説明

抗アレルゲン性を有する化粧シート、化粧板、及び電離放射線硬化性樹脂組成物

【課題】高い抗アレルゲン性を有する化粧シート、これを用いた化粧板、及び被塗物に高い抗アレルゲン性を付与しうる電離放射線硬化性組成物を提供すること。
【解決手段】基材上に抗アレルゲン機能層を有し、該抗アレルゲン機能層が硬化性成分及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む電離放射線硬化性組成物の硬化物であり、該硬化性成分として分子量250以下のポリイソシアネートと分子量100〜250のポリオールとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含むである化粧シート及びこれを用いた化粧板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アレルゲン性を有する化粧シート、化粧板、及び電離放射線硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の床材、壁材などの内外装用建材には、アレルギー疾患に原因となるダニや花粉などのアレルゲンを除去、あるいは不活性化するような抗アレルゲン性を有する持つことが求められている。このような抗アレルゲン性を有する建材としては、ジルコニウム塩からなる抗アレルゲン剤を、木材の素材、合板などの木質素材などの表面に塗布した建築材料が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかし、このような建築材料では、抗アレルゲン剤を単に塗布処理したものであることから、剥離しやすく、耐久性が乏しいものであった。
【0003】
そこで、このような問題を解消するため、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子の抗アレルゲン剤を光重合性オリゴマーなどと混合した光硬化性樹脂組成物を木質系基材に塗布し、光硬化させた床材が開発されている(例えば、特許文献2及び3参照)。しかし、特許文献2及び3のように、単に抗アレルゲン剤を光硬化性樹脂組成物に配合しただけでは、十分な抗アレルゲン性を備えることはできず、内外装用建材に対する優れた抗アレルゲン性の付与という要望を依然として満足できるものではなかった。
【0004】
このような従来技術を背景として、床材等の内外装用建材に使用される化粧シートにおいて、抗アレルゲン剤の作用を有効に発揮させることができる化粧シートの開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−212806号公報
【特許文献2】特開2008−239721号公報
【特許文献3】特開2010−173115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い抗アレルゲン性を有する化粧シート、これを用いた化粧板、及び被塗物に高い抗アレルゲン性を付与しうる電離放射線硬化性樹脂組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、分子量250以下のポリイソシアネートと分子量100〜250のポリオールとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを硬化性成分として選択し、該硬化性成分とフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を抗アレルゲン機能層として基材上に積層させることにより、高い抗アレルゲン性を有する化粧シートが得られることを見出した。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の化粧シート、電離放射線硬化性樹脂組成物、及び化粧板を提供する。
項1. 基材上に抗アレルゲン機能層を有し、該抗アレルゲン機能層が硬化性成分及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該硬化性成分として分子量250以下のポリイソシアネートと分子量100〜250のポリオールとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む化粧シート。
項2. ポリイソシアネートの分子量が、150〜225である項1に記載の化粧シート。
項3. ポリイソシアネートが、単環の脂環式ポリイソシアネートである項1又は2に記載の化粧シート。
項4. ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数が、2〜10である項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
項5. 電離放射線硬化性樹脂組成物が、硬化性成分としてさらに分子量250より大きいポリイソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
項6. 抗アレルゲン剤が、ポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたものである項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
項7. ポリフェノール化合物が、カテキン及びタンニン酸から選ばれる少なくとも一種である項6に記載の化粧シート。
項8. 無機固体酸がリン酸塩である項6又は7に記載の化粧シート。
項9. 抗アレルゲン剤の配合量が、硬化性成分100質量部に対して1〜30質量部である項1〜8のいずれかに記載の化粧シート。
項10. 硬化性成分及び抗アレルゲン剤を含み、該硬化性成分として分子量250以下のポリイソシアネートと分子量100〜250のポリオールとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物。
項11. ポリイソシアネートの分子量が、150〜225である項10に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
項12. ポリイソシアネートが、単環の脂環式ポリイソシアネートである項10又は11に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
項13. 前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数が、2〜10である項10〜12のいずれかに記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
項14. 電離放射線硬化性樹脂組成物が、硬化性成分としてさらに分子量250より大きいポリイソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む項10〜13のいずれかに記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
項15. 抗アレルゲン剤が、ポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたものである項10〜14のいずれかに記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
項16. ポリフェノール化合物が、カテキン及びタンニン酸から選ばれる少なくとも一種である項15に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
項17. 無機固体酸が、リン酸塩である項15又は16に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
項18. 項1〜9のいずれかに記載の化粧シートを木質基板に貼り付けてなる化粧板。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧シートは、高い抗アレルゲン性を有しており、生活空間におけるアレルゲンの除去又は低減化に有効である。更に、本発明の化粧シートは、実用上要求される諸特性(耐候性、耐溶剤性、耐汚染性、柔軟性)も備えている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。
【図2】本発明の化粧板の断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[化粧シート]
本発明の抗アレルゲン性を有する化粧シートは、基材上に抗アレルゲン機能層を有し、該抗アレルゲン機能層が硬化性成分及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該硬化性成分として分子量250以下のポリイソシアネートと分子量100〜250のポリオールとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(以下、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーA」と表記することもある)を含むことを特徴とするものである。
【0012】
図1は、本発明の抗アレルゲン性を有する化粧シートの好ましい態様の一例を示す模式図である。本発明の化粧シート10は、基材1の上に、抗アレルゲン機能層4を設け、該抗アレルゲン機能層4はエンボス模様5を有したものであり、該基材1は、基材1A、印刷層2、接着剤層3及び基材1Bを順に積層したものである。
【0013】
また、本発明の化粧シートには、必要に応じて、基材1の裏面(抗アレルゲン機能層4を積層する面に対して反対側の面)に、樹脂層からなるバッカー層6を積層させてもよい。以下、本発明の化粧シートの構成について詳細に説明する。
【0014】
≪基材1≫
本発明で用いられる基材1としては、紙や熱可塑性樹脂などからなる従来公知の化粧シートに用いられるものであれば特に制限はない。紙の基材としては、裏打紙、難燃紙などが挙げられ、基材を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの熱可塑性樹脂からなる樹脂シートを用いることができる。これらのうち、床材として用いる場合には、コスト及びシート柔軟性の点でポリオレフィン系樹脂が好ましく、耐傷つき性といったシートとしての強度が求められる場合には、ポリエステル系樹脂が好ましく、求められる用途に応じて使い分けられる。
【0015】
また、基材1としては、二つ以上の樹脂シートを積層して得られる複層構成のシートを用いることもできる。この場合、二つ以上の樹脂シートに用いられる樹脂は同じでも異なっていてもよい。上記したなかでもポリオレフィン系樹脂を好ましく用いることができ、二層構成の場合、その樹脂の組合せとしては、ポリエチレン−ポリエチレン、ポリエチレン−ポリプロピレン、あるいはポリプロピレン−ポリプロピレンの組合せが好ましい。
複層構成のシートは、例えば二層構成の場合は、基材1Aの表面にコロナ放電処理などを施して易接着層を設け、該樹脂基材1Aにベタ層及び/又は絵柄層からなる印刷層2を形成し、ついで必要に応じて接着剤層3を設けた後に、基材1Bを押出ラミネーション、ドライラミネーション、ウエットラミネーション、サーマルラミネーションなどの方法により接着・圧着させて得られる。基材1A及び1Bは、着色されたものでも、無着色のものでもよく、意匠性を向上させる観点から、いずれか一方が着色されたものであることが好ましい。
【0016】
基材1の厚さは20〜300μmが加工性、柔軟性、強度の点で通常適用され、50〜200μm程度がより好ましい。基材1が複層構成のシートの場合、各層を構成する基材の厚さの合計が上記範囲内にあればよく、これらの基材の厚さは同じでも異なっていてもよい。各層を構成する基材(二層構成の場合は基材1A及び1B)単独での厚さは、好ましくは20〜150μmであり、より好ましくは40〜100μmである。
また、基材1は、その表面がコロナ放電処理やプラズマ処理などのいわゆる易接着性処理がなされたものであってもよく、また、基材表面にプライマー層やアンカー層などの易接着層が設けられたものであってもよい。
【0017】
≪印刷層2≫
印刷層2は、化粧シートの意匠性を向上させる目的で、所望によって設けられる任意の層であり、通常基材1の上に設けられる。また、基材1が上記した複層構成のシートの場合、印刷層2は、例えば図1に示されるように各層を構成する基材間に設けてもよいし、該複層構成のシートの最も抗アレルゲン機能層に近い面に設けてもよい。
【0018】
印刷層2は、絵柄層及び/又はベタ層により構成され、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。絵柄層の模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。また、ベタ層は、全面にわたって被覆する一様均一な着色を施した層であり、意匠性を向上させる効果のほか、基材あるいは化粧シートを貼り合わせる基板を隠蔽する効果も有する。意匠性の向上の観点からは、絵柄層とベタ層とを設けることが好ましい。
印刷方法としては、通常の、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷などの輪転印刷、枚葉印刷のいずれをも適用できる。
また、絵柄層の印刷に用いるインキとしては、特に制限はなく、バインダーに、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、酸化チタン、紺青、カーボンブラック、紅柄などの無機顔料やジスアゾ系顔料、イソインドリノン、ポリアゾ系顔料、キナクリドン、フタロシアニンブルーなどの有機顔料、アルミニウム粉、銅粉、金属蒸着合成樹脂フィルムの微細断裁片、二酸化チタン被覆雲母、魚鱗箔などのパール状光沢をもつ顔料などを混合したものが用いられる。
【0019】
≪接着剤層3≫
接着剤層3は、上記したように基材が複層構成のシートを採用する場合、二つ以上の基材をラミネートする際に、必要に応じて設けられる層である。接着剤としては、ウレタン系、アクリル系、アクリル/ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリスチレン系、セルロース系などが好ましく挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で、あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0020】
《バッカー層6》
バッカー層6は、基材1の裏面(抗アレルゲン機能層4を積層する面に対して反対側の面)に設けられる樹脂層である。このようなバッカー層6を積層することにより、化粧シートを被着材(特に木質合板)と貼着して化粧材とする場合に、被着材表面に不可避的に存在する凹凸の影響を緩和することができる。特に床用化粧シートとして用いる場合には、バッカー層は化粧シートにクッション性を付与する層にもなる。
【0021】
バッカー層6を形成する樹脂としては、特に制限されないが、熱可塑性樹脂が好ましく、例えば、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリメチレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合体、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアミド、ABS等が挙げられる。
【0022】
バッカー層6は、例えば、上記樹脂成分を、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によって形成してもよく、また予め成型した樹脂フィルムを用いてもよい。
【0023】
バッカー層6を溶融樹脂の押出し成形によって形成する際は、例えば、Tダイを用いた押出し成形が好適に利用できる。また、バッカー層6が多層である場合には、例えば、マルチマニホールドタイプやフィードブロックタイプのTダイを用いることにより、多層同時押出しを行えばよい。バッカー層6を多層とする場合は、例えば、基材シートの裏面と最も近い層を易接着樹脂層とすることが好ましい。この様な改良は、例えば、易接着樹脂層とする層に公知の熱可塑性エラストマーを配合することによって達成できる。熱可塑性エラストマーの種類は、特に限定されず、バッカー層を構成する樹脂と相溶性が高く、基材シートとの密着性改善に寄与し得るものの中から広く選択できる。
【0024】
また、押し出し成形によって形成したバッカー層6が熱融着による接着では基材シート裏面と密着し難い場合には、必要に応じて、密着性を高めるためにバッカー層6と熱可塑性樹脂基材1の間井に接着剤層を設けてもよい。
【0025】
バッカー層6の厚さは100μm以上であればよいが、150〜600μm程度が好ましく、250〜400μm程度がより好ましい。バッカー層6は、その引張り弾性率が1000MPa以上であれば好ましく、1500MPa以上であれば好ましい。引張り弾性率の上限は特に限定的ではないが、2500MPa程度とすればよい。
【0026】
≪抗アレルゲン機能層4≫
抗アレルゲン機能層4は、基材1の上に必要に応じてプライマー層などを介して設けられる層であり、本発明の化粧シートに抗アレルゲン性を付与する層である。また、抗アレルゲン機能層4は、耐候性、耐溶剤性、耐汚染性などの特性の点でも優れており、化粧シートに他の実用的性能を付与する層でもある。
【0027】
抗アレルゲン機能層4は、硬化性成分及び抗アレルゲン剤を含み、該硬化性成分としてウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーAを含む電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物により構成される層である。
【0028】
<ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーA>
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーAは、分子量250以下のポリイソシアネートと分子量100〜250のポリオールとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるオリゴマーであり、電離放射線硬化性を示す硬化性成分である。ここで電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋しうるエネルギー量子を有するものを意味し、通常紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も含むものである。
【0029】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーAはラジカル重合性不飽和基を有しており、本発明においては、このラジカル重合性不飽和基を2〜12を有する、すなわち2〜12官能のものが好ましく、より好ましくは4〜8官能のものであり、さらに好ましくは4〜6官能、特に好ましくは6官能のものである。官能基数が上記範囲内であると、優れた抗アレルゲン性が得られる。また、官能基数が上記範囲内のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーAは、実用上求められる耐候性、耐溶剤性、耐汚染性などの特性を備えさせる上でも有効である。
【0030】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーAの数平均分子量(GPC法で測定したポリスチレン換算の数平均分子量)は、700〜5000程度のものが好ましく、より好ましくは700〜3000であり、さらに好ましくは700〜2500であり、特に好ましくは800〜1500である。このようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーAを後述する抗アレルゲン剤とともに用いることにより、一層優れた抗アレルゲン性が得られる。また、電離放射線硬化性樹脂組成物が適度なチクソ性を有するので、抗アレルゲン機能層の形成が容易となる。
【0031】
(ポリイソシアネート)
ポリイソシアネートの分子量は250以下であり、かつイソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物であればよく、分子量は100〜250の範囲であることが好ましく、より好ましくは150〜250、特に好ましくは150〜225が挙げられる。
このようなポリイソシアネートとしては、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素添加XDI)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの単環の脂環式イソシアネート;m−フェニレンジイソシアネ−ト、p−フェニレンジイソシアネ−ト、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、2,6−トリレンジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,4−ジイソシアネ−ト、ナフチレン−1,5−ジイソシアネ−トなどの芳香族ジイソシアネートが好ましく挙げられる。これらの中でも、一層優れた抗アレルゲン性を得る観点から、脂肪族ポリイソシアネート、単環の脂環式ポリイソシアネートが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及び水素添加XDIがより好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートがさらに好ましい。これらのポリイソシアネートは単独で、又は複数種を同時に用いてもよい。
【0032】
(分子量100〜250のポリオール)
ポリオールは、水酸基を2つ以上有し、分子量が100〜250である化合物であればよいが、分子量として、好ましくは100〜200、より好ましくは100〜150が挙げられる。
【0033】
分子量100〜250のポリオールとしては、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環式ジオール;キシリレンジオールなどの芳香族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどが好ましく挙げられる。これらの中でも、一層優れた抗アレルゲン性を得る観点から、好ましくは脂肪族ジオール、更に好ましくは1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールが挙げられる。また、本発明においては、ポリオールを上記したなかから単独で、又は複数種を同時に用いてもよい。
【0034】
(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物)
ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキルアルキレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレートアクリレート、2−(メタ)アクリロイルエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどが好ましく挙げられる。これらのなかでも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートが好ましい。また、これらの(メタ)アクリレート化合物は単独で、又は複数種を同時に用いてもよい。
【0035】
(オリゴマーの合成)
本発明で用いられるウレタンアクリレートオリゴマーAは、常法に従い、上記した分子量250以下のポリイソシアネートと分子量100〜250のポリオールとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得ることができる。
例えば、ウレタンアクリレートオリゴマーAは、上記の分子量250以下のポリイソシアネートと分子量100〜250のポリオールとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とを同時に反応させる、あるいはポリイソシアネートと(メタ)アクリレートとを反応させた後、得られた反応物にさらにポリオールを反応させる方法などにより得ることができる。また、ポリイソシアネートとポリオールとを、イソシアネート基がポリオール由来のヒドロキシ基に対して過剰となるような条件で反応させて、イソシアネート基を末端に有するウレタンオリゴマーを得た後、該イソシアネート基と(メタ)アクリレートのヒドロキシ基とを反応させる方法により得ることもできる。
【0036】
ポリイソシアネート、(メタ)アクリレート、及びポリオールの使用量は、ポリイソシアネートとポリオールとの配合比率をイソシアネート基:水酸基のモル比が好ましくは1.3:1〜3:1、より好ましくは1.5:1〜2:1となるような比率で、さらにポリイソシアネートとポリオールとの反応により得られたウレタンオリゴマーの末端イソシアネート基と(メタ)アクリレートのヒドロキシ基との比が好ましくは1:1〜1:1.5程度の比率となるような量とすればよい。
【0037】
反応はウレタン化反応を行う温度、通常30〜90℃程度で行えばよい。また、ナフテン酸コバルトなどのナフテン酸金属系触媒、ジブチル錫ジラウレートなどの錫系触媒、ト
リエチルアミンなどのアミン系触媒などのウレタン化触媒を使用することも可能である。
また、(メタ)アクリロイル基の熱重合反応を制御するため、重合禁止剤を添加できる。好ましい重合禁止剤としてはヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテルなどが好ましく挙げられる。重合禁止剤の使用量は、通常(メタ)アクリレートに対して50〜5000ppm程度である。
【0038】
<ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーB>
本発明で用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物は、化粧シートの柔軟性を向上させる目的で、硬化性成分として、上記ウレタンアクリレートオリゴマーA以外に、さらに分子量が250より大きいポリイソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるオリゴマー(以下、「ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーB」と表記することもある)を含有することが好ましい。該ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーBとしては、例えば、その官能基数が2〜4であり、かつ数平均分子量が900〜5000であることが好ましく、900〜3000がより好ましく、900〜2000がさらに好ましい。
【0039】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーBの製造に使用されるポリイソシアネートとしては、分子量が250より大きいことを限度として特に制限されないが、例えば、ジシクロヘキシルメタン−4,4‘−ジイソシアネート(水素添加MDI)等の複脂環式ポリイソシアネートが挙げられる。
【0040】
また、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーBの製造に使用されるヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物は、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーAで用いられるものと同様である。
【0041】
更に、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーBには、構成成分としてポリオールが含まれていてもよい。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーBに用いられるポリオールの分子量は、特に制限されない。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーBで用いられるポリオールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノールなどの脂環式ジオール;キシリレンジオールなどの芳香族ジオール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルグリコール;トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらのポリオールは単独で、又は複数種を同時に用いてもよい。
【0042】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーBは、常法に従い、上記した分子量250がより大きいポリイソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート、必要に応じてポリオールを反応させて得ることができる。具体的な反応条件としては、使用する成分の種類以外は、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーAの場合と同様である。
【0043】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーBの含有量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーAとの合計量に対して、1〜40質量%であることが好ましく、5〜25質量%がより好ましく、10〜25質量%がさらに好ましく、10〜20質量%が特に好ましい。含有量が上記範囲内であると、本発明の化粧シートの高い抗アレルゲン性を維持しつつ、柔軟性を向上させることが可能となる。
【0044】
<他の硬化性成分>
本発明で用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物は、上記したウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーA及びB以外の硬化性成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で、含有することができる。
このような硬化性成分としては、電離放射線硬化性化合物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーを好ましく挙げることができる。
【0045】
重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0047】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートなどとともに、その粘度を低下
させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
<抗アレルゲン剤>
本発明で用いられる抗アレルゲン剤は、フェノール性水酸基を有するもの、すなわちフェノール性水酸基を有する非水溶性高分子のものであり、該フェノール性水酸基が、アレルゲン性の物質を吸着するとともに不活性化するように機能するものであれば特に制限されない。このような抗アレルゲン剤としては、分子内に複数のフェノール性水酸基、すなわちベンゼン環やナフタレン環などの芳香環に結合した水酸基を有する有機化合物であるポリフェノール化合物で構成されるもの、例えば、ポリ(4−ビニルフェノール)やポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル)などのポリフェノール系の高分子が好ましく挙げられる。市販の抗アレルゲン剤としては、「マルカリンカーM(商品名)」(丸善石油化学株式会社)などを使用することができ、この抗アレルゲン剤は、ダニや花粉など種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0049】
また、ポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたものも好ましく挙げられる。ポリフェノール化合物が無機固体酸に担持された抗アレルゲン剤は、優れた抗アレルゲン性を備えさせることができ、更により優れた耐候性、耐汚染性をも備えさせることができる。このような態様において用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、エピカテキン、ガロタンニン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのカテキンと称される低分子量ポリフェノールや高分子量のタンニン酸などが、優れた抗アレルゲン性を有するとともに、工業的に容易にかつ安価に入手できる観点から好ましく挙げられる。ポリフェノール化合物は、上記したものを単独で、あるいは複数を組み合わせて用いることができる。これらのなかでも、タンニン酸が抗アレルゲン性の観点から好ましい。
【0050】
無機固体酸は、無機物質であって、その表面に水素イオンを放出し、酸性を発現する酸点あるいは活性点を有するものである。例えば、H置換Y型ゼオライト、H置換ZSM−5型ゼオライトなどのゼオライト類、リン酸ジルコニウム、リン酸アルミニウム、リン酸スズ、リン酸セリウム、リン酸チタニウムなどのリン酸、アンチモン酸のほか、シリカアルミナ、シリカチタニア、シリカジルコニア、チタニアアルミナ、チタニアジルコニアなどの複合酸化物などが好ましく挙げられる。これらのなかでも、耐熱性に優れ、高い固体酸性を有する観点から、ゼオライト類、複合酸化物が好ましく、特に酸強度が強いリン酸ジルコニウムが好ましく、結晶系が層状構造を有する層状リン酸ジルコニウムが好ましい。
【0051】
無機固体酸の形状は、粉末状、塊状、板状及び繊維状などが挙げられるが、取り扱いの点から粉末状であることが好ましい。粉末状の場合、その平均粒径は0.01〜50μmであることが好ましく、0.02〜20μmであることがより好ましい。平均粒径が上記範囲内であると、取り扱いが容易であり、優れた抗アレルゲン性を得る観点からも好ましい。
【0052】
本発明において、ポリフェノール化合物と無機固体酸との重量比率は、10:90〜95:5が好ましく、より好ましくは20:80〜80:20であり、さらに好ましくは20:80〜40:60である。重量比率が上記範囲内であると、ポリフェノール化合物と無機固体酸との相乗効果により、とりわけ優れた抗アレルゲン性が得られる。
【0053】
上記したような抗アレルゲン剤は、市販品として入手も可能であり、例えば、ポリフェノール化合物とジルコニウム化合物とを組み合わせた「アレリムーブ(商品名)」(東亞合成株式会社製)などが市販品として挙げられる。
【0054】
抗アレルゲン剤の配合量は、電離放射線硬化性樹脂組成物中の硬化性成分の合計量100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、より好ましくは5〜30質量部であり、さらに好ましくは8〜25質量部であり、特に好ましくは8〜15質量部である。本発明では、このような少ない配合量であっても、硬化性成分として上記のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーAを使用することにより、優れた抗アレルゲン性が得られる。また、本発明においては、このように抗アレルゲン剤を多量に使用しなくてもよいので、該抗アレルゲン剤を含む抗アレルゲン機能層の耐候性や耐汚染性の低下を抑制でき、優れた抗アレルゲン性を長期的、持続的に発現することも可能となる。
【0055】
<他の添加剤>
また、電離放射線硬化性樹脂組成物には、本発明の化粧シートを適用するものに対して要求される特性を満たすために、さらに、紫外線吸収剤、光安定化剤、抗菌剤、耐摩耗剤、及び艶消し剤、あるいは沈降防止剤などの添加剤を含有させることができる。
【0056】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤(UVA)は有害な紫外線を吸収し、本発明の化粧シートの長期耐候性、安定性を向上させる。また、光安定剤は、これ自体は紫外線をほとんど吸収しないが、紫外線により生じる有害なフリーラジカルを効率良く捕捉することにより安定化するものである。
本発明で用いることができる紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系などが好ましく挙げることができる。なかでも、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系がより好ましい。また、ブリードアウトを抑制するために、必要に応じて(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基を有する電離放射線反応型紫外線吸収剤を用いてもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物中の硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0057】
(光安定剤)
また、本発明で用いる光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤であることが好ましく、電離放射線反応型ヒンダードアミン系光安定化剤であることが好ましい。
電離放射線反応型ヒンダードアミン系光安定剤としては、電離放射線硬化性樹脂組成物中の硬化性成分と反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基を有するものが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。このような光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレートなどが挙げられる。
このような光安定剤の含有量は、電離放射線硬化性樹脂組成物中の硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0058】
(抗菌剤)
本発明で用いる電離放射線硬化性樹脂組成物には、抗菌性を付与するために、抗菌剤を配合することができる。このような抗菌剤としては担体が無機化合物であり、当該担体に銀イオン又は銀イオンの他に銅イオン、亜鉛イオンを併用した少なくとも銀イオンを担持
させたものである。無機化合物は任意のものが使用できる。例えば、活性炭、活性アルミナ、シリカゲルなどの無機系吸着剤、ゼオライト、水酸化アパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイドなどの無機イオン交換体などが挙げられる。これらの無機化合物は、1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0059】
(耐摩耗剤)
本発明で用いる電離放射線硬化性樹脂組成物には、抗アレルゲン機能層表面の硬度を高め、耐傷性を向上するために、耐摩耗剤を配合することができる。このような耐摩耗剤としては、無機系と有機系の充填剤があり、無機物では、例えば、α−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素などの球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形などが挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。
また、有機物の充填剤では、架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜100%程度とすることが透明性保持の観点から好ましい。配合量は、電離放射線硬化性樹脂組成物中の硬化性成分100質量部に対して1〜20重量部程度の割合であることが好ましい。
【0060】
(艶消し剤)
本発明で用いる電離放射線硬化性樹脂組成物には、抗アレルゲン機能層表面の艶消しのため、いわゆる艶消し剤(マット剤)を配合することができる。このような艶消し剤としては、種々のものが用いられ、無機質微粉末、有機フィラーなどを用いることができる。無機質微粉末としては、シリカ、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、ケイ酸微粉末などが使用でき、有機フィラーとして、アクリル、ウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、尿素系樹脂などからなるフィラー、スチレン架橋フィラー、ベンゾグアナミン架橋フィラーなどが挙げられる。
艶消し剤の配合量としては、電離放射線硬化性樹脂組成物中の硬化性成分100質量部に対して、4〜30質量部であり、10〜20質量部であることがより好ましい。
【0061】
(その他各種添加剤)
また、本発明で用いられる電離放射線硬化性樹脂組成物には、その性能を阻害しない範囲でその他各種添加剤を含有することができる。その他の各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、光重合用開始剤などが挙げられる。
【0062】
(抗アレルゲン機能層の形成)
本発明の化粧シートの抗アレルゲン機能層4は、上記した電離放射線硬化性樹脂組成物、すなわちウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーA、及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を必須成分として含む電離放射線硬化性樹脂組成物を、基材上に、必要に応じてプライマー層などの易接着層を介して、塗布し、電離放射線などを照射することにより硬化させて形成する。抗アレルゲン機能層4の形成は、具体的には以下のようにして行われる。
【0063】
抗アレルゲン機能層を形成する電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布は、硬化後の厚さが通常5〜30μm程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。また、耐汚染性、耐傷性の観点から、好ましくは10〜20μmである。なお、電離放射線硬化性樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、塗布後、熱風乾燥機などにより塗布
層を予め加熱乾燥してから電離放射線を照射することが好ましい。
【0064】
上記の電離放射線硬化性樹脂組成物の塗布により形成した未硬化層は、電離放射線などを照射して硬化することで、抗アレルゲン機能層4が形成される。ここで、硬化に電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化層を硬化させることが好ましい。
照射線量は、電離放射線硬化型樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
【0065】
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0066】
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯などが用いられる。
【0067】
≪プライマー層≫
基材1上に、抗アレルゲン機能層4を設ける際には、接着性を確保するため、易接着層として、プライマー層(図示せず)を基材1と抗アレルゲン機能層4との間に設けることができる。
【0068】
プライマー層を形成する樹脂としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、アクリルポリオールを主成分とするウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどが用いられ、必要に応じて、これらの樹脂に体質含量、溶剤、安定剤、可塑剤、硬化剤などの配合されたものをプライマーとして用いることができる。
【0069】
プライマー層の形成は、上記のプライマー樹脂組成物をそのままで又は溶媒に溶解若しくは分散させた状態のものを用い、公知の印刷方法、塗布方法などによって、基材に塗布し、乾燥、硬化することによって行うことができる。プライマー層の厚さとしては、通常、0.1〜5μmの範囲であり、特に、0.5〜3μmの範囲であることが好ましい。なお、このプライマー層を基材上に形成する際に、基材1に対して、コロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理などの易接着処理を施し、基材との接着性を高めるようにすることもできる。
【0070】
また、プライマー層上に抗アレルゲン機能層4を積層する際に、抗アレルゲン機能層4とプライマー層との接着性を確保するために、プライマー層の表面に上記した易接着処理により抗アレルゲン機能層との間の接着性をさらに高めるようにすることもできるし、プライマー層を半硬化の状態にとどめ、その後、抗アレルゲン機能層を塗布した後、電離放射線を照射し、抗アレルゲン機能層を硬化することにより、抗アレルゲン機能層とプライマー層2とを一体化し、両者の間の接着性を高めるようにすることもできる。
【0071】
≪エンボス模様5≫
このようにして、基材に抗アレルゲン機能層が積層された本発明の化粧シートは、床材や壁材などへの適用、あるいは意匠性を考慮すると、化粧シート表面に、エンボス加工によるエンボス模様5を施すこともできる。エンボス加工は、抗アレルゲン機能層面から、エンボス板で加熱加圧することのほか、種々の方法により形成することができる。エンボ
ス模様5の形状としては、制限はないが、本発明の化粧シートが適用される建材の特性に応じて形成される。
【0072】
≪セパレータ≫
本発明の化粧シートは、基材側の表面(バッカー層6を設ける場合にはその表面)に、粘着剤を介してセパレータを設けることもできる。こうした構成とすることにより、セパレータを剥がして露出した面を被貼着物に貼着することができる。
このようにして得られた化粧シートは、例えば、床材、壁材などの内装材に貼り付けて用いることができ、優れた抗アレルゲン性を有した内装材ないし外装材を得ることができる。
【0073】
[化粧板]
本発明の化粧板は、上記の本発明の化粧シートを木質基板に貼り付けてなるものである。図2は、本発明の化粧板の好ましい態様の一例を示す模式図である。本発明の化粧板12は、化粧シート10と木質系基板11とを接着剤を用いて貼り付けて積層したものである。
木質基板としては、木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピーなどの各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)などの木質材などが挙げられる。これらは単独で、または積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
【0074】
また、化粧シートと木質基板とを貼り付けるために用いる接着剤としては、尿素系、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系等の接着剤を用いることができ、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白等の無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤等を添加混合して用いることができる。
接着剤は、スプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて塗布すればよい。この接着剤は、一般に、接着剤は固形分を35〜80質量%とし、塗布量50〜300g/m2の範囲で基板表面に塗布される。
【0075】
鏡面化粧シートの基板上への貼着は、通常、鏡面化粧シートの裏面に接着剤層を形成し、基板を貼着するか、基板の上に接着剤を塗布し、鏡面化粧シートを貼着する等の方法による。貼着には、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機、真空プレス等の貼着装置を用いることができる。
【0076】
このようにして得られた本発明の化粧板は、任意切断して、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。そして種々の用途、例えば、床材、壁材などに好適に用いられる。
【実施例】
【0077】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって何ら限定されるものではない。
【0078】
(評価方法)
(1)抗アレルゲン性
各実施例および比較例にて得られ化粧シートに、ダニアレルゲン(「Derf1(商品名)」,和光純薬工業株式会社製)の水溶液(ダニアレルゲンの初期濃度:100ng/mg)を400μl滴下して、自然乾燥しないようにフィルムで覆って24時間放置した
後、該化粧シート上のダニアレルゲンを回収し、ELISA法を用いてダニアレルゲンの不活性化率を測定し、下記の基準で抗アレルゲン性を評価した。
◎ :初期濃度からのダニアレルゲンの不活性化率が80%以上のもの
○ :初期濃度からのダニアレルゲンの不活性化率が50%超80%未満のもの
△ :初期濃度からのダニアレルゲンの不活性化率が30%超50%未満のもの
× :初期濃度からのダニアレルゲンの不活性化率が10%超30%未満のもの
×× :初期濃度からのダニアレルゲンの不活性化率が10%未満のもの
【0079】
(2)耐候性
各実施例および比較例にて得られた化粧シートについて、岩崎電気株式会社製アイスーパーUVテスターを使用して、20時間のUV照射および4時間の噴水による促進耐候試験を実施(具体的には、10時間のUV照射、4時間の噴水、10時間のUV照射を順次実施)した後の化粧シート表面の変化について、以下の基準にて評価した。
○ :化粧シート表面が変化しない、もしくは多少の黄変が確認されるもの
△ :化粧シート表面が黄変するもの
× :化粧シート表面が著しく黄変するもの
【0080】
(3)耐溶剤性
各実施例および比較例にて製造された化粧シートについて、その表面を、メチルエチルケトンを十分に含ませたガーゼを用いて、荷重1.5kgで最大500回往復し、摩耗した際の外観変化を、以下の基準にて評価した。
○ :抗アレルゲン層の欠落、剥離が生じないもの
△ :抗アレルゲン層の剥離が101〜499往復回で生じたもの
× :抗アレルゲン層の剥離が100往復回以下で生じたもの
【0081】
(4)耐汚染性
JIS−K−6902に準拠し、各実施例および比較例にて製造された化粧シート表面に事務用インキ、ブルーブラックを滴下した後、24時間後に水ふきした際の表面変化について、以下の基準にて評価した。
○ :表面の変化が生じないもの
△ :表面が若干汚染されているものの、外観を損なう程度ではないもの
× :表面が著しく汚染されているもの
【0082】
(5)シート柔軟性(Vカット加工適正に関する項目)
各実施例および比較例にて製造された化粧シートの基材側を、接着剤を用いて厚さ10mmのMDFに接着して積層した後、化粧シート側と反対側に、MDFと接着剤層との界面まで達する断面V字型の溝を切削し、溝を閉じるようにして合板をL字型(断面)に折り曲げて試験し、目視にて加工部を観察し、以下の基準にて評価した。なお、加工時の温度は常温で行った。
○ :シート加工部にクラックが発生しないもの
△ :シート加工部に微小なクラックが発生するが、外観上問題のないもの
× :シート加工部にクラックが発生し、シートの白化等の外観上の明確な変化が観察されるもの
【0083】
実施例1
基材として、ポリオレフィン系樹脂シート(60μm透明ポリプロピレンに対し、80μmの厚みで着色ポリエチレンを押し出して形成)を用い、密着用プライマー(「EBRプライマー」,DICグラフィックス株式会社製)を1.5g/m2で塗布した基材に対し、その表面に、ウレタンアクリレートオリゴマーA(硬化性成分)としてイソホロンジイソシアネートと1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.7:1として反応物を得て、該反応物と2−ヒドロキシエチルアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.5として得られた2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:900)を100質量部、ポリフェノール化合物がジルコニウム化合物に担持された抗アレルゲン剤A(「アレリムーブ(商品名)」,東亞合成株式会社製)10質量部及び艶消し剤(不定形シリカ,粒径:5μm)16質量部を含む電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布(15g/m2)した。電離放射線硬化性樹脂組成物を塗布した後、加速電圧165kV、照射量30kGy(3Mrad)の電子線を照射し、電離放射線硬化性樹脂組成物を硬化させて、抗アレルゲン機能層(厚み15μm)を得た。得られた化粧シートについて、各特性を評価し、第1表に示した。
【0084】
実施例2
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマーA(硬化性成分)として、イソホロンジイソシアネートと1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.7:1として反応物を得て、該反応物とグリセロールジアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.5として得られた4官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:1100)とした以外は、実施例1と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第1表に示した。
【0085】
実施例3
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマーA(硬化性成分)として、イソホロンジイソシアネートと1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.7:1として反応物を得て、該反応物とペンタエリスリトールトリアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.5として得られた6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:1300)とした以外は、実施例1と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第1表に示した。
【0086】
実施例4
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマーA(硬化性成分)として、イソホロンジイソシアネートと1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.7:1として反応物を得て、該反応物とジペンタエリスリトールペンタアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.5として得られた10官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:2300)とした以外は、実施例1と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第1表に示した。
【0087】
実施例5
実施例3において、抗アレルゲン剤Aの使用量を3質量部とした以外は、実施例3と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第1表に示した。
【0088】
実施例6
実施例3において、抗アレルゲン剤Aの使用量を30質量部とした以外は、実施例3と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第1表に示した。
【0089】
実施例7
実施例3において、ウレタンアクリレートオリゴマーA(硬化性成分)として、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートと1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.5:1として反応物を得て、該反応物とペンタエリスリトールトリアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.2として得られた6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:1300)とした以外は、実施例3と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第1表に示した。
【0090】
実施例8
実施例3において、ウレタンアクリレートオリゴマーA(硬化性成分)として、1,2−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素添加XDI)と1,6−ヘキサンジオール及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.5:1として反応物を得て、該反応物とペンタエリスリトールトリアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.2として得られた6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:1300)とした以外は、実施例3と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第1表に示した。
【0091】
実施例9
実施例6において、抗アレルゲン剤Aの代わりに、ポリフェノール化合物である抗アレルゲン剤B(「マルカリンカーM(商品名)」丸善石油化学株式会社製)を使用した以外は、実施例6と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第1表に示した。
【0092】
実施例10
実施例3において、抗アレルゲン剤Aの代わりに、ポリフェノール化合物である抗アレルゲン剤B(「マルカリンカーM(商品名)」丸善石油化学株式会社製)を使用した以外は、実施例3と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第1表に示した。
【0093】
比較例1
実施例3において、抗アレルゲン剤Aを用いなかった以外は、実施例3と同様にして化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第2表に示した。
【0094】
比較例2
実施例3において、ウレタンアクリレートオリゴマーAの代わりに、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水素添加MDI)とペンタエリスリトールトリアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.4として得られた6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:1000)を使用した以外は、実施例3と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第2表に示した。
【0095】
比較例3
実施例3において、ウレタンアクリレートオリゴマーAの代わりに、イソホロンジイソシアネートとポリテトラメチレングリコール(分子量:500程度)との配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.7:1として反応物を得て、該反応物とペンタエリスリトールトリアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.5として得られた6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:2300)を使用した以外は、実施例3と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第2表に示した。
【0096】
比較例4
実施例3において、ウレタンアクリレートオリゴマーAの代わりに、イソホロンジイソシアネートと1,4−ブタンジオール(分子量:90.1)との配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.7:1として反応物を得て、該反応物とペンタエリスリトールトリアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.5として得られた6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:2300)を使用した以外は、実施例3と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第2表に示した。
【0097】
比較例5
実施例3において、ウレタンアクリレートオリゴマーAの代わりに、イソホロンジイソシアネートとポリプロピレングリコールとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.7:1として反応物を得て、該反応物とペンタエリスリトールトリアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.5として得られた6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:2300)を使用した以外は、実施例3と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第2表に示した。
【0098】
比較例6
実施例3において、ウレタンアクリレートオリゴマーAの代わりに、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水素添加MDI)と1,6−ヘキサンブタンジオールとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.6:1として反応物を得て、該反応物とペンタエリスリトールトリアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.5として得られた6官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:1800)を使用した以外は、実施例3と同様に化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第2表に示した。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
*1,実施例及び比較例で使用したポリイソシアネートは以下の通りである。
ポリイソシアネート1:イソホロンジイソシアネート(分子量:222.2)
ポリイソシアネート2:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(分子量:168.2)
ポリイソシアネート3:1,2−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(水素添加XDI,分子量:194.2)
ポリイソシアネート4:ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水素添加MDI,分子量:262.4)
*2,実施例及び比較例で使用したポリオールは以下の通りである。
ポリオール1:1,6−ヘキサンジオール(分子量:118.2)及び3−メチル−1,5−ペンタンジオール(分子量:118.2)
ポリオール2:ポリテトラメチレングリコール(分子量:500)
ポリオール3:1,4−ブタンジオール(分子量:90.1)
ポリオール4:ポリプロピレングリコール(分子量:300)
*3,実施例及び比較例で用いた(メタ)アクリレート化合物は以下の通りである。
(メタ)アクリレート1:2−ヒドロキシエチルアクリレート
(メタ)アクリレート2:グリセロールジアクリレート
(メタ)アクリレート3:ペンタエリスリトールトリアクリレート
(メタ)アクリレート4:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート
*4,実施例及び比較例で使用した抗アレルゲン剤は以下の通りである。
抗アレルゲン剤A:「アレリムーブ(商品名)」,東亞合成株式会社製
抗アレルゲン剤B:「マルカリンカーM(商品名)」,丸善石油化学株式会社製
【0102】
表1から明らかなように、抗アレルゲン剤と共に硬化性成分としてウレタンアクリレートオリゴマーAを使用して抗アレルゲン機能層を形成した場合、優れた抗アレルゲン性を備えていた。一方、抗アレルゲン剤を使用しない比較例1では、抗アレルゲン性が極めて劣っており、またウレタンアクリレートオリゴマーA以外を使用した比較例2〜6でも、抗アレルゲン性が劣っていたまた、実施例3と10との対比により、抗アレルゲン剤としてポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたものを使用することによって、優れた耐候性、耐溶剤性、及び耐汚染性をも備え得ることが確認された。
【0103】
実施例11
実施例3において、ウレタンアクリレートオリゴマーAを80質量部とし、ウレタンアクリレートオリゴマーBとしてジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水素添加MDI)と2−ヒドロキシエチルアクリレートとの配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1.5:1として反応物を得て、該反応物とポリテトラメチレングリコール(分子量:500)との配合比率(モル比)をイソシアネート基:水酸基=1:1.3として得られた2官能ウレタンアクリレートオリゴマー(数平均分子量:1000)20質量部を用いた以外は実施例3と同様にして化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第3表に示した。
【0104】
実施例12
実施例11において、ウレタンアクリレートオリゴマーAとウレタンアクリレートオリゴマーBとの配合比を70:30とした以外は、実施例11と同様にして化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第3表に示した。
【0105】
比較例7
実施例11において、ウレタンアクリレートオリゴマーAを用いず、ウレタンアクリレートオリゴマーBを100質量部用いた以外は、実施例11と同様にして化粧シートを作製し、各特性に関する評価を行った。結果を第3表に示した。
【0106】
【表3】

【0107】
表3から明らかなように、抗アレルゲン機能層を形成する硬化性成分としてウレタンアクリレートオリゴマーAとBを併用することにより、化粧シートに良好な柔軟性を備えさせ得ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明によれば、高い抗アレルゲン性を有する化粧シート、これを用いた化粧板、及び被塗物に高い抗アレルゲン性を付与しうる電離放射線硬化性樹脂組成物を得ることができる。更に、本発明の化粧シート、化粧板、及び電離放射線硬化性樹脂組成物は、実用上要求される諸特性(耐候性、耐溶剤性、耐汚染性、柔軟性)も備えている。よって、本発明の化粧シート、化粧板及び電離放射線硬化性樹脂組成物は、このような特性をいかして、建築内装材、とりわけ床材として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0109】
1A.基材1A
1B.基材1B
2.印刷層
3.接着剤層
4.抗アレルゲン機能層
5.エンボス模様
10.化粧シート
11.木質系基板
12.化粧板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に抗アレルゲン機能層を有し、該抗アレルゲン機能層が硬化性成分及びフェノール性水酸基を有する抗アレルゲン剤を含む電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物であり、該硬化性成分として分子量250以下のポリイソシアネートと分子量100〜250のポリオールとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む化粧シート。
【請求項2】
ポリイソシアネートの分子量が、150〜225である請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
ポリイソシアネートが、単環の脂環式ポリイソシアネートである請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数が、2〜10である請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
電離放射線硬化性樹脂組成物が、硬化性成分としてさらに分子量250より大きいポリイソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
抗アレルゲン剤が、ポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたものである請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項7】
ポリフェノール化合物が、カテキン及びタンニン酸から選ばれる少なくとも一種である請求項6に記載の化粧シート。
【請求項8】
無機固体酸がリン酸塩である請求項6又は7に記載の化粧シート。
【請求項9】
抗アレルゲン剤の配合量が、硬化性成分100質量部に対して1〜30質量部である請求項1〜8のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項10】
硬化性成分及び抗アレルゲン剤を含み、該硬化性成分として分子量250以下のポリイソシアネートと分子量100〜250のポリオールとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項11】
ポリイソシアネートの分子量が、150〜225である請求項10に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
ポリイソシアネートが、単環の脂環式ポリイソシアネートである請求項10又は11に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数が、2〜10である請求項10〜12のいずれかに記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
電離放射線硬化性樹脂組成物が、硬化性成分としてさらに分子量250より大きいポリイソシアネートとヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物とから得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む請求項10〜13のいずれかに記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
抗アレルゲン剤が、ポリフェノール化合物が無機固体酸に担持されたものである請求項10〜14のいずれかに記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
ポリフェノール化合物が、カテキン及びタンニン酸から選ばれる少なくとも一種である請求項15に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
無機固体酸が、リン酸塩である請求項15又は16に記載の電離放射線硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
請求項1〜9のいずれかに記載の化粧シートを木質基板に貼り付けてなる化粧板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−214046(P2012−214046A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−78415(P2012−78415)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】