説明

抗ウイルス剤組成物

【課題】高度の抗癌活性を示し、かつ有害な副作用を引き起こさない抗癌剤組成物、およびウイルスによる疾病の治療に有用に用いられる抗ウイルス剤組成物を提供する。
【解決手段】治療学的有効量のクエン酸および/または亜鉛及びL−アルギニンを、薬剤学的に許容可能な担体とともに含有し、抗癌剤の強い毒性により正常細胞に深刻な損傷を被るなどの副作用がなく、優れた抗癌効果または抗ウイルス効果を示す、抗癌剤組成物、または抗ウイルス剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗癌または抗ウイルス剤組成物に関し、治療学的有効量のクエン酸および/または亜鉛及びL−アルギニンを薬剤学的に許容可能な担体とともに含有することを特徴とする抗癌または抗ウイルス剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化学療法の発達につれて、癌患者の生存率と治癒率は改善されているが、抗癌剤の強い毒性により正常細胞に深刻な損傷を被ることが大きな問題点となっている。このような抗癌剤の副作用を防ぐために、癌細胞の増殖のみを特異的に抑制可能な物質が望まれており、これによって、現在、多くの抗癌剤が開発されている。このような抗癌剤としては、国際特許公開WO96/40142号、WO97/13771号およびWO95/23141号に記述された化合物が挙げられる。しかしながら、これらの化合物は、癌細胞の増殖のみを特異的に抑制することができるものの、化学的に合成されたものであるため、人体内において多くの副作用を引き起こすおそれがあった。
【0003】
したがって、多くの研究者等は、副作用を減らし、かつ優れた抗癌効果を有する抗癌剤を開発しようとしており、このため、天然成分からなる抗癌剤が多く開発されていることが現状である。そこで、本発明者等は、天然成分として、上皮性卵巣癌においてヒトの精液成分が抗癌効果があることに着目した。
【0004】
上皮性卵巣癌は、卵巣癌のうち最もありふれた類型であるのみならず、婦人科医学において悪性による主な死亡の原因となっている。上皮性卵巣癌患者の致死率が最も高く現れた理由は、上皮性卵巣癌が潜行性で進行するため、大体、癌が相当進行してから患者が認識するからである(Ozols,R.F. Semin. Oncol.,1995, Vol.22, p61.)。たとえ腫瘍を手術により除去しまたは積極的な化学療法により卵巣癌を治療するとしても、卵巣癌患者の生存率は、薬物耐性によってわずか20〜30%に過ぎない。
【0005】
これまでも、上皮性卵巣癌の危険要素と原因についてよく知られていないことが現状である。しかしながら、多くの研究によって、排卵の頻度と上皮性卵巣癌の進展との間に密接な関係があることが明らかになっており、これは、上皮性卵巣癌の発生率が、若い女性と年取った女性(早い初経と遅い閉経期)、未婚および未出産の女性において増えていることから理解される(Franceshi et al. Int. J. Cancer, 1991, Vol.49, p57; Taylor et al. Cancer, 1959, Vol.12, p1207; Fraumeni et al. J. Natl. Cancer Inst., 1969, Vol.42, p455; Weiss et al. J. Natl. Cancer Inst., 1977, Vol.58, p913; Nergriet al. Int. J. Cancer, 1991, Vol.49, p50; Stanford, J. L. Contraception 43, 1991, p543; Franceshi et al. Int. J. Cancer, 1991, Vol.49, p61)。従って、経口用避妊薬は、一般に上皮性卵巣癌の進展に対して防護効果を示すものと知られている。
【0006】
上皮性卵巣癌の発病を説明する有力な学説は、排卵の間、卵巣上皮表面が繰り返して分裂し回復するからであるとのことである(Fathalla, M. F. Lancet., 1971, Vol.2, p163)。上皮表面が回復する過程において変形した上皮細胞は自発的に突然変異し、腫瘍抑制遺伝子が不活性化し、発癌物質によって腫瘍遺伝子が活性化しやすい。
【0007】
一方、公知された精液の機能および抗癌効果として、ヒトの精液は、リンパ球の細胞の毒性による性交後の精子の免疫学的な損傷を、精液の精漿(seminal plasma)成分が保護するものと知られており(Stities et al. Nature, 1975, Vol.253, p727; James et al.Immunol., 1985, Vol.6, p61)、体液性免疫の発達と生体内腫瘍の成長を抑制させることができると報告されている(Anderson et al., Immunol., 1985, Vol.128, P535; Michaelis et al. Anticancer Drugs, 2000, Vol.11, p369)。また、子宮頸部の上皮性癌腫細胞において、メタロプロテイナーゼ(MMP)−2およびMMP−9のmRNAが生成するのに影響するので、性行為の際に精液により子宮頸部癌の進行に影響を及ぼすことがあると知られている(Jeremias et al. Am. J. Obstet. Gynecol., 1999, Vol.181, p591)。最近、ウシ精液リボヌクレアーゼ(Bovine Seminal Ribonuclease;BS-RNase)が、ヒトリンパ球とヒト腫瘍細胞に露出する時間と濃度により、アポトーシス(細胞自殺)を誘導することが明らかになった。ウシ精液リボヌクレアーゼは、化学治療学的な薬物に対して耐性的な神経芽細胞種(neuroblastoma;NB)に対して高い効能を示す物質である(Cinatl et al. Anticancer Res., 2000, Vol.20, p853; Cinatl et al. Int. J. Oncol., 1999, Vol.15, p1001)。
【0008】
また、Gjorgov等は、生態学的な研究を通じた精液の抗癌効果について、様々な事例−対照研究を行い、ヒト精液への減少した露出と乳癌の発生との相互関係を調査したことがある。調査方法は、精液に対してバリア型避妊具(コンドーム)を用いた女性と、ノンバリア型避妊具[避妊薬、子宮内装置(Intra Uterine Device;IUD)、リズムまたは卵管結紮]を用いた女性とを対象として乳癌の発生危険度を比較した結果、バリア型避妊具(コンドーム)を用いた女性において、乳癌の発生危険度が5.2倍高いという結果が報告されたことがある(Gjorgov et al. Folia Med., 1998, Vol.40, p17)。
【0009】
前述した抗癌効果を示す精液の主要成分は、アルブミン、ラクトフェリン、伝達因子、免疫グロブリン、酸ホスファターゼ、L−カルニチン、L−アルギニン、L−ヒスチジン、クエン酸、フルクトース、マグネシウム、亜鉛、プロスタグランジン、およびグリセロリン酸コリンである。
【0010】
従って、本発明者等は、上述したヒト精液成分が抗癌効果を有するという点を利用して、副作用を減らし、かつ優れた抗癌効果を示すことのできる抗癌剤を開発しようとした。
【0011】
また、本発明者等は、パピローマウイルスが子宮癌を引き起こす因子である点に注目した。
【0012】
パピローマウイルスは、動物の様々な組織の上皮細胞に感染して、手、足、皮膚、喉頭にイボと呼ばれる陽性腫瘍を引き起こすものと知られている。これらのパピローマウイルスは、現在、人間において100余種の遺伝子型が明らかになっているが、様々な遺伝子型がその感染組織に対して特異性を示し、様々な疾病を引き起こすものと報告されたことがある(Broker et al. Cold Spring Harbor Laboratory, 1989, p17)。このような様々な遺伝子型の殆どのパピローマウイルスは、治療がうまく進まなく、感染患者に酷い痛みを引き起こすものの、致命的な疾病を引き起こさないため注目されていなかった。しかし、最近、このウイルスの特定型、特にヒトパピローマウイルスの16型と18型は、男女の生殖器、口腔、皮膚での悪性腫瘍と関連して、女性子宮癌の90%以上を占める子宮頸部癌を引き起こす主要因子として作用するだけでなく、6b型と11型は、尖圭コンジローマ(または生殖器疣、condyloma acuminata)と命名された男女の生殖器の陽性腫瘍を引き起こすものと明らかになった。また、疫学調査の結果、子宮癌が主に性的接触により伝播する因子のため生じることが提示されており(Durst et al. Natl. Acad. Sci., 1983, Vol.80, p3812)、子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasma, CIN)と命名された前癌病変の85〜100%が、パピローマウイルスによる感染から引き起こされる点など、パピローマウイルスによる感染のため子宮癌が引き起こされるという多くの証拠が提示されている(Hansen, H., Science, 1991, Vol.254, p1173)。
【0013】
また、子宮癌患者においてヒトパピローマウイルスの16型と18型の感染率は、一般に16型が50〜70%、18型が15〜25%に至るものと報告されている。しかし、転移癌の場合は、16型に感染した癌患者の25%、また18型に感染した癌患者の50%以上が、転移癌患者であるものと調査された(Lorincz et al. Obstetrics and Gynecology, 1992, Vol.79, p328)。
【0014】
従って、本発明者等は、パピローマウイルスにより子宮癌が引き起こされることに着目して、抗癌効果のあるヒトの精液成分中に、抗ウイルス効果がある物質であるクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを加えて、ウイルスの感染により発生する様々な疾病を予防および治療しようとした。
【発明の概要】
【0015】
本発明者等は、上皮性卵巣癌において、排卵期間の間ヒト精液に対する減少した露出が、上皮性卵巣癌の進行に病因学的な危険要素のうち一つであることを見つけ、これによって、ヒトの精液成分を用いると、悪性形質転換された上皮細胞を除去するのに効果的に寄与するという結論に至った。また、前記抗癌効果のあるヒトの精液成分を含む組成物が、パピローマウイルスによる感染のため子宮癌が引き起こされた細胞において発現されるパピローマウイルスの蛋白質を減少させることを見つけた。
【0016】
従って、本発明は、次のような抗癌または抗ウイルス剤組成物を提供する。
【0017】
本発明の一つの観点によると、治療学的有効量のクエン酸および/または亜鉛およびL−アルギニンを薬剤学的に許容可能な担体とともに含有することを特徴とする抗癌組成物を提供する。
【0018】
本発明の他の観点によると、治療学的有効量のクエン酸および/または亜鉛およびL−アルギニンを薬剤学的に許容可能な担体とともに含有することを特徴とする抗ウイルス組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】活性成分としてクエン酸およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物が、ヒト卵巣腺腫(複数)SKOV−3(黒三角)およびヒト神経膠芽腫細胞U87(◆:黒菱型)に及ぼす影響を、MTT検定を通じた細胞の生存率で示したグラフである。
【図2】活性成分として亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物が、ヒト卵巣腺腫(複数)SKOV−3(黒三角)およびヒト神経膠芽腫細胞U87(◆:黒菱型)に及ぼす影響を、MTT検定を通じた細胞の生存率で示したグラフである。
【図3】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物が、ヒト卵巣腺腫(複数)SKOV−3(黒三角)、ヒト卵巣腺腫NIH:OVCAR−3(◆:黒菱型)およびヒト卵巣表面正常上皮細胞NOSE(黒四角)に及ぼす影響を、MTT検定を通じた細胞の生存率で示したグラフである。
【図4】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物が、ヒト子宮頸部癌細胞であるCa Ski(黒三角)、HeLa(◆:黒菱型)およびC−33 A(黒四角)に及ぼす影響を、MTT検定を通じた細胞の生存率で示したグラフである。
【図5】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物が、ヒト子宮頸部癌細胞であるCa Skiの細胞周期に及ぼす影響を示すフローサイトメトリーによる分析結果である。
【図6】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物が、ヒト子宮頸部癌細胞であるHeLaの細胞周期に及ぼす影響を示すフローサイトメトリーによる分析結果である。
【図7】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物が、ヒト子宮頸部癌細胞であるC−33 Aの細胞周期に及ぼす影響を示すフローサイトメトリーによる分析結果である。
【図8】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物を、ヒト子宮頸部癌細胞であるCa Ski、HeLaおよびC−33 Aに処理した後、培養させて抽出したDNAをアガロースゲル電気泳動で分析した結果を示した写真である。
【図9】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物を、ヒト子宮頸部癌細胞であるCa Ski、HeLaおよびC−33 Aに処理した後、免疫ブロット法を用いてP53蛋白質の発現を観察した写真である。
【図10】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物を、ヒト子宮頸部癌細胞であるCa Ski、HeLaおよびC−33 Aに処理した後、免疫ブロット法を用いてP21蛋白質の発現を観察した写真である。
【図11】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物を、ヒト子宮頸部癌細胞であるCa Ski、HeLaおよびC−33 Aに処理した後、免疫ブロット法を用いてC−Myc蛋白質の発現を観察した写真である。
【図12】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗癌剤組成物を、ヒト子宮頸部癌細胞であるCa Ski、HeLaおよびC−33 Aに処理した後、DAPI染色を用いて癌細胞の核を観察した写真である。
【図13】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗ウイルス剤組成物を、ヒト子宮頸部癌細胞であるCa Ski、HeLaに処理した後、免疫ブロット法を用いて、ヒトパピローマウイルス16型または18型のE6蛋白質とE7蛋白質の発現を観察した写真である。
【図14】活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗ウイルス剤組成物を、尖圭コンジローマが引き起こされた女性患者の外陰部に塗って尖圭コンジローマの治療を観察した写真である。
【図15】活性成分としてクエン酸および/または亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗ウイルス剤組成物を、エンテロウイルスに感染した細胞に処理して細胞病変が抑制されることを分析したグラフである。
【図16】活性成分としてクエン酸および/または亜鉛およびL−アルギニンを含有した本発明の抗ウイルス剤組成物を、ポリオウイルスに感染した細胞に処理して細胞病変が抑制されることを分析したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一様態によると、活性成分としてクエン酸およびL−アルギニンを含有する抗癌剤組成物を提供する。
【0021】
前記抗癌剤組成物は、活性成分として、クエン酸を組成物の総重量に対し、0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%で含有し、L−アルギニンを組成物の総重量に対し、0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%で含有し、これに薬剤学的に許容可能な担体を含有することを特徴とする。前記抗癌剤組成物に用いられる担体は、製薬分野において通常用いられる担体、補助剤およびビヒクルを含む。
【0022】
本発明の他の様態によると、活性成分として亜鉛およびL−アルギニンを含有する抗癌剤組成物を提供する。
【0023】
前記抗癌剤組成物は、活性成分として、亜鉛を組成物の総重量に対し、0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%で含有し、L−アルギニンを組成物の総重量に対し、0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%で含有し、これに薬剤学的に許容可能な担体を含有することを特徴とする。前記抗癌剤組成物に用いられる担体は、製薬分野において通常用いられる担体、補助剤およびビヒクルを含む。
【0024】
本発明のさらに他の様態によると、活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有する抗癌剤組成物を提供する。
【0025】
前記抗癌剤組成物は、活性成分として、クエン酸を組成物の総重量に対し、0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜5重量%で含有し、亜鉛を組成物の総重量に対し、0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%で含有し、L−アルギニンを組成物の総重量に対し、0.01〜20重量%、好ましくは0.5〜10重量%で含有し、これに薬剤学的に許容可能な担体を含有することを特徴とする。前記抗癌剤組成物に用いられる担体は、製薬分野において通常用いられる担体、補助剤およびビヒクルを含む。
【0026】
前記各様態の活性成分として選択的に用いられるクエン酸;亜鉛;およびL−アルギニンは、下記のような形態で本発明の抗癌剤組成物に用いられ得るが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明で用いるクエン酸は、様々な植物の種または果汁中に遊離状態で存在するクエン酸を抽出して用いられる。またクエン酸はカビである黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)を用いた表面発酵方式または水中発酵方式によっても製造されるが、これもまた本発明の組成物に用いられる。前記クエン酸の生産工程には、糖蜜が糖含有原料源として用いられ、ノズル型遠心分離機、自動排出型遠心分離機、デカンターのような様々な遠心分離機が活用されている。
【0028】
本発明で用いる亜鉛は、カキ、甲殻類、魚、赤肉のような動物性食品、および穀物と豆類、堅果類、種のような様々な植物性食品に十分な濃度で含有されているものを抽出して用いられる。本発明の組成物に含有される亜鉛の形態としては、極めて多様であり、多くの臨床研究では硫酸塩亜鉛を用いてきたが、人体はその他の形態もうまく吸収して利用する。例えば、ピコリネートと酢酸塩、クエン酸塩、グリセリン酸塩またはモノメチオニンと亜鉛の結合形態が挙げられる。
【0029】
本発明で用いるL−アルギニンは、発酵または蛋白質からの抽出により製造されたものが用いられるが、好ましくは、発酵方法により製造されたものを用いることができる。発酵によるL−アルギニン酸の製造方法としては、アルギニン類似体に対する耐性を有する菌株を用いる製造方法(Agricultural Biological Chemistry, 1972, Vol.36, p1675; Journal of General Applied Microbiology, 1973, Vol.19, p339; 日本国特公昭48-3391号および米国特許第3723249号)、炭素源、窒素源から直接L−アルギニンを産生する方法であって、グルタミン酸産生菌株であるブレビバクテリウム属またはコリネバクテリウム属微生物から誘導された変異株を用いる方法(日本国特開昭57-163487号、日本国特開昭60-83593号および日本国特開昭62-265988号)、細胞融合で生育改善されたアミノ酸産生菌株を用いる方法(日本国特開昭58-158185号)、およびL−アルギニン生合成経路に属する遺伝子およびベクターDNAを含有する組替えDNAを保有する菌株を用いる製造方法(日本国特開昭63-79597号、日本国特開昭60-66989号および米国特許第4,775,623号)が挙げられる。
【0030】
本発明の抗癌剤組成物は、癌細胞のアポトーシスを誘導することにより、癌細胞死滅または癌細胞の増殖を抑制する活性を有している。アポトーシスは、病理学的な細胞死を意味する壊死とは異なり、遺伝子において先天的にプログラム化された細胞死であって、特定の外部または内部因子によりアポトーシスを計画通り進行する遺伝子が活性化することにより生じる。このような遺伝子が活性化することにより、次いでプログラム化された死滅遺伝子蛋白質がその自体細胞内で生合成されて分解され、これによって結局死滅が生じる。アポトーシスは、一般に、生化学的方法であるDNA断片を観察して測定するかまたは分子生物学的方法であるアポトーシスと関連した蛋白質の発現を測定して評価するが、最近、公開された多くの研究報告によると、腫瘍細胞のアポトーシスを誘導する物質は、腫瘍細胞の死滅を調節することができ、各種の癌を効果的に抑制することができるとされている。
【0031】
本発明では、本発明の抗癌剤組成物が癌細胞に特異的に作用して細胞を死滅させる機序がアポトーシスであるということを証明するために、前述した方法を用いた。即ち、本発明の抗癌剤組成物によるDNA断片を、癌細胞のDNAを抽出することにより観察することができ(図8参照)、本発明の抗癌剤組成物によるアポトーシスと関連した蛋白質の発現を観察することができた(図9、10および11参照)。本発明において発現が確認されたアポトーシスと関連した蛋白質としては、P21、P53およびC−Myc蛋白質である。P53およびP21蛋白質は、P53蛋白質が発現すると、細胞分裂促進因子の活性を阻害させるP21蛋白質の合成を誘導することにより、結局、細胞分裂を抑制させる癌抑制蛋白質であり、C−Myc蛋白質は、癌細胞内でDNAの分裂を促進させて癌細胞の分裂を活性化させる癌誘発蛋白質であり、当業界によく知られている。
【0032】
本発明の抗癌剤組成物は、癌細胞のアポトーシスを誘導することにより抗癌効果を示すので、当業者であれば、本願に例示的に記載された子宮癌または上皮性卵巣癌に対する本発明の抗癌剤組成物の効果に基づいて、他の類型の癌に対しても同様に適用され得ることを認識すべきものである。
【0033】
従って、本発明の抗癌剤組成物は、これらに限定されるものではないが、以下のような数種の癌を治療するのに有用である:膀胱、乳房、腸、腎臓、肝、肺(小細胞肺癌を含む)、脳、食道、胆嚢、子宮、卵巣、膵臓、胃、頸部、甲状腺、前立腺、および皮膚(扁平上皮細胞癌を含む)のような癌腫;白血病、急性リンパ性白血病、B−細胞リンパ腫、T−細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、毛様細胞リンパ腫、およびバーキットリンパ腫を含むリンパ系列の造血性腫瘍;急性慢性骨髄性白血病、骨髄異型性症候群、および急性前骨髄球性白血病を含む骨髄系列の造血性腫瘍;線維肉腫および横紋筋肉種を含む間充織発源の腫瘍星状細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、および神経鞘腫を含む中枢および末梢神経系の腫瘍;および黒色腫、精上皮腫、奇形腫、骨肉腫、色素性乾皮症、角化棘細胞腫、甲状腺濾胞癌、およびカポシ肉腫を含むその他の腫瘍。
【0034】
好ましくは、肺癌、脳腫瘍、乳癌、大腸癌、子宮癌、妊娠性絨毛上皮癌または上皮性卵巣癌の抑制または治療に有用であり、最も好ましくは、子宮癌または上皮性卵巣癌の抑制または治療に有用である。
【0035】
他の観点では、本発明は、活性成分としてクエン酸およびL−アルギニンを含有する抗ウイルス剤組成物を提供する。
【0036】
前記抗ウイルス剤組成物は、活性成分として、クエン酸を組成物の総重量に対し、0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜5重量%で含有し、L−アルギニンを組成物の総重量に対し、0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%で含有し、これに薬剤学的に許容可能な担体を含有することを特徴とする。前記抗ウイルス剤組成物に用いられる担体は、製薬分野において通常用いられる担体、補助剤およびビヒクルを含む。
【0037】
また他の観点では、本発明は、活性成分として亜鉛およびL−アルギニンを含有する抗ウイルス剤組成物を提供する。
【0038】
前記抗ウイルス剤組成物は、活性成分として、亜鉛を組成物の総重量に対し、0.0001〜5重量%、好ましくは0.001〜1重量%で含有し、L−アルギニンを組成物の総重量に対し、0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%で含有し、これに薬剤学的に許容可能な担体を含有することを特徴とする。前記抗ウイルス剤組成物に用いられる担体は、製薬分野において通常用いられる担体、補助剤およびビヒクルを含む。
【0039】
さらに他の観点では、本発明は、活性成分としてクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを含有する抗ウイルス剤組成物を提供する。
【0040】
前記抗ウイルス剤組成物は、活性成分として、クエン酸を組成物の総重量に対し、0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜5重量%で含有し、亜鉛を組成物の総重量に対し、0.0001〜5重量%、好ましくは0.001〜1重量%で含有し、L−アルギニンを組成物の総重量に対し、0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%で含有し、これに薬剤学的に許容可能な担体を含有することを特徴とする。前記抗ウイルス剤組成物に用いられる担体は、製薬分野において通常用いられる担体、補助剤およびビヒクルを含む。
【0041】
本発明の抗ウイルス剤組成物の活性は、癌細胞株において発現するウイルスの蛋白質を分析して証明することができる。即ち、本発明の抗ウイルス剤組成物を癌細胞株に処理した後、前記癌細胞に発現した蛋白質を抽出して、通常、当業界によく知られている分子生物学的方法により分析することができる。また、本発明の抗ウイルス剤組成物の活性は、身体のウイルス感染部位に直接前記抗ウイルス剤組成物を処理して、感染症状が予防また治療されることを確認することにより証明できる。
【0042】
本発明の一実施例として、本発明において分析しようとするパピローマウイルスの蛋白質は、ヒトパピローマウイルス16型または18型のE6とE7で子宮癌を引き起こす抗原蛋白質としてよく知られている。ここに、本発明者等は、子宮癌細胞株において前記蛋白質が減少する機序が、本発明による抗ウイルス剤組成物の処理によることであるのを証明することができた(図13参照)。また、ヒトパピローマウイルスに感染して、生殖器の周辺に尖圭コンジローマが引き起こされた女性の患者に、本発明の抗ウイルス剤組成者を処理することにより、尖圭コンジローマが治療されることを観察することができ(図14参照)、また、エンテロウイルスまたはポリオウイルスに感染した細胞に、本発明の抗ウイルス剤組成者を処理することにより、ウイルスの増殖を抑制して細胞病変現象が起こらないのを確認することができた(図15、図16参照)。
【0043】
本発明の抗ウイルス剤組成物は、ウイルスによる感染から引き起こされる様々な疾病を予防または治療することができる。従って、本発明の抗ウイルス剤組成物で治療または予防可能なウイルスによる感染から引き起こされる疾病としては、以下のものに限定されるものではないが、パピローマウイルスにより感染した表皮が局所的に増殖して皮膚が肥厚する腫瘍であるイボ、パピローマウイルスにより感染した生殖器や肛門の周囲で引き起こされる尖圭コンジローマ等を治療することができる。また、本発明の抗ウイルス剤組成物は、ウイルスの増殖を抑制する効果があり、後天性免疫不全症候群を引き起こすエイズウイルス、インフルエンザウイルス、脳膜炎を引き起こすエンテロウイルス、小児麻痺を引き起こすポリオウイルスの増殖を抑制させることができる。
【0044】
好ましい様態として、本発明の抗ウイルス剤組成物は、パピローマウイルス、エンテロウイルスまたはポリオウイルスによる感染から引き起こされる疾病を予防または治療することができる。
【0045】
本発明の抗癌または抗ウイルス剤組成物(以下、“本発明の組成物”という)に用いられる担体は、製薬分野において通常用いられる担体、補助剤およびビヒクルを含んでおり、総括的に“薬剤学的に許容可能な担体”という。本発明の組成物に用いられ得る薬剤学的に許容可能な担体”としては、これらに限定されるものではないが、イオン交換、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清蛋白質、緩衝化剤(例えば、各種のリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセライド混合物)、水、塩、または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、および亜鉛塩)、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース基質、ポリエチレングリコール、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ポリアリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロック共重合体、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が挙げられる。
【0046】
本発明の組成物は、目的とする組織が得られる限り、全ての一般の経路を介して投与され得る。従って、本発明の組成物は、局所、経口、非経口、眼内、経皮、直腸、腸管を通じて投与され得、溶液、懸濁液、錠剤、丸薬、カプセル、徐放性製剤、軟膏剤、またはクリーム剤に剤形化することができる。本願の明細書に用いられた用語の“非経口”とは、皮下、鼻腔内、静脈内、腹腔内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、心臓内、硬膜内、病変内、および頭蓋内への注射または注入技術を含む。
【0047】
一様態において、本発明の組成物を経口用固形剤に剤形化する場合、活性成分とともに希釈剤(例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、セルロース、トウモロコシ澱粉またはジャガイモ澱粉)、滑剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、および/またはポリエチレングリコール)、結合剤(例えば、澱粉、アラビアゴム、ゼラチンメチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン)、崩壊剤(澱粉、アルギン酸、アルギン酸塩またはグリコール酸澱粉ナトリウム)、フォーマル混合物、染料、甘味剤、湿潤剤(例えば、レシチン、ポリソルビン酸、ラウリル硫酸)、および一般的に薬剤に用いられる薬物学的不活性物質を含有することができる。これらの薬剤は、公知の方法、例えば、混合、顆粒化、打錠、糖衣、または被膜工程の手段により製造することができる。
【0048】
他の様態において、本発明の組成物は、溶液、乳濁液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルの経口投与用液状組成物に剤形化する場合、通常用いられる不活性希釈剤(例えば、蒸留水、エタノール)を含むことができる。必要に応じて、液状組成物は、その他の補助剤、例えば湿潤剤、懸濁剤、香料、芳香剤、および防腐剤を含むことができる。
【0049】
さらに他の様態において、本発明の組成物は、非経口的投与のための水溶性溶液で製造することができる。好ましくはハンクス溶液、リンガー溶液、または緩衝生理食塩水のような適切な緩衝溶液を用いることができる。水溶性注入懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストランのような懸濁液の粘度を増加させることができる物質を添加することができる。さらに、活性成分の懸濁液は、適合したオイルの注入懸濁液であって、適合した脂溶性溶媒または担体は、ゴマ油のような脂肪酸またはオレイン酸エチル、トリグリセライドまたはリポソームのような合成脂肪酸エステルを含む。多価陽イオン性非脂質アミノポリマーもビヒクルとして用いられ得る。必要に応じて、懸濁液は、化合物の溶解度を増加させ、高濃度の溶液を製造するために適合した安定化剤または薬剤を用いることができる。
【0050】
さらに他の様態において、本発明の組成物は、滅菌注射用水性または油性懸濁液として、滅菌注射用製剤の形態で製造することができる。このような懸濁液は、適合した分散剤または湿潤剤(例えば、ツイン80)および懸濁化剤を用いて、本分野に公知の技術により剤形化することができる。また、滅菌注射用製剤は、無毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液)であってもよい。用いられ得るビヒクルおよび溶媒としては、マンニトール、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。また、通常、滅菌不揮発性油が溶媒または懸濁化媒質として用いられる。このような目的のため、合成モノまたはジグリセライドを含んで刺激性の少ないものであれば、いずれの不揮発性油も用いることができる。オレイン酸およびそのグリセライド誘導体のような脂肪酸が、薬剤学的に許容可能な天然油(例えば、オリーブ油またはひまし油)、特に、これらのポリオキシエチル化したものと同様に注射製剤にも有用である。
【0051】
このように製造された液相組成物は、殆どバクテリア捕獲フィルタを通じたろ過によって、殺菌剤または放射線を混入させることにより殺菌される。殺菌された組成物は、例えば凍結乾燥により固形組成物を得て固形化することができ、使用の際にこれを無菌水または無菌希釈液に溶解させる。
【0052】
他の観点として、本発明の組成物のうち抗ウイルス剤組成物の好ましい剤形は、治療学的有効量の前記活性成分を薬剤学的に許容可能な担体とともに経皮投与用として剤形化することができる。ここで“経皮投与”とは、薬剤学的組成物を局所的に皮膚に投与して、薬剤学的組成物に含有された治療学的に有効な量の活性成分が皮膚内に伝達されることを意味する。
【0053】
本発明による経皮製剤は、クリーム剤、軟膏剤、ローション剤、ゲル剤、外用液剤、ペースト剤、塗布剤、外用散剤、エアゾール剤、および経皮吸収剤を含む。これらの剤形は、全ての製薬化学に一般に公知された薬局方である文献(Remington's Pharmaceutical Science, 15th Edition, 1975. Mark Publishing Company, Easton, Pennsylvania, 18042, Chapter 87:Blaug, Seymour)に記述されている。
【0054】
代表的に、本発明のクリーム剤は、コールドクリーム、皮膚軟化用クリーム、シェービングクリーム、バニシングクリーム、およびハンドクリームが含まれ、一般に、ステアリン酸と水を含有する水中油型基剤(o/w)で塗布した後、水は蒸発し、ステアリン酸の薄い膜を残すバニシングクリームが好適に用いられる。また、コールドクリームが好適に用いられるが、この製剤は、セチルアルコール、蜜蝋、白蝋、流動パラフィン、ホウ酸ナトリウム、および蒸留水で調剤された半固形の白色の水中油型基剤(o/w)状態の製剤である。本発明の軟膏剤は、これに用いられる基剤の種類により、炭化水素基剤、吸収基剤、水洗が可能な基剤および水溶性基剤に分類されるが、これらは全て剤形分野の専門家によく知られているものとして本発明に含まれる。本発明のローション剤は、懸濁性と乳濁性に分けられるが、通常、乳化剤または他の適切な安定剤を用いて製造する。これらは全て剤形分野の専門家によく知られているものとして本発明に含まれる。
【0055】
以下、上述した内容を参考として、本発明による経皮剤の製造方法についてクリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、およびペースト剤を挙げて説明する。
【0056】
経皮剤として用いられる代表的なものとしてはクリーム剤があるが、このクリーム剤は、アルコール類、蜜蝋、ソルビタンモノオレエートのような油相と、ソルビトール溶液、ポリソルベート、メチルパラベン、プロピルパラベン、グリセリン、水酸化カリウム、および蒸留水等の混合溶液で構成された水相とを、別途に65〜75℃で加熱し、油相を水相に徐々に加えながら攪拌させて粗エマルジョンを形成する。このようにして形成されたエマルジョンを、揮発および分解が生じない温度に冷却させて均質化した後、凝固するまで一定の速度で攪拌することにより得ることができる。
【0057】
軟膏剤は、大規模または小規模で製造することができ、特殊な調剤法を取る場合は、その成分の性状に大きく依存するようになる。軟膏剤の小規模の製造時は、均一な製剤が得られるまで軟膏成分をいくつかの方法を用いて混合する軟化法が用いられ、また大規模の製造時は、軟膏の全部または一部の成分を溶融させた後、凝固するまで一定の速度で攪拌しながら冷却させて混合する溶融法が用いられている。このとき、融解しない成分は、通常、冷却しながら混合する過程が必要となる。一般に、熱に不安定な物質や揮発性物質は、混合物の温度が成分の分解や揮発を生じない低温の範囲で軟膏剤を製造するようになる。
【0058】
ゲル剤は、80〜90℃で加熱された蒸留水にメトセルを分散させた後、約12時間の間静置し、静置した蒸留水にゲル剤組成物を分散させて分散液を製造する。その後、水酸化ナトリウム溶液を分散液に添加して中性pHに調節する。このようにして製造された分散液に、メチルパラベン、メトセル、カルボポル、およびプロピレングリコールを混合することによってゲルが得られる。
【0059】
ペースト剤は、ペースト剤の組成物を乳鉢に入れて粉末化した後、ワセリン等に均一に混合して製造することができる。
【0060】
本発明の経皮剤形において、活性成分のクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンは、公知の物理的方法および化学的方法により皮膚内への吸収を促進することができる。主に、熱、電気および超音波エネルギーを用いる物理的方法が適合するが、好ましくは、化学的方法を用いることができる。本発明による化学的方法において用いられる経皮吸収促進剤としては、下記表1に記載のものが含まれる。
【0061】
【表1】

【0062】
本発明の組成物と関連して用いられる用語の“治療学的有効量”とは、本発明の組成物が適用される癌またはウイルスによる感染から引き起こされる疾病に対して、改善または治療の効果を示す活性成分の量を意味する。本発明による組成物の治療学的有効量は、患者の年齢、性別、適用部位、投与回数、投与時間、剤形、補助剤の種類により変わるものの、注射剤の場合、一般に50〜5000mg、好ましくは100〜4000mg、最も好ましくは250〜3000mgを1日1〜5回投与することができ、経口投与剤の場合、一般に1〜2000mg、好ましくは250〜1000mg、最も好ましくは300〜500mgを1日1〜5回投与することができる。また、経皮剤の場合、一般に約2〜3週間の間1日1回または2回、患部に500〜2000mgを塗ることにより、予防または治療の効果が得られる。
【0063】
本発明は、下記実施例によりさらに具体的に例示される。しかし、これらの実施例は、単に本発明の具現例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0064】
実施例1:注射剤の製造
クエン酸(Sigma, U.S.A.)、亜鉛(Sigma, U.S.A.)およびL−アルギニン(Sigma, U.S.A.)を、下記の表2に記載の本発明の組成物による活性成分を選んで配合した後、滅菌水を100%の組成量として、それぞれの活性成分とともに混合した後、これをバイアル(100mg)に充填して本発明の組成物を製造した。
【0065】
【表2】

【0066】
実施例2:錠剤の製造
クエン酸(Sigma, U.S.A.)、亜鉛(Sigma, U.S.A.)およびL−アルギニン(Sigma, U.S.A.)を上記の表2による活性成分を選んで配合した後、ラクトース30重量%、ステアリン酸マグネシウム5重量%、グリコール酸澱粉ナトリウム10重量%、および滅菌水を100%の組成量として、それぞれの活性成分とともに混合した後、これを30〜60℃に維持しながら、1時間の間攪拌して室温で冷却させた後、通常の錠剤の製造方法により打錠して組成物350mgずつを含有する錠剤を製造した。
【0067】
実施例3:経皮剤の製造
本発明の組成物のうち抗ウイルス剤組成物を経皮剤形に製造するために、クエン酸2重量%、亜鉛0.1重量%およびL−アルギニン5重量%を、1Lのエタノールが満たされたビーカーに溶解させた後、−20℃で24時間冷凍保管した。その後、前記ビーカーで凝固物を得て、これを経皮剤形の活性成分として用いた。前記凝固物は、約10倍の濃縮率を有する。
【0068】
(1)クリーム剤
油相
ステアリン酸 13重量%
ステアリルアルコール 1重量%
エチルアルコール 1重量%
製造された凝固物 5重量%
水相
グリセリン 10重量%
メチルパラベン 0.1重量%
プロピルパラベン 0.05重量%
水酸化カリウム 0.9重量%
蒸留水 100%組成量
油相と水相を別途に65℃に加熱し、油相を水相に徐々に加えながら攪拌させることによって粗エマルジョンを形成した。形成されたエマルジョンを約50℃に冷却させて均質化した。均質化物が凝結するまで振盪させながら冷却させることによって、クリーム剤を得た。
【0069】
(2)軟膏剤
ワセリン 80重量%
ステアリルアルコール 3重量%
白蝋 9重量%
コレステロール 3重量%
製造された凝固物 5重量%
ステアリルアルコール、白蝋、コレステロールおよび前記製造された凝固物をスチームバスで溶かし、ワセリンを添加した後、液体が形成するまで徐々に加熱し続けた。攪拌冷却させて凝結することにより、軟膏剤を得た。
【0070】
(3)ゲル剤
メトセル90H.C.4000 0.8重量%
カルボポル934 0.24重量%
プロピレングリコール 16.7重量%
メチルパラベン 0.015重量%
製造された凝固物 5重量%
水酸化ナトリウム pH7調整量
蒸留水 100%組成量
メトセルを熱水(80〜90℃)に分散させ、一夜冷蔵庫で冷却させて溶液化した。カルボポル934、前記凝固物を水に分散させ、分散液に十分な量の水酸化ナトリウム溶液を添加して、pHを7.0に調節した。蒸留水を添加して容量を40mlとした。メチルパラベンをプロピレングリコール中に溶解させた。メトセル、カルボポル934およびプロピレングリコールを混合してゲルを得た。
【0071】
(4)ペースト剤
酸化亜鉛 25重量%
澱粉 25重量%
カラミン 5重量%
製造された凝固物 5重量%
ワセリン 100%組成量
カラミンを酸化亜鉛、前記凝固物および澱粉で滴定し、乳鉢で粉末化してワセリンに均一に入れてペースト剤を得た。
【0072】
実施例4:クエン酸とL−アルギニンを活性成分として含有した抗癌剤組成物の処理による細胞生存率の測定
クエン酸とL−アルギニンを活性成分として含有した本発明の抗癌剤組成物が、癌細胞の成長と生存に及ぼす影響を調べるために、クエン酸とL−アルギニンの含量を異にして製造した組成物(表3)を癌細胞株に処理して、細胞生存率を測定した。細胞株としては、SKOV−3(ヒト卵巣腺腫(複数)、ATCC番号:HTB−77)とU87(ヒト神経膠芽腫細胞、ATCC番号:HTB−14)を用いた。
【0073】
前記細胞を3×10細胞/ウェルとなるように96−ウェルプレートに入れた後、12時間の間培養した。培養培地としては、熱不活性化FBS(ウシ胎仔血清)10%(v/v)、ストレプトマイシン100μg/ml、ペニシリン100U/ml、およびL−グルタミン100μg/mlを添加したDMEM(Dulbecco'smodified Eagle's medium, Life Technology, Inc., U.S.A.)を用いた。
【0074】
培養したそれぞれの細胞株に、クエン酸とL−アルギンの含量を異にしたことを除いては、実施例1と同様にして製造された組成物を処理して分類した後、これを37℃で二酸化炭素5%と酸素95%が供給される状態において24時間の間培養した後、細胞の生存率を測定した。
【0075】
【表3】

【0076】
細胞の生存率は、公知されたMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-yl)2,5-ジフェニル-2H-テトラゾリウムブロマイド)検定法で測定した(Hansen, M.B. et al., J. Immunol. Methods, 172, 203-210(1989))。20μlMTT溶液[PBS(リン酸緩衝生理食塩水)のうち10mg/mlであるMTT]をそれぞれのウェルに添加し、平板を37℃で4時間培養した。培地を除去した後、DMSO(ジメチルスルホキシド)200μlにホルマザン結晶を溶解させて、それぞれのウェルに添加した。これを10分間室温で振盪して混合し、Bio−Radモデル3550マイクロプレートリーダ(Richmond, C.A.)を用いて540nmで測定した。このとき、DMEM−FBSとMTTが添加され、前記組成物を添加しなかったウェルを対照群として用いた。図1に実験の結果を示した。
【0077】
図1から明らかなように、クエン酸とL−アルギニンを活性成分として含有した組成物を細胞株SKOV−3(黒三角)とU87(◆:黒菱型)に処理したときの細胞生存率は、活性成分であるクエン酸とL−アルギニンの含量を増加させて処理することにより減少した。特に、組成物5で処理したとき、細胞の生存率が60%以下に減少し、組成物7で処理したとき、細胞の生存率が20%以下に減少した。
【0078】
実施例5:亜鉛とL−アルギニンを活性成分として含有した抗癌剤組成物の処理による細胞生存率の測定
亜鉛とL−アルギニンを活性成分として含有した本発明の抗癌剤組成物が、癌細胞の成長と生存に及ぼす影響を調べるために、亜鉛とL−アルギニンの含量を異にして製造した組成物(表4)を癌細胞株に処理して、細胞生存率を測定した。細胞株としては、SKOV−3とU87を用いた。これらの細胞の培養、前記組成物を癌細胞株に処理する方法、および細胞生存率の測定は、前記実施例4と同様の方法により行った。図2に実験の結果を示した。
【0079】
【表4】

【0080】
図2から明らかなように、亜鉛とL−アルギニンを活性成分として含有した組成物を細胞株SKOV−3(黒三角)とU87(◆:黒菱型)に処理したときの細胞生存率は、活性成分である亜鉛とL−アルギニンの含量を増加させて処理することにより減少した。特に、組成物5で処理したとき、細胞の生存率が50%以下に減少し、組成物7で処理したとき、細胞の生存率が20%以下に減少した。
【0081】
実施例6:クエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを活性成分として含有した抗癌剤組成物の処理による細胞生存率の測定
クエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを活性成分として含有した本発明の抗癌剤組成物が、癌細胞の成長と生存に及ぼす影響を調べるために、クエン酸、亜鉛およびL−アルギニンの含量を異にして製造した組成物(表5)を癌細胞株に処理して、細胞生存率を測定した。細胞株としては、SKOV−3、NIH:OVCAR−3(ヒト卵巣腺腫、ATCC番号:HTB−161)およびNOSE(ヒト卵巣表面正常上皮細胞)を用いた。これらの細胞の培養、前記組成物を癌細胞株に処理する方法、および細胞生存率の測定は、前記実施例4と同様の方法により行った。図3に実験の結果を示した。
【0082】
【表5】

【0083】
図3から明らかなように、クエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを活性成分として含有した組成物を細胞株SKOV−3(黒三角)、NIH:OVCAR−3(◆:黒菱型)およびNOSE(黒四角)に処理したときの細胞生存率については、活性成分であるクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンの含量を増加させて処理することにより、癌細胞の細胞生存率は減少し、正常細胞株は特異的な変化を示さなかった。特に、組成物6を癌細胞株のSKOV−3、NIH:OVCAR−3に処理したとき、細胞の生存率が20%以下に減少した。これに対し、組成物6と7を正常細胞株のNOSEに処理したとき、細胞の生存率が50%以上であった。このような結果から、前記抗癌剤組成物が癌細胞に特異的に作用して癌細胞のみを死滅させることが認められた。
【0084】
実施例7:クエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを活性成分として含有した抗癌剤組成物の処理による細胞生存率の測定
クエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを活性成分として含有した本発明の抗癌剤組成物が、癌細胞の成長と生存に及ぼす影響を調べるために、クエン酸、亜鉛およびL−アルギニンの含量を異にして実施例5で製造した組成物(表5)を癌細胞株に処理して、細胞生存率を測定した。細胞株としては、ヒト子宮頸部癌細胞であるCa Ski(ATCC番号:CRL−1550)、HeLa(ATCC番号:CCL−2)およびC−33 A(ATCC番号:HTB−31)を用いた。これらの細胞の培養、前記組成物を癌細胞株に処理する方法、および細胞生存率の測定は、前記実施例4と同様の方法により行った。図4に実験の結果を示した。
【0085】
図4から明らかなように、クエン酸、亜鉛およびL−アルギニンを活性成分として含有した組成物を細胞株Ca Ski(黒三角)、HeLa(◆:黒菱型)およびC−33 A(黒四角)に処理したときの細胞生存率については、活性成分であるクエン酸、亜鉛およびL−アルギニンの含量を増加させて処理することにより、癌細胞の細胞生存率は減少した。特に、組成物5で処理したとき、細胞の生存率が60%以下に減少し、組成物7で処理したとき、細胞の生存率は20%以下に減少した。
【0086】
実施例8:本発明の抗癌剤組成物の処理によるフローサイトメトリー分析
実施例1で製造した本発明の抗癌剤組成物が細胞内DNA分裂に及ぼす影響をフローサイトメトリーにより分析した。
【0087】
Ca Ski、HeLaおよびC−33 A細胞株をそれぞれ2×10細胞/ウェルとなるように96−ウェルプレートに入れた後、実施例1で製造した本発明の抗癌剤組成物(表1の組成物3)100mlを前記細胞株にそれぞれ処理して、6時間、12時間、24時間および48時間の間、実施例4と同様の方法で培養した。各癌細胞の対照群は、前記抗癌剤組成物を処理しなかった。培養が完了すると、細胞を回収し、これを冷たいPBSで2回洗浄した。その後、前記細胞を4℃で24時間の間100%エタノールを透過させて固定した。これをPBS500μlに懸濁し、37℃で30分間RNase20μg/mlで処理した後、10分間氷で冷却させた。このような方法で分離したDNAにPI(ヨウ化プロピジウム)溶液50μg/mlを添加して染色し、DNA分裂をフローサイトメトリー分析器(Becton Dickinson FACS system, U.S.A.)で測定した。このとき、プロピジウム蛍光は、冷却さけたアルゴンイオンレーザ15mWを用いて発色させ、発色する光を617ロングパス光学フィルタを用いて集めた。DNAのモデリングは、細胞周期解析ソフトウエア(ModFit, Verity Software House, Topsham, ME, U.S.A.)を用いた。図5、図6および図7に実験の結果を示した。
【0088】
図5、図6および図7から明らかなように、本発明の抗癌剤組成物で処理したCa Ski、HeLaおよびC−33 A細胞株は、培養時間が経過することにより、G1段階が停止した。また、細胞分裂段階のうちG0−G1(sub−G1部分)段階において細胞の百分率が増加し、S(DNA合成時期)段階とG2−M(類似分裂)段階において細胞が有意に減少し、これから細胞死滅が誘導されたことが認められた。
【0089】
実施例9:本発明の抗癌剤組成物の処理によるDNAラダリング分析
前記実施例8の細胞死滅の機序を調査するためにDNAラダリング分析を行った。CaSki、HeLaおよびC−33 A細胞株をそれぞれ2×10細胞/ウェルとなるように96−ウェルプレートに入れた後、実施例1で製造した本発明の抗癌剤組成物(表1の組成物3)100mlを前記細胞株にそれぞれ処理して、6時間、12時間、24時間および48時間の間、実施例4と同様の方法で培養した後、経時的に培養したそれぞれの細胞を回収して、細胞のDNAを公知の方法により次のように変形して抽出した(Leszczynski D. et. al. Photochem. Photobiol., 1996, Vol.64, p936-.)。前記それぞれの細胞プレートを、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)0.5%、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)2mM、蛋白質加水分解酵素K100mg/ml、およびトリス塩酸緩衝液50mM(pH8.0)で構成された溶解緩衝液に懸濁させた。これを55℃で3時間培養し、培養液と同量でフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)を添加した。これに培養液の0.1体積%の酢酸アンモニウムと2.5体積%の冷たい無水エタノールを添加してDNAを沈殿させ、−20℃で一夜間保管した。前記DNAをTE(1Mトリス塩酸緩衝液のうち0.5M EDTA、pH8.0)に溶解させ、37℃でRNase A 100mg/mlを添加して1時間培養した。前記試料を臭化エチジウム0.5μg/mlが含まれた1.5%アガロスゲルで60Vで1時間の間電気泳動し、紫外線(UV)に露出させた。図8に実験の結果を示した。
【0090】
図8から明らかなように、本発明の抗癌剤組成物をCa Ski、HeLaおよびC−33 A細胞株にそれぞれ処理した後、経時的にDNAを抽出して分析した結果、本発明の抗癌剤組成物の処理後、12時間と24時間が経過したそれぞれの細胞においてアポトーシスが観察された。一般に、アポトーシスは、ヌクレオソーム間の連結部位において約100bp断片でDNAが分裂するので、はしご状のDNAラダーが観察された。従って、本発明の抗癌剤組成物の処理による癌細胞の死滅機序がアポトーシスであるということが認められた。
【0091】
実施例10:本発明の抗癌剤組成物の処理によるアポトーシスおよび発癌と関連した蛋白質の発現分析
癌細胞の細胞死滅の機序を調査するために、細胞死滅と関連した蛋白質であるP53とP21、および癌誘発蛋白質であるC−Mycの発現を分析した。
【0092】
Ca Ski、HeLaおよびC−33 A細胞株を、それぞれ2×10細胞/ウェルとなるように96−ウェルプレートに入れた後、実施例1で製造した本発明の抗癌剤組成物(表1の組成物3)100mlを前記細胞株にそれぞれ処理して、6時間、12時間、24時間および48時間の間、実施例4と同様の方法で培養した後、経時的に培養したそれぞれの細胞を回収した。経時的に回収されたそれぞれの細胞を溶解緩衝液(10mM Tris,1mM EDTA, 1mM DDT, 1mM PMSF, 蛋白質分解酵素抑制剤)を用いて細胞を分解し、溶解された試料を抽出した後、試料をSDS−電気泳動して、ECL(Electrochemiluminescence)ニトロセルロース膜(Amersham Life Science, U.K.)に蛋白質を移動させた。蛋白質が移動された膜にブロッキング溶液(5% skin milk in TBST; 10mM Tris-HCl, pH8.0. 150mM NaCl, 0.1% Tween20)を処理して、4℃に維持しながら一夜間反応させた。その後、アポトーシスと関連した蛋白質の検出のために、免疫ブロット法を用いた。即ち、P21、P53およびC−Mycの1次抗体を1:500でブロッキング溶液に希釈し、4℃で一夜間反応させて膜に付着させ、2次抗体(goat anti-rabbit IgG-HRP; Santa CruzBiotechnology, U.S.A.)をフロッキング溶液に1:5000で希釈して、1時間の間室温で反応させた。1次および2次抗体と反応した蛋白質を15分間3回洗浄し、ECLハイパーフィルム(Amersham Life Science, U.K.)に露出させて確認した。図9、図10および図11に実験の結果を示した。
【0093】
図9と図10から明らかなように、細胞分裂を抑制する蛋白質であるP21とP53は、本発明の抗癌剤組成物を処理した後、経時的に発現様相が段々増加することが観察された。これに対し、図11から明らかなように、癌細胞の分裂を活性化させる蛋白質であるC−Mycは、本発明の抗癌剤組成物を処理した後、経時的に発現様相が段々減少することが観察された。従って、本発明の抗癌剤組成物が癌細胞の増殖を抑制させ、結局、癌細胞のアポトーシスを誘導することが認められた。
【0094】
実施例11:本発明の抗癌剤組成物の処理における染色による癌細胞核の観察
前記実施例8の細胞死滅の機序を調べるために、本発明の抗癌剤組成物で処理された細胞の染色された核を観察した。
【0095】
直径60mmの皿に滅菌されたカバーガラスを置き、その上にCa Ski、HeLaおよびC−33 A細胞株をそれぞれ1×10個で注入して一夜間培養させた。その後、本発明の抗癌剤組成物(表1の組成物3)100mlを前記細胞株にそれぞれ処理して、24時間後にPBSで2回洗浄し、3.7%ホルムアルデヒドで細胞を固定させた。さらにPBSで3回洗浄し、4μg/mlDAPI(4'6'-diamino-2-phenylinylindole)溶液(sigma, U.S.A.)を添加して、10分間室温で反応させて染色した後、PBSで3回洗浄し、3次蒸留水で2回洗浄した後、固定溶液で固定した後、カバーガラスをスライド上に付着させ、蛍光顕微鏡(Olympus Optical Co., Ltd. U.S.A.)で観察した。図12に実験の結果を示した。
【0096】
図12から明らかなように、本発明の抗癌剤組成物で処理したCa Ski、HeLaおよびC−33 A細胞株において、本発明の抗癌剤組成物で処理しなかった場合は、健康な核を観察することができるのに対し、本発明の抗癌剤組成物で処理した場合は、細胞死滅の機序による核の形態的変化(例えば、染色質凝縮、分裂及び核の収縮等)を観察することができる。具体的に、凝縮した染色質の塊の周縁が不完全に現われ、凝縮した染色質が核の周辺に不規則に分散している形態で現われた。従って、本発明の抗癌剤組成物は、癌細胞に特異的に作用してアポトーシスを引き起こすことが認められた。
【0097】
実施例12:子宮癌細胞で発現するパピローマウイルスの蛋白質分析
本発明の抗ウイルス剤組成物が子宮癌細胞株において発現するパピローマウイルスの蛋白質を減少させるのかについて調べるために、発癌蛋白質であるヒトパピローマウイルス16型または18型のE6とE7の発現を分析した。
【0098】
前記実施例4と同様の方法で培養したCa SkiとHeLa細胞株を、それぞれ2×10細胞/ウェルとなるように96−ウェルプレートに入れた後、実施例1で製造した本発明の抗ウイルス剤組成物(表1の組成物3)100mlを 処理した後、37℃で二酸化炭素5%と酸素95%が供給される状態で、6時間、12時間、24時間および48時間の間培養した細胞を回収した。経時的に回収された細胞を溶解緩衝液(10mM Tris, 1mM EDTA, 1mM DDT, 1mM PMSF, 蛋白質分解酵素抑制剤)を用いて細胞を分解し、溶解された試料を抽出した後、試料をSDS−電気泳動して、ECLニトロセルロース膜(Amersham Life Science, U.K.)に蛋白質を移動させた。蛋白質が移動された膜にブロッキング溶液(5% skin milk in TBST 10mM Tris-HCl, pH8.0. 150mM NaCl, 0.1% Tween20)を処理して、4℃に維持しながら一夜間反応させた。
【0099】
その後、ヒトパピローマウイルスの16型または18型のE6とE7蛋白質の検出のために、免疫ブロット法を用いた。即ち、ヒトパピローマウイルス16型のE6、E7およびヒトパピローマウイルス18型のE6、E7と結合する1次抗体(Santa Cruz Biotechnology, U.S.A.)を1:500でブロッキング溶液に希釈し、4℃で一夜間反応させて膜に付着させ、2次抗体(goat anti-rabbit IgG-HRP Santa Cruz Biotechnology, U.S.A.)をフロッキング溶液に1:5000で希釈して、1時間の間室温で反応させた。1次および2次抗体と反応した蛋白質を15分間3回洗浄し、ECLハイパーフィルム(Amersham Life Science, U.K.)に露出させて確認した。これを図13に示した。
【0100】
図13から明らかなように、発癌蛋白質であるヒトパピローマウイルス16型のE6は、本発明の抗ウイルス剤組成物を処理した細胞株Ca SkiとHeLaにおいて、経時的に発現様相が段々減少することが観察され、また、発癌蛋白質であるヒトパピローマウイルス18型のE7は、本発明の抗ウイルス剤組成物を処理した細胞株Ca Skiにおいて、経時的に発現様相が段々減少することが観察された。従って、本発明の抗ウイルス剤組成物を子宮癌細胞に処理したとき、発癌蛋白質であるヒトパピローマウイルス16型または18型のE6とE7の発現を抑制させることが認められた。
【0101】
実施例13:パピローマウイルスに起因する尖圭コンジローマの治療効果
外陰部に尖圭コンジローマが生じた6名の女性患者を対象として実施例3で製造した軟膏剤(実施例3の経皮剤(2))1gをそれぞれの患部に塗った。その結果、これらの患者は、1日2回適用することにより、病変の大きさに応じて2〜12週間以内に治療された。これを図14に示した。
【0102】
実施例14:エンテロウイルスとポリオウイルスの細胞病変分析
本発明の抗ウイルス剤組成物がウイルス増殖を抑制させることを証明するために、エンテロウイルスとポリオウイルスにそれぞれ感染した細胞に本発明の抗ウイルス剤組成物を処理して細胞病変を分析した。
【0103】
vero E6細胞(アフリカミドリザルの腎臓細胞)を、10%FBSを含有したMEM培地を用いて、37℃のインキュベータで培養させた後、実験の1日前、48−ウェルプレートに10となるように接種させて培養した。前記培養された細胞をエンテロウイルスとポリオウイルスに感染させる前にPBSで洗浄した。エンテロウイルスとポリオウイルスは、プラーク分析を用いて力価を求めて−70℃で保管して使用した。前記エンテロウイルスとポリオウイルスをpfu6で1時間の間37℃インキュベータで恒温培養させた後、さらにPBSで洗浄して前記培養された細胞の培地にそれぞれ添加して24時間の間培養した。前記培養されたウイルスに感染した細胞に、本発明の抗ウイルス剤(表1の組成物)を処理して、細胞病変抑制率を測定した。対照群としてクエン酸単独、亜鉛単独および精液成分を含有する組成物を前記細胞に処理した。これを図15と図16に示した。
【0104】
本発明の抗ウイルス剤組成物を処理した結果、細胞病変抑制率が60%以上であった。これに対し、クエン酸単独、亜鉛単独および精液を含有する組成物をそれぞれ処理した結果、細胞病変抑制率は50%以下であった。
【0105】
従って、本発明の抗ウイルス剤組成物は、ウイルスの増殖を抑制させてウイルスに感染した細胞の死滅が防止されることが認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療学的有効量のクエン酸および/または亜鉛およびL−アルギニンを薬剤学的に許容可能な担体とともに含有し、ウイルスの蛋白質発現の減少を誘導することを特徴とする抗ウイルス剤組成物。
【請求項2】
前記抗ウイルス剤組成物が、前記組成物の総重量に対し、0.001〜20重量%のクエン酸、および/または0.0001〜5重量%の亜鉛、および0.001〜20重量%のL−アルギニンを含有することを特徴とする請求項1に記載の抗ウイルス剤組成物。
【請求項3】
前記抗ウイルス剤組成物の適用対象が、パピローマウイルス;エイズウイルス;エンテロウイルス;ポリオウイルスからなる群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の抗ウイルス剤組成物。
【請求項4】
前記抗ウイルス剤組成物の剤形が、経口投与用抗ウイルス剤、非経口投与用抗ウイルス剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤またはペースト剤からなる群から選択されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の抗ウイルス剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−298800(P2009−298800A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−187888(P2009−187888)
【出願日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【分割の表示】特願2004−548147(P2004−548147)の分割
【原出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【出願人】(505162179)
【Fターム(参考)】