説明

抗ウイルスヌクレオシド

【課題】C型肝炎ウイルスNS5bポリメラーゼ阻害剤の提供。
【解決手段】式Iの化合物。


式中、RはC2−5非分枝状又は分枝状アルキル、C2−5非分枝状又は分枝状アルケニル、C2−5非分枝状又は分枝状アルキニル、C2−5低級ハロアルキル、C3−6シクロアルキル、及びC2−4アルコキシからなる群から選択される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明はC型肝炎ウイルス(HCV)RNA依存RNAウイルスポリメラーゼの阻害剤のプロドラッグであるアシル化ヌクレオシドを提供する。これらの化合物は経口投与されると直ぐに胃腸管から吸収され、効率よく血中で元のヌクレオシドに戻る。これらのプロドラッグはRNA依存RNAウイルス複製の阻害剤であり、HCV NS5Bポリメラーゼの阻害剤として、HCV複製の阻害剤として、及び哺乳類のC型肝炎感染の治療に有用である。
本発明は、HCV複製の阻害剤であるヌクレオシドプロドラッグに関する。特に、本発明は、ヌクレオシドが経口投与された場合に、改良された薬物吸収を提供するアシル化ピリミジンヌクレオシド化合物の使用に関する。
C型肝炎ウイルスは重大な健康問題であり、世界中で慢性肝疾患の主要原因である(Boyer, N. 等、J. Hepatol. 2000 32:98-112)。HCVに感染した患者は、肝硬変及び続く肝細胞癌を発現する危険な状態にあり、それ故、HCVは肝臓移植の主要な適応症である。世界保健機構によれば、世界中に2億人以上の感染者がおり、毎年少なくとも3〜4百万人が感染している。一度感染すると、約20%の人々はウイルスを消滅させるが、残りはHCVを彼等の肝臓の残部に有している。慢性的に感染した者の10から20パーセントは、肝臓を破壊する肝硬変又は癌を最終的に発現する。ウイルス性疾患は汚染された血液及び血液製剤、汚染された針によって非経口的に、又は性的に、感染した母親又は病原体保有者である母親から彼女らの子供に垂直的に感染する。HCV感染の現行の治療は、組換えインターフェロン-α単独による、又はヌクレオシド類似体のリバビリンと組み合わせた免疫治療に限られており、抵抗性が急速に発達するので臨床効果は限られている。慢性HCV感染と効果的に戦える改良された治療薬は緊急の課題である。
【0002】
HCVは、フラビウイルス属、ペスチウイルス属及びC型肝炎を含むヘパシウイルス属を含むフラビウイルス科のウイルスの一員に分類されている(Rice, C. M., Flaviviridae: The viruses and their replication, Fields Virology編集、Fields, B. N., Knipe, D. M., 及びHowley, P. M., Lippincott-Raven Publishers, Philadelphia, Pa., 第30章、931-959頁、1996年)。HCVは約9.4kbのプラス鎖の一本鎖RNAゲノムを含むエンベロープウイルスである。
ウイルスのゲノムは、5'-非翻訳領域(UTR)、約3011アミノ酸のポリタンパク質前駆体をコードする長いオープンリーディングフレーム(ORF)、及び短い3'UTRからなる。5'UTRはHCVゲノムの最も高度に保存された部分であり、ポリタンパク質の翻訳の開始と調節に重要である。
HCVの遺伝子解析により、DNA配列の相違が>30%である6つの主要な遺伝子型を同定した。各遺伝子型は、ヌクレオチド配列が20〜25%の相違を示す、より近縁な亜型の系統を含む(Simmonds, P. 2004 J. Gen. Virol. 85:3173-88)。30を超える亜型が分類されている。米国では、感染者の約70%が1a型と1b型感染を有する。1b型はアジアで最も蔓延している(X. Forns 及びJ. Bukh, Clinics in Liver Disease 1999 3:693-716; J. Bukh 等, Semin. Liv. Dis. 1995 15:41-63)。残念ながら、1型感染は2型又は3型の遺伝子型のどちらよりも治療に抵抗性がある (N. N. Zein, Clin. Microbiol. Rev., 2000 13:223-235)。
【0003】
ペスチウイルスとヘパシウイルスのORFの非構造タンパク質部位の遺伝的構成とポリタンパク質プロセシングは非常に似ている。プラス鎖のRNAウイルスはウイルス複製に必要である全てのウイルス性タンパク質をコードする単一の大きなORFを有する。これらのタンパク質は、成熟したウイルス性タンパク質を生じるために、細胞性とウイルスにコードされた両方のタンパク質分解酵素によって、翻訳と同時に及び翻訳後にプロセスされるポリタンパク質として発現する。ウイルスのゲノムRNAの複製に関与するウイルス性タンパク質は、カルボキシ末端の近似内に位置する。ORFの3分の2は、非構造(NS)タンパク質と呼ばれる。ペスチウイルスとヘパシウイルスの両方の場合で、成熟した非構造(NS)タンパク質は、非構造タンパク質コーディング領域のアミノ末端から、ORFのカルボキシ末端の順番で、p7、NS2、NS3、NS4A、NS4B、NS5A及びNS5Bからなる。
ペスチウイルスとヘパシウイルスのNSタンパク質は特異的なタンパク質機能に特有の配列ドメインを共有する。例えば、両方のグループのウイルスのNS3タンパク質は、セリンプロテアーゼとヘリカーゼに特有のアミノ酸配列モテーフを有する(Gorbalenya等、Nature 1988 333:22; Bazan及び Fletterick、Virology 1989 171:637-639; Gorbalenya等、Nucleic Acid Res. 1989 17.3889-3897)。同様に、ペスチウイルスとヘパシウイルスのNS5Bタンパク質はRNA特異的RNAポリメラーゼに特有のモチーフを有する(Koonin, E. V.及びDolja, V. V. Crit. Rev. Biochem. Molec. Biol. 1993 28:375-430)。
【0004】
ウイルスの生活環におけるペスチウイルスとヘパシウイルスのNSタンパク質の実際の役割と機能は、直接的に相似である。両方の場合において、NS3セリンプロテアーゼはORFにおいてその位置の下流のポリタンパク質前駆体の全てのタンパク質分解性プロセッシングに関与する(Wiskerchen及びCollett、Virology 1991 184:341-350; Bartenschlager等、J. Virol. 1993 67:3835-3844; Eckart等、Biochem. Biophys. Res. Comm. 1993 192:399-406; Grakoui等、J. Virol. 1993 67:2832-2843; Grakoui等、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1993 90:10583-10587; Ilijikata等、J. Virol. 1993 67:4665-4675; Tome等、J. Virol. 1993 67:4017-4026)。両方の場合において、NS4Aタンパク質はNS3セリンプロテアーゼの補因子として働く(Bartenschlager等、J. Virol. 1994 68:5045-5055; Failla等、J. Virol. 1994 68: 3753-3760; Xu等、J Virol. 1997 71:53 12-5322)。また、両ウイルスのNS3タンパク質はヘリカーゼとして機能する(Kim等、Biochem. Biophys. Res. Comm. 1995 215: 160-166; Jin and Peterson Arch. Biochem. Biophys. 1995, 323:47-53; Warrener及びCollett J. Virol. 1995 69:1720-1726)。最後に、ペスチウイルスとヘパシウイルスのNS5Bタンパク質は推定RNA特異的RNAポリメラーゼ活性を有する(Behrens等、EMBO 1996 15:12-22; Lechmann等、J. Virol. 1997 71:8416-8428; Yua等、Biochem. Biophys. Res. Comm. 1997 232:231-235; Hagedorn, PCT WO 97/12033; Zhong等、J. Virol. 1998 72:9365-9369)。
【0005】
現在、HCV感染の治療に有用な認可された治療の数は限られている。新規及び既存のHCV治療の治療学的アプローチとHCV NS5Bポリメラーゼの阻害は以下に総説されている:R. G. Gish, Sem. Liver. Dis., 1999 19:5; Di Besceglie, A. M. and Bacon, B. R., Scientific American, October: 1999 80-85; G. Lake-Bakaar, Current and Future Therapy for Chronic Hepatitis C Virus Liver Disease, Curr. Drug Targ. Infect Dis. 2003 3(3):247-253; P. Hoffmann等, Recent patents on experimental therapy for hepatitis C virus infection (1999-2002), Exp. Opin. Ther. Patents 2003 13(11):1707-1723; F. F. Poordad等、Developments in Hepatitis C therapy during 2000-2002, Exp. Opin. Emerging Drugs 2003 8(1):9-25; M. P. Walker等, Promising Candidates for the treatment of chronic hepatitis C, Exp. Opin. Investig. Drugs 2003 12(8):1269-1280; S.-L. Tan等, Hepatitis C Therapeutics: Current Status and Emerging Strategies, Nature Rev. Drug Discov. 2002 1:867-881; R. De Francesco等、Approaching a new era for hepatitis C virus therapy: inhibitors of the NS3-4A serine protease and the NS5B RNA-dependent RNA polymerase, Antiviral Res. 2003 58:1-16; Q. M. Wang等、Hepatitis C virus encoded proteins: targets for antiviral therapy, Drugs of the Future 2000 25(9):933-8-944; J. A. Wu 及びZ. Hong, Targeting NS5B-Dependent RNA Polymerase for Anti-HCV Chemotherapy Cur. Drug Targ.-Inf. Dis .2003 3:207-219。
上記総説は、開発工程の様々な段階における化合物を挙げている。同じ又は異なる標的に向かう2つ又は3つの薬剤の併用療法は、ウイルスの抵抗性系統の発生を回避又は遅延させるための標準的治療になっており、上の総説に開示されている化合物は本発明の化合物との併用療法に使用されてもよく、これらの総説は本明細書にそのまま援用される。

【0006】
リバビリン(1a; 1-((2R,3R,4S,5R)-3,4-ジヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-テトラヒドロ-フラン2-イル)-1H-[1,2,4]トリアゾール-3-カルボン酸アミド; ピラゾレ(VIRAZOLE)(登録商標))は、合成の非インターフェロン誘導性、広域性抗ウイルス性ヌクレオシド類似体である。リバビリンは、フラビウイルス科を含む複数のDNA及びRNAウイルスに対して生体内で活性を有する(Gary L. Davis, Gastroenterology 2000 118:S104-S114)。単独治療では、リバビリンは患者の40%において、血清アミノ転移酵素レベルを正常値に下げるが、HCV-RNAの血清レベルを下げない。また、リバビリンは重度の毒性を示し、貧血を誘発することが知られている。リバビリンはイノシン1リン酸脱水素酵素の阻害剤である。リバビリンはHCVに対する単独治療では認可されていないが、該化合物はインターフェロンα−2a及びインターフェロンα−2bとの併用療法では認可されている。ビラミジン1bは肝細胞で1aに変換されるプロドラッグである。
【0007】
インターフェロン類(IFNs)は10年近くの間、慢性肝炎の治療に使用されてきた。IFNsはウイルス感染に応答した免疫細胞によって産生される糖タンパク質である。インターフェロンには2つの別の型が認知されている:1型は複数のインターフェロンアルファ及び1つのインターフェロンβを含み、2型はインターフェロンγを含む。1型インターフェロンは主に感染した細胞で産生され、周辺の細胞を新規の感染から保護する。IFNsはHCVを含む多くのウイルスのウイルス複製を阻害し、C型肝炎感染の単独治療として使用された場合には、IFNは血清HCV-RNAを検出不可能なレベルまで抑制する。加えて、IFNは血清アミノ転移酵素レベルを正常化する。残念なことに、IFNの効き目は一時的である。治療の中止は結果として70%の再発率となり、わずか10−15%が正常な血清アラニン転移酵素レベルに対する保持されたウイルス反応を示す(L.-B. Davis, 上掲)。
【0008】
早期IFN治療の1つの制限は、血液からのタンパク質の迅速なクリアランスである。ポリエチレングリコール(PEG)によるIFNの化学的誘導体化は、実質的に改良された薬物動態学的特性を有するタンパク質を生じる。PEGASYS(登録商標)はインターフェロンα-2aと40kD分岐状モノエトキシPEGのコンジュゲートであり、及びPEG-INTORON(登録商標)はインターフェロンα-2bと12kDモノエトキシPEGのコンジュゲートである(B. A. Luxon等, Clin. Therap. 2002 24(9):13631383; A. Kozlowski と J. M. Harris, J. Control. Release, 2001 72:217-224)。
【0009】
インターフェロンα-2a及びインターフェロンα-2bはHCV治療のための単独治療として現在認可されている。ROFERON-A(登録商標) (ロッシュ)はインターフェロンα-2aの組換え型の製剤である。PEGASYS(登録商標)はインターフェロンα-2aのペグ化(すなわち、ポリエチレングリコール修飾型)製剤である。INTRON−A(登録商標)(シェリング社)のインターフェロンα−2bの組換え型の製剤であり、PEG−INTRON(登録商標)(シェリング社)はインターフェロンα-2bのペグ化製剤である。
【0010】
インターフェロンαの他の型に加えてインターフェロンβ、γ、τ、ωが現在HCV治療の臨床開発中である。例えば、インターミューン社のINFERGEN(登録商標)(インターフェロンアルファコン-1))、Viragen社のOMNIFERON(登録商標)(天然型インターフェロン)、Human Genome Sciences社のALBUFERON(登録商標)、Ares-Serono社のREBIF(登録商標) (インターフェロンβ-1a)、バイオメディシン社のオメガインターフェロン、Amarillo Biosciences社の経口インターフェロン、及びインターミューン社のインターフェロンγ、インターフェロンτ及びインターフェロンγ-1bが開発中である。
【0011】
HCVのリバビリンとインターフェロン-αの併用療法は現在の最適な療法を代表する。リバビリンとPEG-IFN(下記)の併用は患者の54−56%においてウイルス反応を維持する結果となる。SVRは2型及び3型のHCVの80%にアプローチする(Walker,上掲)。残念ながら、併用は臨床上の問題となる副作用をも生じる。うつ病、インフルエンザ様の症状及び皮膚反応はIFN-αの皮下注射と関連し、溶血性貧血はリバビリンの持続的治療に関係する。
【0012】
C型肝炎ウイルスの治療のための前臨床又は臨床開発における他の高分子化合物は現在、以下のものを含む:シェリング・プラウ社のインターロイキン-10、Intemeuron社のIP-SO1、Vertex社のMerimebodib (VX-497) 、RPI社のHEPTAZYME(登録商標)、Idun Pharma.社のIDN-6556、XTL社のXTL-002、シロン社のHCV/MFS9、NABI社のCIVACIR(登録商標)(C型肝炎免疫グロブリン)、SciClone社のZADAXIN(登録商標) (チモシンα-l)、SciClone社のチモシンplusペグ化インターフェロン、CEPLENE(登録商標);Innogenetics社のE2に対する治療ワクチン、Intercell社の治療ワクチン、Epimmune/Genencor社による治療ワクチン、メリックス社の治療ワクチン、Tripep社による治療ワクチンであるChron-VacC。
【0013】
他の高分子アプローチはHCV RNAを標的にしたリボザイムを含む。リボザイムは、RNAの配列特異的切断を触媒するエンドヌクレアーゼ活性を有する、天然に生じる分子である。代替アプローチはRNAに結合し、RNaseH介在型切断を刺激するアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用である。
【0014】
抗HCV治療として、薬剤開発のための数多くの潜在的分子標的が同定されており、限定するものではないが、NS2-NS3自己プロテアーゼ、N3プロテアーゼ、N3ヘリカーゼ及びNS5Bポリメラーゼを含む。RNA依存性RNAポリメラーゼは、一本鎖のプラス鎖RNAゲノムの複製に絶対的に不可欠であり、この酵素は医薬化学者の顕著で重要な関心を引いている。
【0015】
NS5Bポリメラーゼのヌクレオシド阻害剤は連鎖停止を生じる非天然基質としても、ポリメラーゼに結合するヌクレオチドと競合する拮抗阻害剤としても働きうる。連鎖停止として機能するには、ヌクレオシド類似体は細胞に取り込まれ、生体内で三リン酸に変換されて、ポリメラーゼヌクレオシド結合部位を競合する必要がある。この三リン酸への変換は、細胞性キナーゼによって通常介在され、潜在的ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤に付加的な構造的要件を与える。残念ながら、このためHCV複製の阻害剤としてのヌクレオシドの直接的評価はインサイツのリン酸化が可能な細胞ベースのアッセイに限定される。
【0016】

2001年11月29日公開のWO01/90121において、J.-P. Sommadossi及びP. Lacollaは式2及び3の1'-アルキル-及び2'-アルキルヌクレオシドの抗HCVポリメラーゼ活性を開示し、例示している。2001年12月6日公開のWO01/92282において、J.-P. Sommadossi及びP. Lacollaは式2及び3の1'-アルキル-及び2'-アルキルヌクレオシドによるフラビウイルス属及びペスチウイルス属のウイルスの治療を開示し、例示する。2003年4月3日公開のWO03/026675において、G. Gosselin はフラビウイルス属及びペスチウイルス属のウイルスの治療のための4'-アルキルヌクレオシド4を開示する。
2004年1月8日公開のWO2004003000において、J.-P. Sommadossi等は、1'-、2'-、3'-及び4'- 置換β-D及びβ-Lヌクレオシドの2'-及び3'-プロドラッグを開示する。2004年1月8日公開のWO2004/002422において、フラビウイルス科感染の治療用の2'-C-メチル-3'-O-バリンエステルリボフラノシルシチジンを開示する。アイデニクス社はシチジン類似体2(B=シチジン)のバリンエステルであると考えられる関連化合物NM283に関する臨床試験を報告した。2004年1月8日公開WO2004/002999において、J.-P. Sommadossi等は、HCV感染を含むフラビウイルス感染治療のための1'、2'、3'、又は4'分枝型ヌクレオシドの2'-及び3'-プロドラッグのシリーズを開示する。
2004年1月3日公開WO2004/046331において、J.-P. Sommadossi等は2'-分枝状ヌクレオシド及びフラビウイルス科の変異体を開示する。2003年4月3日公開WO03/026589において、G. Gosselin等は4'-修飾型ヌクレオシドを使用したC型肝炎ウイルスの治療の方法を開示する。2005年2月3日公開のWO2005009418において、R. Storer等はHCVを含むフラビウイルス科によって引き起こされる疾患の治療のためのプリンヌクレオシド類似体を開示する。
【0017】
他の特許出願はC型肝炎感染治療の為の特定のヌクレオシド類似体の使用を開示する。2001年5月10日公開WO01/32153において、R.Storerはウイルス性疾患を治療するためのヌクレオシド誘導体を開示する。2001年8月23日公開WO01/60315において、H. Ismaili等はヌクレオシド化合物によるフラビウイルス感染の治療と予防の方法を開示する。2002年3月7日公開のWO02/18404において、R. Devos等はHCVウイルス治療のための4'-置換ヌクレオチドを開示する。2001年10月25日公開のWO01/79246において、K. A. Watanabeはウイルス性疾患の治療のための2'-又は3'-ヒドロキシメチルヌクレオシド化合物を開示する。2002年4月25日公開のWO02/32920および2002年6月20日公開のWO02/48165において、L. Stuyver等はウイルス性疾患の治療のためのヌクレオシド化合物を開示する。
【0018】

2003年12月24日公開WO03/105770において、B. Bhat等はHCV感染の治療に有用な炭素環ヌクレオシド誘導体のシリーズを開示する。2003年1月22日公開のWO2004/005712において、B. Bhat等はRNA依存性RNAウイルスポリメラーゼを阻害するヌクレオシド化合物を開示する。この公報で開示されたヌクレオシド類は主として2'-メチル-2'-ヒドロキシ置換ヌクレオシド類である。2002年7月25日公開WO2002/057425において、S. S. Carroll等はRNA依存性ウイルスポリメラーゼを阻害するヌクレオシド誘導体とHCV感染の治療方法を開示する。2002年7月25日公開WO02/057287において、S. S. Carroll等は2α-メチル及び2β-メチルリボース誘導体であって、該基は任意に置換された7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジンラジカル6である。同じ出願は3β-メチルヌクレオシドの一例を開示する。S.S. Carroll等(J. Biol. Chem. 2003 278(14):11979-11984)は2'-O-メチルシチジン(6a)によるHCVポリメラーゼの阻害を開示する。2004年1月29日公開のWO2004/009020において、D. B. Olsen等はRNA依存性RNAウイルスポリメラーゼの阻害剤としてチオヌクレオシド誘導体のシリーズを開示する。
【0019】
PCT公開番号WO99/43691(エモリー大学、発明の名称「2'-フルオロヌクレオシド」)はHCVを治療するための特定の2'-フルオロヌクレオシドの使用を開示する。米国特許番号6,348,587(エモリー大学、発明の名称「2'-フルオロヌクレオシド」)は、B型肝炎、HCV、HIV及び異常細胞増殖の治療に有用な2'-フルオロヌクレオシド族を開示する。2'フルオロ置換体の両配置を開示する。
【0020】
Eldrup等(第16回国際抗ウイルス研究学会(2003年4月27日、サバンナ、ジョージア州、口頭セッションV、C型肝炎ウイルス、フラビウイルス科)はHCVの抑制のための2'-修飾型ヌクレオシドの構造活性相関関係を記載する。Bhat等(第16回国際抗ウイルス研究学会(第16回国際抗ウイルス研究学会、A75頁、2003年4月27日、サバンナ、ジョージア州、口頭セッションV、C型肝炎ウイルス、フラビウイルス科)はHCV RNA複製の潜在的阻害剤としてのヌクレオシド類似体の合成と薬物動態特性を記載する。著者は2'-修飾型ヌクレオシドが細胞ベースのレプリコンアッセイにおいて潜在的阻害活性を示すことを報告する。
Olsen等(第16回国際抗ウイルス研究学会(第16回国際抗ウイルス研究学会、A76頁、2003年4月27日、サバンナ、ジョージア州、口頭セッションV、C型肝炎ウイルス、フラビウイルス科)は、また、HCV RNA複製における2'-修飾型ヌクレオシドの効果を記載する。
HIV逆転写の非ヌクレオシドアロステリック阻害剤は単独で、ヌクレオシド阻害剤と組合わせて、プロテアーゼ阻害剤と組合わせて、効果的療法であると立証されている。非ヌクレオシドHCV NS5B阻害剤の複数のクラスが記載されており、ベンゾイミダゾール類(H. Hashimoto等、WO 01/47833, H. Hashimoto等、WO 03/000254, P. L. Beaulieu等、WO 03/020240 A2; P. L. Beaulieu等、US 6,448,281 B1; P. L. Beaulieu等、WO 03/007945 A1); インドール類 (P. L. Beaulieu等、WO 03/0010141 A2); ベンゾチアジアジン類、例えば7, (D. Dhanak等、WO 01/85172 A1; D. Dhanak等、WO 03/037262 A2; K. J. Duffy等、WO03/099801 A1, D.Chai 等、WO 2004052312, D.Chai等、WO2004052313, D.Chai等、WO02/098424, J. K. Pratt 等、WO 2004/041818 A1; J. K. Pratt等、WO 2004/087577 A1)、チオフェン類、例えば8, (C. K. Chan等、WO 02/100851);

ベンゾチオフェン類(D. C. Young及びT. R. Bailey WO 00/18231); β-ケトピルベート (S. Attamura等、US 6,492,423 B1, A. Attamura等、WO 00/06529); ピリミジン(C. Gardelli等、WO 02/06246 A1); ピリミジンジオン類 (T. R. Bailey及びD. C. Young WO 00/13708); トリアジン類(K.-H. Chung等、WO 02/079187 A1); ローダニン誘導体 (T. R. Bailey及びD. C. Young WO 00/10573, J. C. Jean等、WO 01/77091 A2); 2,4-ジオキソピラン類 (R. A. Love等、EP 256628 A2); フェニールアラニン誘導体 (M. Wang等、J. Biol. Chem. 2003 278:2489-2495)を含む様々な開発段階にある。
【0021】
NS3プロテアーゼは新規抗HCV療法の発見のための重要な標的として現れた。1998年5月28日公開のWO98/22496において、M. R. Attwood等はプロテアーゼの作用機序に根ざした活性部位阻害剤を開示している(M.R. Attwood等, Antiviral Chemistry and Chemotherapy 1999 10:259-273; M.R. Attwood 等, Preparation and use of amino acid derivatives as anti-viral agents, ドイツ特許公開DE 19914474)。1998年4月30日公開のWO98/17679において、R. D. Tung等はNS3プロテアーゼにおける作用機序に根ざしたペプチド阻害剤を開示した。
1999年2月18日公開のWO99/07734及び1999年8月9日公開のWO00/09543において、 M Llinas-Brunet等はプロテアーゼのペプチド阻害剤を開示する。2000年10月12日公開のWO00/59929において、Y. S. Tsantrizos等はHCV NS3プロテアーゼの強力な阻害剤である大環状トリペプチド類を開示する。ベーリンガーインゲルハイムによる関連特許の一系列は、関連するプロテアーゼ阻害剤を開示し、トリペプチド誘導体BILN2061の同定へ導く (M. Llinas-Brunet等、Biorg. Med. Chem. Lett. 2000 10(20):2267-70; J. Med Chem.2004 47(26):6584-94; J. Med. Chem. 2004 47(7):1605-1608; Angew. Chem. Int. Ed. Eng. 2003 42(12):1356-60)。
【0022】
ブリストルマイヤーズスクイブ社により同定された他のトリペプチド阻害剤が、とりわけ、2003年12月4日公開のWO03/099274、2004年4月22日公開のWO2004/032827、2003年7月3日公開のWO03/053349、2005年5月26日公開のWO2005/046712、2005年6月9日公開WO2005/051410において開示されている。2004年8月26日公開のWO2004/072234及び2004年11月4日公開WO2004/093798において、更なるトリペプチドプロテアーゼ阻害剤がエナンタ製薬によって開示されている。2005年4月28日公開のWO2005/037214において、L. M. Blatt等はHCV NS3プロテアーゼを阻害する、更に他のトリペプチド誘導体を開示する。2005年4月7日公開のWO2005/030796において、S. Venkatraman等は大環状阻害剤を開示する。2005年6月30日公開のWO2005/058821において、F. Velazquez等はHCV NS3/NS4aセリンプロテアーゼの阻害剤を開示する。2002年6月20日公開のWO02/48172において、Z. ZhuはNS3プロテアーゼの阻害剤としてジアリールペプチドを開示する。共に2002年1月31日公開のWO02/08187及びWO02/08256において、A. Saksena等は、HCV NS3プロテアーゼのペプチド阻害剤を開示する。2002年1月31日公開のWO02/08251において、M. Lim-Wilby等はNS3プロテアーゼのペプチド阻害剤を開示する。1999年12月21日公開のUS6,004,933において、L. W. Spruce等はHCVエンドペプチダーゼを含むシステインプロテアーゼを阻害する複素環ペプチド誘導体を開示する。
【0023】
RD3-4082及びRD3-4078(前者はアミドが14炭素鎖で置換され、後者はパラ-フェノキシフェニル基を処理する)を含む、2,4,6-トリヒドロキシ-3-ニトロ-ベンズアミド誘導体のような非基質性NS3プロテアーゼ阻害剤もまた研究されている。
SCH68631、フェナンスレンキノン、はHCVプロテアーゼ阻害剤である(Chu M. 等、Tetrahedron Lett. 1996 37:7229-7232)。同じ著者による別の例では、菌類のペニシリウム・グリセオフルバムから単離されたSCH351633がプロテアーゼ阻害剤として同定された(Chu M.等、Bioorg. Med. Chem. Lett. 1999 9:1949-1952)。HCV NS3プロテアーゼ酵素に対するナノモル活性はマクロ分子エグリンcに基づいた選択的阻害剤の設計によって達成された。ヒルから単離されたエグリンcは、S. griseusプロテアーゼA及びB、α-キモトリプシン、キマーゼ及びサブチリジンのような複数のセリンプロテアーゼの強力な阻害剤である(Qasim M. A等, Biochemistry 1997 36:1598-1607)。
【0024】
NS3/4A融合タンパク質とNS5A/5B基質による逆相HPCLアッセイにおいて適切な阻害作用を示すチアゾリジン誘導体(Sudo K.等、Antiviral Research 1996 32:9-18)、特にRD-1-6250化合物は、長いアルキル鎖RD4 6205及びRD4 6193によって置換された融合シンナモイル部分を有する。チアゾリジン及びベンズアニリドはN. Kakiuchi等(FEBS Let. 1998 421:217-220)及び N. Takeshita等(Anal. Biochem. 1997 247:242-246)によって同定された。
【0025】
HCVのNS3セリンプロテアーゼ阻害剤としてのイミダゾリジノンは、2002年1月31日公開のシェリング社のWO02/08198及び2002年6月20日公開のブリストル-マイヤーズスクイブ社のWO02/48157において公開されている。2002年6月20日公開のWO02/48116において、P. Glunz等はNSプロテアーゼのピリミジノン阻害剤を開示する。
【0026】
抗HCVのための他の酵素性の標的はHCV IRES部位(内部リボソーム侵入部位)とHCVヘリカーゼを含む。IRES阻害剤はイムソル、ライゲル製薬(R803)によって、及びアナディス社(ANA245及びANA246)によって報告されている。Vertex社はHCVヘリカーゼ阻害剤を開示する。
【0027】
耐性突然変異系統を抑制できる併用療法は、抗ウイルス性化学療法の十分に確立されたアプローチになっている。本願明細書で開示するヌクレオシド阻害剤は他のヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、非ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤及びHCVプロテアーゼ阻害剤と組合わせることができる。HCVドラッグの他のクラスとしては、ウイルス侵入阻害剤、ヘリカーゼ阻害剤、IRES阻害剤、リボザイム及び抗ウイルスオリゴヌクレオチドが現れ、開発されており、またそれらは併用療法のための優れた候補となる。インターフェロン誘導体はすでに成功裏にリバビリンと組合わせられており、インターフェロン及び化学修飾型インターフェロンは本願明細書で開示されたヌクレオシドとの組合わせに有用である。
【0028】
ヌクレオシド誘導体は多くの場合、強力な抗ウイルス(例えば、HIV、HCV、単純ヘルペス、CMV)剤及び抗癌化学療法剤である。残念なことに、それらの実際的な有用性は2つの要因によって限定されることが多い。第一に、劣った薬理学的特性は消化管からのヌクレオシド吸収とヌクレオシド誘導体の細胞間濃度をしばしば制限し、第二に最適以下の物理的特性は有効成分の供給を促進するために用いられうる製剤の選択肢を限定する。
【0029】
Albertは本来備わっている生物学的活性を欠いているが、活性な医薬成分に代謝的に変換が可能である化合物を記載するためにプロドラッグなる用語を取り入れた(A. Albert, Selective Toxicity, Chapman and Hall, London, 1951)。プロドラッグは最近再検討されている(P. Ettmayer等, J. Med Chem. 2004 47(10):2393-2404; K. Beaumont等, Curr. Drug Metab. 2003 4:461-485; H. Bundgaard, Design of Prodrugs: Bioreversible derivatives for various functional groups and chemical entities in Design of Prodrugs, H. Bundgaard (ed) Elsevier Science Publishers, Amersterdam 1985; G. M. Pauletti等、Adv. Drug Deliv. Rev. 1997 27:235-256;R. J. Jones及びN. Bischofberger, Antiviral Res. 1995 27; 1-15 and C. R. Wagner等, Med. Res. Rev. 2000 20:417-45)。代謝的変換が特異的酵素、多くの場合加水分解酵素によって触媒されうる一方で、活性化合物は非特異的化学的プロセスによっても再生されうる。
【0030】
製薬的に許容可能なプロドラッグは、本発明の化合物を形成するために受容者で代謝された、例えば加水分解された又は酸化された化合物をいう。生物変換は毒性学的傾向を有する断片の形成を避けるべきである。プロドラッグの典型例には活性化合物の機能部位に結合する生物学的に変化しやすい保護基を有する化合物を含む。糖部位において水酸基のアルキル化、アシル化又は他の親油性修飾はプロヌクレオチドの設計に使用される。これらのプロヌクレオチドは活性化合物を生成するために、生体内で加水分解又は脱アルキル化されうる。
【0031】
経口投与による生体内利用性を制限する要因は胃腸管からの吸収と消化管壁と肝臓による第一通過排出である。胃腸管からの経細胞吸収の最適化はゼロより大きいD(7.4)を要求する。しかしながら、分配係数の最適化は成功を保証するものではない。プロドラッグは腸細胞における能動排出輸送体を避けなければならないであろう。腸細胞における細胞内代謝は腸管内腔へ後方側に排出ポンプによる代謝産物の能動輸送又は受動輸送に結果としてなりうる。また、プロドラッグは標的細胞又は受容体に達する前の血液中の不必要な生物変換に抵抗しなければならない。
【0032】
推定プロドラッグは、分子に存在する化学官能性に基づいて合理的に設計しうる一方で、活性化合物の化学的修飾は親化合物には存在しない望ましくない物理学的、化学的、生物学的特性を示しうる完全に新しい分子実態を産生する。代謝産物の同定のための規制条件は、複数の経路が代謝産物の複数性を導くならば、問題となるかもしれない。従って、プロドラッグの同定は未確定で困難な課題を残している。さらに、潜在的プロドラッグの薬物動態学的評価は困難でコスト高な試みとなる。動物モデルによる薬物動態学的な結果をヒトに外挿することは困難である。
【0033】
本発明の目的はC型肝炎ウイルスに感染した宿主の治療用の新規化合物、方法及び組成物の提供である。
本発明は4-アミノ-1-((2R,3R,4R,5R)-3-フルオロ-4-ヒドロキシ-5-ヒドロキシメチル-3-メチル-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-1H-ピリミジン-2-ワン ((2R)2'-デオキシ-2-メチル-2-フルオロ-シチジンとも呼ばれる)のジアシル誘導体を対象とする。本発明の化合物は式Iに記載の構造を有する。

[上式中、RはC2-5非分枝状又は分枝状アルキル、C2-5非分枝状又は分枝状アルケニル、C2-5非分枝状又は分枝状アルキニル、C2-5低級ハロアルキル、C3-6シクロアルキル、及びC2-4アルコキシからなる群から選択される]
のその化合物、水和物、溶媒和物及び酸付加塩。
【0034】
本発明の化合物はHCVによって介在される疾患の治療に有用である。
更に本発明は、本発明の化合物と該化合物を含む医薬組成物によるHCVの治療方法を含む。
本発明の一実施態様には、Rが上に記載の通りである式Iに記載の化合物が提供される。
本発明の別の実施態様には、Rがエチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルである式Iに記載の化合物が提供される。
本発明のさらに別の実施態様には、Rがエチル又はイソプロピルである式Iに記載の化合物が提供される。
本発明のまた別の実施態様には、Rがイソプロピルである式Iに記載の化合物の塩酸塩又は硫酸塩が提供されている。
本発明の更なる実施態様には、Rがイソプロピルである式Iに記載の化合物の塩酸塩が提供されている。
本発明のまた別の実施態様には、Rがエトキシ、n-プロポキシ又はイソプロポキシである式Iに記載の化合物が提供されている。
本発明のまた更なる実施態様には、治療、特にHCVウイルスによって介在される疾患の治療に使用する式Iに記載の化合物が提供されている。
本発明のまた別の実施態様には、HCVウイルスによって介在される疾患の治療のための医薬の調製における式Iに記載の化合物の使用が提供されている。
【0035】
式Iに記載の化合物は、特に、必要としている患者に対し、治療的有効投与量で、好ましくは0.1から10g/日の間の用量で、より好ましくは0.5から7g/日の間の用量で、さらにより好ましくは1.0から6.0g/日の間の用量で投与される医薬の調製のために使用されうる。
式Iに記載の化合物は、インターフェロン、化学的に誘導化されたインターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子、コロニー刺激因子のような少なくとも一の免疫系モジュレーターの治療的有効投与量、及び/又はHCVプロテアーゼ阻害剤、別のヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、非ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、HCVヘリカーゼ阻害剤、HCVプライマーゼ阻害剤又はHCV融合阻害剤のようなHCVの複製を阻害する少なくとも一の抗ウイルス剤を更に含んでもよい医薬の調製に更に使用されうる。
本発明の更に別の実施態様では、上記の式Iに記載の化合物の治療的有効投与量を必要とする患者に投与することを含む、HCVウイルスによって介在される疾患の治療方法が提供されている。
本発明の更に別の実施態様では、上記の式Iに記載の化合物の0.1から10g/日の用量を必要とする患者に投与することを含む、HCVウイルスによって介在される疾患の治療方法が提供されている。
また別の実施態様では用量は0.5から7g/日の間あり、さらなる実施態様では1.0から6.0g/日の間である。
【0036】
本発明の別の実施態様では、上記の式Iに記載の化合物の治療的有効投与量及び免疫系モジュレーターの治療的有効投与量及び/又はHCVの複製を阻害する少なくとも一の抗ウイルス剤を、必要としている患者に併用投与することを含んでなるHCVウイルスによって介在される疾患の治療方法が提供されている。
本発明の別の実施態様では、上記の式Iに記載の化合物の治療的有効投与量及び免疫系モジュレーターがインターフェロン又は化学的に誘導化されたインターフェロンである免疫系モジュレーターの治療的有効投与量を、必要としている患者に併用投与することを含んでなるHCVウイルスによって介在される疾患の治療方法が提供されている。
本発明の別の実施態様では、上記の式Iに記載の化合物の治療的有効投与量及び治療的有効投与量の少なくとも一の他の抗ウイルス化合物を、必要としている患者に併用投与することを含んでなるHCVウイルスによって介在される疾患の治療方法が提供されている。
本発明の別の実施態様では、上記の式Iに記載の化合物の治療的有効投与量及び、化合物がHCVプロテアーゼ阻害剤、別のヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、非ヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、HCVヘリカーゼ阻害剤、HCVプライマーゼ阻害剤又はHCV融合阻害剤である治療的有効投与量の少なくとも一の他の抗ウイルス化合物を、必要としている患者に併用投与することを含んでなるHCVウイルスによって介在される疾患の治療方法が提供されている。
本発明の別の実施態様では、少なくと一の薬学的に許容可能な担体、希釈剤及び賦形剤と混合された上記の式Iに記載の化合物を含んでなる医薬組成物が提供されている。
本発明の別の実施態様では、請求項15に列挙し、実施例に例示した工程(i)-(v)を含む、上記の式Iに記載の化合物の調製方法が提供されている。該方法は、DMAPの存在で本願明細書に記載のアシル化剤及び少なくとも約7.5のpHに溶液を維持するための十分な塩基で均一又は二相状態でありうる塩基性水性有機溶媒中でIを処理することを含む。本願の方法は、複素環塩基の随伴反応なしのアシル化を可能にする。
【0037】
本願明細書で使用される場合「任意の」又は「任意に」なる用語は、続いて記載される事象又は状況が起こりうるが必ずしも起こる必要のないこと、および事象又は状況が起こる場合と起こらない場合を含む記述であることを意味する。例えば、「任意に結合」は結合があってもなくてもよく、単一の、二重の、三重の結合を含む記述であることを意味する。
本願明細書で使用される場合「独立して」なる用語は、同じ化合物の範囲内で同じか又は異なる定義を有する可変要素の存在又は欠如とは無関係に、どれか一つの例に適用される可変要素を示す。従って、Rが2回出現し、独立に炭素又は窒素と定義される化合物において、両Rは炭素であり得、両Rは窒素であり得、又は一つのRが炭素で他方が窒素であり得る。
本願明細書で使用される場合「アルケニル」なる用語は、1つ又は2つのオレフィン2重結合(好ましくは、1つのオレフィン2重結合)を有する2から10の炭素原子を有する非置換炭化水素鎖基を意味する。本願明細書で使用される場合「C2-10アルケニル」は2から10の炭素からなるアルケニルを指す。例は、 ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル(アリル)又は2-ブテニル (クロチル)である。
本願明細書で使用される場合「アルキル」なる用語は、1から10の炭素原子を含む非
分枝状又は分枝状鎖の、飽和した一価の炭化水素残基を意味する。本願明細書で使用される場合「低級アルキル」なる用語は、1から6の炭素原子を含む直鎖状又は分枝状鎖の炭化水素残基を意味する。本願明細書で使用される場合「C1-10アルキル」は1から10の炭素からなるアルキルを示す。アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル又はペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルを含む低級アルキル基を含むが、限定されるものではない。「アラルキル、アルキルまたは(ヘテロアリール)アルキル」なる用語は、任意アリール基又はヘテロアリール基のそれぞれで置換されたアルキル基を示す。
本願明細書で使用される場合「アルキニル」なる用語は、2から10の炭素原子、好ましくは2から5の炭素原子を有し、1つの三重結合を有する非分枝状又は分枝状炭化水素鎖基を意味する。本願明細書で使用される場合「C2-10アルキニル」なる用語は、2から10の炭素からなるアルキニルを示す。例は、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ビチニル、2-ビチニル又は3-ビチニルである。
【0038】
本願明細書で使用される場合「シクロアルキル」なる用語は、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルのような3から8の炭素原子を含む飽和した環状炭素を意味する。本願明細書で使用される場合「C3-7シクロアルキル」は 環状炭素の3から7の炭素からなるシクロアルキルを示す。
本願明細書で使用される場合「ハロアルキル」なる用語は、1,2,3,又はそれ以上の水素原子がハロゲンによって置換された上記の非分枝状又は分枝状鎖アルキル基を意味する。本願明細書で使用される場合「C1-3ハロアルキル」は1から3の炭素および1-8ハロゲン置換基からなるハロアルキルを示す。例は、1-フルオロメチル、1-クロロメチル、1-ブロモメチル、1-ヨードメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、トリヨードメチル、1-フルオロエチル、1-クロロエチル、1-ブロモエチル、1-ヨードエチル、2-フルオロエチル、2-クロロエチル、2-ブロモエチル、2-ヨードエチル、2,2-ジクロロエチル、3-ブロモプロピル又は2,2,2-トリフルオロエチルである。
本願明細書で使用される場合「アルコキシ」なる用語は、アルキルが上記のとおりである-O-アルキル基を意味する。例は、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、i-プロピルオキシ、n-ブチルオキシ、i-ブチルオキシ、t-ブチルオキシである。本願明細書で使用される場合「低級アルコキシ」は、先に定義した「低級アルキル」を有する「アルコキシ」基を意味する。「C1-10アルコキシ」はアルキルがC1-10である-O-アルキルを示す。
【0039】
本願明細書で使用される場合「ジアシル」誘導体なる用語は、3'- 及び5'-ヒドロキシが、エステル-OC(=O)R 及び OC(=O)R[R及びRが請求項1に定義した通りである]由来である上記の誘導化ヌクレオシド化合物を示す。
本願明細書で使用される場合「アシル化剤」なる用語は、無水物、酸ハロゲン化物、クロロカルボニルアルコキシド (例、クロロ炭酸エチル)か、N-保護アルファアミノ酸の活性化誘導体のどちらかを示す。 本願明細書で使用される場合「無水物」なる用語は、Rが請求項1に記載の通りである、一般構造RC(O)-O-C(O)Rの化合物を示す。本願明細書で使用される場合「酸ハロゲン化物」なる用語はXがハロゲンである一般構造RC(O)Xの化合物を示す。「アシルイミダゾール」なる用語は、XがN-イミダゾールである一般構造RC(O)Xの化合物を示す。本願明細書で使用される場合、化合物の「活性化誘導体」なる用語は、元の化合物の反応性が中程度でしかないか又は非反応性である時に、所望の化学反応において化合物に活性を与える、元の化合物の一過性反応形態を示す。活性化は、他の試薬とより反応しやすい活性化形態を与える、元の化合物よりも高い自由エネルギーを有する分子内の化学的グルーピング又は誘導体の形成によって達成される。本発明において、カルボキシ基の活性化は特に重要であり、以下により詳細に記載するように、カルボキシ基を活性化するグルーピング又は活性化剤に対応する。特に、本発明の関心はカルボン酸無水物又はカルボン酸塩化物である。
【0040】
本願明細書で使用される場合「不均一水性溶媒混合物」なる表現は、2相性又は不均一混合物をつくる水と有機性共溶媒の混合物をいう。この不均一水性溶媒混合物は、限定的水性溶解性を有する共溶媒、又は水相における共溶媒の溶解性の制限を調整することが可能な水性化合物のイオン強度から結果として生じうる。
「水酸化アルカリ金属」はMがリチウム、ナトリウム、カリウム又はセシウムである式MOHの化合物を示し、「アルカリ金属の炭酸水素塩」はMがナトリウム又はカリウムであるMHCO基を示し、「炭酸アルカリ金属」はMがナトリウム又はカリウムであるMCO基を示す。当業者は所望の範囲のpHを維持するために使用されてもよい他の塩基類及び本発明の範囲内にある他の塩基類を理解する。
【0041】
本願明細書で使用される略称には、アセチル(Ac)、酢酸(HOAc)、1-N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、雰囲気(Atm)、高速液状クロマトグラフィー(HPLC)、メチル (Me), tert-ブトキシカルボニル(Boc)、アセトニトリル(MeCN)、ジ-tert-ブチルピロ炭酸塩又は無水boc (BOC2O)、塩酸1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDCI)、ベンジル(Bn)、ブチル (Bu)、メタノール(MeOH)、ベンジルオキシカルボニル(cbz又はZ)、融点(mp)、カルボニルジイミダゾール(CDI), MeSO2- (mesyl又はMs), 1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、質量スペクトル(ms)、メチルt-ブチルエーテル(MTBE)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、N-メチルモルホリン(NMM)、N-メチルピロリドン(NMP)、1,2-ジクロロエタン(DCE)、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、二クロム酸ピリジニウム(PDC)、ジクロロメタン(DCM)、プロピル(Pr)、ポンド/平方インチ(psi), ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA, ヒューニッヒ塩基)、ピリジン(pyr)、室温(rt又はRT)、N,N-ジメチルアセトアミン(DMA), tert-ブチルジメチルシリル又は t-BuMe2Si(TBDMS), 4-N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、トリエチルアミン(Et3N又はTEA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、トリフルオロ酢酸(TFA)、薄層クロマトグラフィー(TLC)、酢酸エチル(EtOAc)、テトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル (Et2O)、トリメチルシリル又はMe3Si (TMS)、エチル (Et)、p-トルエンスルホン酸1水和物(TsOH又はpTsOH)、4-Me-C6H4SO2-又はトシル(Ts)、イソプロピル (i-Pr)、N-ウレタン-N-カルボキシ無水物(UNCA)、エタノール(EtOH)を含む。接頭語である、正常(n)、イソ (i-)、第2(sec-)、第3(tert-)およびネオを含む従来の命名は、アルキル部位と共に使用される場合、慣用の意味を有する(J. Rigaudy及びD. P. Klesney, Nomenclature in Organic Chemistry, IUPAC 1979年、Pergamon Press、オックスホード)。
【0042】
本発明により包含され、本発明の範囲の代表的化合物の例を表Iに示す。後に続くこれらの例及び調製は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施できるように提供する。それらは本発明の範囲を制限するものとして考慮されるべきではなく、単にその例示及び代表例でしかない。
一般に、この出願で使用される命名法は、IUPAC体系名を作出するためのコンピューター化システムであるBeilstein InstituteのAUTONOMTM v.4.0に基づいている。図示された構造と構造に与えられた名前に矛盾があるならば、図示された構造により重きを与えられるべきである。加えて、構造の立体化学又は構造の一部が、例えば太線又は点線によって示されていないならば、その構造又は構造の一部はその全ての立体化学を包含すると解釈されるべきである。これらの環構造の番号付け方式は以下の通りである。

【0043】
(化合物及び調製)
(2R)-2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-C-メチルシチジンのHCVポリメラーゼ阻害性活性は開示されている(J. L. Clark等、J. Med. Chem. 2005 48(17):5504-8; J. Clark 米国公開番号2005/0009737、両刊行物は本明細書にそのまま援用される)。臨床現場において、HCVポリメラーゼを直ちに阻害するために高用量のI-6が初期投与され、それによってウイルスが突然変異し耐性系統を選出する機会を最小にする状況下にウイルスレベルを下げることが望ましいであろう。十分に高いレベルは親ヌクレオシドによって達成することは難しいかもしれない。プロドラッグは、化合物の薬物動態学的及び物理的特性を改良し、それによって生体内利用性を最適化する一戦略を提供する。米国公開2005/0009737は2'-デオキシ-2'-フルオロ-2'-メチルヌクレオシドのヌクレオシドプロドラッグの一般的なアプローチを示唆する。プロドラッグ候補を思い描くことは一見単純である一方で、好適な物理化学的及び薬力学的特性、生体内の変換、及び安全プロフィールを有する化合物の同定は、膨大な実験を必要とする複雑な多くの専門分野にわたる取り組みである。経口送達のためのプロドラッグの同定のハードルは、投与後の活性部位の迅速で効率的な放出と同時に十分な水性溶解性、親油性および化学的安定性を維持することを含む。加えて、重大な非エステラーゼ代謝および輸送体仲介によるプロドラッグのクリアランスは最小限化されなければならない(K. Beaumont等、Curr. Drug Metab. 2003 4(6):461-485)。またチトクロームP450酵素の阻害又は誘導は望ましくない有害な薬物−薬物相互作用を生じうる。表Iに図示したI-6の低級アルキルジエステルは驚くべきことにI-6の生体内利用性を顕著に改良することが見いだされた。潜在的プロドラッグの薬物動態学的挙動は種内のアーティファクトによって生じることがある種内のばらつき及び遺伝的多型を最小限にすることを試みるためにラットとサルの両方で評価した。酵素的変換がエステル結合の加水分解に関与する範囲において、プロドラッグに対する特異的親和性は、変換を触媒できるエステラーゼ及び/又はペプチダーゼの特異的構造に依存してもよい。ラットのエステラーゼ活性はヒトよりも顕著に高いことは頻繁に示されている (J. A. Fix等、Pharm. Res. 1990 7(4):384-387; W. Li等、Antimicrob. Agents Chemother 1998 42(3):647-653)。別の潜在的に重要なパラメーターはデアミナーゼによるシチジン基のウリジンへの生物変換であった。シチジン及びウリジンの三リン酸はポリメラーゼ阻害剤であるが、生体内においてウリジンのリン酸化はシチジンに比較して不十分である。従って、増大したウリジンレベルは望ましくないと考慮される。HCVレプリコンにおいてウリジン誘導体により呈された有効性の欠如が報告されている(J. Clark等、J. Med. Chem., 上掲)。

【0044】
驚くべきことに、I-6のC2-5アルキルジエステルは優れたプロドラッグ特性を示すことを現在見出している。フッ素化ヌクレオシドの実質的により高いレベルはラット及びサルの両方の血中で観察されている。さらに、ヌクレオシドがジエステルとして投与された場合は、フッ素化基におけるウリジンに対するシチジンの割合は両種においてより高い。さらに、ジエステルは2つの異なるモノエステル及び非エステル化ヌクレオシドを形成することができる。全種類が有意な濃度で血中に存在するならば、この状況の薬物動態学的解析は複雑である。多数の代謝産物が血中に存在することはプロドラッグが安全であることを確立するための追加の負荷を与える。驚くべきことに、両エステルの加水分解は相当に容易で、親ヌクレオシドに加えて血中で観察された唯一顕著な代謝産物が、I-6に迅速に変換される3'-モノエステルである。ヒト被験者で潜在的挙動をさらに評価するために、Caco-2細胞を介した輸送が推定プロドラッグのために評価された。Caco-2細胞は、分子の潜在的吸収/透過性を評価するために一般的に使用される(G. Gaviraghi等、 Pharmacokinetic optimization in drug research. Biological, Pharmacokinetic and Computational Strategies. B. Testa等編 Wiley Interscience VCH, チューリッヒ、2001年 3-14頁)。Caco-2細胞透過性はI-6のC2-5アルキルジエステルが許容可能であることが発見された。生体内の生体内輸送において効率的であることに加えて、経口投与のためのプロドラッグは、また、薬物を製剤化するための適切な物理化学的特性を示し、望ましい生体内輸送が生じ得る区画内へ胃腸管からの吸収を確保しなければならない。特に関連するものは、水溶性、部分係数、胃腸液中での安定性である。これらのパラメータは表2に表示する。
【0045】

油/水部分係数PO/W(clogPは算出したPO/W)は経口投与される薬剤の重要な特性である。製剤原料は、胃腸において内皮細胞と接触するために、製剤中及び胃腸(GI)管液中に溶けるための十分な水溶性及びこれらの細胞の脂質二層膜を通して最終的には血中に横断するための十分な脂溶性を有しなければならない。経口投与の生体内利用性を有する化合物のlogPの至適範囲は、本発明の化合物によって示された1から3の間である。
本願明細書で使用する場合、PO/Wなる表記はオクタノール/水の部分係数を示す。明細書で使用する場合、clogPなる表記は、計算されたPO/Wを示す。PO/Wを計算するコンピュータプログラムは医薬および薬剤の化学者にとって容易に入手可能である。分配係数なる用語は、オクタノールと緩衝水性溶液間の実験的に決定された部分係数を示す。部分係数と分配係数は通常似ているが、後者は水性溶液のpHの関数であり、一方PO/WはpHに独立である。
経口的に投与されるプロドラッグの水への溶解性は、最適な製剤の場合、少なくとも0.1mg/mlを超えるべきであり、人工胃液及び人工腸液中での半減期は、胃を横断して腸で吸収される十分な時間を与えるためにそれぞれ1−2時間及び2−4時間である。
本発明の化合物は水性有機溶媒でI-6のアシル化による一工程で簡便に調製される。溶媒は不均一水性溶液か2相溶液のどちらかであってよい。水性有機溶媒のpHはアシル化によって産生される酸を中和するために塩基の添加によって7.5より上を維持する。塩基はアルカリ又はアルカリ金属水酸化物又は三級アミンのどれかであってよい。反応は、アシル化の触媒として当業界で知られるDMAPの存在下で実施される。本発明の利点は、複素環の塩基のアシル化なしに所望の生成物を得ることができることである。保護基は要求されないので、保護/脱保護工程の必要がない。方法は付記する実施例に記載する。
【0046】
(用量及び投与)
本発明の化合物は、広範囲の種々の経口投与形態及び担体に製剤化されてもよい。経口投与は錠剤、コーティング錠、硬及び軟ゼラチンカプセル剤、溶液剤、乳剤、シロップ剤又は懸濁剤の形態を取りうる。他の投与経路の中では座薬投与によって投与される時、本発明の化合物は効果的である。投与の最も簡便な方法は、通常は、疾患の重篤度及び抗ウイルス性薬物療法に対する患者の応答によって調節できる一日量療法である。本発明の化合物は、薬学的に使用可能な塩に加えて、1以上の通常の賦形剤、担体又は希釈剤と共に、医薬組成物および投薬単位の形態にされてもよい。医薬組成物および投薬単位の形態は、付加的な活性化合物があってもなくても、通常の割合の通常の成分から成ってもよく、投薬単位の形態は、使用される所望の一日量の範囲に比例した活性成分の任意の適切な有効量を含んでもよい。医薬組成物は、錠剤又は充填されたカプセル、半固形剤、粉剤、持続解放性配合物のような固形剤、又は懸濁剤、乳剤又は充填されたカプセル剤のような液剤を使用してもよく、又は直腸又は膣投与用の座薬の形態でもよい。典型的な調剤は約5%から約95%の活性化合物(w/w)を含有する。
【0047】
「調剤」又は「用量形態」なる用語は、活性化合物の固体及び液体製剤の両方を含むことを意図するものであり、当業者は活性成分が所望の用量及び薬物動態学的パラメータによって異なる調剤として存在しうることを理解する。
本願明細書で使用する場合「賦形剤」なる用語は、医薬組成物を調製するために使用される化合物を示し、一般に安全で、非毒性であり、及び生物学的でもその他望ましくないものでもなく、ヒトへの医薬用途に加えて獣医学的使用に許容可能である賦形剤を含む。本発明の化合物は単独で投与されてもよいが、通常、目的の投与経路及び標準的製薬実務に関して選択された一以上の適切な製薬学的賦形剤、希釈剤又は担体と混合して投与される。
【0048】
活性成分の「薬学的に許容可能な塩」形態は、初めに非塩の形態にない活性成分の所望の薬物動態学的特性を与えてもよく、体内での治療活性に関して活性成分の薬力学を更に高めさえしてもよい。本願明細書で使用される場合、化合物の「薬学的に許容可能な塩」なる語句は、薬学的に許容可能であって親化合物の所望の薬理学的活性を有する塩を意味する。そのような塩は(1)酸付加塩、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸及びその他のような無機酸と形成されるもの、又はグリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン- ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、樟脳スルホン酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、サリチル酸、ムコン酸及びその類のような有機酸と形成されるものを含む。薬学的に許容可能な塩の全ての参照は、ここで定義する同じ酸付加塩の溶媒付加形態(溶媒和物)又は結晶形態(多形)を含むと理解されなければならない。
【0049】
固体形態の製剤は、粉剤、錠剤、ピル、カプセル、座薬、分散粒剤を含む。固体担体は希釈剤、香味料、可溶化剤、潤滑剤、懸濁剤、結合剤、保存料、錠剤崩壊剤又はカプセル化材としても働きうる1以上の物質であってもよい。粉剤において、担体は、通常微粉化した活性成分との混合物である微粉化固体である。錠剤において、通常活性成分は、適切な割合で必要な結合能力を有する担体と混合され、所望の形と大きさに圧縮される。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、カカオバター、及びその類を含む。固体形態の製剤は、活性成分に加えて、着色剤、香料、安定剤、緩衝液、人工及び天然甘味料、分散剤、贈粘剤、可溶化剤及びその類を含んでもよい。
【0050】
液体製剤もまた、経口投与に適切であり、液体製剤は乳剤、シロップ剤、エリキシル剤及び水性懸濁剤を含む。これらは、使用の直前に液体形態製剤に変換することを目的とする固体形態製剤を含む。乳剤は溶液中、例えば水性プロピレングリコール溶液中で調製されてもよく、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン又はアラビアゴムのような乳化剤を含んでもよい。水性懸濁剤は、微粉化された活性成分を、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボシメチルセルロースナトリウム及びその他のよく知られた懸濁剤のような粘ちょう物質と共に、水中に分散させることによって調製されうる。
【0051】
本発明の化合物は座薬として投与されるように製剤化されてよい。脂肪酸グリセリド又はカカオバターのような低融点ワックスは最初に融解され、活性生物は例えば撹拌によって均一に分散させる。融解した均一な混合物は、その後都合のよい大きさの型に注がれ、冷却させて凝固させる。本発明の化合物は膣投与のために調製されてもよい。活性成分に加えて、当分野で知られている担体を含む、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡又はスプレーが適している。
製剤担体、希釈剤及び賦形剤を伴う適切な製剤は、Remington(The Science and Practice of Pharmacy 1995, E. W. Martin編, Mack Publishing Company, 第19版, イーストン, ペンシルバニア)に記載されている。製薬学の熟練した科学者は、本発明の化合物を不安定化させることなしに、又は治療活性を落とすことなしに、特定の投与経路用の多数の製剤を提供するために、本願明細書の教示の範囲内で製剤を変えてもよい。
水およびその他のベヒクルへの溶解性を向上させるための本発明の化合物の修飾は、例えば、マイナーな修飾(例、塩型の製剤)によって簡単に達成されてよく、それは十分に当業者の技術の範囲内にある。患者における有効作用の最大化のために本発明の化合物の薬物動態を管理するために、投与経路及び特定化合物の投与計画を変えることも、また十分に当業者の技術の範囲内にある。
本願明細書で使用する場合「治療的有効投与量」なる用語は、一患者において疾患の症状を軽減するために必要とされる量である。用量は各々の特定の場合で、個々の要求に調整される。用量は、治療される疾患の重篤度、患者の年齢及び通常の健康状態、治療する患者が用いる他の医薬、投与の経路と形態、及び携わっている医療担当者の好みと経験のような多数の要因に依存する幅広い制限の範囲内で変化する。経口投与の場合、単独療法及び/又は併用療法において、約0.1と約10g/日の間の一日量が適当であるべきである。好ましい一日量は約0.5と約7.5g/日の間であり、より好ましくは約1.5と約6.0g/日の間である。通常、治療は、迅速にウイルスを減らし除外するために大量の最初の「初回投与量」で開始され、続いて感染の盛り返しを防ぐために十分なレベルに用量を減らす。本願明細書に記載する疾患を治療すること関する当業者は、過度の実験なしに個人の知識、経験及び本願の開示によって、所定の疾患および患者のための、本発明の化合物の治療的有効投与量を確かめることができる。
【0052】
治療効果は、血清タンパク質のようなタンパク質レベル(例、アルブミン、凝固因子、アルカリホスファターゼ、アミノ転移酵素(例、アラニントランスアミナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ)、5'-ヌクレオシダーゼ、g-グルタミニルトランスペプチダーゼ等)、ビリルビンの合成、コレステロールの合成、及び胆汁酸の合成を含む肝臓機能の試験から確かめることができるがこれに限定されるものではなく、糖代謝、アミノ酸及びアンモニア代謝を含む肝臓の代謝機能の試験から確かめることができるがこれに限定されるものではない。あるいは、治療の有効性はHCV-RNAの測定によって監視してもよい。これらの試験の結果により、用量は最適化される。
【0053】
本発明の実施態様において、活性化合物又は塩は、リバビリン、他のヌクレオシドHCVポリメラーゼ阻害剤、HCV非ヌクレオシドポリメラーゼ阻害剤、HCVプロテアーゼ阻害剤、HCVヘリカーゼ阻害剤又はHCV融合阻害剤のような他の抗ウイルス剤と組合わせて投与されうる。活性化合物又はその誘導体又は塩が他の抗ウイルス剤と組合わせて投与される場合、活性は親化合物以上に増加してもよい。治療が併用療法である場合、該投与はヌクレオシド誘導体の投与と同時でも又は連続してもよい。本願明細書で使用される場合「同時投与」は、従って、同じ時間又は異なる時間における薬剤の投与を含む。同時の2以上の薬剤の投与は、2以上の活性生物を含有する単一製剤によって、又は単一の活性剤を有する2以上の投与形態の連続的な同時投与によって達成されうる。本願明細書で引用する治療は、既存症状の治療に加えて、予防的治療にまで拡張できることが理解される。さらに、HCV感染の「治療」なる用語は、本願明細書で使用される場合、疾患又はHCV感染に付随する又は介在される状態又はその臨床症状の治癒的又は予防的治療をまた含む。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
プロピオン酸 (2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソ-2H-ピリミジン-1-イル)-4-フルオロ-4-メチル-3-プロピオニルオキシ-テトラヒドロ-フラン-2イルメチルエステル (I-3)

I-6(30 g, 0.116 mol)、DMAP(1.4 g, 11.57 mmol)のTHF(300 mL)溶液と水(150 mL)の懸濁液に、TEA(35.1 g, 0.347 mol)を加えて、透明な溶液(pH約11)を得た。反応混合物は5−10℃に冷却し、撹拌された2相性反応溶液に無水プロピオン酸(30.1 g, 0.231 mol)を滴下で加えた。pHは監視され、KOH溶液の同時添加によって約11−12に維持した。反応の進行はHPLC分析によって監視され、塩化プロピオニルを加えた後に、約52%のジエステル、30%のモノエルテル及び15%の出発物質があった。追加の無水プロピオン酸(45.2 g, 0.347 mol)を、上記の状況下で滴下で加えた。反応混合物は、撹拌せずに一晩静置した。有機相のHPLCは、約96%のジエステル及び約2%のモノエステルを示した。相を分離し、水相は2回THF(100 mL)で抽出した。まとめた有機相は塩水で洗浄した。有機相は濾過し、蒸発させ、残留物を水(約500 mL)に溶解し、その後IPA(約100 mL)で希釈した。得られた混合物は撹拌により周囲温度までゆっくりと冷却した。得られた沈殿物は濾過し、水とヘプタンで洗浄し、減圧下約60℃で約60時間乾燥し、I-3を3.45g(80.3%)得、それはHPLCで98.75%の純度であった。
【0055】
(実施例2)
イソブチル酸 (2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソ-2H-ピリミジン-1-イル)-4-フルオロ-3-イソブチリルオキシ-4-メチル-テトラヒドロキシ-フラン-2-イルメチルエステル(I-2)

I-6(970 g, 3.74 mol)とDMAP(50 g, 0.412 mol)のTHF(10 L)溶液の氷冷懸濁液にTEA (2.3 kg, 16.5 mol)と水(7 L)を加えて、透明な溶液を生成した。塩化イソブチリル(3等価量)を、撹拌した該混合物に、温度を約0℃に維持しながらゆっくりと加えた。追加の塩化イソブチリルの1.2等価量、更に0.7等価量を、反応が本質的に完了まで進行したことをHPLCが示すまで加えた(計約1.95 kg)。反応混合物は、濃塩酸でpH約6.4まで酸性化し、有機相はEtOAc(2 × 10 L)で洗浄した。まとめた抽出物は水(1 x 15 L)で洗浄した。有機相は濾過し、減圧下で濃縮した。残留物はIPA(約20 kg)に溶解し、ヘプタン(14.2 kg)を加えた。溶液は約74−75℃まで熱し、透明な溶液を生成し、そして約5Lを蒸留によって除去した。得られた溶液は室温までゆっくりと冷却した。沈殿物は約42−43℃で形成した。冷却は5℃までゆっくりと続けて、その後一晩撹拌した。得られた個体は濾過し、濾過物はIPA/ヘプタン(1:8)混合物(13.4 kg)で洗浄し、減圧下約60−70℃で乾燥し、1.295kg(86.65%)のI-2を得て、それはHPLCで99.45%の純度であった。
【0056】
(実施例3)
カルボン酸(2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソ-2H-ピリミジン-1-イル)-4-フルオロ-2-イソブトキシカルボニルオキシメチル-4-メチル-テトラヒドロキシ-フラン-3-イルエステルイソブチルエステル(I-4)

I-6(700 mg)とDMAP(33 mg)のTHF(7 mL)溶液の懸濁液は塩水(7 mL)で希釈した。希釈したNaOHをpHが約11になるまで加えた。反応混合物は氷浴で冷却し、必要に応じてNaOHを添加することによってpHを約11に維持し、撹拌された2相性反応混合物にクロロギ酸イソブチル(1.11 g)を滴下で加えた。HPLC分析は、ほとんどがジカルボネートであり、約15%のモノカルボネートが混入していることを示した。追加のクロロギ酸イソブチルの1等価量を氷冷した溶液に滴下で加えた。HPLCは完全に近い変換を示した。得られた混合物は室温で一晩静置した。EtOAc(約50 mL)を加え、水相のpHを濃HCLでpH約7.5に調節した。相を分離し、有機相は水(3×)で洗浄し、蒸発乾燥し、無色固体(約1.22 g)を得た。固体は熱アセトンに溶解し、透明な溶液を得て、室温までゆっくりと冷却し、固体の塊を生成した。固体はIPA(約20 mL)で希釈し、スラリーを生成し、それを濾過し、その後IPAとヘプタンで連続して洗浄し、その後乾燥して0.85g(68.5%)のI-4を得て、それはHPLCで97.5%の純度であった。
【0057】
(実施例4)
カルボン酸(2R,3R,4R,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソ-2H-ピリミジン-1-イル)-4-フルオロ-4-メチル-2-プロポキシカルボニルオキシメチル-テトラヒドロキシ-フラン-3-イルエステルプロピルエステル;塩酸塩 (I-5)
I-6(700 mg, 2.70 mmol)とDMAP(33 mg, 0.27 mmol)のTHF(7 mL)溶液と希釈した塩水(7 mL)の懸濁液に希釈したKOHを加えて、pHを約11に調整した。反応溶液は約5℃まで冷却し、クロロギ酸n-プロピル(1.0 g)を撹拌した2相性反応混合物に滴下で加えた。HPLC解析は所望の生成物に伴って約20%のモノカーボネートがあることを示した。その冷たい溶液に、2回の追加量のクロロギ酸プロピル (2 ×1 等価量) を、HPLCが反応は完了まで進んだことを示すまで加えた。反応混合物はEtOAc(30 mL)で希釈し、水相のpHは濃塩酸で約6.5に調整した。相を分離し、有機相を水(3×)で洗浄し、蒸発乾燥で無色固体(約1.1 g)を得た。熱いIPA溶液を4NのHClで酸性化し、蒸発乾燥した。得られた固体は熱いEtOH(約115 mL)に再溶解し、室温で一晩乾燥した。固体塊が生成され、それを濾過し、残留物をMeOH/ヘプタン (1:1)で洗浄した。残った固体は約60℃減圧下で乾燥し、0.325g(25.8%)のI-5を得て、HPLCアッセイで97.5%の純度にした。
【0058】
(実施例5)
ラットにおける薬物動態学的パラメータの測定
体重200−250gの無処置の雄IGSウィスターハン ラットCr:WI(GLx/BRL/Han) IGS BR (ハノーバ-ウィスター)ラットを用いた。ラット3個体のグループを、実験化合物の各用量レベルに使用した。実験の間、動物は固形飼料と水に正常に接近できようにした。試験物質は、I-6の10mg/kgの相当用量で、Captex355EP、Capmul MCM、EtOH及びプロピレングリコール(30:20:20:30)を含む水性懸濁剤として製剤され、経管栄養により経口投与された。血液試料は(0.3 mL)は処置されたラットから0.25、0.5、1、3、5、及び8時に頸部カニューレから、24時に心穿刺により採取した。サンプリング手順の間、試料は氷上に置き、シュウ酸カリウム/NaFを試料に加えた。試料はすぐに−4℃で冷却遠心機で遠心し、血漿試料は分析まで−80℃フリーザーで保管した。血漿のアリコート(0.05 mL)を0.1mLのアセトニトリルと混合した。内部基準(水で0.05 mL)及び0.02mLのブランク溶媒を加えた。キャリブレーション基準のセットは、未処置ラットの血漿の0.05-mLアリコートに、0.1mLのアセトニトリル、メタノール:水(1:1)中の基準溶液の0.02-mLアリコート、及び水中の内部基準の0.05-mLアリコートを混合することによって調製した。各血漿試料およびキャリブレーション基準は、十分に混合し、その後3000rpmで5分間遠心し、タンパク質を沈殿させた。遠心による上清 (各100μL)は、LC/MS/MS分析用の水性の移動相200μLを含む96穴プレートに移した。
【0059】
試料分析:
プロドラッグは、タンデム型質量分析(HPLC/MS/MS)の高性能液体クロマトグラフィーを使用して解析した。Thermo Aquasil C18 4.6×50 mmカラム(5μM)を分離に使用した。エレクトロスプレーイオン化(ESI)法をイオン化工程に使用した。移動相Aは5mMの酢酸アンモニウム水溶液に0.1%ギ酸を含み、移動相BはMeOHに0.1%ギ酸を含む。溶出は、流速1mL/minで、以下に示す勾配で行った。

【0060】
(実施例6)
サルにおける薬物動態学的パラメータの測定
体重8−10kgの3個体の雄のカニクイザルを用いた。実験の間、動物は固形飼料と水に正常に接近できようにした。薬物投与時の動物体重及び動物の有害反応を記録した。試験物質は、I-6の10mg/kgの相当用量で、ヒプロメロース (2910, 50 cps), USP, ポリソルベート80, NF, ベンジルアルコール, NF (5.0, 4.0及び9.0 mg/mL) 及び精製水 (1.0 mLにするための十分量)を含む水性懸濁剤として製剤され、0.5mL/kgが経管栄養により経口投与された。血液試料は(0.5−1.0mL)は0、0.083、0.25、0.5、1、3、5、8及び24時に採取した。試料操作及び分析はラット実験で記載したとおりに実施した。5mLの尿試料を各サルから投与前に、及び0−8時に採取した。尿試料は−80℃に保管し、LC/MS/MSで解析した。標準曲線はNaFとシュウ酸カリウムを含むブランクのサル血漿で調製した。
【0061】
(実施例7)
Cacoプロトコル
材料:
Krebs-Henseleitバッファー、塩化カルシウム二水和物、及び重炭酸ナトリムの粉末はシグマ(セントルイス、MO)から購入した。Caco-2細胞はロッシュバーゼルから入手した。DMEM/high培地、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタン-スルホン酸(HEPES)、及びウシ血清はJRBバイオサイエンス(レネクサ, KS)から入手した。MEM 可欠アミノ酸、L-グルタミン、ペニシリン、及びストレプトマイシンはGIBCO Labs, Life Tech. LLC (グランドアイランド, NY)から入手した。スナップウェル細胞培養インサート(直径6.5 mm、1.12 cm2、孔サイズ0.4m)はコスター(Cambridge, MA)から入手した。
細胞培養:
細胞は75-cmフラスコで増殖させ、37℃で、5%CO及び95%空気の雰囲気中で維持した。培養培地は、5%ウシ血清、25mMのHEPES、1%MEM可欠アミノ酸、1%L-グルタミン、100U/mLのペニシリン及び100g/mLのストレプトマイシンを添加したDMEM/high培地からなる。培養は、1−3のスプリット比で毎週、継代した。透過性解析用に、継代数110−120のCaco-2細胞をスナップウェルインサートのトランスウェルポリカーボネートフィルター上に400,000細胞/cmの密度で撒き、使用前7日間培養した。
Krebs-Henseleit バッファー:
10mMグルコース及び2.5mMのCaCLを含むpH6.5及び7.4のKrebs-Henseleit重炭酸バッファーを同封の指示書に従って調製した。粉状塩は、必要量の約90%のミリポア水に定量的に溶解した。塩化カルシウム及び重炭酸ナトリウムは1NのHCl又は1NのNaOHによるpH調節前に加えた。追加のミリポア水を加えて、溶液を最終量にした。溶液は0.22ミクロンの孔隙率を有する膜を使用して濾過によって滅菌し、使用まで冷蔵庫(〜20℃)で保管した。
細胞の調製:
分化した細胞は細胞培養コア施設から入手し、37℃で、5%CO及び95%空気の雰囲気中で平衡化させた。Caco−2単層を含むスナップウェルインサートは37℃の平衡化Krebs-Henseleit pH7.4バッファーですすいだ。
方法:
細胞インサートは拡散チャンバーとして利用した。頂部および底側部チャンバーのKrebs-HenseleitバッファーのpHはそれぞれ6.5及び7.4であり、頂部側の初期濃度は100mMであった。頂部チャンバーの試験化合物を有する細胞は、37℃で、5%CO及び95%空気の雰囲気中で約30分間、予備インキュベーションした。実験は、pH6.5のKrebs-Henseleitバッファー中の100μMの化合物を有する細胞インサートを、底側部チャンバーの予備平衡化バッファーを有する新しいプレート中に移すことで、開始した。0分時の供与側、30分時の供与側と受取側の両方からの試料を解析した。
実験後のコントロール:
ルシファーイエローは、拡散系の機能を評価するために使用した。試験化合物の最終サンプリングに続いて、ルシファーイエローは初期濃度100Mを与えるように頂部チャンバーに加えた。60分のインキュベーション後、250mLを底側部チャンバーから取って、解析した。
透過係数(Papp)の計算:
appは以下の式を使用して計算した:

上式中、Vは受取溶液の用量(cm)であり、Aはスナップインサートの表面積(cm)であり、Cは初期濃度(nM)であり、及びdC/dtは時間による受取チャンバーの濃度の変化、すなわち受取チャンバーv.s.時間における濃度勾配(nM/min)である。各サンプリング時点の濃度は、実験によって除去したアリコート又は新しいプレートへの供与インサートの移動を補うために補正した。
【0062】
(実施例8)
複数の経路を介して投与される目的の化合物の医薬組成物は実施例8に記載の通り調製された。
経口投与用の湿潤顆粒の組成(A):

成分は混合され、顆粒化され、約500mgの活性化合物を含有する硬ゼラチンカプセルに製剤される。

経口投与用組成物(B):

成分は水のような溶媒を使用して組合わされ、顆粒化される。製剤はその後乾燥されて、適切な錠剤機で約500mgの活性化合物を含有する錠剤に製剤される。

経口投与用組成物(C)

成分は経口投与用懸濁剤を調製するために混合される。

座薬製剤(D):

成分は共に溶解され、スチームバス上で混合され、総重量2.5gを含むように型に注入される。
【0063】
先の記載又は請求の範囲で開示された特徴は、該特徴を必要に応じて別々に又は任意の組み合わせによって本発明を多様な形態で実現するために利用されてもよい特異的形態又は開示された機能を実行する手段に関して、又は開示された結果を達成するための方法又はプロセスを表す。
以上の発明は図示及び例によって、明確性と理解の目的で、詳細に記載されている。添付の請求項の範囲内で実施されてもよい変更と修飾は当業者にとって明確である。そのため、上の記載は制限的でなく例示である。そのため、発明の範囲は上の記載の参照なしに決定されるべきであって、代わりに添付の請求の範囲を参照して決定されるべきであり、該請求の範囲は均等の全範囲にまでわたるものである。
本願で引用した全特許、特許出願及び公報は、それぞれ特許、特許出願又は公報が個々に記載されたものとして、本願明細書に完全に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:

[上式中、RはC2-5非分枝状又は分枝状アルキル、C2-5非分枝状又は分枝状アルケニル、C2-5非分枝状又は分枝状アルキニル、C2-5低級ハロアルキル、C3-6シクロアルキル、及びC2-4アルコキシからなる群から選択される]
の化合物、その水和物、溶媒化合物及び酸付加塩。
【請求項2】
がエチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル又はイソブチルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がエチル又はイソプロピルである請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
がイソプロピルである請求項1から3に記載の化合物の塩酸塩又は硫酸塩。
【請求項5】
がイソプロピルである請求項1から4に記載の化合物の塩酸塩。
【請求項6】
がエトキシ、n-プロポキシ又はイソプロポキシである請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
請求項1から6に記載の化合物の治療における使用。
【請求項8】
C型肝炎ウイルス(HCV)のウイルスによって介在される疾患の治療における請求項1から6に記載の化合物の使用。
【請求項9】
少なくとも一の薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と混合された請求項1から6に記載の化合物の治療的有効量を含んでなる医薬組成物。
【請求項10】
C型肝炎ウイルス(HCV)のウイルスによって介在される疾患の治療のための医薬の調製における請求項1から6に記載の化合物の使用。
【請求項11】
医薬がそれを必要としている患者に対し、治療的有効投与量で投与されることを特徴とする請求項10に記載の使用。
【請求項12】
医薬がそれを必要としている患者に対し、0.1から10g/日の間の用量で投与されることを特徴とする請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
医薬が更にHCVの複製を阻害する少なくとも一の免疫系モジュレーター及び/又は少なくとも一の抗ウイルス剤と共に投与されることを特徴とする請求項10から12に記載の使用。
【請求項14】
請求項1から6に記載の化合物の治療的有効投与量を、必要としている患者に投与することを含んでなる、C型肝炎ウイルス(HCV)のウイルスによって介在される疾患の治療方法。
【請求項15】
0.1から10g/日の間の用量を患者に投与することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
HCVの複製を阻害する少なくとも一の免疫系モジュレーター及び/又は少なくとも一の抗ウイルス剤を投与することを更に含んでなる請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】

[上式中、RはC2-5非分枝状又は分枝状アルキル、C2-5非分枝状又は分枝状アルケニル、C2-5非分枝状又は分枝状アルキニル、C2-5低級ハロアルキル、C3-6シクロアルキル、及びC2-4アルコキシからなる群から選択される]
で示される、塩基性反応条件下におけるO-アシルヌクレオシドIIを得るためのヌクレオシドIの選択的O-アシル化の方法であって、
(i)IIとDMAPを不均一水性溶媒混合物に溶解し、pHを約7.5から約12に調節するために水性塩基を加え、
(ii)2相性反応混合物を生成するために、任意に十分な飽和NaCl水溶液を加え、
(iii)アシル化剤と、pHを約7.5から約12に維持するために十分な付加的な塩基を加え、
(iv)反応を監視し、変換が十分なレベルに達した時に前記アシル化と前記塩基の添加を中止する、
(v)O-アシルヌクレオシドの酸付加塩を形成するために、任意にO-アシルヌクレオシドを薬学的に許容可能な酸と接触させる
工程を含んでなる方法。

【公開番号】特開2012−97098(P2012−97098A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−269418(P2011−269418)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【分割の表示】特願2008−543782(P2008−543782)の分割
【原出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(306021192)エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト (58)
【出願人】(505442842)ギリアド ファーマセット エルエルシー (20)
【Fターム(参考)】