説明

抗ウイルス活性を有したロイコノストックメセンテロイデス及びそれを含む組成物

【課題】抗ウイルス活性を有したロイコノストックメセンテロイデス及びそれを含む組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、抗ウイルス活性を有するロイコノストックメセンテロイデスYML003に関するものであって、より具体的に、ウイルス活性及び鳥インフルエンザウイルスの生育を抑制するロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物、及びそれを含む組成物を提供する。本発明によるロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物は、飼料、醗酵製品などの食品添加用組成物、生菌剤、整腸用組成物などの薬学組成物など多様な分野に活用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病原性ウイルス、望ましくは、鳥インフルエンザウイルスに抵抗性を有するロイコノストックメセンテロイデス及びそれを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
鳥インフルエンザウイルスは、動物と人とにおいて、重要な疾病であって、最近、養鶏産業の被害の拡散と、鳥類から人への感染による被害の拡散が問題となっている。これにより、鳥インフルエンザウイルスの効果的な予防及び対応方法が要求されている。
【0003】
インフルエンザウイルスによって、20世紀において汎世界的なpandemic発生があり、これにより、多くの人命被害と大きな経済的損失とがあった。1918年に発生した大流行は、H1N1 typeでSpanish Fluと呼ばれ、全世界的に2千万から5千万にのぼる人命が死亡した。以後、1957年には、H2N2 typeでAsian Influenzaが発生し、これにより、百万名以上の人命被害があり、1968年に発生したHong Kong Fluは、H3N2 typeによって百万名近い人命損失をもたらした。
【0004】
もっとも最近には、1977年Russian FluでH1N1によって大流行があった。このような大流行は、最近、ウイルスの遺伝的分析を通じて直・間接的に鳥インフルエンザウイルスから来由されたことが明かになった。特に、最近、中国、東南アジアで問題となっていた鳥インフルエンザウイルスであるH5N1(1997年)、H9N2(1999年)、カナダのH7N3(2004年)、そして、オランダで問題となったH7N7(2003年)などは、いずれも野生または家禽の鳥類ウイルスが直接または変異を通じて人に伝播されて多くの人命被害を出した場合と言える。
【0005】
鳥インフルエンザウイルスの感染は、鳥類の分泌物を直接接触する時に主に起こり、水、人、飼料車、器具、装備、卵の外面に付いた糞便などによっても伝播される。
【0006】
鳥インフルエンザウイルスが感染されれば、全世界のほとんどの国家では、全量屠殺処分し、発生国家では、養鶏産物を輸出することができなくなる。国内でも、血清型H9N2低病原性鳥インフルエンザと血清型H5N1高病原性鳥インフルエンザとが1996年から頻繁に発生していて問題となっている。
【0007】
前記のような鳥類疾病の被害を阻むために、養鶏農家では、防疫及び衛生管理、ワクチンや抗生剤を使っているが、ワクチンの接種による感染の抑制は、流行のウイルスの型とワクチンのウイルス型とが合わなければ、効能に問題があり、ワクチンによる予防には限界があるために、ウイルスに対する効果的な治療法や予防策は、まだ不備な状態である。したがって、病原性鳥インフルエンザウイルスに対する抑制効果を有しながら、鶏群自体の免疫システムを強化させ、また安定性に問題のない複合的な治療予防剤が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、抗ウイルス活性を有するロイコノストックメセンテロイデスYML003(受託番号:KCTC 12031BP)を提供することである。
【0009】
本発明は、ロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物を含む抗ウイルス用組成物、食品添加用組成物、化粧品組成物、及び薬学組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、抗ウイルス活性を有するロイコノストックメセンテロイデスYML003(受託番号:KCTC 12031BP)を提供する。
【0011】
本発明は、ロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物を含む抗ウイルス用組成物を提供する。
【0012】
前記ウイルスは、鳥インフルエンザウイルスであり得る。
【0013】
前記鳥インフルエンザウイルスは、血清型H5N1、血清型H9N2、血清型H7N3、及び血清型H7N7からなる群から選択された1つ以上の鳥インフルエンザウイルスであり得る。
【0014】
前記抗ウイルス用組成物は、動物飼料、発酵食品、整腸剤、生菌剤、噴霧用殺菌剤、化粧料、手指消毒剤、またはボディー消毒剤である抗ウイルス用組成物であり得る。
【発明の効果】
【0015】
本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物は、鳥インフルエンザウイルスを含んだウイルスに対する阻害活性を表わすために、それを飼料、醗酵製品、健康食品などの食品、医薬品、化粧品など多様な分野に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】Madin−Darby canine kidney(MDCK)細胞株(cell line)に低病原性鳥インフルエンザH9N2ウイルス(Low−pathogenci Avian Influenza H9N2 virus)を感染させた後、ロイコノストックメセンテロイデスYML003で処理して、細胞株を培養した実験結果を示したものである(a:MDCK cell細胞株、b:LPAI H9N2ウイルス感染、c:LAPI H9N2ウイルス感染、ロイコノストックメセンテロイデスYML003処理)。
【図2】種卵にロイコノストックメセンテロイデスYML003と低病原性鳥インフルエンザウイルスとを接種して4日間培養後、血球凝集試験(hemagglutination test、HA)を実施した結果を表わしたものである(A:ロイコノストックメセンテロイデスYML003、B:低病原性鳥インフルエンザH9N2ウイルス)、C:リン酸緩衝液(PBS))。
【図3】ロイコノストックメセンテロイデスYML003と低病原性鳥インフルエンザウイルスとをSPFニワトリに処理した後、インターフェロンガンマの変化を測定したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明では、抗ウイルス活性を有するロイコノストックメセンテロイデスYML003(受託番号:KCTC 12031BP)、それを利用した抗ウイルス用組成物を提供する。
以下、本発明を詳しく説明する。
【0018】
従来、インフルエンザ、特に、鳥インフルエンザに対する治療剤としてタミフルとリレンザなどを使ったが、前記治療剤に対するウイルス耐性が次第に増加し、突然変異の出現でタミフル及びリレンザなどがそれ以上効果を奏し得ない新種のウイルスが出現した。これにより、本発明者は、抗ウイルス活性が強く、天然から抽出され、副作用や耐性の恐れが少なく、長期間の服用によって、人体の免疫力を増加させ、突然変異ウイルスの出現にも抵抗性を表すことができる、新規な物質を探していたところ、本発明の微生物によって、前記問題点が解決される可能性があるということを見出して本発明を完成した。
【0019】
本発明は、抗ウイルス活性を有するロイコノストックメセンテロイデスYML003(受託番号:KCTC 12031BP)を提供する。
【0020】
前記微生物は、キムチから分離された植物由来乳酸菌であり、この微生物を37℃で24時間MRS固体培地またはMRS液体培地(Difco laboratories、Detroit、MI、USA)で培養した後に分離し、それを16SrRNA塩基配列分析(16S rRNA sequencing)を使って、系統学的分析及び菌株同定を行った。
【0021】
前記菌株は、2011年10月20日付でブダペスト条約による国際寄託機関である韓国生命工学研究院生命資源センターに、寄託番号KCTC 12031BPで寄託された。
【0022】
前記ウイルスは、特別に限定されるものではないが、病原性ウイルス、望ましくは、インフルエンザウイルス、より望ましくは、鳥インフルエンザウイルスであり得る。
【0023】
前記菌株は、実施例1から確認できるように、人工胃液(pH2.3)で2時間培養後、60%以上の本発明の菌株が生存したことを確認した。これを、人工胆汁液(Bile)で5時間培養したところ、70%以上の菌株が生存したことを確認した。この結果、本発明の菌株は、酸と胆汁とに対する耐性があって、胃腸管での生存可能性が大きく、アンピシリン(Ampicillin)、テトラサイクリン(Tetracycline)、エリトロマイシン(Erythromycin)、セファロチン(Cephalothin)、リンコマイシン(Lincomycin)、ネオマイシン(Neomycin)、ストレプトマイシン(Streptomycin)、カルベニシリン(Carbenicillin)、ペニシリンG(Penicillin G)などの多様な抗生剤に対して感受性を示した。また、実施例2から確認したように、In vitroで細胞株(cell line)と種卵(Embryonated egg)実験により鳥インフルエンザウイルス増殖の抑制に優れた活性を見えることを確認することができた。実施例3から確認できるように、In vivo上本発明の菌株にウイルス接種した後、3ないし5日後には、ウイルス力価が測定されなかったため、ウイルス増殖が全て抑制されることを確認することができた。免疫作用によるインターフェロンガンマの産生と免疫器官の重量の増加を確認することができた。
【0024】
また、本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003は、抗ウイルス活性が強いだけではなく、長期間の安定性と有用性とを認められたキムチから抽出したものである。そのため、副作用や耐性の恐れが少なく、醗酵時に豊かに生産された有用な生理活性物質などによって、人体の免疫力が増加して突然変異ウイルスの出現にも、抵抗性を示すことができる。
【0025】
本発明の微生物は、当業界で公知の、通常の物理化学的突然変異方法などによって、これと同等な活性、またはこれより優れた活性を有するように、改善または改良することができ、これらの微生物も、本発明の範囲に含まれる。
【0026】
本発明は、ロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物を含む抗ウイルス用組成物を提供する。
【0027】
前記ロイコノストックメセンテロイデスYML003の回収形態は、特に限定されるものではなく、培養状態をそのまま使ったり、遠心分離または濾過過程を経たりすることができ、このような段階は、当業者の必要に応じて行うことができる。濃縮された菌体は、通常の方法によって冷蔵したり、凍結乾燥したりして、その活性を失わないように保存することができる。
【0028】
前記ロイコノストックメセンテロイデスYML003の培養物は、ロイコノストックメセンテロイデスYML003を培養させたあらゆる種類の固体培養物または液体培養物を含み、前記培養物は培地の種類や培養方法によって限定されるものではなく、抗ウイルス活性を有する本発明の菌体を含んだ培養原液、菌体を除去した培養上澄み液または培養液の希釈液もしくは濃縮液であり得る。また、前記ロイコノストックメセンテロイデスYML003の生産物は、前記微生物の代謝によって生成されるあらゆる産物を意味する。
【0029】
本発明の一例として、固体培養の場合、標準寒天培地、MRS寒天培地などを使って、25ないし45℃で静置培養を行う方法を用いることができる。液体培養の場合、前記寒天培地から寒天を除去した各種の液体培地などを使って、25ないし45℃で振盪攪拌培養する方法を用いて、その培養物を提供することができる。
【0030】
本発明の一例として、ロイコノストックメセンテロイデスYML003を、37℃で24時間、MRS液体培地(MRS broth)で培養して、菌体培養上澄み液、または、それを遠心分離して得られる無細胞上澄み液(cell−free supernatant)を使用できる。
【0031】
本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003が抵抗性を示すウイルスは、特に限定されるものではなく、病原性ウイルス、望ましくは、インフルエンザウイルス、より望ましくは、鳥インフルエンザウイルスであり得る。
【0032】
鳥インフルエンザウイルスは、いずれも本発明の範囲に含まれ、一例として、血清型H5N1、血清型H9N2、血清型H7N3、及び血清型H7N7からなる群から選択された1つ以上の鳥インフルエンザウイルスが含まれる。本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003は、特に、血清型H9N2である鳥インフルエンザウイルスに対して優れた抵抗性を示すことができる。
【0033】
本発明の一例として、実施例1ないし3では、鳥インフルエンザウイルスであるH9N2に対する抗ウイルス活性が示されている。
【0034】
前記ロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物を含む抗ウイルス用組成物は、その用途において特別に限定されるものではなく、食品組成物、薬学組成物、化粧品組成物として活用が可能であり、一例として、動物飼料、発酵食品、整腸剤、生菌剤、噴霧用殺菌剤、化粧料、手指消毒剤、またはボディー消毒剤として使われる。
【0035】
本発明は、ロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物を含む抗ウイルス用食品組成物を提供する。
【0036】
前記ウイルスは、特別に限定されるものではないが、病原性ウイルス、望ましくは、インフルエンザウイルス、より望ましくは、鳥インフルエンザウイルスであり得る。鳥インフルエンザウイルスは、いずれも本発明の範囲に含まれ、一例として、血清型H5N1、血清型H9N2、血清型H7N3、及び血清型H7N7からなる群から選択された1つ以上の鳥インフルエンザウイルスが含まれる。本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003は、特に、血清型H9N2である鳥インフルエンザウイルスに対して優れた抵抗性を示すことができる。
【0037】
前記食品は、特別に限定されるものではなく、動植物が摂取することができるものであって、健康補助剤、乳酸菌飲料のような発酵食品、食品添加剤、及び飼料添加剤などをいずれも含みうる。
【0038】
食品組成物には、本発明の微生物と共に、脂肪、タンパク質、炭水化物、食餌纎維、無機質、及びビタミンなどで構成された1つ以上の栄養構成物を含み得る。前記構成物のうち、特に、食物纎維は、一般的に乳酸菌の分裂を促進する生物発生以前基質(Prebiotic、プレバイオティクス)として知られている。そのため、食物繊維は、体内に流入されて、臓内でコロニーの形成及び保持に重要な役割を果たすことができるので、本発明の組成物を摂取した後に、または同時に、投与されるように、組成物に含ませることができる。
【0039】
本発明の食品組成物は、指示された比率で必須成分として前記ロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物を含有する以外には、他の成分には特に制限がなく、通常の飲料のようにさまざまな香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。
【0040】
前記以外に、本発明の組成物は、さまざまな営養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤、及び天然風味剤などの風味剤、着色剤、及び重鎮剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含有することができる。
【0041】
前記組成物は、飼料組成物の形態で提供される場合、既存抗生剤の代替用として使われて、臓内有害菌の生育を抑制し、臓内菌叢を安定して保持して、家畜の健康状態を良好にして、家畜の増体量と肉質とを改善させ、産乳量及び免疫力を増加させることができる。本発明の飼料組成物は、これに限定されないが、醗酵飼料、配合飼料、ペレット形態、サイレージ(silage)などの形態で製造することが可能である。前記醗酵飼料は、本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物とさまざまな微生物または酵素とを添加することによって、有機物を醗酵させて製造する。前記配合飼料は、多種の一般飼料と本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物と混合して製造することができる。また、前記ペレット形態の飼料は、前記醗酵飼料または配合飼料をペレット機で熱と圧力とをかけて製造し、サイレージは、青刈飼料を本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003で醗酵させることで製造することができる。
【0042】
本発明の食品組成物に含まれるロイコノストックメセンテロイデスYML003の含量は、特別に限定されるものではないが、約10cfu/gないし約1011cfu/gであり、最小の効能を有するのに必要な菌株量及び一日摂取量は、摂取者の身体または健康状態によって変わりうる。
【0043】
本発明は、ロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物を含む抗ウイルス用薬学組成物を提供する。
【0044】
前記ウイルスは、特に限定されるものではないが、病原性ウイルス、望ましくは、インフルエンザウイルス、より望ましくは、鳥インフルエンザウイルスであり得る。鳥インフルエンザウイルスは、いずれも本発明の範囲に含まれ、血清型H5N1、血清型H9N2、血清型H7N3、及び血清型H7N7からなる群から選択された1つ以上の鳥インフルエンザウイルスが含まれ、本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003は、特に、血清型H9N2である鳥インフルエンザウイルスに対して優れた抵抗性を示すことができる。
【0045】
本発明の組成物の適用対象には、特に制限がなく、本発明の組成物は、人だけではなく、動物、例えば飼育動物やペットを含むあらゆる動物に適用可能である。
【0046】
本発明の抗ウイルス用薬学組成物は、病原性ウイルスの生育を阻害または抑制する活性を有した組成物であり、その一例としては、整腸剤、生菌剤、噴霧用殺菌剤などがある。
【0047】
前記整腸剤は、動物の臓内細菌叢の異常醗酵によって引き起こされる諸般の症状を治療及び改善するためのものであって、諸般の症状の一例として、有害微生物による感染性下痢、胃腸炎、炎症性臓疾患、神経性腸炎症侯群、小腸微生物過成長症、腸急性下痢などが含まれ得る。
【0048】
前記生菌剤は、生きている菌、すなわち、動物が摂取した時、胃腸管に留まって生存することができる微生物として特定の病理状態を予防するか、治療することができる効果がある微生物製剤を意味する。
【0049】
前記薬学組成物総重量に対して、前記ロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物は、0.1ないし90重量%の割合で含まれ得る。
【0050】
本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物を含む薬学組成物は、薬学的組成物の製造に通常使う適切な担体、賦形剤、及び希釈剤をさらに含み得る。本発明の薬学組成物は、当業界で通常製造される如何なる剤型でも製造可能であり(例:文献[Remington’s PharmaceuticalScience、最新版;Mack Publishing Company、Easton PA)、担体基質または栄養成分と共に、経口投与、非経口投与、または皮膚または粘膜に対する物理的な接触を通じた投与、チューブやカテーテルを通じた腸に対する直接的な投与も可能である。前記薬学的組成物は、錠剤(tablet)、トローチ(troche)、カプセル(capsule)、エリキシル(elixir)、シロップ(syrup)、散剤(powder)、懸濁剤(suspension)、顆粒剤(granule)、噴霧剤などの形態で製造されて、投与される。
【0051】
例えば、散剤は、本発明の乳酸菌と乳糖、澱粉、未結晶セルロースなど薬剤学的に許容される適当な賦形剤を単純混合することで製造可能である。顆粒剤は、本発明の微生物;薬剤学的に許容される適当な賦形剤;及びポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロースなどの薬剤学的に許容される適当な結合剤を混合した後、水、エタノール、イソプロパノールなどの溶媒を利用した湿式顆粒法または圧縮力を利用した乾式顆粒法を用いて製造可能である。また、精製は、前記顆粒剤をステアリン酸マグネシウムなどの薬剤学的に許容される適当な滑濁剤と混合した後、打錠機を用いて打錠することで製造可能である。
【0052】
本発明の投与容量(用量)は、体内での活性成分の吸収度、不活性率、排泄速度、非投与者の年齢、性別、状態、疾病の重症程度などによって適切に選択することができる。例えば、生菌剤用組成物の場合には、組成物内の生菌数が1×10ないし1×1011cfu/gになるように投与されるが、これは、患者及び状況によって選択されなければならない事項であって、前記投与量によって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0053】
本発明は、ロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物を含む抗ウイルス用化粧品組成物を提供する。
【0054】
前記ウイルスは、特に限定されるものではないが、病原性ウイルス、望ましくは、インフルエンザウイルス、より望ましくは、鳥インフルエンザウイルスであり得る。鳥インフルエンザウイルスは、いずれも本発明の範囲に含まれ、一例として、血清型H5N1、血清型H9N2、血清型H7N3、及び血清型H7N7からなる群から選択された1つ以上の鳥インフルエンザウイルスが含まれ、本発明のロイコノストックメセンテロイデスYML003は、特に、血清型H9N2である鳥インフルエンザウイルスに対して優れた抵抗性を示すことができる。
【0055】
本発明の組成物の適用対象には、特に制限がなく、本発明の組成物は、人だけではなく、動物、例えば、飼育動物やペットを含むあらゆる動物に適用可能である。
【0056】
本発明の化粧品の形態は、特に限定されず、当業界で通常製造される如何なる形態でも製造可能であるが(例:文献[Remington’s Pharmaceutical Science、最新版)、例えば、エマルジョン、ローション、クリーム(水中油滴型、油中水滴型、多重相)、溶液、懸濁液(無水及び水系)、無水生成物(オイル及びグリコール系)、ゲル、マスク、パック、粉末、石けんなどの形態で製造可能である。
【0057】
本発明の一例として、本発明の組成物は、噴霧用懸濁液で手指消毒剤、またはボディー消毒剤として使われる。
【0058】
本発明の化粧品には、必要に応じて、本発明の効果を損傷させない範囲で、通常の成分、例えば、油分、界面活性剤、補習剤、多価アルコール、増粘剤、水溶性高分子、被膜形成剤、非水溶性高分子、粉末、顔料、染料、レーキ、低級アルコール、紫外線吸収剤、金属イオンキレート剤、有機アミン類、pH調整剤、薬効成分、糖類、防腐剤、酸化防止剤、香料、水などを添加することができる。
【0059】
前記化粧品におけるロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物の配合量は、化粧品の形態である前記物質の種類などによって当業者が適切に選択可能であり、例えば、0.001重量%ないし50重量%とし得るが、使用用途、状態などによって重量比は変わり得る。
【0060】
本発明の化粧品は、完成品の最終用途と特性とに応じた条件で塗布される。例えば、抗ウイルス活性を示す、消毒用の化粧品を毎日一回、必要に応じて、それよりさらに頻繁に、またはそれよりさらに少ない回数で、使用できる。その他の適した塗布方法は、通常の最適化の手法によって決定される。
【0061】
以下、本発明を実施例によってさらに詳細に説明する。但し、下記の実施例は、本発明を例示したものであって、本発明の内容は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0062】
実施例1.耐酸性、耐胆汁酸性、及び抗生剤感受性を有する細菌の分離
実施例1−1.耐酸性の測定
韓国の伝統キムチから分離したロイコノストックメセンテロイデスYML003をMRS液体培地(Difco)に37℃で24時間培養して、培養上澄み液を得た。
【0063】
耐酸性を確認するために、1N HClとNaOH溶液とを使って、pH2.3に調整したMRS液体培地に、ロイコノストックメセンテロイデスYML003培養液を加え、37℃で2時間培養した後に、生菌数を測定し、その結果を表1に表わした。
【0064】
実施例1−2.耐胆汁酸性の測定
耐胆汁酸性の試験は、胆汁(oxgall、Sigma−Aldrich、USA)5%添加のMRS液体培地に、ロイコノストックメセンテロイデスYML003を播種して、37℃で5時間培養した後に、生菌数を測定し、その結果を表1に表わした。
【0065】
【表1】

【0066】
前記の表1から確認できるように、ロイコノストックメセンテロイデスYML003は、酸と胆汁とに対する耐性を有し、胃腸管での生存可能性が高いことが示された。
【0067】
実施例1−3.抗生剤感受性の測定
ロイコノストックメセンテロイデスYML003の抗生剤に対する感受性の実験は、Becton Dickinson Microbiology Systemsの方法に従って、BBL Sensi−Discを使って実験し、11種の抗生剤について行った。抗生剤の種類は、次の通りである。
アンピシリン(Ampicillin、10ug)、テトラサイクリン(Tetracycline、30ug)、ゲンタマイシン(Gentamicin、10ug)、エリスロマイシン(Erythromycin、15ug)、セファロチン(Cephalothin、30ug)、リンコマイシン(Lincomycin、30ug)、ネオマイシン(Neomycin、30ug)、ストレプトマイシン(Streptomycin、10ug)、カルベニシリン(Carbenicillin、100ug)、スルファフラゾール(Sulfisoxazole、25ug)、ペニシリンG(Penicillin G、10ug)であった。
【0068】
ロイコノストックメセンテロイデスYML003をMRS液体培地で培養した(37℃、24時間)。その後、MRS固体培地plateに菌液を均一に塗抹し、BBL Sensi−Discを載せた後、培養(37℃、24時間)した。培養終了後、形成された生育抑制環(clear zone)の直径を測定して、抗生剤に対する感受性を評価した。その結果を表2に表わした。
【0069】
【表2】

【0070】
実施例2.In vitro上で低病原性鳥インフルエンザウイルス生長抑制実験
実施例2−1.細胞株(cell line)を用いた抗ウイルス活性評価
MDCK cell monolayer(単層細胞)に鳥インフルエンザH9N2血清型ウイルス(LPAI H9N2 virus)であるA/chicken/Korea/MS96/1996(H9N2)接種し、約1時間、ウイルスを細胞に吸着させた後、MEM(Eagle’s minimum essential medium)を添加し、5%COを含有した、37℃細胞培養器で培養しながら、細胞変性効果(cytopathic effects、CPE)を観察した。LPAI H9N2ウイルス培養液をMEMに希釈して、ウイルス力価(virus titer)が107.5EID50/0.1mLになるようにした。96穴細胞培養プレート(plate)に、MDCK cellmonolayerを準備した。その後、乳酸菌培養液を、各穴(well)で2倍ずつ希釈し、96穴細胞培養plateの各穴(well)にLPAI H9N2ウイルスを添加した。そして、5%COを含有した37℃細胞培養器で72時間培養して、細胞変性の効果を観察した。
【0071】
ロイコノストックメセンテロイデスYML003のLPAI H9N2ウイルスに対する抑制活性は、次の表3に表される通りである。
【0072】
【表3】

【0073】
前記の表3及び図1から確認できるように、細胞変性が表われたことから、ロイコノストックメセンテロイデスYML003のLPAI H9N2ウイルスに対する抗ウイルス活性を確認することができる。
【0074】
実施例2−2.種卵(Egg)を利用した抗ウイルス活性
LPAI H9N2ウイルスを、9〜11日齢のSPF種卵に培養して力価が107.5EID50/0.1mLになるように増殖させ、該増殖させたウイルスを、零下70℃で保持される冷凍庫に保管して用いた。乳酸菌培養上澄み液は、PBSを用いて10に希釈して使った。
【0075】
ウイルス増殖如何の判定のために、LPAI H9N2ウイルスと乳酸菌培養上澄み液とを室温で1時間反応させ、11日齢のSPF種卵(発育卵)の尿膜腔に100uL接種した。ウイルス接種後、5日間培養(孵化器、37℃)し、毎日検卵を実施して、死んだ発育卵は取り除いた。5日間培養した発育卵を4℃で冷却(chilling)した後、発育卵で尿膜腔液を採取した。1%SPFニワトリの赤血球を使って血球凝集反応試験を実施し、濃度別ウイルス増殖抑制能力を測定した。その結果を下記の表4に表わした。
【0076】
【表4】

【0077】
前記の表4から確認できるように、血球凝集試験の結果、最大8倍希釈した場合にまでウイルス増殖による血球凝集を抑制させることができる、抗ウイルス活性を確認することができた。
【0078】
実施例3.In vivo上で低病原性鳥インフルエンザウイルス生長抑制実験
実施例3−1.SPFニワトリの体重、免疫器官の重量変化の確認
SPFニワトリでLPAI H9N2ウイルスの増殖抑制を確認するために、SPFニワトリ100羽を4つの試験に分けて、ニワトリの体重、免疫器官の重量変化を確認した。
【0079】
試験Aは、乳酸菌培養液を90℃で1時間沸かした死菌培養液(1%)を、Bは、乳酸菌培養液生菌培養液(1%)を飼料に混ぜて投与した。Dの場合は、乳酸菌培養液が含まれていない飼料のみを投与した試験である。A、B、Dは、乳酸菌培養液(生菌、死菌)と低病原性鳥インフルエンザウイルスを処理した試験で、で乳酸菌培養液(生菌、死菌)を2週間投与した後、LPAI H9N2ウイルスを攻撃接種した。Cは、対照試験で微生物培養液生菌培養液1%を飼料に混合して投与し、LPAI H9N2ウイルスは、攻撃接種しなかった。
前記経時的なニワトリの体重、免疫器官の重量変化を表5に表わした。
【0080】
【表5】

【0081】
前記の表5から確認できるたように、ウイルス攻撃接種の3日後、あらゆる試験で類似の体重変化の結果が表われたが、生菌培養液が1%投与されたB、C試験で、攻撃接種の5日目のSPFニワトリの体重が高く表われた。
【0082】
生菌培養液1%を飼料に混合して投与したB試験で、LPAI H9N2ウイルスの感染後、脾臓とファブリシウス嚢との重さが最も高くなる結果が表れた。また、LPAIウイルスを接種せず、生菌培養液1%を飼料に混合したC試験でも、ウイルス感染時間が経るほど脾臓とファブリシウス嚢との重さが高くなる結果が表われた。
【0083】
実施例3−2.気道(Trachea)での鳥インフルエンザウイルス排出力価の測定
実施例3−1と同様に処理した試験と対照試験とを用いた。鳥インフルエンザウイルスを攻撃接種した後、SPFニワトリの気道で期間によるウイルス力価をqRT−PCRを用いて測定し、その結果を表6に表わした。
【0084】
下記の表6で示したように、生菌培養液と死菌培養液とを処理していないD試験のウイルス力価が最も高く、死菌培養液を投与したA試験と生菌培養液を投与したB試験では、D試験より低いウイルス力価が測定された。特に、生菌培養液を投与したB試験は、他の試験に比べて低いウイルス力価を見せた。これは、生菌培養液を投与したSPFニワトリでウイルス増殖の抑制が高いことが分かり、また、死菌培養液を投与したSPFニワトリでも、生菌を投与したグループより低いが、ウイルス増殖の抑制が作用したということが分かる。
【0085】
実施例3−3.排泄腔(Cloaca)での鳥インフルエンザウイルス排出力価の測定
実施例3−1と同様に処理した試験と対照試験とを用いた。ウイルスを攻撃接種した後、SPFニワトリの排泄腔で期間によるウイルス力価をqRT−PCRを用いて測定し、その結果を表6に表わした。
【0086】
下記の表6に示したように、鳥インフルエンザウイルス攻撃接種後、3日目の力価を測定した結果、生菌培養液及び死菌培養液を処理していないD試験のウイルス力価が最も高く、生菌培養液を投与したB試験では、A、D試験より非常に低いウイルス力価が測定された。特に、生菌培養液を投与したB試験では、ウイルス攻撃接種5日目からウイルスの力価が測定されなかった。これは、ウイルスの増殖がいずれも抑制されたことを意味する。
【0087】
【表6】

【0088】
前記の表6で示したように、生菌培養液1%を投与したB試験は、他の試験に比べて低いウイルス力価を見せた。これは、生菌培養液1%投与したSPFニワトリでウイルス増殖の抑制が高いことが分かり、また、死菌培養液1%投与したSPFニワトリでも、生菌を投与したグループより低いが、ウイルス増殖の抑制が作用したということが分かる。
【0089】
実施例3−4.脾臓細胞でインターフェロンガンマの生成の測定
実施例3−1と同様に処理した試験と対照試験とを使った。鳥インフルエンザウイルス感染後、期間による脾臓細胞でインターフェロンガンマの生成を測定した。その結果を図3に表わした。
【0090】
図3に示したように、A、B、C、D試験いずれもインターフェロンガンマの生成は、LPAI H9N2ウイルス接種後、5日目で最も多く生成されることが分かる。特に、生菌培養液を飼料に混合して投与したB試験は、他の試験に比べてインターフェロンガンマの生成が非常に高かった。SPFニワトリに乳酸菌培養液(生菌、死菌)を投与した試験は、LPAI H9N2ウイルスのみ接種した試験に比べて免疫調節活性が高いと確認された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、抗ウイルス活性を有したロイコノストックメセンテロイデス及びそれを含む組成物関連の分野に適用可能である。
【受託番号】
【0092】
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KCTC12031
受託日:2011.10.20

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ウイルス活性を有するロイコノストックメセンテロイデスYML003(受託番号:KCTC 12031BP)。
【請求項2】
ロイコノストックメセンテロイデスYML003、その培養物、またはその生産物を含む抗ウイルス用組成物。
【請求項3】
前記ウイルスは、鳥インフルエンザウイルスである請求項2に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項4】
前記鳥インフルエンザウイルスは、血清型H5N1、血清型H9N2、血清型H7N3、及び血清型H7N7からなる群から選択された1つ以上の鳥インフルエンザウイルスである請求項3に記載の抗ウイルス用組成物。
【請求項5】
前記抗ウイルス用組成物は、動物飼料、発酵食品、整腸剤、生菌剤、噴霧用殺菌剤、化粧料、手指消毒剤、またはボディー消毒剤である請求項2に記載の抗ウイルス用組成物。

【図3】
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【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−111080(P2013−111080A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53808(P2012−53808)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2011年9月10日付発行の国際微生物学連合2011会議(IUMS)のプログラム
【出願人】(512061445)プロバイオニック コーポレイション (1)
【氏名又は名称原語表記】PROBIONIC CORP.
【Fターム(参考)】