説明

抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体の製造方法

【課題】副作用が弱く、優れた抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体の製造方法を提供する。
【解決手段】副作用が弱く、優れた抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体とは、抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体であり、分子内環状構造を呈する。この誘導体は柿の葉由来リグニンに、ヒドロキシアバタイト及び塩素が結合してなるものである。その製造方法は、柿の葉粉末にヒドロキシアパタイトに紅麹菌を添加し、発酵させる。この発酵液に希塩酸を添加した後、得られたろ液をアルカリ還元させる工程からなり、主たる工程としては紅麹菌による発酵工程、塩酸の添加工程及び還元工程であり、これらの工程により、リグニンにカルシウムとリン酸及び塩素が安定的に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2009年の4月から7月に至る期間に、メキシコを起源とした新型の豚インフルエンザが日本に上陸し、2000人を超える日本人が感染した。
【0003】
幸なことに、この新型インフルエンザは、弱毒型であり、感染が広がった割には、死者の数は、最小限に抑制されている。
【0004】
しかし、新型インフルエンザや新型のウイルスは、人類の脅威であり、その感染防止策と治療薬は、広く要望されている。
【0005】
化学的にウイルスを死滅させる薬物療法は、効果的である一方、血液障害やアレルギー、神経障害といった副作用を発症するおそれがある。
【0006】
たとえば、タミフルは優れた抗インフルエンザ薬であるものの、異常行動や神経障害といった副作用が観察されており、使用に際しては十分な注意が必要である。
【0007】
また、ザナミビルは、一般名がリレンザであり、抗インフルエンザ作用があるものの、吸入薬に限定されており、かつ、副作用として過敏症、嘔吐、血液異常などが知られている。
【0008】
そこで、天然物を利用して植物や発酵物由来の抗ウイルス作用を有する物質の探索が行われている。
【0009】
たとえば、生姜と緑茶の抽出物による抗菌物質の発明として抗菌性組成物及びその使用方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかし、ここでは、組成物としての発明であり、具体的な化学物質の同定はなく、かつ、その作用については、記載がなく、産業への利用が限定的である。
【0010】
また、発酵物による抗ウイルス作用としては、有胞子性乳酸菌含有抗感冒ウイルス又は抗インフルエンザウイルス用組成物の発明が報告されている。ここでは、有胞子性乳酸菌による抗ウイルス作用が発明されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
しかし、これらの天然物由来の抗ウイルス剤は、その作用が弱いという欠点が認められる。
【0012】
ここに、抗ウイルス作用を有するリグニン誘導体の製造方法について発明したので、以下に説明する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特表2005−534699
【特許文献2】特開2008−013543
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前記したように化学合成されたタミフルやリレンザには、副作用が認められるため、その使用は制限されるという問題がある。一方、天然由来の物質についてその安全性は高いものの、抗ウイルス作用が軽度であるという問題がある。そこで、副作用が弱く、抗ウイルス作用の優れた天然物由来物質が望まれている。
【0015】
この発明は上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、副作用が弱く、優れた抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体の効率的な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、柿の葉粉末にヒドロキシアパタイト及び紅麹菌を添加し、発酵させた発酵液に、希塩酸を添加した後、アルカリ還元させる工程からなる下記の式(1)で示される抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体の製造方法に関するものである。
【0017】
【化1】

【発明の効果】
【0018】
この発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
【0019】
請求項1に記載の製造方法によれば、効率良くリグニン誘導体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明を具体化した実施形態について詳細に説明する。
【0021】
柿の葉粉末にヒドロキシアパタイト及び紅麹菌を添加し、発酵させた発酵液に、希塩酸を添加した後、アルカリ還元させる工程からなる下記の式(1)で示される抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体の製造方法について説明する。
【0022】
【化2】

【0023】
ここでいうリグニン誘導体とは、柿の葉由来のリグニン、ヒドロキシアパタイト及び塩素からなる化合物であり、優れた抗ウイルス作用を有する。
【0024】
リグニン、ヒドロキシアパタイトと塩素は、それぞれがエステルまたはエーテル結合し、分子内に架橋構造を呈している。この分子内架橋構造が抗ウイルス作用として必須である。
【0025】
このリグニン誘導体は、フェニルプロパノイド骨格を有し、ヒドロキシ基、メトキシ基及びアルデヒド基を持つ。また、リグニン骨格とヒドロキシアパタイトを主とする環状構造を呈する。
【0026】
このリグニン誘導体の環状部分に、ウイルスが吸着する特徴を有し、吸着することにより、ウイルスを固定し、ウイルスの細胞への感染を防止する働きを呈する。
【0027】
このリグニン誘導体にはフェニルプロパノイド骨格が4分子存在し、カルシウム原子が5個、リン酸基が5個より構成される。
【0028】
また、塩素は2原子含有されており、いずれも、酸素を介してエーテル結合している。この塩素2原子が酸素と結合していることにより、吸着されたウイルスに対して殺傷効果を発揮する。
【0029】
すなわち、ウイルス膜の表面に塩素が二酸化塩素の形で、結合し、ウイルス膜を破壊することにより、ウイルスを死滅させる。
【0030】
作用の観点からみると、このリグニン誘導体は、ウイルスを環状構造内に吸着し、不活性化させた後に、塩素の働きにより死滅させるという2段階の働きを呈する。
【0031】
この働きは、ウイルスの種類やタイプには関係なく、レオウイルス、ロタウイルス、カリシウイルス、ノロウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、肝炎ウイルス、アストロウイルス、トガウイルス、風疹ウイルス、フラビウイルス、日本脳炎ウイルス、ウエストナイルウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、デングウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、コロナウイルス、エボラウイルス、ラブドウイルス、狂犬病ウイルス、ブニヤウイルス、ハンタウイルス、オルトミクソウイルス、インフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、麻疹ウイルス、ムンプスウイルス、アレナウイルス、ラッサウイルスに対して作用する。
【0032】
また、この環状構造は、ヒトを含めた哺乳類細胞には小さすぎるために、哺乳類細胞を吸着せず、したがって、哺乳類細胞がこの化合物により攻撃されることはなく、ヒトやペット類に対する安全性は高い。
【0033】
さらに、このリグニン誘導体は、お茶として食用として利用される柿の葉、食用の魚のうろこから得られるヒドロキシアパタイト及び胃酸にも含有される塩酸から構成されることから、原料が天然由来であるという観点からも安全性が高い。
【0034】
また、このリグニン誘導体は、過剰に摂取または皮膚に付着した場合、ヒト由来エステラーゼや消化酵素により分解されてリグニン、カルシウム、リン酸、塩素に分解されることから、安全性が高い。
【0035】
ここでいう抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体は、液体または粉末して得られ、医薬品素材、食品素材、化粧品素材、日用品やマスク材料として利用される。
【0036】
医薬品素材として利用する場合、目的とするリグニン誘導体を分離精製することは、目的とするリグニン誘導体の純度が高まり、不純物を除去できる点から好ましい。
【0037】
分離用担体または樹脂により分離され、分取されることにより目的とするリグニン誘導体が得られる。分離用担体または樹脂としては、表面が後述のようにコーティングされた、多孔性の多糖類、酸化珪素化合物、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ビニルベンゼン共重合体等が用いられる。0.1〜300μmの粒度を有するものが好ましく、粒度が細かい程、精度の高い分離が行なわれるが、分離時間が長い欠点がある。
【0038】
例えば、逆相担体または樹脂として表面が疎水性化合物でコーティングされたものは、疎水性の高い物質の分離に利用される。陽イオン物質でコーティングされたものは陰イオン性に荷電した物質の分離に適している。
【0039】
また、陰イオン物質でコーティングされたものは陽イオン性に荷電した物質の分離に適している。特異的な抗体をコーティングした場合には、特異的な物質のみを分離するアフィニティ担体または樹脂として利用される。
【0040】
アフィニティ担体または樹脂は、抗原抗体反応を利用して抗原の特異的な調製に利用される。分配性担体または樹脂は、シリカゲル(メルク社製)等のように、物質と分離用溶媒の間の分配係数に差異がある場合、それらの物質の単離に利用される。
【0041】
これらのうち、製造コストを低減することができる点から、吸着性担体または樹脂、分配性担体または樹脂、分子篩用担体または樹脂及びイオン交換担体または樹脂が好ましい。さらに、分離用溶媒に対して分配係数の差異が大きい点から、逆相担体または樹脂及び分配性担体または樹脂はより好ましい。
【0042】
分離用溶媒として有機溶媒を用いる場合には、有機溶媒に耐性を有する担体または樹脂が用いられる。また、医薬品製造または食品製造に利用される担体または樹脂は好ましい。
【0043】
これらの点から吸着性担体としてダイヤイオン(三菱化学(株)社製)及びXAD−2またはXAD−4(ロームアンドハース社製)、分子篩用担体としてセファデックスLH−20(アマシャムファルマシア社製)、分配用担体としてシリカゲル、イオン交換担体としてIRA−410(ロームアンドハース社製)、逆相担体としてDM1020T(富士シリシア社製)がより好ましい。これらのうち、ダイヤイオン、セファデックスLH−20及びDM1020Tはさらに好ましい。
【0044】
得られた抽出物は、分離前に分離用担体または樹脂を膨潤化させるための溶媒に溶解される。その量は、分離効率の点から抽出物の重量に対して1〜30倍量が好ましく、6〜26倍量がより好ましい。分離の温度としては物質の安定性の点から9〜31℃が好ましく、17〜23℃がより好ましい。
【0045】
分離用溶媒には、水、または、水を含有する低級アルコール、親水性溶媒、親油性溶媒が用いられる。低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが用いられるが、食用として利用されているエタノールが好ましい。
【0046】
セファデックスLH−20を用いる場合、分離用溶媒には低級アルコールが好ましい。シリカゲルを用いる場合、分離用溶媒にはクロロホルム、メタノール、酢酸またはそれらの混合液が好ましい。
【0047】
ダイヤイオン及びDM1020Tを用いる場合、分離用溶媒はメタノール、エタノール等の低級アルコールまたは低級アルコールと水の混合液が好ましい。
【0048】
抗ウイルス作用を指標として目的とするリグニン誘導体を含む画分を採取して乾燥または真空乾燥により溶媒を除去し、目的とするリグニン誘導体を粉末または濃縮液として得ることは溶媒による影響を除外できることから、好ましい。
【0049】
医薬品として、注射剤または経口剤または塗布剤などの非経口剤として利用され、医薬部外品としては、錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、石鹸、塗布剤、ゲル剤、歯磨き粉等に配合されて利用される。
【0050】
経口剤としては、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、ドリンク剤等が挙げられる。前記の錠剤及びカプセル剤に混和される場合には、結合剤、賦形剤、膨化剤、滑沢剤、甘味剤、香味剤等とともに用いることができる。前記の錠剤は、シェラックまたは砂糖で被覆することもできる。
【0051】
また、前記のカプセル剤の場合には、上記の材料にさらに油脂等の液体担体を含有させることができる。前記のシロップ剤及びドリンク剤の場合には、甘味剤、防腐剤、色素香味剤等を含有させることができる。
【0052】
非経口剤としては、軟膏剤、クリーム剤、水剤等の外用剤の他に、注射剤が挙げられる。外用剤の基材としては、ワセリン、パラフィン、油脂類、ラノリン、マクロゴールド等が用いられ、通常の方法によって軟膏剤やクリーム剤等とすることができる。
【0053】
注射剤には、液剤があり、その他、凍結乾燥剤がある。これは使用時、注射用蒸留水や生理食塩液等に無菌的に溶解して用いられる。
【0054】
これらの医薬品中における前記のリグニン誘導体の含有量は、0.1〜20重量%が好ましく、1〜15重量%がより好ましく、5〜10重量%がさらに好ましい。
【0055】
前記のリグニン誘導体の含有量が0.1重量%未満の場合には、リグニン誘導体の含有量が少なすぎることから抗ウイルス作用を十分に発揮することができない。また、20重量%を越える場合には、製剤の安定性に寄与している成分の含有量が相対的に低下する。
【0056】
得られた食品製剤は、保健機能食品として、栄養機能食品や特定保健用食品として利用されることは好ましい。
【0057】
インフルエンザ予防、ヘルペスウイルスによる肌あれやニキビ予防のための化粧品として常法に従って界面活性化剤、溶剤、増粘剤、賦形剤等とともに用いることができる。例えば、手洗い石鹸、入浴剤、洗口液、油溶性クリーム、毛髪用ジェル、洗顔剤、美容液、化粧水等の形態とすることができる。化粧品の形態は任意であり、溶液状、クリーム状、ペースト状、ゲル状、ジェル状、固形状または粉末状として用いることができる。
【0058】
化粧品として1日数回に分けて塗布、清拭または噴霧される。1日の使用量は0.01〜5gが好ましく、0.05〜3gがより好ましく、0.1〜1gがさらに好ましい。1日の使用量が、0.01gを下回る場合、十分な効果が発揮されないおそれがある。1日の使用量が、5gを越える場合、コストが高くなるおそれがある。
【0059】
水に溶解した水溶液として衣類、家具、カーテン、床に付着したウイルスを不活性化させる噴霧剤に利用される。
【0060】
さらに、柿の葉粉末にヒドロキシアパタイト及び紅麹菌を添加し、発酵させた発酵液に、希塩酸を添加した後、アルカリ還元させる工程からなる前記の抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体の製造方法とは、発酵、希塩酸による処理及びアルカリ還元の3種類の製造工程より構成される。
【0061】
原料として用いる柿の葉の粉砕物とは、日本産、中国産、アメリカ産、アフリカ産の柿の葉のいずれも用いられる。
【0062】
ここでいう柿とは、カキノキ科カキノキ属の富有柿、次郎柿、平核無柿、甲州百目柿、四溝柿、堂上蜂屋柿のいずれでも良い。
【0063】
柿の葉は新鮮なもの、乾燥されたもののいずれでも良い。採取された柿の葉は水道水で洗浄されることは好ましい。
【0064】
ここで柿の葉は、粉砕される。すなわち、柿の葉を乾燥後、粉砕機により粉砕されることは、反応を有効に実施できることから好ましい。たとえば、粉末市場製の柿の葉の粉末は、品質が高いことから好ましい。
【0065】
乾燥機として西村鐵工所製のCDドライヤー、株式会社大川原製作所製のバイブロンやロートスルー、株式会社奈良機械製作所製の旋回気流乾燥機、トルネッシュドライヤー、流動層乾燥機、粉砕機として株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20などが用いられる。
【0066】
原料となるヒドロキシアパタイトとは、リン酸、カルシウム及びリン酸から構成される天然成分であり、サンゴ、魚のウロコ、骨より得ることができる。また、化学合成により製造することが可能である。岩瀬ファルコス社製のヒドロキシアパタイトは、品質が高く、粒子の大きさも均一であることから好ましい。
【0067】
ここで用いる紅麹菌は、有用な食用菌であり、沖縄や鹿児島などの日本産、中国や台湾の東南アジア原産の菌種が用いられる。このうち、紅麹本舗の紅麹菌は品質が高く、良い反応性を呈することから好ましい。
【0068】
発酵のための原料として用いる米糠は、米の最外皮の粉末のことであり、通常は食用には適さないものの、糠漬けの培地として、また、肥料としても、食経験が豊富である。米糠には、微生物の生育に必要な糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルが含有されている。
【0069】
ここで用いる米糠は、いずれの産地でも利用できるものの、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。このうち、有機栽培された米や無農薬で栽培された米から得られる米糠が有害な農薬や金属を含有しないことから、好ましい。
【0070】
大豆粉末は、日本産、中国産、アメリカ産、ロシア産などいずれの産地の大豆でも利用できるが、トレーサビリティーが確実であり、生産者が明確である日本産が好ましい。このうち、有機栽培や無農薬で栽培された大豆が有害な農薬や金属を含有しないことから、さらに好ましい。
【0071】
大豆と米糠は使用に際して、株式会社奈良機械製作所製の自由ミル、スーパー自由ミル、サンプルミル、ゴブリン、スーパークリーンミル、マイクロス、減圧乾燥機として東洋理工製の小型減圧乾燥機、株式会社マツイ製の小型減圧伝熱式乾燥機DPTH−40、エーキューエム九州テクノス株式会社製のクリーンドライVD−7、VD−20、中山技術研究所製DM−6などの粉砕機で粉砕されることにより、発酵が効率的に進行しやすいことから好ましい。
【0072】
さらに、大豆と米糠は粉砕後、オートクレーブなどにより滅菌されることは雑菌の繁殖を防御できることから好ましい。
【0073】
前記の発酵に関するそれぞれの添加量は、柿の葉粉末1重量に対し、ヒドロキシアパタイトは0.5〜3重量が好ましく、紅麹菌は0.001〜0.03重量が好ましい。
【0074】
前記の発酵は清浄な培養用タンクで実施され、水道水により前記の材料を混合することは好ましい。
【0075】
また、この発酵は、37〜50℃に加温され、発酵は、24〜72時間行われる。発酵後に、抽出を効率良く実施するために、水道水で希釈される。
【0076】
この発酵の工程によって、柿の葉からリグニンが分解されてヒドロキシアパタイトと結合する。
【0077】
前記の発酵により生成された発酵物は40〜50℃の温水で抽出されることは、生成物を効率良く回収でき、次の工程が実施しやすいことから、好ましい。
【0078】
得られた発酵物は凍結乾燥などにより、濃縮することは、好ましい。
【0079】
次いで、この発酵物に希塩酸が添加され、処理される。希塩酸は市販の希塩酸液が好ましい。たとえば、和光純薬製や関東化学製の希塩酸は、高い品質であることから、好ましい。ここで用いる希塩酸の濃度は、0.1Nから0.7Nが好ましい。
【0080】
希塩酸溶液は、閉鎖された室内で、ドラフトを利用して実施され、安全防具を着衣した作業員により実施され、希塩酸の処理量は、発酵液1リットルあたり0.1から0.5リットルが好ましい。
【0081】
希塩酸の処理時間として10から30℃の室温では、30分間から2時間が好ましい。
【0082】
希塩酸を処理することにより、溶液は、酸性となり、リグニンとヒドロキシアパタイトと塩素の結合物は、不安定となるため、アルカリ還元されて中和され、安定化される。
【0083】
アルカリ還元の工程は、アルカリ還元装置やアルカリ還元整水器により実施されることが好ましい。たとえば、ゼマイティス製のアルカリ還元水・強酸化水連続生成器「プロテックATX−501」、エヌアイシー製のアルカリ還元水製造装置「テクノスーパー502」、マルタカ製「ミネリア・CE−212」、クレッセント製「アキュラブルー」、株式会社日本鉱泉研究所製「ミネラル還元整水器「元気の水」」などの装置が好ましい。
【0084】
この還元により、塩素がリグニンとヒドロキシアパタイトに安定的に結合し、目的とするリグニン誘導体が安定される。
【0085】
得られたアルカリ還元処理溶液は、フリーズドライされ、粉末化されることは、安定性が高められるため、好ましい。
【0086】
このようにして得られたリグニン誘導体は、液体または粉末として得られる。
【0087】
以下、前記実施形態を実施例及び試験例を用いて具体的に説明する。
【実施例1】
【0088】
岐阜県で無農薬栽培された富有柿の葉を採取した。これを水洗後、乾燥機により乾燥し、粉砕機(クイジナート)により粉砕して、柿の葉粉砕物1kgを得た。これを清浄なステンレスタンクに添加した。
【0089】
これに、岩瀬ファルコス社製のヒドロキシアパタイトを0.8kg添加し、さらに、精製水10Lを添加し、攪拌した。
【0090】
さらに、黒坂屋米店より購入した米糠粉末0.5kgを添加し、攪拌した。また、北海道産大豆をミキサー(クイジナート)に供し、大豆の粉砕物1kgを得た。これらを上記の混合物に添加した。
【0091】
これらを清浄な発酵タンク(滅菌された発酵用丸形50リットルタンク)の容器に移し、精製水5Lを添加し、攪拌した。
【0092】
これに、粉末紅麹菌(麹菌本舗製)20gを発酵タンクに供し、攪拌後、38〜40℃の温度範囲で30時間発酵させた。発酵過程の途中段階で10回良く攪拌した。
【0093】
この発酵液に40℃の精製水5Lを添加した。
【0094】
この発酵液に、関東化学製の0.2N希塩酸溶液1Lを添加し、18℃から22℃の温度範囲で、1時間30分間、攪拌した。
【0095】
これを珪藻土を敷いたろ過器に供し、ろ過した。得られたろ過液をセルラキッス(株式会社ゼノン製)に供し、アルカリ還元装置(ゼマイティス製のアルカリ還元水・強酸化水連続生成器「プロテックATX−501」)に供してアルカリ還元化させた。
【0096】
こうして得られたアルカリ還元物を日本エフディ製の凍結乾燥機に供し、目的とするリグニン誘導体を粉末として249g得た。これを検体1とした。
【0097】
以下に、リグニン誘導体の構造解析に関する試験方法及び結果について説明する。
(試験例1)
【0098】
上記のように得られた検体1を含水エタノールに溶解し、質量分析器付き高速液体クロマトグラフィ(HPLC、島津製作所)で分析し、さらに、核磁気共鳴装置(NMR、ブルカー製、AC−250)で解析した。
【0099】
構造解析の結果、検体1からリグニン骨格を主体としてヒドロキシアパタイト結合物である目的とするリグニン誘導体が同定された。
【0100】
以下に、ヒトリンパ細胞を用いたインフルエンザウイルス抑制試験について述べる。
(試験例2)
【0101】
健常な男女5名より採取した血液からリンパ球を分離した。培養液として5%牛胎児血清含有RPMI−1640培地(Sigma製)を用いて培養した。 10000個のリンパ球を35mm培養シャーレに播種し、5%炭酸ガス下、37℃で培養した。これに、東北大学より分与された香港A型インフルエンザウイルス10000個を培地に希釈してさらに、12時間培養した。
【0102】
これに、前記の実施例1で得られた検体1を0.01mg/ml及び0.1mg/mlの最終濃度で添加してさらに、48時間培養した。
【0103】
細胞を剥離後、細胞数を計数した。さらに、抗インフルエンザウイルス抗体(シバヤキ製)を用いて、ELISA法により、細胞1000個当りのウイルス量を計測した。
【0104】
なお、実験としてシャーレ5枚を用いてその平均値を算出した。
【0105】
その結果、検体1の0.01mg/mlの添加では、ウイルス量は対照群の値に比して平均値として77%にまで減少した。この結果は、検体1がウイルスの増殖を抑制したことを示している。
【0106】
また、検体1の0.1mg/mlの添加では、ウイルス量は対照群に比して平均値として34%に減少した。この結果は、検体1が用量依存的にウイルスの増殖を抑制したことを示している。
【0107】
以上の結果から、検体1には抗ウイルス作用が確認された。一方、正常なリンパ球を用いてウイルス感染を行わずに、検体1の安全性を同様に試験した結果では、検体1の添加によっても、細胞数に変化はなく、正常細胞に対する安全性が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明で得られる副作用が弱い、優れた抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体の製造方法によれば、ウイルス感染やウイルス疾患癌を改善する治療剤や抗ウイルス物質の効率的な製造が可能であり、国民生活のQOL改善に貢献する。
【0109】
本発明のリグニン誘導体は、医薬品、食品製剤、化粧品に利用され、ウイルスによる癌、免疫疾患や肌の健康に悩む国民の生活を改善できる。したがって、本件は、医薬業界、食品業界、化粧品業界の発展に貢献できる。
【0110】
さらに、柿の葉は廃棄物として焼却されて、環境破壊につながっている。柿の葉や松の葉を有効利用することにより、環境破壊を防御することができる。また、農業資源の開拓と産業の育成にもつながる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柿の葉粉末にヒドロキシアパタイト及び紅麹菌を添加し、発酵させた発酵液に、希塩酸を添加した後、アルカリ還元させる工程からなる下記の式(1)で示される抗ウイルス作用を呈するリグニン誘導体の製造方法。
【化1】


【公開番号】特開2011−42599(P2011−42599A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190598(P2009−190598)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(309024284)株式会社安理ジャパン (2)
【Fターム(参考)】