説明

抗ウイルス性を備えた繊維又は繊維製品

【課題】本発明は、繊維又は繊維製品に高い抗ウイルス性を付与し得る処理剤及び抗ウイルス性が付与された繊維又は繊維製品を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の繊維用抗ウイルス加工剤は、ポリ−オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライドを含有する。繊維又は繊維製品を繊維用抗ウイルス加工剤で処理し、次いでソーピングすることにより、繊維又は繊維製品に優れた抗ウイルス性を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ウイルス性を備えた繊維又は繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥インフルエンザは、家禽類のインフルエンザA型ウイルス感染症である。高病原性鳥インフルエンザウイルスは、養鶏業界に多大な経済損失を与えるだけでなく、高病原性鳥インフルエンザウイルスがヒトに対する感染性を有する新種のウイルスに変異することが危惧されている。
【0003】
そこで、養鶏業従事者及び医療従事者を感染から守るため、鳥インフルエンザウイルスに対して高い抗ウイルス性を備えた繊維又は繊維製品の開発が要望されている。
【0004】
一方、抗菌活性を有する種々の化合物が開発され、これらの化合物で処理した抗菌加工繊維又は繊維製品が提案されている。
【0005】
繊維又は繊維製品に抗菌性を付与するために使用されている抗菌活性化合物としては、例えば、2−ピリジンチオール−ジンク−1−オキシド、酸化亜鉛、イソプロピルメチルフェノール、3−(トリメチルシリル)プロピレンオクタデシルジメチルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウムクロリド、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジウム、アルキルトリメチルアンモニウム塩、p−イソオクチルフェノキシエトキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、臭化フェノドデシウム、セチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、(3,4−ジクロルベンジル)ドデシルジメチルアンモニウムクロリド等が知られている。
【0006】
しかしながら、これらの抗菌活性を有する化合物は、後記試験例に示すように抗ウイルス活性を有していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
繊維又は繊維製品に高い抗ウイルス性を付与し得る処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
繊維又は繊維製品に高い抗ウイルス性を付与し得る処理剤を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリ−オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライドを含有する組成物が、所望の繊維用抗ウイルス加工剤になり得ることを見い出した。
【0009】
ポリ−オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライド(以下「PMIEC」という)は、抗菌活性を有することが知られており、そのため、PMIECの水溶液は、繊維の抗菌加工剤として使用されている(特開平5−310505号)。しかしながら、PMIECは、他の抗菌活性化合物と同様に、抗ウイルス性を有していることは全く知られていない。事実、PMIECで処理して得られる繊維又は繊維製品は、抗菌性を備えているものの、抗ウイルス性を備えていないことが、本発明者の研究により明らかになった(後記試験例1参照)。
【0010】
本発明者は、PMIECについて更に研究を重ねるうち、PMIECで処理して得られる繊維又は繊維製品を更にソーピング処理することにより、繊維又は繊維製品に格段に優れた抗ウイルス性を付与し得るという驚くべき事実を見い出した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0011】
本発明は、下記項1〜3に係る繊維用抗ウイルス加工剤及び繊維又は繊維製品を提供する。
項1.PMIECを含有する繊維用抗ウイルス加工剤。
項2.(1)PMIEC及び(2)被膜を形成し得る化合物を含有する繊維用抗ウイルス加工剤。
項3.繊維又は繊維製品を項1又は項2に記載の繊維用抗ウイルス加工剤で処理し、次いでソーピングして得られる、抗ウイルス性を備えた繊維又は繊維製品。
【0012】
繊維用抗ウイルス加工剤
本発明の繊維用抗ウイルス加工剤は、PMIECを含有する。
【0013】
PMIECは、一般式(1)
【0014】
【化1】

【0015】
で表される繰り返し単位を有するポリカチオン化合物である。PMIECは、公知の化合物であり、低毒性で、皮膚及び眼に対する刺激性が低く、ヒトの肌に直接触れる繊維製品に使用しても安心して使用できる化合物である。PMIECの重量平均分子量は、1000〜10000程度である。
【0016】
PMIECは水溶性であるため、PMIECは、通常、水溶液の形態で用いられる。
【0017】
繊維用抗ウイルス加工剤に含まれるPMIECの量は、通常1〜80重量%程度、好ましくは10〜80重量%程度、より好ましくは30〜70重量%程度である。
【0018】
繊維用抗ウイルス加工剤には、被膜を形成し得る化合物が含まれていてもよい。
【0019】
被膜を形成し得る化合物としては、例えば、ポリカルボン酸、アルデヒド化合物、N−メチロール化合物、分子内にエポキシ基(グリシジル基)を有する化合物、分子内にビニル基を有する化合物、イソシアネート化合物、メラミン化合物等を挙げることができる。これらの中では、メラミン化合物が好適である。
【0020】
(a) ポリカルボン酸
ポリカルボン酸としては、例えば分子中に少なくとも2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸を使用することができる。このようなポリカルボン酸としては、少なくとも2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸である限り従来公知のものを広く使用でき、例えば各種の脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。これらカルボン酸は、水酸基、ハロゲン基、カルボニル基、炭素−炭素二重結合を有していても差し支えない。
【0021】
分子中に2個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸としては、例えば飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸等を挙げることができる。
【0022】
飽和脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、ブラシル酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ヘプチルマロン酸、ジプロピルマロン酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、イミノジ酢酸、チオジプロピオン酸、チオマレイン酸等を例示できる。
【0023】
不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、具体的にはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ヘキサジエン二酸(ムコン酸)、ドデカジエン二酸等を例示できる。
【0024】
芳香族ジカルボン酸としては、具体的にはフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホモフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、メチルフタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドリンデンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、カルボキシメチル安息香酸、トリフルオロメチルフタル酸、アゾキシベンゼンジカルボン酸、ヒドラゾベンゼンジカルボン酸、スルホイソフタル酸、ジフェニルスルフォンジカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ケリダム酸、ピラジンジカルボン酸等を例示できる。
【0025】
脂環式ジカルボン酸としては、具体的にはヘット酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、シクロプロパンジカルボン酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ピペリジン−2,3−ジカルボン酸(ヘキサヒドロキノリン酸)、ピペリジン−2,6−ジカルボン酸(ヘキサヒドロジピコリン酸)、ピペリジン−3,4−ジカルボン酸(ヘキサヒドロシンコメロン酸)等を例示できる。
【0026】
本発明において、ポリカルボン酸として、分子中に少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸を使用するのが好ましい。このようなポリカルボン酸としては、少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸である限り従来公知のものを広く使用でき、例えば各種の脂肪族ポリカルボン酸、脂環族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸等が挙げられる。これらカルボン酸は、水酸基、ハロゲン基、カルボニル基、炭素−炭素二重結合を有していても差し支えない。
【0027】
少なくとも3個のカルボキシル基を有するポリカルボン酸としては、脂肪族トリカルボン酸、脂肪族テトラカルボン酸、脂肪族ペンタカルボン酸、脂肪族ヘキサカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、カルボン酸ポリマー等を例示できる。
【0028】
脂肪族トリカルボン酸としては、具体的には、トリカルバリル酸、アコニチン酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸、クエン酸、1,2,3−ブタントリカルボン酸等を例示できる。
【0029】
脂肪族テトラカルボン酸としては、具体的には、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフランテトラカルボン酸、メチルテトラヒドロフタル酸とマレイン酸のエン付加物、エチレンジアミン四酢酸、トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ジフタル酸、エポキシ化コハク酸二量化物等を例示できる。
【0030】
脂肪族ペンタカルボン酸としては、具体的には、ジエチレントリアミン五酢酸等を例示できる。
【0031】
脂肪族ヘキサカルボン酸としては、具体的には、トリエチレンテトラミン六酢酸等を例示できる。
【0032】
芳香族ポリカルボン酸としては、具体的には、トリメリット酸、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸等を例示できる。
【0033】
カルボン酸ポリマーとしては、具体的には、アクリル酸重合物、クロトン酸重合物、マレイン酸重合物、イタコン酸(又は無水イタコン酸)重合物、アクリル酸・メタアクリル酸共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸共重合物、アクリル酸・イタコン酸共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸共重合物、(無水)マレイン酸・α−メチルスチレン共重合物、(無水)マレイン酸・スチレン共重合物(スチレンと無水マレイン酸よりディールス・アルダー反応とエン反応によって生じたテトラカルボン酸を含む)、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル共重合物、アクリル酸・3−ブテン−1,2,3−トリカルボン酸・アクリル酸アルキル共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・メタアクリル酸アルキル共重合物、(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、アクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸アルキル・スチレン共重合物、メタアクリル酸・(無水)マレイン酸・アクリル酸2−エチルヘキシル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸2−ヒドロキシエチル・スチレン共重合物等を例示できる。
【0034】
これらポリカルボン酸は夫々単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0035】
これらのポリカルボン酸のうち、トリカルバリル酸、アコニチン酸、クエン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸等の水溶性のポリカルボン酸は作業性が良好であることから好ましく、特に水溶性で四塩基酸の1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸が最も効果が優れており好ましい。
【0036】
これらのポリカルボン酸を使用する場合、ポリオールを併用するのが好ましい。
【0037】
ポリオールとしては、オキシエチレン基と少なくとも2個のアルコール性水酸基とを有するものである限り、従来公知のものを広く使用でき、具体的にはポリエチレンオキシド又はアミン類、フェノール類、アルコール類等の2個以上の活性水素を有する化合物のエチレンオキシド付加物が挙げられる。これらポリオールは夫々単独で又は2種以上を混合して使用される。
【0038】
2個以上の活性水素を有する化合物としては、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、トリメチルペンタンジオール等の炭素数5〜12のジオール及びそれらの分岐アルコール;ポリプロピレングリコール、1,2−ブチレンオキシドの重合物、ポリ(1,4−ブチレングリコール)等のポリエーテルアルコール類;グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の3個以上の水酸基を有するアルコール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、スピログリコール及びそれらの幾何異性体等の脂環アルコール類;キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール等の還元糖;キシロース、ソルボース、アラビノース、リボース、エリスロース、ガラクトース、ソルビタン等の単糖類;ラクトース、ショ糖、マルトース等の二糖類;ハイドロキノン、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のフェノール類;アンモニア、炭素数1〜22のモノアルキルアミン、アルキレンジアミン、アルキレントリアミン、アニリン、o−、m−、p−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルケトン、アニリンとホルマリンの重縮合物等のアミン類を挙げることができる。
(b) アルデヒド化合物
アルデヒド化合物としては、例えばホルムアルデヒド、ジアルデヒド(グリオキザール)等が挙げられる。
(c) N−メチロール化合物
N−メチロール化合物としては、例えばジメチロール尿素及びそのメチル化物、ジメチロールエチレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールウロン及びそのメチル化物、ジメチロールトリアゾン及びそのメチル化物、ジメチロールプロピレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素、メチル化ジメチロールジメトキシエチレン尿素、1,3−ジメチル−4,5−ジヒドロキシエチレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロール−4−メトキシ−5,5−ジメチルプロピレン尿素及びそのメチル化物、ジメチロールアルキルカーバメイト及びそのメチル化物、テトラメチロールグリオキザールモノウレイン及びそのメチル化物等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、ジメチロールジヒドロキシエチレン尿素が好ましい。
【0040】
市販品としては、住友化学工業社製のスミテックスレジンシリーズ、三木理研社製のリケンレジンシリーズ等が挙げられる。
(d) 分子内にエポキシ基(グリシジル基)を有する化合物
分子内にエポキシ基(グリシジル基)を有する化合物としては、例えば脂肪族エポキシ化合物、ジグリシジル化合物、トリグリシジル化合物、ポリグリシジル化合物、脂環式エポキシ化合物、異節環状型エポキシ化合物、活性ビニル化合物の他、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン化合物、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル化合物及びそのエチレンオキシド付加物又はプロピレンオキシド付加物、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル化合物、水素化ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル化合物、水素化ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル化合物等が挙げられる。
【0041】
脂肪族エポキシ化合物としては、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化オレイルオレート等が挙げられる。
【0042】
ジグリシジル化合物としては、一般式(2)
【0043】
【化2】

【0044】
[式中、Rは−O−R1−O−又は−O(R2O)n−を示す。ここでR1は炭素数2〜12の直鎖又は分枝鎖状アルキレン基を示す。R2は−CH2CH2−、−CH2−CH(CH3)−又は−(CH24−を示し、nは4〜50の整数を示す。]
で表されるジグリシジルエーテルを挙げることができ、具体的にはエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(n=4〜50)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(n=4〜50)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、ジグリシジルポリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
トリグリシジル化合物としては、例えばグリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0046】
ポリトリグリシジル化合物としては、例えばポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリシジルポリシロキサン等が挙げられる。
【0047】
脂環式エポキシ化合物としては、例えば3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
【0048】
異節環状型エポキシ化合物としては、例えばトリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
【0049】
上記一般式(2)で表されるジグリシジルエーテルの中でも、R1がエチレングリコール系、ポリエチレングリコール系、グリセリン系であるものが好ましい。
【0050】
市販品としては、ナガセ化成工業社製のデナコールEXシリーズ等が挙げられる。
(e) 分子内にビニル基を有する化合物
分子内にビニル基を有する化合物としては、例えば分子内にジアクリロイル基を有する化合物、分子内にジメタクリロイル基を有する化合物、分子内にトリアリル基を有する化合物、分子内にテトラアリル基を有する化合物、分子内にペンタアリル基を有する化合物等を挙げることができる。
【0051】
分子内にジアクリロイル基を有する化合物としては、具体的にはエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=3〜50)、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジアクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート等を例示できる。
【0052】
分子内にジメタクリロイル基を有する化合物としては、具体的にはエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート(n=3〜50)、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物ジメタクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物ジメタクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ヘキサヒドロフタル酸ジアリル、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、ジビニルベンゼン、1,1’−ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸ジアリル、ジアリルクロレンデート、N,N−メチレンビスアクリルアミド等を例示できる。
【0053】
分子内にトリアリル基を有する化合物としては、具体的にはトリメチロールプロパントリアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアクリレートとそのエチレンオキシド変性物、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアクリルホルマール、トリメタアリルイソシアヌレート等を例示できる。
【0054】
分子内にテトラアリル基を有する化合物としては、具体的にはジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等を例示できる。
【0055】
分子内にペンタアリル基を有する化合物としては、具体的にはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を例示できる。
【0056】
分子内にビニル基を有する化合物としては、分子内にジアクリロイル基を有する化合物や分子内にジメタクリロイル基を有する化合物が好ましく、特にポリエチレングリコールジアクリレート(n=3〜50)やポリエチレングリコールジメタクリレート(n=3〜50)が好ましい。
(f) イソシアネート化合物
イソシアネート化合物としては、例えばジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート化合物等の他、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等を挙げることができる。
【0057】
ジイソシアネート化合物としては、具体的にはトリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を例示できる。
【0058】
トリイソシアネート化合物としては、具体的にはトリフェニルメタントリイソシアネート等を例示できる。
【0059】
ポリイソシアネート化合物としては、具体的にはポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等を例示できる。
【0060】
本発明では、上記ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等は、活性イソシアネート基がブロック剤によりブロックされたものであってもよい。ブロック剤としては、例えばオキシム(アセトオキシム、シクロヘキサノンオキシム)、ラクタム(ε−カプロラクタム)、ジエチルマロネート、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、重亜硫酸塩等を挙げることができる。
【0061】
これらの中でも、ジイソシアネート化合物が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。
【0062】
市販品としては、第一工業製薬社製のエラストロンシリーズ等が挙げられる。
(g) メラミン化合物
メラミン化合物としては、例えば、メラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン及びこれらのメチル化物等が挙げられる。
【0063】
被膜を形成し得る化合物としては、上記に例示した化合物を1種単独で使用してもよいし、2種以上混合して使用してもよい。これらの化合物がそれ自身で被膜を形成し得ない場合には、硬化触媒等の公知の添加剤が繊維用抗ウイルス加工剤に配合されるのがよく、その配合量は被膜の形成に必要な量でよい。
【0064】
繊維用抗ウイルス加工剤に含まれる上記化合物(被膜を形成し得る化合物)の量は、通常PMIEC100重量部に対して2〜5000重量部程度、好ましくは5〜2000重量部程度、より好ましくは10〜1000重量部程度である。硬化触媒等の公知の添加剤の配合量は被膜の形成に必要な量でよい。
【0065】
繊維又は繊維製品
本発明における繊維は、合成繊維、再生繊維及び天然繊維のいずれでもよい。
【0066】
合成繊維としては、公知のものを広く使用でき、例えばポリエステル、ナイロン、アクリル、アセテート、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等が挙げられる。
【0067】
再生繊維としては、公知のものを広く使用でき、例えばビスコースレーヨン、銅アンモニアレーヨン、ポリノジック等が挙げられる。
【0068】
天然繊維としては、公知のものを広く使用でき、例えば木綿、麻(亜麻、大麻、ラミー、マニラ麻、サイザル麻等)、ウール、カシミヤ、アルパカ、モヘヤ、絹、カポック、ケナフ、ハイビスカス繊維、サトウキビ繊維、バナナ繊維、竹繊維等が挙げられる。木綿や麻には、原綿そのものの他、苛性マーセル化した木綿や麻、液体アンモニアで処理した木綿や麻等が包含される。
【0069】
本発明の繊維は、上記各種繊維の混紡であってもよい。
【0070】
また、本発明の繊維には、上記繊維の一次加工品、例えば糸、紐、ロープ、織物、編物、不織布、紙等が包含される。
【0071】
本発明において、繊維製品とは、上記繊維を更に加工したもの、例えば外衣、中衣、内衣等の衣料、寝装品、インテリア等の製品を意味する。本発明の繊維製品としては、具体的にはコート、ジャケット、ズボン、スカート、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、サポーター、靴下、タイツ、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、手袋、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、布団地、布団綿、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ、マスク、フィルター等の製品を例示できる。また、本発明の繊維製品には、例えば壁布、壁紙、フロア外張り等の産業資材分野で使用される繊維製品の形態のものも包含される。
【0072】
抗ウイルス性を備えた繊維又は繊維製品の製造方法
抗ウイルス性を備えた繊維又は繊維製品は、処理されるべき繊維又は繊維製品に、本発明の繊維用抗ウイルス加工剤を付着及び/又は含浸させ、次いで熱処理し、ソーピングすることにより製造される。
【0073】
処理されるべき繊維又は繊維製品に、繊維用抗ウイルス加工剤を付着及び/又は含浸させるに当たっては、浸漬法、スプレー法、コーティング法等の公知の方法を広く適用することができる。
【0074】
本発明では、PMIEC及び被膜を形成し得る化合物を含有する処理液中に処理すべき繊維又は繊維製品を浸漬する、いわゆる、浸漬法を採用するのが好ましい。
【0075】
以下、浸漬法につき詳述する。
【0076】
処理液中のPMIEC濃度及び被膜を形成し得る化合物の濃度は、処理液の絞り率と必要とする担持量より算出した濃度に設定すればよい。
【0077】
本発明では、一つの処理液中に所定濃度のPMIEC及び被膜を形成し得る化合物が全て含有されていてもよいし、これらPMIEC及び被膜を形成し得る化合物が別個の処理液中に含有されていてもよい。
【0078】
上記処理液のpHは1〜9、好ましくは2〜7に調整されていることが好ましい。処理液のpHがこの範囲であれば、本発明で所望する繊維又は繊維製品を得ることができる。当該範囲のpHは処理液に対して中和剤、即ち適当なアルカリ又は塩を添加することにより調整できる。
【0079】
pHの調整に使用される中和剤として、例えば水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、メタホウ酸ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。また、上記のナトリウム塩に代わり、カリウム塩、アンモニウム塩、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の揮発性の低級アミンの塩も使用できる。これらの中和剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0080】
上記中和剤の添加量は、使用されるPMIEC及び被膜を形成し得る化合物の溶解量や種類にもよるが、処理液中の濃度として通常0.1〜10重量%程度とするのがよい。
【0081】
上記処理液を構成する溶媒としては有機溶媒でも差支えないが、安全、価格を考慮すれば水を溶媒にするのが好ましい。また処理液の形態は、所定の効果が得られる限り特に限定されるものではなく、溶液の形態であっても乳化液の形態であってもよいが、処理効率及び安全性の観点から水溶液であることが好ましい。
【0082】
上記処理液の繊維又は繊維製品に対する浸透速度は充分に速く、浸漬時間、浴温度に特に制限はない。通常、浸漬時間0.1〜300秒、浴温は10〜40℃で行われる。絞りは加工する製品によって異なり、夫々に適当な絞り方法、絞り率が採用できる。通常、絞り率は30〜200%で行うのが好ましい。
【0083】
浸漬、絞りを行った後、乾燥を行う。工業的には、乾燥温度は40〜150℃、時間は温度に応じて選定すればよい。
【0084】
本発明においては、PMIEC及び被膜を形成し得る化合物を付着及び/又は含浸させた繊維又は繊維製品を次いで加熱処理する。
【0085】
加熱処理の温度は、通常100〜250℃、好ましくは120〜200℃、処理時間は20秒〜1時間である。
【0086】
本発明では、加熱処理された繊維又は繊維製品をソーピング処理する。ソーピング処理により、繊維又は繊維製品に格段に優れた抗ウイルス作用を付与することができる。
【0087】
ソーピング処理の条件は、特に限定されない。
【0088】
本発明の方法で得られる繊維又は繊維製品は、顕著に優れた抗ウイルス作用を備えている。
【0089】
本発明の繊維又は繊維製品が有効なウイルスとしては、例えば、単純ヘルペスウイルス1型 (Herpes simplex I)、単純ヘルペスウイルス2型 (Herpes simplex II)等のシンプレックスウイルス属 (Simplexvirus)に属するウイルス;水痘帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus)等のワリセロウイルス属(Varicellovirus)に属するウイルス;エプスタイン・バール・ウイルス(Epstein-Barr virus)等のリンホクリプトウイルス属(lymphocryptovirus)に属するウイルス;ワクシニアウイルス(Vaccinia virus)、痘瘡ウイルス(Variola virus)、牛痘ウイルス(Cowpox virus)、サル痘ウイルス(Monkeypox virus) 等のオルトポックスウイルス属 (Orthopoxvirus, Vaccinia Subgroup)に属するウイルス;SARSウイルス等のコロナウイルス科 (Coronaviridae)に属するウイルス;黄熱病ウイルス(Yellow fever virus)、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus)、デング熱ウイルス(Dengue fever virus)、西ナイルウイルス等のフラビウイルス属(Flavivirus)に属するウイルス;牛ウイルス性下痢ウイルス、豚コレラウイルス、ボーダー病ウイルス等のペスチウイルス属(pesti virus) に属するウイルス;口蹄疫ウイルス(Foot-and-mouth disease virus)等のアフトウイルス属(Aphthovirus)に属するウイルス;ポリオウイルス(Poliovirus)等のエンテロウイルス属(Enterovirus)に属するウイルス;A型肝炎ウイルス(Hepatitis A virus)等のヘパトウイルス属(Hepatovirus)に属するウイルス;風邪ウイルス(Common cold virus)等のライノウイルス属(Rhinovirus)に属するウイルス;風疹ウイルス(Rubella virus)等のルビウイルス属(Rubivirus)に属するウイルス;脳炎ウイルス(Encephalitis virus)等のアルファウイルス属(Alphavirus, Arbovirus group A)に属するウイルス;E型肝炎ウイルス(Hepatitis E virus)等のへぺウイルス属 (Hepevirus)に属するウイルス;タバコモザイクウイルス等のトバモウイルス属(Tobamovirus)に属するウイルス;マールブルグウイルス(Marburg virus);エボラウイルス(Ebola virus);狂犬病ウイルス(Rabies virus)等のリッサウイルス属 (Lyssavirus, Rabies virus group)に属するウイルス;水疱性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus)等のベシクロウイルス属Vesiculovirus, Vesicular stomatitis virus group)に属するウイルス;はしかウイルス(Measles virus)等のモルビリウイルス属 (Morbillivirus)に属するウイルス;おたふくかぜウイルス(Mumps virus)等のルブラウイルス属(Rubulavirus)に属するウイルス;仙台ウイルス(Sendai virus)等のレスピロウイルス属(Respirovirus)に属するウイルス;ニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus)等のアブラウイルス属 (Avulavirus)に属するウイルス;RSウイルス(Respiratory syncytial virus)等のニューモウイルス属(Pneumovirus, Respiratory syncytial virus group) に属するウイルス;ヒト・メタニューモウイルス(human metapneumovirus)等のメタニューモウイルス属 (Metapneumovirus)に属するウイルス;ニパウイルス (Nipah virus)等のヘニパウイルス属(Henipavirus)に属するウイルス;インフルエンザウイルスA,B,C(Influenza virus A,B,C)等のオルソミキソウイルス科インフルエンザ属(Influenza virus)に属するウイルス;ブニヤムウェラウイルス(Bunyamwera virus )等のブニヤウイルス属(Bunyavirus, Bunyamwear subgroup)に属するウイルス;ハンタウイルス(Hantavirus)等のハンタウイルス属 (Hantaviruses)に属するウイルス;リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(Lymphocytic choriomeningitis virus)、ラッサウイルス等のアレナウイルス属(Arenavirus, LCM virus group)に属するウイルス;ヒト免疫不全ウイルス (Human immunodeficiency virus, HIV)等のレンチウイルス属(Lentivirus);成人T細胞白血病ウイルス(Human T-lymphotropic virus, Adult T cell leukemia virus)等のレトロウイルス科オンコウイルス属(Oncovirus, Type C oncovirus group)に属するウイルス;B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus);カリフラワーモザイクウイルス(Cauliflower Mosaic virus)等のカリモウイルス属(Caulimovirus) に属するウイルス等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0090】
本発明の方法で得られる繊維又は繊維製品は、顕著に優れた抗ウイルス作用を備えている。
【0091】
本発明の方法で得られる繊維又は繊維製品は、耐洗濯性に優れており、該繊維又は繊維製品を繰り返し洗濯しても実質的に低下しない。
【発明を実施するための形態】
【0092】
以下に実施例及び比較例を掲げて、本発明をより一層明らかにする。
【0093】
実施例1
目付150g/m2の綿織物を精練し、漂白し、シルケット処理を行った。次いで、処理後の綿織物を、ポリオキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンクロライド1.5重量%、メラミン樹脂(リケンレジンMM65S、三木理研工業製)1重量%及び触媒(リケンフィクサーRC−3、三木理研工業製)0.5重量%を含む水溶液に浸漬し、マングルで絞り(絞り率60%)、100℃で乾燥し、160℃で2分間熱処理を行った。熱処理後の綿織物を、以下「綿織物A」という。更に、綿織物Aを、ノニオン界面活性剤(商品名:ソフタノール90、日本触媒製)0.05重量%を含む水溶液を使用して40℃で5分間ソーピングを行い、次に5分間水洗することにより、綿織物を得た。ソーピング及び水洗処理して得られる本発明の綿織物を、以下「綿織物B」という。
【0094】
綿織物Bを通常の洗濯条件下(洗濯方法:JIS L 0217 103法)に50回洗濯を繰り返した。50回洗濯を繰り返して得られる綿織物を、以下「綿織物C」という。
【0095】
比較例1
目付150g/m2の綿織物を精練し、漂白し、シルケット処理を行った。次いで、処理後の綿織物を、ノニオン界面活性剤(商品名:ソフタノール90、日本触媒製)0.05重量%を含む水溶液を使用して40℃で5分間ソーピングを行い、次に5分間水洗することにより、綿織物を得た。
【0096】
比較例2
目付150g/m2の綿織物を精練し、漂白し、シルケット処理を行った。次いで、処理後の綿織物を、メラミン樹脂(リケンレジンMM65S、三木理研工業製)1重量%及び触媒(リケンフィクサーRC−3、三木理研工業製)0.5重量%を含む水溶液に浸漬し、マングルで絞り(絞り率60%)、100℃で乾燥し、160℃で2分間熱処理を行った。更に、上記処理した綿織物を、ノニオン界面活性剤(商品名:ソフタノール90、日本触媒製)0.05重量%を含む水溶液を使用して40℃で5分間ソーピングを行い、次に5分間水洗することにより、綿織物を得た。
【0097】
比較例3
目付150g/m2の綿織物を精練し、漂白し、シルケット処理を行った。次いで、処理後の綿織物を、2−ピリジンチオール−ジンク−1−オキシド1重量%、メラミン樹脂(リケンレジンMM65S、三木理研工業製)1重量%及び触媒(リケンフィクサーRC−3、三木理研工業製)0.5重量%を含む水溶液に浸漬し、マングルで絞り(絞り率60%)、100℃で乾燥し、160℃で2分間熱処理を行った。更に、熱処理後の綿織物を、ノニオン界面活性剤(商品名:ソフタノール90、日本触媒製)0.05重量%を含む水溶液を使用して40℃で5分間ソーピングを行い、次に5分間水洗することにより、綿織物を得た。
【0098】
比較例4
目付150g/m2の綿織物を精練し、漂白し、シルケット処理を行った。次いで、処理後の綿織物を、酸化亜鉛1重量%及びアクリル酸樹脂(商品名:MAR、松本油脂製薬(株)製)2重量%を含む水溶液に浸漬し、マングルで絞り(絞り率60%)、100℃で乾燥し、160℃で2分間熱処理を行った。更に、熱処理後の綿織物を、ノニオン界面活性剤(商品名:ソフタノール90、日本触媒製)0.05重量%を含む水溶液を使用して40℃で5分間ソーピングを行い、次に5分間水洗することにより、綿織物を得た。
【0099】
試験例1(抗ウイルス活性の確認試験)
(1)ウイルス液の調製
鳥インフルエンザウイルス(A/budgeringer/Aichi/1/77(H3N8))を発育鶏卵の尿膜腔内に接種し、35℃で3日間培養後に、尿膜腔液を採取し、ウイルス液として使用した。
【0100】
(2)試験に使用した綿織物
実施例1で得られた綿織物A、綿織物B及び綿織物C(各綿織物の大きさは18mm×18mm)を121℃のオートクレーブ中に20分間入れ、次に乾燥させた。3枚の綿織物Aを1組とし、2組(計6枚)を試験に使用した。また、上記と同様に、3枚の綿織物Bを1組、3枚の綿織物Cを1組とし、これら各々2組を試験に使用した。更に、比較のために、未処理の綿織物、比較例1〜4で得られた綿織物及び比較例1〜4で得られた綿織物を50回洗濯した綿織物についても、上記と同様にして試験に使用した。
【0101】
(3)感作方法
各々の綿織物1組(3枚)をマイクロチューブに入れ、ウイルス液0.1mlを浸み込ませ、室温で10分間感作させた。感作後、直ちにマイクロチューブを1分間当たり5000回転の速度で30秒間回転させ、各々の綿織物から感作ウイルス液を回収した。
【0102】
(4)ウイルス感染価の測定
回収した各感作ウイルス液を、直ちにPBSを用いて10倍段階希釈し、48穴マイクロプレートで培養した初代鶏腎細胞に接種し(0.1ml/ウエル、2ウエル)、37℃で1時間保持し、感作ウイルスを初代鶏腎細胞に吸着させた後、増殖培地(ダルベッコ変法イーグル培地に、10%牛血清、10%トリプトース・ホスフェート・ブロスを加えたもの)0.2mlを加え、37℃で培養し、翌日増殖培地を交換し、更に6日間(計7日間)培養を行った。
【0103】
ウイルス増殖の有無は、細胞変性と培養液の赤血球凝集性で判定し、Reed and Muench の方法に従って、ウイルス感染価を算出した。
【0104】
(5)試験結果
綿織物B及び綿織物Cで感作させた後に回収されたウイルス液中に残存するウイルス感染価は、いずれも検出限界以下10≦0.5であり、洗濯を50回繰り返してもその抗ウイルス効果が低下しないことが確認できた。
【0105】
一方、綿織物Aで感作させた後に回収されたウイルス液中に残存するウイルス感染価は、未処理の綿織物と同様に105.0/0.1mlであり、抗ウイルス効果を確認できなかった。比較例1〜4で得られた綿織物及び比較例1〜4で得られた綿織物を50回洗濯した綿織物についても、未処理の綿織物と同様に抗ウイルス効果を確認できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ−オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライドを含有する繊維用抗ウイルス加工剤。
【請求項2】
(1)ポリ−オキシエチレン(ジメチルイミノ)エチレン(ジメチルイミノ)エチレンジクロライド及び(2)被膜を形成し得る化合物を含有する繊維用抗ウイルス加工剤。
【請求項3】
繊維又は繊維製品を請求項1又は請求項2に記載の繊維用抗ウイルス加工剤で処理し、次いでソーピングして得られる、抗ウイルス性を備えた繊維又は繊維製品。

【公開番号】特開2012−92490(P2012−92490A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−282066(P2011−282066)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【分割の表示】特願2006−302013(P2006−302013)の分割
【原出願日】平成18年11月7日(2006.11.7)
【出願人】(000238234)シキボウ株式会社 (33)
【Fターム(参考)】