説明

抗ウィルス剤の機能を有する両複素環連結化合物および当該化合物を含有する組成物の、ウィルス性疾患の治療における応用

【課題】本発明は、非ヌクレオチド類の抗ウィルス剤として使用可能な両複素環連結の小分子有機化合物の医薬用途を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、一般式IVに示された構造を有する化合物の、インフルエンザウィルス、肝炎ウィルス、ヘルペスウイルス、あるいはエイズのウィルスにより引き起こされるウィルス性疾患の治療における応用を提供する。



……IV
(式中、R2は、Hであり;R3,R6,R7はそれぞれ特定の基を有し、X4はSであり;X1はCHであり;Y1はO、SあるいはNHであり;Y4はNである。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗ウィルス剤に関し、特に、非ヌクレオチド系抗ウィルス剤として用いる、両複素環が連結した小分子有機化合物に関する。当該化合物は、インフルエンザ、B型肝炎、ヘルペスウイルス症、エイズなどの疾病の治療薬物として用いることができる。また本発明は、当該化合物の応用、および当該化合物を含む組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
人間が感染するウィルスは、核酸粒子であり、その構造がきわめて簡単で、数多くが酵素系を持っておらず、宿主細胞の核酸と蛋白質の複製に依存してウィルスの粒子として増殖する。ウイルス感染は多種の疾病を引き起こし、人々の健康と生命に深刻な損害を与えている。現在、発病率の高く、危害性の大きいウィルスとして、主にインフルエンザウィルス、B型肝炎ウィルス、人免疫不全ウィルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヘルペスウイルスなどがある。
【0003】
ウィルス性疾患の治療には、今でも専属性の強い薬物が依然不足しており、臨床上に常用する薬物としては、主に、ウィルスの複製を抑制する抗ウイルス薬物;人体の免疫機能を高める免疫調節剤;臨床病状に対応する咳止め、鎮痛、解熱、消炎などの治療薬物;継発感染を防止する抗感染薬物;ウィルス感染を予防するワクチンおよびウィルスの伝播を遮断する消毒薬物などがある。
【0004】
現在、ウィルス性疾患治療用の新規薬物の開発は、主に抗ウイルス薬物の開発に集中しており、抗インフルエンザウィルス薬として幅広く使用されているのは、アマンタジン類薬物、インフルエンザウィルスノイラミニダーゼ抑制剤、インフルエンザウィルスレセプター遮断薬と抗インフルエンザウィルスアンチセンスオリゴヌクレオチドなどがあり、臨床に応用されるのは、アマンタジン類薬物とインフルエンザウィルスノイラミニダーゼ抑制剤がある。肝炎ウイルス感染は、今でも世界中公認の治療学課題である。
【0005】
80年代ごろ、実験が行われたビダラビン、燐酸化ビダラビン、アシクロビル、ジドブジンは、治療効果が低く、毒性反応が大きいために、すでにB型肝炎の治療に用いなくなった。近年、培養したヒト腫瘍細胞株、肝炎ウィルス遺伝子導入細胞株或い遺伝子転換細胞株と遺伝子転換マウスの肝炎動物モデルを利用して、抗B型とC型肝炎ウィルス薬物のスクリーニングを行い、数多くのヌクレオチド類薬物、例えばラミブジン(lamivudine)、ファムシクロビル(famciclovir)、Lobucavi、Adefovir Dipivoxii、FTC(2−ヒドロキシメチル−5−(5−フルオロシトシン−1−イル)−1,3−オキサチオラン)、FMAU(フルオロ−メチル−アラビノフラノシルウリジ)、FDDC(ジデオキシペントフラノシルフルオロシトシン)、BMS 200475などを開発して、HBVに対する顕著な抑制作用を得た。1998〜2002年に、研究者らは30種類以上の薬物に対して、臨床前の実験を行った。近頃、II〜III段階の臨床試験に入た薬物は21種であり、これらの実験薬物中に、抗B型肝炎ウィルスの実験に用いる薬物の多数がHIV逆転写酵素の抑制剤と抗ヘルペスウイルスDNAの重合酵素抑制剤に由来し、その中、Enticavirはすでに第三段階の臨床に入ったため、まもなく市販される可能性がある。抗C型肝炎ウィルスの実験に用いた薬物の多数が広範囲(Broad spectrum)の抗ウイルス薬物、あるいはRNAウィルス抑制剤および抗ウィルス活性を有する免疫調節剤に由来する。
【0006】
現在すでに許可を得ている抗ウィルス薬物の中に、多数がヌクレオチド類化合物であり、臨床応用の過程において、主に以下のような欠点を有することが発見された:1)細胞毒性がある;2)長期の薬品使用により発生する耐薬物性ウィルス変異株の発現のため、構造的関連のない異なる薬物による対抗を必要とする。従って、非ヌクレオチド系抗ウィルス薬物の開発は、ますます注目を集めている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、非ヌクレオチド類の抗ウィルス剤として使用可能な両複素環連結の小分子有機化合物を提供することを目的としている。
【0008】
また、本発明は、上記化合物を含む医薬組成物を提供することをもう一つの目的としている。
【0009】
また、本発明は、上記化合物の医薬用途を提供することをもう一つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、本発明は、以下の構造式Iに示された構造を有する化合物を提供する:
P1−P2 …… I
式中、P1とP2はそれぞれ不飽和複素五員環であり、各不飽和複素五員環P1とP2はN、OあるいはSから選ばれる1個または2個のヘテロ原子を含み、かつ/あるいは、各不飽和複素五員環P1及びP2は、1個または2個の置換基Rに任意に置換されており、かつ、
該置換基Rは、H;ハロゲン原子;フェニル基あるいはハロゲン化フェニル基;ベンジル基;ハロゲン原子、C1-C6のアルコキシ基あるいは水酸基で置換されたC1-C13のアルキル基;チアゾール基;C2-C6のアルケニル基;C3-C6のシクロアルキル基;酸素で置換されたC1-C6のアルキル基、C2-C6のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基;C1-C2のアルコキシカルボニル基;カルボキシル基;構造式
【0011】
【化1】

【0012】
あるいは
【0013】
【化2】

【0014】
(ここで、n=1-5)に示されるホルミルアミド基;ニトリル基置換のアセチル基;構造式
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、
R9はH、イソプロピル基あるいはベンジル基であり、
R10はH;C2-C8のアシルアルケニル基;C2-C6のアシルアルキル基;アルコキシ基置換のC1-C6のアシルアルキル基;C3-C6のシクロアシルアルキル基;ベンゾイル基;C1-C6のアルコキシ基、C1-C6のアルキルアミド基、ハロゲン原子、あるいは水酸基の中から選ばれる任意の1個、2個あるいは3個のラジカルで置換されたあるいは置換されていないベンゾイル基;ホルミルベンジル基;チオフェンホルミル基;ピリジンホルミル基;アシルアミノ基;tert-ブトキシカルボニル基;構造式
【0017】
【化4】

【0018】
に示される2-ブロム-チアゾール-4-ホルミル基;構造式
【0019】
【化5】

【0020】
に示される2,5-ジブロム-チアゾール-4-ホルミル基;構造式
【0021】
【化6】

【0022】
に示される2-メチル-チアゾール-4-ホルミル基;構造式
【0023】
【化7】

【0024】
に示される 3-tert-ブトキシカルボニルアミド基置換のピリジンホルミル基;構造式
【0025】
【化8】

【0026】
に示される2-置換アルキルアミノ基-4-チアゾールホルミル基である。)
に示される基で置換されたアルキルアミド基である。
【0027】
本発明に係る化合物は、以下の一般式IIに示されるような構造を有し、
【0028】
【化9】

【0029】
式中、R2はH、あるいはアミド基で置換された構造式
【0030】
【化10】

【0031】
に示されるアルキル基であり、
式中、
R9とR10の定義は上記のようであり;
R4はH、C1-C6のアルキル基あるいはベンジル基であり;
R6はHあるいはC1-C6アルキル基であり;
R7はカルボキシル基、C1-C2アルコキシカルボニル基、構造式
【0032】
【化11】

【0033】
に示されるホルミルアミド基、構造式
【0034】
【化12】

【0035】
(式中、n=1-5)に示されるホルミルアミド基である。
【0036】
さらに、上記化合物は、一般式IIIに示された構造を有し、
【0037】
【化13】

【0038】
式中、
R7はカルボキシル基、
R9はイソプロピル基あるいはHであり、
R10はシクロペンチルホルミル基、o-メトキシベンゾイル基、構造式
【0039】
【化14】

【0040】
に示されるシクロペンチル-1-アルケニルアセチル基、o-フルオロベンゾイル基或いはチオフェンホルミル基;あるいは、
R7はアルコキシカルボニル基、
R9はイソプロピル基、ベンジル基あるいはH、
R10はH、C2-C8のアシルアルケニル基、C2-C6のアシルアルキル基、ベンジルオキシ基置換のアセチル基、C3-C6のシクロアシルアルキル基、ベンゾイル基、メトキシ基、フッ素原子、アミノ基、あるいは水酸基の中から選んだ任意の1個、2個あるいは3個のラジカルで置換されたベンゾイル基、ホルミルベンジル基、チオフェンホルミル基、ピリジンホルミル基、構造式
【0041】
【化15】

【0042】
に示される3-tert-ブトキシカルボニルアミド基置換ピリジンホルミル基、構造式
【0043】
【化16】

【0044】
に示される2-置換アルキルアミノ基-4-チアゾールホルミル基、構造式
【0045】
【化17】

【0046】
に示される2-ブロム-チアゾール-4-ホルミル基、構造式
【0047】
【化18】

【0048】
に示される 2,5-ジブロム-チアゾール-4-ホルミル基、構造式
【0049】
【化19】

【0050】
に示される2-メチル基-チアゾール-4ホルミル基であり;あるいは、
R7は構造式
【0051】
【化20】

【0052】
に示されるホルミルアミド基、
R9はイソプロピル基、
R10はH、ベンジルオキシ基置換アセチル基、ベンゾイル基、フッ素原子に任意に単置換されたベンゾイル基、ホルミルベンジル基、ピリジンホルミル基、構造式
【0053】
【化21】

【0054】
に示される3-tert-ブトキシカルボニル基アミド基置換ピリジンホルミル基、構造式
【0055】
【化22】

【0056】
に示される2-置換アルキルアミノ基-4-チアゾールホルミル基
である。
【0057】
具体的には、本発明に係る化合物は、一般式IVに示された構造を持つことができ、
【0058】
【化23】

【0059】
式中、
R2、R3、R6、R7は、それぞれ独立に、H;ハロゲン原子;フェニル基あるいはハロゲン化フェニル基;ベンジル基;ハロゲン原子、C1-C6のアルコキシ基あるいは水酸基で置換されたC1-C13アルキル基;C2-C6のアルケニル基;C3-C6のシクロアルキル基;酸素置換のC1-C6のアルキル基、C2-C6のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基;アシル化アミノ基;C1-C2のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基であり;
X4はO、S、 NHあるいはNであり;
X1はN、NHあるいはCH2であり;
Y1はO、SあるいはNHであり;
Y4はNあるいはCH2である。
【0060】
さらに、上記化合物において、R2がH、Y4がNの場合、
R3はC1-C6のアルキル基であり;
R6はC1-C13のアルキル基;フェニル基あるいはハロゲン化フェニル基;ベンジル基;ハロゲン原子、アルコキシ基あるいは水酸基を含む置換されたアルキル基;C2-C6のアルケニル基、C3-C6のシクロアルキル基;ハロゲン原子であり;
R7はH;フェニル基あるいはハロゲン化フェニル基;ベンジル基;C1-C13のアルキル基;ハロゲン原子、C1-C6のアルコキシ基あるいは水酸基で置換されたC1-C13のアルキル基;C2-C6のアルケニル基;C3-C6のシクロアルキル基、酸素置換のC1-C6のアルキル基;C1-C2のアルコキシカルボニル基;カルボキシル基であり;
X4はO、SあるいはNHであり;
X1はNあるいはCH2であり;
Y1はO、SあるいはNHである。
【0061】
さらに、上記化合物において、R3がH、R2がH、Y4がNの場合、
R6はC1-C13のアルキル基、フェニル基あるいはハロゲン化フェニル基、ベンジル基、アルコキシ基置換のC1-C6のアルキル基、C2-C6のアルケニル基、C3-C6のシクロアルキル基、あるいはハロゲン原子であり;
R7はH、フェニル基あるいはハロゲン化フェニル基、ベンジル基、C1-C13のアルキル基、アルコキシ基置換のC1-C6のアルキル基、C2-C6のアルケニル基、C3-C6のシクロアルキル基、C1-C2のアルコキシカルボニル基、あるいはカルボキシル基であり;
X4はO、SあるいはNHであり;
X1はNあるいはCH2であり;
Y1はO、SあるいはNHである。
【0062】
一方、本発明に係る化合物は、一般式Vに示された構造を有することができ、
【0063】
【化24】

【0064】
式中、
R1はベンジル基、C1-C6 のアルキル基、C2-C6のアルケニル基であり;
R6はC1-C6のアルコキシ基であり;
R3はチアゾール基、チオフェン基、フェニル基、ベンジル基、C1-C6のアルキル基、C2-C6のアルケニル基、C3-C6のシクロアルキル基であり;
X4はOあるいはSであり;
Y1はOあるいはSである。
【0065】
また、本発明の化合物は、以下の手段によって製造されることができる:
【0066】
【化25】

【0067】
1)化合物1と化合物2を縮合させ、化合物3を得る;
2)化合物3を環化して化合物4を得る、
式中、
R6、R7は、フェニル基あるいはハロゲン化フェニル基;ベンジル基;ハロゲン原子、C1-C6のアルコキシ基あるいは水酸基で置換されたC1-C13のアルキル基;C2-C6のアルケニル基;C3-C6のシクロアルキル基;酸素置換のC1-C6のアルキル基、C2-C6のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基;アシル化アミノ基;C1-C2アルコキシカルボニル基;カルボキシル基であり;
X1はN、NH、O、S、あるいはCR1であり;
X2はN、NH、O、S、あるいはCR2であり;
X3はN、NH、O、S、あるいはCR3であり;
X4はN、NH、O、S、 あるいはCR4であり;
Y1はO、S、あるいはNHであり;
R1、R2、R3、R4は上記と同じである。
【0068】
Lawesson's試薬の構造式は次式のとおりである:
【0069】
【化26】

【0070】
具体的に、本発明の各好ましい化合物は、以下の化学反応式によって調製することができる。
【0071】
化合物7は、以下の化学反応式により調製される:
【0072】
【化27】

【0073】
R6、R7は、フェニル基あるいはハロゲン化フェニル基;ベンジル基;ハロゲン原子、C1-C6のアルコキシ基あるいは水酸基で置換されたC1-C13のアルキル基;C2-C6のアルケニル基;C3-C6のシクロアルキル基;酸素置換のC1-C6のアルキル基、C2-C6のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基;アシル化アミノ基;C1-C2アルコキシカルボニル基;カルボキシル基;X4は、OあるいはSである。
【0074】
化合物11は、以下の化学反応式により調製される:
【0075】
【化28】

【0076】
式中、R7はフェニル基、ベンジル基、N-ブチル基;X1はNあるいはCH2である。
【0077】
化合物13は、以下の化学反応式により調製される:
【0078】
【化29】

【0079】
式中、R6はH、イソブチル、ベンジル基、N-ブチル基である。
【0080】
また、化合物15は、以下の化学反応式により調製される:
【0081】
【化30】

【0082】
式中、R10は、C2-C8のアシルアルケニル基、C2-C6のアシルアルキル基、ベンジルオキシ基置換アセチル基、C3-C6のシクロアシルアルキル基、ベンゾイル基、メトキシ基、フッ素原子、水酸基の中から選ばれた任意の1個、2個あるいは3個のラジカルで置換された
ベンゾイル基、ホルミルベンジル基、ホルミル基である。
【0083】
また、化合物16は、以下の化学反応式により調製される:
【0084】
【化31】

【0085】
式中、R11はC2-C8のアシルアルケニル基である。
【0086】
また、化合物17は、以下の化学反応式により調製される:
【0087】
【化32】

【0088】
式中、R12は ピリジンホルミル基、3-tert-ブトキシカルボニルアミド基置換 ピリジンホルミル基(
【0089】
【化33】

【0090】
)、2-置換アルキルアミノ基-4-チアゾールホルミル基(
【0091】
【化34】

【0092】
)、
2-ブロム-チアゾール-4-ホルミル基(
【0093】
【化35】

【0094】
)、2,5-ジブロム-チアゾール-4-ホルミル基(
【0095】
【化36】

【0096】
)、2-メチル-チアゾール-4-ホルミル基(
【0097】
【化37】

【0098】
)、ピリジンホルミル基、o-アミノ-ベンゾイル基、o-メトキシベンゾイル基、o-ヒドロキシルベンゾイル基、チオフェンホルミル基である。
【0099】
化合物19は、以下の化学反応式により調製される:
【0100】
【化38】

【0101】
式中、
R10は、シクロペンチルホルミル基、o-メトキシベンゾイル基、シクロペンチル-1-アセチルエチレン基、チオフェンホルミル基、o-フルオロベンゾイル基;R9は、ベンジル基、イソブチルである。
【0102】
化合物21は、以下の化学反応式により調製される:
【0103】
【化39】

【0104】
ここで、R10は、C2-C8のアシルアルケニル基、C2-C6のアシルアルキル基、ベンジルオキシ基置換アセチル基、C3-C6シクロアシルアルキル基、ベンゾイル基、フッ素原子に任意に単置換されたベンゾイル基、ホルミルベンジル基、ホルミル基である。
【0105】
また、化合物22は、以下の化学反応式により調製される:
【0106】
【化40】

【0107】
式中、R11はC2-C8のアシルアルケニル基である。
【0108】
また、化合物23は、以下の化学反応式により調製される:
【0109】
【化41】

【0110】
式中、R12は ピリジンホルミル基、3-tert-ブトキシカルボニルアミド基置換ピリジン
ホルミル基(
【0111】
【化42】

【0112】
)、2-置換アルキルアミノ-4-チアゾールホルミル基(
【0113】
【化43】

【0114】
)である。
【0115】
また、化合物25は、以下の化学反応式により調製される:
【0116】
【化44】

【0117】
また、化合物27は、以下の化学反応式により調製される:
【0118】
【化45】

【0119】
また、化合物30は、以下の化学反応式により調製される:
【0120】
【化46】

【0121】
式中、R6はH、メチル基である。
【0122】
また、化合物36は、以下の化学反応式により調製される:
【0123】
【化47】

【0124】
式中、
R6はC1-C2のアルコキシ基であり;
R3はチアゾールの基、チオフェンの基、フェニル基、ベンジル基、C1-C6のアルキル基、C2-C6のアルケニル基、C3-C6のシクロアルキル基であり;
R1はベンジル基、C1-C6のアルキル基、C2-C6のアルケニル基であり;
X4はOあるいはSであり;
Y1はOあるいはSである。
【0125】
また、化合物38は、以下の化学反応式により調製される:
【0126】
【化48】

【0127】
式中、R6はイソブチル基;R、R'はフェニル基、ベンジル基、H、C1-C6のアルキル基;XはNあるいはOである。
【0128】
上記反応らは、次のような溶媒中に反応される:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(CH3CN)、メタノール、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、二塩化エチレン、トルエン、ベンゼン、ジオキサン、水あるいは上記溶媒の混合溶媒。必要により反応系へピリジン、N-メチルモルホリン、クロロぎ酸イソブチル、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミンあるいはDMAPなどの活性剤を添加してもよい。反応温度は、具体的な化合物の反応状況によるが、通常は-78℃〜140℃(化合物Wang413.49など)の範囲にある。反応時間は、具体的な反応物により決める。通常、TLC分析で反応進行状況を分析する。反応終了後に行う後処理方法としては、濾過、反応液の濃縮による溶媒除去、カラムクロマトグラフィーによる分離などがあげられる。最終生成物は、NMRにより決定した。
【0129】
本発明に係る両複素環連結の小分子有機化合物の合成方法は、J. Org. Chem., 1973;38; 3571、2. 国際公開第98/31687号パンフレット(1997年)、3. Org. Process Res. Dev., 2003;7;696、4. Org. Lett., 2004; 6;929、5. Chem. Pharm. Bull., 1983; 31; 4549、6. J. Org. Chem., 2003; 68;1636、7. Org. Lett., 2000;2;2769などの文献を参照した。
【0130】
また、本発明は、上記化合物を含む医薬組成物を提供する。当該組成物は、本発明の化合物を活性成分として用い、且つ常規の薬学副原料を含んでもよい。
【0131】
本発明によれば、本発明の化合物は、抗ウィルス剤として用いることができる。
【0132】
また、本発明の化合物は、ウイルス性疾患治療用薬物の調製に適用することができる。
【0133】
さらに、本発明の化合物、および当該化合物を含む組成物は、ウイルス性疾患の治療に用いることができる。このウイルス性疾患とは、インフルエンザウィルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、あるいはエイズのウイルスにより引き起こされる疾病を指す。
【発明の効果】
【0134】
従って、本発明は、非ヌクレオチド類の抗ウィルス剤として用いることができる、両複素環連結の小分子有機化合物を提供する。当該化合物は、インフルエンザウィルスの複製、B型肝炎ウィルスのDNA複製、並びに、B型肝炎ウィルスのs抗原及びe抗原の合成を効果的に抑制することができるのである。また、当該化合物は、ウィルス性疾患治療用薬物の製造に用いることが可能で、且つ従来のヌクレオチド類薬物に存在する細胞毒性と、薬品の長期使用により発生する耐薬物性ウィルス変異株の出現、構造的関連のない異なる薬物を必要とするなどの欠陥を克服できたのである。さらに、本発明の化合物は、構造が比較的に簡単であり、容易に調製できる。
【発明を実施するための形態】
【0135】
〔調製実施例〕
以下、本発明に対して、具体的な実施例を挙げて詳しい説明を行う。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0136】
以下の調製例において、NMRは、Varian 製造Mercury-Vx 300M型機器により測定された。NMR標準:δH/C 7.26/77.0 ppm(CDCl3)。試薬は主に上海化学試剤公司から提供されたものを使用し、製品の精製には主としてカラムクロマトグラフィーを用いた。シリカゲルは、200-300メッシュのものであり、カラムクロマトグラフィーに使用したシリカゲルのタイプは「ZLX-II」(粗く中空のシリカゲルである。)であり、青島海洋化工工場の子工場製品である。
【0137】
実施例1:
【0138】
【化49】

【0139】
化合物1(3mmol)、化合物2(3mmol)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド・塩酸塩(EDC)(3.3mmol)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(0.3mmol)およびモレキュラ・シーブを混合し、氷浴(0℃)条件で冷却し、その後DMFおよびピリジン(4.5mmol)を順次添加して、TLCでの追跡により反応完了の程度を測定した。
反応終了後、水で希釈し、酢酸エチル(EtOAc)で抽出し、濃縮により溶媒を完全に除去し、カラムクロマトグラフィー分離を行って化合物3(収率60%)を得た。その後、化合物3(0.3mmol)を酢酸アンモニウム(NH4OAc)(15mmol)および酢酸ナトリウム(NaOAc)(30mmol)と混合し、130℃まで加熱し、TLCでの追跡により反応完了の程度を測定した。その後、室温まで冷却し、水で希釈して、酢酸エチルで抽出し、濃縮して溶媒を完全に除去し、石油エーテル/酢酸エチル(体積比 1:1)でカラムクロマトグラフィー分離を行って化合物4i(Wang279-1)(収率31%)を得た。さらに、同様の方法を使って以下の化合物を合成した。
【0140】
【表1】

【0141】
実施例2:
【0142】
【化50】

【0143】
化合物3(0.3mmol)とLawesson's試薬(0.45mmol)とを混合した後、THF(5mL) を加えて還流し、TLCでの追跡により反応完了の程度を測定した。そのあと室温まで冷却し、反応液を濃縮して溶媒を完全に除去し、抽出し、石油エーテル/酢酸エチル(体積比3:1)でカラムクロマトグラフィー分離を行って化合物4ii(収率50%)を得た。さらに、同様の方法を使って以下の化合物を合成した。
【0144】
【表2】

【0145】
実施例3:
【0146】
【化51】

【0147】
化合物3(0.3mmol)とPOCl3(3mL)を混合し、80℃まで加熱して、TLCでの追跡により反応完了の程度を測定した。その後反応液を0℃の重炭酸ナトリウム(NaHCO3)の溶液に入れ、POCl3を除いた後、酢酸エチルで抽出し、濃縮して溶媒を除去し、石油エーテル/酢酸エチル(体積比が4:1)でカラムクロマトグラフィー分離を行って化合物4iii(収率80%)を得た。さらに、同様の方法を使って以下の化合物を合成した。
【0148】
【表3】

【0149】
実施例4:
【0150】
【化52】

【0151】
化合物5(1.6mmol)をベンゼン(10mL)中に溶解させ、化合物6(3.2mmol)のTHF(4mL)溶液および触媒としてのPd(PPh3)4(10mg)を順次添加して、100℃まで加熱し、TLCで反応を追跡した。反応液を濃縮し、石油エーテル/酢酸エチル(体積比3:1)でカラムクロマトグラフィー分離を行って生成物7(Wang282-1)(収率25%)を得た。さらに、同様の方法を使って以下の化合物を合成した。
【0152】
【表4】

【0153】
実施例5:
【0154】
【化53】

【0155】
ベンズアルデヒド(25mmol)を、シアン化カリウム(KCN)(30mmol)と塩化アンモニウム(37.5mmol)とを含む25%アンモニア水溶液(20mL)に加え、室温で56時間攪拌し、TLCで反応を追跡した。ジクロロエテンで抽出し、硫酸マグネシウム(MgSO4)で乾燥後、溶媒の濃縮を行って化合物9(2.9g、収率90%)を得た。次いで、化合物9(6mmol)、EDC(7.8mmol)、DMAP(0.6mmol)およびチアゾール-2-カルボン酸(6mmol)を混合して、氷浴(0℃)条件で冷却し、その後DMF(15mL)を添加し、TLCでの追跡により反応終了の程度を測定した。
TLCで反応を追跡して反応が終了した後に、水で希釈し、酢酸エチルによる抽出を行い、濃縮による溶媒の除去を行い、カラムクロマトグラフィー分離などを行って化合物10(0.76g、収率50%)を得た。さらに、この化合物10(3.1mmol)にトリフェニルフォスフィン(Ph3P)(7.75mmol)および四塩化炭素(CCl4)(7.75mmol)を混合し、アセトニトリル(20mL)に溶解して、45℃で反応させ、TLCで反応を追跡した。反応が終わった後に、濃縮により溶媒を除去し、石油エーテル/酢酸エチル(体積比5:1)でカラムクロマトグラフィー分離を行って化合物11(Wang261)(収率60%)を得た。さらに、同様の方法を使って以下の化合物を合成した。
【0156】
【表5】

【0157】
実施例6:
【0158】
【化54】

【0159】
化合物12(1mmol)と水酸化リチウム(LiOH)(4mmol)とを混合し、MeOHと水との混合溶媒を加えて、室温で反応させた。TLCで反応を追跡し、反応終了後、溶媒を濃縮し、1mol/Lの塩酸を用いて酸性とし、酢酸エチルで抽出し、濃縮による溶媒除去を行うことで、化合物13(Wang268)(収率98%)を得た。さらに、同様の方法を使って以下の化合物を合成した。
【0160】
【表6】

【0161】
実施例7:
【0162】
【化55】

【0163】
化合物14 (0.1mmol)とNaHCO3 (1 mmol) とを混合して、H2O/EtOAc(0.2 mL/0.8mL)を加え、塩化アシル(0.15 mmol)を徐々に添加し、1時間後に反応を停止した。反応液を酢酸エチル(EtOAc)で希釈し、さらに水相をEtOAcで抽出した。有機相を合わせて、飽和NaCl溶液で該有機相を3回洗った後、MgSO4で乾燥し、濃縮によって溶媒を完全に除去した。混合物をカラムクロマトグラフィーにより精製して、生成物15(Wang363.43-1)を得た。収率は83%であった。さらに、同様の方法で以下の化合物を合成した。
【0164】
【表7】

【0165】
実施例8:
【0166】
【化56】

【0167】
酸 (0.12 mmol)をCH2Cl2(2 mL)に溶解させ、氷浴(0℃)で冷却し、10分後、N-メチルモルホリン(NMM)(0.15 mmol)およびクロロぎ酸イソブチル(ClCOOiBu)(0.13 mmol)を順次添加し、30分攪拌して、化合物14(0.1 mmol)を添加した。次第に室温になるまで引き続き攪拌し、TLCで反応を追跡した。反応終了後、水で反応を停止させた。EtOAcによる抽出を行い、EtOAc相を飽和食塩水で3回洗い、MgSO4による乾燥を行い、溶媒を濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィーにより精製(石油エーテル:酢酸エチル=2:1(体積比))したところ、生成物16(Wang363.43-2)を得た。収率は55%であった。さらに、同様の方法で以下の化合物を合成した。
【0168】
【表8】

【0169】
実施例9:
【0170】
【化57】

【0171】
化合物14(0.04 mmol)、モレキュラ・シーブ(100mg)およびHOBt(0.04 mmol)を混合し、2 mLのDMFを加えて、氷塩浴(18℃)で冷却し、10分間攪拌した。酸(0.045 mmol)を添加し、30分間攪拌してから、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド・塩酸塩(EDCI)(0.045 mmol)を添加した。氷浴の条件でさらに30分間反応させて、徐々に室温に到達させた。TLCで反応を追跡し、反応が終わった後、反応系を50mLのEtOAcで希釈した。EtOAc相を100mLの水で3回洗い、飽和NaCl溶液で3回洗って、MgSO4で乾燥し、溶媒を濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル:酢酸エチル=2:1 (体積比))により精製することで、生成物17を得た(Wang405.49)。収率は96%であった。さらに、同様の方法で以下の化合物を合成した。
【0172】
【表9】

【0173】
実施例10:
【0174】
【化58】

【0175】
化合物18(0.063 mmol)をMeOH/H2O(0.8 mL/0.2mL)に溶解させ、氷浴で10分間冷却した後に、LiOH(0.25 mmol)を添加し、徐々に室温に昇温した。TLCで反応を追跡して、メチルエステルを完全に反応させて、反応液を濃縮した。水で希釈して、希塩酸を酸性になるまで加え、EtOAcによる抽出を行い、有機相を飽和NaClで3回洗い、MgSO4で乾燥し、溶媒を濃縮することにより生成物19 (Wang415.46) を得た。さらに、同様の方法で以下の化合物を合成した。
【0176】
【表10】

【0177】
実施例11:
【0178】
【化59】

【0179】
化合物20 (0.05 mmol)とNaHCO3(0.5 mmol)とを混合し、H2O/EtOAc(0.2 mL/0.8 mL)を添加して、徐々に塩化アシル(0.075 mmol)を添加し、1時間後に反応を停止させた。反応液をEtOAcで希釈して、水相をEtOAcで2回抽出した。EtOAc相を合わせて、飽和NaCl溶液で3回洗い、MgSO4により乾燥し、溶媒を濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(体積比1:1))により精製することで、生成物21(Wang537.59)を得た。収率は75%であった。さらに、同様の方法で以下の化合物を合成した。
【0180】
【表11】

【0181】
実施例12:
【0182】
【化60】

【0183】
酸 (0.06 mmol)をCH2Cl2(5mL)に溶解させ、氷塩浴 (-18℃) で冷却し、10分後、N-メチルモルホリン(NMM)(0.075 mmol)およびクロロぎ酸イソブチル(ClCOOiBu)(0.065 mmol)を順次添加して 30分間攪拌し、その後化合物20(0.05 mmol)を添加した。さらに攪拌しながら室温までに温度を上げ、TLCで反応を追跡した。反応が完全に終了した後、水を用いて反応を停止させた。EtOAcで抽出をおこない、有機相を飽和食塩水で洗浄して、MgSO4で乾燥し、濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(体積比1:1))で精製して、生成物22(Wang529.61-2)を得た。収率は50%であった。さらに、同様の方法で以下の化合物を合成した。
【0184】
【表12】

【0185】
実施例13:
【0186】
【化61】

【0187】
化合物20(0.023 mmol)とモレキュラ・シーブ(100mg)と、HOBt(0.023mmol)とを混合して、1 mLの処理したDMFを添加させ、氷塩浴(-18℃)で冷却し、10分攪拌した。その後、化合物37(0.023 mmol)を添加して、30分間攪拌した後1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド・塩酸塩(EDCI)(0.025mmol)を添加した。引き続き氷塩浴の条件下で30分間反応させ、その後、徐々に室温にした。反応が完全に終了した後、反応系をEtOAcで希釈し、有機相を水で3回洗浄し、飽和NaCl溶液で3回洗浄して、MgSO4を用いて乾燥し、溶媒を濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(体積比1:1))で精製することで、生成物23(Wang715.84)を得た。収率は97%であった。さらに、同様の方法で以下の化合物を合成した。
【0188】
【表13】

【0189】
実施例14:
【0190】
【化62】

【0191】
化合物24(0.023 mmol)とモレキュラ・シーブ(100mg)と、HOBt(0.023 mmol)とを混合して、1 mLの処理したDMFを添加し、氷塩浴(-18℃)で冷却、10分攪拌した。その後、化合物グリシンメチルエステル(0.023 mmol)を添加して、30分間攪拌して1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド・塩酸塩(EDCI)(0.023 mmol)を添加した。引き続き氷塩浴の条件下で30分間反応させ、その後、徐々に室温にした。反応が完全に終わったあと、反応系をEtOAcで希釈、有機相を水で3回、飽和NaCl溶液で3回洗浄して、MgSO4で乾燥させ、溶媒を濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(体積比1:1))で精製して、生成物25を得た。さらに、同様の方法で以下の化合物を合成した。
【0192】
【表14】

【0193】
実施例15:
【0194】
【化63】

【0195】
アセトニトリル(0.08 mmol)をTHF(2mL)に溶解させ、-78℃で冷却し、ブチルリチウム(0.1 mmol)を添加して10分間反応させた。化合物26(0.08 mmol)を添加して、-78℃で反応させ、1時間後に、飽和NH4Clを用いて反応を停止させた。EtOAcで抽出し、MgSO4で乾燥してから濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(体積比1:1))で精製して、生成物27を得た。収率は56%であった。1H NMR (CDCl3, 300 MHz) :δ 1.04 (d, 3H), 1.07 (d, 3H), 2.58 (m, 1H), 2.74 (s, 3H), 4.18 (s, 2H), 5.47 (dd, 1H), 6.93 (d, 1H), 7.44-7.55 (3H), 7.83-7.86 (2H), 7.94 (s, 1H)。
【0196】
実施例16:
【0197】
【化64】

【0198】
化合物28(1eq)とK2CO3(10eq)とを混合して50mLのCH2Cl2に溶解させ、室温条件で化合物29(1.1eq)を添加して、TLCによる追跡で反応の完成程度を測定した。反応液を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(体積比5:1))で精製して、生成物30 (収率60%)を得た。さらに、同様の方法で以下の化合物を合成した。
【0199】
【表15】

【0200】
実施例17:
【0201】
【化65】

【0202】
化合物31(1.24 g)、化合物32(0.82 mL)、ピリジン(1.61 mL)および100 mLのCH2Cl2を混合し、-10℃でTFA(0.75 mL)を添加して、この温度を維持しながら2時間反応させ、そのあと室温にした。TLCによる追跡で反応終了の程度を測定し、反応終了後、反応液を濃縮し、150 mL のEtOAcに溶解させ、水を加わえ、1N塩酸(30 mL)で酸性とした後、EtOAc相を分離した。この有機相を50 mLの飽和NaCl溶液で3回洗浄し、MgSO4で乾燥し、有機相を濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(体積比3:1))で精製して、化合物33 (1.25 g、 収率66%) を得た。次に、化合物33(650 mg)と4Nジオキサンの塩化水素溶液(7 mL)とを0℃で混合し、TLC追跡で反応終了の程度を測定し、反応が終了後、反応液を濃縮して中間体を得た。さらに、この中間体、チオフェン-2-カルボン酸(241 mg)、EDCI(392 mg)、DMAP(42 mg)およびピリジン(0.3 mL)を混合してからDMF(7 mL)を加わえ、室温で反応させた。TLCによる追跡で反応終了の程度を測定して、反応が完全に終了した後、反応系を100mL EtOAcで希釈して、有機相を100mL水で3回洗浄し、50mL飽和NaCl溶液で3回洗浄し、MgSO4で乾燥し、有機相を濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(体積比1:1))で精製して、化合物34(220 mg)を得た。さらに、化合物34(90 mg)とIBX(77.5 mg)とを混合し、トルエン/DMSO (1 mL/0.5 mL) 混合溶媒を加え、50℃で2時間反応を行った。濾過により固体を除き、100 mL のエーテルで希釈し、50 mLの飽和NaHCO3溶液で3回洗い、MgSO4で乾燥し、有機相を濃縮して、化合物35(80 mg)を得た。さらに、化合物35(25 mg)とPOCl3 (0.5 mL) とを混合させ、80℃まで加熱して、TLCでの追跡により反応終了の程度を測定した。その後、反応液を0℃の50mL飽和重炭酸ナトリウム(NaHCO3)溶液に入れ、POCl3を除き、その後50mL酢酸エチルで抽出し、50 mL飽和NaCl溶液で3回洗浄し、MgSO4で乾燥して、有機相を濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル(体積比2:1))で精製して、生成物である化合物36 (8 mg) を得た。
【0203】
【表16】

【0204】
実施例18:
【0205】
【化66】

【0206】
化合物37を(1mmol) ジクロロメタンに溶解させて、1.2当量の塩化オキサリルを添加し、室温で一晩攪拌させた。これを乾燥後に、ジクロロメタンと1.5当量のアニリンとを加えて、室温で数時間攪拌した。水を加わえ、ジクロロメタンで2回抽出し、有機相を1N塩酸で2回洗浄し、飽和食塩水で1回洗浄し、MgSO4で乾燥して、有機相を濃縮した。混合物をカラムクロマトグラフィーで精製して、生成物38(当例においてC343)を得た。さらに、同様な方法を使って以下の化合物を合成した。
【0207】
【表17】

【0208】
〔試験実施例〕
<試験実施例1:抗B型肝炎ウィルス(HBV)活性の測定>
1.実験目的
本発明で合成した化合物における抗B型肝炎ウィルス(HBV)活性のスクリーニングを目的とする。当該実験は、ウィルス‐細胞レベルの実験において、化合物の細胞毒性の検出・測定、B型肝炎ウィルスの表面と核心抗原の分泌、およびウィルスの核酸(DNA)複製に対する影響と作用の検出・測定を含む。
【0209】
2.実験原理
B型肝炎ウィルス(HBV)の遺伝子組み換え型ヒト肝癌細胞であるHepG2.2.15細胞株は、培養時に、培養上清へB型肝炎ウィルスの粒子(抗原とDNAを含む)を分泌する。
【0210】
抗ウィルス薬物を作用させた場合における、細胞が上清中に分泌したHBsAg、HBeAgおよびウィルスDNA含有量を検出・測定することで、薬物添加なしのコントロールにおける含有量と比較したときの本発明の化合物の抗ウィルス活性作用を観測できる。同時に、本発明の化合物の細胞毒性作用を検出・測定する。MTT法により、本発明の化合物による50%細胞死亡濃度(CC50)を測定し、ELISA方法により、本発明の化合物によるHBsAg、HBeAg分泌の抑制できる濃度(IC50)を測定し、また、蛍光定量PCR法により、試料薬物の50%ウィルスDNA複製阻害濃度(IC50)を測定した。
【0211】
3.試料
実験する時に、実験の必要により化合物を各濃度に調製する。各化合物を七種の濃度に希釈し、且つラミブジンなどの抗ウィルス薬物で実験の陽性対照薬を作り、毎回の反応の正常かどうかを検査する。
【0212】
4.実験方法
a) 実験方法および培養上清の収集
HepG2.2.15細胞を96穴プレートに接種し、翌日に本発明の化合物を添加して、定期的に培養液と同濃度の化合物を交換し、8日目に、測定に用いる上清を集める。96穴プレートの中の細胞にMTTを添加し、4時間後にMTT溶解液を添加して、一晩反応させ、翌日に、マイクロプレートリーダーでOD570を測る。OD値によって、本発明の化合物のHepG2.2.15細胞に対する毒性作用、細胞成長に与える影響、及び半数の細胞が死亡するに必要な濃度(CC50)を計算する。
【0213】
b) 培養上清のHBsAgとHBeAg含有量の測定(ELISA法)
HBsAgとHbeAgは、試薬キット(華美生物工程公司より購入)を用いて測定を行った。コートした線型プレートに試料を添加し、さらに同量の酵素結合物を添加して、37℃で1時間反応させた後、板の洗浄を5回繰り返した。顕色剤AとBを添加してから15分間後に反応を停止させ、OD450/630を測定して、そのOD値により試料のHBV抗原半数阻害率(IC50)を計算した。
【0214】
c) 蛍光定量PCR法による培養上清のHBV-DNA含有量の測定
適量の培養上清を取って、同体積のウィルス分離液に添加し、均一に混合した後沸騰させ、室温で10000rpm、5分間遠心分離し、適量の上清を取りPCRの増幅に用い、同時にHBV-DNA標準試料5個を設けて、検量線を作った。そして、測定により得られたウィルスDNA複製値により、本発明の化合物についての各濃度におけるHBV-DNA複製に対する抑制率を算出し、更に化合物の半数抑制率の計算を行って、その(IC50)を算出した。IC50値が得られない試料に対して、ICXで表示し、そして相応の濃度を提供した。
【0215】
実験用PCRプライマーとして、以下のものを用いた:
P1: 5'ATCCTGCTGCTATGCCTCATCTT3'
P2: 5' ACAGTGGGGAAAGCCCTACGAA3'
実験用プローブとして、以下のものを用いた:
5'TGGCTAGTTTACTAGTGCCATTTTG3’
5.実験の結果
【0216】
【表18】

【0217】
【表19】

【0218】
【表20】

【0219】
注:CC50は、本発明の化合物がHepG2.2.15細胞の成長に対して与える影響を表すものであり、50%死亡濃度を示す。IC50 は、本発明の化合物による、抗原あるいはDNA複製に対する抑制が半数の50%になる時の濃度である。SI は、本発明の化合物についての生物活性選択係数であり、ここで、SI値>2 が有効であり、大きいほど良い。NCは、明らかな生物活性がない、あるいは計算できないことを示す。NTは、テストを行っていないことを示す。
【0220】
<試験実施例2:抗インフルエンザウィルス、ヘルペスウイルス、HIV-1逆転写酵素、HIVインテグラーゼの活性測定>
《生物活性実験》
1.抗HIV-1逆転写酵素化合物のスクリーニング:HIV-1逆転写酵素が作用するプレートを酵素標識板にコートして、最も好適な酵素反応条件と反応系に、HIV-1 RTは、Biotin-dUTPを含む基質を反応枠板に加え、ストレプトアビジン標識の付された西洋ワサビペルオキシダーゼにより、酵素反応生成物中のBiotin-dUTPの存在量を測定して、酵素活性を反映する。本発明の化合物を反応系に添加することにより、当該酵素の抑制剤のスクリーニングを行うことができる。
【0221】
2.抗HIV-1インテグラーゼ化合物のスクリーニング:合成した30個のオリゴヌクレオチド(5'P-ACC CTT TTA GTC AGT GTG GAA AAT CTC TAG CAGT -3', 3'-GAA AAT CAG TCA CAC CTT TTA GAG ATC GTCA-5')をドナー基質として用い、合成した20個のオリゴヌクレオチド(5'- TGA CCA AGG GCT AAT TCA CT-3'-ビオチン, ビオチン-3'-ACT GGT TCC CGA TTA AGT GA-5')を標識基質として用い、96穴プレートにおいて、ドナー基質に精製HIV-1インテグラーゼを添加して、ELISA反応を行った後、標識DNAの鎖転移産物を測定した。ビオチン標識の付されたアルカリホスファターゼ系が顕色し、マイクロプレートリーダーによりOD値を測定した。本発明の化合物を反応系に添加することにより、この酵素の抑制剤のスクリーニングを行うことができる。
【0222】
3.抗ヘルペスウイルスI、II型の化合物のスクリーニング:Vero(アフリカミドリザルの腎臓)細胞をウィルスの宿主として、本発明の化合物の、ヘルペスウイルスI、II型によるVero細胞病変に対する抑制を測定した。
【0223】
4.抗インフルエンザのA、B型ウィルス試料のスクリーニング:MDCK(イヌ腎臓)細胞をウィルスの宿主として、本発明の化合物の、ウィルスによる細胞病変(CPE)を測定した。
【0224】
部分化合物の実験結果を以下の表に示した。ここで、IC50、TC50の単位はμg/mlである。
【0225】
【表21】

【0226】
【表22】

【0227】
【表23】

【配列表フリーテキスト】
【0228】
配列番号1
実施例で用いたPCRプライマー
配列番号2
実施例で用いたPCRプライマー
配列番号3
実施例で用いたPCRプローブ
配列番号4
実施例で用いた抗HIV-1インテグラーゼ化合物スクリーニング用ドナー基質
配列番号5
実施例で用いた抗HIV-1インテグラーゼ化合物スクリーニング用ドナー基質
配列番号6
実施例で用いた抗HIV-1インテグラーゼ化合物スクリーニング用標識基質
配列番号7
実施例で用いた抗HIV-1インテグラーゼ化合物スクリーニング用標識基質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式IVに示された構造を有する化合物の、インフルエンザウィルス、肝炎ウィルス、ヘルペスウイルス、あるいはエイズのウィルスにより引き起こされるウィルス性疾患の治療における応用:
【化1】

式中、
R2は、Hであり;
R3は、H;または、C1-C6のアルキル基であり;R2とR3は、これらと結合する炭素原子と共にベンゼン環を形成していてもよく、
R6は、H;ハロゲン原子;フェニル基;ハロゲン化フェニル基;C1-C13アルキル基;C2-C6のアルケニル基;C3-C6のシクロアルキル基; C1-C2のアルコキシカルボニル基;または、スチリル基であり;
R7は、H;ハロゲン原子;フェニル基;ハロゲン化フェニル基;C1-C13アルキル基;C2-C6のアルケニル基;C3-C6のシクロアルキル基;または、C1-C2のアルコキシカルボニル基であり;
X4はSであり;
X1はCHであり;
Y1はO、SあるいはNHであり;
Y4はNである。
【請求項2】
上記化合物において、
R6が、H;ハロゲン原子;フェニル基;ハロゲン化フェニル基;C1-C13アルキル基;C2-C6のアルケニル基;C3-C6のシクロアルキル基;または、スチリル基であり;
R7が、H;フェニル基;または、C1-C2のアルコキシカルボニル基である
ことを特徴とする請求項1に記載の応用。
【請求項3】
上記化合物が、以下に示す化合物のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の応用:
【化2】

【請求項4】
有効な治療分量の請求項1〜3のいずれかに記載された化合物と通常の薬学副原料とを含む医薬組成物の、インフルエンザウィルス、肝炎ウィルス、ヘルペスウイルス、あるいはエイズのウィルスにより引き起こされるウィルス性疾患の治療における応用。

【公開番号】特開2011−148833(P2011−148833A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103198(P2011−103198)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2008−501138(P2008−501138)の分割
【原出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(506201884)中国科学院上海薬物研究所 (9)
【Fターム(参考)】