説明

投票用紙自動交付機

【課題】間違った投票用紙の交付を防止できる投票用紙自動交付機を提供する。
【解決手段】投票用紙(p)を集積収納するホッパー41を設け、そのホッパー41最上部の投票用紙を給紙ローラ45で繰り出して投票用紙投出口48まで搬送し交付するよう構成する。そして、交付前に投票用紙を確認し、間違った投票用紙の場合に、非集計投出ボタンを押下することにより、ホッパー41最上部の間違った投票用紙を投票用紙投出口48まで搬送して、手で抜き取ることができる状態にするとともに、交付枚数としての集計はしないようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の選挙において所定の投票用紙を自動的に且つ次々に交付するための投票用紙自動交付機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ホッパーに集積収納された投票用紙を1枚ずつ繰り出して交付する投票用紙自動交付機が示されている。特許文献2にも同様の投票用紙交付機が示されている。
【0003】
図5に、上記特許文献1に示された従来の投票用紙自動交付機の本体構造を示す。この投票用紙自動交付機は、交付機本体と、別構造の操作盤とからなるもので、交付機本体は、箱型の本体ケース101と、前面カバー102と、前端側が本体ケース101に支持されて後端側から上下に開閉可能とされた透明体の上部カバー103とで構成されている。そして、本体ケース101の内部には、投票用紙を立てた状態で略水平方向前後に集積収納するホッパー104が配置されている。ホッパー104に収納された投票用紙(p)は、給紙ローラ105の回転により最前端のものから1枚ずつ繰り出され、投票用紙投出口106に投出される。
【0004】
従来の投票用紙自動交付機はこのような構成を有するものであって、ホッパー104上に立てた状態で略水平方向前後に集積収納された投票用紙pは、透明体の上部カバー103を通して視認することができる。
【0005】
選挙は、例えば、衆議院小選挙区、比例選挙区および最高裁国民審査の投票を同時に行うなど、同じ投票所において同時に2種以上の選挙を行う場合があり、そうした場合に、選挙の種類別に投票用紙の色を異ならせ、例えば薄い黄色と薄いピンク色など色の異なる用紙に、選挙毎の異なった内容を印刷した投票用紙が用意されるのが普通であって、そうした選挙の種類別に色の異なる投票用紙を、別々の投票用紙自動交付機で交付するに際しては、上記透明体の上部カバー103を通して、収納された投票用紙(p)の色や、印刷内容から、投票用紙の種類を視認することが可能で、間違った投票用紙が収納されていないかを確認するようにできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−259879号公報
【特許文献2】特開2000−1227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の投票用紙交付機では、集積収納された投票用紙の束の中に間違った投票用紙が混じっていても、そのまま交付され、間違った投票用紙を投票者が受け取ってしまうおそれがあった。
【0008】
本発明は、間違った投票用紙の交付を防止するようにできる投票用紙自動交付機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の投票用紙自動交付機は、投票用紙を複数枚集積収納可能なホッパーを備え、該ホッパーに集積収納された投票用紙を1枚ずつ繰り出して、投票用紙投出口まで搬送し交付する投票用紙自動交付機である。
【0010】
そして、投票用紙投出口へ搬送し交付する投票用紙の枚数を集計する交付枚数集計手段と、手動操作により、交付枚数集計手段による交付枚数の集計を禁止しつつ、搬送手段を駆動して、ホッパーに集積収納された投票用紙を投票用紙投出口へ搬送し、投出させるよう制御部に指示信号を出力する非集計投出指示手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、ホッパー上の投票用紙が間違った投票用紙である場合に、非集計投出指示手段を操作することによって、その間違った投票用紙を投票用紙投出口へ搬送し、手で抜き取って回収するが、交付枚数として集計はしないようにでき、間違った投票用紙を発見する都度一々ホッパーから直接手で取り除くような手間のかかる作業をしなくても、確実に回収でき、交付枚数も正しく集計ができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の投票用紙自動交付機は、非集計投出指示手段を操作することによって、間違った投票用紙を投票用紙投出口へ送り、手で抜き取って回収するとともに、交付枚数として集計はしないようにし、確実な回収と、交付枚数の正しい集計を行うようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態の投票用紙自動交付機の外観図である。
【図2】同実施の形態の投票用紙自動交付機の本体内部構造図である。
【図3】同実施の形態の投票用紙自動交付機の制御系のブロック図である。
【図4】同実施の形態の投票用紙自動交付機の投票用紙排出トレイの斜視図である。
【図5】従来の投票用紙自動交付機の本体内部構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1〜図4は、本発明の実施の形態の一例に係るもので、図1は投票用紙自動交付機の外観を示し、図2は投票用紙自動交付機の本体内部構造を示し、図3は制御系の構成を示し、図4は、投票用紙排出トレイの構造を示している。
【0015】
この例に示す投票用紙自動交付機は、図1に示すように、投票用紙自動交付機本体1と操作盤2とからなり、これら投票用紙自動交付機本体1と操作盤2が接続ケーブル3で接続されている。
【0016】
投票用紙自動交付機本体1は、箱型の本体ケース11と、本体ケース11の前端部下面にヒンジ連結された開閉可能な前面カバー12と、本体ケース11の上面および背面上部を覆い、前端側が本体ケース11に支持されて後端側から上下に開閉可能とされた透明体の上部カバー13とで構成されている。
【0017】
前面カバー12は、投票用紙の紙詰まり等、トラブルが発生したときに開くことができるようにしたものであり、その正面下部中央にはスピーカ前面パネル12aが形成されている。また、上部カバー13の後端下部には、該カバー13を施錠するための錠14(図2参照)が設けられている。
【0018】
本体ケース11の内部には、図2に示すように、投票用紙(p)を縦積みで集積収納するホッパー41が配置されている。ホッパー41は、垂直方向に対し前方にやや傾いて配置された壁体31の壁面と平行なガイド軸32に沿って上下方向にスライドするスライド部材33と一体に形成されたもので、壁体31の後方壁面に沿って上下方向にスライド可能である。スライド部材33は、バネ34により上向きに付勢されている。
【0019】
投票用紙(p)は、前端部が壁体31の後部壁面に当接した状態でホッパー41上に装填され、前方にやや傾いた水平に近い姿勢で、記入面を上にして、上下方向に集積収納される。
【0020】
ホッパー41は、投票用紙(p)を例えば1000枚を最大枚数として集積収納するもので、バネ34は、ホッパー41上に上記最大枚数の投票用紙(p)が集積収納されても、ホッパー41ごと投票用紙(p)を上方へ付勢できるよう調整されている。上方へ付勢された投票用紙(p)は、最上部のものが後述の給紙ローラ45に押し当てられる。
【0021】
本体ケース11内部のホッパー41上方には、搬送手段である給紙ローラ45が設けられるとともに、給紙ローラ45に前側斜め下方から当接する配置で、その当接面に摩擦部材を有する重送防止片46が設けられている。
【0022】
ホッパー41に集積収納された投票用紙(p)は、給紙ローラ45が回転することによって最上部のものから繰り出され、その際、重送防止片46の摩擦作用によって重送が防止され、投票用紙(p)は一枚ずつ送り出される。
【0023】
投票用紙を投出する投票用紙投出口48は、本体ケース11の前面上端と前面カバー12との間に横長スリット状に設けられている。そして、ホッパー41から投票用紙投出口48までの間に搬送路49が形成されている。
【0024】
給紙ローラ45は搬送路49の入口に位置する。そして、投票用紙投出口48に至る搬送路49の途中には、給紙ローラ45によりホッパー41から繰り出された投票用紙(p)を投票用紙投出口48まで搬送するため、給紙ローラ45とともに搬送手段を構成する複数個(図示の例では3個であるが、これに限らない。)の搬送ローラ50a、50b、50cが設けられるとともに、これら搬送ローラ50a、50b、50cのそれぞれと対をなして付勢ローラ51a、51b、51cが設けられている。
【0025】
搬送ローラ50a、50b、50cは、いずれも本体ケース11に設けられたものである。一方、付勢ローラ51a、51b、51cは、一部(51a、51b)が後述の投票用紙排出トレイ55に、他(51c)は前面カバー12の背面に設けられている。
【0026】
搬送路49は、給紙ローラ45と重送防止片46の間から、搬送ローラ50aと付勢ローラ51aの間を通り、さらに搬送ローラ50bと付勢ローラ51bの間を経て、本体ケース11の前面まで延び、次いで、本体ケース11の前面で下から上に、搬送ローラ50cと付勢ローラ51cの間を経て、投票用紙投出口48に至っている。
【0027】
給紙ローラ45および搬送ローラ50a,50b,50cは、ベルト等で後述の駆動モータに連結されており、駆動モータにより回転駆動される。
【0028】
本体ケース11の内部には、また、搬送異常の投票用紙や規格外用紙、あるいは間違って収納された収納用紙を排出するための排出搬送路52が、最下流の搬送ローラ50cと付勢ローラ51cの下流で搬送路49から分岐して設けられ、その分岐部分には、切換レバーソレノイド53(図3参照、図2には図示せず)によって投票用紙(p)の搬送を搬送路49側(実線位置)と排出搬送路52側(破線位置)とに切り換え可能な切換レバー54(排出搬送手段)が設けられている。
【0029】
そして、本体ケース11の内部の、上部カバー13を通して見える前端部上方の位置に、投票用紙排出部として、切換レバー54により排出搬送路52に導かれた投票用紙を保留する投票用紙排出トレイ55が設けられている。
【0030】
投票用紙排出トレイ55は、図4に示すように、底板部55aとその左右両側の側板部55b、55bとが一体に形成されたもので、常時は、図2に実線で示す動作位置にあって、底板部55aの下面が搬送路49の上面を形成するものとなっている。そして、その底板部55aには、左右両側に各一対の切り欠き81a、81b(図4には手前側の切り欠き81a、81bのみ示し、反対側の切り欠き81a、81bは図示していない)がそれぞれ前後に並ぶ配置で設けられ、上記左右両側の各一対の切り欠き81a、81bを通して搬送路49に臨むよう、板バネ80、80によって支持された各一対の付勢ローラ51a、51bが底板部55aの上面に取り付けられている。
【0031】
また、投票用紙排出トレイ55の底板部55aの上面には、側板部55b、55bと平行に一対の台形のリブ82、82が設けられている。排出搬送路52を経て投票用紙排出トレイ55に導かれた投票用紙は、これら一対のリブ82の上に載置される。
【0032】
また、投票用紙排出トレイ55の底板部55aには、両側の側板部55b、55bと、一対の台形のリブ82、82に挟まれて、3箇所に透視穴83が形成されている。これら3箇所の透視穴83は、搬送路49を通過する投票用紙(p)の色や記載内容(投票用紙の種類)を、透明体の上部カバー13を通して視認できるようにしたものである。
【0033】
投票用紙排出トレイ55は、両側の側板部55b、55bの前端に設けられた孔84、84に、最下流側の付勢ローラ50cの回転軸が挿通されることにより支持されたもので、後端側を持って上下に回動可能である。搬送路49に用紙が詰まった場合には、投票用紙排出トレイ55を上方に回動することによって搬送路49を開放し、用紙を取り除くことができる。
【0034】
本体ケース11には、また、搬送路49の途中に、重送等の搬送異常や、規格外用紙等の用紙自体の異常を検知するための異常検知センサ56が設けられ、投票用紙投出口48の付近には、投出された投票用紙(p)が投票者によって抜き取られたかどうかを検知する抜取センサ57が設けられている。抜取センサ57は、ホッパー41から搬送路49に新たな投票用紙(p)を送り込むためのタイミングを計るものである。
【0035】
ホッパー41の後部下方には、上部カバー施錠センサ58が設けられている。また、上部カバー13後端下部の錠14の内端には、施錠に連動して回動するよう検知片59が取り付けられている。上部カバー施錠センサ58は、この検知片59によって施錠を検知する。
【0036】
前面カバー12の内部下方には、本体ケース11側に突出するようカバー開放検知用の検知片(図示せず)が設けられている。そして、本体ケース11の内部には前面カバー開放センサ61(図3参照、図2には図示せず)が設けられている。開放センサ61は、検知片によって前面カバー12の開放を検知する。
【0037】
また、この投票用紙自動交付機は、例えば投票者が投票用紙を抜き取ろうとして投票用紙投出口48に手を近づけたときに、その手の接近を検知して選挙種別や投票用紙の記入方法等の案内データを音声出力するようにしたものであって、本体ケース11の内部上方位置に、投票用紙投出口48に接近する手を検知するよう物体センサ62が配置され、そのセンサ開口部62a(図1参照)が、本体ケース11の前端部上面の投票用紙投出口48直背後に設けられている。これにより、投票者が投票用紙投出口48から投票用紙(p)を抜き取ろうとすると、その投票者の手が接近したことが物体センサ62により検知される。この物体センサ62は、投票者の手だけでなく、係員が手を近づけても検知し、また、用紙等を近づけても検知するものである。物体センサ62としては、手などの人体を検知するだけのもの(例えば赤外線センサ)であってもよい。
【0038】
前面カバー12の内部には、スピーカ前面パネル12aの後方に、上記案内データを音声出力する音声発生手段としてのスピーカ63が設けられている。
【0039】
操作盤2には、各種設定を行う選択モード、設定内容、投票率等を表示する表示部21と、設定モードや表示モードの選択を行うモード選択ボタン22と、各種設定を決定する決定ボタン23が設けられているほか、投票用紙(p)を交付させるための交付動作信号を送出するよう入力操作する操作手段として、投票用紙(p)を投票用紙投出口48に投出させるための一対の投出ボタン24a、24bが設けられ、さらに、後述する排出指示手段としての排出ボタン91と、交付枚数減算指示手段としての減算ボタン93とが設けられている。
【0040】
一対の投出ボタン24a,24bは、投票者の性別によって使い分けることにより、性別による投票率の集計が可能となるようにしたものである。また、この一対の投出ボタン24a,24bは、各種設定を行う場合に画面の切り換えボタンとしても利用される。
【0041】
この投票用紙自動交付機には、マイクロコンピュータを用いた制御部70が設けられている。そして、図3に示すように、制御部70には、選挙種別や投票用紙の記入方法等の案内データを記憶する記憶装置71と、時刻を計測する時計72が接続され、また、給紙ローラ45および搬送ローラ50a、50b、50cを回転させるための駆動モータ73が接続され、スピーカ63、切換レバーソレノイド53、物体センサ62、異常検知センサ56、前面カバー開放センサ61、上部カバー施錠センサ58および抜取りセンサ57がそれぞれ接続され、また、各種設定及び操作を行う操作盤2が接続されている。
【0042】
制御部70は、物体センサ62、異常検知センサ56、前面カバー開放センサ61、上部カバー施錠センサ58および抜取りセンサ57からそれぞれのセンサ出力を受け、また、操作盤2からの各種入力を受けて、記憶装置71に記憶された各種案内データと、時計72により計測される時刻を読み出し、駆動モータ73の回転を制御し、スピーカ63の音声出力を制御し、切換レバーソレノイド53を制御し、また、操作盤2に表示用のデータを送出する。それにより、投票用紙自動交付機が所定の動作を行う。
【0043】
制御部70は、また、集計手段としての機能も有し、投出ボタン24a、24bが押下されるごとに、交付枚数を1ずつ加算し、合計の交付枚数を集計し、記憶装置71に記憶する。
【0044】
この投票用紙自動交付機の具体的動作はつぎのとおりである。
【0045】
ホッパー41に投票用紙(p)を収納し、電源を入れると、制御部70が給紙ローラ45および搬送ローラ50a、50b、50cを回転させ、ホッパー41内の投票用紙(p)は、重送防止片46の摩擦作用を受けて給紙ローラ45により最上部のものから一枚ずつ搬送路49に送り込まれる。
【0046】
搬送路49に送り込まれた投票用紙(p)は、異常検知センサ56により、重送等の搬送異常や規格外等の用紙自体の異常があるかどうかについてチェックが行われる。そして、異常が検知されなければ、投票用紙(p)は、搬送ローラ50a、50b、50cによって、先端が切換レバー54と投票用紙投出口48の間に達した位置(待機位置)まで搬送される。こうして投票用紙(p)が待機位置に達した状態(待機状態)になると、操作盤2の投出ボタン24a、24bの操作が有効な状態(入力可能な状態)となる。待機状態の投票用紙(p)は、操作盤2の投出ボタン24a、24bが操作されるまでその位置で待機する。投票用紙が待機状態となり、操作盤2の投出ボタン24a、24bが入力可能となると、投出ボタン24a、24bを点灯させるようにするのがよく、そうすることにより、投票用紙が待機状態となり、操作手段による交付動作信号の入力が可能になったことが直ちに判り、投票用紙を迅速かつ確実に交付できる。
【0047】
また、搬送路49に送り込まれた投票用紙(p)について、異常検知センサ56により異常が検知されると、切換レバーソレノイド53により切換レバー54が排出搬送路52側に切り換えられて、その投票用紙(p)は投票用紙排出トレイ55に排出され、ホッパー41から搬送路49に新たな投票用紙(p)が送り込まれる。そして、その新たに送り込まれた投票用紙(p)についても同様に異常検知センサ56によるチェックが行われ、異常が検知されなくなるまで同じ動作が繰り返される。そして、異常が検知されなくなると、切換レバーソレノイド53により切換レバー54が投票用紙投出口48側に切り換えられ、投票用紙(p)は上記待機位置まで搬送され、待機状態となる。
【0048】
ただし、前面カバー12が開放されていることが、前面カバー開放センサ61によって検知されたとき、また、上部カバー13が施錠されていないことが、上部カバー施錠センサ58により検知されたときには、異常検知センサ56によるチェックと、そのチェック結果による上記一連の動作は全てキャンセルとなる。
【0049】
そして、前面カバー12が開放されていることが、前面カバー開放センサ61によって検知されたときは、操作盤2による入力が禁止され、記憶装置71に記憶されている前面カバー開放報知の案内データがスピーカ63から音声出力されて、前面カバー12の開放が報知される。また、上部カバー13が施錠されていないことが、上部カバー施錠センサ58により検知されたときは、操作盤2による入力が禁止される。
【0050】
また、投票用紙(p)が上記待機状態にあるときに、カバー13の錠14が解錠されると、制御部70が駆動モータ73を逆回転させ、それにより、搬送ローラ50a,50b,50cが逆回転し、投票用紙(p)は切換レバー54より手前の位置まで戻される。そして、切換レバーソレノイド53を介して切換レバー53が排出搬送路52側に切り換えられ、次いで、駆動モータ73の回転が正回転に切り換えれて、搬送ローラ50a,50b,50cが正回転し、投票用紙(p)は投票用紙排出トレイ55へ排出される。
【0051】
投票用紙(p)が待機状態で、操作盤2の投出ボタン24a,24bが入力可能であるときに、操作盤2の投出ボタン24a,24bが操作されると、制御部70は搬送ローラ50b、50cを回転させ、それにより、投票用紙(p)は待機位置から投票用紙投出口48へと投出される。また、このとき、制御部70は、投出ボタン24a,24bの入力を禁止する。そして、投票用紙投出口48に投出された投票用紙(p)を抜き取ろうとして投票者が手を近付けると、その投票者の手が物体センサ62によって検知され、その検知信号を受けて、制御部70が、記憶装置71に記憶されている選挙種別や投票用紙の記入方法等についての案内データの中から、設定されている案内データを読み出し、その案内データがスピーカ63から音声出力される。
【0052】
そして、投票用紙投出口48に投出された投票用紙(p)が抜き取られると、投票用紙(p)が抜き取られたことが抜取センサ57によって検知され、その検知信号を受けて、制御部70が駆動モータ73を回転させ、給紙ローラ45および搬送ローラ50a、50b、50cが回転して、ホッパー41から新たな投票用紙(p)が搬送路49内へと送り込まれる。その後の動作は上述の繰り返しとなる。
【0053】
記憶装置71には、案内データとして、選挙種別および投票用紙の記入方法が記憶され、かつ、それら案内データが、男声と女声の少なくとも2種類以上の声色で記憶されている。そして、操作盤2の操作により、音声出力する案内データの設定と、音声の設定が可能である。
【0054】
選挙種別および記入方法の設定では、操作盤2のモード選択ボタン22を押して、各種モードを選択し、表示部21の画面を見ながら、選挙種別および記入方法を設定し、また、音声を設定する。
【0055】
この投票用紙自動交付機のホッパー41には、投票用紙(p)が略水平な姿勢で上下方向に集積収納され、最上部の投票用紙(p)は、透明な上部カバー13を通して、その色や印刷内容を確認することができる。そのため、間違った投票用紙(p)が収納されていた場合は、錠14を開錠し、上部カバー13を開放して、間違った投票用紙(p)を取り除くことができる。ホッパー41内の投票用紙(p)は、その最上端の前端に給紙ローラ45と重送防止片46が当接するのみで、最上端の投票用紙(p)の上面のほぼ全面が上部カバー13を通して視認可能であって、正しい投票用紙か間違った投票用紙かの判定が容易である。
【0056】
そして、透明な上部カバー13を通して視認できるホッパー41の最上部の投票用紙(p)が間違った投票用紙である場合は、その都度、上部カバー13を開いて、その間違った投票用紙を取り除くことにより、間違った投票用紙を交付しないようにできる。
【0057】
また、ホッパー41上の最上部の投票用紙(p)が間違った投票用紙であることを視認により確認した場合に、排出指示手段として操作盤2に設けた排出ボタン91を押下操作することによって、切換レバーソレノイド53により搬送路を排出搬送路52側に切り換えて、間違った投票用紙を強制的に投票用紙排出トレイ55に排出させるようにすることもできる。その際、制御部70は、上記待機位置に待機させている投票用紙(p)を先に投票用紙排出トレイ55に排出させ、その後、ホッパー41の最上部の投票用紙を排出させる。
【0058】
また、ホッパー41の最上部の投票用紙が間違った投票用紙であることを視認しながら、あるいは看過して、通常の操作通り、投出ボタン24aまたは24bを押下してしまったときは、間違った投票用紙を投出したにもかかわらず、正しい投票用紙が1枚交付されたものとして集計手段は交付枚数を1枚加算してしまう。そこで、そのような場合は、交付枚数減算指示手段としての減算ボタン93を押下することにより、集計した交付枚数を減算する。
【0059】
投票用紙排出トレイ55には、上述のように透視穴83が設けられており、搬送路49を搬送される投票用紙は、透明な上部カバー13の上から透視穴部83を通して、その色や印刷内容を確認することができる。よって、次に交付する投票用紙が正しい投票用紙であることを確認しつつ交付操作を行うことができる。 なお、上記実施の形態では、次に交付する投票用紙(p)を、その先端が切換レバー54と投票用紙投出口48の間に達した位置まで繰り出して待機させるようにしているが、予めそうした位置まで繰り出すのではなく、投出ボタン24a、24bを操作することによって初めてホッパー41から繰り出し、ホッパー41から投票用紙投出口48まで直接搬送するようにしても良い。そうした場合、今回投出ボタン24a、24bを操作して投出しようとしている投票用紙は、透明な上部カバー13を通して視認できるホッパー41の最上部の投票用紙であって、その都度、投票用紙の色や印刷内容を確認しながら交付することができ、確実に正しい投票用紙のみを交付することができる。
【0060】
また、上記実施の形態では、ホッパー41に間違った投票用紙が収納されていると視認すると、排出ボタン91の押下により、その投票用紙を一旦投票用紙排出トレイ55に排出するが、ホッパー41に間違った投票用紙が収納されていると視認したときは、その投票用紙を即座に取り出して確認したいと思うことがあり、その場合には、上部カバー13を開いて投票用紙排出トレイ55から投票用紙(p)を取り出さないと確認できない。そこで、排出指示手段としての排出ボタン91に代えて、非集計交付指示手段としての非集計投出ボタン(図示せず)を設け、その非集計投出ボタンを押下することにより、ホッパー41最上部の間違った投票用紙を投票用紙投出口48まで搬送して、手で抜き取ることができる状態にするとともに、交付枚数としての集計はしないようにしてもよい。
【0061】
そうした非集計投出ボタンを設けた場合においても、ホッパー41の最上部の投票用紙が間違った投票用紙であることを視認しながら、あるいは看過して、通常の操作通り、投出ボタン24aまたは24bを押下してしまったときは、間違った投票用紙を投出したにもかかわらず、正しい投票用紙が1枚交付されたものとして集計手段は交付枚数を1枚加算してしまうので、交付枚数減算指示手段としての減算ボタン93を押下することにより、集計した交付枚数を減算する。
【0062】
また、上記実施の形態では、投票用紙を厳格に管理するため、ホッパー41に集積収納された投票用紙を外部から隔離する上部カバー13を設けて、錠14により施解錠可能としたものにおいて、ホッパー41に集積収納した最上部の投票用紙の色や印刷内容が確認できるように、上部カバー13を透明にしているが、他に、上部カバー13自体は不透明とし、少なくともホッパー41最上部の投票用紙が見えるように、上部カバー13に透孔などの透視部を設けてもよく。また、例えば本体ケース11を透明体としたり、本体ケース11の一部に透孔などの透視部を設けるなど、上部カバー13以外の部分に透視部を設けてもよい。また、上部カバー13を設ける要求が低い場合は、上部カバー13を無くし、ホッパー41に集積収納された投票用紙を直接視認可能な構成としてもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、投票用紙排出トレイ55の底部55aに透視穴83を形成し、搬送路49を通過する投票用紙(p)の色や記載内容(投票用紙の種類)を確認することができるようにしたが、搬送路49を通過する投票用紙(p)の色や記載内容(投票用紙の種類)を確認できるようにするためには、他に、本体ケース11や前カバー12の一部または全てを透明体で構成することもでき、そうすることにより、一層確認が容易となり、間違いのない交付が可能となる。特に、上記実施の形態のように、投票用紙を先端が切換レバー54と投票用紙投出口48の間に達した位置で待機させる場合、前カバー12を透明な樹脂材料で構成すると、待機位置にある投票用紙の色や印刷内容を容易に確認でき、投票用紙を待機させることによる交付時間短縮の効果を維持したまま、次に交付される投票用紙の種類を確認できるという効果が得られる。
【0064】
また、上記実施の形態では、ホッパー41上で投票用紙は記入面を上にして集積収納し、最上部の投票用紙の色ばかりでなく印刷内容も確認できるようにしているが、投票用紙は記入面を下にしてホッパー41上で集積収納してもよく、その場合も、色の確認はできるので、間違った投票用紙を視認することが可能である。1つの投票所において同時に2種以上の選挙が行われる場合、間違った投票用紙とは、同時に行われている別の種類の選挙用の投票用紙である蓋然性が高い。上述のように、1つの投票所において同時に2種以上の選挙が行われる場合は、それぞれの種類の選挙ごとに、異なった色の投票用紙を使用するようになっているので、投票用紙の色だけからでも正しい投票用紙であるか否かを確認できる可能性が高い。
【符号の説明】
【0065】
1 投票用紙自動交付機本体
2 操作盤
13 上部カバー(蓋体)
24a,24b 投出ボタン
41 ホッパー
45 給紙ローラ
48 投票用紙投出口
49 搬送路
50a,50b,50c 搬送ローラ
52 排出搬送路
54 切換レバー(排出搬送手段)
55 投票用紙排出トレイ(投票用紙排出部)
70 制御部
91 排出ボタン(排出指示手段)
93 減算ボタン(交付枚数減算指示手段)
p 投票用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投票用紙を複数枚集積収納可能なホッパーを備え、該ホッパーに集積収納された投票用紙を1枚ずつ繰り出して、投票用紙投出口まで搬送し交付する投票用紙自動交付機であって、
前記投票用紙投出口へ搬送し交付する投票用紙の枚数を集計する交付枚数集計手段と、
手動操作により、前記交付枚数集計手段による交付枚数の集計を禁止しつつ、搬送手段を駆動して、前記ホッパーに集積収納された投票用紙を前記投票用紙投出口へ搬送し、投出させるよう制御部に指示信号を出力する非集計投出指示手段とを備えたことを特徴とする投票用紙自動交付機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−101724(P2013−101724A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−47196(P2013−47196)
【出願日】平成25年3月8日(2013.3.8)
【分割の表示】特願2010−258905(P2010−258905)の分割
【原出願日】平成12年12月20日(2000.12.20)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】