説明

抗アルファ2インテグリン抗体及びそれらの使用

本発明は、α2β1インテグリンに特異的な抗体及びそれらの使用に関し、ヒト化抗アルファ2(α2)インテグリン抗体及び抗α2インテグリン抗体を用いた処置方法を含む。より具体的には、本発明は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域及び変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含み、変更されたエフェクター機能を示すヒト化抗α2インテグリン抗体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、α2β1インテグリンに特異的な抗体及びそれらの使用に関し、これには、ヒト化抗アルファ2(α2)インテグリン抗体及び抗α2インテグリン抗体を用いた処置方法が含まれる。より具体的には、本発明は、変化したエフェクター機能を示す、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域、及び変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むヒト化抗α2インテグリン抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インテグリンα2β1(最晩期抗原2;VLA−2)は、血小板、血管内皮細胞、上皮細胞、活性化単球/マクロファージ、線維芽細胞、白血球、リンパ球、活性化好中球及びマスト細胞を含む様々な細胞型において発現される(非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4)。最も典型的なα2β1のリガンドとしてはコラーゲン及びラミニンが挙げられ、これらは両方とも細胞外マトリックスで見られる。典型的には、α2インテグリンのI−ドメインは二価カチオン依存性の様式でコラーゲンに結合するが、同じドメインは二価カチオン依存性及び非依存性の機構の両方によりラミニンに結合する。(非特許文献4) α2β1インテグリンの特異性は細胞型によって変わり、そして特定の細胞型にたいしてはコラーゲン及び/又はラミニン受容体として作用し、例えばα2β1インテグリンは血小板についてはコラーゲン受容体として、そして内皮細胞についてはラミニン受容体として知られる。(非特許文献5) エコーウイルス−1、デコリン、E−カドヘリン、マトリックスメタロプロテイナーゼI(MMP−I)、エンドレペリン(endorepellin)及び複数のコレクチン(multiple collectins)並びに補体C1qタンパク質もまたα2β1インテグリンのリガンドである。(非特許文献6) α2β1インテグリンはいくつかの生物学的及び病的過程に関与しており、これらとしては、コラーゲン誘発血小板凝集、コラーゲンでの細胞遊走、コラーゲン線維の細胞依存性再構成、さらにはサイトカイン発現及び増殖の増加を生じるコラーゲン依存性細胞応答、(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9)、T細胞、マスト細胞及び好中球の機能の局面(非特許文献10;非特許文献11、非特許文献3、非特許文献12)、遅延型過敏症(hyersensitivity)、接触過敏症及びコラーゲン誘発関節炎(非特許文献13;非特許文献14)、乳腺管形態形成(非特許文献15;非特許文献16)、表皮創傷治癒(非特許文献17)、並びにVEGF誘発新脈管形成に関連する過程(非特許文献18)が挙げられる。
【0003】
インテグリン/リガンド相互作用は、白血球の炎症組織への管外遊出を促進し得(非特許文献19;非特許文献20、非特許文献21)、そして炎症性の刺激に応じた白血球の循環から組織への初期の管外遊出後の下流事象(炎症部位における炎症促進性細胞の遊走、動員及び活性化を含む)において役割を果たし得る(非特許文献22)。α2β1インテグリンを遮断するいくつかの抗体は、遅延型過敏症応答に対する影響並びに関節リウマチのマウスモデル及び炎症性腸疾患モデルにおける有効性を示すと報告され(非特許文献14;非特許文献13)、そしてインビトロで内皮細胞増殖及び遊走を減衰させることが報告され(非特許文献18)、α2β1インテグリンの遮断が、種々のがんにおいて観察される異常な又は通常よりも高い新脈管形成を予防/抑制し得るということを示唆した。
【0004】
α2β1インテグリン(血小板上のα2β1インテグリンを含む)に結合する治療的抗体は出血の合併症を生じ得ると予測される。例えば、GPIb(非特許文献23)又はGP IIb/IIIa(非特許文献24、非特許文献25、非特許文献26)のような他の血小板受容体を標的とする抗体は血小板減少症を伴うが、この背後にある機構は十分に理解されていない。血小板受容体への抗体の結合はその三次元構造を変更し得、そして通常は露出していないエピトープを露出させ、次いでこれが血小板の排出をもたらすという仮説が立てられている(非特許文献26)。実際に、GP IIa/IIIbアンタゴニストの経口投与に伴う出血の合併症は、このクラスの化合物の「影の側面」として記載されている(非特許文献27)。α2β1インテグリンが炎症組織を通る白血球の移動において重要な役割を果たす場合、がん、炎症性疾患及び自己免疫疾患を含む、疾患、α2β1インテグリン関連障害及び/又はこれらの障害に関連する細胞プロセスのためのα2β1を標的とし得る治療薬を開発することが、このような薬剤が血小板を活性化しない場合は望ましい。白血球上のα2β1インテグリンのようなα2β1インテグリンを標的とし得る、有害な出血合併症を伴わないヒト化抗体が特許文献1に記載される。そこに記載されるヒト化抗α2インテグリン抗体は抗α2抗体の新規なサブグループを代表し、これらは予期せずインビボ出血合併症がないこと及び/又は血小板α2β1インテグリン活性化がないことを特徴とする。しかし特許文献1において開示されるIgG4抗体はADCC及び/又はCDCのようなエフェクター機能を有しておらず、この機能は特定の状況、例えばがんのようなα2β1インテグリン関連障害の処置のためには望ましく、この場合、この機能は処置の増加した有効性をもたらす。従って、これらのエフェクター機能を高度に示す抗α2β1インテグリン抗体を開発することが望ましいだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2007/056858
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Hemler、Annu Rev Immunol 8:365:365−400(1999)
【非特許文献2】Wu and Santoro、Dev.Dyn.206:169−171(1994)
【非特許文献3】Edelson et.al.、Blood.103(6):2214−20(2004)
【非特許文献4】Dickeson et al、Cell Adhesion and Communication.5:273−281(1998)
【非特許文献5】Dickeson et al、J Biol.Chem.272:7661−7668(1997)
【非特許文献6】Edelson et al.、Blood 107(1):143−50(2006)
【非特許文献7】Gendron、J.Biol.Chem.278:48633−48643(2003)
【非特許文献8】Andreasen et al.、J.Immunol.171:2804−2811(2003)
【非特許文献9】Rao et al.、J.Immunol.165(9):4935−40(2000)
【非特許文献10】Chan et.al.、J.Immunol.147:398−404(1991)
【非特許文献11】Dustin and de Fougerolles、Curr Opin Immunol 13:286−290(2001)
【非特許文献12】Werr et al.、Blood 95:1804−1809(2000)
【非特許文献13】de Fougerolles et.al.、J.Clin.Invest.105:721− 720(2000)
【非特許文献14】Kriegelstein et al.、J.Clin.Invest.110(12):1773−82(2002)
【非特許文献15】Keely et.al.、J.Cell Sci.108:595−607(1995)
【非特許文献16】Zutter et al.、Am.J.Pathol.155(3):927−940(1995)
【非特許文献17】Pilcher et.al.、J.Biol.Chem.272:181457−54(1997)
【非特許文献18】Senger et al.、Am.J.Pathol.160(1):195−204(2002)
【非特許文献19】Jackson et al.、J.Med.Chem.40:3359−3368(1997)
【非特許文献20】Gadek et al.、Science 295(5557):1086−9(2002)
【非特許文献21】Sircar et al.、Bioorg.Med.Chem.10:2051−2066(2002)
【非特許文献22】Eble J.A.、Curr.Phar.Des.11(7):867−880(2005)
【非特許文献23】Vanhoorelbeke et al.、Curr.Drug Targets Cardiovasc. Haematol.Disord.3(2):125−40(2003)
【非特許文献24】Schell et al.、Ann.Hematol.81:76−79(2002)
【非特許文献25】Nieswandt and Watson、Blood 102(2):449−461(2003)
【非特許文献26】Merlini et al.、Circulation 109:2203−2206(2004)
【非特許文献27】Bhatt and Topol、Nat.Rev.Drug Discov.2(1):15−28(2003)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域及び変異ヒトIgG1重鎖定常ドメイン(heavy constant domain)を含むヒト化抗α2インテグリン抗体を提供するが、該変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体のヒトIgG1重鎖定常領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、該抗体は親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して変化したエフェクター機能を示す。
【0008】
本発明はさらに、上述のヒト化抗α2β1インテグリン抗体をコードする単離された核酸を提供する。
【0009】
本発明はさらに、上述の核酸を含むベクターを提供する。
【0010】
本発明はさらに、上述の核酸又は上述のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0011】
本発明はさらに、上述のヒト化抗α2インテグリン抗体及び薬学的に許容しうる担体を含む組成物を提供する。
【0012】
本発明はさらに、上述のヒト化抗α2インテグリン又は上述の組成物、及び2β1インテグリン関連障害の処置のための指示書を含むキットを提供する。
【0013】
本発明はさらに、対象者においてα2β1インテグリン関連障害を処置する方法を提供し、該方法は、対象者に治療有効量の上述の抗α2インテグリン抗体又は上述の組成物を投与することを含む。
【0014】
本発明はさらに、コラーゲンに対する白血球の結合を阻害するための方法を提供し、該方法は、コラーゲンに対する白血球の結合を阻害するために有効な量の、上述の抗α2β1インテグリン抗体又は上述の組成物を対象者に投与することを含む。
【0015】
本発明はさらに、上述のヒト化抗α2インテグリン抗体又は上述の組成物の、薬剤としての使用を提供する。
【0016】
本発明はさらに、α2β1インテグリン関連障害の処置のための、上述のヒト化抗α2インテグリン抗体又は上述の組成物の使用を提供する。
【0017】
本発明はさらに、α2β1インテグリン関連障害の処置のための方法における使用のための、上述のヒト化抗α2インテグリン抗体又は上述の組成物を提供する。
【0018】
本発明はさらに、α2β1インテグリン関連障害の処置のための薬剤の製造のための、上述のヒト化抗α2インテグリン抗体又は上述の組成物の使用を提供する。
【0019】
本発明はさらに、親抗体のアミノ酸位置324におけるセリンをアスパラギンと置き換えるアミノ酸置換S324Nを含む変異ヒトIgG Fc領域を含む抗体を提供するが、該抗体は、親抗体と比較して改善された補体依存性細胞傷害(CDC)及び改善された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】選択された抗VLA2抗体変異体の細胞ベースのCDCアッセイを示す:(1)抗VLA2 IgG4;(2)抗VLA2 IgG1;(3)抗VLA2 IgG2;(4)抗VLA2 IgG3;(5)抗VLA2 IgG1133;(6)抗VLA2 IgG3133;(7)抗VLA2 IgG1−S324N;(8)抗VLA2 IgG1−S298A、(9)抗VLA2 IgG1−E269D;(10)抗VLA2 IgG1−E269D/S298A/S324N;(11)抗VLA2 IgG1−S298A/S324N;(12)IgG1コントロール;(13)ネガティブコントロール−抗体無し。
【図2】最終濃度0.1μg/mlでの選択された抗VLA2抗体変異体の細胞ベースのADCCアッセイを示す。(1)抗VLA2 IgG4;(2)抗VLA2 IgG1;(3)抗VLA2 IgG2;(4)抗VLA2 IgG3;(5)抗VLA2 IgG1133;(6)抗VLA2 IgG3133;(7)抗VLA2 IgG1−S324N;(8)抗VLA2 IgG1−S298A、(9)抗VLA2 IgG1−E269D;(10)抗VLA2 IgG1−E269D/S298A/S324N;(11)抗VLA2 IgG1−S298A/S324N;(12)IgG1コントロール;(13)ネガティブコントロール−抗体無し。
【図3】選択された抗VLA2抗体変異体の最終濃度0.01μg/mlでの細胞ベースのADCCアッセイを示す。(1)抗VLA2 IgG4;(2)抗VLA2 IgG1;(3)抗VLA2 IgG2;(4)抗VLA2 IgG3;(5)抗VLA2 IgG1133;(6)抗VLA2 IgG3133;(7)抗VLA2 IgG1−S324N;(8)抗VLA2 IgG1−S298A、(9)抗VLA2 IgG1−E269D;(10)抗VLA2 IgG1−E269D/S298A/S324N;(11)抗VLA2 IgG1−S298A/S324N;(12)IgG1コントロール;(13)ネガティブコントロール−抗体無し。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本発明は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して変化したエフェクター機能を示すヒト化抗α2インテグリン抗体に関する。
【0022】
α2β1インテグリンは、アルファインテグリンファミリーからのα2インテグリンサブユニット、及びベータインテグリンファミリーからのβ1インテグリンサブユニットから構成される分子であり、そして哺乳動物を含むいずれの対象者由来でもよいが、好ましくはヒト由来である。α2β1インテグリンは、いずれかの天然供給源から精製されてもよく、合成的に製造されてもよい(例えば、組み換えDNA技術の使用により)。α2インテグリン及びβ1インテグリンについての配列をコードする核酸は、それぞれTakada and Hemler J.Cell Biol.109(1):397−407(1989;GenBank寄託X17033;その後エントリーNM 002203に更新)及びArgraves、W.S、J.Cell.Biol.Sep 105(3):1183−90(1987;Genbank寄託X07979.1及び選択的スプライシングされた変異体を表す関連する配列)に記載される。
【0023】
α2β1インテグリン分子の「I」ドメインは、α2サブユニット内のこのα2β1インテグリン分子の領域を指し、そして例えばKamata et al.、J Biol.Chem.269:9659−9663(1994);Emsley et al.、J.Biol.Chem.272:28512(1997)及びCell 101:47(2000)に記載される。α2インテグリンのIドメインは、MIDAS型のリガンド結合部位(金属イオン依存性接着部位(etal on ependent dhesion ite))を含み、これはリガンド結合を支持するための所定の二価カチオンに対する要件及び特異性を有する。
【0024】
α2インテグリン関連障害には、標的組織内で異常な細胞応答を媒介するα2インテグリン依存性のプロセス/機能(例えば、結合、活性)を含む障害、疾患又は状態が含まれる。疾患に含まれるα2インテグリン依存性プロセスの例としては、サイトカイン発現及び増殖における増加に関与するようなコラーゲン依存性細胞応答、T細胞機能、マスト細胞機能及び好中球機能の局面、炎症性障害、乳腺管形態形成、表皮創傷治癒、並びに新脈管形成が挙げられる。α2インテグリン関連障害の例としては、限定されないが、炎症性腸疾患(例えばクローン病及び潰瘍性大腸炎)を含むがこれらに限定されない炎症性疾患、移植に対する反応(移植拒絶反応を含む)、視神経炎、脊髄外傷、関節リウマチ、多発性硬化症(それに伴う神経系続発症の処置、さらには再発を特徴とする多発性硬化症の処置を含む)、自己免疫疾患又は障害(全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病、レイノー症候群(Reynaud's syndrome)、実験的自己免疫性脳脊髄炎、シェーグレン症候群(Sjorgen's syndrome)、強皮症を含む)、若年型糖尿病、及び異常な血管新生又は通常よりも増加した血管新生を伴う障害(例えば糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、心血管疾患、乾癬、関節リウマチ及びがん)、さらには炎症反応を誘発する感染症が挙げられる。
【0025】
α2β1インテグリン関連障害の処置は、本明細書に記載される抗α2インテグリン抗体の治療的使用及び予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)使用の両方を含む。処置を必要とする者には、障害と既に診断された者に加えて、障害の発生を予防又は遅延させようとする者が含まれる。
【0026】
用語「抗α2インテグリン抗体」又は「α2に結合する抗体」又は「α2インテグリンサブユニットに結合する抗体」又は「抗VLA−2抗体」は、本明細書において同意語として使用され、そしてヒトα2インテグリンに結合する抗体、例えば固定化α2β1に50nM又はそれ以下、好ましくは10nM又はそれ以下、より好ましくは1nM又はそれ以下、特に0.5nM又はそれ以下の親和性(Kd)で結合する抗体、好ましくはヒト化IgG抗体を含む。
【0027】
本明細書において同意語として使用される用語「親ヒト化抗α2インテグリン抗体」又は「親抗α2インテグリン抗体」又は「親抗VLA−2抗体」は、ヒトα2インテグリンに結合する抗体、例えば変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むように改変され得るヒト化IgG1抗α2インテグリン抗体を意味する。親ヒト化抗α2インテグリン抗体は、ヒトIgG1重鎖定常領域におけるアミノ酸修飾を除いて、変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含む抗体と同一であり、通常は天然ヒトIgG1重鎖定常領域を有する抗体である。アミノ酸修飾は、好ましくはアイソタイプではない。
【0028】
用語「抗体」又は「免疫グロブリン」は最も広い意味で使用され、そしてそれらが望ましい生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、及び多特異的抗体を網羅する。抗体又は免疫グロブリンという用語は、全長抗体、さらには抗原結合特性を有する(すなわちα2インテグリンに結合する)そのフラグメントも含む。用語「抗体」には、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質、又はその抗原結合フラグメントが含まれる。各重鎖は重鎖可変領域(本明細書においてVHと略される)及び重鎖定常領域から構成される。重鎖定常領域は3つのドメイン、CHI、CH2及びCH3から構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略される)及び軽鎖定常領域(本明細書においてCLと略される)から構成される。軽鎖定常領域は1つのドメインから構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR又はFW)と呼ばれるより保存的な領域に組み入れられている、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。VH及びVLはそれぞれ3つのCDR及び4つのFRから構成され、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの宿主組織又は因子(免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第一成分(C1q)を含む)への結合を媒介し得る。
【0029】
本明細書で使用される用語「全長抗体」は、可変領域及び定常領域を含む、抗体の天然の生物学的形態を構成する構造を含む。例えば、ヒト及びマウスを含む大部分の哺乳動物において、IgGクラスの全長抗体は四量体であり、そして2つの免疫グロブリン鎖の2つの同一の対からなり、各対は1つの軽鎖及び1つの重鎖を有し、各軽鎖は免疫グロブリンドメインVL及びCLを含み、そして各重鎖は免疫グロブリンドメインVH、CH1(C[ガンマ]1)、CH2(C[ガンマ]2)、及びCH3(C[ガンマ]3)を含む。いくつかの哺乳動物において、例えばラクダ及びラマにおいて、IgG抗体は2つの重鎖のみからなるものであってもよく、各重鎖はFc領域に結合した可変ドメインを含む。
【0030】
本明細書で使用される用語「キメラ抗体」は、可変領域配列が1つの種に由来し、かつ定常領域配列が別の種に由来するものである抗体、例えば可変領域配列がマウス抗体に由来し、そして定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を含む。
【0031】
本明細書で使用される用語「ヒト化抗体」は、別の哺乳動物種(例えばマウス)の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体を含む。さらなるフレームワーク領域の修飾は、ヒトフレームワーク配列内、さらには別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列内で作製され得る。
【0032】
本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、フレームワーク領域及びCDR領域の両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を含む。さらに、抗体が定常領域を含む場合、その定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列由来である。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含んでいてもよい(例えば、インビトロでのランダム又は部位特異的変異誘発により、又はインビボでの体細胞変異により導入された変異)。しかし、本明細書で使用される用語「ヒト抗体」は、別の哺乳動物種(例えばマウス)の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体を含むことを意図されない。
【0033】
モノクローナル抗体は、実質的に均質な抗体の集団(例えばその集団を含む個々の抗体が、少量で存在し得る可能性のある天然に存在する変異を除けば同一である)から得られた抗体を含む。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して向けられたものである。さらに、典型的に抗原上の異なる決定基(例えばエピトープ)に対するものである異なる抗体を含む従来の(例えばポリクローナル)抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の少なくとも単一の決定基に向けられたものである。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られた抗体の特徴を示し、そしていずれかの特定の方法による抗体の製造を必要とするとは解釈されるべきではない。例えば、モノクローナル抗体は、Kohler et al.、Nature 256:495(1975)により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製され得、又は組み換えDNA法により作製され得る(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)。モノクローナル抗体はまた、例えばClackson et al.、Nature 352:624−628(1991)及びMarks et al.、J.Mol.Biol.222:581−597(1991)に記載される技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離され得る。モノクローナル抗体はまた、米国特許第6,025,155号及び同第6,077,677号、さらには米国特許出願公開第2002/0160970号及び同第2003/0083293号(例えば、Lindenbaum、et al.、Nucleic Acids Research 32(21):0177(2004)も参照のこと)に記載される技術を使用して単離することもできる。
【0034】
超可変領域は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を含む。超可変領域は、相補性決定領域すなわちCDRからのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおける残基24〜34(L1)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)並びに重鎖可変ドメインにおける31〜35(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3);Kabat et al.、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))、及び/又は超可変ループからの残基(例えば、軽鎖可変ドメインにおける残基26〜32(L1)、50〜52(L2)及び91〜96(L3)、並びに重鎖可変ドメインにおける26〜32(H1)、53〜55(H2)及び96〜101(H3);Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901−917(1987))を含む。フレームワーク又はFR残基は、超可変領域の残基以外の可変ドメイン残基である。本明細書において記載される抗体については、CDR及びフレームワーク領域は、重鎖のCDR1がOxford Molecular's AbM定義により残基26〜35に及ぶと定義されることを除いて、Kabat付番方式に基づいて識別される。Oxford Molecular's AbM抗体モデリングソフトウェア(http://people.cryst.cck.ac.uk/〜ubc07s/)(Martin et al.、Proc.Natl Acad.Sci.USA、86、9268−9272(1989);Martin et al.、Methods Enzymol.、203、121−153(1991);Pedersen et al.、Immunomethods、1、126(1992);及びRees et al.、In Sternberg M.J.E.(ed.)、Protein Structure Prediction.Oxford University Press、Oxford、141−172.(1996))は、Kabat CDR及びChothia超可変領域付番方式を組み合わせてCDRを定義する。
【0035】
本明細書における用語「アミノ酸修飾」は、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入、及び/又は欠失を含む。「アミノ酸置換」又は「置換」は、親ポリペプチド配列中の特定の位置でのアミノ酸を別のアミノ酸と置き換えることを意味する。例えば、置換R94Kは変異ポリペプチドを指し、この場合は重鎖可変フレームワーク領域変異体であり、ここで位置94のアルギニンがリジンで置き換えられる。前の例について、94Kは位置94のリジンでの置換を示す。本明細書における目的のために、複数の置換は典型的にはスラッシュで区切られる。例えば、R94K/L78Vは置換R94K及びL78Vを含む二重変異を指す。本明細書で使用される「アミノ酸挿入」又は「挿入」は、親ポリペプチド配列中の特定の位置においてアミノ酸を加えること意味する。例えば、挿入−94は位置94での挿入を示す。本明細書において使用される「アミノ酸欠失」又は「欠失」は、親ポリペプチド配列中の特定の位置におけるアミノ酸の除去を意味する。例えば、R94−は位置94におけるアルギニンの欠失を示す。
【0036】
本発明において考察される全ての免疫グロブリン重鎖定常領域の位置について、番号付けはKabat(Kabat et al.、1991、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5th Ed.、United States Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda(参照により全体として加入される))におけるEUインデックスに従う。免疫グロブリン重鎖定常領域の位置の番号付けは、「Kabatにおいて示される付番方式」又は「KabatにおけるEUインデックス」と呼ばれ、これは本明細書において同等に使用され、そしてKabatにおけるEUインデックスに従う番号付けを示す。「KabatにおけるEUインデックス」は、Edelman et al.、1969、PNAS 63:78−85に記載されるヒトIgGl EU抗体の残基番号付けを指す。
【0037】
抗体は、定常領域により遺伝学的に決定されるクラス(アイソタイプとも呼ばれる)に分類される。ヒト定常軽鎖はカッパ(CK)軽鎖及びラムダ(C[ラムダ])軽鎖に分類される。重鎖は、ミュー、デルタ、ガンマ、アルファ、又はイプシロンとして分類され、そして抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgA、及びIgEと定義する。IgGクラスは治療目的のために最も一般的に使用される。ヒトにおいて、このクラスはサブクラスIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む。マウスにおいて、このクラスはサブクラスIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3を含む。IgMはIgM1及びIgM2を含むがこれらに限定されないサブクラスを有する。IgAはIgA1及びIgA2を含むがこれらに限定されないいくつかのサブクラスを有する。従って、本明細書で使用される「アイソタイプ」は、それらの定常領域の化学的及び抗原性の特徴により定義される免疫グロブリンのクラス又はサブクラスのいずれかを意味する。公知のヒト免疫グロブリンアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM1、IgM2、IgD、及びIgEである。
【0038】
本明細書で使用される用語「Fc」又は「Fc領域」は、第一定常領域免疫グロブリンドメインを除いて抗体の定常領域を含むポリペプチドを含む。従ってFcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びにIgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、並びにこれらのドメインに対する可動性ヒンジN末端を指す。IgA及びIgMについては、FcはJ鎖を含み得る。IgGについては、Fcは免疫グロブリンドメインCガンマ2及びCガンマ3(C[ガンマ]2及びC[ガンマ]3)、並びにCガンマl(C[ガンマ]l)とCガンマ2(C[ガンマ]2)との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変化し得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、そのカルボキシル末端に対して残基C226又はP230を含むように定義され、ここで番号付けはKabatにおけるEUインデックスに従う。Fcはこの領域のことを分離して指していてもよいし、Fcポリペプチド、例えば抗体と関連してこの領域を指していてもよい。
【0039】
本明細書で使用される「変異ヒトIgG1重鎖定常領域」は、親ヒトIgG1重鎖定常領域とは少なくとも1つのアミノ酸修飾によって異なるヒトIgG1重鎖定常領域を意味する。本明細書で使用される「Fc変異体」又は「変異Fc」又は「変異ヒトIgG1 Fc領域」は、親Fc配列の配列とは少なくとも1つのアミノ酸修飾によって異なるFc配列を意味する。変異ヒトIgG1重鎖定常領域又はFc変異体は、親Fcポリペプチドと比較して1つ又はそれ以上のアミノ酸修飾を含み、ここでこのアミノ酸修飾(単数又は複数)は、1つ又はそれ以上の最適化された特性を生じる。本発明の変異ヒトIgG1重鎖定常領域又はFc変異体は、アミノ酸配列において、その親IgG1と少なくとも1つのアミノ酸修飾によって異なる。従って、本発明の変異ヒトIgG1重鎖定常領域又はFc変異体は、親と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を有する。あるいは、本発明の変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、親と比較して1つより多くのアミノ酸修飾を有し得、例えば定常領域免疫グロブリンドメイン全体の、又は好ましくは異なるアイソタイプの1つのアイソタイプのFc領域の変換、例えばヒトIgG1重鎖定常領域のFc領域のヒトIgG3由来のFc領域への変換を含み得、これはヒトIgG1由来のCH1、ヒトIgG1由来のヒンジ及びヒトIgG3由来のFc領域を含むアイソタイプ変異体を生じる。修飾は、分子生物学を使用して遺伝子的に行われ得、又は酵素的若しくは化学的に行われ得る。
【0040】
本発明のFc変異体は、いずれかの免疫グロブリン遺伝子のいずれかのアロタイプ又は同型アロタイプ(isoallotype)により実質的にコードされ得る。好ましい実施態様において、本発明のFc変異体は、G1m(1)、G1m(2)、G1m(3)、G1m(17)、nG1m(1)、nG1 m(2)、及び/又はnG1 m(17)として分類されるIgG1配列を含む抗体又はFc融合において用途を見出す。従って、IgGIアイソタイプの文脈において、本発明のFc変異体は、位置214においてLys(G1m(17))若しくはArg(G1m(3))、Asp356/Leu358(G1m(1))若しくはGlu356/Met358(nG1m(1))、及び/又は位置431においてGIy(G1m(2))若しくはAla(nG1m(2))を含み得る。
【0041】
本明細書において使用される用語「アイソタイプ変異体」は、1つのアイソタイプの少なくとも1つのアミノ酸、好ましくは1つのアイソタイプの重鎖定常領域の少なくとも1つのアミノ酸を、整列された異なるアイソタイプにおける対応するアミノ酸に変換するアミノ酸修飾を含む。アミノ酸修飾は、定常領域免疫グロブリンドメイン全体の、又は好ましくは異なるアイソタイプにおける1つのアイソタイプのFc領域の変換、例えばヒトIgG1由来のCH1、ヒトIgG1由来のヒンジ及びヒトIgG3由来のFc領域を含むアイソタイプ変異体を生じるヒトIgG1重鎖定常領域のFc領域のヒトIgG3由来のFc領域への変換を含み得る。
【0042】
本明細書において「ヒンジ」又は「ヒンジ領域」又は「抗体ヒンジ領域」は、抗体の第一の定常ドメインと第二の定常ドメインとの間のアミノ酸を含む可動性ポリペプチドを意味する。構造的には、IgG CH1ドメインはEU位置220で終わり、そしてIgG CH2ドメインはEU位置237の残基で始まる。従ってIgGについては、抗体ヒンジは位置221(IgGIにおいてD221)〜位置231(IgGIにおいてA231)を含むように本明細書において定義され、ここで番号付けはKabatにおけるEUインデックスに従う。
【0043】
本明細書で使用される用語「エフェクター機能」は、抗体Fc領域のFc受容体又はリガンドとの相互作用から生じる生化学的事象を含む。本明細書で使用される用語「エフェクター機能」としては、ファゴサイトーシス、オプソニン作用、細胞結合、リセット、補体依存性細胞傷害(CDC)、C1q結合、Fc[ガンマ]受容体に対する抗体の結合親和性、又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)が挙げられる。好ましくは、エフェクター機能は補体依存性細胞傷害(CDC)及び/又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)である。エフェクター機能は、当該分野で公知であり市販されている標準的なインビトロアッセイにより測定される。通常、ADCCは本出願の実施例2において記載されるような乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイにより測定され、そしてCDCは、本出願の実施例1において記載される細胞ベースのアッセイにより測定される。
【0044】
本明細書で使用される用語「エフェクター機能を変更する」又は「変化したエフェクター機能を示す」は、変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含む抗体、例えばヒト化抗α2インテグリン抗体が、親抗体と比較して増強されたエフェクター機能を示すこと、すなわち、変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含む抗体のエフェクター機能は、親抗体のエフェクター機能より、10%より多く、好ましくは20%より多く、より好ましくは30%より多く、最も好ましくは50%より多く、特に60%より多く、最も特定には70%より多く高いということを含む。
【0045】
本明細書で使用される用語「ADCC」又は「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」は、Fc[ガンマ]Rsを発現する非特異的細胞傷害性細胞が標的細胞上に結合した抗体を認識し、その後標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性の反応を含む。種々の局面において、増強されたADCCエフェクター機能は、増強された効力又は増強された有効性を意味し得る。実験の文脈において使用される「効力」は、特定の治療効果が観察される場合の抗体の濃度 EC50(最大半量有効濃度)を意味する。実験の文脈において使用される「有効性」は、飽和レベルの抗体での最大の可能なエフェクター機能を意味する。
【0046】
本明細書で使用される用語「CDC」又は「補体依存性細胞傷害」は、1つ又はそれ以上の補体タンパク質成分が標的細胞上に結合した抗体を認識し、その後標的細胞の溶解を引き起こす反応を含む。
【0047】
本明細書で使用される用語「対象者」はヒト又は非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、全ての脊椎動物、例えば、哺乳動物及び非哺乳動物、例えば非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ニワトリ、両生類、は虫類などを含む。好ましくは対象者はヒトである。
【0048】
細胞傷害性薬剤には、細胞の機能を阻害若しくは防止し、かつ/又は細胞の破壊を引き起こす物質が含まれる。それら(The)には、放射性同位体(例えば131I、125I、90Y及び186Re)、化学療法剤、及び毒素、例えば細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素、又はそれらのフラグメントが含まれ得る。非細胞傷害性薬剤は、細胞の機能を阻害も防止もせず、かつ/又は細胞の破壊を引き起こさない物質を指す。非細胞傷害性薬剤には、活性化されて細胞傷害性になることができる薬剤が含まれ得る。非細胞傷害性薬剤はビーズ、リポソーム、マトリックス又は粒子を含み得る(例えば、米国特許公開第2003/0028071号及び同第2003/0032995号(これらは参
照により本明細書に加入される)を参照のこと)。このような薬剤は、本明細書に記載される抗α2β1インテグリン抗体に結合、カップリング、連結又は付着され得る。
【0049】
化学療法剤は、がんの処置において有用な化学化合物を指す。化学療法剤の例としては、限定されないが、アドリアマイシン、ドキソルビシン、5−フルオロウラシル、シトシンアラビノシド(「Ara−C」)、シクロホスファミド、チオテパ、タキソテール(ドセタキセル)、ブスルファン、シトキシン(Cytoxin)、タキソール、メトトレキサート、シスプラチン、メルファラン、ビンブラスチン、ブレオマイシン、エトポシド、イホスファミド、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ビンクレイスチン(Vincreistine)、ビノレルビン、カルボプラチン、テニポシド、ダウノマイシン、カルミノマイシン、アミノプテリン、ダクチノマイシン、マイトマイシン、エスペラミシン(米国特許第4,675,187号を参照のこと)、メルファラン及び他の関連するナイトロジェンマスタードが挙げられる。
【0050】
単離された核酸分子は、同定され、そして通常は供給源(例えば抗体核酸の天然供給源)中にある付随する少なくとも1つの混入核酸分子から分離された核酸分子を指す。単離された核酸分子は、天然で見出される形態又は状態以外のものである。従って単離された核酸分子は、天然細胞に存在するままの核酸分子とは区別される。しかし、単離された核酸分子は、例えば核酸分子が天然細胞とは異なる染色体上の位置にある場合の、通常その抗体を発現する細胞中に含有する核酸分子を含む。
【0051】
細胞、細胞株、及び細胞培養物は、しばしば交換可能に使用され、そして全てのこのような表示は子孫を含む。形質転換体及び形質転換された細胞(例えば、核酸、ベクター、ウイルスなどのトランスフェクション、形質転換又は形質導入により得られる)は、初代対象者細胞、及び移入(transfers)の数に関係なくそれらから誘導される培養物を含む。計画的又は偶発性の変異のために、全ての子孫がDNAの内容において正確に同一でなくてもよいということも理解される。元の形質転換された細胞についてスクリーニングされたものと同じ機能又は生物学的活性を有する変異体子孫が含まれる。別の表示が意図される場合、それは文脈から明らかだろう。
【0052】
変異ヒトIgG1重鎖定常(heavy constant)ドメインを含むヒト化抗α2インテグリン抗体
本発明は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域及び変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むヒト化抗α2インテグリン抗体を提供するが、変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体のヒトIgG1重鎖定常領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、該抗体は親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して変化したエフェクター機能を示す。
【0053】
一局面において、本開示は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域及び変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むヒト化抗α2インテグリン抗体を提供し、ここで変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、ヒトIgG1由来のCH1、ヒトIgG1由来のヒンジ及びヒトIgG3由来のFc領域を含むアイソタイプ変異体である。
【0054】
一実施態様において、アイソタイプ変異ヒトIgG1重鎖定常領域は配列番号35を含む。
【0055】
一局面において、本開示は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域及び変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むヒト化抗α2インテグリン抗体を提供し、ここで変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、ヒトIgG3由来のCH1、ヒトIgG1由来のヒンジ及びヒトIgG3由来のFc領域を含むアイソタイプ変異体である。
【0056】
一実施態様において、アイソタイプ変異ヒトIgG1重鎖定常領域は配列番号36を含む。
【0057】
一局面において、本開示は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域及び変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むヒト化抗α2インテグリン抗体を提供し、ここで変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体のヒトIgG Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む変異ヒトIgG1 Fc領域を含む。
【0058】
一実施態様において、アミノ酸修飾は、269、298、及び324からなる群より選択されるアミノ酸位置でのアミノ酸置換、好ましくはアミノ酸位置298及び/又は324におけるアミノ酸置換を含み、ここで群の各メンバーのアミノ酸位置は、Kabatにおいて示される付番方式を利用して示される。
【0059】
別の実施態様において、アミノ酸修飾は、E269D、S298A、及びS324Nからなる群より選択されるアミノ酸置換、好ましくはアミノ酸置換S298A及び/又はS324Nを含み、ここで群の各メンバーのアミノ酸位置は、Kabatにおいて示される付番方式を利用して示される。
【0060】
別の実施態様において、アミノ酸修飾は、269/298、269/324、298/324、及び269/298/324からなる群より選択されるアミノ酸位置でのアミノ酸置換の組み合わせ(好ましくは298/324、又は269/298/324)を含み、ここで群の各メンバーのアミノ酸位置はKabatにおいて示される付番方式を利用して示される。
【0061】
別の実施態様において、アミノ酸修飾は、E269D/S298A、E269D/S324N、S298A/S324N、及びE269D/S298A/S324Nからなる群より選択されるアミノ酸置換の組み合わせ(好ましくはS298A/S324N又はE269D/S298A/S324N)を含み、ここで群の各メンバーのアミノ酸位置は、Kabatにおいて示される付番方式を利用して示される。
【0062】
一実施態様において、変異ヒトIgG1 Fc領域は、配列番号37〜43からなる群より選択される配列を含む。
変更されるエフェクター機能は、通常は補体依存性細胞傷害(CDC)及び/又はC1q結合及び/又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)及び/又はFc[ガンマ]受容体に対する抗体の結合親和性、好ましくは補体依存性細胞傷害(CDC)及び/又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)である。CDC、C1q結合、ADCC、及びFc[ガンマ]受容体に対する抗体の結合親和性は標準的なインビトロアッセイで測定され、これらは当該分野で公知であり、市販されている。通常、ADCCは例えば本出願の実施例2において記載されるような乳酸デヒドドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイにより測定され、そしてCDCは例えば本出願の実施例1において記載される細胞ベースのアッセイによる測定である。
【0063】
好ましくは、変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含む本開示のヒト化抗α2インテグリン抗体は、親ヒト化抗体と比較して、上記のようなインビトロアッセイにおいて改善されたCDCを示す。本明細書で使用される「改善されたCDCを示すこと(Exhibition of improved CDC)」又は「改善されたCDCを示すこと(exhibiting improved CDC)」は、a) 親抗体と比較して増強されたCDCを示すこと、すなわち、親ヒト化抗α2インテグリン抗体が既にCDCを示し、これがヒトIgG1重鎖定常領域のアミノ酸修飾により増強されること、及びb) 親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して新たにCDCを示すこと、すなわち親ヒト化抗α2インテグリン抗体はCDCを示さず、それ故CDCはヒトIgG1重鎖定常領域のアミノ酸修飾により新たに導入されたということを含む。
【0064】
従って、さらなる局面において、本開示は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域及び変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むヒト化抗α2インテグリン抗体を提供するが、変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体のヒトIgG1重鎖定常領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、そして該抗体は、親ヒト化抗体と比較して改善された補体依存性細胞傷害(CDC)を示す。親ヒト化抗体と比較して改善された補体依存性細胞傷害(CDC)を示すヒト化抗α2インテグリン抗体の好ましい変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、S324N、S298A/S324N、及びE269D/S298A/S324Nからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む変異ヒトIgG1 Fc領域を含み、より好ましくは、変異ヒトIgG1 Fc領域は、配列番号39、42及び43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0065】
一実施態様において、親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して改善された補体依存性細胞傷害(CDC)を示す、変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むヒト化抗α2インテグリン抗体は、親ヒト化抗体と同等の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す。親ヒト化抗体と同等のADCCを示すことは、親ヒト化抗体のADCCの±50%、好ましくは±40%、より好ましくは±30%、最も好ましくは±20%、特に±10%のADCCを含む。親抗体としてのIgG1抗体、例えばヒト化IgG1抗α2インテグリン抗体がADCCを示すことは公知である。しかし、IgG1重鎖定常領域の改善された補体依存性細胞傷害(CDC)を生じる修飾、例えばアミノ酸の置換がADCCに影響を有するかどうかは予測不可能である。従って、改善されたCDCを示す、変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含む本発明のヒト化抗α2インテグリン抗体は、驚くべきことに親ヒト化抗体と同等のADCCを示す。
【0066】
さらなる局面において、本開示は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域及び変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むヒト化抗α2インテグリン抗体を提供し、ここで変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体のヒトIgG Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む変異ヒトIgG1 Fc領域を含み、一方で該抗体は親ヒト化抗体と比較して改善された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す。親ヒト化抗体と比較して改善された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示すヒト化抗α2インテグリン抗体の好ましい変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、E269D、S298A、S298A/S324N、及びE269D/S298A/S324Nからなる群より選択されるアミノ酸置換を含む変異ヒトIgG1 Fc領域を含み、より好ましくは、変異ヒトIgG1 Fc領域は、配列番号37、38、42及び43からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。
【0067】
さらなる局面において、本開示は、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域及び変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むヒト化抗α2インテグリン抗体を提供し、ここで変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体のヒトIgG Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む変異ヒトIgG1 Fc領域を含み、ここでアミノ酸修飾は、アミノ酸置換S298A/S324N又はE269D/S298A/S324Nであり、一方で該抗体は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して改善された補体依存性細胞傷害(CDC)及び改善された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す。
【0068】
マウスモノクローナル抗体クローンBHA2.1の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の両方からのCDRを含む本発明の抗体が構築された(Hangan et al.、Cancer Res.56:3142−3149(1996))。抗体を構築するための好ましい出発物質は、ヒトα2インテグリンに特異的な機能遮断抗体であり、かつ標的にされたα2インテグリン内のインタクトなI−ドメインの存在に結合及び活性が依存性である、BHA2.1ハイブリドーマ(例えば、TMC−2206)により分泌されるような抗α2インテグリン抗体である。TMC−2206(又はBHA2.1)のエピトープ特異性を有するヒト化抗体が好ましく、これにはα2インテグリン分子の不活性コンホメーションに結合する抗体、及び/又はリガンド模倣物として作用しない抗体が含まれる。白血球及び血小板の両方に存在するα2β1インテグリンと相互作用するが、血小板活性化、コラーゲン上の活性化血小板の凝集不全を引き起こさず、出血に対して最小の効果しか有していないか若しくは効果を有しておらず、かつ/又は投与された濃度(インビボでの治療用量を含む)で出血合併症を伴わない、TMC−2206(又はBHA2.1)のエピトープ特異性を有するヒト化抗体が好ましい。
【0069】
従って、アミノ酸配列GFSLTNYGIH(配列番号1)を含むHCDR1、アミノ酸配列VIWARGFTNYNSALMS(配列番号2)を含むHCDR2及びアミノ酸配列ANDGVYYAMDY(配列番号3)を含むHCDR3を含む重鎖可変領域を含む上述のヒト化抗α2インテグリン抗体もまた提供される。
【0070】
アミノ酸配列SAQSSVNYIH(配列番号4)を含むLCDR1、アミノ酸配列DTSKLAS(配列番号5)を含むLCDR2及びアミノ酸配列QQWTTNPLT(配列番号6)を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む上述のヒト化抗α2インテグリン抗体もまた提供される。
【0071】
アミノ酸配列GFSLTNYGIH(配列番号1)を含むHCDR1、アミノ酸配列VIWARGFTNYNSALMS(配列番号2)を含むHCDR2及びアミノ酸配列ANDGVYYAMDY(配列番号3)を含むHCDR3を含む重鎖可変領域;並びに/又はアミノ酸配列SAQSSVNYIH(配列番号4)を含むLCDR1、アミノ酸配列DTSKLAS(配列番号5)を含むLCDR2及びアミノ酸配列QQWTTNPLT(配列番号6)を含むLCDR3を含む軽鎖可変領域を含む上述のヒト化抗α2インテグリン抗体もまた提供される。
【0072】
一実施態様において、上述の重鎖可変領域は配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0073】
一実施態様において、上述の重鎖可変領域は、(a)位置71がLysであるか、(b)位置73がAsnであるか、(c)位置78がValであるか、又は(d)(a)〜(c)のいずれかの組み合わせである、配列番号7のアミノ酸配列を含む。
【0074】
一実施態様において、上述の重鎖可変領域は、配列番号8〜19から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0075】
一実施態様において、上述の重鎖可変領域は、配列番号17のアミノ酸配列を含む。
【0076】
一実施態様において、上述の重鎖可変領域は、アミノ酸配列WGQGTLVTVSS(配列番号20)を含むFW4領域をさらに含む。
【0077】
一実施態様において、上述の軽鎖可変領域は、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
【0078】
一実施態様において、上述の軽鎖可変領域は、(a)位置2がPheであるか、(b)位置45がLysであるか、(c)位置48がTyrであるか、又は(d)(a)〜(c)のいずれかの組み合わせである、配列番号21のアミノ酸配列を含む。
【0079】
一実施態様において、上述の軽鎖可変領域は、配列番号22〜33から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0080】
一実施態様において、上述の軽鎖可変領域は、配列番号30のアミノ酸配列を含む。
【0081】
一実施態様において、上述の軽鎖可変領域は、アミノ酸配列FGQGTKVEIK(配列番号34)を含むFW4領域をさらに含む。
【0082】
上述の変異ヒトIgG1重鎖定常領域、上述の重鎖及び軽鎖可変領域並びにヒト軽鎖定常領域を含む上述のヒト化抗α2インテグリン抗体がさらに提供される。
【0083】
従って、さらなる実施態様において、抗α2インテグリン抗体は、配列番号47を含む重鎖及び配列番号56を含む軽鎖を含む。
【0084】
さらなる実施態様において、抗α2インテグリン抗体は、配列番号48を含む重鎖及び配列番号56を含む軽鎖を含む。
【0085】
さらなる実施態様において、抗α2インテグリン抗体は、配列番号49〜55からなる群より選択される重鎖及び配列番号56を含む軽鎖を含む。
【0086】
親抗体のアミノ酸位置324におけるセリンをアスパラギンと置き換えるアミノ酸置換S324Nを含む変異ヒトIgG Fc領域を含む抗体がさらに提供されるが、該抗体は、改善された補体依存性細胞傷害(CDC)を示す。
【0087】
親抗体のアミノ酸位置324におけるセリンをアスパラギンと置き換えるアミノ酸置換S324Nを含む変異ヒトIgG Fc領域を含む抗体がさらに提供されるが、該抗体は、親抗体と比較して改善された補体依存性細胞傷害(CDC)及び改善された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す。本抗体はさらに、親抗体のアミノ酸位置269におけるグルタミン酸をアスパラギン酸に置き換えるアミノ酸置換E269D、及び/又は親抗体のアミノ酸位置298におけるセリンをアラニンと置き換える置換S298Aを含み得る。本抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体及び完全ヒト抗体からなる群より選択され得る。本抗体は、好ましくはヒト化抗体であり、より好ましくはヒト化抗α2インテグリン抗体である。
【0088】
一実施態様において、上述のヒト化抗α2インテグリン抗体は、ヒトα2インテグリンのIドメインを認識する。
【0089】
一実施態様において、上述のヒト化抗α2インテグリン抗体は、α2β1インテグリンに結合する。
【0090】
一実施態様において、上述のヒト化抗α2インテグリン抗体は、α2又はα2β1インテグリンのα2β1インテグリンリガンドに対する結合を阻害する。通常、α2β1インテグリンリガンドは、コラーゲン、ラミニン、エコーウイルス−1、デコリン、E−カドヘリン、マトリックスメタロプロテイナーゼI(MMP−I)、エンドレペリン(endorepellin)、コレクチン及び補体C1qタンパク質から選択され、そして好ましくはコラーゲンである。
【0091】
上述のヒト化抗α2インテグリン抗体をコードする単離された核酸、該核酸を含むベクター、及び該核酸又はベクターを含む宿主細胞もまた提供される。
【0092】
上述のヒト化抗α2インテグリン抗体及び薬学的に許容しうる担体を含む組成物もまた提供される。
【0093】
対象者におけるα2β1インテグリン関連障害を処置する方法もまた提供され、該方法は、対象者に治療有効量の上述のヒト化抗α2インテグリン抗体又は上述の組成物を投与することを含む。α2β1インテグリン関連障害としては、炎症性疾患、自己免疫疾患及び異常な血管新生又は増加した血管新生を特徴とする疾患が挙げられ、特に炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、移植に対する反応、視神経炎、脊髄外傷、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群(Reynaud's syndrome)、実験的自己免疫性脳脊髄炎、シェーグレン症候群(Sjorgen's syndrome)、強皮症、若年型糖尿病、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、心血管疾患、乾癬、がん、さらには炎症反応を誘発する感染であり、より特定の多発性硬化症、関節リウマチ、視神経炎及び脊髄外傷である。
【0094】
上述のヒト化抗α2インテグリン抗体又は上述の組成物により処置され得るがんは、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、及び肺の扁平上皮がんを含む肺がん、腹膜のがん、ヘパトーマ、消化器がんを含む胃がん(gastric or stomach cancer)、膵臓がん、神経繆芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん又は腎がん(kidney or renal cancer)、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん及び種々の型の頭頸部がん、さらには低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリーセル白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)を含むB細胞リンパ腫、さらには母斑症(phakomatoses)に関連する異常血管増殖、脳腫瘍に関連する浮腫のような浮腫、メイグス症候群、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、線維肉腫、骨肉腫、及び類表皮がんからなる群より選択される。本明細書に記載される抗α2インテグリン抗体を使用して好ましく処置されるがんは、乳がん、結腸直腸がん、直腸がん、非小細胞肺がん、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞がん、前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、軟部組織肉腫、カポージ肉腫、カルチノイドがん、頭頸部がん、黒色腫、卵巣がん、中皮腫、及び多発性骨髄腫からなる群より選択される。本発明の処置を受け入れやすい(amendible for)がん性状態としては転移性がんが挙げられる。従って、乳がん、結腸直腸がん、直腸がん、非小細胞肺がん、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞がん、前立腺がん、転移性前立腺がん、肝臓がん、膵臓がん、軟部組織肉腫、カポージ肉腫、カルチノイドがん、頭頸部がん、黒色腫、卵巣がん、中皮腫、多発性骨髄腫、転移性結腸直腸がん及び転移性乳がんからなる群より選択されるがんはさらにより好ましい。非小細胞肺がん、膵臓がん、神経繆芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、腎臓がん、前立腺がん、転移性前立腺がん、中皮腫、線維肉腫、骨肉腫、類表皮がん、転移性結腸直腸がん、転移性前立腺がん及び転移性乳がんからなる群より選択されるがんは特に好ましい。非小細胞肺がん、膵臓がん、神経繆芽腫、 肝臓がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、腎臓がん、前立腺がん、中皮腫、線維肉腫、 転移性結腸直腸がん、転移性前立腺がん及び転移性乳がんからなる群より選択されるがんはより特に好ましい。膵臓がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、線維肉腫、転移性結腸直腸がん、前立腺がん、転移性前立腺がん及び転移性乳がんからなる群より選択されるがんはさらにより特に好ましい。膵臓がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、及び線維肉腫からなる群より選択されるがんは最も特に好ましい。膵臓がん、乳がん又は転移性乳がんは最も好ましく、特に膵臓がんが好ましい。前立腺がん又は転移性前立腺がんは等しく最も特に好ましい。本明細書で言及される「乳がん」は乳腺がんを含む。本発明の方法は、血管化腫瘍の処置に特に適している。
【0095】
好ましくは、本方法は、(a)血小板活性化、(b)血小板凝集、(c)循環血小板数の減少、(d)出血性合併症、又は(e)(a)〜(d)のいずれかの組み合わせと関連づけられない。
【0096】
コラーゲンに対する白血球の結合を阻害するために有効な量の、上述のヒト化抗α2インテグリン抗体を対象者に投与することを含む、コラーゲンに対する白血球の結合を阻害するための方法も提供される。
【0097】
上述のヒト化抗α2インテグリン抗体又は上述の組成物を従って(according)、及びα2β1インテグリン関連障害の処置のための指示書を含むキットも提供される。
【0098】
ヒト化抗α2インテグリン抗体及び複合体の構築
軽鎖可変領域のヒトアクセプター分子が、可能性のあるアクセプター分子可変領域とマウス抗体の軽鎖可変領域との間の相同性の考慮に基づいて選択される抗体が構築され得る。生殖系列候補ヒトアクセプター分子は、潜在的な免疫原性を低減するために好ましい。生殖系列データベースは、重鎖FW3領域の末端を通って部分的にCDR3配列までを読み取る抗体配列で構成されている。FW4領域の選択については、選択された生殖系列分子から誘導された成熟抗体配列のデータベースを検索することが好ましく、そして組み換え抗体分子における使用のための適度に相同なFW4領域を選択することも好ましい。ヒトアクセプター分子は、好ましくはマウスドナー分子と同じ軽鎖クラスから選択され、そしてマウスドナー分子の可変領域の同じ標準的(canonical)構造クラスのものである。軽鎖可変領域についてのヒトアクセプター分子の選択に関する二次的な考慮は、マウスドナー分子とヒトアクセプター分子との間のCDR長における相同性を含む。ヒトアクセプター抗体分子は、好ましくはV−BASEデータベースに対する相同性検索により選択され、そしてKabat、及び公開NCBIデータベースのような他のデータベースも同様に使用され得る。TMC−2206と同じか又は類似したエピトープ特異性及び/若しくは機能特性を有するヒト化抗α2インテグリン抗体については、好ましい軽鎖ヒトアクセプター分子は、FW1−3領域については生殖系列抗体配列A14、及びFW4については配列FGQGTKVEIK(配列番号34)であり、これは成熟カッパ1軽鎖(例えば、軽鎖配列AAB24132(NCBIエントリーgi/259596/gb/AAB24132)の共通FW−4を表す。
【0099】
重鎖可変領域のヒトアクセプター分子が、可能性のあるアクセプター分子可変領域とマウス抗体の重鎖可変領域との間の相同性の考慮に基づいて選択される抗体が構築され得る。生殖系列候補ヒトアクセプター分子は、潜在的な抗原性を低減するために好ましい。生殖系列データベースは、重鎖FW3領域の末端を通って部分的にCDR3配列までを読み取る抗体配列で構成されている。FW4領域の選択については、選択された生殖系列分子から誘導された成熟抗体配列のデータベースを検索することが好ましく、そして組み換え抗体分子における使用のために適度に相同なFW4領域を選択することも好ましい。ヒトアクセプター分子は、好ましくはマウスドナー分子と同じ重鎖クラスから選択され、そしてマウスドナー分子の可変領域の同じ標準的構造クラスのものである。重鎖可変領域についてのヒトアクセプター分子の選択についての二次的な考慮は、マウスドナー分子とヒトアクセプター分子との間のCDR長における相同性を含む。ヒトアクセプター抗体分子は、好ましくはV−BASEデータベースに対する相同性検索により選択されるが、Kabat及び公開NCBIデータベースのような他のデータベースも同様に使用され得る。TMC−2206と同じか又は類似するエピトープ特異性及び/若しくは機能特性を有する抗α2インテグリン抗体については、好ましい重鎖アクセプター分子は、FW1−3領域については生殖系列抗体配列4−59、及びFW4領域については抗体、CAA48104.1(NCBIエントリー、gi/33583/emb/CAA48104.1)、生殖系列配列4−59から誘導される成熟抗体である(配列番号20)。
【0100】
モノクローナル抗体は、最初にKohler et al.、Nature、256:495(1975)により記載されたハイブリドーマ法を使用して作製され得、又は組み換えDNA法(例えば米国特許第6,204,023号)により作製され得る。モノクローナル抗体はまた、米国特許第6,025,155号及び同第6,077,677号、さらには米国特許出願公開第2002/0160970号及び同第2003/0083293号(例えばLindenbaum、et al.、Nucleic Acids Research 32(21):0177(2004)も参照のこと)に記載される技術を使用しても作製され得る。
【0101】
ヒト化抗α2β1インテグリン抗体のアミノ酸配列変異体は、適切なヌクレオチド変化をヒト化抗α2β1インテグリン抗体DNAに導入することにより、又はペプチド合成により製造される。このような変異体は、例えば、本発明の抗α2インテグリン抗体について示されるアミノ酸配列内の残基からの欠失、これらの残基への挿入及び/又はこれらの残基の置換を含む。アミノ酸の欠失、挿入、及び置換のいずれかの組み合わせが、最終構築物に到達するために行われるが、ただし最終構築物は望ましい特徴を有する。アミノ酸変化はまた、グリコシル化部位の数及び位置の変更のように、ヒト化抗α2インテグリン抗体の翻訳後プロセスを変更し得る。
【0102】
抗体をヒト又はヒト様にする(例えば「ヒト化」)ために使用される多数の方法がある。抗体をヒト化するためのアプローチは長年にわたって変化してきた。1つのアプローチはヒト定常領域に融合されたマウス可変領域、いわゆるマウス−ヒトFcキメラを生成することであった(例えば、Morrison et al、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855(1984);米国特許第5,807,715号を参照のこと)。別のアプローチは、CDRがそれらの超可変性(Kabat et al、J.Biol.Chem.252:6609−6616(1977))、Kabat、Adv.Protein Chem.32:1−75(1978))及び標準的構造(Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(4):901−17(1987);Lazakani et al.、J.Mol.Biol.272:929(1997))に基づいて容易に同定され得、そして例えばJones et al.、Nature 321(6069):522−5(1986);(例えば、米国特許第5,225,539号;米国特許第6,548,640号を参照のこと)により示されるように、単に非ヒトCDR領域(ドナーCDRと呼ばれる)をヒトフレームワーク(アクセプターフレームワークと呼ばれる)上に移植することによりヒト化され得るということを利用する。6つのCDRループがかたまって存在し、そして結晶解析に基づいて、CDRに隣接するか又は重鎖−軽鎖境界におけるいわゆるバーニア(Vernier)」帯内の決定的なフレームワーク残基が容易に同定され得る(例えば、Chothia and Lesk、J.Mol.Biol.196(4):901−17(1987);Chothia et al.、J.Mol.Biol.186(3):651−63(1985);Chothia et al.、Nature 342(6252):877−83(1989)を参照のこと)。これらの残基は、6つのCDRの正確な相対的定位を回復するためにマウス残基に復帰変異され得る(例えば、Verhoyen et al.、Science 239(4847):1534−6(1988);Reichman et al.、Nature 332(6162):323−7(1988);Tempest et al.、Biotechnology(NY)9(3):266−71(1991)を参照のこと)。可変領域は、マウスとヒトとの間に比較的高い相同性を有するファミリーに分類され得るので(例えば、Pascual and Capra Adv.Immunol.49:1−74(1991)において概説される)、これらの初期の研究は、親和性の損失の可能性が、ヒトアクセプター分子としての使用のために目的のマウス抗体に対して最も高い相同性を有するヒト生殖系列配列を選択することにより、移植された抗体において最少にされ得るということも示した(例えば、米国特許第5,225,539号;Verhoyen et al.、Science 239(4847):1534−6(1988)を参照のこと)。
【0103】
非ヒトα2インテグリン抗体をヒト化するための方法は、例えばWO2007/056858に記載される。抗α2インテグリン抗体をヒト化するために、免疫化からの製造又は市販の抗体の購入を含めて、非ヒト抗体出発物質を入手する。本発明において使用される抗体をヒト化するため、例えばTMC−2206をヒト化するための例となる技術はWO2007/056858に記載される。
【0104】
抗体の生物学的特性の実質的な改変は、(a)置換の領域における、例えばシート若しくはらせんコンホメーションのようなポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷若しくは疎水性、又は(c)側鎖の体積の維持に対するそれらの効果において有意に異なる置換を選択することにより達成される。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいてグループに分けられる:(1)疎水性:ノルロイシン、met、ala、val、leu、ile;(2)中性親水性:cys、ser、thr;(3)酸性:asp、glu;(4)塩基性:asn、gln、his、lys、arg;(5)鎖の配向に影響を与える残基:gly、pro;及び(6)芳香族:trp、tyr、phe。ヒト化抗α2インテグリン抗体の適切な確認(confirmation)の維持に関与しないいずれのシステイン残基も、分子の酸化的安定性を改善するため及び異常な架橋を防止するために、一般的にはセリンと置換され得る。反対に、システインの結合がその安定性を改善するために抗体に加えられ得る(特に抗体がFvフラグメントのような抗体フラグメントである場合)。
【0105】
抗体の別の型のアミノ酸変異体は、抗体の元のグリコシル化パターンを変更する。変更するということは、抗体において見られる1つ若しくはそれ以上の炭水化物部分を除去すること、及び/又は抗体に存在しない1つ若しくはそれ以上のグリコシル化部位を加えることを意味する。
【0106】
抗体のグリコシル化は、典型的にはN連結又はO連結のいずれかである。N連結とは、炭水化物部位がアスパラギン残基の側鎖に結合することを指す。トリペプチド配列アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニン[ここでXはプロリンを除くいずれかのアミノ酸である]は、炭水化物部分のアスパラギン側鎖への酵素的結合の認識配列である。従って、ポリペプチド中のこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を生じる。O連結グリコシル化は、糖N−アセイルガラクトサミン(aceylgalactosamine)、ガラクトース、又はキシロースのうちの1つの、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンへの結合を指すが、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンも使用され得る。
【0107】
抗体に対するグリコシル化部位の付加又は欠失は、(N連結グリコシル化部位については)上記のトリペプチド配列の1つ又はそれ以上を含有するか又は欠くようにアミノ酸配列を変更することにより都合よく達成され得る。この変更は、(O連結グリコシル化部位については)元の抗体の配列への1つ又はそれ以上のセリン又はスレオニン残基の付加、これらの残基での置換、又はこれらの残基の欠失によっても行われ得る。ヒト化抗α2インテグリン抗体のアミノ酸配列変異体をコードする核酸分子は、当該分野で公知の様々な方法により製造される。これらの方法としては、限定されないが、(天然に存在するアミノ酸配列変異体の場合は)天然供給源からの単離、又は前に製造された変異体若しくはヒト化抗α2インテグリン抗体の非変異バージョンのオリゴヌクレオチド媒介(又は部位特異的)変異誘発、PCR変異導入、若しくはカセット式変異誘発による製造が挙げられる。
【0108】
通常、ヒト化抗α2インテグリン抗体のアミノ酸配列変異体は、元のヒト化抗体アミノ酸配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、そして最も好ましくは少なくとも95%(例えば80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、及び100%を含む)のアミノ酸配列同一性を有する、重鎖又は軽鎖のいずれか(例えば、それぞれ配列番号17又は配列番号30におけるような可変領域配列)のアミノ酸配列を有する。この配列に関して同一性又は相同性は、本明細書において、必要な場合は最大の配列同一性パーセントを達成するように、そしていずれの保存的置換(上記のとおり)も配列同一性の一部として考慮せずに、配列を整列させてギャップを導入した後、候補配列中でヒト化抗α2インテグリン残基と同一であるアミノ酸残基のパーセントとして定義される。抗体配列へのN末端、C末端、又は内部の伸長、欠失又は挿入はどれも配列同一性にも相同性にも影響を及ぼさないと解釈されるものとする。従って、配列同一性は、2つのポリペプチドのアミノ酸の位置における類似性を比較するために一般的に使用される標準的な方法により決定され得る。BLAST又はFASTAのようなコンピュータープログラムを使用して、2つのポリペプチドを、(一方もしくは両方の配列の全長に沿って、又は一方若しくは両方の配列の所定の部分に沿って)それらのそれぞれのアミノ酸の最適なマッチングのために整列される。これらのプログラムは、デフォルトオープンペナルティ(opening penalty)及びデフォルトギャップペナルティを提供し、そしてPAM250のようなスコアリングマトリクス(標準的なスコアリングマトリクス;Dayhoff et al.、in Atlas of Protein Sequence and Structure、vol 5、supp.3(1978)を参照のこと)がコンピュータープログラムと共に使用され得る。例えば、同一性パーセントは:完全な一致の総数に100をかけて、次いで一致した範囲内のより長い配列の長さ及び2つの配列を整列させるためにより長い配列中に導入されたギャップの数の合計で割ったものとして計算され得る(can the be)。
【0109】
いくつかの実施態様において、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する多重特異性(例えば二重特異性)ヒト化抗α2インテグリン抗体を生成することが望ましいかもしれない。例となる二重特異性抗体(例えば、2つの異なる結合アームを有する)は、α2β1インテグリンタンパク質の2つの異なるエピトープに結合し得る。あるいは、抗α2インテグリンアームは、その表面に結合したα2β1インテグリンを有する細胞に対する細胞防御機構に集中するように、白血球上のトリガー分子、例えばT細胞受容体分子(例えばCD2又はCD3)、又はIgGのFc受容体(Fc(R)、例えばFcγR1(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)に結合するアームと組み合わせられ得る。二重特異性抗体は、それらの表面に結合したα2β1インテグリンを有する細胞に局在化した細胞傷害性薬剤に対して使用され得る。これらの抗体は、α2β1インテグリン結合アーム及び細胞傷害性薬剤(例えば、ゲロニン、サポリン、抗インターフェロンアルファ、ビンカアルカロイド、リシンA鎖、又は放射性同位体ハプテン)に結合するアームを有する。
【0110】
二重特異性抗体を作製するための別のアプローチにしたがって、一対の抗体分子間の接合部分は、組み換え細胞培養から回収されるヘテロダイマーのパーセントを最大にするように操作され得る。好ましい接合部分は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法において、1つ又はそれ以上の小さいアミノ酸側鎖は、より大きな側鎖(例えばチロシン又はトリプトファン)と置き換えられる。置きな側鎖と等しいか又はより小さなサイズの代償性の(Compensatory)空洞が、大きなアミノ酸側鎖をより小さなもの(例えばアラニン又はスレオニン)と置き換えることにより第二の抗体の接合部分に生成される。これが、ホモダイマーのような他の望まれない最終生成物よりもヘテロダイマーの収率を増加させるための機構を生じる(例えばWO96/27011を参照のこと)。
【0111】
二重特異性抗体は、架橋した抗体又はヘテロ複合体(heteroconjugate)抗体を含む。例えば、ヘテロ複合体中の抗体の1つはアビジンとカップリングされ得、他方はビオチンにカップリングされ得る。ヘテロ複合体抗体は、いずれかの都合のよい架橋方法を使用して作製され得る。適切な架橋剤は当該分野で周知であり、そして例えば米国特許第4,676,980号において多数の架橋技術とともに開示される。
【0112】
二価よりも多い抗体が考慮される。例えば、三重特異性抗体を製造することができる(例えば、Tutt et al.、J.Immunol.147:60(1991)を参照のこと)。
【0113】
ヒト化抗α2インテグリン抗体を含む免疫複合体は、α2インテグリンを発現する細胞、組織又は組織に対して薬剤を標的化するために、部分、例えば、分子、組成物、複合体、又は薬剤、例えば化学療法剤のような細胞傷害性薬剤、毒素(例えば細菌、真菌、植物又は動物起源の酵素的に活性な毒素、又はそのフラグメント)、又は放射性同位体(例えば放射複合体(radioconjugate))に結合した。このような免疫複合体は、部分又は薬剤を、α2又はα2β1インテグリンの存在を特徴とする特定の作用部位に対して標的化する方法において使用され得る。
【0114】
このような免疫複合体の生成において有用な化学療法剤は上に記載されている。使用され得る酵素的に活性な毒素及びそれらのフラグメントとしてはジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性フラグメント、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシン(modeccin)A鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP−S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン(curcin)、クロチン(crotin)、サパオナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン(enomycin)又はトリコテセン(tricothecenes)が挙げられる。様々な放射性核種が、放射複合体化された抗アルファ2インテグリン抗体の製造のために利用可能である。例としては、212 Bi、131In、90Y又は186Reが挙げられる。
【0115】
抗体及び細胞傷害性薬剤の複合体は、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステル類の二官能性誘導体(例えばアジプイミド酸ジメチルHCL)、活性エステル(例えばスベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えばグルテルアルデヒド(gluteraldehyde))、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えばビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えばトリエン(tolyene)2,6−ジイソシアネート)、又はビス−活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)のような様々な二官能性タンパク質カップリング剤を使用して作製される。例えば、リシン免疫毒素はVitetta et al.、Science 238:1098(1987)に記載されるように製造され得る。炭素−14標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性核種の抗体への結合のための例となるキレート剤である(例えば、WO94/11026を参照のこと)。
【0116】
別の実施態様において、抗体は、α2インテグリンを発現する細胞、組織又は器官(ここで抗体−受容体複合体が患者に投与される)の予備標的化(pretargeting)における利用のために受容体(例えばストレプトアビジン)に結合され得、続いて浄化剤(clearing agent)を使用して循環から未結合の複合体を除去し、次いで薬剤、例えば細胞傷害性薬剤(例えば放射性核種)に結合されるリガンド(例えばアビジン)を投与する。
【0117】
本明細書において開示される抗α2インテグリン抗体は、免疫リポソームとしても製剤化され得る。抗体を含有するリポソームは当該分野で公知の方法、例えばEpstein et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:3688(1985);Hwang et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4030(1980);並びに米国特許第4,485,045号及び同第4,544,545号に記載されるような方法により製造される。増強された循環時間を有するリポソームは米国特許第5,013,556において開示される。
【0118】
ヒト化抗α2インテグリン抗体はまた、抗体をプロドラッグ−活性化酵素(これはプロドラッグ(例えばペプチジル化学療法剤、例えばWO81/01145を参照のこと)を活性薬物へと変換する)に結合することにより、抗体誘導性酵素プロドラッグ療法(Antibody Directed Enzyme Prodrug Therapy)(ADEPT)において使用され得る(例えば、WO88/07378及び米国特許第4,975,278号を参照のこと)。
【0119】
酵素は、上で考察したヘテロ二重官能性架橋試薬の使用を含む当該分野で周知の技術により抗α2インテグリン抗体に共有結合で結合され得る。あるいは、酵素の少なくとも機能的に活性な部分に連結された抗α2インテグリン抗体の少なくとも抗原に結合する領域を含む融合タンパク質は、当該分野で周知の組み換えDNA技術を使用して構築され得る(例えば、Neuberger et al.、Nature 312:604−608(1984)を参照のこと)。
【0120】
ヒト化抗α2インテグリン抗体の共有結合の修飾は、例えば化学合成又は抗体の酵素的若しくは化学的切断により行われ得る。抗体の他の種類の共有結合修飾は、抗体の標的化されたアミノ酸残基を、選択された側鎖又はN若しくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることにより分子中に導入される。システイニル残基を、例えば最も一般的には、α−ハロアセテート(及び対応するアミン)、例えばクロロ酢酸又はクロロアセトアミドと反応させてカルボキシメチル又はカルボキシアミドメチル誘導体を得る。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α−ブロモ−β−(5−イミダゾリル)プロピオン酸、クロロアセチルホスフェート、N−アルキルマレイミド類、3−ニトロ−2−ピリジルジスルフィド、メチル2−ピリジルジスルフィド、p−クロロメルクリベンゾエート、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール、又はクロロ−7−ニトロベンゾ−2−オキサ−1,3−ジアゾールとの反応により誘導体化される。ヒスチジル残基は、例えば、ジエチルピロカーボネートがヒスチジル側鎖に比較的特異性であるので、pH5.5−7.0でのこの薬剤との反応により誘導体化される。パラ−ブロモフェナシルブロミドもまた有用であり;反応は好ましくは0.1Mカコジル酸ナトリウム中でpH6.0にて行われる。リジニル及びアミノ末端残基を、例えば、コハク酸無水物または他のカルボン酸無水物と反応させる。これらの薬剤を用いた誘導体化は、リジニル残基の電荷を逆転させる効果を有する。α−アミノ含有残基の誘導体化のための他の適切な試薬としては、イミドエステル類、例えばピコリンイミド酸メチル、リン酸ピリドキサール、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O−メチルイソウレア、2,4−ペンタンジオン、及びグリオキシレートとのトランスアミナーゼ触媒反応が挙げられる。例えばアルギニル残基は、1つ又はいくつかの従来の試薬、とりわけフェニルグリオキサール、2,3−ブタンジオン、1,2−シクロヘキサンジオン、及びニンヒドリンとの反応により修飾される。アルギニン残基の誘導体化は、グアニジン官能基の高いpKaのためにアルカリ条件で反応を行うことを必要とする。さらに、これらの試薬はリジンの基、さらにはアルギニンイプシロン−アミノ基と反応し得る。例えばチロシル残基は、芳香族ジアゾニウム化合物又はテトラニトロメタンとの反応により、スペクトル標識をチロシル残基中に導入することに特に興味を持って特異的に修飾される。最も一般的には、N−アセチルイミジゾール(N−acetylimidizole)及びテトラニトロメタンが、O−アセチルチロシル種及び3−ニトロ誘導体をそれぞれ形成するために使用される。チロシル残基を125I又は131Iを使用してヨウ素化し、ラジオイムノアッセイにおける使用のための標識されたタンパク質を製造する。カルボキシル側基、例えばアスパルチル又はグルタミルは、カルボジイミド類(R−N=C=N−R')、[ここでR及びR'は異なるアルキル基である]、例えば1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリニル−4−エチル)カルボジイミド又は1−エチル−3−(4−アゾニア−4,4−ジメチルペンチル)カルボジイミドとの反応により選択的に修飾される。さらに、アスパルチル及びグルタミル残基は、アンモニウムイオンとの反応によりアスパラギニル及びグルタミニル残基へと変換される。グルタミニル及びアスパラギニル残基は、しばしば脱アミド化されてそれぞれ対応するグルタミル及びアスパルチル残基になる。これらの残基は中性又は塩基性条件下で脱アミド化される。これらの残基の脱アミド化形態は本発明の範囲内に含まれる。他の修飾としては、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン、及びヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化(T.E.Creighton、Proteins:Structure and Molecular Properties、W.H.Freeman & Co.、San Francisco、pp.79−86(1983))、N−末端アミンのアセチル化、及びC末端カルボキシル基のアミド化が挙げられる。
【0121】
別の型の共有結合修飾は、抗体へのグリコシドの化学的または酵素的なカップリングを含む。これらの手順は、N連結又はO連結グリコシル化のためのグリコシル化能を有する宿主細胞における抗体の産生を必要としないという点で有利である。使用されるカップリング様式に依存して、糖(単数又は複数)が、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)遊離スルフヒドリル基、例えばシステインのもの、(d)遊離ヒドロキシル基、例えばセリン、スレオニン若しくはヒドロキシプロリンのもの、(e)芳香族残基、例えばフェニルアラニン、チロシン若しくはトリプトファンのもの、又は(f)グルタミンのアミド基に結合され得る(例えば、WO87/05330;Aplin and Wriston、CRC Crit.Rev.Biochem.、pp.259−306(1981)を参照のこと)。
【0122】
抗体に存在する炭水化物部分の除去は、例えば化学的又は酵素的に達成され得る。化学的な脱グリコシル化は、抗体を化合物トリフルオロメタンスルホン酸、又は同等の化合物に曝露することを必要とする。この処理は、連結糖(N−アセチルグルコサミン又はN−アセチルガラクトサミン)を除く大部分又は全ての糖の切断を生じるが、抗体はインタクトなままである(例えば、Hakimuddin、et al.、Arch.Biochem.Biophys.259:52(1987);Edge et al.、Anal.Biochem.、118:131(1981)を参照のこと)。抗体上の炭水化物部分の酵素的切断は、様々なエンド−及びエキソ−グリコシダーゼの使用により達成され得る(例えば、Thotakura et al.、Meth.Enzymol.138:350(1987)を参照のこと)。
【0123】
抗体の別の型の共有結合修飾は、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリオキシアルキレンのような様々な非タンパク質性ポリマーのうちの1つに抗体を連結させることを含む(例えば、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号又は同第4,179,337号を参照のこと)。
【0124】
ヒト化抗α2インテグリン抗体をコードする単離された核酸、さらにはこの核酸を含むベクター及び宿主細胞、並びに抗体の産生のための組み換え技術が本明細書に記載される。抗体の組み換え産生のために、抗体をコードする核酸(単数又は複数)を単離し、そしてさらなるクローニング(DNAの増幅)又は発現のために複製可能なベクター中に挿入する。抗体をコードするDNAは、容易に単離され、そして従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に対して特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)配列決定される。多くのベクターが利用可能である。ベクター構成要素は、一般的には、限定されないが、以下のうちの1つ又はそれ以上を含む:シグナル配列、複製起点、1つ又はそれ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列。
【0125】
抗α2インテグリン抗体は、好ましくは成熟タンパク質又はポリペプチドのN末端における特異的切断部位を有するシグナル配列又は他のポリペプチドである異種ポリペプチドとの融合ポリペプチドを含めて、組み換えにより産生され得る。選択された異種シグナル配列は、好ましくは宿主細胞により認識されそしてプロセシングされる(例えばシグナルペプチドにより切断される)ものである。真核生物シグナル配列(例えば免疫グロブリンシグナル配列)を認識及びプロセシングしない原核生物宿主細胞については、シグナル配列は、例えば、ペクチン酸リアーゼ(lysase)(例えばpelB)、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、lpp、又は熱安定性エンテロトキシンIIリーダーを含む原核生物シグナル配列により置換される。酵母分泌のためには酵母シグナル配列が利用され得、これらとしては、例えば酵母インベルターゼリーダー、因子リーダー(サッカロマイセス属及びクリベロマイセス属のα−因子リーダーを含む)、又は酸ホスファターゼリーダー、カンジダ・アルビカンス(C.albicans)グルコアミラーゼリーダー、又はWO90/13646に記載されるシグナルが挙げられる。哺乳動物細胞発現において、哺乳動物シグナル配列、さらにはウイルス分泌リーダー、例えば、単純ヘルペスgDシグナルが入手可能であり、利用され得る。このような前駆体領域のDNA(例えばシグナル配列)を抗α2インテグリン抗体をコードするDNAにリーディングフレームでライゲーションする。
【0126】
発現ベクター及びクローニングベクターは両方とも、ベクターが1つ又はそれ以上の選択された宿主細胞において複製することを可能にする核酸配列を含む。一般的にクローニングベクターにおいて、この配列はベクターが宿主染色体DNAとは無関係に複製することを可能にする配列であり、そして複製起点又は自己複製配列を含む。このような配列は様々な細菌、酵母及びウイルスに関して周知である。例えば、プラスミドpBR322からの複製起点はグラム陰性細菌に適しており、2μプラスミド起点は酵母に適しており、そして様々なウイルス起点(SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSV又はBPV)は哺乳動物細胞におけるクローニングベクターに有用である。一般的に、複製起点構成要素は哺乳動物発現ベクターには必要ない(例えば、SV40起点は典型的にはただそれが初期プロモーターを含有するという理由で使用され得る。
【0127】
発現ベクター及びクローニングベクターは、選択可能なマーカーとも呼ばれる選択遺伝子を含有し得る。典型的な選択遺伝子は、抗生物質若しくは他の毒素、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、若しくはテトラサイクリンに対する抵抗性を付与するか、(b)栄養要求性欠損を補完するか、又は(c)複合培地から利用可能でない決定的な栄養素を供給する(例えばバシラス属に対してD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子)、タンパク質をコードする。
【0128】
選択スキームの一例は、宿主細胞の増殖を停止させる薬物を利用する。異種遺伝子で首尾よく形質転換される細胞は、薬物抵抗性を付与するタンパク質を産生し、従って選択レジメンを生き残る。このような優性選択の例は薬物メトトレキサート、ネオマイシン、ヒスチジノール、プロマイシン、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンを使用する。
【0129】
哺乳動物細胞に適した選択可能なマーカーの別の例は、抗α2インテグリン抗体核酸を取り込む能力のある細胞の同定を可能にするもの、例えばDHFR、チミジンキナーゼ、メタロチオネイン−I及び−II、好ましくは霊長類メタロチオネイン遺伝子、アデノシンデアミナーゼ、オルニチンデカルボキシラーゼなどである。
【0130】
例えば、DHFR選択遺伝子で形質転換された細胞は、DHFRの競合アンタゴニストであるメトトレキサート(Mtx)を含有する培地中で形質転換体を全て培養することにより最初に同定される。野生型DHFRが使用される場合に適切な宿主細胞は、DHFR活性を欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である。
【0131】
あるいは、抗α2インテグリン抗体、野生型DHFRタンパク質、及び別の選択可能なマーカー、例えばアミノグリコシド3'−ホスホトランスフェラーゼ(APH)をコードするDNA配列で形質転換又は同時形質転換された宿主細胞(特に内在性DHFRを含有する野生型宿主)は、選択可能なマーカーに対する選択剤(アミノグリコシド抗生物質、例えばカナマイシン、ネオマイシン、又はG418を含む)を含有する培地における細胞増殖により選択され得る(例えば米国特許第4,965,199号を参照のこと)。
【0132】
酵母における使用のための1つの適切な選択遺伝子は、酵母プラスミドYRp7に存在するtrp1遺伝子である(Stinchcomb et al.、Nature、282:39(1979))。trp1遺伝子は、トリプトファンが存在しない場合に増殖する能力のない酵母の変異系統のための選択マーカーを生じる、例えばATCC No.44076又はPEP4−1(例えば、Jones、Genetics、85:12(1977)を参照のこと)。次いで、酵母宿主細胞ゲノムにおけるtrp1損傷(lesion)の存在が、トリプトファンが存在しない場合の増殖により形質転換を検出するための有効な環境を生じる。同様に、Leu2−欠損酵母系統(ATCC 20,622又は38,626)は、Leu2遺伝子を有する公知のプラスミドにより補完される。
【0133】
さらに、1.6μ環状プラスミドpKD1から誘導されるベクターは、クリベロマイセス属(Kluyveromyces)酵母の形質転換のために使用され得る。あるいは、組み換え仔牛キモシンの大規模製造のための発現系がK.lactisに関してVan den Berg、Bio/Technology、8:135(1990)により報告された。クリベロマイセス属の工業用菌株による成熟組み換えヒト血清アルブミンの分泌のための安定なマルチコピー発現ベクターも開示されている(例えば、Fleer et al.、Bio/Technology、9:968−975(1991)を参照のこと)。
【0134】
発現ベクター及びクローニングベクターは、宿主生物に認識され、そして抗α2インテグリン抗体核酸に作動可能に(operably)連結されるプロモーターを通常は含有する。原核生物宿主とともに使用するために適したプロモーターとしては、アラビノースプロモーター(例えばaraB)、phoAプロモーター、β−ラクタマーゼ及びラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン(trp)プロモーター系、及びハイブリッドプロモーター、例えばtacプロモーターが挙げられる。しかし、他の公知の細菌プロモーターが適している。細菌系における使用のためのプロモーターはまた、抗α2インテグリン抗体をコードするDNAに作動可能に連結されたシャイン・ダルガノ(S.D.)配列を含有する。
【0135】
プロモーター配列は真核生物に関して知られている。大部分の真核生物遺伝子は、転写が開始される部位から約25〜30塩基上流に位置するAT−リッチ領域を有する。多くの遺伝子の転写始点から70〜80塩基上流に見られる別の配列 はCNCAAT領域[ここでNはいずれのヌクレオチドであってもよい]である。大部分の真核生物遺伝子の3'末端に、コード配列の3’末端へのポリAテールの付加に関するシグナルであり得るAATAAA配列がある。このような配列は真核生物発現ベクター中に適切に挿入される。
【0136】
酵母宿主とともに使用するために適したプロモーター配列の例としては、限定されないが、3−ホスホグリセレートキナーゼ又は他の解糖酵素、例えばエノラーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸脱炭酸酵素、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセレートムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ホスホグルコースイソメラーゼ、及びグルコキナーゼについてのプロモーターが挙げられる。増殖条件により制御される転写のさらなる利点を有する誘導性プロモーターである他の酵母プロモーターは、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝と関連する分解酵素、メタロチオネイン、グリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、並びにマルトース及びガラクトースの利用に関与する酵素についてのプロモーター領域である。酵母発現における使用に適したベクター及びプロモーターは、EP 73,657にさらに記載される。酵母エンハンサーも酵母プロモーターとともに有利に使用される。
【0137】
哺乳動物宿主細胞におけるベクターからの抗α2インテグリン抗体の転写は、例えば、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス又はシミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから、異種哺乳動物プロモーター、例えば、アクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーターから、熱ショックプロモーターから得られるプロモーターにより制御されるが、ただしこのようなプロモーターは宿主細胞系と適合性である。SV40ウイルスの初期及び後期プロモーターはSV40ウイルス複製起点も含有するSV40制限フラグメントとして都合よく得られる。ヒトサイトメガロウイルスの最初期(immediate early)プロモーターは、HindIII E制限フラグメントとして都合よく得られる。ベクターとしてウシパピローマウイルスを使用して哺乳動物宿主においてDNAを発現させるための系は米国特許第4,419,446号に開示され、そしてこの系の改変が米国特許第4,601,978号に記載される(単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼプロモーターの制御下でのマウス細胞におけるヒトβ−インターフェロンcDNAの発現に関してReyes et al.、Nature 297:598−601(1982)も参照のこと)。あるいは、ラウス肉腫ウイルス末端反復配列をプロモーターとして使用することができる。
【0138】
高等真核生物による抗α2インテグリン抗体をコードするDNAの転写は、ベクター中にエンハンサー配列を挿入することによりしばしば増加される。多くのエンハンサー配列が現在では哺乳動物遺伝子から知られている(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、及びインスリン)。しかししばしば、真核生物細胞ウイルスからのエンハンサーが使用される。例としては、複製起点の後期側(bp100−270)上のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側上のポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサー(例えば、真核生物プロモーターの活性化のための増強エレメントに関してYaniv、Nature 297:17−18(1982)を参照のこと)。エンハンサーは抗α2インテグリン抗体コード配列に対して5’又は3’の位置でベクター中にスプライスされ得るが、好ましくはプロモーターから5’の部位に位置する。他の遺伝子調節系は当該分野で周知であり(例えば誘導性の系、例えばテトラサイクリン誘導系及びGeneSwitchTM)、抗α2インテグリンをコードするDNAの転写を制御するために使用され得る。
【0139】
真核生物宿主細胞(酵母、真菌、昆虫、植物、動物、ヒト又は他の多細胞生物由来の有核細胞)において使用される発現ベクターはまた、転写の終結及びmRNAの安定化に必要な配列を含有する。このような配列は一般的には真核生物又はウイルスのDNA又はcDNAの5'非翻訳領域(及び時折3'非翻訳領域)から入手可能である。これらの領域は、抗α2インテグリン抗体をコードするmRNAの非翻訳部分におけるポリアデニル化フラグメントとして転写されるヌクレオチド区域を含有する。1つの有用な転写終結構成要素は、ウシ成長ホルモンポリアデニル化領域である(例えば、WO94/11026及びそこに開示される発現ベクターを参照のこと)。
【0140】
本明細書においてベクターでDNAをクローニング又は発現させるための適切な宿主細胞は、上記のような原核生物、酵母、又は高等真核生物細胞である。この目的のために適切な原核生物としては、グラム陰性又はグラム陽性生物を含む真正細菌、例えば、腸内細菌科、例えば大腸菌類、例えば、E.coli、エンテロバクター、エルウィニア、クレブシエラ、プロテウス、サルモネラ、例えば、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア、例えば、霊菌(Serratia marcescans)、及び赤痢菌、さらには桿菌、例えば枯草菌(B.subtilis)及びバチルス・リケニフォルミス(B.licheniformis)、シュードモナス、例えば緑膿菌(P.aeruginosa)、及びストレプトマイセスが挙げられる。適切なE.coliクローニング宿主としては、E.coli 294(ATCC 31,446)、E.coli B、E.coli X1776(ATCC31,537)、及びE.coli W3110(ATCC27,325)が挙げられる。
【0141】
原核生物に加えて、真核微生物、例えば糸状菌又は酵母は、抗アルファ2インテグリン抗体をコードするベクターのための適切なクローニング又は発現宿主である。出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、又は一般的なパン酵母は、下等真核生物宿主微生物の中で最も一般的に使用される。しかし、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe);クリベロマイセス・ラクチス(K.lactis)、クリベロマイセス・フラジリス(K.fragilis)(ATCC 12,424)、クリベロマイセス・ブルガリクス(K.bulgaricus)(ATCC 16,045)、クリベロマイセス・ウィッケルハミ(K.wickeramii)(ATCC 24,178)、クリベロマイセス・ワルチ(K.waltii)(ATCC 56,500)、クリベロマイセス・ドロソフィラルム(K.drosophilarum)(ATCC 36,906)、クリベロマイセス・サーモトレランス(K.thermotolerans)、又はクリベロマイセス・マルキシアヌス(K.marxianus)を含むクリベロマイセス属宿主;ヤロウイア(EP402,226);ピキア・パストリス(Pichia pastoris)(EP 183,070);カンジダ;トリコデルマ・リーシア(Trichoderma reesia)(EP244,234);アカパンカビ(Neurospora crassa);シュワンニオミセス(Schwanniomyces)、例えばシュワニオミセス・オキシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis);及びニューロスポラ、ペニシリン、トリポクラジウム(Tolypocladium)、又はアスペルギルス宿主、例えばアスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)若しくはクロコウジカビ(A.niger)を含む糸状菌のような多数の他の属、種、及び系統が一般的に入手可能であり、かつ有用である。
【0142】
グリコシル化抗α2インテグリン抗体の発現に適した宿主細胞は多細胞生物由来である。無脊椎動物細胞の例としては、植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。多数のバキュロウイルス株及び変異体、並びにヨトウガ(Spodoptera frugiperda)(イモムシ)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)(蚊)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)(蚊)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)(ショウジョウバエ)、及びカイコ(Bombyx mori)のような宿主からの対応する許容昆虫宿主細胞が同定されている。トランスフェクションのための様々なウイルス株、例えば、オートグラファ・カリフォルニカ(Autographa californica)NPVのL−1変異体及びカイコ(Bombyx mori)NPVのBm−5株が公的に入手可能であり、そしてこのようなウイルスは、特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために使用され得る。
【0143】
ワタ、トウモロコシ、ジャガイモ、ダイズ、ペチュニア、トマト、及びタバコの植物細胞培養もまた宿主として利用され得る。
【0144】
しかし、脊椎動物細胞に最も興味が持たれており、そして様々な哺乳動物細胞を含む脊椎動物細胞の増殖は、慣用の手順になった。有用な哺乳動物宿主細胞の例としては:SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(例えば、COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胎仔腎臓株293又は懸濁培養における増殖のためにサブクローニングされた293細胞(例えば、Graham et al.、J.Gen Virol.36:59(1977)を参照のこと);ベビーハムスター腎臓細胞(例えば、BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(DHFRを欠損したCHO細胞を含む)(例えば、DHFR Urlaub et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980)を参照のこと);マウスセルトリ細胞((例えば、TM4、Mather、Biol.Reprod.23:243−251(1980));サル腎臓細胞(例えば、CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(例えば、VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸がん細胞(例えば、HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(例えば、MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(例えば、BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(例えば、W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(例えば、Hep G2、HB 8065);マウス乳腺腫瘍(例えば、MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(例えば、Mather et al.、Annals N.Y Acad.Sci.383:44−68(1982)を参照のこと);MRC 5細胞;FS4細胞;又はヒトヘパトーマ株(例えば、Hep G2)が挙げられる。
【0145】
宿主細胞は、抗α2インテグリン抗体産生のための上記の発現ベクター又はクローニングベクターを用いて形質転換され、そしてプロモーターを誘導し、形質転換体を選択し、そして/又は所望の配列をコードする遺伝子を増幅するために適切なように改変された従来の栄養培地中で培養される。
【0146】
抗α2インテグリン抗体を産生するために使用される宿主細胞は、様々な培地中で培養され得る。Ham's F10(Sigma)、基礎培地((MEM)、(Sigma)、RPMI−1640(Sigma)、及びダルベッコ変法イーグル培地((DMEM)、Sigma)のような市販の培地は、宿主細胞の培養に適している。さらに、Ham et al.、Meth.Enz.58:44(1979)、Barnes et al.、Anal.Biochem.102:255(1980)、米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;同第4,560,655号;若しくは同第5,122,469号;WO90103430;WO 87/00195;又は米国再発行特許第30,985号に記載される培地のいずれかが宿主細胞のための培地として使用され得る。これらの培地はいずれも、必要に応じてホルモン及び/又は他の成長因子(例えばインスリン、トランスフェリン、又は上皮増殖因子)、塩(例えば塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩)、緩衝剤(例えばHEPES)、ヌクレオチド(例えばアデノシン及びチミジン)、抗生物質(例えばGENTAMYCINTM薬)、微量元素(通常はマイクロモル濃度範囲の最終濃度で存在する無機化合物と定義される)、並びにグルコース又は同等のエネルギー源を追加されてもよい。他の必要な栄養補助剤も、当業者に理解される適切な濃度で含まれ得る。温度、pHなどのような培養条件は、選択された宿主を用いて発現のために以前に使用された培養条件を含めて当業者により選択される。
【0147】
抗α2インテグリン抗体は、微生物又は哺乳動物細胞を含む細胞から、例えばプロテインAクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析及び/又はアフィニティークロマトグラフィーを使用して精製され得る。アフィニティーリガンドとしてのプロテインAの適合性は、抗体に存在する免疫グロブリンFcドメインの種及びアイソタイプに依存する。プロテインAは、ヒトγ1、γ2、又はγ4重鎖に基づいて抗体を精製するために使用され得る(例えば、Lindmark et al.、J.Immunol.Meth.62:1−13(1983)を参照のこと)。プロテインGはマウスアイソタイプ及びヒトγ3に有用である(例えば、Guss et al、EMBO J.5:1516−1517(1986)を参照のこと)。アフィニティリガンドが付着されるマトリックスは、最も頻繁にはアガロースであるが、他のマトリックスが利用可能である。機械的に安定なマトリックス、例えば制御孔ガラス(controlled pore glass)又はポリ(スチレンジビニル)ベンゼンは、アガロースで達成され得るよりも速い流速及び短い処理時間を可能にする。抗体がCH3ドメインを含む場合、Bakerbond ABXTM(J.T.Baker、Phillipsburg、N.J.)が精製に有用である。タンパク質精製は、以下の技術の1つ又はそれ以上を含み得る、例えばイオン交換カラムでの分画、エタノール沈殿、逆相HPLC、シリカでのクロマトグラフィー、ヘパリンSEPHAROSETMでのクロマトグラフィー、アニオン若しくはカチオン交換樹脂でのクロマトグラフィー(例えば、ポリアスパラギン酸カラム)、クロマトフォーカシング、SDS−PAGE、硫酸アンモニウム沈殿及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィー。例えば、いずれかの精製工程の後に、目的の抗体及び夾雑物を含む混合物を、約2.5〜4.5の間のpHで溶離緩衝液を使用して、好ましくは低い塩濃度(例えば約0〜0.25Mの塩)で行われる低pH疎水性相互作用クロマトグラフィーにかけることが有用であり得る。
【0148】
治療的投与のためのものを含む抗α2インテグリン抗体の製剤は、所望の純度を有する抗体を任意の生理学的に許容しうる担体、希釈剤、添加剤又は安定剤(Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol、A.Ed.(1980))と混合することにより、凍結乾燥製剤又は水性液剤の形態で貯蔵のために製造される。許容しうる担体、希釈剤、添加剤又は安定剤は、使用される投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、そしてこれらとしては、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸のような緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存料(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;アルキルパラベン類、例えばメチル若しくはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;及びm−クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン;単糖類、二糖類、若しくはグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;キレート剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば、Zn−タンパク質複合体);及び/又は非イオン性界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTM又はポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。治療用途には、本発明の抗α2インテグリン抗体を例えば0,03%Tween−80TMを含有するリン酸緩衝化食塩水(PBS)中で製剤化し得る。
【0149】
抗体製剤はまた、処置される特定の適応症に対して活性な化合物、好ましくは互いに不利な影響を及ぼさない補完的な活性を有するものを1つより多く含有してもよい。問題の障害を予防又は処置するために現在使用される1つ又はそれ以上の薬剤に加えて抗α2インテグリン抗体を使用することが望ましいかもしれない。さらに、免疫抑制剤をさらに提供することが望ましいかもしれない。このような分子は意図される目的に有効な量で組み合わせて適切に存在する。
【0150】
活性成分はまた、例えば、コアセルベーション技術により、又は界面重合により製造されたマイクロカプセル、例えば、ヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチンマイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート(methylmethacylate))マイクロカプセル中に、それぞれコロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子又はナノカプセル)又はマクロエマルション(macroemulsions)で封入され得る。このような技術は、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences 16th edition、Osol、A.Ed.(1980)に記載される。
【0151】
インビボ投与のために使用するための製剤は好ましくは滅菌である。これは例えば滅菌ろ過膜を通すろ過により容易に達成される。
【0152】
徐放性製剤が製造され得る。徐放性製剤の適切な例としては、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスが挙げられ、このマトリックスは成形された物品の形態、例えばフィルム、又はマイクロカプセルである。徐放性マトリックスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、又はポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L−グルタミン酸及びγエチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−ビニルアセテート、分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、例えばLupron DepotTM(乳酸−グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射可能マイクロスフェア)、並びにポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。エチレン−ビニルアセテート及び乳酸−グリコール酸のようなポリマーは100日間を超える分子の放出を可能にするが、特定のヒドロゲルは、タンパク質をより短い期間で放出する。封入された抗体が体内に長時間残る場合、それらは37℃で水分に曝される結果として変性又は凝集し得、生物活性の損失及び免疫原性の可能な変化を生じる。論理的な方策が含まれる機構に依存して安定化のために構築され得る。例えば、凝集機構はチオ−ジスルフィド交換による分子間S−S結合形成であることが発見される場合、安定化はスルフヒドリル残基を修飾すること、酸性溶液から凍結乾燥すること、水分含有量を制御すること、適切な添加剤を使用すること、及び特定のポリマーマトリックス組成物を開発することにより達成され得る。
【0153】
ヒト化抗α2インテグリン抗体の治療上の使用
抗α2インテグリン抗体は、本明細書に記載される様々なα2β1インテグリン関連障害を処置するために使用され得る。抗α2インテグリン抗体は、非経口、皮下、腹腔内、肺内、又は鼻腔内を含むいずれかの適切な手段により投与される。 局所免疫抑制処置が望まれる場合、抗体の病巣内投与(潅流又はそうでなければ移植片を移植前に抗体と接触させることを含む)が行われる。非経口投与としては、筋内、静脈内、動脈内、腹腔内又は皮下投与が挙げられる。さらに、抗α2インテグリン抗体は、例えば抗体の漸減する用量を用いたパルス注入により適切に投与される。好ましくは、投薬は注射により行われ、最も好ましくは静脈内又は皮下注射である。これは、投与が短時間又は慢性的のいずれであるかに一部依存し得る。より好ましくは、本明細書に記載される抗α2インテグリン抗体又は組成物は、本発明の方法において静脈内注入、静脈内ボーラス、皮下投与、皮下注入又は皮下ボーラスにより投与されるが、一方で(wheras)静脈内注入又は静脈内ボーラスが最も好ましい。用語「静脈内注入」は、薬物を動物又はヒト患者の静脈中に約5分よりも長い時間、好ましくは約30〜90分の間かけて導入することをさすが、本発明によれば、静脈内注入はあるいは10時間又はそれ以下で投与される。用語「静脈内ボーラス」又は「静注(intravenous push)」は、約15分又はそれ以下、好ましくは5分又はそれ以下で薬物を身体に入れるように動物又はヒトの静脈中に薬物を投与することを指す。用語「皮下投与」は、動物又はヒト患者の皮膚の下に、好ましくは皮膚と下にある組織との間のポケット内に、比較的ゆっくりと持続して薬物容器から送達することにより薬物を導入することを指す。このポケットは皮膚を下にある組織から上に離して挟むか引っ張ることにより作製され得る。用語「皮下注入」は、動物又はヒト患者の皮膚下に、好ましくは皮膚と下にある組織との間のポケット内に、薬物容器から30分若しくはそれ以下、又は90分若しくはそれ以下を含むがこれらに限定されない時間の間、比較的ゆっくりと持続して送達することにより薬物を導入することを指す。用語「皮下ボーラス」は、ボーラス薬物送達が、好ましくは約15分未満、より好ましくは5分未満、そして最も好ましくは60秒未満である場合の、動物又はヒト患者の皮膚の下への薬物投与を指す。投与は好ましくは皮膚と下にある組織との間のポケット内であり、この場合、ポケットは例えば皮膚を下にある組織の上に離して挟むか引っ張ることにより作製される。場合により、注入は、動物又はヒト患者の皮膚下に移植される薬物送達ポンプの皮下埋め込みにより行われ得、ここでポンプは所定の量の薬物を所定の期間の間、例えば30分、90分、又は処置計画の長さに及ぶ期間の間送達する。間欠性又は周期的な投薬は、特定の期間の間継続し、かつ好ましくは1日より長く一定間隔を空けられる投薬である。
【0154】
本明細書で同意語として使用される「治療有効量」又は「有効量」は、症状を寛解若しくは予防するか、又は処置される対象者の生存を延長させるために有効である、本明細書に記載される抗α2インテグリン抗体の量を指す。治療有効量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示を考慮すれば十分に当業者の能力の範囲内である。本明細書に記載される用語抗α2インテグリン抗体の「治療有効量」は、がん、例えば腫瘍成長を遅らせるか又は抑制するために必要な量を具体的に指す。
【0155】
α2β1インテグリン関連障害の予防又は処置については、抗体の適切な投薬量は、上で定義されるような処置しようとする疾患の型、疾患の重篤度及び経過、抗α2インテグリン抗体が予防目的又は治療目的のいずれで投与されるか、以前の治療、患者の臨床歴及び抗体への反応、並びに担当医の裁量に依存する。抗体は1回で、又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。
【0156】
従って抗α2インテグリン抗体は、対象者(好ましくはヒト)に、本発明の方法で、約0.1〜約100mg/kgの範囲に及ぶ治療有効量で投与され得る。好ましくは、約1〜約20mg/kgの範囲に及ぶ治療有効量、より好ましくは約3〜約10mg/kgの範囲に及ぶ治療有効量が対象者、好ましくはヒトに投与される。ヒト化抗体又はその結合フラグメントの治療有効量は、1つ又はそれ以上の治療有効用量で対象者に投与され得る。
【0157】
α2β1インテグリン関連障害の予防又は処置については、抗体の適切な投薬量は、上で定義される処置しようとする疾患の型、疾患の重篤度及び経過、抗α2インテグリン抗体が予防目的又は治療目的のいずれで投与されるか、以前の治療、患者の臨床歴及び抗体への反応、並びに担当医の裁量に依存する。抗体は1回で、又は一連の処置にわたって患者に適切に投与される。
【0158】
α2β1インテグリン関連障害の型及び重篤度に依存して、例えば1回若しくはそれ以上の別々の投与によっても、又は持続注入によっても、約0.1mg/kg〜約100mg/kgの抗体が対象者に投与するための最初の候補投薬量である。例えばヒトへの典型的な1日投薬量は、上述の因子に依存して0.1mg/k〜20mg/kg又はそれ以上の範囲に及ぶかもしれない。数日又はそれ以上にわたる反復投与については、状態に依存して、疾患症状の望ましい抑制が起こるまで処置を持続する。しかし、他の投薬計画が有用かもしれず、例えば2週ごとに1回の用量計画は好ましいように思われる。この治療の進行は当業者により容易にモニタリングされる。
【0159】
抗α2インテグリン抗体組成物は、適した医療行為と整合するやり方で製剤化され、投薬され、そして投与される。この文脈で考慮される因子としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、薬理試験及び毒性試験からの結果、並びに医療実施者に公知の他の因子が挙げられる。投与しようとする抗体の治療有効量は、上述のことを考慮して決定され、そしてα2β1インテグリン関連障害を予防、寛解又は処置するために必要な最小量である。このような量は、好ましくは宿主に対して毒性であるか又は宿主を感染に対して有意により感受性にする量よりも少ない。
【0160】
抗α2インテグリン抗体は、問題となる障害を予防又は処置するために現在使用される1つ又はそれ以上の薬剤との補助的療法として、必ずしも必要でないが場合により製剤化されても、同時投与されても、使用されてもよい。例えば関節リウマチにおいて、抗体はグルココルチコステロイド、Remicaid(R)又は関節リウマチについて承認されたいずれかの処置と関連して投与され得る。多発性硬化症については、インターフェロンβ、Avonex、Copaxon、又は多発性硬化症の徴候及び症状の処置のための他の認証された治療と関連して投与され得る。移植については、抗体は、シクロスポリンAのような上で定義された免疫抑制剤と同時に、又は別々に、免疫抑制効果を調節するために投与され得る。あるいは、又はさらに、α2β1インテグリンアンタゴニストは、α2β1インテグリン関連障害に罹患している哺乳動物に投与され得る。このような他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する抗α2インテグリン抗体の量、障害又は処置の型、及び上で考察された他の因子に依存する。これらは一般的に、同じ投薬量で、そして本明細書で以前に使用された投与経路で、又は従来使用される投薬量のおよそ1〜99%で使用される。
【0161】
以下の実施例は例示のために提供されるのであり、限定のためではない。明細書中の全ての引用の開示は、参照により本明細書に明示的に加入される。
【実施例】
【0162】
実施例1:増強された補体媒介性エフェクター機能を有するヒト化抗アルファ2インテグリン抗体変異体
そこで記載されるヒト化抗α2インテグリン抗体は、抗α2(抗VLA2)抗体の新規なサブグループを表し、これらは予期せずインビボ出血合併症がないこと、及び/又は血小板α2β1インテグリン活性化がないことを特徴とする。しかしWO2007/056858において開示されるIgG4抗体は、ADCC及び/又はCDCのようなエフェクター機能を有しておらず、これらは特定の状況下、例えばα2β1インテグリン関連がんの処置のためには望ましく、この場合この機能は、処置の増加した有効性をもたらし得る。従って、これらのエフェクター機能を高度に示す抗α2β1インテグリン抗体を開発することが望ましいだろう。
【0163】
ヒトIgGの4つのアイソタイプは、エフェクター機能及び他の活性の効力において互いに異なる。一般に、効力の順位は、ADCCについてIgG1≧IgG3>>IgG4≧IgG2であり、そしてCDCについてIgG3≧IgG1>>IgG2=IgG4である(Niwa R.et al.、J Immunol Methods 2005;306:151−60)。この研究において、WO2007/056858に開示される1つの抗VLA−2 IgG4抗体(重鎖配列番号57、及び軽鎖配列番号56を有する)を、天然に存在するヒト抗体アイソタイプ変異体IgG1、IgG2、及びIgG3;操作されたヒトIgG1アイソタイプ変異体、並びにヒトIgG1及びヒトIgG3アイソタイプ変異体のキメラからなる抗VLA2抗体の新しいサブグループを作製するために使用した。全ての変異体を、オーバーラップPCRアセンブリ法に基づく変異誘発技術により作製した。
【0164】
全長抗体変異体を生成するために、それぞれ新しく作製された重鎖ベクターを、軽鎖配列(配列番号56)をコードする抗VLA−2カッパ軽鎖cDNAを有しそして以下に記載される重鎖ベクターと同一の発現調節エレメントを有する同じ抗VLA−2カッパ軽鎖ベクターを用いてトランスフェクトした。結果として、新規な抗VLA2抗体変異体の重鎖は、新規な全長抗体変異体を規定し;従って重鎖及び対応する全長抗体は同じ名称指定される。
【0165】
天然に存在するヒト抗体アイソタイプに基づく変異体
天然に存在するアイソタイプ変異体重鎖を作製するために、重鎖ヒンジ及び配列番号57の定常ドメイン(そのC末端にに対してKabat残基119(配列番号57における残基121に相当する))をコードする抗VLA−2 IgG4抗体のcDNAを、ヒトIgG1(NCBI GenBank受入番号J00228.1、残基1からそのC末端までの配列)、ヒトIgG2(NCBI GenBank受入番号J00230.1、残基1からそのC末端までの配列)、及びヒトIgG3(NCBI GenBank受入番号X03604.1、残基2からそのC末端までの配列)のヒンジ及び定常ドメインについてのアミノ酸をコードする対応するcDNA配列で置き換えた。これらの天然に存在する重鎖変異体が、その後それぞれ重鎖抗VLA2 IgG1(配列番号44)、重鎖抗VLA2 IgG2(配列番号45)、及び重鎖抗VLA2 IgG3(配列番号46)と指定される新規な抗VLA2抗体を規定する。
【0166】
ヒトIgG1/IgG3ヒンジ−Fcドメインシャフリングに基づく変異体
ヒトIgG3抗体は、ヒトIgG1抗体と比較して一般的に増強されたCDCを有し、これは部分的に、IgG3 FcがIgG1 Fcより高いC1q結合親和性を有するためである(Schumaker VN et al.、Biochemistry、1976、15:5175−81)。増強されたCDCを有する抗VLA−2 IgG4のキメラを生成するために、ヒトIgG1ヒンジ及び定常ドメインとヒトIgG3のヒンジ及び定常ドメインとのシャフリングストラテジーに着手した。
2つのキメラを構築した。抗VLA−2 IgG4に基づく第一のキメラを、CH1及びヒトIgG1由来のヒンジをヒトIgG3のFc部分に融合させるように操作し、そしてこれを本明細書では重鎖抗VLA−2 IgG−1133(配列番号47)と呼び;一方、抗VLA−2 IgG3に基づく第二の構築物を、ヒトIgG3由来のヒンジをヒトIgG1由来のヒンジと置き換えるように操作し、この後者のキメラを本明細書では重鎖抗VLA−2 IgG−3133(配列番号48)と呼ぶ。
抗VLA−2 IgG−1133重鎖cDNAコード配列(配列番号47)を作製するため、抗VLA−2 IgG1のための発現ベクター中のCH2及びCH3定常ドメインをコードする(Kabat残基231からそのC末端までをコードする)抗VLA−2 IgG1の重鎖cDNAの一部を、ヒトIgG3重鎖遺伝子の対応する部分(NCBI GenBank受入番号X03604.1、残基161〜377)と置き換えた。抗VLA−2 IgG−3133重鎖cDNAコード配列(配列番号48)については、抗VLA−2 IgG3重鎖についての発現ベクターにおけるヒンジ領域(NCBI GenBank受入番号X03604.1からのELKTPLGDTTHTCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCPEPKSCDTPPPCPRCP)をコードする抗VLA−2 IgG3の重鎖cDNAの部分を、ヒトIgG1重鎖遺伝子(NCBI GenBank受入番号J00228.1)の対応する部分(EPKSCDKTHTCPPCP)と置き換えた。
【0167】
増強されたCDCを有するアミノ酸変異抗VLA2抗体
抗VLA−2 IgG1の多数の変異体を、補体依存性細胞傷害(CDC)を増強させる目的で設計した。Fcγ受容体とのFc相互作用がADCCを媒介するのと同様に、補体構成要素C1qとのFc相互作用がCDCを媒介する。現在Fc/C1q複合体に関して利用可能な3D構造は存在しないが、いくつかの研究は、ヒトIgG上のC1qに対する結合部位を、残基D270、K322、P329及びP331を中心とする領域に位置づけた(Idusogie et al.、J Immunol Methods 2000、164:4178−4184)。抗VLA−2 IgG1抗体について増強されたCDCを媒介し得る変異体を調べるために、CH2ドメインのD269−K334領域においてアミノ酸修飾を設計した。
【0168】
これらの変異体cDNAコード配列を作製するために、抗VLA−2 IgG1重鎖(配列番号44)をコードするcDNA、cDNAを以下の置換を含むように変異させた:S324N(本明細書では抗VLA−2 IgG1−S324Nと呼ばれる;配列番号49)、E269D(本明細書では抗VLA−2 IgG1−E269Dと呼ばれる;配列番号50)、及びS298A(本明細書では抗VLA−2 IgG1−S298Aと呼ばれる;配列番号51)。これらの点変異を対で組み合わせることによりさらなる変異体を作製した:E269D、S298Aを組み合わせて本明細書で抗VLA−2 IgG1−E269D/S298A(配列番号52)と呼ばれる変異体を作製した;本明細書で抗VLA−2 IgG1−E269D/S324N(配列番号53)と呼ばれる別の組み合わせはE269D及びS324Nからなる;本明細書で抗VLA−2 IgG1−S298A/S324N(配列番号54)と呼ばれる第三の組み合わせは、S298A及びS324Nの変異を組み合わせた。最後に、全ての3つの変異を加えて本明細書で抗VLA−2 IgG1−E269D/S298A/S324N(配列番号55)と呼ばれる変異体を作製した。
【0169】
これらの変異体をコードするDNA配列を、CMVプロモーター及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを有する改変pREP4(Invitrogen、CA、USA)ベクターに基づくベクターにおいて連結した。この発現ベクターにおいて、マウスVJ2Cリーダーペプチドにより分泌を促進させた。
【0170】
抗VLA2抗体変異体の製造
一過性発現のために、等量の各ベクター重鎖(上記)及び抗VLA−2カッパ軽鎖ベクターを、ポリエチレンイミン(PEI)を使用して懸濁適応HEK−EBNA細胞(ATCC−CRL−10852)中に同時トランスフェクトした。典型的には、1mlあたり80万〜120万細胞の密度で懸濁状態の細胞100mlを、変異重鎖をコードする発現ベクター50μg及び発現ベクター軽鎖50μgを含有するDNA−PEI混合物を用いてトランスフェクトした。それぞれの操作された鎖の遺伝子をコードする組み換え発現ベクターが宿主細胞中に導入される場合、細胞を4〜5日間さらに培養して、0.1%プルロニック酸(pluronic acid)、4mMグルタミン、及び0.25μg/mlジェネティシンを補充した培地(EX−CELL 293、HEK293−無血清培地、Sigma、Buchs、Switzerland)中への分泌を可能にすることにより構築物を製造した。次いでこの構築物を組み換えStreamline rProtein A媒体(media)(GE Healthcare Europe GmbH、Glattbrugg、Switzerland)を使用して無細胞上清から精製し、そしてさらなる分析に使用した。
【0171】
これらの変異体のうちのいくつかの発現レベルを表1に列挙する。
【0172】
【表1】

【0173】
HT1080細胞に対する補体媒介毒性
細胞ベースのアッセイを使用して、変異体がCDCを媒介する能力を測定した。
仔ウサギ補体による変異体−オプソニン化HT1080細胞の溶解をモニタリングするために乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出を使用して溶解を測定した(Harlan Laboratories、C−0099F、AN VENRAY、The Netherlands)。標的細胞(HT1080、ATTC(R)No.CCL−121)を完全培地(10%ウシ胎仔血清(FBS、Chemie Brunschwig AG、PAA、Basel、Switzerland)及び1% Ultraglutamine(Lonza、Verviers、Belgium)を補充したRPMI−1640培地(Chemie Brunschwig AG、PAA、Basel、Switzerland))で遠心分離及び再懸濁により2回洗浄した。変異体−抗体を最終濃度1μg/mlで加えた。仔ウサギ血清を完全培地で7.5%まで希釈し、そして抗体−オプソニン化標的細胞に加えた。プレートを3時間37℃でインキュベートした。
細胞傷害性を、Cyto Tox 96非放射性細胞傷害性アッセイキット(Promega、Madison、USA)を使用して測定した。
【0174】
図1は、三つ組で行われたデータ±標準偏差を用いたこのアッセイの典型的な結果を示す。このアッセイにおいて、IgG1コントロール(データ点12番)又は親抗VLA−2 IgG4抗体(データ点1番)又は抗VLA−2 IgG2(データ点3番)抗体に起因する特異的な溶解はほとんど観測されなかった。後者の天然に存在するアイソタイプからはCDCは全く期待されないか非常に低いレベルのCDCしか期待されないが、IgG1抗体アイソタイプはIgG4及びIgG2アイソタイプに勝るCDCを有することが予測されていたので、抗VLA−2 IgG1(データ点2番)がCDCの有意な増加をもたらさなかったことはむしろ驚くべきことである。S324N変異が存在する場合のみ、抗VLA−2 IgG1−S324Nについて少なくとも6.4倍(データ点7番)、抗VLA−2 IgG1−S298A/S324Nについて6.6倍(データ点11番)、及び抗VLA−2 IgG1−E269D/S298A/S324Nについて9倍(データ点10番)CDCが増加した。補体誘導溶解はまた、ヒトIgG3抗体アイソタイプ定常領域の構成要素を有する抗体変異体について大いに増加し、CDCは抗VLA−2 IgG−1133について少なくとも5.6倍増加し(データ点5番)、そして抗VLA−2 IgG−3133について少なくとも8.6倍増加した(データ点6番)。最大のCDCの増加は、天然に存在する変異体抗VLA−2 IgG3(データ点4番)について観察され、親抗VLA−2 IgG4抗体に対して少なくとも9.6倍の増加であった。結論として、これらの結果は、抗VLA−2 IgG1抗体の状況におけるS324N変異は強力な補体誘導溶解を回復させることができ、一方で抗VLA−2 IgG3変異体はCDCの誘発において抗VLA2抗体変異体のうち最も強力であるということの証拠を提供した。
【0175】
実施例2:増強された抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有するヒト化抗アルファ2インテグリン抗体変異体
実施例1におい記載される研究で調べられた抗VLA2抗体変異体を、それらがADCCを誘発する能力について評価した。
抗体のADCC活性を、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出アッセイによりCytoTox 96非放射性細胞傷害性アッセイキット(Promega、Madison、USA)を使用して測定した。ヒト末梢血単核細胞(PBMC)をクエン酸塩加全血から標準的なFicoll−paque分離により精製し、完全培地(10%ウシ胎児血清(FBS、Chemie Brunschwig AG、PAA、Basel、Switzerland)、2mM ultraglutamine 1(Lonza、Verviers、Belgium)及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Chemie Brunschwig AG、PAA、Basel、Switzerland)を補充したRPMI−1640培地(Chemie Brunschwig AG、PAA、Basel、Switzerland))、及び100U/mlのヒトIL−2(Sigma、Missouri、USA)に再懸濁し、そして終夜37℃でインキュベートした。翌日に、遠心分離によりPBMCを集め、2回洗浄し、そして培地に8x106細胞/mlの密度で再懸濁した。細胞株HT1080を標的細胞として使用した。HT1080細胞を2回洗浄し、そして完全培地に0.2x106細胞/mlの密度で再懸濁した。1.5μg/mlで希釈された抗体50マイクロリットルを、最終濃度0.1μg/ml(図2)又は0.01μg/ml(図3)で標的細胞50μlと混合し、そしてU底96ウェルプレート中の等体積のPBMCに加えた。標的対エフェクター比1:40を実験の間中使用した。37℃で4時間インキュベートした後、細胞を遠心分離して無細胞上清の50μlサンプルを集めて、平底96ウェルプレートに移し、そしてアッセイを行った。溶解パーセントを以下のように計算した:(サンプル放出−標的自発性放出−エフェクター自発性放出) /(最大放出−標的自発性放出)*100;ここで標的自発性放出は、標的細胞のみを含有するウェルからの蛍光であり、エフェクター自発性放出は、エフェクター細胞のみを含有するウェルからの蛍光であり、そして最大放出は、溶解緩衝液で処理された標的細胞を含有するウェルからの蛍光である。抗体が存在しない場合(標的+エフェクター細胞)に得られた溶解のバックグラウンドパーセントを、サンプルの溶解パーセントから差し引いた;示されるデータは、1つのドナーから単離されたPBMCを使用した三つ組のウェルの平均細胞傷害パーセント±標準偏差である。
【0176】
図2は、IgG1コントロール抗体又は親抗VLA−2 IgG4抗体(それぞれデータ点1番及び12番)に起因するほとんど特異的でないADCCを示す;示されるデータは、抗VLA2抗体の天然に存在するヒトIgG1アイソタイプがVLA−2+を発現する細胞に対して増強された細胞傷害性を有することを実証し、そしてより好ましくは、以下の効力の順位を有する抗VLA2−IgG1抗体点変異体を実証した:抗VLA2−IgG1−S298A/S324N(データ点11番;2倍増加)>抗VLA2−IgG1−S298A(データ点8番;1.8倍増加)>抗VLA2−IgG1(データ点2番;1.7倍増加)又は抗VLA2−IgG1−E269D/S298A/S324N(データ点10番;1.7倍増加) >抗VLA2−IgG1−E269D(データ点9番;1.5倍増加)。
【0177】
図3は、抗VLA2抗体変異体について類似した順位のADCC効力が10倍希釈の抗体において維持されたことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖可変領域、軽鎖可変領域、ヒト軽鎖定常領域及び変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含むヒト化抗α2インテグリン抗体であって、変異ヒトIgG1重鎖定常領域は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体のヒトIgG1重鎖定常領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含み、そして該抗体は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して変化したエフェクター機能を示す、上記ヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項2】
変異ヒトIgG1重鎖定常領域が、ヒトIgG1由来のCH1、ヒトIgG1由来のヒンジ及びヒトIgG3由来のFc領域を含むアイソタイプ変異体である、請求項1に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項3】
変異ヒトIgG1重鎖定常領域が、ヒトIgG3由来のCH1、ヒトIgG1由来のヒンジ及びヒトIgG3由来のFc領域を含むアイソタイプ変異体である、請求項1に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体
【請求項4】
変異ヒトIgG1重鎖定常領域が、親ヒト化抗α2インテグリン抗体のヒトIgG Fc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む変異ヒトIgG1 Fc領域を含む、請求項1に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項5】
アミノ酸修飾が、269、298、及び324からなる群より選択されるアミノ酸位置でのアミノ酸置換を含み、ここで群の各メンバーのアミノ酸位置は、Kabatにおいて示される付番方式を利用して示される、請求項4に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項6】
アミノ酸修飾が、E269D、S298A、及びS324Nからなる群より選択されるアミノ酸置換を含み、ここで群の各メンバーのアミノ酸位置は、Kabatにおいて示される付番方式を利用して示される、請求項4に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項7】
アミノ酸修飾が、269/298、269/324、298/324、及び269/298/324からなる群より選択されるアミノ酸位置でのアミノ酸置換の組み合わせを含み、ここで群の各メンバーのアミノ酸位置は、Kabatにおいて示される付番方式を利用して示される、請求項4に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項8】
アミノ酸修飾が、E269D/S298A、E269D/S324N、S298A/S324N、及びE269D/S298A/S324Nからなる群より選択されるアミノ酸置換の組み合わせを含み、ここで群の各メンバーのアミノ酸位置は、Kabatにおいて示される付番方式を利用して示される、請求項4に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項9】
エフェクター機能が、補体依存性細胞傷害(CDC)及び/又は抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項10】
ヒト化抗α2インテグリン抗体が、親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して改善された補体依存性細胞傷害(CDC)を示す、請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項11】
ヒト化抗α2インテグリン抗体が、親ヒト化抗α2インテグリン抗体と同等の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す、請求項10に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項12】
アミノ酸修飾が、S324N、S298A/S324N、及びE269D/S298A/S324Nからなる群より選択されるアミノ酸置換であり、抗体が親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して改善された補体依存性細胞傷害(CDC)を示す、請求項4に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項13】
ヒト化抗α2インテグリン抗体が、親ヒト化抗α2インテグリン抗体と同等の抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す、請求項12に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項14】
アミノ酸修飾が、E269D、S298A、S298A/S324N、及びE269D/S298A/S324Nからなる群より選択されるアミノ酸置換であり、抗体が親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して改善された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す、請求項4に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項15】
アミノ酸修飾が、アミノ酸置換S298A/S324N又はE269D/S298A/S324Nであり、抗体は、親ヒト化抗α2インテグリン抗体と比較して、改善された補体依存性細胞傷害(CDC)及び改善された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す、請求項4に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項16】
配列番号35を含む変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項2に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項17】
配列番号36を含む変異ヒトIgG1重鎖定常領域を含む、請求項3に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項18】
配列番号37〜43からなる群より選択される変異ヒトIgG1 Fc領域を含む、請求項4に記載のヒト抗α2インテグリン抗体。
【請求項19】
重鎖可変領域が、アミノ酸配列GFSLTNYGIH(配列番号1)を含むHCDR1、アミノ酸配列VIWARGFTNYNSALMS(配列番号2)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ANDGVYYAMDY(配列番号3)を含むHCDR3を含む、請求項1〜18のいずれか1項にヒト化抗体。
【請求項20】
軽鎖可変領域が、アミノ酸配列SAQSSVNYIH(配列番号4)を含むLCDR1、アミノ酸配列DTSKLAS(配列番号5)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列QQWTTNPLT(配列番号6)を含むLCDR3を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒト化抗体。
【請求項21】
重鎖可変領域が、アミノ酸配列GFSLTNYGIH(配列番号1)を含むHCDR1、アミノ酸配列VIWARGFTNYNSALMS(配列番号2)を含むHCDR2、及びアミノ酸配列ANDGVYYAMDY(配列番号3)を含むHCDR3を含み;かつ/又は
軽鎖可変領域が、アミノ酸配列SAQSSVNYIH(配列番号4)を含むLCDR1、アミノ酸配列DTSKLAS(配列番号5)を含むLCDR2、及びアミノ酸配列QQWTTNPLT(配列番号6)を含むLCDR3を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒト化抗体。
【請求項22】
重鎖可変領域が、配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒト化抗体。
【請求項23】
重鎖可変領域は、(a)位置71がLysであるか、(b)位置73がAsnであるか、(c)位置78位がValであるか、又は(d)(a)〜(c)のいずれかの組み合わせである配列番号7のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項24】
重鎖可変領域が、配列番号8〜19からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項25】
重鎖可変領域が配列番号17のアミノ酸配列を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項26】
重鎖可変領域が、アミノ酸配列WGQGTLVTVSS(配列番号20)を含むFW4領域をさらに含む、請求項22〜25のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項27】
軽鎖可変領域が配列番号21のアミノ酸配列を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項28】
軽鎖可変領域は、(a)位置2がPheであるか、(b)位置45がLysであるか、(c)位置48がTyrであるか、又は(d)(a)〜(c)のいずれかの組み合わせである配列番号21のアミノ酸配列を含む、請求項27に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項29】
軽鎖可変領域が、配列番号22〜33からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項30】
軽鎖可変領域が配列番号30のアミノ酸配列を含む、請求項1〜18のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項31】
軽鎖可変領域が、アミノ酸配列FGQGTKVEIK(配列番号34)を含むFW4領域をさらに含む、請求項27〜30のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項32】
配列番号47を含む重鎖及び配列番号56を含む軽鎖を含む、請求項1に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項33】
配列番号48を含む重鎖及び配列番号56を含む軽鎖を含む、請求項1に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項34】
配列番号49〜55からなる群より選択される重鎖及び配列番号56を含む軽鎖を含む、請求項1に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体。
【請求項35】
請求項1〜34のいずれか1項に記載のヒト化抗α2β1インテグリン抗体をコードする単離された核酸。
【請求項36】
請求項35に記載の核酸を含むベクター。
【請求項37】
請求項35に記載の核酸又は請求項36に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項38】
請求項1〜34のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体及び薬学的に許容しうる担体を含む組成物。
【請求項39】
対象者においてα2β1インテグリン関連障害を処置する方法であって、対象者に治療有効量の請求項1〜34のいずれか1項に記載の抗α2インテグリン抗体又は請求項38に記載の組成物を投与することを含む、上記方法。
【請求項40】
α2β1インテグリン関連障害が、炎症性疾患、自己免疫疾患、及び異常な血管新生又は増加した血管新生を特徴とする疾患から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
α2β1インテグリン関連障害が、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、移植に対する反応、視神経炎、脊髄外傷、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、実験的自己免疫性脳脊髄炎、シェーグレン症候群、強皮症、若年型糖尿病、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性、心血管疾患、乾癬、がん、さらには炎症反応を誘発する感染から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
α2β1インテグリン関連障害が、多発性硬化症、関節リウマチ、視神経炎及び脊髄外傷から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
α2β1インテグリン関連障害が、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、及び肺の扁平上皮がんを含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、消化器がんを含む胃がん、膵臓がん、神経繆芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜又は子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん又は腎がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん及び種々の型の頭頸部がん、さらには低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小型非切れ込み核細胞性NHL;巨大腫瘤病変NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);ヘアリーセル白血病;慢性骨髄芽球性白血病;及び移植後リンパ増殖性障害(PTLD)を含むB細胞リンパ腫、さらには母斑症に関連する異常血管増殖、脳腫瘍に関連する浮腫のような浮腫、メイグス症候群、黒色腫、中皮腫、多発性骨髄腫、線維肉腫、骨肉腫、及び類表皮がんからなる群より選択されるがんである、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
α2β1インテグリン関連障害が、非小細胞肺がん、膵臓がん、神経繆芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、腎臓がん、前立腺がん、転移性前立腺がん、中皮腫、線維肉腫、骨肉腫、及び類表皮がん、転移性結腸直腸がん、転移性前立腺がん及び転移性乳がんからなる群より選択されるがんである、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
α2β1インテグリン関連障害が、膵臓がん、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、非小細胞肺がん、線維肉腫、転移性結腸直腸がん、前立腺がん、転移性前立腺がん及び転移性乳がんからなる群より選択されるがんである、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
(a)血小板活性化、(b)血小板凝集、(c)循環血小板数の減少、(d)出血性合併症、又は(e)(a)〜(d)のいずれかの組み合わせを伴なわない、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
コラーゲンに対する白血球の結合を阻害するための方法であって、コラーゲンに対する白血球の結合を阻害するために有効な量の、請求項1〜34のいずれか1項に記載の抗α2β1インテグリン抗体又は請求項38に記載の組成物を対象者に投与することを含む、上記方法。
【請求項48】
請求項1〜34のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体又は請求項38に記載の組成物の、薬剤としての使用。
【請求項49】
請求項1〜34のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体又は請求項38に記載の組成物の、α2β1インテグリン関連障害の処置のための使用。
【請求項50】
α2β1インテグリン関連障害の処置のための方法における使用のための、請求項1〜34のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体又は請求項38に記載の組成物。
【請求項51】
α2β1インテグリン関連障害の処置のための薬剤の製造のための、請求項1〜34のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体又は請求項38に記載の組成物の使用。
【請求項52】
請求項1〜34のいずれか1項に記載のヒト化抗α2インテグリン抗体又は請求項38に記載の組成物、及びα2β1インテグリン関連障害の処置のための指示書を含むキット。
【請求項53】
親抗体のアミノ酸位置324においてセリンをアスパラギンに置き換えるアミノ酸置換S324Nを含む変異ヒトIgG Fc領域を含む抗体であって、該抗体は、親抗体と比較して改善された補体依存性細胞傷害(CDC)及び改善された抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を示す、抗体。
【請求項54】
親抗体のアミノ酸位置269におけるグルタミン酸をアスパラギン酸に置き換えるアミノ酸置換E269D、及び親抗体のアミノ酸位置298におけるセリンをアラニンと置き換える置換S298Aをさらに含む、請求項53に記載の抗体。
【請求項55】
キメラ抗体、ヒト化抗体、及び完全ヒト抗体からなる群より選択される、請求項53又は54に記載の抗体。
【請求項56】
ヒト化抗α2インテグリン抗体である、請求項53又は54に記載の抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−520194(P2013−520194A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554433(P2012−554433)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【国際出願番号】PCT/IB2011/000344
【国際公開番号】WO2011/104604
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】