説明

投影露光方法及び回路素子製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば半導体製造用のリソグラフィー工程で使用して好適な投影露光方法及び投影露光装置に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば半導体素子又は液晶基板等をリソグラフィー技術を用いて製造する工程において、回路パターン等のレチクルパターンを投影光学系を介して基板上に所定の倍率で転写する投影露光装置が使用されている。斯かる投影露光装置においては、転写対象となるパターンの線幅が例えば0.5μm以下ときわめて微細化している。このような微細な線幅のパターンを良好に結像するためには投影光学系の開口数(NA)を大きくする必要がある。また、レチクルとして近時は光の干渉効果を積極的に活用した所謂位相シフトレチクル等も使用されるようになっているが、このような位相シフトレチクルに対しては露光光のコヒーレンシィを高める必要がある。
【0003】図6は従来の投影露光装置の照明系の模式図であり、この図6において、2次光源としてのフライアイレンズ1から射出されてその射出面(レチクル側焦点面)近傍に配置された可変開口絞り2の開口部を通過した露光光は、アウトプットレンズ3により略々平行な光束に変換される。この略々平行な光束の内で可変視野絞りとしてのレチクルブラインド4の開口部を通過した光束が、リレーレンズ5及び主コンデンサレンズ6により略々平行で大口径の露光光ILに変換されてレチクル7をほぼ均一な照度で照明する。レチクル7のパターン形成面とレチクルブラインド4の開口部とは光学的に共役な位置関係にあり、レチクルブラインド4の開口部の形状を変えることにより、レチクル7上の照明領域の形状、大きさを任意に設定することができる。
【0004】そして、レチクル7のパターン形成面のパターンが投影レンズ8によりウェハ9の露光面に所定の倍率で転写される。投影レンズ8の瞳面P1には可変開口絞り10が配置されており、可変開口絞り2と可変開口絞り10とは光学的に共役な位置関係にある。
【0005】投影露光装置の照明系の特性を表す数値としては一般に、投影レンズの開口数NAと露光光のコヒーレンシィを表すσ値とが用いられる。図6を参照して開口数とσ値について説明するに、図6において、投影レンズ8の瞳面P1の可変開口絞り10により、投影レンズ8のレチクル7側からの光束が通過できる最大の角度θR 及び投影レンズ8からウェハ9側に落射する光束の最大の角度θW は所定の値に制限されている。投影レンズ8の開口数NAPLはsinθW であり、投影倍率を1/mとすると、sinθR =sinθW /mの関係にある。また、露光光ILがレチクル7に入射するときの最大の入射角をθILとすると、露光光ILを生成する照明系のσ値であるσILは次のように定義される。
【数1】σIL=sinθIL/sinθR=m・sinθIL/sinθW
【0006】一般に開口数NAが大きい程解像度は向上するが、焦点深度が浅くなる。一方、σ値が小さい程に露光光ILのコヒーレンシィが良くなるため、σ値が小さくなるとパターンのエッジが強調され、σ値が大きいとパターンのエッジがぼけるようになる。従って、パターンの結像特性は開口数NAとσ値とでほぼ決って来る。また、可変開口絞り2によりσ値が変化すると、投影レンズ8の瞳面P1における照度分布が変化する。
【0007】図7を参照して、図6の従来の投影露光装置でウェハ上にレチクルパターンを露光する場合のシーケンスにつき説明する。この場合、先ずステップ101において、オペレータはマニュアルで投影レンズ8の可変開口絞り10を操作して、投影レンズ8の開口数NAを転写対象のレチクル上の最小線幅を解像できる程度の値に設定する。次に、オペレータは可変開口絞り2を操作することにより、転写対象のレチクル7に合わせて照明系のσ値を設定した後に、転写対象のレチクルをレチクルホルダーにセットする(ステップ102)。
【0008】その後、複数枚のウェハに順次投影レンズ8を介してそのレチクルのマスクパターンを転写する(ステップ103)。そして、転写対象である次のレチクルの最適な開口数NA及び照明系のσ値が異なる場合には、オペレータはステップ104においてマニュアルで可変開口絞り10及び可変開口絞り2の調整を行う。その後、レチクルを交換した後に(ステップ105)、再び複数枚のウェハに対する露光処理が行われる(ステップ106)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、従来の投影露光装置においては開口数NA及びσ値の両パラメータは装置定数であるため、オペレータが一度マニュアルで設定を行うと一連の露光シーケンスの中でそれら両パラメータを変えることはできなかった。しかしながら、最適な開口数NA及びσ値は、レチクル上の投影露光するパターンの最小線幅又はレチクル上のマスクパターンに対するウェハ上の転写パターンの寸法忠実度等の要求される結像性能によって異なるものである。
【0010】従って、例えば所謂特定用途向けIC(ASIC)を製造するような場合で、同一ウェハ上に最適な結像パラメータの値が異なる複数種類のデバイスチップのパターンを露光するような場合には、従来は途中でパラメータの値を変更することができないため、パラメータの値をそれら複数種類のパターンの内の或る特定のパターンのみに対する最適値に設定せざるを得なかった。これはその他のパターンは必ずしも最適な結像条件では露光されていなかったことを意味する。同様に、レチクル中に最適なパラメータの値が異なる複数のパターンが存在するような場合にも、従来はパラメータの値をその内の或る特定のパターンのみに対する最適値に設定せざるを得なかった。
【0011】本発明は斯かる点に鑑み、同一ウェハ上に開口数NA及びσ値等の結像パラメータの最適な値が異なる複数のデバイスチップを露光するような場合、又は最適パラメータが異なる複数のパターンが存在するレチクル上のそれら複数のパターンを同一ウェハ上に順次露光するような場合でも、全体として最適な結像特性を得ることができる投影露光方法提供することを目的とする。更に本発明は、その投影露光方法を用いた回路素子製造方法を提供することをも目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明による投影露光方法は、照明光学系を通してマスクに照明光を照射し、可変開口絞りを備えた投影光学系を介してその照明光で基板を露光する投影露光方法において、第1マスクパターンに応じて、その照明光学系中のマスクパターンのフーリエ変換面、又はその共役面もしくはその近傍の面内におけるその照明光の分布状態である照明条件を、その照明光学系内に回転自在に配置される可動部材を回転駆動せしめて第1照明条件に設定すると共に、その可変開口絞りを調整してその投影光学系の開口数を第1値に設定する第1工程と、その第1工程で設定されたその第1照明条件の下でその照明光をその第1マスクパターンに照射することにより、その第1マスクパターン及びその第1値の開口数に設定されたその投影光学系を介したその照明光で、所定の基板上の複数のショット領域のうちその第1マスクパターンで露光すべきショット領域を全て露光する第2工程と、その第2工程の後に、その所定の基板を交換することなく、使用するマスクパターンをその第1マスクパターンから第2マスクパターンへ切り換えると共に、その第2マスクパターンに応じて、その可動部材を回転駆動せしめてその照明条件を第2照明条件に設定し、且つその可変開口絞りを調整してその投影光学系の開口数を第2値に設定する第3工程と、その第3工程で設定されたその第2照明条件の下でその照明光をその第2マスクパターンに照射することにより、その第2マスクパターン及びその第2値の開口数に設定されたその投影光学系を介したその照明光で、その所定の基板上のその第1マスクパターンが露光されたショット領域を全て露光する第4工程と、を有するものである。そして、本発明の回路素子製造方法は、上記の本発明投影露光方法を用いて、回路パターンを基板上に転写するものである。
【0013】
【0014】
【作用】斯かる本発明によれば、それぞれ最適な結像パラメータが異なるパターンで基板を露光する際に、各パターンに最適の結像パラメータとなる照明条件を設定して露光を行うので、常に最適の結像条件で露光を行うことができる。また、第1のパターンを基板上の複数の転写領域に転写した後に、第2のパターンを基板上に転写するようにしているので、パターンの切り替え動作や照明条件の切り換え動作を最小限の回数に抑えることができ、スループットの向上も図れる。また、本発明によれば、例えば1個の基板としての感光基板上の異なる領域にそれぞれ最適な照明条件又は結像パラメータ(開口数NA、σ値)が異なる複数のマスクのパターン、又は複数のパターンを露光する場合には、先ず第1のマスク(又は第1のパターン、以下同様)の種類を判別して最適な結像パラメータの値を調べた後に、その第1のマスクをセットする。次に、照明系の開口絞り及び投影光学系の開口絞りを調整して、投影光学系の開口数NA及び照明系のσ値をその最適なパラメータの値に設定する。また、第1のマスクのパターン領域に応じて照明系の視野絞りを調整した後に、感光基板の第1の領域にその第1のマスクのパターンを例えばステップアンドリピート方式で露光する。
【0015】次に、第2のマスク(又は第2のパターン、以下同様)の種類を判別して最適な結像パラメータの値を調べた後に、その第2のマスクをセットする。そして、投影光学系の開口数NA及び照明系のσ値をその最適な結像パラメータの値に設定して、第2のマスクのパターン領域に応じて照明系の視野絞りを調整した後に、感光基板の第2の領域にその第2のマスクのパターンを例えばステップアンドリピート方式で露光する。このような工程を繰り返すことにより、最適なパラメータの値が異なる複数のマスクのパターン、又は複数のパターンをそれぞれ最適な結像条件で同一の感光基板の異なる領域に露光することができる。
【0016】また、1枚のマスク上にそれぞれ最適なパラメータが異なる複数のパターン領域が存在する場合には、先ずマスクの種類を判別してそれら複数のパターン領域の形状及び対応する最適な結像パラメータを調べる。そして、マスクをセットした後に、第1のパターンに対応させて照明系の視野絞り、投影光学系の開口数NA及び照明系のσ値を設定する。その後、ステップアンドリピート方式であれば、感光基板の第1のショット領域から順にその第1のパターンを露光する。次に、マスクの第2のパターンに対応させて照明系の視野絞り、投影光学系の開口数NA及び照明系のσ値を設定する。その後、ステップアンドリピート方式であれば、再び同一感光基板の第1のショット領域から順にその第2のパターンを露光する。このような工程を繰り返すことにより、同一の感光基板の同一のショット領域内に最適な結像パラメータの値が異なる複数のパターンをそれぞれ最適な結像条件で露光することができる。
【0017】
【実施例】以下、本発明の一実施例につき図1〜図5を参照して説明する。本例は図6の従来例と同様にステップアンドリピート方式の半導体素子製造用縮小投影露光装置に本発明を適用したものであり、その図1において図6に対応する部分には同一符号を付してその詳細説明を省略する。図1は本例の投影露光装置の全体の構成を示し、この図1において、レチクル7をレチクルホルダー11に保持し、レチクルホルダー11の近傍にバーコードリーダ12を配置する。レチクル7のパターン領域PAの外側にはそのレチクルの種類を表すバーコードBCが形成され、レチクル7をレチクルホルダー11にセットする際にバーコードリーダ12でそのバーコードBCを読み取ることにより、レチクル7の名称を判別することができる。詳しく述べると、後述の主制御装置35内には、この投影露光装置で扱うべき複数枚のレチクルの名称と、各名称に対応したステッパーの動作パラメータとが予め登録されている。そして、主制御装置35はバーコードリーダ12がバーコードBCを読み取ると、その名称に対応した動作パラメータの1つとして、予め登録されているレチクルに対する照明条件に関する情報に基づいて、後述の回転板21、レチクルブラインド4、及び可変開口絞り10,30を駆動することになる。以上の動作は、キーボードからオペレータがコマンドとデータとを主制御装置35へ直接入力することによっても実行できる。尚、上記情報はレチクルの種類やそのパターンの微細度、周期性等に対応している。
【0018】13はウェハホルダー、14はウェハステージを示し、ウェハステージ14は、投影レンズ8の光軸に垂直な2次元平面内で位置決めできるXYステージ、その光軸の方向に位置決めできるZステージ及びレベリングステージ等よりなる。ウェハステージ14のXYステージ及びZステージにはそれぞれ駆動機構及び座標測定機構が組み込まれている。そのウェハステージ14の上に順にウェハホルダー13及びウェハ9を載置する。
【0019】次に、本例のレチクル7を照明する露光光IL用の照明系の構成につき説明する。図1において、15はウェハ9上のレジスト層を感光させる波長帯の露光光ILを発生する露光用照明光源を示し、露光光ILとしては、水銀ランプの輝線(i線、j線等)、ArF,KrFエキシマレーザ等のレーザ光又は金属蒸気レーザ若しくはYAGレーザ等の高調波等を使用することができる。その露光光ILを楕円鏡16で反射して1度集束した後に、ミラー19で反射してインプットレンズ20に向ける。楕円鏡16とミラー19との間(楕円鏡16の第2焦点近傍)にはシャッター17を配置し、このシャッター17を駆動モータ18で回転することにより必要に応じて露光光ILを遮蔽する。
【0020】インプットレンズ20により略々平行光束に変換された露光光ILはオプティカルインテグレータとしてのフライアイレンズ1に入射する。このフライアイレンズ1の後(レチクル)側焦点面には、露光光ILのほぼ均一な2次光源像が形成される。この2次光源像が形成されている位置(すなわち照明光学系中のレチクルパターンのフリーエ変換面、又は共役面もしくはその近傍の面内)に回転板21を回転自在に取り付けて、回転板21を駆動モータ22により所定の回転位置に位置決めする。回転板21には、図2に示すように、例えば6種類の開口絞り23〜28を等角度間隔で形成する。これらの開口絞りの内で、円形開口絞り23及び24はそれぞれ異なる直径の通常の円形の開口部23a及び24aを有し、輪帯開口絞り25は輪帯状の開口部25aを有する。また、傾斜照明用の開口絞り26及び27はそれぞれ互いに直交する方向に配置された1対の微小開口部26a,26b及び27a,27bを有し、傾斜照明用の開口絞り28は光軸を中心として等距離に配置された4個の微小開口部28a〜28dを有する。例えば、開口絞り26,27,28を用いるときは各開口部からの照明光束のσ値が0.1〜0.3程度となるように設定することが望ましい。さらにレチクルパターンの微細度(ピッチ等)に応じて開口絞り26〜28の各々における各開口部の位置を微調整できるように構成しておくことが望ましい。また、開口絞り24〜28を用いるときはレチクルまたはウェハ上での照度均一性が悪くなり得るので、フライアイレンズ1の各エレメントを細かくする(断面積を小さくする)ことが望ましい。さらに別のインテグレータ(フライアイ型又はロッド型)を追加して2段のインテグレータ構造としても良い。また、開口絞り26〜28の使用時は光量ロスが大きいので、光ファイバー、多面プリズム等の光分割器を用いて、開口絞り上の各開口部に露光光を導くように構成しておくと良い。
【0021】図1のフライアイレンズ1による2次光源形成面には、一例として回転板21中の円形の開口部23aが配置されている。開口部23aは投影レンズ8の瞳面(フーリエ変換面)P1とほぼ共役である。開口部23aより射出された露光光ILはアウトプットレンズ3により略々平行光束に変換されて可変視野絞りとしてのレチクルブラインド4に入射する。レチクルブラインド4の開口部は、駆動手段29により任意の形状、大きさに設定することができる。レチクルブラインド4の開口部は、レチクル7のパターン領域PAとほぼ共役であり、レチクルブラインド4を出た露光光ILをリレーレンズ5で一度集束する。この集束面P2は回転板21の開口絞り面、すなわちフライアイレンズ1の射出面(レチクル側焦点面)とほぼ共役であり、面P2に露光光IL用の可変開口絞り30を配置し、駆動手段31によりその可変開口絞り30の円形開口部の直径を任意の値に設定する。尚、可変開口絞り30はフライアイレンズ1の射出面近傍に、回転板21と極近接して配置するようにしても良い。
【0022】可変開口絞り30を射出した露光光ILの主光線を主コンデンサレンズ6で略々平行光束に変換し、この主光線が略々平行な露光光ILをミラー32で反射してレチクル7に導く。レチクル7のパターン領域PAからレチクルブラインド4により選択された領域のパターンが、投影レンズ8によりウェハ9の一連のショット領域に露光される。また、投影レンズ8の瞳面P1の近傍に配置された可変開口絞り10の円形開口部の直径は、駆動手段33により任意の値に設定することができる。
【0023】34は露光コントローラ、35は装置全体の動作を制御する主制御装置を示し、露光コントローラ34は主制御装置35からの指示により、モータ22、駆動手段29、駆動手段31及び駆動手段33の動作を制御する。即ち、露光コントローラ34は、駆動手段33を介して可変開口絞り10の開口部の調整を行うことにより、投影レンズ8の開口数NAを所望の値に設定することができる。また、露光コントローラ34は、モータ22を介して回転板21の位置決めを行うか又は駆動手段31を介して可変開口絞り30の開口部の調整を行うかの何れの方法によっても、露光光IL用の照明系の開口数、ひいてはコヒーレンスファクターであるσ値を所望の値に設定することができる。
【0024】具体的に、レチクル7が通常のレチクルの場合にはσ値は例えば0.5〜0.6に設定され、レチクル7が位相シフトレチクルの場合にはσ値は例えば0.1〜0.4に設定される。更に、露光コントローラ34は、駆動手段29を介してレチクルブラインド4の開口部の形状、大きさを制御することにより、レチクル7のパターン領域PAの所望の部分にのみ露光光ILを照明することができる。
【0025】36は露光データファイルを示し、この露光データファイル36には種々のレチクルの名称に対応してパターン領域の形状及び最適な結像パラメータ等のデータが対応して記憶されている。最適な結像パラメータとしては、投影レンズの最適な開口数NA、照明系の最適なσ値の他に、例えばレチクルに対する照明条件(回転板21のどの開口絞りを使うか)等が記憶されている。更にレチクルのパターン領域PAに複数のそれぞれ最適な結像パラメータが異なるパターンが形成されている場合には、それら複数の領域の形状、大きさ及び各領域の最適な結像パラメータのデータがその露光データファイル36に記憶されている。その露光データファイル36をバスラインを介して主制御装置35と接続し、バーコードリーダ12をもバスラインを介して主制御装置35と接続する。主制御装置35は、バーコードリーダ12から送られて来るレチクル7のバーコードを用いて、露光データファイル36より露光対象としているレチクル7の最適な結像パラメータ等を認識することができ、この最適な結像パラメータ等の情報を露光コントローラ34に供給する。
【0026】次に、図1の投影露光装置の種々の露光動作につき説明する。
[第1の露光動作例]この例では、レチクル7上に第1の領域及び第2の領域よりなる2つの半導体チップ用のパターン領域があり、それぞれ最適な開口数NA及びσ値が異なる場合を扱う。図3を参照してこの場合の動作を説明する。先ず図3のステップ107において、レチクル7を図1のレチクルホルダー11にセットする。この際に、主制御装置35はバーコードリーダ12を介してレチクル7のバーコードBCを読み取り、レチクル7の名称を判別する。そして、主制御装置35は露光データファイル36のその判別した名称に対応する記憶領域を参照することにより、レチクル7の2つの領域の各々の最適な結像パラメータ及び2つの領域の形状、大きさを認識する。
【0027】その後、ステップ108において、主制御装置35は露光コントローラ34に露光対象としているレチクル7の第1の領域の最適な結像パラメータ及びその第1の領域の形状、大きさの情報を供給する。これに対応して、先ず露光コントローラ34は、レチクル7に対する照明条件を設定するため、モータ22を介して回転板21の中のレチクル7に合った開口絞りを選択して設定する。この選択基準の一例としては、特に微細パターンに対しては開口絞り26,27,28(この3つの使い分けはレチクルパターンの周期性に応じて選択すれば良い)を用い、線幅が厳しくないときは開口絞り23を用い、位相シフトレチクルには開口絞り24(又は開口絞り30を使用しても良い)を用いる。開口絞り26は例えばX方向に配列された周期パターン、開口絞り27はY方向に配列された周期パターン、開口絞り28は2次元パターンに対して有効である。また、第1の領域と第2の領域とで開口絞り23〜28を切り替えることなく、開口数NA及びσ値のを変更するだけでも良い。さらに、線幅に関係なく、第1の領域と第2の領域とでそのパターンの周期性が互いに直交していたら、開口絞り26,27を切り替えるようにしても良い。その後、露光コントローラ34は駆動手段33を介して投影レンズ8の可変開口絞り10を制御することにより、投影レンズ8の開口数NAを最適な値に設定する。そして、露光コントローラ34は、駆動手段31を介して可変開口絞り30を制御することにより、照明系のσ値を最適な値に設定する。次にステップ109において、露光コントローラ34は駆動手段29を介してレチクルブラインド4の開口部の形状をレチクル7の第1の領域の形状に合わせることにより、レチクルブラインド4の設定を行う。
【0028】そして、主制御装置35は、ウェハステージ14を駆動してウェハ9の今回の露光領域である指定ショット領域を投影レンズ8の光軸上にアライメントして(ステップ110)、レチクル7の第1の領域のパターンを投影レンズ8を介してウェハ9の指定ショット領域に露光する(ステップ111)。次にステップ112において、主制御装置35は予め記憶された露光シーケンスを調べることにより、レチクル7を交換するか否かを判定する。本例ではレチクル7を交換することなく、レチクル7の第2の領域のパターンを露光するので、動作はステップ113に移行し、主制御装置35は露光コントローラ34に露光対象としているレチクル7の第2の領域の最適な結像パラメータ及びその第2の領域の形状の情報を供給する。これに対応して、露光コントローラ34はモータ22を介して回転板21の中の所定の開口絞りを設定した後に、駆動手段33を介して投影レンズ8の開口数NAを最適な値に設定する。そして、露光コントローラ34は、駆動手段31を介して照明系のσ値を最適な値に設定する。
【0029】次にステップ114において、露光コントローラ34は駆動手段29を介してレチクルブラインド4の開口部の形状、大きさをレチクル7の第2の領域の形状、大きさに合わせることにより、レチクルブラインド4の設定を行う。この場合、ウェハ9の指定ショット領域は前回と同じであるため、ウェハ9のアライメントを行う必要はない。そこでステップ115において、主制御装置35は、レチクル7の第2の領域のパターンを投影レンズ8を介してウェハ9の前回と同じ指定ショット領域に露光する。その後ステップ116において、ウェハ9の全部のショット領域への露光が終了したかどうかが判断され、終了していない場合には動作はステップ112に移行する。終了している場合には動作はステップ117に移行する。
【0030】ステップ117において、露光工程が終了した場合には露光動作は終了するが、次のウェハに露光する場合には動作はステップ107に移行して同様に露光が行われる。このようにして、レチクル7上に複数のそれぞれ最適な結像パラメータが異なる領域が存在する場合でも、それぞれについて最適な結像条件で露光を行うことができる。尚、第1露光動作例ではウェハの1つ1つのショット領域に対して第1レチクル上の第1の領域と第2の領域のパターンを露光していったが(このとき第2の領域のパターンを露光する際にはショット毎にアライメントを行う必要がある)、ウェハ上の複数のショット領域のうち、第1レチクルの第1の領域のパターンを露光すべきショット領域の全てに対して第1の領域のパターンを露光した後で、レチクルブラインド4を駆動して先に第1の領域のパターンを露光した全てのショット領域に対して第2の領域のパターンを露光するようにしても良い。以下、同一ウェハ上で露光が行われていないショット領域については第2レチクル、第3レチクル、…を用いて上記と同様の動作で露光を行っていけば良い。
【0031】[第2露光動作例]本例では、特定用途向けIC(ASIC)の生産、画面合成又は小ロット生産時の危険分散等を目的として、1個のウェハ上に複数のレチクルを用いて複数種類の半導体チップを形成する場合で、且つそれぞれ最適な結像パラメータが異なる場合を扱う。この場合の動作も図3を参照して説明する。使用する複数のレチクルを第1のレチクル、第2のレチクル、‥‥とする。先ず、図3のステップ107において、第1のレチクルをレチクルホルダー11にセットする。この際に、主制御装置35はバーコードリーダ12を介して第1のレチクルのバーコードBCを読み取り、レチクルの名称を判別する。そして、主制御装置35は露光データファイル36のその判別した名称に対応する記憶領域を参照することにより、第1のレチクルのパターン領域の各々の最適な結像パラメータ及びパターン領域の形状、大きさを認識する。
【0032】その後、ステップ108において、主制御装置35は露光コントローラ34に露光対象としている第1のレチクル7の最適な結像パラメータ及びパターン領域の形状、大きさの情報を供給する。これに対応して、先ず露光コントローラ34は、レチクル7に対する照明条件を設定するため、モータ22を介して回転板21の中のレチクル7に合った開口絞り23〜28を選択して設定する。その後、露光コントローラ34は投影レンズ8の開口数NAを最適な値に設定すると共に、照明系のσ値を最適な値に設定する。次にステップ109において、露光コントローラ34はレチクルブラインド4の開口部の形状を第1のレチクルのパターン領域の形状に合わせることにより、レチクルブラインド4の設定を行う。
【0033】そして、主制御装置35は、ウェハステージ14を駆動してウェハ9の今回の露光領域である指定ショット領域を投影レンズ8の光軸上に設定し(ステップ110)、第1のレチクルのパターン領域のパターンを投影レンズ8を介してウェハ9の指定ショット領域に露光する。(ステップ111)。次にステップ112において、主制御装置35は予め記憶された露光シーケンスを調べることにより、第1のレチクルを交換するか否かを判定する。本例ではレチクルを交換するので動作はステップ118に移行し、主制御装置35はレチクルホルダー11に第2のレチクルをセットする。この際に主制御装置35はバーコードリーダ12を介して第2のレチクルの名称を調べ、露光データファイル36を参照して第2のレチクルの照明条件(最適な開口絞り23〜28の設定)、最適な結像パラメータの値及びパターン領域の形状等を認識する。
【0034】その後ステップ119において、主制御装置35は露光コントローラ34に露光対象としている第2のレチクルのパターン領域の最適な結像パラメータ及びそのパターン領域の輪郭の座標の情報を供給する。これに対応して、露光コントローラ34は、先ずモータ22を介して回転板21の中の開口絞り23〜28の中の第2のレチクルに適合する開口絞りを設定する。その後露光コントローラは、駆動手段33を介して投影レンズ8の開口数NAを最適な値に設定すると共に、照明系のσ値を最適な値に設定する。
【0035】次にステップ120において、露光コントローラ34は駆動手段29を介してレチクルブラインド4の開口部の形状を第2のレチクルのパターン領域の形状に合わせることにより、レチクルブランド4の設定を行う。その後ステップ121において、主制御装置35はウェハ9上の第2のレチクルを露光するための指定ショット領域を投影レンズ8の光軸上にアライメントする。そして、主制御装置35は、第2のレチクルのパターン領域のパターンを投影レンズ8を介してウェハ9の第2のレチクル用の指定ショット領域に露光させる。その後ステップ122において、ウェハ9の全部のショット領域への露光が終了したかどうかが判別され、終了していない場合には動作はステップ112に移行する。終了している場合には動作はステップ117に移行する。このような動作により、1個のウェハ上に複数のそれぞれ最適な結像パラメータが異なるレチクルのパターンを最適な結像条件で露光することができる。
【0036】[第3露光動作例]本例では、1個の半導体チップ内、即ち1個の露光用のレチクルパターン内にそれぞれ最適な結像パラメータの値が異なる複数種類の線幅のパターンが混在し、且つ第1露光動作例のようにレチクルブラインド4でレチクル7の露光視野を分割することが困難な場合を扱う。この場合には、元のレチクルのパターンを複数に分割する。そして、複数に分割されたパターンの各々を別々のレチクル又は同一のレチクル内の異なる領域に形成する。別々のレチクルに形成する場合には、図4(a)及び(b)に示すように、それぞれ最適な結像パラメータの値が異なるパターンが形成された複数のレチクル7A及び7Bを用意する。図4(a)及び(b)の斜線部の領域37はそれぞれクロム蒸着膜による遮光域であり、白抜き状に示す領域38はそれぞれ必要なパターンが描画されている領域である。従って、レチクル7Aとレチクル7Bとは遮光域37の位相が180°ずれている。
【0037】これら2枚のレチクル7A及び7Bを第2露光動作例と同様のシーケンスでウェハ上に露光する。第2露光動作例と異なる点は、ウェハ上の同一領域に異なる2個のレチクルのパターンが露光されることである。
【0038】[第4露光動作例]上記の第3露光動作例と同じ場合であるが、レチクル上の複数種の線幅が複雑に入り組んでいて、図4に示すような複数枚のレチクルで対応することが困難な場合を扱う。この場合には、図3R>3のステップ111において、ウェハの各ショット領域に露光する際に、投影レンズ8の開口数NA及び照明系のσ値を所定の範囲に亘って連続的に変化させることにより、最良ではないが次善の結像特性を得ることができる。その所定の範囲とは、例えばそのレチクル上の最も線幅の広いパターンの結像パラメータと最も線幅の狭い結像パラメータとの間である。
【0039】[第5露光動作例]本例では露光のための最適条件を求めるための所謂テストプリントを行う場合を扱う。従来はテストプリントとは、ステップアンドリピートでウェハの一連のショット領域にレチクルのパターンを露光する際に、ウェハ9の投影レンズ8の光軸方向の位置である焦点位置Z及び露光時間Tを各ショット露光毎に少しずつ変化させて露光することを意味する。
【0040】これに対して本例では、第1露光動作例と同様のシーケンスに従って、例えば図5(a)のマップに示されるように結像条件を種々に変えて露光を行う。ただし、本例ではレチクルブラインド4の開口部の形状に対応するレチクルブラインド4を変化させる必要はない。図5(a)において、39はウェハ上の1個の指定ショット領域を示し、指定ショット領域39と同様のショット領域が縦横に多数配置されており、各ショット領域にそれぞれ解像力テストパターンが露光される。結像条件は図5(a)の横方向に対して、ウェハの焦点位置Zが5個のショット領域毎に変化し、投影レンズの開口数NAが1個のショット領域毎に5個周期で変化する。また、図5(a)の縦方向に対して、露光時間Tが5個のショット領域毎に変化し、照明系のσ値が1個のショット領域毎に5個周期で変化する。
【0041】その外に、図5(b)のマップに示されるように結像条件を変えてもよい。結像条件は図5(b)の横方向に対して、投影レンズの開口数NAが5個のショット領域毎に変化し、ウェハの焦点位置Zが1個のショット領域毎に5個周期で変化する。また、図5(b)の縦方向に対して、照明系のσ値が5個のショット領域毎に変化し、露光時間Tが1個のショット領域毎に5個周期で変化する。図5に示すようなマップでテストプリントを行うことにより、開口数NA、σ値、焦点位置Z及び露光時間Tよりなる4個のパラメータでのテストプリントを行うことができる。なお、本発明は上述実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の構成を取り得ることは勿論である。
【0042】
【発明の効果】本発明によれば、マスクの種類に応じて照明系の視野絞り、照明系の開口絞り及び投影光学系の開口絞りの状態を設定しながら露光を行うことができる。従って、同一の感光基板上に最適な結像パラメータの値が異なる複数枚のマスクのパターンを順次露光する場合でも、又は最適な結像パラメータの値が異なる複数種類のパターンが同一面に形成されたマスクのパターンを感光基板に順次露光する場合でも、常に最適の結像条件で露光を行うことができる利点がある。更に、本発明によれば、第1のパターンを基板上の複数の転写領域に転写した後に、第2のパターンを基板上に転写するようにしているので、パターンの切り替え動作や照明条件の切り換え動作を最小限の回数に抑えることができ、スループットの向上も図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の投影露光装置の主要部を示す一部を断面とした構成図である。
【図2】図1中の回転板21を示す平面図である。
【図3】実施例の露光動作の一例を示す流れ図である。
【図4】実施例で使用するレチクルのパターンの変形例を示す平面図である。
【図5】実施例のテストプリントのマップの例を示す線図である。
【図6】従来の投影露光装置の照明系を簡略化して示す模式図である。
【図7】従来の投影露光装置の露光動作を示す流れ図である。
【符号の説明】
1 フライアイレンズ
3 アウトプットレンズ
6 主コンデンサレンズ
7 レチクル
8 投影レンズ
9 ウェハ
10 可変開口絞り
12 バーコードリーダ
14 ウェハステージ
17 シャッター
21 回転板
22 モータ
4 レチクルブラインド
29,31,33 駆動手段
30 可変開口絞り
34 露光コントローラ
35 主制御装置
36 露光データファイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 照明光学系を通してマスクに照明光を照射し、可変開口絞りを備えた投影光学系を介して前記照明光で基板を露光する投影露光方法において、第1マスクパターンに応じて、前記照明光学系中のマスクパターンのフーリエ変換面、又はその共役面もしくはその近傍の面内における前記照明光の分布状態である照明条件を、前記照明光学系内に回転自在に配置される可動部材を回転駆動せしめて第1照明条件に設定すると共に、前記可変開口絞りを調整して前記投影光学系の開口数を第1値に設定する第1工程と、前記第1工程で設定された前記第1照明条件の下で前記照明光を前記第1マスクパターンに照射することにより、前記第1マスクパターン及び前記第1値の開口数に設定された前記投影光学系を介した前記照明光で、所定の基板上の複数のショット領域のうち前記第1マスクパターンで露光すべきショット領域を全て露光する第2工程と、前記第2工程の後に、前記所定の基板を交換することなく、使用するマスクパターンを前記第1マスクパターンから第2マスクパターンへ切り換えると共に、前記第2マスクパターンに応じて、前記可動部材を回転駆動せしめて前記照明条件を第2照明条件に設定し、且つ前記可変開口絞りを調整して前記投影光学系の開口数を第2値に設定する第3工程と、前記第3工程で設定された前記第2照明条件の下で前記照明光を前記第2マスクパターンに照射することにより、前記第2マスクパターン及び前記第2値の開口数に設定された前記投影光学系を介した前記照明光で、前記所定の基板上の前記第1マスクパターンが露光されたショット領域を全て露光する第4工程と、を有することを特徴とする投影露光方法。
【請求項2】 前記可動部材は、互いに形状の異なる複数の開口絞りを備え、前記可動部材は、前記照明光学系の光路上に前記複数の開口絞りのうちの1つの開口絞りを配置せしめるように前記可動部材を回転駆動すると共に、前記第1マスクパターンと前記第2マスクパターンとで前記照明光学系の光路上に配置する開口絞りを異ならせることを特徴とする請求項1に記載の投影露光方法。
【請求項3】 前記複数の開口絞りは、前記照明光学系の光軸を中心として等距離に配置される複数の開口を備えた開口絞り、あるいは輪帯状の開口を備えた開口絞りを含むことを特徴とする請求項2に記載の投影露光方法。
【請求項4】 前記第1及び第2マスクパターンは同一のマスクに設けられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の投影露光方法。
【請求項5】 前記第1及び第2マスクパターンは異なるマスクに設けられ、該異なるマスクは位相シフトマスクを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の投影露光方法。
【請求項6】 請求項1〜5のいずれか一項に記載の投影露光方法を用いて、回路パターンを基板上に転写することを特徴とする回路素子製造方法。

【図2】
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【図4】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】特許第3391404号(P3391404)
【登録日】平成15年1月24日(2003.1.24)
【発行日】平成15年3月31日(2003.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−353754
【出願日】平成3年12月18日(1991.12.18)
【公開番号】特開平5−166694
【公開日】平成5年7月2日(1993.7.2)
【審査請求日】平成10年12月16日(1998.12.16)
【審判番号】不服2001−16002(P2001−16002/J1)
【審判請求日】平成13年9月6日(2001.9.6)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【合議体】
【参考文献】
【文献】特開 平3−85543(JP,A)
【文献】特開 平2−101731(JP,A)
【文献】特開 平1−283925(JP,A)
【文献】特開 昭62−171123(JP,A)
【文献】特開 平2−251127(JP,A)
【文献】実開 平3−25227(JP,U)
【文献】実開 昭61−151(JP,U)