説明

抗アレルギー性組成物及び美白組成物、並びにこれらを含有する化粧品及び飲食品

【課題】豆類、ルイボス茶、又はバラを原料とし、この原料を発酵して得られる乳酸菌発酵抽出物を含有する抗アレルギー性組成物、美白組成物及び該美白組成物を提供する。
【解決手段】本発明の抗アレルギー性組成物は、大豆、小豆及びルイボス茶のうちの少なくとも1つを含む培地に乳酸菌を接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物を含有する。本発明の美白組成物は、ルイボス茶及びバラのうちの少なくとも一方を含む培地にラクトバチルス属に属する乳酸菌を接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物、又は大豆を含む培地にロイコノストック属に属する乳酸菌又はLactobacillus casei subsp.caseiを接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物を含有する。本発明の抗アレルギー性組成物及び美白組成物は、乳酸菌発酵により、抗アレルギー作用及び美白作用が増強される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アレルギー性組成物、美白組成物及び該美白組成物を含有する化粧品に関する。更に詳しくは、豆類、ルイボス茶、又はバラを原料とし、この原料を発酵して得られる乳酸菌発酵抽出物を含有する抗アレルギー性組成物、美白組成物及び該美白組成物を含有する化粧品、並びに上記抗アレルギー性組成物又は上記美白組成物を含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
本来、生体は体内に侵入した病原菌等の異物から身体を守る免疫機能を備えている。そして、体内に侵入した異物に対して過剰な免疫反応を起こし、身体に有害な形で現れる場合の一つがアレルギーである。アレルギーはプロセスによってI〜IV型に分類されるが、このうちI型のアレルギーを即時型といい、免疫グロブリン抗体のうちのIgE抗体と抗原の反応が引き金になって起こる。詳しく言えば、体内にカビ、花粉等の抗原が侵入すると、これに対する特異的な抗体であるIgE抗体が作られ、このIgE抗体のFc部分が肥満細胞や好塩基球表面のIgEレセプター結合に付着する(ヒトIgE−IgEレセプター結合)。そして、再び同一の抗原が体内に侵入すると、これが細胞表面のIgE抗体のFab部分にある抗原結合基と結合し、その結果、数個のIgEを橋渡しする形となる。かかる橋渡しにより刺激された肥満細胞等から、ヒスタミン、ロイコトリエン等の種々のケミカルメディエーターが放出され、これらの働きによりアレルギーを引き起こす。このようなアレルギーによって引き起こされるアレルギー疾患の代表的なものには、花粉症、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎及び気管支喘息等がある。そして、今日、これらのアレルギー疾患に苦しむ人々の数は増加傾向にあり、その予防方法及び改善方法が社会で注目されている。
【0003】
従来より、かかるアレルギー疾患に適用される化合物が各種報告されているが、そのほとんどが合成医薬品である。例えば、クロモグリク酸ナトリウム、トラニラスト、副腎皮質コルチコステロイド(プレドニゾロン等)、テオフィリン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、及び塩酸シプロヘプタジン等が現在、アレルギー疾患の治療に用いられている。しかし、このような合成医薬品にはいずれも眠気等の副作用がある点で問題がある。また、従来の抗アレルギー化合物は、テオフィリンやβ2受容体作用薬(塩酸プロカテロール、サルブタモール等)のように、発作後の症状改善を目的としたり、あるいは、抗ヒスタミンH1薬(マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸シプロヘプタジン等)やプランカルストのように、肥満細胞や好塩基球から放出されるケミカルメディエーターの作用に拮抗するものが中心である。アレルギー疾患の予防という観点から見れば、肥満細胞や好塩基球からケミカルメディエーターが放出された後、それにより引き起こされる反応を抑えるより、むしろ、それ以前のIgE−IgEレセプター結合反応や、ケミカルメディエーターの放出を抑制する作用を有することが好ましい。このような観点から、生体内において比較的安全であると共に、ケミカルメディエーターが放出される前の段階の反応を抑制し、アレルギー性疾患の予防に好適な抗アレルギー剤の開発が求められている。そして、特許文献1には、バラ抽出物が、IgE−IgEレセプター結合反応を阻害し、抗アレルギー作用を奏することが記載されており、特許文献2には、バラ抽出物を発酵させて得られるバラ発酵抽出物が、抗アレルギー作用に優れていることが記載されている。
【0004】
また、近年、オゾンホールの拡大に伴い、地上へ到達する紫外線量の増加が懸念されている。紫外線により惹起される皮膚への悪影響、即ち、「くすみ」や「しみ」は、紫外線がメラノサイト(メラニンを合成する細胞)を活性化することにより、メラニン色素の生成が増加し、それが表皮に蓄積することにより起こる。即ち、メラノサイト内でチロシンにチロシナーゼが活性作用して、チロシンが酸化され、ドーパ、ドーパキノンに変換され、更に自動酸化等を経て、最終的にメラニン色素になる。このように生成されたメラニンが角質層に達し、このメラニンに紫外線が照射されると、既存のメラニンが酸化され、一時的に黒くなることも報告されている。
【0005】
上記観点から従来より、美白を目的とした素材の開発、検討がなされてきている。従来、かかる美白等を目的とした化粧品等では、主に化学物質を配合することが多いが、使用者によっては肌に合わないこともあり、かぶれや痒みの原因となることがある。そこで、人工の化学物質と比べて安全な機能性素材として、植物等の天然物由来の抗チロシナーゼ活性作用及びメラニン色素生成抑制作用を有する物質が注目を集めている。そして、特許文献3には、米を乳酸菌で発酵して得られる発酵米が、顕著な美白・美肌化作用と髪質改善作用を示し、それら美粧効果を発現せしめるための配合剤としても有用であることが記載されている。更に、特許文献4及び5には、ヤシ科ココヤシ属植物の抽出物を乳酸菌類で発酵して得られる発酵代謝物、及びマメ科植物抽出物の乳酸菌類発酵物がチロシナーゼ活性を有意に抑え、美白効果を有することが記載されている。更に、特許文献6には、ルイボス茶の抽出物が美白効果を有することが記載されている。
【0006】
【特許文献1】特開平10−72358号公報
【特許文献2】特開2002−224127号公報
【特許文献3】特開2002−348207号公報
【特許文献4】特開2002−284663号公報
【特許文献5】特開2002−265343号公報
【特許文献6】特開平11−116429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、豆類、ルイボス茶、又はバラを原料とし、この原料を発酵して得られる乳酸菌発酵抽出物を含有する抗アレルギー性組成物、美白組成物及び該美白組成物を含有する化粧品、並びに上記抗アレルギー性組成物又は上記美白組成物を含有する飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく検討を重ねた結果、大豆、小豆等の豆類、ルイボス茶、又はバラを原料とし、この原料を発酵して得られる乳酸菌発酵抽出物とすることにより、単なる抽出物と比べて、抗アレルギー作用及び美白作用を更に向上させることができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は以下に示す通りである。
〔1〕豆類及びルイボス茶のうちの少なくとも1つを含む培地に乳酸菌を接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物を含有することを特徴とする抗アレルギー性組成物。
〔2〕上記豆類が大豆及び小豆のうちの少なくとも1つである上記〔1〕記載の抗アレルギー性組成物。
〔3〕上記乳酸菌がラクトバチルス属、ラクトコッカス属、及びロイコノストック属に属する乳酸菌から選ばれる少なくとも1種である上記〔1〕又は〔2〕記載の抗アレルギー性組成物。
〔4〕上記乳酸菌が、Lactobacillus brevis、Lactobacillus casei subsp.casei、Lactococcus lactis subsp.hordniae、及びLeuconostoc mesenteroides subsp.mesenteroidesから選ばれる少なくとも1種である上記〔1〕又は〔2〕記載の抗アレルギー性組成物。
〔5〕ルイボス茶及びバラのうちの少なくとも一方を含む培地にラクトバチルス属に属する乳酸菌を接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物を含有することを特徴とする美白組成物。
〔6〕上記乳酸菌がLactobacillus brevis及び/又はLactobacillus casei subsp.caseiである上記〔5〕記載の美白組成物。
〔7〕大豆を含む培地にロイコノストック属に属する乳酸菌又はLactobacillus casei subsp.caseiを接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物を含有することを特徴とする美白組成物。
〔8〕上記〔5〕乃至〔7〕のいずれかに記載の美白組成物を含有することを特徴とする化粧品。
〔9〕上記〔1〕乃至〔4〕のいずれかに記載の抗アレルギー性組成物又は上記〔5〕乃至〔7〕のいずれかに記載の美白組成物を含有することを特徴とする飲食品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の抗アレルギー性組成物及び美白組成物は、豆類、ルイボス茶、又はバラを原料とし、これを乳酸菌で発酵して得られる乳酸菌発酵組成物を含有することにより、優れた抗アレルギー作用及び美白効果を奏する。また、本発明の化粧品は、本発明の美白組成物を含有することにより、優れた美白効果を奏する。更に、本発明の飲食品は、日常的に摂取することができ、その結果、日常的に抗アレルギー及び美白効果を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を説明する。
本発明の抗アレルギー性組成物は、豆類及びルイボス茶のうちの少なくとも1つを含む培地に乳酸菌を接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物を含有することを特徴とする。
また、本発明の美白組成物は、ルイボス茶及びバラのうちの少なくとも一方を含む培地にラクトバチルス属に属する乳酸菌を接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物を含有することを特徴とする。更に、他の本発明の美白組成物は、大豆を含む培地にロイコノストック属に属する乳酸菌又はLactobacillus casei subsp.caseiを接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物を含有することを特徴とする。
【0012】
上記「豆類」は、一般に食用や飼料とされるマメ科の植物の種実であればその種類については特に限定はなく、例えば、大豆、黒大豆、落花生、小豆、ササゲ、インゲンマメ、ソラマメ、エンドウ豆、緑豆、コーヒー豆、カカオ豆、ゴマ種子、ヒマワリ種子等が挙げられる。その他に脱脂豆、脱脂種実、キナ粉、豆粉、豆カス及びこれらの加水分解物等を用いることもできる。また、上記「豆類」の形態には特に限定はなく、通常の形態の他、粉砕等した粉末品でもよい。
【0013】
上記「ルイボス茶」は、アスパラサス・リネアリス(Aspalathus linealis )又はアスパラサス・セダルベルゲンシス(Aspalathus cedarbergensis )の葉を酵素発酵させて得られる発酵茶である。上記「ルイボス茶」は、茶葉の状態で使用してもよく、その他、必要に応じて更に裁断等したり、あるいは粉砕等した粉末品でもよい。
【0014】
上記「バラ」としては、バラ科バラ属に属するバラ(Rosa spp.)が好ましく、具体的には、ロサ・ガリカ(Rosa gallica)、ロサ・モスカタ(Rosa moschata)、ロサ・フォエティダ(Rosa foetida)、ロサ・ギガンテア(Rosa gigantea)、ノイバラ(Rosa multiflora)、テリハノイバラ(Rosa wichuraiana)等の野生種、又はこれらを交配して得られた園芸種が挙げられる。また、本発明の美白組成物において、上記「バラ」の使用部位について特に限定はなく、花、花びら、葉、茎、根及び種子等のどの部分を使用してもよい。
【0015】
本発明において、上記「豆類」、「ルイボス茶」、及び「バラ」としては、上記豆類、ルイボス茶、及びバラを原料として抽出することにより得られる抽出物でもよい。ここで、上記「抽出物」としては、抽出液を濾過したままの液でもよいし、これを濃縮した濃縮液でもよい。その他にも、凍結乾燥等の公知の方法により、上記抽出液や濃縮液から溶媒を除去した固形物や粉末化した粉末物でもよく、これらの固形物や粉末物を溶媒に溶解又は分散させた溶液又は分散液でもよい。更に、上記「抽出物」としては、抽出することにより得られる抽出物を、タンナーゼ等の酵素を用いて酵素処理したものでもよい。更に、上記「豆類」の抽出物には、豆類煮汁、特に豆類の加工における通常の加工工程で生じる豆類煮汁廃液や豆腐凝固工程等で副生する浸出液若しくはその濃縮液又はそれらの固形物や粉末物を用いてもよい。これらを用いると、従来は廃棄処分されていた豆類煮汁廃液や浸出液の有効利用を図ることもできるので好ましい。また、上記「抽出物」は、そのままの状態で用いてもよいが、抽出効率向上や品質維持等のために、法的に許されている添加物を使用することもできる。
【0016】
上記「抽出物」を得るための抽出方法、抽出条件については特に限定はない。例えば、抽出原料は未粉砕でも、粉砕したものでもよく、抽出物の品質を維持できる限り、不純物除去等の前処理をしてもよい。また、抽出溶媒としては、水又は熱水の他、エタノール、酢酸エチル、n−ヘキサン等の有機溶媒や、これらの有機溶媒と水又は熱水との混合溶媒等を用いることができ、このうち、特に熱水が好ましい。熱水の温度は、通常、40〜100℃、好ましくは50〜80℃、更に好ましくは50〜70℃である。また、抽出の際の抽出溶媒のpHは通常3〜7、好ましくは4〜6、更に好ましくは4〜5である。pHを上記範囲内とすることにより、抽出原料に含まれている各種成分の安定性を保つことができるので好ましい。抽出温度は特に制限されないが、常温又は加熱抽出が好ましい。加熱抽出の場合、加熱温度としては通常40〜100℃、好ましくは50〜80℃、更に好ましくは50〜70℃である。加熱温度をかかる範囲とすることにより、抽出を効率的に行うことができるので好ましい。
【0017】
上記「乳酸菌」は、糖類を発酵して乳酸を生成する性質を有する細菌の総称であり、グラム陽性の桿菌又は球菌であり、内性胞子を形成せず、カタラーゼ陰性であり、消費したブドウ糖に対し、50%以上の乳酸を産生する乳酸菌が好ましい。上記「乳酸菌」の代表的なものとして例えば、ラクトバチルス属、ストレプトコッカス属、ラクトコッカス属、ペディオコッカス属、及びロイコノストック属等が含まれる。また、本発明の上記「乳酸菌」には、ビフィズス菌属(ビフィドバクテリウム属)も含まれる。本発明の抗アレルギー性組成物及び本発明の美白組成物において、上記「乳酸菌」は、市販されている一般的なものを用いるのが通常であるが、自然的、又はニトロソグアニジン等の化学物質、X線、紫外線等により人為的変異手段により得られ、菌学的性質が変異した変異株であっても、抗アレルギー作用及び美白作用を有する乳酸菌発酵組成物を産出する性質を失わない限り利用することができる。
【0018】
上記ラクトバチルス属に属する菌種としては、例えば、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus brevis、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus casei、Lactobacillus cellobiosus、Lactobacillus delbruckii、Lactobacillus fermenti、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus jugurti、Lactobacillus kefiri、Lactobacillus lactis、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus vaccinostercus、Sporolactobacillus inulinus等が挙げられる。
上記ストレプトコッカス属に属する菌種としては、例えば、Streptococcus cremoris、Streptococcus diacetilactis、Streptococcus faecalis、Streptococcus faecium、Streptococcus lactis、Streptococcus lactis sub-sp. diacetylactis、Streptococcusthermophilus、Streptococcus uberis等が挙げられる。
上記ラクトコッカス属に属する菌種としては、例えば、Lactococcus lactis subsp.cremoris、Lactococcus lactis subsp.lactis、Lactococcus lactis subsp.hordniae等が挙げられる。
上記ペディオコッカス属に属する菌種としては、例えば、Pediococcus acidilactis、Pediococcus cerevisiae、Pediococcus halophilus、Pediococcus pentosaceus等が挙げられる。
上記ロイコノストック属に属する菌種としては、例えば、Leuconostoc citrovorum、Leuconostoc cremoris、Leuconostoc dextranicum、Leuconostoc mesenteroides等が挙げられる。この中で、特にLeuconostoc mesenteroidesが好ましく用いられる。
上記ビフィズス菌属に属する菌種としては、例えば、Bifidobacterium adolescentis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium breve、Bifidobacterium infantis、Bifidobacterium lactentis、Bifidobacterium liberorum、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium parvulorum、Bifidobacterium pseudolongum、Bifidobacterium thermophilum等が挙げられる。
【0019】
本発明の抗アレルギー性組成物では、上記乳酸菌の種類は、必要に応じて種々選択することができる。上記乳酸菌として、ラクトバチルス属、ラクトコッカス属、及びロイコノストック属に属する乳酸菌から選ばれる少なくとも1種を用いると、より抗アレルギー性に優れた抗アレルギー性組成物が得られるので好ましく、特にLactobacillus brevis、Lactobacillus casei subsp.casei、Lactococcus lactis subsp.hordniae、及びLeuconostoc mesenteroides subsp.mesenteroidesから選ばれる少なくとも1種を用いると、更に抗アレルギー性に優れた抗アレルギー性組成物が得られるので好ましい。尚、本発明の抗アレルギー性組成物において、上記乳酸菌は1種単独でもよく、2種以上用いてもよい。
【0020】
一方、本発明の美白組成物では、原料としてルイボス茶及びバラのうちの少なくとも一方を用いた場合、乳酸菌として、上記乳酸菌の中からラクトバチルス属に属する乳酸菌を用い、原料として大豆を用いた場合は、ロイコノストック属に属する乳酸菌又はラクトバチルス属に属する乳酸菌であるLactobacillus casei subsp.caseiを用いる。これらの乳酸菌を用いると、チロシナーゼ阻害作用を増強することができ、その結果、美白作用に優れた美白組成物を得ることができる。また、原料としてルイボス茶及びバラのうちの少なくとも一方を用いた場合、乳酸菌として、Lactobacillus brevis及び/又はLactobacillus casei subsp.caseiを用いると、更にチロシナーゼ阻害作用を増強させ、美白作用を向上させることができるので好ましい。尚、本発明の美白組成物において、上記乳酸菌は1種単独でもよく、2種以上用いてもよい。
【0021】
上記乳酸菌発酵組成物を得るための発酵条件は、抗アレルギー作用及び美白作用を奏する乳酸菌発酵組成物が得られる限り特に限定はない。発酵培養は通常、通気攪拌を行うことにより行われる。また、培養を行うための培地についても、上記乳酸菌が増殖できるものであれば特に制限はなく、通常は液体培地であるが、固形培地でもかまわない。また、培地のpHは通常4〜7、好ましくは5〜7、更に好ましくは6〜7である。このpHを上記の範囲内とすると、抽出原料に含まれている各種成分の安定性を保つことができるので好ましい。更に、培養温度についても、発酵が行われる限り特に制限はなく、通常40〜45℃程度である。また、培養の際、糖等の各種の栄養素やpH調製のための酸、アルカリ等を適宜加えてもよい。更に、発酵は、混合発酵でも連続発酵でもよい。
【0022】
本発明の抗アレルギー性組成物及び本発明の美白組成物の形態については特に限定はなく、それぞれ培養して得られた培養発酵液を濾過したままの液でもよいし、これを滅菌処理やpH調整をしたり、あるいは、イオン交換樹脂、活性炭カラム、又は透析膜等を利用し、脱臭・脱色等の後処理をした液でもよい。更には、これを濃縮した濃縮液やペースト状物でもよい。その他にも、凍結乾燥等の公知の方法により溶媒を除去した固形物や粉末化した粉末物でもよい。更には、必要に応じて、水若しくはエタノール、プロピレングリコール及び1,3−ブチレングリコール等の有機溶媒、又はこれらの混合溶媒に添加して溶解又は分散液としてもよい。
【0023】
本発明の抗アレルギー性組成物及び本発明の美白組成物は、抗アレルギー性及び美白作用という効果を奏すると共に、天然素材を使用しているので、従来の合成アレルギー剤等の合成物質と比較して安全性も高い。よって、本発明の飲食品のように、飲料や食品に添加することにより、日常的に摂取することができる。また、本発明の美白組成物は、化粧品素材として使用することにより、本発明の化粧品のような美白化粧品を得ることができる。本発明の抗アレルギー性組成物及び本発明の美白組成物に含まれる乳酸菌発酵組成物の量(固形分換算、W/V)は、通常0.0001%以上、好ましくは0.0005〜1%更に好ましくは、0.001〜0.5%、最も好ましくは0.01〜0.05%である。本発明の抗アレルギー性組成物及び本発明の美白組成物に含まれるバラ発酵組成物の量が0.0001%未満では、抗アレルギー作用及び美白作用が減弱するので好ましくない。また、1%を超える量を添加しても、抗アレルギー作用及び美白作用は頭打ちとなるので、経済的に好ましくない。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(1)乳酸菌発酵組成物の調製
発酵に使用する乳酸菌として、以下の乳酸菌を使用した。そして、下記乳酸菌を10mlのMRS培地に一白金耳植菌し、30℃で1日間培養することにより、乳酸菌種培養液を調製した。
乳酸菌A;Lactobacillus brevis
乳酸菌B;Lactobacillus casei subsp.casei
乳酸菌C;Lactococcus lactis subsp.hordniae
乳酸菌D;Leuconostoc mesenteroides subsp.mesenteroides
【0025】
乾燥バラ(ロサ・ガリカ)の花びら(粉砕品)1gに水道水100mlを加え、これを121℃で15分間オートクレーブした後、遠心分離(10000rpm、10分間)し、上清液(バラ抽出物)を得た。該バラ抽出物10mlに、上記乳酸菌種培養液を1ml植菌した。そして、3日間、30℃で静置培養した後、遠心分離(10000rpm、10分間)し、上清液を得た。この上清液をバラ発酵組成物とした。
また、抽出原料として、赤しそ粉末、てん茶粉末、とちゅう茶粉末、グァバ茶粉末、ルイボス茶粉末、大豆濃縮パウダー、及び小豆濃縮パウダーを用い、該抽出原料の各1gに蒸留水100mlを加え、これを121℃で15分間オートクレーブした後、遠心分離(10000rpm、10分間)し、上清液を得た。この上清液に、上記乳酸菌種培養液A〜Dを10%接種した。そして、3日間、30℃で静置培養した後、遠心分離(10000rpm、10分間)し、上清液を得た。この上清液を上記各抽出原料の乳酸菌発酵組成物とした。
【0026】
(2)評価
上記方法により得られた各乳酸菌発酵組成物及び乳酸菌発酵前の上清液(抽出液)をサンプルとし、以下の方法により、IgE−IgEレセプター結合阻害活性及びチロシナーゼ阻害活性を測定した。
〔1〕試験1(IgE−IgEレセプター結合阻害活性)
96穴マイクロプレートの各ウェルに90ng/100μlのIgEレセプター(遺伝子組替細胞により発現されたヒト高親和性IgEレセプターの構成成分の1つであるα鎖タンパク質)を入れ、4℃で一晩静置した。そして、上記IgEレセプターを回収した後、洗浄用緩衝液(PBS〔NaCl;80g/L、NaHPO;11g/L、KCL;2g/L、KHPO4;2g/L〕;1L、Tween20;0.5ml)を各ウェルに100μl加え、5回洗浄した。次いで、特異的な吸着を避けるために、ブロック用緩衝液(PBS;1L、カゼイン;1g、NaN;0.02g)を各ウェルに150μl入れ、37℃で1時間インキュベートした。その後、最終濃度が0.02〜20%になるように調製したサンプルと、希釈用緩衝液(PBS;100ml、カゼイン;0.1g)を用いて最終濃度が400ng/mlになるように調製したヒトIgE抗体を、各ウェル当たり100μlになるように加え、37℃で3時間インキュベートした。インキュベート終了後、上記洗浄用緩衝液を各ウェルに100μl加えて5回洗浄することにより、遊離のサンプル及びヒトIgE抗体を除去した。
【0027】
次に、西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)により標識した抗ヒトIgEポリクローナル抗体を各ウェルに100μl加え、37℃で1時間インキュベートした後、上記洗浄用緩衝液を各ウェルに100μl加えて5回洗浄することにより、遊離の抗ヒトIgE抗体を除去した。その後、HRPの基質としてO−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)を各ウェルに75μl加えて遮光して10〜30分インキュベートして反応させ、発色させた後、各ウェルの490nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定した。また、ヒトIgE及び試料を添加しなかった場合の吸光度を(A)、ヒトIgEのみを添加して試料を加えなかった場合の吸光度を(B)、試料のみを添加してヒトIgEを加えなかった場合の吸光度を(C)、更にヒトIgE及び試料を添加した場合の吸光度を(D)として測定し、以下の式によりヒトIgE−IgEレセプター結合阻害率(%)を求めた。その結果を表1に示す。
阻害率(%)=[1−(D−C)/(B−A)]×100
【0028】
【表1】

【0029】
〔2〕試験2(チロシナーゼ阻害活性)
メラニン色素は、チロシナーゼの作用によってチロシンから生成される。このため、チロシナーゼ阻害作用が高いものは、美白作用に優れていると言える。そこで、以下の方法により、チロシナーゼ阻害活性を測定した。
ワッセルマン試験管に1.66mMチロシンを溶解したMcilvaine緩衝液(pH6.8)を1mlずつ分注した。そして、これに上記サンプルを各450μlずつ加えて37℃で3分間プレインキュベートした。
次いで、1200単位/mlのチロシナーゼを100μlずつ加え、37℃で10分間インキュベートした後、1.0Mアジ化ナトリウムを50μl加え、分光光度計で475nmの吸光度を測定した。ブランクの場合は、チロシナーゼ添加前に1.0Mアジ化ナトリウムを50μl加えて吸光度(T)を測定した。また、コントロールとして蒸留水450μlを用いて同様に実験を行って吸光度(C)を測定した。また、そして、以下の式により、チロシナーゼ阻害活性(%)を求めた。その結果を表2に示す。
チロシナーゼ阻害活性(%)={1−(T−T)/(C−C)}×100
T;サンプルの吸光度、 T;サンプルのブランクの吸光度
C;コントロールの吸光度、C;コントロールのブランクの吸光度
【0030】
【表2】

【0031】
(6)実施例の結果
表1より、大豆濃縮パウダー、小豆濃縮パウダー、及びルイボス茶では、発酵前の抽出物のIgE−IgEレセプター結合阻害活性が14〜67%なのに対し、乳酸菌発酵組成物のIgE−IgEレセプター結合阻害活性は70〜100%であり、乳酸菌発酵前の抽出物と比べて高いことが分かる。
一方、赤しそ、てん茶、とちゅう茶、及びグァバ茶は、発酵前の抽出物のIgE−IgEレセプター結合阻害活性が29〜87%なのに対し、乳酸菌発酵組成物のIgE−IgEレセプター結合阻害活性は0%であり、乳酸菌発酵により、却って抗アレルギー性が著しく低下していることが分かる。
これらの結果から、本発明の抗アレルギー性組成物のように、特定の原料の乳酸菌組成物とすることにより、抗アレルギー性を増強することができることが分かる。
【0032】
表2より、ルイボス茶及びバラの場合、発酵前の抽出物と、ラクトバチルス属に属する乳酸菌である乳酸菌A及びBによる乳酸菌発酵組成物とを対比すると、発酵前の抽出物と比べて、乳酸菌発酵組成物の方がチロシナーゼ阻害作用が大きいことが分かる。これに対し、ラクトコッカス属に属する乳酸菌である乳酸菌C及びロイコノストック属に属する乳酸菌である乳酸菌Dによる乳酸発酵抽出物は、発酵前の抽出物と比べて、チロシナーゼ阻害作用がほぼ同程度か、あるいは低下していることが分かる。
また、大豆濃縮パウダーの場合、発酵前の抽出物と、ロイコノストック属に属する乳酸菌である乳酸菌Bによる乳酸菌発酵組成物及び乳酸菌D(Leuconostoc mesenteroides subsp.mesenteroides)による乳酸菌発酵組成物とを対比すると、発酵前の抽出物と比べて、乳酸菌発酵組成物の方がチロシナーゼ阻害作用が大きいことが分かる。これに対し、他のラクトバチルス属に属する乳酸菌である乳酸菌Aによる乳酸菌発酵組成物及びラクトコッカス属に属する乳酸菌である乳酸菌Cによる乳酸発酵抽出物は、発酵前の抽出物と比べて、チロシナーゼ阻害作用がほぼ同程度であり、チロシナーゼ阻害作用の増強が認められなかったことが分かる。
一方、小豆濃縮パウダー、赤しそ、てん茶、とちゅう茶、及びグァバ茶の場合、発酵前の抽出物と乳酸菌発酵組成物とのチロシナーゼ阻害作用を対比すると、ほぼ同程度が、あるいは却ってチロシナーゼ阻害作用が低下していることが分かる。
これらの結果から、本発明の美白組成物のように、特定の原料を用い、特定の乳酸菌により発酵した乳酸菌発酵組成物とすることにより、美白作用を増強することができることが分かる。
【0033】
尚、本発明では、上記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記組成物の形態は、通常、水溶液若しくは原液等の液状であるが、これに限らず、この抽出物を吸液性粉末に含浸させた粉末品、造粒した造粒品、増量剤等他の粉末成分を配合した錠剤、又はマイクロカプセル等とすることができる。また、これらの水溶液、粉末品等を所定容器に充填してなる商品形態、またこれ単独で使用するか他剤(水溶液のもの、油性液のもの若しくは粉末を問わない。)に配合して使用するかについても特に限定されず、例えば、ポーション型でもよいし、他形状容器に充填してもよいし、粉末品をスティック状容器(袋)に充填したものでもよい。更に、従来の清涼飲料水、ドリンク剤、乳製品、油剤化製品等に配合、分散して使用してもよい。尚、この分散は油中水型、水中油型を問わない。また、他の栄養成分(例えば、各種ビタミン類、カルシウムイオン成分、鉄イオン成分等)、薬効成分、調味成分、匂い成分等を配合してもよい。これらのうち、特に水溶性成分が好ましい。均一に溶解した商品とすることができるからである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、優れた抗アレルギー性及びチロシナーゼ阻害作用を有することから、抗アレルギー性組成物、美白組成物及び該美白組成物を含有する化粧品に適用することができる。例えば、本発明は、飲料、食品、化粧品、医薬品等の分野に好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルイボス茶及びバラのうちの少なくとも一方を含む培地にラクトバチルス属に属する乳酸菌を接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物を含有することを特徴とする美白組成物。
【請求項2】
上記乳酸菌がLactobacillus brevis及び/又はLactobacillus casei subsp.caseiである請求項1記載の美白組成物。
【請求項3】
大豆を含む培地にロイコノストック属に属する乳酸菌又はLactobacillus casei subsp.caseiを接種し、発酵培養して得られた乳酸菌発酵組成物を含有することを特徴とする美白組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の美白組成物を含有することを特徴とする化粧品。

【公開番号】特開2010−270152(P2010−270152A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198184(P2010−198184)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【分割の表示】特願2004−56862(P2004−56862)の分割
【原出願日】平成16年3月1日(2004.3.1)
【出願人】(591155884)株式会社東洋発酵 (21)
【Fターム(参考)】