯により各色成分毎の画像を形成して投影する場合、各色のLEDの点灯タイミング及び発光光量は図6(B)〜図6(D)に示すようになる。すなわち、R,G,Bの各点灯期間において各色のLEDは、期間の当初に高い光量で点灯を開始した直後から光量を低下させつつ、徐々に低下量を少なくして一定のレベルの光量を保つようになる。
【0004】
このような発光光量の特性下で、例えば光変調素子としてDMD(Digital Micromirror Device)(登録商標)を用いる場合の階調制御について図6(E)に示す。例えば量子化ビット数が8でR,G,Bの各色がそれぞれ256階調で表現される場合、光変調素子ではPWM(パルス幅変調)により当該期間中の投影光路への光の反射時間を制御することで階調表現を行なう。
【0005】
この場合、実際のプロジェクタ装置では、基本的なPWM制御に基づいて当該期間当初からの連続した反射時間を「1」階調から「255」階調までにより制御するのではなく、図6(E)に示すように対応する期間を8ビットの階調データの各ビットの位の長さに応じて分割し、8ビットの階調データ中で「1」に該当するタイミングで反射時間を制御するものとしている。
【0006】
例えば、階調データが「123(01111011)」であった場合、同図(E)中の「1(=2の[0]乗)」、「2(=2の[1]乗)」、「8(=2の[3]乗)」、「16(=2の[4]乗)」、「32(=2の[5]乗)」、「64(=2の[6]乗)」に対応する各タイミングで光変調素子の該当画素位置が「オン」となって、光源からの光を投影系に反射するように制御される。
【0007】
しかるに、光源光は上述した如く点灯期間の当初に特に光量が高くなるという特性を有するため、期間の先頭位置の最小ビット「1(=2の[0]乗)」側で点灯する階調値では期間全体で本来よりも明るい階調表現がなされるという不具合がある。
【0008】
図7は、上記LEDの点灯特性を考慮した、入力階調値に対応する変調光の光量の変化を示す。本来であれば、図中に点線で示す如く直線状のリニアな光量の変化が望ましい理想値Iに対し、上記LEDの点灯特性による実際の階調値Rは図中に実線で示すようになり、複数箇所で階調値が上がるにも拘わらず光量が低下する階調反転Xを生じる結果となる。
【0009】
例えば、図7において階調値が127から128にかけて光量が反転しているが、これは上述のように階調表現を8ビットで制御していることにより、127の階調値は点灯期間全体の前半部分を使って(01111111)のようにして作られる一方で128の階調値は点灯期間後半部分にかわり(10000000)のようにして作られるため、当該期間当初に高い光量で点灯する特性に起因して明るさの反転現象が起こっている。
【0010】
このような事態に対処する一方法として、1フレーム中で素子の極小ミラーがオン/オフする時間を補正のために調整する方法が考えられるが、時間の長さと総光量とが比例しないために、階調光量が想定値からずれてしまうという不具合がある。
【0011】
そのため、点灯パルス内の光量によりLED電流を変化させ、照明光量をできうる限り一定に制御する技術が考えられている。(例えば、特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−349731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記特許文献に記載された技術では、電流と温度に対する光量の記録や、速いタイミングでの電流値の変換制御等が必要となるために、駆動回路や記憶テーブル等の構成が複雑化する。
【0014】
また、電流を大きくすることで温度上昇が生じ、さらなる電流増加が必要となるという悪循環に陥る虞がある。
【0015】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、入力される画像の階調値を忠実に再現した光像を形成して投影することが可能な投影装置、投影方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1記載の発明は、所定期間における光量が一定でない光源と、当該光源からの光を所定の階調数に変調して射出する光変調手段と、上記所定の階調数における各階調値と、上記所定期間における上記光源から射出される各階調値毎の光の光量との関係を記憶した記憶手段と、当該記憶手段に記憶された上記関係に基づき、上記光変調手段で変調した光を画像光として投影する投影手段とを具備したことを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記記憶手段は、上記関係を、上記階調値の増加に伴って上記光量も増加するように対応付けた関係で記憶することを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、上記記憶手段は、上記光源からの光を、上記各階調値に対応した光量の理想値に近似した光量に上記光変調手段が変調するための階調値を記憶することを特徴とする。
【0019】
請求項4記載の発明は、上記請求項3記載の発明において、上記光変調手段は、1画像フレームを複数のサブフレームに分割して上記光源からの光を変調し、上記記憶手段は、上記光源からの光を上記各階調値に対応した光量の理想値に近似した光量に上記光変調手段が変調するための階調値を、当該複数のサブフレームごとに記憶することを特徴とする。
【0020】
請求項5記載の発明は、上記請求項3または4記載の発明において、上記理想値は、所定期間における光源の光量が一定である場合に当該光源から射出される各階調値ごとの光量の値であることを特徴とする。
【0021】
請求項6記載の発明は、上記請求項1乃至5いずれか記載の発明において、上記光変調手段で表現される上記各階調ごとの上記光源の光量を測定する測定手段をさらに具備したことを特徴とする。
【0022】
請求項7記載の発明は、所定期間における光量が一定でない光源と、上記光源からの光を所定の階調数に変調して射出する光変調部と、上記光変調部で変調した光を画像光として投影する投影部とを備えた装置での投影方法であって、上記所定の階調数における各階調値と、上記所定期間における上記光源から射出される各階調値毎の光の光量との関係を記憶する記憶工程と、当該記憶工程で記憶した上記関係に基づいて上記光変調部で変調させた光を上記投影部で画像光として投影させる投影制御工程とを有したことを特徴とする。
【0023】
請求項8記載の発明は、所定期間における光量が一定でない光源と、上記光源からの光を所定の階調数に変調して射出する光変調部と、上記光変調部で変調した光を画像光として投影する投影部とを備えた装置に内蔵されたコンピュータが実行するプログラムであって、上記所定の階調数における各階調値と、上記所定期間における上記光源から射出される各階調値毎の光の光量との関係を記憶する記憶ステップと、当該記憶ステップで記憶した上記関係に基づいて上記光変調部で変調させた光を上記投影部で画像光として投影させる投影制御ステップとをコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、入力される画像の階調値を忠実に再現した光像を形成して投影することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態に係るデータプロジェクタ装置の概略機能構成を示すブロック図。
【図2】同実施形態に係る階調補正動作の処理内容を示すフローチャート。
【図3】同実施形態に係る階調補正動作での測定結果と補正内容とを例示する図。
【図4】同実施形態に係る他の動作例1での測定結果を例示する図。
【図5】同実施形態に係る他の動作例2での測定結果と補正内容とを例示する図。
【図6】LEDを光源とするDLPプロジェクタ装置で画像を投影する場合について説明する図。
【図7】図6のLED光源で等される画像の階調値と変調光の光量との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下本発明をデータプロジェクタ装置に適用した場合の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0027】
(一実施形態の構成)
図1は、同実施形態に係るデータプロジェクタ装置10が備える電子回路の概略機能構成を示すブロック図である。
11は入出力コネクタ部であり、例えばピンジャック(RCA)タイプのビデオ入力端子、D−sub15タイプのRGB入力端子、及びUSB(Universal Serial Bus)コネクタを含む。
【0028】
入出力コネクタ部11より入力される各種規格の画像信号は、入出力インタフェース(I/F)12、システムバスSBを介し、一般にスケーラとも称される画像変換部13に入力される。画像変換部13は、入力された画像信号を投影に適した所定のフォーマットの画像信号に統一し、適宜表示用のバッファメモリであるビデオRAM14に記憶した後に、投影画像処理部15へ送る。
【0029】
この際、OSD(On Screen Display)用の各種動作状態を示すシンボル等のデータも必要に応じてビデオRAM14で画像信号に重畳加工され、加工後の画像信号が投影画像処理部15へ送られる。
【0030】
投影画像処理部15は、送られてきた画像信号に応じて、所定のフォーマットに従ったフレームレート、例えば30[フレーム/秒]と色成分の分割数、及び表示階調数を乗算した、より高速な時分割駆動により、空間的光変調素子(SOM)であるマイクロミラー素子16を表示駆動する。
【0031】
このマイクロミラー素子16は、アレイ状に配列された複数、例えばXGA(横1024×縦768ドット)分の微小ミラーの各傾斜角度を個々に高速でオン/オフ動作することでその反射光により光像を形成する。
【0032】
一方で、本データプロジェクタ装置10の光源として、LEDアレイ17を用いる。このLEDアレイ17は、RGBの各色で発光する多数のLEDが規則的に混在するようにアレイ配置して構成されるもので、その各色成分毎の時分割による発光が、内面全面に反射ミラーを貼設した角錐台状のハウジング18により集光され、インテグレータ19で輝度分布が均一な光束とされた後に、ミラー20で全反射して上記マイクロミラー素子16に照射される。
【0033】
そして、マイクロミラー素子16での反射光で光像が形成され、形成された光像が投影レンズユニット21を介して、投影対象となるここでは図示しないスクリーンに投影表示される。
【0034】
上記LEDアレイ17は、Rドライバ22、Gドライバ23、及びBドライバ24によりそれぞれ対応する色のLED群が駆動制御され、RGBの各原色が時分割で発光する。
【0035】
上記Rドライバ22、Gドライバ23、及びBドライバ24は、投影光処理部25からの制御信号に基づいたタイミング及び駆動電流でLEDアレイ17を構成する個々の色成分のLED群を駆動する。
【0036】
投影光処理部25は、投影画像処理部15から与えられる画像データに応じて上記Rドライバ22、Gドライバ23、及びBドライバ24による発光タイミングと駆動電流とを制御する。さらに投影光処理部25は、マイクロミラー素子16で形成される光像の輝度を検出する照度センサ26から検出信号を受信する。
【0037】
上記各回路の動作すべてをCPU27が制御する。このCPU27は、DRAMで構成されたメインメモリ28、及び動作プログラムや各種定型データ等を記憶した電気的書換可能な不揮発性メモリでなるプログラムメモリ29を用いてこのデータプロジェクタ装置10内の制御動作を実行する。
【0038】
上記CPU27は、操作部30からのキー操作信号に応じて各種投影動作を実行する。この操作部30は、データプロジェクタ装置10の本体に設けられるキー操作部と、このデータプロジェクタ装置10専用の図示しないリモートコントローラからの赤外光を受信するレーザ受光部を含み、ユーザが直接またはリモートコントローラを介して操作したキーに基づくキー操作信号をCPU27へ直接出力する。
【0039】
上記CPU27はさらに、上記システムバスSBを介して音声処理部31、及び無線LANインターフェイス(I/F)32と接続される。
【0040】
音声処理部31は、PCM音源等の音源回路を備え、投影動作時に与えられる音声データをアナログ化し、スピーカ部33を駆動して拡声放音させ、あるいは必要によりビープ音等を発生させる。
【0041】
無線LANインターフェイス32は、無線LANアンテナ34を介し、例えばIEEE802.11b/g規格に則って2.4[GHz]帯の電波でパーソナルコンピュータを含む複数の外部機器とのデータの送受を行なう。
【0042】
なお、投影画像処理部15には、後述する階調補正処理で得られた階調補正用のデータを記憶する階調記憶部15aを備える。この階調記憶部15aは、R,G,B毎に、入力される階調データと上記照度センサ26で検出した輝度値、及び出力する階調データとを対応付けて記憶する。
【0043】
この階調記憶部15aの記憶内容は、データプロジェクタ装置10の工場出荷前に予め製品テストとしてデータプロジェクタ装置10個体の固有値として設定可能であると共に、ユーザが製品購入後に任意のタイミングで更新記憶させることが可能であるものとする。さらには、このデータプロジェクタ装置10の電源投入時に初期設定として必ず階調記憶部15aの記憶内容を更新記憶させるものとしてもよい。
【0044】
(一実施形態の動作)
次に上記実施形態の動作について説明する。
図2は、投影画像処理部15の階調記憶部15aが記憶する階調補正データの内容を更新する場合の処理内容を示すものである。同図の動作は、基本的にプログラムメモリ29に記憶される動作プログラムをメインメモリ28に読出して展開記憶させた上でCPU27が実行する。
【0045】
その動作当初には、初期設定としてRドライバ22、Gドライバ23、及びBドライバ24を選択するための変数cに初期値「1」を設定すると共に(ステップS101)、階調値を示す変数gdに初期値「1」を設定する(ステップS102)。
【0046】
なお、本来、このデータプロジェクタ装置10で取扱う階調値の最小値は「0」であるが、この階調値「0」はマイクロミラー素子16で光源側からの光を全て遮蔽して投影レンズユニット21側へは反射しない状態を示すものとして、マイクロミラー素子16での明るさを測定する必要がないものとして、あえて階調値「0」の測定を行なう動作は省略している。
【0047】
しかして、上記変数cの値「1」及び変数gdの値「1」により、Rドライバ22により赤色の光源を点灯させた上で、マイクロミラー素子16で画面前面が階調値「1」となるような光像を形成して投影レンズユニット21で投影させ、その時点でのマイクロミラー素子16での明るさを照度センサ26で検出して投影画像処理部15の階調記憶部15aに記憶させる(ステップS103)。
このステップS103での動作は、画像1フレームを構成するR,G,Bの各フィールド(ここではRフィールド)に同期して実行する。
【0048】
その後、変数cの値がB(青色)を示す「3」ではないことを確認した上で(ステップS104)、変数cの値を「+1」更新設定し(ステップS105)、再び上記ステップS103からの処理に戻る。
【0049】
このステップS103では、変数cの値「2」及び変数gdの値「1」により、Gドライバ23により緑色の光源で階調値「1」の光像の明るさを検出して階調記憶部15aに記憶させる。
【0050】
さらに上記ステップS104を介してステップS105で変数cの値を「+1」更新設定して「3」とし、再び上記ステップS103で今度は変数cの値「3」及び変数gdの値「1」により、Bドライバ23により緑色の光源で階調値「1」の光像の明るさを検出して階調記憶部15aに記憶させる。
【0051】
続くステップS104で変数cの値が「3」であると判断すると、以上で階調値「1」でのR,G,B各色の光像の明るさの測定を終えたものとして、次に階調値を示す変数gdが最終値「256」ではないことを確認した上で(ステップS106)、再び変数cに初期値「1」を設定すると共に(ステップS107)、階調値を示す変数gdを「+1」更新設定して「2」とし(ステップS108)、上記ステップS103からの処理に戻る。
【0052】
こうしてステップS103〜S108の処理を適宜繰返し実行することにより、R,G,B各色光源下で与えられた階調値「1」〜「255」での明るさを順次測定していく。
【0053】
そして、画像255フレーム分の時間が経過し、R,G,B各色に対応する階調値「1」〜「255」での明るさの測定を終えると、上記ステップS104,S106を介した後に、階調記憶部15aに記憶している内容に基づき、各階調を測定した明るさの順序に従って並び替える変換データを作成する(ステップS109)。
【0054】
図3(A)は、上記測定により得られた階調値「63」「64」での明るさR1が、本来の階調に沿った明るさI1とは異なり、本来の階調値が増えているにも拘わらず、実際の明るさが低下する反転現象を生じている状態を例示したものである。
【0055】
図3(B)は、上記図3(A)で示した階調値に対する明るさR1を、現実の制御内容に即してステップ状に変化するデジタル値の特性で示すものであり、図中にX1で示す部分が上記反転現象を生じている状態に該当する。
【0056】
したがって、上記ステップS109での並び替え処理により作成した変換データで、以後は階調値「63」を階調値「64」として、同じく階調値「64」を階調値「63」として取扱うものとすることで、図3(C)に示すように与えられる階調値に対応して明るさが自然に変化するような特性を持たせることができる。
【0057】
上記のような並び替え処理を実行し、与えられる階調値が増加するに連れて明るさが順次増加するような特性が得られるように、入力に対する出力を部分的に変換する変換データを作成すると、続いてその作成した変換データを階調記憶部15aに記憶するべく更新設定し(ステップS110)、以上で一旦この図2の処理を終了する。
【0058】
以後、再度この図2の処理を実行するまでの間は、階調記憶部15aの内容が書き換えられることはなく、入力される階調値の増加に対して順次明るさが自然に増加するような階調値を読出し、その階調値に従ってマイクロミラー素子16を表示駆動するものとなる。
【0059】
以上詳記した如く本実施形態によれば、入力される画像の階調値に応じた自然な明るさの光像を形成して投影することが可能となる。
【0060】
(一実施形態の他の動作例1)
上記本実施形態の動作では、図2のステップS109で階調記憶部15aに記憶している内容に対し、各階調値を測定した明るさの順序に従って並び替えるような変換データを作成するものとして説明したが、他の動作例として、単に明るさが増加するように階調値を並び替えるだけではなく、その階調値の明るさが本来の理想の明るさとなるように近似させる場合についても説明する。
【0061】
図4(A)は、階調値に応じた理想的な明るさI2の特性に対し、実際に測定した明るさR2の特性が異なっている場合を例示する。
【0062】
図4(B)は、上記同図(A)で示した階調値に対する測定値での明るさR2、及び理想の明るさI2を、現実の制御内容に即してステップ状に変化するデジタル値の特性で示すものである。
【0063】
したがって、本実施形態の他の動作例では、上記ステップS109での処理内容に代えて、階調記憶部15aに記憶している内容に基づき、各階調が所望する明るさに近似した階調値となるような変換データを作成するものとする。
【0064】
作成する変換データとしては、例えば、変換前の階調値→変換後の階調値とすると、
0階調→0階調
1階調→0階調または1階調
2階調→1階調
3階調→1階調または2階調
4階調→2階調


となるような内容とすることで、与えられる階調値に対応してほぼ所望する明るさとなるような特性を持たせることができる。
【0065】
上記した如く、与えられる階調値に対応してほぼ所望する明るさとなるような特性が得られるように、階調値が反転している箇所だけでなく1〜255階調値全体に対して入力階調値に対する出力階調値を変換する変換データを作成すると、続くステップS110でその作成した変換データを階調記憶部15aに記憶するべく更新設定する。
【0066】
その後は、再度図2の処理を実行するまでの間に階調記憶部15aの内容が書き換えられることはなく、入力される階調値に対応してほぼ所望する明るさとなるような階調値を読出し、その階調値に従ってマイクロミラー素子16を表示駆動するものとなる。
【0067】
以上詳記した如く本実施形態によれば、入力される画像の階調値の明るさをほぼ忠実に再現した自然な明るさの光像を形成して投影することが可能となる。
【0068】
(一実施形態の他の動作例2)
さらに他の動作例として、各階調の明るさが理想の明るさに近似するように単に階調値を並び替えて変換データを作成するだけでなく、投影時に1フレーム分の画像データを複数のサブフレームに分割し、各サブフレームにおいてR,G,Bの各色画像を時分割で投影するものとして、1つの色画像を複数のフレームに分割して投影することで、各色画像毎に本来投影に適した各階調値における明るさが理想の明るさとなるようにさらに近似させる場合についても説明する。
【0069】
図5(A)は、階調値に応じた理想的な明るさI3の特性に対し、実際に測定した明るさR3の特性が異なっている場合をステップ状に変化するデジタル値の特性として示すものである。
【0070】
したがって、本実施形態の他の動作例2では、上記ステップS109での処理内容に代えて、階調記憶部15aに記憶している内容に基づき、複数に分割したサブフレームで必要により異なる階調を選択することにより、1フレーム全体では各階調が所望する明るさに非常に近似した階調値となるような変換データを作成するものとする。
【0071】
図5(B)は、1フレームを2つのサブフレームに分割した場合の変換データの内容の一部を例示するものである。
【0072】
例えば、階調値「3」を投影する際には、第1サブフレームで階調値「1」を、第2サブフレームで階調値「2」を選択することにより、1フレーム全体では階調値「1」と階調値「2」の中間の階調値となる明るさで投影が実行されることとなり、結果としては、与えられた階調値「3」における理想の明るさに非常に近似したほぼ所望する明るさとなるような特性を持たせることができる。
【0073】
上記した如く、与えられる階調値に対応してほぼ所望する明るさとなるような特性が得られるように、入力階調値を複数のサブフレームに分割した各出力階調値に変換する変換データを作成すると、続くステップS110でその作成した変換データを階調記憶部15aに記憶するべく更新設定する。
【0074】
その後は、再度図2の処理を実行するまでの間に階調記憶部15aの内容が書き換えられることはなく、入力される階調値に対応してほぼ所望する明るさとなるような階調値を読出し、その階調値に従ってマイクロミラー素子16を表示駆動するものとなる。
【0075】
以上詳記した如く本実施形態によれば、入力される画像の階調値に対し、当該階調値の理想の明るさにより近似してほぼ忠実に再現した自然な明るさの光像を形成して投影することが可能となる。
【0076】
なお、上記図5(B)では、1フレームを2つのサブフレームに分割するものとして説明したが、本発明はこれに限らず、1フレームを3つ以上のサブフレームに分割して各サブフレームでの階調値を得るような変換データを作成するものとしてもよく、分割数が多い分だけ、さらに所望する階調値に近似した階調値を作成することが容易となる。
【0077】
また、上記実施形態は、R,G,Bの3色のLEDを時分割で発光駆動する光源を用いる場合について説明したが、本発明は光源の種類を限定するものではなく、他にも例えば白色LEDからの光源光をカラーホイールを用いて適宜着色する方式のもの、レーザ光を複数の蛍光体に選択的に照射することで励起光としてR,G,Bの発光を得る方式のものなど、各種方式の光源に対しても、同様に適用可能である。
【0078】
その他、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、上述した実施形態で実行される機能は可能な限り適宜組み合わせて実施しても良い。上述した実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件による適宜の組み合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、効果が得られるのであれば、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0079】
10…データプロジェクタ装置、11…入出力コネクタ部、12…入出力インタフェース(I/F)、13…画像変換部(スケーラ)、14…ビデオRAM、15…投影画像処理部、15a…階調記憶部、16…マイクロミラー素子(SOM)、17…LEDアレイ、18…ハウジング、19…インテグレータ、20…ミラー、21…投影レンズユニット、22…Rドライバ、23…Gドライバ、24…Bドライバ、25…投影光処理部、26…照度センサ、27…CPU、28…メインメモリ、29…プログラムメモリ、30…操作部、31…音声処理部、32…無線LANインターフェイス(I/F)、33…スピーカ部、34…無線LANアンテナ、SB…システムバス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定期間における光量が一定でない光源と、
当該光源からの光を所定の階調数に変調して射出する光変調手段と、
上記所定の階調数における各階調値と、上記所定期間における上記光源から射出される各階調値毎の光の光量との関係を記憶した記憶手段と、
当該記憶手段に記憶された上記関係に基づき、上記光変調手段で変調した光を画像光として投影する投影手段と
を具備したことを特徴とする投影装置。
【請求項2】
上記記憶手段は、上記関係を、上記階調値の増加に伴って上記光量も増加するように対応付けた関係で記憶することを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項3】
上記記憶手段は、上記光源からの光を、上記各階調値に対応した光量の理想値に近似した光量に上記光変調手段が変調するための階調値を記憶することを特徴とする請求項1記載の投影装置。
【請求項4】
上記光変調手段は、1画像フレームを複数のサブフレームに分割して上記光源からの光を変調し、
上記記憶手段は、上記光源からの光を上記各階調値に対応した光量の理想値に近似した光量に上記光変調手段が変調するための階調値を、当該複数のサブフレームごとに記憶する
ことを特徴とする請求項3記載の投影装置。
【請求項5】
上記理想値は、所定期間における光源の光量が一定である場合に当該光源から射出される各階調値ごとの光量の値であることを特徴とする請求項3または4記載の投影装置。
【請求項6】
上記光変調手段で表現される上記各階調ごとの上記光源の光量を測定する測定手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1乃至5いずれか記載の投影装置。
【請求項7】
所定期間における光量が一定でない光源と、上記光源からの光を所定の階調数に変調して射出する光変調部と、上記光変調部で変調した光を画像光として投影する投影部とを備えた装置での投影方法であって、
上記所定の階調数における各階調値と、上記所定期間における上記光源から射出される各階調値毎の光の光量との関係を記憶する記憶工程と、
当該記憶工程で記憶した上記関係に基づいて上記光変調部で変調させた光を上記投影部で画像光として投影させる投影制御工程と
を有したことを特徴とする投影方法。
【請求項8】
所定期間における光量が一定でない光源と、上記光源からの光を所定の階調数に変調して射出する光変調部と、上記光変調部で変調した光を画像光として投影する投影部とを備えた装置に内蔵されたコンピュータが実行するプログラムであって、
上記所定の階調数における各階調値と、上記所定期間における上記光源から射出される各階調値毎の光の光量との関係を記憶する記憶ステップと、
当該記憶ステップで記憶した上記関係に基づいて上記光変調部で変調させた光を上記投影部で画像光として投影させる投影制御ステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−92780(P2013−92780A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−263973(P2012−263973)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2008−254884(P2008−254884)の分割
【原出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】