説明

抗アレルギー薬

【課題】 優れたバイオアベイラビリティーと持続性を有し、1日1回の経口投与で有効な抗アレルギー薬の提供。
【解決手段】 フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩を含有する抗アレルギー薬であって、フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩を成人あたり1日投与量として30〜60mgの用量を1日1回経口投与するための抗アレルギー薬。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1日1回の経口投与で有効な抗アレルギー薬に関する。
【背景技術】
【0002】
フェキソフェナジンは、化学名(±)−4−[1−ヒドロキシ−4−[4−(ヒドロキシジフェニルメチル)−1−ピペリジニル]ブチル]−α,α−ジメチルベンゼン酢酸であり、主作用としてヒスタミンH1受容体拮抗作用を有し、さらに炎症性サイトカイン産生抑制作用、好酸球遊走抑制作用、ケミカルメディエータ遊離抑制作用などを有する抗アレルギー薬として広く使用されている(特許文献1及び2)。
【0003】
しかしながら、フェキソフェナジン類は、その物理化学的特性のために、膜透過性が悪く、さらに腸管上皮のp−糖蛋白質逆輸送系の標的となることから、経口投与した場合に十分なバイオアベイラビリティーが得られないという問題がある。そして、その解決策として、フェキソフェナジン類にp−糖蛋白質抑制物質を併用することが提案されている(特許文献2)
【特許文献1】特開昭55−141469号公報
【特許文献2】特表2001−515041号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェキソフェナジンにp−糖蛋白質抑制物質を併用した場合、腸管上皮における透過性が向上する可能性はあるものの、この効果はフェキソフェナジンとp−糖蛋白質抑制物質が消化管内で同時に局在して始めて発揮できるものである。一方、消化管内での薬物の移動や溶解性をコントロールすることは非常に困難であり、食物との相互作用も考えられるため、フェキソフェナジンとp−糖蛋白質抑制物質とを併用する投与方法では、フェキソフェナジンの一定した血中濃度を得ることは難しい。また、フェキソフェナジンに加えてp−糖蛋白質抑制物質を投与することは、新たな薬物相互作用、投与量の増大等などの問題が生じる。
従って、本発明の目的は、一成分で優れたバイオアベイラビリティーと持続性とを満たし、1日1回の経口投与で有効な抗アレルギー薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者は、フェキソフェナジン誘導体のp−糖蛋白質発現細胞における膜透過性及びエステラーゼによる作用について検討してきた結果、全く意外にもフェキソフェナジンアルキルエステルは、フェキソフェナジンやフェキソフェナジンヒドロキシアルキルエステルとはこれらの作用が相違し、p−糖蛋白質発現細胞における膜透過性が良好で、かつ小腸エステラーゼによる加水分解を受けずに、エステル体として吸収された後に肝臓エステラーゼによって活性体であるフェキソフェナジンに変化することから、優れたバイオアベイラビリティーと持続性を有し、1日1回の経口投与で十分有効であることを見出し、抗アレルギー薬に関する本発明を完成した。
さらに本発明者らは、上記検討で使用した試験を方法を利用すれば、エステル型プロドラッグの体内での動態を予測できることを見出し、エステル型プロドラッグの体内での動態を予測する方法に関する本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩を含有する抗アレルギー薬であって、フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩を成人あたり1日投与量として30〜60mgの用量を1日1回経口投与するための抗アレルギー薬を提供するものである。
また、本発明は、エステル型プロドラッグの体内での動態を予測する方法であって、以下の2つの工程含むものである。
(1)被検物質を小腸由来分画あるいは肝臓由来分画とインキュベートし、被検物質の臓器特異的な加水分解を評価する工程、
(2)被検物質のp−糖蛋白質非発現細胞あるいはp−糖蛋白質発現細胞を固着させた多孔性膜での透過性を評価する工程。
【発明の効果】
【0007】
本発明の抗アレルギー薬は、細胞膜透過性が高く、薬物排出蛋白質であるp−糖蛋白質の作用を受けないことから腸管上皮の透過性が良好であり、かつ小腸エステラーゼの作用により加水分解されずに、エステル体として肝臓に移行し、肝臓エステラーゼによって、活性本体であるフェキソフェナジンを生じることから、経口投与によるバイオアベイラビリティーが優れているとともに持続性に優れ、少ない投与量の1日1回経口投与で有効である。
また、本発明のエステル型プロドラッグの体内での動態を予測する方法は、従来見落とされていた有用な薬物を見出すことができ、また、新規物質のスクリーニングの際に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の抗アレルギー薬は、フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩を含有するものである。フェキソフェナジンアルキルエステルは、下記式(1)
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1はアルキル基を示す)
で表される化合物である。R1のアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましい。当該アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基等が挙げられ、このうちエチル基が特に好ましい。
【0011】
フェキソフェナジンアルキルエステルの塩としては、薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩等の有機酸塩が挙げられる。また、フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩には、水和物に代表される溶媒和物も含まれる。
【0012】
フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩は、前記特許文献1記載の方法に従って製造することができる。
【0013】
フェキソフェナジンアルキルエステルは、前記特許文献1及び2中に記載されている。しかし、これらの文献中において、抗ヒスタミン作用等の薬理作用が示されているのはフェキソフェナジンのみであり、フェキソフェナジンアルキルエステルの薬理作用や体内動態などについては何ら記載されていない。後記実施例に示すように、フェキソフェナジンは膜透過性が悪い上に、p−糖蛋白質によって排出されてしまうことから、腸管上皮の透過性が低いことは明らかである。一方、フェキソフェナジンヒドロキシアルキルエステルは、膜透過性は良いもののp−糖蛋白質により排出されてしまい、さらに、吸収されたとしても、小腸および肝臓エステラーゼのいずれによっても加水分解されないために、生体内で作用本体であるフェキソフェナジンに変換されにくい。これに対し、フェキソフェナジンアルキルエステルは、細胞膜透過性が良く、加えて、p−糖蛋白質により排出されないため、腸管上皮の透過性が高い。また、フェキソフェナジンアルキルエステルは、ヒト小腸エステラーゼによって分解されずに、肝臓に移行した後、肝臓エステラーゼによって、フェキソフェナジンを生じることから、体内に吸収後に抗アレルギー作用を発揮する。そして、その効果は持続的である。
【0014】
本発明の抗アレルギー薬は、前記した特性を有しているため、所望の血中濃度を得ることが容易であり、症状等にあわせて適宜、投与量をコントロールすることが可能である。
従って、本発明の抗アレルギー薬は、フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩を成人あたり1日投与量として30〜60mgの用量を1日1回経口投与すればよい。なお、現在、商業的に入手可能なフェキソフェナジンの製剤は、塩酸塩として60mgを含有する錠剤として供給されている。推奨されている用量は1回60mgを1日2回である(PHYSICIAN’S DESK REFERENCE,第52版、1998年、第1238〜1244ページ,Medical Economics Date, Medical Economics Company Inc.の部,Montvale,New Jersey)。
【0015】
本発明の抗アレルギー薬は、経口投与された後体内、主に肝臓でフェキソフェナジンアルキルエステルがフェキソフェナジンに変換されるので、フェキソフェナジンとしての高い血中濃度が長時間維持される。従って、フェキソフェナジンの薬理作用すなわち、ヒスタミンH1受容体拮抗作用、炎症性サイトカイン産生抑制作用、好酸球遊走抑制作用、ケミカルメディエータ遊離抑制作用等が生じる。このように、本発明の抗アレルギー薬は、アレルギー性鼻炎、じんましん、湿疹、皮膚炎、皮膚そう痒症、アトピー性皮膚炎、喘息等に有用である。
【0016】
本発明の抗アレルギー薬は、フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩を経口投与できる形態であればよく、例えば錠剤、顆粒剤、細粒剤、粉末剤、丸剤、カプセル剤、シロップ剤等の製剤にすることができる。これらの製剤を製造するにあたっては、薬学的に許容される担体を用いることができ、当該担体としてはセルロース誘導体、トラガカントガム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポビドン等の結合剤;デンプン、乳糖、ショ糖等の賦形剤;界面活性剤;アルギン酸、コーンスターチ、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カルシウム等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の滑沢剤、二酸化ケイ素、タルク、甘味剤、香料等が挙げられる。
【0017】
また、本発明のエステル型プロドラッグの体内での動態を予測する方法は、以下2つの工程含むものである。
(1)被検物質を小腸由来分画あるいは肝臓由来分画とインキュベートし、被検物質の臓器特異的な加水分解を評価する工程、
(2)被検物質のp−糖蛋白質非発現細胞あるいはp−糖蛋白質発現細胞を固着させた多孔性膜での透過性を評価する工程。
【0018】
小腸由来分画あるいは肝臓由来分画としては、ミクロソームまたはS9分画を使用することができる。被検物質とこれらの分画をインキュベートすることにより、被検物質の臓器特異的な加水分解、特に臓器特異的なエステラーゼによる加水分解を評価できる。インキュベーション後の被検物質の残存量及び/又は、加水分解により被検物質が変換され生成した物質の生成量を測定することで、加水分解を評価することができる。
【0019】
p−糖蛋白質非発現細胞としてはブタ腎臓由来培養細胞LLC−PK1などを、p−糖蛋白質発現細胞としては、LLC−GA5−COL300細胞を使用できる。これらはいずれも市販されており、推奨されている培養方法により培養することができる。
【0020】
各細胞を多孔性膜へ固着させる方法は公知の方法が使用できる。被検物質を頂側膜側、あるいは基底側膜側に適用し、多孔性膜を透過した被検物質の量を測定することで透過性は評価することができる。
【実施例】
【0021】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
実施例1 ヒト小腸および肝臓ミクロソームにおけるフェキソフェナジン誘導体の加水分解
(1)方法
a)フェキソフェナジンエステル誘導体の臓器ミクロソームにおける反応
フェキソフェナジン誘導体とヒト小腸あるいは肝臓ミクロソーム(いずれもGENTEST社)とをインキュベーションし、臓器特異的なフェキソフェナジン誘導体の加水分解を確認した。フェキソフェナジン誘導体として、フェキソフェナジンエチルエステル(E−FXD)(分子量:529.7、HBSS緩衝液(pH7.4)とオクタノールでの分配係数:5.45)、フェキソフェナジン−2−ヒドロキシエチルエステル(2HE−FXD)(分子量:546.7、HBSS緩衝液(pH7.4)とオクタノールでの分配係数:3.56)を使用した。HBSS緩衝液の組成は以下である。9.8g/L HBSS(Hanks’ balanced salt solution、SIGMA社)、0.37g/L NaHCO3、3.5g/L D−グルコース、2.61g/L HEPES、5N NaOH 1.2mL/L)E−FXD(1〜30μmol/L)あるいは2HE−FXD(50μmol/L)を、ヒト小腸ミクロソーム(100μg蛋白/mL)あるいは肝臓ミクロソーム(40μg/mL)を、E−FXDの場合は37℃、15分間、2HE−FXDの場合は37℃、1時間、50mmol/L HEPES緩衝液(pH7.4)中でインキュベーションした後、それぞれHPLC用移動相の有機溶媒を添加して、酵素反応を停止させた(濃度はすべて終濃度を記載)。反応液は4℃、3000rpmで5分間遠心し、上清を下記の条件で、HPLCで定量分析した。
b)HPLC分析
UV検出器(JASCO、UV−2075Plus)、ポンプ(JASCO、PU−980)、データ処理装置(SHIMADZU、CHROMATOPAC C−R4A)、オートサンプラー(JASCO、AS−950)を装備したHPLC装置を用いて、以下の条件で定量した。移動相AではFXDとE−FXDの保持時間はそれぞれ6.1分と19分であり、移動相BではFXDと2HE−FXDの保持時間がそれぞれ23分と27分であった。
カラム;Wakosul−II 5C18 No.07107(5μm、150×4.6m
m i.d.)。カラム温度;40℃。
移動相A(E−FXD分析用);アセトニトリル:メタノール:12mmol/L 酢酸アンモニウム(pH4)=39:10:51(v/v/v)。
移動相B(2HE−FXD分析用);アセトニトリル:メタノール:12mmol/L 酢酸アンモニウム(pH4)=22:15:63(v/v/v)。
流速;1mL/min。検出;UV218nm。注入量;100μL。
【0023】
(2)結果
2HE−FXDは、ヒト小腸および肝臓ミクロソームのどちらにおいても加水分解されなかった。一方、E−FXDは小腸ミクロソームでは加水分解されず、肝臓ミクロソームで加水分解された(表1)。1〜30μmol/LのE−FXD存在下の肝臓ミクローソームの加水分解活性は、E−FXDの濃度に依存的であり直線的に増大した(図1)。FXDの溶解度のため、基質濃度を最大30μmol/Lに設定したが、この濃度範囲の活性値からLineweaver−Burk plotによりKm値、Vmaxを求めたところ、Km値は約100μmol/L、Vmaxは12nmol/min/mg蛋白質であった。Km値は、FXDの1回の投与量60mgから考えると、肝臓での代謝飽和を起こすような値ではないと考えられた。また肝クリアランスの面から考えると、固有クリアランス(CLint=Vmax/Km)は0.12mL/min/mg蛋白質であった。膜透過性の高いE−FXDは肝臓への移行性も良く、肝臓に積極的に取込まれた後に、肝臓で代謝されて活性体のFXDとして全身循環に移行するものと考えられた。以上の結果より、2HE−FXDは小腸および肝臓において加水分解されないため、プロドラッグとしては適していない一方、E−FXDは小腸では加水分解されにくく肝臓で加水分解されるため、吸収増大を目的としたプロドラッグとして好適であることがわかった。
【0024】
【表1】

【0025】
実施例2 FXD、FXD誘導体のLLC−PK1細胞、LLC−GA5−COL300細胞単層膜を介した透過実験
(1)方法
ブタ腎臓由来培養細胞LLC−PK1(大日本製薬)及び、p−糖蛋白質を発現させたLLC−GA5−COL300(理化学研究所)をポリカーボネート膜フィルター(3μm孔、6well、TRANSWELL3414、Costar社)の上部に、それぞれ4×105 細胞/cm2、5×105細胞/cm2の細胞懸濁液を播種した。フィルター上部に1.5mL、下部に2.6mLの培地を満たし、37℃、95%空気、5%CO2存在下で3日間培養し、培地の交換は毎日行った。透過実験の6時間前にすべての細胞の培地をコルヒチンを含まない199培地(日水製薬)に置き換えた。acceptor側(頂側膜(apical)側:AP側1.5mL、基底側膜(basolateral)側:BL側2.6mL)には199培地を、donor側には199培地に溶解させた薬物(FXD、FXD誘導体;2HE−FXDとE−FXD)溶液を添加し、37℃でインキュベーションした。経時的にacceptor側からは100μL、donor側からは20μLサンプリングし、acceptor側にはHBSSを100μL添加し、acceptor側の容量が変わらないようにした。透過終了後、細胞を199培地で2回洗い、スパーテルで細胞を剥ぎ取った後、200μLのメタノールでtranswellを洗うように細胞を採取し、この操作を2回繰り返した。採取したメタノール溶液を超音波処理(20秒×3回、氷冷)し、遠心後、上清を濃縮乾固した。donor側のサンプルには80μLの199培地を添加し、すべての透過溶液のサンプルには実施例1のHPLC移動層の有機溶媒を100μL添加後、ボルテックスをかけ、遠心した上清を実施例1に順じてHPLCにて定量した。タンパク質量は、牛血清アルブミン(SIGMA社)を標準タンパク質としてCBB法(Bradford法)に準じて求めた。
みかけの透過係数(Papp)は時間に対する累積透過量をプロットし、その初期直線の傾き(dQ/dt)から次式に従って求めた。
Papp=dQ/dt/A/C0
Papp(cm/sec):apparent permeability coefficients
dQ/dt(μmol/sec):initial transport rate
A(cm2):surface areas of monolayer
C0(μmol/mL):initial concn. in the donor chamber
【0026】
(2)結果
表2に両細胞単層膜における透過実験を行った結果を示す。AP→BLとBL→APのPappを比較すると、FXDでは、LLC−GA5−COL300細胞のLLC−PK1細胞に対するPapp比が3.6倍であり、p−糖蛋白質の基質として輸送されているものと考えられた。一方、2HE−FXDに関してはAP→BLのPappがLLC−GA5−COL300細胞でLLC−PK1細胞の約3分の1に減少し、BL→APでは約2.9倍と増大したため、LLC−GA5−COL300細胞におけるPapp比が8.9倍とFXDよりも大きな値を示した。したがって2HE−FXDはFXDよりもp−糖蛋白質の基質として認識されやすいものと考えられた。E−FXDは、Papp比がLLC−PK1細胞で1.1倍、LLC−GA5−COL300細胞で1.5倍であったことから、p−糖蛋白質による輸送活性は低いことが示された。また、FXDのPappは他の3つの化合物に比べて非常に小さく、FXDの膜透過性が低いことが明らかであった。さらに、これに対し、FXD誘導体のPappは、LLC−PK1細胞におけるFXDの10から25倍大きい値であった。
【0027】
表2から明らかなように、FXDは、膜透過性が極めて低い上に、Papp比がLLC−PK1細胞に比べてLLC−GA5−COL300細胞で大きく、p−糖蛋白質の基質になると考えられた。エステル体の2HE−FXDはPapp比がLLC−GA5−COL300細胞で約9倍となりFXDよりもp−糖蛋白質の基質になりやすい結果を得た。一方、E−FXDはフェキソフェナジン2HE−FXDとは異なり、両細胞におけるPapp比には有意な差が認められず、p−糖蛋白質の基質として認識され難いものと思われた。
また、本発明方法によれば、エステル型プロドラッグの体内動態、特に小腸及び肝臓における加水分解及びp−糖蛋白質輸送系の標的になるか否かが評価できる。
【0028】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】E−FXDに対する肝臓ミクロソームの加水分解活性を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩を含有する抗アレルギー薬であって、フェキソフェナジンアルキルエステル又はその塩を成人あたり1日投与量として30〜60mgの用量を1日1回経口投与するための抗アレルギー薬。
【請求項2】
下記2つの工程を行うことを特徴とするエステル型プロドラッグの体内での動態を予測する方法。
(1)被検物質を小腸由来分画あるいは肝臓由来分画とインキュベートし、被検物質の臓器特異的な加水分解を評価する工程、
(2)被検物質のp−糖蛋白質非発現細胞あるいはp−糖蛋白質発現細胞を固着させた多孔性膜での透過性を評価する工程。
【請求項3】
小腸由来分画あるいは肝臓由来分画が、ミクロソームまたはS9分画から選ばれるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
加水分解を評価する工程が、エステラーゼによる加水分解を評価するものである、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
透過性を評価する工程が、p−糖蛋白質の基質であるか否かを評価するものである、請求項2又は3に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−120684(P2008−120684A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62642(P2005−62642)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【出願人】(390037327)第一化学薬品株式会社 (111)
【Fターム(参考)】