説明

抗ウィルス及び抗菌剤

【課題】動植物に対して、優れた抗ウイルス又は抗菌性能とを有し、安全で安価な抗ウイルス又は抗菌剤、これを含む家禽・家畜用感染防除剤、飼料、土壌病害防除剤、植物病害防除剤又は植物生長調整剤、ヒト用感染防除剤等を提供すること。
【解決手段】バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Strptococcus)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属及びピキア(Pichia)属に属する微生物を含む微生物由来の多糖類と硫酸カルシウムとを有効成分として含有する抗ウイルス又は抗菌剤、これを含む家禽・家畜用感染防除剤、ペット用感染防除剤、飼料、土壌病害防除剤、肥料、植物病害防除剤又は植物生長調整剤、魚介類の感染防除剤、水産養殖用調整剤又はヒト用感染防除剤とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物由来の多糖類と硫酸カルシウムとを有効成分として含有する抗ウイルス又は抗菌剤に関し、より詳しくは、該多糖類は、微生物の生菌体及び/又は死菌体であることを含み、さらに、前記抗ウィルス又は抗菌剤を含有する家禽・家畜用感染防除剤、ペット用感染防除剤、飼料、土壌病害防除剤、肥料、植物病害防除剤又は植物生長調整剤、魚介類の感染防除剤、水産養殖用調整剤又はヒト用感染防除剤に関する。
【背景技術】
【0002】
微生物を適当な培地で培養すると、液体培地を粘稠にしたり、寒天平板上で粘稠性のあるコロニーを形成する場合がある。このような現象は多くの場合、細胞外多糖体の生産によって起こる。これに対して、細菌細胞壁構成成分として細菌細胞表層の基礎構造をなしている多糖体がある。一方、種々のグラム陰性菌細胞壁にはリポ多糖体と呼ばれる多糖体が含まれている。リポ多糖体は抗原としての性質のほか、内毒素としての種々の生理活性を示すことが知られている。リポ多糖体に抗腫瘍作用のあることは古くから知られており、一時制癌剤として注目され活発な研究が行われた。しかし、リポ多糖体は腫瘍に出血壊死を起こし、縮小がみられるにもかかわらず、壊死周辺部分から再び腫瘍細胞が増殖してくるため、治療効果は低い。また、治癒効果を高めるリポ多糖体の投与を増すと、本来の毒性のため死亡率が高まるなど、制癌剤としての基体は未知の段階である。
【0003】
また、ムコ多糖は、本来、動物生体内多糖として見出され、ある種の生理活性を有し、その分布及び構造と機能について多くの研究が行われてきた。ムコ多糖を構成している主な糖成分は、一般的にアミノ酸とウロン酸であり、該ムコ多糖は、ヒアルロン酸に代表される非硫酸ムコ多糖と、コンドロイチン硫酸やヘパリンなど動物の生体内で重要な働きを担っていると考えられている硫酸ムコ多糖に大別される。特に後者の硫酸ムコ多糖は、種々の疾病によって質的及び量的に著しく変化する場合の多いことから病態生理学の分野で注目されてきた。そして、この種の硫酸ムコ多糖である、コンドロイチン硫酸、ヘパリン等が抗ウィルス作用が認められるに及んで、硫酸多糖全般の生理活性が見直されてきた。
【0004】
ある種の海洋微生物の菌体が多糖体を含み、これら多糖体を含む菌体が抗ウィルス、抗菌、抗腫瘍作用のあることが報告されている。例えば、ビブリオ(vibrio)spの多糖体、例えば、ビブリオ アルゴスス(vibrio algosus)の多糖体、ビブリオ アンギラルム(vibrio anguillrum)の多糖体、シュードモナス(pseudomonas)の多糖体、例えば、シュードモナス プトレフェクトマリナ(pseudomonas perfectomarina)の多糖体、その他硫酸多糖体を含む菌等がある。
【0005】
また、多糖類の金属塩に抗ウィルス・抗菌活性があることが知られており、例えば、抗ウイルス活性を有するヘパリン亜鉛塩(例えば、特許文献1参照)、同じく抗ウイルス活性を有するデキストラン硫酸亜鉛塩(例えば、特許文献2参照)、病原菌に対する抗菌活性を有するヒアルロン酸重金属塩(例えば、特許文献3参照)や、クレブシエラ(Klebsiella)に属する微生物が生産する構成糖がD−グルクロン酸、L−ラムノース、D−ガラクトース及びD−グルコースの4種からなり、その構成モル比が、D−グルクロン酸:L−ラムノース:D−ガラクトース:D−グルコース=0.8〜1.2 :2.4〜3.6 :0.8〜1.2 :0.8〜1.2である多糖類の抗菌性金属塩を有効成分とする抗ウイルス・菌剤(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0006】
さらに、サッカロミセス属に属する酵母から得られるマンナンからなる抗感染性物質(例えば、特許文献5参照)や、乳酸菌由来の多糖類には、薬理作用を有していることが多く、抗腫瘍剤として、或いは、これに関した文献も多数知られている(例えば、特許文献6、特許文献7、特許文献8参照)。
【0007】
一方、硫酸カルシウムは、火力発電所における脱硫装置やリン酸製造の副産物として安価かつ大量に製造されており、製紙用填料、農業用土壌改良剤兼肥料等に幅広く使用され、その形態としてスラリー状として用いる場合に、水と微生物由来の多糖類(例えばアルカリゲネスレータスB−16株菌)とを含む硫酸カルシウムスラリー組成物(例えば、特許文献9参照)が知られている。
【0008】
【特許文献1】特公昭62−25126号公報
【特許文献2】特公昭63−48849号公報
【特許文献3】特表昭63−502670号公報
【特許文献4】特開平8−333214号公報
【特許文献5】特開昭58−109423号公報
【特許文献6】特公昭60−1877号公報
【特許文献7】特公平6−96601号公報
【特許文献8】特許第2678673号公報
【特許文献9】特開2004−196564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多糖類は、種々の微生物によって微生物細胞外(菌体外)へ分泌され、また細胞壁に存在しているが、得られる多糖類の性状は、基本的に微生物の種類に依存している。このように微生物由来の多糖類はその性状により、用途も異なり、粘性を有しているものは増粘物質としての用途がある。また、多糖類の薬理作用に注目した研究も活発に行われている。多糖類の中で、前述した、リポ多糖類はグラム陰性菌の細胞壁に存在し、ムコ多糖は、本来、動物生体内多糖として見出され、ある種の生理活性を有し、その分布及び構造と機能について多くの研究が行われてきた。ムコ多糖を構成している主な糖成分は、一般的にアミノ酸とウロン酸であり、該ムコ多糖は、ヒアルロン酸に代表される非硫酸ムコ多糖と、コンドロイチン硫酸やヘパリンなど動物の生体内で重要な働きを担っていると考えられている硫酸ムコ多糖に大別される。本発明の課題は、前述のリポ多糖類、硫酸多糖類等の有する生理活性作用に注目し、微生物が生産する多糖類又は該多糖類を含む生菌又は死菌体に、ある種の化合物と共に用いることで抗ウィルス・抗菌作用を有する物質とすることができ、該物質は動植物に対して、優れた抗ウイルス又は抗菌性能とを有し、安全で安価な抗ウイルス又は抗菌剤、前記抗ウィルス又は抗菌剤を含有する家禽・家畜用感染防除剤、ペット用感染防除剤、飼料、土壌病害防除剤、肥料、植物病害防除剤又は植物生長調整剤、魚介類の感染防除剤、水産養殖用調整剤又はヒト用感染防除剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
グラム陰性細菌の細胞壁に存在するリポ多糖類や海洋微生物の菌体が有するムコ多糖のような多糖類が抗ウィルス、抗病原菌、抗腫瘍作用を有するものの、自然の多糖体類は細菌からの分離、培養、毒性の確認及び該毒性の除去には困難を伴い、実用化が難しいことから、本発明者は、このような多糖類にある種の化合物を反応させることにより、抗ウィルス又は抗菌剤を得ようと鋭意検討した結果、安全性の高い微生物由来の多糖類及び硫酸カルシウム、或いはこのような多糖類を含む生菌又は死菌体と硫酸カルシウルムを含有させることで、優れた抗ウイルス又は抗菌剤が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は、(1)バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Strptococcus)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属及びピキア(Pichia)属に属する微生物を含む微生物由来の多糖類と硫酸カルシウムとを有効成分として含有することを特徴とする抗ウイルス又は抗菌剤や、(2)微生物として、さらに、耐塩性酵母菌、耐塩性乳酸菌、硝化細菌、硫黄細菌、メタン酸化細菌、硫黄還元細菌、光合成細菌、好塩菌の群から選ばれる1種又は2種以上を用いることを特徴とする上記(1)記載の抗ウイルス又は抗菌剤や、(3)微生物由来の多糖類が、その生菌体及び/又は死菌体を含むことを特徴とする上記(1)又は(2)記載の抗ウイルス又は抗菌剤や、(4)さらに、藻類を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載のウイルス又は抗菌剤に関する。
【0012】
また本発明は、(5)バチルス(Bacillus)属に属する微生物が、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)の群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤や、(6)ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物が、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)の群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤や、(7)ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物が、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophillus)の群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤や、(8)サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する微生物が、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤や、(9)キャンディダ(Candida)属に属する酵母が、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤や、(10)ピキア属に属する酵母が、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefacience)であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤に関する。
【0013】
さらに本発明は、(11)上記(1)〜(10)記載のいずれかを含むことを特徴とする家禽・家畜用感染防除剤や、(12)上記(1)〜(10)記載のいずれかを含むことを特徴とするペット用感染防除剤や、(13)上記(1)〜(10)記載のいずれかを含むことを特徴とする飼料や、(14)上記(1)〜(10)記載のいずれかを含むことを特徴とする土壌病害防除剤や、(15)上記(1)〜(10)記載のいずれかを含むことを特徴とする肥料や、(16)上記(1)〜(10)記載のいずれかを含むことを特徴とする植物病害防除剤又は植物生長調整剤や、(17)上記(1)〜(10)記載のいずれかを含むことを特徴とする魚介類の感染防除剤や、(18)上記(1)〜(10)記載のいずれかを含むことを特徴とする水産養殖用餌や、(19)上記(1)〜(10)記載のいずれかを含むことを特徴とするヒト用感染防除剤に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の抗ウィルス又は抗菌剤は、優れた抗ウイルス又は抗菌性能とを有し、安全で安価な抗ウイルス又は抗菌剤とすること、及びこれらの製剤を含む、優れた抗ウイルス又は抗菌性能とを有する家禽・家畜用感染防除剤、ペット用感染防除剤、飼料、土壌病害防除剤、肥料、植物病害防除剤又は植物生長調整剤、魚介類の感染防除剤、水産養殖用調整剤又はヒト用感染防除剤を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の抗ウイルス又は抗菌剤としては、微生物由来の多糖類(オリゴ糖を含む)と硫酸カルシウムを有効成分とするものであれば特に制限されるものではなく、糖類としては、フコース、グルコース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、マジュロース、グルクロン酸及びラムノースを構成単糖として含むリポ多糖類、ムコ多糖類、これらの多糖類を糖鎖と有するペプチドグリカン複合体等又はこれらの1種又は2種以上、これらのオリゴ糖を含む多糖類からなる糖類を挙げることができる。
【0016】
硫酸カルシウムとしては、天然のものである無水物、半水和物、二水和物のいずれも使用でき、天然の鉱物石膏及び塩田から集積された石膏等、また、火力発電所における脱硫装置やリン酸製造の副産物として安価かつ大量に製造されているものも使用することができる。
【0017】
本発明の微生物由来の多糖類としては、微生物の生菌体及び/又は死菌体を含むものを用いてもよく、その微生物としては、多糖類(以下、オリゴ糖を含む)を生産することができる、又は細胞壁に多糖類を含む微生物であれば、特に制限されるものではない。例えば、リポ多糖類などの多糖類を生産又は細胞壁等に含む微生物として、バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属(乳酸菌)、ストレプトコッカス(Streptococcus)属(連球菌)、サッカロミセス(Saccharomyces)属(ビール酵母)、キャンディダ(Candida)属(トルラ酵母)、ピキア(Pichia)属に属する微生物や、オリゴ糖類を生産又は細胞壁に含む耐塩性酵母菌、耐塩性乳酸菌が挙げられ、その他、硝化細菌、硫黄細菌、メタン酸化細菌、硫黄還元細菌、光合成細菌等を挙げることができる。
【0018】
本発明に係るバチルス(Bacillus)属として、枯草菌(B.subtilis)、納豆菌(B.nattou)、巨大菌(B.megaterium)を挙げることができる。
【0019】
本発明に係るラクトバチルス属(Lactobacillus)に属する菌としては、ラクトバチルス・アシドフィラス(L.acidophilus)、ラクトバチルス・プランタリム(L. plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(L.brevis)、ラクトバチルス・カセイ(L.casei)、ラクトバチルス・デルブリッキ(L. delbriickii)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(L.helveticus)又はラクトバチルス・ペントサス(L. pentosus)を挙げることはできる。
【0020】
本発明に係るストレプトコッカス(Strptococcus)属に属する菌としては、ストレプトコッカス・フェカリス(S.faecalis)、ストレプトコッカス・ラクティス(S.lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(S. thermophilus)を挙げることができる。
【0021】
本発明に係るサッカロミセス(Saccharomyces)属に属する菌としては、サッカロミセス・セレビシアエ(S. cerevisiae)を挙げることができる。
【0022】
本発明に係るキャンディダ(Candida)属は、キャンディダ・ユーティリス(C.utillis)、キャンディダ アルビカンス(C.albicans)、キャンディダ・リポリチカ(C.lipolytica)、キャンディダ・トロピカリス(C.tropicalis)を代表的なものとして挙げることができるが、その他、C.albicans var.stellatoidea, C.catenulata,Candida curvata, C. famata, C.glabrata, C.guilliermondii, C.humicola, C.intermedia, C. kefyr, C. krusei, C.loxderi, C. macedoniensis, C.magnoliae, C.maltosa, C. melinii, C. nitratophila, C.parapsilosis, C.pelliculosa, C.pintolopesii, C. pinus, C.pulcherrima, C.robusta, C.rugosa, C.zeylanoidesを挙げることができる。
【0023】
ピキア(Pichia)属に属する菌は、耐塩性酵母菌であり、有胞子酵母(Endomycetaceae科)の一属で、細胞は卵円形ないし円筒形で多極性出芽増殖する。大部分の種類は仮性菌糸を形成し、真正菌糸はごく少数にみられる。胞子はハンゼヌラ(Hansenura)と同様に球形、山高帽子形、土星形を示す。含糖液の表面にしばしば皮膜を形成しない種類もあり、硝酸塩は資化しない。ピキア・ファリノサ(Pichia farinosa)、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefacience)が好ましく、その他、Pichia fermentans、Pichia pinus、Pichia subpelliculosaを挙げることができる。
【0024】
本発明では、オリゴ糖類を生産又は細胞壁に含む耐塩性酵母菌や、耐塩性乳酸菌を用いることができる。耐塩性酵母菌として、サッカロミセス・ロキシ(S.rouxii)を、耐塩性乳酸菌として、ペディオコッカス・ハロフィラス(P.halophilus)を挙げることができる。
【0025】
硝化細菌として、ニトロバクタ−属、ニトロソモナス属を挙げることができ、たとえば、Nitrobacter winogradskyi、Nitrobacter agile、Nitrosomonas europaea、Nitrosomonas monocellaを挙げることができる。
【0026】
硫黄細菌として、Thiobacillus属、Thiobacterium属、Macromonas属、Thiovulum属、Thiospira属に属する菌を挙げることができる。
【0027】
メタン酸化細菌として、Methylococcus属、Methylomonas属に属する菌をを挙げることができる。
【0028】
硫黄還元細菌として、Desulfovibrio属に属する菌を挙げることができる。
【0029】
光合成細菌として、いわゆるphotosynthetic bacteriaに属する菌を挙げることができる。
【0030】
本発明に係る微生物には、細胞表層にオリゴ糖を含有する好塩菌、例えば、Halococcus属球菌、Halobacterium属桿菌、Haloarcula属、Haloferax属、Natronobacterim属、Natronococcus属に属する菌を挙げることができる。
【0031】
本発明では、藻類として、藍藻等を、例えば、Calothrix scopulorum、Nostoc sp.、Anabaena cylindrica、Anabaena flos-aquae、Tolypothrix tenuisやChlorella vulgaris、Chlorella pyrenoidosa、Chlorella ellipsoida、Ulothrix sp.、Uronema gigas、Spirulina maxima等を用いることができる。
【0032】
本発明は、微生物を培養後、多糖類を微生物から分離して用いてもよいが、分離せずに生菌が混入したものを用いることもでき、取扱上、生菌体を含む多糖類混合物を用いることが好ましい。多糖類と硫酸カルシウムとの配合割合は、1〜9:9〜1の割合で用いることができ、好ましくは、1:1の割合で混合する(以下、このように配合した本発明の製品を「A剤製品」(総菌数1×10以上)という場合がある)。
【0033】
家禽・家畜用感染防除剤として、飼料に配合するには、飼料総重量に対し0.3〜0.5%配合することが好ましい(飼料1000kg:A剤3〜5kg)。
【0034】
ペット用の抗ウィルス又は抗菌剤として、餌に配合するには、餌総重量に対して0.3〜0.5%配合することが好ましい(餌10kg:A剤30〜50g)。
【0035】
魚介類の感染防除剤として、餌に配合するには、餌総重量に対して0.5〜1%配合することが好ましい(餌1000kg:A剤5〜10kg)。また、養殖池に散布する場合は、200〜300kg/ha/回で、月1〜2回散布することが好ましい。
【0036】
土壌病害防除剤として散布する場合、300〜500kg/ha/回で、A剤製品を直接農地に散布する。肥料に混合して用いる場合は、肥料:A剤を1:1の割合で混合して使用する。
【0037】
ヒトに用いる場合は、飲食品総重量に対して0.3〜0.5%配合することが好ましい。
【0038】
本発明の、抗ウイルス又は抗菌剤とは、ヒト又は家禽・家畜がウィルス又は菌により感染した場合の感染症に対する予防及び/又は治療を意味する。感染症の種類としては、ヒト、家畜・家禽類及び魚介類により様々であるが、微生物が生体宿主に侵入し定着、増殖する病気の全てをいう。本発明の抗ウィルス又は抗菌剤は、感染症の中でも消化器系の感染症の予防及び治療に効果がある。特に家畜についてみると、家畜が感染しやすい病原菌として、サルモネラ、クロストリディウム、浮腫病を引き起こす大腸菌や腸管毒血症性大腸菌等の大腸菌を挙げることができ、これらの病原菌の感染に対して抗菌作用を有する。
【0039】
サルモネラは各種動物の腸管に保菌され、その感染による家畜の生産性低下などの経済的損失が危惧されている。さらに、乳肉およびその製品や調理食品を媒体としてサルモネラ食中毒が併発している。近年、日本を含めた欧米諸国では鶏卵肉を起因とするSalmonella Enteritidis食中毒の発生が激増してきている。そこで、サルモネラの予防は生産段階で阻止することが最も大切であると考えられる。
【0040】
本発明に係る抗ウィルス又は抗菌剤は、牛、馬、豚、羊、ヤギなどの家畜用に、鶏、うずら、鴨、ダチョウなどの家禽用に、犬、猫などのペット用にそれらの病害の予防治療のため飼料に配合して用いることができ、魚介類としては、ハマチ、ブリ、鯛、鯉、鰻、エビ、アサリ、蛤等通常養殖されている魚介類の餌に適用することができる。
【0041】
本発明に係る抗ウィルス又は抗菌剤は、農作物に直接散布することもできるが、牛糞や豚糞の堆肥に混合し、該堆肥を農作物用の土壌に施すことにより、土壌中の病害菌を防除すること、ひいては、農作物を健全に生育することができる。農作物としては、カブの萎黄病・根こぶ病、キャベツの根こぶ病・バーティシリウム萎凋病、コマツナ、シロナの萎黄病、ダイコンの萎黄病・バーティシリウム黒点病、ハクサイの黄化病・根くびれ病・根こぶ病、ミズナの立枯病、ヒロシマナの根こぶ病、カボチャのフザリウム立枯病、キュウリのつる割病・苗立枯病・根立枯病、スイカのつる割病・苗立枯病、メロンの黒点根腐病・つる割病・苗立枯病・半身萎凋病・黒変根腐症、トマトの青枯病・萎凋病・褐色根腐病・苗立枯病、ナスの青枯病・半身萎凋病、イチゴの萎黄病・萎凋病・炭疽病、サヤエンドウの苗立枯病、シソの青枯病、シュンギクの萎凋病、ショウガの根茎腐敗病、タマネギの黒穂病・苗立枯病、ニンジンのしみ腐病、ニンニクの紅色根腐病、ネギの紅色根腐病・白絹病・苗立枯病・小菌核腐敗病、パセリの疫病、ホレンソウの萎凋病・株腐病・立枯病・根腐病、ミョウガの立枯症、ラッキョウの根腐病、ナシの白紋羽病、リンゴ、クワの白紋羽病・紫紋羽病、カーネーションの萎凋細菌病、シャクヤク、ボタンの根黒班病、ストックの萎凋病・立枯病、チューリップ、フリージア、ユリの球根腐敗病・首腐病・白絹病、バラの根頭がんしゅ病、リンドウ、センリョウの立枯病、タバコの疫病・角班病・黒根病・立枯病・野火病、サツマイモの紫紋羽病、コンニャクの白絹病・根腐病、サトイモの乾腐病、ジャガイモのそうか病・粉状そうか病、ヤマイモの褐色腐敗・根腐病、テンサイの叢根病・苗立枯病を挙げることができる。
【0042】
本発明の培養基質原料として、常法の培養基質を用いることができるが、米ぬか、大豆粕、大豆胚芽、小麦フスマ、醤油粕、ポテトパルプ、こんにゃくトビ粉、卵殻、貝殻、天然鉱石等を1種又は2種以上用いることができる。前記培養基質原料を殺菌して用いることが雑菌等の混入を防ぐことができ好ましく、通常の殺菌方法、すなわち加圧水蒸気殺菌等の加熱殺菌を採用することができる。
【0043】
本発明の各微生物の培養条件は、微生物の種類によって異なるが、乳酸菌類を含む場合は、温度20〜40℃、好ましくは、25〜32℃、pH4.0〜6.5、好ましくは、約pH5.0で、非通気下又は通気下で公知の方法により培養し、培地から菌体を分離し、菌体を洗浄し、湿菌体を得る。この場合、この湿菌体を公知の方法により凍結乾燥することもできる。得られた湿菌体又は凍結乾燥菌体を公知の方法により破砕し、該破砕物から細胞壁成分を分離する。
【0044】
次に、得られた細胞壁成分を、例えば、冷5%トリクロロ酢酸溶液、冷0.5M水酸化ナトリウム溶液等の水系溶媒で抽出し、抽出画分を水に対して透析し、のち透析内液を凍結乾燥する。得られた水溶性画分を、公知のゲル濾過クロマトグラフィー(例えば、セファクリルS−400等を使用)により精製し、得られる低分子画分を凍結乾燥し、多糖体を得ることができる。本発明の多糖類は、菌の細胞壁を構成する細胞壁成分として、該細胞壁及び/又は細胞壁破砕物から上記の方法により好適に単離されるが、該方法に限らず、それと同効のものであれば適宜の方法を使用することが可能である。
【0045】
細胞壁と培養液の両方に多糖類が存在する場合、培養物から目的とする多糖物質を採取するには、遠心分離、溶媒分画、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー、透析等の微生物が生産する水溶性多糖類の一般的な採取方法を単独あるいは適宜組み合わせて行えば良い。例えば、多糖物質生産菌の培養物から遠心分離によって、上澄区分と沈澱区分を得る。得られた液体区分にエチルアルコール、アセトン等の有機溶媒を加えることにより沈澱物が得られる。また、沈澱区分は、水、熱水等で抽出を行った後、遠心分離によって上澄を得、この上澄液にエチルアルコール、アセトン等の有機溶媒を加えて沈澱を得る。このようにして上澄区分と沈澱区分から得られた沈澱を水に再溶解し、不溶物を遠心分離、濾過等の方法によって除去した後、再度エチルアルコール、アセトン等の有機溶媒を加え沈澱を得る。得られた沈澱は、トリス−塩酸緩衝液等の適当な緩衝液に溶解し、同様の緩衝液で緩衝化されたジエチルアミノエチルセルロース等のイオン交換体を充填したカラムに負荷する。続いて同様の緩衝液を流し、非吸着区分を分取し、イオン交換水中で透析を行い、透析内液を凍結乾燥することにより、精製された多糖物質が得られる。
【0046】
微生物を培養後、多糖類を存在させたまま用いる場合は、前述の処理を施すことなく生菌体を混入した培養液を用いることができる。
【0047】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
ラクトバチルス・アシドフィラス(L.acidophilus)をロゴサ培地で37℃、24時間培養した前培養液を、酵母エキス4%、ポリペプトン3%、乳糖10%を含む液体培地に0.1(v/v)%接種し、pHスタットを用いてpH6.0〜6.5に苛性ソーダ水溶液で調整しながら37℃、22〜24時間培養を行なった。培養終了後、連続遠心機で菌体を分離、回収した後、水を加えて元の液量まで希釈して再度連続遠心機で菌体を分離、回収した。この操作を合計4回繰り返して菌体を洗浄し、湿菌体を得た。この湿菌体を凍結乾燥した。得られた凍結乾燥菌体を破砕し、該破砕物から細胞壁成分を分離した。冷5%トリクロロ酢酸溶液、冷0.5M水酸化ナトリウム溶液の水系溶媒で抽出し、抽出画分を水に対して透析し、のち透析内液を凍結乾燥した。得られた水溶性画分を、セファクリルS−400を用いてゲル濾過により精製し、得られた低分子画分を凍結乾燥し、多糖体を得た。同様に、バチルス・ナットウ(B.nattou)、ストレプトコッカス・フェカリス(S.faecalis)、サッカロミセス・セレビシアエ(S.cerevisiae)、キャンディダ・ユーティリス(C.utillis)及びピキア・ファリノサ(P.farinosa)を用いて各菌の適正な培地を用い、各菌の適正な培養条件を採用して、各菌の多糖体を得た。これらの多糖体を等量ずつを混合したものと硫酸カルシウム(三宝化学株式会社製)とを重量比1:1で混合し、混合物を得た。
【実施例2】
【0049】
10%脱脂粉乳培地1kgにラクトバチルス・ヘルベティカスを接種し、38℃にて3日間培養を行った。得られた培養液を遠心分離し(7,000rpm、20分)上澄画分と沈澱画分を得た。得られた沈澱画分にイオン交換水300mlを加え、室温にて1時間攪拌して抽出を行い、その後、遠心分離(7,000rpm、15分)を行った。得られた上澄画分を培養液からの上澄画分と合わせた後、エチルアルコールを最終濃度50%になるように加えた。得られた沈澱物を遠心分離(10,000rpm、15分)によって回収後、イオン交換水に溶解し不溶性物質を遠心分離(10,000rpm、15分)によって除去した。この操作を3回繰り返した後、再度、エチルアルコールを最終濃度50%になるように加え沈澱を得た。得られた沈澱を0.02Mトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)に溶解し、同緩衝液で緩衝化されたジエチルアミノエチルセルロースカラムに負荷し、同緩衝液を流し非吸着画分を分取した。得られた非吸着面画分を、流水中で1日透析した後、イオン交換水中で2日間透析を行った。得られた透析内液を凍結乾燥し、多糖類200mgを得た。同様に、バチルス・ズブチリス(B.subtilis)、ストレプトコッカス・ラクティス(S.lactis)、サッカロミセス・ロキシ(S.rouxii)、キャンディダ・アルビカンス(C.albicans)及びピキア・ファリノサ(P.farinosa)を用いて各菌の適正な培地を用い、各菌の適正な培養条件を採用して、各菌の多糖体を得た。これらの多糖体を等量ずつを混合したものと硫酸カルシウム(三宝化学株式会社製)とを重量比1:1で混合し、混合物を得た。
【実施例3】
【0050】
米ぬか(水分10%)100重量部と貝殻(牡蠣粉末水分8%)100重量部を混合し、この混合物を加圧水蒸気殺菌し、粉砕した。この混合物200重量部に対し70重量部の水を加えた。ここへ、バチルス・ナットウ(B.nattou)、ラクトバチルス・アシドフィラス(L.acidophilus)、ストレプトコッカス・フェカリス(S.faecalis)、サッカロミセス・セレビシアエ(S.cerevisiae)、キャンディダ・ユーティリス(C.utilis)及びピキア・ファリノサ(P.farinosa)(自社製の酵母を使用)の各々の菌を別に培養後、各菌数がほぼ1:1:1:1:1の割合となるように混合し、各40重量部ずつ計240重量部を添加した。1ヶ月半、35℃、pH6.0で静置発酵させた。その後、4ヶ月熟成し、その間1ヶ月に1度の割合で撹拌した。各菌の菌数は、バチルス・ナットウ(B.nattou)は10CFU/1ml、ラクトバチルス・アシドフィラス(L.acidophilus)は10CFU/1ml、ストレプトコッカス・フェカリス(S.faecalis)は10/1ml、サッカロミセス・セレビシアエ(S.cerevisiae)は10/1ml、キャンディダ・ユーティリス(C.utilis)は10CFU/1ml、ピキア・ファリノサ(P.farinosa)は10CFU/1mlであった。前述の割合で大規模に培養させ、得られた培養物と硫酸カルシウム(三宝化学株式会社製)とを重量比1:1で配合した。該配合物を以下の実施例で「A剤」と称して用いた。
【実施例4】
【0051】
実施例3において、各微生物を、バチルス・メガテリウム(B.megaterium)、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)、ストレプトコッカス・ラクティス(S.lactis)、サッカロミセス・セレビシアエ(S.cerevisiae)、キャンディダ・ユーティリス(C.utilis)及びピキア・ファリノサ(P.farinosa)(自社製の酵母を使用)を用いる以外は、実施例3と同様の方法で培養した。培養物中にはバチルス・メガテリウム(B.megaterium)は10CFU/1ml、ラクトバチルス・プランタラム(L.plantarum)は10CFU/1ml、ストレプトコッカス・ラクティス(S.lactis)は10CFU/1ml、サッカロミセス・セレビシアエ(S.cerevisiae)は10CFU/1ml、キャンディダ・ユーティリス(C.utilis)は10CFU/1ml、ピキア・ファリノサ(P.farinosa)は10CFU/1mlであった。前述の割合で大規模に培養させて得られた培養物と硫酸カルシウム(塩田から排出された純度25%以上の石膏)とを重量比1:1で配合し、混合物を得た。
【実施例5】
【0052】
[A剤対動物病原菌の抗菌実験]
(方法)
ブロイラー雛は孵卵場から輸送後、試験区では搬入時に実施例3により製造されたA剤をヒナに直接振りかけてからA剤を散布してある堆積飼料敷料に雛を放し、0.3%A剤混合の飼料を給与して18日令まで飼育した。対照区は新鮮なチップを敷料とする通常の方法で飼育した。両区とも3日令の雛にS.Enteritidis10、10,10 CFU/mlをそれぞれ25羽づつに経口投与した(CFUは、colony forming unitの略)。(1)両区の雛は11日令にそれぞれ15羽を、18日令にそれぞれ10羽を屠殺して盲腸便を採取した。その盲腸便は10倍段階希釈を行い、その適切な希釈液をDHL培地(極東製薬株社製)とSS培地(極東製薬株社製)に塗抹して37℃で培養した。(2)適切な希釈液と11日令の屠体から取り出した肝臓を、DHL培地とA剤培地に塗抹した。その残渣はセレナイト培地に投入して、それぞれ42℃で1〜2日間の増菌培養を行った後、DHL培地とA剤培地に画線した。培地上に発現した疑わしい集落は性状試験を実施した。また、11日令と18日令の盲腸便ではpHと有機酸の定量分析も行った。本試験は再現性を確認するため2回行った。
【0053】
(結果)
(1)盲腸中のサルモネラについて
(a)A剤給与の試験区においては、S.Enteritidis10CFU/ml感染雛の盲腸便からサルモネラは、11日令と18日令の両方で検出されなかった。またS.Enteritidis10CFU/ml感染雛の盲腸便からサルモネラは11日令の15個体と18日令の10個体のうち、それぞれ3例と2例で10〜10/gの範囲で検出され、増菌培地からは11日令の15個体のうちから1例から分離された。しかし、平均菌数では試験区は対照区の10分の1であった。さらにS.Enteritidis10CFU/ml感染雛の盲腸では11日令と18日令に、それぞれ15個体のうち6例と10個体のうち3例から10〜10/gの範囲で検出され、またそれぞれ1例づつが増菌培地から分離された。(b)一方、A剤給与を行わなかった対照区では、11日令と18日令ともに全ての接種濃度で100%サルモネラが検出された。具体的に表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
(結果)
(2)肝臓中のサルモネラについて
肝臓中のサルモネラ検査は11日令の10屠体について行った。S.Enteritidis10CFU/ml感染雛の場合、試験区ではサルモネラは検出されず、対照区では半数がサルモネラに侵されていた。またS.Enteritidis10CFU/ml感染雛では試験区10%と対照区60%で、S.Enteritidis10CFU/ml感染雛でも、それぞれ50%と80%で検出され、各接種濃度においてサルモネラの検出割合は対照区が試験区を上回っていた。具体的に表2に示す。
【0056】
【表2】

【0057】
[A剤堆肥のキュウリつる割病菌(Fusarium oxy.f.sp.cucumerinum)の静菌作用試験]
(試料の調整)
試料はミキサーで粉砕後、40〜50%の水分になるよう加え、24時間室温で放置した。試料の減菌処理は、試料をガラスシャーレ(9cm)に15g入れ、蓋をした状態で121℃、15分間オートクレーブを用いて行った。
(静菌作用の確認)
(1)病原菌の培養
予めPDA寒天培地(ポテト・デキストロース寒天培地)に平板培養したキュウリつる割病原菌を寒天ごと1cm角に切り取り、PD液体培地(ポテト・デキストロース液体培地)に接種し。30℃、120rpm、5日間振とう培養した。
(2)静菌作用の確認
(i)病原菌胞子の洗浄
液体培養したキュウリつる割病菌を3層ガーゼでろ過し、ろ液を遠心分離(3,600rpm、10分間)して上澄み液を除去する。次に沈殿物に減菌水を加え懸濁し、再度、遠心分離し、上澄み液を除去する。この操作を3度繰り返し、胞子を洗浄する。
(ii)病原菌胞子のスライドガラスへの固定
洗浄した胞子に減菌水を加え、懸濁し、懸濁液を減菌処理した1%素寒天溶液(43℃前後に冷ましたもの)と混合する。
(iii) 静菌作用の確認
試料を15g入れたガラスシャーレ(9cm)に、胞子を固定したスライドガラスを、固定した面が堆肥に接するように押し付け、ふたをして28℃、20時間培養する。培養後スライドガラスを取り出し、水で洗浄して乾燥する。乾燥後、フェノールローズベンガル染色液で胞子を染色し、顕微鏡で胞子の発芽率を測定する。尚、各試料とも減菌処理なし、および減菌処理あり、ともに反復を2とした。
【実施例6】
【0058】
(A剤対土壌病原菌の拮抗実験)
健全な土壌にフザリウム菌を予め接種しておき、本発明のA剤添加各堆肥は、各堆肥のA剤50重量%となるように混合し、土壌に通常の堆肥の半分の量を土壌に散布した。比較例として、堆肥なし土壌を用いた。比較例の堆肥なし土壌区、本発明のA剤添加牛糞堆肥土壌区、本発明のA剤添加豚糞土壌区、比較例の一般豚糞堆肥土壌区において、キュウリの苗を5月の初旬に植え、6〜7月のキュウリ生育量、つる割病の発生状況を調べた。その結果を表3に示す。
【0059】
【表3】

【0060】
表3に示すように、フザリウム菌の接種によって、比較例の堆肥なし土壌区及び一般豚糞堆肥土壌区共に高い比率でキュウリつる割病が発生したのに対し、本発明のA剤牛糞堆肥土壌区及びA剤豚糞堆肥土壌区は、共に顕著な抑制効果を示した。それによって、キュウリ生育量も増加していることがわかった。
【実施例7】
【0061】
[フザリウム菌に対する静菌作用(胞子伸長抑制) ]
(1)試験方法
フザリウム菌を培養したシャーレに一定量のA剤堆肥を添加して(A剤添加豚糞、A剤添加鶏糞)一定時間経過後の菌の胞子の伸長抑制効果(静菌作用)を、対照区とあわせて調査し、フザリウム菌の胞子伸張の様子を撮ったものを図1(写真、A剤添加豚糞)、図2(写真、A剤添加鶏糞)、図3(写真、豚糞の対照区)に示す。
図1〜3で明らかなように、A剤添加堆肥は、いずれもフザリウム菌胞子の伸張を抑制する効果(静菌作用)を有することが判明した。この結果は、実施例の植物を用いた栽培試験の結果を裏付けるものといえる。
【実施例8】
【0062】
[ネコブ病に対するA剤牛糞堆肥の効果]
お互いに隣接する農家のブロッコリー栽培圃場で、A剤添加牛糞堆肥施用の圃場でネコブ病が大幅に抑制され(図4参照)、隣接土壌では大発生したので(図5参照)、これらの土壌、ネコブ病菌を接種した健全土壌、常時ネコブ病発生の汚染土壌を用いて発病株率、発病度を調べた。その結果を表4に示す。
【0063】
【表4】

【0064】
表4に示すように、A剤添加牛糞堆肥を施用した土壌は、ネコブ病の発生を完全に抑制したのに対し、他の区はいずれもネコブ病が全面的に発生し、現地における栽培状況を裏付ける結果となった。
【実施例9】
【0065】
[A剤対エビウィルス病拮抗試験]
ベトナム公平郡の養殖池で、ブラックタイガーを養殖中2004年7月15日にホワイトスポット複合ウィルス感染症を発症、その病症は、頭部が赤く、腫れがあり、胸部には白点があった(図6、写真参照)。2004年7月16日にA剤を2〜3kg/a/回投入したところ、3日後には、エビは元気に回復し、前述の病症は消えた(図7,8、写真参照)。これより、A剤に抗ウィルス効果が認められた。また、2004年8月15日においてもウィルス発症の再発はなく(図9〜11、写真参照)、A剤の抗ウィルス持続効果が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明のA剤添加豚糞におけるフザリウム菌の胞子伸張抑制の様子を示す写真である。
【図2】本発明のA剤添加鶏糞におけるフザリウム菌の胞子伸張抑制の様子を示す写真である。
【図3】対照区(豚糞)のフザリウム菌の胞子伸張の様子を示す写真である。
【図4】本発明のA剤添加牛糞堆肥施用の圃場でネコブ病が抑制された様子を示す写真である。
【図5】対照区のA剤を施用しない本発明圃場の隣接圃場におけるネコブ病多発を示す写真である。
【図6】A剤を養殖池無投入のホワイトスポット複合ウィルス感染症に罹ったブラックタイガーを撮った写真である。
【図7】本発明のA剤を養殖池に投入3日後の手のひらにのせて撮ったブラックタイガーの写真である。
【図8】図7の方向を変えて撮ったブラックタイガーの写真である。
【図9】本発明のA剤投入1月後のブラックタイガーを撮った写真である。
【図10】図9と同日の本発明の多数のブラックタイガーを撮った写真である。
【図11】図9と同日の本発明の養殖池におけるブラックタイガーを撮った写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バチルス(Bacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ストレプトコッカス(Strptococcus)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属及びピキア(Pichia)属に属する微生物を含む微生物由来の多糖類と硫酸カルシウムとを有効成分として含有することを特徴とする抗ウイルス又は抗菌剤。
【請求項2】
微生物として、さらに、耐塩性酵母菌、耐塩性乳酸菌、硝化細菌、硫黄細菌、メタン酸化細菌、硫黄還元細菌、光合成細菌、好塩菌の群から選ばれる1種又は2種以上を用いることを特徴とする請求項1記載の抗ウイルス又は抗菌剤。
【請求項3】
微生物由来の多糖類が、その生菌体及び/又は死菌体を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の抗ウイルス又は抗菌剤。
【請求項4】
さらに、藻類を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のウイルス又は抗菌剤。
【請求項5】
バチルス(Bacillus)属に属する微生物が、バチルス・ズブチルス(Bacillus subtilis)、バチルス・ナットウ(Bacillus natto)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)の群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤。
【請求項6】
ラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する微生物が、ラクトバチルス・アシドフィラス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)の群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤。
【請求項7】
ストレプトコッカス(Streptococcus)属に属する微生物が、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophillus)の群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤。
【請求項8】
サッカロミセス(Saccharomyces)属に属する微生物が、サッカロミセス・セレビシアエ(Saccharomyces cerevisiae)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤。
【請求項9】
キャンディダ(Candida)属に属する酵母が、キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤。
【請求項10】
ピキア属に属する酵母が、ピキア・メンブラナエファシエンス(Pichia membranaefacience)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の抗ウイルス又は抗菌剤。
【請求項11】
請求項1〜10記載のいずれかを含むことを特徴とする家禽・家畜用感染防除剤。
【請求項12】
請求項1〜10記載のいずれかを含むことを特徴とするペット用感染防除剤。
【請求項13】
請求項1〜10記載のいずれかを含むことを特徴とする飼料。
【請求項14】
請求項1〜10記載のいずれかを含むことを特徴とする土壌病害防除剤。
【請求項15】
請求項1〜10記載のいずれかを含むことを特徴とする肥料。
【請求項16】
請求項1〜10記載のいずれかを含むことを特徴とする植物病害防除剤又は植物生長調整剤。
【請求項17】
請求項1〜10記載のいずれかを含むことを特徴とする魚介類の感染防除剤。
【請求項18】
請求項1〜10記載のいずれかを含むことを特徴とする水産養殖用餌。
【請求項19】
請求項1〜10記載のいずれかを含むことを特徴とするヒト用感染防除剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−203160(P2009−203160A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145984(P2006−145984)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(505287335)
【Fターム(参考)】