説明

抗アレルギー剤

【課題】日常的に連用可能で、安全かつ十分な抗アレルギー効果を示す食品または医薬品を提供する。
【解決手段】オリーブ葉抽出物およびウーロン茎茶抽出物を含有することを特徴とする抗アレルギー剤を提供する。本発明に用いるオリーブ葉抽出物は市販品を利用することができる。本発明のオリーブ葉抽出物およびウーロン茎茶抽出物の摂取量は、形態、症状、年齢、体重などによって異なるが、オリーブ葉抽出物は1〜1000mg/日、好ましくは5〜200mg/日である。ウーロン茎茶抽出物は1〜1000mg/日、好ましくは5〜500mg/日である。本発明に係る抗アレルギー剤の形態は特に問わず、錠菓、キャンディー、顆粒剤、飲料などの通常の食品および医薬品の形態を採用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリーブ葉抽出物およびウーロン茎茶抽出物を含有することを特徴とする抗アレルギー剤およびこれらを含有した食品または医薬品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、花粉症、アトピー性皮膚炎や気管支喘息などのアレルギー疾患は急速に増加しており、罹患率が20%を超えるようになってきたことから、深刻な社会問題となってきている。中でも花粉症は、主として免疫グロブリンE(IgE)抗体が関与するI型アレルギーであり、発生頻度が非常に多いアレルギー症のひとつである。
【0003】
I型アレルギーの発症の過程を3段階に分けると、第1段階では、花粉などの外来性の抗原が体内に侵入し、免疫担当細胞系によってIgE抗体が産生される。IgE抗体は
気道、皮膚および消化器などアレルギー反応の好発部位に分布する肥満細胞等に固着して感作が成立する。
【0004】
第2段階では、感作が成立した肥満細胞に対して、再び抗原が接触すると、肥満細胞は形態学的変化を引き起こし、ヒスタミン、セロトニンやロイコトリエン等の化学伝達物質を遊離する。
第3段階では、遊離した化学伝達物質によって気管支筋や消化器等の平滑筋の収縮、毛細血管透過性の亢進、好中球の遊走、血小板の凝集等が起こり、その結果、喘息や下痢を伴う消化器アレルギー、鼻アレルギー、蕁麻疹といったアレルギー症状を発現する。
【0005】
このようなI型アレルギーによる疾患の予防または治療のため、最近の食品分野における研究では、上記の第2段階による化学伝達物質の遊離抑制作用や第3段階による遊離された化学伝達物質、例えばヒスタミンが引き起こすアレルギーの諸症状を抑制する作用に着目した、より安全性の高い機能性物質の検索が行われている。それと同時に、天然物由来の物質を有効成分とし、医薬、食品、化粧品等、広い分野で安心して使用することができるものが好ましいとされている。
【0006】
なお、従来の技術としては、フキタンポポ等の植物由来の抗アレルギー組成物(特許文献1)、シソ・エゴマ由来の抗アレルギー組成物(特許文献2、特許文献3)、ウーロン茎茶の抗アレルギー組成物(特許文献4)等が開示されている。
【特許文献1】特開2001−233778号公報
【特許文献2】特開2000−86510号公報
【特許文献3】特開平10−298098号公報
【特許文献4】特開平06−113791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、安全性が高い天然物由来の物質の中から、食品、飲料、医薬品、化粧品等へ容易に配合可能で抗炎症作用や抗アレルギー作用においても優れている物質を見出し、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題について鋭意研究した結果、オリーブ葉抽出物に強い抗ヒスタミン作用を見出し、さらにウーロン茎茶抽出物と組み合わせることで、抗アレルギー作用が相乗的に促進されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の抗アレルギー剤の原料である“オリーブ”とは、オリーブ Olea
europaea L(モクセイ科)で、地中海沿岸地方、北アフリカ原産の植物で、現在地中海沿岸地方をはじめ世界各地の比較的気温の高い土地で栽培されている。本発明に用いるオリーブ葉抽出物は市販品を利用することができる。オリーブ葉抽出物の抽出方法としては、例えば細切したオリーブの葉を、溶媒で抽出する方法が挙げられる。溶媒としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール、あるいはプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール)、アセトンなどのケトン類、エチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステルなどのエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶媒を、単独あるいは2種類以上を任意に組み合わせて使用することができ、また、各々の溶媒抽出物が組み合わされた状態でも使用できる。
【0010】
本発明の抗アレルギー剤の原料である“ウーロン茎茶”は、半発酵茶に属し、茶葉を取り除き茎を集め半発酵させた市販品を利用することができる。ウーロン茎茶抽出物の抽出方法としては、例えば細切した茎を、溶媒で抽出する方法が挙げられる。溶媒としては、水、アルコール類(例えば、メタノール、無水エタノール、エタノールなどの低級アルコール、あるいはプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール)、アセトンなどのケトン類、エチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステルなどのエステル類、キシレン、ベンゼン、クロロホルムなどの有機溶媒を、単独あるいは2種類以上を任意に組み合わせて使用することができ、また、各々の溶媒抽出物が組み合わされた状態でも使用できる。
【0011】
本発明に係るオリーブ葉抽出物およびウーロン茎茶抽出物の摂取量は、形態、症状、年齢、体重などによって異なるが、オリーブ葉抽出物は1〜1000mg/日、好ましくは5〜200mg/日である。ウーロン茎茶抽出物は1〜1000mg/日、好ましくは5〜500mg/日である。
【0012】
本発明に係る抗アレルギー剤の形態は特に問わない。例えば、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤、トローチ、飲料、ガム、チョコレート、キャンディー、麺、パン、ケーキ、ビスケット、缶詰、レトルト食品、畜肉食品、水産練食品、マーガリン、バター、マヨネーズなどの通常の医薬品、食品の形態を採用することができる。中でも、効果が発揮しやすいトローチやキャンディーなどの形態が望ましい。
【0013】
本発明に係る抗アレルギー剤には、発明の効果を損なわない範囲において、生薬、ビタミン、ミネラル、アミノ酸などの他に、乳糖、デンプン、セルロース、マルチトール、デキストリンなどの賦形剤、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの界面活性剤、ゼラチン、プルラン、シェラック、ツェインなどの被膜剤、小麦胚芽油、米胚芽油、サフラワー油などの油脂類、ミツロウ、米糠ロウ、カルナウバロウなどのワックス類、ショ糖、ブドウ糖、果糖、ステビア、サッカリン、スクラロースなどの甘味料、並びにクエン酸、リンゴ酸、グルコン酸などの酸味料などを適宜配合することができる。生薬としては、高麗人参、アメリカ人参、田七人参、霊芝、プロポリス、アガリクス、ブルーベリー、イチョウ葉及びその抽出物などが挙げられる。ビタミンとしては、ビタミンD、Kなどの油溶性ビタミン、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチンなどの水溶性ビタミンが挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
オリーブ葉抽出物は強い抗ヒスタミン作用を示し、さらに、ウーロン茎茶抽出物を組み合わせると、相乗的に優れた抗アレルギー効果および花粉症改善効果を示した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための最良の形態として実施例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例に示す(%)は重量(%)を示す。
【実施例1】
【0016】
オリーブ葉抽出物は特開2002−128678号公報に記載されたものを用いた。すなわち、オリーブ葉10kgを50℃、含水80%アセトン50Lで3時間2回抽出し、減圧下60℃で20Lまで濃縮後、ろ過し、活性化させたスチレンジビニルベンゼン重合樹脂(三菱化成工業株式会社製、ダイヤイオンHP20)25Lを充填した樹脂塔に添加し、樹脂塔内を25L/hrで通過させ、75Lの水で洗浄した。洗浄後、樹脂塔に75Lの含水の80%アセトンを溶出速度25L/hrで通過させた。次いで、得られた溶液は、減圧下に60℃で濃縮、排出温度80℃条件で噴霧乾燥し、1.17kgのオリーブ葉抽出物を得た。
【0017】
ウーロン茎茶抽出物は、細切したウーロン茎茶50gに蒸留水1000mLを加え、100℃で5分間煮出すことにより成分を抽出し、得られた抽出物を濾過した後に減圧濃縮した。次いで、その濃縮物を凍結乾燥し、12gのウーロン茎茶抽出物を得た。
【実施例2】
【0018】
処方例1 錠菓
配合量(%)
1.オリーブ葉抽出物 1.0
2.ウーロン茎茶抽出物 1.0
3.砂糖 78.8
4.グルコース 19.0
5.ショ糖脂肪酸エステル 0.2
<製法>
成分1〜4に70%エタノールを適量加えて練和し、押出し造粒した後に乾燥して顆粒を得る。成分5を加えて打錠成形し、1gの錠菓を得る。当該錠菓を1日4錠摂取することで、オリーブ葉抽出物を40mg/日、ウーロン茎茶抽出物を40mg/日摂取できる。
【0019】
処方例2 キャンディー
配合量(%)
1.オリーブ葉抽出物 0.5
2.ウーロン茎茶抽出物 0.5
3.マルチトール 70.0
4.デンプン糖化物 29.0
<製法>
成分1〜4を120〜170℃で加熱溶解し、金型にて固化させ、3gの飴を得る。当該飴を1日3個摂取することで、オリーブ葉抽出物を45mg/日、ウーロン茎茶抽出物を45mg/日摂取できる。
【0020】
処方例3 顆粒剤
配合量(%)
1.オリーブ葉抽出物 2.0
2.ウーロン茎茶抽出物 2.0
3.乳糖 81.0
4.セルロース 15.0
<製法>
成分1〜4に70%エタノールを適量加えて練和して押出し造粒し、乾燥して顆粒剤を得る。当該顆粒剤は、1回1gずつ1日3回摂取することで、オリーブ葉抽出物を60mg/日、ウーロン茎茶抽出物を60mg/日摂取できる。
【0021】
処方例4 飲料
配合量(g)
1.オリーブ葉抽出物 1.0
2.ウーロン茎茶抽出物 1.0
3.ショ糖 60.0
4.クエン酸 7.0
5.香料 適量
6.精製水で全量を1000とする。
<製法>
成分6に成分1〜5を加え、撹拌溶解して濾過し、加熱殺菌して1000mLとし、これを50mLガラス瓶に充填する。当該飲料は、1日1本摂取することでオリーブ葉抽出物を50mg/日、ウーロン茎茶抽出物を50mg/日摂取できる。
【実施例3】
【0022】
試験例1:オリーブ葉抽出物の抗ヒスタミン効果
一夜絶食したWistar系雄性ラット(6週齢)の背部を毛刈りした後に、0.5%カルボキシメチルセルロース溶液に懸濁した諸種の濃度のオリーブ葉抽出物を経口投与した。次いで、1時間後に生理食塩液に溶解した0.5%のエバンスブルー溶液を5mL/kgとなるように尾静脈に注射後、直ちに生理食塩液に溶解した0.3mg/mLのヒスタミン100μLを背部に皮下注射した。30分後にヒスタミン注射部位の皮膚を摘出し、皮筋を除去した後に、色素漏出により形成された青染円の面積を測定し、抗ヒスタミン効果の指標とした。
【0023】
表1に示すように、オリーブ葉抽出物は投与量依存的に抗ヒスタミン効果を示した。
【0024】
【表1】

【0025】
試験例2:オリーブ葉抽出物およびウーロン茎茶抽出物のカラゲニン足浮腫抑制効果
一夜絶食したWistar系雄性ラット(6週齢)の足蹠容積を測定後、0.5%カルボキシメチルセルロース溶液に懸濁した諸種の濃度のオリーブ葉抽出物およびウーロン茎茶抽出物を経口投与し、その1時間後に生理食塩液に懸濁したカラゲニンを足蹠皮下に注射した。次いで、3時間後に再度足蹠容積を測定し、カラゲニン注射前の足蹠容積を基に浮腫率を算出し、抑制効果の指標とした。
【0026】
表2に示すように、オリーブ葉抽出物単独投与およびウーロン茎茶抽出物単独投与は投与量依存的にカラゲニン誘発足浮腫抑制効果を示した。さらに両者の組み合わせは、相乗効果を示した。
【0027】
【表2】

【0028】
試験例3:オリーブ葉抽出物およびウーロン茎茶抽出物の花粉症改善効果
花粉症の自覚症状を持つ被験者45名に、処方例2に記載のキャンディーを1日当たり3個、1ヶ月に亘り摂取させ、摂取前後の花粉症の症状についてアンケートを実施し、改善効果を検討した。尚、処方例2において、オリーブ葉抽出物およびウーロン茎茶抽出物をデンプン糖化物に置換えたキャンディーについてもプラセボ群として上記の被験者45のうち12名に試験を実施した。
【0029】
表3に示すように、オリーブ葉抽出物およびウーロン茎茶抽出物を含有しないキャンディーを1ヶ月摂取したプラセボ群は花粉症改善効果を示さなかった。一方、表4に示すように、オリーブ葉抽出物およびウーロン茎茶抽出物を含有するキャンディーを1ヶ月摂取すると、花粉症の症状である「喉の不快感」、「鼻の不快感」および「くしゃみの回数」を改善することが判明した。
【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の抗アレルギー剤は、花粉等によって引き起こされるアレルギー症状の緩和や改善に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ葉抽出物を含有することを特徴とする抗ヒスタミン剤。
【請求項2】
請求項1記載の抗ヒスタミン剤とウーロン茎茶抽出物を含有することを特徴とする抗アレルギー剤。
【請求項3】
請求項1記載の抗ヒスタミン剤とウーロン茎茶抽出物を含有することを特徴とする花粉症改善剤。

【公開番号】特開2007−182403(P2007−182403A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−1936(P2006−1936)
【出願日】平成18年1月7日(2006.1.7)
【出願人】(592262543)日本メナード化粧品株式会社 (223)
【Fターム(参考)】