説明

抗てんかん剤



(式中、R、RおよびRは同一または異なって水素原子、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、Rはシクロアルキル、−(CH−Rまたは上記式(II)を表し、XおよびXは同一または異なって酸素原子または硫黄原子を表す)
上記式(I)で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分として含有する抗てんかん剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、キサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分として含有する抗てんかん剤に関する。
【背景技術】
“てんかん”は、WHO(世界保健機関)の定義によると「種々の病因によって起こる慢性の脳障害で、大脳ニューロンの過剰な発射の結果起こる反復性発作(てんかん発作)を主な特徴とし、これに種々の臨床症状及び検査所見を伴うもの」とされている。てんかんの発作症状は、突発性脳性律動異常の始発部位とその広がり方によって、意識障害、痙攣、自動症等、様々な様態をとる。また、てんかんにおいては、てんかん発作だけでなく、例えば周期性不機嫌、挿間性精神障害、性格変化、知能障害等がしばしばみられる。
このような“てんかん発作”の抑制治療には、フェノバルビタール(phenobarbital)等のバルビタール系抗てんかん剤、クロナゼパム(clonazepam)等のベンゾジアゼピン系抗てんかん剤、バルプロ酸(valproicacid)等の抗てんかん剤が現在用いられており、てんかん患者の約80%は薬物投与によって完全に発作が抑制されると言われている。
しかし、現在使用されているこれらの抗てんかん剤は、発作の抑制に極めて有効である反面、多くの副作用を伴うという課題を抱えている。例えば中枢神経系低下、心臓血管虚脱、無形成貧血、幻視、うっ血性心不全、運動失調、人格変化、精神病、攻撃性行動、めまい、鎮静効果等の副作用が報告されており、副作用の軽減された抗てんかん剤の開発が待ち望まれている。
後述する式(I)で表される化合物を含むキサンチン誘導体の多くは、例えば抗パーキンソン病作用、中枢興奮作用、神経変性抑制作用等を有することが知られている(特公昭47−26516号公報;特開平6−211856号公報;特開平6−239862号公報;特開平6−16559号公報;国際公開第99/12546号等参照)。また、例えばアデノシンA受容体拮抗作用、抗うつ作用、抗喘息作用、骨吸収抑制作用、血糖降下作用、血小板増殖抑制作用等を有することが知られている(国際公開第92/06976号;国際公開第94/01114号;国際公開第95/23165号;国際公開第99/35147号;ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、1991年、第34巻、p.1431;ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、1993年、第36巻、p.1333)。
【発明の開示】
本発明の目的は、優れた抗てんかん剤を提供することにある。
本発明は、以下の(1)〜(7)に関する。
(1)式(I)

[式中、R、RおよびRは同一または異なって水素原子、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、
はシクロアルキル、−(CH−R(式中、Rは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、nは0〜4の整数を表す)または式(II)

(式中、YおよびYは同一または異なって水素原子、ハロゲンまたは低級アルキルを表し、Zは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表し、
およびXは同一または異なって酸素原子または硫黄原子を表す]で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分として含有する抗てんかん剤。
(2)XおよびXが酸素原子である上記(1)記載の抗てんかん剤。
(3)Rが式(II)

(式中、Y、YおよびZはそれぞれ前記と同義である)である上記(1)または(2)記載の抗てんかん剤。
(4)YおよびYが水素原子である上記(3)記載の抗てんかん剤。
(5)Zが置換もしくは非置換のアリールまたは式(III)

(式中、Rは水素原子、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロまたはアミノを表し、mは1〜3の整数を表す)である上記(3)または(4)記載の抗てんかん剤。
(6)式(I)

(式中、R、R、R、R、XおよびXはそれぞれ前記と同義である)で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩の有効量を投与することを特徴とするてんかんの治療方法。
(7)抗てんかん剤を製造するための式(I)

(式中、R、R、R、R、XおよびXはそれぞれ前記と同義である)で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩の使用。
以下、式(I)で表される化合物を化合物(I)と称する。
式(I)の各基の定義において、
低級アルキルおよび低級アルコキシの低級アルキル部分としては、例えば直鎖または分岐状の炭素数1〜6のアルキルがあげられ、具体的にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル等があげられる。
低級アルケニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルケニルがあげられ、具体的にはビニル、アリル、メタクリル、クロチル、3−ブテニル、2−ペンテニル、4−ペンテニル、2−ヘキセニル、5−ヘキセニル等があげられる。
低級アルキニルとしては、例えば直鎖または分岐状の炭素数2〜6のアルキニルがあげられ、具体的にはエチニル、プロパルギル、2−ブチニル、3−ブチニル、2−ペンチニル、4−ペンチニル、2−ヘキシニル、5−ヘキシニル、4−メチル−2−ペンチニル等があげられる。
シクロアルキルとしては、例えば炭素数3〜8のシクロアルキルがあげられ、具体的にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等があげられる。
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素の各原子を意味する。
アリールとしては、例えば炭素数6〜14のアリールがあげられ、具体的にはフェニル、ナフチル、アントリル等があげられる。
複素環基としては、例えば窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む5員または6員の単環性複素環基、3〜8員の環が縮合した二環または三環性で窒素原子、酸素原子および硫黄原子から選ばれる少なくとも1個の原子を含む縮環性複素環基等があげられ、具体的にはフリル、チエニル、ピロリル、ピラニル、チオピラニル、ピリジル、ピリミジニル、トリアジニル、プリニル、ピラジニル、ピリダジニル、ベンゾイミダゾリル、2−オキソベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、1,3−ベンゾジオキソリル、1,4−ベンゾジオキサニル、3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピニル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、ピラゾリル、キナゾリニル、シンノリニル、トリアゾリル、テトラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、ジヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリル、ベンゾジヒドロピラニル等があげられる。
置換アリールおよび置換複素環基における置換基としては、同一または異なって例えば置換数1〜3の、具体的には低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、ヒドロキシ、置換もしくは非置換の低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アラルキル、アラルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、アロイル、アロイルオキシ、アリールアルカノイルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルカルバモイル、ジ低級アルキルカルバモイル、スルホ、低級アルコキシスルホニル、低級アルキルスルファモイル、ジ低級アルキルスルファモイル等があげられる。
ここで示した低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、低級アルカノイル、低級アルカノイルオキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルキルカルバモイル、ジ低級アルキルカルバモイル、低級アルコキシスルホニル、低級アルキルスルファモイルおよびジ低級アルキルスルファモイルの低級アルキル部分は、前記低級アルキルと同義であり、ハロゲン、低級アルケニルおよび低級アルキニルはそれぞれ前記と同義である。ジ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルカルバモイルおよびジ低級アルキルスルファモイルの2つの低級アルキル部分は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。アリールおよびアリールオキシのアリール部分は前記アリールと同義であり、アラルキルおよびアラルキルオキシのアラルキル部分としては、例えばベンジル、フェネチル等があげられる。アロイルおよびアロイルオキシのアロイル部分としては、例えばベンゾイル、ナフトイル等があげられる。アリールアルカノイルオキシのアリールアルキル部分としては、例えばベンジル、フェネチル等があげられる。置換低級アルコキシにおける置換基としては、例えばヒドロキシ、低級アルコキシ、ハロゲン、アミノ、アジド、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル等があげられる。ここで、低級アルコキシおよび低級アルコキシカルボニルの低級アルキル部分は、前記低級アルキルと同義であり、ハロゲンは前記と同義である。
化合物(I)の薬理的に許容される塩としては、例えば薬理的に許容される酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。
化合物(I)の薬理的に許容される酸付加塩としては、例えば塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩があげられ、薬理的に許容される金属塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられ、薬理的に許容されるアンモニウム塩としては、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられ、薬理的に許容される有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の付加塩があげられ、薬理的に許容されるアミノ酸付加塩としては、リジン、グリシン、フェニルアラニン等の付加塩があげられる。
化合物(I)は、特公昭47−26516号公報、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、1991年、34巻、1431頁、ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(J.Med.Chem.)、1993年、36巻、1333頁、WO92/06976号公報、特開平6−211856号公報、特開平6−239862号公報、国際公開第95/23165号、特開平6−16559号公報、国際公開第94/01114号、国際公開第99/12546号、国際公開第99/35147号等に開示された方法でまたはそれらに準じて製造することができる。
各製造法における目的化合物は、有機合成化学で常用される精製法、例えば濾過、抽出、洗浄、乾燥、濃縮、再結晶、各種クロマトグラフィー等に付して単離精製することができる。
化合物(I)の塩を取得したいとき、化合物(I)が塩の形で得られる場合には、そのまま精製すればよく、また、遊離塩基の形で得られる場合には、適当な溶媒に溶解または懸濁し、酸または塩基を加えて塩を形成させればよい。
また、化合物(I)およびその薬理的に許容される塩は、水または各種溶媒との付加物の形で存在することもあるが、これら付加物も本発明の抗てんかん剤に用いることができる。
化合物(I)の中には光学異性体等が存在し得るものもあるが、全ての可能な立体異性体およびそれらの混合物も本発明の抗てんかん剤に用いることができる。
化合物(I)の具体例を第1表に示す。

化合物1: (E)−8−(3,4,5−トリメトキシスチリル)カフェイン(特公昭47−26516号公報)
IR(KBr)vmax(cm−1):1702,1667,1508,1432
NMR(DMSO−d,270MHz)δ(ppm):7.61(1H,d,J=16.0Hz),7.25(1H,d,J=16.0Hz),7.09(2H,s),4.03(3H,s),3.85(6H,s),3.71(3H,s),3.45(3H,s),3.21(3H,s)
MS(EI)386(M
化合物2: (E)−8−(3,4−ジメトキシスチリル)−1,3−ジエチル−7−メチルキサンチン(特開平6−211856号公報)
融点:190.4−191.3℃
元素分析値:C2024として
理論値(%):C62.48,H6.29,N14.57
実測値(%):C62.52,H6.53,N14.56
IR(KBr)vmax(cm−1):1697,1655,1518
NMR(CDCl,270MHz)δ(ppm):7.74(1H,d,J=15.5Hz),7.18(1H,dd,J=8.3,1.9Hz),7.08(1H,d,J=1.9Hz),6.89(1H,d,J=8.3Hz),6.77(1H,d,J=15.5Hz),4.21(2H,q,J=6.9Hz),4.09(2H,q,J=6.9Hz),4.06(3H,s),3.96(3H,s),3.93(3H,s),1.39(3H,t,J=6.9Hz),1.27(3H,t,J=6.9Hz)
化合物3: (E)−8−(3,4−ジメトキシスチリル)−7−メチル−1,3−ジプロピルキサンチン(国際公開第92/06976号)
融点:164.8−166.2℃(2−プロパノール−水より再結晶)
元素分析値:C2228として
理論値(%):C64.06,H6.84,N13.58
実測値(%):C64.06,H6.82,N13.80
IR(KBr)vmax(cm−1):1692,1657
NMR(DMSO−d,270MHz)δ(ppm):7.60(1H,d,J=15.8Hz),7.40(1H,d,J=2.0Hz),7.28(1H,dd,J=2.0,8.4Hz),7.18(1H,d,J=15.8Hz),6.99(1H,d,J=8.4Hz),4.02(3H,s),3.99(2H,t),3.90−3.80(2H,m),3.85(3H,s),3.80(3H,s),1.85−1.50(4H,m),1.00−0.85(6H,m)
化合物4: (E)−1,3−ジエチル−8−(3−メトキシ−4,5−メチレンジオキシスチリル)−7−メチルキサンチン(特開平6−211856公報)
融点:201.5−202.3℃
元素分析値:C2022として
理論値(%):C60.29,H5.57,N14.06
実測値(%):C60.18,H5.72,N13.98
IR(KBr)vmax(cm−1):1694,1650,1543,1512,1433
NMR(DMSO−d,270MHz)δ(ppm):7.58(1H,d,J=15.8Hz),7.23(1H,d,J=15.8Hz),7.20(1H,d,J=1.0Hz),7.09(1H,d,J=1.0Hz),6.05(2H,s),4.09−4.02(2H,m),4.02(3H,s),3.94−3.89(2H,m),3.89(3H,s),1.25(3H,t,J=7.2Hz),1.13(3H,t,J=6.9Hz)
次に、化合物(I)の薬理作用を試験例で説明する。
試験例1 抗てんかん作用
レセルピンの投与および電撃刺激で惹起される痙攣は、有効なてんかんモデルとして知られている[ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・ファーマコロジー(European Journal of Pharmacology)、1994年、第23巻、p.260]。
4週齢のddY系雄性マウス(体重15−17g、日本SLC、浜松)を予備飼育し、22.4−26.0gの体重となった65匹を実験に用い、このマウスのうち15匹を無処置群とした。残り50匹のマウスに注射用蒸留水(大塚製薬工場、鳴門)で希釈したレセルピン(アポプロン注1mg、第一製薬)を5mg/kgで腹腔内投与(レセルピン処置)し投与から18〜24時間経過した後、実験を行った。
レセルピン処置したマウスのうち、無作為に1群10匹で2群選び、各群をそれぞれ溶媒投与群および試験化合物投与群として用いた。
試験化合物は0.5%MC溶液[0.5%メチルセルロース400cP(和光純薬工業)を含有する注射用蒸留水]の懸濁液として用い、レセルピン処置したマウスに化合物(I)を30mg/kg(10mL/kgの容量)で経口投与した(試験化合物投与群)。別途、溶媒投与群としてレセルピン処置したマウスに0.5%MC溶液のみを10ml/kgで経口投与した。その1時間後に、電撃痙攣誘発装置(型式:USA−201、ユニークメディカル(株))を用いて1000V、50mA、0.2秒の電撃刺激をマウスに与え強直性伸展痙攣を惹起し、試験化合物投与群におけるその持続時間を無処置群および溶媒投与群と比較した。その結果を第1図に示す。
第1図に示されるように、レセルピン処置した溶媒投与群では無処置群に比べて、痙攣の持続時間が有意に延長された(p<0.001:Student’s−test)。一方、化合物1または3を投与した試験化合物投与群では、レセルピン処置した溶媒投与群に比べて、痙攣の持続時間において有意な短縮作用が認められた(p<0.01:Aspine−Welch test)。
よって、化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、抗てんかん作用を有していることから、てんかん、てんかんに基づく疾患等の予防および/または治療に有効であることが示唆された。
試験例2 急性毒性試験
dd系雄性マウス(体重20±1g)を1群3匹用い、試験化合物を経口投与した。投与後7日目の死亡状況を観察し、最小致死量(MLD)値を求めた。
その結果、化合物1のMLD値は、>1000mg/kgであり、毒性は極めて低いと考えられる。
本発明の抗てんかん剤の投与により予防および/または治療されるてんかんとしては、例えばてんかん発作と総称される原因不明の本態性てんかん、脳内病変等に起因する症候性てんかん(例えばJacksonてんかん、West症候群、Lennox−Gastaut症候群等)、熱性痙攣等があげられる。てんかん発作としては、例えば(1)部分性(焦点、局所)発作に分類される(i)単純部分発作、(ii)複雑部分発作、(iii)部分発作から二次的に進展した全般発作等、(2)痙攣性および非痙攣性の全般性発作に分類される(i)欠神発作、(ii)ミオクローヌス発作、(iii)間代発作、(iv)強直発作、(v)強直間代発作、(vi)脱力発作等、(3)てんかん発作重積症等があげられる。
本発明の抗てんかん剤は、中でも、特に痙攣を伴う発作に好適に用いられ、具体的には痙攣を伴う単純部分発作、強直発作、間代発作、強直間代発作またはミオクローヌス発作、これらの発作が複合的に起きる例えば大発作、Jacksonてんかん、West症候群、Lennox−Gastaut症候群、熱性痙攣等の予防および/または治療に好適に用いることができる。
化合物(I)またはその薬理的に許容される塩はそのまままたは各種の製薬形態で使用することができる。本発明の製薬組成物は、活性成分として、有効な量の化合物(I)またはその薬理的に許容される塩を薬理的に許容される担体と均一に混合して製造できる。これらの製薬組成物は、例えば直腸投与、経口または非経口(皮下、静脈内および筋肉内を含む)等の投与に対して適する単位服用形態にあることが望ましい。
経口服用形態にある組成物の調製においては、何らかの有用な薬理的に許容される担体が使用できる。例えば懸濁剤およびシロップ剤のような経口液体調製物は、水、シュークロース、ソルビトール、フラクトース等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ゴマ油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類等を使用して製造できる。粉剤、丸剤、カプセル剤および錠剤は、ラクトース、グルコース、シュークロース、マンニトール等の賦形剤、でん粉、アルギン酸ソーダ等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の滑沢剤、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン等の結合剤、脂肪酸エステル等の表面活性剤、グリセリン等の可塑剤等を用いて製造できる。錠剤およびカプセル剤は、投与が容易であるという理由で、最も有用な単位経口投与剤である。錠剤やカプセル剤を製造する際には固体の製薬担体が用いられる。
また、注射剤は、蒸留水、塩溶液、グルコース溶液または塩水とグルコース溶液の混合物等から成る担体を用いて調製することができる。この際、常法に従い適当な助剤を用いて、溶液、懸濁液または分散液として調製される。
化合物(I)またはその薬理的に許容される塩は、上記製薬形態で経口的にまたは注射剤等として非経口的に投与することができ、その有効用量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、症状等により異なるが、1〜100mg/60kg/日、好ましくは1〜20mg/60kg/日を一日一回または数回に分けて投与するのが適当である。
【図面の簡単な説明】
第1図は、レセルピン投与および電撃刺激による強直性伸展痙攣の持続時間延長に対する化合物1および化合物3の作用を示したものである。縦軸は強直性伸展痙攣の持続時間(秒)を表し、棒グラフは左から順に、無処置群、溶媒投与群、化合物1投与群、化合物3投与群の場合をそれぞれ示す。グラフ上の符号の意味は、以下の通りである。
***:p<0.001(Student’s−test)の有意差を示す
**:p<0.01(Aspine−Welch test)の有意差を示す
【発明を実施するための最良の形態】
以下に、実施例によって本発明の様態を説明する
実施例1: 錠剤
常法により、次の組成からなる錠剤を調製する。
化合物1の40g、ラクトース286.8gおよび馬鈴薯でん粉60gを混合し、これにヒドロキシプロピルセルロースの10%水溶液120gを加える。この混合物を常法により練合し、造粒して乾燥させた後、整粒し打錠用顆粒とする。これにステアリン酸マグネシウム1.2gを加えて混合し、径8mmの杵を持った打錠機(菊水社製RT−15型)で打錠を行って、錠剤(1錠あたり活性成分20mgを含有する)を得る。
処方 化合物1 20 mg
ラクトース 143.4mg
馬鈴薯でん粉 30 mg
ヒドロキシプロピルセルロース 6 mg
ステアリン酸マグネシウム 0.6mg
200 mg
実施例2: カプセル剤
常法により、次の組成からなるカプセル剤を調製する。
化合物2の200g、アビセル995gおよびステアリン酸マグネシウム5gを常法により混合する。この混合物をカプセル充填機(Zanasi社製、LZ−64型)により、ハードカプセル4号(1カプセルあたり120mg容量)に充填し、カプセル剤(1カプセルあたり活性成分20mgを含有する)を得る。
処方 化合物2 20 mg
アビセル 99.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
120 mg
実施例3: 注射剤
常法により、次の組成からなる注射剤を調製する。
化合物3の1gを精製ダイズ油100gに溶解させ、精製卵黄レシチン12gおよび注射用グリセリン25gを加える。この混合物を常法により注射用蒸留水で1000mLとして練合・乳化する。得られた分散液を0.2μmのディスポーザブル型メンブランフィルターを用いて無菌濾過後、ガラスバイアルに2mLずつ無菌的に充填して、注射剤(1バイアルあたり活性成分2mgを含有する)を得る。
処方 化合物3 2 mg
精製ダイズ油 200 mg
精製卵黄レシチン 24 mg
注射用グリセリン 50 mg
注射用蒸留水 1.72mL
2.00mL
実施例4: 肛門坐剤
常法により、次の組成からなる直腸投与用の製剤を調製する。
ウィテプゾールTMH15(ダイナマイトノーベル社製)678.8gおよびウィテプゾールTME75(ダイナマイトノーベル社製)290.9gを40〜50□で溶融させる。これに化合物4の2.5g、第一リン酸カリウム13.6gおよび第二リン酸ナトリウム14.2gをそれぞれ均一に混合分散させる。ついで該混合分散したものをプラスチック製の坐剤の型に充填した後、徐々に冷却して肛門坐剤(1製剤あたり活性成分2.5mgを含有する)を得る。
処方 化合物4 2.5mg
ウィテプゾールTMH15 678.8mg
ウィテプゾールTME75 290.9mg
第一リン酸カリウム 13.6mg
第二リン酸ナトリウム 14.2mg
1,000 mg
【産業上の利用可能性】
本発明により、キサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分として含有する抗てんかん剤が提供される。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)

[式中、R、RおよびRは同一または異なって水素原子、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、
はシクロアルキル、−(CH−R(式中、Rは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、nは0〜4の整数を表す)または式(II)

(式中、YおよびYは同一または異なって水素原子、ハロゲンまたは低級アルキルを表し、Zは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表し、
およびXは同一または異なって酸素原子または硫黄原子を表す]で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩を有効成分として含有する抗てんかん剤。
【請求項2】
およびXが酸素原子である請求の範囲1記載の抗てんかん剤。
【請求項3】
が式(II)

(式中、Y、YおよびZはそれぞれ前記と同義である)である請求の範囲1または2記載の抗てんかん剤。
【請求項4】
およびYが水素原子である請求の範囲3記載の抗てんかん剤。
【請求項5】
Zが置換もしくは非置換のアリールまたは式(III)

(式中、Rは水素原子、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ニトロまたはアミノを表し、mは1〜3の整数を表す)である請求の範囲3または4記載の抗てんかん剤。
【請求項6】
式(I)

[式中、R、RおよびRは同一または異なって水素原子、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、
はシクロアルキル、−(CH−R(式中、Rは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、nは0〜4の整数を表す)または式(II)

(式中、YおよびYは同一または異なって水素原子、ハロゲンまたは低級アルキルを表し、Zは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表し、
およびXは同一または異なって酸素原子または硫黄原子を表す]で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩の有効量を投与することを特徴とするてんかんの治療方法。
【請求項7】
抗てんかん剤を製造するための式(I)

[式中、R、RおよびRは同一または異なって水素原子、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルを表し、
はシクロアルキル、−(CH−R(式中、Rは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表し、nは0〜4の整数を表す)または式(II)

(式中、YおよびYは同一または異なって水素原子、ハロゲンまたは低級アルキルを表し、Zは置換もしくは非置換のアリールまたは置換もしくは非置換の複素環基を表す)を表し、
およびXは同一または異なって酸素原子または硫黄原子を表す]で表されるキサンチン誘導体またはその薬理的に許容される塩の使用。

【国際公開番号】WO2005/000313
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【発行日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511112(P2005−511112)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009358
【国際出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000001029)協和醗酵工業株式会社 (276)
【Fターム(参考)】