説明

抗αvβ6抗体

【課題】αβに対して特異的に結合し、かつ、他のαインテグリンにも非特異的インテグリンにも結合しない抗体を得ること。
【解決手段】本発明は、αβに対して特異的に結合し、他のαインテグリンにも非特異的インテグリンにも結合しない抗体を提供する。さらに、本発明は、αβ媒介疾患を有するかもしくはこの疾患を有する危険性がある哺乳動物を処置する方法、またはαβ媒介疾患を診断する方法をも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、分子生物学の分野に関し、詳細には、αβインテグリンに対する抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
インテグリンは、細胞間接着および細胞−マトリクス接着を媒介する、細胞表面レセプターのスーパーファミリーである。これらのタンパク質は、足場、ならびに発生および組織修復の間の細胞の増殖、移動および分化のためのシグナルを提供することが公知である。インテグリンはまた、細胞の分化および侵入(特に、細胞がその特化された形態を失い、転移癌細胞となる場合)に関与している。
【0003】
インテグリンは、非共有結合的に連結された2つのサブユニット(αおよびβ)から構成される、ヘテロダイマータンパク質である。インテグリンの結合特異性は、およそ18の異なるα鎖と、およそ8の異なるβ鎖との組み合わせによって支配される。αβインテグリンは、フィブロネクチン、テネイシン、ビトロネクチン、および近年同定された潜伏関連ペプチド「LAP」(前駆体TGF−βタンパク質の一部として合成される、278アミノ酸のペプチド(非特許文献1)を含め、多数のリガンドに結合し得る。LAPは、分泌の間に、成熟形態のTGF−βからN末端ペプチドとして切断されるが、TGF−βと非共有結合的に会合したままであり、その潜在的状態を維持する。この複合体は、TGF−βレセプターに結合できず、それゆえ、生物学的に活性ではない。αβインテグリンは、LAP内に含まれるRGDモチーフに直接的に結合して、LAPの遊離およびTGF−βの活性化をもたらし得る。LAPに対するαβの結合は、TGF−βのその活性状態への変換に重要であり得るので、この結合をブロックすることは、TGF−βのαβ媒介活性化および関連の線維性病状の阻害をもたらし得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Mungerら,Cell 96(3):319−328(1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
モノクローナル抗体であって、(a)αβに特異的に結合し;かつ(b)潜伏関連ペプチド(LAP)へのαβの結合を、10D5のIC50値未満のIC50値で阻害する、抗体。
(項目2)
前記抗体が、ハイブリドーマ6.1A8(ATCC登録番号PTA−3647)によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目3)
前記抗体が、ハイブリドーマ6.3G9(ATCC登録番号PTA−3649)によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目4)
前記抗体が、ハイブリドーマ6.8G6(ATCC登録番号PTA−3645)によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目5)
前記抗体が、ハイブリドーマ6.2B1(ATCC登録番号PTA−3646)によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目6)
前記抗体が、ハイブリドーマ7.1G10(ATCC登録番号PTA−3898)によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目7)
前記抗体が、ハイブリドーマ7.7G5(ATCC登録番号PTA−3899)によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目8)
前記抗体が、ハイブリドーマ7.1C5(ATCC登録番号PTA−3900)によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む、項目1に記載の抗体。
(項目9)
前記抗体とαβとの間での結合が、二価カチオン依存性である、項目1に記載の抗体。
(項目10)
前記二価カチオンが、Ca2+、Mg2+またはMn2+である、項目9に記載の抗体。
(項目11)
前記抗体とαβとの間での結合が、二価カチオン非依存性である、項目1に記載の抗体。
(項目12)
抗αβ抗体であって、重鎖の相補性決定領域(CDR)1、2および3が、それぞれ、配列番号1、4および7の配列から本質的になり、そして軽鎖CDRが、必要に応じて、それぞれ、配列番号10、13および15の配列から本質的になる、抗αβ抗体。
(項目13)
抗αβ抗体であって、重鎖の相補性決定領域(CDR)1、2および3が、それぞれ、配列番号3、5および8の配列から本質的になり、そして軽鎖CDRが、必要に応じて、それぞれ、配列番号11、14および17の配列から本質的になる、抗αβ抗体。
(項目14)
抗αβ抗体であって、重鎖の相補性決定領域(CDR)1、2および3が、それぞれ、配列番号3、6および9の配列から本質的になり、そして軽鎖CDRが、必要に応じて、それぞれ、配列番号12、14および18の配列から本質的になる、抗αβ抗体。
(項目15)
抗αβ抗体であって、重鎖の相補性決定領域(CDR)1、2および3が、それぞれ、配列番号2、46および47の配列から本質的になり、そして軽鎖CDRが、必要に応じて、それぞれ、配列番号48、13および16の配列から本質的になる、抗αβ抗体。
(項目16)
抗αβ抗体であって、重鎖の相補性決定領域(CDR)1、2および3が、それぞれ、配列番号49、51および53の配列から本質的になり、そして軽鎖CDRが、必要に応じて、それぞれ、配列番号55、57および59の配列から本質的になる、抗αβ抗体。
(項目17)
抗αβ抗体であって、重鎖の相補性決定領域(CDR)1、2および3が、それぞれ、配列番号50、52および54の配列から本質的になり、そして軽鎖CDRが、必要に応じて、それぞれ、配列番号56、58および60の配列から本質的になる、抗αβ抗体。
(項目18)
抗αβ抗体であって、配列番号19〜36および61〜62のいずれか1つの重鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目19)
抗αβ抗体であって、配列番号19の重鎖可変ドメイン配列および配列番号37の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目20)
抗αβ抗体であって、配列番号20または21の重鎖可変ドメイン配列および配列番号38の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目21)
抗αβ抗体であって、配列番号22の重鎖可変ドメイン配列および配列番号43の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目22)
抗αβ抗体であって、配列番号23の重鎖可変ドメイン配列および配列番号44の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目23)
抗αβ抗体であって、配列番号24の重鎖可変ドメイン配列および配列番号45の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目24)
抗αβ抗体であって、配列番号25または26の重鎖可変ドメイン配列および配列番号42の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目25)
抗αβ抗体であって、配列番号27、28または29の重鎖可変ドメイン配列および配列番号39の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目26)
抗αβ抗体であって、配列番号34または35の重鎖可変ドメイン配列および配列番号40の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目27)
抗αβ抗体であって、配列番号36の重鎖可変ドメイン配列および配列番号41の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目28)
抗αβ抗体であって、配列番号61の重鎖可変ドメイン配列および配列番号63の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目29)
抗αβ抗体であって、配列番号62の重鎖可変ドメイン配列および配列番号64の軽鎖可変ドメイン配列を含む、抗体。
(項目30)
モノクローナル抗体であって、αβに特異的に結合するが、潜伏関連ペプチド(LAP)へのαβの結合を阻害しない、抗体。
(項目31)
前記抗体が、ハイブリドーマ6.2A1(ATCC登録番号PTA−3896)によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む、項目30に記載の抗体。
(項目32)
前記抗体が、ハイブリドーマ6.2E5(ATCC登録番号PTA−3897)によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む、項目30に記載の抗体。
(項目33)
哺乳動物においてαβによって媒介される疾患を予防または処置するための組成物であって、項目1〜32のいずれか1項に記載の抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
(項目34)
前記抗体が、細胞傷害性薬剤に結合されている、項目33に記載の組成物。
(項目35)
前記抗体が、カチオン依存性抗体である、項目33に記載の組成物。
(項目36)
αβによって媒介される疾患を有するかまたは該疾患を有する危険性がある被験体を処置するための方法であって、該被験体に、項目32に記載の組成物を投与し、それによって、該疾患を緩和するかまたは該疾患の発症を延期する工程を包含する、方法。
(項目37)
前記被験体がヒトである、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記疾患が、線維症である、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記線維症が、強皮症、瘢痕、肝臓線維症、腎臓線維症、または肺線維症である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記疾患が、乾癬である、項目36に記載の方法。
(項目41)
前記疾患が、癌である、項目36に記載の方法。
(項目42)
前記癌が、上皮癌である、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記癌が、口腔癌、皮膚癌、頸部癌、卵巣癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、または結腸直腸癌である、項目41に記載の方法。
(項目44)
前記疾患が、アルポート症候群である、項目36に記載の方法。
(項目45)
哺乳動物由来の組織サンプル中のαβを検出する方法であって、該組織サンプルを、項目1または30に記載の抗体と接触させる工程を包含する、方法。
(項目46)
前記抗体が、6.2A1(ATCC登録番号PTA 3896)および6.2E5(ATCC登録番号PTA 3897)からなる群より選択される、項目45に記載の方法。(項目47)
ハイブリドーマ6.1A8(ATCC登録番号PTA−3647)の細胞。
(項目48)
ハイブリドーマ6.2B10(ATCC登録番号PTA−3648)の細胞。
(項目49)
ハイブリドーマ6.3G9(ATCC登録番号PTA−3649)の細胞。
(項目50)
ハイブリドーマ6.8G6(ATCC登録番号PTA−3645)の細胞。
(項目51)
ハイブリドーマ6.2B1(ATCC登録番号PTA−3646)の細胞。
(項目52)
ハイブリドーマ6.2A1(ATCC登録番号PTA−3896)の細胞
(項目53)
ハイブリドーマ6.2E5(ATCC登録番号PTA−3897)の細胞。
(項目54)
ハイブリドーマ7.1 G10(ATCC登録番号PTA−3898)の細胞。
(項目55)
ハイブリドーマ7.7G5(ATCC登録番号PTA−3899)の細胞。
(項目56)
ハイブリドーマ7.1 C5(ATCC登録番号PTA−3900)の細胞。
(項目57)
単離された核酸であって、配列番号19〜45および61〜64のいずれか1つについてのコード配列を含む、核酸。
(項目58)
単離されたポリペプチドであって、配列番号19〜45および61〜64のいずれか1つのアミノ酸配列を含む、ポリペプチド。
(項目59)
モノクローナル抗体であって、ハイブリドーマ6.2B10(ATCC登録番号PTA−3648)によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む、抗体。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1A】図1Aは、種々の抗αβモノクローナル抗体(「mAb」)が、βでトランスフェクトされたFDC−P1細胞(コントロールとして、トランスフェクトされていない細胞)に結合する能力を決定した、細胞捕捉アッセイの結果を示す棒グラフである。
【図1B】図1Bは、種々の抗αβモノクローナル抗体(「mAb」)が、βでトランスフェクトされたFDC−P1細胞(コントロールとして、トランスフェクトされていない細胞)に結合する能力を決定した、細胞捕捉アッセイの結果を示す棒グラフである。
【図2A】図2Aは、種々の精製抗αβ「融合体6」モノクローナル抗体が可溶性組換えヒトαβ(「hsαβ」)に結合する能力を決定した、ELISAアッセイの結果を示すグラフである。これらの抗体を、β−/−マウスを可溶性ヒト短縮型αβで免疫することによって作製した。凡例における数字は、クローン番号を示す。対応するクローン名に関しては、表2を参照のこと。
【図2B】図2Bは、種々の精製抗αβ「融合体7」モノクローナル抗体が可溶性組換えhsαβに結合する能力を決定した、ELISAアッセイの結果を示すグラフである。これらの抗体を、β−/−マウスをβでトランスフェクトしたNIH 3T3細胞で免疫することによって作製した(融合体番号7)。
【図3】図3A〜図3Fは、hsαβへの種々の抗αβモノクローナル抗体の結合の異なるカチオン依存性を示すグラフである。
【図4A】図4Aは、融合体番号6のモノクローナル抗体が、それぞれ、LAPへのビオチン−hsαβの結合を阻害することを示すグラフである。
【図4B】図4Bは、融合体番号7のモノクローナル抗体が、それぞれ、LAPへのビオチン−hsαβの結合を阻害することを示すグラフである。
【図5A−5B】図5A〜図5Bは、本発明の例示的なモノクローナル抗体が、LAPへのβでトランスフェクトしたFDC−P1細胞の結合を阻害することを示すグラフである。図5Aおよび図5Bは、融合体番号6の抗体からの結果を提示する。
【図5C−5D】図5C〜図5Dは、本発明の例示的なモノクローナル抗体が、LAPへのβでトランスフェクトしたFDC−P1細胞の結合を阻害することを示すグラフである。図5C〜図5Dは、融合体番号7の抗体からの結果を提示する。
【図5E】図5Eは、本発明の例示的なモノクローナル抗体が、LAPへのβでトランスフェクトしたFDC−P1細胞の結合を阻害することを示すグラフである。図5Eは、融合体番号7の抗体からの結果を提示する。
【図6A】図6Aは、融合体番号6の抗体が、TGF−βのαβ媒介活性化を阻害することを、TGF−β活性化をモニタリングするためにPAI−1ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを用いて示すグラフである。
【図6B】図6Bは、融合体番号7の抗体が、TGF−βのαβ媒介活性化を阻害することを、TGF−β活性化をモニタリングするためにPAI−1ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイを用いて示すグラフである。
【図7A】図7Aは、αβモノクローナル抗体6.1A8、6.8G6(サブクローンAおよびB)、7.7G5、6.2B1、6.3G9、6.2B10(サブクローンAおよびB)、6.2G2、6.2A1、6.4B4(サブクローンA、BおよびC)、7.10H2、7.9H5、7.4A3(サブクローンAおよびB)、7.1C5(サブクローンAおよびB)および7.1G10の重鎖の可変ドメインのアミノ酸配列を示す。抗体6.1A8、6.8G6および7.7G5は、αβへの結合においてカチオン依存性であり、一方、抗体6.2B1、6.2A1、6.3G9、6.2B10、6.4B4、7.1C5および7.1G10は、カチオン非依存性である(上記)。カッコ内の数字は、アミノ酸残基の位置を示す。CDRは、大きな四角内にあり、一方、斜体のアミノ酸を含む小さな四角は、特定の抗体の異なるクローンにおける多型を表す。
【図7B】図7Bは、αβモノクローナル抗体6.1A8、6.8G6、6.4B4、6.2A1、7.1C5、7.1G10、6.2B10、7.7G5、6.2B1および6.3G9の軽鎖の可変ドメインのアミノ酸配列を示す。
【図8】図8は、ヒト乳癌およびヒト扁平上皮癌の組織切片における、αβの発現を示す散乱プロットである。正常なヒト組織は、ほんの無視し得る発現レベルのαβを示す。
【図9】図9Aおよび図9Bは、それぞれ、2つの抗αβ抗体である6.8G6および6.3G9の、可溶性αβに関する溶液結合親和性を示す二次曲線グラフである。
【図10】図10Aおよび図10Bは、精製されたモノクローナル抗体が、αβへの結合に関してそれぞれビオチン化6.3G9およびビオチン化6.8G6と競合する能力を示す棒グラフである。
【図11】図11は、抗αβ mAb処置を用いて処置したUUO動物由来の腎臓における平滑筋(smooth)アクチン染色のパーセントを示す、棒グラフである。
【図12】図12は、FACS分析(図の右側)による腫瘍細胞株におけるαβ発現およびmAb 6.3G9および6.4B4によるLAPリガンドへの腫瘍細胞株の結合の阻害(図の左側)を示す。
【図13】図13は、抗αβ mab 6.3G9、6.8G6および6.4B4によるLAPリガンドへの3つの腫瘍細胞株の結合の阻害を実証する棒グラフである。mAbの結合を、試験mAbを添加しない総結合(TB)およびBSAコントロールのみへの非特異的結合(NSB)に対して比較した。
【図14A】図14Aは、皮下に移植されたDetroit 562細胞からの生じた腫瘍に対する、抗αβ mAb 6.3G9の効果を33日間の研究期間にわたって示すグラフである。
【図14B】図14Bは、皮下に移植されたDetroit 562細胞からの生じた腫瘍に対する、抗αβ mAb 6.4B4の効果を33日間の研究期間にわたって示すグラフである。
【図15A】図15Aは、ブレオマイシン誘発性肺線維症に対する抗αβ mAbの効果を示すグラフである。(A)6.3G9 mAbを用いた抗体処置を、ブレオマイシン投与時の0日目に開始し、そして30日間の期間にわたってモニタリングした。図15Aにおいて、左側の棒グラフはμg ヒドロキシプロリン/肺を表し、一方、右側の棒グラフは、生理食塩水で処置したマウス(ブレオマイシンなし)よりも高い、ヒドロキシプロリンの増加%を示す。
【図15B】図15Bは、ブレオマイシン誘発性肺線維症に対する抗αβ mAbの効果を示すグラフである。(B)6.3G9 mAbを用いた抗体処置を、ブレオマイシン処置15日後に開始し、そして30日間の期間にわたってモニタリングした。図15Bにおいて、左側の棒グラフはμg ヒドロキシプロリン/肺を表し、一方、右側の棒グラフは、生理食塩水で処置したマウス(ブレオマイシンなし)よりも高い、ヒドロキシプロリンの増加%を示す。
【図15C】図15Cは、ブレオマイシン誘発性肺線維症に対する抗αβ mAbの効果を示すグラフである。(C)6.3G9 mAb、6.8G6 mAbおよび6.4B4 mAbを用いた抗体処置を、ブレオマイシン処置15日後に開始し、そして60日間という長期間にわたってモニタリングした。図15Cでは、このグラフは、肺あたりのヒドロキシプロリン含有量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、αβに対する高親和性抗体の知見および特徴付け(このような抗体の相補性決定領域(CDR)における重要なアミノ酸残基の同定および分析を含む)に基づく。
本発明は、モノクローナル抗体を包含し、このモノクローナル抗体は、(a)αβに特異的に結合し;(b)そのリガンド(例えば、LAP、フィブロネクチン、ビトロネクチン、およびテネイシン)へのαβの結合を、10D5(国際特許出願公開WO 99/07405)のIC50値未満のIC50値で阻害し;(c)TGF−βの活性化をブロックし;(d)αβへの結合特異性を提供する、CDR中の特定のアミノ酸配列(例えば、図7Aおよび図7Bに示されるアミノ酸配列)を含み;(e)βサブユニットに特異的に結合し;そして/または(f)免疫染色手順(例えば、パラフィン包埋組織の免疫染色)においてαβを認識する。
【0008】
αβに結合する抗体が、生物物理学的に別々のクラスおよびサブクラスに分類され得ることが見出された。1つのクラスの抗体は、αβへのリガンド(例えば、LAP)の結合をブロックする能力を示す(ブロッカー)。このクラスの抗体は、カチオン依存性ブロッカーおよびカチオン非依存性ブロッカーのサブクラスにさらに細分され得る。カチオン依存性ブロッカーのいくつかは、アルギニン−グリシン−アスパルテート(RGD)ペプチド配列を含むのに対して、カチオン非依存性ブロッカーは、RGD配列を含まない。別のクラスの抗体は、αβに結合する能力を示すが、リガンドへのαβの結合をブロックしない(非ブロッカー)。
【0009】
従って、本発明のいくつかの実施形態では、本発明の一部の抗体は、αβへの結合に関して二価カチオン依存性であり、一方、他の抗体は、二価カチオン非依存性である。例示的なカチオンは、Ca2+、Mg2+およびMn2+である。
【0010】
いくつかの実施形態では、この抗体は、ハイブリドーマ6.1A8、6.3G9、6.8G6、6.2B1、6.2B10、6.2A1、6.2E5、7.1G10、7.7G5、または7.1C5によって産生される抗体と同じ重鎖ポリペプチド配列および軽鎖ポリペプチド配列を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、この抗体は、相補性決定領域(CDR)1、2および3が、それぞれ、配列番号1、4および7の配列から本質的に(すなわち、いくつかの保存的バリエーションを除いて)なる重鎖、ならびに/またはCDR1、2および3が、それぞれ、配列番号10、13および15の配列から本質的になる軽鎖を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、この抗体は、CDR1、2および3が、それぞれ、配列番号3、5および8の配列から本質的になる重鎖、ならびに/またはCDR1、2および3が、それぞれ、配列番号11、14および17の配列から本質的になる軽鎖を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、この抗体は、CDR1、2および3が、それぞれ、配列番号3、6および9の配列から本質的になる重鎖、ならびに/またはCDR1、2および3が、それぞれ、配列番号12、14および18の配列から本質的になる軽鎖を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、この抗体は、CDR1、2および3が、それぞれ、配列番号2、46および47の配列から本質的になる重鎖、ならびに/またはCDR1、2および3が、それぞれ、配列番号48、13および16の配列から本質的になる軽鎖を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、この抗体は、CDR1、2および3が、それぞれ、配列番号49、51および53の配列から本質的になる重鎖、ならびに/またはCDR1、2および3が、それぞれ、配列番号55、57および59の配列から本質的になる軽鎖を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、この抗体は、CDR1、2および3が、それぞれ、配列番号50、52および54の配列から本質的になる重鎖、ならびに/またはCDR1、2および3が、それぞれ、配列番号56、58および60の配列から本質的になる軽鎖を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、この抗体は、配列番号19〜36および61〜62のうちのいずれか1つの重鎖可変ドメイン配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、この抗体は、それぞれ、以下の重鎖可変ドメイン配列および軽鎖可変ドメイン配列を含む:
(1)配列番号19および37;
(2)配列番号20または21、および配列番号38;
(3)配列番号22および43;
(4)配列番号23および44;
(5)配列番号24および45;
(6)配列番号25または26、および配列番号42;
(7)配列番号27、28、または29、および配列番号39;
(8)配列番号34または35、および配列番号40;
(9)配列番号36および41;
(10)配列番号61および63;あるいは
(11)配列番号62および64。
【0019】
いくつかの実施形態では、この抗体は、αβに特異的に結合するが、潜伏関連ペプチド(LAP)へのαβの結合を阻害しない。これらの抗体のうちの少なくともいくつかは、パラフィン包埋組織切片においてαβに結合し得、それゆえ、診断目的に使用され得る。例示的な抗体としては、6.2A1および6.2E5が挙げられる。
【0020】
本発明はまた、上記の抗体のいずれかと同じエピトープに結合する抗体を包含する。
【0021】
本発明はまた、本発明の1以上の抗体、および薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を包含する。これらの組成物のうちのいくつかでは、これらの抗体は、細胞傷害性薬剤(すなわち、細胞の生存力および/または機能を損なう薬剤)(例えば、毒素または放射性核種)へと結合体化される。これらの組成物におけるこれらの抗体は、カチオン依存性抗体であり得る。これらの組成物は、αβによって媒介される疾患を処置する(例えば、緩和する、軽減する、低減する、予防する、発症を延期する)ために、この疾患を有するかまたはこの疾患を有する危険性がある被験体(例えば、ヒトのような哺乳動物)へと投与され得る。このような疾患の例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:線維症(例えば、強皮症、瘢痕(scarring)、肝臓線維症、肺線維症、および腎臓線維症);乾癬;癌(例えば、上皮癌;口腔癌、皮膚癌、頸部癌、卵巣癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、肺癌、乳癌、腎臓癌、または結腸直腸癌);アルポート症候群;肺、肝臓、腎臓および他の内部器官の急性傷害および慢性傷害;ならびに肺、肝臓、腎臓および他の内部器官の硬化症。このような疾患を有する危険性は、遺伝的素因;特定のライフスタイル(例えば、喫煙およびアルコール中毒);環境汚染物質(例えば、石綿)への曝露;生理学的状態(例えば、糖尿病、肝炎ウイルス感染(例えば、C型肝炎ウイルス感染)、自己免疫疾患);ならびに医療処置(例えば、放射線治療)から生じ得る。
【0022】
本発明はまた、哺乳動物(例えば、ヒト)由来の組織サンプル中のαβを検出する方法であって、この組織サンプルを、本発明の抗体(例えば、6.2A1および6.2E5)と接触させる工程を包含する方法を包含する。
【0023】
本発明はまた、ハイブリドーマ6.1A8、6.2B10、6.3G9、6.8G6、6.2B1、6.2A1、6.2E5、7.1G10、7.7G5、および7.1C5の細胞;配列番号19〜45および61〜64のうちのいずれか1つについてのコード配列を含む、単離された核酸;配列番号19〜45および61〜64のうちのいずれか1つのアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチドを包含する。
【0024】
本発明の抗体とは、完全な抗体(例えば、2つの重鎖および2つの軽鎖を含む抗体)、または完全な抗体の抗原結合フラグメント(例えば、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)フラグメントまたはF(v)フラグメント)をいう。本発明の抗体は、マウス抗体もしくはそのホモログ、または完全ヒト抗体であり得る。本発明の抗体はまた、ヒト化抗体、キメラ抗体または単鎖抗体であり得る。本発明の抗体は、任意のアイソタイプおよびサブタイプの抗体(例えば、IgA(例えば、IgA1およびIgA2)、IgG(例えば、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)、IgE、IgD、IgM)であり得、ここで、免疫グロブリンの軽鎖は、κ型またはλ型の軽鎖であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、本発明の抗体は、抗体のエフェクター機能(例えば、抗体がFcレセプターまたは補体因子に結合する能力)が、抗体の抗原結合能力に影響を与えないように変更されるように、変異(例えば、欠失、置換または付加)を、重鎖における特定の位置の1以上(例えば、2、3、4、5、または6)において含み得る。他の実施形態では、本発明の抗体は、グリコシル化部位が除去されるように、変異を、グリコシル化部位であるアミノ酸残基において含み得る。このような抗体は、その抗原結合親和性を保持しながら、臨床的に有利な低下したエフェクター機能または他の所望でない機能を有し得る。グリコシル化部位の変異もまた、プロセスの開発(例えば、タンパク質の発現および精製)に有利であり得る。なお他の実施形態では、重鎖または軽鎖は、親和性または効力を増大させる変異を含み得る。
【0026】
融合体番号6および融合体番号7のハイブリドーマのうちのいくつかを、American Type Culture Collection(「ATCC」;P.O.Box 1549,Manassas,VA 20108,USA)に、ブダペスト条約の下で寄託した。ハイブリドーマクローン6.1A8、6.2B10、6.3G9、6.8G6、および6.2B1を、2001年8月16日に寄託した。そしてこれらはそれぞれ、登録番号ATCC PTA−3647、ATCC PTA−3648、ATCC PTA−3649、ATCC PTA−3645、およびATCC PTA−3646を有する。ハイブリドーマクローン6.2A1、6.2E5、7.1G10、7.7G5、および7.1C5を、2001年12月5日に寄託した。そしてこれらは、それぞれ、登録番号ATCC PTA−3896、ATCC PTA−3897、ATCC PTA−3898、ATCC PTA−3899、およびATCC PTA−3900を有する。以下の表1を参照のこと。
【0027】
本発明の抗体は、αβのそのリガンド(例えば、LAPおよびフィブロネクチン)へのαβの結合によって媒介される任意の臨床的に望ましくない状態または疾患(本明細書中で考察される通り)を処置するために有用である。これらの抗体は、より高い親和性またはアビディティ、ならびにリガンドへの結合のカチオン依存性またはカチオン非依存性を介して、これまでに公知のαβ抗体よりも、強力であり得る。
【0028】
本発明の抗体(特に、ブロッカー)の治療適用に加えて、非ブロッカークラスの抗体は、(例えば、抗原捕捉アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫組織化学などにおいて)診断目的に用いられ得る。
【0029】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかである。
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明は、インテグリンαβに特異的であるクラスおよびサブクラスの抗体を特徴とする。少なくとも1つのクラスの抗体(ブロッカー)は、LAPに対するαβの結合をブロックし得るか、またはTGF−βの活性化を防止し得る。
【0031】
以下は、本発明の抗体を作製する種々の方法を記載する。当該分野で公知であるが本明細書中に具体的に記載されない方法もまた、本発明の範囲内にある。例えば、本発明の抗体はまた、ファージディスプレイ抗体ライブラリー(例えば、Smith,Science 228:1315−7(1985);米国特許第5,565,332号、同第5,733,743号、同第6,291,650号、および同第6,303,313号に記載されるライブラリー)を用いて同定され得る。本発明のさらなる抗体は、本明細書中で同定される重鎖を、非コグネイト軽鎖(例えば、ファージディスプレイ技術によって同定される軽鎖)とカップリングすることにより作製され得る。
【0032】
(非ヒトハイブリドーマ抗体)
本発明のモノクローナル抗体は、周知のハイブリドーマ技術によって生成され得る。こそのためには、β−/−動物(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)を、精製または粗製のαβ調製物、α、βまたは両方の抗原をコードするcDNA構築物でトランスフェクトした細胞、αβを構成的に発現する細胞などで免疫する。この抗原は、精製タンパク質、細胞上に発現されたタンパク質、タンパク質フラグメントもしくはそのペプチド、またはこのタンパク質、タンパク質フラグメントもしくはペプチドをコードする、裸のDNAもしくはウイルスベクターとして送達され得る。次いで、免疫された動物の血清が、抗αβ抗体の存在に関して試験される。B細胞は、試験してポジティブである動物から単離され、そしてハイブリドーマが、これらのB細胞を用いて作製される。
【0033】
これらのハイブリドーマによって分泌される抗体は、αβに特異的に結合する(例えば、βでトランスフェクトした細胞への結合であって、トランスフェクトしていない親細胞へは結合しない)能力に関して、そして任意の他の所望の特徴(例えば、所望のCDRコンセンサス配列を有すること、LAPとαβとの間の結合を、公知の抗αβ抗体1OD5のIC50値よりも低いIC50値にて阻害すること(または非ブロッカーの場合、阻害しないこと)、またはTGF−βの活性化を阻害すること)に関して、スクリーニングされる。
【0034】
スクリーニングアッセイにおいて試験してポジティブであるハイブリドーマ細胞は、栄養培地中で、これらの細胞がモノクローナル抗体を培養培地中に分泌するのを可能にする条件下で培養される。次いで、馴化ハイブリドーマ培養上清が収集され、そして上清中に含まれる抗体が精製される。あるいは、所望の抗体は、これらのハイブリドーマ細胞を、免疫していない動物(例えば、マウス)の腹膜腔内に注射することにより生成され得る。これらのハイブリドーマ細胞は、腹膜腔中で増殖し、抗体を分泌し、これらの抗体は、腹水として蓄積する。次いで、この抗体は、腹水を腹膜腔からシリンジで採取することによって収集され得る。
【0035】
これらのモノクローナル抗体はまた、抗体をコードするcDNAを、所望のハイブリドーマから単離し、哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞またはNSO細胞)をこのcDNAでトランスフェクトし、トランスフェクトされた宿主細胞を培養し、そして抗体を培養培地から回収することによって生成され得る。
【0036】
(キメラ抗体)
本発明のモノクローナル抗体はまた、コグネイトハイブリドーマ(例えば、マウス、ラットまたはウサギ)抗体を操作することによって作製され得る。例えば、コグネイト抗体は、重鎖および/または軽鎖のヒンジ領域および/または定常領域の一部または全体が、別の種(例えば、ヒト)由来の抗体の対応する成分で置換されることを意図して、組換えDNA技術によって改変され得る。一般に、操作された抗体の可変ドメインは、コグネイト抗体の可変ドメインに対して同一のままであるかまたは実質的に同一のままである。このような操作された抗体は、キメラ抗体と呼ばれ、そしてヒンジ領域および/または定常領域を誘導した種(例えば、ヒト)の個体に投与された場合、コグネイト抗体よりも抗原性が低い。キメラ抗体を作製する方法は、当該分野で周知である。
【0037】
本発明に包含されるキメラ抗体は、配列番号19〜36のいずれか1つに対して同一である(または実質的に同一である)配列を有する重鎖可変ドメインおよび/または配列番号37〜45のいずれか1つに対して同一である(または実質的に同一である)配列を有する軽鎖可変ドメインを含み得る。
【0038】
好ましいヒト定常領域としては、IgG1由来の定常領域およびIgG4由来の定常領域が挙げられる。
【0039】
(完全ヒト抗体)
本発明のモノクローナル抗体としてはまた、完全ヒト抗体が挙げられる。これらは、Boernerら,J.Immunol.147:86−95(1991)によって記載されたように、インビトロで初回免疫されたヒト脾細胞を用いて、または例えば、米国特許第6,300,064号に記載されたように、ファージディスプレイ抗体ライブラリーを用いて、調製され得る。
【0040】
完全ヒト抗体を産生するための他のいくつかの方法は、不活化した内因性Ig遺伝子座を有し、かつ、再配置されていないヒト抗体重鎖遺伝子およびヒト抗体軽鎖遺伝子についてトランスジェニックである非ヒト動物の使用を含む。このようなトランスジェニック動物は、αβを用いて免疫され得、次いでハイブリドーマが、これらに由来するB細胞から作製される。これらの方法は、例えば、以下に記載される:ヒトIgミニ遺伝子座を含むトランスジェニックマウスに関するGenPharm/Medarex(Palo Alto,CA)の種々の刊行物/特許(例えば、Lonberg米国特許第5,789,650号);XENOMICEに関するAbgenix(Fremont,CA)の種々の刊行物/特許(例えば、Kucherlapati米国特許第6,075,181号、同第6,150,584号および同第6,162,963号;Greenら,Nature Genetics 7:13−21(1994);およびMendezら,15(2):146−56(1997));ならびに「トランソミック(transomic)」マウスに関するキリン(日本)の種々の刊行物/特許(例えば、EP 843 961、およびTomizukaら,Nature Genetics 16:133−1443(1997))。
【0041】
(ヒト化抗体)
本発明のモノクローナル抗体はまた、他の種由来のコグネイト抗αβ抗体のヒト化版を包含する。ヒト化抗体は、抗原結合に必要ではないヒト免疫グロブリン軽鎖または重鎖のアミノ酸(例えば、定常領域および可変ドメインのフレームワーク領域)の一部または全てが、コグネイトの非ヒト抗体の軽鎖または重鎖由来の対応するアミノ酸について置換されている、組換えDNA技術によって生成される抗体である。例えば、所定の抗原に対するマウス抗体のヒト化版は、その重鎖および軽鎖の両方に、以下を有する:(1)ヒト抗体の定常領域;(2)ヒト抗体の可変ドメイン由来のフレームワーク領域;および(3)マウス抗体由来のCDR。必要な場合、ヒトフレームワーク領域における1以上の残基は、その抗原に対するヒト化抗体の結合親和性を保存するために、マウス抗体中の対応する位置における残基へと変更され得る。この変更は、時々、「復帰変異」と呼ばれる。ヒト化抗体は一般に、キメラヒト抗体と比較して、ヒトにおいて免疫応答を惹起する可能性がより低い。なぜなら、前者は、かなりより少ない非ヒト成分を含むからである。
【0042】
ヒト化抗体を作製する方法は、例えば、以下に記載される:Winter EP 239 400;Jonesら,Nature 321:522−525(1986);Riechmannら,Nature 332:323−327(1988);Verhoeyenら,Science 239:1534−1536(1988);Queenら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 86:10029(1989);米国特許第6,180,370号;およびOrlandiら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:3833(1989)。一般に、ヒト抗体へのマウス(または他の非ヒト)CDRの移植は、以下の通りに達成される。重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインをコードするcDNAは、ハイブリドーマから単離される。CDRを含め、可変ドメインのDNA配列は、配列決定により決定される。CDRをコードするDNAは、ヒト抗体重鎖可変ドメインコード配列またはヒト抗体軽鎖可変ドメインコード配列の対応領域に、部位特異的変異誘発により移入される。次いで、所望のアイソタイプ(例えば、CHについてのγ1およびCLについてのk)のヒト定常領域の遺伝子セグメントが付加される。このヒト化重鎖遺伝子およびヒト化軽鎖遺伝子は、哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞またはNSO細胞)において共発現されて、可溶性ヒト化抗体を生成する。抗体の大規模生成を容易にするために、抗体発現細胞を含むバイオリアクターにおいてこのようなヒト化抗体を生成すること、または乳汁中に抗体を発現するトランスジェニック哺乳動物(例えば、ヤギ、ウシ、またはヒツジ)を生成すること(例えば、米国特許第5,827,690号を参照のこと)がしばしば望ましい。
【0043】
時々、ヒトフレームワークへのCDRの直接的移入は、得られる抗体の抗原結合親和性の喪失をもたらす。これは、いくつかのコグネイト抗体においては、フレームワーク領域内の特定のアミノ酸が、このCDRと相互作用し、従って、この抗体の全体的な抗原結合親和性に影響を及ぼすからである。このような場合、このコグネイト抗体の抗原結合活性を保持するために、「復帰変異」(前出)をアクセプター抗体のフレームワーク領域内に導入することが重要である。
【0044】
復帰変異を作製する一般的アプローチは、当該分野で公知である。例えば、Queenら(前出)、Coら,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 88:2869−2873(1991)、およびWO 90/07861(Protein Design Labs Inc.)は、2つの重要な工程を含むアプローチを記載する。第1に、ヒトVフレームワーク領域は、コグネイトマウス抗体のV領域フレームワークに対する最適なタンパク質配列相同性についてコンピュータ分析により選択される。次いで、マウスV領域の三次構造が、マウスCDRと相互作用するようであるフレームワークアミノ酸残基を可視化するために、コンピュータによりモデリングされ、次いで、これらのマウスアミノ酸残基は、相同なヒトフレームワークにスーパーインポーズされる。
【0045】
この2工程アプローチの下では、ヒト化抗体を設計することに関していくつかの基準が存在する。第1の基準は、ヒトアクセプターとして、非ヒトドナー免疫グロブリンに対して通常相同である、特定のヒト免疫グロブリン由来のフレームワークを用いること、または多くのヒト抗体由来のコンセンサスフレームワークを用いることである。第2の基準は、ヒトアクセプター残基が以上であり、そしてドナー残基がそのフレームワークの特定の残基においてヒト配列に関して代表的であるならば、アクセプターよりもむしろ、ドナーのアミノ酸を用いることである。第3の基準は、CDRに直接隣接する位置においては、アクセプターよりもむしろ、ドナーのフレームワークアミノ酸残基を用いることである。
【0046】
例えば、Tempest,Biotechnology 9:266−271(1991)に記載されるような異なるアプローチもまた用い得る。このアプローチの下では、NEWMおよびREIの重鎖および軽鎖に由来するV領域フレームワークは、それぞれ、マウス残基の過激な導入を伴うことなく、CDRグラフト化に用いられる。このアプローチを用いることの利点は、NEWMおよびREIの可変領域の三次元構造がX線結晶学から公知であり、従って、CDRとV領域フレームワーク残基との間の特異的相互作用が容易にモデリングされ得ることである。
【0047】
(他の部分)
本発明のモノクローナル抗体は、所望の機能をもたらすために他の部分をさらに含み得る。例えば、これらの抗体は、これらの抗体によって標的化される細胞の殺傷のための、毒素部分(例えば、破傷風トキソイドまたはリシン)または放射性核種(例えば、111Inまたは90Y)を含み得る(例えば、米国特許第6,307,026号を参照のこと)。これらの抗体は、容易な単離または検出のための部分(例えば、ビオチン、蛍光部分、放射性部分、ヒスチジンタグまたは他のペプチドタグ)を含み得る。これらの抗体はまた、それらの血清半減期を延長し得る部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)部分)を含み得る。
【0048】
(罹患状態および動物モデル)
本発明の抗体は、αβ媒介疾患の処置(予防を含む)において有用である。例えば、これらの抗体を用いて、TGF−βの活性化をブロックすることにより、または任意の他のリガンド(例えば、フィブロネクチン、ビトロネクチン、およびテネイシン)へのαβの結合をブロックすることにより、線維症(例えば、肺線維症、急性肺傷害、腎臓線維症、肝臓、肝臓線維症、アルポート症候群、および強皮症)を処置し得る。このアプローチの新規性としては、以下が挙げられる:(1)これは、TGF−βのレセプターへのTGF−βの結合よりむしろ、TGF−βの活性化をブロックする、(2)これは、TGF−βを局所的に(すなわち、αβのアップレギュレーション部位において)阻害し得る、そして(3)これは、リガンドへのαβの結合を阻害する。線維症疾患または線維症状態以外に、本発明の抗体は、癌または癌転移(腫瘍増殖および侵襲を含む)(特に、上皮癌)を処置する際に有用である。上皮癌の1つのサブセットは、扁平上皮癌(例えば、頭部および頸部の癌、口腔癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、頸部癌、咽頭癌、結腸癌、膵臓癌および卵巣癌)である。新たなαβモノクローナル抗体を用いた本発明者らの研究は、αβが多くの上皮癌において、特に、腫瘍のリーディングエッジにおいて高度に発現されることを実証した。この新たな抗体はまた、乾癬を含め、αβにより媒介される任意の他の疾患に対して用いられ得る。
【0049】
本発明の処置は、これらの状態に罹患した、ヒトおよび動物の両方の被験体に対して有効である。本発明が適用可能である動物被験体は、ペットとして、または商業的目的でのいずれかで生じた、家庭用動物および家畜の両方に及ぶ。例は、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタおよびヤギである。
【0050】
本発明の抗体の効力は、種々の動物モデルにおいて試験され得る。肺線維症に関するマウスモデルとしては、ブレオマイシン誘発性肺線維症(Pittetら,J.Clin.Invest.107(12):1537−1544(2001);およびMungerら,前出)および照射誘発性肺線維症(Frankoら,Rad.Res.140:347−355(1994))が挙げられる。ブレオマイシン処置マウスにおいては、αβの発現は、肺の上皮肺胞細胞において増大する。しかし、βノックアウトマウスは、ブレオマイシン誘発性傷害および線維症から保護される。
【0051】
腎臓線維症に関するマウスモデルとしては、COL4A3−/−マウス(例えば、Cosgroveら,Amer.J.Path.157:1649−1659(2000)を参照のこと)、アドリアマイシン誘発性傷害を有するマウス(Wangら,Kidney International 58:1797−1804(2000);Demanら,Nephrol Dial Transplant 16:147−150(2001))、db/dbマウス(Ziyadehら,PNAS USA 97:8015−8020(2000))、および片側性尿管閉塞を有するマウス(Fogoら,Lab Investigation 81:189A(2001);およびFogoら,Journal of the American Society of Nephrology 12:819A(2001))が挙げられる。これらのモデルの全てにおいて、これらのマウスは、腎不全へと進行し得る、腎臓傷害および線維症を発症する。αβは、COL4A3−/−マウス、アドリアマイシン処置マウス、および片側性尿管閉塞を受けたマウスの腎臓の上行細管および下行細管の上皮内層においてアップレギュレートされる。αβ発現はまた、種々の腎臓傷害モデルにおいて増大するようである。
【0052】
抗αβモノクローナル抗体はまた、インビボでの腫瘍増殖および転移モデルにおける標準として、このような動物モデルにおいて腫瘍の増殖、進行、および転移を阻害する能力に関して試験され得る。例えば、Rockwellら,J.Natl.Cancer Inst.49:735(1972);Guyら,Mol.Cell Biol.12:954(1992);Wyckoffら,Cancer Res.60:2504(2000);およびOftら,Curr.Biol.8:1243(1998)を参照のこと。癌における重要なαβリガンドとしては、TGF−β(これは、転移に関与する)(概説に関しては、Akhurstら,Trends in Cell Biology 11:S44−S51(2001)を参照のこと)、フィブロネクチンおよびビトロネクチンが挙げられ得る。
【0053】
本発明の処置の効力は、多数の利用可能な診断ツール(身体検査、血液試験、タンパク質尿測定、クレアチニンレベルおよびクレアチニンクリアランス、肺機能試験、血漿血尿素窒素(BUN)レベル、瘢痕性または線維症傷害の診察およびスコア付け、細胞外マトリクスの沈着(例えば、コラーゲン、平滑筋アクチンおよびフィブロネクチン、腎臓機能試験、超音波、磁気共鳴画像化(MRI)、およびCTスキャンが挙げられる)によって測定され得る。
【0054】
(薬学的組成物)
本発明の薬学的組成物は、必要に応じて任意の薬学的に受容可能なキャリアとともに、本発明の1以上の抗体またはその薬学的に受容可能な誘導体を含む。用語「キャリア」は、本明細書中で用いられる場合、公知の受容可能なアジュバントおよびビヒクルを包含する。
【0055】
本発明によれば、この薬学的組成物は、無菌の注射可能組成物の形態(例えば、無菌の注射可能な水性懸濁物または油性懸濁物)であり得る。この懸濁物は、当該分野で公知の技術に従って、適切な分散剤、湿潤剤、および懸濁剤を用いて処方され得る。
【0056】
本発明の薬学的組成物は、所望により、経口に、局所的に、静脈内に、皮下に、腹腔内に、筋肉内に、髄内に、関節内に、滑膜内に、胸骨内に、髄腔内に、肝臓内に、もしくは頭蓋内に、または炎症もしくは腫瘍増殖の部位にてまさに局所に、与えられ得る。本発明の薬学的組成物はまた、例えば、ネブライザー、乾燥粉末吸入器または定量吸入器の使用により、吸入によって投与され得る。
【0057】
所望の効果を生じるに有効な本発明の抗体の投薬量および投与速度は、種々の要因(例えば、処置されるべき疾患の性質、被験体のサイズ、処置目的、用いられる特定の薬学的組成物、および処置医の判断)に依存する。1日当り約0.001mg/kg体重と約100mg/kg体重との間(例えば、1日当り約0.1mg/kg体重と約50mg/kg体重との間)の投薬量レベルの活性成分の化合物が有用である。例えば、本発明の抗体は、約0.01mg/kg体重/日と約20mg/kg体重/日との間の範囲にわたる用量(例えば、約0.1mg/kg体重/日と約10mg/kg体重/日との間の範囲にわたる用量)にて、そして毎日〜14日の間隔で投与される。別の実施形態では、この抗体は、腹腔内に投与される場合、約0.3〜1mg/kg体重の用量にて投与される。なお別の実施形態では、この抗体は、静脈内に投与される場合、約5mg/kg体重〜約12.5mg/kg体重の用量にて投与される。1つの実施形態では、抗体組成物は、少なくとも1mg/mlの血漿レベルの抗体を提供するに有効な量で投与される。
【0058】
(診断方法)
本発明の抗体を用いて、変化したαβ発現レベルに関連した疾患状態を診断し得る。被験体由来の組織サンプル(例えば、組織生検、体液サンプルまたは洗浄液(例えば、肺胞洗浄液))は、抗原捕捉アッセイ、ELISA、免疫組織化学アッセイなどにおいて、この抗体を用いて試験され得る。正常個体由来の組織サンプルは、コントロールとして用いられる。
【0059】
本発明の実施は、そうでないと示さない限り、当該分野の技術範囲内である、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、微生物学、組換えDNA、タンパク質化学、および免疫学の従来技術を用いる。このような技術は、文献に記載される。例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第2版(Sambrookら編),1989;Oligonucleotide Synthesis,(M.J.Gait編),1984;Mullisらに対する米国特許第4,683,195号;Nucleic Acid Hybridization(B.D.HamesおよびS.J.Higgins),1984;Transcription and Translation(B.D.HamesおよびS.J.Higgins),1984;Culture of Animal Cells(R.I.Freshney編),1987;Immobilized Cells and Enzymes,IRL Press,1986;A Practical Guide to Molecular Cloning(B.Perbal),1984;Methods in Enzymology,第154巻および第155巻(Wuら編),Academic Press,New York;Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.H.MillerおよびM.P.Calos編),1987;Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology(MayerおよびWalker編),1987;Handbook of Experiment Immunology,第I巻〜第IV巻(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編),1986;Manipulating the Mouse Embryo,1986を参照のこと。
【0060】
そうでないと定義しない限り、本明細書中で用いられる全ての専門用語および科学用語は、本発明が関連する分野の当業者によって通常理解されるのと同じ意味を有する。例示的な方法および材料は、以下に記載されるが、本明細書中に記載された材料および方法と類似であるかまたは等価な材料および方法もまた、本発明の実施において用いられ得る。本明細書中で言及される全ての刊行物および他の参考文献は、その全体が、参考として援用される。矛盾がある場合、本明細書(定義を含む)が支配する。材料、方法、および実施例は、単なる例示であり、限定することを意図しない。本明細書を通じて、用語「含む(comprise)」または「含む(comprise)」または「含んでいる(comprising)」のような変化形は、示した整数または整数の群を含むが、あらゆる他の整数も整数群も排除しないことを意味することが理解される。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本発明の方法および材料を例示することを意味する。当業者に明らかである、抗体の分野で通常遭遇する記載された条件およびパラメーターの適切な改変および適応は、本発明の趣旨および範囲内にある。
【0062】
以下の実施例では、β−/−マウスを、Huangら,J.Cell Biol.133:921(1996)に記載される通りに作製した。組換えヒトLAPを、R & D Systems(Minneapolis,MN)から購入した。抗体10D5を、Chemicon(Temecula,CA)から購入した。L230ハイブリドーマを、ATCCから購入し、そして分泌された抗体を、飽和培養物の上清から、固定化プロテインAでのアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。抗体のアイソタイプ決定を、ISOSTRIPキット(Roche Diagnostics)を用いて、製造業者の指示書に従って実施した。βでトランスフェクトしたSW480細胞株を、Weinackerら,J.Biol.Chem.269:6940−6948(1994)に記載される通りに調製した。
【0063】
(実施例1:βでトランスフェクトした安定な細胞株の作製)
βでトランスフェクトしたNIH 3T3細胞およびFDC−P1細胞を、親細胞株に、全長マウスβ6 cDNAおよびネオマイシン選択マーカーを含むDNA構築物をエレクトロポレーションすることによって作製した。G418を含む培養培地中で14日間細胞を継代し、続いて蛍光活性化細胞選別(FACS)によって最大レベルの表面βを発現する細胞を単離することにより、安定にトランスフェクトされた細胞を選択した。トランスフェクトされたFDC−P1細胞を、1.5g/L重炭酸ナトリウム、4.5g/lグルコース、および1.0mMピルビン酸ナトリウム、10% FBS、2.5% マウスIL−3培養上清、および1.5mg/mlの活性なG418を含むように調整した、4mM L−グルタミンを補充したDMEM中で培養した。トランスフェクトされたNIH 3T3細胞を、10% FBS、2mM L−グルタミン、ペニシリン/ストレプトマイシン、および1mg/mlの活性なG418を補充したDMEM中で培養した。
【0064】
(実施例2:ヒト可溶性αβの精製)
αβタンパク質を、Weinacker(上記)に本質的に記載される通りに精製した。hsαβを発現するCHO細胞株を培養し、そして得られる上清を遠心分離により収集した。このインテグリンを、抗α抗体L230を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製した。精製したL230を、CNBr活性化Sepharose 4B(Sigma)に、4.8mg抗体/ml樹脂の割合で架橋した。αβ上清を0.5mg抗体/ml樹脂にてL230アフィニティーカラムにローディングし、そしてこのカラムを、各々以下である10カラム容量を用いて洗浄した:(1)50mM Tris−Cl(pH7.5)、1M NaCl、1mM MgCl;(2)50mM Tris−Cl(pH7.5)、50mM NaCl、1mM MgCl;および(3)10mM NaPO(pH7.0)。hsαβを、100mMグリシン(pH2.5)を用いて1:10容量の1M NaPO(pH8.0)中に溶出させた。このタンパク質を、数回交換しながらリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対して透析し、そして−20℃にて保存した。
【0065】
(実施例3:β−/−マウスの免疫)
β−/−マウスを、完全フロイントアジュバント(CFA)中に1:1の容量比で合計200μlにて乳化した25μgの精製組換えヒトαβを用いた腹腔内(IP)注射によって免疫した。あるいは、β−/−マウスを、1mg/mlのCaClおよび1mg/ml MgClを含む100μlのPBS中に再懸濁したβでトランスフェクトしたNIH 3T3細胞(4×10個)を用いてIP注射によって免疫し、そして同じマウスに、100μlのCFAを隣接部位に注射した。最初の免疫の2週間後および4週間後、これらのマウスに、不完全フロイントアジュバントをCFAの代わりに用いたこと以外は同じ試薬を同様に追加免疫した。これらのマウスから、最後の追加免疫の7日後に採血し、抗β力価を、精製した組換えヒトαβへの血清の結合またはβでトランスフェクトした細胞への結成の結合によって決定した。精製組換えヒトαβで免疫したマウスの場合、マウスを3ヶ月間休養させ、そしてImmunEasy(Qiagen)と混合した同じ抗原を用いて再度免疫した。ハイブリドーマ融合のために脾臓を単離する3日前に、これらのマウスに、12.5μgの精製組換えヒトαβタンパク質を、IP注射および静脈内注射の両方によって免疫した。融合日に、これらの動物を屠殺し、そしてそれらの脾臓を取り出し、そして梳いて単細胞懸濁物にした。これらの脾細胞を、薬物選択可能な細胞融合パートナーへの融合によって不死化した。
【0066】
(実施例4:ハイブリドーマのスクリーニング)
2群の抗体を、β−/−マウスの免疫によって作製した。1セットの抗体(融合体番号6)を、可溶性ヒト短縮型αβを用いた免疫によって作製した。他のセットの抗体(融合体番号7)を、マウスβでトランスフェクトしたNIH 3T3細胞を用いた免疫によって作製した。抗αβ抗体についてのスクリーニングを、以下に記載の通りに、細胞ベースおよび無細胞の両方の結合アッセイおよび機能アッセイを用いて実施した。ポジティブクローンの最初の選択は、精製hsαβ、ならびにβでトランスフェクトされたヒト細胞およびマウス細胞(コントロールとしての、トランスフェクトしていない細胞)への結合に基づいた。選択されたクローンを増大させ、そして最終的な培養物を、βでトランスフェクトされた細胞およびトランスフェクトされていない細胞の両方に対する結合について、細胞捕捉アッセイ(以下の実施例5b)において再評価した(代表例は図1Aおよび図1Bに示され、ここで、融合体6および融合体7をそれぞれ示すmAbの名称の接頭語「6.」または「7.」は、省略される;以下の表2もまた参照のこと)。いくつかの抗体は、βでトランスフェクトした細胞に優先的に結合し、一方、他の抗体は、トランスフェクトした細胞およびトランスフェクトしていない細胞の両方に結合した。このことは、これらの抗体のサブセットのみが、βについての選択性を有することを示す(図1Aおよび図1B)。さらなる選択は、これらの抗体が、LAPへのビオチン化hsαβおよびβでトランスフェクトされたマウス細胞の両方の結合をブロックする能力に基づいた。選択クローンをFACSを用いてサブクローニングし、そして使用するまで凍結保存した。
【0067】
モノクローナル抗体を、βでトランスフェクトした細胞に結合する能力およびトランスフェクトされていない親細胞に結合しない能力に基づいて、αβに対する結合の特異性に関してスクリーニングした。モノクローナル抗体を、αβ、αβ、αβ、αβまたはαβを発現する細胞株に結合しないことに基づいて、αβの特異的バインダーであって、他のαインテグリンのバインダーでも非特異的インテグリン(すなわち、RGD含有リガンドに結合する非αインテグリン)のバインダーでもないことをさらに確認した。これらには、安定にトランスフェクトされた細胞ならびにトランスフェクトされていない、JY細胞株、K562細胞株、SW480細胞株、NIH3T3細胞株、およびFDCP1細胞株が含まれた。
【0068】
ATCCに寄託した抗体のいくつかを以下に表1に列挙する。
【0069】
【表1】

(実施例5:スクリーニングおよび特徴付けに関するアッセイ)
(a.αβ ELISA)
96ウェルマイクロタイタープレート(Corning COSTAR EASY−WASH)を、50μl/ウェルの5μg/ml hsαβを用いて4℃で一晩コーティングした。このプレートを、自動プレート洗浄器中で洗浄緩衝液(PBS中0.1% TWEEN−20)を用いて4回洗浄した。次いで、TBS中3% BSA(180μl/ウェル)を添加し、そして25℃にて1時間インキュベートして、非特異的結合をブロックした。このプレートを上記の通りに洗浄し、そしてハイブリドーマ上清(スクリーニングアッセイに関して)または精製抗体(特徴付けに関して)のいずれかのTBS(1mg/ml BSA、1mM CaCl、および1mM MgClを含有)中希釈物を添加した(50μl/ウェル)。このプレートを25℃にて1時間インキュベートし、洗浄し、次いで50μl/ウェルのペルオキシド結合体化ヤギ抗マウスIgG+A+M抗体(Cappel)を用いて1時間インキュベートした。結合した抗体を、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMB)を用いて検出した。結合は、450nmにて測定される吸光度によって示された。
【0070】
(b.細胞捕捉アッセイ)
96ウェルマイクロタイタープレートを、50μl/ウェルの二次抗体(ロバ抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch);50mM重炭酸ナトリウム(pH 9.2)中に希釈した5μg/ml)を用いて4℃にて一晩コーティングした。プレートを、100μl/ウェルのアッセイ緩衝液(RPMI+2% BSA)を用いて2回洗浄し、次いで100μl/ウェルのアッセイ緩衝液を用いて37℃にて1時間ブロッキングした。FDC−P1細胞およびβでトランスフェクトしたFDC−P1細胞に関して、プレートを、抗マウスIg(Jackson ImmunoResearch;20μg/ml)を用いて室温で10分間ブロッキングして、二次抗体による非特異的Fcレセプター結合を減少させた(他の細胞型については省略した)。これらのプレートをブロッキングしている間に、細胞を、5×10細胞/mlにて、アッセイ緩衝液中の2μM蛍光色素(Calcein−AM,Molecular Probes)を用いて標識した。これらの細胞を、穏やかに攪拌しながら37℃の水浴中で15分間、アッセイ緩衝液中のこの色素と共にインキュベートし、遠心分離によって収集し、そして5×10細胞/mlになるようにアッセイ緩衝液中に再懸濁させた。ブロッキング工程の後、このプレーとを軽く叩くことによってこの緩衝液を捨て、そして25μl/ウェルの上清または精製抗体をこのプレートに添加した。37℃での15分間のインキュベーション後、25μl/ウェルの標識細胞を添加し、そしてこのプレートを37℃で1時間インキュベートした。このプレートをアッセイ緩衝液(100μl/ウェル)を用いて3〜5回洗浄し、そしてプレート上の捕捉細胞によって発光される蛍光を記録した。結合パーセントを、最終洗浄工程の前(すなわち、添加した総細胞)の蛍光を、洗浄後(すなわち、結合細胞)の蛍光に対して比較することにより決定した。
【0071】
(c.FACS)
細胞を、トリプシン処理により収集し、PBS中で1回洗浄し、次いでFACS緩衝液(1×PBS、2% FBS、0.1% NaN、1mM CaCl、および1mM MgCl)中に再懸濁し、次いで、0.2×10細胞を、氷上で1時間、ハイブリドーマ上清を含むFACS緩衝液(100μlの総容積)中でインキュベートした。インキュベーション後、これらの細胞を氷冷FACS緩衝液を用いて2回洗浄し、5μg/mlロバ抗マウスIgG PE(Jackson ImmunoResearch)を含む100μlのFACS緩衝液中に再懸濁し、そして氷上で30分間インキュベートした。次いで、細胞を、氷冷FACS緩衝液を用いて2回洗浄し、そして200μlのFACS緩衝液中に再懸濁した。PE標識二次抗体の結合を、フローサイトメトリーによってモニタリングした。
【0072】
(d.LAPへのビオチン−hsαβの結合)
96ウェルマイクロタイタープレート(Corning COSTAR EASY−WASH)を、PBS(50μl/ウェル)中に希釈した0.3μg/mlの組換えヒトLAP(R & D Systems,カタログ番号246−LP)を用いて4℃にて一晩コーティングした。コーティング溶液を除去した後、これらのプレートを、180μl/ウェルの3% BSA/TBSを用いて25℃にて1時間ブロッキングした。別個の96ウェル丸底プレートにおいて、60μl/ウェルの2×ストック(1mg/ml BSAを含むTBS中、0.5μg/ml(1.25nM)のビオチン−αβ、2mM CaCl、および2mM MgC1)を、ハイブリドーマ上清(スクリーニングに関して)または精製抗体(これもまた、1mg/ml BSAを含むTBS中)のいずれかの60μl/ウェルの2×ストックと合わせ、そして25℃にて1時間インキュベートした。LAPでコーティングしたプレートを、自動プレート洗浄器において洗浄緩衝液(PBS中0.1% TWEEN−20)を用いて4回洗浄した後、100μlの抗体−αβ混合物をこのプレートに移し、そして25℃にて1時間インキュベートした。このプレートを上記の通りに洗浄し、そしてエクストラアビジン(extravidin)−西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体(Sigma)のTBS(1 mg/ml BSA)中1:1000希釈物(50μl/ウェル)を用いて25℃にて1時間インキュベートした。結合したタンパク質を、TMB基質を用いて検出した。
【0073】
(e.LAPへのβ−FDC−P1細胞の接着)
96ウェルマイクロタイタープレートを、50mM重炭酸ナトリウム(pH9.2)中に希釈した0.5μg/ml組換えヒトLAP(R & D Systems)(50μl/ウェル)を用いて4℃にて一晩コーティングした。このプレートを、PBS(100μl/ウェル)を用いて2回洗浄し、そしてPBS(100μl/ウェル)中の1% BSAを用いて25℃にて1時間ブロッキングした。このプレートを、100μl/ウェルのアッセイ緩衝液(TBS完全+1mM CaClおよび1mM MgCl)を用いて2回洗浄した。次に、このプレートの個々のウェルに対して、25μlのハイブリドーマ上清(または精製抗体)および25μlのβ−FDC−P1細胞(5×10細胞/ml、上記の通りにCalcein AMで標識した)を添加した。このプレートを25℃で1時間インキュベートし、次いでこのアッセイ緩衝液(100μl/ウェル)を用いて4〜6回洗浄した。このプレート上に捕捉された細胞から発光された蛍光を記録した。結合百分率を、最終洗浄工程の前(すなわち、添加した総細胞)の蛍光シグナルを、洗浄後(すなわち、結合した細胞)の蛍光シグナルに対して比較することにより決定した。
【0074】
(f.TGF−βバイオアッセイ)
本明細書中で用いたTGF−βバイオアッセイは、Abeら,Anal.Biochem.216:276−284(1994)において記載されるミンク肺上皮細胞(MLEC)PAI−1ルシフェラーゼ共存培養アッセイの変法であり、ここでは、βでトランスフェクトした細胞をレポーター細胞と共に共存培養して、αβによるTGF−βの活性化(Munger,前出)をモニタリングした。これは、プラスミノゲンアクチベーターインヒビター−1(PAI−1)の発現を誘導する能力に基づく、TGF−βに関する定量的バイオアッセイである。このアッセイにおいて、MLEC細胞は、ホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子に融合された短縮型PAI−1プロモーターを含む発現構築物を用いて安定にトランスフェクトされている。トランスフェクトされたMLEC細胞を活性なTGF−β(0.2〜>30pM)に曝露することにより、細胞溶解産物におけるルシフェラーゼ活性の用量依存性増加がもたらされる。
【0075】
このアッセイを実施するために、TMLC(ミンク肺上皮細胞株Mv 1 Lu)細胞を、PAI−1−ルシフェラーゼ構築物を用いてトランスフェクトした。これらのトランスフェクトされた細胞を、L−Gln、Pen/Strepおよび200μg/ml G418を含むDMEM+10% FBS中で増殖させた。インテグリンβ構築物(「β−SW480」または「SW480 β」細胞)を用いてトランスフェクトされたSW480細胞を、L−GlnおよびPen/Strepを含むDMEM+10% FBS中で増殖させた。細胞を、PBS+5mM EDTAを用いてフラスコから取り出し、PBS+0.5% BSA中で洗浄し、血球計算板によって計数し、そして96ウェルプレート中にプレーティングした。SW480−β細胞を、洗浄緩衝液中に4×10細胞/ウェルにてプレーティングした。モノクローナル抗体をDMEM(無血清)中に希釈し、SW480−β細胞に添加し、そして室温にて20分間プレインキュベートした。次いで、TMLC細胞を2×10細胞/ウェルにて添加して、最終容積を100μlにした。これらのプレートを、加湿したCO富化インキュベーター中で20時間インキュベートした。これらのプレート由来の上清を捨て、そして100μlのPBS+1mM Ca2+および1mM Mg2+に置き換えた。次いで、これらのプレート中の細胞を溶解し、そしてルシフェラーゼ活性のレベルを、グロー型(glow−type)反応Packard LUCLITEキット(#6016911)およびTROPIXマイクロプレートルミノメーターを用いて検出した。
【0076】
(実施例6:抗体精製)
融合体番号6由来の8個のハイブリドーマクローン(接頭語「6.」により示す)および融合体番号7由来の14個のハイブリドーマクローン(接頭語「7.」により示す)を、さらなる大規模化および特徴付けのために選択した(表2)。
【0077】
各ハイブリドーマの小規模培養物(150ml)を調製し、そして上清を遠心分離により収集した。抗体を、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いてこれらの上清から精製した。IgG2aアイソタイプ抗体に関しては、この上清をProtein A Sepharose 4 Fast Flow(Amersham Pharmacia Biotech,AB,Uppsala,Sweden)(1ml沈降床容積)に直接ローディングした。このカラムを、PBSを用いて洗浄し、そしてIgG画分を、25mMリン酸、100mM NaCl(pH2.8)を用いて、1:20容積の0.5M NaPO(pH8.6)中に溶出させた。マウスIgG抗体に関して、この上清を、1.5Mグリシン、3M NaCl(pH8.9)に調整した後にローディングし、そしてこのカラムを、25mM NaPO、3M NaCl(pH8.6)を用いて洗浄した後に溶出させた。これらの調製物を、本明細書中に記載されるインビトロでの生化学的特徴付けに用いた。
【0078】
【表2】

:ブロッカーは、精製hsαβまたはβ発現細胞のいずれかに対するリガンド結合のブロッキングによって決定した場合に、LAPに対するαβの結合をブロックする抗体と定義される。
【0079】
動物モデルにおける使用のために、ハイブリドーマクローンを2Lの培地に規模拡大し、そしてLifecell Culture Bags−PL732(Nexell,カタログ番号R4R2113)中で4週間増殖させた。これらのハイブリドーマ由来の抗体を、まず、上記の通りのプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって精製し、続いてQ Sepharose(Amersham Pharmacia)におけるイオン交換工程によって精製した。プロテインAクロマトグラフィー工程からの溶出物を、2M Trisベースを用いてpH8.6に調整し、水で10倍希釈し、そして10mM NaPO、25mM NaCl(pH8.6)中で平衡化したQ Sepharoseカラム(20mgタンパク質/ml樹脂)にローディングした。このカラムを、5カラム容積の平衡化緩衝液を用いて洗浄し、そして結合したタンパク質を、25mM NaPO、150mM NaCl(pH7.2)を用いて溶出させた。溶出させたタンパク質を濾過滅菌(0.45μm)し、そして使用するまで−70℃にて保存した。
【0080】
(実施例7:精製抗体の特徴付け)
精製抗体(表2、前出)を、以下の能力に関して定量的に特徴付けした:(1)hsαβを結合する能力、(2)βでトランスフェクトされたSW480細胞およびFDC−P1細胞を結合する能力、(3)LAPに対するビオチン−αβの結合を阻害する能力、(4)LAPへの、βでトランスフェクトされたFDC−P1細胞の結合を阻害する能力、ならびに(5)MLECアッセイ(前出)においてTGF−βのαβ媒介活性化をブロックする能力。これらのアッセイの各々における相対的効力を、公知のαβ抗体10D5(Huang et al,J.Cell Sci.111:2189(1998))の相対的効力およびいくつかの場合には抗α抗体L230の相対的効力に対して比較した。融合体番号7の抗体の特徴付けに関して、融合体番号6の抗体6.8G6をまた、ポジティブコントロールとして用いた。
【0081】
1mM Ca2+および1mM Mg2+の存在下で実施した最初の結合実験(実施例5a、前出)は、精製抗体の大部分がhsαβに結合することを示した(図2Aおよび図2B)。しかし、予想外に、10D5ならびにクローン7.2F5およびクローン7.10D7に関しては結合が観察されなかった。その後の実験は、10D5(図3E)、7.2F5、および7.10D7の結合が、Ca2+/Mg2+によってごくわずかに支持されているが、1mM MnClによってずっと強く支持されていることを証明した。新たなクローンの中でも、3つ(6.1A8(図3A)、7.7G5、および6.8G6(図3C))は、二価カチオンについての必要性を示したが、Ca2+/Mg2+条件とMn2+結合条件との間で違いは観察されなかった。
【0082】
残りのクローンは、二価カチオンについての必要性を示さなかった。すなわち、10mM EDTAの存在下でこの抗原に対して結合し得た(図3B、図3Dおよび図3F)。βでトランスフェクトしたNIH 3T3細胞またはSW480細胞への抗体結合のFACS分析は、この状況では、10D5が、Ca2+/Mg2+条件とMn2+条件とで同等に結合したことを除いて同様であるパターンを明らかにした。可溶性αβへの結合に関する必要性は、タンパク質のコンホメーションまたはアビディティ効果における違いに起因して、細胞表面に発現されたαβへの結合に関する必要性とは異なり得る。
【0083】
これらの結果は、少なくとも3つの異なるクラスのβブロッキング抗体がこの群に存在することを示唆する。これらのクラスのうちの1つ(10D5)は、Ca2+/Mg2+条件とMn2+条件とを識別する。別のクラス(6.1A8、7.7G5、および6.8G6を含む)は、カチオンを必要とするが、Ca2+/Mg2+とMn2+とを識別しない。最後のクラス(抗α抗体L230、6.2B10、6.3G9(図3B)、および6.2B1(図3D)、7.1C5、および7.1G10を含む)は、カチオン非依存性である。
【0084】
精製抗体を次に、αβ−LAP相互作用を阻害する能力について評価した。実施例5d(前出)の無細胞アッセイにおいて、抗体6.1A8、6.2B1、6.3G9、および6.8G6は、10D5のIC50値よりも低いIC50値を示した(図4A;表3)。6.2B10は、より高いIC50を示したが、なお完全な阻害を与えた(図4A)。6.4B4は、ごく部分的な阻害を示し、一方、6.6B5および6.8B4は、阻害を示さなかった(図4A)。同じアッセイ系を用いて、抗体7.1C5、7.1G10、7.2A1、7.4A3、7.7G5、7.9G8、7.9H5、および7.10H2は、10D5のIC50値よりも低いIC50値を示した(図4B;表3)。抗体7.2F5、7.2H2および7.8H12は、ほぼ同一またはより高いIC50値を示したが、それでもなお完全な阻害を与えた(図4B)。
【0085】
実施例5e(前出)に記載される細胞アッセイでは、6.1A8、6.2B10および7.9D4(これらは、細胞に対する効力が、精製タンパク質に対してよりもずっと低かった)の例外を除いて、同様の傾向が観察された(図5A〜E;表3)。
【0086】
集合的に、これらの結果は、ヒトおよびマウスの両方のαβとLAPとの相互作用を特異的に阻害する抗体を本発明者らが成功裏に生成したことを示す。これらの抗体のうちのいくつかは、αβに高親和性(フローサイトメトリーによって決定したところ、見かけのKd≧0.3nM)で結合し、LAPに対する、βでトランスフェクトした細胞の結合を、≧0.05nM(8ng/mL)のIC50で阻害し、そしてTGF−β1のαβ媒介活性化を≧0.58nM(87ng/mL)のIC50で防止した。
【0087】
最後に、精製抗体を、TGF−βのαβ媒介活性化をブロックする能力に関して、PAI−1/ルシフェラーゼレポーター遺伝子アッセイ(実施例5f、前出)において評価した。再度、6.3G9、6.8G6、6.2B1、7.1G10、および7.7G5は、TGF−βのαβ媒介活性化を、10D5よりも低いIC50値で阻害し得、残りの抗体は、このアッセイにおいて、顕著により効力が低いようであった(図6Aおよび6B;表3)。従って、LAPとのαβの相互作用をブロックする能力は、インビトロでTGF−βの活性化を阻害する能力と相関する。
【0088】
【表3】

:別個の実験から得たデータ。
**:試験せず。
***:表3にまとめた全ての実験を、1mM Ca2+および1mM Mg2+の存在下で行った。
****:太字の抗体は、先行技術の抗体10D5およびL230、およびαβについて特に高い阻害効力の新たな抗体である。
【0089】
次に、可溶性αβに関する6.3G9および6.8G6の溶液親和性を、反応速度排除アッセイ(KinExA)を用いることによって決定した。可溶性インテグリンの一連の希釈物(1×10−8M〜2.4×10−12M)を、1×10−10Mのこの抗体と共に3時間インキュベートした。次いで、これらのサンプルを、KinExA機器(SapidyneInstruments,Inc.,Boise,Idaho)を用いて、インテグリンでコーティングしたポリメチルメタクリレートビーズに通過させた。6.8G6の場合、1mM CaClおよび1mM MgClを、インキュベーション緩衝液およびアッセイ緩衝液中に含めた。結合した抗体および遊離の抗体の量を、Cy5標識抗マウス二次抗体を用いて決定した。二次曲線の当てはめを、KinExAソフトウェアを用いて実施して、各相互作用に関して解離定数(Kd)を得た。この方法を用いて決定したKdは、6.3G9に関して15.6pMであり、そして6.8G6に関して22.8pMであった(図9Aおよび図9B)。従って、これらの抗体は両方とも、αβに関して非常に高い親和性を有していた。
【0090】
本発明者らは、「活性化」状態のインテグリンを認識するクラスの抗αβ抗体をさらに同定した。αβには、2つの潜在的活性化状態が存在する。第1の状態では、活性化インテグリンは、そのリガンドに関してより高い親和性を有すると同定される。この活性化状態に関して特異的な抗体は、活性化カチオン(例えば、1mM MnCl)の存在下で、インテグリンに対して増強された結合を示した。フローサイトメトリーによる1mM MnClおよび1mM MgCl(非活性化カチオン)中での結合の程度の比較は、本明細書に記載したαβ抗体(6.1A8および6.6B5を含む)のうちのいくつかが、MnClの存在下で、顕著に増強された結合を示すことを示した。
【0091】
αvβ6の第2の活性化状態では、このインテグリンは、上記の通り、潜在TGF−βを活性化し得る。短縮型αvβ6を発現する細胞株(SW480(β6−770T))を調製した。この細胞株は、LAPに結合し得たが、TMLCルシフェラーゼアッセイにおいてTGF−βを活性化できなかった(Mungerら,前出)。従って、全長βでトランスフェクトされたSW480細胞に結合するが770T短縮型でトランスフェクトされた細胞には結合しない抗体は、TGF−βを活性化し得るαβ形態に特異的であった。抗体7.8B3および抗体7.8C9は、この基準を満たした。
【0092】
(実施例8:抗体競合によるエピトープマッピング)
精製したモノクローナル抗体をまた、ELISA形式において、ビオチン化αβへの結合に関して6.8G6と競合する能力について試験した。このアッセイにおいて、6.8G6をELISAプレートにコーティングし、そして競合抗体とビオチン化αβとの混合物を、各々1mMのCa2+およびMg2+を含む緩衝液に添加した。結合したインテグリンを、エクストラアビジン−HRP結合体を用いて検出し、そして競合抗体を、結合をブロックする能力に関してスコア付けした。6.2B10(弱いブロッカー)以外の全てのコンセンサスブロッカー(表2)は、6.8G6と種々の程度に競合し得ることが示された(表4)。これらのデータは、これらのコンセンサスブロッカーが、6.8G6と同じかまたは重複するエピトープに結合することを確認する。
【0093】
【表4】

精製したモノクローナル抗体を、ELISAにおいてαβへの結合に関してビオチン化6.3G9またはビオチン化6.8G6と競合する能力に関して試験した。このアッセイにおいて、未標識のαβを、ELISAプレートにコーティングし、そして競合抗体およびビオチン化抗体の混合物を、各々1mMのCa2+およびMg2+を含む緩衝液に添加した。結合したビオチン化抗体を、ニュートラアビジン(neutravidin)−HRP結合体を用いることにより検出した。このデータは、最も強力なブロッキング抗体(例えば、6.2B1、7.1C5、および7.1G10)が、6.3G9および6.8G6の両方と、αβへの結合に関して競合することを示した(表4.1、ならびに図10Aおよび図10B)。抗体6.1A8および7.7G5は、αβに関する親和性がより低いことにおそらく起因する、より少ない競合を示した。非ブロッキング抗体または抗α抗体L230のいずれも、このアッセイにおいて6.3G9または6.8G6との競合を示さなかった。これらの結果は、αβ特異的ブロッキング抗体が、αβ上の同じかまたは重複するエピトープと結合することを示す。
【0094】
【表4.1】

(実施例9:CDR配列)
精製モノクローナル抗体のいくつかについてのcDNAを、Coliganら(編),Current Protocols in Immunology,Wiley,Media,PA(2001)に記載される通りの標準的な技術を用いて、単離し、そして配列決定した。推定アミノ酸配列を、図7Aおよび図7Bに示す。
【0095】
高親和性バインダー6.8G6、6.1A8、6.2B1、6.3G9および6.2A1の重鎖CDRのアミノ酸配列、ならびに非ブロッカー6.2G2の重鎖CDRのアミノ酸配列は、以下の通りに比較される(ダッシュはギャップを示す)。
【0096】
【表4.2】

配列番号7では、太字の「R」(12番目の残基)は、これが多型に供されており、例えば、Qであり得ることを示す。
【0097】
これらの4つの高親和性バインダーの軽鎖CDRのアミノ酸配列および非ブロッカー6.2G2の軽鎖CDRのアミノ酸配列を、以下の通りに比較する。
【0098】
【表4.3】

図7Aおよび図7Bに示されるように、二価カチオン依存性クラスに入るmAb(例えば、6.1A8および6.8G6)は、CDR内に非常に類似したアミノ酸配列を含むようであり、一方、二価カチオン非依存性mAb(例えば、6.2B1および6.3G9)は、そのCDR内に別のセットのモチーフを含む。
【0099】
抗αβモノクローナル抗体の効力および特異性は、わずかに異なるアミノ酸残基によって支配され得る。6.1A8および6.8G6の場合、可変ドメインのアミノ酸配列は、重鎖における10アミノ酸の相違(これらのうちの3つは保存的である)および軽鎖における11アミノ酸の相違を含め、非常に類似する。だが、これらの抗体は、インビトロアッセイにおいて、ほぼ100倍の活性の相違を有する。アミノ酸の相違は、ポリペプチド鎖の可変ドメイン全体に分散し、そしてこれらの残基は、単独で、または同じ鎖もしくはパートナー鎖上の残基と相乗的に機能して、この抗体の効力に影響を与え得る。重鎖において、7つの残基が、αβに近接するように、またはαβへの結合において活性な役割を果たすように、位置する。
【0100】
RGDモチーフは、多数のインテグリン結合タンパク質(リガンド)において見出される。このモチーフは、インテグリン上の結合ポケットと直接的に接触することにより、インテグリンとのそれらの相互作用を媒介することが示されている。RGD自体は、インテグリン結合タンパク質の間で完全に共通であるので、このモチーフ外の隣接残基は、インテグリン−リガンド相互作用に対して結合特異性を付与する際に役割を果たさねばならない。6.1A8および6.8G6において、1つのこのような隣接残基は、重鎖においてCDR3内の101位にある。このアミノ酸残基は、RGDモチーフと隣接し、そして抗原認識部位に位置して、結合効力および結合特異性に寄与し得る。
【0101】
6.1A8および6.8G6の同じ重鎖CDR内の他の異なる残基としては、以下が挙げられる:33(CDR1)位の残基;52位、57位、および65位の残基(CDR2);ならびに115位の残基(CDR3)。重鎖における別の相違は、フレームワーク1内の4位に存在し、これは、N末端付近にある。この残基は、結晶学的モデルによって、抗体のCDR付近に折り畳まれ、そしてαβ結合において重要な役割を果たし得ると推定される。6.1A8と6.8G6との間での残りの3つの相違は、20位(フレームワーク1)、44位(フレームワーク2)および82位(フレームワーク3)における保存的相違である。
【0102】
カチオン非依存性抗体のアミノ酸配列はまた、高度に相同である。これらは、2つのクラスに分けられ得る:RGD含有抗体6.8G6と競合するクラス(すなわち、6.2B1、6.3G9、7.10H2、7.9H5、7.1C5、7.1G10、および7.4A3);ならびに競合しないクラス(すなわち、6.2A1、6.2B10および6.4B4)。6.8G6と競合するクラスは、重鎖のCDR3中にFXYモチーフを含み、一方、非競合クラスは含まない。この相違は、FXYモチーフが、αβへのカチオン非依存性結合を媒介することに関して重要であることを示唆する。さらに、このFXY含有クラスの抗体は、αβにおける、RGD結合ポケットと重複するが異なるエピトープにおそらく結合する。抗体6.2B10および6.4B4は、FXYモチーフを含まず、そして弱いαβブロッカーである。これらは、αβ Iドメイン様部分に結合し、かつ抗αβ抗体が結合するなお別のエピトープを規定することが示された。興味深いことに、モノクローナル抗体6.2A1は、カチオン非依存性クラスに属するが、他のカチオン非依存性mAbと同様に、RGD配列を含まない。
【0103】
モノクローナル抗体7.7G5は、カチオン依存性クラスに属する。しかし、7.7G5の軽鎖配列は、カチオン非依存性Iドメイン結合抗体6.2B10に対して高度に相同性である。7.7G5の重鎖もまた、CDR1においてカチオン非依存性抗体に類似する。だが、そのCDR2およびCDR3は、カチオン依存性クラスのCDR2およびCDR3により類似する。この観察は、特異的CDRが、抗体に対する特異性を付与することを示唆する。これは、重鎖のCDR3に関して特に当てはまる。これはおそらく、抗体のうちのこの部分における高度の可変性に起因する。実際、3つのカチオン依存性抗体のうちの2つおよび9つのカチオン非依存性抗体のうちの7つは、αβの認識において重要な役割を果たすようである重鎖CDR3配列を含む。注目すべきこととして、7.7G5は、その重鎖CDR2において、RGDモチーフを欠くが、XGDモチーフを含む。このXGDモチーフは、RGDと同様の様式で機能し得、そして結合親和性/結合特異性を7.7G5に付与し得る。
【0104】
上記の配列の観察およびそこから導かれた推測は、特異的結合特性を付与する特定の可変領域アミノ酸配列の合理的設計に関する基礎を提供する。
【0105】
(実施例10:診断抗体)
パラフィン包埋組織切片または他の組織サンプル中のαβ発現を検出し得る抗体は、診断物として有用であり得る。これらの診断ツールを用いて、例えば、癌または線維症のような適応症に関して組織切片中のアップレギュレートされたαβを検出し得る。
【0106】
パラフィン包埋組織中のαβを検出する抗体を同定するために、本発明者らは、まず、抗体のパネルをHPLCで精製されたβサブユニットへの結合に関してスクリーニングした。このサブユニットを結合する抗体は、直鎖状ペプチドエピトープを認識するようであり、それゆえ、パラフィン包埋組織においてより高い成功確率を有すると期待される。プレート上に固定された(αβタンパク質ではなく)精製されたβインテグリンを用いたこと以外は、精製βサブユニットへの結合を、αβ結合を測定すること(前出)に関して記載されたELISA形式と同じELISA形式を用いて実施した。この方法を用いて、精製αβタンパク質および精製β6サブユニットの両方に結合し得る多数の融合体6抗体が同定された。以下の表5を参照のこと。ここで、クローン名における接頭語「6.」は、省略される。
【0107】
【表5】




上記に示すように、いくつかの抗体は、精製βサブユニットに結合した。これらは、変性したαβに結合する高い可能性を有し、従って、パラフィン包埋組織切片においてαβを検出する際に有用であり得る。他の抗体は、可溶性αβに結合したが、βサブユニットに結合しなかった。両方の型の抗体を用いて、パラフィン包埋した変性βトランスフェクトSW480細胞およびトランスフェクトしていない親細胞を染色した。これらのデータを表6に示す。
【0108】
パラフィン包埋組織または細胞を染色するために、サンプルスライドを、以下の溶液中でインキュベーションすることにより、最初に脱パラフィン処理した:(1)キシレン、5分間、2回;(2)100%エタノール、2分間、2回;(3)95%エタノール、2分間、2回;(4)50%エタノール、2分間、1回;および(5)蒸留水、2分間、1回。次いで、これらのスライドを、200mlのメタノールおよび3mlの30% Hからなる溶液中で15分間インキュベートして、内因性ペルオキシダーゼをブロックした。これらのスライドを、PBS中で2回、それぞれ2分間づつリンスした。次いで、スライド上のパラフィン切片を、ペプシン(Zymed 00−3009)を用いて37℃で5分間露出させた。これらのスライドを、PBS中でさらに2回、それぞれ2分間づつリンスした。次に、これらのスライドを、アビジン、次いでビオチン(Vector SP−2001;Vector Laboratories,Burlingame,CA)をそれぞれ10分間、室温で用いてブロッキングした。それぞれのインキュベーションの間に、上記の通りに洗浄を行った。ブロッキング溶液をスライドから排水した後、PBS/0.1% BSA中に希釈した一次抗体(ハイブリドーマ培養上清)を、スライドに適用し、そして4℃にて一晩インキュベートした。
【0109】
翌日、これらのスライドを、上記の通りにPBS中でリンスした。その間に、アビジン−ビオチン複合体−西洋ワサビペルオキシダーゼ溶液(ABC試薬)を、以下の通りに調製した:1mlのPBSを、Vector Kit PK−6102からの20μlの溶液A(1:50)および20μlの溶液B(1:50)と混合した;そしてこれらの混合物を、使用前に30分間、室温でインキュベートした。この間に、これらのスライドを、15μl/ml正常血清とともにVector Kitからの抗マウス−ビオチン化抗体(1:200)を用いて30分間、室温でインキュベートした。次いで、これらのスライドを、PBS中で2回、それぞれ2分間リンスした。次いで、上記のABC試薬をこれらのスライドに適用し、そして室温で30分間インキュベートした。これらのスライドを上記の通りに再度リンスした。次いで、基質(Vector SK−4100)、100μlのDAB(3,3’−ジアミノベンジジン)をこれらのスライドに適用し、そして室温で5分間インキュベートした。DABを以下の通りに調製した:5mlのHOに、2滴の緩衝液ストック溶液を添加し、充分に混合する;次いで、4滴のDABストック溶液を添加し、充分に混合する;次いで2滴のH溶液を添加し、充分に混合する。次いで、これらのスライドを、流水中で2分間リンスした。次に、DABシグナルを、全てのスライドに関して以下の通りに増感した:パラフィン切片を0.05M重炭酸ナトリウム(pH9.6)中で10分間リンスする;過剰な緩衝液をブロットする;DAB増感溶液を15秒間適用する;次いで、水を用いて1分間迅速にリンスして、反応を停止させる。次いで、これらのスライドを、Mayerのヘマトキシリシン(核対比染色剤)中で1分間染色した。これらのスライドを、流水中で1分間リンスし、次いでPBS中に1分間浸漬し、その結果、ヘマトキシリンは青色になった。次いで、これらのスライドを流水中で1分間再度リンスし、そして以下の通りに脱水および浄化した:(1)95%エタノール中に1分間、2回浸漬する;(2)100%エタノール中に1分間、2回浸漬する;そして(3)キシレン中に2分間、2回浸漬する。次いで、パーマウント(permount)を用いて、これらのスライドにカバーガラスを適用した。
【0110】
これらの結果は、融合体6抗体1A1、2C4、3B2、3B11、5D6、5G9、5H3、6D12、7C7、9B5、9B7、9D11、9F5、10E4、10H11、6H8、7A5、7G9、9A3、2A1、2E5、4E4、4H4、8B4、2G2、および4E6(これらは全て、精製βサブユニットに結合し得る(表5))が、実際に、パラフィン包埋されたβトランスフェクトSW480細胞を強く染色し、一方、トランスフェクトされていない親細胞を染色しないことを示唆した(表6)。
【0111】
【表6】


(実施例11:癌の診断)
αβは、通常、健常成体組織において、無視し得るレベルから低いレベルで発現される。しかし、αβ発現は、傷害、線維症、および癌においてアップレギュレートされる (例えば、ThomasらJ.Invest.Dermatology 117:67−73(2001);Bruntonら,Neoplasia 3:215−226(2001);Agrezら,Int.J.Cancer 81:90−97(1999);Breuss,J.Cell Science 108:2241−2251(1995)を参照のこと)。従って、パラフィン包埋組織上に発現される、αβに特異的に結合する抗体を標準的免疫組織化学技術において用いて、線維症、癌およびαβがアップレギュレートされる任意の他の疾患の診断のためにαβ発現を検出し得る。
【0112】
上記のように、本発明の特定の抗体は、HPLCで精製したβインテグリンおよびパラフィン包埋して固定したβトランスフェクト細胞に結合する。これらの抗体はまた、免疫染色において、代表的な扁平上皮組織および乳癌組織に結合することが示された。例えば、図8(ここで、モノクローナル抗体6.2A1を用いて、パラフィ包埋した乳癌および扁平上皮癌の相対的染色を示す)を参照のこと。従って、これらの新たな抗体は、診断ツールとして有用である。
【0113】
(実施例12:Alportマウスにおける抗αβブロックmAbの効果)
コラーゲン4A3(COL4A3)ノックアウト(Alport)マウスは、腎臓線維症に関するインビボモデルとして確立されており、そして薬理学的薬剤の治療効果を試験するために用いられている(前出)。本発明者らは、AlportマウスにおいてmAb 6.8G6(カチオン依存性)および6.3G9(カチオン非依存性)を試験して、これらが、7週齢のAlportマウスにおいて通常観察される線維症を阻害するか否かを決定した。上記に示すように、これらの2つの抗体は、バイオアッセイにおいて、LAPに対するαβ結合を阻害することおよびTGF−βの活性化を阻害することが見出された。抗体1E6を、ネガティブコントロールとして用いた。
【0114】
3週齢のAlportマウスに、1週間に3回、以下の抗体のうちの1つの腹腔内注射を与えた:(1)6.8G6、4mg/kg(7匹のマウス);(2)6.3G9、4mg/kg(4匹のマウス);および(3)1E6、1mg/kg(6匹のマウス)。注射を4週間続けた。次いで、これらのマウスを屠殺し、これらの腎臓を取り出した。
【0115】
これらの腎臓のパラフィン包埋切片を上記の通りに作製し、次いで染色して、腎臓線維症における筋芽細胞およびマトリクス沈着のマーカーである、平滑筋アクチンを検出した。本発明者らは、1E6で処置したマウスと比較しての平滑筋アクチン染色における顕著な減少を、mAb 6.8G6または6.3G9で処置したAlportマウス由来の腎臓の間質領域および糸球体領域の両方において見出した。
【0116】
図11Aおよび図11Bは、Alport腎臓の糸球体領域および間質領域における平滑筋アクチン染色のドットプロットを示す。6.8G6で処置したAlportマウスおよび6.3G9で処置したAlportマウスの腎臓において、ネガティブコントロールの1E6処置マウスと比較して顕著に減少した平滑筋アクチン染色が存在した。
【0117】
(実施例13:片側性尿管閉塞誘発性腎硬化症を予防する際の抗αβ mAbの有効性)
本発明者らは、腎線維症進行に関する別のマウスモデルを用いて、6.8G6および6.3G9の抗線維症効力を試験した。このマウスモデルでは、この動物の尿管を結紮し、片側性尿管閉塞(UUO)をもたらした。UUOは、マウスにおいて近い将来の腎不全を引き起こさずに進行性腎硬化症を引き起こす。なぜなら、閉塞していない腎臓は、比較的正常な腎機能を維持し得るからである。閉塞した腎臓は迅速な全般的線維症を受ける一方で、閉塞していない腎臓は、順応性肥大を受ける。
【0118】
本研究は、UUO誘発性腎線維症に対する抗αβ処置の影響を体型測定的に定量した。雄性の8〜12週齢のウイルス抗原を含まないC57BLマウス(体重25.5±0.2g)(Jackson Laboratories,Bar Harbor,ME)を用いた。これらのマウスを、本研究の開始前に7日間順応させた。これらのマウスは、順応期間および実験期間の間を通して、照射された標準的なマウス餌および滅菌水を自由に利用できた。体重を、動物の健康状態のモニタリングの一部として、間隔をおいて測定した。これらの結果は、齢が一致した未手術のマウスが、2週間の研究期間にわたって、約10%の体重増加をすることを示した。UUOマウスは、2日目までに約9%の体重が減少したが、失った体重が14日目までに徐々に再度増加した。この体重変化のパターンは、治療処置に関係なく生じた。
【0119】
腎線維症を誘発するために、左の尿管を、ケタミン:キシラジン(100:10mg/kg s.c.)麻酔下での正中線左側の側腹切開によって無菌的に単離した。2本の堅固な閉鎖性6−0絹結紮糸を、尿管上に、腎臓の下極のレベルに配置し、そして尿管を結紮糸の間で切除した。腹部壁を4−0 Vicryl縫合糸で閉鎖し、そして皮膚を4−0ナイロンで閉鎖した。これらの動物を、加熱パッド上で回復させ、そして0.05mg/kg s.c.のブプレノルフィンを1日2回、0日目および1日目にを与えた。この手順は、Maら,Kidney Int.53(4):937−944(1998)から適応させた。
【0120】
次いで、これらのマウスを、以下の研究群に分けた:
【0121】
【表7】

5群における動物以外の全ての動物に、手術前日から開始して、週に2回投与した。
【0122】
次いで、これらの動物を、結紮後10日目に二酸化炭素を用いて安楽死させ、そして切開した。UUOマウスでは、腎盂および尿管は顕著に腫脹しており、閉塞している結紮糸より上には液体が充填されていた。腫脹の程度および残りの腎臓組織量の程度は、処置群の間で変化した。2群は、ネガティブコントロール群の約半分の腫脹を示した。結紮した腎臓は、色が薄かった。反対側の腎臓は、明るい赤色であり、約3分の1拡大していた。
【0123】
次に、これらの動物の両方の腎臓(左を結紮し、右側を結紮しなかった)を取り出し、そして腎盂の中心を通るように横に半分に切った。各腎臓の半分を、固定組織染色のために10%中性緩衝化ホルマリン中に配置した。各腎臓の他方の半分を、免疫組織化学染色のために、15%スクロース、続いて30%スクロース中に配置した。
【0124】
ホルマリン固定腎臓切片を、線維症のマーカーである、筋線維芽細胞(平滑筋アクチン)に関して免疫染色した。画像を、標準化した照明条件およびディジタルカメラ露出設定を用いて捕捉し、バックグラウンドに関して補正し、そして距離の標準に対して較正した。左腎臓切片全体を含む連続視野の画像を、定量のために各動物から撮影した。
【0125】
平滑筋アクチンを、測定した視野内の総組織面積のパーセントとして表現した。これらは、腎乳頭以外の切片由来の全ての皮質組織および髄質組織を含んでいた。
【0126】
結論として、6.3G9で処置したマウスおよび6.8G6で処置したマウスは、線維症における顕著な減少を示す。
【0127】
(実施例14:マウスにおけるブレオマイシン誘発性肺線維症に対する抗αβブロッキングmAbの有効性)
マウスにおけるブレオマイシン誘発性肺線維症は、肺線維症に関するインビボモデルとして確立されており、そして薬理学的薬剤の治療効果を試験するために用いられている。炎症が、ブレオマイシン処置の5〜15日後に通常明らかである。129系統マウスでは、肺線維症の程度は、ブレオマイシン処置60日後まで徐々に増大する。マトリクス蓄積は、通常、15日目あたりで検出可能になる。この例では、mAb 6.3G9を、0日目または15日目に開始して、1週間に3回、ブレオマイシン誘発性肺線維症を有するマウス中に4mg/kg/用量の濃度で腹腔内注射した。肺線維症を、50μlの無菌生理食塩水中0.03単位/kgの濃度での1回の気管内用量のブレオマイシンの投与によって0日目に誘発した。これらの動物を30日目に屠殺し、そして肺線維症の程度を評価した。抗体1E6を、ネガティブコントロールとして用いた。
【0128】
肺を各動物から収集し、そしてヒドロキシプロリン含有量を、Mungerら(前出)に記載される通りに、肺コラーゲン沈着指数として測定した。図15Aに示すように、0日目に開始した、6.3G9を用いた処置は、肺ヒドロキシプロリン含有量におけるブレオマイシン誘発性増加を有意に阻害した。重要なことに、6.3G9処置は、ブレオマイシン投与15日後(コラーゲン沈着が既に始まった時点)に開始した場合、少なくとも同等に有効であった。
【0129】
本発明者らはまた、長期化したブレオマイシン誘発性線維症プロトコル(60日間続く)において、より実質的な程度の肺線維症を阻害する際の6.3G9、カチオン依存性6.8G6、および非ブロッキング抗体6.4B4の効果を調べた。これを行うために、本発明者らは、ブレオマイシン投与後15日目(15日目)に抗体処置を開始した。次いで、肺を60日目に収集して、ヒドロキシプロリン含有量を決定した。図15Cに示すように、6.8G6を用いた処置は、ブレオマイシン誘発性線維症を有意に阻害した(ブレオマイシンおよび生理食塩水で処置した動物と比較して、ヒドロキシプロリン含有量の70%を超える減少)。6.3G9を用いた処置はまた、防御の傾向を示したが、これらの結果は統計学的有意性には至らなかった(図15C)。
【0130】
結論として、カチオン依存性抗αβブロッキングmAbおよびカチオン非依存性抗αβブロッキングmAbは両方とも、ブレオマイシンを用いて処置されたマウスにおいて肺線維症を減少させた。さらに、この介入は、抗体処置を線維症の最初の発症後まで開始しなかった場合でさえも有効であった。
【0131】
(実施例15:ヒト乾癬損傷におけるαβのアップレギュレーション)
αβが乾癬に関与するか否かを決定するために、5人の乾癬患者および4人の正常個体由来のαβ発現を損傷皮膚生検および損傷していない皮膚生検について調べた。mAb 6.2A1免疫染色を用いて、本発明者らは、乾癬患者および正常コントロール由来の損傷していない皮膚と比較して、乾癬損傷におけるαβ発現の顕著な増大を見出した。従って、乾癬損傷におけるαβのアップレギュレーションは、抗αβ抗体の使用に関する診断的関連および治療的関連の両方を示唆する。
【0132】
(実施例16:胆管疾患を有するマウスおよびヒトの肝臓におけるαβのアップレギュレーション)
以前に考察した通り、αβ発現は、組織損傷に関連している。本研究において、αβの発現を、胆管疾患によって損傷を受けたマウスおよびヒトの肝臓において調査した。
【0133】
マウスにおける肝臓傷害を、胆管の結紮により誘発した。例えば、Georgeら,PNAS 96:12719−24(1999);Georgeら,Am J Pathol 156:115−24(2000)を参照のこと。mAb 6.2G2を用いて、本発明者らは、αβの発現が、胆管結紮後9日目、14日目および16日目に有意に上昇することを見出した。
【0134】
同様に、胆管疾患を有する患者由来のヒト肝臓切片は、mAb 6.2G2を用いた免疫組織化学によって決定したところ、αβのアップレギュレートされた発現を示した。αβの上昇した発現は、例えば、急性胆汁うっ血を有する44歳男性、急性胆管閉塞を有する手術後の59歳男性、胆道閉鎖症を有する22歳男性、および慢性胆管閉塞を有する24歳男性に由来する肝臓サンプルにおいて観察された。
【0135】
まとめると、新たな抗αβ抗体は、肝臓疾患に関する有用な診断ツールおよび治療ツールである。
【0136】
(実施例17:種々のヒト癌におけるαβのアップレギュレーション)
インテグリンαβは、通常、無視し得るレベルから低いレベルで、健常な成体組織にいて発現される。種々のヒト腫瘍組織を、抗体6.2A1および本明細書中に一般的に記載される方法を用いて、αβ発現に関して評価した。これらの結果は、αβインテグリン発現が、いくつかのヒト上皮癌において顕著にアップレギュレートされることを示した。顕著なことに、免疫組織学は、αβが、多くの上皮癌において腫瘍島の縁部に特に顕著に発現されることを示した。上皮癌細胞におけるαβの発現をさらに研究するために、Detroit 562細胞(咽頭癌)およびSCC−14細胞(舌扁平上皮癌)ならびにSW480β細胞(前出)を、6.3G9および6.4B4で染色し、そしてフローサイトメトリーにより分析した。
【0137】
図12の右側は、蛍光活性化細胞選別(FACS)において6.3G9結合によって示された場合の、異なる腫瘍細胞株についてのαβ発現を示す。黒塗りのピークは、6.3G9結合を示し、一方、白塗りのピークは、二次mAb単独でのバックグラウンド結合を表す。図12の左側の折れ線グラフは、漸増濃度の6.3G9または6.4B4による、LAPリガンドに対する腫瘍細胞株の結合の阻害を示す。6.4B4は、6.3G9と比較して、LAPに対するαβ結合の、有意に効力が低いインヒビターであった(Detroit 562に関して10倍を超えるIC50、SW480β6に関して30倍を超えるIC50、そしてSCC−14に関して100倍を超えるIC50)。これは、以前のインビトロでの結果と一貫しており、6.3G9が強力なブロッキングmAbであり、そして6.4B4が弱いブロッキングmAbであることを示す。このデータはまた、Detroit異種移植片モデルにおける6.4B4の無視し得る阻害活性と一貫している(図14B)。図13は、種々の抗αβ mAbによる、LAPに対する腫瘍細胞株の結合の相対的阻害をさらに示す。6.3G9および6.8G6は両方とも、等価な阻害活性を提示し(全ての以前のデータと一貫している)、一方、6.4B4は、LAPに対するαβ結合の有意に効力の低いインヒビターであった。
【0138】
(実施例18:ヒト腫瘍異種移植片モデルにおける抗αβブロッキングmAbの効果)
ヒト腫瘍異種移植片を移植した免疫不全動物(例えば、ヌードマウスおよびSCIDマウス)は、抗癌剤の治療効果を試験するための有用なインビボモデル系として確立されている(例えば、van Weerdenら,Prostate 43(4):263−71(2000);Bankertら,Front Biosci 7:c44−62(2002)を参照のこと)。従って、本発明のブロッキング抗αβモノクローナル抗体は、異種移植片モデルにおいて、腫瘍増殖を阻害する能力に関してインビボで試験され得る。この実験において、本発明者らは、新たなαβ抗体のうちのいくつかを、癌性ヒト咽頭(Detroit 562細胞株)異種移植片を移植した無胸腺ヌード雌性マウスにおいて、腫瘍増殖を阻害する能力に関して試験した。
【0139】
これを行うために、Detroit 562細胞(ATCC)を、インビトロにおいて、2mM L−グルタミン、ならびに1.5g/L重炭酸ナトリウム、0.1mM非必須アミノ酸、および1.0mMピルビン酸ナトリウムを含むように調整したEarleのBSS、ならびに10%ウシ胎仔血清を含み抗生物質を含まない最小必須培地(Eagle)中で継代した。約5×10細胞/0.2ml培地(血清を含まない)を、ヌードマウスの右側腹部に皮下移植した。3〜4日後、腫瘍サイズの測定を開始し、腫瘍が約5mm(長さ)×5mm(幅)になるまで継続した。これらのマウスを無作為化し、そして1日目に試験抗体またはコントロール溶液を腹腔内注射し、続いて毎週3回、33日間の期間にわたって注射した。試験抗体およびコントロール溶液は以下の通りであった:(1)6.3G9、1mg/kg、10匹のマウス;(2)6.3G9、4mg/kg、10匹のマウス;(3)6.3G9、10mg/kg、10匹のマウス;(4)6.4B4、1mg/kg、10匹のマウス;(5)6.4B4、4mg/kg、10匹のマウス;(6)6.4B4、10mg/kg、10匹のマウス;および(7)ビヒクルコントロール(PBS)、0.2ml/マウス、30匹のマウス。さらに、シスプラチンを、化学療法剤コントロールとして、10匹のマウスに2mg/kg皮下注射した。シスプラチン注射を1日目、次いで2日毎に合計6回の処置で行った。33日間の期間の終わりに、動物の体重および腫瘍サイズを測定し、αβ発現を免疫組織学によって評価し、そして血清抗αβレベルを測定した。
【0140】
免疫組織学的染色は、移植した腫瘍細胞がαβをインビボで強く発現することを示した。腫瘍重量のデータはさらに、ブロッキングmAb 6.3G9が、試験した全ての濃度において腫瘍増殖を有効に阻害することを示した(図14A)。対照的に、弱いブロッキングmAb 6.4B4は、腫瘍増殖を阻害しなかった(図14B)。
【0141】
まとめると、ブロッキング抗体は、処置したマウスにおいて、腫瘍増殖を40%〜50%阻害した。対照的に、弱いブロッキング抗αβ抗体は、腫瘍増殖を阻害しなかった。
【0142】
(実施例19:αβ抗体のインターナリゼーション)
細胞によってインターナリゼーションされる抗体は、特定の臨床的適応症(例えば、癌)に関して利点を提供する。なぜなら、これらの抗体は、次いで、癌細胞を選択的に標的かして癌細胞の増殖を選択的に阻害するために、毒素、放射性化合物または他の抗癌剤と結合体化され得るからである。抗αβ抗体がインターナリゼーションされる能力を、SW480β6(前出)およびSCC−14細胞において試験した。
【0143】
細胞を1:5に分け、そして37℃、5% COにおける一晩のインキュベーションのために、4室ガラススライドにプレーティングした。翌日、mAb 6.8G6、6.1A8、6.3G9、7.1C5、6.4B4、10D5、および8B3を20μg/mLの最終濃度に希釈した。これらのmAbまたは培地単独を、適切なウェルに添加した。インターナリゼーションの時間経過を、0時間〜48時間にて行った。含まれる時点は、0分間、5分間、10分間および30分間、ならびに1時間、4時間、24時間および48時間であった。二次抗体(抗マウス−Alexa 594)をネガティブコントロールとして添加した。インターナリゼーションを、抗体を除去し、そして細胞層を緩衝液で洗浄することにより各時点で停止させた。小麦胚芽凝集素−Alexa−488を18℃にて20分間添加して、細胞の外側縁部を緑色蛍光により染色した。細胞を洗浄した後、Cytofix/Cytoperm溶液を18℃にて20分間添加し、そして細胞を同定および透過化した。細胞を再度洗浄し、そして二次抗マウス−Alexa 594(赤色蛍光)を18℃にて20分間添加して、結合またはインターナリゼーションされたαβ抗体を標識した。次いで、これらの細胞を洗浄し、そして2%パラホルムアルデヒドの添加により固定し、そして共焦点顕微鏡法により調べた。次いで、Leitz Plan−Apochromatic 63×(1.32開口数、油(ail)浸)対物レンズ(Leica)を2×ディジタルズームにて用いて画像を得た。各フレームは、全ての条件下で、インターナリゼーションについて観察された細胞の中央セクションから単一の光学切片を提示した。核においては染色は観察されなかった。
【0144】
インターナリゼーションは、カチオン依存性mAb(RGD含有リガンド模倣物)(例えば、6.8G6および6.1A8)に関して観察された。インターナリゼーションは、カチオン非依存性mAb(例えば、6.3G9、7.1C5、および6.4B4)に関して観察されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
αβに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下:
(a)重鎖相補性決定領域(CDR)1、重鎖CDR2および重鎖CDR3であって、該重鎖CDR1は、配列番号3に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号3に示すアミノ酸配列を含み、該重鎖CDR2は、配列番号6に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号6に示すアミノ酸配列を含み、そして、該重鎖CDR3は、配列番号9に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号9に示すアミノ酸配列を含む、重鎖CDR1、重鎖CDR2および重鎖CDR3;ならびに
(b)軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3であって、該軽鎖CDR1は、配列番号12に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号12に示すアミノ酸配列を含み、該軽鎖CDR2は、配列番号14に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号14に示すアミノ酸配列を含み、そして、該軽鎖CDR3は、配列番号18に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号18に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3
を含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
前記重鎖CDR1が配列番号3に示すアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2が配列番号6に示すアミノ酸配列を含み、そして、前記重鎖CDR3が配列番号9に示すアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
前記軽鎖CDR1が配列番号12に示すアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2が配列番号14に示すアミノ酸配列を含み、そして、前記軽鎖CDR3が配列番号18に示すアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
αβに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下:
(a)重鎖CDR1、重鎖CDR2および重鎖CDR3であって、該重鎖CDR1は、配列番号1に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号1に示すアミノ酸配列を含み、該重鎖CDR2は、配列番号4に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号4に示すアミノ酸配列を含み、そして、該重鎖CDR3は、配列番号7に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号7に示すアミノ酸配列を含む、重鎖CDR1、重鎖CDR2および重鎖CDR3;ならびに
(b)軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3であって、該軽鎖CDR1は、配列番号10に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号10に示すアミノ酸配列を含み、該軽鎖CDR2は、配列番号13に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号13に示すアミノ酸配列を含み、そして、該軽鎖CDR3は、配列番号15に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号15に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3
を含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記重鎖CDR1が配列番号1に示すアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2が配列番号4に示すアミノ酸配列を含み、そして、前記重鎖CDR3が配列番号7に示すアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
前記軽鎖CDR1が配列番号10に示すアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2が配列番号13に示すアミノ酸配列を含み、そして、前記軽鎖CDR3が配列番号15に示すアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
前記重鎖CDR1が配列番号1に示すアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2が配列番号4に示すアミノ酸配列を含み、そして、前記重鎖CDR3が配列番号7に示すアミノ酸配列を含み;かつ、前記軽鎖CDR1が配列番号10に示すアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2が配列番号13に示すアミノ酸配列を含み、そして、前記軽鎖CDR3が配列番号15に示すアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
αβに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体は、以下:
(a)重鎖CDR1、重鎖CDR2および重鎖CDR3であって、該重鎖CDR1は、配列番号2に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号2に示すアミノ酸配列を含み、該重鎖CDR2は、配列番号46に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号46に示すアミノ酸配列を含み、そして、該重鎖CDR3は、配列番号47に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号47に示すアミノ酸配列を含む、重鎖CDR1、重鎖CDR2および重鎖CDR3;ならびに
(b)軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3であって、該軽鎖CDR1は、配列番号48に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号48に示すアミノ酸配列を含み、該軽鎖CDR2は、配列番号13に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号13に示すアミノ酸配列を含み、そして、該軽鎖CDR3は、配列番号16に示すアミノ酸配列、または、1つのアミノ酸位置に置換を有する配列番号16に示すアミノ酸配列を含む、軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3
を含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
前記重鎖CDR1が配列番号2に示すアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2が配列番号46に示すアミノ酸配列を含み、そして、前記重鎖CDR3が配列番号47に示すアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
前記軽鎖CDR1が配列番号48に示すアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2が配列番号13に示すアミノ酸配列を含み、そして、前記軽鎖CDR3が配列番号16に示すアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
前記重鎖CDR1が配列番号2に示すアミノ酸配列を含み、前記重鎖CDR2が配列番号46に示すアミノ酸配列を含み、そして、前記重鎖CDR3が配列番号47に示すアミノ酸配列を含み;かつ、前記軽鎖CDR1が配列番号48に示すアミノ酸配列を含み、前記軽鎖CDR2が配列番号13に示すアミノ酸配列を含み、そして、前記軽鎖CDR3が配列番号16に示すアミノ酸配列を含む、請求項8に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
αβに結合する単離された抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下:
(a)ハイブリドーマ6.2E5(ATCC寄託番号PTA−3897)によって産生される抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、重鎖CDR2および重鎖CDR3と、ハイブリドーマ6.2E5(ATCC寄託番号PTA−3897)によって産生される抗体の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3;あるいは
(b)該重鎖または軽鎖のCDR1、CDR2またはCDR3の1以上における1つのアミノ酸位置の置換を除いて(a)と同一である抗体または抗原結合フラグメント
を含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
前記抗体または抗原結合フラグメントが、ハイブリドーマ6.2E5(ATCC寄託番号PTA−3897)によって産生される抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列のアミノ酸配列を含む重鎖CDR1、重鎖CDR2および重鎖CDR3と、ハイブリドーマ6.2E5(ATCC寄託番号PTA−3897)によって産生される抗体の軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列のアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1、軽鎖CDR2および軽鎖CDR3を含む、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変ドメインを含む、単離された抗αβ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該重鎖CDR1が配列番号3に示すアミノ酸配列を含み、該重鎖CDR2が配列番号6に示すアミノ酸配列を含み、そして、該重鎖CDR3が配列番号9に示すアミノ酸配列を含む、単離された抗αβ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変ドメインを含む、単離された抗αβ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該重鎖CDR1が配列番号1に示すアミノ酸配列を含み、該重鎖CDR2が配列番号4に示すアミノ酸配列を含み、そして、該重鎖CDR3が配列番号7に示すアミノ酸配列を含む、単離された抗αβ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変ドメインを含む、単離された抗αβ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該重鎖CDR1が配列番号2に示すアミノ酸配列を含み、該重鎖CDR2が配列番号46に示すアミノ酸配列を含み、そして、該重鎖CDR3が配列番号47に示すアミノ酸配列を含む、単離された抗αβ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項17】
CDR1、CDR2およびCDR3を含む重鎖可変ドメインを含む、単離された抗αβ抗体またはその抗原結合フラグメントであって、該重鎖CDR1、CDR2およびCDR3は、ハイブリドーマ6.2E5(ATCC寄託番号PTA−3897)によって産生される抗体の重鎖CDR1、CDR2およびCDR3配列のアミノ酸配列を含む、単離された抗αβ抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項18】
αβへの結合について6.8G6(ATCC寄託番号PTA−3645)と競合し得、そして、重鎖のCDR3内にFXYモチーフを含む、単離された抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
ATCC寄託番号PTA−3645として寄託されたハイブリドーマによって産生される抗体によって結合されるものと同じαβのエピトープに結合する、単離された抗体。
【請求項20】
細胞傷害性薬剤、放射性化合物、または抗癌剤に結合体化される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項21】
ポリエチレングリコールに結合体化される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項22】
蛍光部分に結合体化される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項23】
ヒトにおいてにαβよって媒介される疾患を予防または処置するための組成物であって、請求項1〜21のいずれか1項に記載の抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む、組成物。
【請求項24】
前記疾患が線維症である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記線維症が肺線維症である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記疾患が急性肺傷害である、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
前記疾患が癌である、請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
前記癌が、口腔癌、皮膚癌、頸部癌、卵巣癌、咽頭癌、喉頭癌、食道癌、肺癌、乳癌、腎臓癌または結腸直腸癌である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
ヒト被験体由来の組織サンプルにおいてαβをインビトロ検出する方法であって、該組織サンプルを、請求項1〜22のいずれか1項に記載の抗体と接触させる工程を包含する、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A−5B】
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【図5C−5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【公開番号】特開2013−14592(P2013−14592A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−177348(P2012−177348)
【出願日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【分割の表示】特願2009−11451(P2009−11451)の分割
【原出願日】平成15年3月13日(2003.3.13)
【出願人】(592221528)バイオジェン・アイデック・エムエイ・インコーポレイテッド (224)
【出願人】(506115514)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (87)
【Fターム(参考)】