説明

抗インフルエンザウイルス剤

【課題】インフルエンザの予防・治療に有用な、新規な抗ウイルス剤の提供。
【解決手段】パチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物を有効成分として含む抗インフルエンザウイルス剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シソ科植物のパチョリ(漢薬名:広霍香、Pogostemon cablin Benth.)に含有される成分を含む、インフルエンザウイルス疾患の予防及び治療に有効な抗ウイルス剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年冬に流行するインフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる人獣共通感染症であり、主に飛沫感染及び接触感染により感染し、高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛等の強い全身症状を伴う呼吸器感染症として知られている。乳幼児や生体防御機能の低下した高齢者、慢性呼吸器疾患や糖尿病などの基礎疾患保有者は、インフルエンザウイルス感染により脳炎、脳症や肺炎等の予後不良の合併症を引き起こすハイリスクグループとなっている。インフルエンザワクチンの接種はインフルエンザの重症化の防御に最良の手段となっているが、現行のワクチンでは感染予防効果は低い。このため、インフルエンザウイルスに対する感染防御のためにはワクチンに加え予防治療薬を組み合わせた対応が望ましいと考えられる。
【0003】
インフルエンザウイルスはオルソミクソウイルス科に属するRNAウイルスで、A、B及びC型の3種の型に分類される(非特許文献1)。A〜C型のウイルスは抗体の圧力からの回避として緩徐な抗原性の変化(連続変異)を共通して起こし、本現象によりA及びB型インフルエンザウイルスによる毎年の小規模な流行が引き起こされることが知られている(非特許文献2及び3)。
【0004】
一方、A型のインフルエンザウイルスは不連続変異を起こし、新型ウイルスの出現に関与する。A型インフルエンザウイルスによるインフルエンザの大流行として1918年のスペインかぜ(H1N1)、1957年のアジアかぜ(H2N2)、1968年の香港かぜ(H3N2)や1977年のソ連かぜ(H1N1)があり、スペインかぜでは全世界の推定死亡者総計が2〜4千万人、日本国内でも38万9千人が死亡した。
【0005】
インフルエンザウイルスの宿主細胞への感染は、ウイルス表面のへマグルチニン(HA)が宿主細胞表面の糖タンパク質や糖脂質などの複合糖質糖鎖中のシアル酸[α-(2→3)-結合(トリ型)又はα-(2→6)-結合(ヒト型)]を認識し結合することにより開始される。次いでウイルスが宿主細胞内に取り込まれ、エンドソームとの融合、インフルエンザウイルス遺伝子の脱殻・複製及びインフルエンザウイルス粒子の再構築を経て、最終的にバディング(出芽)の過程でインフルエンザウイルス表面のノイラミニダーゼ(NA)がシアル酸との結合を加水分解することでインフルエンザウイルス粒子が宿主細胞から遊離する過程をとる(非特許文献4及び5)。これらのウイルス感染の種々の過程をターゲットとして抗インフルエンザウイルス活性物質が探索され、1998年のアマンタジンを皮切りに、ザナミビル、オセルタミビルが日本でのインフルエンザ治療薬として認可されている。しかし、インフルエンザウイルスは抗体などの外部圧力から回避する手段として抗原性の連続変異を起こす能力を有しており、これらのインフルエンザ治療薬に対する耐性機構の獲得を妨げ得る術はない。アマンタジンはその耐性化をM2タンパク膜通過部位の特定アミノ酸(26、27、30及び31位)の変異を通じて生じ、培養細胞での検討では1回の培養で約30%のウイルスが耐性を獲得している。これまで一般には市中分離株中のアマンタジンの耐性度は10%以下に留まっていたが、2005年末に状況は一変し、中国国内での本薬剤の一般薬への混合などの乱用が一因となり、アジアで分離される香港型(H3N2亜型)のA型インフルエンザウイルスに対する耐性ウイルスが急増している。2004年における中国・香港での分離株では耐性株が約70%を占め、世界中に本耐性ウイルス株が拡散されている(非特許文献6)。
【0006】
一方、ノイラミニダーゼ阻害剤のザナミビル及びオセルタミビルにおいては、その耐性化はノイラミニダーゼ活性部位及びヘマグルチニンのシアル酸結合部位における2種の変異機構により起こることが知られている(非特許文献7)。当初、本剤に対する耐性ウイルスの出現頻度は低いとされてきたが、近年、小児におけるオセルタミビル耐性A型インフルエンザウイルスの出現頻度は、従来考えられていたよりもはるかに高く、香港型(H3N2亜型)では18%、ソ連型(H1N1亜型)では16%にも及ぶことが明らかにされてきている。さらに、世界保健機構(WHO)からの報告で、ソ連型ウイルスにおいて2008年の45週から52週までに世界中で分離された379検体中350検体にオセルタミビル耐性ウイルスが検出され、出現頻度は92%と高率に達してきている。また、これらのノイラミニダーゼ阻害薬に対するB型インフルエンザウイルスもA型に比較して低頻度(1.6%)ながらも耐性化しうることが報告されている(非特許文献7)。さらに、リン酸オセルタミビルでは本剤投与と精神・神経症状(異常行動など)との関連性も社会問題化し、10代の未成年者に対しての使用に制限が設けられるようになっている。
【0007】
薬剤耐性ウイルスの発生を抑制するために多剤併用療法が用いられるようになっていることや、既存のインフルエンザ薬の副作用を回避する必要があることから、新たな抗インフルエンザウイルス薬の開発が求められている。
【0008】
近年では、各種生薬の抗ウイルス効果にも注目が集まっている。例えば、中国において、複数種の生薬(広霍香(コウカッコウ)、蒼朮(ソウジュツ)、白朮(ビャクジュツ)、大黄(ダイオウ)、ザイガカモシカ角、浜防風(ハマボウフウ)、ハイシマカンギク、茅根(ボウコン)、オウゴン、陳皮(チンピ)、甘草(カンゾウ)、半夏(ハンゲ)など)の混合生薬製剤がインフルエンザなどの呼吸器感染症に対し抗ウイルス作用を有する製剤として特許出願されているが(特許文献1)、その抗ウイルス活性の主体となる生薬やその活性本体は特定されていない。
【0009】
生薬としての広霍香は中国広東省で栽培されるシソ科植物のパチョリ(Pogostemon cablin Benth.;広霍香又は霍香とも呼ばれる)の葉又は全草を乾燥させて使用する和漢生薬である。漢方医学的には食欲不振、消化不良、暑気あたり、寒熱頭痛、嘔吐、下痢などに効果があるとされている。主成分として精油成分(4〜5%)が含まれている(非特許文献8)。しかし広霍香について、これまでに抗ウイルス作用に関する知見は報告されていない。漢方医学的には、広霍香が主作用を司ると考えられている漢方方剤(霍香正気散)は、悪心、嘔吐、腹痛、下痢、腹部膨満感、胸苦しい、身体が重だるい、食欲不振、味がない、口が粘るなどの症候に悪寒、発熱、頭痛などの症状が伴う病態を適応症とし、臨床応用として胃腸型感冒、流行性耳下腺炎等が知られている(非特許文献9)。
【0010】
一方、パチョリから得られる精油(パチョリ油)は、香料として化粧品等に使用されている。パチョリ油の主香気成分であるパチョリアルコールは、インターロイキン4(IL-4)産生抑制効果を有し、抗アレルギー剤やアトピー性皮膚炎予防・改善剤として使用できることが報告されている(特許文献2)。しかしパチョリ油やパチョリアルコールについて抗ウイルス作用を示す知見は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】中国特許出願公開第101095746号明細書
【特許文献2】特開2000−309528号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】清水一史、「インフルエンザウイルスの抗原性変異機序」、日本臨床、日本臨牀社、55、p.2610-2616 (1997)
【非特許文献2】飛田清毅、「インフルエンザウイルスの分類の基準と命名法」、日本臨床、日本臨牀社、55、p.2512-2514 (1997)
【非特許文献3】西村秀一、「最近のA型,B型インフルエンザウイルスの抗原変異」、日本臨床、日本臨牀社、55、p.2617-2626 (1997)
【非特許文献4】永武毅、「インフルエンザウイルスのヒトへの感染増殖のメカニズム」、日本臨床、日本臨牀社、61、p.1892-1896 (2003)
【非特許文献5】本田文江、石浜明、「インフルエンザウイルスの増殖−ゲノムの転写と複製−」、日本臨床、日本臨牀社、55、p.2555-2561 (1997)
【非特許文献6】斎藤玲子、鈴木宏、「耐性ウイルスの現状と展望」、総合臨床、永井書店、55、p.2788-2793 (2006)
【非特許文献7】畠山修司、河岡義裕、「薬剤耐性獲得機序と耐性ウイルスの現状」、日本臨床、日本臨牀社、64、p.1845-1852 (2006)
【非特許文献8】難波恒雄、和漢薬百科図鑑、Vol II, pp. 58-60、保育社 (1980)
【非特許文献9】神戸中医学研究会訳、「中医処方解説」、医歯薬出版 (1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、ウイルス疾患、とりわけインフルエンザの予防・治療に有用な、新規な抗ウイルス剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、パチョリから抽出した精油画分にインフルエンザウイルスの感染過程を阻害する活性を見出し、さらに当該画分に含まれる抗インフルエンザウイルス活性を有する化合物がセスキテルペン類のパチョリアルコール(別名:パチョロール)であることを明らかとして、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1]パチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物を有効成分として含む抗インフルエンザウイルス剤。
[2]上記[1]の抗インフルエンザウイルス剤を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の香料組成物。
[3]上記[1]の抗インフルエンザウイルス剤又は上記[2]の香料組成物を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の、鼻腔又は口腔投与用組成物。
[4]上記[1]の抗インフルエンザウイルス剤又は上記[2]の香料組成物を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の医薬製剤。
[5]上記[1]の抗インフルエンザウイルス剤又は上記[2]の香料組成物を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の飲食品。
[6]上記[1]の抗インフルエンザウイルス剤又は上記[2]の香料組成物を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の香粧品。
[7]上記[1]の抗インフルエンザウイルス剤又は上記[2]の香料組成物を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の日用・雑貨品。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる抗インフルエンザウイルス剤を用いれば、低い細胞毒性で高い抗インフルエンザウイルス活性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】プラーク形成法を用いて計数したインフルエンザウイルス感染MDCK細胞数(プラーク数)により、パチョリアルコールの抗インフルエンザウイルス活性を評価した結果を示す図である。図中のザナミビルは抗インフルエンザウイルス活性を有する既知の薬剤であり、陽性コントロールとして使用した。
【図2】パチョリアルコールの抗インフルエンザウイルス活性を、コントロールに対するプラーク数相対値(%)としてグラフに示した図である。横軸はパチョリアルコール又はザナミビルの濃度、縦軸はコントロール(インフルエンザウイルス存在下;パチョリアルコールの代わりに同量の10%メタノール水溶液を添加)に対するプラーク数相対値(%)を示す。黒丸はパチョリアルコール、白丸はザナミビルを添加した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.パチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物
本発明は、パチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物を有効成分として含む抗インフルエンザウイルス剤及びその利用に関する。
【0019】
パチョリアルコール(patchouli alcohol)はパチョラン(patchoulane)骨格を有するユニークな構造のセスキテルペン類化合物であり、化学名は(1S)-2β,5,5,8aα-テトラメチル-1β,6β-メタノデカリン-4aα-オールである。その生物活性としては、抗酸化活性[A. Wei, T. Shibamoto, J. Agric. Food Chem., 55, 1737-1742 (2007)]、鎮吐活性[Y. Yang et al., Phytomedicine, 6, 89-93 (1999)]やCa2+拮抗作用に基づく腸管平滑筋収縮阻害作用[K. Ichikawa et al., Chem. Pharm. Bull., 37, 345-348 (1989)]が報告されているが、インフルエンザウイルスを始めとするウイルスに対する作用についての報告はない。セスキテルペン類は植物のみならず微生物などからも生産される極めて構造多様性の高い化合物群として知られている[田中治、野副重男、相見則郎、永井正博 編、天然物化学(改訂第6版)、pp. 103-116 (2002)]。植物由来のセスキテルペン類での抗ウイルス活性の報告としては、中医で使用される生薬(中薬)のうち雷公藤(Tripterygium wilfordii Hook)から分離されたパチョリアルコールとは構造の異なるオクタヒドロ-1-ベンゾキセピン骨格を有する20種のセスキテルペンのうち、トリプトフォルジンC-2にエンベロープウイルスであるタイプIヘルペスウイルスやサイトメガロウイルスに対する抗ウイルス作用が見出されてはいるが[K. Hayashi, T. Hayashi, K. Ujita, Y. Takaishi, J. Antimicrobial Chemothr., 37, 759-768 (1996)]、その他の植物由来セスキテルペンについての抗ウイルス作用についての知見は得られていない。植物以外の天然素材からのセスキテルペンの抗ウイルス活性に関する報告としては、子嚢菌(Stachybotrys属 RF-7260)や海綿(Strongylophora bartmani van Soest)から、ビシクロファルネサン骨格を有する(アセチル)-スタキフリン及びストロンギリンAが、H1N1亜型のA型インフルエンザウイルスに対する抗ウイルス活性成分として単離されている[K. Minagawa et al., J. Antibiotics, 55, 155-164 (2002);A.E. Wright et al., J. Nat. Prod., 54, 1108-1111 (1991)]。しかしながら、これらの抗インフルエンザウイルス活性をもつセスキテルペンは、パチョラン骨格を有しない。本発明では、抗インフルエンザウイルス活性をもつ既存のセスキテルペンとは異なる構造を有するパチョリアルコール、及びそれを含むパチョリ精油抽出物が抗インフルエンザウイルス活性を有することを見出したことに基づき、新規な抗インフルエンザウイルス剤を提供するものである。
【0020】
本発明において、「パチョリアルコール」とは、化学名(1S)-2β,5,5,8aα-テトラメチル-1β,6β-メタノデカリン-4aα-オール、分子式C15H26Oで表される分子量222.37のセスキテルペン類化合物である。パチョリアルコールは、市販品を購入して用いることができる。あるいはパチョリアルコールは、パチョリ等の植物から抽出及び精製したものを用いてもよい。
【0021】
パチョリアルコールは、元々はパチョリ(Pogostemon cablin Benth.;広霍香)から単離された化合物であるが、現在では、他の多くの植物にも含まれることが分かっている。本発明では、例えば、パチョリアルコールを含有することが報告されているMusca domestica L.、Milcania cordata (Burm.f.) Rob.、Calendura officinalis、Atriplex semibaccata、Brunfelsia anstralis、Brunfelsia pauciflora、Valeriana jatamansi Jones、Valeriana pancicii Halacsy & Bald、Valeriana wallichii、Valeriana celtica L. ssp. norica Vieth.、Valeriana officinalis L. s.l.、Curcuma longa L.、Trigonella foenum-graecum L.、Salvia hydrangea DC. ex Benth.、Haplopappus velutinus、Haplopappus illinitus、Haplopappus shumanni、Haplopappus uncinatus、Chrithmum maritimum L.等の植物からパチョリアルコールを抽出及び精製して用いることができるが、パチョリアルコールを含有するさらに別の植物から抽出・精製したパチョリアルコールを用いてもよい。パチョリアルコールは、例えば、パチョリアルコールを含有する植物から各種の精油抽出法で抽出した精油抽出物より公知の方法で精製することによって調製することができる。パチョリアルコールは、一般的に用いられるカラムクロマトグラフィー、液滴向流分配や各種溶媒を用いた分配法などにより精油抽出物から精製できる。あるいはパチョリアルコールは、化学合成により調製してもよい。以上のような各種方法で調製されたパチョリアルコールは、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤の有効成分として用いることができる。
【0022】
本発明では、パチョリの精油抽出物も、パチョリアルコールを多量に含むことから、抗インフルエンザウイルス剤の有効成分として用いることができる。本発明において「精油抽出物」は、植物を各種の植物の精油抽出法に供して得られる精油成分を含む抽出物をいう。本発明において「パチョリ精油抽出物」は、パチョリ(通常は、パチョリの葉、葉を含む植物体の一部、又は全草(植物体全体))を各種の精油抽出法に供して得られる抽出物(精油抽出物)をいう。
【0023】
本発明において「精油抽出物」は、例えば、アルコール抽出法や有機溶剤抽出法などの溶剤抽出法によって得られる抽出物、油脂吸着抽出法(温浸法又は冷浸法)や超臨界流体抽出法等によって得られる抽出物、及び水蒸気蒸留法によって得られる典型的な精油(狭義の精油)も包含する。本発明において「精油抽出物」は、植物精油分野におけるいわゆるアブソリュート、コンクリート、オレオレジン、レジノイド、ティンクチャー等の精油エキスも包含する。
【0024】
本発明においてパチョリ又はパチョリアルコールを含む他の植物からの精油抽出は、例えば溶剤抽出法(アルコール抽出法、有機溶剤抽出法など)、油脂吸着抽出法(温浸法又は冷浸法)、超臨界流体抽出法、水蒸気蒸留法等の任意の方法によって行うことができる。これらの精油抽出方法の詳細については、「特許庁広報 周知慣用技術集(香料)第一部 香料一般」(平成11(1999)年1月29日発行、pp.4-21(2・1・1 植物性香料))や、荒井綜一ら編、「最新 香料の事典」、朝倉書店、2000年5月10日初版第1刷 pp.80-96(4.1 天然香料)等の文献や参考書を参照することができる。アルコール抽出法や有機溶剤抽出法については、後述の実施例も参照することができる。これらの抽出に用いる溶媒としては、限定するものではないが、例えばアルコール抽出法について主に使用されるエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類や、有機溶剤抽出法に主に使用されるアセトンなどの比較的極性の高い溶媒からヘキサンなどの低極性の有機溶媒である溶剤(好ましくは疎水性有機溶媒)が挙げられる。
【0025】
本発明において「精油抽出物」は、さらに、上記の抽出物の精製画分をも包含する。この精製画分は、上記の抽出物からDIAION HP-20などの多孔性ビーズ、シリカゲルやアルミナなどの担体を用いた疎水性又は吸着クロマトグラフィー等の各種精製手法により調製してもよい。
【0026】
2.パチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物を含む抗インフルエンザウイルス剤
上記のようにして調製されるパチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物は、抗ウイルス活性、特に抗インフルエンザウイルス活性を有する。
【0027】
本発明では、上記のようにして調製されるパチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物を有効成分として含む抗インフルエンザウイルス剤を提供する。上記のようにして調製されるパチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物は、そのまま、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤として使用することもできる。あるいは、そのパチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物を適当な可溶化溶媒で希釈したり、滅菌等の処理を行ったりした後に、抗インフルエンザウイルス剤として使用してもよい。本発明では、そのようなパチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物に、薬学上許容される不活性成分(例えば賦形剤、保存剤、緩衝液等)を配合したものを抗インフルエンザウイルス剤として使用することもできる。
【0028】
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤の抗インフルエンザウイルス活性は、限定するものではないが、例えば、後述の実施例に例示するようなプラーク形成法により確認することができる。本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤は、インフルエンザウイルス存在下でも細胞の生存率を顕著に向上させることができることから、インフルエンザ感染症の治療用に用いることができる。細胞生存率の向上はまた、破壊された細胞からのウイルス放出の減少をも意味することから、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤を用いれば、体内でのウイルスの感染・増殖を抑制でき、インフルエンザウイルスによる感染症の予防用にも用いることができる。
【0029】
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤は、A型及びB型インフルエンザウイルスに対して使用できるが、A型インフルエンザウイルスに対して使用するのが好ましい。対象となる好ましいA型インフルエンザウイルスとしては、特にソ連型(H1N1亜型)が挙げられるが、これらの変異型に対しても使用することができる。
【0030】
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤については、直接的な細胞毒性も顕著に低いか又は全く細胞毒性が認められず、この点でも非常に有用である。
【0031】
3.抗インフルエンザウイルス剤を含む香料組成物
本発明は、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の香料組成物も提供する。
【0032】
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤の有効成分であるパチョリアルコールが香料成分であることから、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤に、香料製造に通常用いる添加剤(例えば、賦形剤、保存剤、緩衝液等)を配合することにより、本発明に係る香料組成物を調製することができる。あるいは、本発明に係る香料組成物は、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤に他の香料(フレグランス又はフレーバー)に配合して調製してもよいし、そのような2種以上の香料(調合香料)に香料製造に通常用いる添加剤(例えば、賦形剤、保存剤、緩衝液等)を配合して調製してもよい。このような本発明に係る香料組成物の製造方法も本発明の範囲に含まれる。
【0033】
本発明に係る香料組成物は、香料として様々な製品に添加することにより、当該製品に、香味又は香気と共に、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療効果を付与することができる。
【0034】
本発明に係る香料組成物に配合する抗インフルエンザウイルス剤の量は、香料組成物中で共存させる香料や香料組成物の使用目的などにより適宜決定すればよいが、通常は、香料組成物の全量を基準として0.01〜5.0質量%程度とすることが好ましい。
【0035】
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤は多くの他の香料(フレグランス又はフレーバー)となじみやすいという利点がある。しかも本発明の抗インフルエンザウイルス剤は、調合香料に配合しても、その調合香料全体の香りのバランスを崩すことが無いという利点も有する。
【0036】
本発明の抗インフルエンザウイルス剤と共存させることができる香料の具体例を以下に示す。
【0037】
まずフレーバーとしては、エステル類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アセタール類、フェノール類、エーテル類、ラクトン類、フラン類、炭化水素類、含窒素化合物類、含硫化合物類、酸類などの合成香料などが挙げられる。なお、必要に応じ天然香料を使用してもよい。
【0038】
上記エステル類としては、例えば、アセト酢酸エステル(メチル、エチル、等)、アニス酸エステル(メチル、エチル、等)、安息香酸エステル(アリル、イソアミル、エチル、ゲラニル、リナリル、フェニルエチル、ヘキシル、シス−3−ヘキセイニル、ベンジル、メチル、等)、アントラニル酸エステル(シンナミル、シス−3−ヘキセニル、メチル、エチル、リナリル、イソブチル、等)、オクタン酸エステル(アリル、イソアミル、エチル、オクチル、ヘキシル、ブチル、メチル、リナリル、等)、オクテン酸エステル(メチル、エチル、等)、オクチンカルボン酸エステル(メチル、エチル、等)、カプロン酸エステル(アリル、アミル、イソアミル、メチル、エチル、イソブチル、プロピル、ヘキシル、シス−3−ヘキセニル、トランス−2−ヘキセニル、リナリル、ゲラニル、シクロヘキシル、等)、ヘキセン酸エステル(メチル、エチル、等)、吉草酸エステル(アミル、イソプロピル、イソブチル、エチル、シス−3−ヘキセニル、トランス−2−ヘキセニル、シンナミル、フェニルエチル、メチル、等)、ケイ皮酸エステル(アリル、エチル、メチル、イソプロピル、プロピル、3−フェニルプロピル、ベンジル、シクロヘキシル、メチル、等)、酢酸エステル(アニシル、アミル、α−アミルシンナミル、イソアミル、イソブチル、イソプロピル、イソプレギル、イソボルニル、イソオイゲニル、オイゲニル、2−エチルブチル、エチル、3−オクチル、カルビル、ジヒドロカルビル、p−クレジル、o−クレジル、ゲラニル、α−又はβ−サンタリル、シクロヘキシル、シクロネリル、ジヒドロクミニル、ジメチルベンジルカルビニル、シンナミル、スチラリル、デシル、ドデシル、テルピニル、グアイニル、ネリル、ノニル、フェニルエチル、フェニルプロピル、ブチル、フルフリル、プロピル、ヘキシル、シス−3−ヘキセニル、トランス−2−ヘキセニル、シス−3−ノネニル、シス−6−ノネニル、シス−3,シス−6−ノナジエニル、3−メチル−2−ブテニル、メンチル、ヘプチル、ベンジル、ボルニル、ミルセニル、ジヒドロミルセニル、ミルテニル、メチル、2−メチルブチル、メンチル、リナリル、ロジニル等)、ステアリン酸エステル(エチル、プロピル、ブチル等)、乳酸エステル(イソアミル、エチル、ブチル等)、ノナン酸エステル(エチル、フェニルエチル、メチル等)、ヒドロキシヘキサン酸エステル(エチル、メチル等)、フェニル酢酸エステル(イソアミル、イソブチル、エチル、ゲラニル、シトロネリル、シス−3−ヘキセニル、メチル等)等が挙げられる。
【0039】
上記アルコール類としては、例えば、脂肪族アルコール(イソアミルアルコール、イソプレゴール、2−エチルヘキサノール、1−オクタノール、3−オクタノール、1−デカノール、1−ドデカノール等)、テルペンアルコール、芳香族アルコールなどを好ましく例示することができる。
【0040】
上記アルデヒド類としては、例えば、脂肪族アルデヒド、芳香族アルデヒド、テルペンアルデヒドなどを挙げることができる。
【0041】
上記ケトン類としては、例えば、メントン、プレゴン、ピペリトン、α−、β−、γ−又はδ−ダマスコン、α−、β−又はγ−ダマセノン、ヌートカトン、2−sec−プチルシクロヘキサノン、マルトール、α−,β−又はγ−ヨノン、α−、β−又はγ−メチルヨノン、α−、β−又はγ−イソメチルヨノンなどの環式ケトン、アセトフェノン、アニシリデンアセトン、ラズベリーケトンなどの芳香族ケトン、ジアセチル、2−ヘブタノンなどの鎖式ケトンなどを例示することができる。
【0042】
上記アセタール類としては、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタール、アセトアルデヒドジアミルアセタール、2−フェニルプロパナールジメチルアセタールなどを挙げることができる。
【0043】
上記フェノール類としては、例えば、オイゲノール、イソオイゲノール、2−メトキシ−4−ビニルフェノール、チモール、グアヤコールなどを挙げられる。
【0044】
エーテル類としては、例えば、アネトール、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ジベンジルエーテル、リナロールオキシド、リモネンオキシド、ネロールオキシド、ローズオキシド、バニリルプチルエーテルなどを挙げられる。
【0045】
上記ラクトン類としては、例えば、γ−又はδ−デカラクトン、γ−ヘプタラクトン、γ−ノナラクトンなどを挙げられる。
【0046】
上記フラン類としては、例えば、フラン、2−メチルフラン、3−メチルフラン、2−エチルフラン、2,5−ジエチルテトラヒドロフラン、3−ヒドロキシ−2−メチルテトラヒドロフラン、酢酸フリフリルなどを挙げられる。
【0047】
炭化水素類としては、例えば、テルピネン、テルピノーレン、ファルネセン、リモネン、オシメン、ミルセン、α−又はβ−ピネンなどを挙げられる。
【0048】
上記酸類としては、例えば、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、2−デセン酸、ゲラン酸、ドデカン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、乳酸、フェニル酢酸、ピルビン酸、シクロヘキサンカルポン酸などを例示することができる。
【0049】
上記フレグランスとしては、炭化水素類、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類及び/又はアセタール類、ケトン類及び/又はケタール類、エーテル類、合成ムスク類、酸類、ラクトン類、エステル類、含ハロゲン化合物などが挙げられる。なお、必要に応じ天然香料を使用してもよい。
【0050】
上記炭化水素類は、炭素と水素で構成された揮発性有機化合物であれば特に限定されることはなく、脂肪族炭化水素類、脂環式炭化水素類、テルペン系炭化水素類、芳香族炭化水素類などが例示される。好ましくは1,3,5−ウンデカトリエン、p−サイメン、α−ピネン、α−フェランドレン、β−カリオフィレン、β−ピネン、Δ−カレン、アロオシメン、オシメン、ジヒドロミルセン、ジペンテン、スクラレン、セドレン、テルピネン、テルピノーレン、バレンセン、ビサボーレン、ミルセン、リモネン、アダマンタン、カンフェンなどが例示される。
【0051】
上記アルコール類は、水酸基を持つ揮発性有機化合物であれば特に限定されることはなく、脂肪族アルコール類、脂環式アルコール類、テルペン系アルコール類、芳香族アルコール類などが例示され、好ましくは10−ウンデセノール、1−オクテン−3−オール、2,6−ノナジエノール、2−tert−ブチルシクロヘキサノール、2−エチルヘキサノール、2−ヘプタノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、3−オクタノール、3−フェニルプロピルアルコール、L−メントール、n−デシルアルコール、p,α−ジメチルベンジルアルコール、p−tert−ブチルシクロヘキサノール、p−メチルジメチルベンジルカルビノール、α,3,3−トリメチル−2−ノルボルナンメタノール、α−n−アミルシンナミックアルコール、α−フェンキルアルコール、β−フェニルエチルアルコール、アニスアルコール、アンバーコア、アンブリノール、イソノニルアルコール、イソフィトール、イソプレゴール、イソボルネオール、エチルリナロール、オクタノール、カルベオール、ゲラニオール、サンタロール、シス−3−ヘキセン−1−オール、シス−6−ノネノール、シトロネロール、ジヒドロ−α−フターピネオール、ジヒドロシトロネロール、ジヒドロミルセノール、ジヒドロリナロール、ジメチルフェニルエチルカルビノール、ジメチルベンジルカルビノール、シンナミックアルコール、スチラリルアルコール、セドロール、ターピネオール、ターピネン−4−オール、チンベロール、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロミルセノール、テトラヒドロムゴール、テトラヒドロリナロール、ネロール、ネロリドール、ノナノール、ノニルアルコール、ノポール、ハイドロトロピルアルコール、バクダノール、ファルネソール、フィトール、フェニルエチルメチルエチルカルビノール、フェノキシエチルアルコール、フルフリルアルコール、ベチベロール、ペリラアルコール、ベンジルアルコール、マイヨール、ミルセノール、ミルテノール、ラバンジュロール、リナロールなどが例示される。
【0052】
上記フェノール類は、フェノール性の化合物及びその誘導体であって香りを有する有機化合物であれば特に限定されることはなく、例えば1価、2価、3価のフェノール性化合物、ポリフェノール類、又はこれらの化合物のエーテル誘導体などが例示され、好ましくはp−クレゾール、エストラゴール、オイゲノール、ヒノキチオール、2,6−ジメトキシフェノール、4−エチルグアヤコール、4−メチルグアヤコール、β−ナフトールイソブチルエーテル、イソサフロール、グアヤコール、サフロール、ジヒドロオイゲノール、チモール、ショウガオールなどが例示される。
【0053】
上記アルデヒド類又はアセタール類は、アルデヒド基又はアセタール基を分子内にもつ揮発性有機化合物であれば特に限定されることはなく、脂肪族アルデヒドやアセタール、テルペン系アルデヒドやアセタール、芳香族アルデヒドやアセタールなどが例示され、好ましくは10−ウンデセナール、2,4−ジメチル−4,4a,5,9b−テトラヒドロインデノ[1,2d]−1,3−ジオキシン、2,4−デカジエナール、2,6−ノナジエナール、2−ブチル−4,4,6−トリメチル−1,3−ジオキサン、2−ヘキシル−5−メチル−1,3−ジオキソラン、2−メチルウンデカナール、2−メチルウンデカナールジメチルアセタール、3−エチル−2,4−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカ−8−エン、3−エチル−8(9),11−ジメチル−2,4−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカ−8−エン、3−プロピルビシクロ[2.2.1]−ヘプタ−5−エン−2−カルボキシアルデヒド、4−イソプロピル−5,5−ジメチル−1,3−ジオキサン、4−ヘプテナール、5−メチル−5−プロピル−2−(1−メチルブチル)−1,3−ジオキサン、o−メトキシシンナミックアルデヒド、o−メトキシベンズアルデヒド、p−トリルアルデヒド、α−n−ヘキシルシンナミックアルデヒド、α−アミルシンナミックアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトアルデヒドエチルリナリルアセタール、アセトアルデヒドジエチルアセタール、アニスアルデヒド、アルデヒド C−10、アルデヒド C−11、アルデヒド C−12、アルデヒド C−6、アルデヒド C−6 DEA、アルデヒド C−6 DMA、アルデヒド C−6 PGアセタール、アルデヒド C−8、アルデヒド C−8DEA、アルデヒド C−8 DMA、アルデヒド C−9、アルデヒド C−9 DEA、アルデヒド C−9 DMA、イソシクロシトラール、エチルバニリン、カントキサール、キューカンバーアルデヒド、クミンアルデヒド、ゲラニアール、サイクラメンアルデヒド、シス−6−ノネナール、シトラール、シトロネラール、シトロネリルオキシアセトアルデヒド、シネンサール、デュピカール、トランス−2−ヘキセナール、トランス−2−ヘキセナールジエチルアセタール、トリプラール、ネラール、ハイドロトロパアルデヒド、バニリン、ヒドロキシシトロネラール、フェニルアセトアルデヒド、フェニルアセトアルデヒドP.G.アセタール、フェニルアセトアルデヒドジメチルアセタール、フルフラール、フロラロゾン、ヘリオトロピン、ヘリオナール、ペリラアルデヒド、ベルガマール、ベルトアセタール、ベルンアルデヒド、ベンズアルデヒド、ホモマイラックアルデヒド、マイラックアルデヒド、メロナール、リラール、リリアールなどが例示される。
【0054】
上記ケトン類又はケタール類は、ケトン基又はケタール基を分子内にもつ揮発性有機化合物であれば特に限定されることはなく、脂肪族ケトンやケタール、テルペン系ケトンやケタール、芳香族ケトンやケタールなどが例示され、好ましくは2−sec−ブチルシクロヘキサノン、2−アセチル−3,3−ジメチルノルボルナン、2−アセチル−5−メチルフラン、2−アセチルフラン、2−ブチル−1,4−ジオキサスピロ[4,4]ノナン、2−ヘキシルシクロペンタノン、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2−(5H)−フラノン、5−エチル−3−ハイドロキシ−4−メチル−2[5H]−フラノン、6−メチル−3,5−ヘプタジエン−2−オン、d−プレゴン、L−カルボン、o−tert−ブチルシクロヘキサノン、p−tert−ブチルシクロヘキサノン、p−メチルアセトフェノン、p−メトキシアセトフェノン、α−ダイナスコン、α−フェンコン、β−メチルナフチルケトン、アセチルセドレン、アセトフェノン、アニシルアセトン、アリルα−イオノン、イオノン、イソ E スーパー、イソジャスモン、イソダマスコン、イソロンギホラノン、イロン、エチルイソアミルケトン、エチルマルトール、カシュメラン、カローン、カンファー、コアボン、シクロテン、シス−ジャスモン、ジヒドロカルボン、ジヒドロジャスモン、ジベンジルケトン、セドレノン、ソトロン、ダマスコン、ダマセノン、トリモフィックス O、ヌートカトン、フラネオール、プリカトン、フロレックス、ベルトフィックス、ベルベノン、ベンゾフェノン、マルトール、メチルイオノン、メチルシクロペンテノロン、メチルヘプテノン、メントン、ラズベリーケトンなどが例示される。
【0055】
上記エーテル類は、分子内にエーテル基を有する揮発性有機化合物であれば特に限定されることはなく、脂肪族エーテル、テルペン系エーテル芳香族エーテルなどが例示され、好ましくは1,4−シネオール、1,8−シネオール、p−クレジルメチルエーテル、β−カリオフィレンオキサイド、β−ナフチルイソブチルエーテル、β−ナフチルエチルエーテル、β−ナフチルメチルエーテル、アネトール、アンブロキサン、イソアミルフェニルエチルエーテル、イソボルニルメチルエーテル、グリサルバ、サイクランバー、ジフェニルオキサイド、セドランバー、セドリルメチルエーテル、テアスピラン、ネロールオキサイド、フェニルエチルメチルエーテル、マドロックス、リナロールオキサイド、リメトール、ルーボフィックス、ルーボフロール、ローズオキサイド、ローズフランなどが例示される。
【0056】
上記合成ムスク類は、ムスク香或いはムスク類似香を有する有機化合物であれば特に限定されることはなく、10−オキサヘキサデカノリド、11−オキサヘキサデカノリド、12−オキサヘキサデカノリド、アンブレットリド、アンブレトン、エギザルトリド、エギザルトン、ガラクソリド、シクロヘキサデカノリド、シクロペンタデカノリド、シクロペンタデカノン、シベトン、セルボリド、セレストリド、トナリド、ファントリド、ペンタリド、ホルミルエチルテトラメチルテトラリン、ムスコン、ベルサリドなどが例示される。
【0057】
上記酸類は、分子内にカルボキシル基を有する有機化合物であれば特に限定されることはなく、フェニルアセチックアシッド、2−エチルブチリックアシッド、2−エチルヘキサノイックアシッド、2−デセノイックアシッド、2−メチルブチリックアシッド、2−メチルヘプタノイックアシッド、ウンデカノイックアシッド、ウンデシレニックアシッド、ミリスチックアシッド、ラクチックアシッド、リノリックアシッド、リノレニックアシッドマレイックアシッド、マロニックアシッドなどが例示される。
【0058】
上記ラクトン類は、分子内にラクトン基を有する揮発性有機化合物であれば特に限定されることはなく、脂肪族ラクトン、テルペン系ラクトン、芳香族ラクトンなどが例示され、好ましくは6−メチルクマリン、γ−n−ブチロラクトン、γ−ウンデカラクトン、γ−ヘキサラクトン、γ−ヘプタラクトン、δ−2−デセノラクトン、クマリン、ジヒドロジャスモンラクトン、ジャスミンラクトン、ジャスモラクトン、オクタハイドロクマリン、ジヒドロクマリン、3−プロピルフタリドなどが例示される。
【0059】
上記エステル類は、分子内にエステル基を有する揮発性有機化合物であれば特に限定されることはなく、脂肪族エステル、テルペン系エステル、芳香族エステルなどが例示され、好ましくは1−エチニルシクロヘキシルアセテート、1−オクテン−3−イルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、2−フェノキシエチルイソブチレート、L−メンチルアセテート、L−メンチルプロピオネート、o−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、p−tert−ブチルシクロヘキシルアセテート、アセチルイソオイゲノール、アセチルオイゲノール、アニシルアセテート、アミルサリシレート、アミルバレレート、アリルシクロヘキシルオキシアセテート、アリルシンナメート、アリルフェノキシアセテート、アリルブチレート、イソアミルアンゲレート、イソアミルイソバレレート、イソアミルイソブチレート、イソアミルウンデシレネート、イソアミルオクタノエート、イソアミルサリシレート、イソアミルシンナメート、イソアミルデカノエート、イソアミルドデカノエート、イソアミルブチレート、イソアミルプロピオネート、イソアミルヘキサノエート、イソアミルヘプチンカーボネート、イソブチルシンナメート、イソブチルバレレート、イソブチルフェニルアセテート、イソブチルブチレート、イソブチルプロピオネート、イソブチルヘキサノエート、イソブチルベンゾエート、イソプレギルアセテート、イソプロピルアセテート、イソボルニルプロピオネート、エチル2−tert−ブチルシクロヘキシルカーボネート、エチルo−メトキシベンゾエート、エチルp−アニセート、エチルアセテート、エチルアセトアセテート、エチルイソバレレート、エチルイソブチレート、エチルオクチンカーボネート、エチルシンナメート、エチルバレレート、エチルフェニルアセテート、エチルブチレート、エチルプロピオネート、エチルヘプタノエート、エチルヘプチンカーボネート、エチルペラルゴネート、エチルベンゾエート、エチレンドデカンジオエート、エチレンブラッシレート、オイゲニルフェニルアセテート、オクチルアセテート、オクチルイソバレレート、オクチルイソブチレート、オクチルオクタノエート、オクチルブチレート、オクチルヘプタノエート、オクチルホーメート、オシメニルアセテート、カリオフィレンアセテート、カリオフィレンホーメート、カルビルアセテート、グアィアックアセテート、クミニルアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルイソバレレート、ゲラニルイソブチレート、ゲラニルチグレート、ゲラニルフェニルアセテート、ゲラニルブチレート、サンタリルアセテート、ジエチルアジペート、ジエチルスクシネート、ジエチルセバケート、ジエチルタータレート、ジエチルフタレート、シクロヘキシルアセテート、シクロヘキシルイソバレレート、シクロヘキシルエチルアセテート、シクロヘキシルクロトネート、シス−3−ヘキセニルプロピオネート、シス−3−ヘキセニルベンゾエート、シス−3−ヘキセニルホーメート、シス−3−ヘキセニルラクテート、シトリルアセテート、シトロネリルアセテート、シトロネリルフェニルアセテート、シトロネリルブチレート、ジヒドロカルビルアセテート、ジヒドロクミニルアセテート、ジヒドロターピニルアセテート、ジヒドロミルセニルアセテート、ジメチルスクシネート、ジメチルフェニルエチルカルビニルアセテート、ターピニルホーメート、デカハイドロ−β−ナフチルホーメート、デシルアセテート、テトラハイドロフルフリルブチレート、テトラヒドロゲラニルアセテート、トリアセチン、トリエチルシトレート、トリシクロデシルアセテート、ネリルアセテート、ネリルイソブチレート、ネリルブチレート、ネリルプロピオネート、ブチルアセテート、ブチルヘキサノエート、ブチルレブリネート、フルフリルアセテート、ヘリオトロピルアセテート、ベンジル2−メチルブチレート、ベンジルアセテート、ベンジルイソバレレート、ベンジルイソブチレート、ベンジルカプリレート、ベンジルサリシレート、ベンジルシンナメート、ベンジルチグレート、ベンジルドデカノエート、ベンジルバレレート、ベンジルフェニルアセテート、ベンジルブチレート、ベンジルプロピオネート、ベンジルヘキサノエート、ベンジルベンゾエート、ベンジルホーメート、ペンチルサリシレート、メチルサリシレート、メチルシクロオクチルカーボネート、メチルシクロゲラネート、メチルシクロペンチリデンアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、メチルジャスモネート、メチルシンナメート、メチルデカノエート、メチルデシンカーボネート、リナリルシンナメート、リナリルブチレート、リナリルプロピオネート、リナリルヘキサノエート、リナリルベンゾエート、リナリルホーメート、ロジニルフェニルアセテート、ロジニルブチレート、ロジニルプロピオネート、ロジニルホーメートなどが例示される。
【0060】
上記含ハロゲン化合物は、ハロゲンを分子中に含有する有機化合物であればとくに限定されることはなく、パラジクロルベンゼン、ブロモスチロ−ルなどが例示される。
【0061】
これら、フレーバー及びフレグランスは、1種及び2種以上を混合して使用しても良い。
【0062】
4.抗インフルエンザウイルス剤を含む鼻腔又は口腔投与用組成物
本発明は、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の、鼻腔又は口腔投与用組成物も提供する。本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤は、インフルエンザウイルスの感染・増殖のリスクに曝される鼻腔又は口腔細胞をインフルエンザウイルスから保護する上で特に有効である。
【0063】
本発明における「鼻腔又は口腔投与用組成物」は、鼻腔及び/又は口腔(咽頭を含む)の局所に外用で投与するための組成物をいう。本発明に係る鼻腔又は口腔投与用組成物は、典型的には鼻腔又は口腔投与用製剤、例えば、口腔外用医薬品、鼻咽頭外用医薬品、口腔外用医薬部外品、及び鼻咽頭外用医薬部外品、また洗浄剤、芳香剤、又は浴用剤等(具体的には、例えば、点鼻剤、洗鼻剤、歯磨き、口腔洗浄料、トローチ、チューインガム類等)に配合して有効成分として用いることができる。本発明に係る鼻腔又は口腔投与用組成物は、インフルエンザウイルス感染症による発熱や咳などの種々の症状の改善、インフルエンザウイルス感染流行期における本感染症罹患の予防などを始めとするインフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用に用いることができる。しかしながら、「インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用」という用途は、これらの症状、罹患、病態への適用に限定されるものではなく、インフルエンザウイルス感染に関連するすべての病態に対する適用が包含される。
【0064】
本発明に係る鼻腔又は口腔投与用組成物は、含嗽剤、噴霧剤などの剤型で用いることができる。含嗽剤の場合、うがい薬の剤型の他、特殊な器具を使用して咽頭部に直接吹き付けることもできる。また、噴霧剤の場合、直接鼻腔に滴下させる投与方法でもいいし、ネブライザーを用いて鼻腔内に投与することもできる。本発明に係る鼻腔又は口腔投与用組成物はまた、圧縮推進剤を含有するエアゾール組成物としてもパッケージ可能である。
【0065】
5.抗インフルエンザウイルス剤を含む、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の製品
本発明は、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤を有効成分として含む、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療に供することを目的とした(すなわち、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の)製品も提供する。そのような製品としては、例えば、医薬製剤、飲食品、香粧品、及び日用・雑貨品等を挙げることができる。
【0066】
本発明はまた、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤を有効成分として含む香料組成物を含む、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療に供することを目的とした(すなわち、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の)製品も提供する。そのような製品として、例えば、医薬製剤、飲食品、香粧品、及び日用・雑貨品等を挙げることができる。
【0067】
医薬製剤としては、医薬品及び医薬部外品を包含し、限定するものではないが、例えば、貼付剤や軟膏剤の如き皮膚外用剤、錠剤、顆粒剤、散剤、丸剤、カプセル剤、ジェル剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、噴霧剤、含嗽剤等の様々な剤形の製剤が挙げられる。本発明の医薬製剤は、経口製剤であっても非経口製剤であってもよいが、特に鼻腔又は口腔投与用製剤であることが好ましい。鼻腔又は口腔投与用製剤としては、口腔外用医薬品、鼻咽頭外用医薬品、口腔外用医薬部外品、鼻咽頭外用医薬部外品等が挙げられる。
【0068】
医薬製剤は、本発明の抗インフルエンザウイルス剤又は香料組成物に加えて、薬学上許容される担体又は添加剤等を含有してもよい。このような担体として、結合剤、賦形剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、例えば、水、薬学上許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。添加剤の例として、安定剤、緩衝剤、矯味剤、保存剤、芳香剤、着色剤等が挙げられる。使用される担体又は添加剤は、製剤の剤形に応じて適宜又は組み合わせて選択される。
【0069】
飲食品としては、限定するものではないが、例えば、果汁飲料類、果実酒類、炭酸飲料、清涼飲料、ドリンク剤類、乳飲料類の如き飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類の如き冷菓類;ゼリー、プリンなどのデザート類;チョコレート、チューインガムなどの洋菓子類;羊羹などの和菓子類;ジャム類;キャンディー類;ジャスミン茶などのハーブ茶などを挙げることができる。
【0070】
香粧品としては、限定するものではないが、例えば、フレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品等を挙げることができる。
【0071】
日用・雑貨品としては、限定するものではないが、例えば、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤、その他の雑貨類などを挙げることができる。
【0072】
より具体的な例を挙げると、以下の通りである。
・フレグランス製品:香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなど。
・基礎化粧品:洗顔クリーム、バニシングクリーム、クレンジングクリーム、コールドクリーム、マッサージクリーム、乳液、化粧水、美容液、パック、メイク落としなど。
・仕上げ化粧品:ファンデーション、粉おしろい、固形おしろい、タルカムパウダー、口紅、リップクリーム、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムバーなど。
・頭髪化粧品:ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアーステック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤など。
・日焼け化粧品:サンタン製品、サンスクリーン製品など。
・薬用化粧品:制汗剤、アフターシェービングローション及びジェル、パーマメントウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料など。
・ヘアケア製品:シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメント、ヘアパックなど。
・石鹸:化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸など。
・身体洗浄剤:ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープなど。
・浴用剤:入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド等)、フォームバス(バブルバス等)、バスオイル(バスパフューム、バスカプセル等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブなど。
・洗剤:衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸など。
・柔軟仕上げ剤:ソフナー、ファーニチアケアーなど。
・洗浄剤:クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤、排水管用洗浄剤など。
・台所用洗剤:台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤など。
・漂白剤:酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤等)、光学的漂白剤など。
・エアゾール剤:スプレータイプ、パウダースプレーなど。
・消臭・芳香剤:固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプなど。
・忌避剤:エアゾール、スプレー、錠剤、ゲル状タイプなど。
・その他の雑貨類としては、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、マスクなど。
【0073】
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤又は本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤を有効成分として含有する香料組成物は、上記のような各種製品において用いる場合は、製品の種類や製品の最終形態(例えば液体状、固体状、粉末状、ゲル状、ミスト状、エアゾール状などの製品形態)に応じて、製品に直接適用(添加、配合、付加又は塗布等により)してもよい。本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤又は香料組成物は、例えば、アルコール類、プロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類に溶解して液体状にして添加又は付与してもよいし、アラビアガム、トラガントガムなどの天然ガム質類、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤など)を用いて可溶化若しくは乳化分散させた可溶化状又は分散状にして適用してもよい。さらに、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤又は香料組成物は、アラビアガム等の天然ガム質類、ゼラチン、デキストリンなどの賦形剤を用いて被膜形成した粉末状として適用してもよいし、カプセル化剤で処理してマイクロカプセル状にして適用してもよい。
【0074】
さらに、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤又は香料組成物を、サイクロデキストリンなどの包接剤で包接することで安定化すると共に徐放性にして用いてもよい。
【0075】
製品への本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤又は香料組成物の適用量は、製品の種類や形態、製品に求められる抗インフルエンザウイルス効果や作用、香料組成物における抗インフルエンザウイルス剤の含有量等に応じて調整することができる。
【0076】
製品が医薬製剤又は飲食品の場合には、一般的には製品の質量に対し(製品質量を100質量%とする)、本発明に係る本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤の適用量は、限定するものではないが、0.00000001質量%〜1質量%で程度であることが好ましい。本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤を有効成分として含む香料組成物の適用量は、限定するものではないが、約0.0005〜20質量%程度、特に0.001〜5質量%程度であることが好ましい。これらの製品では、製品の質量に対し、抗インフルエンザウイルス剤を有効成分として含有する香料組成物の適用量が0.001〜1質量%、特に0.01〜0.5質量%であり、抗インフルエンザウイルス剤の適用量が0.0000001〜0.05質量%、特に0.000001〜0.01質量%であることが、本発明の抗インフルエンザウイルス剤による優れた上記効果を良好に発揮させる点から好ましい。
【0077】
また、製品が香粧品又は日用・雑貨品等、例えばフレグランス製品、基礎化粧品、仕上げ化粧品、頭髪化粧品、日焼け化粧品、薬用化粧品、ヘアケア製品、石鹸、身体洗浄剤、浴用剤、洗剤、柔軟仕上げ剤、洗浄剤、台所用洗剤、漂白剤、エアゾール剤、消臭・芳香剤、忌避剤、その他の雑貨などの場合には、本発明の抗インフルエンザウイルス剤を有効成分として含有する香味・香気組成物の添加量又は付与量は、一般的には製品の質量に対し(製品質量を100質量%とする)、本発明に係る本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤又はそれを有効成分として含有する香料組成物は、限定するものではないが、約0.001〜25質量%程度、特に0.01〜0.5質量%程度であることが好ましい。これらの製品では、製品の質量に対し、抗インフルエンザウイルス剤を有効成分として含有する香料組成物の適用量が0.001〜1質量%、特に0.01〜0.5質量%であり、抗インフルエンザウイルス剤の適用量が0.0000001〜0.05質量%、特に0.000001〜0.01質量%であることが、本発明の抗インフルエンザウイルス剤による優れた上記効果を良好に発揮させる点から好ましい。
【0078】
さらに本発明では、パチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物を有効成分として含む抗インフルエンザウイルス剤、それを含有するインフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の香料組成物、その抗インフルエンザウイルス剤若しくは香料組成物を含む鼻腔又は口腔投与用組成物、その抗インフルエンザウイルス剤若しくは香料組成物を含む医薬製剤、飲食品、香粧品又は日用・雑貨品を、予防又は治療を必要とする被験体に適用することを含む、インフルエンザの予防又は治療方法も提供する。特に本発明は、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤を、インフルエンザ(インフルエンザウイルスの感染症)の予防及び/又は治療に有効な量で予防又は治療を必要とする被験体に投与することを含む、インフルエンザの予防又は治療方法を提供する。
【0079】
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤の投与量は、投与対象の被験体の年齢及び体重、投与経路、投与回数により異なり、当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。例えば、本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤の投与量は、それに含まれるパチョリアルコール量で1〜1000mg/kg/dayとなる量が適当である。本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤は、単回投与でもよいが、6〜8時間の間隔で反復的に投与してもよい。
【0080】
本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤を投与する被験体は、限定するものではないが、好ましくはヒト、家畜、愛玩動物、実験(試験)動物等を含む哺乳動物である。さらに、インフルエンザに罹患しているかその疑いがある哺乳動物、インフルエンザウイルスに感染しているか、その疑いがあるか、又はそのリスクか高い哺乳動物も本発明の被験体として好ましい。本発明に係る抗インフルエンザウイルス剤は、従来の薬剤よりも細胞毒性が低く、副作用の心配が少ないことから、非常に有用に用いることができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0082】
[実施例1]パチョリ精油抽出物(アルコール抽出物、n-ヘキサン抽出物)及びパチョリアルコールの調製
(1)アルコール抽出物の調製
0.5〜2ミリ角程度の細片状に破砕したパチョリ(Pogostemon cablin Benth.;広霍香とも呼ばれる)の全草1gに対し、100%メタノールを10 mL加え、約3日間かけて室温で抽出を行った。抽出液をろ過後、再び同様の方法で残渣から抽出を行い、得られたそれぞれの抽出液を合わせ、減圧乾固し、残渣をアルコール抽出物として得た。
【0083】
(2)n-ヘキサン抽出物の調製
0.5〜2ミリ角程度の細片状に破砕したパチョリ(Pogostemon cablin Benth.;広霍香とも呼ばれる)の全草1gに対し、100% n-ヘキサンを10 mL加え、約3日間かけて室温で抽出を行った。抽出液をろ過後、再び同様の方法で残渣から抽出を行い、得られたそれぞれの抽出液を合わせ、減圧乾固し、n-ヘキサン抽出物を得た。
【0084】
(3)パチョリアルコールの調製
上記で得たn-ヘキサン抽出物(3 g)について、シリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル 60N(370 mm×36 mm I.D.)]での段階的溶出による分画を行った。段階的溶出には、n-ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒としてn-ヘキサン:酢酸エチル=100:0溶媒(600 mL)、50:1溶媒(300 mL)、10:1溶媒(300 mL)、5:1溶媒(300 mL)、1:1溶媒(300 mL)、及び0:1溶媒(300 mL)を順次使用し、最後にメタノール(300 mL)を使用した。溶出画分を10 mLずつ分取後、さらに、薄層クロマトグラフィー(TLC)(溶媒系;n-ヘキサン:酢酸エチル=10:1)で類似のRf値を持つスポットが観察された画分をそれぞれ合わせ、9つの画分(Fr. 1-9)を得た。
【0085】
得られた9画分については、後述の実施例2に従って抗インフルエンザ活性の有無を確認した。9画分のうち、抗インフルエンザウイルス活性が認められたn-ヘキサン:酢酸エチル=5:1溶出画分(Fr. 4、収量:713.3 mg、n-ヘキサン抽出物からの収率:0.7%)について、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィー[シリカゲル60N(120 mm×42 mm I.D), n-ヘキサン:酢酸エチル混合溶媒(20:1、2 L)]に供し、溶出画分を10 mLずつ分取後、TLCで類似のRf値を持つ画分をそれぞれ合わせて6画分(Fr. 4-1〜4-6)を得た。Fr. 4-4(収量:18 mg)(RF値0.22〜0.40のスポット)について、逆相HPLC[X-Bridge Prep ODS (150 mm×10 mm I.D.), 95%アセトニトリル、検出器波長:210 nm]により分画し、パチョリアルコール精製物(収量:16.1 mg、収率:0.3%)(保持時間:約8.2分)を得た。
【0086】
得られたパチョリアルコールについては性状観察、質量分析及び核磁気共鳴(NMR)分光分析を行った。それにより示された理化学的性質は以下の通りである。
1)性状: 無色固形状
2)比旋光度:[α]D25.0;-105.4(c=0.724、メタノール(MeOH))
3)低分解能質量分析(70 ev、電子衝撃質量分析計):
m/z 222 (M+, 100%), 207 (62.8), 161 (78.2), 138 (100), 125 (90.4), 98 (100), 83 (100), 81 (86.5), 41 (50.6).
4)高分解能質量分析(70 eV、電子衝撃質量分析計):
計算値:222.1984 (C15H26O)、実測値;222.1991
5)核磁気共鳴
1H核磁気共鳴(NMR)スペクトル(δ値、ppm、400 MHz、ピリジン-d5):1.834 (1H, ddd, J=13.6, 6.0, 0.9, H-2ax), 1.888 (1H, ddd, J=13.6, 2.2, 1.8, H-2eq), 1.416 (2H, m, H-3), 1.967 (1H, m, H-4), 1.415 (1H, m, H-5), 1.260 (1H, m, H-6ax), 1.974 (1H, m, H-6eq), 1.182 (1H, m, H-7), 1.283 (1H, m, H-8ax), 1.505 (1H, ddd, J=15.6, 5.7, 2.7, H-8eq), 1.007(1H, ddd, J=13.6, 11.2, 1.8, H-9eq), 2.246 (1H, ddd, J=13.6, 11.2, 8.4, H-9ax), 0.813 (3H, d, J=6.9, H-12), 1.057 (3H, s, H-13), 1.330 (3H, s, H-14), 1.138 (3H, s, H-15), 4.638 (1H, bs, OH)
13C核磁気共鳴(NMR)スペクトル (δ値、ppm、100 MHz、ピリジン-d5):74.687 (C-1), 33.282 (C-2), 29.147 (C-3), 28.631 (C-4), 44.071 (C-5), 25.103 (C-6), 39.716 (C-7), 25.178 (C-8), 29.534 (C-9), 38.191 (C-10), 40.930 (C-11), 19.017 (C-12), 21.620 (C-13), 28.107 (C-14), 24.845 (C-15)
【0087】
[実施例2]パチョリのアルコール抽出物及びn-ヘキサン抽出物の抗インフルエンザウイルス活性の評価
(1)インフルエンザウイルスの培養
10%非働化ウシ胎児血清(heat inactivated FBS)、ペニシリン(200単位/mL)-ストレプトマイシン(0.2 mg/mL)溶液及びアンホテリシンB(5 μg/mL)溶液を加えたMEM培地(20 mL)でのMadin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞懸濁液(3×105 細胞/mL)を96穴培養プレートに分注(100 μL/ウェル)後、5% CO2条件下37℃にてコンフルエントになるまで2〜4日間培養した。コンフルエントになった96穴培養プレート内のMDCK細胞の培養上清を除去後、MDCK細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(200 μL/ウェル)で2回洗浄した。その96穴培養プレートの下4段(E〜H列)のウェルに、A型インフルエンザウイルス原液(A/Puerto Rico/8/34, H1N1亜型)をアセチルトリプシン(1万単位/mg/mL)、10%グルコース(0.4 mL)、2倍濃度MEN培地(20 mL)及び注射用水(19 mL)からなる感染用培地で104.5倍に希釈したインフルエンザウイルス希釈液(180 μL/ウェル)を加えた。一方、96穴培養プレートの上4段(A〜D列)のウェルには上記感染用培地を加えた(180 μL/ウェル)。さらに、上段及び下段の各ウェル群に、各々10%メタノールに溶解した実施例1で調製済のパチョリ精油抽出物(アルコール抽出物若しくはn-ヘキサン抽出物)又は10%メタノール(コントロール)を20 μL/ウェルで添加した。また、陽性コントロールとしては1 μg/mLザナミビル(Zanamivir)を20 μL/ウェルで添加した。次いで96穴培養プレートを、5% CO2条件下37℃にて3日間培養した。
【0088】
(2)抗インフルエンザウイルス活性の測定
(2−1) インフルエンザウイルス量の測定
上記(1)のように培養した96穴培養プレートの各ウェル中の培養上清(50 μL/ウェル)を別の96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに無菌的に移した。次いで、PBS(50 μL/ウェル)及び0.1 mM 4-メチルウンベリフェリルN-アセチルノイラミン酸(4MU-NeuAc)水溶液(50 μL/ウェル)を加え、直ちにプレートミキサーで撹拌後、フルオロスキャン(大日本住友製薬株式会社)を用いて37℃にて10分間反応させた。本反応時間内でのインフルエンザウイルスシアリダーゼ活性を示す蛍光強度(励起波長:355 nm、測定波長: 460 nm)による酵素反応曲線の傾きをキネティックスモードで測定した(使用ソフト:Delta soft 3)。各ウェルの培養上清中の相対インフルエンザウイルス価は以下の計算式により算出した。
【0089】
培養上清のインフルエンザウイルス価(%)=(A − C)/(B − C)× 100
上記式中、Aはパチョリ精油抽出物を添加した場合のインフルエンザウイルス存在下での培養上清中のシアリダーゼ活性(酵素反応曲線の傾き)、Bはパチョリ精油抽出物非添加の場合のインフルエンザウイルス存在下での培養上清中のシアリダーゼ活性(酵素反応曲線の傾き)、Cはパチョリ精油抽出物非添加の場合のインフルエンザウイルス非存在下での培養上清中のシアリダーゼ活性(試験サンプル非添加;バックグラウンド)を示す。
【0090】
また、各パチョリ精油抽出物のインフルエンザウイルス増殖に対する50%阻害濃度(IC50)は用量対インフルエンザウイルスシアリダーゼ活性直線から算出した。
以上の測定結果は後述の表1に示す。
【0091】
(2−2) インフルエンザウイルス存在下でのMDCK細胞の生存率の測定(MTT法)
上記(1)のように培養した96穴培養プレートの培養上清を除去した後、プレート上のMDCK細胞をPBS(200 μL/ウェル)で1回洗浄した。本プレートに臭化3-(4,5-ジメチル-2チアゾリル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウム(MTT)のPBS溶液(1 mg/mL)を100 μL/ウェルで加え、5% CO2条件下37℃にて2時間培養後、アスピレーターにてMTT溶液を吸引除去した。さらにプレートに0.04N 塩酸含有イソプロパノール(100 μL/ウェル)を加えて撹拌し、プレートミキサー上で混和し、それにより、生成したホルマザンを溶解した後、それに精製水(100 μL/ウェル)を加えて軽く撹拌した。反応液の吸光度をマイクロプレートリーダー(大日本住友製薬株式会社)にて測定し、MDCK細胞数の指標とした(測定波長: 570 nm、補償波長:630 nm)。
【0092】
MDCK細胞の生存率(MTT法)は以下の計算式により算出した。
【0093】
MDCK細胞の生存率(%)=(A / B)× 100
式中、Aはインフルエンザウイルス存在下でパチョリ精油抽出物を添加した場合の吸光度、Bはインフルエンザウイルス非存在下でのパチョリ精油抽出物非添加の場合の吸光度を示す。
【0094】
得られた結果は後述の表1に示す。
【0095】
(2−3) パチョリ精油抽出物の細胞毒性の検定
インフルエンザウイルス非存在下にてMDCK細胞を上記(1)と同条件にて実施例1で調製したパチョリ精油抽出物(パチョリのアルコール抽出物又はn-ヘキサン抽出物)の存在下又は非存在下で培養後、上記(2−2)の方法に従いMTT法にてMDCK細胞数(残存MDCK細胞数)の指標となる吸光度を測定した。次いで、インフルエンザウイルス非存在下かつパチョリ精油抽出物存在下でのMDCK細胞の死亡率、すなわちパチョリ精油抽出物の細胞毒性を、下記式により算出した。
【0096】
MDCK細胞に対するパチョリ精油抽出物の細胞毒性(%)=(A − B)/ A × 100
式中、Aはパチョリ精油抽出物非添加の場合の吸光度、Bはパチョリ精油抽出物を添加した場合の吸光度を示す。
【0097】
(3)パチョリ精油抽出物の抗インフルエンザウイルス活性及び細胞毒性
上記のようにして得られた、パチョリ精油抽出物(パチョリのアルコール抽出物及びn-ヘキサン抽出物)の抗インフルエンザウイルス活性及び細胞毒性は、表1に示す通りである。
【0098】
【表1】

【0099】
表中、ザナミビルは抗インフルエンザウイルス活性を有する既知の化合物であり、陽性コントロールとして使用したものである。
【0100】
表1に示される通り、パチョリのアルコール抽出物及びn-ヘキサン抽出物は、細胞毒性をほとんど示さずにインフルエンザウイルスの増殖を顕著に阻害できる抗インフルエンザウイルス活性を示すことから、抗インフルエンザウイルス剤として使用できることが明らかとなった。
【0101】
[実施例3]パチョリアルコールの抗インフルエンザウイルス活性の評価
10%非働化ウシ胎児血清、ペニシリン(200単位/mL)-ストレプトマイシン(0.2 mg/mL)溶液及びアンホテリシンB(5 μg/mL)溶液を加えたMEM培地(20 mL)でのMadin-Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞懸濁液(3×105細胞/mL)を6穴培養プレートに分注(2 mL/ウェル)後、5% CO2条件下37℃にてコンフルエントになるまで2〜4日間培養した。コンフルエントになった6穴培養プレート内の培養MDCK細胞の培養上清を除去後、MDCK細胞をPBS(2 mL/ウェル)で1回洗浄した。洗浄後、各ウェルに、実施例2と同様に調製したインフルエンザウイルス希釈液(A/Puerto Rico/8/32、H1N1亜型、103.7倍希釈液)を100 μL/ウェルにて加え、5% CO2条件下37℃にて30分間インキュベーションした。この各ウェルに、重層用寒天培地(12.6 mL)に10% メタノールで希釈したパチョリアルコール(実施例1参照)溶液(1.4 mL)を加えて調製した試験サンプル溶液を2 mL/ウェルで添加し、寒天が固化するまで室温にて放置した。さらに、本プレートを上下逆さまにし、5% CO2条件下37℃にて3日間培養した。またコントロールとして、試験サンプル溶液の代わりに水を加えたこと以外は前記と同様にして試験を行った(インフルエンザウイルス存在下、パチョリアルコール非添加)。さらに、陰性コントロールとして試験サンプル溶液の代わりに10%メタノールを、また、陽性コントロールとしてはザナミビル水溶液を加えたこと以外は前記と同様にして試験を行った。
【0102】
次いで、6穴プレートの上下を元に戻し、その各ウェルに染色用寒天培地[2倍濃度MEM培地(20 mL)に0.1 % ニュートラルレッド水溶液(4 mL)を加え、寒天培地(寒天0.32 gに注射用水16 mLを加えて調製)を加えたもの](1 mL/ウェル)を重層し、寒天が固化するまで室温にて放置した。さらに、本プレートを逆さまにし、5% CO2条件下37℃にて90分間インキュベーションした後、染色されないスポットとして観察される溶解した死細胞(プラーク)数を目視によりカウントした。この結果の一例を図1に示す。
【0103】
図1に示される通り、目視によるカウントに基づく評価においては、パチョリアルコールは、パチョリアルコール非添加の場合(コントロール)を100%としたときのおよそ25%まで死細胞(プラーク)数を低減させることができることが示された。
【0104】
また、同様にプラーク形成させプラーク数をカウントした試料について、抗インフルエンザウイルス活性を、コントロールに対するプラーク数相対値(%)として以下の計算式より算出した。
【0105】
プラーク数相対値(%)=(A / B)× 100
式中、Aはインフルエンザウイルス存在下でパチョリアルコールを添加した場合の平均プラーク数、Bはインフルエンザウイルス存在下でのパチョリアルコール非添加の場合の平均プラーク数を示す。この結果の一例を図2に示す。
【0106】
図2に示される通り、プラーク数相対値(%)における評価においては、パチョリアルコールは、パチョリアルコール非添加の場合(コントロール)を100%としたときのおよそ40%まで死細胞(プラーク)数を低減させることができることが示された。
【0107】
図1と図2の結果の違いはプラーク形成法で通常見られる20%程度の実験誤差によるものである。図1及び図2に示す結果はいずれも死細胞(プラーク)数の顕著な低減に成功したことを示していた。
【0108】
また、インフルエンザウイルス増殖に対するパチョリアルコールの50%阻害濃度(IC50)を図2に示すサンプル用量対プラーク数相対値曲線より算出した。パチョリアルコールの50%インフルエンザウイルス増殖阻害濃度(IC50)は0.639μg/mLであった。
【0109】
以上の結果より、パチョリアルコールがインフルエンザウイルスの増殖を顕著に阻害できる抗インフルエンザウイルス活性を示すことから、抗インフルエンザウイルス剤として使用できることが明らかとなった。
【0110】
[実施例4]パチョリアルコールのインフルエンザウイルスシアリダーゼに対する阻害活性の評価
インフルエンザウイルスの感染過程においてウイルスの出芽過程にはウイルス由来のシアリダーゼが重要な働きをすることが明らかとされており、この酵素を標的とする抗インフルエンザウイルス薬のザナミビルやオセルタミビルが開発されている。
【0111】
そこで、本発明に係るパチョリアルコールがこれらの既知の抗インフルエンザウイルス薬と同様の標的分子に作用するかについて検討するため、インフルエンザウイルスのシアリダーゼ活性に対するパチョリアルコールの阻害活性を評価した。
【0112】
まず、96穴マイクロタイタープレートにPBS(90 μL/ウェル)を加えた後、パチョリアルコール(10 μL/ウェル)の10% メタノール溶液、及びインフルエンザウイルス由来シアリダーゼをウイルスタンパク抗原として含むインフルエンザワクチン(A/New Caledonia/20/99, H1N1亜型、50 μL/ウェル)を加え、プレートミキサーで撹拌後、室温で30分間インキュベーションした。本反応液に0.1 mM 4MU-NeuAc水溶液(50 μL/ウェル)を加えて直ちにプレートミキサーで撹拌後、フルオロスキャン(大日本住友製薬株式会社)を用いて37℃、10分間反応させた。反応時間内での蛍光強度(励起波長:355 nm、測定波長:460 nm)の変化をキネティックスモードで測定することによりシアリダーゼ活性を酵素反応曲線の傾きとして算出した(使用ソフト:Delta soft 3)。
【0113】
次にインフルエンザウイルスの相対シアリダーゼ活性を以下の計算式により算出した。
【0114】
相対シアリダーゼ活性(%)=(A / B)× 100
式中、Aは試験サンプルを添加した場合の蛍光強度曲線の傾き、Bは試験サンプル非添加の場合の蛍光強度曲線の傾きを示す。
【0115】
算出した結果を表2に示す。
【0116】
【表2】

【0117】
表2に示す通り、パチョリアルコールは、抗ウイルス活性を示す濃度よりさらに30倍以上高い濃度である15.6〜1000μg/mLとなる用量で添加しても、ウイルスシアリダーゼ活性に全く影響を与えなかった。従って、パチョリアルコールの抗インフルエンザウイルス活性は、シアリダーゼ阻害作用に基づかないものであることが明らかとなった。
【0118】
[処方例]
以下、本発明の抗インフルエンザウイルス剤を含む化粧料、医薬品、食品等の処方例を示す。
【0119】
(処方例1)パック剤
以下のA相、B相、C相をそれぞれ均一に溶解した後、A相にB相を加えて可溶化し、次いでC相を加えて均一に溶解し、パック剤を製造した。
(成分) (質量%)
(A相)ジプロピレングリコール 5.0%
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 5.0%
(B相)オリーブ油 5.0%
酢酸トコフェノール 0.2%
パラオキシ安息香酸エステル 0.2%
(C相)ポリビニルアルコール 13.0%
抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
エタノール 7.0%
フローラル香料 0.05%
精製水 残部
計 100.0%
*1):抗インフルエンザウイルス剤としてパチョリアルコールを用いた(以下同じ)。
【0120】
(処方例2)固形ファンデーション
下記成分(1)〜(7)をブレンダーで均一に混合し、これに(8)〜(13)を加え、よく混練して固形ファンデーション製造した。
(成分) (質量%)
(1)タルク 42.4%
(2)カオリン 15.7%
(3)セリサイト 10.3%
(4)亜鉛華 7.0%
(5)二酸化チタン 3.8%
(6)黄色酸化鉄 2.8%
(7)黒色酸化鉄 0.3%
(7)黒色酸化鉄 0.3%
(8)スクワラン 8.0%
(9)イソステアリン酸 4.0%
(10)モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン 3.1%
(11)オクタン酸イソセチル 2.0%
(12)フローラル香料 0.1%
(13)抗インフルエンザウイルス剤*2) 0.2%
計 100.0%
*2):抗インフルエンザウイルス剤としてパチョリ由来アルコール抽出物を用いた(以下同じ)。
【0121】
(処方例3)石けん
下記成分を用い、常法により石けんを製造した。
(成分) (質量%)
(1)石けん素地 53.2%
(2)スクロール 19.4%
(3)フローラルグリーン香料 0.25%
(4)抗インフルエンザウイルス剤*3) 0.2%
(5)還元ハチミツ液 0.25%
(6)濃グリセリン 6.5%
(7)ヒドロキシエタンジホスホン酸 0.15%
(8)精製水 残部
計 100.0%
*3):抗インフルエンザウイルス剤としてパチョリ由来精油抽出物を用いた(以下同じ)。
【0122】
(処方例4)シャンプー
下記成分を加温し、均一に混合し、シャンプーを製造した。
(成分) (質量%)
(1)N−ヤシ油脂肪酸グルタミン酸トリエタノールアミン 25.0%
(2)ラウリン酸ジエタノールアミド 5.0%
(3)ミリスチン酸カリウム 5.0%
(4)ジステアリン酸エチレングリコール 2.0%
(5)ポリエチレングリコール400 15.0%
(6)グリセリン 1.0%
(7)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.1%
(8)抗インフルエンザウイルス剤*3) 0.1%
(9)クロルキシレノール 0.1%
(10)ビタミンE 0.1%
(11)パラオキシ安息香酸エステル 0.2%
(12)フローラル香料 0.3%
(13)精製水 残部
計 100.0%
【0123】
(処方例5)クレンジングジェル
下記成分(1)〜(3)を、また別途に(4)〜(7)及び(9)を、それぞれ70℃に加熱溶解させてA液及びB液とした後、A液にB液を加えて均一になるまで攪拌する。攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(8)を加えてクレンジングジェルを製造した。
(成分) (質量%)
(1)モノミリスチン酸ヘキサグリセリル 20.0%
(2)流動パラフィン 59.7%
(3)パラオキシ安息香酸エステル 0.3%
(4)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.075%
(5)抗インフルエンザウイルス剤*2) 0.075%
(6)濃グリセリン 5.9%
(7)ソルビトール 5.0%
(8)香料 0.1%
(9)精製水 残部
計 100.0%
【0124】
(処方例6)化粧水
下記成分(5)〜(8)を混合溶解させA液とした。これとは別に下記成分(1)〜(4)及び(9)を混合溶解させてB液とした。A液とB液を均等に混合し、化粧水を調製した。
(成分) (質量%)
(1)クインスシードエキス 8.0%
(2)グリセリン 3.0%
(3)1,3−ブチレングリコール 5.0%
(4)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.15%
(5)ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル 1.2%
(6)エチルアルコール 5.0%
(7)パラオキシ安息香酸メチル 0.2%
(8)シトラス香料 0.1%
(9)精製水 残部
計 100.0%
【0125】
(処方例7)クリーム
下記成分(1)〜(10)を、また別途に下記成分(11)〜(15)を、それぞれ75℃に加温溶解し、A液及びB液を得た。A液にB液を加えて乳化し、攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(16)を加え、クリームを調製した。
(成分) (質量%)
(1)ヒマシ油 3.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)メチルポリシロキサン 0.5%
(4)ステアリルアルコール 0.5%
(5)セチルアルコール 0.5%
(6)トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 12.5%
(7)モノステアリン酸グリセリル 5.0%
(8)モノステアリン酸ジグリセリル 1.5%
(9)モノステアリン酸デカグリセリル 3.0%
(10)パラオキシ安息香酸プロピル 0.1%
(11)キサンタンガム 0.1%
(12)抗インフルエンザウイルス剤*3) 0.05%
(13)1,3−ブチレングリコール 5.0%
(14)パラオキシ安息香酸メチル 0.2%
(15)フローラル香料 0.05%
(16)精製水 残部
計 100.0%
【0126】
(処方例8)乳液
下記成分(1)〜(10)を、また別途に下記成分(11)〜(14)及び(16)をそれぞれ75℃で加温溶解し、A液及びB液を得た。A液にB液を加えて乳化し、攪拌しながら50℃まで冷却し、成分(15)を加え、乳液を調製した。
(成分) (質量%)
(1)ヒマシ油 1.0%
(2)スクワラン 2.0%
(3)ベヘニルアルコール 1.0%
(4)トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル 2.0%
(5)テトラグリセリン縮合シリノレイン酸 0.1%
(6)モノオレイン酸プロピレングリコール 0.5%
(7)モノステアリン酸グリセリン 1.0%
(8)モノミレスチン酸ヘキサグリセリル 1.0%
(9)モノミリスチン酸デカグリセリル 0.5%
(10)パラオキシ安息香酸プロピル 0.1%
(11)クインスシードエキス 5.0%
(12)抗インフルエンザウイルス剤*3) 0.03%
(13)1,3−ブチレングリコール 3.0%
(14)パラオキシ安息香酸メチル 0.1%
(15)ローズ香料 0.1%
(16)精製水 残部
計 100.0%
【0127】
(処方例9)浴用剤
下記成分を用い、常法により浴用剤を製造した。
(成分) (質量%)
(1)乾燥硫酸ナトリウム 40.0%
(2)炭酸水素ナトリウム 57.5%
(3)オリーブ油 0.2%
(4)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.1%
(5)軽質無水ケイ酸 0.3%
(6)フローラル香料 1.7%
(7)黄色202号の(1) 0.2%
計 100.0%
【0128】
(処方例10)チューインガム
下記処方の成分を常法によりニーダーで練り、チューインガムを製造した。
(成分) (質量%)
(1)炭酸カルシウム 5.0%
(2)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
(3)ガムベース 31.8%
(4)エリスリトール 10.0%
(5)キシリトール 40.0%
(6)マルチトール 12.5%
(7)フルーツ香料 0.5%
計 100.0%
【0129】
(処方例11)レモン香料
下記処方の成分を常法により混合し、常法によりレモン香料を製造した。
(成分) (質量%)
(1)ユーカリ油 10.0%
(2)アネトール 2.0%
(3)レモン油 1.0%
(4)l−メントール 25.0%
(5)l−カルボン 25.0%
(6)スペアミント油 10.0%
(7)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.02%
(8)エタノール 残部
計 100.0%
【0130】
(処方例12)チューインガム
下記処方の成分を常法によりニーダーで練り、チューインガムを製造した。
(成分) (質量%)
(1)炭酸カルシウム 5.0%
(2)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
(3)ガムベース 31.8%
(4)エリスリトール 10.0%
(5)キシリトール 40.0%
(6)マルチトール 12.5%
(7)処方例11のレモン香料 0.5%
計 100.0%
【0131】
(処方例13)キャンディ
下記処方の成分を常法により混錬し、常法によりキャンディを製造した。
(成分) (質量%)
(1)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
(2)キシリトール 8.0%
(3)マルチトール 10.0%
(4)アスパルテーム 0.1%
(5)シトラス香料 0.2%
(6)パラチニット 残部
計 100.0%
【0132】
(処方例14)ミント香料
下記処方の成分を常法により混合し、常法によりミント香料を製造した。
(成分) (質量%)
(1)ペパーミント油 20.0%
(2)アネトール 6.0%
(3)レモン油 1.0%
(4)スペアミント油 10.0%
(5)l−カルボン 23.0%
(6)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.01%
(7)l−メントール 残部
計 100.0%
【0133】
(処方例15)キャンディ
下記処方の成分を常法により混錬し、常法によりキャンディを製造した。
(成分) (質量%)
(1)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
(2)キシリトール 8.0%
(3)マルチトール 10.0%
(4)アスパルテーム 0.1%
(5)処方例14のミント香料 0.2%
(6)パラチニット 残部
計 100.0%
【0134】
(処方例16)練歯磨き
下記処方の成分を常法により混合し、常法により練歯磨きを製造した。
(成分) (質量%)
(1)第2リン酸カルシウム 30.0%
(2)グリセリン 10.0%
(3)ソルビトール 20.0%
(4)カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0%
(5)ラウリル硫酸ナトリウム 1.5%
(6)カラギーナン 0.5%
(7)サッカリンナトリウム 0.1%
(8)シトラスミント香料 1.0%
(9)安息香酸ナトリウム 0.3%
(10)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
(11)精製水 残部
計 100.0%
【0135】
(処方例17)練歯磨き
下記処方の成分を常法により混合し、常法により練歯磨きを製造した。
(成分) (質量%)
(1)第2リン酸カルシウム 30.0%
(2)グリセリン 10.0%
(3)ソルビトール 20.0%
(4)カルボキシメチルセルロースナトリウム 1.0%
(5)ラウリル硫酸ナトリウム 1.5%
(6)カラギーナン 0.5%
(7)サッカリンナトリウム 0.1%
(8)処方例14のミント香料 1.0%
(9)安息香酸ナトリウム 0.3%
(10)精製水 残部
計 100.0%
【0136】
(処方例18)点鼻剤
下記処方の成分を常法により混合し、常法により点鼻剤を製造した。
(成分) (質量%)
(1)塩化ベンザルコニウム 0.01%
(2)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
(3)クエン酸 適量
(4)クエン酸ナトリウム 適量
(5)D−ソルビトール 適量
(6)精製水 残部
計 100.0%
【0137】
(処方例19)洗鼻剤
下記処方の成分を常法により混合し、常法により洗鼻剤を製造した。
(成分) (質量%)
(1)パラオキシ安息香酸エステル 0.08%
(2)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
(3)ペパーミント香料 0.1%
(4)精製水 残部
計 100.0%
【0138】
(処方例20)ペパーミント香料
下記処方の成分を常法により混合し、常法によりペパーミント香料を製造した。
(成分) (質量%)
(1)サリチル酸エチル 10.0%
(2)かつおぶし含有樹脂 1.0%
(3)l−メントール 30.0%
(4)薄荷白油 5.0%
(5)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.01%
(6)ペパーミント油 残部
計 100.0%
【0139】
(処方例21)洗鼻剤
下記処方の成分を常法により混合し、常法により洗鼻剤を製造した。
(成分) (質量%)
(1)パラオキシ安息香酸エステル 0.08%
(2)処方例20のペパーミント香料 0.12%
(3)精製水 残部
計 100.0%
【0140】
(処方例22)うがい剤
下記処方の成分を常法により混合し、常法によりうがい剤を製造した。
(成分) (質量%)
(1)エタノール 14.0%
(2)グリセロール 7.0%
(3)SDS 6.0%
(4)メントール 0.5%
(5)ペパーミント香料 0.5%
(6)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
(7)精製水 残部
計 100.0%
【0141】
(処方例23)うがい剤
下記処方の成分を常法により混合し、常法によりうがい剤を製造した。
(成分) (質量%)
(1)エタノール 14.0%
(2)グリセロール 7.0%
(3)SDS 6.0%
(4)処方例20のペパーミント香料 1.0%
(5)精製水 残部
計 100.0%
【0142】
(処方例24)洗口液
下記処方の成分を常法により混合し、常法により洗口液を製造した。
(成分) (質量%)
(1)ラウリル硫酸ナトリウム 0.80%
(2)ラウリル酸ジエタノールアミド 0.80%
(3)グリセリン 12.0%
(4)サッカリンナトリウム 0.2%
(5)ミント香料 0.80%
(6)アルギニン 0.10%
(7)リン酸水素二ナトリウム 0.50%
(8)リン酸水素二カリウム 0.08%
(9)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
(10)精製水 残部
計 100.0%
【0143】
(処方例25)洗口液
下記処方の成分を常法により混合し、常法により洗口液を製造した。
(成分) (質量%)
(1)ラウリル硫酸ナトリウム 0.80%
(2)ラウリル酸ジエタノールアミド 0.80%
(3)グリセリン 12.0%
(4)サッカリンナトリウム 0.2%
(5)処方例14のミント香料 0.80%
(6)アルギニン 0.10%
(7)リン酸水素二ナトリウム 0.50%
(8)リン酸水素二カリウム 0.08%
(9)精製水 残部
計 100.0%
【0144】
(処方例26)食品・タブレット
下記処方の成分を常法により混合し、常法により食品・タブレットを製造した。
(成分) (質量%)
(1)デンプン 98.5%
(2)ミント粉末香料 0.8%
(3)スクロース脂肪酸エステル 0.5%
(4)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.2%
計 100.0%
【0145】
(処方例27)ミント粉末香料
下記処方の成分を常法により混合し、常法によりミント粉末香料を製造した。
(成分) (質量%)
(1)ペパーミント油 10.0%
(2)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.05%
(3)アラビアガム 30.0%
(4)デキストリン 残部
計 100.0%
【0146】
(処方例28)食品・タブレット
下記処方の成分を常法により混合し、常法により食品・タブレットを製造した。
(成分) (質量%)
(1)デンプン 98.7%
(2)処方例27のミント粉末香料 0.8%
(3)スクロース脂肪酸エステル 0.5%
計 100.0%
【0147】
(処方例29)果汁入り飲料
下記処方の成分を常法により混合し、常法により果汁入り飲料を製造した。
(成分) (質量%)
(1)オレンジエード(Brix:10.8、酸度:0.38)果糖ブドウ糖液糖 10.7%
(2)クエン酸 0.1%
(3)クエン酸ナトリウム 0.03%
(4)オレンジ濃縮果汁 5.2%
(5)オレンジ香料 0.1%
(6)CCF溶液 0.01%
(7)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.02%
(8)精製水 残部
計 100.0%
【0148】
(処方例30)オレンジ香料
下記処方の成分を常法により混合し、常法によりオレンジ香料を製造した。
(成分) (質量%)
(1)アネトール 2.0%
(2)ユーカリ油 10.0%
(3)オレンジ油 1.0%
(4)l−カルボン 25.0%
(5)l−メントール 25.0%
(6)スペアミント油 10.0%
(7)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.02%
(8)エタノール 残部
計 100.0%
【0149】
(処方例31)果汁入り飲料
下記処方の成分を常法により混合し、常法により果汁入り飲料を製造した。
(成分) (質量%)
(1)オレンジエード(Brix:10.8、酸度:0.38)果糖ブドウ糖液糖 10.7%
(2)クエン酸 0.1%
(3)クエン酸ナトリウム 0.03%
(4)オレンジ濃縮果汁 5.2%
(5)処方例30のオレンジ香料 0.1%
(6)CCF溶液 0.01%
(7)精製水 残部
計 100.0%
【0150】
(処方例32)スポーツ飲料
下記処方の成分を常法により混合し、常法によりスポーツ飲料を製造した。
(成分) (質量%) (1)砂糖 3.1%
(2)ブドウ糖 1.57%
(3)クエン酸 0.1%
(4)乳酸カルシウム 0.0679%
(5)クエン酸ナトリウム 0.03%
(6)塩化ナトリウム 0.028%
(7)塩化カリウム 0.022%
(8)ビタミンC 0.0864%
(9)L−グルタニン酸ナトリウム 0.003%
(10)ナイアシン 0.0013%
(11)パンテノン酸ナトリウム 0.0007%
(12)ビタミンB6 0.00022%
(13)ビタミンB12 0.0000006%
(14)レモン香料 0.1%
(15)CCMF溶液 0.01%
(16)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.02%
(17)精製水 残部 計 100.0%
【0151】
(処方例33)スポーツ飲料
下記処方の成分を常法により混合し、常法によりスポーツ飲料を製造した。
(成分) (質量%)
(1)砂糖 3.1%
(2)ブドウ糖 1.57%
(3)クエン酸 0.1%
(4)乳酸カルシウム 0.0679%
(5)クエン酸ナトリウム 0.03%
(6)塩化ナトリウム 0.028%
(7)塩化カリウム 0.022%
(8)ビタミンC 0.0864%
(9)L−グルタニン酸ナトリウム 0.003%
(10)ナイアシン 0.0013%
(11)パンテノン酸ナトリウム 0.0007%
(12)ビタミンB6 0.00022%
(13)ビタミンB12 0.0000006%
(14)処方例11のレモン香料 0.1%
(15)CCMF溶液 0.01%
(16)抗インフルエンザウイルス剤*1) 0.02%
(17)精製水 残部
計 100.0%
【産業上の利用可能性】
【0152】
パチョリアルコール及びパチョリ(広霍香)の油性抽出物は、抗インフルエンザウイルス活性を示し、しかも天然物化合物から誘導される化合物であり安全性も高いことから、本発明に係るパチョリアルコール及び/又はパチョリ(広霍香)抽出物を含む抗インフルエンザウイルス剤は、インフルエンザの予防ないし治療薬として有用であるばかりでなく、インフルエンザの予防ないし治療用の医薬部外品及び飲食品の製造にも利用することができる。本発明の抗インフルエンザウイルス剤は、インフルエンザウイルス感染そのもの、及び/又は当該感染症により惹起される発熱、悪寒、骨節疼痛などの種々の症状、病態の予防もしくは治療に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パチョリアルコール及び/又はパチョリ精油抽出物を有効成分として含む抗インフルエンザウイルス剤。
【請求項2】
請求項1記載の抗インフルエンザウイルス剤を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の香料組成物。
【請求項3】
請求項1記載の抗インフルエンザウイルス剤又は請求項2記載の香料組成物を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の、鼻腔又は口腔投与用組成物。
【請求項4】
請求項1記載の抗インフルエンザウイルス剤又は請求項2記載の香料組成物を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の医薬製剤。
【請求項5】
請求項1記載の抗インフルエンザウイルス剤又は請求項2記載の香料組成物を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の飲食品。
【請求項6】
請求項1記載の抗インフルエンザウイルス剤又は請求項2記載の香料組成物を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の香粧品。
【請求項7】
請求項1記載の抗インフルエンザウイルス剤又は請求項2記載の香料組成物を含有する、インフルエンザウイルス感染症の予防及び/又は治療用の日用・雑貨品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−79800(P2011−79800A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235617(P2009−235617)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(598041566)学校法人北里研究所 (180)
【出願人】(000169466)高砂香料工業株式会社 (194)
【Fターム(参考)】