説明

抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体

別個のメンバーであって、これらが合同して、少なくとも3個のオルトポックスウイルス関連抗原に結合できるメンバーを含む抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体、当該抗体を含む医薬組成物、及びその製造方法が開示される。治療方法がポリクローナル抗体を用いる場合、組換えポリクローナル抗体を産生できるポリクローナル細胞株が開示される。最後に、本発明は、ポリクローナル抗体を製造する場合に有用であるVH及びVL対をスクリーニングする方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換えポリクローナル抗オルトポックスウイルス抗体(抗-オルトポックスウイルスrpAb)、特に組換えポリクローナル抗ワクシニアウイルス抗体(抗VV rpAb)に関する。本発明は、抗-オルトポックスウイルスrpAb又は抗VV rpAbを産生するポリクローナル発現細胞株にも関する。さらに、本出願は、抗オルトポックスウイルスrpAb又は抗VV rpAbを含む診断及び医薬組成物、並びにワクチン接種の副作用の予防、及び治療、或いはオルトポックスウイルス感染の診断及び治療における、それらの使用を記載する。
【背景技術】
【0002】
天然痘は、オルトポックスウイルス、天然痘の気道感染により引き起こされる。生物テロ及びサル痘などの関連ウイルスの出現の結果として、天然痘発生の脅威が、抗オルトポックスウイルス治療及びワクチン接種に対する必要性を再燃させた。ワクシニアウイルスによるワクチン接種は、1000人に一人の中程度〜重篤な副作用を引き起こす。これらは、現在では、高い抗体タイターを有するドナーから単離された抗ワクシニアウイルス免疫グロブリン(VIG)で治療される。しかしながら、弱毒化生ワクシニアウイルスを用いた一般的なワクチン接種プログラムから生じる副作用の推計発生率は、現在のVIGの産生能力を超えており、天然痘に対する公衆保護のアプローチとしてのワクチン接種の妨げとなっている。さらに、VIGは、かなり低い特異的活性しか有さず、大量に注射することを必要とする。血清由来VIG製剤からのウイルス疾患の伝染リスクもあり、並びにバッチ間の変動に関する問題もある。その結果、ワクシニアウイルス副作用又は他のオルトポックスウイルスによる感染に対して保護を提供する潜在的な代替物の調査が行なわれてきた。
【0003】
オルトポックスウイルスは、2つのタイプの感染粒子、つまり細胞内成熟ビリオン(IMV)と細胞外エンベロープビリオン(EEV)を産生する。IMVは、宿主間伝染において主な役割を果たし、そしてEEVは宿主内でのウイルス伝播において主な役割を果たす。IMV粒子は、感染細胞の細胞質に集合し、そしてゲノムを囲むウイルス誘導性の膜であって、均一なコア粒子を含む膜からなる。宿主細胞由来の膜でIMV粒子を包み込み、次にEEV粒子を放出させることによってEEV粒子は作成される。後期においてワクシニアウイルス感染は、細胞死と感染性IMV粒子の放出をもたらす。IMV又はEEV粒子の表面に提示されたウイルスタンパク質は、抗体の潜在的な標的であり、全部で5個のIMV特異的タンパク質及び2個のEEV特異的タンパク質が、免疫化又はワクチン接種に使用される場合に、ウイルスの中和を誘発するか、及び/又は保護効果を誘発すると報告された。さらに、中和及び保護効果は、そのタンパク質に特異的に結合する抗体の受動投与に観察された(表1に要約される)。
【0004】
【表1】

【0005】
「抗体効果」の列は、in vitro中和アッセイ又は保護効果を計測するためのin vivo曝露アッセイのいずれかにおいて、指定抗原と反応性である抗体の効果を記載する参考文献からの結果を要約する。
【0006】
「免疫化/ワクチン接種効果」の列は、抗原がタンパク質の形態又はDNAのいずれかとして動物に注射された参考文献からの結果を要約する。中和効果は、注射を受けた動物の中和タイターを評価することにより分析され、そして保護効果は、免疫化/ワクチン接種された動物をワクシニアウイルスに曝露することにより分析される。
【0007】
1 Demkowiczら、1992, J.Virol. 66:386-98.
2 Foggら、2004, J.Virol. 78:10230-7. この参考文献は、免疫化が以下のタンパク質の組み合わせ:B5R+A33R+L1R>A33R+L1R>A33R+B5R>B5R+L1Rで行なわれた場合の高い保護効果を記載する。
3 Galmicheら、1999, Virology 254:71-80.
4 Gordonら、 1991, Virology 181:671-86
5 Hooperら、 2000, Virology 266:329-39. この参考文献は、ワクチン接種がL1R及びA33RコードDNAで行なわれた場合の高い保護効果を記載する。
6 Hooperら、 2003, Virology 306: 181-95. この参考文献は、ワクチン接種が以下のDNAの組み合わせ:B5R+A33R+L1R+A27L及びB5R+A27Lで行なわれた場合の高い保護効果を記載する。ここで最初の組み合わせは、二番目の組み合わせよりも優れた保護効果を示した。
7 Lawら、 2001, Virology 280: 132-42.
8 Laiら、 1991, J.Virol. 65:5631-5.
9 Linら、 2000, J. Virol. 74:3353-3365.
10 Lustigら、2005, J. Virol. 79:13454-13462. この参考文献は、L1R、A33R及びB5Rに対するモノクローナル抗体が組合わされた場合の高い保護効果を記載する。
11 Ramirezら、 2002, J. Gen. Virol. 83: 1059-1067.
12 Rodriguezら、 1985, J. Virol. 56:482-488.
13 Wallengrenら、 2001, Virology 290: 143-52.
14 Wolffeら、 1995, Virology 211:53-63.
15 US 6,451,309 当該文献は、L1RとA33Rに対するモノクローナル抗体が組合わされた場合に、高い保護効果を示す。さらに、H3L、D8L、B5R、A27L及びA17Lに対する少なくとも1のmAbと組合わされたL1RとA33R mAbが示唆されたが、このような組み合わせの効果の証拠はない。
16 WO 03/068151は、EEVタンパク質、特にB5R、A33R又はB76に結合する個々のヒト全抗体又は組み合わせは、B5Rの天然痘のオルソログであり、そしてそれと92.7%の同一性を共有する。この出願は、このような組成物の中和効果又は保護効果についての証拠を含んでいない。
【0008】
表1に引用される試験のいくつかは、IMVとEEVビリオンタンパク質の両方を標的とするタンパク質/DNAの組み合わせが、免疫化/ワクチン接種に使用された場合に、ウイルス暴露に対する保護を一般的に増加することを明らかにした(参考文献2、5、6、及び10)。同様に、US6,451,309は、ワクシニアウイルス曝露の前にマウスに投与された抗L1R及び抗-A33Rの組み合わせが、個々のmAbに比べて高い保護的効果を有したということを記載した。これは、不活性化IMV粒子のワクチン接種が抗体応答を誘発したが、動物実験においてウイルス曝露に対する保護を与えることはなかったという初期の観察と一致した(Boulter and appleyard 1973, Prog. Med Viol. 16, 86-108)。
【0009】
抗体の組み合わせが、単一のモノクローナル抗体よりも優れているという事実はさらに、Gordonら、1991, Virology 181:671-86による観察によってさらにサポートされる。ここで単一のmAbの中和能力を、mAbと同一の抗原特異性について精製された抗-VVエンベロープ血清、又は非精製ポリクローナル抗VVエンベロープ血清と比較した場合、精製済み及び非精製ポリクローナル抗エンベロープ血清の両方が、モノクローナル抗体よりもずっと効果的であったということが示された。こうして、同一抗原の1超のエピトープへの抗体の結合、並びに、異なるタンパク質上の幾つかの抗原への結合の両方が、ワクシニアウイルスを中和する場合に、関連があるようである。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、組換え産生されているが、オルトポックスウイルスの複数の抗原及びエピトープに反応性を示す代替の抗VV免疫グロブリン産物を提供する。
【0011】
発明の説明
本発明は、天然痘の対抗手段及び血清由来VIG製剤の代替物であって、オルトポックスウイルス感染に関連する複数の抗原及び個々の抗原上の潜在的に複数のエピトープに結合できるポリクローナル抗体の形態のものを提供する。血清由来VIGとは対照的に、本発明のポリクローナル抗体は、非オルトポックスウイルス抗原に結合する抗体分子を含まない。こうして、本発明のポリクローナル抗体は、オルトポックスウイルス抗原に結合しない免疫グロブリンを実質的に含まない。現在では、マウスにおいて産生された3種のモノクローナル抗体の混合物(抗L1R、抗A33R、及び抗B5R)、又は特定の抗原(L1R、B5R、又はA33R)で免疫化されたウサギから得た血清由来ポリクローナル抗体の混合物が知られている(Lustigら、2005, J. Virol. 79: 13454-13462及び US 6,451,309)。これらの3個の抗原に対する抗体を丁度選択する論理的根拠は、これらの抗体がIMV及びEEV粒子に対するものであるということである。しかしながら、オルトポックスウイルスの生物学が複雑であり、完全には理解されていないので、これらの3つの抗原に加えて、ウイルス中和及び/又は保護に対し重要である他の抗原が存在し、それにより代わりの組成物が同一又は優れた効果を提供する可能性が高い。さらに、アフィニティー精製された血清が、単一のモノクローナル抗体よりも優れた中和効果を有するということが示された(Gordonら、1991, Virology 181:671- 86)。これは、抗原上の異なるエピトープに結合する幾つかの抗体が原因である可能性があり、それにより、完全な活性化及び抗原の除去を増加させる。
【0012】
本発明は、ポリクローナル抗オルトポックスウイルス抗体を提供する。好ましくは、ポリクローナル抗オルトポックスウイルス抗体は、組換えポリクローナル抗体(抗オルトポックスウイルスrpAb)であり、特に複数のIMV及び/又はEEV粒子タンパク質に向けられ、そして好ましくは個別のIMV/EEVタンパク質上の複数のエピトープに向けられる抗VV rpAbである。さらには、オルトポックスウイルスに関連する補体活性化レギュレーター(RCA)に対して反応性を有する抗体は、本発明の抗オルトポックスウイルスrpAbの所望される成分である。
【0013】
さらに、本発明は、活性成分が抗オルトポックスウイルスポリクローナル抗体である医薬組成物、並びにこのような組成物の使用を提供する。例えば、本発明の抗VV rpAbは、現在使用される血清由来VIGの代替として機能し、そしてテロに対する対抗手段として天然痘治療用の抗天然痘活性を促進する。
【0014】
本発明はさらに、多様な抗オルトポックスウイルス抗体を選択するのに適したスクリーニング法、そして特に、オリジナルのVH及びVL遺伝子対をこのような晒された個人から単離し、そしてこのオリジナルの対を維持する抗体を産生することにより、オルトポックスウイルスに曝露された際に生じる液性免疫応答を反映する方法をさらに提供する。
【0015】
定義
「抗体」という用語は、血清の機能成分を指し、そして分子の集合(抗体又は免疫グロブリン)としてみなされるか、又は1の分子(抗体分子又は免疫グロブリン分子)としてみなされることが多い。抗体分子は、特定の抗原決定基(抗原又は抗原性エピトープ)に結合することができ、又は反応することができ、これは、次に、免疫学的エフェクターメカニズムの誘導を導くことができる。個々の抗体分子は、通常単一部位特異的であり、そして抗体分子組成物は、モノクローナルであってもよいし(つまり、同一の抗体分子からなる)か、又はポリクローナルであってもよい(つまり、同一抗原又は異なる抗原上の同一又は異なるエピトープと反応する種々の抗体分子からなる)。各抗体分子は、その対応する抗原に特異的に結合することを可能にする固有の構造を有し、そして全ての天然抗体分子は、2つの同一の軽鎖及び2の同一の重鎖の全体の同一基本構造を有する。抗体は、集合的に免疫グロブリンとしても知られている。本明細書で使用される抗体(単数又は複数)という語句は、最も広い意味で使用され、そして無傷の抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全にヒトの抗体、及び一本鎖抗体、並びに抗体の結合性断片、例えばFab、Fv断片、若しくはscFv断片、並びにマルチマー形態、例えばダイマーIgA分子又は5価IgMをカバーする。
【0016】
「抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体」又は「抗オルトポックスウイルスrpAb」という語句は、組換え産生された多様な抗体分子からなる組成物であって、ここで個々のメンバーは、オルトポックス属に属するウイルス上の少なくとも1のエピトープに結合できる、前記組成物を示す。好ましくは、抗オルトポックスウイルスrpAb組成物は、オルトポックスウイルス属に属する1超のウイルス種、又は1の種に反応性である。好ましくは、当該組成物は、単一の産生細胞株から産生されるが、モノクローナル抗体の混合物であってもよいし、又は抗オルトポックスウイルスrpAb組成物の任意の組み合わせであってもよいし、そして1以上のモノクローナル抗体であってもよい。ポリクローナル抗体の多様性は、可変領域(VH及びVL領域)、特にCDR1、CDR2、及びCDR3領域に位置する。
【0017】
「抗VV組換えポリクローナル抗体」又は「抗VV rpAb」という語句は、組換え産生された様々な抗体分子の組成物であって、ここで当該個別のメンバーが、ワクシニアウイルス種又は株上の少なくとも1のエピトープに結合できる組成物を指す。好ましくは、抗VV rpAb組成物は、少なくとも1のIMV及び少なくとも1のEEV特異的抗原と反応性であり、ここで当該反応性は、IMV又はEEV特異的抗原のいずれかに反応性である別個のメンバーにより特徴付けられる。好ましくは、組成物は、単一の製造細胞株から産生されるが、モノクローナル抗体の混合物であってもよい。ポリクローナル抗体の多様度は、可変領域(VH及びVL領域)、特にCDR1、CDR2、及びCDR3領域に位置する。
【0018】
「本発明のポリクローナル抗体が、オルトポックスウイルス抗原に結合しない免疫グロブリン分子を実質的に伴わない」という語句は、80%超の抗体、好ましくは90%超、より好ましくは95%超、そして最も好ましくは99%頭の抗体が、オルトポックスウイルス抗原のうちの一つに結合することを意味する。
【0019】
「同種VH及びVLコード対」は、同一細胞内に含まれるか又は同一細胞に由来するVH及びVLコード配列のオリジナルの対を意味する。こうして、同種VH及びVL対は、そのような細胞の由来元のドナー内に元々存在するVH及びVL対を表す。「VH及びVLコード対から発現される抗体」という語句は、抗体又は抗体断片が、ベクター、プラスミド、又はVH及びVLコード配列を含む同様の物質から産生されるということを指し示す。完全な抗体として又はその安定な断片として同種VH及びVLコード対が発現される場合、これらは結合親和性及び由来元の細胞から元々発現される抗体の結合親和性及び特異性を保持する。同種対のライブラリーは、同種対のレパートリー又はコレクションとも名づけられ、そして個別に維持されるか又は貯蔵されうる。
【0020】
「組換えポリクローナル抗体の別個のメンバー」は、組換えポリクローナル抗体組成物の個別の抗体分子を指し、可変領域内の1以上のストレッチを含み、これは、ポリクローナルタンパク質の他の個別のメンバーに比較されるアミノ酸配列の差違により特徴付けられる。これらのストレッチは、特にCDR1、CDR2、及びCDR3領域に位置する。
【0021】
「エピトープ」という語句は、当該抗体が結合する大分子(例えば、抗原)上の部位を記載するために一般的に使用される。抗原は、免疫応答を刺激する物質、例えばトキシン、ウイルス、バクテリア、タンパク質、又はDNAである。抗原がかなり小さくない場合、抗原はしばしば1超のエピトープを有する。同一抗原の異なるエピトープに結合する抗体は、エピトープの位置に依存して、当該抗体が結合する抗原の活性について様々な効果を有しうる。当該抗体は、結合する。抗原の活性部位のエピトープに結合する抗体は、当該抗原の機能を完全にブロックし得る一方、異なるエピトープに他の抗体が結合することは、当該抗原の活性について全く影響を与えないか又はほとんど影響を与えることがないこともある。しかしながらこのような抗体は、それでも補体を活性化し、それにより抗原の除去をもたらすこともある。
【0022】
DNA、RNA又はタンパク質配列に関して使用される「完全にヒト」という語句は、98%〜100%ヒトである配列を指す。
【0023】
「免疫グロブリン」という語句は、血液又は血清において見られる抗体の混合物の総称として用いられるが、他のソースに由来する抗体の混合物を指すために使用されてもよい。
【0024】
「液性免疫応答を反映する(mirror)」という語句は、ポリクローナル抗体に関して使用される場合、抗体組成物であって、ここで個々の抗体メンバーをコードする核酸配列が、オルトポックスウイルスをワクチン接種されたか、又はオルトポックスウイルスの感染から回復したドナーに由来する抗体組成物を指す。曝露の際にドナーにおいて生じた抗体親和性及び特異性を反映するために、可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)をコードする配列は、単離された場合に、ドナー中に元々存在する遺伝子対又は組み合わせにおいて維持されるべきである。ドナーにおける液性免疫応答の多様性を反映するために、オルトポックスウイルスに結合する抗体をコードする全ての配列を、スクリーニング法に基づいて選択した。単離された配列は、可変領域、特にCDR領域の多様性に関して分析されるが、VH及びVLファミリーに関して分析される。これらの分析に基づいて、オルトポックスウイルス結合抗体の全体の多様性を表す同種対の集合が選択される。このようなポリクローナル抗体は、典型的に、少なくとも8、10、20、30、40、50、100、1000、又は104を有する。
【0025】
「オルトポックスウイルス」という語句は、オルトポックスウイルス属に属するウイルス種又は株を指す。既知のウイルスとして、バッファロポックス、カルフォルニア・ボール・ポックス、ラクダ痘、牛痘、欠肢症、サル痘、家兎痘、ラクーンポックス、タテラポックス(tatera pox)、ウアシン・ギッシュポックス(Uasin Gishu pox)、ワクシニア、天然痘及びハタネズミ痘ウイルスが挙げられる。
【0026】
医薬組成物は、レシピエント患者がその投与に耐えることができれば、「医薬として許容される」と呼ばれる。
【0027】
「単位用量」という語句は、治療有効量の活性成分を含む投与準備のできた形態を指す。
【0028】
「ポリクローナル抗体」という語句は、同一又は異なる抗原上の幾つかの異なる特異性抗原決定因子に結合し、反応することができる異なる(多様な)抗体分子の組成物を指す。通常、ポリクローナル抗体の多様性は、ポリクローナル抗体のいわゆる可変領域、特にCDR領域に基づく。本発明では、ポリクローナル抗体は、ポリクローナル細胞株から1ポットで産生されてもよいし、又は種々のポリクローナル抗体の混合物であってもよい。モノクローナル抗体の混合物は、ポリクローナル抗体とは考えられない。なぜなら、モノクローナル抗体は個々のバッチで産生され、そして例えば翻訳後修飾の差違をもたらす同一細胞株を必ずしも形成しないからである。しかしながら、モノクローナル抗体の混合物が、本発明のポリクローナル抗体と同じ抗原/エピトープの範囲を提供する場合、ポリクローナル抗体の同等物としてみなされよう。ポリクローナル抗体のメンバーが抗原に結合することを述べる場合、本明細書では、100nM未満、好ましくは10nM未満、さらにより好ましくは1nM未満の結合定数を有する結合を意味する。
【0029】
「組換え抗体」という語句は、元々細胞が伴なっていない抗体のコード配列を含む発現ベクターでトランスフェクションされた細胞又は細胞株から発現される抗体分子又は幾つかの分子を記載するために使用される。組換え抗体組成物の抗体分子が多様であり又は異なる場合、当該語句「組換えポリクローナル抗体」又は「rpAb」は、ポリクローナル抗体の定義に従って適用される。
【0030】
「組換えポリクローナル細胞株」又は「ポリクローナル細胞株」という語句は、バリアント核酸配列のレパートリー(例えば、抗体をコードする核酸配列のレパートリー)でトランスフェクトされたタンパク質発現細胞の混合物/集合を指す。好ましくは、組換えポリクローナル細胞株を一緒になって構成する個々の細胞が、各々目的の別個の単一核酸配列の転写活性なコピーを有するように、トランスフェクションが行なわれる。さらにより好ましくは、別個の核酸配列の単一コピーのみが、ゲノムの特異部位に組み込まれる。組換えポリクローナル細胞株を構成する細胞が、例えば、抗生物質選別により、目的の別個の核酸配列の組み込まれたコピーを保持する能力について選択された。このようなポリクローナル細胞株を構成することができる細胞は、例えば、細菌、菌類、真核細胞、例えば酵母、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞、特にCHO細胞、COS細胞、BHK細胞、ミエローマ細胞(例えば、Sp2/0細胞、NS0)、NIH3T3、YB2/0)などの不死哺乳動物細胞株、並びにHeLa細胞、HEK293細胞、又はPER.C6細胞などの不死化ヒト細胞でありうる。
【0031】
「VH及びVL対をコードする配列」又は「VH及びVLをコードする配列対」という語句は、各分子が可変重鎖及び可変軽鎖の発現をコードする配列を含む核酸分子を指し、その結果、適切なプロモーター及び/又はIRES領域が存在し、そして作用可能なように当該配列に結合された場合に、かかる可変重鎖及び可変軽鎖が、核酸分子からペアとして発現されうる。当該核酸分子は、重鎖及び/又は軽鎖の定常領域の一部又は完全な定常領域をコードしてもよく、適切なプロモーター及び/又はIRES領域が存在し、そして当該配列に作用可能なように結合する場合、Fab断片、全長抗体又は他の抗体断片の発現を可能にする。
【0032】
組換えポリクローナル抗体は、当該投与される量が生理的に有意である場合、例えば動物又はヒトにおいてオルトポックスウイルスの感染を予防又は弱毒化する場合、治療有効量で投与されたといわれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
標的抗原及びポリクローナル抗体組成物
本発明のポリクローナル抗体は、同一の組成物中において別個の多くの抗体分子から構成される。各分子は、オルトポックスウイルス付随抗原に結合するその能力に基づいて選択される。好ましくは、本発明のポリクローナル抗オルトポックスウイルス抗体の別個のメンバーは、合同で少なくとも3のオルトポックスウイルス関連抗原に結合できる。さらに、ポリクローナル抗体の各々別個の抗体が、ポリクローナル抗体の他のメンバーのいずれかにより結合されないエピトープに結合するということが好ましい。ポリクローナル抗体組成物の抗体は、組成物の他の別個の抗体のエピトープと重複するエピトープに結合することもあり、それでも別個の抗体として考えられる。本発明の抗オルトポックスウイルスポリクローナル抗体のさらなる特徴は、同じオルトポックスウイルス関連抗原上の少なくとも2個の異なるエピトープを結合する能力であり、それにより少なくとも3の異なるオルトポックスウイルス付随抗原への結合を補っている。このようなポリクローナル抗体は、それゆえ、少なくとも4の異なる抗体メンバーから構成される。本発明のポリクローナル抗体は、ポリクローナル抗体組成物を構成する別個抗体分子の積み重なった結合反応性に相当した結合反応性を含む。好ましくは、本発明のポリクローナル抗体は、元々は抗体分子を発現しないポリクローナル細胞株から単一バッチ又は数個のバッチとして産生される(組換えポリクローナル抗体とも呼ばれる)。モノクローナル抗体を混合することに比べて、組換えポリクローナル抗体を産生する利点の一つは、(単一のモノクローナル抗体を産生する費用と同様の費用で)原理的に無制限の数の別個抗体分子を同時に産生する能力である。こうして、既知であろうとなかろうと、オルトポックスウイルスに付随する多数の抗原に対して反応性を有する抗体を、最終生成物の費用を有意に増加させることなく含むことができることが可能である。特に、生物学が完全に理解されていないオルトポックスウイルスと同様に複雑である標的に関して、単独ではオルトポックスウイルス対して中和又は保護を与えることが示されていない個々の抗体は、他の抗体と組合わされる場合に、相乗効果を誘導することがある。こうして、ポリクローナル抗体組成物中に別個の抗体を含むことは利点がありうる。ここで唯一の基準は、個々の抗体がオルトポックスウイルス抗原に結合するということである。
【0034】
関連抗原として検証されていないが、それにも関わらず関連抗原である可能性のあるオルトポックスウイルス標的抗原に結合する潜在的関連抗体を取得する1の方法は、オルトポックスウイルスでワクチン接種するか又はオルトポックスウイルスに感染したドナーの免疫応答(完全な免疫応答)により生じる個々の抗体から構成されるポリクローナル抗体組成物を作成することである。オルトポックスウイルスに対する完全な免疫応答から生じる抗体を広く取得することに加えて、オルトポックスウイルス感染の予防、中和、及び/又は除去、或いはワクシニアウイルスのワクチン接種の副作用に対する保護において、特に関連がある可能性が高い抗原に結合する抗体の正の選別を行なうことができる。さらに、オルトオックスウイルスの予防、中和、及び/又は除去に関連することが知られている特定の抗原に対する抗体が、ドナーの完全な免疫応答において同定されていない場合、このような抗体は、当該特定の抗原(選択された免疫応答)でドナーを免疫化/ワクチン接種することにより生じうる。一般的に、中和は、in vitro中和アッセイ、例えば、IMV又はEEV調製品を用いた天然痘低減中和アッセイ(PRNTアッセイ)、コメットアッセイ、EEV中和アッセイ(EEV特異的)(Lawら、2001, Virology 280:132-42)又は緑色蛍光タンパク質のフローサイトメトリーによる検出(Earlら、2003 J. Virol. 77: 10684-88)により評価される。予防は、一般的に、マウス尻尾病変モデル、致死用量曝露又は足蹠計測でin vivoにより評価される。in vivo曝露実験は、予防様式(当該抗体は、ウイルス曝露前に投与される)か又は治療様式(当該抗体がウイルス曝露後に投与される)で行われうるか、又はその両方の組み合わせとして行なわれうる。
【0035】
本発明のポリクローナル抗体組成物は、必ずしも知られているわけではないオルトポックスウイルス抗原に結合できる抗体から構成されることもあるが、ここで当該抗体は、例えばオルトポックスウイルスでワクチン接種されるか又はオルトポックスウイルス感染から回復した1以上のドナーから当該別個の抗体をコードする核酸配列を取得することによって、オルトポックスウイルスに対する完全な免疫応答から取得することができる。第二に、同一の完全な免疫応答由来の抗体であって、特定の抗原及び/又はエピトープに結合するその能力に基づいて選択された抗体は、本発明のポリクローナル抗体に含めることができる。第三に、特定のオルトポックスウイルス関連抗原で免疫化/ワクチン接種され、それによりこれらのドナーにおいて「選択された」免疫応答を生じさせる1以上のドナーから得られるVH及びVL対にコードされる別個の抗体は、本発明のポリクローナル抗体組成物中に含めることができる。こうして、本発明において言及された技術のいずれかに由来する抗体は、単一のポリクローナル抗体に組み合わせられうる。好ましくは、本発明の抗体をコードする核酸は、ヒトドナーから得られ、そして当該産生された抗体は、完全なヒト抗体である。
【0036】
本発明のポリクローナル抗体組成物のもとにあるモチベーションは、以下の:オルトポックスウイルスで免疫化又は感染されたドナーが、抗原に対して液性免疫応答を生じさせた場合、これらの抗体は、少なくともある程度、ウイルス除去に寄与する可能性があり、それによりポリクローナル抗体産物に含めるのにふさわしい。
【0037】
本発明の1の実施態様は、抗オルトポックスウイルスrpAbである。ここで、別個の抗体メンバーから構成される組成物が、1以上のオルトポックスウイルス、特にワクシニアウイルス、天然痘ウイルス、及び/又はサル痘ウイルスに付随する抗原に対する多様性、親和性、及び特異性について液性免疫応答を反映する。好ましくは、液性応答の反映は、以下の:i)抗オルトポックスウイルスrpAbにおける個々の抗体メンバーのVH及びVL領域をコードする核酸配列は、例えばワクシニアウイルスでのワクチン接種又はオルトポックスウイルス感染に続いて、オルトポックスウイルスに対する液性免疫応答を生じさせたドナーに由来する;ii)VH及びVLコード配列は、ドナーに存在するVH及びVLコード配列のオリジナルペアが維持されるようにドナーから単離される;iii)CDR領域が可能な限り多様となるように、rpAbの個々のメンバーをコードするVH及びVL対が選択される;又はiv)抗オルトポックスウイルスrpAbの個々のメンバーの特異性が、当該抗体組成物が哺乳動物において有意な抗体応答を誘発する抗原に共同して結合するように選択される、のうちの1以上が満たされることを保証することにより達成される。好ましくは、抗体組成物は、当該ドナー由来の血清サンプル中に有意な抗体タイターをもたらす抗原に共同して結合する。
【0038】
本発明に関連する抗原は、液性免疫応答又は選択された免疫応答を生じさせる任意のオルトポックスウイルス由来タンパク質、ポリペプチド、又は核酸である。関連抗原は、IMV及び/又はEEV粒子の表面に提示されるウイルスタンパク質から選ぐことができる。少なくとも12の異なるウイルスタンパク質(ここで、ワクシニアウイルスバリアントと呼ばれる)A14.5L、E10R、I5L、A13L、A27L、A17L、L1R、L5R、D8L、H3L、A14L及びA17Lは、IMV外側膜に挿入され、そして本発明に記載される関連抗原でありうる。さらに、少なくとも6の他のタンパク質、A33R、A34R、F13L、B5R、A56R、F12L及びA36Rは、EEV粒子の表面膜に存在し、そして同様に本発明に記載される関連抗原でありうる。
【0039】
本発明のさらなる実施態様では、抗オルトポックスウイルスrpAbは、IMV及び/又はEEV粒子に付随したウイルスタンパク質、特にこれらの粒子の表面に提示されたタンパク質の群から選ばれる抗原に対して結合反応性を含む。本発明の好ましい実施態様では、抗オルトポックスウイルスrpAbは、ウイルスタンパク質A27L、A17L、D8L及びH3Lから選ばれる抗原に対して、そしてウイルスタンパク質A33R及びB5Rから選ばれる抗原に対して結合反応性を含む。さらに、第一群は、ウイルスタンパク質L1Rを構成することができ、そして第二群は、ウイルスタンパク質A56Rを構成することができる。
【0040】
さらに、追加のオルトポックスウイルスタンパク質は、ヒト、マカクサル及び/又はマウスにおいて免疫反応性を示した。これらとして、ワクシニアウイルス・オルソログA10L、A11R、D13L、H5R、A26L、E3L、L4R、H7R、P4A及びA4Lが挙げられ(Daviesら、 2005, PNAS 102: 547-552 and Demkowiczら、 1992, J. Virol. 66:386-98)、そしてこれらは本発明に記載されるポリクローナル抗体の個々のメンバーが結合できる潜在的な関連抗原と考えられている。本発明のさらなる実施態様では、ポリクローナル抗体は、ワクシニアウイルス・オルソログA14.5L、E10R、I5L、A13L、A27L、A17L、L1R、D8L、H3L、A14L、A17L、A33R、A34R、F13L、B5R、A56R、F12L、A36R、A10L、A11R、D13L、H5R、A26L、E3L、L4R、H7R、P4A及びA4Lとして表されたウイルスタンパク質の群から選ばれる1以上の抗原に対して結合反応性を含む。
【0041】
しかしながら、上で記載されるウイルスタンパク質は、オルトポックスウイルス感染の予防、中和、及び/又は除去、又はワクシニアウイルスでのワクチン接種のため生じる副作用の予防に潜在的な関係を有する唯一のウイルスタンパク質ではない。オルトポックスウイルスは補体活性化レギュレーター(RCA)をコードし、当該レギュレーターは4個のタンデムの短いコンセンサスリピート(SCR)を含み、宿主における補体活性化の結果を避けることを可能にする(Mullickら、2003, Trends Immunol. 24:500-7に総説される)。幾つかのRCAタンパク質は、オルトポックスウイルスの群で同定され、つまり、それぞれワクシニアウイルス、天然痘ウイルス及び牛痘由来のワクシニアウイルス補体制御タンパク質(VCP)、補体酵素のスモールポックス阻害剤(smallpox inhibitor of complement enzyme)(SPICE)及び炎症性調節タンパク質(IMP)である。あるサル痘ウイルス株は、VCPのオルソログを有し、これは、他のサル痘株に比べてこれらの特定の株の危険性に関与しうる(Chenら、2005, Virology 340:46-63)。さらに、ラクダ痘ウイルスからのVCPタンパク質に関連する配列は、NCBI受託番号AAL73730で同定された。図1は、オルトポックスウイルスRCAタンパク質コンセンサス配列を含む上記RCAタンパク質の配列アライメントを示す。US2005/0129700号は、好ましくは両方の抗原への反応性を有する抗VCP及び抗SPICE抗体の生成を記載する。モノクローナル抗体は、ワクシニアウイルスワクチン接種を受けた予め注射された動物に使用される。しかしながら、当該抗体が予防性を有するか否かについて指標がない。さらに、VCPに対する一連のモノクローナルマウス抗体は、補体強化中和を無効にする点に関するSCRドメインをマップするために作成された。SCR2、SCR4、又はSCR3とSCR4ドメインの間の結合部に結合する抗体は、VCPと補体の相互作用をブロックする(Isaacsら、2003、J.Viol. 77:8256-62)。
【0042】
本発明のさらなる実施態様では、上記ポリクローナル抗体組成物は、さらにオルトポックスウイルスによりコードされるRCAに対する結合反応性を含む。特に、IMV、EEV、及びRCA特異性抗原に対して結合反応性を含むポリクローナル抗オルトポックスウイルスが所望される。本発明のさらなる抗オルトポックスウイルスポリクローナル抗体は、ウイルスタンパク質(ワクシニアウイルス・オルソログ)A27L、A17L、D8L、H3L、A33R、B5R及びVCPから選ばれる抗原に対する結合反応性を含む。さらに、当該群は、ウイルスタンパク質L1R及び/又はA56Rを構成することができる。RCA特異的抗体メンバーに関する本発明の実施態様のいずれかにおいて、RCA結合特異性は、好ましくはVCP、SPICE、IMP、MPXV-VCP及びCMLV-VCPの群から選ばれるタンパク質に関する。好ましい実施態様では、本発明のrpAb組成物は、オルトポックスウイルスRCAタンパク質コンセンサス配列に対して結合反応性を有する個々のメンバーを含む。さらにより好ましい実施態様では、当該RCAに関連する結合反応性は、上記RCAタンパク質又はRCAタンパク質コンセンサス配列のうちの1のSCR2、SCR4、及び/又はSCR3と4の間の結合部に位置するエピトープに向けられる。好ましくは、VCP反応性は、SCR2、SCR4及び/又はSCR3と4のドメインの間の結合部に向けられる。
【0043】
本発明は、全長抗体として発現されうる一連のVHとVL対、ワクシニアウイルス付随抗原に結合特異性を有するFab断片又は他の抗体断片を同定した。特異的VH及びVL対は、実施例2の表5におけるクローン数により同定される。表5に同定されるVH及びVL対を含む抗体は、好ましくは完全なヒト抗体である。しかしながら、所望される場合、キメラ抗体が産生されてもよい。
【0044】
本発明の好ましい抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体は、表5に載せられるVH及びVL対の群から選ばれる重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3領域を含む別個のメンバーから構成される。好ましくは、CDR領域は、表5に示される対で維持され、そして所望のフレームワークに挿入される。或いは、重鎖由来のCDR領域(CDRH)を第二クローンの軽鎖由来のCDR領域(CDRL)と組合わされる(VHとVL対のスクランブル)。CDR領域は、例えば第一クローン由来のCDRL1領域を、第二クローン由来のCDRL2及びCDRL3と組み合わせることにより、軽鎖又は重鎖内でスクランブルされてもよい。このようなスクランブルは、好ましくは同一の抗原に結合するクローン間で行なわれる。本発明のCDR領域は、例えば点突然変異によりアフィニティー成熟にかけられてもよい。
【0045】
本発明のさらにより好ましい抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体は、クローン番号02-029、02-037、02-058、02-086、02-147、02-186、02-188、02-195、02-197、02-203、02-211、02-229、02-235、02-286、02-295、02-303、02-339、02-461、02-482、02-488、02-526、02-551、02-586、02-589、02-607及び02-633に対応する重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を有する別個メンバーから構成される。
【0046】
さらなる実施態様では、26の個々のメンバーを含む上記組成物は、さらに、クローン番号02-113及び02-225に対応する重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3領域を有する以下の2の別個メンバーを含む。
【0047】
本発明のさらなる態様は、本発明の方法により同定された個別の抗体であって、オルトポックスウイルス、特にワクシニアウイルス及び/又はバリオーラウイルスの以前に同定されていないエピトープに結合する抗体である。
【0048】
上記抗原に加えて、同定されていない抗原に対する結合特異性を有する個々の抗体は、例えば不活性化オルトポックスウイルス粒子を抗原ソースとして用いたウエスタンブロット分析により同定することができる。これらの未同定の抗原は、既知の抗原に対応することもあるが、これらの抗原は未知の抗原に対応することもある。本発明の抗体が結合する抗原の同一性は、同定された抗体の既知抗原の組換えタンパク質への結合特異性を分析することにより評価することができる。或いは、既知の特異性を有する抗体に対する競合アッセイを行なうことができる。しかしながら、このような競合アッセイは、同定された抗体が異なるエピトープに結合することもあるので、同定された抗体は、既知の抗体と同じ抗原に結合するということを排除しない。
【0049】
本発明は、ウエスタンブロットにより、Lister種からの以下の抗原:B(約82kDa)、C(35-40kDa)、D(3個のバンド、約65、約72、約95kDa)、E(32-35kDA)、G(3個のバンド、80kDa、60kDa、31-33kDa)、HI(約35Da)、J(35-38kDa)及びL(<20kDa)に対して抗体を同定した。既知の抗原VCP、B5R、A27L及びA33Rに対する抗体を、ウエスタンブロットにより検証した。in vitroで翻訳されたタンパク質を使用することにより、HI抗原は、抗原H3Lに相当し、E抗原はD8Lに相当し、D抗原がA56Rに相当するということが示された。残りの抗原は、VCP、B5R、A27L、A33R又はH3L、D8L、A56Rに相当することはなく、そしてこれらの未同定の抗原に結合する抗体は、以前に知られていないオルトポックスウイルス抗原又はエピトープに潜在的に結合しうる。
【0050】
本発明の実施態様は、クローン番号02-037、02-089及び/又は02-058に由来する3個の重鎖CDRと3個の軽鎖CDRを含む抗体と同じエピトープでLister株の抗原Bに結合する抗体である。
【0051】
本発明の実施態様は、クローン番号02-243に由来する3個の重鎖CDRと3個の軽鎖CDRを含む抗体と同じエピトープでLister株の抗原Cに結合する抗体である。
【0052】
本発明の実施態様は、クローン番号02-628、02-431、002-516及び/又は02-551に由来する3個の重鎖CDRと3個の軽鎖CDRを含む抗体と同じエピトープでLister株の抗原D又はA56Rに結合する抗体である。
【0053】
本発明の実施態様は、クローン番号02-339に由来する3個の重鎖CDRと3個の軽鎖CDRを含む抗体と同じエピトープでLister株の抗原E又はD8Lに結合する抗体である。
【0054】
本発明の実施態様は、クローン番号02-147に由来する3個の重鎖CDRと3個の軽鎖CDRを含む抗体と同じエピトープでLister株の抗原Gに結合する抗体である。
【0055】
本発明の実施態様は、クローン番号02-640及び/又は02-633に由来する3個の重鎖CDRと3個の軽鎖CDRを含む抗体と同じエピトープでLister株の抗原Jを結合する抗体である。
【0056】
本発明の実施態様は、クローン番号02-589、02-156及び/又は02-225に由来する3個の重鎖CDRと3個の軽鎖CDRを含む抗体と同じエピトープでLister株の抗原Lを結合する抗体である。
【0057】
可変重鎖及び可変軽鎖コード対の単離及び選別
抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体組成物の製造方法は、適切なソースから可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)をコードする配列を単離し、それによりVH及びVLコード対のレパートリーを生成することに関する。一般的にVH及びVLコード配列を得るために適したソースは、オルトポックスウイルス株又はこのような株に由来するタンパク質又はDNAで免疫化/ワクチン接種された動物又はヒト由来の血液、脾臓、又は骨髄サンプルなどの細胞分画を含む白血球である。好ましくは、リンパ球を含む分画は、ヒト又はヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニック動物であって、Connaught、IHD-J、IHD-W、Brighton、WT、Lister、NYCBOH、Copenhagen、Ankara、Dairen I、L-IPV、LC16MO、LIVP、Tian Tan、WR65-16、及びWyethを含む株の群から選ばれ得るワクシニアウイルス株、又はこのような株由来のタンパク質又はDNAでワクチン接種されたものから回収される。オルトポックスウイルス株への感染から回復した患者もまた、VH及びVL遺伝子単離のソースとして用いることができる。回収されたリンパ球を含む細胞画分は、さらに濃縮されて、特定のリンパ球集合、例えばBリンパ球細胞系列の細胞を得ることができる。好ましくは、濃縮は、磁性ビーズ細胞選別(MACS)及び/又は蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を用い、例えばB細胞及び/又は血漿細胞についての系列特異的細胞表面マーカータンパク質を利用して行なわれる。
【0058】
好ましくはリンパ球を含む細胞画分は、B細胞及び/又は血漿細胞について濃縮される。CD19及びCD38の高発現、及びCD45の中程度に発現をするさらにより好ましい細胞は血液から単離される。これらの細胞は、循環血漿細胞、初期血漿細胞又は形質芽球と呼ばれることがあり、簡略して本発明において単に血漿細胞と名づけられる。
【0059】
H及びVLコード配列の単離は、従来の方法で行なうことができる。ここで当該VH及びVLコード配列は、ベクター中でランダムに組合わされて、VH及びVLコード配列対のコンビナトリアルライブラリーを作成する。しかしながら、本発明では、オルトポックスウイルスで曝露された際のヒト免疫応答において産生された抗体の多様性、親和性、及び特異性を反映することが好ましい。これはドナーに元々存在するVH及びVL対を維持し、それにより配列対のレパートリーを作成することに関する。ここで各対は、当該配列の単離元のドナーにより産生された抗体において元々存在するVH及びVL対に対応する可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)をコードする。これは配列をコードするVH及びVLの同種対と呼ばれ、そして当該抗体は、同種抗体と呼ばれる。好ましくは、本発明、コンビナトリアル、又は同種のVH及びVLコード対は、ヒトドナーから得られ、そしてその結果この配列は完全にヒトのものである。
【0060】
同種対のVH及びVLコード配列を生成する幾つかの異なるアプローチが存在する。1のアプローチは、リンパ球含有細胞画分からソートされた単一細胞からVH及びVLコード配列を増幅しそして単離することに関する。VH及びVLコード配列は、別々に増幅され、そして第二ステップで対形成されるか、又は増幅の間に対形成されてもよい(Coronellaら、 2000 Nucleic Acids Res. 28: E85; Babcookら、1996 PNAS 93: 7843-7848及び WO 05/042774)。代わりのアプローチは、細胞内増幅及びVHとVLコード配列の対形成に関する(Embletonら、 1992. Nucleic Acids Res. 20: 3831-3837; Chapalら、 1997 BioTechniques 23: 518-524)。ドナーのVH及びVL配列の多様性を似せたVH及びVLコード配列対のレパートリーを得るために、できる限り少ないVH及びVL対のスクランブル化(ランダム組み合わせ)するハイスループット法が好ましい。例えばWO05/042774に記載される(本明細書に援用される)。
【0061】
本発明の好ましい実施態様では、当該メンバー対がオルトポックスウイルスに曝露された際に液性免疫応答に関与する遺伝子対を反映するVH及びVLコード対のレパートリーを、以下のステップi)オルトポックスウイルスでワクチン接種されたか、又はオルトポックスウイルス感染から回復したドナー由来のリンパ球を含む細胞画分を準備し;ii)場合によりB細胞又は当該細胞画分から血漿細胞を濃縮し;iii)単離された単一細胞の集合を取得し、当該細胞画分から細胞をそれぞれ複数の試験管に分配することを含み;iv)当該単離された単一細胞に由来するテンプレートを用いて、重複オーバーラップ伸張RT-PCR法で、VH及びVLコード対を増幅し、そして結合させ;そしてv)結合されたVH及びVLコード対のネステッドPCRを場合により行なう、を含む方法に従って生成した。
【0062】
H及びVL配列対が作成されると、オルトポックスウイルス付随抗原に対して結合反応性を有するVH及びVLをコードする配列を同定するためのスクリーニング方法が行われる。VH及びVL配列対がコンビナトリアルである場合、ファージディスプレイ法がスクリーニング前にオルトポックスウイルスに結合する抗体断片をコードするVH及びVL対を濃縮するために適用することができる。
【0063】
オルトポックスウイルスで曝露した際に液性免疫応答において産生される抗体の多様性、親和性、及び特異性を反映するために、可能な最も広範な多様性を得るために、本発明は同種対のスクリーニング法を開発した。スクリーニングの目的のため、適切な宿主細胞にトランスフェクションされる細菌又は哺乳動物スクリーニングベクターをい用いて、同種VH及びVLコード対のレパートリーは、抗体断片(例えばscFv又はFab)として、又は全長抗体として個別に発現される。Fab/抗体のレパートリーは、最初に1以上のオルトポックスウイルス株に対する反応性をスクリーニングされた。平行して、Fab/抗体を選択した抗原に対してスクリーニングする。これらの抗原は、オルトポックスウイルス生物学の知識に基づいて選択され、そして予定された中和及び/又は保護効果を有する抗体であって、これらの抗原に結合できる抗体が潜在的に提供できる。このスクリーニング法は、コンビナトリアルファージディスプレーライブラリーに適用できる。
【0064】
本発明の実施態様では、広範な多様性の抗オルトポックスウイルス抗体をコードできるVH及びVL配列対を選択するスクリーニング法が、以下のように行われる:抗体又は抗体断片は、VH及びVLコード対のレパートリーの別個メンバーを含むスクリーニングベクターをトランスフェクトされた宿主細胞から発現される。抗体又は抗体断片は、当該抗体又は抗体断片を以下の株/抗原と接触させることにより、少なくとも2の異なるワクシニアウイルス株に対してスクリーニングされ、それと同時に、A27L、A17L、D8L、H3L、L1R、A33R、B5R及びVCPのうちの1以上に対して平行してスクリーニングされた。このプロセスは、VH及びVLコード対のレパートリーの各メンバーについて行なわれ、そしてウイルス全体及び/又は特異的抗体の一つのいずれかに結合するVH及びVL対をコードする配列は、これら(クローンとも呼ばれる)を含む宿主細胞から選択される。好ましくは、選択された配列のどれも、偽陽性をコードしないことを保証するために、2回目のスクリーニングを行なう。2回目のスクリーニングでは、1回目のスクリーニングにおいて同定されたワクシニアウイルス/抗原結合性のVH及びVL対の全てが、当該ウイルス株及び選択された抗原の両方に対してもう一度スクリーニングされる。このスクリーニング法は図6に示され、上記抗原の幾つかについて例証した。一般的に、免疫学的アッセイは、本発明において行なわれるスクリーニングに適している。このようなアッセイは、当該技術分野に知られており、そして例えばELISPOTS、ELISA、FLISA、膜アッセイ(例えば、ウエスタンブロット)、フィルター上のアレイ、及びFACSを構成する。当該アッセイは、VH及びVL対をコードする配列から産生されるポリペプチドを利用して、任意の濃縮ステップを伴うことなく行なわれうる。VH及びVLコード対のレパートリーが、同種対である事象では、例えばファージディスプレイによる濃縮が、スクリーニング前に必要とされることはない。しかしながら、コンビナトリアルライブラリーのスクリーニングでは、免疫アッセイは、ファージディスプレイ、リボソームディスプレー、細菌表面ディスプレー、酵母ディスプレー、真核ウイルスディスプレー、RNAディスプレー、又は共有結合性ディスプレーなどの濃縮方法と組み合わせて行なわれる(FitzGerald, K., 2000. Drug Discov. Today 5, 253-258)。
【0065】
スクリーニングにおいて選ばれるVH及びVL対をコードする配列は、一般的にシーケンスにかけられ、そして可変領域の多様性について分析される。特に、CDR領域の多様性について感心があるが、VH及びVLファミリーの表示も関心がある。これらの分析に基づいて、1以上のドナーから単離されるオルトポックスウイルス結合抗体の全体の多様性を表すVHとVL対をコードする配列が選択される。好ましくは、全てのCDR領域(CDRH1、CDRH2、CDRH3及びCDRL1、CDRL2、及びCDRL3)に差違を有する配列が選択される。異なるVH又はVLファミリーに属する1以上の同一又はかなり類似するCDR領域を有する配列が存在する場合、それらも選択される。VH及びVL配列対の選択は、可変重鎖のCDR3領域の多様性に基づいて行なわれうる。配列のプライミング及び増幅の間に、突然変異は、可変領域のフレームワーク領域で生じうる。好ましくは、このようなエラーは、当該配列がドナーの配列に完全に対応する配列を保証するために、例えば、当該配列が、可変領域のフレームワーク領域などの全ての保存領域において完全にヒト配列であるように補正される。
【0066】
H及びVL対をコードする選択された配列の集合の全体の多様性が、オルトポックスウイルス曝露への液性応答において遺伝レベルで見られる多様性を高度に代表するということを保証する場合、選択されたVH及びVLコード対の集合から発現される抗体の全体の特異性は、曝露されたドナーにおいて産生された抗体の特異性に関して代表するということが予期される。選択されたVH及びVLコード対の集合から発現される抗体の特異性が、曝露されたドナーが作り出す抗体の特異性を表すかの指標は、ウイルス株並びにドナー血液の選択された抗原に対する抗体タイターを、選択されたVH及びVLコード対の集合から発現される抗体の特異性と比較することにより得ることができる。さらに、選択されたVH及びVLコード対の集合から発現される抗体の特異性をさらに分析することができる。特異性の程度は、結合反応性を検出できる異なる抗原の数と相関する。本発明のさらなる実施態様では、選択されたVH及びVLコード対の集合から発現された個々の抗体の特異性は、ウエスタンブロットにより分析される。簡潔に記載すると、オルトポックスウイルス株由来の抗原が、還元条件下のポリアクリルアミドゲルで分離される。抗体は個別にウエスタンブロット法で分析され、それらが結合するタンパク質抗原を同定した。個々の抗体の結合パターンを分析し、そして選択されたVH及びVLコード対の集合から発現された他の抗体と比較された。好ましくは、本発明の抗オルトポックスウイルスrpAbを構成する個々のメンバーが選択され、その結果、抗体組成物の特異性は、集合的に、ドナーからの血清サンプル中にかなりの抗体タイターをもたらす全ての抗原を集合的にカバーする。さらにより好ましくは、ウエスタンブロット分析において異なる結合パターンを有する抗体は、本発明の抗オルトポックスウイルスrpAbを構成するために選択される。
【0067】
選択されたVH及びVLコード対からのポリクローナル組換え抗体の産生
本発明のポリクローナル抗体は、1又は幾つかのバイオリアクター、又はその同等物中のポリクローナル発現細胞株から産生される。このアプローチの後に、抗オルトポックスウイルスrpAbは、単一製剤としてバイオリアクターから精製することができ、当該プロセスの間に抗オルトポックスウイルスrpAbを構成する個々のメンバーを分離する必要はない。ポリクローナル抗体が、1超のバイオリアクターで製造される場合、各バイオリアクターからの上清を、精製前に貯蔵することができ、又は当該精製された抗オルトポックスウイルスrpAbは、各バイオリアクターから個別に精製された上清から得られた抗体を貯蔵することにより得ることができる。
【0068】
組換えポリクローナル抗体を産生する1の方法は、WO 04/061104及び PCT/DK2005/000501に記載される(これらの参考文献は、本明細書に援用される)。これらの文献に記載される方法は、抗体コード配列を個々の宿主細胞のゲノムへと部位特異的に組み込むことに基づき、VHとVLタンパク質鎖が、産生の間にもともとの対で維持されるということが示された。さらに、部位特異的組込みは、位置の効果を最小限にし、その結果ポリクローナル細胞株中の個々の細胞の増殖及び発現性質は、かなり同等であることが予期される。一般的に、本方法は以下の:
i)1以上のリコンビナーゼ認識部位を有する宿主細胞;
ii)当該宿主細胞の認識部位と適合する少なくとも1のリコンビナーゼ認識部位を有する発現ベクター;
iii) 全長抗体又は抗体断片がベクターから発現できるように、選択されたVH及びVLコード対をスクリーニングベクターから発現ベクターに移すことにより発現ベクターの集合を作成し;
iv)当該宿主細胞に発現ベクターの集合及び宿主細胞のゲノム中のリコンビナーゼ認識部位をベクターの認識部位と組み合わせることができるリコンビナーゼをコードするベクターをトランスフェクションし;
v)トランスフェクションされた宿主細胞からポリクローナル細胞株を取得/作成し、そして
vi)ポリクローナル細胞株からポリクローナル抗体を発現させ、そして回収するを
含む。
【0069】
好ましくは哺乳動物細胞、例えばCHO細胞、COS細胞、BHK細胞、ミエローマ細胞(例えば、Sp2/0又はNS0細胞)、NIH3T3などの線維芽細胞、及び不死化ヒト細胞、例えば、HeLa細胞、HEK293細胞、又はPER.C6が使用される。しかしながら、非哺乳動物真核又は原核細胞、例えば植物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、真菌、大腸菌(E.coli)などを使用することができる。適切な宿主細胞は、1以上の適切なリコンビナーゼ認識部位をそのゲノム中に含む。宿主細胞は、組み込み体(つまり、抗オルトポックスウイルスAb発現ベクター又は組み込み部位の発現ベクター断片の組み込まれたコピーを有する細胞)を選択することを可能にするために、組込み部位に作用可能なように結合された選別モードを含むべきである。ゲノム中の予め決定された位置のFRT部位を有する細胞集合は、例えばUS5,677,177に記載された。好ましくは、宿主細胞は、単一の組込み部位のみを有し、当該部位は、組み込み体の高い発現を可能にする部位に位置する(ホットスポット)。
【0070】
適切な発現ベクターは、宿主細胞のリコンビナーゼ認識部位をマッチングする組換え認識部位を含む。好ましくは、リコンビナーゼ認識部位は、宿主細胞の構築に使用される選別遺伝子とは異なる適切な選別遺伝子に結合される。選別遺伝子は、当該技術分野で知られており、そしてグルタミンシンセターゼ遺伝子(GS)及びネオマイシンが挙げられる。ベクターは、当該ベクターの完全な組み込みの代わりに、抗体コード配列のリコンビナーゼ媒介性カセット交換(RMCE)を許容する2の異なるリコンビナーゼ認識部位を含んでもよい。RMCEは、Langerら、2002, Nucleic Acid Res. 30, 3067-3077; Schlake and Bode 1994, Biochemistry 33, 12746-12751 及びBeltekiら、2003, Nat. Biotech. 21, 321-324に記載される。適切なリコンビナーゼ認識部位は当該技術分野に知られており、そしてFRT、lox及びattP/attB部位を含む。好ましくは、組込みベクターは、イソ型コードベクターであり、ここで当該定常領域(好ましくはイントロンを含む)は、スクリーニングベクターからVH及びVLコード対を移動させる前に、ベクター中に存在している。当該ベクター中に存在する定常領域は、全体の重鎖定常領域(CH1〜CH3又はCH4)又は抗体のFc部(CH2〜CH3又はCH4)をコードする定常領域で在り得る。軽鎖κ又はλ定常領域は、移動させる前に存在してもよい。存在する場合、存在する定常領域の数の選択は、使用されるスクリーニング及び移動システムに左右される。重鎖定常領域は、イソ型IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD及びIgEから選ばれ得る。好ましいイソ型は、IgG1及び/又はIgG3である。さらに、核酸をコードする抗オルトポックスウイルス抗体の部位特異的組込みの発現ベクターは、VH及びVL鎖の高いレベルの発現に関する適切なプロモーター又は同等の配列を含む。図4は、発現ベクターを設計する1の可能な方法を記載するが、多くの他のデザインが可能である。
【0071】
スクリーニングベクターから選択されたVH及びVLコード対を移動させることは、慣用される制限酵素切断及びライゲーションにより行なうことができ、その結果各発現ベクター分子は、1のVH及びVLコード対を含む。好ましくは、VH及びVLコード対は、個別に移され、しかしながら、これらは、所望される場合まとめて移されてもよい。全ての選択されたVH及びVLコード対が発現ベクターに移される場合、発現ベクターの集合又はライブラリーが得られる。或いは、所望される場合変わりの移送手段が使用されてもよい。
【0072】
核酸配列を宿主細胞にトランスフェクションする方法が当該技術分野に知られている。部位特異的組込みを保証するために、適切なリコンビナーゼは、同様に宿主細胞に提供されなければならない。これは、好ましくは、リコンビナーゼをコードするプラスミドの共トランスフェクションにより保証される。適切なリコンビナーゼは、対応するリコンビナーゼ認識部位を有する宿主細胞/ベクターシステムと一緒に使用される場合、例えば、Flp、Cre、又はファージΦC31インテグラーゼである。宿主細胞は、バルクでトランスフェクションされうる。つまり、発現ベクターのライブラリーが、1回の反応で細胞株にトランスフェクションされ、それによりポリクローナル細胞株を得ることを意味する。或いは、発現ベクターの集合は、宿主細胞に個別にトランスフェクションされ、それにより(モノクローナル抗体を産生する)個々の細胞株の集合を作成することができる。トランスフェクション前にこれを行なっていない場合、トランスフェクションの際に作成された細胞株(モノクローナル又はモノクローナル)を次に、部位特異的組込み体について選択し、そして懸濁状態、及び無血清培地で増殖させられる。トランスフェクションが個別に行なわれた場合、個々の細胞株は、その増殖性質及び抗体産生能についてさらに分析される。ポリクローナル細胞株は次に、個々の細胞株を予め決められた比で混合することにより作成される。一般的に、ポリクローナルマスター細胞バンク(pMCB)及び/又はポリクローナルワーキング細胞バンク(pWCB)をポリクローナル細胞株から樹立する。
【0073】
本発明の1の実施態様は、本発明の組換えポリクローナル抗オルトポックスウイルス抗体を発現できるポリクローナル細胞株である。
【0074】
本発明のさらなる実施態様は、個々の各細胞が、単一のVH及びVLコード対を発現でき、そして当該ポリクローナル細胞株が、全体としてVH及びVLコードついの集合を発現でき、ここで各VH及びVLコード対が、本発明の抗オルトポックスウイルス抗体をコードする。好ましくは、VH及びVLコード対の集合が、本発明の方法に従って作成される同種対である。
【0075】
次に組換えポリクローナル抗体は、抗体の十分な発現を可能にする期間、適切な培地中で、pWCBからの1のアンプルを培養することにより次に発現され、そしてここでポリクローナル細胞株が安定のままであった(その範囲は大体15〜50日である)。流加培養又は灌流培養などの培養方法が使用されてもよい。組換えポリクローナル抗体は、培養培地から得られ、そして慣用の精製技術により精製した。アフィニティクロマトグラフィーの次にイオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用及びゲルろ過などの精製ステップを組み合わせることが、IgGの精製に頻繁に用いられた。精製後に、ポリクローナル抗体組成物の個々のメンバー全ての存在を、例えば、イオン交換クロマトグラフィーにより評価する。ポリクローナル抗体組成物の特徴は、PCT/DK2005/000504に詳細に記載される(当該文献は本明細書に援用される)。
【0076】
組換え宿主における抗体混合物を発現させる代わりの方法は、WO04/009618に記載される。当該方法は、単一細胞株からの同一軽鎖と関連する異なる重鎖を有する抗体を産生する。このアプローチは、抗オルトポックスウイルスrpAbがコンビナトリアルライブラリーから生成される場合に適用可能である。
【0077】
治療組成物
本発明の別の態様は、活性成分の抗オルトポックスウイルスrpAb又は抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナルFab又は別の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル断片を含む医薬組成物である。好ましくは、このような組成物の活性成分は、本発明により主張されるように抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体である。このような組成物は、ワクシニアウイルスでのワクチン接種の副作用の予防及び治療、又はオルトポックスウイルス、特に天然痘ウイルス又はサルポックスウイルスの感染の治療を意図する。好ましくは、治療は、ヒト、家畜又はペットに投与される。
【0078】
医薬組成物は、医薬として許容される賦形剤をさらに含む。
【0079】
本発明のさらなる実施態様では、以前に記載された抗オルトポックスウイルスAb組成物(ポリクローナル又はモノクローナル)のいずれかは、さらに、オルトポックスウイルス感染の治療用の他の組成物、例えばシドフォビル、STI-571(Reevesら、 2005, Nature Med. 11:731-739)及び/又は ST-246(Yangら、 2005, J. Virol. 79: 13139-13149) と組合されてもよい。
【0080】
抗オルトポックスウイルスrpAb又はそのポリクローナル断片は、単位用量形態で、医薬として許容される希釈剤、キャリア、又は賦形剤と投与されてもよい。オルトポックスウイルスをワクチン接種された個人又はワクチン接種後に副作用を示した患者、又はオルトポックスウイルスに感染した患者に投与するための適切な製剤又は組成物を提供するために慣用的な医薬慣行を使用することができる。好ましい実施態様では、投与は予防的である。任意の適切な投与経路が使用されてもよく、例えば、投与は、非経口、静脈内、関節内、皮下、筋肉内、腹腔内、鼻腔内、エアロゾル、座剤、又は経口投与であってもよい。例えば、治療製剤は、液体溶液又は懸濁液の形態であってもよいし、経口投与用には、製剤は、錠剤又はカプセル、チューインガム又はペースト、及び鼻腔内製剤では、粉末、鼻腔ドロップ、又はエアロゾルの形態である。
【0081】
本発明の医薬組成物は、それ自体知られている様式で、例えば慣用される溶解、凍結乾燥、混合、顆粒化又は調合プロセスによって製造される。医薬組成物は、慣用される医薬慣習に従って剤形されてもよい(例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy (第20版),A. R. Gennaro編, 2000, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA 並びにEncyclopedia of Pharmaceutical Technology, Swarbrick 及びJ. C. Boylan編、1988-1999, Marcel Dekker, New York, NY)。
【0082】
活性成分の溶液、及び懸濁液、そして特に等張水溶液又は懸濁液が好ましくは使用され、例えば、活性成分を単独で又は担体、例えばマンニトールと一緒に含む凍結乾燥組成物の場合、使用前に溶液又は懸濁液を生成することが可能である。医薬組成物は、滅菌されてもよいし、及び/又は賦形剤、例えば保存剤、安定剤、湿潤剤及び/又は乳化剤、可溶化剤、浸透圧調節用の塩及び/又は緩衝剤を含んでもよく、そしてそれ自体知られている様式、例えば慣用される溶解又は凍結乾燥プロセスを用いて調製される。当該溶液又は懸濁液は、増粘物質、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン又はゼラチンを含んでもよい。
【0083】
注射組成物は、滅菌条件下で通例の様式で調製され;滅菌条件は、組成物をアンプル又はバイアルへと入れ、そして容器を密封することにも適用される。
【0084】
経口投与用の医薬組成物は、活性成分を固体担体と混合し、所望される場合、得られた混合物を顆粒化し、そして、所望される場合又は必要とされる場合、適切な賦形剤を添加した後に、当該混合物をシェラック、糖、又はその両方で被膜される錠剤、ピル、又はカプセルに加工することにより得ることができる。計測された量を分散又は放出することを可能にするプラスチックキャリアに医薬組成物を取り込むことも可能である。
【0085】
医薬組成物は、約1%〜約95%、好ましくは約20%〜約90%の活性成分を含む。本発明に記載される医薬組成物は、例えば単位用量形態であってもよく、例えば、アンプル、バイアル、座剤、錠剤、ピル、又はカプセルの形態であってもよい。製剤は、疾患又は病気の治療を提供するための治療又は予防有効量で個人に投与することができる。投与される治療薬の好ましい用量は、障害のタイプ及び程度、患者の健康状態、化合物賦形剤の製剤、及び投与経路などの変化に左右される可能性がある。
【0086】
本発明に記載される組成物の治療用途
本発明に記載される医薬組成物は、哺乳動物の疾患の治療、回復、又は予防のために使用することができる。本医薬組成物で治療又は予防されうる状態は、ワクシニアウイルス又は他のオルトポックスウイルスのワクチン接種での副作用の治療及び予防、及びオルトポックスウイルス、特に天然痘、サル痘ウイルス及びラクダ痘に感染した個人の治療を含む。
【0087】
本発明の1の実施態様は、ヒト又は動物におけるオルトポックスウイルスの治療又は予防のための方法であって、有効量の本発明の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナルが当該ヒト又は動物に投与される、前記方法である。
【0088】
本発明のさらなる実施態様は、ヒト又は動物においてワクシニアウイルスでワクチンの有害な副作用を治療又は予防するための方法であって、ここで有効量の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナルが、当該ヒト又は動物に投与される、前記方法である。
【0089】
本発明のさらなる実施態様は、ワクシニアウイルスのワクチン接種の有害な副作用の治療又は予防、或いはオルトポックスウイルス感染の治療又は予防用の組成物の製造のための、本発明の抗オルトポックスウイルス・組換えポリクローナル抗体の使用である。
【0090】
診断用及び環境検出用の使用
本発明の別の実施態様は、診断キットに関する。本発明に記載されるキットは、本発明に記載される抗オルトポックスウイルスrpAbを含む。ここでタンパク質は、検出可能な標識で標識されてもよいし、又は非標識検出用に標識されていないくてもよい。当該キットは、オルトポックスウイルスで感染された個体を同定するために使用することができる。
【実施例】
【0091】
実施例1
当該実施例は、本発明を説明するために適用される方法の集合である
a. ドナー血液からの血漿細胞の分離
Lymphoprex(Axis Shield)を用い、そして製品説明書に従って勾配遠心をすることにより、末梢血単核細胞(PBMC)をドナーから得た血液から単離した。単離されたPBMCは、FCS;10%DMSO、-150℃で凍結保存されるか、直接用いられた。B細胞画分を抗CD19抗体で標識し、そして磁性細胞分離(MACS)を用いてPBMC画分から単離した。PBMC(1×106細胞)を抗CD19-FITC結合抗体(BDPharmingen)と20分間4℃でインキュベートした。細胞を2回洗浄し、そしてMACS緩衝液(Miltenyi Biotec)に懸濁した。抗FITCマイクロビーズ(Miltenyi Biotec)を、標識された細胞と混合し、そして4℃で15分間インキュベートした。洗浄過程を繰り返し、次に細胞ビーズ懸濁液をLS MACSカラム(Miltenyi Biotec)に適用した。製品説明書に従って、CD19陽性細胞画分をカラムから溶出し、そしてさらにFCS-10%DMSO中で貯蔵するか、又は単一細胞分離に直接進めた。
【0092】
血漿芽球又は循環血漿細胞(以後血漿細胞と呼ぶ)を蛍光活性化細胞分離(FACS)により、CD19、CD38、CD45細胞表面タンパク質の発現プロファイルに基づいてCD19+B細胞画分から選択した。CD19は、初代血漿細胞に基づいて発現されるB細胞マーカーであり、その一方CD38は、血漿細胞上に高度に発現されている。血漿細胞は明らかに、他のCD19+細胞よりもいくらか低いCD45を発現し、これは、別個の集合に分離することを可能にする。MACS精製された細胞を融解するか、又は直接用いた。細胞をFACS緩衝液(PBS;1%BSA)で洗浄し、そして20分間、CD19-FITC、CD38-PE、CD45-PerCP(BD Pharmingen)で染色した。細胞を洗浄し、そしてFACS緩衝液中で再懸濁した。
【0093】
FACSの間の細胞の流速を200事象/秒でセットし、そして細胞濃度は、血漿細胞回収の高い割合を得るために、5×105/mlであった。以下のゲートセットを用いた。各ゲートは、前のゲートの娘である。
【0094】
ゲート1:FSC/SSCゲート。最も高いFSCを有するリンパ球集合を選択して、生細胞の分離を保証する。
ゲート2:SSCh/SSCw。このゲートは単一細胞の分離を保証する。
ゲート3:CD19+細胞。FL1-FL2ドットプロットでは、CD19陽性細胞のみが選択される。
ゲート4:FL2-FL3ドットプロットでは、分離された集合は目で見ることができ、高CD38及び中CD45である。
【0095】
これらの4の基準を満たす集合は、分離緩衝液を含む96ウェルPCRプレートへと単一細胞ごとに分離された(セクションcを参照のこと)。血小板を含有する細胞を-80℃で貯蔵した。
【0096】
b. ELISpot
得られた細胞サンプル、つまり、PBMC、MACS精製CD19+細胞、又はFACSで回収された血漿細胞集合の中で抗ワクシニアウイルス抗体発現血漿細胞の割合を見積もるために、ELISpotを用いた。ニトロセルロース表面を有する96ウェルプレート(Millipore)を、Lister株又はIHD-W株(Autogenbioclear, UK)のいずれかの20μg/mlの不活性化ワクシニアウイルス粒子溶液で被膜した。4℃で一晩RPMI、10%FCSでインキュベートすることによりウェルをブロッキングした。血漿細胞を含有する細胞サンプルをRPMI培養培地に加え各ウェルに入れ、次に標準組織培養条件で24時間インキュベートした。分泌されたワクシニアウイルス特異的抗体は、抗体産生血漿細胞を取り囲む固定されたウイルス粒子に結合する。細胞は、PBS、0.01%Tween20で3回洗浄し、そしてPBSで3回洗浄して取り除いた。HRP結合抗-ヒトIgG(H+L)(CalTag)及びHRP結合抗ヒトIgA(SeroTech)を加え、そして固定された抗体と1時間37℃で反応させた。洗浄手順を繰り返し、そして発色基質(N,N-DMF(ジメチルホルムアミド)に溶解した3-アミノ-9-エチルカルバゾール)を加えた。4分後にH2Oを加えることにより、発色を止めた。赤色のスポットは抗原特異的血漿細胞が位置した部位を表す。
【0097】
c. 同種VH及びVL対の結合
H及びVLコード配列の結合を、セクションa)に記載されるものとして得られた単一細胞上で行ない、VH及びVLコード配列の同種対を促進した。当該手順は、1ステップ多重オーバーラップ伸張RT-PCRの次にネイスティッドPCRを行なうことに基づく2ステップのPCR手順であった。当該実施例で使用されるプライマーミックスは、κ軽鎖のみを増幅する。λ軽鎖を増幅できるプライマーは、所望される場合に多重プライマーミックス及びネステッドPCRプライマーミックスに加えることができる。この原理を図2に示す。
【0098】
ステップa)で産生される96ウェルPCRプレートを融解した。単一細胞が多重オーバーラップ伸張RT-PCRのテンプレートとして機能した。単一細胞の分離の前に、反応緩衝液を含む分離緩衝液(PhusionHF緩衝液;Finnzymes)、RT-PCR用のプライマー(表2を参照のこと)及びRNase阻害剤(RNasin、Promega)を各ウェルに加えておいた。以下の試薬:dNTPミックス(各200μM)、RNAse阻害剤(20U/μl)、Sensiscript逆転写酵素(320倍希釈;Qiagen)及び融合DNAポリメラーゼ(0.4U;Finnzymes)を各ウェルに加えて終濃度を得た。
【0099】
プレートを37℃で1時間インキュベートして、各細胞からRNAの逆転写をさせた。逆転写の後に、プレートを以下のPCRサイクル:98℃30秒、30回×(98℃20秒、60℃30秒、72℃45秒)、72℃45秒にかけた。
【0100】
PCR反応は、ハイスループットを容易にするために、24×96ウェルプレート(Abgene)Peel Seal Basketを備えるH20BITサーマルザイクラーで行なった。サイクル後、-20℃でPCRプレートを貯蔵した。
【0101】
【表2】

【0102】
ネステッドPCRステップでは、96ウェルPCRプレートを、各ウェルにおいて以下の混合物:1×FastStart緩衝液(Roche)、dNTPミックス(各200μM)、ネステッドプライマーミックス(表3を参照のこと)、PhusionDNAポリメラーゼ(0.08U、Finnzymes)及びFastStart高信頼性酵素ブレンド(0.8U;Roche)で調製して、所定の終濃度を得た。ネステッドPCRのテンプレートとして、1μlを多重オーバーラップ伸張PCR反応から移した。ネステッドPCRプレートを以下のPCRサイクル:35回×(95℃30秒、60℃30秒、72℃90秒)、72℃600秒にかけた。
【0103】
選択された反応物を、1%アガロースゲル上で分析して、約1070bpのオーバーラップ伸張断片の存在を検証した。
【0104】
PCR断片のさらに処理するまで、-20℃でプレートを貯蔵した。
【表3】

【0105】
d. 同種VH及びVLコード対のスクリーニングベクターへの挿入
ワクシニアウイルス粒子への結合特異性を有する抗体を同定するために、VH及びVLコード配列をFabs又は全長抗体のいずれかとして発現させた。VH及びVLコード対のレパートリーをスクリーニングベクターに挿入し、そし宿主細胞にトランスフォーメーションすることに関した。
【0106】
2ステップクローン法をVH及びVLコード対を含むスクリーニングベクターのレパートリーの生成用に使用した。統計的に、スクリーニングベクターのレパートリーがスクリーニングレパートリーの生成のために使用される同種対VH及びVLPCR産物の10倍多い組換えプラスミドを含む場合、全ての固有の遺伝子対が存在する99%の可能性がある。こうして、400のオーバーラップ伸張V遺伝子断片がセクションc)で得られた場合、少なくとも4000クローンのレパートリーがスクリーニング用に生成された。
【0107】
簡潔に記載すると、セクションc)のネステッドPCRからの結合されたVH及びVLコード対のレパートリーを(異なるドナーからの対を混合することなく)貯蔵した。PCR断片を、PCR産物の末端に導入された認識部位で、XhoIとNotIDNAエンドヌクレアーゼで切断した。切断及び精製された断片を、標準ライゲーション法によりXhoI/NotI切断Fab発現ベクターにライゲーションした。適切なベクターは、例えば、図3に記載される細菌又は哺乳動物発現ベクターであった。ライゲーションミックスを大腸菌に電気穿孔し、そして適切な抗生物質を含む2×YTプレートに加え、そして一晩37℃でインキュベートした。標準DNA精製法を用いて、ベクターの増幅したレパートリーをプレートから回収された細胞から精製した(Qiagen)。AscI及びNheIエンドヌクレアーゼを用いて切断することにより、プロモーターリーダー断片の挿入のためにプラスミドを製造した。これらの酵素についての制限部位は、VH及びVLコード遺伝子対の間に位置した。ベクターの精製後に、AscI-NheI切断された二方向性のプロモーターリーダー断片を、標準ライゲーション法によりAscIとNhe制限部位に挿入した。ライゲーションされたベクターを大腸菌で増幅し、そして標準方法を用いてプラスミドを精製した。細菌スクリーニングベクターが使用される場合、二方向性プロモーターは細菌プロモーターであり、そして哺乳動物スクリーニングベクターが使用される場合、二方向性プロモーターは哺乳動物プロモーターである。スクリーニングベクターの生成されたレパートリーを慣用の手順により大腸菌へと形質転換した。得られたコロニーを384ウェルマスタープレートに統合し、そして貯蔵した。配置されたコロニーの数は、インプットPCR産物の数の少なくとも3倍多く、そうしてセクションc)で得られる全ての固有V遺伝子対が存在することについて95%の可能性を与えた。
【0108】
e.スクリーニング
スクリーニングの戦略が図6に示される。Fab発現は、マスタープレートからコロニーを384プレートに植菌することにより行なわれた。0.9mlの2×YT、0.1%グルコース、50μg/mlカルベニシリン、そしてコロニーを、OD600における細胞密度が1に達するまで、37℃で激しく攪拌してインキュベートした。0.1ml 2×YT、0.1M IPTG、50μg/mlカルベニシリンを加え、そして温度を30℃に下げることによりFab発現を誘導した。Fab含有上清を遠心により透明にし、そしてスクリーニング反応用に貯蔵した。Fab発現が哺乳動物ベクターから行なわれた場合、トランスフェクション用のDNAは、大腸菌マスタープレートから作成された。10%ウシ血清(FCS)を添加したF12-HAM培地を入れた384ウェル細胞培養プレートにCHO細胞を撒き(3000細胞/ウェル)、そして一晩のインキュベーションした後に、トランスフェクション試薬としてFugene6を用いてDNAを細胞にトランスフェクションした。細胞培養液中で2、3日の培養後、Fab含有上清を回収し、そしてスクリーニング反応用に貯蔵した。
【0109】
個々のクローンのスクリーニングは、蛍光微小体積アッセイ技術(FMAT)(Swartzmanら、1999, Anal. Biochem. 271:143-151)に基づく蛍光結合免疫吸着アッセイ(FLISA)を用いて行なわれた。簡潔に記載すると、Lister株、IHD-W株の不活性化ウイルス粒子、そして組換えタンパク質抗原B5R、VCP、及びA33Rを、16.5μgのタンパク質又は20μgのウイルス粒子を100μlの5%w/vビーズとインキュベートすることにより、100μlポリスチレンビーズ(6.79μm直径、Spherotech Inc.)上に個別に固定した。Fab断片を含有する上清を被膜されたビーズの5個の集合全てに対してスクリーニングした。被膜ビーズ、蛍光標識二次抗ヒト抗体(Alexa Dye 647, Molecular Probes)及びFab断片を含む上清を384ウェルプレート中に混合した。被膜抗原に対して反応性を有するFabを含むセルは、ビーズ表面で増加した蛍光をもたらした。これは、FLISAリーダー(8200 Cellular Detection System; Applied Biosystems)を用いて検出された。原理的に、当該アッセイは、ELISAに等しいが、洗浄ステップを含まず、当該方法はハイスループットを有する。ロスを最小限にし、そしてできるだけ多くのウイルス粒子又は抗原と反応性のクローンを同定するために、初期スクリーニングの間、カットオフを50の検出された蛍光ビーズ(カウント)に設定した。オリジナルのマスタープレートから、初期ヒットを回収し、そして96ウェルプレートに集めた。生成された初期ヒットプレートをマスタープレートとして扱い、これらの初期ヒットの貯蔵及び再発現を含んだ。これらの再発現Fab分子を、FLISAと標準ELISAの両方で同じ抗原を用いて2次スクリーニングで試験した。二次スクリーニングにおいてFLISAとELISAの両方で反応性を有するFabを産生したクローンを、V遺伝子領域のDNAシーケンス用に用いた。
【0110】
得られたシーケンスをCDR3領域のアミノ酸配列に基づいて配列比較し、そして同一のFabを発現するクローンのクラスターに分類し、当該クラスターの幾つかは、単一のクローンしか含まなかった(シングレトン(singleton))。各クラスターからの代表的なクローンのFab断片の大スケールバッチを、抗ワクシニアウイルス反応性を検証用に調製した。これらの試験は、不活性化IHD-W、不活性化IHD-J、不活性化Lister株VV粒子、及び組換え抗原、A27L、L1R、B5R、VCp、及びA33Rを用いたELISAにより結合分析することからなる。
【0111】
f. 選択されたクローンの哺乳動物発現ベクターへの移動
セクションc)に記載される様に多重PCRアプローチを用いる場合、ある程度のV遺伝子ファミリー内クロスプライミング(intra-V-gene family cross-priming)及びV遺伝子ファミリー間クロスプライミング(inter-V-gene family cross-priming)が、高いホモロジーのため予期される。クロスプライミングは、非天然アミノ酸を配列内に導入し、幾つかの潜在的な結果、例えば構造変化及び免疫原性の増加を伴い、これらは全て治療活性の低下をもたらす。
【0112】
これらの欠点を取り除き、そして天然液性免疫応答を反映するために、(可変重鎖に結合された完全な軽鎖の形態の)VH及びVLコード対をスクリーニングベクターから哺乳動物発現ベクターへと移動させる間に、このようなクロスプライミング突然変異を訂正した。変異があろうとなかろうと全てのクローン、或いは変異を有するクローンのみのいずれかを、2ステップ移動手順にかけた。
【0113】
修復移動手順の第一ステップでは、VH遺伝子ファミリー由来の配列に相当する配列を含むプライマーセットでVH配列をPCR増幅し、それによりクロスプライミングが誘導した変異を復帰突然変異させた。PCR断片をXhoI及びAscIで切断し、そして慣用のライゲーション手順を用いてXhoI/AscI切断された哺乳動物発現ベクター(図3)にライゲーションした。ライゲーションされたベクターを大腸菌内で増殖させ、そして標準方法を用いてプラスミドを精製した。訂正を検証するためにVH配列のシーケンスを行なった。当該ベクターをNheI/NotIで切断して、軽鎖の挿入用に調製した。
【0114】
第二ステップでは、VL遺伝子に由来する配列に相当する配列を含むプライマーセットで完全な軽鎖をPCR増幅し、それによりクロスプライミング変異を復帰突然変異させた。PCR断片をNheI/NotIで切断し、そして上で調製されたVH含有ベクターにライゲーションさせた。ライゲーション産物を大腸菌内で増幅し、そしてプラスミドを精製した。訂正を検証するために軽鎖をシーケンスした。
【0115】
クローンが、VH及びVLコード対の訂正を必要としないならば、これらのクローンは、場合により、慣用されるクローニング手順においてXhoI/NheI制限酵素部位を用いて、単一ステップで対として直接移動することができる。この場合、プロモーター変化は、スクリーニングベクターが細菌ベクターである場合、必須であった。これはセクションd)に記載される様に行なわれた。移動が哺乳動物スクリーニングベクターから行なわれた場合、プロモーター交換は不必要である。
【0116】
g. ポリクローナル細胞株の作成
組換えポリクローナル抗体を産生するポリクローナル発現細胞株の作成は、各々固有の抗体を発現する個々の発現細胞株(モノクローナル細胞株)の作成に関与する多段階の手順である。ポリクローナル細胞株は、個々の細胞株を混合することにより得られ、それによりポリクローナルマスター細胞バンク(pMCB)を作成する。単に増幅を続けることにより、当該pMCBからポリクローナルワーキング細胞バンク(pWCB)を作成することができる。
h. 哺乳動物細胞株のトランスフェクション及び選別
Flp-In CHO細胞株(Invitrogen)を開始細胞株として用いた。より均一な細胞株を得るために、親Flp-In CHO細胞株を、希釈を制限することによりサブクローニングし、そして幾つかのクローンを選択し、そして増殖させた。増殖挙動に基づいて、1クローンのCHO-Flp-In(019)を、開始細胞株として選択した。CHO-Flp-In(019)細胞を接着細胞として、10%胎児ウシ血清(FCS)を伴うF12-HAM中で培養した。
【0117】
ステップf)で得られた選択されたVH及びVLコード対を各々含む個々のプラスミド調製品を、Fugene6(Roche)(詳細についてはWO04/061104を参照のこと)を用いて、Flpリコンビナーゼをコードするプラスミドを5×106CHO-Flp-In(019)細胞株に共形質転換して、各形質転換について約10000の独立した組換え事象を作成した。大規模形質転換法をできる限り均一に適用して、同一の発現細胞集合を、各VHとVLコード対について作成した。24時間後に、細胞をトリプシン処理し、そして3×T175フラスコに移した。組換え細胞株を、形質転換の48時間後に加えられた450μg/mlネオマイシンの存在下で培養することにより選別した。凡そ2週間後にクローンが出現した。クローンを数え、そして細胞をトリプシン処理し、そしてその後、特異的抗VV抗体のうちの1を発現するクローンのプールとして培養した。
【0118】
i. 無血清懸濁培養への適用
個別の隣接抗-VV抗体CHO-Flp-In(019)細胞培養物をトリプシン処理し、遠心し、そして適切な無血清培地(Excell 320、JRH Biosciences)をいれた別々のシェーカーフラスコに、8×105細胞/mlで移した。増殖と細胞形態を数週間にわたって追跡した。4〜6週後、細胞株は通常良好かつ安定に増殖挙動を示し、倍化時間は32時間以下であった。そして当該適用された個々の細胞株を上に記載されるように凍結保存した。
【0119】
j. 細胞株の特徴決定
個々の細胞株全てを、抗体産生及び増殖について特徴決定した。これを以下のアッセイで行なった。
産生:
κ特異的ELISAによる適用の間に、個別の発現細胞株からの組換え抗体の産生が行なわれた。ELISAプレートを、炭酸緩衝液(pH9.6)中のヤギ抗ヒトκ抗体(カタログ)で一晩被膜した。プレートを洗浄緩衝液(PBS;0.05%Tween20)で6回洗浄し、そして2%の脱脂乳を含む洗浄緩衝液中で1時間インキュベートすることによりブロッキングした。細胞培養培地の上清を加え、そしてさらに1時間インキュベートした。洗浄緩衝液で6回プレートを洗浄し、そして二次抗体(ヤギ抗ヒトIgG(H+L)HRPO、カタログ)を加え、そしてインキュベートを繰り返した。激しく洗浄した後に、ELISAをTMB基質で発色させ、そしてH2SO4を加えることにより反応を止めた。プレートを450nmで読み取った。
【0120】
さらに、細胞内染色を用いて、一般的な発現レベルを決定し、そして組換え抗体の発現に関して細胞集合の均一性を測定した。5×105細胞を冷FACS緩衝液(PBS;2%FCS)で洗浄し、次にCellFix(BD-Biosciences)で20分間インキュベートすることにより固定し、そして次にサポニン緩衝液(PBS;0.2%サポニン)で洗浄した。懸濁液を遠心し、そして蛍光標識された抗体(ヤギF(ab')2断片、抗ヒトIgG(H+L)-PE、BECKMAN Coulter)を加えた。氷上で20分おいた後に、細胞をサポニン緩衝液で2回洗浄し、そしてFACS緩衝液中に懸濁し、そしてFACSにより分析した。
【0121】
増殖:
一定量の細胞懸濁液を週3回とり、そして細胞数、細胞の大きさ、クランプの程度、及び生存度をCASY(商標)(細胞計数器+Scharfe System GmbHからのAnalyzer System)により測定した。細胞培養の倍化時間を、CASY(商標)計測から得られた細胞数により計算した。
【0122】
k. 個々の抗体の抗原特異性の特徴決定
個別に発現された抗体の抗原特異性は、うまく特徴決定された特異性を有する抗VV rpAbの生成を許容するために評価された。セクションe)にすでに記載されるように、スクリーニングの間に同定された抗体は、不活性化ワクチンウイルス株及び組換え生成されたA27L、L1R、B5R、VCP、及びA33R抗原に対するその結合特異性を評価することにより検証された。これらの分析を、全長抗体を用いて繰り返し、そして抗原特異性のさらなる分析を、ウエスタンブロッティングにより行なった。
【0123】
8M尿素を含有するSDS充填緩衝液中に溶解され、そしてNuPAGE Bis-Tris 4〜12%ゲル又はNuPageBis-Tris10%上で泳動されたアセトン沈殿済みウイルス粒子を用いて、ワクシニアウイルス粒子付随タンパク質(抗原)をSDS-PAGEにより分離した。これは、クマシーブルーにより可視化される場合、ワクシニアウイルス粒子付随タンパク質の明らかな分離をもたらした。抗原結合分析について、ワクシニアウイルス粒子付随タンパク質を、SDS-PAGEにより分離し、そしてPVDF膜に電気ブロットし、そして個々の抗体の精製済み調製物をウエスタンブロッティングにより分析した。図5は、異なる抗体により検出されるLister株に由来する一連の抗原を同定するウエスタンブロット分析を示す。
【0124】
推定の標的タンパク質が、in vitro翻訳により発現され、そしてELISAによって、選択された抗体との相互作用を試験される。抗原遺伝子を、ワクシニアウイルス、Lister株DNAをテンプレートとして用いた遺伝子特異的PCRにより生成し(Autogenbioclear, UK カタログ番号:08-940-250)、続いてT7プロモーター及びポリA配列を加える二回目のPCRステップを行なうことにより生成した。PhusionDNAポリメラーゼ(Finnzymes Fカタログ番号F530L)遺伝子特異的PCR反応は、0.2μMの表4に示される5'及び3'遺伝子特異的オリゴ対、1×Phusion HF反応液、0.2μMの各dNTP及び0.5μlワクシニアウイルスDNA、1U PhusionDNAポリメラーゼを含む総体積50μlからなり、そして1×98℃30秒、25×(98℃10秒、50℃15秒、72℃20秒)、1×72℃7分でサイクルさせた。T7-Kozak翻訳開始配列及びポリA配列を、上記PCR反応とT7-Kozを除いて同一である第二PCR反応により加えた。ポリA(表4)プライマー及び0.5μlの1ステップPCR反応をテンプレートとして使用した。PCR産物を、製品説明書に従って、PCR DNAキット(Promega, USA, カタログ番号:L1170)用のTNT T7 Quickを用いてin vitroで翻訳した。詳細に記載すると、各反応液は、40μlのTNT T7 Quick Master Mix、1μlのメチオニン(1mM)、1μlのTranscendビオチン-リジル-tRNA(Promega、カタログ番号L5061)、2μlPCR生成されたDNAからなり、そして30℃で75分間インキュベートした。
【0125】
in vitro翻訳された抗原を、標準ELISAで行なわれたELISAによって精製済みの抗体との相互作用について試験した。精製された抗体を、ELISAプレートに固定し、そしてin vitro翻訳された抗原を希釈してインキュベートした。保持された抗原を、実施例1セクションg)の記載に類似する標準ELISA法に従って、ストレプトアビジンPeroxidaseポリマー(Sigmaカタログ番号S2438)により検出した。
【0126】
【表4】

【0127】
l. 個々の抗体の生物化学的性質の特徴
不均一性は、抗体及び組換えタンパク質における一般的な現象である。抗体改変は、発現の間、好ましくない貯蔵条件の間に生じることがあり、そしてサイズ又は荷電不均一性を引き起こしうる。一般的な改変は、N-グリコシル化、メチオニン酸化、タンパク質断片化、及び脱アミノ化が挙げられる。これらのパラメーターは、治療抗体について明確にされている必要があるので、これらはポリクローナル細胞株の作成前に分析される。
【0128】
適用の間に発現される抗体は、低pHで溶出する親和性クロマトグラフィー(タンパク質Aカラム)により精製され、そして各個人の抗体の生物化学的性質の特徴に使用される。特徴決定に使用される方法は、還元及び非還元SDS-PAGE及び弱カチオン交換クロマトグラフィー(IEX)を含んだ。還元SDS-PAGEにおいて、明確な重鎖及び軽鎖のバンドは、無傷の抗体を指し示した。明確なバンドをもたらす抗体製剤のSDS-PAGE分析は、IEX分析における単一ピーク挙動を示すことが予期され、均一な抗体製剤を示唆する。IEX分析において複数のピークをもたらすか、及び/又はSDSゲルにおいて軽鎖又は重鎖の異常な移動をもたらす抗体製剤は、N末端シーケンスにより無傷のN末端について詳細に分析され、そして酵素処理を用いて可変鎖においてさらにN-グリコシル化部位の存在について分析された。
【0129】
m. 抗VV組換えポリクローナル抗体産生用のポリクローナル細胞株の樹立
樹立された発現細胞株のプールの外から、ポリクローナル発現細胞株(pMCB)を構成するためにサブセットを選択した。選別パラメーターは、ポリクローナル細胞株から産生されるポリクローナル抗体の使用及び個々の細胞株のパフォーマンスに従って定義することができる。一般的に、以下のパラメーターが考慮される:
・細胞株の特徴;ポリクローナル細胞株の安定性を最適化するためである。個々の細胞株は、21〜34時間の倍化時間を有し、そして1pg/細胞/日の抗体産生の能力を有する。
・抗原反応性;抗-VV rpAbはどの抗原、つまりIMV、EEV、及び/又はRCA由来タンパク質に対して反応性を発揮すべきか?
・タンパク質化学;明確な生物化学的特徴を有する抗体は一般的に、最終抗VV rpAbに含まれた。
【0130】
組換え抗VV-抗体を各々発現する選択された個々の細胞株が融解され、そして37℃で無血清培地をいれたシェーカーフラスコ中で増殖させて、21〜34時間の倍化時間を有する少なくとも4×108細胞の各クローンに達しさせた。生存率は93%〜96%の範囲であった。ポリクローナル細胞株は、各細胞株からの2×106個の細胞を混合することにより調製した。5.6×107細胞を含むように凍結アンプルにポリクローナル細胞株を分配し、そして凍結保存した。ポリクローナル細胞株をいれたバイアルの集合は、ポリクローナルマスター細胞バンク(pMCB)と名づけられた。当該pMCBから、pMCBの1のアンプルを増殖させて、pMCBのアンプルと同じ細胞密度を有する約200のアンプルのポリクローナルワーキング細胞バンク(pWCB)を生成するために十分な数に達しさせることにより、ポリクローナルワーキング細胞バンク(pWCB)を作成した。細胞バンクのサンプルをマイクロプラズマ及び滅菌性について試験した。
【0131】
n. 組換えポリクローナル抗VV抗体の発現
組換えポリクローナル抗VV抗体バッチを、5リットルのバイオリアクター中で生成した(B. Braun Biotech International, Melsungen, Germany)。簡潔に記載すると、pWCB由来のウイルスを融解し、そしてシェーカーフラスコ(Corning)中で増殖させた。種系列の細胞(cells in seed train)を、G418及び抗凝集薬を加えたExCell302培地中で37℃、5%CO2で培養した。バイオリアクターに、G418及び抗凝集薬を加えていない3リットルのExCell302培地中に懸濁された0.6×106細胞/mlを接種した。CASY計数により、細胞数/生細胞を毎日モニターした。50時間で、2000mlのExCell302培地を加え、そして92時間後に温度を37℃から32℃に下げた。細胞培養物の上清を164時間後に回収し、そしてセクションo)に記載される様に精製した。
【0132】
o)抗VV rpAbの精製
セクションn)において記載されたように発現された抗体は、IgG1イソ型に属し、そしてアフィニティー精製した(タンパク質A)。個々の抗体は、固定されたタンパク質AとpH7.4で相互作用する一方、コンタミ・タンパク質はカラムから洗い流された。結合された抗体を次にpHを2.7に低下させることによりカラムから溶出させた。280nmでの吸光度を計測することから測定される抗体を含む画分を貯蔵し、そして5mM酢酸ナトリウム、150mM・NaCl、pH5に対して透析し、そして-20℃で長期間貯蔵した。
【0133】
p)in vitro中和アッセイ
in vivo及びin vitroで用いるワクシニアウイルスの調製
104pfu/mlのLister、NYCBOH、及びIHD-Jワクシニアウイルスを、5mlの無血清Gibco Earle最小必須培地(MEM)中のサブコンフルエントのBSC-1細胞を入れた10×175cm2フラスコに加えた。ウイルスを45分間37℃で吸着させた。37℃に戻す前に、2%(v/v)Gibco胎児ウシ血清を含む30mlのMEMを次に各フラスコに加えた。感染した細胞が完全な細胞変性効果を示した場合、培地を捨てた。細胞をフラスコから遊離させ、トラッピングすることにより25mlのPBSに入れた。これを3000rpmで10分間8℃にて遠心した。ウイルス含有細胞ペレットを6mlのPBS中に再懸濁し、そして-80℃で凍結した。ひとたび融解させると、細胞破砕物を8℃にて3000rpmで10分間遠心することにより取り除いた。一定量の上清を-80℃で凍結させた。プラークアッセイによりウイルスのタイターを計測した。
【0134】
プラーク低下及び栄養アッセイ(PRNT)
試験物質を無血清MEMで希釈し、そして37℃で1時間、104pfuのLister株ウイルス粒子と前もってインキュベートした。混合物を24ウェルプレートに前もって撒いたVero細胞の単層に適用した。感染細胞に2%カルボキシメチルセルロースを含む2×MEMを加えることにより重層し、続いて37℃、5%CO2で3日間インキュベートした。細胞をPBS;10%ホルマリンでインキュベートすることにより固定し、そして0.1%クリスタルバイオレットを含む20%エタノールを用いて染色し、各ウェルのプラークの数を計数により記録した。
【0135】
IHD-J株を用い、そしてカルボキシメチルセルロース重層を行なわないことを除いて、同様のプロトコルを用いて、EEV中和アッセイを行なった。IHD-J/Mini-H混合物を細胞と予めインキュベートし、次にMiniV希釈液を加え、それによりEEV媒介性ウイルス伝播についてのMiniVの効果のみを検出した。
【0136】
in vivo保護アッセイ
マウス尻尾病変モデルを用いて、抗VV抗体組成物により与えられるin vivo保護を分析した。実験を、英国健康保護局、Porton Down、UK(HPA)で行なった。簡潔に記載すると、Lister又はNYCBOH株のいずれかの感染性ワクシニアウイルス粒子をマウスの尻尾静脈に注射することにより、マウスを感染させた。ウイルスの使用量は、7日の内に尻尾における計測できる数のウイルス誘導性の病変をもたらす。ウイルス感染の24時間後又は前に、大量の試験抗体化合物であるMini−V、SymVIG、Sym002、抗Vrp−Ab、又は又は無関係のポリクローナル抗体を腹腔内(I.P.)又は筋中(I.M.)に注射した。幾つかの実験では、合計で2.5mgのシドフォビルを筋中(I.M.)にウイルス抑制の陽性対照として注射した。
【0137】
r. SYM002ミックスの組成物
Sym002ミックスに対する抗体を実施例1、セクションoに記載される様に個別に精製し、そして続いて混合した。Sym002ミックスの最終抗体濃度は、1.09mg/mlであり、そして0.2mgの各抗体02-029、02-058、02-086、02-113、02-147、02-186、02-188、02-195、02-197、02-211、02-225、02-229、02-235、02-286、02-295、02-303、02-339、02-461、02-482、02-488、02-526、02-551、02-586、02-589、02-607、02-633、0.574mgの02-037及び0.171mgの02-203を混合して産生した。抗体同一性を表5に与える。
s. 抗体-抗原相互作用の親和性計測
抗体抗原相互作用の親和性を、Biacore2000(Biacore AB)を用いた表面プラスモン共鳴により測定した。標準アミンカップリング化学を用いて、CM5チップ表面上に、約100RU又はそれ以下のRUmaxをもたらすレベルに抗原(B5R、VCP、A33R、又はA27L)を固定した。精製抗体Fab断片(セクションOを参照のこと)をHBS-EPランニング緩衝液(Biacore AB)中に連続して希釈し、そしてチップ上を10〜50μl/分で通過させた。速度定数(kon及びkoff)及び親和性定数(KD)を同じセンサー表面上を通過する4〜6の異なる濃度を全体適合することにより、BIAevaluationソフトウェア(Biacore AB)を用いて測定した。
【0138】
t. 精製抗体のパパイン切断によるFab断片の調製
製品説明書にしたがってImmunoPure Fab調製キット(PIERCE, USA、カタログ番号44885)を用いることにより、Fab断片を精製抗体から調製した。簡潔に記載すると、パパイン切断の1.2mgの抗体対象を20mMリン酸ナトリウム、10mM・EDTA、pH7、4℃で透析した。透析された抗体溶液を250μlゲル固定されたパパインに加え、前もって平衡にし、そして20mMシステイン/HCl、20mMリン酸ナトリウムpH7で懸濁した。反応液を37℃で一晩シェイクしてインキュベートし、続いてゲル固定されたパパインを取り除くために遠心した。上清をタンパク質Aカラムに通過させることによりFab断片を精製した。溶出物をPBSに対して透析し、そしてSpectrumゲル/吸着物質(Spectrum laboratories, カタログ番号292600)を用いることにより濃縮した。Fab断片をSDS-PAGEにより分析し、そして濃度をOD280計測により測定した。
【0139】
実施例2
本実施例では、抗ワクシニアウイルス特異性を有するFab又は抗体として発現される同種VH及びVL対を含むクローンの単離、スクリーニング、選別、及び預託が示された。
【0140】
ドナー
英国健康保護局(HPA)と共同で行なった英国第一応答の天然痘のワクチン接種プログラムから12のドナーを採用した。ドナーは、1回又は2回のワクシニアウイルス免疫化された個体を含んだ。ワクチン接種後9〜21日で採血した。B細胞画分を抗CD19MACSカラム精製により回収し、そして高CD38及び中CD45細胞マーカー発現プロファイル及びFACSにより単離される単一細胞により同定される血漿芽球の亜集合を、実施例1のセクションa)に記載される96ウェルプレートにより回収した。抗ワクシニアウイルスを発現する血漿芽球の割合をElispotにより見積もった(実施例1、セクションb)。0〜0.6%の合計血漿細胞は特異的であり、そして上の5のドナーからの血漿細胞(0.3〜0.6%)を用いて、同種VH及びVLコード対を単離した。選択されたドナー全員は、二回目の免疫化を受けたドナーの群に属した。
【0141】
同種VH及びVLコード対の単離
抗体レパートリーをコードする核酸を、多重オーバーラップ伸張RT-PCR(実施例1、セクションc)により、単一細胞に選別された血漿細胞から単離した。多重オーバーラップ伸張RT-PCRは、重鎖可変領域遺伝子断片(VH)と全長軽鎖(LC)との間の物理的結合を作り上げる。当該プロトコルは、2つのプライマーセット、1つはVHの増幅用、そしてもう一つはLC増幅用を用いることによって、VH遺伝子ファミリーとκ軽鎖の抗体遺伝子を増幅させるように設計された。逆転写と多重オーバーラップ伸張PCRの後に、結合された配列が、ネステッドプライマーセットを用いて2回目のPCR増幅にかけられた。
【0142】
各ドナーを個別にプロセッシングし、そして400〜1200のオーバーラップ産物を多重オーバーラップ伸張RT-PCRにより作成した。各ドナーから同種結合されたVH及びVLコード対の作成された集合を貯蔵し、そして実施例1セクションd)に記載される様にFab発現ベクターに挿入した。作成されたレパートリーを大腸菌に形質転換し、そして10個の384ウェルマスタープレートに一元管理し、そして貯蔵した。
【0143】
スクリーニング
Fab断片を、マスタープレートから開始して取得し、そして実施例1、セクションe)に記載されるように、不活性化IHD-W及びリスター株に対して、並びに個々の組換え抗原タンパク質A33R、VCP、及びB5Rに対してスクリーニングした。数百の二次的ヒットをシーケンスし、そして配列比較した。大部分が2以上のメンバーのクラスターに分類されたが、一回だけ単離されるクローン、いわゆるシングレトン(Singleton)も存在した。各クラスターからの代表的なクローン及びシングレトンを実施例1セクションe)に記載されるように検証試験にかけた。
【0144】
全体で89個のクローンが検証を通った。これらを表5に概説する。各クローン番号は、特定のVH及びVL対を特定する。IGHV及びIGKV遺伝子ファミリーは各クローンについて示され、そして選択されたクローンのフレームワーク領域(FR)を特定する。各クローンから発現される抗体又はFab断片の相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列が示され、ここでCDRH1、CDRH2、CDRH3は、重鎖のCDR領域1、2、及び3を指し、CDRL1、CDRL2、CDRL3は軽鎖のCDR領域1、2、及び3を指す(Kabatら、1991, Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、US Department of Health and Human Services, Public Health Service, NIH.の定義)。最終的に、クローンに含まれるVH及びVLコード対から発現された抗体又はFab断片の抗原特異性が示される。抗原特異性は、in vitroで翻訳された抗原への結合性により、又はウエスタンブロッティングにより、検証の間に分析された結合性質にしたがって同定された。in vitro翻訳されたアプローチは、H3I、A56R、及びD8Lを標的タンパク質として同定した。ウエスタンブロッティングを用いて選択されたクローンから産生された抗体により標的化される未同定抗原を、SDS-PAGEにおける移動性質に従ってB〜Lの文字を割り当てた(実施例1セクションg、段落「個々の抗体の抗原特異性の特徴決定)。表5の抗原Aに対して反応性であると示されたクローンは、IHD-W及び/又はLister株に対するELISA及びFLISAスクリーニングにおいて陽性であったが、ウエスタンブロッティングにより検出できる粒子付随抗原と相互作用しなかった。特定の抗原が示されない場合、結合反応性についてのさらなる分析は行なわなかったが、これらのクローンから発現される抗体は、それでもIHD-W及び/又はLister株に対して反応性である。
【0145】
完全な可変重鎖及び軽鎖配列は、表5の情報から確立することができる。唯一の例外はクローン02-291である。なぜならこのクローンは、いわゆる重鎖の高可変領域4(フレームワーク領域3))に11のコドンを挿入するからである。
この理由のため、完全な重鎖アミノ酸配列は、この特定のクローンについて以下に与えられる:
【化1】

【0146】
【表5】

【0147】
【表6】

【0148】
【表7】

【0149】
液性免疫応答の反映
上に記載されるように単離及び選択される同種VH及びVLコード対が、ワクシニアウイルスに曝露された際に生じる天然液性免疫応答を反映することを示すために、12のドナーのうちの10の血清サンプルを、3のウイルス株(Lister、IHD-W、及びIHD-J)、及び5の組換え抗原(B5R、VCP、A27L、A33R、及びL1R)に対する反応性について試験した。抗体タイターを、4倍のバックグランドシグナルについて必要とされる最小血清希釈として決定され、そして測定された値を図7に示した。種々の抗原及びドナーの間でタイターは変化し、これは、免疫原性、ワクシニアウイルスの十分な取り込み、ワクチン接種から採血までの時間、初期及び二次応答などの差違を反映する可能性がある。ドナー由来の特異的抗体タイターと、同じ反応性を有する同定された同種Fab/抗体の比較は、本実験に回収された抗体多様性が、回収された血清サンプル中に存在する特異性を含んだということを示唆した。当該分析により、当該同定された抗ワクシニアウイルスレパートリーが、天然液性免疫応答の特異性を反映するという主張が支持される。
【0150】
ワクシニアウイルス特異的クローンも高い多様性を示す。免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子ファミリー(IGKV)1〜4と同様に、IGHV7を含む全ての免疫グロブリン可変領域重鎖遺伝子ファミリー(IGHV)が、認証されたクローンの中に見られる。各単離及び選択されたクローンについてのV遺伝子ファミリーが表5に示される。重鎖V遺伝子の使用は、以前にヒト抗体レパートリーにおいて見られた使用、IGHV3、IGHV1及びIGHV4ファミリーの頻繁な使用と関連した。軽鎖V遺伝子の使用は、主にIGKV1-39遺伝子を頻繁に使用することのため、IGKV1ファミリーにより占められた。当該遺伝子は、ヒト免疫グロブリンレパートリーにおいて最も頻繁に使用される軽鎖V遺伝子である。全体として、IGKV1遺伝子は75%のレパートリーを作り上げる。単離されたレパートリーにおいて目立って使用される他のIGKV遺伝子はIGKV3-20であり、これはヒトにおいて最も頻繁に発現される軽鎖遺伝子である。IGKVファミリー5及び6は、レパートリーにおいて表されない唯一のファミリーであった。IGKV5及び6は、ヒト抗体応答においてかなりまれにしか使用されず、又は機能的IGKV遺伝子を構成しない可能性もある(de Wildtら、 1999, J. MoI. Biol. 285:895-891; Lefranc & Lefranc 2001, The Immunoglobulin FactsBook, Academic Press)。結論として、単離されたレパートリーの多様性は、多重オーバーラップ伸張RT-PCRによるV遺伝子の無作為の回収の証拠であり、単離抗体が、ヒトの液性免疫応答の多様性を反映するということを示唆する。
【0151】
さらに、このような細胞の由来元のドナーに元々存在するVH及びVL対を表すVH及びVLコード配列の同種対のため、ワクシニアウイルスでのワクチン接種の際に生じた液性免疫応答の親和性は、単離抗体により反映されることが考えられる。
【0152】
個々の抗体を発現するメンバーの細胞バンクの作成
表5のクローン番号02-029、02-031、02-037、02-058、02-086、02-089、02-112、02-113、02-147、02-156、02-159、02-160、02-169、02-172、02-186、02-188、02-195、02-197、02-201、02-203、02-205、02-211、02-225、02-229、02-232、02-235、02-243、02-271、02-286、02-295、02-297、02-303、02-339、02-431、02-461、02-482、02-488、02-516、02-520、02-526、02-551、02-586、02-589、02-607、02-628、02-633及び02-640に対応する47の固有の同種VH及びVLコード対のサブセットを、完全な抗体として発現するために選択した。VH及びVLコード対を、ELISAにおけるFab反応性、ウエスタンブロッティング、抗原多様性、及び配列多様性にしたがって、89の有効な抗体から選択した。選択された同種V遺伝子対を、哺乳動物発現ベクターに移した。移動法は、実施例1、セクションf)に記載される。個々の発現コンストラクトは、Flpリコンビナーゼ発現プラスミドを、CHO-FlpInレシピエント細胞株(Invitrogen)でコトランスフェクションし、続いて成分を抗生物質選別した。トランスフェクション、選別、及び無血清培地への適用を、実施例1セクションg)に記載される様に行なった。倍化時間が32時間以下になるまで適用プロセスを続けた。これは、平均して4〜6週間で完了し、その後、個々の細胞株を保存した。
【0153】
実施例3
本実施例では、モノクローナル抗VV抗体の混合物の生物活性を、血清由来VIG製品と比較した
実施例2で作成された保存株に導入された最初の16個の各細胞株を、モノクローナル抗体を発現させるために用いた。当該モノクローナル抗体は、精製され、そして個別に特徴決定され、そしてMini-V予備抗体組成物、つまり、実施例2の表5のクローン番号02-029、02-031、02-037、02-058、02-086、02-089、02-112、02-113、02-147、02-156、02-159、02-160、02-169、02-172、02-211及び02-243に相当する同種VH及びVL対を含む16のモノクローナル抗体から構成される組成物、を作成するために混合された。Mini-V組成物は、ポリクローナル抗体製品を模倣するように産生し、このような製品の生物学的活性を検証した。平行して、オリゴクローナル組成物は、ウエスタンブロッティングにより示されるIMV抗原に特異的な3個の抗体から組み合わせた。当該オリゴクローナル抗体組成物をMini-Hと名づけ、そして表5のクローン番号02-31、02-211、及び02-243に一致する3個のモノクローナル抗体の混合物から構成された。
【0154】
MiniV及びMiniH組成物の不活性化Lister株への特異的結合は、5人のドナーの血清由来抗体であって、タンパク質Aカラムを用いてアフィニティー精製された抗体(SymVIGと名づけられる)(図8)。当該直接結合性分析は、組換え抗体組成物の特異的結合活性における少なくとも100倍の増加を示した。
【0155】
2つの組成物の中和活性を、実施例1、セクションp)に記載されるプラーク減少及び中和アッセイにより、in vitroでアッセイした。抗ウイルス効力は、接着細胞のコンフルエント単層において、ワクシニアウイルス感染により引き起こされるプラーク数として検出されるウイルス感染性を50%低下させるのに必要とされる抗体濃度として示された。Mini-Vは、SymVIGに比べて100倍高い効力を示した(表6)。これは、Mini-Vの顕著な特異的活性に関連する。興味深いことに、Mini-Hは、Mini-Vよりも10分の1の効力であり、ポリクローナル抗体組成物の優位性を指し示し、IMV及びEEV粒子の両方に対する反応性を含んだ。
【0156】
【表8】

【0157】
EEV特異的感染は、100μg/mlのMiniH IMV中和抗体組成物の存在下で、実施例1、セクションp)に記載される様にプラーク減少アッセイで検出された。MiniVのEEV中和効力は、SymVIGよりも10倍高いことのみが発見された(表6)。Mini-V組成物のみが、2個のEEV特異的抗体を含む。これは、MiniV組成物が、抗IMV活性よりも低い抗EEV活性を有するという理由であり、そしてこれは、抗EEV抗体の集合を増加させることが、EEV中和を改善するということを示唆する。
【0158】
in vivoにおけるワクシニアウイルス複製についてのMiniVの効果が、マウス尻尾病変モデル(実施例1、セクションqを参照のこと)を用いて調査された。SymVIGとMini-Vの両者が、有意に尻尾病変の数を低減した(図9)。最大で約65%の抑制が最も高い濃度のSymVIGで観察されたのと対照的に、痘痕のほぼ完全な除去が、100μgから300μgのMini-V用量で観察された。これらの実験により、Mini-Vのin vivo特異的活性が、SymVIGよりも少なくとも100倍高いということが示唆され、in vitro中和及び結合試験と一致した。
【0159】
本実施例は、組換えポリクローナル抗-VV抗体の作成を示し、そして抗VV rpAbの生物学的活性を、モノクローナル抗体の混合物及び血清由来ポリクローナルVIG製品と比較する。
【0160】
ポリクローナル細胞株の作成と、抗VV rpAbの産生
組換えポリクローナル抗VV抗体の産生についての主要な同定の目的は、ワクシニアウイルス、そして恐らく天然痘ウイルスに対する最も広い潜在的な反応性を有する組成物を選択することである。抗VV組換えポリクローナル抗体に含まれる個別の抗体メンバーは、幾つかの特徴:
・抗原反応性;原理的に実施例2において同定される全ての抗原反応性は、組成物中で示されるべきであり、そして当該反応性は、特異的かつ高親和性であるべきである。さらに、可能であれば、各々同定された抗原に対して平均で2〜3の抗体が含まれるべきである。
・生化学的性質;明確な特徴を有する抗体のみが最終製品に含まれた。個別に発現された抗体は、還元及び非還元的SDS-PAGE、及びイオン交換プロファイルにより分析された。異常な生化学的挙動を有する抗体は、詳細な分析にかけられ、そしてほとんどの場合最終組成物から除かれた。
・細胞株の特徴;ポリクローナル細胞株の安定性を最適化するため、同様の倍化時間並びに適用後の生産能力を有する個別の細胞株が好ましい。
に基づいて選択された。
【0161】
表5のクローン番号02-029、02-037、02-058、02-086、02-113、02-147、02-186、02-188、02-195、02-197、02-203、02-211、02-225、02-229、02-235、02-286、02-295、02-303、02-339、02-461、02-482、02-488、02-526、02-551、02-586、02-589、02-607及び02-633に相当する同種VH及びVLコード対を発現する28の個々の細胞培養物を、ポリクローナル細胞株の作成のために選択した。個々の細胞株を融解し、そしてシェーカーフラスコ中の無血清培地中で37℃にて増加させ、21〜34時間の倍化時間の集合を有する少なくとも4×108細胞に達しさせた。生存度は、個々の細胞株の混合前において93%〜96%の範囲であった。ポリクローナル細胞株の作成とポリクローナルワーキング細胞バンク(pWCB)の樹立についての詳細は、図1、セクションg)を参照のこと。
【0162】
実施例1、セクションn)に記載される様に、組換えポリクローナル抗VV抗体を実験室規模のバイオリアクター中で産生し、そしてセクションo)に記載するように精製した。3のバッチは、pWCBから3個のバイアルから独立して産生された。
【0163】
ポリクローナル細胞株から産生される抗VV rpAbの多様性を、PolyCatカラム;緩衝液A:25mM酢酸ナトリウム、150mM塩化ナトリウム、pH5.0;B:25mM酢酸ナトリウム、0.5mM塩化ナトリウム、pH5.0(勾配:30〜100%B)を用いてIEXクロマトグラフィーにより分析した。3の抗VV rpAbバッチのIEXプロファイルはかなり類似した。抗VV rpAb製品のIEXプロファイルにおいて個別のピークを割り当てることは、IEXプロファイル(図10)のピークの一を同定する同一の条件下で、実施例2に産生される個々の抗体を走らせることにより行なわれた。ポリクローナル細胞株に含まれる2の個々の細胞株(クローン02-113及び02-225)からの抗体は、抗VV rpAbに見られなかった。これらのクローンは、VCP及び抗原Lに対して反応性である抗体を産生する。しかしながら、組成物において同様の反応性を有する他の抗体が存在するので、これらのクローンがないことは、さらなる分析に許容されると考えられている。
【0164】
抗VV rpAbの生物学的活性
異なるワクシニアウイルス株に対する3個の抗VV rpAbバッチ及び組換え抗原の反応性は、ELISAにより比較された(図11)。高度に類似するIEXプロファイルに関して、3個のバッチは、試験された全ての抗原に対してほぼ同一の結合反応性を発揮し、産生されたポリクローナル抗体の一定の抗体混合物を示唆する。この理由のため、3のバッチを貯蔵することが決定された。さらに、抗VV-rpAbバッチは、SymVIG、ならびに市販の血清由来VIG製品(Cangene)と比較された。血清由来VIGに比べて、抗VV rpAbバッチの約250倍高い特異性の結合活性は、標的抗原とは多かれ少なかれ独立していることが観察された。
【0165】
SYM002抗VV rpAbは、2つのタイプのプラーク低下及び中和アッセイにおいて試験された(PRNT;実施例1、セクションp)。SYM002抗VV rpAbは、実施例3のMini-Vと比べて、40倍の改善された特異的抗ウイルス活性を発揮し、そして市販の血液由来VIG製品(Cangene)に比べて800倍の改善された特異的活性を発揮した(表6)。Sym002抗VV rpAbの優れた抗ウイルス活性は、EEV媒介性感染を検出する改変PRNTアッセイにおいて観察された。in vitroアッセイにおいて得られるIC50値は、高度の不確実性と関連するが、このデーターは明らかに、Sym002抗VV rpAbの優れた特異活性を示す。
【0166】
【表9】

【0167】
Sym002抗VV rpAbは、Lister又はNYCBOHワクシニアウイルス株のいずれかで曝露された尻尾病変モデルを用いて、in vivoについての抗ウイルス活性について試験した。Sym002プレリード製品を、ウイルス曝露の24時間前に(予防)、或いは曝露後(治療)に筋肉内(I.M)投与した。全てのデータセットは、血液由来市販のVIGに比べて、Sym002抗VV rpAbの約300倍高い特異的活性をを示した。予防的に投与されたSym002抗VV rpAbが、顕著な抗ウイルス効果を誘発し、そしてほぼ同一の抗ウイルス活性を観測しないということが、予期された。この結果は、使用されるマウスモデルの制限を反映する可能性があり、ここで多量の感染性ウイルス粒子(〜105PFU)が尻尾静脈に注射され、そしてそれにより一時的に高い局所濃度をもたらし、これは未処理の状況では、約50〜70の計数できる痘痕を生じさせる。このシナリオでは、一時的に高濃度のウイルスは、投与された抗体の濃度を超えているようであり、それにより初期感染を阻害するよりは、ウイルスの拡散の継続を予防している可能性がある。マウス尻尾病変モデルの原動力であるならば、Sym002抗VV rpAbの顕著な効力は、観察と関連する抗体の予防的投与により得ることができる。in vitro及びin vivoデーターの組み合わせは、ワクシニアウイルスのin vitro中和に必要とされる全ての必須抗体反応性が、抗VV-rpAvに含まれるという証拠を提供する。
【0168】
Sym002ミックスは、pWCBから生成される抗VV rpAbに存在するよりも等しい各抗体の価値を得るために、個々の精製された抗体を混合することによりコンパイルされた(実施例1、セクションi)。2個のポリクローナル抗体化合物の抗ウイルス活性は、NYCBOHワクシニアウイルスで曝露した24時間後に、記載された抗体の用量を腹腔内投与(I.P.)したことを除いて、上に記載されるマウス尻尾病変モデルでアッセイした。試験された用量範囲で、出願人は、SYM002抗-VV-rpAb及びSym002ミックスの同じ抗ウイルス活性を観察した(図13)。これにより、使用された産生法が、完全に生物活性を有するポリクローナル抗体製品を作成することが証明された。
【0169】
実施例5
選択された抗体の親和性
抗体の結合反応速度は、表面プラスモン共鳴計測、つまりBIAcoreにより検出することができる。当該方法は、抗原をチップ表面に化学的に固定することを必要とし、A27L、A33R、VCP及びB5Rと相互作用するSym002抗体に対する分析を制限する。なぜなら、これらの抗原だけは、組換えタンパク質として利用できるからである。Fab断片は、パパイン切断により精製済みIgG1抗体から作成された(実施例1、セクションJ)。結合反応速度計測により、調査された抗体の大部分について10-8〜10-10-1の親和性定数(KD)を明らかにした(図14)。観察された親和性は、理論における抗体親和性の上限に達し(10-10-1のKD)(Foote and Eisen, 1995, Proc Natl Acad Sci USA, 92: 1254-1256)、選択された抗体レパートリーが、天然液性免疫応答を反映するということを示唆する。報告されたデーターに加えて、試験された抗体の幾つかは、固定された抗原と反応しなかった。この観察結果の説明は、知られていないが、固定により誘導された立体的制約のため生じる可能性があり、又は幾つかのエピトープの構造は、固定又はチップクリーニング法の間のいずれかの間に変性される可能性もある。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】図1は、コンセンサス配列を含む、既知のオルトポックスウイルスに関連する補体活性化調節物質(RCA)のアミノ酸配列の配列比較である。
【図2】図2は、多重オーバーラップ伸張RT-PCR(A)とクローニングステップ(B)の模式的概略である。(A):2ステップのプライマー、それぞれVH及びVκ遺伝子ファミリーに特異的であるCH+VH1-8並びにVK1-6+CK1、を一回目のPCRステップに用いた。VH又はVκプライマー間の相同領域は、重なり合ったPCR産物の生成をもたらす。第二ステップでは、この生成物をネステッドPCRで増幅する。当該プライマーは、クローニングを容易にする制限酵素の認識部位を含む。(B):生成された同種結合されたVH及びVκコード対を貯蔵し、そして隣接するXhoI及びNotI制限酵素部位を使用することによりFab発現ベクターに挿入される。続いて、二方向性のプロモーターを、結合されたVH及びVκコード配列間のAscI-NheI制限酵素部位に挿入して、Fab発現を促進した。使用されるPCRプライマーを水平方向の矢印により指し示した。CH1:重鎖定常ドメイン1、CL:定常ドメイン、LC:軽鎖;Ab:抗体;P1-P2:二方向性プロモーターを意味する。
【図3】図3は適切なFab発現ベクターの模式図である。A)結合されたVH及びVLコード対の挿入のためのNotI/XhoI制限酵素部位を有するE.coliのFab発現ベクターであるJSK301を示す。当該ベクターは、以下の要素:Amp及びAmp pro=アンピシリン耐性遺伝子及びそのプロモーターを含む。pUC19 Ori=複製開始点。ヒトCH1=ヒト免疫グロブリンγ1重鎖ドメイン1をコードする配列。Stuffer=オーバーラップ伸張断片の挿入の差違に切り出された無関係の配列インサート。tacP及びLacZ=NheI及びAscI制限部位で切り出され、そして他のプロモーター対で置換されうる細菌プロモーター。B)結合されたVH及びVLコード対の挿入のためのNotI/XhoI制限部位を有する哺乳動物Fab発現ベクターを示す。当該ベクターは以下の要素:Amp及びAmp pro=アンピシリン耐性遺伝子及びそのプロモーター。pUCorigin=pUC複製起点。ラビットB-グロビンA=ラビットβ-グロビンポリA配列。IgG1CH1=ヒト免疫グロブリンγ1重鎖ドメイン1をコードする配列。VH=可変重鎖をコードする配列。HCリーダー=ゲノム重鎖リーダー。P1=軽鎖の発現を駆動する哺乳動物プロモーター。P2=重鎖の発現を駆動する哺乳動物のプロモーター。カッパー・リーダー=マウスゲノムκ鎖リーダー。LC=軽鎖コード配列。SV40ターム=サルウイルス40ターミネーター配列。Neo=ネオマイシン耐性遺伝子。SV40ポリA=サルウイルス40ポリAシグナル配列。
【図4】図4は哺乳動物全長抗体発現ベクター00-VP-530の模式図である。当該ベクターは、以下の要素を含む:Amp及びAmp pro=アンピシリン耐性遺伝子及びそのプロモーター。pUCorigin=pUC複製起点。P1=軽鎖の発現を駆動する哺乳動物プロモーター。P2=重鎖の発現を駆動する哺乳動物プロモーター。リーダーIGHV=ゲノムヒト重鎖リーダー。VH重鎖可変領域をコードする配列。IgG1=ゲノム免疫グロブリンイソ型G1重鎖定常領域をコードする配列。ラビットB-グロビンA=ラビットβ-グロビンポリA配列。カッパー・リーダー=マウスκリーダーをコードする配列。LC=軽鎖コード配列をコードする配列。SV40ターム=サルウイルス40終結配列。FRT=Flp認識標的部位。Neo=ネオマイシン耐性遺伝子。SV40ポリA=サルウイルス40ポリAシグナル配列。
【図5】図5は、同定された抗原群の代表的なウエスタンブロットを表す。ウイルス粒子又は組換え抗原は、SDS-PAGEにより分離され、そしてブロットされた。ウエスタンブロットをそのクローン番号により同定される表示された抗体でプローブした。同定された抗原は、各ブロットの上に記された。Aと割り当てられた抗原群Aは、ウエスタンブロットにおいて検出可能なバンドを与えなかった。マーカーのサイズは20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、80kDa、100kDa、120kDaである。
【図6】図6は、抗体スクリーニング手順を示すフローチャートを示す。Fab断片又は全長抗体(Abs)を、プライマリーヒットを作成するスクリーニングの第一ラウンドにおいて、不活性化ワクシニアウイルス株及び組換えワクシニアウイルスに対してスクリーニングした。プライマリーヒットは、次にスクリーニングの第二ラウンドにかけられた。一般的に第一ラウンドのスクリーニングは、FLISAをもちいて行なわれ、そして第二ラウンドのスクリーニングは、FLISA及び/又はELISAで行なわれた。この図は、EEV又は非粒子付随性タンパク質を組換えワクシニアウイルス付随性タンパク質を例示する。しかしながら、組換えIMV特異的タンパク質、例えばL1Rも使用されうる。
【図7】図7は、(D-001〜D011により示される)10のドナーにおける抗ワクシニアウイルスの反応性を示す。組換え抗原A27L、A33R、B5R、L1R、及びVCP、並びに異なる株(Lister、IHD-W、IHD-J)からのウイルス粒子に対する抗体タイターを、ELISAでバックグラウンドより4倍高いシグナルを産生する最小希釈として測定した。
【図8】図8は、血清由来SymVIGに比較してミニH及びミニV組成物の抗ワクシニアウイルスの反応性を示す。結合性は、不活性Lister株の粒子を抗原として用いてELISAにより検出し、そして陰性対照は、抗RhDポリクローナル抗体であった。
【図9】図9は、マウス尻尾病変ワクシニアウイルス複製モデルにおいてミニVによるワクシニアウイルス複製のin vivo抑制を示す。MiniV又はSymVIGの示された量は、ウイルス曝露の後に24時間で腹腔内注射した。Lister株(点線)又はNYCBOH株(実線)を曝露に用いた。結果は、無関係の組換えポリクローナル抗体(抗RhD)で処理された対照群と比較した病変の割合(%)であった。小分子薬剤シドフォビルを陽性対照として含め、そして筋肉中(i.m.)に投与した。
【図10】図10は抗VV rpAb化合物のIEXプロファイルを示す。表5に与えられるクローン番号により同定される個別のクローンを、個々のピークに割り当てた。02-113及び02-225を発現する細胞株を、ポリクローナル細胞株に含めたが、抗-VV rpAb中で発見されなかった。
【図11A】図11は、3個の抗VV rpAbバッチ及び2個のVIG製品、SymVIGとCangeneVIG(VIG)のワクシニアウイルス結合性を示す。当該結合性を抗原に対するELISAにおいて試験し、各点の頂点に示した。
【図11B】図11は、3個の抗VV rpAbバッチ及び2個のVIG製品、SymVIGとCangeneVIG(VIG)のワクシニアウイルス結合性を示す。当該結合性を抗原に対するELISAにおいて試験し、各点の頂点に示した。
【図11C】図11は、3個の抗VV rpAbバッチ及び2個のVIG製品、SymVIGとCangeneVIG(VIG)のワクシニアウイルス結合性を示す。当該結合性を抗原に対するELISAにおいて試験し、各点の頂点に示した。
【図11D】図11は、3個の抗VV rpAbバッチ及び2個のVIG製品、SymVIGとCangeneVIG(VIG)のワクシニアウイルス結合性を示す。当該結合性を抗原に対するELISAにおいて試験し、各点の頂点に示した。
【図12】図12は、Sym002抗VV rpAb(SYM002)のin vivoにおけるワクシニアウイルス複製の抑制を示す。予防(下のパネル)又は治療(上のパネル)において筋肉内投与されたSym002抗VV rpAbは、マウス尻尾痘痕モデルによりアッセイされた場合、in vivoでLister及びNYCBOHの両方のワクシニアウイルスの複製を抑制する。4個のデータセットの全ては、VIG(Cangene)に比べてSym002抗VV rpAbの約300倍高い特異的活性を示した。
【図13】図13は、Sym002ミックスとSym002抗VV rpAb(SYM002)は、マウスの尻尾病変モデルにおいて、同一の抗ウイルス効力を有することを示す。各群における8匹のマウスを、指定量の抗体の腹腔内注射の24時間前にワクシニアウイルス、NYCOBH株で曝露した。
【図14】図14は、Biacore2000を用いて表面プラスモン共鳴により検出されたB5R、A33R、A27L、又はVCPに対して反応性である抗体の親和性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合同で少なくとも3のオルトポックスウイルス関連抗原に結合できる別個のメンバーを含む、抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項2】
同一のオルトポックスウイルス関連抗原上の少なくとも2の別個のエピトープが、前記ポリクローナル抗体により結合される、請求項1に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項3】
前記別個の抗体メンバーの組成物が、1以上のオルトポックスウイルスに付随する抗原に対する多様性、親和性及び特異性に関して、液性免疫応答を反映する、請求項1又は2に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項4】
前記別個の抗体が、オルトポックスウイルスに対して液性免疫応答を生じさせた1以上のドナーから得られる核酸配列によりコードされる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項5】
前記ドナーが、ワクシニアウイルス株をワクチン接種されたか、又はオルトポックスウイルス感染から回復した、請求項4に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項6】
前記ドナーがヒトであり、そして前記ポリクローナル抗体が完全にヒト抗体である、請求項4又は5に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項7】
前記別個の抗体メンバーが、もともとドナーに存在するVH及びVL対を含む、請求項3〜6のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項8】
抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体の個々のメンバーの特異性が選択され、その結果当該抗体組成物が、哺乳動物においてかなりの抗体応答を誘発する抗原に共同で結合する、請求項3〜7のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項9】
IMV並びにEEV特異的抗原に対して結合反応性を含み、ここで当該結合反応性が、IMV又はEEV特異的抗原のいずれかに結合できる別個のメンバーにより特徴付けられる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項10】
IMVウイルスタンパク質A27L、A17L、D8L及びH3Lのなかから選ばれる抗原及びEEVウイルスタンパク質A33R及びB5Rのなかから選ばれる抗原に対する結合反応性を含む、請求項9に記載される抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項11】
IMV由来の抗原の群が、ウイルスタンパク質L1Rをさらに含み、そしてEEV由来の抗原の群が、ウイルスタンパク質A56Rをさらに含む、請求項10に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項12】
前記ポリクローナル抗体が、オルトポックスウイルスによりコードされるRCAタンパク質に対する結合反応性を有する少なくとも1の個々の抗体メンバーを含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項13】
前記RCA結合反応性が、VCP、SPICE、IMP、MPXV-VCP及びCMLV-VCPの群から選ばれるタンパク質に向けられる、請求項12に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項14】
SCR2、SCR4、及びSCR3とSCR4ドメインの結合部の群から選ばれる少なくとも2のRCAドメインに対する結合反応性を含む、請求項12又は13に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項15】
特定のオルトポックスウイルス関連抗原で免疫化/ワクチン接種された1以上のドナーから選ばれるVH及びVL対からコードされる1以上の別個の抗体をさらに含む、請求項3〜14のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項16】
各別個のメンバーが、表5に与えられるVH及びVL対の群から選ばれる、CDR1、CDR2、及びCDR3領域を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項17】
クローン番号02-029、02-037、02-058、02-086、02-147、02-186、02-188、02-195、02-197、02-203、02-211、02-229、02-235、02-286、02-295、02-303、02-339、02-461、02-482、02-488、02-526、02-551、02-586、02-589、02-607及び02-633に対応する重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3領域を有する別個のメンバーから構成される、請求項1〜16のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項18】
クローン番号02-113及び02-225に対応する重鎖及び軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3領域を有する以下の2個の別個のメンバーをさらに含む、請求項17に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項19】
ヒト又は動物においてワクシニアウイルスのワクチン接種の副作用を治療又は予防するための方法であって、請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体の有効量を当該ヒト又は動物に投与する、前記方法。
【請求項20】
ヒト又は動物においてオルトポックスウイルス感染を治療又は予防するための方法であって、請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体の有効量を当該ヒト又は動物に投与する、前記方法。
【請求項21】
ワクシニアウイルスでのワクチン接種の副作用の治療又は予防用の、或いはオルトポックスウイルス感染の治療又は予防用の組成物の製造のための、請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体の使用。
【請求項22】
活性成分として請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体、並びに医薬として許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項23】
a.VH及びVLコード対のレパートリーの別個のメンバーを含むスクリーニングベクターをトランスフェクションされた宿主細胞から抗体又は抗体断片を発現させ、
b.当該抗体又は抗体断片を、少なくとも2の異なるワクシニアウイルス株、及び、以下の抗原:A27L、A17L、D8L、H3L、L1R、A33R、B5R及びVCPのうちの1以上と平行して接触させ、
c.配列対のレパートリーの各VH及びVL配列対についてステップa)とb)を繰り返し、
d.少なくとも1のワクシニアウイルス株及び/又は抗原に結合する抗体又は抗体断片をコードするVH及びVL配列対を選択する
を含む抗オルトポックスウイルス抗体の広範の多様性をコードできるVH及びVL配列対を選択するスクリーニング法。
【請求項24】
前記VH及びVLコード対が、同種対である、請求項23に記載のスクリーニング方法。
【請求項25】
前記スクリーニング法が、ファージディスプレイを利用しない、請求項23又は24に記載のスクリーニング法。
【請求項26】
H及びVLコード対のレパートリーを作成する方法であって、当該メンバーが、オルトポックスウイルスで曝露した際に液性免疫応答に関与する遺伝子対を反映し、以下の:
a.オルトポックスウイルスでワクチン接種されるか、又はオルトポックスウイルス感染から回復したドナーからリンパ球含有細胞画分を準備し;
b.当該細胞画分からB細胞又は血漿細胞を場合により濃縮し;
c.単離された単一細胞の集合を取得し、当該細胞画分由来の細胞を個別に複数の試験管に分配することを含み、
d.当該単離された単一細胞由来のテンプレートを用いて、多重オーバーラップ伸張RT-PCR法において、VH及びVLコード対の結合を増幅し、そして有効にし;
e.結合されたVH及びVLコード対のネステッドPCRを場合により行なう
を含む、前記方法。
【請求項27】
前記結合されたVH及びVLコード対を、請求項23〜25のいずれか一項に記載のスクリーニング法にかける、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の組換えポリクローナル抗オルトポックスウイルス抗体を発現できるポリクローナル細胞株。
【請求項29】
各個別の細胞が、単一のVH及びVLコード対を発現でき、そして当該ポリクローナル細胞株が全体としてVH及びVLコード対の集合を発現でき、ここで各VH及びVLコード対が抗オルトポックスウイルス抗体をコードする、ポリクローナル細胞株。
【請求項30】
H及びVLコード対の前記集合が、請求項26又は27に記載の方法に従って作成される、請求項29に記載のポリクローナル細胞株。
【請求項31】
前記抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体が、オルトポックスウイルス抗原に結合しない免疫グロブリン分子を実質的に伴わない、請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項32】
当該抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体の定常領域が、IgG、IgA、IgE、IgM、又はIgDのイソ型に属する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の前記抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。
【請求項33】
前記抗オルトポックス組換えポリクローナル抗体の定常領域が、IgG又はIgAの1又は2の特定の免疫グロブリン亜型に属する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の抗オルトポックスウイルス組換えポリクローナル抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−518320(P2009−518320A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543656(P2008−543656)
【出願日】平成18年12月4日(2006.12.4)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000686
【国際公開番号】WO2007/065433
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508167656)シュムフォウエン アクティーゼルスカブ (1)
【Fターム(参考)】