説明

抗アポトーシスタンパク質であるナフタレン系阻害剤

炎症を処置するためにアポゴシポールおよびその誘導体を使用する方法が開示される。また、構造Aを有する化合物の群、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物が記載され、式中、各RはH、C(O)X、C(O)NHX、NH(CO)X5、SO2NHXおよびNHSO2X5からなる群より独立して選択され、ここでXはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリールおよび複素環からなる群より選択される。群Aの化合物は、がんなどの各種の疾患または障害の処置に使用することができる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般に、種々の障害、疾患および病態を処置するための、より具体的にはがん、自己免疫疾患および/または炎症を処置するための、アポゴシポールおよびその誘導体などの、ナフタレンから誘導される化合物のクラスに関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
細胞中のアポトーシスカスケードは細胞死を導くことが知られている。BCL-2ファミリータンパク質などの抗アポトーシスタンパク質を細胞が過剰産生する場合、制御できない細胞成長が結果的に生じ、各種の重篤な疾患、障害および病理、特にがんの発生を潜在的に導くことがある。
【0003】
アポトーシスは、発生中のおよび宿主防御機構における望ましくない細胞の生理的除去のための組織恒常性において役割を果たす。タンパク質のBCL-2ファミリーはアポトーシスの制御に関与すると考えられる。具体的には、BCL-2遺伝子ファミリーのメンバーは、プログラム細胞死を阻害するか(例えばBCL-2、BCL-XL、ced-9)または細胞死を促進する(例えばBax、Bak、BCL-XS)ように作用し得る。BCL-XLなどのこのファミリーの生存促進性のメンバーは表面上に疎水性の溝を含んでおり、疎水性の溝はアポトーシス促進性の対応物であるBH3ドメインの結合を可能にすると考えられる。この結合はアポトーシス制御において役割を果たすと考えられ、実際、生存促進性タンパク質および抗生存タンパク質は二量体化を通じて互いの機能を逆転させることができる。
【0004】
したがって、BCL-2ファミリータンパク質などの抗アポトーシスタンパク質を阻害する必要性が存在する。各種の潜在的BCL-2アンタゴニストが既に同定されている。しかし、これらの化合物のいずれもBCL-2ファミリーの6つのタンパク質すべて、すなわち、以下のタンパク質のすべてを阻害するわけではない: BCL-XL、BCL-2、BCL-W、BCL-B、BFL-1およびMCL-1。例えば、既に同定された合成BCL-2アンタゴニストのいずれもタンパク質BFL-1の阻害に有効ではなかった。したがって、そのようなアンタゴニストの効率は所望の効率ほど高くはない。さらに、既存のアンタゴニストは、不十分さまたは安全上の問題といった他の欠点により特徴づけられている。
【0005】
先に述べたように、アポトーシスは、正常組織の恒常性において役割を果たすことが知られており、したがって細胞産生と細胞喪失との適切なバランスを保証する。プログラム細胞死の制御の欠陥は、腫瘍発生を促進することがあり、また化学療法抵抗性の一因となることがある。抗アポトーシスBCL-2ファミリータンパク質の過剰発現は多くのヒトのがんおよび白血病において生じ、したがってこれらのタンパク質を新規抗がん剤の開発の標的として使用することができる。構造に関する試験は、アポトーシス促進性ファミリーメンバーのBH3二量体化ドメインに結合する抗アポトーシスBCL-2ファミリータンパク質の表面上の疎水性の凹部を解明した。したがって、アポトーシス促進性タンパク質のBH3ドメインを模倣する分子は、アポトーシスを誘導し、かつ/または、がん細胞死を阻害する抗アポトーシスBCL-2タンパク質の能力を抑止する。
【0006】
図1Aに示す天然物ゴシポールがBH3模倣体として機能するBCL-2、BCL-XLおよびMCL-1の阻害剤であることが既にわかっている。(-)ゴシポールは現在治験中であり、進行悪性腫瘍の患者において単剤での抗腫瘍活性を示す。ゴシポールがおそらくは2個の反応性アルデヒド基による毒性の問題を有することを考慮して、これらのアルデヒドを欠いているがインビトロおよび細胞中の抗アポトーシスBCL-2ファミリータンパク質に対する活性を保持する化合物であるアポゴシポール(図1A)も既に評価した。最近、ゴシポールおよびアポゴシポールのマウスにおける有効性および毒性を比較した。前臨床インビボデータは、アポゴシポールがゴシポールに比べて優れた有効性および減少した毒性、ならびに、より遅いクリアランスによるゴシポールに比べて優れた経時的血中濃度を含む優れた単一用量での薬物動態特性を示している。これらの観察は、アポゴシポールががん治療の有望なリード化合物であることを示している。
【0007】
また、BCL-2ファミリーメンバーは炎症性障害に関与すると考えられる。例えば、BCL-2ファミリーメンバーは、好中球アポトーシスおよび炎症の蓄積において役割を果たすことがわかっている。いくつかの炎症性疾患において、好中球アポトーシスの遅延は、アポトーシス促進性BCL-2ファミリーメンバーBAXのレベルの減少に関連している。急性喘息の子どもから単離した好酸球が、呼気流量と逆相関する、抗アポトーシスタンパク質BCL-2の発現の増加を有していたこともわかった。BCL-2ファミリータンパク質はクローン病にも関連している。クローン病の患者からの基底膜から単離したT細胞においてBAX発現は減弱し、BCL-XL発現は増加する。このことは、生存促進性および抗アポトーシス性のシグナル伝達機構による炎症細胞の生存が炎症性疾患の病変形成に関与していることを示している。ループスは、高レベルの抗DNAおよび抗糸球体自己抗体、活性化B細胞およびT細胞、ならびに糸球体腎炎により特徴づけられる複合全身性自己免疫疾患である。ループスに罹りやすいマウスからの好中球はアポトーシスの速度の減少を示す。アポトーシスの低下は、ループスに罹りやすいマウスにおける好中球の蓄積増大の一因となる、BCL-2ファミリータンパク質の発現の変化に関連している。いくつかの異なるループスストレインを使用するシグナル伝達試験は、BCL-2およびBCL-XLの活性化を含む疾患の進展に従って複数のシグナル伝達経路がリンパ球および非リンパ球において上方制御されることを示している。これらの抗アポトーシス分子は、自己反応性B細胞およびT細胞を含む全細胞の寿命を延長することが知られている。
【0008】
既存のBCL-2阻害剤の上記の欠点および欠陥に鑑み、BCL-2ファミリータンパク質などの抗アポトーシスタンパク質の新規アンタゴニストが望まれている。そのような新規アンタゴニストは既存の化合物より安全かつ有効であることが望ましい。そのような化合物のいくつかは現在同定されている(図1B参照)。
【発明の概要】
【0009】
概要
本発明の一態様によれば、構造Aを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物が提供される:

式中、各RはH、C(O)X、C(O)NHX、NH(CO)X、SO2NHXおよびNHSO2Xからなる群より独立して選択され、ここでXはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリールおよび複素環からなる群より選択される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、構造Aを有する化合物の化学種である化合物であって、式Iを有する具体的な化合物が提供される。

【0011】
本発明の別の態様によれば、がんまたは自己免疫疾患を処置するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の化学種Iを含む構造Aを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物を投与する段階を含む方法が提供される。
【0012】
本発明はまた、炎症を処置するための方法を対象とする。特に、本発明は炎症を処置するためのアポゴシポールの使用に関する。したがって、炎症を処置するための方法が開示される。本方法は、哺乳動物に、炎症の減少に有効な量の構造Bを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物を投与する段階を含む:

式中、R6、R8、R9およびR10の各々は水素、ヒドロキシル、-(C1〜C6)アルキル、-O(C1〜C6)アルキル、-(C1〜C6)アルキルハロ、-OC(O)(C1〜C6)アルキルおよびハロからなる群より独立して選択され、各R7は水素、-(C1〜C6)アルキル、-(C3〜C8)シクロアルキル、-(C6〜C10)アリールおよび-(C1〜C6)アルキル(C6〜C10)アリール、C(O)X、C(O)NHX、NH(CO)X、SO2NHXならびにNHSO2Xからなる群より独立して選択され、ここでXはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリールおよび複素環からなる群より選択される。いくつかの態様では、炎症の処置に使用する化合物はアポゴシポール、例えば、(+)アポゴシポールを実質的に含まない(-)アポゴシポールである。
【0013】
また、対象における炎症を処置する方法であって、対象にゴシポール、アポゴシポール、L-アポゴシポール、アポゴシポール誘導体、テアフラビン、テアフラビン-3'-ガラート、テアフラバニン(theaflavanin)、(-)ガロカテキン-3-ガラート(GCG)、(-)エピガロカテキン-3-ガラート(EGCG)、(-)カテキン-3-ガラート(CG)、(-)エピカテキン-3-ガラート(ECG)、プルプロガリン誘導体およびその混合物からなる群より選択される抗炎症薬を投与する段階を含む方法が開示される。
【0014】
さらに、炎症性疾患、炎症に罹っている哺乳動物においてアポトーシスを誘導し、カスパーゼ活性を調節し、または細胞死を誘導するための方法が開示される。本方法は、前記哺乳動物と、標的細胞においてアポトーシスを誘導し、カスパーゼ活性を調節し、または細胞死を誘導するために有効な量の構造Bを有する使用される化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物とを接触させる段階を含む:

式中、R6、R8、R9およびR10の各々は水素、ヒドロキシル、-(C1〜C6)アルキル、-O(C1〜C6)アルキル、-(C1〜C6)アルキルハロ、-OC(O)(C1〜C6)アルキルおよびハロからなる群より独立して選択され、各R7は水素、-(C1〜C6)アルキル、-(C3〜C8)シクロアルキル、-(C6〜C10)アリールおよび-(C1〜C6)アルキル(C6〜C10)アリール、C(O)X、C(O)NHX、NH(CO)X、SO2NHXならびにNHSO2Xからなる群より独立して選択され、ここでXはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリールおよび複素環からなる群より選択される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ゴシポールおよびアポゴシポールの構造(A); 本発明の化合物の構造(B); ならびに分子ドッキング試験(C、D)を示す。
【図2】NMR結合試験(A)および本発明のいくつかの化合物の阻害活性(B)を示す。
【図3】BCL-2マウス脾臓の収縮に対する本発明の化合物の有効性を示す。
【図4】BCL-XLを使用する本発明の化合物のFP競合結合曲線を示す。
【図5】図5Aおよび5Bはゴシポール対アポゴシポールの毒性プロファイルを表す。
【図6】図6A〜6Cはアポゴシポールまたはゴシポールで処置したマウスの血液学的プロファイルを表す。
【図7】アポゴシポールまたはゴシポールで処置したマウスの代表的血液化学プロファイルを表す。
【図8】アポゴシポールおよびゴシポールによる、DOHH2、RS11846および380を含むNHL B細胞系のアポトーシス誘導の比較を表す。
【図9】トランスジェニックマウスからの培養マウスB細胞に対するゴシポールおよびアポゴシポールの活性のBCL-2対BCL-2/TRAF2DNでの比較を表す。
【図10】アポゴシポールおよびゴシポールによる培養CLL B細胞のアポトーシスの誘導の比較を表す。
【図11】図11Aおよび11BはBCL-2トランスジェニックマウスにおけるアポゴシポール活性を表す。
【図12】本発明のいくつかの化合物の合成に使用可能な一般的合成スキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
詳細な説明
別途定義されない限り、本発明に関連して使用する科学用語および技術用語は、当業者が通常理解する意味を有するものとする。さらに、文脈により別途必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含むものとし、複数形の用語は単数形を含むものとする。一般に、本明細書に記載の、細胞および組織の培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの化学およびハイブリダイゼーションに関連して利用する命名法、およびそれらの技術は、当技術分野で周知かつ通常使用されているものである。標準的技術が組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、ならびに組織の培養および形質転換(例えば電気穿孔、リポフェクション)に使用される。酵素反応および精製技術は、製造者の規格に従って、または当技術分野で通常実施されているかもしくは本明細書に記載のように行われる。本明細書に記載の、分析化学、合成有機化学、ならびに医化学および薬化学に関連して利用する命名法、およびそれらの実験室での手順および技術は、当技術分野で周知かつ通常使用されているものである。標準的技術が化学合成、化学分析、薬学的調製、調剤、および送達、ならびに患者の処置に使用される。
【0017】
以下の用語、定義および略語がさらに適用される。
【0018】
「患者」という用語は、本発明の方法により処置される生物を意味する。そのような生物としてはヒトおよび他の哺乳動物が挙げられるがそれに限定されない。本発明の文脈では、「対象」という用語は一般に、以下に記載の処置(例えば本発明の化合物、および任意で1つまたは複数のさらなる治療薬の投与)を受けるかまたは受けた個人を意味する。
【0019】
「タンパク質のBCL-2ファミリー」という用語は、少なくとも以下の6つのタンパク質を現在含むタンパク質のファミリーを意味する: BCL-XL、BCL-2、BCL-W、BCL-B、BFL-1およびMCL-1。
【0020】
「ハロ」という用語はフルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを意味する。
【0021】
「アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル」などの用語は直鎖基と分岐基との両方を意味するが、「プロピル」などの個々の基に対する言及は直鎖基のみを包含し、「イソプロピル」などの分岐鎖異性体は具体的に言及される。
【0022】
「アリール」とは、フェニル基、または、約9〜10個の環原子を有するオルト縮合二環式炭素環基であって、少なくとも1つの環が芳香族である基を意味する。
【0023】
「ヘテロアリール」は、炭素と非過酸化物酸素、硫黄、およびXが存在しないかまたはH、O、(C1〜C4)アルキル、フェニルもしくはベンジルであるN(X)からなる群より各々選択される1〜4個のヘテロ原子とからなる5または6個の環原子を含有する単環式芳香環の、環炭素を経由して連結している基、ならびに、それから誘導される約8〜10個の環原子のオルト縮合二環式複素環、特にベンズ誘導体、またはプロピレン、トリメチレンもしくはテトラメチレン二基をそれに縮合させることで誘導される誘導体の基を包含する。
【0024】
より具体的には、「アルキル」という用語は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチルなどの、1〜6個の炭素原子の分岐または非分岐の飽和炭化水素基を意味する。例えばメチル、エチルなどの本明細書において好ましいアルキル基は1〜6個の炭素原子を含有する。
【0025】
本明細書で使用する「シクロアルキル」という用語は、3〜8個、好ましくは3個、5個または6個の炭素原子の環状アルキル基を意味する。本明細書で使用する「シクロアルキレン」という用語は、二価の環状アルキレン基、典型的には3員環、5員環、6員環または8員環を意味する。
【0026】
本明細書で使用する「アルコキシ」という用語は、単一の末端エーテル結合を通じて結合しているアルキル基を意味し、すなわち、「アルコキシ」基は、Rが上記定義の通りである-ORとして定義することができる。「低級アルコキシ」基とは、1〜6個の炭素原子を含有するアルコキシ基を意味する。
【0027】
本明細書で使用する「アリール」という用語は、少なくとも1つの環が芳香族である典型的には6員または10員の芳香族炭素環を意味する。
【0028】
基、置換基および範囲について以下に列挙する具体的な値は、例示のみを目的としており、それらは他の定義された値、または基および置換基に関する定義された範囲内の他の値を排除するものではない。
【0029】
例えば、「アルキル」はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ペンチル、3-ペンチルまたはヘキシルであり得るものであり、シクロアルキルはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルまたはシクロヘキシルであり得るものであり、「-O(C1〜C6)アルキル(アルコキシ)」はメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、ペントキシ、3-ペントキシまたはヘキシルオキシであり得る。
【0030】
「プロドラッグ(prodrug)」または「プロドラッグ(pro-drug)」という用語は、インビボで親薬物に変換される薬剤を意味する。プロドラッグは、いくつかの状況では親薬物より投与が容易であり得ることから、多くの場合有用である。それは例えば経口投与によりバイオアベイラビリティを示し得るものであり、一方、親はそうではない。また、プロドラッグは親薬物に比べて向上した薬学的組成物中での溶解度を有し得るか、または増加した嗜好性を示すかもしくは調剤が容易であり得る。
【0031】
本発明で使用する「アポゴシポール」という用語は、L-アポゴシポール、D-アポゴシポール、ラセミアポゴシポール、S-アポゴシポール、R-アポゴシポール、(-)アポゴシポールおよび(+)アポゴシポールを限定なしで含み、かつ(+)アポゴシポールを実質的に含まない(-)アポゴシポールを含む、広義の用語である。
【0032】
本開示全体にわたって、特定の化合物、例えばアポゴシポールを名指しして言及する場合、本開示の範囲が名指しされた化合物の薬学的に許容される塩、エステル、アミド、代謝物またはプロドラッグを包含すると理解される。
【0033】
キラル中心を有する本発明の化合物が光学活性体およびラセミ体として存在および単離可能であることを、当業者は認識するであろう。いくつかの化合物は多形を示し得る。本発明が、本明細書に記載の有用な特性を有する本発明の化合物の任意のラセミ体、光学活性体、多形体もしくは立体異性体、またはその混合物を包含すると理解すべきである。また、名指しされた化合物がキラル中心を有する場合、本開示の範囲は、2つの鏡像異性体のラセミ混合物を含む組成物、ならびに他の鏡像異性体を実質的に含まない各鏡像異性体を個々に含む組成物も含む。したがって、例えば、R鏡像異性体を実質的に含まないS鏡像異性体を含む組成物、またはS鏡像異性体を実質的に含まないR鏡像異性体を含む組成物が本明細書において想定される。
【0034】
「実質的に含まない」とは、組成物が10%未満、または8%未満、または5%未満、または3%未満、または1%未満の少量鏡像異性体を含むことを意味する。名指しされた化合物が1つを上回るキラル中心を有する場合、本開示の範囲は、各種ジアステレオマーの混合物を含む組成物、ならびに他のジアステレオマーを実質的に含まない各ジアステレオマーを含む組成物も含む。したがって、例えば、市販のアポゴシポールは、2つの別々の鏡像異性体を含むラセミ混合物である。本開示全体にわたる「アポゴシポール」という記載は、アポゴシポールのラセミ混合物を含む組成物、(-)鏡像異性体を実質的に含まない(+)鏡像異性体を含む組成物、および(+)鏡像異性体を実質的に含まない(-)鏡像異性体を含む組成物を含む。
【0035】
どのようにして光学活性体を調製するか(例えば、再結晶技術によるラセミ体の分割、光学活性出発原料からの合成、キラル合成、またはキラル固定相を用いるクロマトグラフィー分離によって)、またどのようにして本明細書に記載の標準的試験を使用するかまたは当技術分野で周知の他の同様の試験を使用して抗がん活性を決定するかは、当技術分野で周知である。
【0036】
「薬学的組成物」という用語は、化合物と希釈剤または担体などの他の化学成分との混合物を意味する。薬学的組成物は、生物に対する化合物の投与を容易にする。経口投与、注射投与、エアロゾル投与、非経口投与および局所投与を含むがそれに限定されない、化合物を投与する複数の技術が当技術分野に存在する。また、化合物と塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの無機酸または有機酸とを反応させることで薬学的組成物を得ることができる。
【0037】
「薬学的に許容される塩」という用語は、それを投与する対象である生物に対して著しい刺激を引き起こさず、かつ化合物の生物活性および生物特性を抑止しない、化合物の製剤を意味する。本発明の化合物と塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸などの無機酸とを反応させることで薬学的塩を得ることができる。本発明の化合物と塩基とを反応させてアンモニウム塩、ナトリウムまたはカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムまたはマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミン、N-メチル-D-グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミンなどの有機塩基の塩、およびそれらのアルギニン、リジンなどのアミノ酸との塩などの塩を形成することで、薬学的塩を得ることもできる。
【0038】
本明細書で使用する「炎症」は、物理的傷害、感染症または局部的免疫応答により開始する、体液、血漿タンパク質および白血球の局部的蓄積の一般的用語である。多くの異なる形態の炎症が異なる疾患に関連している。「炎症関連」疾患としては例えばループス、乾癬、関節リウマチおよび炎症性腸疾患が挙げられる。他の炎症関連疾患は本明細書において論じる。
【0039】
本明細書で使用する「抗炎症薬」という用語は、炎症の処置において使用する任意の抗炎症化合物を意味する。
【0040】
本明細書で使用する「処置」は、疾患の予防、寛解または治癒のための本発明の化合物の治療的投与に関連する。
【0041】
本明細書で使用する「医薬品または薬物」という用語は、患者に適切に投与する場合に所望の治療効果を誘発可能な化合物または組成物を意味する。
【0042】
本明細書で使用する「実質的に純粋である」とは、対象化学種が主要な存在する化学種であること(すなわち、組成物中の任意の他の個々の化学種よりもそれがモル比で豊富であること)、好ましくは、実質的に精製された画分が、存在する全高分子種の少なくとも約50パーセント(モル比)を対象化学種が構成する組成物であることを意味する。一般に、実質的に純粋な組成物は、組成物中に存在する全高分子種の約80パーセント超、例えば約85%、90%、95%および99%超を構成する。本質的に均一になるまで対象化学種を精製することもでき(混入化学種は慣行的な検出方法では組成物において検出できない)、ここで組成物は単一の化学種から本質的になる。
【0043】
本発明の一態様によれば、構造Aを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物が提供される:

式中、各RはH、C(O)X、C(O)NHX、NH(CO)X、SO2NHXおよびNHSO2Xからなる群より独立して選択され、ここでXはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリールおよび複素環からなる群より選択される。
【0044】
本発明の他の態様によれば、化合物I〜XXIIである構造Aが包含する具体的な化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物が提供される。










【0045】
他の態様によれば、疾患または障害を処置するための方法が提供される。本方法は、そのような処置を必要とする対象に有効量の任意の上記化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物もしくは溶媒和物を投与する段階を含み得る。処置可能な疾患または障害の非限定的な例としては、がんおよび自己免疫疾患がある。
【0046】
別の態様によれば、がんを処置するための方法が提供される。本方法は、それを必要とする対象に治療有効量の任意の上記化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物もしくは溶媒和物を投与する段階を含む。任意の上記化合物を任意の種類のがんを処置するために使用できる。いくつかの態様では、処置可能ながんの種類としては肺がん、乳がん、前立腺がん、および種々のリンパ腫が挙げられる。
【0047】
本発明の別の態様によれば、ヒトなどの哺乳動物における病態または症状の処置用の医薬の製造のために、任意の上記化合物を使用することができる。上記の限定の範囲内で、医薬をがんの処置に向けることができる。
【0048】
本発明の別の態様によれば、任意の上記化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物もしくは溶媒和物、および薬学的に許容される希釈剤もしくは担体を含む薬学的組成物が提供される。薬学的組成物はがんを処置するために使用することができる。薬学的組成物は、以下などの薬剤を含むがそれに限定されない1つまたは複数のさらなる治療用抗がん剤をさらに含んでいてもよい: (1) 微小管阻害剤(例えばビンクリスチン、ビンブラスチンおよびビンデシンなど)と、微小管安定化剤(例えばパクリタキセル[タキソール]、およびドセタキセル、タキソテールなど)と、エピポドフィロトキシン(例えばエトポシド[VP-16]およびテニポシド[VM-26]など)ならびにトポイソメラーゼIを標的化する薬剤(例えばカンプトテシンおよびイリノテカン(Isirinotecan)[CPT-11]など)などのトポイソメラーゼ阻害剤を含むクロマチン機能阻害剤とを含む、アルカロイド; (2) ナイトロジェンマスタード(例えばメクロレタミン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド(Ifosphamide)およびブスルファン[ミレラン]など)と、ニトロソ尿素(例えばカルムスチン、ロムスチンおよびセムスチンなど)と、他のアルキル化剤(例えばダカルバジン、ヒドロキシメチルメラミン、チオテパおよびマイトマイシン(Mitocycin)など)とを含む、共有結合性DNA結合剤[アルキル化剤]; (3) 核酸阻害剤(例えばダクチノマイシン[アクチノマイシンD]など)と、アントラサイクリン(例えばダウノルビシン[ダウノマイシンおよびセルビジン(Cerubidine)]、ドキソルビシン[アドリアマイシン]ならびにイダルビシン[イダマイシン]など)と、アントラセンジオン(例えば[ミトキサントロン]などのアントラサイクリン類似体など)と、ブレオマイシン(ブレノキサン(Blenoxane)など)と、プリカマイシン(ミトラマイシンなど)とを含む、非共有結合性DNA結合剤[抗腫瘍抗生物質]; (4) 葉酸代謝拮抗薬(例えばメトトレキサート、フォレックス(Folex)およびメキサート(Mexate)など)と、プリン代謝拮抗薬(例えば6-メルカプトプリン[6-MP、プリネトール]、6-チオグアニン[6-TG]、アザチオプリン、アシクロビル、ガンシクロビル、クロロデオキシアデノシン、2-クロロデオキシアデノシン[CdA]および2'-デオキシコホルマイシン[ペントスタチン]など)と、ピリミジンアンタゴニスト(例えばフルオロピリミジン[例えば5-フルオロウラシル(アドルシル(Adrucil))、5-フルオロデオキシウリジン(FdUrd)(フロクスウリジン)]など)と、シトシンアラビノシド(例えばシトサール(Cytosar)[ara-C]およびフルダラビンなど)とを含む、代謝拮抗薬; (5) L-アスパラギナーゼおよびヒドロキシ尿素などを含む、酵素; (6) 抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェンなど)などのグルココルチコイドと、非ステロイド性抗アンドロゲン剤(例えばフルタミドなど)と、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール[アリミデックス]など)とを含む、ホルモン; (7) 白金化合物(例えばシスプラチンおよびカルボプラチンなど); (8) 抗がん剤、毒素および/または放射性核種などに抱合されるモノクローナル抗体; (9) 生物学的応答調節剤(例えばインターフェロン[例えばIFN-αなど]およびインターロイキン[例えばIL-2など]など); (10) 養子免疫治療; (11) 造血成長因子; (12) 腫瘍細胞分化を誘導する薬剤(例えばオールトランスレチノイン酸など); (13) 遺伝子治療薬; (14) アンチセンス治療薬; (15) 腫瘍ワクチン; (16) 腫瘍転移に向けられる薬剤(例えばバチミスタット(Batimistat)など); (17) 血管新生阻害剤、ならびに(18) 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)。
【0049】
使用可能である好適なSSRIの代表的だが非限定的な例としては、セルトラリン(例えばPfizer, Inc.が「Zoloft(登録商標)」の商標で販売するセルトラリン塩酸塩)またはセルトラリン代謝物、フルボキサミン(例えばSolvay Pharmaceuticals, Inc.が「Luvox(登録商標)」の商標で販売するフルボキサミンマレイン酸塩(melate))、パロキセチン(例えばSmithKline Beecham Pharmaceuticals, Inc.が「Paxil(登録商標)」の商標で販売するパロキセチン塩酸塩)、フルオキセチン(例えばEli Lilly and Companyが「Prozac(登録商標)」または「Sarafem(登録商標)」の商標で販売するフルオキセチン塩酸塩)およびシタロプラム(例えばForest Laboratories、Parke-Davis, Inc.が「Celexa(登録商標)」の商標で販売するシタロプラム臭化水素酸塩)、ならびにその代謝物が挙げられる。さらなる例としてはベンラファキシン(例えばWyeth-Ayerst Laboratoriesが「Effexor(登録商標)」の商標で販売するベンラファキシン塩酸塩)、ミルタザピン(例えばOrganon, Inc.が「Remeron(登録商標)」の商標で販売)、ブスピロン(例えばBristol-Myers Squibbが「Buspar(登録商標)」の商標で販売するブスピロン塩酸塩)、トラゾドン(例えばBristol-Myers SquibbおよびApotheconが「Desyrel(登録商標)」の商標で販売するトラゾドン塩酸塩)、ネファゾドン(nefazadone)(例えばBristol-Myers Squibbが「Serzon(登録商標)」の商標で販売するネファゾドン塩酸塩)、クロミプラミン(例えばNovopharm, LTD、Ciba、およびTaro Pharmaceuticalsが「Anafranil(登録商標)」の商標で販売するクロミプラミン塩酸塩)、イミプラミン(例えばGlaxo-Welcome, Inc.が「Tofranil(登録商標)」の商標で販売するイミプラミン塩酸塩)、ノルトリプチリン(例えばLundbeckが「Nortrinel(登録商標)」の商標で販売するノルトリプチリン塩酸塩)、ミアンセリン(mianserine)(例えばOrganon, Inc.が「Tolvon(登録商標)」の商標で販売)、デュロキセチン(例えばEli Lilly and Companyが販売するデュロキセチン塩酸塩)、ダポキセチン(dapoxetine)(例えばALZA Corporationが販売するダポキセチン塩酸塩)、リトキセチン(litoxetine)(例えばフランス・バニューのSynthelabo Recherche (L.E.R.S.)が販売するリトキセチン塩酸塩)、フェモキセチン(femoxetine)、ロフェプラミン(例えばMERCK & Co., Inc.が「Gamonil(登録商標)」の商標で販売)、トモキセチン(例えばEli Lilly and Companyが販売)が挙げられる。本発明は、現在使用されているSSRI、または後に発見もしくは調剤されるそれを包含する。先に列挙したものを含むSSRIを毎日約2mg〜約2,500mgの量で経口投与することができる。
【0050】
広い意味で、任意のがんまたは腫瘍(例えば血液腫瘍および固形腫瘍)を本発明の態様に従って処置することができる。本発明の態様に従って処置可能な例示的ながんとしては、頭頸部がん、脳がん(例えば多形神経膠芽腫(glioblastoma multifoma))、乳がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、肝がん、膀胱がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、肺がん(非小細胞)、卵巣がんおよび他の婦人科学的がん(例えば子宮頸部の腫瘍)、膵がん、前立腺がん、腎がん、絨毛がん(肺がん)、皮膚がん(例えば黒色腫、基底細胞がん)、ヘアリーセル白血病、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病(乳房および膀胱)、急性骨髄性白血病、髄膜白血病、慢性骨髄性白血病、ならびに赤白血病が挙げられるがそれに限定されない。より一般的には、処置されるがんとしては白血病およびB細胞がん(例えばリンパ腫、多発性骨髄腫およびMDS)が挙げられる。
【0051】
本発明の任意の上記化合物および方法を使用して処置可能な自己免疫疾患の非限定的な例としては関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、若年発症糖尿病、糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット病、クローン病、潰瘍性大腸炎、水疱性類天疱瘡、サルコイドーシス、乾癬、魚鱗癬、グレーブス眼症、乾癬、乾癬炎症性腸疾患および喘息が挙げられる。
【0052】
以下でより詳細に論じるように、いくつかの態様はまた、各種の炎症性の障害、疾患および状態の処置および/または予防のための方法を提供する。そのような炎症性の障害、疾患および状態としては、例えばエリテマトーデス、関節リウマチ、多発性硬化症および乾癬などの全身性自己免疫疾患; ならびに例えば潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、グレーブス病、橋本甲状腺炎、クローン病、ループス腎炎、自己免疫性溶血性貧血、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、インスリン依存性糖尿病、糸球体腎炎およびリウマチ熱などの臓器特異性自己免疫疾患が挙げられるがそれに限定されない。本発明に従って処置可能な他の炎症性疾患としては、傷害、アレルギー、感染症、微生物、外傷、または物理的もしくは化学的作用物質がもたらす、乾癬性関節炎、変形性関節症および痛風関節炎などの他の炎症性関節炎状態、ならびに結膜炎、皮膚炎、気管支炎、鼻炎などの他の炎症性状態が挙げられるがそれに限定されない。喘息、シェーグレン症候群、髄膜炎、副腎白質ジストロフィー、CNS血管炎、ミトコンドリアミオパチー、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病または腫瘍の炎症性局面の処置も本発明の一部として想定される。ミトコンドリアミオパチーの例としてはMELAS症候群、MERF症候群、レーバー病、ウェルニッケ脳症、レット症候群、ホモシスチン尿症、高プロリン血症、非ケトーシス型高グリシン血症、ヒドロキシ酪酸アミノ酸尿症(hydroxybutyric aminoaciduria)、亜硫酸オキシダーゼ欠損症および複合系統病(B12欠乏症)が挙げられる。そのような予防および/または処置に関連して、本明細書に記載の化合物を含む製造品、組成物、使用方法および医学的処置も提供される。
【0053】
いくつかの場合では、任意の上記化合物を塩として投与することが適切であり得る。薬学的に許容される塩の例としては、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸によって形成される有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、ケトグルタル酸塩およびグリセロリン酸塩が挙げられる。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩および炭酸塩を含む好適な無機塩も形成可能である。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知の標準的手順を使用して、例えば、任意の上記化合物と、生理学的に許容されるアニオンを与える好適な塩基とを反応させることで得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウムもしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩を作製することもできる。
【0054】
任意の上記化合物を包含する任意の錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは、トラガントゴム、アラビアゴム、コーンスターチもしくはゼラチンなどの結合剤; リン酸二カルシウムなどの賦形剤; コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤; ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤; およびショ糖、果糖、乳糖もしくはアスパルテームなどの甘味料、またはペパーミント、ウインターグリーン油もしくはサクランボ香味料などの香味料を含有してもよい。任意の上記化合物の単位剤形が存在する場合、上記種類の材料に加えて、植物油またはポリエチレングリコールなどの液体担体を含有し得る。各種の他の材料がコーティングとして、またはそうでなければ固体単位剤形の物理的形態を変更するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤またはカプセル剤をゼラチン、ワックス、セラックまたは糖などでコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてのショ糖または果糖、防腐剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにサクランボ味またはオレンジ味などの香味料を含有し得る。任意の単位剤形の調製に使用する任意の材料が薬学的に許容され、使用される量において実質的に無毒であるはずである。さらに、任意の上記化合物を持続放出製剤およびデバイスに組み入れることができる。
【0055】
また、任意の上記化合物を点滴または注射によって静脈内投与または腹腔内投与することができる。任意の上記化合物の溶液を、任意で非イオン性界面活性剤と混合した水中で調製することができる。分散液もグリセリン、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびその混合物中、ならびに油中で調製することができる。普通の貯蔵および使用条件下で、これらの製剤は、微生物の成長を防ぐための防腐剤を含有し得る。
【0056】
十分な治療量の任意の上記化合物を適切な溶媒中に、必要に応じて先に列挙した各種の他の成分と共に組み入れた後、濾過滅菌を行うことで、滅菌注射用溶液を調製することができる。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過した溶液中に存在する有効成分と任意のさらなる所望の成分との粉末を与える、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0057】
局所投与では、任意の上記化合物を純粋な形態で、すなわちそれが液体である場合に適用することができる。しかし、固体または液体であり得る皮膚科学的に許容される担体との組み合わせで、組成物または製剤としてそれを皮膚に投与することが一般に望ましい。有用な固体担体としてはタルク、粘土、結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉化固体が挙げられる。有用な液体担体としては、本化合物を任意で無毒の界面活性剤によって有効なレベルで溶解または分散させることができる、水、アルコールもしくはグリコール、または水-アルコール/グリコールブレンドが挙げられる。補助剤およびさらなる抗菌薬を加えて、所与の用途での特性を最適化することができる。
【0058】
得られた液体組成物を、吸収性パッドから適用するか、絆創膏および他の包帯の含浸に使用するか、またはポンプ型もしくはエアロゾル噴霧器を用いて患部上に噴霧することができる。当業者に公知のように、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪アルコール、変性セルロースまたは変性ミネラル材料などの増粘剤を液体担体と共に使用することで、ユーザーの皮膚に直接適用するための塗り広げ可能なペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、石鹸剤などを形成することもできる。
【0059】
先に述べたように、炎症性障害はアポトーシス制御因子の活性を包含し得る。したがって、BCL-2タンパク質などのアポトーシス制御因子の活性を調節する化合物を同定することが望ましい。そのような化合物は以下に記載する。いくつかの態様では、これらの化合物の結合は、抗アポトーシスBCL-2ファミリーメンバーとアポトーシス促進性BCL-2ファミリーメンバーとの相互作用を妨げ、それにより抗アポトーシスBCL-2ファミリーメンバーの生物活性を減少させる。結果として、この化合物を使用して、抗アポトーシスBCL-2タンパク質活性を包含する炎症性障害を処置または予防することができる。各種態様では、対象となる化合物は、(+)アポゴシポールを実質的に含まない(-)アポゴシポールを含むアポゴシポール、ならびに以下に記載のアポゴシポールの各種誘導体および他の関連化合物を含む。炎症に関連する状態、例えばエリテマトーデスを非常に発生させやすい患者にそのような化合物を投与することで、患者がそのような状態を発生させる見込みを減少させることができる。
【0060】
以下に示すように、アポゴシポールはゴシポールよりも有効であるが低毒性である。ゴシポール中のアルデヒドは、化合物を反応性にし、したがって活性薬物の利用可能な濃度を有効に減少させ、かつ毒性を引き起こす。問題のあるアルデヒドを有さないゴシポール類似体であるアポゴシポールは、抗アポトーシスBCL-2ファミリータンパク質に対する完全な活性を保持する。本出願の実施例部分でより詳細に以下に記載する連日投与試験では、アポゴシポールのマウス耐量がゴシポールの約2〜4倍であることを示している。さらに、この試験では、毒性学および有効性に関してアポゴシポールが親化合物ゴシポールより優れていることを示している。
【0061】
より具体的には、本発明の態様によれば、炎症性の障害、疾患および状態の処置および/または予防に有用な化合物としては、構造Bを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物が挙げられる:

式中、R6、R8、R9およびR10の各々は水素、ヒドロキシル、-(C1〜C6)アルキル、-O(C1〜C6)アルキル、-(C1〜C6)アルキルハロ、-OC(O)(C1〜C6)アルキルおよびハロからなる群より独立して選択され、各R7は水素、-(C1〜C6)アルキル、-(C3〜C8)シクロアルキル、-(C6〜C10)アリールおよび-(C1〜C6)アルキル(C6〜C10)アリール、C(O)X、C(O)NHX、NH(CO)X、SO2NHXならびにNHSO2Xからなる群より独立して選択され、ここでXはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリールおよび複素環からなる群より選択される。
【0062】
先に示す一般構造Bにおいて、使用可能ないくつかの具体的R6、R8、R9およびR10基としては、水素、-OH、-OCH3、-CF3、-CH3、-OC2H5、-OC(O)CH3、F、ClまたはBrが独立して挙げられる。使用可能ないくつかの具体的R7基としては、水素、-C2H5; -i-Pr、n-Pr、n-Bu、t-Bu、i-Bu、s-Buまたはシクロヘキシルが独立して挙げられる。
【0063】
いくつかの態様では、先に示す一般構造Bの化合物はアポゴシポールである。がんを処置するためのアポゴシポールの使用は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる2005年6月25日出願の国際公開公報第2005/009434号に記載されている。
【0064】
先に示す一般構造Bとして記述される本発明の1つの具体的化合物は、アセテート部分(-OC(O)CH3)としてのR6、R8、R9の各々を有し、i-PrとしてのR7および-CH3としてのR10を有する(アポゴシポールヘキサアセテート)。この化合物をアポゴシポールの経口投与用プロドラッグとして使用することもできる。別の態様では、本発明の化合物は、R6基のうち1つが水素以外の基である式Bの化合物を含む。一態様では、化合物は(-)アポゴシポールであり得る。他の態様では、化合物は(-)アポゴシポール、(+)アポゴシポール、ラセミアポゴシポール、S-アポゴシポール、R-アポゴシポールまたはその混合物であり得る。別の態様では、化合物は実質的に純粋な(-)アポゴシポールである。いくつかの態様では、(-)アポゴシポールは、組成物中に存在する全高分子種の少なくとも80パーセント、例えば約85%、90%、95%および99%超である。例えば、本質的に均一になるまで(-)アポゴシポールを精製することができ、ここで組成物は(-)アポゴシポールのみから本質的になる。各種態様では、化合物は(+)アポゴシポールを実質的に含まない(-)アポゴシポールである。いくつかの態様では、先に示す一般構造Bの化合物は先に示す化合物XXIまたはXXIIである。
【0065】
一態様では、先に示す一般構造Bの化合物は、約50重量%以上のアポゴシポールの(-)鏡像異性体および約50重量%以下のアポゴシポールの(+)鏡像異性体を含有する。ある種の態様では、この化合物は約60重量%以上のアポゴシポールの(-)鏡像異性体および約40重量%以下のアポゴシポールの(+)鏡像異性体を含有する。いくつかの態様では、この化合物は約70重量%以上のアポゴシポールの(-)鏡像異性体および約30重量%以下のアポゴシポールの(+)鏡像異性体を含有する。いくつかの態様では、この化合物は約80重量%以上のアポゴシポールの(-)鏡像異性体および約20重量%以下のアポゴシポールの(+)鏡像異性体を含有する。いくつかの態様では、この化合物は約90重量%以上のアポゴシポールの(-)鏡像異性体および約10重量%以下のアポゴシポールの(+)鏡像異性体を含有する。いくつかの態様では、この化合物は約95重量%以上のアポゴシポールの(-)鏡像異性体および約5重量%以下のアポゴシポールの(+)鏡像異性体を含有する。いくつかの態様では、アポゴシポールは約99重量%以上のアポゴシポールの(-)鏡像異性体および約1重量%以下のアポゴシポールの(+)鏡像異性体を含有する。
【0066】
抗アポトーシスBCL-2タンパク質に対する本明細書に開示される化合物の結合は、アポトーシスを誘導し、それにより炎症および/または炎症性障害を処置することができる。いくつかの態様では、本明細書に開示される化合物は、例えばBCL-2またはBCL-XLなどの抗アポトーシスBCL-2ファミリータンパク質に結合することができる。この結合は、アポトーシス促進性BCL-2ファミリーメンバーに対する抗アポトーシスBCL-2ファミリーメンバーの結合を阻害することができる。各種態様では、本明細書に開示される化合物の結合は、抗アポトーシスBCL-2タンパク質とアポトーシス促進性BCL-2ファミリーメンバーのBH3ドメインとの間の複合体の形成を減少させることができる。
【0067】
本発明はまた、本明細書に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を、薬学的に許容される希釈剤または担体との組み合わせで含む薬学的組成物を提供する。さらに、本発明は、本明細書に開示される化合物の、他の公知の抗炎症化合物との組み合わせでの使用を提供する。
【0068】
各種態様では、本発明は、炎症性疾患、および/または炎症に関連する状態を処置するための方法であって、そのような治療を必要とする哺乳動物に、有効量の本明細書に記載の化合物をさらなる抗炎症化合物または薬学的に許容されるその塩との組み合わせで投与する段階を含む方法を提供する。他の態様では、炎症性疾患、および/または炎症に関連する状態を予防するための方法、あるいは患者がそのような炎症を発生させる見込みを減少させるための方法が提供される。本方法は、そのような治療を必要とする哺乳動物に有効量の本明細書に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与する段階を含み得る。
【0069】
炎症を包含する疾患または状態を有することが疑われるかまたはそれに罹りやすい哺乳動物対象、特にヒトを処置するための方法であって、それを必要とする哺乳動物対象に治療有効量の先に示す一般構造Bの化合物のうち少なくとも1つを含む化合物、一般構造Bの化合物の単一の鏡像異性体、(+)鏡像異性体と(-)鏡像異性体との混合物、約90重量%以上の(-)鏡像異性体と約10重量%以下の(+)鏡像異性体との混合物、一般構造Bの化合物の個々のジアステレオマー、ジアステレオマーの混合物、または薬学的に許容されるその塩、溶媒和物もしくはプロドラッグを投与することにより炎症に影響を与え、処置しまたは予防する段階を含む方法も提供される。いくつかの態様では、化合物はアポゴシポールである。
【0070】
いくつかの態様では、炎症を処置するかまたは炎症を予防するための本方法は、有効量の本明細書に開示される疾患または障害の処置または予防に有用な別の治療薬を投与する段階を含む。いくつかの態様では、他の治療薬の治療効果が発揮される時間は、アポゴシポールまたは誘導体の治療効果が発揮される時間と重複する。
【0071】
いくつかの態様では、他の治療薬は抗炎症薬である。本明細書に開示されるいくつかの態様に係る使用に好適な抗炎症薬の例としては、ステロイド(例えばコルチゾール、コルチゾン、フルドロコルチゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、6-メチルプレドニゾン、トリアムシノロン、ベタメタゾンまたはデキサメサゾン)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDS)(例えばアスピリン、アセトアミノフェン、トルメチン、サリチレート、イブプロフェン、メフェナム酸、ピロキシカム、ナブメトン、ロフェコキシブ、セレコキシブ、エトドラクまたはニメスリド)が挙げられるがそれに限定されない。例えばエリテマトーデスの処置では、本明細書に開示される化合物を、ヒドロキシクロロキノンを例えば含む抗マラリア薬との組み合わせ、またはアザチオプリンおよびシクロホスファミドを例えば含む細胞毒性化学療法薬との組み合わせで投与することもできる。
【0072】
いくつかの態様では、他の治療薬は抗生物質(例えばバンコマイシン、ペニシリン、アモキシシリン、アンピシリン、セフォタキシム、セフトリアキソン、セフィキシム、リファンピンメトロニダゾール、ドキシサイクリンまたはストレプトマイシン)である。別の態様では、他の治療薬はPDE4阻害剤(例えばロフルミラストまたはロリプラム)である。別の態様では、他の治療薬は抗ヒスタミン薬(例えばシクリジン、ヒドロキシジン、プロメタジンまたはジフェンヒドラミン)である。別の態様では、他の治療薬は抗マラリア薬(例えばアルテミシニン、アーテメータ、アーテスネート(artsunate)、リン酸クロロキン、メフロキン塩酸塩、ドキシサイクリン塩酸塩、プログアニル塩酸塩、アトバコンまたはハロファントリン)である。
【0073】
本発明の組み合わせ処置において有用な別の種類の治療薬は、ヒト化モノクローナル抗体などの抗体である。非限定的な例としては抗CD99抗体が挙げられる。例えば米国特許第7,223,395号; White et al., Annu. Rev. Med., 52:125 (2001)を参照。リツキシマブ(Rituxan(登録商標); Genentech、カリフォルニア州南サンフランシスコ)は、関節リウマチを処置するための本発明の抱合体において有用な別の治療薬である。本発明において有用な別の治療薬は、本明細書で使用する、細胞死を直接的または間接的に促進する任意の分子である、細胞毒性薬でもあり得る。具体的な抗がん薬としてはフラボピリドール、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、VP16(エトポシド)、タキソール(パクリタキセル)、シスプラチンなどが挙げられる。
【0074】
化合物が安定な無毒の酸塩または塩基塩を形成する上で十分に塩基性または酸性である場合、塩としての化合物の投与が適切であり得る。薬学的に許容される塩の例としては、生理学的に許容されるアニオンを形成する酸によって形成される有機酸付加塩、例えば、トシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、a-ケトグルタル酸塩およびa.-グリセロリン酸塩がある。塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸水素塩および炭酸塩を含む好適な無機塩も形成可能である。
【0075】
薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知の標準的手順を使用して、例えば、アミンなどの十分に塩基性の化合物と、生理学的に許容されるアニオンを与える好適な酸とを反応させることで得ることができる。カルボン酸のアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウムもしくはリチウム)またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩を作製することもできる。
【0076】
本発明の実施において有用な化合物を、薬学的組成物として調剤し、ヒト患者などの哺乳動物宿主に、選択される投与経路、すなわち経口もしくは非経口、静脈内、筋肉内、局所または皮下経路に適応した種々の形態で投与することができる。
【0077】
化合物を、不活性希釈剤または同化可能な食用担体などの薬学的に許容される媒体との組み合わせで全身投与、例えば経口投与することができる。好ましくは、投与経路は経口または静脈内である。他の投与経路としては例えば非経口(parental)、筋肉内、局所および皮下が挙げられる。化合物を硬もしくは軟シェルゼラチンカプセルに封入できるか、錠剤に圧縮できるか、または患者の食事の食物に直接組み入れることができる。治療用経口投与では、活性化合物を、1つまたは複数の賦形剤と組み合わせて、経口摂取用錠剤、バッカル錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁液剤、シロップ剤、カシェ剤などの形態で使用することができる。そのような組成物および製剤は少なくとも0.1 %の活性化合物を含有するはずである。当然、組成物および製剤の割合は変動し得るものであり、好都合には所与の単位剤形の重量の約2〜約60%であり得る。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、有効投与量レベルが得られる量である。
【0078】
一般構造Aの化合物の場合と全く同じように、一般構造Bの化合物を種々の方法で投与することができる。例えば、錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤などは以下も含有し得る: トラガントゴム、アラビアゴム、コーンスターチもしくはゼラチンなどの結合剤; リン酸二カルシウムなどの賦形剤; コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤; ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤; およびショ糖、果糖、乳糖もしくはアスパルテームなどの甘味料、またはペパーミント、ウインターグリーン油もしくはサクランボ香味料などの香味料を加えることができる。単位剤形がカプセル剤である場合、上記種類の材料に加えて、植物油またはポリエチレングリコールなどの液体担体を含有し得る。各種の他の材料がコーティングとして、またはそうでなければ固体単位剤形の物理的形態を変更するために存在し得る。例えば、錠剤、丸剤またはカプセル剤をゼラチン、ワックス、セラックまたは糖などでコーティングすることができる。シロップ剤またはエリキシル剤は、活性化合物、甘味料としてのショ糖または果糖、防腐剤としてのメチルパラベンおよびプロピルパラベン、色素、ならびにサクランボ味またはオレンジ味などの香味料を含有し得る。任意の単位剤形の調製に使用する任意の材料が薬学的に許容され、使用される量において実質的に無毒であるはずである。さらに、活性化合物を持続放出製剤およびデバイスに組み入れることができる。
【0079】
また、化合物を点滴または注射によって静脈内投与または腹腔内投与することができる。活性化合物またはその塩の溶液を、任意で非イオン性界面活性剤と混合した水中で調製することができる。分散液もグリセリン、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよびその混合物中、ならびに油中で調製することができる。普通の貯蔵および使用条件下で、これらの製剤は、微生物の成長を防ぐための防腐剤を含有する。
【0080】
注射または点滴に好適な薬学的剤形としては、注射用または点滴用の滅菌溶液または懸濁液の即時調製に適応し、任意でリポソームに被包されている、有効成分を含む滅菌水溶液または水性懸濁液、あるいは滅菌粉末を挙げることができる。いずれの場合でも、最終剤形は、製造および貯蔵条件下で滅菌であり、流体であり、かつ安定であるべきである。液体担体または媒体は、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセリン、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、無毒のグリセリルエステル、およびその好適な混合物を例えば含む溶媒または液体分散媒体であり得る。例えば、リポソームの形成、分散液の場合の必要な粒径の維持、または界面活性剤の使用により、適当な流動性を維持することができる。微生物の作用の阻止をさまざまな抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、緩衝液または塩化ナトリウムを含むことが得策である。注射用組成物の長期吸収を組成物中での吸収遅延剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0081】
所要量の活性化合物を適切な溶媒中に、先に列挙した各種の他の成分を必要に応じて組み入れた後、濾過滅菌を行うことで、滅菌注射用溶液が調製される。滅菌注射用溶液の調製用の滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、既に滅菌濾過した溶液中に存在する有効成分と任意のさらなる所望の成分との粉末を与える、真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0082】
局所投与では、本化合物を純粋な形態で、すなわちそれが液体である場合に適用することができる。しかし、固体または液体であり得る皮膚科学的に許容される担体との組み合わせで、組成物または製剤としてそれを皮膚に投与することが一般に望ましい。
【0083】
有用な固体担体としてはタルク、粘土、結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉化固体が挙げられる。有用な液体担体としては、本化合物を任意で無毒の界面活性剤によって有効なレベルで溶解または分散させることができる、水、アルコールもしくはグリコール、または水-アルコール/グリコールブレンドが挙げられる。芳香などの補助剤、およびさらなる抗菌薬を加えて、所与の用途での特性を最適化することができる。得られた液体組成物を、吸収性パッドから適用するか、絆創膏および他の包帯の含浸に使用するか、またはポンプ型もしくはエアロゾル噴霧器を用いて患部上に噴霧することができる。
【0084】
また、合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪アルコール、変性セルロースまたは変性ミネラル材料などの増粘剤を液体担体と共に使用することで、ユーザーの皮膚に直接適用するための塗り広げ可能なペースト剤、ゲル剤、軟膏剤、石鹸剤などを形成することもできる。
【0085】
構造AまたはBの化合物を皮膚に送達するために使用できる有用な皮膚科学的組成物の例は当技術分野で公知である。例えば米国特許第4,608,392号、第4,992,478号、第4,559,157号および第4,820,508号を参照。
【0086】
化合物の有用な投与量は、そのインビトロ活性および動物モデルでのインビボ活性を比較することで決定することができる。マウスおよび他の動物の有効投与量をヒトに外挿するための方法は当技術分野で公知である。例えば米国特許第4,938,949号を参照。
【0087】
一般に、ローションなどの液体組成物中の一般構造Bの化合物の濃度は約0.1〜約25.0質量%、例えば約0.5〜約10.0質量%であり得る。ゲルまたは粉末などの半固体または固体組成物中の濃度は、約0.1〜約5.0質量%、例えば約0.5〜約2.5質量%であり得る。
【0088】
処置における使用に必要な、化合物、またはその活性塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の塩だけでなく投与経路、処置される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態によっても変動し、最終的には付き添いの医師または臨床家の裁量による。しかし、一般に、好適な用量は1日当たり約0.2〜約100.0μmol/kgの範囲であり得る。一態様では、用量は例えば1日当たり約0.2〜約1.0μmol/kgであり得る。いくつかの態様では、好適な用量は、1日体重1kg当たり約0.5〜約100mg、例えば約10〜約75mg、例えば1日レシピエントの体重1キログラム当たり約3〜約50mgの範囲、例えば約6〜約90mg/kg/日の範囲、例えば約15〜約60mg/kg/日の範囲であり得る。
【0089】
本明細書に開示される方法での使用に好適な薬学的組成物としては、有効成分がその意図する目的を実現するために有効な量で含有される組成物が挙げられる。より具体的には、治療有効量とは、疾患の症状を予防し、緩和しもしくは寛解させるか、または処置される対象の生存を延長するために有効な化合物の量を意味する。治療有効量の決定は、特に本明細書において提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0090】
本明細書に開示される薬学的組成物の正確な調剤、投与経路、および投与量は、患者の状態に鑑みて個々の医師が選択することができる。典型的には、患者に投与する組成物の用量範囲は、患者の体重1kg当たり約0.5〜約1000mg、または約1〜約500mg/kg、または約10〜約500mg/kg、または患者の体重1kg当たり約50〜約100mgであり得る。投与量は、患者の必要に応じて1日または複数日の間に与えられる単一の投与量または一連の2つ以上の投与量であり得る。ヒト投与量が確立されていない場合、動物における毒性試験および有効性試験で認定される、ED50もしくはID50値またはインビトロもしくはインビボ試験から誘導される他の適切な値から、好適なヒト投与量を推量することができる。
【0091】
正確な投与量は薬物毎に決定できるが、大部分の場合では、投与量に関する何らかの一般化を行うことができる。成人ヒト患者の連日投与レジメンは、例えば、1日当たり1〜4回投与の本明細書に開示される薬学的組成物の各成分、または遊離塩基として計算する薬学的に許容されるその塩について、約0.1mg〜約500mg、例えば約1mg〜約250mg、例えば約5〜約200mgの経口用量、または約0.01mg〜約100mg、例えば約0.1mg〜約60mg、例えば約1〜約40mgの静脈内、皮下もしくは筋肉内用量であり得る。あるいは、本明細書に開示される組成物を、連続的静脈内注射により、好ましくは1日当たり最大400mgの各成分の用量で投与することができる。したがって、各成分の経口投与による1日の全投与量は典型的には約1〜約2000mgの範囲であり、非経口投与による1日の全投与量は典型的には約0.1〜約400mgの範囲である。いくつかの態様では、化合物を連続的治療の期間、例えば1週間以上または数ヶ月もしくは数年間投与する。
【0092】
調節効果または最小有効濃度(MEC)を維持するために十分な活性部分の血漿中レベルを与えるために、投与量および投与間隔を個々に調整することができる。MECは各化合物で異なるがインビトロデータから推定することができる。MECを実現するために必要な投与量は個々の特性および投与経路に依存する。しかし、HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して血漿中濃度を決定することができる。
【0093】
また、投与間隔をMEC値を使用して決定することができる。10〜90%、例えば30〜90%、例えば50〜90%の時間において、MECを超えて血漿中レベルを維持するレジメンを使用して、組成物を投与すべきである。局部投与または選択的取り込みの場合では、薬物の有効局部濃度は血漿中濃度に関連しないことがある。
【0094】
当然、組成物の投与量は、治療される対象、対象の体重、病気の重症度、投与様式、および処方する医師の判断に依存する。
【0095】
各種態様では、所望であれば、組成物をパックまたはディスペンサーデバイスとして提示することができ、パックまたはディスペンサーデバイスは有効成分を含む1つまたは複数の単位投与形態を含み得る。例えば、パックはブリスターパックなどの金属箔またはプラスチック箔を含み得る。パックまたはディスペンサーデバイスには投与用の説明書を添付してもよい。医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局が規定する形式で容器に備え付けた注意書きであって、ヒト投与または獣医学的投与用の薬物の形態に関する当局の承認を反映している注意書きを、パックまたはディスペンサーに添付してもよい。例えば、そのような注意書きは、薬物の処方に関して米国食品医薬品局が承認したラベリング、または承認された製品の挿入物であり得る。適合性のある薬学的担体中に調剤される本明細書に開示される化合物を含む組成物を調製し、適切な容器中に配置し、指示された状態の処置用にラベリングすることもできる。
【0096】
各種態様では、当技術分野で公知の方法を使用して本発明の化合物を標識することができる。1つの検出可能な基は蛍光性基である。蛍光性基は、典型的には高いシグナル対ノイズ比を生成し、それにより検出手順における分解能および感度の増加をもたらす。例えば、蛍光性基は約300nmを超え、例えば約350nmを超え、例えば約400nmを超える波長を有する光を吸収する。蛍光性基が発光する光の波長は約310nmを超え、例えば約360nmを超え、例えば約410nmを超える。
【0097】
蛍光性の検出可能な部分は、以下の非限定的な例を含む種々の構造クラスより選択することができる: 1-および2-アミノ-ナフタレン、p,p'ジアミノスチルベン、ピレン、四級フェナントリジン塩、9-アミノアクリジン、p,p'-ジアミノベンゾフェノンイミン、アントラセン、オキサカルボシアニン、マロシアニン、3-アミノエキレニン、ペリレン、ビスベンゾオキサゾール、ビス-p-オキサゾリルベンゼン、1,2-ベンゾフェナジン、レチノール、ビス-3-アミノピリジニウム塩、ヘレブリゲニン、テトラサイクリン、ステロフェノール、ベンズイミダゾリルフェニルアミン、2-オキソ-3-クロメン、インドール、キサンテン、7-ヒドロキシクマリン、フェノキサジン、サリチレート、ストロファンチジン、ポルフィリン、トリアリールメタン、フラビン、キサンテン色素(例えばフルオレセイン色素およびローダミン色素); シアニン色素; 4,4-ジフルオロ-4-ボラ-3a,4a-ジアザ-s-インダセン色素、ならびに蛍光タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質、フィコビリンタンパク質)。
【0098】
各種態様では、化合物を標識することができ、ここで標識基は自発的にシグナルを放出するか、または好適な刺激の導入時にシグナルを発生させる。標識としては、例えばl3C、15N、19F、1Hなどの原子が挙げられる。各種態様では、化合物を単位剤形で好都合に投与することができ、例えば例えば単位剤形当たり約5〜約1,000mg、例えば約10〜約750mg、例えば約50〜約500mgの有効成分を含有する。
【0099】
いくつかの態様では、約0.5〜約75μM、例えば約1〜約50μM、例えば約2〜約30μMの活性化合物のピーク血漿中濃度を実現するように有効成分を投与することができる。これは、例えば、任意で生理食塩水中の有効成分の0.05〜5%溶液の静脈内注射、または約1〜100mgの有効成分を含有するボーラスとしての経口投与によって実現することができる。望ましい血中レベルを、例えば約0.01〜5.0mg/kg/時間とする持続点滴、または約0.4〜15mg/kgの有効成分を含む間欠点滴によって維持することができる。
【0100】
所望の用量を、単一用量で、または適切な間隔で投与される分割用量として、例えば1日当たり2つ、3つ、4つまたはそれ以上の副用量として好都合に提示することができる。副用量それ自体を、例えばいくつかの別々の大まかな間隔の投与、例えば吸入器からの複数の吸入にさらに分割することができる。
【0101】
実施例
以下の非限定的な実施例によって本発明のいくつかの局面をさらに例示することができる。
【0102】
実施例1
分子モデリング
分子モデリング試験を、Linuxワークステーションおよび64 3.2-GHz CPU Linuxクラスター上で行った。Bak由来のペプチド(Protein Data Bankコード1BXL)との複合体中のBCL-XLの結晶構造を使用してドッキング試験を行った。ペプチド結合ポケット中の5,5'置換アポゴシポール誘導体のドッキング構造を、ChemScoreによってGOLDドッキングプログラムにおけるスコアリング関数として得た。タンパク質表面を、Sybyl(Tripos、セントルイス)において実行したプログラムMOLCADによって作成した。
【0103】
実施例2
一般的な化学的手順
別途記述がない限り、すべての試薬および無水溶媒(CH2Cl2、THF、ジエチルエーテルなど)を商業的供給源より得て、さらに精製せずに使用した。すべての反応をオーブン乾燥したガラス器具中で行った。空気または水分に感受性のある試薬を包含するすべての反応を窒素雰囲気下で行った。予め充填したシリカゲルまたはC-18カートリッジ(RediSep)を使用してシリカゲルクロマトグラフィーを行った。Atlantis T3 3μM 4.6mm x 150mm逆相カラムを使用してWaters Co.のHPLC Breezeによって決定される純度95%超まで、すべての最終化合物を精製した。NMRスペクトルをVarian 300またはBruker 600 MHz機器上で記録した。化学シフトを1H(0.00ppmでMe4Si)に対してppm(δ)で報告する。カップリング定数(J)は全体を通じてHzで報告する。質量スペクトルデータは低分解能についてEsquire LC00066上で、高分解能についてAgilent ESI-TOF上で取得した。
【0104】
実施例3
本発明の化合物の合成
5,5'置換アポゴシポール誘導体の合成をスキーム1に概略する。

【0105】
簡潔かつ一般的に言えば、ゴシポール1をNaOH溶液で処理した後、硫酸ジメチルで処理してメチルアポゴシポールを得た。メチルアポゴシポールとTiCl4およびジクロロメチルメチルエーテルとの反応により生じたイソプロピル基の損失および同時のビスホルミル化によってアルデヒド2を得た。化合物2を異なるグリニャール試薬またはリチウム試薬で処理して第二級アルコールを得て、これをクロロクロム酸ピリジニウムによってフェノンに酸化した。後続のフェノンの脱メチル化によって化合物3を得た。
【0106】
より具体的には、40% NaOH 50ml中のゴシポール酢酸1(5g、8.65mmol)を暗室中、窒素下90℃で3.5時間加熱した。反応混合物を冷却し、氷(300ml)と濃H2SO4(35ml)との混合物上にゆっくりと注いで白色析出物を形成した。析出物を濾過し、水洗し、乾燥させてアポゴシポール(3.8g、95%)を白色固体として得た。

【0107】
次にアポゴシポール(3.8g、8.21mmol)をアセトン200mlに溶解させた。K2CO3(23.9g、206.7mmol)および硫酸ジメチル(16.3ml、206.7mmol)を加え、反応混合物を窒素下で24時間還流させた。溶液から分離した固体を濾取した。それを洗浄し(アセトンおよび水)、乾燥させてメチル化アポゴシポール4.2g(93%)を得た。メチル化アポゴシポール(1.6g、2.93mmol)の乾燥塩化メチル(40ml)溶液に0℃で四塩化チタン(14.3g、75.5mmol)を加えた。添加が完了した後、暗赤色溶液を0℃でさらに15分間攪拌した。ジクロロメチルメチルエーテル(2.93g、25.5mmol)を15分間かけて滴下し、反応混合物を窒素下、周囲温度で14時間攪拌した。
【0108】
反応混合物を氷上に注ぎ、得られた水層を塩化メチルで2回抽出した。一緒にした有機画分を水およびブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濃縮して暗赤色油状物を得た。油状物をクロマトグラフィー(アセトニトリル/塩化メチル)にかけた後、粗生成物をジエチルエーテルで粉砕して中間体2 (0.60g、40%)を黄色固体として得た。
【0109】
中間体2に関して:

【0110】
実施例4
本発明の化合物Iの合成

1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(2-フェニルエタノン)としても知られる、先に示す式を有する本発明の化合物Iを以下のように合成した。新たな塩化ベンジルマグネシウム(5.4mmol)溶液に室温でアルデヒド2(1.0g、1.93mmol)の無水テトラヒドロフラン(15ml)溶液を加え、反応混合物をこの温度で12時間攪拌した。反応混合物を飽和塩化アンモニウム溶液上に注ぎ、水層をジエチルエーテルで2回抽出し、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させた。濾過した後、エーテルを蒸発させて黄色油状物を得た。黄色油状物の乾燥塩化メチル(10ml)溶液を乾燥塩化メチル(12ml)中クロロクロム酸ピリジニウム(2.6g、12.1mmol)に加えた。反応混合物を周囲温度で4時間攪拌し、セライトを通じて濾過した。
【0111】
濾液をクロマトグラフィーにかけてメチル化化合物I 0.3g(22%)を得た。メチル化化合物I(120mg、0.17mmol)の無水CH2Cl2 8mL溶液にBBr3溶液0.27mL(0.72g、2.88mmol)を-78℃で滴下した。攪拌を-78℃で1時間、0℃で1時間、および周囲温度で1時間続けた。6M塩酸10mLを含有する氷50グラムを混合物に加え、室温で1時間攪拌した。水層をジクロロメタン(3x30mL)で抽出した。一緒にした有機層を水、ブラインで洗浄し、MgSO4で乾燥させた。溶媒を減圧濃縮し、残渣をC-18カラムクロマトグラフィー(H2O/アセトニトリル)で精製して、化合物cI 80mg(77%)を橙色固体として得た。
【0112】

HPLC純度は99%である。
【0113】
実施例5
本発明の化合物のスペクトル特性
一般構造Aに包含される他の誘導体を合成し、特性決定した。アルデヒド中間体化合物2の処理の際に異なるグリニャール試薬またはリチウム試薬を使用するなどの必要な調節を行って、合成の後に実施例3および4に記載のパターンを得た。化合物のスペクトル特性は以下の通りであった(ローマ数字は本発明の上記化合物に対応している)。
【0114】
化合物III 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(2-メチルプロパン-1-オン)

【0115】
化合物XVIII 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(2,2-ジメチルプロパン-1-オン)

【0116】
化合物IV 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(3-メチルブタン-1-オン)

【0117】
化合物XX 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ジペンタン-1-オン

【0118】
化合物XIX 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(2-メチルブタン-1-オン)

【0119】
化合物VII (1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(フェニルメタノン)

【0120】
化合物XVII (1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(ベンゾ[d]チアゾール-2-イルメタノン)

【0121】
化合物VI (1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(シクロペンチルメタノン)

【0122】
化合物VIII (1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(ナフタレン-1-イルメタノン)

【0123】
化合物V 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(3-エチルヘプタン-1-オン)

【0124】
化合物IX (1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(ビフェニル-4-イルメタノン)

【0125】
化合物X (1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス((4-tert-ブチルフェニル)メタノン)

【0126】
化合物XI (1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス((4-(トリフルオロメチル)フェニル)メタノン)

【0127】
化合物II (3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-1,1',6,6',7,7'-ヘキサオール)

【0128】
化合物XVI 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(3-(4-フルオロフェニル)プロパン-1-オン)

【0129】
化合物XII 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(2-p-トリルエタノン)

【0130】
化合物XV 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(2-シクロヘキシルエタノン)

【0131】
化合物XIII 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(2-(3-ブロモフェニル)エタノン)

【0132】
化合物XIV 1,1'-(1,1',6,6',7,7'-ヘキサヒドロキシ-3,3'-ジメチル-2,2'-ビナフチル-5,5'-ジイル)ビス(2-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)エタノン)

【0133】
本発明のいくつかの化合物は図12に示すように合成することができる(式中、RはCONXまたはCONR1Xであり、ここでRまたはR1はアルキル基、芳香族基または複素環基であり、Xはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリールおよび複素環である)。
【0134】
本発明の化合物に関するさらなるスペクトルデータおよび純度データを表1に要約する。
【0135】
(表1)5,5'置換アポゴシポール誘導体の高分解能質量(HRMS)およびHPLC純度

【0136】
実施例6
NMR実験
各200μM濃度の添加化合物の非存在下および存在下で25μM濃度のBCL-XLの500μL溶液を用いて一次元1H実験を取得することで、NMRに基づく結合アッセイを行った。スペクトルの脂肪族領域を観察することで、Ile、Leu、Thr、ValまたはAlaの活性部位メチル基(-0.8〜0.3ppmの領域)の化学シフトの変化によって結合を容易に検出することができた。4つのrfチャンネルおよびz軸パルスフィールド勾配を備える600MHz分光計Bruker Avance600によりすべての実験を行った。
【0137】
実施例7
蛍光偏光アッセイ(FPA)
Bak BH3ペプチド(F-BakBH3)(GQVGRQLAIIGDDINR)をN-末端でフルオレセインイソチオシアネート(FITC)(Molecular Probes)によって標識し、HPLCで精製した。競合結合アッセイでは、100nM GST-BCL-XL ΔTMタンパク質を、変動する濃度の試験化合物と共に、96ウェルブラックプレート内の47.5μL PBS(pH=7.4)中、室温で10分間プレインキュベートし、次に100nM FITC標識Bak BH3ペプチド2.5μLを加えて50μLの最終体積を生成した。野生型および変異体Bak BH3ペプチドが各アッセイプレートにそれぞれ正の対照および負の対象として含まれた。
【0138】
室温で30分間のインキュベーション後、ミリ偏光単位での偏光値を、マルチラベルプレートリーダー(PerkinElmer)によって480/535nmの励起/発光波長で測定した。S字形用量反応非線形回帰モデル(SigmaPlot 10.0.1、Systat Software, Inc.、米国カリフォルニア州サンノゼ)に実験データをフィッティングすることでIC50を決定した。報告されたデータは、3つの独立した実験の平均値±標準誤差(SE)である。BCL-2およびMcl-1 FPAの性能は同様である。簡潔に言えば、GST-BCL-2またはGST-Mcl-1 50nMを各種濃度のアポゴシポールまたはその5,5'置換誘導体と共に2分間インキュベートした後、15nM FITC抱合Bim BH3ペプチドをPBS緩衝液中に加えた。10分後に蛍光偏光を測定した。
【0139】
実施例8
等温滴定熱量測定アッセイ(ITC)
Microcal(マサチューセッツ州ノーサンプトン)のVP-ITCまたはITC200熱量計を使用して滴定を行った。BCL-XLを20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)および5〜10% DMSO中において25〜100μMの濃度で使用した。滴定液を同一緩衝液中においてタンパク質の10〜15倍の濃度で使用した。滴定を25℃で行った。ITC製造者(Microcal、マサチューセッツ州ノーサンプトン)が提供するMicrocal Originソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0140】
実施例9
細胞生存率アッセイ
ヒトがん細胞系(PC3ML、H460、H1299、RS11846)に対する化合物の活性を、ATP-LITEアッセイ(PerkinElmer)を使用して評価した。5%ウシ胎児血清(Mediatech Inc.)、ペニシリンおよびストレプトマイシン(Omega)を補充した5mM L-グルタミンを有するF12培地またはRPMI1640培地のいずれかにすべての細胞を播種した。維持用に、細胞を5% FBS中で培養した。倍加時間に応じて異なる初期密度で細胞を96ウェルプレートにプレーティングした。H460およびH1299を2000細胞/ウェルで、A549およびPC3を3000細胞/ウェルで、RS118456Sを10,000細胞/ウェルでプレーティングした。化合物を0.1% DMSOで最終濃度に希釈した。化合物を細胞上に分注する前に、新たな5%培地をウェル中に配置した。化合物の投与は、新たな培地に対する播種後24時間に生じた。処理の72時間後、ATP-LITE試薬(PerkinElmer)を使用して細胞生存率を評価した。Prismバージョン5.01(Graphpad Software)を使用してデータをDMSO対照処理細胞に対して基準化した。
【0141】
RS11846細胞に対する化合物のアポトーシス活性を、アネキシンVおよびヨウ化プロピジウム(PI)による染色で評価した。10%ウシ胎児血清(Mediatech Inc.、バージニア州ハーンドン20171)およびペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatech Inc.、バージニア州ハーンドン20171)を含有するRPMI 1640培地(Mediatech Inc.、バージニア州ハーンドン20171)中でリンパ腫細胞系RS11846を培養した。細胞を各種濃度の5,5'置換アポゴシポールと共に1〜2日間培養した。生細胞の割合を、アポトーシス検出キット(BioVision Inc.)を使用するFITC、アネキシンVおよびヨウ化プロピジウム(PI)での標識、ならびにフローサイトメトリー(FACSort; Bectin-Dickinson, Inc.; カリフォルニア州マウンテンビュー)による染色細胞の分析によって決定した。アネキシンV陰性およびPI陰性の細胞を生存可能と見なした。
【0142】
実施例10
インビトロADMET試験
肝ミクロソーム安定性
プールしたラット肝臓ミクロソーム(BD Biosciences、# 452701)を試験化合物と共に、NADPHの非存在下37.5℃で5分間プレインキュベートした。反応をNADPHの添加により開始した後、同一条件下でインキュベートした。最終インキュベーション濃度は、pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中で4μM試験化合物、2mM NADPH、および1mg/mL(全タンパク質)肝ミクロソームとした。インキュベーション混合物の1つのアリコート(100μL)を0分、15分、30分および60分の時点で取り除き、内部標準を含有するACN/MeOH 200μLと直ちに一緒にした。混合後、試料を約13,000rpmで12分間遠心分離した。上澄み液をオートサンプラーバイアルに移し、試験化合物の量をShimadzu LCMS 2010EV質量分析計によって定量化した。時間関数としての親化合物のAUC(曲線下面積)の変化をミクロソーム安定性の尺度として使用した。
【0143】
血漿安定性
試験化合物のDMSO中10mM溶液の20μLアリコートを、ヘパリン処理ラット血漿(Lampire、P1-150N)2.0mLに加えて100μM最終溶液を得た。混合物を37.5℃で1時間インキュベートした。100μLのアリコートを取得し(0、30分、1時間)、内部標準を含有するMeOH 200μLで希釈した。混合後、試料を約13,000rpmで12分間遠心分離した。上澄み液をオートサンプラーバイアルに移し、試験化合物の量をShimadzu LCMS-2010EVシステムによって定量化した。時間関数としての親化合物のAUC(曲線下面積)の変化をミクロソーム安定性の尺度として使用した。
【0144】
実施例11
PAMRAアッセイ
PAMPAとは平行人工膜透過アッセイのことである。96ウェルマイクロタイタープレート(Millipore、# MSSACCEPTOR)を緩衝水溶液(pH7.2)で完全に満たし、マイクロタイターフィルタープレート(Millipore、# MAPBMN310)で覆った。この疎水性フィルター材料をヘキサデカンのヘキサン中10%溶液で含浸させ、有機溶媒を完全に蒸発させた。100μM試験化合物溶液200μLをフィルタープレートの上部に移すことで透過試験を開始した。一般に、pH7.2のリン酸緩衝液を使用した。原液の最大DMSO含有量は5%未満とした。並行して、膜を欠いている平衡溶液を、正確な濃度および仕様を使用し、但し膜を欠いた形で調製した。アクセプターおよび平衡溶液の濃度をShimadzu LCMS-2010EVおよびAUC法を使用して決定した。膜層を通じての化合物の透過は透過パーセンテージ(流動%)によって記述する。8時間後のアクセプター区画の濃度、および膜障壁を含まない同一濃度を有する参照ウェルのそれを考慮して、流動値を計算した。
【0145】
実施例12
トランスジェニックマウス試験
BCL-2を発現するトランスジェニックマウスをB6系と記述した。BCL-2導入遺伝子は、ヒトBCL-2遺伝子が免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子座および関連するIgHエンハンサーと融合している、t(14;18)転座のミニ遺伝子バージョンを表す。導入遺伝子をBalb/cバックグラウンド上で伝播させた。これらのマウスは、約6ヶ月齢で始まる、モノクローナル侵襲性リンパ腫への非同期性の転換を伴うポリクローナルB細胞過形成を発生させ、マウスの約90%が12〜24ヶ月齢までに転換を経験する。ここで使用したすべての動物はまだ侵襲性リンパ腫を発生させていなかった。
【0146】
実施例13
さらなるマウス実験
溶液(エタノール:Cremophor EL:食塩水 = 10:10:80)500μLに溶解させた化合物を、年齢および性別を一致させたB6BCL2マウスに腹腔内注射し、一方、対照マウスには化合物を有さない同一製剤500μLを腹腔内注射した。24時間後、B6BCL2マウスを致死量のアベルチン(Avertin)の腹腔内注射により屠殺した。脾臓を除去し、秤量した。本発明者らは予備試験で、年齢および性別を一致させたBCL-2トランスジェニックマウスにおいて脾臓重量が非常に一致していると決定したため、マウスの脾臓重量を活性評価用のエンドポイントとして使用する。脾臓重量の可変性は、年齢を一致させ、性別を一致させた、対照で処置したB6BCL2マウスの間で±2%以内であった。脾臓組織をz-FIX中で3日間固定し、PBS中ですすぎ、脾臓の組織学的解析(H&E染色およびTUNELアッセイ)用に保存した。
【0147】
実施例14
アポゴシポールとの比較
BCL-XLのBH3結合溝に対するアポゴシポールの分子ドッキング試験(図1C)は、アポゴシポールが、右側のナフタレン環上の隣接する第6および第7のヒドロキシル基を通じて、BCL-XLの残基Arg 139およびTyr 195と共に2つの水素結合を形成することを示唆している。左側のナフタレン環上のイソプロピル基はBCL-XLの第1の疎水性ポケット(P1)に挿入され、一方、右側のナフタレン環上のメチル基およびイソプロピル基は隣接する2つの疎水性ポケットP2およびP3にそれぞれ挿入される。予想される結合モデルの分析は、アポゴシポールの全体的コア構造がBCL-XLのBH3結合溝にかなりよく適合する一方で、2つのイソプロピル基が疎水性ポケットP1およびP3を見かけ上完全には占有していないことを示している。
【0148】
したがって、イソプロピル基をより大きい疎水性置換基で置き換える5,5'置換アポゴシポール誘導体(図1B)のライブラリーを、BCL-XL上の疎水性ポケットをより効率的に占有する可能性がある新規分子を導く目的で設計した。
【0149】
設計した5,5'置換アポゴシポール誘導体を上記のように合成し、表2に示すように核磁気共鳴分光法(NMR)結合アッセイ、競合蛍光偏光アッセイ(FPA)および細胞生存率アッセイによって評価した。
【0150】
(表2)1D 1H-NMR結合アッセイ、競合蛍光偏光アッセイおよび細胞生存率アッセイの組み合わせを使用する5,5'置換アポゴシポール誘導体の評価


a 4点評価尺度: +++: 非常に強い; ++: 強い; +: 中程度; -: 弱い
b ATP-LITEアッセイを使用するRS11846細胞系に対する化合物
c アネキシンVおよびヨウ化プロピジウムアッセイを使用するRS11846細胞系に対する化合物
【0151】
化合物I(図1B)はこれらのアッセイにおいてBCL-XLに対する高い親和性を示した。それはBCL-XLの一次元1H-NMRスペクトル(図2A)において活性部位メチル基(-0.3〜0.8ppmの領域)の著しい化学シフトの変化を誘導した。また、FP置換アッセイにおいて0.19μMのIC50値を有し、これはアポゴシポールの約20倍有効ということである(表2)。
【0152】
化合物XVII、VI、VIII、XI、XVIおよびXIIなどの化合物の群も、FPアッセイにおいてBCL-XLに対する高い結合親和性を示し、IC50値は0.14〜0.45μMの範囲であり、また、BCL-XLの一次元1H-NMRスペクトルの化学シフトの変化を誘導した(表2)。NMR結合データおよびFPアッセイの結果を確認するために、化合物Iおよび他の化合物の結合親和性を、BCL-XLについてITC(等温滴定熱量測定)を使用してさらに評価した(表3)。
【0153】
(表3)BCL-XL、BCL-2およびMcl-1に対する選択した5,5'置換アポゴシポール誘導体の交差活性

【0154】
NMR結合データおよびFPAデータと一致して、化合物Iおよびそのp-メチル置換誘導体化合物XIIがBCL-XLに対する強力な結合親和性を示し、Kd値がそれぞれ0.17μMおよび0.04μMであり、これは同一アッセイでのアポゴシポール(Kd = 1.7μM)より10および40倍強力であったということがわかる。BCL-XLのBH3結合溝における化合物Iの分子ドッキング試験(図1D)では、5,5'ベンジル基がアポゴシポールのイソプロピル基に比べてBCL-XLの疎水性ポケット(P1およびP3)に深く挿入され、したがって効率的にこれらの領域を占有することを示した。
【0155】
NMR結合データ、FPAデータおよびITCデータと一致して、化合物IおよびXIIなどの化合物は、高レベルのBCL-XLを発現するPC3ML細胞における細胞成長を阻害する上で著しい有効性を示す。そのEC50値は1.9〜4.6μMの範囲であり、したがってアポゴシポール(EC50 = 10.3μM)より2〜5倍強力であった。
【0156】
他の抗アポトーシスBCL-2ファミリータンパク質に対する5,5'置換アポゴシポール誘導体の結合特性および特異性を評価するために、選択したBCL-XL活性化合物をBCL-2およびMcl-1に対してFPアッセイを使用して評価した(表3および図2B)。これらのBCL-XL阻害剤もBCL-2およびMcl-1に対する強い結合親和性を示した。化合物IはBCL-2およびMcl-1に結合し、EC50値はそれぞれ0.36μMおよび0.52μMであり、これはアポゴシポール(EC50 = 2.8μM)より約8倍および5倍強力である。化合物XIIは化合物Iよりわずかに活性が低く、一方、化合物VIIIはアポゴシポールのそれと同様の活性を有する。
【0157】
化合物IおよびXIIがFPアッセイにおいてBCL-2およびMcl-1に対する強い結合親和性を示したため、高レベルのBCL-2およびMcl-1をそれぞれ発現させるH460およびH1299細胞系に対してすべての5,5'置換アポゴシポール誘導体をさらに評価した(表2)。FPAデータと一致して、化合物IおよびXIIはH460細胞系の成長を阻害し、EC50値はそれぞれ0.68μMおよび0.82μMであり、これはアポゴシポール(EC50 = 3.4μM)より約4〜5倍強力であった。化合物Iのそれと同様の構造を有する化合物VIIおよびVIIIもH460細胞系の細胞成長を阻害し、EC50値はそれぞれ0.30μMおよび0.59μMであった。また、試験した5,5'置換アポゴシポール誘導体の大部分はH460およびH1299細胞系において強力な細胞活性を示し、EC50値は1〜4μMの範囲であった。
【0158】
対照的に、5,5'位に水素原子のみを有する負の対照化合物である化合物II(表2)は、H460(EC50 = 10.1μM)とH1299(EC50 = 13.4μM)との両方の細胞系において弱い細胞成長阻害活性を示した。このことは5,5'置換された基が強い阻害に必要であることを示している。この観察は、Mcl-1に対して有効ではなく結果的にMcl-1を過剰発現するH1299などの細胞系を死滅させる上で有効ではない強力なBCL-XLアンタゴニストABT-737に関する報告と一致している。
【0159】
5,5'置換アポゴシポール誘導体を、高レベルのBCL-2およびBCL-XLを発現するヒトリンパ腫RS11846細胞系のアポトーシスを誘導するその能力についてさらに試験した。これらのアッセイでは、本発明者らはアネキシンV-FITCおよびヨウ化プロピジウム(PI)の二重染色、それに続くフローサイトメトリー分析を使用した(表2)。合成したアポゴシポール誘導体の大部分は、RS11846細胞系のアポトーシスを有効に用量依存的に誘導した(表2)。特に、化合物I、VIII、XIおよびXIIは3.0〜5.5μMの範囲のEC50値を有しており、これはヒトがんPC3MLおよびH460細胞系における過去の結果と一致している。また、負の対照化合物IIはRS11846細胞系の弱いアポトーシス(EC50 = 24.7)を誘導し、これはその低い抗BCL-2活性と一致していた。
【0160】
5,5'置換アポゴシポール誘導体の薬理学的特性を試験するために、そのインビトロ血漿安定性、ミクロソーム安定性および細胞膜透過性を決定した。結果を表4に示す。
【0161】
(表4)選択した5,5'置換アポゴシポール誘導体の血漿安定性、ミクロソーム安定性および細胞透過性

【0162】
表4で提供されるデータからわかるように、本発明の合成化合物は優れた血漿安定性を示し、全体的にアポゴシポールより安定である。化合物Iはラット血漿中の1時間のインキュベーション後わずか15%しか分解しなかった。さらに、化合物IおよびXIIがアポゴシポールに比べて同様のまたは向上したミクロソーム安定性を示した一方で、化合物VIおよびXVIIIはラット肝細胞ミクロソーム製剤中でアポゴシポールに比べて速やかに分解した。また、化合物IおよびXIIはアポゴシポールに比べて向上した細胞膜透過性を示した。
【0163】
したがって、1D 1H-NMR結合アッセイ、FPアッセイ、ITCアッセイ、細胞毒性アッセイおよび予備的インビトロADMEデータの組み合わせを使用して、化合物IおよびXIIなどの化合物を、B6BCL-2トランスジェニックマウスを使用するさらなるインビボ試験用に選択した。B6BCL-2トランスジェニックマウスのB細胞はBCL-2を過剰発現し、マウスの脾臓に蓄積される。本発明者らは年齢および性別を一致させたBCL-2トランスジェニックマウスにおいて脾臓重量が非常に一致していると決定したため、脾臓重量をインビボ活性評価用のエンドポイントとして使用し、可変性は、年齢を一致させ、性別を一致させた、対照で処置したB6BCL2マウスの間で±2%以内であった。化合物IおよびXIIなどの化合物のインビボ活性を、アポゴシポールおよびゴシポールを用いて、1匹のBCL-2トランスジェニックマウスにおいて60μmol/kgで並列的に最初にスクリーニングした。
【0164】
すべての試験化合物はマウスの著しい脾臓重量の減少を誘導し(図3A)、化合物Iは脾臓重量の40%減少を引き起こすという最高の効率を示した。最大脾臓収縮はこの実験モデルでは50%以下であるものとするため、化合物Iのインビボ効果は60μmol/kgでほぼ最大の生物活性を誘導した。1匹のマウスでの実験からの結果を確認するために、化合物Iのインビボ活性を次に各6匹のマウスの群において評価した。1匹のマウスでの実験と一致して、これらのマウスの化合物Iでの処置によって、6匹のマウスの対照群と比べて脾臓重量が著しく(約40%)減少した(P<0.0001)(図3B)。すべてのマウスはこの処置に十分に耐容性を示し、肉眼での毒性を示さず、最大体重減少は化合物Iの試験中で4%であった。
【0165】
実施例15
全身性エリテマトーデス(SLE)の予防および処置のためのマウスモデル
この実施例では、ニュージーランドブラックxニュージーランドホワイトF1(NZBW)およびMRL/lprマウスモデルにおけるSLEの発生に対するアポゴシポール処置の効果を検査するために提案された試験を例示する。
【0166】
予防試験
2つの遺伝的に多様な系統であるNZB/NZW F1(B6.Sle1.Sle3類遺伝子動物と遺伝的に同様である)およびMRL/lprを3ヶ月齢〜5ヶ月齢、すなわち2ヶ月間の予防試験に供するものとする。マウスを点検して、それが試験の初めに抗核自己抗体に陰性であることを確認する。一例では、各系統の10匹のマウスがアポゴシポールを受け取り、一方、別の10匹の年齢/性別を一致させた雌が媒体を受け取る(「プラセボ群」)。10匹のマウスを最初に試験するが、得られた最初の一組のデータを使用して行う検出力分析の後でこれらの数字を容易に増加できることがある。マウスには1日当たり約0.2μmol/kg〜約1.0μmol/kgを与える。好ましくは、投与経路は経口である。しかし静脈内投与も使用できる。
【0167】
マウスを2週間間隔で血清中自己抗体レベルおよび24時間尿中タンパク質レベルについてモニタリングし、1ヶ月間隔で全血球数、白血球の数および活性化状態についてモニタリングする(フローサイトメトリーを使用)。試験の終わりに、すべてのマウスをクレアチニン/BUNレベル、脾臓白血球の数および活性化状態、ならびにその腎臓における糸球体病変および間質性病変の組織学的重症度についても検査する。統計分析を行って、アポゴシポールで処置したマウスが著しく減少した自己抗体、および白血球の数/活性化(一次的評価項目)、または腎疾患(二次的評価項目)を有するか否かを決定する。最後に、両方の試験群からの流動選別した白血球の集合をBCL-2、BCL-xL、AKT、mTOR、Erk1,2、p38、CDK1/2およびNFkBのリン酸化状態について検査することで、BCL-2遮断がループスにおける他の活性化過剰シグナル伝達経路も弱めるか否かを確認する。
【0168】
処置試験
同じ2つの遺伝的に多様な系統であるNZB/NZW F1およびMRL/lprを、5ヶ月齢(それが抗核自己抗体に陽性でありかつタンパク尿症になる時点)から7ヶ月齢まで、すなわち2ヶ月間処置試験に供するものとする。各系統の20匹のマウスがアポゴシポールを受け取り、一方、別の20匹の年齢/性別を一致させた雌が媒体を受け取る(「プラセボ群」)。マウスには1日当たり約0.2μmol/kg〜約1.0μmol/kgを与える。投与経路は経口であり得る。しかし静脈内投与も使用できる。すべてのマウスを試験して、それが試験の初めに抗核自己抗体に陽性であることを確認する。一例では、10匹のマウスを処置期間の直後に屠殺して脾臓白血球の数/活性化について検査し、一方、各群の残り10匹のマウスを死まで追跡する(死亡率に対するアポゴシポールの影響を確認するため)。
【0169】
マウスを2週間間隔で血清中自己抗体レベルおよび24時間尿中タンパク質レベルについてモニタリングし、1ヶ月間隔で全血球数、白血球の数および活性化状態についてモニタリングする(フローサイトメトリーを使用)。試験の終わりに、すべてのマウスをクレアチニン/BUNレベル、脾臓白血球の数および活性化状態、ならびにその腎臓における糸球体病変および間質性病変の組織学的重症度についても検査する。統計分析を行って、アポゴシポールで処置したマウスが著しく減少した自己抗体、死亡率、および白血球の数/活性化(一次的評価項目)、または腎疾患(二次的評価項目)を有するか否かを決定する。最後に、両方の試験群からの流動選別した白血球の集合をBCL-2、BCL-xL、AKT、mTOR、Erk1,2、p38、CDK1/2およびNFkBのリン酸化状態について検査することで、BCL-2遮断がループスにおける他の活性化過剰シグナル伝達経路も弱めるか否かを確認する。
【0170】
追跡試験は以下を含む: 選択したループスチェックポイントに対するBCL-2遮断の影響の評価、アポゴシポールと他の慣行的な薬物との併用が副作用の減少と共に治療有効性の改善をもたらす可能性があるか否かの評価、アポゴシポールによる全身性免疫抑制のレベルの評価、およびヒトループスにおけるBCL-2ファミリーメンバー活性化のレベルの評価。
【0171】
実施例16
多発性硬化症のマウスモデルにおける実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の予防
この実施例では、多発性硬化症のマウスモデルにおける活動性と受動性との両方のEAEの発生に対するアポゴシポール処置の効果を検査するために提案された試験を例示する。
【0172】
実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)は、T細胞が媒介する中枢神経系(CNS)の自己免疫疾患である。CNSミエリン抗原での免疫化によってマウスの感受性系統において疾患を誘導することができ、あるいは、SJL/Jマウスなどの感受性マウスに抗原刺激CD4+ T細胞を使用して疾患を受動的に移すことができる(Pettinelli, J. Immunol. 127, 1981, p. 1420)。EAEは、霊長類における多発性硬化症の許容される動物モデルとして広く認識されている(Alvord et al. (eds.) 1984. Experimental allergic encephalomyelitis--A useful model for multiple sclerosis. Alan R. Liss, New York)。
【0173】
予防試験
雌のSJL/Jマウスを7〜10週齢で、すなわち2ヶ月間予防試験に供するものとする。一例では、10匹のマウスがアポゴシポールを受け取り、一方、別の10匹の年齢/性別を一致させた雌が媒体を受け取る(「プラセボ群」)。10匹のマウスを最初に試験するが、得られた最初の一組のデータを使用して行う検出力分析の後でこれらの数字を容易に増加できることがある。マウスには1日当たり約0.2μmol/kg〜約1.0μmol/kgを与える。投与経路は経口である。しかし静脈内投与も使用できる。
【0174】
a) 活動性EAE
活動性EAEは、Racke et al., J. Neuroimmunol., Vol 46:175-184, (1993)に記載の手順に従って、雌SJL/Jマウスを例えば完全フロイントアジュバント(「CFA」)中のマウス脊髄ホモジネート(「MSCH」)約800μgによって0日目および7日目に免疫化することで誘導するものとする。
【0175】
b) 受動性EAE
受動性EAEは、以下のようにミエリン塩基性タンパク質(「MBP」)感作Tリンパ球の養子移入によって誘導するものとする: 雌SJL/Jマウス(4〜6週齢)をCFA中のMBP 400μgで0日目および7日目に免疫化した。14日目に流入領域リンパ節細胞および脾臓を収集し、培養した。細胞は、例えば10%ウシ胎児血清(Hyclone Labs、ユタ州ローガン)、2mM L-グルタミン(Gibco、メリーランド州ゲイサーズバーグ)、5 x 10-5 M 2-メルカプトエタノール(Gibco、メリーランド州ゲイサーズバーグ)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Gibco、メリーランド州ゲイサーズバーグ)およびMBP 100μg/mlを含有するRPMI 1640(Gibco、メリーランド州ゲイサーズバーグ)において、約4 x 106細胞/ウェルで培養する。4日後、生存T細胞芽球を収集し、洗浄し、レシピエントマウスに腹腔内注射する(PBS 500μl中1 x 107〜1.5 x 107細胞)。
【0176】
このマウスをEAEの臨床徴候について1日間隔でモニタリングし、0〜3のスケールで以下のようにスコアリングする: 0.5--末端の尾の引きずり; 1.0--完全な尾の引きずり; 1.5--尾の引きずりおよび後肢の脱力(不安定歩行); 2.0--部分的な後肢麻痺; 3.0--完全な両側後肢麻痺。試験の終わりに、すべてのマウスを脊髄のリンパ球浸潤および脱髄についても検査する。統計分析を行って、アポゴシポールで処置したマウスが著しく減少した疾患の重症度、炎症および/または脱髄を有するか否かを決定する。
【0177】
実施例17
NOD/SCIDマウスモデルにおける糖尿病の予防および処置
この実施例は、糖尿病を予防または処置するアポゴシポールの能力を試験するために提案されたNOD/SCIDマウスモデルの使用を一般的に例示する。
【0178】
非肥満性糖尿病(NOD)マウスは自己免疫疾患、この場合はインスリン依存性糖尿病(IDDM)のモデルであり、その主な臨床的特徴は血中グルコースレベルの上昇(高血糖症)である。血中グルコースレベルの上昇は、膵臓のランゲルハンス島におけるインスリン産生β細胞の免疫媒介性の破壊により引き起こされる。この破壊は、CD4+およびCD8+ Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージおよび樹状細胞からなる不均一混合物により島を包囲しかつ島に浸透する広範な細胞浸潤(膵島炎)を伴う。
【0179】
炎症のNODマウスモデルは既に一般的に記載された。雌NODマウスはIDDM様疾患を自発的に発生させ、約12〜14週齢で膵臓におけるβ細胞の破壊およびグルコースの尿中への溢流が始まる。NOD膵臓の典型的な長期の組織学的検査は、3〜4週齢で血管を包囲する浸潤細胞を示すが、島は典型的には6〜7週で依然として明らかである。次に浸潤細胞は島に到達し、それを包囲するかまたは一極に蓄積されるかのいずれかである。10〜12週に、浸潤細胞は島に浸透し、島はリンパ球で膨潤する。これらのマウスにおいて糖尿病の発症を検出する最も容易かつ信頼できる方法は、血中グルコースレベルを試験することである。
【0180】
糖尿病を、Abbott Medisense Precision Q.I.D.グルコース計を例えば使用する静脈血の測定によって評価し、また糖尿についてモニタリングする(Gluketur Test; Boehringer Mannheim、ドイツ・マンハイム)ことができる。13.75mmol/l(250mg/dl)を超える2つの連続したグルコース測定値の後で動物を糖尿病であると考える。糖尿病発生の日付は1回目の連続読み取りからとする。33mmol/lを超える持続性高血糖症の場合に、長期の不快感を回避するために動物を屠殺する。
【0181】
予防試験
NOD/LtJマウス(Jackson Laboratories)を約8〜10週齢で、すなわち2ヶ月間予防試験に供するものとする。マウスを点検して、それが試験の初めにIDDM様疾患の症状に陰性であることを確認する。一例では、10匹がアポゴシポールを受け取り、一方、別の10匹の年齢/性別を一致させた雌が媒体を受け取る(「プラセボ群」)。10匹のマウスを最初に試験するが、得られた最初の一組のデータを使用して行う検出力分析の後でこれらの数字を容易に増加できることがある。マウスには1日当たり約0.2μmol/kg〜約1.0μmol/kgを与える。投与経路は経口であり得るものであり、静脈内投与も使用できる。
【0182】
マウスを1日間隔で血中グルコースレベルならびに24時間尿中タンパク質およびグルコースレベルについてモニタリングし、1ヶ月間隔で全血球数、白血球の数および活性化状態についてモニタリングする(フローサイトメトリーを使用)。試験の終わりに、すべてのマウスを膵臓中のインスリンレベル、CD4+およびCD8+ Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージおよび樹状細胞の存在、ならびに膵臓の一般的形態についても検査する。統計分析を行って、アポゴシポールで処置したマウスが著しく遅延した糖尿病の発症を有するか否かを決定する。
【0183】
処置試験
NOD/LtJマウスを約10〜12週齢で始まる処置試験に供するものとする。20匹のマウスがアポゴシポールを受け取り、一方、別の20匹の年齢/性別を一致させた雌が媒体を受け取る(「プラセボ群」)。マウスには1日当たり約0.2μmol/kg〜約1.0μmol/kgを与える。投与経路は経口であり、静脈内投与も使用できる。すべてのマウスを試験して、それが試験の初めにIDDM様疾患に陽性である(すなわち、約13.75mmol/l(250mg/dl)を超える2つの連続したグルコース測定値)ことを確認する。一例では、10匹のマウスを処置期間の直後に屠殺して膵臓の形態および膵臓中のリンパ球の存在について検査し、一方、各群の残り10匹のマウスを死まで追跡する(死亡率に対するアポゴシポールの影響を確認するため)。
【0184】
マウスを1日間隔で血中グルコースレベルならびに24時間尿中タンパク質およびグルコースレベルについてモニタリングし、1ヶ月間隔で全血球数、白血球の数および活性化状態についてモニタリングする(フローサイトメトリーを使用)。試験の終わりに、すべてのマウスを膵臓中のインスリンレベル、CD4+およびCD8+ Tリンパ球、Bリンパ球、マクロファージおよび樹状細胞の存在、ならびに膵臓の一般的形態についても検査する。統計分析を行って、アポゴシポールで処置したマウスが著しく減少した血中グルコースレベル、尿中グルコースレベルおよび死亡率、ならびに白血球の数/活性化を有するか否かを決定する。
【0185】
追跡試験は以下を含む: 選択したIDDM様疾患チェックポイントに対するBCL2遮断の影響の評価、アポゴシポールと他の慣行的な薬物との併用が副作用の減少と共に治療有効性の改善をもたらす可能性があるか否かの評価、アポゴシポールによる全身性免疫抑制のレベルの評価、およびヒト糖尿病におけるBCL2ファミリーメンバー活性化のレベルの評価。
【0186】
実施例18
BCL-2トランスジェニックマウスにおけるアポゴシポールの活性および毒性の研究
毒性および有効性の試験をマウスにおいて行ってゴシポールおよびアポゴシポールを比較した。1日経口用量0.12mmol/kgでは、ゴシポールで処置したBalb/cマウスの死亡率%は第3週の終わりまでに100%になった。ゴシポールで処置したマウスは、以下の毒性を発生させた: 胃腸毒性(部分的麻痺性イレウス)、血液学的毒性(リンパ球減少症)、肝毒性(ALTおよびASTの血清中レベルの上昇)、体重減少および心毒性。ゴシポールで処置したマウスの死因は心不全であった。
【0187】
図5Aおよび5Bはゴシポール対アポゴシポールの毒性プロファイルをさらに図示する。図5Aは若い健康なBalb/cマウス(7週齢雌、群当たりマウス6匹)の生存%を示す。マウスにアポゴシポール、ゴシポールまたは媒体対照を1日量0.12mmol/kg、1日1回5日間で3週間経口投与した。ゴシポールでの処置の第3週の終わりまでに生存%が0まで低下した一方、アポゴシポールまたは媒体対照で処置した群では生存%は依然として高かった。
【0188】
図5Bは、アポゴシポール、ゴシポールまたは媒体対照による1日量0.12mmol/kg、1日1回5日間で3週間の処置の期間全体を通じてモニタリングした体重の変化を図示する。データはグラムで表す(平均値±標準偏差)。
【0189】
図5Aおよび5Bが提供するデータからわかるように、すべてのこれらの分類においてアポゴシポールはゴシポールより毒性が低く、アポゴシポールは処置期間全体を通じてE.C.G.パターンのいかなる異常な変化も誘導しなかった。ゴシポールで処置したマウスが嗜眠性になり、毛が汚らしくなった一方、アポゴシポールまたは媒体対照で処置したマウスは処置期間全体を通じて依然として活動的かつ見かけが健康的であり、体重減少がなかった。アポゴシポールで処置したマウスおよび媒体対照マウス(ゴマ油中アスコルビン酸0.12mmol/kg)は、2本の電極を使用して、MP150 Biopacシステム(第3の電極 = 接地電極)の使用によって正常なE.C.G.パターンを明らかにした。さらに、アポゴシポールで処置したマウスおよび媒体対照マウスが超音波イメージングシネマ(300フレーム)において正常な便通を示した一方、処置過程全体において体重減少は見られなかった。アポゴシポールで処置した6匹のマウスのうち1匹が処置18日目に死んだことがわかった。このマウスは死の前日まで見かけ上健康であり、死因は現時点では不明である。
【0190】
SCLC H146細胞系を移植したヌードマウスはアポゴシポールに対して1日経口用量0.24mmol/kgで十分に耐容性を示し(致死率なしおよび重量減少なし)、アポゴシポールの抗腫瘍効果が示された。アスコルビン酸で安定化したアポゴシポールは、光の有無にかかわらず窒素ガスまたは空気下4℃または室温で貯蔵した場合、2.5週間安定であった。
【0191】
毒性
アポゴシポールがゴシポールより毒性が低いことを決定した。ゴシポールおよびアポゴシポールの毒性を正常な雌Balb/cマウスにおいて比較した。予備的最大耐用量(MTD)試験は、経口送達であれ腹腔内注射による送達であれ、アポゴシポールがゴシポールより毒性が低いことを示唆した。以前のNCI後援の試験では、毎日0.06mmol/kgで最大21日間経口投与した際にラセミゴシポールおよび(-)ゴシポールが非致死性でありかつ抗腫瘍活性を示すことを決定した。したがって、経口投与したゴシポールおよびアポゴシポールをこの用量の2倍で比較し、動物に0.12mmol/kgを投与した。アスコルビン酸を対照として使用した。これは、アポゴシポールをこの弱酸によって1:1のモル比で調剤することが、この化合物に貯蔵安定性を与えるためである。化合物または媒体対照を3週間にわたって15回投与し、連続5日間(月曜日〜金曜日)毎日化合物を与え、週末は休薬した。
【0192】
BCL-2トランスジェニックマウス
BCL-2を発現するトランスジェニックマウスをB6系と記述した。BCL-2導入遺伝子は、ヒトBCL-2遺伝子が免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子座および関連するIgHエンハンサーと融合している、t(14;18)転座のミニ遺伝子バージョンを表す。導入遺伝子をBalb/cバックグラウンド上で伝播させた。
【0193】
患者検体
CLL患者からの末梢血単核細胞(PBMC)をCLL Research Consortium(CRC)組織バンク(カリフォルニア州サンジエゴ)から得た。インフォームドコンセントを得た後で血液試料を回収した。Histopaque 1077 (Sigma、ミズーリ州セントルイス63178)を使用する密度勾配遠心分離によってPBMCを単離した。すべての患者はCLL診断用のNCI IWCLL基準に適合した。フローサイトメトリーで評価したところ、使用した試料は95%を超えるCD19およびCD5に陽性の細胞を含んでいた。10%ウシ胎児血清(FBS)(HyClone、ユタ州ローガン84321またはMediatech Inc.、バージニア州ハーンドン20171)を含有するRPMI培地中でCLL試料を、5% CO2:95%空気中37℃で培養した。
【0194】
ゴシポールおよびアポゴシポールの調製および調剤
アポゴシポール(NSC736630)をアスコルビン酸と1:1のモル比で共結晶化させた。ゴシポール(NSC19048)を酢酸形態で凍結乾燥させた。いずれの化合物もNCI-DTP(RAIDプログラム)により提供した。経口投与の直前に化合物を100%ゴマ油に溶解させた。媒体対照は、100%ゴマ油に懸濁した対応する濃度のアスコルビン酸から構成された。
【0195】
マウス実験
ゴシポールおよびアポゴシポールを、マウスに毎日0.06mmol/kgまたは0.12mmol/kgの用量で直針型経口栄養針(18G-3''直針2.25mm球、Braintree Scientific, Inc.)を使用して経口投与した。投与体積は10ml/kg、すなわち典型的にはマウス20gm当たり0.2mLとした。試験開始時に7〜8週齢の正常Balb/cマウスを毒性試験に使用した一方、6ヶ月齢を超えるBalb/cバックグラウンドのBCL-2トランスジェニックマウスを有効性試験に使用した。連続5日間(月曜日〜金曜日)連日投与した後、2日間休薬し、その後投与を再開するというレジメンを使用して、年齢を一致させ、性別を一致させたマウスに週5回典型的に投与した。BCL-2トランスジェニックマウスでは、超音波イメージング(Visualsonics)によって毎週、およびデジタルキャリパーを使用する身体検査によって、脾臓サイズを長期的にモニタリングした。処置の終わりに、マウスをアベルチン0.7mlの腹腔内(i.p.)注射によって屠殺し、全血を上部が黄色の血清分離管(Becton Dickinson Vacutainer Systems Becton Dickinson and Company、ニュージャージー州フランクリンレイクス07417-1885)中に回収した。脾臓を除去し、秤量した。
【0196】
血液学試験
全血(250μl)を、EDTAでコーティングしたガラス管(上部紫色; EDTA付きのMICROTAINERブランド管、カタログ#365973、Becton, Dickinson and Company、ニュージャージー州07417-1885)に、麻酔マウスの心臓穿刺または上腕動脈切断のいずれかを通じて回収した。十分な混合の後、白血球数(WBC)、赤血球数(RBC)、血小板(PLT)数、白血球百分率(リンパ球%、単球%および顆粒球%を含む)、ヘマトクリット(Ht)およびヘモグロビン(Hb)を測定するVetScan HM2(Abaxis Inc.、カリフォルニア州ユニオンシティ94587)血液学分析計を使用して、検体を分析した。
【0197】
図6A〜6Cはアポゴシポールまたはゴシポールで処置したマウスの血液学的プロファイルを図示する。マウスにアポゴシポール、ゴシポールまたは媒体対照を1日量0.12mmol/kg、1日1回5日間で3週間経口投与した(群当たりマウス6匹)。媒体対照もしくはアポゴシポールでの治療の終わりまたはゴシポールで処置したマウスの死の時点で、自動HM2血液学分析計(Abaxis Inc.、カリフォルニア州ユニオンシティ94587)の使用によって血液学的プロファイルを分析した。
【0198】
図6AはWBC(左側パネル)およびRBC(右側パネル)を示す。WBCおよびRBCのいずれもゴシポールおよびアポゴシポールによる処置に影響されなかったことがわかる。図6Bはヘモグロビン(Hb)のデータ(左側パネル)およびヘマトクリット(Ht)のデータ(右側パネル)を示す。HbおよびHtのいずれもゴシポールおよびアポゴシポールによる処置に影響されなかったことがわかる。最後に、図2Cはリンパ球数のデータ(左側パネル)および血小板数のデータ(右側パネル)を与える。ゴシポールがリンパ球減少症を誘導した一方、アポゴシポールがBalb/cマウスにおいてリンパ球減少症を誘導しなかったということがわかる。
【0199】
血清化学
約500μlの全血をガラス管(黄色上部; MICROTAINERブランド、血清分離管、カタログ#365956、Becton Dickinson and Company、フランクリンレイクス07417-1885)に回収し、氷上で30分間保持した後、12,000r.p.m.(Eppendorf遠心分離機5415C)で2分間遠心分離して、細胞およびフィブリンクロットから血清を分離した。得られた血清検体を自動血液化学分析計(「COBAS MIRA Classic」; Roche、インディアナ州インディアナポリス46250-0414)によって分析して、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、血液尿素窒素(BUN)およびクレアチンを測定した。
【0200】
図7は、アポゴシポールまたはゴシポールで処置したマウスの代表的血液化学プロファイルを例示する実験データを提供する。マウスにアポゴシポール、ゴシポールまたは媒体対照を1日量0.12mmol/kg、1日1回5日間で3週間経口投与した(群当たりマウス6匹)。ゴシポールがALTの血清中レベルの上昇を誘導し、またアポゴシポールがゴシポールより肝毒性が低いということがわかる。
【0201】
超音波イメージング
検査した胃腸をまた、胃腸毒性の徴候である拡張を証明するために超音波でイメージングした。簡潔に言えば、マウスをイソフルラン(isofluorane)(5%)と酸素ガス(95%)との混合物によって麻酔し、Aquagel潤滑ゲル(Parker Laboratories, Inc.、ニュージャージー州フェアフィールド07004)によって加熱テーブル上に拘束し、腹部の毛を化学脱毛剤(Nair(商標)脱毛剤、Church & Dwight Co., Inc.、ニュージャージー州プリンストン08543)によって除去した。Aquasonic 100超音波透過ゲル(Parker Laboratories, Inc.、ニュージャージー州フェアフィールド07004)を腹部に適用した後、高周波プローブを使用してイメージングを行ってガスおよび腸の膨張を評価した。
【0202】
心毒性
超音波イメージングの直後、MP150 Biopackシステムを使用して麻酔マウスの心電図(ECG)分析を行った。
【0203】
組織学
肝臓、腎臓、脾臓、心臓、胃、小腸、大腸および肺を含む生命器官をz-FIX溶液(企業?)中で3日間固定し、リン酸緩衝食塩水(PBS)[pH7.4]で3回すすぎ、次にパラフィンブロックに埋め込んだ。薄切片を切断し(0.5um)、ヘマトキシリン-エオシン(H&E)で染色し、組織学的異常について光学顕微鏡によって評価した。さらに、アポトーシスを示すDNA断片化を有する細胞を染色するための末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ末端標識(TUNEL)法によって染色されていない切片を分析した。
【0204】
脾細胞単離
脾臓を屠殺マウスから切除し、細胞懸濁液をマウス赤血球溶解キット(R & D Systems)で処理した。全脾細胞数を、血球計数器を使用するトリパンブルー色素排除アッセイによって決定した。Bリンパ球の割合を、フィコエリトリン(PE)抱合抗CD19または抗B220抗体(Becton Dickinson、カリフォルニア州サンノゼ95131)による細胞の染色に続く蛍光活性化細胞選別機(FACS)分析(FACS-CANTO、Bectin-Dickinson Inc.、カリフォルニア州マウンテンビュー)によって決定した。
【0205】
細胞培養および細胞毒性試験
10%ウシ胎児血清(Mediatech Inc.、バージニア州ハーンドン20171)およびペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatech Inc.、バージニア州ハーンドン20171)を含有するRPMI 1640培地(Mediatech Inc.、バージニア州ハーンドン20171)中に脾細胞を1 x 106細胞/mLで懸濁させた。10%ウシ胎児血清(Mediatech Inc.、バージニア州ハーンドン20171)およびペニシリン/ストレプトマイシン(Mediatech Inc.、バージニア州ハーンドン20171)を含有するRPMI 1640培地(Mediatech Inc.、バージニア州ハーンドン20171)中でヒトB-CLL細胞、ならびにRS11846、DOHH2および380細胞を含む3つのB-NHL細胞系を培養した。細胞を各種濃度のゴシポール、アポゴシポールまたはアスコルビン酸と共に1〜2日間培養した。生細胞の割合を、アポトーシス検出キット(BioVision Inc.)を使用するアネキシンVおよびヨウ化プロピジウム(PI)での標識、フローサイトメトリー(FACSort; Bectin-Dickinson, Inc.; カリフォルニア州マウンテンビュー)による染色細胞の分析によって決定した。アネキシンV陰性およびPI陰性の細胞を生存可能と見なした。
【0206】
図8は、アポゴシポールおよびゴシポールによる、DOHH2、RS11846および380を含むNHL B細胞系のアポトーシス誘導の比較を例示する実験データを提供する。DOHH2、RS11846および380を含むNHL B細胞系を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するRPMI培地中で48時間、図に示す各種濃度のゴシポールおよびアポゴシポールの非存在下および存在下で培養した。
【0207】
48時間のインキュベーション後、アネキシンV-FITC/PIアポトーシス検出キット(BioVision Inc.)の使用による細胞の染色後に生存率%をFACSortにより決定した。生細胞をアネキシンV陰性、PI陰性の細胞によって定義した。DOHH2およびRS11846細胞系がインビトロでゴシポールおよびアポゴシポールに対してわずかに感受性がより高く、IC50が約3μMであった一方、380細胞系はゴシポールおよびアポゴシポールに対してわずかに耐性がより高かった。3つのNHL B-リンパ腫細胞系すべてにおいて、アポゴシポールはゴシポールよりわずかに強力であったが、その効力はほぼ同等であった。
【0208】
図9は、トランスジェニックマウスからの培養マウスB細胞に対するゴシポールおよびアポゴシポールの活性のBCL-2対BCL-2/TRAF2DNでの比較を例示する実験データを提供する。脾臓組織をBCL-2トランスジェニックマウスおよびBCL-2/TRAF2DNマウスから除去し、脾細胞を、製造者のマニュアルに従ったマウス赤血球溶解キット(R & D Systems)の使用により単離した。
【0209】
脾細胞を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するRPMI培地中で18時間、図に示す各種濃度のゴシポールおよびアポゴシポールの非存在下および存在下で培養した。18時間のインキュベーション後、アネキシンV-FITC/PIアポトーシス検出キット(BioVision Inc.)の使用による細胞の染色後に脾細胞の生存率%をFACSortにより決定した。生細胞をアネキシンV陰性、PI陰性の細胞によって定義した。BCL-2トランスジェニックマウスにおいて、培養B細胞に対してアポトーシスを誘導する上でアポゴシポールはゴシポールより数倍強力であり、IC50はアポゴシポールでは1〜2μMであったのに対し、ゴシポールでは10μMであった。対照的に、Bcl-2/TRAF2DNマウスからのマウスB細胞は、Bcl-2トランスジェニックマウスの約10倍アポゴシポールとゴシポールとの両方に対して耐性が高かった。
【0210】
図10は、アポゴシポールおよびゴシポールによる培養CLL B細胞のアポトーシスの誘導の比較を例示する実験データを提供する。CLL試料を、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するRPMI培地中、37℃および5% CO2で48時間、図に示す各種濃度のゴシポールまたはアポゴシポールの非存在下および存在下でインキュベートした。
【0211】
48時間の培養後、アネキシンV-FITC/PIアポトーシス検出キット(BioVision Inc.)の使用による細胞の染色後に生存率%をFACSortにより決定した。生細胞をアネキシンV陰性、PI陰性の細胞によって定義した。インビトロでの培養CLL B細胞に対してアポゴシポールはゴシポールより約3倍強力であった。二方向ANOVA分析によるアポゴシポール群とゴシポール群との間のアポトーシス誘導における著しい差異が存在した(p < 0.025)。
【0212】
図11Aおよび11BはBcl-2トランスジェニックマウスにおけるアポゴシポール活性を例示する実験データを提供する。図11Aは低用量試験(0.06mmol/kg)の結果を示し、図11Bは高用量試験(0.12mmol/kg)の結果を示す。年齢を一致させ、性別を一致させたBCL-2トランスジェニックマウスを有効性試験に使用した。BCL-2トランスジェニックマウスは、脾腫によって時間関数として特徴づけられる低悪性度B細胞リンパ腫を自発的に発生させた。In BCL-2トランスジェニックマウスにおいて、疾患の進行は2段階に分けることができる。第1段階では、B6マウスにおける過剰発現BCL-2による脾臓中のB細胞の増殖の結果としての脾腫によって疾患が特徴づけられ、第2段階では、別の遺伝子ヒットが襲うことで、かさ高いリンパ節腫脹および脾腫によって特徴づけられる播種性リンパ腫が生じることがある。
【0213】
この試験では、第1段階のBCL-2トランスジェニックマウスをこの有効性試験に使用した。未処置のBCL-2トランスジェニックマウスを用いる別個の試験では、脾臓の湿重量は195mg〜335mgの範囲であり、年齢を一致させ、性別を一致させたBCL-2トランスジェニックマウスにおいて脾臓の湿重量はほぼ同等であることがわかった。アスコルビン酸によって1:1のモル比で安定化させたアポゴシポール、アスコルビン酸によって1:1のモル比で安定化させたゴシポール、および媒体対照(100%ゴマ油中アスコルビン酸)をBCL-2トランスジェニックマウスに1日1回(1日1回5日間)3週間連続的に経口投与した。処置の終わりに、BCL-2トランスジェニックマウスをアベルチン(麻酔液)0.7mlの腹腔内注射を通じて屠殺し、脾臓を除去し、秤量した。マウス赤血球溶解キット(RD Systems)の使用によって脾細胞を単離した。全脾細胞数をトリパンブルー排除アッセイによって決定した。B細胞マーカーであるCD-5で細胞を染色した後、B細胞数%をFACS分析により決定した。代表的データを図11Aおよび11Bに示す。
【0214】
図11Aからわかるように、0.06mmol/kgの低用量で、ゴシポールおよびアポゴシポールはいずれも十分に耐容され、また、脾臓の湿重量および脾臓のB細胞数の減少が証明するように脾腫の収縮を誘導した。アポゴシポールが著しい程度まで脾臓の収縮を誘導した(脾臓の湿重量についてp < 0.03、脾臓のB細胞数についてP < 0.05)一方、ゴシポールはかなりの程度まで、但し著しいほどではなく、脾臓の収縮を誘導した。
【0215】
図11Bからわかるように、0.12mmol/kgの高用量でゴシポールがBCL-2トランスジェニックマウスにおいて耐容されなかった一方、0.12mmol/kgの高用量でアポゴシポールはBcl-2トランスジェニックマウスにおいて十分に耐容された。アポゴシポールは著しい程度まで脾腫の収縮を誘導した(脾臓の湿重量についてp < 0.001、脾臓のB細胞数についてP < 0.0001)。年齢を一致させ、性別を一致させたBCL-2トランスジェニックマウスを、アポゴシポール治療の終了後に脾臓の収縮について評価し、1日量0.12mmol/kgで脾臓のサイズは約半分に減少した。
【0216】
実施例19
ヒト腫瘍細胞に対する化合物の細胞毒性活性の評価
この実施例はヒト腫瘍細胞に対するゴシポールの有効性を例示する。ヒト腫瘍細胞に対する化合物の細胞毒性活性を評価するために、2つの乳がん細胞系: MCF7(BCL-2/BCL-XLの高発現体)およびZR75-l(BCL-2/BCL-xLの低発現体)を用いるXTT色素還元アッセイを使用してその生物活性を試験した。ゴシポールはMCF7およびZR75-l細胞の細胞毒性薬であり、細胞生存率を用量依存的に減少させ、IC50値はそれぞれ13.2μMおよび8.4μMである。しかし、プルプロガリンは、潜在的にはその疎水性(ClogP - 0.7)が理由で、これらのアッセイにおいて認識可能な活性を示さなかった。
【0217】
この観察と一致して、より優れた細胞膜透過性を有すると予想される(約2.5というそのClogPに基づいて)プルプロガリン誘導体5Dlは、細胞生存率を用量依存的に減少させ、ZR75-l細胞系(示さず)のIC50値は約50μMであった。したがって、化合物取り込みの選択性がより低いことが知られているHeLa細胞において、化合物の細胞活性を評価した。HeLa細胞生存率アッセイで得た阻害データは、BCL-XLでのインビトロ結合データに対応しており、相関係数はr = 0.9(p = 0.001)である。
【0218】
Bakペプチドとの複合体に見られるBCL-XL高次構造を使用してSybyl(TRIPOS)において実行したFlexXソフトウェア(Kramer et al., Proteins, 37:228 (1999))によるドッキング試験は、複合体においてBakヘリックスBH3ペプチドが通常は占有する深い疎水性の間隙におけるゴシポールの最適な位置を示した。ゴシポールの(+)と(-)との両方の立体異性体をドッキングした。これは、以前の細胞に基づくアッセイにおいてこれらが異なる活性を示したためであり、このアッセイでは細胞毒性薬として(-)ゴシポールが(+)ゴシポールより10倍有効であることが示された。スコアリング関数により測定した適合度、およびSybylのDOCKルーチンによる最小化後の分子間エネルギーは、これらの観察と一致して、(-)ゴシポール(-32.7Kcal/mol)が(+)ゴシポール(-25Kcal/mol)に対してかなり優れていた。ゴシポールの両方の立体異性体の全体的な位置取りは非常に類似している。
【0219】
蛍光偏光アッセイ(FP A)
LJL Analyst HT(Molecular Devices Co.、カリフォルニア州サニーベール)を使用して、フルオレセイン標識Badペプチド(NL W AAQRYGRELRRMSD-K(FITC)-FVD)(Synpep Corporation、カリフォルニア州ダブリン)によってFP Aアッセイを行った。すべての貯蔵物および試料の希釈緩衝液を50μM Tris-Bis(pH7.4、0.01%ウシγグロブリン)とした。希釈緩衝液中のゴシポールの一連の2倍希釈液、すなわち100μM、50μMから0.1μMの希釈液を調製した。30nM BCL-XLおよび4nMフルオレセイン化ペプチドを含有する溶液を各管に加えた。管を室温で5分間インキュベートし、反応混合物各20μlを96ウェルブラックPS, HEマイクロプレート(LJL Biosystems Co)に移した。すべてのアッセイを四つ組で行い、ブランクウェルはゴシポールを受け取らなかった。次に、プレートを全強度について読み取り、偏光(mP単位)を測定した。対照は、化合物とFITC-BH3ペプチドとの間の任意の相互作用を評価するための、タンパク質の非存在下での用量反応測定を含んでいた。最終的な効果を減算によって考慮に入れた。
【0220】
NMR分光測定
BCL-XLの2D [15N,1H]-TROSYスペクトルを15N標識BCL-XLの0.5mM試料によって測定した。15N標識および非標識BCL-XLを公知の方法に従って調製および精製した。化学シフトマッピングおよびドッキング試験では、BCL-XLとBakペプチド(PDBコード1BXL)との複合体の三次元構造を使用した。標識タンパク質による化学シフトマッピングに加えて、T1p測定、およびWaterLOGSY実験などの飽和移動実験も行って、BCL-XLに対する試験化合物の結合をさらに実証した。
【0221】
いずれも4つのrfチャンネルおよびz軸パルスフィールド勾配を備える500MHz Varian Unity+分光計または600MHz Bruker Avance600分光計によりすべての実験を行った。選択的水飽和を、遅延10ミリ秒の間隔を空けた一連の持続時間7ミリ秒の選択的IBURP2パルスによって行った。使用した全飽和時間は2.5秒であった。一連のT1pを可変長のスピンロックパルスによって測定した。次に、測定を1ミリ秒、10ミリ秒、50ミリ秒、150ミリ秒、200ミリ秒、250ミリ秒および300ミリ秒のスピンロック時間および100μM化合物によって、10μMタンパク質の非存在下および存在下で行った。すべての実験において、残留水シグナルの位相緩和をWATERGATE配列によって得た。
【0222】
分子モデリング
分子モデリング試験を、ソフトウェアパッケージSybylバージョン6.9(TRIPOS)を備えたいくつかのR12000 SGI Octaneワークステーション上で行った。ゴシポールのドッキング構造を、Sybylにおいて実行したFlexXによって最初に得た。2回の計算を行った。1回目ではすべての結合部位のねじれ角を固定したままにした一方、2回目では側鎖のねじれ角を自由に変化できるようにした。30個の最適解の平均スコアリング関数は、側鎖を自由に回転できるようにした場合よりほんのわずかに小さかった。モデルにおける側鎖の位置は初期値より実質的に変化しなかった。(+)ゴシポールのスコアリング関数は(-)ゴシポールより小さかったが、両方の立体異性体の全体的な位置取りは非常に類似していた。
【0223】
続いて、得られた最適スコアリング構造を、部位を強固に保持するSYBYLのルーチンDOCKの使用によりエネルギー最小化した。DOCK最小化後のリガンドのエネルギーは、エネルギーのそのグローバルミニマムから5Kcal/molの範囲内であった。化合物の重ね合わせをSYBYLのルーチンMULTIFITによって得た。三次元構造を示す色図形をプログラムSYBYLおよびMOLMOLによりプレップした。
【0224】
がん細胞生存に対する化合物の阻害効果
培養中の腫瘍細胞の生存率に対する化合物の効果を、MCF7およびZR75-1細胞系によるXTTアッセイの使用によってモニタリングした。l0-10Mインスリン、1mMピルビン酸ナトリウムおよびグルタミンを補充した、10%ウシ胎児血清、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM中で、MCF7細胞を成長させた。HEPES緩衝液、1mMピルビン酸ナトリウムおよびグルタミンを補充した、10%ウシ胎児血清、ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するnRPMI中で、ZR75-1細胞を成長させた。細胞をマイコプラズマ混入について定期的に試験した。ウェル当たり1,000細胞の初期細胞密度で細胞を三つ組で播種した。ブランクウェルは細胞を受け取らなかった。
【0225】
ゴシポール、プルプロガリンおよび5D1を最終濃度0、1、10および100μMで加え、3日間インキュベートした。生細胞の相対数をXTTアッセイによって決定した。簡潔に言えば、96ウェルプレート中に、本発明者らは、0.025mM PMS(フェナジンメトサルフェート)を含有する1mg/mlのXTT(2,3-ビス(2-メトキシ-4-ニトロ-5-スルホフェニル)-5-[(フェニルアミノ)カルボニル]-2H-テトラゾリウムヒドロキシド)(Polysciences、ペンシルベニア州ワシントン)の混合物50μlを各ウェルに加えた。96ウェルプレートをさらに4時間再インキュベートしてXTTホルマザン産生を可能にした。次に、各プレートの内容物を混合し、光学濃度を波長450nmで決定した(OD450)。ブランクウェルのOD450を減算後、正味OD450を決定した。低継代HeLa細胞(継代数10〜20)にpcDNA3-BCL-XLまたは対照pcDNA3プラスミドを、Lipofectamine Plus試薬(Invitrogen)を使用して形質移入し、800μg/mlのG4l8を含有する培地中でそれを選択した。BCL-XLの免疫ブロット分析を既に記載のように実施した。HeLa形質移入体を各種用量のゴシポール、プルプロガリンおよびその誘導体(0、1、3、10および100μM)で処理した。
【0226】
化学薬品
純粋なポリフェノールをSIGMA(ゴシポールおよびプルプロガリン)ならびに/またはMicrosource Discovery Systems(プルプロガリン誘導体)から得た。参照化合物をChembridge Corp.(サンジエゴ)から得た。ゴシポールを(+)および(-)異性体のラセミ混合物として試験した。化合物をDMSO中に100mM濃度で溶解させ、-20DCで貯蔵した。結合および置換アッセイ用にさらに希釈する前に、NMR分析を化合物について品質管理として定期的に行った。ゴシポールの反応性を15N標識試験タンパク質(XIAPのBIR3ドメイン)によって試験した。1mMゴシポールおよび200μM N標識BIR3を含有する溶液を2時間インキュベートし、[15N,1H]相関スペクトルを記録し、apo-Bir3のスペクトルと比較した。スペクトルの認識可能な差異は観察されなかった。結果を表5に要約する。
【0227】
(表5)プルプロガリン誘導体の構造-活性関係(SAR)

【0228】
上記の例を参照して本発明を説明してきたが、本発明の精神および範囲内で変形および変更が包含されるものと理解される。したがって、本発明は下記の特許請求の範囲によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造Aを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物:

式中、各RはH、C(O)X、C(O)NHX、NH(CO)X、SO2NHXおよびNHSO2Xからなる群より独立して選択され、ここでXはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリールおよび複素環からなる群より選択される。
【請求項2】
Xがアルキルアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xがベンジルである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
化合物I〜XXIIからなる群より選択される、請求項1記載の化合物:










【請求項5】
化合物Iである、請求項4記載の化合物:


【請求項6】
化合物XXIである、請求項4記載の化合物:


【請求項7】
化合物XXIIである、請求項4記載の化合物:


【請求項8】
疾患または障害を処置するための方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の請求項1記載の化合物もしくはその組み合わせ、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物を投与することにより疾患または状態を処置する段階を含む、方法。
【請求項9】
疾患または障害ががんである、請求項6記載の方法。
【請求項10】
がんが肺がん、乳がん、前立腺がんおよびリンパ腫からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項11】
処置が少なくとも1つのBCL-2ファミリータンパク質の活性の阻害を含む、請求項6記載の方法。
【請求項12】
化合物を抗がん剤との組み合わせで投与する段階を含む、請求項6記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの上昇したBCL-2ファミリータンパク質発現レベルを有する対象においてがんまたは自己免疫疾患を処置する方法であって、対象に治療有効量の請求項1記載の化合物もしくはその組み合わせ、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物を投与する段階を含む、方法。
【請求項14】
対象における少なくとも1つのBCL-2ファミリータンパク質のレベルを決定すること、および正常対照試料と比較することを含む、化合物を利用する治療に対象が応答するか否かを決定する段階をさらに含み、レベルの上昇が、化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物を利用する治療に応答する対象を示す、請求項13記載の方法。
【請求項15】
決定が対象からの試料に基づいて行われる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
対象における少なくとも1つのBCL-2ファミリータンパク質のレベルを決定する段階、および正常対照試料と比較する段階を含む、請求項1記載の化合物もしくはその組み合わせ、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物を利用する治療に対象が応答するか否かを決定する方法であって、レベルの上昇が、化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物を利用する治療に応答する対象を示す、方法。
【請求項17】
決定が対象からの試料に基づいて行われる、請求項15記載の方法。
【請求項18】
試料が生体液または腫瘍試料である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
BCL-2ファミリーポリヌクレオチドまたはポリペプチドがBCL-2、BCL-XL、BCL-W、MCL-1およびBCL-A1より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項20】
対照細胞におけるレベルより大きい少なくとも1つのBCL-2ファミリータンパク質メンバーのレベルを有する細胞においてアポトーシスを誘導する方法であって、細胞に有効量の請求項1記載の化合物もしくはその組み合わせ、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物を投与することにより、細胞においてBCL-2ファミリータンパク質のレベルを減少させかつアポトーシスを誘導する段階を含む、方法。
【請求項21】
細胞ががん細胞である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
がんが肺がん、乳がん、前立腺がんおよびリンパ腫からなる群より選択される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
細胞が免疫系の細胞である、請求項20記載の方法。
【請求項24】
化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物による処置の前および途中に対象の細胞中のBCL-2ファミリータンパク質のレベルを比較する段階を含む、対象における請求項1記載の化合物もしくはその組み合わせ、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物の投与を含む治療レジメンの有効性を決定する方法であって、BCL-2ファミリータンパク質のレベルの低下が、化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物を利用する治療の有効性を示す、方法。
【請求項25】
対象ががんを有する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
がんが肺がん、乳がん、前立腺がんおよびリンパ腫からなる群より選択される、請求項25記載の方法。
【請求項27】
対象が自己免疫障害を有する、請求項24記載の方法。
【請求項28】
対象における炎症を処置する方法であって、処置を必要とする対象に治療有効量の構造Bを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物を投与することにより炎症を減少させる段階を含む、方法:

式中、R6、R8、R9およびR10の各々は水素、ヒドロキシル、-(C1〜C6)アルキル、-O(C1〜C6)アルキル、-(C1〜C6)アルキルハロ、-OC(O)(C1〜C6)アルキルおよびハロからなる群より独立して選択され、各R7は水素、-(C1〜C6)アルキル、-(C3〜C8)シクロアルキル、-(C6〜C10)アリールおよび-(C1〜C6)アルキル(C6〜C10)アリール、C(O)X、C(O)NHX、NH(CO)X、SO2NHXならびにNHSO2Xからなる群より独立して選択され、ここでXはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリールおよび複素環からなる群より選択される。
【請求項29】
化合物がアポゴシポールである、請求項28記載の方法。
【請求項30】
化合物が(+)アポゴシポールを実質的に含まない(-)アポゴシポールである、請求項28記載の方法。
【請求項31】
R6、R8、R9およびR10の各々が水素、-OH、-OCH3、-CF3、-CH3、-OC2H5、-OC(O)CH3、F、ClおよびBrからなる群より独立して選択される、請求項28記載の方法。
【請求項32】
各R7が水素、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびシクロヘキシルからなる群より独立して選択される、請求項28記載の方法。
【請求項33】
各R10が水素、-OH、-OCH3、-CF3、-CH3、-OC2H5、-OC(O)CH3、F、ClおよびBrからなる群より独立して選択される、請求項28記載の方法。
【請求項34】
各R6、R8およびR9が-OC(O)CH3であり、各R7がイソプロピルであり; 各R10が-CH3である、請求項28記載の方法。
【請求項35】
化合物がアポゴシポールのプロドラッグである、請求項28記載の方法。
【請求項36】
化合物が化合物XXIである、請求項28記載の方法:


【請求項37】
化合物が化合物XXIIである、請求項28記載の方法:


【請求項38】
対象がエリテマトーデス、乾癬、乾癬性関節炎、ループス腎炎、関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、ITP、TTP、グレーブス病、橋本甲状腺炎、クローン病、自己免疫性溶血性貧血、インスリン依存性糖尿病、糸球体腎炎、リウマチ熱、変形性関節症、痛風性関節炎、皮膚炎、気管支炎、鼻炎、喘息、シェーグレン症候群、髄膜炎、副腎白質ジストロフィー、CNS血管炎、ミトコンドリアミオパチー、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病および腫瘍からなる群より選択される状態に罹患している、請求項28記載の方法。
【請求項39】
ミトコンドリアミオパチーがMELAS症候群、MERF症候群、レーバー病、ウェルニッケ脳症、レット症候群、ホモシスチン尿症、高プロリン血症、非ケトーシス型高グリシン血症、ヒドロキシ酪酸アミノ酸尿症(hydroxybutyric aminoaciduria)、亜硫酸オキシダーゼ欠損症および複合系統病(B12欠乏症)からなる群より選択される、請求項38記載の方法。
【請求項40】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を投与する段階をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項41】
対象における炎症を処置する方法であって、そのような処置を必要とする対象にゴシポール、アポゴシポール、L-アポゴシポール、アポゴシポール誘導体、テアフラビン、テアフラビン-3'-ガラート、テアフラバニン(theaflavanin)、(-)ガロカテキン-3-ガラート(GCG)、(-)エピガロカテキン-3-ガラート(EGCG)、(-)カテキン-3-ガラート(CG)、(-)エピカテキン-3-ガラート(ECG)、プルプロガリン誘導体からなる群より選択される抗炎症薬を投与することにより炎症を処置する段階を含む、方法。
【請求項42】
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)を投与する段階をさらに含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
化合物がアポゴシポールである、請求項41記載の方法。
【請求項44】
化合物が(+)アポゴシポールを実質的に含まない(-)アポゴシポールである、請求項41記載の方法。
【請求項45】
アポゴシポール誘導体が構造Bを有する化合物、または薬学的に許容されるその塩、水和物、N-酸化物もしくは溶媒和物である、請求項41記載の方法:

式中、R6、R8、R9およびR10の各々は水素、ヒドロキシル、-(C1〜C6)アルキル、-O(C1〜C6)アルキル、-(C1〜C6)アルキルハロ、-OC(O)(C1〜C6)アルキルおよびハロからなる群より独立して選択され、各R7は水素、-(C1〜C6)アルキル、-(C3〜C8)シクロアルキル、-(C6〜C10)アリールおよび-(C1〜C6)アルキル(C6〜C10)アリール、C(O)X、C(O)NHX、NH(CO)X、SO2NHXならびにNHSO2Xからなる群より独立して選択され、ここでXはアルキル、置換アルキル、アリール、置換アリール、アルキルアリールおよび複素環からなる群より選択される。
【請求項46】
R6、R8、R9およびR10の各々が水素、-OH、-OCH3、-CF3、-CH3、-OC2H5、-OC(O)CH3、F、ClおよびBrからなる群より独立して選択される、請求項45記載の方法。
【請求項47】
各R7が水素、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、sec-ブチルおよびシクロヘキシルからなる群より独立して選択される、請求項45記載の方法。
【請求項48】
各R6、R8およびR9が-OC(O)CH3であり、各R7がイソプロピルであり; 各R10が-CH3である、請求項45記載の方法。
【請求項49】
アポゴシポール誘導体が化合物XXIである、請求項45記載の方法:


【請求項50】
アポゴシポール誘導体が化合物XXIIである、請求項45記載の方法:


【請求項51】
誘導体が5Dl、1163および1142からなる群より選択されるプルプロガリン誘導体である、請求項45記載の方法。
【請求項52】
炎症がエリテマトーデス、乾癬、乾癬性関節炎、ループス腎炎、関節リウマチ、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、ITP、TTP、グレーブス病、橋本甲状腺炎、クローン病、自己免疫性溶血性貧血、インスリン依存性糖尿病、糸球体腎炎、リウマチ熱、変形性関節症、痛風性関節炎、皮膚炎、気管支炎、鼻炎、喘息、シェーグレン症候群、髄膜炎、副腎白質ジストロフィー、CNS血管炎、ミトコンドリアミオパチー、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病および腫瘍からなる群より選択される状態に関連する炎症である、請求項41記載の方法。
【請求項53】
ミトコンドリアミオパチーがMELAS症候群、MERF症候群、レーバー病、ウェルニッケ脳症、レット症候群、ホモシスチン尿症、高プロリン血症、非ケトーシス型高グリシン血症、ヒドロキシ酪酸アミノ酸尿症、亜硫酸オキシダーゼ欠損症および複合系統病(B12欠乏症)からなる群より選択される、請求項52記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公表番号】特表2011−502963(P2011−502963A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530164(P2010−530164)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/080386
【国際公開番号】WO2009/052443
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(510027043)バーンハム インスティテュート フォー メディカル リサーチ (6)
【Fターム(参考)】