説明

抗アレルゲン性を有する化粧シート

【課題】本発明は、少ない量の抗アレルゲン剤でも、高い抗アレルゲン性を発揮することができ、耐候性や耐汚染性に優れた硬化型樹脂層を有し、耐久性のある建材用化粧シートを提供することを目的とするものである。
【解決手段】熱可塑性樹脂基材シート上に硬化型樹脂層が形成され、硬化型樹脂層に抗アレルゲン機能が付与された化粧シートであって、硬化型樹脂層は6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが50質量%以上を占めるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物と、フェノール系ポリマーで構成される抗アレルゲン剤とを含む硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなり、抗アレルゲン剤の配合量がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して10〜30質量部配合した、化粧シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗アレルゲン性を有する化粧シートに関し、さらに詳しくは、床材や壁材などの内装材に用いられる建材用化粧シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の床材、壁材などの内外装用建材には、アレルギー疾患に原因となる、ダニや花粉などのアレルゲンを除去ないし不活性化するような抗アレルゲン性のような機能性を持つことが求められている。このような抗アレルゲン性が付与された建材としては、ジルコニウム塩からなる抗アレルゲン剤を、木材の素材、合板などの木質素材などの表面に塗工した建築材料(特許文献1)が知られている。このような建築材料では、抗アレルゲン剤を単に塗工処理したものであることから、剥離しやすく、耐久性が乏しいものであった。そこで、このような問題を解消するため、フェノール性水酸基を有する非水溶性高分子の抗アレルゲン剤を光重合性オリゴマーなどと混合した光硬化性樹脂組成物を木質系基材に塗布し、光硬化させた床材が開発されている(特許文献2)。
【0003】
しかしながら、特許文献2に記載された床材で用いている抗アレルゲン剤は、フェノール系高分子樹脂であり、このような抗アレルゲン剤では、抗アレルゲン性を付与するために抗アレルゲン剤の配合量が多くなると、抗アレルゲン剤を含む樹脂層の耐候性や耐汚染性が低下し、長期にわたる抗アレルゲン性を発揮できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−212806号公報
【特許文献2】特開2008−239721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、少ない量の抗アレルゲン剤でも、高い抗アレルゲン性を発揮することができ、耐候性や耐汚染性に優れた硬化型樹脂層を有し、耐久性のある建材用化粧シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により当該課題を解決できることを見出した。本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)熱可塑性樹脂基材シート上に硬化型樹脂層が形成され、硬化型樹脂層に抗アレルゲン機能が付与された化粧シートであって、硬化型樹脂層は6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが50質量%以上を占めるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物と、フェノール系ポリマーで構成される抗アレルゲン剤とを含む硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなり、抗アレルゲン剤の配合量がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して10〜30質量部配合した、化粧シート。
(2)ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物が、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを50質量未満の量で含む、上記(1)に記載の化粧シート。
(3)硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性樹脂組成物である上記(1)または上記(2)に記載の化粧シート。
(4)硬化性樹脂組成物に、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、耐摩耗剤、つや消し剤、沈降防止剤から選ばれる少なくとも1種以上が含有される、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の化粧シート。
(5)熱可塑性樹脂基材シートが、ポリオレフィン系樹脂シートである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化粧シート。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた抗アレルゲン性を有するとともに、耐候性と耐汚染性に優れ、優れた耐久性を有する建材用化粧シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の化粧シートの断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[化粧シート]
本発明の抗アレルゲン性を有する化粧シートは、熱可塑性樹脂基材シート上に硬化型樹脂層が形成された化粧シートで、抗アレルゲン剤を含み抗アレルゲン性を示す硬化型樹脂層は、6官能以上の官能基を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを主成分とする硬化性樹脂組成物を架橋硬化したものである。
【0010】
図1は、本発明の抗アレルゲン性を有する化粧シートの好ましい態様の一例を示す模式図である。本発明の耐候ハードコートフィルムは、熱可塑性樹脂基材シート1の上に、硬化型樹脂層3を設けたものであり、熱可塑性樹脂シート1と硬化型樹脂層3との間に介在する層2は、接着性を確保するために設けられるいわゆる易接着層であり、例えば、プライマー層などがこれに該当するものである。以下、本発明の化粧シートの構成について詳細に説明する。
【0011】
《熱可塑性樹脂基材シート》
本発明で用いられる熱可塑性樹脂基材シート1は、硬化型樹脂層などの層を形成できるものであればよく、各種の熱可塑性の樹脂シートが使用できる。このような樹脂シートとしては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂やポリエチレン系樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などの各種の樹脂シートを用いることができる。これらのうち、床材として用いる場合には、コスト及びシート柔軟性の点でポリオレフィン系樹脂が好ましく、耐傷つき性といったシートとしての強度が求められる場合には、ポリエステル系樹脂が好ましく、求められる用途に応じて使い分けられる。
【0012】
熱可塑性樹脂基材シートは、一種類の熱可塑性樹脂のフィルムやシートを用いても良いし、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押出法などの成膜された複数の熱可塑性樹脂が積層された積層フィルムや積層シートを用いてもよい。これらの熱可塑性樹脂シートの厚さは20〜300μmが加工性、柔軟性、強度の点で通常適用され、50〜200μm程度がより好ましい。
【0013】
また、用いる熱可塑性樹脂基材シートには、その表面がコロナ放電処理やプラズマ処理などのいわゆる易接着性処理がなされたものであってもよく、また、熱可塑性樹脂基材シート表面にプライマー層やアンカー層などの易接着層が設けられたものであってもよい。
【0014】
《硬化型樹脂層》
硬化型樹脂層3は、熱可塑性樹脂基材シート1の上に必要に応じプライマー層など易接着層2を介して設けられるもので、抗アレルゲン性を付与するとともに、耐候性や耐汚染性などの優れた特性を付与する層である。
【0015】
この硬化型樹脂層3は、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを50質量%以上含有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、抗アレルゲン剤と、を含む硬化性樹脂組成物を架橋硬化した層であり、硬化剤(2液型)による硬化や熱や光などを用いて重合するなどにより架橋硬化を行い硬化型樹脂層を形成することができるが、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つウレタン(メタ)アクリレートであることが好ましく、この硬化性樹脂組成物は、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを50質量%以上含有する多官能性ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと、抗アレルゲン剤とを含み、電離放射線により架橋硬化できる電離放射線硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
【0016】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いる、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物は、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを50質量%以上含むウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物であり、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを50質量%未満の配合量で併用することができ、25質量%未満の配合量で併用することもできる。なお、上記の「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を意味するものである。
【0017】
使用できる6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性のオリゴマーを用いることができ、このウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの分子量としては600〜10000程度のものが好ましい。このようなウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを後述する抗アレルゲン剤とともに用いることにより、抗アレルゲン性とともに耐候性、耐汚染性に優れたものが得られる点で好ましいものである。
【0018】
用いるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数が大きすぎる場合には、得られる硬化型樹脂層の架橋密度が増加した結果、作成したシートが十分な柔軟性を有さない傾向がみられる。一方、官能基数が6未満の場合には、抗アレルゲン性が低下する傾向にあることから、官能基の数としては、6〜15程度が好ましく、6〜8程度のものを用いることが好ましい。
【0019】
本発明で用いるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物は、上記のように6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いることが必要であるが、この6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとともに、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを併用することで、シートにより柔軟性を与え、Vカットをはじめとする加工適性を付与することで、床材、建具など様々な用途に適したシートを得ることが出来る。4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの官能基数としては、2〜4であることが好ましい。
【0020】
これらの4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを併用する際には、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物中で50質量%以上を占める必要があり、この比率が50質量%未満となると、抗アレルゲン性が低下する傾向がみられる。このような点からみて、床材用の化粧シートとしては、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物中で75質量%以上を占めることが、より好ましいことになる。すなわち、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーをウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物中に50質量%以下で、好ましくは25質量%以下で、6官能以上、好ましくは6〜15、より好ましくは6〜8官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと組み合わせて用いることで、床材などへの適用を考慮した際に、床材として必要となる柔軟性や耐久性、抗アレルゲン性に優れた化粧シートが得られることになる。なお、このような柔軟性などを考慮する必要がないのであれば、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを併用する必要はなく、要するに化粧シートの用途により、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの配合量を定めることになる。なお、ここで用いられる、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの分子量は、600〜10000程度のものである。
【0021】
このような6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーや4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、1分子中に2個以上のアクリロイル基、もしくはメタクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレートモノマーを重合して得られる樹脂である。これらの6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとは、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物で上記のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物とともに用いる、抗アレルゲン剤は、フェノール性水酸基を含有する非水溶性高分子のものであり、このフェノール性水酸基が、アレルゲン性の物質を吸着するとともに不活性化するように機能するものである。このような抗アレルゲン剤としては、ポリ(4−ビニルフェノール)やポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル)などのポリフェノール系の高分子があげられる。市販の抗アレルゲン剤としては、積水化学工業株式会社製のアレルバスター(商品名)などを使用することができ、この抗アレルゲン剤は、ダニや花粉など種々のアレルゲンに対して有効に作用するものである。
【0023】
配合量としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して、10〜30質量部であり、10〜20質量部であることが好ましい。本発明では、このような少ない配合量であっても、上記の6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと組み合わせることにより、良好な抗アレルゲン性を発揮できるとともに、耐候性や耐汚染性に優れた硬化型樹脂層が得られた。すなわち、樹脂の骨格および架橋密度の違いにより、得られる抗アレルゲン性に差が見られ、一般的に、「硬い」樹脂ほど抗アレルゲン性がよいものであった。しかしながら、本発明の化粧シートは、例えば、床材として用いる場合には、抗アレルゲン性が良い硬い樹脂では、柔軟性などに欠けることから、用途により要求される特性を考慮しつつ、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを加え、架橋密度などを制御しつつ全体的なバランスをとった組成とすることにより本発明を完成したものなのである。
【0024】
また、硬化性樹脂組成物には、本発明の化粧シートを適用するものに対して要求される特性を満たすために、さらに、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、耐摩耗剤、つや消し剤、沈降防止剤などを含有させることができる。
【0025】
本発明で用いる硬化性樹脂組成物には、耐候性を向上するために、紫外線吸収剤(UVA)や光安定剤を配合することができる。紫外線吸収剤(UVA)は有害な紫外線を吸収し、本発明の表面保護層が設けられたハードコートフィルムの長期耐候性、安定性を向上させる。また、光安定剤は、これ自体は紫外線をほとんど吸収しないが、紫外線により生じる有害なフリーラジカルを効率良く捕捉することにより安定化するものである。
【0026】
本発明で用いることができる紫外線吸収剤としては、無機系、有機系のいずれでもよく、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛などを好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系などが好ましく挙げることができる。なかでも、紫外線吸収能が高く、また紫外線などの高エネルギーに対しても劣化しにくいトリアジン系がより好ましい。また、ブリードアウトを抑制するために、必要に応じて電離放射線反応型紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0027】
これらのうち、トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンなどが好ましく挙げられ、これらを単独で、又は複数種を組み合わせて用いることができる。
【0028】
紫外線吸収剤の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0029】
また、本発明で用いる光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤であることが好ましく、電離放射線反応型ヒンダードアミン系光安定剤であることが好ましい。
【0030】
ヒンダードアミン系の光安定剤としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン)などがあげられる。
【0031】
このような光安定剤の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0032】
一方、電離放射線反応型ヒンダードアミン系光安定剤は、電離放射線硬化型樹脂組成物中の6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーや4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーなどと反応性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有する官能基などが好ましく挙げられ、これらから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも(メタ)アクリロイル基が好ましい。このような光安定剤としては、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルメタクリレートなどがあげられる。
【0033】
このような電離放射線反応型ヒンダードアミン系光安定剤の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部がより好ましい。
【0034】
本発明で用いる硬化性樹脂組成物には、抗菌性を付与するために、抗菌剤を配合することができる。このような抗菌剤としては担体が無機化合物であり、当該担体に銀イオン又は銀イオンの他に銅イオン、亜鉛イオンを併用した少なくとも銀イオンを担持させたものである。無機化合物は任意のものが使用できる。例えば、活性炭、活性アルミナ、シリカゲル等の無機系吸着剤、ゼオライト、水酸化アパタイト、リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム、リン酸チタン、チタン酸カリウム、含水酸化ビスマス、含水酸化ジルコニウム、ハイドロタルサイド等の無機イオン交換体等が挙げられる。これらの無機化合物は、1種又は2種以上を組合せて用いることができる。
上記無機化合物の中で、無機イオン交換体は銀イオンを強固に担持できることから好ましく、ゼオライト、水酸化アパタイト、及びリン酸ジルコニウムから選ばれる少なくとも1種を好適に使用でき、リン酸ジルコニウムを単独で用いるのがより好ましい。また、銀系抗菌剤はリン酸ジルコニウムの三次元ネットワーク構造に銀イオンを担持させたものが、変色や銀成分が溶出しない点で特に好ましい。
【0035】
このような抗菌剤の粒子形状としては、球、楕円体、多面体、鱗片形などがあるが、球状のものが好ましく、その平均粒子径は0.1〜3.0μm、より好ましくは、0.5〜2.5μm程度ものである。このような抗菌剤としては、例えば、銀イオン担持リン酸ジルコニウムである「ノバロンAG−300」(東亞合成化学社製、商品名)、銀イオン担持アパタイトである「抗菌セラミックス」(新東Vセラミックス社製、商品名)、銀イオン担持ゼオライトである「ゼオミックAJ−10D」(シナネンニューセラミック社製、商品名)などの市販品を用いることができる。これらの抗菌剤の配合量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは、0.5〜5質量部程度である。
【0036】
本発明で用いる硬化性樹脂組成物には、硬化型樹脂層表面の硬度を高め、耐傷性を向上するために、耐摩耗剤を配合することができる。このような耐摩耗剤としては、無機系と有機系の充填剤があり、無機物では、例えば、α−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。
【0037】
これらの無機系の耐摩耗剤のうち、シリカは好ましいものの一つである。シリカは耐摩擦性を向上させ、かつ表面保護層の透明性を阻害しない。シリカとしては従来公知のシリカから適宜選択して用いることが可能であり、例えば、コロイダルシリカを好適に挙げることができる。コロイダルシリカは、添加量が増えた場合であっても、透明性に影響を及ぼすことが少なく、好ましい。シリカの粒子径としては、1次粒子径が5〜1000nmのものを用いることが好ましく、10〜50nmのものがさらに好ましく10〜30nmのものが特に好ましい。1次粒子径が1000nm以下のシリカを用いると透明性が確保される。また、用いるシリカの1次粒子径は一種類である必要はなく、異なる1次粒子径のシリカを混合して用いることも可能である。シリカの配合量としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して1〜20重量部の割合であることが好ましい。また、球状のα−アルミナあるいはコロイダルアルミナも、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいことや、球状の粒子を比較的得やすいことから、好ましいものである。
【0038】
一方、有機物の充填剤では、架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズがあげられる。粒径は、通常膜厚の30〜100%程度とすることが透明性保持の観点から好ましい。配合量は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して1〜20重量部程度の割合であることが好ましい。
【0039】
本発明で用いる硬化性樹脂組成物には、硬化型樹脂層表面のつや消しのため、いわゆるつや消し剤(マット剤)を配合することができる。このようなつや消し剤としては、種々のものが用いられ、無機質微粉末、有機フィラー等を用いることができる。無機質微粉末としては、シリカ、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ケイ酸カルシウム、合成ケイ酸塩、ケイ酸微粉末等が使用でき、有機フィラーとして、アクリル、ウレタン、ナイロン、ポリプロピレン、尿素系樹脂等からなるフィラー、スチレン架橋フィラー、ベンゾグアナミン架橋フィラーなどが挙げられる。
【0040】
このようなもののうち、無機質微粉末、特にシリカは入手のしやすさと少量の添加であっても十分なつや消し効果を発揮する点で好ましい。このようなシリカ粒子としては、粒径は1〜40μm程度であることが好ましく、2〜20μmであることが特に好ましい。このようなシリカ粒子の種類については、処理/未処理問わず、従来公知のものが使用でき、これらを単独で、あるいは2種以上を混合して使用することができる。また、シリカ粒子の配合量としては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して、4〜30質量部であり、10〜20質量部であることがより好ましい。
【0041】
また、本発明で用いられる硬化性樹脂組成物には、その性能を阻害しない範囲で各種添加剤を含有することができる。各種添加剤としては、例えば重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤などが挙げられる。
【0042】
なお、電離放射線硬化型樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いる場合には、光重合用開始剤を硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましく、光重合用開始剤としては、従来慣用されているもののなかから適宜選択することができる。
【0043】
本発明の化粧シートの硬化型樹脂層3は、上記の6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと必要により4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとを併用し、これらのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物と、抗アレルゲン剤とを含む硬化性樹脂組成物を、熱可塑性樹脂シート上に、必要に応じてプライマー層などの易接着層を介して、塗工し、電離放射線などを照射することにより架橋硬化させて形成する層であり、硬化型樹脂層の形成は、以下のようにして行われる。
【0044】
硬化型樹脂層を形成する硬化性樹脂組成物、好ましくは、電離放射線硬化性樹脂組成物の塗工は、硬化後の厚さが通常5〜30μm程度となるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより行う。また、耐汚染性、耐傷性の観点から、好ましくは10〜20μmである。
なお、硬化性樹脂組成物が溶剤を含むような場合は、塗工後、熱風乾燥機などにより塗工層を予め加熱乾燥してから電離放射線を照射することが好ましい。
【0045】
上記の硬化性樹脂組成物の塗工により形成した未硬化樹脂層は、電離放射線などを照射して架橋硬化することで、硬化型樹脂層3が形成される。ここで、硬化に電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
【0046】
照射線量は、電離放射線硬化型樹脂の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜50kGy(1〜5Mrad)の範囲で選定される。
【0047】
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
【0048】
また、電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯などが用いられる。
【0049】
熱可塑性樹脂基材シート1上に、硬化型樹脂層3を設ける際には、熱可塑性樹脂基材シートと硬化型樹脂層との間の接着性を確保するため、易接着層として、プライマー層2を熱可塑性樹脂基材シート1と硬化型樹脂層3との間に設けることができる。
【0050】
このようなプライマー層を形成する樹脂としては、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル−ウレタン共重合体樹脂、アクリルポリオールを主成分とするウレタン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどが用いられ、必要に応じて、これらの樹脂に体質含量、溶剤、安定剤、可塑剤、硬化剤などの配合されたものをプライマーとして用いることができる。
【0051】
プライマー層2の形成は、上記のプライマー樹脂組成物をそのままで又は溶媒に溶解若しくは分散させた状態のものを用い、公知の印刷方法、塗布方法などによって、熱可塑性樹脂基材シートに塗布し、乾燥、硬化することによって行うことができる。プライマー層2の厚さとしては、通常、0.1〜5μmの範囲であり、特に、0.5〜3μmの範囲であることが好ましい。なお、このプライマー層2を熱可塑性樹脂基材シート上に形成する際に、熱可塑性樹脂基材シート1に対して、コロナ放電処理やプラズマ処理などの易接着処理を施し、熱可塑性樹脂基材シートとの接着性を高めるようにすることもできる。
【0052】
また、プライマー層2上に硬化型樹脂層3を積層する際に、硬化型樹脂層3とプライマー層2との接着性を確保するために、プライマー層2の表面をいわゆるコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理などの処理により表面保護層との間の接着性をさらに高めるようにすることもできるし、プライマー層2を半硬化の状態にとどめ、その後、表面保護層3を塗工した後、電離放射線を照射し、表面保護層3を硬化することにより、表面保護層3とプライマー層2とを一体化し、両者の間の接着性を高めるようにすることもできる。
【0053】
このようにして、熱可塑性樹脂基材シートに硬化型樹脂層が積層された本発明の化粧シートは、床材や壁材などへの適用を考慮すると、化粧シート表面に、エンボス加工による凹凸模様を施すこともでき、エンボス加工は、硬化型樹脂層面から、エンボス板で加熱加圧することのほか、種々の方法により形成することができる。凹凸模様の形状としては、制限はないが、本発明の化粧シートが適用される建材の特性に応じて形成される。
【0054】
また、本発明の化粧シートは、熱可塑性樹脂基材シート側の表面に、粘着剤を介してセパレータを設けることもできる。こうした構成とすることにより、セパレータを剥がして露出した面を被貼着物に貼着することができる。
このようにして得られた化粧シートは、例えば、床材、壁材などの内装材に貼り付けて用いることができ、抗アレルゲン性に優れ、優れた耐候性と耐汚染性とを有する硬化型樹脂層を備えた内装材ないし外装材を得ることができる。
【実施例】
【0055】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、この例によって何ら限定されるものではない。
【0056】
(評価方法)
(1)耐溶剤性
各実施例および比較例にて製造された化粧シートについて、メチルエチルケトンを十分含ませたガーゼを用い、荷重1.5kgで化粧シート表面を最大500往復回摩耗した際の外観変化を以下の基準にて評価した。
○ :表面層の欠落、剥離が生じないもの
△ :表面層の剥離が101〜499往復回で生じるもの
× :表面層の剥離が100往復回以下で生じるもの
【0057】
(2)耐汚染性
JIS−K−6902に準拠し、各実施例および比較例にて製造された化粧シート表面に事務用インキ、ブルーブラックを滴下した後、24時間後に水ふきした際の表面変化について、以下の基準にて評価した。
○ :表面の変化が生じないもの
△ :表面が若干汚染されているものの、外観を損なう程度ではないもの
× :表面が著しく汚染されているもの
【0058】
(3)Vカット適性(シート柔軟性に関する項目)
各実施例および比較例にて製造された化粧シートの基材シート側を、接着剤を用いて厚さ10mmのMDFに接着して積層した後、化粧シート側と反対側に、MDFと接着剤層との界面まで達する断面V字型の溝を切削し、溝を閉じるようにして合板をL字型(断面)に折り曲げて試験し、目視にて加工部を観察し、以下の基準にて評価した。なお、加工時の温度は常温で行った。
○ :シート加工部にクラックが発生しないもの
△ :シート加工部に微小なクラックが発生するが、外観上問題のないもの
× :シート加工部にクラックが発生し、シートの白化等の外観上の明確な変化が観察されるもの
【0059】
(4)耐候性
各実施例および比較例にて得られた化粧シートについて、岩崎電気株式会社製アイスーパーUVテスターを使用して、20時間のUV照射および4時間の噴水による促進耐候試験を実施した後の化粧シート表面の変化について、以下の基準にて評価した。
○ :化粧シート表面が変化しないもの
△ :化粧シート表面が若干黄変するもの
× :化粧シート表面が著しく黄変するもの
【0060】
(5)抗アレルゲン性
各実施例および比較例にて得られ化粧シートを20〜30ng/mlのコナヒョウヒダニ由来アレルゲン水溶液(積水化学工業株式会社製、評価用アレルゲン標準液より調製)に浸漬し、120時間37℃の環境下にて振とうした。上記試験後の水溶液に対して住化エンピロサイエンス社製ダニ検査用マイティチェッカーを用いて測定し、残存ダニアレルゲン濃度を下記の基準にて評価した。
○ :ダニアレルゲンレベル 50匹/m2以下
△ :ダニアレルゲンレベル 50〜350匹/m2以下
× :ダニアレルゲンレベル 350匹/m2以上
【0061】
実施例1
基材として、ポリオレフィン系樹脂シート(60μm透明PPに対し、80μmの厚みで着色PEを押し出して形成)を用い、密着用プライマーとして昭和インク工業株式会社製 「EBFプライマー」を1.5g/m2で塗工した基材に対し、その表面に6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(A)のウレタンアクリレートオリゴマー組成物と抗アレルゲン剤を含有する硬化性樹脂組成物を塗工(15g/m2)した。この硬化性樹脂組成物には、樹脂100質量部に対し、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を10質量部とともに、つや消し剤として粒径5μmの不定形シリカ16質量部が添加されている。塗工後、加速電圧165kV、照射量30kG(3Mrad)の電子線を照射し、オリゴマー樹脂を硬化させた。得られた化粧シートについて、各特性を評価し、評価結果を硬化性樹脂組成物の配合量とともに表1に示した。
【0062】
実施例2
実施例1において、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を15質量部とした以外は実施例1と同様にして、化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0063】
実施例3
実施例1において、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を20質量部とした以外は実施例1と同様にして、化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0064】
実施例4
実施例1において、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を30質量部とした以外は実施例1と同様にして、化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0065】
実施例5
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマー組成物を6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(A)と2官能のウレタンアクリレートオリゴマー(B)とを75:25の割合で配合したものに変えて、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0066】
実施例6
実施例5において、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を15質量部とした以外は実施例5と同様にして、化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0067】
実施例7
実施例5において、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を20質量部とした以外は実施例5と同様にして、化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0068】
実施例8
実施例5において、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を30質量部とした以外は実施例5と同様にして、化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0069】
実施例9
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマー組成物を6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(A)と2官能のウレタンアクリレートオリゴマー(B)とを50:50の割合で配合したものに変えて、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0070】
実施例10
実施例9において、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を15質量部とした以外は実施例9と同様にして、化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0071】
実施例11
実施例9において、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を20質量部とした以外は実施例9と同様にして、化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0072】
実施例12
実施例9において、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を30質量部とした以外は実施例9と同様にして、化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0073】
比較例1
実施例1において、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)を除いて硬化性樹脂組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0074】
比較例2
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマー組成物を6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(A)に代えて、2官能のウレタンアクリレートオリゴマー(B)を用いて、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0075】
比較例3
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマー組成物を6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(A)に代えて、2官能のエポキシアクリレートオリゴマー(C)を用いて、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0076】
比較例4
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマー組成物を6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(A)に代えて、2官能のウレタンアクリレートモノマー(D)を用いて、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0077】
比較例5
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマー組成物を6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(A)に代えて、3官能のウレタンアクリレートモノマー(E)を用いて、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0078】
比較例6
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマー組成物を6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(A)に代えて、4官能のウレタンアクリレートモノマー(F)を用いて、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0079】
比較例7
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマー組成物を6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(A)と2官能のウレタンアクリレートモノマー(D)とを71:29の割合で配合したものに変え、抗アレルゲン剤(積水化学工業株式会社製、アレルバスター)の配合量を43質量部として、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0080】
比較例8
実施例1において、ウレタンアクリレートオリゴマー組成物を6官能のウレタンアクリレートオリゴマー(A)と2官能のエポキシアクリレートオリゴマー(C)とを50:50の割合で配合したものに変えて、硬化性樹脂組成物を調製した以外は実施例1と同様にして化粧シートを作製し、評価した。結果を表1に示した。
【0081】
【表1】

【0082】
表1によると、本発明の実施例のように6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが50質量%以上配合された硬化性樹脂組成物を用いた場合に、抗アレルゲン剤の配合量が10〜30質量部という比較的少量の配合でも十分な抗アレルゲン性が発現できることがわかった。なお、抗アレルゲン剤の配合量が増えると、耐溶剤性などの表面特性が若干低下するが、この化粧シートを適用する用途によっては、十分に使用できる程度のものであり、何ら支障はない。要するに、フェノール系ポリマーである抗アレルゲン剤を6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーと組み合わせることで、抗アレルゲン性が少ない配合量でも発揮されるという優れた効果を奏するものなのである。
【0083】
一方、6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーに対して、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを配合すると、化粧シートに柔軟性が付与されることが、Vカット適性の評価からわかる。このVカット適性は、その評価方法からもわかるように厚みのある材料に化粧シートを適用する際の、クラックの発生の有無などの加工適正を評価するものであり、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを配合することにより、さらなる加工適正が付加され、例えば、床材、建具などさまざまな用途に適した化粧シートが得られるものであることがわかる。
【符号の説明】
【0084】
1.熱可塑性樹脂基材シート
2.易接着層(プライマー層)
3.硬化型樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂基材シート上に硬化型樹脂層が形成され、硬化型樹脂層に抗アレルゲン機能が付与された化粧シートであって、硬化型樹脂層は6官能以上のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが50質量%以上を占めるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物と、フェノール系ポリマーで構成される抗アレルゲン剤とを含む硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなり、抗アレルゲン剤の配合量がウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物100質量部に対して10〜30質量部配合した、化粧シート。
【請求項2】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー組成物が、4官能以下のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを50質量未満の量で含む、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
硬化性樹脂組成物が、電離放射線硬化性樹脂組成物である請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
硬化性樹脂組成物に、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌剤、耐摩耗剤、つや消し剤、沈降防止剤から選ばれる少なくとも1種以上が含有される、請求項1〜3のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項5】
熱可塑性樹脂基材シートが、ポリオレフィン系樹脂シートである、請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−171195(P2012−171195A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35134(P2011−35134)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】