説明

抗アレナウイルス化合物

ウイルス感染症およびそれに関連する疾患、特に出血熱ウイルス、たとえばアレナウイルス属により起きるウイルス感染症および関連疾患を治療または予防するための、4-メチル-ピペラジン-1-カルボチオ酸アミド誘導体および類似体、ならびにそれを含有する組成物を本明細書に記載する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
分野
[0001] ウイルス感染症およびそれに関連する疾患、特に出血熱ウイルス、たとえばアレナウイルス属により起きるウイルス感染症および関連疾患を治療または予防するための、4-メチル-ピペラジン-1-カルボチオ酸アミド誘導体および類似体、ならびにそれを含有する組成物を本明細書に記載する。
【0002】
連邦支援研究に関する記述
[0002] 本明細書に記載する研究は、一部はアメリカ合衆国政府からの資金(助成No. 1 R43 AI056525-01)により支持されており、したがってアメリカ合衆国政府は本明細書に記載する発明に一定の権利をもつことができる。
【0003】
背景
[0003] アレナウイルス科(Arenaviridae)は、数種のウイルスを含む単一の属(Arenavirus)からなる。げっ歯類がアレナウイルスの主な保因宿主であり、ヒトへの感染は感染性のげっ歯類排泄物との接触により起きると考えられている。2グループのアレナウイルスが現在確認されている。旧世界グループ(リンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)-ラッサ熱コンプレックス(lymphocytic choriomeningitis (LCM)-Lassa complex))には、アフリカ固有のウイルスおよび汎存性LCMウイルスが含まれる。新世界グループ(タカリベコンプレックス(Tacaribe complex))には、アメリカ固有のウイルスが含まれる。アレナウイルス属の数種がヒトにおける重篤な出血性疾患に関連する。ラッサウイルス(旧世界グループに属する)はラッサ出血熱に関与し、一方、新世界グループに属する4種のウイルス(すべてクレードBに属する)はヒトに重篤な出血熱を引き起こす。それらのウイルスは、アルゼンチン出血熱に関与するフニンウイルス(Junin virus);ボリビア出血熱に関与するマチュポウイルス(Machupo virus);ベネズエラ出血熱に関与するグアナリトウイルス(Guanarito virus);およびブラジルにおいて致死性の出血熱の症例から単離されたサビアウイルス(Sabia virus)である。ラッサウイルスは年間100,000〜300,000人の感染および約5,000人の死亡を引き起こすと推定されている。これまでに推定30,000のフニン感染確定例が記録されており、一方、約2,000例のマチュポ、200例のグアナリト、およびわずか2例のサビアが記録されている。
【0004】
[0004] 生物兵器としてのアレナウイルスの使用に関する最近の関心により、これらのウイルスを標的とする低分子療法薬開発の必要性が強調されている。これらのアレナウイルスは、下記の理由で深刻な生物戦の脅威である:(i)それらの罹患率および死亡率が高いこと(15〜30%の致死率);(ii)それらが播種および空気伝染しやすいこと;ならびに(iii)大量のこれらのウイルスを入手および産生するのが容易であること。
【0005】
[0005] 現在、アレナウイルス出血熱に対して使用するための承認された特異的な処置法はない。現在の疾患管理は一般に支持療法からなる−体液、電解質および浸透圧の不均衡のモニターと補正、ならびに凝固因子または血小板置換による出血の治療。回復期免疫血清療法はフニンウイルスおよびマチュポウイルス疾患の症例を処置するのに有効な可能性があるが、そのような血清の入手可能性はきわめて限られている。
【0006】
[0006] ヌクレオシド類似体であるリバビリン(ribavirin)はラッサ熱患者に用いられ、ある程度成功している。小規模試験で、患者に発熱後の最初の6日以内に投与した静脈内リバビリンが死亡率を76%から9%に低下させた。アルゼンチン出血熱患者18人の対照付き試験では、非処置患者における40%の死亡率と比較して、処置した患者における死亡率が13%になった。しかし、リバビリン療法は用量関連の可逆的溶血性貧血を含めた有害作用を伴い、数種の動物において催奇形性および胎仔死亡をも示した。したがって、それは妊娠カテゴリーX薬物に分類され、妊娠中には禁忌とされている。静脈内リバビリンは米国ではIND適用下での特別使用のために供給量限定で利用できる。ラッサ熱の症例に用いられているリバビリン療法のための投与方式は、最初に30 mg/kgの静脈内(IV)負荷量、続いて16 mg/kg IVを6時間毎に4日間;次いで8 mg/kg IVを8時間毎に6日間からなる(総処置期間10日間)。成人男性についての処置経費は約800米ドルである。リバビリンの貢献はアレナウイルス出血熱処置については理想に達していない。
【0007】
[0007] フェノチアジン(phenothiazine)類、トリフルオロペラジン(trifluoroperazine)およびクロルプロマジン(chlorpromazine)アマンタジン(amantadine)ブラシノステロイド(brassinosteroid)類、ならびにアクチノマイシンD(actinomycin D)を含めた多数のアレナウイルス複製インビトロ阻害薬が文献に報告されている。これらの化合物の抗アレナウイルス活性は一般に弱く、かつ非特異的である。
【0008】
[0008] ワクチン開発に対する研究が行われている唯一のアレナウイルス出血熱は、フニンウイルスにより起きるアルゼンチン出血熱(AHF)である。Candid 1と呼ばれる弱毒生ワクチンがAHF流行地域の農夫における対照付き試験で評価され、その際、AHF症例の報告数が減少するように思われ、重篤な副作用はなかった。Candid 1ワクチンが他のアレナウイルス出血熱に対しても有用であるかは分かっておらず、このワクチンは米国では入手できない。
【0009】
[0009] これらのデータに基づけば、アレナウイルス感染により起きる感染症および疾患に対する新たな療法および予防策が求められているのは明らかである。
[0010] 出血熱を引き起こす新世界グループのすべてのヒト病原性アレナウイルスがクレードBに属する。これらのヒト病原性ウイルスは高レベルの封じ込め下で(BSL-4)取り扱うことが要求される。しかし、同様にクレードBに属するアマパリ(Amapari)およびタカリベウイルスはBSL-2 (低レベル)封じ込め下での組織培養により増殖させることができる。低レベル封じ込め下での作業によりこれらのウイルスを用いる実験はより容易かつ安全になる。アマパリウイルスが生じる細胞変性作用(cytopathic effect)は弱いが、タカリベウイルスは細胞培養において容易に増殖させることができ、かつ強いCPEを4〜6日で生じる。このCPEはウイルス複製に直接に関係するので、細胞培養においてウイルス複製を阻害する化合物をウイルス誘導CPEからの保護を与えるものとして容易に同定できる(理論的にはウイルス複製を阻害せずにCPEを阻害することが可能ではあるが)。さらに、タカリベウイルスに対する活性が同定された化合物は、これらのウイルス間に高度の相同性(フニンウイルスと比較してタカリベウイルスの4種類のタンパク質すべてについて約70%の同一性であり、完全同一性をもつタンパク質の範囲が長い)があれば、出血熱を引き起こすヒト病原体アレナウイルス(フニン、マチュポ、グアナリトおよびサビア)に対しても有効な可能性がある。
【0010】
概要
[0011] 生存宿主においてウイルス感染症およびウイルス感染関連疾患を治療および予防するための化合物、組成物および方法を本明細書に記載する。本明細書に記載する化合物は、下記一般式の化合物またはその医薬的に許容できる塩である:
【0011】
【化1】

【0012】
式中:
R1、R2およびR3は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、または置換された、もしくは置換されていない、シクロアルキル、アリールアルキル、アリールであり、あるいはR1とR2は一緒に、環中に1個以上のヘテロ原子を含むことができる置換された環または置換されていない環を形成していてもよく;
Xは、OまたはSであり;
Arは、置換された、または置換されていない、アリールまたはヘテロアリールであり、
前記のシクロアルキル、アリールアルキルおよびアリール基の置換基は、独立して直鎖または分枝鎖アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、ハロゲン、ポリフルオロアルキル、ポリフルオロアルコキシ、カルボキシ、シアノ、ニトロ、アミド、アミドアルキル、カルボキサミド、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、およびメルカプトよりなる群から選択される1以上の基である。
【0013】
[0012] 本明細書には、式1の抗ウイルス化合物を含有する医薬組成物、ならびにアレナウイルスにより起きる感染症を治療および予防するための対応する使用方法も記載する。
【0014】
詳細な記述
[0013] 本発明においては、下記の一般式を有する化合物またはその医薬的に許容できる塩が提供される:
【0015】
【化2】

【0016】
式中:
R1、R2およびR3は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、または置換された、もしくは置換されていない、シクロアルキル、アリールアルキル、アリールであり、あるいはR1とR2は一緒に、環中に1個以上のヘテロ原子を含むことができる置換された環または置換されていない環を形成していてもよく;
Xは、OまたはSであり;
Arは、置換された、または置換されていない、アリールまたはヘテロアリールであり、
前記のシクロアルキル、アリールアルキルおよびアリール基の置換基は、独立して直鎖または分枝鎖アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、ハロゲン、ポリフルオロアルキル、ポリフルオロアルコキシ、カルボキシ、シアノ、ニトロ、アミド、アミドアルキル、カルボキサミド、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、およびメルカプトよりなる群から選択される1以上の基である。
【0017】
[0014] 式1の例示化合物には、R1とR2が一緒に、置換された環または置換されていない環を形成している化合物が含まれる。その環はヘテロ原子、たとえば窒素を含むことができる。それらの環部分には、ピペリジン、ピペラジン、ピラゾリジン、およびピロリジンが含まれる。環はモノ置換されていてもよい;置換基はアルキル、たとえばエチルまたはメチル基であってもよい。それらの置換基は互いに離れて、たとえば環の4-位にあってもよい。
【0018】
[0015] 式1の例示化合物には、R3が水素である化合物も含まれる。
[0016] 式1の例示化合物には、Arが置換されたアリール基、たとえばフェニル基である化合物も含まれる。フェニル基は、1以上の置換基をもつことができる(たとえばジ置換フェニル)。置換基は、たとえばハロゲン原子、たとえば塩素またはフッ素であってもよい。
【0019】
[0017] 本明細書に開示するアレナウイルス感染症の予防および治療に有用な具体的化合物には、次表に示す化合物が含まれる。
【0020】
【表1】

【0021】
[0018] 本明細書には、アレナウイルス感染症を伴うかまたはそれに感染しやすい生存宿主(たとえばヒトを含めた哺乳類)においてアレナウイルス感染症を予防および治療するための方法ならびにそれらの感染症に関連する疾患を予防および治療するための方法であって、生存宿主に療法有効量の次式の化合物:
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、R1、R2、R3、XおよびArは前記式1について定めたものである)または医薬的に許容できる塩を、それらの感染症に感染しやすいかまたはそれに罹患している宿主に投与する段階を含む方法をも記載する。
【0024】
[0019] 具体的方法には、アレナウイルス感染症を伴うかまたはそれに感染しやすい生存宿主においてアレナウイルス感染症およびそれらの感染症に関連する疾患を予防および治療するための方法であって、療法有効量の前記式1の化合物またはその医薬的に許容できる塩を投与する段階を含む方法が含まれる。
【0025】
[0020] 本明細書には、生存宿主(たとえばヒトを含めた哺乳類)において、ラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルスおよびサビアウイルスよりなる群から選択されるアレナウイルスにより起きる感染症を治療または予防するための方法であって、療法有効量の本明細書に記載する化合物を、それらの感染症に感染しやすいかまたはそれに罹患している宿主に投与する段階を含む方法も記載される。
【0026】
[0021] 本明細書には、生存宿主においてアレナウイルス感染症およびそれらの感染症に関連する疾患を治療または予防するための医薬組成物であって、療法有効量の1種類以上の次式の化合物:
【0027】
【化4】

【0028】
(式中、R1、R2、R3、XおよびArは前記式1について定めたものである)および医薬的に許容できるそれのキャリヤーを含む医薬組成物をも記載する。
[0022] 本明細書に記載する化合物、それらの異性体および医薬的に許容できる塩類は、抗ウイルス活性を示す。本明細書に記載する化合物はアレナウイルスに対して特に有効であり、生存宿主においてこのウイルスの感染症および関連疾患を予防および/または治療するのに有用である。本明細書に記載する化合物および組成物を用いて治療または予防できるアレナウイルスの例にはラッサウイルス、フニンウイルス、マチュポウイルス、グアナリトウイルスおよびサビアウイルスが含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
[0023] 本明細書に記載する化合物の抗ウイルス薬としての有用性を証明するインビトロ細胞ベースの試験を実施した。たとえば、化合物が細胞をウイルス誘導CPEから保護する能力を測定するアッセイにおいて、代表的な化合物の抗ウイルス活性を評価した。特定のアレナウイルス株の増殖を支持する細胞を、96ウェル組織培養処理プレートに接種し、次いで約7日間で完全CPEを生じる量の適切なアレナウイルス株を感染させる。種々の阻害化合物希釈液を添加し、プレートを最適なウイルス増殖に適切な温度でインキュベートする。インキュベーション期間の終了時に細胞をグルタルアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色する。細胞保護を分光光度法によりOD570nmで測定する。ウイルス誘導CPEから細胞単層を50%保護する内挿した化合物希釈度を計算し、50%有効濃度、すなわちEC50として報告する。本明細書に記載する代表的化合物の抗ウイルス活性は、細胞増殖に対する影響を示さない薬物濃度で起きた。これは、本発明化合物が特異的に抗ウイルス機序で作用したことを示す。
【0030】
[0024] 本明細書に記載する化合物は、式1の化合物、その医薬的に許容できる塩類、それらの異性体、およびその混合物を総合したものである。本発明において化合物はそれらの化学構造および/または化学名により同定される。化合物が化学構造と化学名の両方で表され、化学構造と化学名が矛盾する場合、化学構造がその化合物の同一性の決定力をもつ。
【0031】
[0025] 本明細書中で用いる用語”生存宿主”は、生存しておりかつアレナウイルスなどのウイルスに感染している可能性のある生物、たとえばヒトを含めた哺乳類を表わす。
[0026] 本明細書中で用いる用語”アルキル”は、炭素原子1〜14個、場合により最高6個の炭素原子または炭素原子10個以上の、直鎖または分枝鎖脂肪族炭化水素基を表わす。同様に、アルコキシ(-O-アルキル)、アルキルチオ(-S-アルキル)、モノアルキルアミノ(-NH-アルキル)、ジアルキルアミノ(-N-(アルキル)アルキル)、アルキルスルホニル(-S(O)2-アルキル)、カルボキシアルキル(-アルキル-COOH)などのように組み合わせた形で置換基を命名するために用いられる用語”アルキル”またはそのいずれかの変形も、炭素原子1〜4個、場合により炭素原子1〜6個の脂肪族炭化水素基を表わす。構造式中の”alk”も、二価性が示されない限りアルキル基を表わす;二価の場合、”alk”は対応するアルキレン基(1以上)を表わす。さらに用語”低級アルキル”は、1〜4個の炭素原子をもつアルキル基を表わす。
【0032】
[0027] 本明細書中で用いる用語”アルケニル”は、1つの二重結合を含む、炭素原子2〜7個の直鎖または分枝鎖脂肪族炭化水素基を表わす。それらのアルケニル部分はEまたはZ立体配置で存在する可能性がある;本明細書に記載する化合物は両方の立体配置を含む。本明細書中で用いる用語”アルキニル”は、少なくとも1つの三重結合をもつ、2〜7個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖脂肪族炭化水素基を表わす。
【0033】
[0028] 本明細書中で用いる用語”フェニル”は基を表わす。”置換フェニル”は、指示した置換基で置換されたフェニル基を表わす。
[0029] 本明細書中で用いる用語”アリール”は、そのままで用いる場合は6〜10個の炭素原子をもつ芳香族炭素環式基を表わし、限定ではないがフェニルおよびナフチルを含む。
【0034】
[0030] 本明細書中で用いる用語”ヘテロアリール”は、環中に少なくとも1個の炭素原子および1個以上の酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含む5-または6-員芳香族環式基、たとえばフリル、チエニル、ピリジル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、テトラゾリルなどを表わし、すべての位置異性体を含む。適切なヘテロアリール基にはピリジン、チアゾールおよびチオフェンが含まれるが、これらに限定されない。
【0035】
[0031] 本明細書中で用いる用語”シクロアルキル”は、飽和炭化水素環を表わす。シクロアルキルは単環式であってもよく、あるいは縮合、スピロまたは架橋二環式または三環式環系であってもよい。単環式シクロアルキル環は3〜7個の炭素原子、場合により3〜10個の炭素原子を含む:たとえばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、およびシクロヘキシル。二環式および三環式シクロアルキル環は、環系中に7〜19個の炭素原子、場合により7〜28個の炭素原子を含む;たとえばアダマンチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[2.2.2]シクロオクタニル、トリシクロ[3.2.2.02,4]ノニル、およびノルボルニル、ならびにビシクロ[3.2.2]ノニルが含まれる。本明細書中で用いる用語”シクロアルケニル”は、不飽和炭化水素環を表わす。シクロアルケニル環は非芳香族であり、1以上の炭素-炭素二重結合を含む。シクロアルケニル環は単環式であってもよく、あるいは縮合、スピロまたは架橋二環式または三環式環系であってもよい。単環式シクロアルケニル環は5〜7個の炭素原子、場合により5〜10個の炭素原子を含み、たとえばシクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、およびシクロヘキセニルが含まれる。二環式および三環式シクロアルケニル環は、環中に7〜19個の炭素原子、場合により環系中に7〜28個の炭素原子を含む;たとえばビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2-エン、ビシクロ[2.2.2]シクロオクタ-2-エニル、トリシクロ[3.2.2.02,4]ノナ-6-エニル、およびビシクロ[3.2.2]ノナ-6-エニル。
【0036】
[0032] 本明細書中で用いる用語”アミド”は、式-NR"C(=O)R'''の基または置換基を表わし、式中のR"およびR'''は水素またはアルキルを表わす。
[0033] 本明細書中で用いる用語”カルボキサミド”は、式-C(=O)-NR"R'''の基または置換基を表わし、式中のR"およびR'''は前記に定めたものである。
【0037】
[0034] 本明細書中で用いる用語”スルホンアミド”は、式-SO2NR"R'''または-NR"SO2R'''の基または置換基を表わし、式中のR"およびR'''は前記に定めたものである。
[0035] 本明細書中で用いる用語”ハロゲン”は、クロロ、ブロモ、ヨードおよびフルオロよりなる群から選択される基または置換基を表わす。
【0038】
[0036] 本明細書中で用いる用語”HPLC”は、高速液体クロマトグラフィーを表わす。
[0037] ”置換された”は、”置換された”という表現中に指示した原子上の1個以上の水素が指示した基から選択される基で交換されていることを示すものとする;ただし、指示した原子の普通の原子価を超えることはなく、その置換によって安定な化合物が生成する。置換基がオキソ(=O)基である場合、その原子上の2個の水素原子が交換されている。
【0039】
[0038] 本明細書に記載する化合物およびそれらの医薬的に許容できる塩類は、他の有効薬剤と組合わせて用いた場合、生存宿主においてウイルス感染症および疾患を治療および予防するのに有用である;他の薬剤には、インターフェロン、リバビリン、免疫グロブリン、免疫調節薬、抗炎症薬、抗生物質、抗ウイルス薬、抗感染症薬などが含まれるが、これらに限定されない。
【0040】
[0039] 本明細書に記載する化合物は、細胞、組織または臓器の培養、および他のインビトロ用途におけるアレナウイルス感染の防止または排除にも有用である。たとえば本明細書に記載する化合物を補助薬として、細胞培養または組織培養の培地、および細胞培養または組織培養の成分に含有させると、それまでにウイルス感染していない培養物のウイルス感染または汚染が防止されるであろう。前記化合物は、ウイルスが感染または汚染した培養物または他の生物材料(たとえば血液)におけるウイルス複製を、当業者が決定する任意数の処理条件下で、適切な処理期間の後、排除または減弱させるためにも使用できる。
【0041】
[0040] 本明細書に記載する化合物は、無機酸または有機酸、たとえば塩酸、硫酸、酢酸、乳酸などと、および無機塩基または有機塩基、たとえば水酸化ナトリウムまたはカリウム、ピペリジン、水酸化アンモニウムなどと、有用な塩類を形成することができる。式1の化合物の医薬的に許容できる塩類は、当業者に慣用される方法により調製される。
【0042】
[0041] ”医薬的に許容できる”という句は、本明細書において、信頼できる医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症なしに、妥当な損益比に相応して、ヒトおよび動物の組織と接触させて使用するのに適切な化合物、材料、組成物および/または剤形を表わすために本明細書中で用いられる。
【0043】
[0042] 本明細書に記載する特定の化合物は少なくとも1つのキラル中心をもつ場合があるので、それらの化合物は鏡像異性体として存在する可能性がある。さらに、本明細書に記載する化合物は2以上のキラル中心をもつ場合もあり、したがってそれらの化合物はジアステレオマーまたはエキソもしくはエンド異性体として存在する可能性がある。本発明化合物の製造方法により立体異性体の混合物が生成する場合、これらの異性体は常法、たとえば調製用クロマトグラフィーにより分離できる。したがって、本発明化合物はラセミ混合物として、または鏡像異性体特異的合成もしくは分割により個別の鏡像異性体として製造することができる。本発明化合物は、標準法により、たとえば(-)-ジ-p-トルオイル-d-酒石酸および/または(+)-ジ-p-トルオイル-l-酒石酸などの光学活性酸との塩形成によってジアステレオマー対を形成し、続いて分別結晶化し、そして遊離塩基を再生することにより、たとえばラセミ混合物からそれらの成分ラセミ体に分割することができる。ラセミ混合物は、ジアステレオマーエステルまたはアミドの形成、続いてクロマトグラフィー分離およびキラル助剤の除去により分割することもできる。あるいは、本発明化合物はキラルHPLCカラムを用いて分割することもできる。それらの異性体およびその混合物はすべて本明細書に記載する対象の範囲に含まれることも理解すべきである。
【0044】
[0043] 本明細書に記載する化合物は、生存宿主、たとえばヒトを含めた哺乳類のアレナウイルス感染症を処置するのに有用である。生存宿主に投与する際、本発明化合物を単独で、または医薬組成物として使用できる。
【0045】
[0044] 本明細書に記載する化合物を単独でまたは互いに組み合わせて含む医薬組成物により、アレナウイルス感染症に対する処置が得られる。本明細書に記載する抗ウイルス医薬組成物は、有効成分としての1種類以上の前記式1の化合物を、医薬的に許容できるキャリヤー媒質または助剤と組み合わせ含む。
【0046】
[0045] 本発明組成物は、錠剤、カプレット、丸剤または糖衣剤を含めた多様な投与剤形で製造でき、あるいはカプセルなど適切な容器に充填し、または懸濁液剤の場合はボトルに充填することができる。本明細書中で用いる”医薬的に許容できるキャリヤー媒質”には、目的とする特定の剤形に適切な溶剤、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散助剤または懸濁助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などのいずれかまたはすべてが含まれる。Remington's Pharmaceutical Sciences, 第20版, A. R. Gennaro (William and Wilkins, メリーランド州ボルチモア, 2000)に、医薬組成物の配合に用いられる多様なキャリヤー、および組成物の調製のための既知の技術が示されている。一般的なキャリヤー媒質が何らかの望ましくない生物学的作用を生じるかまたは他の形で医薬組成物中の他のいずれかの成分と有害な様式で相互作用することなどにより本明細書に記載する抗ウイルス化合物と不適合である場合を除いて、キャリヤー媒質の使用は本明細書に記載する組成物の範囲内にあるとみなすべきである。
【0047】
[0046] 本明細書に記載する医薬組成物において、有効成分は、キャリヤー媒質および/または助剤が存在する場合はそれらを含めた組成物の全重量を規準として、少なくとも0.5重量%、一般に90重量%を超えない量で存在することができる。あるいは、有効成分の割合は組成物の5〜50重量%の範囲にある。
【0048】
[0047] 腸管内(経腸)または腸管外(非経口)投与に適切な、医薬用の有機または無機の固体または液体キャリヤー媒質を用いて、本発明組成物を調製できる。ゼラチン、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物および動物の脂肪および油、ガム、ポリアルキレングリコール、または他の既知の医薬成分はすべて、キャリヤー媒質または賦形剤として適切である。
【0049】
[0048] 本明細書に記載する化合物は、ウイルスの感染性を減弱させるのに有効ないかなる投与量およびいかなる投与経路によっても投与できる。本明細書中で用いる”ウイルスの感染性を減弱させるのに有効な量”という表現は、無毒性であるけれども目的とするウイルス感染症の予防および/または治療をもたらすのに十分な抗ウイルス薬の量を表わす。厳密な必要量は、対象間で、対象の種、年齢および全般的状態、感染症の重症度、特定の抗ウイルス薬、それの投与様式などに応じて異なるであろう。
【0050】
[0049] 本明細書に記載する抗ウイルス化合物を通常は発症後24時間以内に投与すればよいが、発症後24〜48時間以内、または発症後48〜72時間以内に最初に投与することにより療法有益性を得ることができる。初期のアレナウイルス感染の症状は、感染したそのウイルスに依存する。たとえば感染の初期症状には発熱、倦怠感、頭痛および身体の痛み、ならびに時には嘔吐を含めることができる。
【0051】
[0050] 本明細書に記載する抗ウイルス化合物は、投与しやすさおよび投与量の均一性のために用量単位剤形で配合することができる。本明細書中で用いる”用量単位剤形”は、処置すべき患者に適切な物理的に別個の抗ウイルス薬単位を表わす。各用量は、それ自体で、または選択した医薬キャリヤー媒質および/または補助有効薬剤(1以上)がある場合にはそれらと共に、目的とする療法効果を発揮するように計算された有効物質量を含有すべきである。一般に、本明細書に記載する抗ウイルス化合物は組成物の重量の約10〜約10,000 mgの抗ウイルス薬を含有する用量単位で投与され、約100〜約2,000 mgが一般的であろう。
【0052】
[0051] 本明細書に記載する抗ウイルス化合物は、処置する感染症の性質および重症度を考慮して、経口、直腸、非経口的にたとえば筋肉内注射、皮下注射、静脈内注入などにより、嚢内、膣内、腹腔内、局所にたとえば散剤、軟膏剤もしくは点滴剤などにより、またはたとえばエアゾル剤などによる吸入により、投与できる。投与経路に応じて、本明細書に記載する抗ウイルス化合物は、目的とする療法効果を得るために、1回当たり約0.125〜約250 mg/kg(対象の体重)の用量レベルで、一日1回以上投与することができる。
【0053】
[0052] 本明細書に記載する抗ウイルス化合物は、前記の一日量を送達するために一般に一日1〜4回投与されるであろう。しかし、本明細書に記載する化合物および組成物の厳密な投与方式は、処置される個々の宿主または患者の要求、施す処置のタイプ、および担当の専門医の判断に必然的に依存するであろう。
【0054】
[0053] 予防のためには、本明細書に記載する抗ウイルス化合物を曝露後48時間以内に投与するのが効果的であるが、曝露可能性の7日後、または14日後ですら、有用な予防効果を得ることができる。ウイルス感染の治療または予防のいずれでも、用量は本質的に同じであってよい。
【0055】
[0054] 本明細書に記載する抗ウイルス化合物を他の抗ウイルス薬または他の抗ウイルス療法と組み合わせて、併用療法の一部として効果的に投与することができる。そのような抗ウイルス薬は当技術分野で既知であり、ジドブジン(zidovudine)(アジドチミジン;AZT)、アシクロビル(acyclovir)、ガンシクロビル(ganciclovir)、ビダラビジン(vidarabidine)、イドクスウリジン(idoxuridine)、トリフルリジン(trifluridine)、ホスカルネット(foscarnet)、インターフェロン、アマンタジン、リマンタジン(rimantadine)、リバビリン、および関連化合物が含まれる。他の抗ウイルス療法にはインターフェロン(IFN)投与およびアンチセンスRNA処置が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に記載する化合物は、1種類以上の追加の抗ウイルス化合物と、別個の製剤として、または組合わせ製剤として、共投与することができる。
【0056】
[0055] 本明細書に記載する抗ウイルス化合物を伝統的なワクチンと共に効果的に投与することもできる。そのようなワクチンは適宜、生存ウイルス、弱毒ウイルス、または死ウイルスから、サブユニットまたは組換えワクチンとしても調製できる。
【0057】
[0056] 本明細書に記載する抗ウイルス化合物の製造方法のいずれかに際して、関与化合物のいずれかにある感受性基または反応性基を保護することが必要および/または望ましい場合がある。これは、一般的な保護基、たとえばProtective Groups in Organic Chemistry, 編者J. F. W. McOmie, Plenum Press, 1973;およびT. W. Greene & P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, 1999に記載のものにより達成できる。保護基は好都合な後続段階で、当技術分野により既知の方法を用いて除去することができる。
【0058】
[0057] 以下の例は本明細書に記載する代表的な化合物の適切な合成法を示す。ただし、これらの合成法は説明のためのものであって、本発明を以下に例示するものに限定するためのものではない。本明細書に記載する抗ウイルス化合物を製造するための出発物質は市販されているか、あるいは以下に示す例のいずれかに従って、または既知の化学的方法を用いて簡便に製造することができる。
【0059】
実施例1:一般合成法
[0058]
【0060】
【化5】

【0061】
化合物1(イソチオシアン酸フェニルまたはイソシアン酸フェニル, 11.8 mMol)をTHF (20 mL)に、氷冷しながらN2下で溶解する。この溶液に、THF (5 mL)中の化合物2 (11.8 mMol)を30分間かけて滴加する。白色固体が5分で沈殿する。氷浴を取り除き、懸濁液を室温で1時間、さらに撹拌し、次いで冷蔵庫内に3時間放置する。混合物の濾過により白色固体3が得られる。母液を10 mLに濃縮し、次いで室温に一夜放置する。濾過により白色結晶質固体(3)が得られる。固体を合わせて乾燥させ、秤量する。
【0062】
実施例2:4-メチル-ピペラジン-1-カルボチオ酸(3,4-ジクロフェニル)-アミドの製造
[0059]
【0063】
【化6】

【0064】
この化合物は実施例1の一般合成法に従って74%で製造される。1H NMR, DMSO-d6中: δ9.45 (s, 1H), 7.62 (d, 1 H), 7.53 (d, 1H), 7.32 (dd, 1H), 3.88 (t, 4H), 2.37 (t, 4H), 2.21 (s, 3H)。
【0065】
実施例3:アレナウイルス複製の阻害
[0060] 本明細書に記載する化合物がアレナウイルスを阻害する能力を下記の実験法により確認した:
(a)ウイルス保存液の調製:
[0061] アレナウイルスのウイルス保存液を、低い多重度(0.01プラーク形成単位(PFU)/細胞)で感染させたベロ細胞において調製し、細胞変性作用が完了した時点で採取した。試料を凍結融解し、次いで音波処理して、細胞胞内ウイルスを放出させた。細胞屑を低速遠心により分離し、得られたウイルス懸濁液を1 mLずつに分けて-80℃に保存した。ウイルス懸濁液のPFU/mLをベロ細胞における標準プラークアッセイ法により定量した。
【0066】
(b)アレナCPE:アッセイ:
[0062] 完全CPEを7日間で生じるのに必要なアレナウイルス保存液の量を判定するために、ベロ細胞単層を96ウェルプレートに接種し、アレナウイルス保存液の2倍系列希釈液を感染させた。感染後7日目に、培養物を5%グルタルアルデヒドで固定し、0.1%クリスタルバイオレットで染色した。ウイルス誘導CPEを分光光度法によりOD570で定量した。この分析から、HTSアッセイに使用するためにタカリベウイルス(TRVL 11573)保存液の1:1000希釈液を選択した。
【0067】
[0063] これらの実験の結果は、この96ウェルアッセイフォーマットは有効で再現性があることを示した。S/N比(細胞対照ウェル(信号)対ウイルス対照ウェル(ノイズ))は9.2±1.8であった。ウェル間およびアッセイ間の変動は20%未満であった。この分析に基づいて、アッセイに使用するためにタカリベウイルスの1:1000希釈液を選択した。
【0068】
(c)化合物試験:
[0064] 本明細書に記載する代表的な化合物をタカリベ(TRVL 11573)ウイルスCPEアッセイ法で試験した。化合物をDMSOに溶解し、各ウェル内の最終濃度が化合物5μMおよび0.5% DMSOとなるように培地に希釈した。化合物をロボットにより培地に添加した。化合物の添加後、培養物にタカリベウイルスを感染させた。7日後、プレートを前記に従って処理し、CPEを定量した。
【0069】
[0065] 本明細書に記載する代表的な化合物はタカリベ(TRVL 11573)ウイルス誘導CPEを試験濃度(5μM)で50%以上阻害した。選択した化合物をさらに、力価(EC50)についてはCPEアッセイ法で、細胞毒性(CC50)についてはMTTアッセイ法で評価した。MTTアッセイは、分裂中の細胞においてミトコンドリアデヒドロゲナーゼ活性を測定する。この方法は、(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル-)-2H-テトラゾリウム)を電子結合試薬(フェナジンメトスルフェート)でインサイチュー還元して不溶性ホルマザンの生成を検出する。ホルマザンを50%エタノールに可溶化した後、490 nmにおけるホルマザンの吸光度を96ウェルアッセイプレートから直接測定することができる。ホルマザン生成物の量は培養物中の生存細胞数に正比例する。
【0070】
[0066] 50%阻止濃度(EC50)値を、8種類の化合物濃度(50、16、5、1.6、0.5、0.16、0.05および0.016μM)にわたるタカリベ(TRVL 11573) CPEアッセイによる化合物阻害活性のプロットから判定した。すべての測定を二重に実施した。EC50値は、化合物処理細胞と化合物非処理細胞をコンピュータープログラムで比較することにより計算された。代表的な化合物(実施例2の化合物)のCPEアッセイにおけるEC50値は14OnMである。この抗ウイルス効果は無毒性濃度で達成される。
【0071】
化合物の活性のスペクトルおよび特異性
[0067] 前記と同様な数回の追加CPE阻害アッセイを用いて、アレナウイルス属における本明細書に記載する化合物の化合物活性スペクトルを同定する。ウイルスプラーク数を50%減少させるのに必要な化合物濃度として、EC50値を計算した。USAMRIIDにおいてBSL 4条件下でのプラーク減少アッセイ(ラッサ、マチュポ、グアナリトおよびフニンウイルスについて)を下記に従って実施した:200 PFUの各ウイルスをベロ細胞感染に用いた。ウイルス吸着後、細胞単層をすすぎ、1%アガロースを含有する完全培地(被験化合物を含まない、または15〜0.05μMの種々の濃度の被験化合物を含む)で覆った。37℃で5日間のインキュベーション後、単層をニュートラルレッドで染色し、プラーク数を計数した。
【0072】
[0068] アレナウイルス阻害に関する代表的な化合物の特異性は、ピキンデウイルス(Pichinde virus)、リフトバレー熱ウイルス(Rift Valley fever virus)(株MP12)、呼吸系発疹ウイルスおよびサイトメガロウイルスを含めた非関連ウイルスの複製をそれらが阻害しないという事実に反映される。
【0073】
実施例4
[0069] 確立した化合物ライブラリーからの約400,000種類の化合物をこのアッセイ法で試験した。アッセイプレートを下記のように準備した。HTS CPEアッセイのために、ベロ細胞を80%周密度で96ウェルプレートに接種した。ライブラリーからの被験化合物(プレート当たり80種類)をウェルに最終濃度5μMで添加した。次いでタカリベウイルスを、7日後に90% CPEになるウイルス希釈度(ウイルス保存液の1000倍希釈液として予め判定;感染多重度[MOI]は約0.001)で添加した。プレートを37℃および5% CO2で7日間インキュベートし、次いで5%グルタルアルデヒドで固定し、0.1%クリスタルバイオレットで染色した。ウイルスCPEの程度を、分光光度法によりOD570でEnvisionマイクロプレートリーダーを用いて定量した。各化合物の阻害活性は、被験化合物ウェルのOD570からウェル感染細胞ウェルのOD570から差し引き、次いで膜擬感染細胞ウェルの平均OD570で割ることにより計算された。この結果は、タカリベウイルスCPE活性に対して各化合物が与える保護率を表わす。このアッセイにおける”ヒット(Hits)”は、被験化合物濃度(5μM)でウイルス誘導CPEを50%以上阻害した化合物と定義された。タカリベウイルスHTSキャンペーンでスクリーニングした約400,000種類の化合物のうち、2,347のヒットが同定された(0.58%のヒット率)。
【0074】
[0070] 性質ヒットは、許容できる化学構造、抗ウイルス力価および選択性ならびに抗ウイルス活性スペクトルを示す阻害化合物(ヒット)と定義される。具体的には、HTSアッセイ(前記)においてヒットと同定された化合物を4つの規準に対して評価した:i)化学処理適性、ii)阻害力価、iii)阻害選択性、およびiv)抗ウイルス特異性。HTSパラメーターに基づいて、すべてのヒットはEC50値<5μMをもつ。この初期規準を満たす化合物の化学構造を、化学処理適性について視覚検査した。化学処理適性化合物は、妥当な化学的方法を用いる合成により入手でき、かつ化学的に安定な官能基および(潜在)薬物様の性質をもつものと定義される。この医薬化学フィルターを通過したヒットを、それらの阻害力価について評価した。EC50値を、一般に8種類の化合物濃度(50、16、5、1.6、0.5、0.16、0.05および0.016μM)にわたる化合物阻害活性のプロットから判定した。ヒットが選択的阻害薬であるかを評価するために、標準細胞増殖アッセイ法を用いて細胞機能に対する作用を判定した。50%細胞毒性濃度(CC50)をテトラゾリウムベースの比色法により判定した;これは、代謝活性細胞においてミトコンドリア酵素による3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)から不溶性青色ホルマザン結晶へのインサイチュー還元を測定した。可溶化した結晶を分光光度法により定量した。EC50値およびCC50値を用いて、選択指数(SI)を計算した(SI = CC50/EC50)。少なくとも10のSI値をもつヒットをさらに考察した。ヒット化合物が示した抗ウイルス活性の特異性を、それらの化合物を多数の関連ウイルスおよび非関連ウイルスに対して試験することにより判定した。化合物を多様な非関連DNAウイルス(HSV、CMV、ワクシニアウイルス)およびRNAウイルス(RSV、ロタウイルス、リフトバレー熱ウイルス、エボラウイルス、エボラGP-偽型、ラッサGP-偽型、HIV env-偽型)に対して試験する。本明細書に記載する化合物は、選択した本来の標的細胞に対して選択的であり、非関連ウイルスに対しては不活性である。
【0075】
【表2】

【0076】
[0071] 本発明を特定の好ましい態様に関して記載および例示したが、他の態様も当業者には明らかであろう。したがって本発明は記載および例示した特定の態様に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく改変および変更でき、本発明の全範囲は特許請求の範囲により表わされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式を有する化合物:
【化1】

[式中:
R1、R2およびR3は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールアルキル、またはアリールであり、R1とR2は一緒に、環中に1個以上のヘテロ原子を含む置換された環または置換されていない環を形成していてもよく;
Xは、OまたはSであり;
Arは、置換された、または置換されていない、アリールまたはヘテロアリールである]
を含む、アレナウイルス感染症を処置するための組成物。
【請求項2】
R1とR2が一緒に、置換された環または置換されていない環を形成している、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
環がヘテロ原子を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ヘテロ原子が窒素である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
環が、ピペリジン、ピペラジン、ピラゾリジン、およびピロリジンよりなる群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
環がモノ置換されている、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
環がアルキル置換されている、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
環が4-アルキル置換されている、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
アルキル置換基がエチルまたはメチルである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
Arが置換アリールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
Arが置換フェニルである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
Arがジ置換フェニルである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
Arがハロ置換フェニルである、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
ハロゲンが塩素およびフッ素よりなる群から選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
R3が水素である、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
化合物が、4-メチル-ピペラジン-1-カルボチオ酸(3,4-ジクロロ-フェニル)-アミド、4-エチル-ピペラジン-1-カルボチオ酸(3,4-ジクロロ-フェニル)-アミド、および4-メチル-ピペラジン-1-カルボン酸(3,4-ジクロロ-フェニル)-アミド、ならびにその医薬的に許容できる塩類よりなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
さらに、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビジン、イドクスウリジン、トリフルリジン、ホスカルネット、インターフェロン、アマンタジン、リマンタジン、およびリバビリンよりなる群から選択される追加の抗ウイルス薬を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
アレナウイルス感染症を治療または予防する方法であって、対象に有効量の下記の一般式を有する化合物:
【化2】

[式中:
R1、R2およびR3は、独立して水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリールアルキル、またはアリールであり、R1とR2は一緒に、環中に1個以上のヘテロ原子を含む環を形成していてもよく;
Xは、OまたはSであり;
Arは、置換された、または置換されていない、アリールまたはヘテロアリールである]
を投与することを含む方法。
【請求項19】
R1とR2が一緒に、置換された環または置換されていない環を形成している、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
環がヘテロ原子を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
ヘテロ原子が窒素である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
環が、ピペリジン、ピペラジン、ピラゾリジン、およびピロリジンよりなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
環がモノ置換されている、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
環がアルキル置換されている、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
環が4-アルキル置換されている、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
アルキル置換基がエチルまたはメチルである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
Arが置換アリールである、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
Arが置換フェニルである、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
Arがジ置換フェニルである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
Arの置換基がハロゲンである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
ハロゲンが塩素およびフッ素よりなる群から選択される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
R3が水素である、請求項17に記載の方法。
【請求項33】
化合物が、4-メチル-ピペラジン-1-カルボチオ酸(3,4-ジクロロ-フェニル)-アミド、4-エチル-ピペラジン-1-カルボチオ酸(3,4-ジクロロ-フェニル)-アミド、および4-メチル-ピペラジン-1-カルボン酸(3,4-ジクロロ-フェニル)-アミド、ならびにその医薬的に許容できる塩類よりなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項34】
さらに、ジドブジン、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビジン、イドクスウリジン、トリフルリジン、ホスカルネット、インターフェロン、アマンタジン、リマンタジン、およびリバビリンよりなる群から選択される追加の抗ウイルス薬を含む、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2009−525338(P2009−525338A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553312(P2008−553312)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/002570
【国際公開番号】WO2007/120374
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(508233504)サイガ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】