説明

抗オートタキシン・モノクローナル抗体からなる間質性肺疾患治療剤

【課題】間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療剤を提供すること。
【解決手段】本発明は、抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片を用いて、間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療を可能とし、抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片の間質性肺炎および肺線維症の予防および/または治療における新たな処方を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片からなる間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
間質性肺炎は、肺の間質にびまん性の結合組織の異常増殖をきたし、正常な肺構造と機能が著しく阻害され、その終末像として線維化・蜂巣肺を生ずる難治性・予後不良の疾患である。一方、肺線維症は、肺内にびまん性の線維増殖をきたし、咳嗽、息切れ、びまん性の肺陰影、拘束性換気障害、拡散障害、低酸素血症などを示す病態をいい、間質性肺炎の予後が不良の場合、肺線維症へと移行することが多く、肺線維症に移行すれば発症から4年以内に約半数が死亡するとも言われている。
【0003】
間質性肺炎の治療方法としては、その急性増悪時にステロイド療法が行われ、時に免疫抑制剤の併用を行う場合もある。また、進行すると低酸素血症が必発するので、酸素療法(在宅酸素療法を含む)が必要となるが、主に対症療法が中心である。同様に、肺線維症に対してもステロイド療法が行われているが、病変が残存することが多く、ステロイド剤の副作用や減量・中止による急性増悪もしばしば見られ、臨床において決して満足できるものではないため、新たな治療薬の開発が望まれている。また、肺がん治療薬イレッサがその副作用として重篤な間質性肺炎を引き起こすことが判明し、間質性肺炎の克服はイレッサの使用が多い本邦で特に重要な課題となっている。
【0004】
オートタキシン(Autotaxin)は、血液中においてリゾリン脂質リゾホスファチジン酸(LPA)を産生する酵素であるが(非特許文献1参照)、多くのがん組織に高発現し、がん細胞の運動性を促進することから、当初は癌の転移や浸潤に関与する可能性が想定されていた(非特許文献2参照)。しかしながら、本発明者らは、オートタキシンと間質性肺炎もしくは肺線維症との関連性に着目し、抗オートタキシン・モノクローナル抗体が間質性肺炎および/または肺線維症に対する予防および/または治療効果を有することを明らかにした。これまで、抗オートタキシン・モノクローナル抗体がそのような薬理効果を有することはいずれの先行技術にも記載されていない(特許文献1および2、非特許文献3、4および5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2008/150841号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2008/157361号パンフレット
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Journal of Cell Biology,2002年、第158巻,p.227−233
【非特許文献2】Journal of Biological Chemistry,2004年,第279巻,第17号,p.17634−17639
【非特許文献3】The Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics,2008年,第327巻,第3号,p.809−819
【非特許文献4】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2007年,第17巻,p.1634−1640
【非特許文献5】Biochim Biophys Acta.,2008年,第1781巻,第9号,p.588−594
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、オートタキシンに着目して鋭意検討を行ったところ、抗オートタキシン・モノクローナル抗体が間質性肺炎または肺線維症に対して予防ないし治療に有効であることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片を含む、間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療剤。
[2] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体が、ヒト化抗体または完全ヒト型抗体である前記[1]記載の剤。
[3] 健常人に比べ血中オートタキシン活性が有意に高い間質性肺炎患者または肺線維症患者を治療するための前記[1]または[2]記載の剤。
[4] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片が、血中オートタキシン活性を低下させる作用を有するものである前記[1]ないし[3]のいずれかに記載の剤。
[5] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片が、肺組織への炎症細胞浸潤を抑制する作用を有するものである前記[1]ないし[3]のいずれかに記載の剤。
[6] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片が、肺胞の血管透過性を抑制する作用を有するものである前記[1]ないし[3]のいずれかに記載の剤。
[7] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片と、ステロイドおよび/または免疫抑制剤を組み合わせてなる、間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療のための医薬。
[8] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片を含む、血中オートタキシン活性低下剤。
[9] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片を含む、肺組織への炎症細胞浸潤抑制剤。
[10] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片を含む、肺胞の血管透過性抑制剤。
[11] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片を含む、肺胞内へのタンパク質漏出抑制剤。
[12] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体の有効量を、間質性肺炎および/または肺線維症患者あるいは間質性肺炎および/または肺線維症の発症の予防が求められる患者に投与することを特徴とする、間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療方法。
[13] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片の有効量を、血中オートタキシン活性の低下が求められる患者に投与することを特徴とする、血中オートタキシン活性の低下方法。
[14] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片の有効量を、肺組織への炎症細胞浸潤の抑制が求められる患者に投与することを特徴とする、肺組織への炎症細胞浸潤の抑制方法。
[15] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片の有効量を、肺胞の血管透過性の抑制が求められる患者に投与することを特徴とする、肺胞の血管透過性の抑制方法。
[16] 抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片の有効量を、肺胞内のタンパク質漏出の抑制が求められる患者に投与することを特徴とする、肺胞の血管透過性の抑制方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片を使用することによって、間質性肺炎および/または肺線維症に対し、有効な予防および/または治療効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】血中オートタキシン活性(ATX活性)に対する抗オートタキシン抗体(5E5、S9A9、S13A9)とコントロール抗体(ラットIgG)投与の経時的な影響を表わす。
【図2】突発性間質性肺炎患者(IPF)における血中オートタキシン活性(ATX活性)を示した図である。
【図3】ブレオマイシン惹起肺線維症モデルに対して、抗オートタキシン抗体(抗ATX抗体)またはコントロール抗体を投与した後に、摘出した肺の組織切片標本を示した図である。
【図4】ブレオマイシン惹起肺線維症モデルに対して、抗オートタキシン抗体(抗ATX抗体)またはコントロール抗体を投与した後に、線維化の進行の程度をクリニカルスコアとして評価した図である。
【図5】(A)ブレオマイシン惹起肺線維症モデルに対して、抗オートタキシン抗体(抗ATX抗体)またはコントロール抗体を投与した後に、肺胞洗浄液中の総細胞数の経時的変化を示した図、および(B)その肺胞洗浄液の塗抹標本上でのマクロファージ、好中球およびリンパ球を示した図である。
【図6】ブレオマイシン惹起肺線維症モデルに対して、抗オートタキシン抗体(抗ATX抗体)またはコントロール抗体を投与した後に、肺胞洗浄液中のタンパク質濃度の経時的変化を表わした図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明において、オートタキシンとは、Genbankのアクセッション番号NP_006200あるいはNP_001035181で特定されるアミノ酸配列を有するヒトオートタキシンを言うが、これらと実質的に同等のLPA合成活性を有する部分タンパク質または一部のアミノ酸が置換、欠損、付加もしくは挿入された変異タンパク質もこれに含まれる。
【0013】
本発明で使用される抗オートタキシン・モノクローナル抗体(以下、「本発明にかかる抗体」と表記することもある。)は、オートタキシンに結合するものであればいずれのモノクローナル抗体でもよい。また、本発明では、抗オートタキシン・モノクローナル抗体を1種単独で使用してもよく、またはエピトープが異なる2種以上のモノクローナル抗体を組み合わせて使用してもよい。特に、間質性肺炎および/または肺線維症に対する予防ないし治療効果をより有効に奏させるという観点からは、2種以上の抗オートタキシン・モノクローナル抗体、好ましくは3種の抗オートタキシン・モノクローナル抗体を組み合わせて使用することが望ましい。
【0014】
ここで、本発明にかかる抗体は、オートタキシンをマウスまたはラットなどに免疫して単離されるマウス抗体またはラット抗体などであってもよいが、好ましくは、これら抗体とヒト抗体とのキメラ抗体、あるいはそれらのヒト化抗体、より好ましくは完全ヒト型抗体である。
【0015】
ここで、キメラ抗体とは、抗体の可変領域配列がヒト以外の哺乳動物由来であって、定常領域配列がヒト由来である抗体を言い、例えば、可変領域配列がマウス抗体またはラット抗体に由来し、定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体である。
【0016】
また、ヒト化抗体とは、例えば、マウスのような別の哺乳動物に由来する抗体の(Complementarity Determining Region)CDR配列をヒト抗体のフレームワーク(FR)配列上に移植した抗体を言うが、例えば、米国特許4816567、米国特許5225539および5530101ならびに米国特許5585089および6180370に記載された方法に基づき製造することができる。なお、別の哺乳動物に由来する抗体は、例えば、ハイブリドーマ技術(Nature, Vol.256, No.5517, p.495-497(1975))によって作製できる。また、ヒト化抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域中のFRのアミノ酸を置換してもよい(Cancer Research, Vol.53, p.851-856(1993))。なお、本発明の実施例において使用されているラット抗オートタキシン・モノクローナル抗体5E5、S13A9およびS9A9は、Journal of Biological Chemistry, Vol.281, No.35, p.25822-30(2006)およびThe American Journal of Pathology, Vol.173, No.5, p.1566-1576(2008)に記載の方法により単離および調製することができる。
【0017】
一方、完全ヒト型抗体とは、可変領域のCDRおよびFRならびに定常領域のすべての構成がヒトに由来する抗体であり、HuMAbマウス(登録商標)(米国特許5545806、5569825、5625126および5633425など参照)、KMマウス(登録商標)(WO02/43478参照)、ゼノマウス(登録商標)(米国特許5939598、6075181、6114598、6150584および6162963参照)、TCマウス(登録商標)(Proc.Natl.Acad.Sci.USA, Vol.97, No.2,p.722-727(2000))またはヒト免疫細胞を再構築したSCIDマウス(米国特許5476996および5698767参照)を用いて製造することができる。また、完全ヒト型抗体は、ヒトイムノグロブリン遺伝子ライブラリースクリーニングのためのファージディスプレイ法(米国特許5565332、5733743もしくは5858657などまたは米国特許5223409、5403484もしくは5571698など参照)でも調製できる。
【0018】
また、本発明にかかる抗体のアイソタイプとしては、特に制限されないが、例えば、IgG(IgG、IgG、IgGおよびIgG)、IgA(IgAおよびIgA)、IgM、IgDおよびIgEが挙げられるが、好ましくはIgGであり、より好ましくは抗体依存性細胞障害(ADCC)活性および/または補体依存性細胞障害(CDC)活性が高いIgGである。
【0019】
さらに、本発明にかかる抗体は、FR内部の1個以上の残基または1個以上のCDR内部の1個以上の残基を変異させ、T細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的免疫原性を低下させることができる(米国特許公報20030153043参照)。
【0020】
本発明にかかる抗体は、血中において、オートタキシンの活性を阻害することができる。その阻害様式は、オートタキシンが有する酵素活性を直接阻害する方法あるいはオートタキシンを血中から排除することで血中での活性を低下させる方法のいずれであってもよい。また、その阻害活性は、90%以上の阻害率で少なくとも投与から48時間持続される。なお、血中オートタキシン活性は、採取した血液の血漿中のオートタキシン活性を測定することによって決定することができ、血漿中オートタキシン(lysoPLD)活性は、The Journal of Cell Biology, Vol.158, No.2, p.227-233(2002)に記載の方法に従って測定できる。
【0021】
また、本発明にかかる抗体は、間質性肺炎または肺線維症の炎症症状を引き起こす炎症細胞(例えば、リンパ球、好中球、マクロファージ)の肺組織への浸潤を抑制することができる。肺胞における血管透過性の亢進は、各種炎症物質の肺組織への滲出を引き起こし、間質性肺炎または肺線維症の炎症症状を増悪させる。本発明にかかる抗体は、肺胞の血管透過性を抑制することができる。また、本発明では、上記抗体以外に、オートタキシンに対して交差性を示す限り、上記抗体の断片、例えば、Fab、F(ab)′、ScFv、Sc(Fv)やダイアボディなどを使用することもできる。これらの抗体断片は、当業界で公知の方法に従って作製することができる。
【0022】
[医薬品への適用]
本発明にかかる抗体またはその抗体断片は、間質性肺炎(例えば、特発性間質性肺炎(非特異性間質性肺炎、特発性器質化肺炎、呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患、剥離性間質性肺炎、リンパ球性間質性肺炎、急性間質性肺炎))および/または肺線維症(例えば、特発性肺線維症)の予防および/または治療剤として有用であり、薬学的に許容できる担体とともに、当該予防および/または治療剤として、非経口投与(例えば、注射もしくは点滴による静注、筋肉内、皮下、脊髄または上皮投与)することができる。特に、本発明にかかる抗体またはその抗体断片は、健常人に比べて血中オートタキシン活性が有意に高い間質性肺炎患者および/または肺線維症患者に対して有効な治療効果を奏することができるという利点がある。さらに、血中オートタキシン活性をモニターしながら、それら症状の再発を予防するのにも有効である。また、本発明にかかる抗体またはその抗体断片は、間質性肺炎および/または肺線維症の症状の進行を抑制する薬剤としても有用である。
【0023】
本発明にかかる抗体またはその抗体断片は、血中オートタキシン活性を低下させる効果、肺組織への炎症細胞浸潤を抑制する効果、肺胞の血管透過性を抑制する効果、肺胞におけるタンパク質の漏出を抑制する効果などがあり、血中オートタキシン活性の低下剤、肺組織への炎症細胞浸潤抑制剤、肺胞の血管透過性抑制剤、肺胞内のタンパク質漏出抑制剤などとしても有用である。本発明にかかる抗体またはその抗体断片を、このような剤として使用する場合、その製剤形態、使用方法などについては、上述の間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療剤として使用する場合と同様である。
【0024】
ここで、本発明にかかる抗体の投与量は、年齢、体重、症状、治療効果、投与方法または処理時間等により異なるが、約0.1〜100mg/kg、さらに一般的には0.1〜10mg/kgの範囲(具体的には、約0.1、0.3、1、3、5または10mg/kg)で、例えば、単回または週1回投与、2週間に1回投与、3週に1回投与、4週に1回投与、月1回投与、3ヶ月に1回投与もしくは3ヶ月以上おきに1回で投与できる。また、一回の投与方法として、一日0.5〜24時間の範囲で静脈内に持続投与することができる。なお、本発明にかかる抗体またはその抗体断片は、2種以上の抗体またはその抗体断片を任意の割合で混合して投与してもよい。また、本発明にかかる抗体またはその抗体断片の組合せ態様についても、特に制限されず、2種以上の抗体の組合せ、2種以上の抗体断片の組合せ、または1種以上の抗体と1種以上の抗体断片の組合せのいずれであってもよい。
【0025】
本発明にかかる抗体またはその抗体断片は、注射剤または点滴のための輸液として製剤化されて用いられる。注射剤または輸液は、水溶液、懸濁液または乳濁液のいずれの形態であってもよく、また用時に溶剤を加えることにより、溶解、懸濁または乳濁して使用されるように固形剤として製剤化されていてもよい。注射剤または点滴のための輸液に使用される溶剤として、例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖溶液および等張液(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、ホウ酸、ホウ砂、プロピレングリコール等の溶液)等を用いることができる。
【0026】
ここで、薬学的に許容できる担体としては、例えば、安定剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、無痛化剤、緩衝剤、保存剤、防腐剤、pH調整剤および抗酸化剤等が挙げられる。安定剤としては、例えば、アルブミン、グロブリン、ゼラチン、マンニトール、グルコース、デキストラン、エチレングリコール、プロピレングリコール、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン等を用いることができる。溶解補助剤としては、例えば、アルコール(例えば、エタノール等)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80(登録商標)、HCO−50等)等を用いることができる。懸濁化剤としては、例えば、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸アルミニウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウム等を用いることができる。乳化剤としては、例えば、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、トラガント等を用いることができる。無痛化剤としては、例えば、ベンジルアルコール、クロロブタノール、ソルビトール等を用いることができる。緩衝剤としては、例えば、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、イプシロンアミノカプロン酸緩衝液等を用いることができる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、クロロブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂等を用いることができる。防腐剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタノール等を用いることができる。pH調整剤としては、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸、酢酸等を用いることができる。抗酸化剤として、例えば、(1)アスコルビン酸、システインハイドロクロライド、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等のような水溶性抗酸化剤、(2)アスコルビルパルミテート、ブチル化ハイドロキシアニソール、ブチル化ハイドロキシトルエン、レシチン、プロピルガレート、α−トコフェロール等のような油溶性抗酸化剤および(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、ソルビトール、酒石酸、リン酸等のような金属キレート剤等を用いることができる。
【0027】
本発明にかかる予防および/または治療剤は、必要に応じて、1種以上の薬学的に許容できる塩を含むことができる。ここで、“薬学的に許容できる塩”として好ましくは、水溶性のものであって、酸付加塩(例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩のような無機酸塩または酢酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、イセチオン酸塩、グルクロン酸塩、グルコン酸塩のような有機酸塩等)ならびに塩基付加塩(例えば、アルカリ金属(カリウム、ナトリウム等)の塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)の塩、アンモニウム塩または薬学的に許容される有機アミン(テトラメチルアンモニウム、トリエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、シクロペンチルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ピペリジン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、リジン、アルギニン、N−メチル−D−グルカミン、N,N’−ジベンチルエチレンジアミン、クロロプロカイン、プロカイン、コリン等)の塩等)が挙げられる。
【0028】
注射剤または点滴のための輸液は、その最終工程において滅菌するかあるいは無菌操作法、例えば、フィルター等で濾過して滅菌し、次いで無菌的な容器に充填することによって製造することができる。また、注射剤または点滴のための輸液は、真空乾燥および凍結乾燥による無菌粉末(薬学的に許容できる担体の粉末を含んでいてもよい。)を、適切な溶剤に用時溶解して使用することもできる。
【0029】
さらに、本発明にかかる抗体またはその抗体断片は、他の薬剤、例えば、ステロイド剤または免疫抑制剤とともに組み合わせて使用されてもよい。このように他の薬剤との併用によって、間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療効果を補完したり、本発明にかかる抗体またはその抗体断片の動態や吸収を改善したり、投与量を低減することができる。本発明にかかる抗体またはその抗体断片と他の薬剤を併用する場合、1つの製剤中に両成分を配合した配合剤の形態で投与してもよく、または両者を別々の製剤にして投与することもできる。両者を別々の製剤にして投与する場合には、同時投与および時間差による投与が含まれる。また、時間差による投与は、本発明にかかる抗体またはその抗体断片を先に投与し、他の薬剤を後に投与してもよいし、他の薬剤を先に投与し、本発明にかかる抗体またはその抗体断片を後に投与してもよく、それぞれの投与方法は同じでも異なっていてもよい。また、本発明にかかる抗体またはその抗体断片と他の薬剤を別々の製剤として併用する場合、本発明にかかる抗体またはその抗体断片を含む製剤と他の薬剤を含む製剤のキットとして提供することもできる。ここで、他の薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明にかかる抗体またはその抗体断片と他の薬剤の配合比は、投与対象の年齢および体重、投与方法、投与時間、対象疾患、症状、組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば、本発明にかかる抗体またはその抗体断片1質量部に対し、他の薬剤を0.01乃至100質量部用いればよい。他の薬剤は任意の2種以上を適宜の割合で組み合わせて投与してもよい。また、前記他の薬剤には、現在までに見出されているものだけでなく今後見出されるものも含まれる。
【0030】
他の薬剤としてのステロイド剤のうち、外用薬としては、例えば、プロピオン酸クロベタゾール、酢酸ジフロラゾン、フルオシノニド、フランカルボン酸モメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、ジフルプレドナート、プデソニド、吉草酸ジフルコルトロン、アムシノニド、ハルシノニド、デキサメタゾン、プロピオン酸デキサメタゾン、吉草酸デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、プロピオン酸デプロドン、吉草酸酢酸プレドニゾロン、フルオシノロンアセトニド、プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ピバル酸フルメタゾン、プロピオン酸アルクロメタゾン、酪酸クロベタゾン、プレドニゾロン、プロピオン酸ペクロメタゾン、フルドロキシコルチド等が挙げられ、内服薬または注射剤としては、例えば、酢酸コルチゾン、ヒドロコルチゾン、リン酸ヒドロコルチゾンナトリウム、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、酢酸フルドロコルチゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、コハク酸プレドニゾロンナトリウム、ブチル酢酸プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、酢酸ハロプレドン、メチルプレドニゾロン、酢酸メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、トリアムシノロン、酢酸トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、パルミチン酸デキサメタゾン、酢酸パラメタゾン、ベタメタゾン等が挙げられ、吸入剤としては、例えば、プロピオン酸ベクロメタゾン、プロピオン酸フルチカゾン、ブデソニド、フルニソリド、トリアムシノロン、ST−126P、シクレソニド、デキサメタゾンパロミチオネート、モメタゾンフランカルボネート、プラステロンスルホネート、デフラザコート、メチルプレドニゾロンスレプタネート、メチルプレドニゾロンナトリウムスクシネート等が挙げられる。
【0031】
他の薬剤としての免疫抑制剤としては、例えば、シクロスポリン、タクロリムス、FTY720等が挙げられる。
【0032】
さらに、本発明にかかる抗体またはその抗体断片は、特発性肺線維症治療薬であるピルフェニドンとともに使用することもできる。
【実施例】
【0033】
以下、実施例によって本発明を詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
実施例1:カクテル抗体の血中オートタキシン活性に対する影響
抗オートタキシン・モノクローナル抗体5E5、S13A9、S9A9の3クローンを等量ずつ混和し(以下、カクテル抗体という。)、20mg/kgの用量で、C57BL/6Jマウス(6〜8週齢雄,日本SLC)に腹腔内投与した。各抗オートタキシン・モノクローナル抗体は、Journal of Biological Chemistry, Vol.281, No.35, p.25822-30(2006)に記載されている方法で単離されたハイブリドーマから調製した。カクテル抗体の投与後、経時的に眼底より採血を行い、血漿を調製し、血漿中のオートタキシン活性(ATX活性)を定量した(図1)。なお、血漿中オートタキシン(lysoPLD)活性は、The Journal of Cell Biology, Vol.158, No.2, p.227-233(2002)に記載の方法に従って測定した。なお、比較対照として、ラットIgG抗体(以下、コントロール抗体と表記することもある)を用いた。
【0035】
[結果]
カクテル抗体の投与により、コントロール抗体と比較して血漿中オートタキシン活性はほぼ完全に抑制され、その抑制効果は48時間後まで持続した(図1)。
【0036】
実施例2:間質性肺炎患者の血中オートタキシン量の解析
突発性間質性肺炎患者および健常人から採取された血液を用いて、血漿中オートタキシン活性をELISAで定量した(図2)。ELISAの方法は、Clinica Chimica Acta, Vol.388, p.51-58(2008)に記載された方法に従った。
【0037】
[結果]
突発性間質性肺炎患者では、健常人の男女それぞれと比較して血漿中オートタキシン活性が約1.4〜1.6倍に上昇していた(図2)。
【0038】
実施例3:カクテル抗体の肺線維化への効果
40μgブレオマイシン/100μL(生理食塩水)をC57BL/6Jマウス(6〜8週例雄,日本SLC)に経気管投与した。カクテル抗体を、20mg/kg/日の用量でブレオマイシン投与当日から連日、同マウスに腹腔内投与し、28日目に肺を摘出した。摘出した肺を10%パラホルムアルデヒドで固定し、組織切片を作製し、ヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)を行った(図3)。HE染色像に対して、Journal of Clinical Pathology, Vol.41, p.467-470(1988)の基準に従い、その線維化の進行の程度をクリニカルスコアとして評価した(図4)。
【0039】
なお、ブレオマイシン投与後3、7、14および28日目に肺胞洗浄液を採取し、肺胞洗浄液中の総細胞数と、塗抹標本上のマクロファージ、好中球およびリンパ球数を計測した(図5)。また、ブレオマイシン投与後3、7、14および28日目に肺胞洗浄液を採取し、そのタンパク質濃度をBCA法により定量した(図6)。
【0040】
[結果]
ブレオマイシン惹起されたマウスにカクテル抗体を28日間投与した群では、コントロール抗体投与群と比較して肺線維化の進行程度が抑制された(図3および4)。また、カクテル抗体を7、14および28日間投与した群では、肺胞洗浄液中の細胞浸潤が抑制された(図5)。カクテル抗体を3、7、14および28日間投与した群では、肺胞内タンパク質漏出が抑制された(図6)。
【0041】
以上の結果から、抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片は、間質性肺炎や肺線維症の予防および/または治療に有効であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明にかかる抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片は、間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片を含む、間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療剤。
【請求項2】
抗オートタキシン・モノクローナル抗体が、ヒト化抗体または完全ヒト型抗体である請求項1記載の剤。
【請求項3】
健常人に比べ血中オートタキシン活性が有意に高い間質性肺炎患者また肺線維症患者を治療するための請求項1または2記載の剤。
【請求項4】
抗オートタキシン・モノクローナル抗体またはその抗体断片と、ステロイドおよび/または免疫抑制剤を組み合わせてなる、間質性肺炎および/または肺線維症の予防および/または治療のための医薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−265213(P2010−265213A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117717(P2009−117717)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 掲載年月日 平成21年3月27日 掲載アドレス http://www.nibio.go.jp/ http://www.nibio.go.jp/cgi−bin/new/view.cgi?no=531 http://www.nibio.go.jp/shinko/kisoken/kiso21.html
【出願人】(000185983)小野薬品工業株式会社 (180)
【Fターム(参考)】