説明

抗う蝕機能を有する組成物

【課題】抗う蝕機能を有する材料に関し、特に、歯の再石灰化などにより、う蝕の発生を
低下させる、飲食用組成物および口腔用組成物を提供する。
【解決手段】抗う蝕機能を有する飲食用組成物および口腔用組成物であって、ここで該組
成物は、緩衝剤を含む。緩衝剤は、以下の(1)または(2)ではない:(1)ジャガイ
モデンプンから調製され、α−1,4結合した3〜5個のグルコースからなり、そして1
個のリン酸基が結合しているグルカンであり、リン酸化オリゴ糖;または(2)ジャガイ
モデンプンから調製され、α−1,4結合した2〜8個のグルコースからなり、そして2
個のリン酸基が結合しているグルカンである、リン酸化オリゴ糖。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗う蝕機能を有する飲食用組成物および口腔用組成物に関する。より詳細に
は、歯の再石灰化などによりう蝕の発生を低下させるような、抗う蝕機能を有する飲食用
組成物および口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
う蝕とは、歯面に存在する口腔内細菌によって産生された有機酸が、何らかの障害物の
ために拡散を妨げられ、歯が高濃度の有機酸にさらされることによって、歯面に脱灰が生
じることである。この意味では、代謝により有機酸を産生するすべての糖発酵能を持つ口
腔内細菌がその原因となり得る。有機酸産生に好都合な基質は糖類であり、これにはグル
コース、スクロースなどの単糖類や少糖類、単糖の重合体であるデンプンなどの多糖類が
ある。
【0003】
有機酸の拡散が妨げられる要因は、大きく分けると、(1)食事により摂取されたデン
プンの歯頸部および歯根部への滞留、(2)スクロースなどの分解されやすい糖(すなわ
ち、発酵性の糖)を基質として細菌が産生した不溶性のグルカンの歯面への固着、の2つ
となる。
【0004】
上記要因(1)は、乳酸桿菌等の口腔内に存在する糖発酵能を持つすべての細菌が原因
菌として考えられる。この場合のう蝕の進行は一般的に遅いことが公知であり、高濃度の
有機酸産生環境の創出は、細菌にとっては受動的要因が高い。
【0005】
上記要因(2)は、スクロース含有食品が多い現代のう蝕の主要因となるものであり、
この原因菌には、ストレプトコッカス・ミュータンスおよびストレプトコッカス・ソブリ
ヌスが考えられている。両菌は直径0.6μm程度の球状の個々の菌が、数珠状に連鎖し
た形態を持つ連鎖球菌の一種である。両菌はスクロースの存在下で、非水溶性のα−グル
カンを活発に産生する。このグルカンは、極めて強く歯の表面に付着する性質を持つ。ま
た、スクロースを速やかに代謝し、酸産生能を発揮する。また、菌自体が強い耐酸性を有
するため、他の菌が生育できないような酸性下でも生存することができる。非水溶性グル
カンは、その粘着性により、歯の表面等に細菌を強固に結合する性質があり、また、歯面
に吸着した非水溶性グルカンによって、菌が産生した有機酸が拡散を妨げられ、歯面が高
濃度の有機酸にさらされる環境が作り出される。要因(1)の場合と比べると、高濃度の
有機酸産生環境の創出は、細菌にとっては能動的要因が高いと考えられる。この場合のう
蝕の進行は要因(1)に比べて速い。
【0006】
歯の健康を考える上で歯質の脱灰と再石灰化というミクロ的なレベルからう蝕予防への
新たなアプローチも実践されてきている(非特許文献1)。歯の表面はカルシウムおよび
リン酸結晶構造物であるハイドロキシアパタイト[Ca10(PO46(OH)2]で構成
され、エナメル質と呼ばれる。エナメル質は歯の中で最も硬い部分であり、歯垢中の細菌
が作り出す有機酸、食品に含まれる酸などによってエナメル質の内側から大切なカルシウ
ムやリン酸が溶け出す(脱灰)のを防御している。有機酸は、水分で満たされたエナメル
小柱間空隙からエナメル質に浸透し、ハイドロキシアパタイトを脱灰と呼ばれるプロセス
により溶解する。このエナメル質組織からのカルシウムとリン酸塩の喪失が、結果的にエ
ナメル質表層下の初期う蝕となる。後述するように、本発明によれば、この段階でのう蝕
は修復可能であり、カルシウムおよびリン酸塩イオンが表層下のう蝕部分に浸透し、再石
灰化と呼ばれるプロセスによって、喪失したアパタイトを元に戻すことができる。
【0007】
プラーク(歯垢)のpHは、発酵性炭水化物を含む飲食物を摂取するたびに、酸性に傾
き、脱灰の始まる臨界pHを越える。これはプラーク中の酸産生細菌の働きによるもので
ある。プラークのpHは、唾液の緩衝作用を受けると中性に戻り、唾液中のカルシウムイ
オンおよびリン酸イオンが再びプラークを介して歯質に再石灰化する。
【0008】
従って、虫歯を予防および処置するための手段として、う蝕の原因である口腔内細菌の
栄養源にならず、有機酸を生成させないこと;う蝕の原因であるミュータンス菌の栄養源
にならず、非水溶性のグルカンおよび有機酸を生成させないこと;脱灰の始まるpHを越
えないように、この有機酸によるpHの低下を防ぐこと(例えば、緩衝作用を有し、pH
の低下を防ぐこと);再石灰化を促進することなどが注目される。
【0009】
抗う蝕物質として、種々の物質がこれまでに知られている。
【0010】
う蝕は、ミュータンス菌が砂糖を栄養源として、酵素グルコシルトランスフェラーゼの
作用により、非水溶性のグルカンをつくることから始まる。このグルカンが歯の表面を覆
うために、歯垢が生じる。この歯垢の内部でミュータンス菌が酸発酵を起こすと、歯が溶
け出して虫歯となる。
【0011】
非う蝕の糖としては、ミュータンス菌の栄養源にならないいくつかのオリゴ糖(非特許
文献2)が既に提案されている。このような非う蝕の糖としては、パラチニット(特許文
献1)が挙げられる。パラチニットが、フッ素または亜鉛と組み合わせられることにより
、歯の再石灰化が促進された(特許文献2)。しかし、パラチニットは、甘味の質が悪い
ため、食品への使用には好ましくない。また、パラチニットの再石灰化効果のためには、
約1〜20重量%という高濃度を配合させることが必要とされる。
【0012】
糖アルコール(特に、キシリトール)もまた、抗う蝕性物質として公知である(例えば
、特許文献3および4)。特許文献5には、キシリトール、マンニトール、ガラクチトー
ル、およびイノシトールから選択される1種以上の糖アルコールを含む口腔用組成物が開
示される。特許文献5には、これら糖アルコールが、細菌の成育抑制だけではなく、歯の
再石灰化を促進し得ることもまた記載されている。糖アルコールは高濃度でしか効果がな
いにも関わらず、多量摂取によって軟便を誘発することが知られている。また、本実施例
にも記載されているように、キシリトールの効果は殆ど確認できなかった。
【0013】
さらに、抗う蝕剤として茶の成分であるポリフェノールが報告され利用されている(非
特許文献3)。しかし、ポリフェノールの利用もまた味覚の問題があり、用途は制限され
ている。
【0014】
現在、再石灰化効果を示す物質として、フッ素が最も有効であるといわれている。フッ
素は、約2ppmで十分な効力を発揮する。フッ素の効力としては、以下の2点が明らか
となっている。むしろ、(2)の効果を期待されて使用されている:(1)再石灰化を促
す;および(2)フッ素がハイドロキシアパタイトの結晶に組み込まれることにより脱灰
されにくい、強固な結晶構造に変化する。このようなフッ素は、近年、種々の口腔組成物
中に添加されてきている。例えば、特許文献6には、炭酸カルシウムと可溶性フッ素化合
物とを含有する口腔用組成物が開示されている。フッ素イオンは、糖アルコールと組み合
わせられることにより、フッ素の再石灰化能が高まることが知られている(例えば、特許
文献7−9)。特許文献10では、歯質の強化と再石灰化を促進することにより、う蝕を
効果的に予防する口腔用組成物として、ムタナーゼとフッ素化合物とを含む組成物が開示
されている。
【0015】
リン酸カルシウムを供給することにより、歯の再石灰化を促進することもまた、当該分
野で知られている(例えば、特許文献11−12)。
【0016】
特許文献13には、炭酸カルシウムと、アルギン酸塩とを含む口腔用組成物が開示され
ている。この組成物は、炭酸カルシウムの歯への付着滞留性を高め、pHの中和効果、再
石灰化促進効果が良好であり、優れたう蝕予防効果を与える。
【0017】
特許文献14において、そこで開示されるリン酸化オリゴ糖のカルシウムおよびリンが
沈着し結晶化する石灰化現象を抑制すること、う蝕の原因であるミュータンス菌の栄養源
にならず、非水溶性のグルカンを生成しないこと、リン酸化オリゴ糖は緩衝作用を有し、
pHの低下を防ぐ効果をも有することを記載している。上記の性質は、歯石の発生を防止
し、そして歯垢が生じず、ミュータンス菌の酸発酵も起こさない。リン酸化オリゴ糖が、
飲食用組成物または口腔組成物において、風味に影響を与えることなく、歯垢内の発酵産
物である乳酸によるpHの低下を防ぐ効果を有することもまた、開示されている。しかし
、特許文献14には、上記リン酸化オリゴ糖が、本明細書に示されるような低い濃度で再
石灰化効果を有し得ることを全く教示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2000−281550号公報
【特許文献2】特開2000−247852号公報
【特許文献3】特開2000−128752号公報
【特許文献4】特開2000−53549号公報
【特許文献5】特開平11−12143号公報
【特許文献6】特開平11−130643号公報
【特許文献7】特開平11−21217号公報
【特許文献8】特開2000−72638号公報
【特許文献9】特開2000−154127号公報
【特許文献10】特開平8−12541号
【特許文献11】特開平11−228369号公報
【特許文献12】特開平10−310513号公報
【特許文献13】特開平11−29454号公報
【特許文献14】特開平8−104696号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】飯島洋一, 熊谷 崇; カリエスコントロール 脱灰と再石灰化のメカニズム. 医歯薬出版株式会社, ; 21−51, 1999.
【非特許文献2】S.Hamadaら、J.Jpn.Soc.Starch Sci.、31巻、83−91頁、1984年
【非特許文献3】S.Sakanakaら、Fragnance Journal、11巻、42−49頁、1990年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
従って、本発明は、抗う蝕機能を有する材料に関し、特に、歯の再石灰化などにより、
う蝕の発生を低下させる、飲食用組成物および口腔用組成物を提供することを目的とする

【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、種々の物質を用いて、う蝕防止に関する技術を鋭意検討した。その結果
、歯の再石灰化効果を有する緩衝剤を見出し、本発明を完成するに至った。
【0022】
本願発明の1つの局面において、抗う蝕機能を有する飲食用組成物が提供される。ここ
でこの組成物は、口腔内でpH緩衝作用を有する緩衝剤を含み、ただし該緩衝剤が、以下
の(1)または(2)ではない、組成物である:
(1)ジャガイモデンプンから調製され、α−1,4結合した3〜5個のグルコースか
らなり、そして1個のリン酸基が結合しているグルカンであり、リン酸化オリゴ糖;また

(2)ジャガイモデンプンから調製され、α−1,4結合した2〜8個のグルコースか
らなり、そして2個のリン酸基が結合しているグルカンである、リン酸化オリゴ糖。
【0023】
1つの実施態様では、上記緩衝剤は、リン酸化オリゴ糖またはその糖アルコールである

【0024】
1つの実施態様では、上記緩衝剤は、リン酸化オリゴ糖またはその糖アルコールであっ
て、該リン酸化オリゴ糖は、α−1,4結合した3〜5個のグルコースからなり、そして
1個のリン酸基が結合しているグルカン、リン酸化オリゴ糖、もしくは、α−1,4結合
した2〜8個のグルコースからなり、そして2個のリン酸基が結合しているグルカンであ
り、但し、ジャガイモデンプンを除くデンプンから調製される、リン酸化オリゴ糖または
その糖アルコール;コンドロイチン硫酸;コンドロイチン硫酸オリゴ糖;グルコース−6
−リン酸;オリゴガラクツロン酸;および酒石酸からなる群から選択される。
【0025】
別の実施形態では、上記緩衝剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または鉄の塩の
形態である。好ましくは、緩衝剤は、ナトリウム塩またはカルシウム塩の形態である。
【0026】
さらに別の実施態様では、本発明の飲食用組成物は、さらに、抗う蝕に有効な量のフッ
素またはフッ素含有物を含む。
【0027】
本発明の別の局面において、抗う蝕機能を有する飲食用組成物が提供される。ここでこ
の組成物は、口腔内でpH緩衝作用を有する緩衝剤と、リンカルシウム補償剤、リン製剤
および/またはカルシウム製剤とを含み、ただし該緩衝剤が、以下の(1)または(2)
ではない、組成物である:
(1)ジャガイモデンプンから調製され、α−1,4結合した3〜5個のグルコースか
らなり、そして1個のリン酸基が結合しているグルカンであり、リン酸化オリゴ糖;また

(2)ジャガイモデンプンから調製され、α−1,4結合した2〜8個のグルコースか
らなり、そして2個のリン酸基が結合しているグルカンである、リン酸化オリゴ糖。
【0028】
1つの実施態様では、上記緩衝剤は、リン酸化オリゴ糖またはその糖アルコールである

【0029】
1つの実施態様では、上記緩衝剤は、リン酸化オリゴ糖またはその糖アルコールであっ
て、該リン酸化オリゴ糖は、α−1,4結合した3〜5個のグルコースからなり、そして
1個のリン酸基が結合しているグルカン、リン酸化オリゴ糖、もしくは、α−1,4結合
した2〜8個のグルコースからなり、そして2個のリン酸基が結合しているグルカンであ
り、但し、ジャガイモデンプンを除くデンプンから調製される、リン酸化オリゴ糖または
その糖アルコール;コンドロイチン硫酸;コンドロイチン硫酸オリゴ糖;グルコース−6
−リン酸;オリゴガラクツロン酸;および酒石酸からなる群から選択される。
【0030】
別の実施形態では、上記緩衝剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、または鉄の塩の
形態である。好ましくは、緩衝剤は、ナトリウム塩またはカルシウム塩の形態である。
【0031】
さらに別の実施態様では、本発明の飲食用組成物は、さらに、抗う蝕に有効な量のフッ
素またはフッ素含有物を含む。
【0032】
本発明のさらに別の局面では、抗う蝕機能を有する口腔用組成物が提供される。ここで
この口腔用組成物は、口腔内でpH緩衝作用を有する緩衝剤を含み、ただし該緩衝剤が、
以下の(1)または(2)ではない、組成物である:
(1)ジャガイモデンプンから調製され、α−1,4結合した3〜5個のグルコースか
らなり、そして1個のリン酸基が結合しているグルカンであり、リン酸化オリゴ糖;また

(2)ジャガイモデンプンから調製され、α−1,4結合した2〜8個のグルコースか
らなり、そして2個のリン酸基が結合しているグルカンである、リン酸化オリゴ糖。
【0033】
1つの実施態様では、上記緩衝剤は、リン酸化オリゴ糖またはその糖アルコールである

【0034】
1つの実施態様では、上記緩衝剤は、リン酸化オリゴ糖またはその糖アルコールであっ
て、該リン酸化オリゴ糖は、α−1,4結合した3〜5個のグルコースからなり、そして
1個のリン酸基が結合しているグルカン、リン酸化オリゴ糖、もしくは、α−1,4結合
した2〜8個のグルコースからなり、そして2個のリン酸基が結合しているグルカンであ
り、但し、ジャガイモデンプンを除くデンプンから調製される、リン酸化オリゴ糖または
その糖アルコール;コンドロイチン硫酸;コンドロイチン硫酸オリゴ糖;グルコース−6
−リン酸;オリゴガラクツロン酸;および酒石酸からなる群から選択される。
【0035】
別の実施形態では、上記緩衝剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛または鉄の
塩の形態である。好ましくは、緩衝剤は、ナトリウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩の形
態である。
【0036】
さらに別の実施態様では、本発明の口腔用組成物は、さらに、抗う蝕に有効な量のフッ
素またはフッ素含有物を含む。
【0037】
本発明の別の局面では、抗う蝕機能を有する口腔用組成物が提供される。ここでこの組
成物は、口腔内でpH緩衝作用を有する緩衝剤と、リンカルシウム補償剤、リン製剤およ
び/またはカルシウム製剤とを含み、ただし該緩衝剤が、以下の(1)または(2)では
ない、組成物である:
(1)ジャガイモデンプンから調製され、α−1,4結合した3〜5個のグルコースか
らなり、そして1個のリン酸基が結合しているグルカンであり、リン酸化オリゴ糖;また

(2)ジャガイモデンプンから調製され、α−1,4結合した2〜8個のグルコースか
らなり、そして2個のリン酸基が結合しているグルカンである、リン酸化オリゴ糖。
【0038】
1つの実施態様では、上記緩衝剤は、リン酸化オリゴ糖またはその糖アルコールである

【0039】
1つの実施態様では、上記緩衝剤は、リン酸化オリゴ糖またはその糖アルコールであっ
て、該リン酸化オリゴ糖は、α−1,4結合した3〜5個のグルコースからなり、そして
1個のリン酸基が結合しているグルカン、リン酸化オリゴ糖、もしくは、α−1,4結合
した2〜8個のグルコースからなり、そして2個のリン酸基が結合しているグルカンであ
り、但し、ジャガイモデンプンを除くデンプンから調製される、リン酸化オリゴ糖または
その糖アルコール;コンドロイチン硫酸;コンドロイチン硫酸オリゴ糖;グルコース−6
−リン酸;オリゴガラクツロン酸;および酒石酸からなる群から選択される。
【0040】
別の実施形態では、上記緩衝剤は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛または鉄塩
の形態である。好ましくは、緩衝剤は、ナトリウム塩、カルシウム塩または亜鉛塩の形態
である。
【0041】
さらに別の実施態様では、本発明の口腔用組成物は、さらに、抗う蝕に有効な量のフッ
素またはフッ素含有物を含む。
【0042】
本発明のなおさらに別の局面において、抗う蝕作用が予想される試料の歯に対する再石
灰化効果を調べる方法が提供される。この方法は、リン、カルシウム、および歯成分を含
む溶液からこの試料の存在下でカルシウム沈殿反応させる工程(A);この沈殿反応後に
おける溶液中のカルシウム濃度またはカルシウム沈殿量を測定する工程(B);この溶液
からこの試料の非存在下でカルシウム沈殿反応させる工程(C);沈殿反応後、溶液にお
けるカルシウム濃度または生成したカルシウ沈殿量を測定する工程(D);ならびに工程
(B)および(D)における溶液中のカルシウム濃度または沈殿量を測定する工程(E)
を包含する。
【0043】
1つの実施態様では、上記方法において、上記溶液は、ハイドロキシアパタイト、緩衝
液、KH2PO4およびCaCl2を含む。

【発明の効果】
【0044】
以上のように、本発明により、歯の再石灰化などにより、う蝕の発生を低下させる、飲
食用組成物および口腔用組成物が提供された。

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】牛歯片を用いた再石灰化試験系におけるう蝕でのミネラル損失量を示すグラフである。
【図2】牛歯片を用いた再石灰化試験系における脱灰深度を示すグラフである。
【図3】実施例4の簡易試験系における再石灰化についてのリン酸化オリゴ糖のカルシウム塩の結果を示すグラフである。
【図4】実施例4の簡易試験系における再石灰化についてのリン酸化オリゴ糖のナトリウム塩の結果を示すグラフである。
【図5】リン酸化オリゴ糖を用いたP/Ca=0.6での再石灰化への影響を示すグラフである。
【図6A】リン酸化オリゴ糖の不在下でのP/Ca濃度変化による再石灰化への影響を示すグラフである。
【図6B】リン酸化オリゴ糖ナトリウム塩の存在下でのP/Ca濃度変化による再石灰化への影響を示すグラフである。
【図6C】リン酸化オリゴ糖カルシウム塩の存在下でのP/Ca濃度変化による再石灰化への影響を示すグラフである。
【図7A】実施例5におけるリン酸化オリゴ糖カルシウム塩およびナトリウム塩の再石灰化効果を示すグラフである。
【図7B】実施例5におけるキシリトールおよびキシロースの再石灰化効果を示すグラフである。
【図7C】実施例5におけるパラチニットおよパラチノースの再石灰化効果を示すグラフである。
【図8】実施例7におけるTLC分析の結果を示す写真である。
【図9】実施例7におけるリン酸化オリゴ糖とフッ素との再石灰化における相乗作用を示すグラフである。
【図10】実施例8における標準的な溶液濃度のリン酸化オリゴ糖のTLC分析の結果を示す写真である。
【図11】実施例8におけるリン酸化オリゴ糖含有ガムを食した際における経時的な溶出量を示すTLC分析の結果を示す写真である。
【図12】実施例12における各種物質の再石灰化効果を示すグラフである。
【図13】実施例13における各種物質の再石灰化効果を示すグラフである。
【図14】実施例14における人工口腔装置におけるpHの変化を示すグラフである。
【図15】実施例16におけるPOs Ca含有ガムあるいはPOs Ca非含有ガム咀嚼による唾液量を示すグラフである。
【図16】実施例16におけるPOs Ca含有ガムあるいはPOs Ca非含有ガム咀嚼による唾液pH値を示すグラフである。
【図17】実施例16におけるPOs Ca含有ガムあるいはPOs Ca非含有ガム咀嚼による唾液中のP含量を示すグラフである。
【図18】実施例16におけるPOs Ca含有ガムあるいはPOs Ca非含有ガム咀嚼による唾液中のCa含量を示すグラフである。
【図19】実施例16におけるPOs Ca含有ガムあるいはPOs Ca非含有ガム咀嚼によるCa/P比の変化を示すグラフである。
【図20】実施例16における各処理歯での脱灰深度(A)およびミネラル損失量(B)を示すグラフである。
【図21】実施例17における再石灰化率を示すグラフである。
【図22】実施例18におけるPOs Ca含有キャンデーの摂取により分泌された唾液のpHを示すグラフである。
【図23】実施例18におけるPOs Ca含有キャンデーの摂取により分泌された唾液の量を示すグラフである。
【図24】実施例18におけるPOs Ca含有キャンデーの摂取により分泌された唾液中の成分CaおよびPの量を示すグラフである。
【図25】実施例19におけるPOs Ca含有キャンデーおよびPOs Caソフトキャンデーによる再石灰化試験の結果を示すグラフである。
【図26】代表的なリン酸化オリゴ糖の化学式を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に、本発明について詳細に記述する。
【0047】
本明細書において、抗う蝕機能とは、う蝕予防機能とう蝕治療機能との両方を含む。う
蝕治療機能とは、いったんう蝕により失われた歯の一部を修復する機能をいう。本明細書
中において「抗う蝕機能」を有するとは、以下の1つ以上の性質を有することを意味する
:(1)pH緩衝作用を有し、口腔内細菌の産生する酸によるpH低下を抑制する能力を
有する;(2)口腔内細菌のつくる不溶性グルカンの形成を抑制する能力を有する;(3
)初期う蝕の歯の再石灰化を促進する能力を有する。好ましくは、上記の性質の2つを有
し、最も好ましくは、上記の全ての性質を有する。
【0048】
本発明の組成物によれば、う蝕された歯に対して、リン酸およびカルシウムを安定的に
提供することができる。リン酸およびカルシウムが提供された歯は再石灰化されるので、
う蝕により失われた歯の一部を修復することができる。
【0049】
特に本発明によれば、口腔内に緩衝剤が添加されるので、口腔内の唾液などに存在する
リン酸およびカルシウムが安定的に歯の再石灰化に使用される。従って、従来は困難もし
くは不可能であると考えられていた歯の修復が可能になる。
【0050】
う蝕の初期症状である脱灰性病変は、口腔内の条件が整えば、脱灰したエナメル質部分
にカルシウムやリン酸が再補充され(再石灰化)、健全な状態に修復される。歯が健全状
態を維持するためには、唾液の働きにより脱灰病変患部にミネラルが供給されミクロのレ
ベルでの脱灰と再石灰化が均衡していることが必要である。一般に、飲食後には歯垢内p
Hが低下傾向となり、「脱灰−再石灰化」の均衡関係がくずれ、「脱灰>再石灰化」とな
った場合に病変が進行するのである。また逆に「再石灰化>脱灰」の関係では脱灰病変が
回復に向かい、歯が再石灰化する。このような脱灰と再石灰化のバランスには、口腔内環
境、特に唾液と歯垢中のpH、カルシウム、およびリン酸濃度の果たす役割は非常に大き
い(飯島洋一, 熊谷 崇; カリエスコントロール 脱灰と再石灰化のメカニズム.
医歯薬出版株式会社, ; 21−51, 1999.)。本発明によれば、口腔内環境
を再石灰化の生じ易い環境に整え得るので、う蝕を予防し、かつう蝕の初期症状である脱
灰性病変を治療でき、歯を健康で丈夫にすることができる。
本明細書中において、緩衝剤とは、口腔内でpH緩衝作用を示す物質をいう。具体的に
は、緩衝剤は、例えば、緩衝剤のアニオンおよびカチオンから得られる、水溶性の塩であ
る。緩衝剤は、口腔内に存在することにより、口腔内のpHを安定化させることができる
。緩衝剤は、唾液中のリン酸イオンおよびカルシウムイオンを安定化させる。このため、
特に、リン酸イオンおよびカルシウムイオンの存在下で良好なpH緩衝作用を有する物質
が好ましい。リン酸イオンおよびカルシウムイオンを含む水溶液に添加した際に、リン酸
イオンおよびカルシウムイオンの水溶液中での安定性を阻害しない緩衝剤がより好ましい
。つまり、リン酸イオンまたはカルシウムイオンと反応して沈殿を形成しやすい緩衝剤は
好ましくない。
【0051】
さらに、本発明においては、プラーク中でpH緩衝効果が得られることが好ましい。唾
液中でpH緩衝作用が示されれば、通常は、プラーク中でもpH緩衝作用が示される。従
って、唾液中でpH緩衝作用を示す緩衝剤は、プラーク中でpH緩衝を作用させるために
使用できる。水素イオン感受性電界効果トランジスター電極(PH−6010:日本光電
工業製)をエナメル質小片上に設置し、玉澤佳純ら(日本補綴歯科学会雑誌, 40特別
号, P147, 1996年)、安部一彦(歯科展望, 90(3), P650−6
54, 1997年)、Takahashi−Abbe, S ら(Oral Micr
obiol.Immunol., 16, P94−99, 2001年)の方法に準じ
て下顎部分床義歯の歯間部に組み込んで、感応部に形成された歯垢(プラーク)における
pHを測定し得る。歯垢内のpHが6以上となることが好ましく、7以上がより好ましい
。プラークのpHが緩衝作用を受けて中性に戻ると、口腔内の唾液中に存在するリン酸イ
オンおよびカルシウムイオンが歯面に供給されて、歯質に再石灰化し得る。プラークのp
Hの上限は特に限定されないが、現実的な生体内で高アルカリ条件は考え難く、好ましく
は10以下であり、より好ましくは8以下である。
【0052】
なお、緩衝剤は、通常は、塩の形態で使用されるが、必要に応じて、遊離酸の形態で使
用されてもよい。遊離酸の形態で口腔中に提供されても、口腔中には、遊離酸と塩を形成
し得るアルカリ金属等が存在するので、遊離酸が口腔中に提供された場合であっても、そ
の酸の塩が提供されることと実質的には変わらないからである。
【0053】
本発明に利用可能な、好ましい緩衝剤は、簡易な実験により容易に選定できる。すなわ
ち、リン酸イオンおよびカルシウムイオンを含む中性の水溶液(例えば、pH6〜8の水
溶液)に公知の各種pH緩衝剤を添加し、沈殿の形成の有無を確認すればよい。そのよう
な実験により沈殿が形成しないpH緩衝剤は、本発明の抗う蝕用組成物に添加される緩衝
剤として良好に用いることができる。
【0054】
緩衝剤が存在しない場合、口腔内細菌によって産生された有機酸の影響などにより、口
腔内が酸性化され、唾液もしくは歯垢が酸性化される場合がある。唾液もしくはプラーク
が酸性化されると、歯のCaとPがCaイオン、Pイオンとなって溶出し、う蝕が進行す
る1つの原因となる。しかし、緩衝剤が存在すれば、口腔内の唾液およびプラークのpH
が中性付近で安定化し、このため、う蝕は進行しにくくなる。
【0055】
唾液は、通常、中性付近のpHを示すので、中性付近のpHで良好な緩衝作用を有する
緩衝剤が好ましい。
【0056】
好ましくは、緩衝剤は、唾液中でリン酸と反応して沈殿を生成しない物質である。
【0057】
好ましくは、緩衝剤は、唾液中でカルシウムと反応して沈殿を生成しない物質である。
【0058】
好ましくは、緩衝剤は、酸性の官能基を有する。
【0059】
好ましくは、緩衝剤は、リン酸基、カルボキシル基、または硫酸基のいずれかを有する

【0060】
好ましくは、緩衝剤は、分子内に酸性の官能基を3個以下有する。より好ましくは、2
個以下有する。分子内に酸性の官能基が多すぎる場合、ハイドロキシアパタイトに対して
リンおよびカルシウムを提供する能力が低下しやすい。例えば、分子内にリン酸基を6個
有するフィチン酸よりも、分子内にリン酸基を1〜2個有するリン酸化オリゴ糖がう蝕治
療機能に優れる。従って、このようなフィチン酸のような物質以外の緩衝剤を用いること
が好ましい。
【0061】
ハイドロキシアパタイトに対してリンおよびカルシウムを提供する能力が優れている緩
衝剤が好ましい。緩衝剤がハイドロキシアパタイトに対してリンおよびカルシウムを提供
する能力は、以下に説明するような再石灰化簡易試験系法によって簡便に試験され得る。
【0062】
このような緩衝剤としては、リン酸化オリゴ糖およびそれらの糖アルコールが挙げられ
る。本明細書中においてリン酸化オリゴ糖とは、分子内に少なくとも1個のリン酸基を有
するリン酸化されたオリゴ糖をいう。分子内のリン酸基は、3個以下であることが好まし
く、より好ましくは2個以下である。本願において中性オリゴ糖とは、リン酸基が結合し
ていないオリゴ糖をいう。例えば、リン酸化オリゴ糖には、α−1,4結合した3〜5個
のグルコースからなるグルカンであり、そして該グルカンに1個のリン酸基が結合してい
るもの、あるいは、リン酸化オリゴ糖は、α−1,4結合した2〜8個のグルコースから
なり、そして該グルカンに、2個のリン酸基が結合しているものが含まれる。また、この
ような緩衝剤としては、酸性糖質およびその糖アルコール(例えば、オリゴガラクツロン
酸、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸オリゴ糖、グルコース−6−リン酸)、有
機酸(例えば、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、およびマレイン酸)、核
酸(例えば、各種ヌクレオシドまたはヌクレオチドのリン酸エステル)、アミノ酸、およ
び上記リン酸化オリゴ糖の糖アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
これら緩衝剤は、有効に働くためには、塩、例えば、金属塩の形態であり得る。このよ
うな金属塩に用いられる金属には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、鉄、クロム
、鉛が含まれる。例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどが挙げ
られる。本発明の飲食用組成物中に含まれる緩衝剤の金属塩としては、カルシウム塩およ
びナトリウム塩が好ましい。また、本発明の口腔用組成物中に含まれる緩衝剤の金属塩と
しては、カルシウム塩、ナトリウム塩および亜鉛塩が好ましい。亜鉛塩は、飲食用には用
いられないが、口臭予防および歯周病治療効果を有することが知られているので、口腔用
組成物に含まれる金属塩としては好ましい。さらに、緩衝剤は、アンモニウム塩または4
級アミン塩の形態であってもよい。
【0064】
コンドロイチン硫酸は、通常、二糖につき1つの硫酸基を含有する。コンドロイチン硫
酸Aでは、硫酸基が、N−アセチル−D−ガラクトサミンの4位に結合し、コンドロイチ
ン硫酸Cでは、N−アセチル−D−ガラクトサミンの6位に結合している。コンドロイチ
ン硫酸B(今日では、デルマタン硫酸と呼ばれる)では、N−アセチル−D−ガラクトサ
ミン−4−硫酸とL−イズロン酸からなる二糖の繰り返し構造で構成される。コンドロイ
チン硫酸は、コンドロイチナーゼによって非還元末端に不飽和ヘキスロン酸を含む二糖、
オリゴ糖にまで分解され得る。例えば、コンドロイチナーゼABC(Proteus v
ulgaris菌体由来)、コンドロイチナーゼACI(Flavobacterium
heparinum菌体由来)、またはコンドロイチナーゼACII(Arthrob
acter aurescens菌体由来)によって、コンドロイチン硫酸は、ヘキソサ
ミンを還元末端に有する不飽和二糖にまで分解され得る(ただし、後者の2つの酵素は、
デルマタン硫酸には作用しない)。コンドロイチン硫酸およびこのような酵素での分解に
よって得られ得る不飽和オリゴ糖(好ましくは、二糖、四糖)は、再石灰化効果を有する

【0065】
オリゴガラクツロン酸は、ペクチンの構成糖として知られるガラクツロン酸が重合した
オリゴ糖であり、好ましくは、2個以上、より好ましくは、3個以上、さらに好ましくは
、4個以上であり、好ましくは、10個以下、より好ましくは8個以下、さらに好ましく
は、6個以下の糖が合成されている。
【0066】
本明細書中において「糖アルコール」とは、糖の還元末端が還元された化合物をいう。
例えば、リン酸化オリゴ糖の糖アルコールは、例えば、リン酸化オリゴ糖の還元末端を水
素添加することにより作製され得る。水素添加は、当業者に公知の方法のいずれもが使用
され得る。例えば、オリゴ糖は、1N水酸化ナトリウム溶液を用いてpH約8の微アルカ
リ溶液とし、この溶液約100mlに約3%の水酸化ホウ素ナトリウム溶液約30mlを
添加した後、約40℃で1時間静置することで、還元され得る。糖アルコールを工業的に
製造するためには、当業者に公知のニッケル触媒を利用した方法が、一般的に用いられ得
る。
【0067】
本発明の飲食用組成物および口腔用組成物として含有される緩衝剤として、α−1,4
結合した3〜5個のグルコースからなるグルカンであり、そして該グルカンに1個のリン
酸基が結合しているリン酸化オリゴ糖、あるいは、α−1,4結合した2〜8個のグルコ
ースからなり、そして該グルカンに、2個のリン酸基が結合しているリン酸化オリゴ糖が
好ましい。
【0068】
このようなリン酸化オリゴ糖は、一般の粗製植物デンプン、好ましくは、リン酸基が多
く結合したデンプンから調製され得る。リン酸化オリゴ糖を生成するために用いられ得る
デンプンの起源植物としては、ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ、トウモロコシ、コ
ムギ、ウルチゴメ、モチゴメ、モチトウモロコシ、モチコムギ、モチポテト、クズ、ヤム
、ユリ、クリ(chestnut)などが挙げられる。これらのうち、地下茎およびコメ
、コムギなどに結合リン酸基が多く含まれており、原料として好適である。例えば、ジャ
ガイモデンプン中では、これを構成するグルコースの3位および6位にリン酸基が比較的
多くエステル結合している。リン酸基は主にアミロペクチンに存在する。リン酸化オリゴ
糖を生成するための用いられ得るデンプンとして、化工デンプンもまた、好適に使用され
得る。化工デンプンとは、上記のような天然デンプンに化学的にリンを結合させたデンプ
ンである。例えば、トウモロコシおよびモチトウモロコシなどのデンプンにリンを化学的
に結合させてリン酸化オリゴ糖を調製することができる。
【0069】
本発明の飲食用組成物および口腔用組成物に含まれる上記リン酸化オリゴ糖は、以下の
ようにして製造され得る。
【0070】
デンプンなどの酵素的分解には、デンプン分解酵素であるα−アミラーゼ(EC3.2
.1.1)、β−アミラーゼ(EC3.2.1.2)、グルコアミラーゼ(EC3.2.
1.3)、イソアミラーゼ(EC3.2.1.68)、プルラナーゼ(EC3.2.1.
41)、およびネオプルラナーゼ(Kurikiら、Journal of Bacte
riology、170巻、1554頁−1559頁、1988年)、ならびに糖転移酵
素であるシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC2.4.1.19;以下
CGTaseと略する)をそれらのうち1種以上作用させ、または、それら1種以上とα
−グルコシダーゼ(EC3.2.1.20)を併用する。
【0071】
イソアミラーゼあるいはプルラナーゼで分解することにより、デンプン中のα−1,6
分枝構造を切ることによって、分枝構造を有しないリン酸化糖を得ることができるし、イ
ソアミラーゼあるいはプルラナーゼを用いなければ、α−1,6分枝構造を有するリン酸
化糖を得ることもできる。また、グルコアミラーゼで分解することにより、非還元末端に
結合したリン酸化されていないグルコースを順次遊離させることができる。このような酵
素処理を行うことで、精製後のリン酸化糖の分子量あたりのリン酸基数を増減させること
が可能となる。
【0072】
酵素による分解は複数種の酵素を同時に反応させることにより、同時に進行させ得る。
簡単に言えば、原料となるデンプンを、水、または酵素が作用できるpHに調整した緩衝
液に溶解する。この反応液に、液化型α−アミラーゼ、プルラナーゼ、グルコアミラーゼ
などを同時に加えて、加熱を行うことにより反応させる。この方法を用いると、デンプン
を糊化させながら、中性糖を遊離すること、リン酸化糖の非還元末端に結合したリン酸化
されていないグルコースを遊離させること、あるいはリン酸化糖構造中の原料に由来する
α−1,6分枝構造を切断することができる。この方法により、2段階の反応ではなく、
1段階の反応でリン酸含量を高めたリン酸化糖が得られる。
【0073】
複数種の酵素を個別の工程で作用させることにより2段階以上の酵素反応をさせる場合
においては、作用させる酵素の順序は特定されない。しかし、デンプンの濃度が高い場合
、最初に液化型アミラーゼを含めた酵素を作用させるのが好ましい。最初にイソアミラー
ゼあるいはプルラナーゼを作用させるとアミロース含量が増える。アミロースはアミロペ
クチンに比べて老化および沈澱しやすいため、原料が老化、沈澱してしまう。そして他の
酵素による作用を受けなくなる。
【0074】
使用するデンプン分解酵素、糖転移酵素、およびα−グルコシダーゼの由来は特に問わ
ない。例えば、α−アミラーゼの由来としては、バチルス(Bacillus)属菌やア
スペルギルス(Aspergillus)属菌由来のデンプン分解酵素製剤が好適に使用
され得る。また、酵素の反応条件は、酵素が作用し得る温度およびpHであればよい。例
えば、温度25℃〜70℃、pH4〜8が好適に用いられる。
【0075】
まず原料となるデンプンを、水、または酵素の作用できるpHに調整した緩衝液に溶解
する。この溶液に、液化型α−アミラーゼを加え、加熱して反応させることにより、デン
プンを糊化させつつ液化する。その後、温度20〜80℃にて適当な時間保持する。作用
させる液化型α−アミラーゼ量は、デンプンを液化できる量であれば、少量でも過剰でも
良い。好適な量としては、20〜50,000Uである。また、この時の保持時間は、デ
ンプンがその後の工程中において老化を起こさない程度まで液化されるならば、その長さ
は問わない。好ましくは、20〜80℃で30分間保持される。
【0076】
液化終了後、特に酵素を失活させる必要はないが、100℃で10分保持するなど常法
により酵素を失活させてもよい。さらに、遠心分離あるいは膜濾過などの常法により不溶
物を分離除去してもよい。その後、リン酸化糖を分画してもよいが、リン酸含量を高めた
リン酸化糖を得るには、さらに以下の操作を行う。
【0077】
簡単に言えば、原料を液化させた後、これに、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ、プ
ルラナーゼ、およびα−グルコシダーゼをそれぞれ同時にあるいは適当な順序で添加して
糖化させ、例えば温度40〜60℃で30分〜40時間作用させて、原料から、中性糖お
よびリン酸化糖の非還元末端に結合したリン酸化されていないグルコースを遊離させ得、
そしてリン酸化糖構造中の原料に由来するα−1,6分枝構造を切断し得る。このグルコ
アミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼを組み合わせて使用する場合、その組み合わ
せおよび添加順序は問わない。また、酵素の添加量および保持時間は、リン酸化オリゴ糖
に求められるリン酸含量などに応じて決定され得る。好ましくは、グルコアミラーゼは5
0〜700U、イソアミラーゼおよびプルラナーゼはそれぞれ2〜100U、α−グルコ
シダーゼは50〜700U添加され得る。酵素は固定化しても好適に用いられ得る。
【0078】
各酵素の反応終了後においては、特に酵素を失活させる必要はないが、100℃で10
分保持するなど常法により酵素を失活させてもよい。さらに、遠心分離あるいは膜濾過な
どの常法により不溶物を分離除去してもよい。
【0079】
リン酸化オリゴ糖を含有する糖混合物からリン酸化オリゴ糖を精製するために、リン酸
化オリゴ糖が中性糖とは異なりイオン性の物質であることから、陰イオン交換樹脂が用い
られ得る。樹脂の種類は、特に限定するものではないが、キトパールBCW2500タイ
プ(富士紡績製)、アンバーライトIRAタイプ(オルガノ製)、DEAE−セルロース
(ワットマン製)、DEAE−セファデックス、QAE‐セファデックス(ファルマシア
製)、QAE−セルロース(バイオラッド製)などが好適に用いられ得る。適当なpHに
調整した緩衝液を用いて、樹脂を平衡化する。例えば10〜50mM程度の酢酸緩衝液(
pH4〜5)などの条件が好適に用いられ得る。平衡化した樹脂をカラムに詰め、リン酸
化オリゴ糖を含有する糖混合物をチャージする。中性糖を洗浄除去した後、吸着したリン
酸化オリゴ糖をアルカリ性の溶液または塩溶液を用いて溶出する。
【0080】
リン酸化オリゴ糖の溶出を溶出液のイオン強度を上昇させることによって行う場合、用
いる塩の種類は特に問わない。例えば、塩化ナトリウム、重炭酸アンモニウム、塩化カリ
ウム、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウムのような塩が好適に用いられ得る。
【0081】
リン酸化オリゴ糖の溶出を溶出液のpHをアルカリに変化させることによって行う場合
、用いるアルカリ試薬の種類は特に問わない。例えば、アンモニア、炭酸ナトリウム、ま
たは水酸化ナトリウムが用いられ得る。しかし、強アルカリ条件下では、リン酸基が糖か
ら離脱し、あるいは糖の還元末端が酸化される。従って、好ましくは、リン酸化オリゴ糖
の溶出は、弱酸性から弱アルカリ性の範囲のpHで行い、さらに好ましくはpH3〜pH
8の範囲で行う。
【0082】
この場合、徐々に溶出液の塩濃度またはpHを高くしたり、あるいは段階的に塩濃度ま
たはpHを上昇させてリン酸化オリゴ糖を溶出することにより、リン酸化糖1分子当たり
に結合しているリン酸基の個数に応じてリン酸化オリゴ糖の成分を分画することが可能と
なる。
【0083】
リン酸化オリゴ糖を含有する糖混合物からリン酸化オリゴ糖を精製するには、陰イオン
交換樹脂の代わりに活性炭もまた用いられ得る。用いる活性炭の種類は特に問わないが、
好ましくは、カラムに充填可能な粒状活性炭が用いられる。グルコースを除く中性糖の吸
着能が生じる条件となるように、緩衝液、酸、アルカリ、塩溶液、および蒸留水を用いて
、活性炭を調製する。例えば粒径が均一で、脱気を施した活性炭を、カラムに充填し、蒸
留水で洗浄したものなどが好適に用いられ得る。カラムに試料を供して中性糖を吸着させ
ることにより、リン酸化オリゴ糖を素通り画分に得ることができる。
【0084】
リン酸化オリゴ糖を含有する糖混合物からリン酸化オリゴ糖を精製するには、炭素数1
〜3のアルコールを添加してリン酸化オリゴ糖を沈澱させる方法もまた、用いられ得る。
簡単に言えば、試料溶液にアルコールを添加することにより、リン酸化オリゴ糖のみが沈
澱として得られ得る。10%以上の糖濃度であれば容積比で3倍量以上のアルコールを添
加することが望ましい。
【0085】
アルコールに加えて、金属塩、好ましくはカルシウム塩または鉄塩の存在下で、このリ
ン酸化オリゴ糖はリン酸化オリゴ糖金属塩を形成し、沈澱が生じやすくなる。このため、
金属塩の存在下では、先に示したアルコールのみによる沈澱化に比べ、少量のアルコール
でもリン酸化オリゴ糖の回収が容易となる。好ましくはアルカリ条件下で実施する。用い
る塩の種類は特に限定するものではないが、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム
、または塩化第一鉄が、溶解性もよく、好適に用いられ得る。アルコールを添加すること
で生じた沈澱の採取は、一般に使用される方法、例えば、デカンテーション、濾過、遠心
分離などにより行われる。
【0086】
金属塩を添加し、沈殿物として得られたリン酸化オリゴ糖金属塩から、金属塩を除去し
てリン酸化オリゴ糖を製造し得る。金属体の除去(脱塩)は定法により行われ得る。脱塩
は、例えば卓上脱塩装置マイクロアシライザーG3(旭化成(株)製)を用いると容易に
行われ得る。
【0087】
このようにして得られたリン酸化オリゴ糖の溶液、リン酸化オリゴ糖、またはリン酸化
オリゴ糖誘導体は、通常実施される乾燥方法、例えば熱風乾燥、流動層乾燥、真空乾燥な
どの方法を用いて、濃縮あるいは粉末にされ得る。必要に応じてアルコールを除去するこ
とにより、飲食または口腔内適用に供し得るリン酸化オリゴ糖が得られ得る。
【0088】
各種アミラーゼを用いてジャガイモデンプンから調製されるリン酸化オリゴ糖は、ジャ
ガイモデンプン中では、これを構成するグルコースの3位および6位にリン酸基が比較的
多くエステル結合しているため、リン酸基が主にグルコース残基の3位および/または6
位に結合したオリゴ糖であり得る。例えば、ジャガイモデンプンにグルコアミラーゼを作
用させて得られるリン酸化糖は、リン酸基がグルコースの6位に結合していれば、その直
前まで非還元末端側から切断され得る。従って、このリン酸化糖は、6位に結合したグル
コースを非還元末端に有するオリゴ糖あるいは少なくとも非還元末端側から2個目のグル
コースの6位に結合している構造になる。リン酸基がグルコースの3位に結合していれば
、非還元末端側から2個目のグルコースの3位に結合している構造になる。各種アミラー
ゼを用いてジャガイモデンプンを加水分解することにより得られるリン酸化オリゴ糖の代
表例を図26に示す。もちろん、上記のような構造を有するリン酸化オリゴ糖は、各種ア
ミラーゼを用いてジャガイモデンプンを加水分解することによって製造されたものに限定
されることなく、同一の構造を有するものは同様に抗う蝕機能を有する。
【0089】
本明細書中において、リン酸化オリゴ糖の糖アルコールとは、リン酸化オリゴ糖の還元
末端が還元された化合物をいう。上記のリン酸化オリゴ糖の糖アルコールは、例えば、リ
ン酸化オリゴ糖の還元末端を水素添加することにより作製され得る。水素添加は、当業者
に公知のいずれもの方法が使用され得る。例えば、オリゴ糖は、1N水酸化ナトリウム溶
液を用いてpH8の微アルカリ溶液とし、これに3%の水酸化ホウ素ナトリウム溶液30
mlを添加した後、40℃で1時間静置することで、還元され得る。糖アルコールを工業
的に製造するためには、当業者に公知のニッケル触媒を利用した方法が、一般的に用いら
れ得る。
【0090】
上記リン酸化オリゴ糖または糖アルコールは、金属塩の形態であり得る。このような金
属塩の形成に用いられる金属には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、亜鉛、鉄、クロム
、鉛などが含まれる。例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウムなどが
挙げられる。本発明の飲食用組成物中に含まれるリン酸化オリゴ糖の金属塩としては、カ
ルシウム塩およびナトリウム塩が好ましい。また、本発明の口腔用組成物中に含まれるリ
ン酸化オリゴ糖の金属塩としては、カルシウム塩、ナトリウム塩および亜鉛塩が好ましい
。亜鉛塩は、飲食用には用いられないが、口臭予防および歯周病治療効果を有することが
知られているので、口腔用組成物に含まれる金属塩としては好ましい。さらに、上記リン
酸化オリゴ糖または糖アルコールは、アンモニウム塩または4級アミン塩の形態であって
もよい。アンモニウム塩または4級アミン塩であってもよい。
【0091】
このような金属塩は、以下のようにして製造され得る。リン酸化オリゴ糖と金属塩との
化合物であるリン酸化オリゴ糖塩の沈澱は、上述のようなアルコール沈澱で得られる。必
要ならば、回収した沈澱を水あるいは適当な溶液に再溶解し、アルコールを再度添加する
操作を繰返し行ってもよい。この操作により、中性糖および過剰の塩などの不純物が除去
され得る。塩など不純物の除去には限外濾過膜もまた用いられ得る。
【0092】
上記のリン酸化オリゴ糖は、以下の性質を有することが公知である:(1)う蝕原性細
菌(例えば、S.mutans、S.sobrinus)によって資化されない;(2)
これら細菌のスクロース資化によるpH低下を濃度依存的に抑制する;および(3)この
抑制はリン酸化オリゴ糖の緩衝作用による(特開平8−104696号公報を参照のこと
)。本発明によって、塩の形態のリン酸化オリゴ糖およびそれらの糖アルコールが、非常
に低い濃度で歯の再石灰化を促進するという効果を有することもまた見出された。リン酸
化オリゴ糖のこのような性質を利用することにより、従来とは異なる抗う蝕機能を有する
飲食用組成物および口腔用組成物が得られる。特に、再石灰化について低い濃度で十分に
有効であるということは、食品への添加上、非常に好ましい。
【0093】
本発明の飲食用組成物および口腔用組成物において緩衝剤は、口腔内において抗う蝕機
能が有効に働くのに必要とされる量で含有される。例えば、リン酸化オリゴ糖ナトリウム
塩の場合、口腔内において存在し得るその濃度が0.01〜20%、好ましくは0.03
〜1%となるような添加量であり得る。例えば、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩の場合、
口腔内において存在し得るその濃度が0.01〜20%、好ましくは0.03〜1%とな
るような添加量であり得る。例えば、リン酸化オリゴ糖亜鉛塩の場合、口腔内において存
在し得るその濃度が0.01〜20%、好ましくは0.03〜1%となるような添加量で
あり得る。リン酸化オリゴ糖ナトリウム塩、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩、およびリン
酸化オリゴ糖亜鉛塩は、無機のカルシウムおよびリンが口腔内で、それぞれ1.5mMお
よび0.9mM程度の際に、口腔内において存在し得るその濃度が約0.2%であること
が、最も好ましいとされ得る。
【0094】
これらの添加量は、本発明の飲食用組成物および口腔用組成物の口腔内における滞留時
間を考慮して決定され得る。例えば、咀嚼挙動を必要とする飲食品組成物の場合を説明す
る。例えば、約20%のリン酸化オリゴ糖を含むチューイングガムの場合、咀嚼後約10
分は、この飲食品組成物中に含有されるからの溶出により、比較的高い濃度(約1%〜約
5%)のリン酸化オリゴ糖が口腔内に存在し得る。対して、約20分〜30分後では、0
.25%以下のリン酸化オリゴ糖が口腔内に存在するのみである。従って、口腔内のリン
酸化オリゴ糖濃度は、食品中の濃度の4分の1以下に希釈される。従って、このような食
品の場合、目的とする口腔中濃度の4倍以下、例えば、1〜4倍の濃度で緩衝剤が食品に
添加され得る。他方、咀嚼挙動を必要とし得ない組成物(例えば、飲料水など)は、口腔
内における滞留時間は1分以内である。このような組成物は、口腔内でほとんど希釈され
ない。このため、目的とする口腔内濃度とほぼ同様、例えば、目標口腔内濃度と同程度の
0.1%〜5.0%の濃度で組成物中に配合され得る。上記のような口腔内存在量が維持
できる限り、上記緩衝剤は、本発明の飲食用組成物および口腔用組成物中において、単独
でまたは組み合わせて含有され得る。
【0095】
別の局面において、本発明の飲食用組成物および口腔用組成物はまた、上記緩衝剤に加
えて、リンカルシウム補償剤、リン製剤もしくはカルシウム製剤のいずれか、あるいはこ
れらの1つ以上を組み合わせて含む。特に、この物質のカルシウム塩を含む組成物の場合
、カルシウム塩が、過剰分のカルシウムを放出し、組成中のカルシウムとリンとの比率を
変化させ得る。また、添加されるこの緩衝剤が、歯からのカルシウム溶出に影響を与え得
る。ここで、この緩衝剤のために変化する口腔内における唾液中のリン:カルシウム濃度
比を補償すれば、歯の再石灰化をより有効にすることができる。正常な人体の場合、唾液
におけるリン:カルシウムのモル比(以下、「Ca/P」と称する)と称する)は、一般
的に0.25〜0.67(P/Ca=1.45〜3.9)であり、リンが過多に存在する
(すなわち、ほぼリン3モル対カルシウム2モル〜リン3.9モル対カルシウム1モル)
。対して、歯の組成成分であるハイドロキシアパタイト(これは、Ca10(PO46(O
H)2で表される)におけるCa/Pは1.67(P/Ca=0.6)であり、歯のエナ
メル質を構成する組成物においては、Ca/Pは1.0〜1.67(P/Ca=0.6〜
1.0)である。従って、Ca/Pを1.0〜1.67(P/Ca=0.6〜1.0)、
好ましくは1.67(P/Ca=0.6)に近づけるように、緩衝剤と共に、リンおよび
/またはカルシウムを供給することにより、これらの物質のハイドロキシアパタイトへの
結晶化が促進できる。
【0096】
本明細書中においては、このようにCa/Pを補償することができる物質を「リンカル
シウム補償剤」という。このようなリンカルシウム補償剤としては、第一リン酸カルシウ
ム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ハイドロキ
シアパタイト粉末、アモルファスリン酸カルシウム、牛骨カルシウム、卵殻カルシウム、
珊瑚カルシウム、真珠カルシウム、魚貝カルシウム、α−第三リン酸カルシウムなどが挙
げられる。ここでCa/Pの補償とは、Ca/Pを前述した実質的に1.0〜1.67(
P/Ca=0.6〜1.0)と近似できる範囲に維持することをいう。この場合、厳密に
1.0〜1.67(P/Ca=0.6〜1.0)である必要はなく、実質的にほぼ1.0
〜1.67(P/Ca=0.6〜1.0)と近似できる値である限り1.0〜1.67(
P/Ca=0.6〜1.0)を越えてもよい。補償するのに必要な補償剤の量は、用いる
緩衝剤および補償剤の種類により異なるが、当業者が適宜簡単な実験を行うことにより、
容易にその範囲を決定できる。リンカルシウム補償剤は、緩衝剤の添加量に対してモル換
算で1/20量から20倍量、好ましくは、1/2量から2倍量のリンカルシウム補償剤
の添加が適当である。
【0097】
唾液中はリンが過多であるため、カルシウム製剤の添加により、Ca/Pを1.0〜1
.67(P/Ca=0.6〜1.0)の比率に調整する場合もまた考えられる。ヒト唾液
のリン量は、3〜3.5mM、カルシウム量は、0.9〜2mMであるために、カルシウ
ムが約4〜5mM添加されることが好ましい。よって、緩衝剤カルシウム塩をリンカルシ
ウム補償剤として使用することができる。3%のカルシウムを含有するリン酸化オリゴ糖
の場合、約0.7%のリン酸化オリゴ糖カルシウムの添加が適当である。カルシウム製剤
は、特に限定されないが、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン
酸カルシウム、乳清カルシウム、有機酸カルシウム、コロイド性炭酸カルシウム、カゼイ
ンホスホペプチドカルシウム、フッ化カルシウムなどが、好適に使用される。
【0098】
本発明の飲食用組成物および口腔用組成物中に、リン製剤もまた含まれ得る。リン製剤
とは、リン酸化合物を意味する。このようなリン酸化合物としては、リン酸化ナトリウム
、リン酸水素ナトリウム、リン酸化カリウム、リン酸水素カリウムなどが挙げられる。
【0099】
上記リンカルシウム補償剤、リン製剤、もしくはカルシウム製剤は、Ca/Pを1.0
〜1.67(P/Ca=0.6〜1.0)、好ましくは1.67(P/Ca=0.6)に
近づけるように、単独で、または組み合わせて、本発明の飲料用組成物および口腔用組成
物中に添加され得る。
【0100】
本発明の飲食用組成物とは、ヒトの食品、動物あるいは養魚用の飼料、ペットフードを
総称する。すなわち、コーヒー、紅茶、日本茶、ウーロン茶、ジュース、加工乳、スポー
ツドリンクなどの液体および粉末の飲料類、パン、ピザ、パイなどのベーカリー類、クッ
キー、クラッカー、ビスケット、ケーキなどの焼き菓子類、スパゲティー、マカロニなど
のパスタ類、うどん、そば、ラーメンなどの麺類、キャンデー、ソフトキャンデー、ガム
、チョコレートなどの菓子類、おかき、ポテトチップス、スナックなどのスナック菓子類
、アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓類、クリーム、チーズ、粉乳、練乳、乳飲料
などの乳製品、ゼリー、プリン、ムース、ヨーグルトなどの洋生菓子類、饅頭、ういろ、
もち、おはぎなどの和菓子類、醤油、たれ、麺類のつゆ、ソース、だしの素、シチューの
素、スープの素、複合調味料、カレーの素、マヨネーズ、ケチャップなどの調味料類、カ
レー、シチュー、スープ、どんぶりなどのレトルトもしくは缶詰食品、ハム、ハンバーグ
、ミートボール、コロッケ、餃子、ピラフ、おにぎりなどの冷凍食品および冷蔵食品、ち
くわ、蒲鉾などの水産加工食品、弁当のご飯、寿司などの米飯類が含まれる。さらに、カ
ルシウムなどの栄養上有効な成分の吸収のよさが利用される、乳児用ミルク、離乳食、ベ
ビーフード、ペットフード、ペット用ガム、動物用飼料、スポーツ食品、栄養補助食品、
健康食品なども含まれる。
【0101】
好ましい実施態様では、飲食物は、食するにあたって咀嚼される程度が高い飲食物、例
えば、ガムなどである。咀嚼される程度が高い飲食物の場合、口腔中に緩衝剤が拡散しや
すく、抗う蝕効果が良好に得られる。咀嚼される程度が高い飲食物の場合、緩衝剤は、飲
食物全体の重量のうち、好ましくは0.1〜50重量%の割合で配合することができ、よ
り好ましくは0.5〜20重量%であり、さらに好ましくは0.5〜10重量%であり、
特に好ましくは0.5〜5重量%である。具体的には、例えば、緩衝剤が0.1〜50重
量%配合されたガムなどである。また、緩衝剤が0.1〜50重量%配合された錠菓、キ
ャンデー、グミなども好ましい。
【0102】
別の好ましい実施態様では、飲食物は、食するにあたって咀嚼をほとんど必要としない
飲食物、例えば、ジュースまたは清水などの飲料水である。食するにあたって咀嚼をほと
んど必要としない飲食物の場合、緩衝剤は、飲食物全体の重量のうち、好ましくは0.1
〜70重量%の割合で配合することができ、より好ましくは0.1〜50重量%であり、
さらに好ましくは0.2〜5重量%である。具体的には、例えば、緩衝剤が1〜30重量
%配合されたジュースなどである。また、緩衝剤が0.1〜10重量%配合された野菜ジ
ュース、天然果汁、乳飲料、牛乳、豆乳、スポーツ飲料、ニアウォーター系飲料、栄養補
給飲料、コーヒー飲料、ココアなども好ましい。
【0103】
さらに別の好ましい実施態様では、飲食物は、食するにあたって通常の食事の主食と同
じ程度の咀嚼により食される飲食物である。主食として食される飲食物が好ましい。例え
ば、米飯などである。主食として食される飲食物の場合、多量に食されるので、当該飲食
物への緩衝剤の添加濃度が少なくても、う蝕防止効果が大きくかつ長期的に得られるとい
う利点がある。食するにあたって通常の食事の主食と同じ程度の咀嚼により食される飲食
物の場合、緩衝剤は、飲食物全体の重量のうち、好ましくは0.01〜20重量%の割合
で配合することができ、より好ましくは0.02〜10重量%であり、さらに好ましくは
0.03〜5重量%であり、特に好ましくは0.05〜3重量%である。具体的には、例
えば、緩衝剤が0.02〜10重量%配合された米、緩衝剤が0.01〜20重量%配合
されたパンなどである。
【0104】
もちろん、上記好ましい実施態様のそれぞれに示した飲食物以外の飲食物でもよい。具
体的には、例えば、緩衝剤が0.1〜20重量%配合されたラーメン、緩衝剤が0.1〜
20重量%配合されたうどん、緩衝剤が0.1〜20重量%配合されたもち、緩衝剤が0
.1〜20重量%配合されたプレッツェル、緩衝剤が0.1〜20重量%配合された寒天
、緩衝剤が0.1〜20重量%配合されたゼリー、緩衝剤が0.1〜20重量%配合され
たヨーグルト、緩衝剤が0.1〜20重量%配合されたクッキー、緩衝剤が0.1〜20
重量%配合された錠菓、緩衝剤が0.1〜20重量%配合された豆腐、緩衝剤が0.1〜
20重量%配合されたチョコレート、緩衝剤が0.1〜20重量%配合された米菓、緩衝
剤が0.1〜20重量%配合された餃子、緩衝剤が0.1〜20重量%配合されたハムな
ども好ましい。
【0105】
本明細書中における「口腔用組成物」とは、口腔内に導入され、歯に接触し得る、飲食
物以外のすべての組成物を意味する。医薬品であってもよく、医薬部外品であってもよく
、それ以外であってもよい。例えば、「口腔用組成物」中に、化粧品もまた包含される(
より具体的には、虫歯を防ぐ、歯を白くする、歯垢を除去する、口中を浄化する、口臭を
防ぐ、歯のやにをとる、歯石の沈着を防ぐなどの効能を有する歯磨き剤(これらは、平成
13年改正薬事法により「化粧品」と認定され得る))。具体的には、例えば、本発明の
口腔用組成物は、歯磨き剤、マウスウオッシュ、トローチ、うがい薬、歯肉マッサージク
リーム、のど飴、人工唾液などを包含する。
【0106】
1つの好ましい実施態様では、口腔用組成物は、歯磨き剤であり、緩衝剤は、総重量の
うち、好ましくは0.01〜20重量%の割合で配合することができ、より好ましくは0
.02〜10重量%であり、さらに好ましくは0.03〜5重量%であり、特に好ましく
は0.05〜3重量%である。
【0107】
1つの好ましい実施態様では、口腔用組成物は、マウスウオッシュであり、緩衝剤は、
総重量のうち、好ましくは0.01〜20重量%の割合で配合することができ、より好ま
しくは0.02〜10重量%であり、さらに好ましくは0.03〜5重量%であり、特に
好ましくは0.05〜3重量%である。
【0108】
1つの好ましい実施態様では、口腔用組成物は、口腔用軟膏であり、緩衝剤は、総重量
のうち、好ましくは0.01〜20重量%の割合で配合することができ、より好ましくは
0.02〜10重量%であり、さらに好ましくは0.03〜5重量%であり、特に好まし
くは0.05〜3重量%である。
【0109】
また、緩衝剤が0.1〜20重量%配合された歯磨き剤、マウスウオッシュ、トローチ
、うがい薬、人工唾液なども好ましい。
【0110】
人工唾液は、口腔乾燥症を改善するために使用されてきており、ヒトの唾液とほぼ同一
になるようにミネラルなどの成分を含む。人工唾液には、甘味料、保存料が付加され得る
。甘味料としては、糖アルコール、人工甘味料が好適に用いられ、保存料としては安息香
酸ナトリウム、ソルビン酸等が好適に用いられる。上記緩衝剤を含む人工唾液は、舌およ
び口腔喉頭粘膜を湿潤させて、舌および粘膜の動きを円滑にさせるのみならず、う蝕に対
する予防および治療効果もまた有し得る。
【0111】
本発明の飲食用組成物および口腔用組成物は、必要に応じて、さらにフッ素を含有する
。本発明の飲食用組成物および口腔用組成物は、フッ素を、1000ppmを超えない量
で、好ましくは、0.1〜500ppm、より好ましくは、0.1〜300ppmで含有
する。100ppm以上でのフッ素の効力を好適に上昇させるため、緩衝剤は、医薬品、
医薬部外品、化粧品における使用にも適している。本発明の飲食用組成物および口腔用組
成物は、さらにフッ素を含有することにより、歯の再石灰化に対して、より高い効果を有
し得る。ここでいう「フッ素」とは、フッ素イオンを意味する。「フッ素含有物」とは、
フッ素イオンを提供するいずれの材料をも意味し、好ましくは、フッ素イオンを含む化合
物であり、例えば、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム
、フッ化アンモニウム、フッ化アミン塩、フッ化スズなどが挙げられる。モノフルオロリ
ン酸ナトリウムおよびフッ化ナトリウムの使用が好ましい。
【0112】
フッ素またはフッ素含有物のみでは、歯の再石灰化に対して、効力が低く、特に100
ppm以上の高濃度では不溶化しやすいため、その効力が著しく低下する。しかし、緩衝
剤と併用してフッ素またはフッ素含有物の効力を上昇させることもまた、本発明によって
明らかになった。また、食品においては、フッ素を高含有したお茶(200〜300pp
m)などが好適に用いることができる。フッ素またはフッ素含有物は、歯の結晶に組み込
まれて酸に強い強固な結晶を生成し得る。このため、本発明の飲食用組成物および口腔用
組成物は、歯の再石灰化に加えて歯の強固な結晶の生成にも作用して、う蝕の発生を低下
させ得る。
【0113】
本発明の飲食用組成物および口腔用組成物は、抗う蝕機能を有することが当業者に公知
である他の物質もまた含み得る。このような物質としては、各種オリゴ糖(パノース(6
2−グルコシル−マルトース)、イソマルトオリゴ糖、パラチノース(6−O−α−D−
グルコピラノシル−D−フルクトフラノース)、トレハロース(O−α−D−グルコピラ
ノシル(1−1)−α−D−グルコピラノシド)、マルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖TM(4
G−β−D−ガラクトシルスクロース)、フラクトオリゴ糖、カップリングシュガー、キ
シロシルフルクトシド、シクロデキストランなど);糖アルコール類(キシリトール、エ
リスリトール、パラチニット、ソルビトール、マルチトール、マンニトールなど);茶抽
出物(含有フッ素、ポリフェノール、カテキンなど);ハーブ類(例えば、ミント、ペパ
ーミントオイル、カモミール、セージ、ジンジャー、ローズマリーなど)(Shibuy
aら、FRAGRANCE JOURNAL SPECIAL ISSUES、12、p
150−155、1992年);酵素類(例えば、デキストラナーゼ、ムターゼなど);
ワクチン(例えば、S.mutansに対する分泌型免疫グロブリンA)などが挙げられ
る。糖アルコール類が好ましく、キシリトールがより好ましい。本発明の飲食用組成物お
よび口腔用組成物は、上記物質を含有することにより、さらに上昇したう蝕予防効果を有
し得る。
【0114】
緩衝剤の再石灰化効果は、以下のような方法で調べられ得る。例えば、Inaba.D
ら、Eur.J.Sci.105:74−80、1997、Inaba.Dら、J.De
nt.Helth.47:67−74、1997、Iijima.Yら、Caries
Research.33:206−213、1999の記載のような牛歯片を使用する再
石灰化試験系が、当該分野で公知である。
【0115】
本発明の飲料用組成物および口腔用組成物中に含まれ得る緩衝剤の再石灰化効果を調べ
るために、本発明者らは、上述した再石灰化試験系に比較して、より簡便な試験系を開発
した。再石灰化の生じやすい条件として、以下が挙げられる:歯面(ハイドロキシアパタ
イト)接触面で速やかに歯面へカルシウムおよびリンが供給され、歯の構成成分(ハイド
ロキシアパタイト)に変化する;歯面を含む系で、より高い濃度のカルシウムまたはリン
濃度が維持されている;および歯面以外の場所でカルシウムおよびリンが沈殿して、系か
ら失われることがない。このような再石灰化の生じやすい条件を単純化すると、ハイドロ
キシアパタイトを含む系では、カルシウムおよびリンが結晶化のために供給され、溶解性
カルシウムが減少する。ハイドロキシアパタイトを含まない系では、リンおよびカルシウ
ムが沈殿せずに、高い溶解性が保持される。従って、これらの2つの系におけるカルシウ
ム溶解の程度を比較することによって、再石灰化効果を検討し得た。
【0116】
この簡便な試験系を以下に説明する。歯質ミネラル濃度の分布を定量的に測定する標準
法として、TMR(Transversal microradiography)法は
脱灰・再石灰化に関する多くの研究に用いられてきた。しかし、評価に時間を要すること
や、実験手法に高度な技術が要求されることなどの制約があった。そこで、歯質ミネラル
濃度の変化を迅速に捉えることのできる簡易評価系の開発が望まれている。一方、歯エナ
メル質の初期う蝕病巣での再石灰化現象は以下の2プロセスで進むと考えられる:1.構
成成分であるカルシウム(Ca)イオン及びリン(P)イオンが脱灰部に供給される;2
.供給されたCaイオン及びPイオンが脱灰部のエナメル質の結晶成長に供される。 つ
まり、再石灰化の2プロセスを考えた場合、再石灰化促進効果物質とは、中性下での C
a− Pの不溶化及び沈澱形成を阻害するが、HApの結晶成長を阻害しない物質である
と考えられた。この試験系は、従来使用されてきたような牛の歯を使用する系と上述のよ
うに相関関係を有しており、簡便かつ優れた方法である。
【0117】
本願発明の1つの局面では、本願発明は、抗う蝕作用が予想される試料の歯に対する再
石灰化効果を調べる方法に関する。この方法は、リン、カルシウム、および歯成分を含む
溶液から該試料の存在下でカルシウム沈殿反応させる工程(A);該沈殿反応後における
溶液中のカルシウム濃度またはカルシウム沈殿量を測定する工程(B);該溶液から該試
料の非存在下でカルシウム沈殿反応させる工程(C);沈殿反応後、溶液におけるカルシ
ウム濃度または生成したカルシウム沈殿量を測定する工程(D);ならびに工程(B)お
よび(D)におけるカルシウム濃度または沈殿量を比較する工程(E)を包含する。好ま
しい実施態様では、上記溶液は、ハイドロキシアパタイト、緩衝液、KH2PO4およびC
aCl2を含み得る。上記溶液に含まれるべき「歯成分」としては、リンおよびカルシウ
ムを沈着させて、再石灰化により生じるハイドロキシアパタイトを生じさせ得る任意の物
質が使用され得る。ハイドロキシアパタイトを使用することが好ましいが、牛などの哺乳
類の歯およびその切片またはこれを破砕したものもまた、使用され得る。カルシウム沈殿
反応のための溶液の作製について、上記のリン、カルシウム、および歯成分は添加する順
序を問わないが、好ましくは、試料を最初に入れ、リン、カルシウム、および歯成分懸濁
液または脱イオン水の順番で添加して、溶液を作製する。KH2PO4溶液を添加した後で
、溶液のpHを調整することが好ましい。カルシウム沈殿反応は、通常、室温で、十数時
間から数日間(好ましくは、10時間〜7日間、より好ましくは、18時間〜42時間)
インキュベートすることによって生じる。溶液中のカルシウム溶解度は、当業者に公知の
任意の手順を使用して測定され得る。溶液中のカルシウム溶解度は、例えば、OCPC法
(和光純薬株式会社製造のカルシウムCテストワコーを使用する)によって測定され得る
。あるいは、溶液中のカルシウム沈殿量を測定することもできる。溶液中のカルシウム沈
殿量は、当業者に公知の任意の手順を使用して測定され得る。溶液中のカルシウム溶解度
は、当業者に公知の任意の手順を使用して測定され得る。このような方法としては、例え
ば、ICP法(Inductive
Coupled Plasma method)、原子吸光分析、イオン電極法などが
挙げられる。
【0118】
また、抗う蝕機能を調べるためには、できるだけ実際に近い脱灰エナメル質を得るため
の人工口腔装置が用いられ得る(人工口腔装置については、例えば、Jpn.J.Ora
l Biol.20:288−291、1984を参照のこと)。例えば、この装置は、
電極、電極の周囲に装着されたエナメル切片、ならびにミュータンス連鎖球菌懸濁液、培
地溶液、および糖質溶液を滴下するための手段を備え得る。この装置によって、電極表面
上に、ミュータンス球菌が、非水溶性グルカンを合成しながら固着されて人工プラークを
形成し、低pHを作出できる。さらに、エナメル切片にも同様の人工プラークが形成され
、エナメル質の明らかな硬度低下が得られる。

【実施例】
【0119】
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。この実施例は、本発明を限定する
ものではない。実施例で使用した、材料、試薬などは、他に特定のない限り、商業的な供
給源から入手可能である。
【0120】
(実施例1)
本実施例は、本願発明の組成物に用いるためのリン酸化オリゴ糖の製造方法を示す。
【0121】
ジャガイモデンプンの1%溶液を、5mlの6mM塩化ナトリウムおよび2mM塩化カ
ルシウムを含む溶液に溶解しつつ100℃まで迅速に温度上昇させて糊化した後、α−ア
ミラーゼ(フクタミラーゼ;阪急共栄物産株式会社製)を35U作用させて、50℃で3
0分間保持した。この反応液を少量分取して0.2%糖溶液とし、0.01Mのヨウ素−
ヨウ化カリウム溶液を1/10量添加しヨード呈色が陰性であることを確認後、プルラナ
ーゼ(林原生物化学研究所製)2Uとグルコアミラーゼ(東洋紡績製)6Uとを同時に4
0℃で20時間作用させた。反応を停止し、この溶液を、遠心分離後、上清を20mM酢
酸緩衝液(pH4.5)で平衡化した陰イオン交換樹脂(キトパールBCW2501;富
士紡績製)に供した。十分に同緩衝液で洗浄して中性糖を除去し、続いて、0.5M塩化
ナトリウムを含む同緩衝液で溶出した。各溶出画分をエバポレーターを用いて濃縮してか
ら脱塩後、凍結乾燥することにより、リン酸化オリゴ糖を得た。
【0122】
上記により得たリン酸化オリゴ糖を20mM酢酸緩衝液(pH4.5)で平衡化した陰
イオン交換樹脂カラム(キトパールBCW2501)に再び供した。十分にカラムを同緩
衝液で洗浄して中性糖を除去した。まず0.15M塩化ナトリウムを含む同緩衝液で、次
に0.5M塩化ナトリウムを含む同緩衝液で溶出する画分を集めた。上記の構造決定法に
基づいて分析した結果、これらの画分を脱塩し凍結乾燥することで、0.15M塩化ナト
リウム溶出画分からはグルコースが3個以上5個以下α−1,4結合したグルカンにリン
酸基が1個結合しているリン酸化オリゴ糖(PO−1画分)が得られ、0.5M塩化ナト
リウム溶出画分からはグルコースが2個以上8個以下α−1,4結合したグルカンにリン
酸基が2個以上結合しているリン酸化オリゴ糖(PO−2画分)が得られた。
【0123】
なお、上記のリン酸化オリゴ糖の構造分析は、以下のようにして行った。
【0124】
まず、リン酸化オリゴ糖よりリン酸基を除去した。100μlの3%リン酸オリゴ化糖
溶液に100μlの10mM塩化マグネシウム、0.3mM塩化亜鉛、および0.05%
アジ化ナトリウムを含む60mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.4)を混合し、これに
100μlの30U/mlのアルカリホスファターゼ(EC.3.1.3.1;E.co
li由来;シグマ社製)を添加して、40℃で18時間反応させた。限外濾過膜を用いて
アルカリホスファターゼを除去することにより反応を停止し、リン酸基除去済の糖(以下
、脱リン酸化糖と言う)を成分とする反応液(以下反応液Aという)を得た。
【0125】
得られた反応液A10μlに対し、10μlの200mM酢酸緩衝液(pH4.8)に
溶解した5,000U/mlのβ−アミラーゼ(さつまいも由来;シグマ社製)を添加し
て、37℃で2時間保持した(以下、この液を反応液Bという)。同様に、反応液A10
μlに10μlの60mM酢酸緩衝液(pH4.5)に溶解した300U/mlのグルコ
アミラーゼ(Rhizopus由来;東洋紡績製)を添加して、35℃で18時間保持し
た(以下、この液を反応液Cという)。
【0126】
反応液A〜Cを分析して生成物を確認した。これらの反応液の分析は、陰イオン交換樹
脂カラムCarboPac PA−100(φ4×250mm、ダイオネックス社製)に
よる高速液体クロマトグラフィーまたはシリカゲルを用いた薄層クロマトグラフィーによ
って、各種重合度の標準マルトオリゴ糖と比較することにより確認した。高速液体クロマ
トグラフィーを用いた脱リン酸化糖の溶出は、100mMの水酸化ナトリウムを基本溶液
として1M酢酸ナトリウム濃度を上昇させることによって行なわれる。検出はパルスドア
ンペロメトリー(ダイオネックス社製)によった。薄層クロマトグラフィーによる脱リン
酸化糖の分析は、脱リン酸化糖をアセトニトリル/水=80/20で多重展開した後、硫
酸/メタノール=1/1の溶液を噴霧し、130℃で3分間保持することにより行なった

【0127】
反応液Aを分析することによりリン酸化オリゴ糖の鎖長を確認した。反応液Bを分析し
たとき、マルトースのみ、あるいはマルトースとマルトトライオース(およびわずかにグ
ルコース)が検出された。従って、この脱リン酸化糖はグルコースがα−1,4結合した
グルカンであることを確認した。さらに反応液Cを分析したとき、グルコースのみが検出
された。従って、この脱リン酸化糖はα−結合したグルコースからなることを確認した。
【0128】
糖の平均鎖長(以下グルコースを1単位としてDPで表す。)は、脱リン酸化糖を構成
する各重合度の糖含量から求めた。全リン酸化糖中の全糖量はフェノール硫酸法により定
量し、結合リン酸基数は湿式灰化後、無機リン酸として定量される(デンプン関連糖質実
験法、生物化学実験法19、中村道徳ら、31頁、1986年、学会出版センター)。1
分子当たりの結合リン酸基数は、湿式灰化後定量された無機リン酸量と、DPより下式を
用いて算出した。
【0129】
【数1】


(実施例2)
リン酸化オリゴ糖の分子内にリン酸基を1個有するPO−1画分およびリン酸基を2個
有するPO−2画分のそれぞれ10gを100mlの蒸留水に溶解した。これらの水溶液
を電気透析器(旭化成製マイクロアシライザーG3、AC210−400膜)で脱塩し、
強カチオン交換樹脂(日新化成製Dowex50w、20−50MESH、H−Form
)でイオン交換した後、pH2.7の糖溶液を得た。本溶液を1N水酸化ナトリウム溶液
または水酸化カルシウム溶液を用いて中和した後、凍結乾燥し、リン酸化オリゴ糖のナト
リウム塩またはカルシウム塩を調製した。
【0130】
以下の実施例で使用されたリン酸化糖(ナトリウム塩またはカルシウム塩の形態)は、
上記PO−1画分リン酸化糖が80%以上含まれ、残りをPO−2画分リン酸化糖とする
リン酸化糖混合物である。
【0131】
(実施例3)
本実施例は、リン酸化オリゴ糖の初期う蝕における再石灰化への影響を明らかにするた
めに、牛歯片を用いた系における検証を示す。
【0132】
本実験は、基本的に、Inaba.Dら、Eur.J.Sci.105:74−80、
1997、Inaba.Dら、J.Dent.Helth.47:67−74、1997
、Iijima.Yら、Caries Research.33:206−213、19
99の記載内容に基づいて実施した。
【0133】
本実験において使用する歯片は、次のようにして調製した:3mm角の牛歯片を、エナ
メル面を上にして配置した。エナメル面以外をコンポジット樹脂で被覆した。エナメルは
、耐水ペーパーで処理した。脱灰処理は、次のようにして行った:歯片を、6%カルボキ
シメチルセルロースゲルを含む1%乳酸ゲル(pH5.0)中で、37℃で3週間浸漬し
た。再石灰化処理は、次のようにして行った:脱灰した歯を、1.5mM CaCl2
0.9mM KH2PO4を含む20mM 2−[4−(2−ヒドロキシエチル)]−1−
ピペリジニルエタンスルホン酸(HEPES)緩衝液(pH7.0)中に37℃で1週間
浸漬した。
【0134】
以下の8つの試験群を作製した:(1)脱灰処理のみ(ブランク;図1、2中「Bla
nk」);(2)再石灰化処理のみ(陰性コントロール;図1、2中「Control」
);(3)再石灰化溶液+2ppmフッ素(F)(陽性コントロール;図1、2中「2p
pmF」);(4)再石灰化溶液+4.0%リン酸化オリゴ糖ナトリウム(図1、2中「
POs Na 4%」);(5)再石灰化溶液+1.0%リン酸化オリゴ糖ナトリウム(
図1、2中「POs Na 1%」);(6)再石灰化溶液+0.2%リン酸化オリゴ糖
ナトリウム(図1、2中「POs Na 0.2%」);(7)再石灰化溶液+0.2%
リン酸化オリゴ糖カルシウム(図1、2中「POs Ca 0.2%」);および(8)
再石灰化溶液+0.07%リン酸化オリゴ糖カルシウム(図1、2中「POs Ca 0
.07%」)。
【0135】
各処理が終わった後、処理歯片から200μmの薄片を調製し、そのマイクログラフィ
ー影像(示さず)から、ミネラル濃度分布解析を行った。歯片を脱灰処理すると、ミネラ
ルが溶出し、損失するので、空洞が生じる(う蝕の始まり)。このミネラル濃度分析解析
によるミネラル損失量のグラフ(図1、縦軸にミネラル損失量を示す)および脱灰深度(
図2、縦軸に脱灰深度(μm)を示す)を示す。図1によると、リン酸化オリゴ糖ナトリ
ウムおよびリン酸化オリゴ糖カルシウムはともに、試験した濃度のうち最も低い濃度にお
いて、ミネラル損失量が最小であった。このミネラル損失量は、(2)陽性コントロール
よりも少かった。リン酸化オリゴ糖ナトリウムおよびリン酸化オリゴ糖カルシウムは、低
い脱灰深度を示した(図2)。このことは、再石灰化により空洞を埋めたことを示し得る
。興味深いことに、フッ素を添加した(2)陽性コントロールでは、脱灰深度は深いまま
であった。
【0136】
各処理が終わった後、再石灰化処理後溶液のカルシウムおよびリンの濃度の分析もまた
行った。溶液を、10,000gで2分間遠心処理し、上清を分析した。リンの濃度は、
モリブデン酸法(新版分析化学実験(第1版)、第313〜314頁、株式会社化学同人
発行に記載)によって、およびカルシウムの濃度は、OCPC法(和光純薬株式会社製:
「カルシウムCテストワコー」キットを用いて測定)によって決定した。この結果を表1
に示す。
【0137】
【表1】


表1より、リン酸化オリゴ糖の添加によって、溶液中に溶解しているカルシウムおよび
リン濃度が高く維持されていることが分かった。
【0138】
従って、本実験により、リン酸化オリゴ糖の添加によって、溶液中に溶解しているリン
およびカルシウム濃度が高く維持され、その結果、これらの可溶化リンおよびカルシウム
が、う蝕部分へ供給され、そして再石灰化に利用され得ることが示唆される。このような
現象は、ヒト口腔内においても生じていると考えられる。
【0139】
(実施例4)
本実施例は、リン酸化オリゴ糖の初期う蝕における再石灰化への影響を明らかにするた
めに、再石灰化簡易試験系における検証を示す。
【0140】
(再石灰化試験系の手順)
再石灰化現象をより簡便に検証するために、再石灰化の生じやすい条件を単純化したと
ころ、ハイドロキシアパタイトを含む系では、カルシウムおよびリンが結晶化のために供
給され、溶解性カルシウムが減少するが、一方、ハイドロキシアパタイトを含まない系で
は、カルシウムおよびリンが沈殿せずに、これらの高い溶解性が保持されている。これら
の事実に基づいて、以下の試験系を設計した。
【0141】
以下の順に添加して、500μlの容積の溶液を調製する:(1)200mM
HEPES緩衝液(pH7.0)50μl、(2)脱イオン水または試料200μl、
(3)18mM KH2PO4溶液50μl、(4)30mM塩化カルシウム溶液50μl
、および(5)ハイドロキシアパタイト懸濁液(5mg/ml)または脱イオン水。(3
)を添加した後、0.1Nの水酸化カリウム溶液を用いて、溶液のpHを調整する。生じ
た溶液を攪拌し、37℃で1〜7日間インキュベートする。次いで12,000rpmで
3分間遠心処理し、得られた上清中のカルシウム濃度を、OCPC法(上記と同様)を用
いて測定する。これは、カルシウムCテストワコー(Code;272−21801)を
用いて、570nmの吸光度を測定する。可溶化カルシウムのパーセントは、上清中のカ
ルシウム濃度を添加したカルシウム濃度で割ったものに100を掛けることによって得ら
れる。再石灰化のパーセントは、(5)において脱イオン水によって得られた値と、ハイ
ドロキシアパタイト添加時に得られた値との差を求めることによって決定される。
【0142】
(種々の濃度のリン酸化オリゴ糖の再石灰化に対する影響)
上記の簡易試験系を使用して、種々の添加濃度のリン酸化オリゴ糖のナトリウム塩およ
びカルシウム塩を、37℃で18時間または42時間インキュベートした。再石灰化につ
いてのリン酸化オリゴ糖のナトリウム塩およびリン酸化オリゴ糖のカルシウム塩の結果を
それぞれ、図3および図4に示す(図3および図4はともに、縦軸に再石灰化促進率(%
)を示し、横軸に試料(%)を示す、コントロールは試料無添加を示す;各試料濃度にお
いて、左側の棒は18時間処理であり、右側の棒は、42時間処理である)。リン酸化オ
リゴ糖ナトリウム塩は、添加されたカルシウムを溶解させる能力を低濃度でも高く有した
(図3)。リン酸化オリゴ糖カルシウム塩は、外来の添加カルシウム塩をさらに溶解する
能力は低く、むしろ、過剰分のカルシウムを放出し、溶液中のカルシウム/リンの比率を
変化させることで、新たな沈殿を生成しやすく、結果的に系中のカルシウム濃度を高く維
持できない傾向にある(図4)。
【0143】
従って、リン酸化オリゴ糖ナトリウム塩は、系中のカルシウムおよびリンの濃度比率を
変化させることなく、溶解作用を示すことができた。リン酸化オリゴ糖カルシウム塩の場
合、リン(リン酸、リン化合物など)もまた同時に供給することで、Ca/Pの比率を1
.67(P/Ca比=0.6に相当する)に維持する必要があると考えられた。あるいは
、添加濃度を、その比率に影響の少ないような濃度にする必要がある。
【0144】
(リン酸化オリゴ糖を使用したCa/P濃度比=1.67(P/Ca濃度比=0.6に
相当する)での再石灰化効果への影響)
カルシウムとリンの濃度比をCa/P濃度比=1.67(P/Ca濃度比=0.6)に
し、POのカルシウム塩を使用する場合、カルシウム源をリン酸化オリゴ糖とするように
カルシウムおよびリンの濃度を設定した。このリン酸化オリゴ糖濃度に合わせて、ナトリ
ウム塩も設定した。濃度設定を以下の表2に示す。
【0145】
【表2】


上記簡易試験系を使用して、37℃で15時間インキュベートした。この結果を図5に
示す(縦軸に再石灰化促進率(%)を示し、横軸にCa濃度(mM)を示し、黒四角は、
リン酸化オリゴ糖塩無添加のコントロールを、白菱形は、リン酸化オリゴ糖ナトリウム塩
(POs Na)を、白丸は、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩(POs Ca)を表す)
。図5に示したように、Ca/P濃度比=1.67(P/Ca濃度比=0.6)の比率を
一定にして、カルシウムの添加濃度を上昇させた場合には、リン酸化オリゴ糖のナトリウ
ム塩およびカルシウム塩ともに、同様な結果が得られた。添加したカルシウム塩が6mM
以上になると、リン酸化オリゴ糖の添加による効果は低下した。
【0146】
(リン酸化オリゴ糖を使用した種々のCa/Pでの再石灰化効果への影響)
カルシウムとリンの濃度比を、以下の表3に示すように変化させて、上記簡易試験系を
使用して、37℃で17.5時間または1週間インキュベートした(但し、表3中では、
P/Caで示す)。
【0147】
【表3】


この結果を図6A〜Cに示す(縦軸に再石灰化促進率(%)を示し、横軸にP/Caを
示す)。図6Aは、リン酸化オリゴ糖塩無添加のコントロールの結果を示し、白四角は1
7.5時間処理を、黒菱形は、1週間処理を表す。図6Bは、リン酸化オリゴ糖ナトリウ
ム塩の結果を示し、白三角は17.5時間処理を、黒三角は、1週間処理を表す。図6C
は、リン酸化オリゴ糖カルシウム塩の結果を示し、白丸は17.5時間処理を、黒丸は、
1週間処理を表す。図6A〜Cに示したように、Caを1.5mMと一定にして、リン濃
度を変化させてP/Ca比を変化させた場合、リン酸化オリゴ糖のナトリウム塩およびカ
ルシウム塩ともに、比較的効果的に再石灰化が生じると考えられた。本結果により、カル
シウム塩の方が高濃度のリンにおいても安定しているとも考えられる。
【0148】
(実施例5)
本実施例は、リン酸化オリゴ糖と、他の抗う蝕性物質との再石灰化に対する効果に関す
る比較を示す。抗う蝕性物質として、キシロース、キシリトール、パラチノース、および
パラチニットを用いた。再石灰化に対する効果を調べるために、実施例4における簡易系
を用いた。簡易系において、37℃で8日間のインキュベートを行った。これらの結果を
図7A〜Cに示す(縦軸に再石灰化促進率(%)を示し、横軸に試料濃度(%)を示す)
。図7Aは、リン酸化オリゴ糖塩の結果を示し、黒三角は、カルシウム塩を、白三角はナ
トリウム塩を表す。図7Bは、キシリトールの結果を示し、黒丸は、キシリトールを、白
丸はキシロースを表す。図7Cは、パラチニットの結果を示し、黒四角は、パラチニット
を、白四角はパラチノースを表す。図7A〜Cによると、リン酸化オリゴ糖では、0.1
%程度の低い濃度で高い再石灰化効果を示すのに対し、他の抗う蝕性物質(キシリトール
、パラチノース、およびパラチニット)は、既報(特開2000−128752号公報、
特開2000−247852号公報など)の通り20%添加濃度で再石灰化効果を示した
(キシロースではいずれの濃度でも再石灰化パーセントは低い)。
【0149】
(実施例6)
本実施例は、リン酸化オリゴ糖の脱灰抑制効果の検証を示す。
【0150】
以下の組成の脱灰溶液を調製した:6.0mM 塩化カルシウム溶液、3.6mM リ
ン酸二水素カリウム、2%乳酸溶液、および5mg/mlハイドロキシアパタイト溶液、
pH5.0。この脱灰溶液125μlと、最終濃度0.2%および2%のリン酸化オリゴ
糖ナトリウム塩の溶液125μlとを攪拌し、37℃で2日間インキュベートした。次い
で、12,000rpmで3分間遠心分離し、得られた上清のカルシウム濃度を、OCP
C法を用いて測定した。添加時のカルシウム濃度と、処理後のカルシウム濃度を比較した
。試験試料の存在下で添加時のカルシウム濃度からの処理後のカルシウム濃度の差異が(
試験試料のない)コントロールと比べて低ければ、その試験試料は脱灰抑制効果を有する
とみなした。リン酸化オリゴ糖を含まないコントロール(5mM)と比較して、0.2%
および2%のリン酸化オリゴ糖ナトリウム塩の溶液はともに低かった(3mMおよび2m
M)ので、リン酸化オリゴ糖ナトリウム塩は脱灰抑制効果を有すると考えられた。
【0151】
(実施例7)
本実施例は、再石灰化効果について、リン酸化オリゴ糖のフッ素との相乗効果を示す。
【0152】
以下の表4に示す組成で、リン酸化オリゴ糖の存在または不在下での再石灰化効果を検
証した。
【0153】
【表4】


再石灰化に対する効果を調べるために、実施例4における簡易系を用いた。簡易系にお
いて、37℃で5日間のインキュベートを行った。次いで、可溶性カルシウムの量をOC
PC法を用いて測定した。薄層クロマトグラフィー(TLC)によって、リン酸化オリゴ
糖の定性的確認を行った。TLC分析条件は、以下の通りである:シリカゲルプレート(
Merck社製)、エタノール/脱イオン水/酢酸=70/30/2、1回室温展開、サ
ンプル添加量5μl、マーカーとして、1%リン酸化オリゴ糖1μlおよび1%マルトト
ライオース1μlを使用。
【0154】
TLC分析の結果を図8に示す。図8中、各レーンに種々の濃度(ppm)のフッ素を
示し、上方のスポットは、マルトトライオースを表し、下方のスポットは、リン酸化オリ
ゴ糖を表す。図9は、リン酸化オリゴ糖とフッ素との再石灰化における相乗作用を示す(
縦軸に再石灰化促進率(%)を示し、横軸にフッ素濃度(ppm)を示す;各値において
、左側の棒が、リン酸化オリゴ糖無添加群のコントロールを示し、そして右側の棒が0.
2%リン酸化オリゴ糖添加群を示す)。フッ素は反応性が高いハロゲン元素であるため、
フッ素のリン酸化オリゴ糖への影響およびカルシウム定量への影響を調べた。本実験条件
下では、フッ素の添加による影響は特に問題ないと思われた(図8)。フッ素の添加でC
aとPとの不溶化しにくい濃度比バランスが崩れるため、再石灰化率は、フッ素濃度の上
昇によって低下した。しかし、0.2%のリン酸化オリゴ糖ナトリウム塩を添加した場合
、再石灰化効果はむしろ上昇する傾向が見られ、顕著な相乗効果が確認できた(図9)。
【0155】
(実施例8)
本実施例は、リン酸化オリゴ糖のチューイングガムへの配合およびヒト口腔内への溶出
の結果を示す。
【0156】
以下の表5に示すリン酸化オリゴ糖のカルシウム塩(カルシウム含量3.2%)を配合
した板ガム(プレート上のチューイングガム;板ガム1枚当たりの重量は約3.2gであ
る)を調製した。
【0157】
【表5】


本ガムを咀嚼した際の経時的な口腔内への溶出量を薄層クロマトグラフィー(TLC)
で分析した。TLC条件は、以下の通りである:展開プレート、シリカゲルプレート;展
開溶媒、エタノール/脱イオン水/酢酸=70/30/2、展開温度、室温で1回展開;
スポットサンプル量、3μl;検出、検出液(硫酸/エタノール=1:1)をプレートへ
噴霧した後、130℃で3分間処理することで、スポットが発色する。
【0158】
図10は、標準的な溶液濃度のリン酸化オリゴ糖のTLC分析の結果を示す。各レーン
は、種々の濃度のリン酸化オリゴ糖の溶出を示し(左側にコントロールとして1%キシリ
トールを示し、右側に1%マルトトライオース(G3)を示す)、下方のスポットはリン
酸化オリゴ糖を表し、上方のスポットは、キシリトール、マルトトライオースを示す。図
11には、リン酸化オリゴ糖含有ガムを食した際における経時的な溶出量を示す。各レー
ンは、咀嚼時間の溶出を示し(左側にコントロールとして1%リン酸化オリゴ糖を、右側
に1%キシリトール、マルトトライオース(G3)を示す)、下方のスポットはリン酸化
オリゴ糖を表し、上方のスポットは、キシリトール、マルトトライオースを示す。本リン
酸化オリゴ糖は、唾液アミラーゼでは分解しない。これらの両図より、咀嚼開始後約10
分間では、比較的高い濃度で口腔内にリン酸化オリゴ糖が存在し、20分後では、0.2
5%程度の濃度で残存していることが理解され得る。
【0159】
(実施例9)
本実施例は、スクロースの発酵に及ぼすリン酸化オリゴ糖の影響を示す。
【0160】
S.mutans 8148株を1,000mlのブレインハートインフュージョン培
地(DIFCO社製)で、37℃で14時間培養した。次いで、菌体を6,000rpm
で20分間遠心分離して集菌した。菌体をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS、pH7.2
)で洗浄した後、40%(v/v)になるように、同PBSに懸濁した。pH測定試験の
ための反応混液(250μl)は40%菌体懸濁液125μlと80mMスクロース62
.5μl、各種オリゴ糖(5%のリン酸化オリゴ糖のナトリウム塩およびカルシウム塩)
水溶液62.5μlからなる。37℃でインキュベートしながら反応混液のpHを東亜電
波pHメーターにて連続的に測定した。
【0161】
S.mutans 8158株の20%菌体懸濁液に0.684%スクロースまたは0
.684%グルコースを添加すると、反応液のpHは5分以内に5.0以下となり、10
分でほぼ4.0まで低下した。これに5%リン酸化オリゴ糖(PO−1およびPO−2)
を共存させると、pH低下はいずれも明らかに抑制された(データ示さず)。5%のPO
のナトリウム塩およびカルシウム塩を添加した場合、0.684%スクロースの発酵に起
因するpH低下を効率よく抑制した(データ示さず)。
【0162】
(実施例10)
本実施例において、リン酸化オリゴ糖の糖アルコールを調製した。
【0163】
リン酸化オリゴ糖の分子内にリン酸基を1個有するPO−1画分およびリン酸基を2個
有するPO−2画分のそれぞれ10gを100mlの蒸留水に溶解した。1N水酸化ナト
リウム溶液を用いてpH約8の微アルカリ溶液とし、この溶液100mlに3%の水酸化
ホウ素ナトリウム溶液30mlを添加した後、40℃で1時間静置することで、オリゴ糖
を還元した。以上の方法により、リン酸化オリゴ糖の還元末端を水素添加した。本水素添
加溶液を1N塩酸溶液でpH7.5に調製し、反応を終了させた後、0.22μm膜透過
溶液を電気透析器(旭化成製マイクロアシライザーG3、AC210−400膜)で脱塩
し、強カチオン交換樹脂(日新化成製Dowex50w、20−50MESH、H−Fo
rm)でイオン交換した後、pH2.7の糖溶液を得た。本溶液を1N水酸化ナトリウム
溶液または水酸化カルシウム溶液を用いて中和した後、凍結乾燥し、リン酸化オリゴ糖の
糖アルコールのナトリウム塩またはカルシウム塩を調製した。
【0164】
(実施例11)
本実施例において、コンドロイチン硫酸オリゴ糖(不飽和二糖(ダイマー))を調製し
た。
【0165】
4.8gのコンドロイチン硫酸ナトリウム(C型;片山化学製)を500mlの蒸留水
に溶解(pH6.0)し、15UのコンドロイチナーゼACII(Arthrobact
er aurescens由来、生化学工業製)を添加し、37℃で23時間反応させた
。沸騰浴中で反応を停止し、実施例10と同様に脱塩処理し、コンドロイチン硫酸オリゴ
糖のナトリウム塩またはカルシウム塩を調製した。
【0166】
(実施例12)
本実施例において、種々の物質の再石灰化効果について調べた。
【0167】
実施例4の再石灰化簡易試験系を使用し、試料として、以下の表6に示す物質を使用し
た。全ての物質は、最終濃度0.1%で調製した。
【0168】
【表6】


上記の表6中、番号1のPOsNaはリン酸化オリゴ糖(PO−1画分)のナトリウム
塩であり、番号2のPO−2Naはリン酸化オリゴ糖(PO−2画分)のナトリウム塩で
あり、番号3のPOsH Naはリン酸化オリゴ糖(PO−1画分)の糖アルコールのナ
トリウム塩であり、番号4のPO−2H Naはリン酸化オリゴ糖(PO−2画分)の糖
アルコールのナトリウム塩であり、番号5のG3はマルトトライオースであり、番号6の
Glc−6−Pはグルコース−6−リン酸であり、番号7のSer−Pは、セリンリン酸
であり、番号8はコンドロイチン硫酸Cであり、番号9は、オリゴガラクツロン酸であり
、番号10は、コンドロイチン硫酸の不飽和二糖(表6および図12中、Dimer N
a)であり、番号11のD.W.は脱イオン水である。
【0169】
結果を図12に示す(縦軸に再石灰化促進率(%)を示し、横軸に用いた物質を示す)
。図において脱イオン水での結果より高い再石灰化割合を有するものを、再石灰化効果を
有すると判断した。リン酸化オリゴ糖アルコールのナトリウム塩、グルコース−6−リン
酸、コンドロイチン硫酸Cのナトリウム塩、コンドロイチン硫酸の不飽和二糖のナトリウ
ム塩が、リン酸化オリゴ糖ナトリウム塩と同程度またはそれ以上に優れた再石灰化効果を
示した。
【0170】
(実施例13)
本実施例において、種々の物質の再石灰化効果について調べた。
【0171】
実施例4の再石灰化簡易試験系を使用し、試料として、以下の表7に示す物質を使用し
た。
【0172】
【表7】


表7中、番号1のPOsNaはリン酸化オリゴ糖(PO−1画分)のナトリウム塩(最
終濃度0.2%)であり、番号2のPOsNaはリン酸化オリゴ糖(PO−1画分)のナ
トリウム塩(最終濃度2.0%)であり、番号3はパラチノース(最終濃度2.0%)で
あり、番号4はパラチノース(最終濃度20%)であり、番号5はキシリトール(Wak
o244−0052)(最終濃度2%)であり、番号6はキシリトール(Wako244
−0052)(最終濃度20%)であり、番号7はトレハロース(Wako 02252
)(最終濃度2%)であり、番号8はトレハロース(Wako 02252)(最終濃度
20%)であり、番号9はソルビトール(Katayama28−4770)(最終濃度
2%)であり、番号10はソルビトール(Katayama28−4770)(最終濃度
20%)であり、番号11のG3はマルトトライオース(最終濃度2%)であり、番号1
2のD.W.は脱イオン水(コントロール)であり、番号13は有機酸(酒石酸)(最終
濃度0.2%)であり、番号14は有機酸(酒石酸)(最終濃度1.4%)であり、番号
15はデキストラン硫酸(最終濃度0.2%)である。
【0173】
結果を図13に示す(縦軸に再石灰化促進率(%)を示し、横軸に用いた物質を示す)
。キシリトール、パラチノース、ソルビトールの20%添加群において、既報(前出と同
様)の通りの再石灰化効果を確認できた。また、コンドロイチン硫酸と同様に、デルマタ
ン硫酸においても再石灰化効果が確認できた。有機酸もまた、リン酸化オリゴ糖と同様に
効果的であった。
【0174】
(実施例14)
本実施例は、人工口腔装置でのう蝕予防効果の検証を示す。
【0175】
S.sobrinus 6715株(予めブレインハートインフュージョン培地(DI
FCO社製)で培養した)培養液、ハートインフュージョン液体培地(DIFCO社製)
、サンプル溶液(各溶液は試験の間中冷蔵)を、それぞれ、6ml/時間/チューブで、
恒温槽(37℃)中に放置した牛歯(約5×5mm)上に送流した。経時的に歯表面のp
Hを測定した。この結果を、図14に示す(縦軸にpHの変化を示し、横軸に経過時間を
示す;白丸は、1%砂糖(GF)のみの添加であり、黒三角は、1%GF+5%リン酸化
オリゴ糖(POs)の添加を表す)。16時間後、歯上のプラークを掻き採り、500n
mで濁度を測定した。また、形成された不溶性グルカン(WIG)量をフェノール硫酸法
で測定した。歯の強度を硬度計で測定した。未処理物の強度から差し引いた値(ΔH)で
示した。この結果を以下の表8に示す。
【0176】
【表8】


1%GF(砂糖)では、有機酸が発生し、10時間もするとpHが5.6以下になり、
プラーク内に保持されていることが明らかであった。プラークも十分に形成されていた。
歯も脱灰が進み、もろくなっていた。一方、1%GFおよび5%リン酸化オリゴ糖を含む
溶液は、全くプラークが形成されず、pHも低下しなかった。すなわち、う蝕菌定着を阻
害しプラークを形成させず、歯の脱灰が抑制され、歯の強度変化がなかった。この結果よ
り、リン酸化オリゴ糖のう蝕予防効果が明らかになった。この現象は、ヒト口腔内におい
ても同様に生じていることが考えられる。
【0177】
(実施例15)
本実施例では、各種デンプンからのリン酸化オリゴ糖の調製を示す。
【0178】
本実施例で使用したデンプンは、コメデンプン(商品名 ベターフレンド、島田化学製
)およびタピオカデンプン(三和澱粉製)であった。
【0179】
澱粉100gを800〜1000mlの水中に入れ、これに細菌B.lichenfo
rmis由来デンプン液化型α−アミラーゼ(BLA)5000U/ml(フクタミラー
ゼ、阪急共栄物産株式会社より入手、1%)50μlを添加し、50℃で48時間、水浴
中で糊化させた。さらに、この糊化したデンプンを、BLA 5000U/ml(フクタ
ミラーゼ、阪急共栄物産株式会社より入手、1%)50μl、プルラナーゼ200U/m
l(プロモザイム:Novo Nordiskより入手)50μl、グルコアミラーゼ(
GA)(416U/ml)(東洋紡より入手)、50μlで、50℃で48時間インキュ
ベートした。これを8,000rpmで20分間遠心分離した。上清に、10mM酢酸緩
衝液(pH4.5)で平衡化した陰イオン交換樹脂(キトパールBCW2501;富士紡
績製)に供した。十分に同緩衝液で洗浄して中性糖を除去し、続いて、0.5M塩化ナト
リウムを含む同緩衝液で溶出した。各溶出画分をエバポレーターを用いて濃縮してから脱
塩後、凍結乾燥することにより、リン酸化オリゴ糖を得た。
【0180】
上記により得たリン酸化オリゴ糖を20mM酢酸緩衝液(pH4.5)で平衡化した陰
イオン交換樹脂カラム(キトパールBCW2501)に再び供した。十分にカラムを同緩
衝液で洗浄して中性糖を除去した。まず0.15M塩化ナトリウムを含む同緩衝液で、次
に0.5M塩化ナトリウムを含む同緩衝液で溶出する画分を集めた。上記の構造決定法に
基づいて分析した結果、これらの画分を脱塩し凍結乾燥することで、0.15M塩化ナト
リウム溶出画分からはグルコースが3個以上5個以下α−1,4結合したグルカンにリン
酸基が1個結合しているリン酸化オリゴ糖(PO−1画分)が得られ、0.5M塩化ナト
リウム溶出画分からはグルコースが2個以上8個以下α−1,4結合したグルカンにリン
酸基が2個以上結合しているリン酸化オリゴ糖(PO−2画分)が得られた。なお、上記
のリン酸化オリゴ糖の構造分析は、実施例1に従った。
【0181】
(実施例16)
本実施例は、リン酸化オリゴ糖を配合したチューイングガムが初期う蝕においてエナメ
ル質の再石灰化を促進する効果を有したことを示す。
【0182】
ジャガイモデンプン由来のPOs Caを平均含有量として2.5%配合したシュガー
レスガム(45%キシリトール含有)およびPOs Ca非含有シュガーレスガム(47
.5%キシリトール含有)の2種類の粒ガム(約1.5g/粒)を常法によって作製した
。その他、実験試薬は全て特級試薬を用いた。なお、含有量はそれぞれガム総重量に対す
る割合である。
【0183】
歯材料には牛歯の歯冠部エナメル部分を使用し、ダイヤモンドソー(LUXO製)を用
いて規格化した実験面を切断してエナメル質ブロックを調製した(7×7×3mm)。こ
れらのエナメル質ブロック6試料を常温重合レジン(UNIFAST Trad, GC
製)に包埋し、全体を大きさ15×50mm、厚さ7mmのプレートに整えた。ついで、
800番の耐水ペーパーで表面を研磨することにより平滑な新鮮エナメル質を露出させた
。一方、象牙質面側は予め印象用コンパウンド(GC製)で包埋した。このようにして調
製したエナメル質ブロック包埋プレート1枚に対し、0.1M乳酸ゲル(6wt% ca
rboxymethylcellulose, pH5.0)100mlに4週間37℃
の条件下で浸漬させることで人工齲蝕を発生させた。
【0184】
健常な被験者17名において、POs Ca含有ガムあるいはPOs Ca非含有ガム
2粒(3.0g)を20分間咀嚼してもらった。この試験は、被験者にはガム種を知らせ
ずに行った。ガム咀嚼開始後1分まで、続いて1分後〜3分後、3分後〜6分後、6分後
〜10分後、10分後〜20分後までの全ての唾液を、プラスチックロートを用いて10
mlのプラスチック試験管に分取して採取した。これらの唾液について、唾液量、唾液p
H値を直ぐに測定した後、唾液上清を蒸留水で10倍希釈した後、0.45μm膜(Mi
llipore製)の濾液についてCaおよび無機P含量を、OCPC法(カルシウムC
テストワコー;和光純薬製)およびモリブデン酸法によって定量した。
【0185】
健常な被験者12名において、POs Ca含有ガムあるいはPOs Ca非含有ガム
2粒(3.0g)を20分間咀嚼してもらった。ガム種は被験者に対して伏せて実施した
。ガム咀嚼開始後前半の10分までの全唾液(唾液A)および後半10分間の全唾液(唾
液B)を、プラスチックロートを用いて50mlプラスチック試験管にそれぞれ採取した
。これらの採取唾液について、唾液量、pH値を直ぐに測定した後ただちに、人工齲蝕を
発生させたエナメル質ブロック包埋プレート1枚を予め入れたプラスチック容器(10×
30×60mm)にそれぞれの唾液7ml以上を注入した。この量は、エナメル質ブロッ
ク包埋プレートが十分浸漬される量である。唾液Aにプレートを10分間浸漬した後、続
いて唾液Bに10分間浸漬した。その後、プレートを取り出し、蒸留水で十分にプレート
表面を洗浄した。この浸漬操作は37℃で実施し、この一連の操作を1日4回連続して繰
り返した。1日の操作終了後は、エナメル質ブロック包埋プレートを湿度100%下で冷
蔵保存した。本試験は、毎日新しいヒト唾液を同様に採取し、4日間連続して行なった。
尚、試験に用いた唾液については上清の一部を用いて、蒸留水で10倍希釈した後、0.
45μm膜(Millipore製)により濾過をおこなった。濾液のCaおよび無機P
含量を、上述の方法によって毎日定量した。
【0186】
ヒト唾液への浸漬後の各歯エナメル質は、浸漬試験終了後、硬組織カッター(Isom
et, Buhler, USA)を用いて、厚さ約500µmの切片を切出し、
それらの切片を800番の耐水ペーパーで約200µm厚まで研磨し、各切片のマ
イクロラジオグラフを撮影した(PW−1830, Philips, The Net
herlands)。撮影条件は管電圧25kV、管電流25mA、管球・被写体距離3
70mmとした。ついで、稲葉らの画像定量法(Eur.J.Oral.Sci.105
:74−84、1997)により脱灰深度(Ld、μm)およびミネラル喪失量ΔZ(v
ol%・μm)を計測した。
【0187】
健常な被験者17名において、POs Ca含有ガムあるいはPOs Ca非含有ガム
2粒(3.0g)をそれぞれ20分間咀嚼してもらった。この際の、唾液量(図15;横
軸はガム咀嚼時間を示し、縦軸は唾液量(ml)を示す)、唾液pH値(図16;横軸は
ガム咀嚼時間を示し、縦軸はpHを示す)、唾液中のCa含量(図18;横軸はガム咀嚼
時間を示し、縦軸はカルシウム量(mg)を示す)、および、唾液中のP含量(図17;
横軸はガム咀嚼時間を示し、縦軸はリン量(mg)を示す)を経時的に測定し、スタート
時からの積算値であらわした。また唾液中のCa/P比の変化(図19;横軸はガム咀嚼
時間を示し、縦軸はCa/P比を示す)も算定した。いずれの図においても、POs C
a含有ガム(+POs Ca含有ガム)を四角で、POs Ca非含有ガム(−POs
Ca含有ガム)を菱形で示す。
【0188】
その結果、唾液の分泌量(図15)、pH変化(図16)、および、P含量の変化(図
17)について、ガム種による統計的な差は得られなかった。20分間のガムの咀嚼にお
いて、唾液はおよそ30ml分泌され、唾液pHはガム咀嚼初めの7.0から5分後には
7.5程度まで上昇した。ガムの咀嚼により分泌される唾液中のP量は5mg程度であり
、同Ca量と比較すると、再石灰化のために十分量存在していることが明らかとなった。
一方、咀嚼開始20分の時点のCa量は、POs Ca非含有ガムに比較してPOs C
a含有ガムで約4倍多く唾液に溶解していることが明らかとなった(図18)。Pはもと
もと唾液中に一定量存在するために(図16)、Ca/P比もPOs Ca含有ガムにお
いて有意に(p<0.001)高値となった(図19)。また、以上の分析結果において
、性差による統計的な有意差は得られ無かった。
【0189】
健常な被験者12名において、POs Ca含有ガムあるいはPOs Ca非含有ガム
2粒(3.0g)をそれぞれ20分間咀嚼した際の唾液Aおよび唾液Bの分析結果を以下
の表9に示す。表9は、唾液容量、pH、およびミネラル含量の比較を示す。
【0190】
【表9】


いずれのガムにおいても唾液量は唾液Aが唾液Bの約2倍量分泌されていた。POs C
a非含有ガムに比較してPOs Ca含有ガムにおいて唾液AではCa含量に有意な差が
得られたが、唾液Bでは、その差は少なくなった。P量はガムによる差および唾液Aおよ
びB間の差は認められなかった。そのため、Ca/P比はPOs Ca含有ガム咀嚼時の
唾液AにおいてPOs Ca非含有ガム咀嚼群の約4倍高い値となった。
【0191】
続いて、12名における各処理歯での再石灰化促進効果を評価した結果を、脱灰深度お
よびミネラル損失量としてそれぞれ図20A(縦軸に脱灰深度(Ld、μm)を示す)お
よび図20B(縦軸にミネラル喪失量ΔZ(vol%・μm)を示す)に示す。両図とも
、横軸は、ブランク、POs Ca含有ガム、POs
Ca非含有ガムの順で示す。POs Ca非含有ガムに比較してPOs Ca含有ガム
において有意に脱灰深度(Ld)およびミネラル喪失量(ΔZ)共に、脱灰したエナメル
歯の回復が観察された。つまり、POs Ca含有ガム咀嚼群において、再石灰化が促進
している結果が得られた(p<0.001)。
【0192】
(実施例17)
本実施例は、リン酸化オリゴ糖を配合したチューイングガムのエナメル質の再石灰化促
進効果をヒト口腔内で示した。
【0193】
実施例16と同様にしてPOs Ca含有ガムおよびPOs Ca非含有シュガーレス
ガムの2種類の粒ガム(約1.5g/粒)を作製した。その他、実験試薬は全て特級試薬
を用いた。
【0194】
エナメル質ディスク(φ5mm;厚さ1.5mm)を牛歯の歯冠部エナメル部分より調
製し、800番の耐水ペーパーで頬側面の歯頭部表面を研磨することにより平滑な新鮮エ
ナメル質を露出させた。このようにして調製したエナメル質ディスクは、0.1M乳酸溶
液(pH5.0)100mlに3日間37℃条件下で浸漬させることで人工齲蝕を発生さ
せた。脱灰後、3つのエナメル質ディスクを、取り外し可能な口蓋プレートに上部の右側
の臼歯の口蓋領域に装着した。
【0195】
健常な被験者12名(男6名,女6名;平均年齢:21歳)において、POs
Ca含有ガム、POs Ca非含有ガム、あるいはスクロースガム(62%スクロース
を含む)を2粒(3.0g)を1回に2粒(1粒;約1.5g)20分間咀嚼してもらっ
た。本試験は1日に4回摂取してもらった。ガム種は試験担当者および被験者に対しても
伏せて実施した。それぞれのガム群は2週間連続して行ない、各試験群間は1週間の間隔
を空けた。口蓋プレートはガム咀嚼時および咀嚼終了後20分間装着した。試験期間中、
被験者はフッ素剤の使用を避け、装着時以外は口蓋プレートを湿度100%の状態下で乾
燥せぬように保存した。
【0196】
装着試験歯を各被験者の口蓋プレートより1、2、4週後に回収した。厚さ約200&m
icro;mの切片を各エナメル質から切出し、各切片のマイクロラジオグラフを撮影した(
PW−1830, Philips, The Netherlands)。撮影条件は
管電圧25kV、管電流25mA、管球・被写体距離370mmとした。ついで、稲葉ら
(Eur.J.Oral.Sci.105:74−84、1997)の画像定量法により
脱灰深度(ld、μm)を計測した。ld値は、ミネラル分布プロフィールにおいて、歯
頭部表面位置からミネラル含量が健全な組織のミネラル含量の95%のレベルに達した病
変までの位置の距離として定義した。再石灰化率を、脱灰後の開始ld値に対するld値
減少率(%)として算定した。再石灰化率の結果を図21に示す。図21において、横軸
は、1週間後、2週間後、および4週間後の順で、それぞれ、スクロースガム群(Suc
)、POs Ca非含有ガム群(Xyl)、およびPOs Ca含有ガム群(POs)の
順で示す。縦軸に再石灰化率(%)を示す。
【0197】
POs Ca含有ガム群(POs)の再石灰化率は、1週間後、2週間後、および4週
間後においてそれぞれ、67%、54%、および76%であった。POs Ca非含有ガ
ム群(Xyl)は、12〜23%であり、POs Ca含有ガム群より低かった。スクロ
ースガム群(Suc)では、2週間後までは正の再石灰化率を示したが、4週目には最終
的に負の値に達し、脱灰を示した。
【0198】
ヒト口腔内試験においても、POs Ca含有ガムにおいて、POs Ca非含有ガム
およびスクロースガムに比べて高い再石灰化促進効果が得られた。つまり、12名の被験
者全員が、全種類のガムを2週間づつ食してPOs Ca含有ガムにおいて有意な結果が
得られた。このことからPOs Caをガムに配合することで、高い再石灰化促進効果が
得られることがヒト口腔内試験で確認できた。そして、POs Ca含有ガム製品を日常
的に摂取することは初期齲蝕の再石灰化を促し、齲蝕を予防に大変有効であることも同時
に口腔内で確認できた。
【0199】
(実施例18)
本実施例は、リン酸化オリゴ糖を配合したキャンデーを摂取した際に分泌される唾液の
成分分析を行った。
【0200】
以下の表10に示す配合で、キャンデーを作製した。
【0201】
【表10】


健常成人4名を被検者として、キャンデー1個(4.7g)を摂取した際の分泌唾液を採
取した。キャンデーは口腔内で摂取後およそ10分間存在した。唾液の採取は、(1)0
〜1分間、(2)1〜3分間、(3)3〜6分間、(4)6〜10分間の4つの時点に分
けて実施した。分泌唾液は、漏斗を通して15ml試験管内に採取した。採取直後に分泌
唾液を攪拌し、唾液のpHおよび分泌量を測定した。この結果をそれぞれ図22および2
3に示す。図22は、横軸に摂取時間(分)および縦軸にpHを示す。口腔内の唾液pH
は7で一定していた。図23は、横軸に摂取時間(分)および縦軸に唾液量(ml/分)
を示す。摂取時間の経過を通して唾液の分泌量に大きな変化はなかった。
【0202】
次いで、唾液1800μlを遠心チューブ4本に入れ、各チューブに1N HCl溶液
200μlを添加し、十分に混和し、10,000×gで3分間遠心分離し、そして0.
5μm膜処理した。得られた上清のうち10μlについてOCPC法によってカルシウム
含量を測定し、50μlについてモリブデン法によってリン含量を測定した。このカルシ
ウム含量およびリン含量を図24に示す。図24は、横軸に摂取時間(分)および左の縦
軸にカルシウムまたはリン含量(mM)、そして右の縦軸にCa/P比を示す。カルシウ
ム含量およびリン含量ともに摂取時間を通して大きな変化はなかった(0.6程度を維持
した)。
【0203】
(実施例19)
本実施例において、リン酸化オリゴ糖を配合するキャンデーおよびソフトキャンデーを
作製し、再石灰化促進効果を検討した。
【0204】
以下の表11に示す配合で、キャンデー(4.7g/個)およびソフトキャンデー(4
.0g/個)を定法に従って作製した。
【0205】
【表11】


上記キャンデーおよびソフトキャンデーに蒸留水10mlを添加し、これを沸騰浴中で溶
解させた。得られた抽出溶液のpHを微量pHメーターを用いて測定した。次いで10,
000×3分、遠心分離し、0.5μm膜処理を行った。得られた上清溶液のうち10μ
lについてOCPC法を用いてカルシウム濃度を測定し、50μlについてバナドモリブ
デン酸法を用いて無機リン濃度を測定した。この結果を表12に示す。表12は、ソフト
キャンデーおよびキャンデーの抽出物におけるCaおよびPのミネラル含量を示す。
【0206】
【表12】


さらに、上記表12の分析結果より、この抽出溶液を2倍希釈および10倍希釈した溶
液において、以下の表13の組成にカルシウム、リン含量を補正した上で、ハイドロキシ
アパタイトの再石灰化促進効果を評価した。表13は、再石灰化促進の評価系の組成を示
す。
【0207】
【表13】


この結果を図25に示す。図25は、縦軸に再石灰化促進率(%)、そして横軸には順に
ソフトキャンデー抽出溶液、キャンデー抽出溶液、および2%マルトオリゴ糖溶液の再石
灰化促進率の結果を示す。
【0208】
キャンデーおよびソフトキャンデーとも、10倍希釈において高い再石灰化促進効果が
認められた。
【0209】
(実施例20)
以下の表14に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0210】
【表14】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0211】
(実施例21)
以下の表15に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0212】
【表15】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0213】
(実施例22)
以下の表16に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0214】
【表16】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0215】
(実施例23)
以下の表17に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0216】
【表17】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0217】
(実施例24)
以下の表18に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0218】
【表18】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0219】
(実施例25)
以下の表19に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0220】
【表19】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0221】
(実施例26)
以下の表20に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0222】
【表20】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0223】
(実施例27)
以下の表21に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。PO−Znは、中和の
ために1N水酸化亜鉛溶液を用いたこと以外は、実施例2と同様に作製した。
【0224】
【表21】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0225】
(実施例28)
以下の表22に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0226】
【表22】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0227】
(実施例29)
以下の表23に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0228】
【表23】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0229】
(実施例30)
以下の表24に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0230】
【表24】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0231】
(実施例31)
以下の表25に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0232】
【表25】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0233】
(実施例32)
以下の表26に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0234】
【表26】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0235】
(実施例33)
以下の表27に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。POs Znは、中和
のために1N水酸化亜鉛溶液を用いたこと以外は、実施例2と同様に作製した。
【0236】
【表27】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0237】
(実施例34)
以下の表28に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0238】
【表28】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0239】
(実施例35)
以下の表29に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0240】
【表29】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0241】
(実施例36)
以下の表30に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0242】
【表30】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0243】
(実施例37)
以下の表31に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0244】
【表31】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0245】
(実施例38)
以下の表32に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0246】
【表32】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0247】
(実施例39)
以下の表33に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0248】
【表33】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0249】
(実施例40)
以下の表34に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0250】
【表34】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0251】
(実施例41)
以下の表35に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0252】
【表35】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0253】
(実施例42)
以下の表36に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0254】
【表36】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0255】
(実施例43)
以下の表37に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0256】
【表37】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0257】
(実施例44)
以下の表38に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0258】
【表38】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0259】
(実施例45)
以下の表39に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0260】
【表39】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0261】
(実施例46)
以下の表40に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0262】
【表40】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0263】
(実施例47)
以下の表41に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0264】
【表41】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0265】
(実施例48)
以下の表42に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0266】
【表42】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0267】
(実施例49)
以下の表43に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0268】
【表43】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0269】
(実施例50)
以下の表44に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0270】
【表44】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0271】
(実施例51)
以下の表45に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0272】
【表45】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0273】
(実施例52)
以下の表46に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0274】
【表46】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0275】
(実施例53)
以下の表47に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0276】
【表47】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0277】
(実施例54)
以下の表48に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0278】
【表48】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0279】
(実施例55)
以下の表49に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0280】
【表49】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0281】
(実施例56)
以下の表50に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0282】
【表50】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0283】
(実施例57)
以下の表51に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0284】
【表51】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0285】
(実施例58)
以下の表52に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0286】
【表52】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0287】
(実施例59)
以下の表53に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0288】
【表53】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0289】
(実施例60)
以下の表54に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0290】
【表54】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0291】
(実施例61)
以下の表55に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0292】
【表55】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0293】
(実施例62)
以下の表56に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0294】
【表56】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0295】
(実施例63)
以下の表57に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0296】
【表57】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0297】
(実施例64)
以下の表58に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0298】
【表58】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0299】
(実施例65)
以下の表59に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0300】
【表59】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0301】
(実施例66)
以下の表60に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0302】
【表60】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0303】
(実施例67)
以下の表61に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0304】
【表61】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0305】
(実施例68)
以下の表62に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0306】
【表62】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0307】
(実施例69)
以下の表63に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0308】
【表63】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0309】
(実施例70)
以下の表64に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0310】
【表64】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0311】
(実施例71)
以下の表65に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0312】
【表65】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0313】
(実施例72)
以下の表66に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0314】
【表66】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0315】
(実施例73)
以下の表67に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0316】
【表67】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0317】
(実施例74)
以下の表68に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0318】
【表68】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0319】
(実施例75)
以下の表69に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0320】
【表69】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0321】
(実施例76)
以下の表70に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0322】
【表70】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0323】
(実施例77)
以下の表71に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0324】
【表71】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0325】
(実施例78)
以下の表72に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0326】
【表72】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0327】
(実施例79)
以下の表73に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0328】
【表73】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0329】
(実施例80)
以下の表74に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0330】
【表74】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0331】
(実施例81)
以下の表75に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0332】
【表75】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0333】
(実施例82)
以下の表76に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0334】
【表76】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0335】
(実施例83)
以下の表77に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0336】
【表77】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0337】
(実施例84)
以下の表78に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0338】
【表78】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0339】
(実施例85)
以下の表79に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0340】
【表79】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0341】
(実施例86)
以下の表80に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0342】
【表80】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0343】
(実施例87)
以下の表81に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0344】
【表81】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0345】
(実施例88)
以下の表82に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0346】
【表82】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0347】
(実施例89)
以下の表83に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0348】
【表83】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0349】
(実施例90)
以下の表84に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0350】
【表84】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0351】
(実施例91)
以下の表85に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0352】
【表85】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0353】
(実施例92)
以下の表86に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0354】
【表86】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0355】
(実施例93)
以下の表87に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0356】
【表87】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0357】
(実施例94)
以下の表88に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0358】
【表88】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0359】
(実施例95)
以下の表89に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0360】
【表89】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0361】
(実施例96)
以下の表90に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0362】
【表90】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0363】
(実施例97)
以下の表91に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0364】
【表91】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0365】
(実施例98)
以下の表92に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0366】
【表92】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0367】
(実施例99)
以下の表93に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0368】
【表93】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0369】
(実施例100)
以下の表94に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0370】
【表94】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0371】
(実施例101)
以下の表95に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0372】
【表95】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0373】
(実施例102)
以下の表96に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0374】
【表96】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0375】
(実施例103)
以下の表97に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0376】
【表97】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0377】
(実施例104)
以下の表98に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0378】
【表98】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0379】
(実施例105)
以下の表99に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0380】
【表99】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0381】
(実施例106)
以下の表100に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0382】
【表100】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0383】
(実施例107)
以下の表101に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0384】
【表101】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0385】
(実施例108)
以下の表102に示す組成である歯磨剤を常法に従って製造した。
【0386】
【表102】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0387】
(実施例109)
以下の表103に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0388】
【表103】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0389】
(実施例110)
以下の表104に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0390】
【表104】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0391】
(実施例111)
以下の表105に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0392】
【表105】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0393】
(実施例112)
以下の表106に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0394】
【表106】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0395】
(実施例113)
以下の表107に示す組成である洗口剤を常法に従って製造した。
【0396】
【表107】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0397】
(実施例114)
以下の表108に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0398】
【表108】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0399】
(実施例115)
以下の表109に示す組成である口腔用軟膏を常法に従って製造した。
【0400】
【表109】


これらの配合によれば、良好な抗う蝕機能が達成される。
【0401】
(実施例116)
以下の表110に示す組成である人工唾液を常法に従って製造した。
【0402】
【表110】


この唾液は、再石灰化促進効果に優れ、そして口腔内のpHを中性に戻すのに優れる。
【0403】
(実施例117)
以下の表111に示す組成である人工唾液を常法に従って製造した。
【0404】
【表111】


この唾液は、再石灰化促進効果に優れ、そして口腔内のpHを中性に戻すのに優れる。
【0405】
人工唾液は、POs CaおよびPOs Na以外の緩衝剤を添加しても同様に調整さ
れ得る。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸化オリゴ糖またはその糖アルコールである試料の歯に対する再石灰化効果を調べる方法であって、該方法は、リン、カルシウム、および歯成分を含む溶液から該試料の存在下でカルシウム沈殿反応させる工程(A);該沈殿反応後における溶液中のカルシウム濃度またはカルシウム沈殿量を測定する工程(B);該溶液から該試料の非存在下でカルシウム沈殿反応させる工程(C);沈殿反応後、溶液におけるカルシウム濃度または生成したカルシウム沈殿量を測定する工程(D);ならびに工程(B)および(D)における溶液中のカルシウム濃度または沈殿量を比較する工程(E)を包含する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記溶液が、ハイドロキシアパタイト、緩衝液、KH2PO4およびCaCl2を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2009−258112(P2009−258112A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113893(P2009−113893)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【分割の表示】特願2006−202637(P2006−202637)の分割
【原出願日】平成14年2月28日(2002.2.28)
【出願人】(000000228)江崎グリコ株式会社 (187)
【Fターム(参考)】