説明

抗ウイルス・抗炎症作用薬剤組成物

【課題】 副作用が少なく新興ウイルスに対しても活性を有し、口内炎、創傷、熱傷等に対しての抗炎症性も有している新しい薬剤組成物を提供する。
【解決手段】
【化1】


(式中のR4は、R、COOR、COOH、OCOR、OR、R0OR、SR、N(R,R)で表されるいずれかの置換基であり、R1、R2、R3は、おのおの、同一または別異に、水素原子、OH、OR、OCORまたはCORで表されるいずれかの置換基であり、Rは、置換基を有していてもよい、鎖状の炭化水素基または異種原子を介して環を構成していてもよい環状の炭化水素基であり、R0は炭化水素鎖を示す。)で表わされるフェノール誘導体または薬理的もしくは製剤的に許容され得るそれらの塩を抗ウイルスもしくは抗炎症作用有効成分として含有することを特徴とする薬剤組成物とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬もしくは農薬として有用な抗菌、抗ウイルスもしくは抗炎症作用を有する薬剤組成物に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、フェノール誘導体を有効成分とし、抗菌、抗ウイルス作用を有する消毒剤や口内炎、創傷と熱傷の治療のための処方剤等として、医薬あるいは農薬に有用な新しい薬剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より数多くの抗ウイルス剤が知られているが、これらの従来の抗ウイルス剤は、主として核酸塩基の構造類似体やプロテアーゼの阻害剤からなるものであって、各種重篤な副作用があるだけでなく耐性ウイルスが出現するなどの問題がある。また、SARSなど新興ウイルスに対する有効な抗ウイルス剤は開発されていないのが現状である。そこで、副作用が少なくて、SARSなどの新興ウイルスに対しても有効な新規抗ウイルス剤の開発が急務となっている。また、口内炎、創傷と熱傷に対する即効性を有する薬剤がないのが現状であって、そのような薬剤の開発が望まれてもいた。
【0003】
さらにまた、従来より、各種病原細菌に対する抗菌剤が多数開発されてきているが、いずれも耐性菌が出現していることから、新しい抗菌剤の開発が急がれている。
【0004】
このような状況において、従来よりフェノール誘導体の抗生物活性が注目されてきているところではあるが(たとえば特許文献1−2)、その実質は必ずしも明瞭でなかったことから、本願の発明者はこれまで鋭意検討を進め、その結果として多価フェノール誘導体含有の抗MRSA活性医薬組成物等をすでに提案している(たとえば特許文献3)。
【特許文献1】特開平8−26991号公報
【特許文献2】特開平9−132532号公報
【特許文献3】特開平9−194358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のとおりの背景から、発明者によるフェノール誘導体についてのこれまでの知見を踏まえ、従来の問題点を解消し、抗菌活性を有し、副作用が少なく新興ウイルスに対しても活性を有し、口内炎、創傷、熱傷等に対しての抗炎症性も有している新しい薬剤組成物を提供することを課題としている。
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものとして以下のことを特徴としている。
【0007】
第1:次式
【0008】
【化1】

【0009】
(式中のR4は、R、COOR、COOH、OCOR、OR、R0OR、SR、N(R,R)で表されるいずれかの置換基であり、R1、R2、R3は、おのおの、同一または別異に、水素原子、OH、OR、OCORまたはCORで表されるいずれかの置換基であり、Rは、置換基を有していてもよい、鎖状の炭化水素基または異種原子を介して環を構成していてもよい環状の炭化水素基であり、R0は炭化水素鎖を示す。)で表わされるフェノール誘導体または薬理的もしくは製剤的に許容され得るそれらの塩を抗菌、抗ウイルスもしくは抗炎症作用有効成分として含有することを特徴とする薬剤組成物。
【0010】
第2:医薬もしくは農薬であって、不活化対象とするウイルスがDNAとRNAを有する動物もしくは植物ウイルスである上記の薬剤組成物。
【0011】
第3:不活化対象とするウイルスが、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、バクロウイルス、ピコルナウイルス、トガウイルス、レトロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、レオウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、エイズウイルス(HIV−1)、インフルエンザウイルス、タバコモザイクウイルス、ポチウイルス、コモウイルス、もしくはカウリモウイルスである上記の製剤組成物。
【0012】
第4:抗菌対象としての細菌は、Bacillus cereus,Bacillus subtilis,Enterococcus faecalis,Staphylococcus epedermidis,Acinetobacter calcoaceticus,Escherichia coli,Pseudomonas aeruginosa,Proteus mirbilis,Salmonella Enteritidis,Salmonella Typhi,Salmonella Typhimurium、Vibrio parahaemolyticus,Campylobacter jejuni/coli,Clostridium perfringens,Yersinia enterocolitica,Vibrio cholerae,Vivrio mimicus,Vibrio fluvialis,Aeromonas hydrophila,Aeromonas sobria,Plesiomonas shigelloides,Clostridium botulinum,Mycoplasma pneumoniae,Hemophilus influenzae,Klebsiella pneumoniae,Legionella pneumophila,Mycobacterium tuberculosis,ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)もしくは基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(ESBLSs)、である薬剤組成物。
【0013】
第5:消毒剤である上記の薬剤組成物。
【0014】
第6:薬剤耐性菌を含む細菌の消毒剤である薬剤組成物。
【0015】
第7:薬剤耐性菌を含む細菌感染症の予防または改善のための機能性食品、その他の薬剤組成物。
【0016】
第8:口内炎、創傷もしくは熱傷の治療処方剤である上記の薬剤組成物。
【0017】
第9:上記第1から第8のうちのいずれかの薬剤組成物であって、さらに作用増強性イオン成分を含有する薬剤組成物。
【0018】
第10:イオン成分が金属イオン成分である薬剤組成物。
【0019】
第11:亜鉛イオン成分および鉄イオン成分の少くともいずれかを含有し、抗菌作用が増強されている薬剤組成物。
【0020】
第12:上記第9から第11のうちのいずれかの薬剤組成物であって、イオン成分とともにβラクタム剤抗菌剤をも含有し、抗菌作用が増強されている薬剤組成物。
【0021】
第13:イオン成分が金属イオン成分である第12の薬剤組成物。
【0022】
第14:亜鉛イオン成分および鉄イオン成分の少くともいずれかが含有されている第13の薬剤組成物。
【発明の効果】
【0023】
上記のとおりの本願発明によれば、抗菌活性を有し、副作用が少なく、各種ウイルスに対して高い抗ウイルス活性を有し、医薬あるいは農薬として有用な薬剤組成物が提供される。また、口内炎や、創傷、熱傷等に対して抗ウイルス作用、あるいは抗炎症作用の即効性を有する薬剤組成物が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の薬剤組成物においては、前記の式で示される多価フェノール誘導体を抗菌、抗ウイルス作用もしくは抗炎症作用を示す有効成分として含有しているが、式中において示されているR4は、前記のとおり、R、COOR、COOH、OCOR、OR、R0OR、SR、N(R,R)で表されるいずれかの置換基であり、R1、R2、R3は、おのおの、同一または別異に、水素原子、OH、またはORで表されるいずれかの置換基であり、Rは、置換基を有していてもよい、鎖状の炭化水素基または異種原子を介して環を構成していてもよい環状の炭化水素基を示し、R0は炭化水素鎖を示す。
【0025】
上記Rが鎖状の炭化水素基の場合には、これらは直鎖または分岐鎖状であってよく、飽和もしくは不飽和であってよい。たとえばアルキリ基、アルケニル基、またはアルキニル基である。具体的には、たとえば、アルキル基は、直鎖または分枝状鎖であってよく、たとえば、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、n−ウンデシル、n−ラウリル、イソブチル、イソアミル基が例示される。
【0026】
Rが環状の炭化水素基の場合には、これらは、単環もしくは多環であってよく、酸素原子(O)、窒素原子(N)、硫黄原子(S)等の異種原子を介して環を構成していてもよい。
【0027】
炭化水素基Rについては、その炭素数としては24以下の範囲、より好ましくは5〜15の範囲が好適なものとして考慮される。また、これらの炭化水素基Rは、許容される適宜な置換基を有していてよく、たとえば、酸素原子(O)もしくは含酸素基、窒素原子(N)もしくは含窒素基、硫黄原子(S)もしくは含硫黄基のうちのいずれかが例示される。これら置換基としては、たとえば、ヒドロキシル基、アルコキシル基、アミノ基、置換アミノ基、メルカプト基、スルフイド基等が例示される。
【0028】
前記の炭化水素鎖R0については、たとえば炭素数1〜6のアルキレン鎖が例示される。これらもまた、許容される適宜な置換基を有してもよい。
【0029】
より好適には、本発明においては、上記式において、R1、R2およびR3うちの少くともいずれかは水素原子以外であり、またR4は、カルボキシル基、カルボキシル基を有するアルキル基、あるいはこれらカルボキシル基のエステル、アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシ基を有するアルキル基のうちのいずれかであることが考慮される。
【0030】
本発明のフェノール誘導体としては、たとえば代表的にはガレートであってよく、これを具体的に例示すると以下のとおりである。すなわち、エチルガレート、n−プロピルガレート、n−ブチルガレート、n−ペンチルガレート、n−ヘキシルガレート、n−ヘプチルガレート、n−オクチルガレート、n−ノニルガレート、n−デシルガレート、n−ウンデシルガレート、n−ラウリルガレート、イソブチルガレート、イソアミルガレート、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、およびエピカテキンガレートを挙げることができる。好ましくは、メチルガレート、エチルガレート、n−プロピルガレート、n−ブチルガレート、n−ペンチルガレート、n−オクチルガレート、n−ノニルガレート、n−デシルガレート、イソブチルガレート、イソアミルガレート、1,2,3−トリヒドロキシー5−デシルベンゼンなどである。
【0031】
本発明のフェノール誘導体は、薬理的にあるいは製薬上許容され得るそれらの塩であってもよい。製薬上許容され得る塩とは、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム等の塩、およびプロカイン、ジベンジルアミン等のアミン塩類や塩酸塩等の酸添加塩など、通常用いられる医薬的に許容可能な塩を意味する。また、他の医薬有効成分とともに処方することができる。
【0032】
本発明のフェノール誘導体もしくはその基を抗菌、抗ウイルス作用、抗炎症作用の有効成分とする薬剤組成物においては、その投与形態としては、通常の抗生物質と同様に非経口投与、経口投与または局所投与があげられる。一般的には、注射剤による投与が好適である。この場合注射剤は常法により調製され、注射剤の形態として、適当なビヒクル、たとえば滅菌した蒸留水、生理食塩水等で溶解される場合も含まれる。
【0033】
また様々な投薬型で経口投与することもできる。たとえば、錠剤、カプセル、糖などで被覆した錠剤、液状溶液または懸濁液の形態である。
【0034】
予防・治療で用いる上記有効成分の投与量は、年齢、体重、患者の症状および投与経路によって変えることができ、たとえば、成人に対して投与する場合は、1回投与当たり、10mg〜3g(体重1kgあたり)を1日に1回から3回経口投与する。これらの投与量および投与経路を変化させることによって最良の治療効果をあげるようにする。
【0035】
本発明の薬剤組成物は、通常、常法に従って調製され、医薬的に適切な形態とされる。たとえば、固体経口形態は、活性化合物と共に、ラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、トウモロコシ澱粉およびジャガイモ澱粉などの希釈剤、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムおよび/またはポリエチレングリコールなどの滑沢剤、澱粉、アラビアゴム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジンなどの結合剤、澱粉、アルギン酸、アルギン酸塩、グリコール酸デンプンナトリウムなどの崩壊剤、発泡剤、色素、
甘味料、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸塩などの湿潤剤、および一般に非毒性および医薬的処方に用いられる薬学的に非活性な物質を含んでいてもよい。
【0036】
これらの薬剤組成物は既知の方法、例えば混合、粒状化、錠剤化、糖衣、または被覆方法などにより製造される。
【0037】
非経口投与の場合、直腸への適用を意図した坐剤でも可能であるが、汎用剤形は注射剤である。注射剤では液体製剤、用時溶解型製剤、懸濁製剤などの外観を異にする剤形があるが、基本的には活性成分を適当な方法により無菌化したのち、直接容器に入れ、密封する点で同一と考えられる。
【0038】
最も簡単な製剤化法としては、活性有効成分を適当な方法により無菌化したのち、これを別々に、または物理的に混合した後、その一定量を分割製剤化する方法がある。液剤形態を選ぶ場合には活性成分を適当な媒体に溶解し、これを滅菌濾過したのち適当なアンプルまたはバイアルに充填、密封する方法をとることができる。
【0039】
この場合汎用される媒体は注射用蒸留水であるが、本発明においては、これに拘束されるものではない。また必要ならば、塩酸プロカイン、塩酸キシロカイン、ベンジルアルコールおよびフェノールなどの局所麻酔作用を有する無痛化剤、ベンジルアルコール、フェノール、メチル、またはプロピルバクベン、およびクロロブタノールなどの防腐剤、クエン酸、酢酸、リン酸のナトリウム塩などの緩衝剤、エタノール、プロピレングリコール、塩酸アルギニンなどの溶解補助剤、L−システイン、L−メチオニン、L−ヒスチジンなどの安定化剤、さらには等張化剤などの添加剤を添加することも可能である。
【0040】
本発明の薬剤組成物は、抗菌、抗ウイルス剤として調製することができる。これらは、0.1〜10(重量)%程度の濃度の多価フェノール誘導体を含むことが好適に考慮される。たとえば、ハサミ、メス、カテーテルなどの器具、患者の排出物の消毒、皮膚、粘膜、創傷の洗浄に用いることができる。
【0041】
この場合に、不活化の対象とするウイルスは、DNAとRNAを有する全ての動物及び植物ウイルスであって、たとえば、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、バクロウイルス、ピコルナウイルス、トガウイルス、レトロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、レオウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、エイズウイルス(HIV−1)、インフルエンザウイルス、タバコモザイクウイルス、ポチウイルス、コモウイルス、カウリモウイルスである。
【0042】
たとえば後述の実施例にも例示したように、本発明の薬剤組成物によれば、有効成分としてのアルキルガレートには、インフルエンザウイルス〔(−)鎖RNAをゲノムとして持つエンベロープウイルス〕やHSV−1(DNAをゲノムとして持つエンベロープウイルス)のみならず、水泡性口内炎ウイルス(VSV)〔(−)鎖RNAをゲノムとして持つ非エンベロープウイルス〕やポリオウイルス〔(+)鎖RNAをゲノムとして持つ非エンベロープウイルス〕に対して抗ウイルス活性を有することが判明しており、このことからも、本発明によれば、広範囲のウイルス増殖を抑制することが可能である。
【0043】
また、抗菌対象としての病原細菌は、Bacillus cereus,Bacillus subtilis,Enterococcus faecalis,Staphylococcus epedermidis,Acinetobacter calcoaceticus,Escherichia coli,Pseudomonas aeruginosa,Proteus mirbilis,Salmonella Enteritidis,Salmonella Typhi,Salmonella Typhimurium、Vibrio parahaemolyticus,Campylobacter jejuni/coli,Clostridium perfringens,Yersinia enterocolitica,Vibrio cholerae,Vivrio mimicus,Vibrio fluvialis,Aeromonas hydrophila,Aeromonas sobria,Plesiomonas shigelloides,Clostridium botulinum,Mycoplasma pneumoniae,Hemophilus influenzae,Klebsiella pneumoniae,Legionella pneumophila,Mycobacterium tuberculosis,ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)もしくは基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(ESBLSs)、がその代表的なものとして示される。
【0044】
また、抗菌、抗ウイルス剤としては、細菌やウイルス感染症を予防するための機能性食品の形態で適用することもできる。
【0045】
飲食品として使用する場合の形態については特に制限はなく、例えば、ドリンク剤、固形物、ゼリー状食品等があり、固形物には製剤として粉剤、顆粒剤、錠剤及びカプセル剤のいずれかの形態に加工したものが含まれる。また、前記多価フェノール誘導体をうどん、そば等の麺類、クッキー、ビスケット、キャンディー、パン、ケーキ、ガムその他の食品に、また、清涼飲料水、乳酸飲料その他種々の飲料に添加することもできる。
【0046】
なお、本発明の前記フェノール誘導体やそれらの塩については、公知の化合物を原料もしくは中間体として適宜な方法により合成することができる。市販品として入手してもよい。
【0047】
さらにまた、本発明の薬剤組成物は、イオン成分の添加含有によってその作用効果が増強可能であるという特徴も有している。このようなイオン成分は、「作用増強性イオン成分」と呼ぶことができる。
【0048】
このようなイオン成分としては無機・有機のいずれのイオン成分であってもよいが、なかでも、金属イオン成分が好適なものとして考慮される。これらの金属イオン成分は、金属の化合物として添加することで調製される。たとえば、亜鉛、鉄、マンガン等の多価金属イオンである。
【0049】
実際、本発明においては、たとえば亜鉛イオン、鉄イオンによって抗菌作用を顕著に増大することができ、さらにβラクタム剤抗菌剤をも併用する場合には、より大きな増強効果が得られる。
【0050】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しく説明する。もちろん以下の例によって発明が限定されることはない。
【実施例】
【0051】
<合成例>n−オクチルガレートの合成
市販のガレート(1.0g)の無水THF(20ml)溶液に、オクタノール(2ml)とDCC(1.2g)を加え、N2雰囲気下室温にて5時間攪拌した。得られた反応液を減圧下で濃縮した後、5%クエン酸水溶液を加え、酢酸エチールアルコールで抽出し、有機層を飽和NaHCO3で洗浄後、MgSO4で乾燥した。濾紙濾過した後、減圧下に濾液の溶媒を留去して得られた粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィー「CHCl3−メタノール(99:1)」により精製し、さらにn-hexane-CHCl3から再結晶することによりオクチルガレートを得た。
<実施例1>
上唇上部に口内炎(直径7mmの白色の発疹)を発症し、痛みのため食事が困難であった被験者に対し、その患部にオクチルガレート溶液(エタノ−ル20%と生理食塩水80%からなる溶液にオクチルガレート150μg/mlを溶解)を麺棒に浸し1日に2回(午前9時ごろと午後5時ごろ)塗布したところ、1回目の塗布により、痛みが軽減、2日目には発疹は消失し完治した。
【0052】
舌部の裏側と下唇左側に口内炎(おのおの、直径4mmと6mm大の白色の発疹)を発症した被験者に対し、その患部にオクチルガレート溶液(上記と同じ)麺棒に浸し1日に2回(午前10時ごろと午後4時ごろ)塗布したところ、1回目の塗布により、痛みが軽減、2日目には発疹は消失し完治した。
【0053】
オクチルガレート溶液は、以上のことから口内炎に著効を示すことが確認された。オクチルガレートには、抗炎症作用があることがわかるとともに、口内炎の原因は単一ではないが、単純ヘルペスウイルスの再感染が多くを占める(recurrent stomatitis)(医学大辞典、南山堂)ことから、オクチルガレートの抗ヘルペスウイルス作用があることが示唆された。
<実施例2>
実施例1よりオクチルガレートの抗ヘルペスウイルス作用があることが示唆されたので、単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1;口唇ヘルペスの病原体、DNAを保有するウイルス)に対する抗ウイルス活性を調べたところ、下記の試験結果を得た。
【0054】
1)図1は、HSV−1の生存率に対するオクチルガレートの効果を例示した図であって、HSV−1は、種々の濃度のオクチルガレートとともに氷上にて10分間インキュベートされ、その後、Vero細胞に感染させ、プラーク数を計数し、ウイルスの不活化率を求めた結果である。この図1から、オクチルガレートは、80μg/mlの濃度で直接的にHSV−1を完全に不活化したことがわかる。
【0055】
2)図2は、Vero細胞におけるHSV−1の増殖におけるオクチルガレートの効果を例示した図である。コンフルエントに増殖した単層のVero細胞に、感染多重度(MOI)12にてHSV−1に感染させ、ウイルス感染させた細胞は,示された濃度のオクチルガレートを含むメディウム中で一夜37℃でインキュベートされ、全ウイルス数(〇)と細胞外のウイルス数(△)が別々に測定されている。この図2から、Vero細胞(アフリカミドリザルの腎臓細胞由来の樹立細胞)でのHSV−1増殖は4μg/mlのオクチルガレート存在下で1000分の1以下に抑えられたことがわかる。
【0056】
3)図3は、ヒト細胞HEp−2細胞におけるHSV−1の増殖におけるオクチルガレートの効果を例示した図である。コンフルエントに増殖した単層のHEp−2細胞に、感染多重度(MOI)12にてHSV−1に感染させ、他は、図2の場合と同じとしている。ヒト細胞HEp2細胞でのHSV−1の増殖は、8μg/mlの濃度で10000分の1以下に抑制された。
【0057】
4)図4は、HEp−2細胞におけるVSVの増殖におけるオクチルガレートの効果を示した図である。コンフルエントに増殖した単層のHEp−2細胞に、感染多重度(MOI)12にてVSVを感染させ、培養時間は、17時間とし、図中の〇は、ウイルスの全量を示しており、他は、図2の場合と同じとしている。VSV(vesicular stomatitis virus,RNAを保有するウイルス)のVero細胞における増殖もHSV−1と同様に抑制された。
【0058】
これらの試験結果から、予測どおり、オクチルガレートには、抗ヘルペスウイルス活性があることが明らかとなった。さらにオクチルガレートには、RNA型のウイルスであるVSVに対しても抗ウイルス活性があることが明らかになった。
【0059】
オクチルガレートには、DNA型ウイルスとRNA型ウイルスに対して強い抗ウイルス活性があることが判明した。なお、使用された濃度でのオクチルガレートによる細胞数の減少は観察されなかった。
<実施例3>
HEp−2細胞の単層培養細胞にHSV−1を細胞当たり14PFUの割合で感染した後、没食子酸またはその各種アルキルエステル:アルキルガレート(15μM)を含む培養液(0.1%ウシ血清アルブミン加MEM)中、37℃で約24時間培養した。感染細胞を培養液とともに2回凍結融解し、全子孫ウイルスを凍結融解液中に出した後、子孫ウイルス量を定量した。各試薬存在下の子孫ウイルス量について、試薬を含まないものでの子孫ウイルス産生量をもとに相対産生量を算定した。
【0060】
図5には、その結果をアルキルガレートのアルキル鎖の炭素数による度合として示した。
【0061】
図5より、HSV−1に対する抗ウイルス活性は、アルキル鎖の炭素数が12のドデシルガレートが最も強いことがわかる。
<実施例4>
HSV−1感染により誘導される細胞死に対するオクチルガレートの効果を評価した。
【0062】
図6は、その結果を例示している。
【0063】
HSV−1を細胞当たり14PFUの割合で感染したHEp−2単層培養細胞(図中の黒丸と黒三角)と未感染細胞(図中の白丸と白三角)をそれぞれ準備し、15μMオクチルガレート添加(図中の白三角、黒三角)または非添加(図中の白丸と黒三角)の培養液(0.1%ウシ血清アルブミン加MEM)中37℃で培養した。一定時間ごとにそれぞれからサンプルをとり、トリパンブルーを用いて生細胞数と死細胞数を定量し、各サンプルにおける死細胞の割合を算出した。図の横軸は、HSV−1をHEp−2細胞に感染させてからの時間を示している。
【0064】
図6より、オクチルガレートは、HSV−1感染により誘導される細胞死を顕著に促進することがわかる。なお、用いられた濃度におけるオクチルガレートに顕著な細胞毒性は見られないことをも示している。
<実施例5>
オクチルガレート存在下でのHSV−1の増殖について、細胞内ウイルス増殖と細胞からのウイルスの放出の抑制効果を評価した。
【0065】
図7はその結果を例示したものである。
【0066】
HEp−2細胞の単層培養細胞にHSV−1を細胞当たり14個の割合で感染した後、15μMオクチルガレート添加(黒丸、黒三角)または非添加(白丸、白三角)の培養液(0.1%ウシ血清アルブミン加MEM)中37℃で培養した。一定時間ごとにサンプルをとり、全子孫ウイルス量(白丸、黒丸)と培養液中に放出されたウイルス量(白三角、黒三角)を定量した。図7より、オクチルガレートは細胞内におけるウイルスの増殖と細胞からのウイルスの放出の両方を抑制することがわかる。
<実施例6>
水疱性口内炎ウイルス(VSV)の増殖に対するオクチルガレートの阻害効果を評価した。すなわち、HEp−2細胞の単層培養細胞にVSVを細胞当たり17PFUの割合で感染した後、種々の濃度のオクチルガレートを含む培養液(0.1%ウシ血清アルブミン加MEM)中、37℃で約17時間培養した後、培養液中に放出されてくる子孫ウイルス量を定量した。各濃度での子孫ウイルス量について、試薬を含まないものでの子孫ウイルス産生量をもとに相対産生量を算定した。
【0067】
その結果を図8に示した。
【0068】
図8より、HSV−1と同様にエンベロープを持つウイルスであるが、ゲノム核酸としてRNAを持ち、HSV−1とは全く異なる増殖様式で増える水疱性口内炎ウイルス(VSV)に対してもオクチルガレートは顕著な抗ウイルス活性を示すことがわかる。
<実施例7>
オクチルガレートのウイルス粒子に対する直接作用について評価した。図9はその結果を示したものである。
【0069】
すなわち、一定量のHSV−1(○)またはVSV(△)を含むウイルス液にオクチルガレートを加え(最終濃度60μg/ml)、氷水中で保温する。一定時間ごとにサンプルをとり、直ちに希釈して残存するウイルス力価(PFU;plaque-forming unit)をプラック法で定量する。試薬添加前のウイルス力価に対する相対力価を算定した。
【0070】
図9より、オクチルガレートはHSV−1やVSVに対して直接的なウイルス不活化作用も有することがわかる。ただ、このウイルス不活化作用には感染細胞での抗ウイルス作用を表わす時よりは高濃度のオクチルガレートを必要とする。
<実施例8>
オクチルガレートによるMDCK細胞におけるインフルエンザウイルスA/Hong Kong/1/68(H32)の増殖阻害について評価した。
【0071】
すなわち、24穴プレート(400μl/well)にMDCK細胞(Madin-Darby canine kidneycell)をまきConfluentにした後、インフルエンザウイルスA/HongKong/1/68(H32)(10PFU/well)を37℃、5%CO2インキュベーターで1時間感染させた。ついで、感染細胞を異なった濃度のオクチルガレートを含む培養液(DMEM培地に1%グルコース、0.2%ウシ血清アルブミン、0.5%硫酸ゲンタマイシン、0.00025%トリプシン、0.03%グルタミン、7%メイロン(大塚製薬)を6%、250μg/mlアムホテリシンB(nakalai tesque)0.5%含む)中で、34.5℃、5%CO2インキュベーターで3日間培養した。培養したウイルス液(100μl)を10倍希釈しプラーク法によりウイルス粒子を測定した。
【0072】
その結果を表1に示した。
【0073】
【表1】

【0074】
表1より、オクチルガレートは、6μg/mlの濃度で、MDCK細胞におけるインフルエンザウイルスA/Hong Kong/1/68(H3N2)の増殖を完全に抑制することが明らかとなった。
<実施例9>
ポリオウイルス増殖に及ぼすオクチルガレートの抗ウイルス作用を評価した。
【0075】
すなわち、HEp−2細胞の単層培養細胞にポリオウイルス1型Sabin株〔(+)鎖RNAをゲノムとしてもつ非エンベロープウイルス〕を細胞当たり10個の割合で感染した後、種々の濃度のオクチルガレートを含む培養液(0.1%ウシ血清アルブミン加MEM)中、35.5℃で約22時間培養した。感染細胞を培養液とともに2回凍結融解し、凍結融解液中のウイルス量を定量した。
【0076】
図10はその結果を例示したものである。
【0077】
図10より、オクチルガレートがHEp−2細胞でのポリオウイルス1型の増殖を抑制することを示していることから、オクチルガレートには、ポリオウイルス1型に対する抗ウイルス活性があることがわかる。
<実施例10>
以上の実施例より、オクチルガレートには、抗炎症作用があることが推測されたので、創傷・熱傷に対する治療効果を被験者20名に対して調べたところ、即効性の著効を示すことが確認された。
<実施例11>
オクチルガレート含有の抗炎症剤、抗ウイルス剤として、以下の各種剤形のものを調製した。
【0078】
(錠剤)
オクチルガレート100g、ヒドロキシプロピルセルロース80g、軽質無水ケイ酸20g、乳糖50g、結晶セルロース50g、タルク50gを常法により直径9mm、重量200mgの錠剤とした。
【0079】
(カプセル剤)
オクチルガレート100g、結晶セルロース100g、乳糖150g、軽質無水ケイ酸20gを常法によりカプセル剤とした。
【0080】
(顆粒剤)
オクチルガレート200g、乳糖200g、ヒドロキシプロピルセルロース300g、タルク15gを常法により顆粒剤とした。
【0081】
(クリーム剤)
オクチルガレート0.2g、コレステリルイソステアレート1g、ポリエーテル変性シリコーン1.5g、環状シリコーン20g、メチルフェニルポリシロキサン2g、メチルポリシロキサン2g、硫酸マグネシウム0.5g、55%エタノール5g、カルボキシメチルキチン0.5g、精製水(残量)を混合し、クリームとした。
【0082】
(軟膏)
オクチルガレート0.5g、コレステリルイソステアレート3g、流動パラフィン10g、α−トコフェロール0.1g、グリセリルエーテル1g、グリセリン10g、白色ワセリン2gを混合し、軟膏とした。
【0083】
(注射剤)
オクチルガレート15mg、ブドウ糖100mgを注射用蒸留水5mlに溶解し、加熱滅菌して注射剤を得た。
【0084】
(ローション)
オクチルガレート1g、グリセリンモノステアレート1g、エタノール15g、プロピレングリコール4g、イソプロピルパルミテート3g、ラノリン1g、セラミド0.5g、パラオキシ安息香酸メチル0.1g、ビタミンC0.5g、香料、色素少量、精製水72gを混合し、ローションを得た。
<実施例12>
実施例11において、オクチルガレートの代わりに前記の一般式〔化1〕で示される他の各種化合物、たとえば、ノニルガレート、デシルガレート、ウンデシルガレート、ドデシルガレートを混合し、錠剤、カプセル剤、クリーム剤、軟膏、注射剤、ローションを得た。
<実施例13>機能性食品
口内炎やインフルエンザウイルスによる風邪の予防あるいは治療のために有効な機能性食品として,ガムなどにオクチルガレートなど前記の一般式〔化1〕で示される化合物、たとえば、ノニルガレート、デシルガレート、ウンデシルガレート、ドデシルガレートをガム1gあたり0.05〜0.3mg混ぜたガムを得る。
<実施例14>抗ウイルス性歯磨き粉
口内炎やインフルエンザウイルスによる風邪の予防あるいは治療のために有効な歯磨き粉として、市販の歯磨き粉などにオクチルガレートなど前記の一般式〔化1〕で示される化合物、たとえば、ノニルガレート、デシルガレート、ウンデシルガレート、ドデシルガレートを歯磨き粉1gあたり0.05〜0.3mg混ぜた歯磨き粉を得る。
<実施例15>寒天平板希釈法による各種ガレートの抗細菌活性
日本化学療法学会の定める寒天平板希釈法に従ってMIC(minimum inhibitory concentration)を測定した。感受性測定用培地としてMueller-Hinton II Agar(MHA)にCaイオン50mg/l、Mgイオン25mg/lと2%NaClを添加したCAMHAを用いた。37℃、一晩培養した菌液を生理食塩水で10CFU/mlになるよう希釈しミクロプランター(佐久間製作所)を用いて感受性測定用平板に接種し、37℃、24時間培養後、MICを判定した。結果を表2および表3に示す。
【0085】
表中において,アルキル鎖の炭素数が,0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,16は、各々、ガレート,メチルガレート,エチルガレート,プロピルガレート,ヘキシルガレート,オクチルガレート,ノニルガレート,デシルガレート,ウンデシルガレート,ラウリルガレート,セチルガレートを示す。
【0086】
この表の結果から、オクチルガレート,ノニルガレート,デシルガレート,ウンデシルガレートは、いずれの菌に対しても強い抗菌活性を有することがわかる。
【0087】
【表2】

【0088】
【表3】

【0089】
<実施例16>
亜鉛イオンと鉄イオンによるMRSA,MSSA,とVISAに対するアルキルガレートの抗菌作用の増強効果について評価した。実験方法としては、日本化学療法学会が定める平板寒天希釈法に従ってMIC値の測定を行った。亜鉛イオンは、ZnCl2を添加した。また鉄イオンは、FeCl3,6H2Oを添加して用いた。培養時間、37℃で24時間とした。
【0090】
表4はその結果を示したものである。
【0091】
【表4】

【0092】
表4は、亜鉛イオンと鉄イオンには、濃度依存的にMRSA,MSSA,とVISAに対するオクチルガレートの抗菌作用の増強効果があることを示している。このようなイオンによるオクチルガレートの抗菌作用の増強効果は、他のアルキル鎖の炭素数が1〜12個の各種のアルキルガレートでも観察された。
<実施例17>
オクチルガレートによるMRSA,MSSA,VISAのオキサシリンに対する感受性の増強の亜鉛イオン及び鉄イオンによる更なる増強効果について評価した。
【0093】
実験方法としては、日本化学療法学会が定める平板寒天希釈法に従ってMIC値の測定を行った。亜鉛イオンは、ZnCl2を添加した。また鉄イオンは、FeCl3,6H2Oを添加して用いた。
【0094】
表5は、その結果を示している。
【0095】
【表5】

【0096】
表5より、亜鉛イオン及び鉄イオンは、オクチルガレートによるMRSA,MSSA,VISAのオキサシリンに対する感受性の増強を更に増強することが明らかになった。そして、オキサシリンは、βラクタム剤抗菌薬の1種であるが、亜鉛イオン及び鉄イオンは、他のβラクタム剤抗菌薬(ペニシリンG、メチシリン、セファピリン、パニペネム、セフォタキシム)のオクチルガレートによる感受性の増強をさらに増強することも確認されたことから、各種、任意の種類のβラクタム剤抗菌薬に対して感受性増強効果があると判断される。
<実施例18>歯科用抗菌剤としてのオクチルガレートの使用:1
虫歯を有する被験者に白色ワセリン1gあたり1mgのオクチルガレートを含有させた軟膏で、1週間に2回病変部に塗布したところ、虫歯の拡大が阻止されるだけでなく、6ヵ月後に撮影したX線撮影により、病変部の縮小が観察されたことから、病変部の象牙質にカルシウムが沈着していることが明らかとなった。そこで、本軟膏は、虫歯の画期的な治療薬となることが期待される。
<実施例19>歯科用抗菌剤としてのオクチルガレートの使用:2
歯槽膿漏を有する被験者に白色ワセリン1gあたり1mgのオクチルガレートを含有させた軟膏を歯肉溝に塗布させることにより、病変部の改善が見られただけでなく、口臭の除去に有効であることが、明らかとなったことから、歯槽膿漏の治療や口腔内消毒薬、うがい薬、口臭除去剤として、オクチルガレートを使用できるものと期待される。
<実施例20>
オクチルガレートを含有する消毒薬として以下の各種組成のものを調製した。
【0097】
(消毒薬1)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール20〜82vol%
(消毒薬2)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
ポビドンヨード 0.01〜1%(w/v)
(消毒薬3)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
過マンガン酸カリウム 0.01〜0.1%
(消毒薬4)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
イソプロパノール 5〜70 vol%
(消毒薬5)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
塩化ベンザルコニウム1〜10w/v%
(消毒薬6)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
クレゾール 5〜50vol%
(消毒薬7)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
グルコン酸クロルヘキシジン 0.1〜0.5w/v%
(消毒薬8)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
フェノール 5〜90vol%
(消毒薬9)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
マーキュロクロム0.1〜2vol%
(消毒薬10)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
ホルムアルデヒド5〜40 vol%
(消毒薬11)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
アクリノール0.01〜0.2vol%
(消毒薬12)
オクチルガレート 0.1mg/ml〜0.5g/ml,エタノール0〜82vol%
次亜塩素酸ナトリウム 1〜12 vol%
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】HSV−1の生存率に対するオクチルガレートの効果を例示した図である。
【図2】Vero細胞におけるHSV−1の増殖におけるオクチルガレートの効果を例示した図である。
【図3】ヒト細胞HEp−2細胞におけるHSV−1の増殖におけるオクチルガレートの効果を例示した図である。
【図4】HEp−2細胞におけるVSVの増殖におけるオクチルガレートの効果を示した図である。
【図5】没食子酸アルキルエステルによる単純ヘルペスウイルス1型(HSV−1)増殖阻害に及ぼすアルキル鎖の長さの効果を例示した図である。
【図6】HSV−1感染により誘導される細胞死に対するオクチルガレートの効果を例示した図である。
【図7】オクチルガレート存在したでのHSV−1一段増殖曲線である。
【図8】VSVの増殖に対するオクチルガレートの阻害効果を例示した図である。
【図9】オクチルガレートのウイルス粒子に対する直接作用について例示した図である。
【図10】ポリオウイルス増殖に及ぼすオクチルガレートの抗ウイルス作用を例示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式
【化1】

(式中のR4は、R、COOR、COOH、OCOR、OR、R0OR、SR、N(R,R)で表されるいずれかの置換基であり、R1、R2、R3は、おのおの、同一または別異に、水素原子、OH、OR、OCORまたはCORで表されるいずれかの置換基であり、Rは、置換基を有していてもよい、鎖状の炭化水素基または異種原子を介して環を構成していてもよい環状の炭化水素基であり、R0は炭化水素鎖を示す。)で表わされるフェノール誘導体または薬理的もしくは製剤的に許容され得るそれらの塩を抗菌、抗ウイルスもしくは抗炎症作用有効成分として含有することを特徴とする薬剤組成物。
【請求項2】
医薬もしくは農薬であって、不活化対象とするウイルスがDNAとRNAを有する動物もしくは植物ウイルスであることを特徴とする請求項1の薬剤組成物。
【請求項3】
不活化対象とするウイルスが、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、バクロウイルス、ピコナルウイルス、トガウイルス、レトロウイルス、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、ラブドウイルス、レオウイルス、コロナウイルス、SARSコロナウイルス、エイズウイルス(HIV−1)、インフルエンザウイルス、タバコモザイクウイルス、ポチウイルス、コモウイルス、もしくはカウリモウイルスであることを特徴とする請求項2の薬剤組成物。
【請求項4】
抗菌対象としての病原細菌が、Bacillus cereus,Bacillus subtilis,Enterococcus faecalis,Staphylococcus epedermidis,Acinetobacter calcoaceticus,Escherichia coli,Pseudomonas aeruginosa,Proteus mirbilis,Salmonella Enteritidis,Salmonella Typhi,Salmonella Typhimurium、Vibrio parahaemolyticus,Campylobacter jejuni/coli,Clostridium perfringens,Yersinia enterocolitica,Vibrio cholerae,Vivrio mimicus,Vibrio fluvialis,Aeromonas hydrophila,Aeromonas sobria,Plesiomonas shigelloides,Clostridium botulinum,Mycoplasma pneumoniae,Hemophilus influenzae,Klebsiella pneumoniae,Legionella pneumophila,Mycobacterium tuberculosis,ペニシリナーゼ産生黄色ブドウ球菌、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌(VRSA)、ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)、もしくは基質特異性拡張型β−ラクタマーゼ(ESBLSs)である請求項1の薬剤組成物。
【請求項5】
消毒剤である請求項1の薬剤組成物。
【請求項6】
薬剤耐性菌を含む細菌の消毒剤である請求項1の薬剤組成物。
【請求項7】
薬剤耐性菌を含む細菌感染症の予防または改善のための請求項1の薬剤組成物。
【請求項8】
口内炎、創傷もしくは熱傷の治療処方剤である請求項1の薬剤組成物。
【請求項9】
請求項1から8のうちのいずれかの薬剤組成物であって、さらに作用増強性イオン成分を含有することを特徴とする薬剤組成物。
【請求項10】
イオン成分が金属イオン成分であることを特徴とする請求項9の薬剤組成物。
【請求項11】
亜鉛イオン成分および鉄イオン成分の少くともいずれかを含有し、抗菌作用が増強されていることを特徴とする請求項10の薬剤組成物。
【請求項12】
請求項9から11のうちのいずれかの薬剤組成物であって、イオン成分とともにβラクタム剤抗菌剤をも含有し、抗菌作用が増強されていることを特徴とする薬剤組成物。
【請求項13】
イオン成分が金属イオン成分であることを特徴とする請求項12の薬剤組成物。
【請求項14】
亜鉛イオン成分および鉄イオン成分の少くともいずれかが含有されていることを特徴とする請求項13の薬剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−306836(P2006−306836A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−4252(P2006−4252)
【出願日】平成18年1月11日(2006.1.11)
【出願人】(504378308)株式会社マイクロバイオテック (3)
【Fターム(参考)】