説明

抗クラステリン抗体及び抗原結合フラグメント並びに腫瘍容積を低減するためのそれらの使用

クラステリンと特異的に結合する新規抗体及び抗原結合フラグメントを記載する。いくつかの実施形態において、本抗体は、クラステリンの生物学的活性をブロックし、ある種のがん、さらに詳細には、子宮内膜がん、乳がん、肝細胞がん、前立腺がん、腎細胞がん、卵巣がん、膵臓がん腫、及び結腸直腸がんなどのがんにおいて、組成物で有用である。本発明は更に、ヒト化又はハイブリッド抗体を発現する細胞にも関する。さらに、本抗体及びフラグメントを用いてがんを検出し、治療する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗クラステリン抗体及び腫瘍容積を低減するためのそれらの使用に関する。本発明は、さらに詳細には、クラステリンと結合するヒト化抗体、ハイブリッド抗体及び抗原結合フラグメント、並びに腫瘍容積を低減するため、腫瘍成長及び転移を阻害するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
最も一般的なヒト悪性腫瘍であるがん腫は、上皮細胞から生じる。上皮がんの進行は、細胞と細胞との接触の中断並びに遊走性(間葉様)表現型の獲得から始まる。上皮間葉移行(EMT)と呼ばれるこの現象は、後期腫瘍進行及び転移における重要な事象であると考えられる。
【0003】
分泌されたタンパク質TGF−βは、最初は主に、上皮起源の腫瘍細胞に対するその成長阻害作用により腫瘍成長を抑制し、その後、後期では、腫瘍細胞進行及び転移を促進する。TGF−βが腫瘍進行を促進できる1つの機構は、EMTの誘導による。
【0004】
TGF−βが発がんにおいて果たす二重の役割のために、TGF−βの直接的阻害剤は、後期腫瘍に有益であり得る一方、前新生物病巣も促進し得るので、危険である可能性がある。さらに良好な治療薬は、TGF−βの腫瘍抑制剤成長阻害作用は影響を受けないまま残しつつ、TGF−βの発がん促進性EMT促進作用を阻害するものであり得る。そのような阻害剤を開発するためには、経路の1つの分岐におけるメディエータがEMT応答に関与するが、TGF−βに対する成長阻害応答には関与しないような、TGF−βシグナル伝達経路の分岐点がある地点を特定することが必要であろう。TGF−βシグナル伝達経路のEMT促進分岐にのみにあるメディエータを阻害する治療法は、前がん病変部の加速に対してはほとんど又は全く影響を及ぼさず、転移を減少させるであろう。
【0005】
TGF−βEMT促進作用を促進又は媒介するが、TGF−βの成長阻害作用には関与しないTGF−βシグナル経路特異的成分は、一般的には特定されていない。
【0006】
対照的に、腫瘍抑制作用(成長阻害)は損なわれないまま、TGF−βの腫瘍形成促進性EMT作用に干渉(促進に対立するものとして)することができる内因性タンパク質(YY1核因子)は特定されている(Kurisaki et al., 2004)。
【0007】
TGF−βリガンド、受容体及びSmadシグナル伝達タンパク質を標的とする阻害剤は公知である。具体的には、可溶性受容体外部ドメイン、抗体及び他の結合タンパク質は、TGF−βリガンドと相互作用し、それらを細胞表面受容体から隔離することによって、アンタゴニストとして作用することができる。I型TGF−β受容体のキナーゼ活性を阻害する小分子が利用可能であり、Smadシグナル伝達タンパク質の内因性阻害剤も知られている。これらのシグナル伝達経路成分はすべて、TGF−βの発がん促進作用及び抗発がん作用の両方に関与するので、それらを標的とするこれらの阻害剤は、後期腫瘍に有効であり得るが、前がん病変部を促進する可能性もある。
2006年9月13日に出願され、2007年3月22日に国際公開第2007/030930号で公開された国際特許出願第PCT/CA2006/001505号は、クラステリンの特異的エピトープに対するものであり、がん細胞の上皮間葉移行を阻害することができる抗クラステリン抗体及び抗原結合フラグメントを記載している。この特許出願は、さらに詳細には、前立腺がん及び乳がんでのEMTの阻害における抗クラステリン抗体の能力を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2007/030930号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、その一態様では、クラステリンに対して特異的に結合することができ、ヒト化軽鎖可変領域及び/又はヒト化重鎖可変領域を含む抗体に関する。
【0010】
さらに詳細には、本発明は、クラステリンと特異的に結合できる非ヒト親抗体のヒト化抗体並びにそのハイブリッド抗体及び抗原結合フラグメントを提供する。
【0011】
本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、非ヒト相補性決定領域アミノ酸残基及び天然ヒト抗体のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基を含み得る軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む。
【0012】
本発明はまた、軽鎖可変領域及び重鎖可変領域を含む抗原結合フラグメントに関し、これは非ヒト相補性決定領域アミノ酸残基及びヒトフレームワーク領域アミノ酸残基を含み得る。
【0013】
本発明の抗体及び抗原結合フラグメントを用いて、クラステリンにより誘導される上皮間葉移行を阻害することができる。
【0014】
別の態様では、本発明は、腫瘍容積を低減する際に使用される抗クラステリン抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単離されたヒト抗体、ハイブリッド抗体又はそのフラグメント)及びそれを行うための方法に関する。
【0015】
ヒト化抗体の軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域をコード化する単離された核酸、本明細書中に記載するハイブリッド抗体若しくは抗原結合フラグメント又は本明細書中に記載される単離された抗体も、本発明に含まれる。
【0016】
本明細書中に記載される核酸を含むベクター又は構築物も含まれる。本発明によれば、ベクターは、例えば制限されることなく、ほ乳類発現ベクター、細菌発現ベクターなどであり得る。
【0017】
本発明は更に、本発明の抗体若しくは抗原結合フラグメントを含むか又は発現するか、或いは本発明の核酸又はベクターを含む細胞にも関する。
【0018】
さらなる態様では、本発明は、例えば、本明細書中に記載するヒト化抗体、本明細書中に記載するハイブリッド抗体、本明細書中に記載する抗原結合フラグメント、本明細書中に記載する単離された抗体、本明細書中に記載する単離された核酸又は本明細書中に記載するベクターを含み得るバイアル(複数可)を含むキットを提供する。
【0019】
別の態様では、本発明は、例えば、本明細書中に記載するヒト化抗体、本明細書中に記載するハイブリッド抗体、本明細書中に記載する抗原結合フラグメント又は本明細書中に記載する単離された抗体及び薬剤的に許容される担体を含み得る医薬組成物に関する。
【0020】
本発明のさらに別の態様は、本明細書中に記載する医薬組成物及び化学療法剤を含む併用療法に関する。
【0021】
ヒト化若しくはハイブリッド抗クラステリン抗体又は抗原結合フラグメントを産生する方法並びにヒト化若しくはハイブリッド抗クラステリン抗体又は抗原結合フラグメントを用いてクラステリン発現又は分泌に関連する疾患を治療する方法も含まれる。
【0022】
本発明のさらなる範囲、適用性及び利点は、以下に記載する非限定的な詳細な説明から明らかになるであろう。しかし、この詳細な説明は、本発明の例示的実施形態を示すが、添付の図面を参照して、例としてのみ記載されると理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】マウス16B5抗クラステリン抗体の可変領域の相同性3Dモデル。CDRに名称が付されている(軽鎖ではL1、L2、L3、そして重鎖ではH1、H2、H3)。ヒトフレームワーク残基で置換されたマウスフレームワーク残基を球体モデルとして表示する。
【図2】マウス16B5、ヒト化16B5及び選択されたヒトフレームワークの配列アラインメント(NCBIデータベースリンクを記載)。Kabat付番を最上部に示す。CDRを強調する。復帰突然変異の候補残基を、CDRに対する近接性(5:5オングストローム以内)、表面露出(B:埋没)、及び対形成する可変ドメインとの接触にしたがって配列アラインメントの下で反転表示する。
【図3】16B5ネズミ及びヒト化抗クラステリン抗体の動態分析。
【図4】h16B5はがん細胞系の遊走をブロックする。h16B5は、マウス乳がん細胞に対するスクラッチアッセイでマウス16B6と少なくとも同程度に活性である。この図面は、種々の構造の抗体がインビトロで細胞の遊走をブロックする能力を示す。
【図5】h16B5の阻害はヒト前立腺がん細胞の浸潤性を低下させる。12ウェルプレートの底部を200μLのGrowth factor reduced matrigel(ベクトン・ジキンソン)で覆った。細胞(2.5×10)を、200μLのマトリゲル中に再懸濁させ、それをこの上に重ね、最終的に500μLの細胞特異的成長培地をマトリゲルの上部に添加した。h16B5をマトリゲルの各層並びに培地に8μg/mLの濃度で添加した。プレートを37℃で3週間までインキュベートし、この間に成長培地(+/−h16B5)を毎週補充した。矢印は上皮様細胞の部分を示す。
【図6】h16B5での前立腺がん腫瘍の治療は、腫瘍の成長を低減し、化学療法に対する応答を増大させる。DU145前立腺がん細胞(2×10)をSCIDマウスに皮下移植し、腫瘍サイズが約100mmになるまで、成長させた。デジタルノギスを用いて腫瘍を隔週で測定し、腫瘍容積をL×W×Hとして算出した。各群には、治療を開始する前に無作為化した8匹の動物が含まれた。結果をmm±標準誤差として表した。スチューデントT試験を用いてP値を算出した。
【図7】マウス21B12抗クラステリン抗体の可変領域の相同性3Dモデル。CDRに名称が付されている(軽鎖ではL1、L2、L3、そして重鎖ではH1、H2、H3)。ヒトフレームワーク残基で置換されたマウスフレームワーク残基を球体モデルとして表示する。
【図8】マウス16B5、ヒト化21B12及び選択されたヒトフレームワークの配列アラインメント(NCBIデータベースリンクを提供)。Kabat付番を上部に示す。CDRを強調する。復帰突然変異の候補残基を、CDRに対する近接性(5:5オングストローム以内)、表面露出(B:埋没)、及び対形成する可変ドメインとの接触にしたがって配列アラインメントの下で反転表示する。
【図9】21B12ネズミ及びヒト化抗クラステリン抗体の動態分析。
【図10】h16B5はPC−3前立腺腫瘍の成長を阻害する。PC−3前立腺がん細胞(2×10)をSCIDマウスに皮下移植し、腫瘍サイズが約100mmになるまで、成長させた。デジタルノギスを用いて腫瘍を隔週で測定し、腫瘍容積をL×W×Hとして算出した。各群には、治療を開始する前に無作為化された8匹の動物が含まれた。結果をmm±標準誤差として表した。
【図11】クラステリンはヒト膵臓腫瘍において発現される。膵臓がん細胞系由来の腫瘍(図に示すとおり)をSCIDマウスにおいて成長させ、収集し、ホルマリン中で固定し、切片にし、そしてh16B5を用いた免疫組織化学を使用して試験した。HRP結合二次抗体を使用する標準的方法により陽性染色を可視化した。アイソタイプ対照抗体を用いて同じ条件下で負の対照を実施した。
【図12】H16B5は膵臓がん細胞系の遊走を阻害する。PANC−1細胞を、マトリゲルバリヤを含む24ウェルTranswellプレートの上側チャンバー中の無血清培地中に播種した。下側ウェルを、化学誘引物質として10%のFBSを含む培地で満たした。TGFβ及び/又はh16B5(図に示すとおり)の存在下又は非存在下で24時間インキュベーションした後、マトリゲル層中の細胞の数を染色し、計数した。
【図13】分泌されたクラステリンは、がん細胞において内在化される。組換えヒトクラステリンを293−6E細胞において発現させ、精製し、そして市販のラベリングキット(インビトロゲン)を用いてAlexa Fluor 488で標識した。BRI−JM01マウス乳がん細胞をカバーガラス上に播種し、250ng/mlの標識された分泌クラステリンで処理した。表示された時間で、細胞を氷冷PBSで洗浄し、2%のパラホルムアルデヒド中で固定した。スライドにAntifade Goldをマウントし、蛍光顕微鏡で画像を作成した。
【図14】H16B5は、がん細胞における分泌されたクラステリンの内在化を阻害する。図13について記載するようにして実験を実施した。H16B5を10μg/mlで添加した。
【図15】ヒトクラステリン(NP_001822)とネズミクラステリン(NP_038520)との間の相同性の領域を示す。
【図16】4T1マウス乳房腫瘍から生成させた固定凍結切片において発現させたh16B5(この図中ではAB−16B5として表示)のネズミクラステリンに対する結合を示す。免疫組織化学を用いて実験を実施し、HRP結合二次抗体を用いて検出を行った。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、その一態様では、クラステリンに特異的に結合することができ、ヒト化軽鎖可変領域及び/又はヒト化重鎖可変領域を含む抗体に関する。
【0025】
ヒトクラステリンの配列は、RefSeq受入番号;NM_001831.2(タンパク質id.=NP_001822)で見いだすことができ、一方、ネズミクラステリンの配列は、RefSeq受入番号;NM_013492.2(タンパク質id.=NP_038520)で見いだすことができる。
【0026】
本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、クラステリンのネズミ及び/又はヒト形に結合することができる。本発明の抗体又は抗原結合フラグメントはまた、ヒト又はネズミクラステリンと、例えば少なくとも75%(例えば、80%、85%、90%、95%、99%)のアミノ酸同一性を有するクラステリンの天然に存在する変異体並びに合成変異体と結合することもできる。
【0027】
本発明はしたがって、クラステリンと特異的に結合できる非ヒト親抗体のヒト化抗体又はその抗原結合フラグメント並びにハイブリッド抗体及びその抗原結合フラグメントを提供する。
【0028】
本発明の実施形態によれば、ヒト化又はハイブリッド抗体は、クラステリンを発現又は分泌する腫瘍細胞の成長を阻害(低減)することができる。
【0029】
本発明のさらなる実施形態によれば、ヒト化又はハイブリッド抗体は、クラステリンを発現又は分泌する細胞を含む腫瘍の容積を低減することができる。
【0030】
本発明の別の実施形態によれば、ヒト化又はハイブリッド抗体は、クラステリンを発現若しくは分泌する腫瘍細胞の遊走又は浸潤を阻害(低減)することができる。
【0031】
したがって、本発明のさらに別の実施形態によれば、ヒト化又はハイブリッド抗体は、クラステリンを発現又は分泌する腫瘍細胞から起こる転移を阻害(低減)することができる。
【0032】
別の態様では、本発明は、クラステリン発現細胞を含む腫瘍の容積を低減するための方法であって、必要とするほ乳類に、抗クラステリン抗体(ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単離されたヒト抗体、ハイブリッド抗体又はそのフラグメント)を投与することを含み得る方法に関する。当該方法は、さらに詳細には、キメラ、ヒト化又はハイブリッド抗体を投与することを想定する。
【0033】
一実施形態では、ハイブリッド抗体又はそのフラグメントは、例えば、非ヒト抗体の軽鎖可変領域及びヒト化抗体の重鎖可変領域を含み得る。
【0034】
別の実施形態では、ハイブリッド抗体又はそのフラグメントは、例えば、非ヒト抗体の軽鎖可変領域及びヒト化抗体の重鎖可変領域を含み得る。
【0035】
「抗体」という用語は、無傷抗体、モノクローナル、(完全若しくは部分)ヒト化、ハイブリッド、キメラ又はポリクローナル抗体並びに単離されたヒト抗体を指す。「抗体」という用語はまた、二重特異的抗体などの多特異的抗体も含み得る。ヒト抗体は、通常、それぞれが可変領域及び定常領域を含む2つの軽鎖及び2つの重鎖から構成される。軽鎖可変領域は、フレームワーク領域に並んで配置されているCDRL1、CDRL2及びCDRL3として本明細書中では特定される3つのCDRを含む。重鎖可変領域は、フレームワーク領域に並んで配置されているCDRH1、CDRH2及びCDRH3として本明細書中では特定される3つのCDRを含む。
【0036】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒトCDRアミノ酸残基並びにヒト抗体レパートリー由来であるその重鎖及び/又は軽鎖フレームワーク領域のかなりの部分を含む1〜6個のCDRを含む抗体を指す。いくつかの例では、ヒト化抗体の重鎖及び/又は軽鎖フレームワーク領域の全体が、ヒト抗体レパートリー(天然ヒト抗体)によりコード化される(コード化可能な)抗体と同一であり得る。他の例では、ヒト化抗体の重鎖及び/又は軽鎖フレームワーク領域は、ヒト化されようとする非ヒト抗体由来の1〜30個のアミノ酸を含み得、残りの部分は天然ヒト抗体由来である。さらなる例では、ヒト化抗体は、1〜6個の完全非ヒトCDRを含み得、多くの場合、6個のCDRは完全に非ヒトである。さらに別の例では、「ヒト化抗体」は、ヒト又は他の起源(ほ乳類由来)の定常領域を含み得る。
【0037】
「ハイブリッド抗体」という用語は、ヒト化されているか又は天然ヒト抗体(クラステリンについて親和性を有する)由来のその重鎖若しくは軽鎖可変領域(その重鎖若しくは軽鎖)のうちの1つを含む抗体を指し、重鎖若しくは軽鎖可変領域(重鎖若しくは軽鎖)の残りは非ヒトのままである。
【0038】
「キメラ抗体」という用語は、非ヒト可変領域(複数可)及びヒト定常領域を有する抗体を指す。
【0039】
「天然ヒト抗体」という用語は、ヒト抗体レパートリー、すなわち生殖細胞系配列によってコード化される(コード化可能な)抗体を指す。
【0040】
本明細書中で用いられる場合、単離されたヒト抗体は、この抗体が、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスを免疫化することによるか、又はヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリをスクリーニングすることにより、ヒト免疫グロブリン配列を有する系から得られる場合、特定の生殖細胞系配列から「誘導」される。ヒト生殖細胞系免疫グロブリン配列から「誘導」される単離されたヒト抗体は、ヒト抗体のアミノ酸配列をヒト生殖細胞系免疫グロブリンのアミノ酸配列と比較することにより、そのようなものとして同定することができる。選択されたヒト抗体は、典型的には、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によりコード化されるアミノ酸配列に対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であり、他の種の生殖細胞系免疫グロブリンアミノ酸配列(例えば、ネズミ生殖細胞系配列)と比較した場合に、そのヒト抗体をヒトであるとして特定するアミノ酸残基を含む。ある場合では、ヒト抗体は、生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコード化されるアミノ酸配列に対してアミノ酸において少なくとも95%、又はさらには少なくとも96%、97%、98%、又は99%同一であり得る。典型的には、特定のヒト生殖細胞系配列から誘導されるヒト抗体は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコード化されるアミノ酸配列と10より多くのアミノ酸相違を示すことはない。ある場合では、ヒト抗体は、生殖細胞系免疫グロブリン遺伝子によってコード化されるアミノ酸配列と5、又はさらには4、3、2、若しくは1より多くのアミノ酸相違を示すことはない。
【0041】
「抗原結合フラグメント」という用語は、本明細書中で用いられる場合、抗原と結合する能力を保持する抗体の1以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、無傷抗体のフラグメントによって発揮され得ることが示されている。抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に含まれる結合フラグメントの例としては、(i)V、V、C及びCH1ドメインから構成される一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって結合した2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)フラグメント;(iii)V及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのV及びVドメインからなるFvフラグメント、並びに(v)Vドメインから構成されるdAbフラグメント(Ward et al.,(1989) Nature 341:544-546)が挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインであるV及びVは、別々の遺伝子によってコードされるが、組換え法を用い、V及びV領域が対合して一価分子(単鎖Fv(scFv)として知られる;例えば、Bird et al.(1988) Science 242:423-426;及びHuston et al.(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883を参照)を形成する、ポリペプチド一本鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって、これらを結合させることができる。そのような一本鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合フラグメント」という用語に含まれることが意図される。さらに、抗原結合フラグメントは、(i)免疫グロブリンヒンジ領域ポリペプチドと融合した結合ドメインポリペプチド(例えば、重鎖可変領域、軽鎖可変領域、又はリンカーペプチドにより軽鎖可変領域に融合した重鎖可変領域)、(ii)ヒンジ領域と融合した免疫グロブリン重鎖CH2定常領域、及び(iii)CH2定常領域と融合した免疫グロブリン重鎖CH3定常領域を含む結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質を含む。ヒンジ領域は、二量化を防止するように、1以上のシステイン残基をセリン残基と置換することにより修飾することができる。そのような結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、米国特許第2003/0118592号及び米国特許第2003/0133939号でさらに開示されている。これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の通常の技術を用いて得られ、当該フラグメントは、無傷抗体と同じ方法で有用性についてスクリーニングされる。
【0042】
典型的な抗原結合部位は、軽鎖免疫グロブリン及び重鎖免疫グロブリンの対合によって形成される可変領域から構成される。抗体可変領域の構造は、非常に一貫し、非常に類似した構造を示す。これらの可変領域は、典型的には、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる3個の超可変領域を間に挟んだ比較的相同性のフレームワーク領域(FR)から構成される。抗原結合フラグメントの全体的な結合活性は、多くの場合、CDRの配列によって決定される。しかしながら、FRは、多くの場合、最適の抗原結合のためのCDRの適切な位置決め及び三次元のアラインメントに関与する。
【0043】
本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、非ヒト相補性決定領域アミノ酸残基及び天然ヒト抗体のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基を含み得る重鎖可変領域並びに相補性軽鎖を含み得る。
【0044】
本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、非ヒト相補性決定領域アミノ酸残基及び天然ヒト抗体のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基並びに相補性重鎖を含み得る軽鎖可変領域を含み得る。
【0045】
本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、転移、腫瘍細胞遊走若しくは浸潤を阻害し得るか、又は、例えばがん細胞をはじめとするクラステリン発現細胞の成長を阻害し得る。実際に、本出願者は、本発明のヒト化又はハイブリッド抗体をはじめとする抗クラステリン抗体がインビボで腫瘍容積を減少させるという予想外の発見にたどり着いた。或いは、本発明のヒト化又はハイブリッド抗体を用いてクラステリン発現細胞を検出することができる。
【0046】
非ヒト親抗体のヒト化のために選択される天然ヒト抗体は、非ヒト親抗体の(モデル化された)可変領域に類似した(重ねあわせることができる)三次元構造を有する可変領域を含み得る。したがって、ヒト化又はハイブリッド抗体は、非ヒト親抗体と類似した三次元構造を有する可能性がより高い。
【0047】
本発明のヒト化抗体は、クラステリンに対して高い親和性を有する。実際に、ヒト化抗体は、組換えモノマークラステリンと4.49×10−9M±8.5×10−10又はそれより良好な親和性で結合することが本明細書で示されている。
【0048】
本発明によれば、ヒト化又はハイブリッド抗体軽鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基は天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域由来である。ヒト化目的で選択される天然ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域は、例えば、非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%の同一性を有する。好ましくは、ヒト化目的のために選択される天然ヒト抗体は、非ヒト親抗体の軽鎖相補性決定領域とその軽鎖相補性決定領域において同じか又は実質的に同じ数のアミノ酸を有し得る。
【0049】
本発明の他の実施形態では、ヒト化又はハイブリッド抗体軽鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基は、非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも75、80、83%(又はそれ以上)の同一性を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域由来である。
【0050】
また本発明によれば、ヒト化又はハイブリッド抗体重鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基は、非ヒト親抗体の重鎖フレームワーク領域と少なくとも70%の同一性を有する天然ヒト抗体重鎖フレームワーク領域由来である。好ましくは、ヒト化目的のために選択される天然ヒト抗体は、非ヒト親抗体の重鎖相補性決定領域とその重鎖相補性決定領域において同じか又は実質的に同じ数のアミノ酸を有し得る。
【0051】
本発明の他の実施形態では、ヒト化又はハイブリッド抗体重鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基は、非ヒト親抗体の重鎖フレームワーク領域と少なくとも73、75、80%の同一性を有する天然ヒト抗体重鎖フレームワーク領域由来である。
【0052】
本発明の実施形態では、ヒト化又はハイブリッド抗体の重鎖可変領域は、したがって少なくとも1つの非ヒト相補性決定領域を含み得る。
【0053】
或いは、本発明の他の実施形態では、ヒト化又はハイブリッド抗体の重鎖可変領域は、少なくとも2つの非ヒト相補性決定領域又はさらには3つの非ヒト相補性決定領域を含み得る。
【0054】
本発明のさらなる実施形態では、軽鎖可変領域は少なくとも1つの非ヒト相補性決定領域を含み得る。
【0055】
或いは、本発明のさらなる実施形態では、軽鎖可変領域は、少なくとも2つの非ヒト相補性決定領域又はさらには3つの非ヒト相補性決定領域を含む。
【0056】
ヒト化抗体はしたがって、非ヒト抗体の6つのCDR全てを含み得る。二価ヒト化抗体の場合、12のCDRは全て非ヒト抗体由来であり得る。
【0057】
ヒト化又はハイブリッド抗体により検出され得るクラステリン発現細胞は、がん細胞を含む。ヒト化又はハイブリッド抗体を用いて、クラステリン発現がん細胞、特にヒトがん細胞の成長を阻害することもできる。
【0058】
数種のヒトがん細胞、なかでも子宮内膜がん、乳がん、肝細胞がん、前立腺がん、腎細胞がん、卵巣がん、結腸直腸がん、膵臓がん腫などの細胞は、クラステリンを発現又は分泌することが示されている。
【0059】
本発明の実施形態の一例には、例えば、本明細書中で記載される天然ヒト抗体重鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3からなる群から選択される重鎖CDR並びにそれらの組み合わせ又は配列番号11のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号13のアミノ酸配列を有するCDRH3からなる群から選択される重鎖CDR並びにそれらの組み合わせとを含むヒト化若しくはハイブリッド抗体が含まれる。
【0060】
別の例示的実施形態では、ヒト化又はハイブリッド抗体は、本明細書中で記載される天然ヒト抗体重鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3からなる群から選択される少なくとも2つの重鎖CDR又は配列番号11のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号13のアミノ酸配列を有するCDRH3からなる群から選択される少なくとも2つの重鎖CDR並びにそれらの組み合わせとを含み得る。
【0061】
或いは、別の例示的実施形態では、本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、本明細書中で記載される天然ヒト抗体重鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3又は配列番号11のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号13のアミノ酸配列を有するCDRH3とを含み得る。
【0062】
本発明のさらに具体的な実施形態では、ヒト化又はハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号26(h16B5VLコンセンサス1)を含む軽鎖可変領域を含み得る:
【化1】

ここで、Xにより特定される少なくとも1つのアミノ酸は、配列番号25で記載されるポリペプチド中の対応するアミノ酸(ネズミ16B5VL)と比較すると1つのアミノ酸置換である。このアミノ酸置換は、例えば、保存的であり得るか、又は非保存的であり得る。本発明によれば、アミノ酸置換は保存的であり得る。
【0063】
ヒト化若しくはハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号27を含む軽鎖可変領域(16B5VLコンセンサス2)を含み得る:
【化2】

ここで、Xa1は、T又はSなどの中性親水性アミノ酸であり得;
ここで、Xa2は、例えばD又はSであり得;
ここで、Xa3は、L又はAなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xa4は、R又はKなどの塩基性アミノ酸であり得;
ここで、Xa5は、A又はVなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xa6は、I又はMなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xa7は、例えばN又はSであり得;
ここで、Xa8は、例えばP又はSであり得;
ここで、Xa9は、S又はTなどの中性親水性アミノ酸であり得;
ここで、Xa10は、L又はVなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xa11は、V又はLなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xa12は、例えばQ又はGであり得;
ここで、Xa13は、例えばI又はFであり得、そして;
ここで、軽鎖可変領域は、配列番号25と比べて、前記アミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0064】
ヒト化若しくはハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号28を含む軽鎖可変領域(16B5VLコンセンサス3)を含み得る:
【化3】

ここで、Xa1は、例えばT又はSであり得;
ここで、Xa2は、D又はSであり得;
ここで、Xa3は、例えばL又はAであり得;
ここで、Xa4は、例えばR又はKであり得;
ここで、Xa5は、例えばA又はVであり得;
ここで、Xa6は、例えばI又はMであり得;
ここで、Xa7は、例えばN又はSであり得;
ここで、Xa8は、例えばP又はSであり得;
ここで、Xa9は、例えばS又はTであり得;
ここで、Xa10は、例えばL又はVであり得;
ここで、Xa11は、例えばV又はLであり得;
ここで、Xa12は、例えばQ又はGであり得;
ここで、Xa13は、例えばI又はFであり得、そして;
ここで、軽鎖可変領域は、配列番号25と比較して前記アミノ酸置換のうちの少なくとも1つを含み得る。
【0065】
本発明の更に具体的な実施形態において、ヒト化又はハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号30を含む重鎖可変領域(16B5VHコンセンサス1)を含み得る;
【化4】

ここで、Xにより特定されるアミノ酸の少なくとも1つは、配列番号29で記載されるポリペプチド(ネズミ16B5VH)における対応するアミノ酸と比較すると1つのアミノ酸置換である。アミノ酸置換は、例えば保存的であっても、又は非保存的であってもよい。本発明によれば、アミノ酸置換は保存的であってよい。
【0066】
ヒト化若しくはハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号31を含む重鎖可変領域(16B5VHコンセンサス2)を含み得る:
【化5】

ここで、Xb1は、例えばQ又はEであり得;
ここで、Xb2は、例えばV又はQであり得;
ここで、Xb3は、V又はLなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xb4は、例えばK又はVであり得;
ここで、Xb5は、T又はSなどの中性親水性アミノ酸であり得;
ここで、Xb6は、K又はRなどの塩基性アミノ酸であり得;
ここで、Xb7は、I又はLなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xb8は、例えばK又はTであり得;
ここで、Xb9は、例えばV又はTであり得;
ここで、Xb10は、Q又はKなどの塩基性アミノ酸であり得;
ここで、Xb11は、例えばA又はRであり得;
ここで、Xb12は、例えばG又はEであり得;
ここで、Xb13は、K又はQなどの塩基性アミノ酸であり得;
ここで、Xb14は、M又はIなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xb15は、R又はKなどの塩基性アミノ酸であり得;
ここで、Xb16は、V又はAなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xb17は、T又はSなどの中性親水性アミノ酸であり得;
ここで、Xb18は、例えばD又はNであり得;
ここで、Xb19は、M又はLなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xb20は、例えばE又はQであり得;
ここで、Xb21は、例えばR又はTであり得;
ここで、Xb22は、例えばL又はSであり得、そして;
ここで、重鎖可変領域は、配列番号29と比較して少なくとも1つの前記アミノ酸置換を含み得る。
【0067】
ヒト化若しくはハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号32を含む重鎖可変領域を含み得る(16B5VHコンセンサス3):
【化6】

ここで、Xb1は、例えばQ又はEであり得;
ここで、Xb2は、例えばV又はQであり得;
ここで、Xb3は、例えばV又はLであり得;
ここで、Xb4は、例えばK又はVであり得;
ここで、Xb5は、例えばT又はSであり得;
ここで、Xb6は、例えばK又はRであり得;
ここで、Xb7は、例えばI又はLであり得;
ここで、Xb8は、例えばK又はTであり得;
ここで、Xb9は、例えばV又はTであり得;
ここで、Xb10は、例えばQ又はKであり得;
ここで、Xb11は、例えばA又はRであり得;
ここで、Xb12は、例えばG又はEであり得;
ここで、Xb13は、例えばK又はQであり得;
ここで、Xb14は、例えばM又はIであり得;
ここで、Xb15は、例えばR又はKであり得;
ここで、Xb16は、例えばV又はAであり得;
ここで、Xb17は、例えばT又はSであり得;
ここで、Xb18は、例えばD又はNであり得;
ここで、Xb19は、例えばM又はLであり得;
ここで、Xb20は、例えばE又はQであり得;
ここで、Xb21は、例えばR又はTであり得;
ここで、Xb22は、例えばL又はSであり得、そして;
ここで、重鎖可変領域は、配列番号29と比較して少なくとも1つの前記アミノ酸置換を含み得る。
【0068】
本発明のさらなる具体的な実施形態では、ヒト化若しくはハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号34を含む軽鎖可変領域(21B12VLコンセンサス1)を含み得る:
【化7】

ここで、Xにより特定されるアミノ酸の少なくとも1つは、配列番号33で記載されるポリペプチドにおける対応するアミノ酸(ネズミ21B12VL)と比較すると1つのアミノ酸置換である。アミノ酸置換は、例えば保存的であってもよいし、又は非保存的であってもよい。本発明によれば、アミノ酸置換は保存的であり得る。
【0069】
ヒト化若しくはハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号35を含む軽鎖可変領域(21B12VLコンセンサス2)を含み得る:
【化8】

ここで、Xc1は、T又はSなどの中性親水性アミノ酸であり得;
ここで、Xc2は、例えばD又はSであり得;
ここで、Xc3は、L又はVなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xc4は、R又はKなどの塩基性アミノ酸であり得;
ここで、Xc5は、A又はVなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xc6は、I又はMなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xc7は、例えばN又はSであり得;
ここで、Xc8は、K又はRなどの塩基性アミノ酸であり得;
ここで、Xc9は、例えばP又はSであり得;
ここで、Xc10は、S又はTなどの中性親水性アミノ酸であり得;
ここで、Xc11は、L又はVなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xc12は、例えばQ又はKなどの塩基性アミノ酸であり得;
ここで、Xc13は、V又はLなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xc14は、例えばQ又はGであり得、そして;
ここで、軽鎖可変領域は、配列番号33と比較して少なくとも1つの前記アミノ酸置換を含み得る。
【0070】
ヒト化若しくはハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号36を含む軽鎖可変領域(21B12VLコンセンサス3)を含み得る:
【化9】

ここで、Xc1は、T又はSであり得;
ここで、Xc2は、D又はSであり得;
ここで、Xc3は、L又はVであり得;
ここで、Xc4は、R又はKであり得;
ここで、Xc5は、例えばA又はVであり得;
ここで、Xc6は、例えばI又はMであり得;
ここで、Xc7は、例えばN又はSであり得;
ここで、Xc8は、例えばK又はRであり得;
ここで、Xc9は、例えばP又はSであり得;
ここで、Xc10は、例えばS又はTであり得;
ここで、Xc11は、例えばL又はVであり得;
ここで、Xc12は、例えばQ又はKであり得;
ここで、Xc13は、例えばV又はLであり得;
ここで、Xc14は、例えばQ又はGであり得、そして;
ここで、軽鎖可変領域は、配列番号33と比較して少なくとも1つの前記アミノ酸置換を含み得る。
【0071】
本発明のさらなる例示的な実施形態では、ヒト化若しくはハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号38を含む重鎖可変領域(21B12VHコンセンサス1)を含み得る:
【化10】

ここで、Xにより特定されるアミノ酸の少なくとも1つは、配列番号37で記載されるポリペプチドにおける対応するアミノ酸(ネズミ21B12VH)と比較すると1つのアミノ酸置換である。アミノ酸置換は、例えば保存的であってもよいし、又は非保存的であってもよい。本発明によれば、アミノ酸置換は保存的であり得る。
【0072】
ヒト化若しくはハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号39を含む重鎖可変領域(21B12VHコンセンサス2)を含み得る:
【化11】

ここで、Xd1は、V又はIなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xd2は、例えばS又はPであり得;
ここで、Xd3は、例えばA又はEであり得;
ここで、Xd4は、S又はTなどの中性親水性アミノ酸であり得;
ここで、Xd5は、V又はIなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xd6は、R又はKなどの塩基性アミノ酸であり得;
ここで、Xd7は、例えばQ又はKなどの塩基性アミノ酸であり得;
ここで、Xd8は、例えばE又はKであり得;
ここで、Xd9は、V又はAなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xd10は、D又はEなどの酸性アミノ酸であり得;
ここで、Xd11は、V又はAなどの疎水性アミノ酸であり得;
ここで、Xd12は、例えばS又はNであり得;
ここで、Xd13は、例えばS又はNであり得;
ここで、Xd14は、例えばA又はNであり得;
ここで、Xd15は、例えばV又はTであり得;
ここで、Xd16は、Y又はFなどの芳香族アミノ酸であり得;
ここで、Xd17は、例えばL又はTであり得;
ここで、Xd18は、V又はLなどの疎水性アミノ酸であり得、そして;
ここで、重鎖可変領域は、配列番号37と比較して少なくとも1つの前記アミノ酸置換を含み得る。
【0073】
ヒト化若しくはハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号40を含む重鎖可変領域(21B12VHコンセンサス3)を含み得る:
【化12】

ここで、Xd1は、例えばV又はIであり得;
ここで、Xd2は、例えばS又はPであり得;
ここで、Xd3は、例えばA又はEであり得;
ここで、Xd4は、例えばS又はTであり得;
ここで、Xd5は、例えばV又はIであり得;
ここで、Xd6は、例えばR又はKであり得;
ここで、Xd7は、例えばQ又はKであり得;
ここで、Xd8は、例えばE又はKであり得;
ここで、Xd9は、例えばV又はAであり得;
ここで、Xd10は、例えばD又はEであり得;
ここで、Xd11は、例えばV又はAであり得;
ここで、Xd12は、例えばS又はNであり得;
ここで、Xd13は、例えばS又はNであり得;
ここで、Xd14は、例えばA又はNであり得;
ここで、Xd15は、例えばV又はTであり得;
ここで、Xd16は、例えばV又はFであり得;
ここで、Xd17は、例えばL又はTであり得;
ここで、Xd18は、例えばV又はLであり得、そして;
ここで、重鎖可変領域は、配列番号37と比較して少なくとも1つの前記アミノ酸置換を含み得る。
【0074】
更に具体的な実施形態では、ヒト化又はハイブリッド抗体は、配列番号7又は配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み得る。
【0075】
さらに、本発明のより具体的な実施形態は、配列番号9又は配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖を含み得るヒト化又はハイブリッド抗体を含む。
【0076】
本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、本明細書中で明記される重鎖又は重鎖可変領域及び相補性軽鎖又は軽鎖可変領域を有し得る。
【0077】
一方では、本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、本明細書中で明記される軽鎖又は軽鎖可変領域及び相補性重鎖又は重鎖可変領域を有し得る。
【0078】
本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、したがって、本明細書中で記載される天然ヒト抗体軽鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3からなる群から選択される軽鎖CDR又は配列番号14のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDRL3からなる群から選択される重鎖CDR並びにそれらの組み合わせとを含み得る。
【0079】
さらなる実施形態では、ヒト化又はハイブリッド抗体は、本明細書中で記載される天然ヒト抗体軽鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3からなる群から選択される少なくとも2つの軽鎖CDR又は配列番号14のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDRL3からなる群から選択される少なくとも2つの重鎖CDR並びにそれらの組み合わせとを含み得る。
【0080】
さらなる実施形態では、ヒト化又はハイブリッド抗体は、本明細書中で記載される天然ヒト抗体軽鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基並びに配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3又は配列番号14のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDRL3及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0081】
さらに詳細な実施形態では、ヒト化又はハイブリッド抗体は、配列番号8又は配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み得る。
【0082】
なお一層詳細な実施形態では、本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、配列番号10又は配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖を含み得る。
【0083】
本発明の他の具体的な実施形態は、配列番号7又は配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖可変領域及び配列番号8又は配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を有するヒト化抗体を含む。
【0084】
本発明のさらなる具体的な実施形態は、配列番号9のアミノ酸配列を有する重鎖及び配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖を有するヒト化抗体を含む。
【0085】
さらに、本発明のさらなる具体的な実施形態は、配列番号19のアミノ酸配列を有する重鎖及び軽鎖配列番号20のアミノ酸配列を有する軽鎖を有するヒト化抗体を含む。
【0086】
本発明は、さらなる態様において、クラステリンに対して特異的に結合することができ、そして:
配列番号25と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、99%)同一である軽鎖可変領域及び/又は配列番号29と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、99%)同一である重鎖可変領域を有し得る抗体又はその抗原結合フラグメント(ここで、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号25又は配列番号29と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み得、そしてアミノ酸置換が、例えば、相補性決定領域(CDR)の外側であり得る);
配列番号33と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、99%)同一である軽鎖可変領域及び/又は配列番号37と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、99%)同一である重鎖可変領域を有し得る抗体又はその抗原結合フラグメント(ここで、抗体又はその抗原結合フラグメントは、配列番号33又は配列番号37と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み得、そしてアミノ酸置換は、例えば、相補性決定領域(CDR)の外側であり得る)
からなる群から選択することができる、抗体又はその抗原結合フラグメントに関する。
【0087】
本発明によれば、少なくとも1つのアミノ酸置換は、例えば、軽鎖可変領域中であり得る。
【0088】
本発明によれば、少なくとも1つのアミノ酸置換は、例えば、重鎖可変領域中であり得る。
【0089】
アミノ酸置換は、保存的であってもよいし、又は非保存的であってもよい。更に具体的な実施形態では、アミノ酸置換は保存的であり得る。
【0090】
本発明の実施形態によれば、本発明の抗体及び抗原結合フラグメントはヒトクラステリンと結合する。本発明の別の実施形態によれば、本発明の抗体及び抗原結合フラグメントはネズミクラステリンと結合する。本発明の抗体及び抗原結合フラグメントはまた、ヒトクラステリンのネズミの天然に存在する変異体又は合成変異体とも結合する。そのような変異体は、例えば、ヒトクラステリン又はネズミクラステリンと少なくとも75%のアミノ酸配列同一性を有する。
【0091】
Kabat及びChothiaの定義を用いて、配列番号29のCDR(配列番号30、31、32及び7のCDRと同一)を同定した。対応するCDR配列は本明細書中では次のように特定される;重鎖可変領域のCDR1は配列番号1に対応し、重鎖可変領域のCDR2は配列番号2に対応し、重鎖可変領域のCDR3は配列番号3に対応する。
【0092】
配列番号1、2及び3の短いバージョンは、2006年9月13日に出願され、国際公開第2007/030930号で公開された、国際出願第PCT/CA2006/001505号(すなわち、1505出願)で示されている。この特許出願では、配列番号29のCDR(1505出願における配列番号23に相当する)を、IMGT定義を実行するIMGT/V探索ソフトウェアで同定した。対応する配列は本明細書中では次のように特定される;重鎖可変領域のCDR1は配列番号44に対応し、重鎖可変領域のCDR2は配列番号45に対応し、そして重鎖可変領域のCDR3は配列番号46に対応する。
【0093】
本明細書中で用いられる場合、配列番号29に関して、「相補性決定領域(CDR)の外側のアミノ酸置換〜」という用語は、一般に、配列番号1、2及び3の周りの(外側の)アミノ酸を指す。或いは、いくつかの実施形態では、この用語は、配列番号44、45及び46の周りの(外側の)アミノ酸を指す場合もある。
【0094】
配列番号25のCDR(配列番号26、27、28及び8のCDRと同一)を、Kabat及びChothiaの定義を用いて同定した。対応するCDR配列は本明細書中では次のように特定される;軽鎖可変領域のCDR1は配列番号4に対応し、軽鎖可変領域のCDR2は配列番号5に対応し、そして軽鎖可変領域のCDR3は配列番号6に対応する。
【0095】
配列番号4、5及び6の短いバージョンは、2006年9月13日に出願され、そして国際公開第2007/030930号で公開された、国際出願第PCT/CA2006/001505号(すなわち、1505出願)で示されている。この特許出願では、配列番号25のCDR(1505出願における配列番号12に相当する)を、IMGT定義を実施するIMGT/V探索ソフトウェアで同定した。対応する配列は本明細書中では次のように特定される;軽鎖可変領域のCDR1は配列番号47に対応し、軽鎖可変領域のCDR2は「WAS」のアミノ酸配列に対応し、そして軽鎖可変領域のCDR3は配列番号49に対応する。
【0096】
本明細書中で用いられる場合、配列番号25に関して、「相補性決定領域(CDR)の外側のアミノ酸置換〜」という用語は、一般に、配列番号4、5及び6の周りの(外側の)アミノ酸を指す。或いは、いくつかの実施形態では、この用語は、配列番号47、軽鎖可変領域のCDR2及び49の周りの(外側の)アミノ酸を指す場合もある。
【0097】
配列番号37のCDR(配列番号38、39、40及び17のCDRと同一)を、Kabat及びChothiaの定義を用いて同定した。対応するCDR配列は本明細書中では次のように特定される;重鎖可変領域のCDR1は配列番号11に対応し、重鎖可変領域のCDR2は配列番号12に対応し、そして重鎖可変領域のCDR3は配列番号13に対応する。
【0098】
配列番号11、12及び13の短いバージョンは、2006年9月13日に出願され、国際公開第2007/030930号で公開された、国際出願第PCT/CA2006/001505号(すなわち、1505出願)で示された。この特許出願では、配列番号37のCDR(’1505出願での配列番号22に相当する)を、IMGT定義を実施するIMGT/V探索ソフトウェアで同定した。対応する配列は本明細書中では次のように特定される;重鎖可変領域のCDR1は、配列番号50に対応し、重鎖可変領域のCDR2は配列番号51に対応し、重鎖可変領域のCDR3は配列番号52に対応する。
【0099】
配列番号37に関して本明細書中で用いられる場合「相補性決定領域(CDR)の外側のアミノ酸置換〜」という用語は、一般に、配列番号11、12及び13の周りの(外側の)アミノ酸を指す。或いは、いくつかの実施形態では、この用語は、配列番号50、51及び52の周りの(外側の)アミノ酸を指す場合もある。
【0100】
配列番号33のCDR(配列番号34、35、36及び18のCDRと同一)を、Kabat及びChothiaの定義を用いて同定した。対応するCDR配列は本明細書中では次のように特定される;軽鎖可変領域のCDR1は配列番号14に対応し、軽鎖可変領域のCDR2は配列番号15に対応し、軽鎖可変領域のCDR3は配列番号16に対応する。
【0101】
配列番号14、15及び16の短いバージョンは、2006年9月13日に出願され、国際公開第2007/030930号で公開された国際出願第PCT/CA2006/001505号(すなわち、1505出願)で示された。この特許出願では、配列番号33のCDR(’1505出願での配列番号11に相当する)を、IMGT定義を実施するIMGT/V探索ソフトウェアで同定した。対応する配列は本明細書中では次のように特定される;軽鎖可変領域のCDR1は配列番号53に対応し、軽鎖可変領域のCDR2は「WAS」のアミノ酸配列に対応し、軽鎖可変領域のCDR3は配列番号55に対応する。
【0102】
本明細書中で用いられる場合、配列番号33に関して「相補性決定領域(CDR)の外側のアミノ酸置換〜」という用語は、一般に、配列番号14、15及び16の周りの(外側の)アミノ酸を指す。或いは、いくつかの実施形態では、この用語は、配列番号53、軽鎖可変領域のCDR2及び55周辺の(外側の)アミノ酸を指す場合もある。
【0103】
本発明のヒト化抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号7、配列番号26又は配列番号27からなる群から選択される軽鎖可変領域及び配列番号8、配列番号29又は配列番号30からなる群から選択される重鎖可変領域を含み得る。
【0104】
本発明のハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号7、配列番号26又は配列番号27からなる群から選択される軽鎖可変領域及び配列番号28を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0105】
或いは、本発明のハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号25を含む軽鎖可変領域及び配列番号8、配列番号29又は配列番号30からなる群から選択される重鎖可変領域を含み得る。
【0106】
本発明のヒト化抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号18、配列番号32又は配列番号33からなる群から選択される軽鎖可変領域及び配列番号17、配列番号35又は配列番号36からなる群から選択される重鎖可変領域を含み得る。
【0107】
本発明のハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号18、配列番号32又は配列番号33からなる群から選択される軽鎖可変領域及び配列番号34を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0108】
或いは、本発明のハイブリッド抗体(又はそれから誘導される任意の抗原結合フラグメント)は、配列番号31を含む軽鎖可変領域及び配列番号17、配列番号35又は配列番号36からなる群から選択される重鎖可変領域を含み得る。
【0109】
本発明のヒト化抗体又は抗原結合フラグメントの別の例示的実施形態には、例えば、配列番号26、配列番号27、配列番号28又は配列番号8のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る軽鎖可変領域を有する抗体又は抗原結合フラグメントが含まれる。
【0110】
本明細書中で用いられる場合「配列番号26の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語には、「少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111又は少なくとも112の連続したアミノ酸」という用語も含まれる。「配列番号26の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、配列番号26で見出される少なくとも90の連続したアミノ酸の任意の可能な配列及び特に配列番号26の3つのCDRを含む配列、例えば、配列番号26のアミノ酸6〜108、5〜109、13〜103、9〜111を含む配列などを含む。
【0111】
本明細書中で用いられる場合、「配列番号27の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、「少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111又は少なくとも112の連続したアミノ酸」という用語も含む。「配列番号27の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、配列番号27で見出される少なくとも90の連続したアミノ酸の任意の可能な配列及び特に配列番号27の3つのCDRを含む配列、例えば、配列番号27のアミノ酸7〜109、12〜104、22〜113、18〜112などを含む配列を含む。
【0112】
「配列番号28の少なくとも90の連続したアミノ酸」又は「配列番号8の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、類似した意味を有する。
【0113】
本発明によれば、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号8で記載されるような軽鎖可変領域を有し得る。
【0114】
また本発明によれば、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号10で記載されるような軽鎖を有し得る。
【0115】
本発明のヒト化抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号30、31、32又は7のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る重鎖可変領域を含む(又はさらに含む)。
【0116】
本明細書中で用いられる場合、「配列番号30の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語はまた、「少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116又は少なくとも117の連続したアミノ酸」という用語も含む。「配列番号30の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、配列番号30で見出される少なくとも90の連続したアミノ酸の任意の可能な配列及び特に配列番号30の3つのCDRを含む配列、例えば、配列番号30のアミノ酸1〜108、2〜112、11〜113、7〜109を含む配列などを含む。
【0117】
本明細書中で用いられる場合、「配列番号31の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語はまた、「少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116又は少なくとも117の連続したアミノ酸」という用語も含む。「配列番号31の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、配列番号31で見出される少なくとも90の連続したアミノ酸の任意の可能な配列及び特に配列番号31の3つのCDRを含む配列、例えば、配列番号31のアミノ酸6〜109、8〜113、1〜108、2〜115を含む配列などを含む。
【0118】
「配列番号32の少なくとも90の連続したアミノ酸」又は「配列番号7の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、類似した意味を有する。
【0119】
本発明によれば、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号7で記載される重鎖可変領域を有し得る。
【0120】
また本発明によれば、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号9で記載される重鎖を有し得る。
【0121】
本発明によれば、抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、
a)配列番号26の少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る軽鎖可変領域及び配列番号30、配列番号31、配列番号32若しくは配列番号7のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る重鎖可変領域;
b)配列番号27の少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る軽鎖可変領域及び配列番号30、配列番号31、配列番号32若しくは配列番号7のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る重鎖可変領域;
c)配列番号28の少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る軽鎖可変領域及び配列番号30、配列番号31、配列番号32若しくは配列番号7のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る重鎖可変領域;又は
d)配列番号8の少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る軽鎖可変領域及び配列番号30、配列番号31、配列番号32若しくは配列番号7のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る重鎖可変領域
を含み得る。
【0122】
本発明のさらに具体的な実施形態によれば、軽鎖可変領域は、配列番号8の少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得、重鎖可変領域は、配列番号7の少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る。
【0123】
本発明のなお一層具体的な実施形態によれば、軽鎖可変領域は、配列番号8で記載されるとおりであり得、重鎖可変領域は、配列番号7で記載されるとおりであり得る。
【0124】
本発明のヒト化抗体又は抗原結合フラグメントの他の例示的実施例は、配列番号34、35、36又は18のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る軽鎖可変領域を含み得るものである。
【0125】
本明細書中で用いられる場合、「配列番号34の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、「少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112又は少なくとも113の連続したアミノ酸」という用語も含む。「配列番号34の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、配列番号34で見出される少なくとも90の連続したアミノ酸の任意の可能な配列及び特に配列番号34の3つのCDRを含む配列、例えば、配列番号34のアミノ酸6〜103、11〜106、1〜106、3〜110、5〜107を含む配列などを含む。
【0126】
本明細書中で用いられる場合、「配列番号35の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、「少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112又は少なくとも113の連続したアミノ酸」という用語も含む。「配列番号35の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、配列番号35で見出される少なくとも90の連続したアミノ酸の任意の可能な配列及び特に配列番号35の3つのCDRを含む配列、例えば配列番号35のアミノ酸9〜106、10〜113、1〜109、20〜110、7〜107を含む配列などを含む。
【0127】
「配列番号36の少なくとも90の連続したアミノ酸」又は「配列番号18の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は類似した意味を有する。
【0128】
本発明によれば、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号18で記載される軽鎖可変領域を有し得る。
【0129】
また本発明によれば、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号20で記載される軽鎖を有し得る。
【0130】
本発明のヒト化抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号38、39、40又は17のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る重鎖可変領域を含む(又は更に含む)。
【0131】
本明細書中で用いられる場合、「配列番号38の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、「少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117又は少なくとも118の連続したアミノ酸」という用語も含む。「配列番号38の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、配列番号38で見出される少なくとも90の連続したアミノ酸の任意の可能な配列及び特に配列番号38の3つのCDRを含む配列、例えば配列番号38のアミノ酸6〜111、1〜114、12〜109、5〜113、10〜107を含む配列などを含む。
【0132】
本明細書中で用いられる場合、「配列番号39の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、「少なくとも91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117又は少なくとも118の連続したアミノ酸という用語も含む。「配列番号39の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は、配列番号39で見出される少なくとも90の連続したアミノ酸の任意の可能な配列及び特に配列番号39の3つのCDRを含む配列、例えば配列番号39のアミノ酸3〜109、1〜115、1〜110、22〜116、20〜115を含む配列などを含む。
【0133】
「配列番号40の少なくとも90の連続したアミノ酸」又は「配列番号17の少なくとも90の連続したアミノ酸」という用語は類似した意味を有する。
【0134】
本発明によれば、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号17で記載される重鎖可変領域を有し得る。
【0135】
また、本発明によれば、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、配列番号19で記載される重鎖を有し得る。本発明によれば、抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、
a)配列番号34の少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る軽鎖可変領域及び配列番号38、配列番号39、配列番号40若しくは配列番号17のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る重鎖可変領域;
b)配列番号35の少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る軽鎖可変領域及び配列番号38、配列番号39、配列番号40若しくは配列番号17のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る重鎖可変領域;
c)アミノ酸配列番号36の少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る軽鎖可変領域及び配列番号38、配列番号39、配列番号40若しくは配列番号17のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る重鎖可変領域;又は
d)配列番号18の少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る軽鎖可変領域及び配列番号38、配列番号39、配列番号40若しくは配列番号17のいずれかの少なくとも90の連続したアミノ酸を含み得る重鎖可変領域
を含み得る。
【0136】
本発明のさらに具体的な実施形態によれば、軽鎖可変領域は、配列番号18の少なくとも90の連続したアミノ酸を有し得、重鎖可変領域は、配列番号17の少なくとも90の連続したアミノ酸を有し得る。
【0137】
本発明のなおいっそう具体的な実施形態によれば、軽鎖可変領域は配列番号18で記載されるとおりであり得、重鎖可変領域は配列番号17で記載されるとおりであり得る。
【0138】
もちろん、本明細書中で記載される軽鎖若しくは重鎖又はそれらの可変領域は、シグナルペプチドも含み得る。そのようなシグナルペプチドは、元の配列由来であり得るか、又はポリペプチドの特定の細胞局在を最適化するように設計され得る。もちろん、望ましいシグナルペプチドは、ポリペプチドの分泌を可能にするもの(例えば、切断可能)である。
【0139】
本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、定常領域、好ましくはヒト定常領域を有し得る。他のサブタイプを選択することができるが、ヒト化又はハイブリッド抗体は、IgG1、IgG2又はIgG3サブタイプの免疫グロブリンの定常領域のアミノ酸残基を含み得る。
【0140】
本発明はまた、別の態様では、軽鎖可変領域(又はそのフラグメント)及び重鎖可変領域(又はそのフラグメント)を含む抗原結合フラグメントにも関し、これは非ヒト相補性決定領域アミノ酸残基及びヒトフレームワーク領域アミノ酸残基を含み得る。
【0141】
本発明の抗原結合フラグメントはクラステリンと結合することができ、有利には非ヒト親抗体の抗原結合フラグメントよりも良好な親和性を有し得る。
【0142】
実際、抗原結合フラグメントは組換えモノマークラステリンと1.7×10−8M±2.97×10−9又はそれより良好な親和性で結合することが本明細書中で示されている。
【0143】
例示的な実施形態では、抗原結合フラグメントは、本明細書中で記載される天然ヒト抗体重鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3からなる群から選択される重鎖CDR又は配列番号11のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号13のアミノ酸配列を有するCDRH3からなる群から選択される重鎖CDRとを含み得る。
【0144】
別の例示的実施形態では、抗原結合フラグメントは、本明細書中で記載される天然ヒト抗体重鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3からなる群から選択される少なくとも2つの重鎖CDR又は配列番号11のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号13のアミノ酸配列を有するCDRH3からなる群から選択される少なくとも2つの重鎖CDRとを含み得る。
【0145】
更に別の実施形態では、抗原結合フラグメントは、本明細書中で記載される天然ヒト抗体重鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号1のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号2のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号3のアミノ酸配列を有するCDRH3又は配列番号11のアミノ酸配列を有するCDRH1、配列番号12のアミノ酸配列を有するCDRH2及び配列番号13のアミノ酸配列を有するCDRH3とを含み得る。
【0146】
さらに詳細な実施形態では、抗原結合フラグメントは、配列番号7若しくは配列番号17のアミノ酸配列(又はそのフラグメント)を有する重鎖可変領域を含み得る。
【0147】
さらなる例示的実施形態では、抗原結合フラグメントは、本明細書中で記載される天然ヒト抗体軽鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3からなる群から選択される軽鎖CDR又は配列番号14のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDRL3からなる群から選択される軽鎖CDRとを含み得る。
【0148】
更に別の例示的実施形態では、抗原結合フラグメントは、本明細書中で記載される天然ヒト抗体軽鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3からなる群から選択される少なくとも2つの軽鎖CDR又は配列番号14のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDRL3からなる群から選択される少なくとも2つの軽鎖CDRとを含み得る。
【0149】
更に別の例示的実施形態では、抗原結合フラグメントは、本明細書中で記載される天然ヒト抗体軽鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基と、配列番号4のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号5のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号6のアミノ酸配列を有するCDRL3又は配列番号14のアミノ酸配列を有するCDRL1、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDRL2及び配列番号16のアミノ酸配列を有するCDRL3とを含み得る。
【0150】
更に具体的な実施形態では、抗原結合フラグメントは、配列番号8若しくは配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域又はそのフラグメントを含み得る。
【0151】
本発明によれば、抗原結合フラグメントは、例えば、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fdフラグメント、Fvフラグメント又はdAbフラグメントであり得る。
【0152】
好ましくは、抗原結合フラグメントは、例えば、Fabフラグメント又はF(ab’)フラグメントであり得る。
【0153】
本発明はさらに、本明細書中に記載する抗原結合フラグメントのアミノ酸配列を含む単離された抗体も含む。単離された抗体は定常領域も含み得る。
【0154】
変異体抗体及び抗原結合フラグメント
齧歯類抗体由来のCDRをヒトフレームワーク中のヒトCDRと置換することは、高い抗原結合親和性を移すのに十分である場合があるが(Jones, P.T. et al., Nature 321:522-525(1986);Verhoeyen, M. et al., Science 239:1534-1536(1988))、別の場合では、1つ(Riechmann, L. et al., Nature 332:323-327(1988))又は複数(Queen, C. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:10029-10033(1989))のフレームワーク領域残基を更に置換する必要がある。抗体ヒト化の技術分野では依然として実質的に予測不可能である。例えば、米国特許第7,537,931号では、ネズミ抗体のCDRをヒト抗体中に移すことを試みた結果、抗原に対する結合が失われた。
【0155】
ヒト化プロセスの結果、所望の特性(すなわち、特異性、親和性など)を有するヒト化又はハイブリッド抗体が得られないならば、非ヒトアミノ酸フレームワーク残基をヒトアミノ酸フレームワーク残基の代わりに用いることが可能である。
【0156】
本発明は、したがって、本明細書中に記載されるヒト化若しくはハイブリッド抗体又は抗原結合フラグメントの変異体を含む。含まれる変異体抗体又は抗原結合フラグメントは、本明細書中に記載されるヒト化若しくはハイブリッド抗体又は抗原結合フラグメントのアミノ酸配列において変動を有するものである。例えば、本発明に含まれる変異体抗体又は抗原結合フラグメントは、非ヒト相補性決定領域アミノ酸残基を含み得る軽鎖可変領域及び重鎖可変領域並びに及び天然ヒト抗体のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基を有し、(好ましくはフレームワーク領域において)少なくとも1つのアミノ酸変動を更に含むものである。
【0157】
本発明に含まれる変異体抗体又は抗原結合フラグメントは、例えば、ヒト化若しくはハイブリッド抗体又は抗原結合フラグメントと比較して同様又は改善された特性を有するが、本明細書中に記載するヒト化又はハイブリッド抗体と比較して少なくとも1つのアミノ酸変動を有するものである。
【0158】
本発明に含まれる変異体抗体又は抗原結合フラグメントは、挿入、欠失又はアミノ酸置換(保存的若しくは非保存的)を含み得るものである。いくつかの変異体は、したがって、そのアミノ酸配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、その場所に異なる残基が挿入されている可能性がある。
【0159】
置換型突然変異誘発について興味深い部位は、超可変領域(CDR)、フレームワーク領域又はさらには定常領域も含み得る。保存的置換は、以下に記載する群(1〜6群)のうちの1つからのアミノを、同じ群の別のアミノ酸と交換することによっておこなうことができる。
【0160】
保存的置換の他の例示的実施形態を表1A中、「好ましい置換」の見出しの下に記載する。そのような置換の結果、望ましくない特性が生じるならば、表1A中で「例示的置換」と表示されているか、又はアミノ酸クラスに関して以下でさらに記載するようなさらに実質的な変化を導入することができ、生成物をスクリーニングすることができる。
【0161】
「保存的置換」として特定される置換の例を表1Aに示す。そのような置換の結果、望ましくない変化が生じるならば、表1A中で「例示的置換」と表示されているか、又はアミノ酸クラスに関して以下でさらに記載するような他の種類の置換を導入し、生成物をスクリーニングする。
【0162】
機能又は免疫学的同一性における大幅な修飾は、(a)例えばシート若しくはらせん状立体配座としての置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位での分子の電荷若しくは疎水性、又は(c)側鎖の嵩の維持に対するそれらの効果が著しく異なる置換を選択することにより、達成することができる。天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいて分類される:
(1群) 疎水性:ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)
(2群) 中性親水性:システイン(Cys)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)
(3群) 酸性:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)
(4群) 塩基性:アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)
(5群)鎖配向に影響を及ぼす残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro);及び
(6群) 芳香族:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)
非保存的置換は、これらのクラスの成員を別のものと交換することを伴う。
【表1A】

【0163】
変異体抗体又は抗原結合フラグメントのアミノ酸配列における変動は、アミノ酸の付加、欠失、挿入、置換など、1以上のアミノ酸の骨格若しくは側鎖における1以上の修飾、又は1以上のアミノ酸(側鎖若しくは骨格)に対する基若しくは別の分子の付加を含み得る。
【0164】
変異体抗体又は抗原結合フラグメントは、元の抗体又は抗原結合フラグメントアミノ酸配列と比較して、そのアミノ酸配列において相当な配列類似性及び/又は配列同一性を有し得る。2つの配列間の類似性の程度は、同一性(同じアミノ酸)のパーセンテージ及び保存的置換のパーセンテージに基づく。
【0165】
別のフレームワーク領域と比較して、フレームワーク領域の同一性(%)を決定する場合、CDRアミノ酸配列は、好ましくは考慮すべきではない。別のものと比較してのフレームワーク領域の同一性(%)は、好ましくは、フレームワークごとではなく、全フレームワーク領域にわたって決定される。
【0166】
一般的に、可変鎖間の類似性及び同一性の程度は、本明細書中では、Blast2配列プログラム(Tatiana A. Tatusova, Thomas L. Madden(1999), “Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences”, FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)を用い、デフォルトのセッティング、すなわちblastpプログラム、BLOSUM62マトリックス(オープンギャップ11及びエクステンションギャップペナルティー1;gapx dropoff 50、期待値10.0、ワードサイズ3)及び活性化フィルターを使用して決定した。
【0167】
同一性(%)は、したがって元のペプチドと比較して同一であり、同じか又は類似した位置を占める可能性があるアミノ酸を表す。
【0168】
類似性(%)は、同一であるアミノ酸及び元のペプチドと比較して同じか又は類似した位置にて保存的アミノ酸置換で置換されたものを示す。
【0169】
本発明の変異体は、したがって元の配列又は元の配列の一部と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有し得るものを含む。
【0170】
変異体の例示的実施形態は、本明細書中に記載する配列に対して少なくとも81%の配列同一性を有し、元の配列又は元の配列の一部と81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列類似性を有するものである。
【0171】
変異体の他の例示的実施形態は、本明細書中に記載する配列に対して少なくとも82%の配列同一性を有し、元の配列又は元の配列の一部と82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列類似性を有するものである。
【0172】
変異体のさらなる例示的実施形態は、本明細書中に記載する配列に対して少なくとも85%の配列同一性を有し、元の配列又は元の配列の一部と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列類似性を有するものである。
【0173】
変異体の他の例示的実施形態は、本明細書中に記載する配列に対して少なくとも90%の配列同一性を有し、元の配列又は元の配列の一部と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列類似性を有するものである。
【0174】
変異体のさらなる例示的実施形態は、本明細書中に記載する配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有し、元の配列又は元の配列の一部と95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列類似性を有するものである。
【0175】
変異体のさらに別の例示的実施形態は、本明細書中に記載する配列に対して少なくとも97%の配列同一性を有し、元の配列又は元の配列の一部と97%、98%、99%又は100%の配列類似性を有するものである。
【0176】
簡潔にするために、本出願者は、本発明により含まれる個々の変異体の例示的実施形態を説明し、特定された配列同一性(%)及び配列類似性(%)を含む表1Bを本明細書中で記載する。各「X」は、所与の変異体を示すものと解釈される。
【表1B】

【0177】
本発明は、したがって、非ヒトアミノ酸フレームワーク残基が再導入されているか、又は他の種類のアミノ酸修飾がなされているヒト化又はハイブリッド抗体を含む。抗体の特性を最適化するために特に選択されるこれらのアミノ酸には、抗原結合に関与するものが含まれる。そのようなアミノ酸の例を図2に示す。
【0178】
例示的な実施形態において、本発明のヒト化又はハイブリッド抗体は、したがって、重鎖可変領域中に1〜21の非ヒトフレームワーク領域アミノ酸残基を含み得る(復帰突然変異)。
【0179】
別の例示的実施形態において、ヒト化又はハイブリッド抗体は、軽鎖可変領域中に1〜12の非ヒトフレームワーク領域アミノ酸残基を含み得る(復帰突然変異)。
【0180】
本明細書中で用いられる場合、「1〜20」という用語は、個々の値を含み、例えば、1、2、3及び20まで;1〜20;1〜19;1〜18;1〜17;1〜16;1〜15など;2〜20;2〜19;2〜18;2〜17など;3〜20;3〜19;3〜18など;4〜20;4〜19;4〜18;4〜17;4〜16など;5〜20;5〜19;5〜18;5〜17などの範囲である。
【0181】
同様に、「1〜12」という用語は、個々の値を含み、例えば、1、2、3、及び12まで;1〜12;1〜11;1〜10など;2〜12;2〜11、2〜10;2〜9;2〜8など;3〜12;3〜11;3〜10;3〜9など;4〜12;4〜11など;5〜12;5〜11;5〜10;5〜9;5〜8;5〜7;などの範囲である。
【0182】
同様の用語は、同じように解釈されるものとする。
【0183】
本発明は、別のアミノ酸配列と所望の同一性(%)を有するアミノ酸配列、例えば、「非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%の同一性を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域」又は「非ヒト親抗体の重鎖フレームワーク領域と少なくとも70%の同一性を有する天然ヒト抗体重鎖フレームワーク領域」を含むか又は使用する。
【0184】
「非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%の同一性を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域」という用語は、非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域を含む。同一性(%)は、好ましくは、全フレームワーク領域(すなわち、CDRを除く)にわたって決定される。
【0185】
変異体について前述するように、「非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%の同一性を有する軽鎖フレームワーク領域」という用語は、非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と70%の同一性を有し、また非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列類似性も有し得る軽鎖フレームワーク領域を含む。
【0186】
「非ヒト親抗体の重鎖フレームワーク領域と少なくとも70%の同一性を有する天然ヒト抗体重鎖フレームワーク領域」という用語は、非ヒト親抗体の重鎖フレームワーク領域と70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有する天然ヒト抗体重鎖フレームワーク領域を含む。
【0187】
変異体に関して前述するように、「非ヒト親抗体の重鎖フレームワーク領域と少なくとも70%の同一性を有する重鎖フレームワーク領域」という用語は、非ヒト親抗体の重鎖フレームワーク領域と70%の同一性を有し、非ヒト親抗体の重鎖フレームワーク領域と71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列類似性も有し得る重鎖フレームワーク領域を含む。
【0188】
細胞における抗体の産生
本明細書中で開示される抗体は、当業者によく知られている種々の方法(組換えDNA法、化学合成など)により作製することができる。
【0189】
抗体を発現するために、本明細書中に記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化できるヌクレオチド配列を、特定の宿主において挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳制御のための要素を含むベクター中に挿入することができる。これらの要素としては、調節配列、例えばエンハンサー、構成的及び誘導プロモータ、並びに5’及び3’非翻訳領域を挙げることができる。当業者に周知の方法を用いてそのような発現ベクターを構築することができる。これらの方法としては、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組換えが挙げられる。
【0190】
当業者に公知の種々の発現ベクター/宿主細胞系を用いて、本明細書中で記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化できるヌクレオチド配列から誘導されるポリペプチド又はRNAを発現することができる。これらとしては、組換えバクテリオファージ、プラスミド、又はコスミドDNA発現ベクターで形質転換された細菌などの微生物;酵母発現ベクターで形質転換された酵母;バキュロウイルスベクターに感染した昆虫細胞系;ウイルス若しくは細菌発現ベクターで形質転換された植物細胞系;又は動物細胞系が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ほ乳類系における組換えタンパク質の長期産生のために、細胞系において安定な発現を実施することができる。例えば、本明細書中で記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化できるヌクレオチド配列を、ウイルス性複製開始点及び/又は内因性発現要素並びに選択可能又は可視マーカー遺伝子を同じか又は別個のベクター上に含み得る発現ベクターを用いて、細胞系に形質転換することができる。本発明は、用いられるベクター又は宿主細胞により限定されない。本発明のある実施形態では、本明細書中で記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化できるヌクレオチド配列をそれぞれ別個の発現ベクター中にライゲートし、各鎖を別々に発現させることができる。別の実施形態では、本明細書中で記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化することができる軽鎖及び重鎖はどちらも1つの発現ベクター中にライゲートすることができ、同時に発現させることができる。
【0191】
或いは、RNA及び/又はポリペプチドは、本明細書中で記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化できるヌクレオチド配列を含むベクターから、インビトロ転写系又は結合型インビトロ転写/翻訳系を用いて、発現することができる。
【0192】
一般的に、本明細書中で記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化できるヌクレオチド配列を含み、及び/又は本明細書中で記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化できるヌクレオチド配列によりコード化されるポリペプチドを発現する宿主細胞、又はその一部を、当業者に公知の種々の手順によって同定することができる。これらの手順としては、DNA/DNA又はDNA/RNAハイブリダイゼーション、PCR増幅、及び核酸若しくはアミノ酸配列の検出及び/又は定量化のための膜、溶液若しくはチップベースの技術を含むタンパク質バイオアッセイ又はイムノアッセイ技術が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ポリペプチドの発現を、特異的ポリクローナル又はモノクローナル抗体のいずれかを用いて検出又は測定するための免疫学的方法は、当該技術分野で公知である。そのような技術の例としては、酵素結合抗体免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、及び蛍光標識細胞分取(FACS)が挙げられる。当業者は、これらの方法を本発明に容易に適応させることができる。
【0193】
本明細書中で記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化できるヌクレオチド配列を含む宿主細胞を、したがって、対応するRNAの転写及び/又は細胞培養からのポリペプチドの発現のための条件下で培養することができる。細胞によって産生されるポリペプチドは、使用する配列及び/又はベクターに応じて、分泌される可能性があるか、又は細胞内に保持される可能性がある。例示的な実施形態では、本明細書中で記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化できるヌクレオチド配列を含む発現ベクターは、原核生物又は真核生物細胞膜を通してポリペプチドを分泌させるシグナル配列を含むように設計することができる。
【0194】
重鎖可変領域をコード化する核酸の例示的実施形態を配列番号21及び配列番号22で提供する。
【0195】
軽鎖可変領域をコード化する核酸の例示的実施形態を配列番号23及び配列番号24で提供する。
【0196】
遺伝コードの生来の縮重のために、これをコード化する他のDNA配列、実質的に同じであるか又は機能的に等価なアミノ酸配列を産生し、使用して、例えば、本明細書中で記載する免疫グロブリン軽鎖及び重鎖のいずれか1つをコード化できるヌクレオチド配列によりコード化されるポリペプチドを発現することができる。本発明のヌクレオチド配列は、これらに限定されるものではないが、遺伝子産物のクローニング、プロセッシング、及び/又は発現の修飾をはじめとする種々の目的のためにヌクレオチド配列を変更するために、当該技術分野で一般的に公知の方法を用いて操作することができる。遺伝子フラグメント及び合成オリゴヌクレオチドのランダムフラグメンテーション及びPCRリアセンブリによるDNAシャッフリングを用いて、ヌクレオチド配列を操作することができる。例えば、オリゴヌクレオチド介在性部位定方向突然変異を用いて、新しい制限部位を作製し、グリコシル化パターンを改変し、コドン選好を変更し、スプライス変異体を産生するなどの突然変異を導入することができる。
【0197】
加えて、宿主細胞株を、挿入された配列の発現を調節するか、又は望ましい方法で発現されたポリペプチドを処理するその能力について選択することができる。ポリペプチドのそのような修飾としては、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、及びアシル化が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示的な実施形態では、特定のグリコシル化構造又はパターンを含む抗体が望ましい可能性がある。ポリペプチドの「プレプロ」形態を切断する翻訳後プロセッシングを用いて、タンパク質ターゲティング、フォールディング、及び/又は活性を規定することもできる。翻訳後活性について特異的な細胞機構及び特徴的な機構を有する種々の宿主細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、HEK293、及びW138)は、商業的に入手可能であり、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から入手可能であり、発現されたポリペプチドの正しい修飾及びプロセッシングを確実にするために選択することができる。
【0198】
当業者は、天然、修飾、又は組換え核酸配列を非相同配列にライゲートして、その結果、前記宿主系のいずれにおいても非相同ポリペプチド部分を含む融合ポリペプチドの翻訳をもたらすことができることを、容易に理解するであろう。そのような非相同ポリペプチド部分は、市販の親和性マトリックスを用いる融合ポリペプチドの精製を促進することができる。そのような部分としては、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質、チオレドキシン、カルモジュリン結合ペプチド、6−His(His)、FLAG、c−myc、ヘマグルチニン(HA)、及び抗体エピトープ、例えばモノクローナル抗体エピトープが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0199】
さらなる態様では、本発明は、融合タンパク質をコード化するヌクレオチド配列を含み得るポリヌクレオチドに関する。融合タンパク質は、本明細書中で記載するポリペプチド(例えば、完全軽鎖、完全重鎖、可変領域、CDRなど)と融合した融合パートナー(例えば、HA、Fcなど)を含み得る。
【0200】
当業者はさらに、核酸及びポリペプチド配列を、全部又は一部において、当該技術分野で周知の化学又は酵素法を用いて合成することができることを容易に認識するであろう。例えば、ペプチド合成は、種々の固相技術を用いて実施することができ、ABI 431Aペプチドシンセサイザー(PEバイオシステムズ)などの機械を用いて合成を自動化することができる。所望により、アミノ酸配列を合成中に改変することができ、及び/又は他のタンパク質からの配列と組み合わせて、変異体タンパク質を産生することができる。
【0201】
軽鎖可変ドメイン又は重鎖可変ドメインのうちの1つだけが利用可能である場合、当該技術分野で公知の方法を用いて相補性可変ドメインのライブラリをスクリーニングすることにより、抗体又は抗原結合フラグメントを再構成することができる(Portolano et al. The Journal of Immunology(1993) 150:880-887, Clarkson et al., Nature(1991) 352:624-628)。このように、所望の抗原結合特異性を有する無傷抗体を再構成するためには、可変領域アミノ酸配列(重鎖可変領域又は軽鎖可変領域)の1つだけがわかっていることで十分であることが多い。したがって、抗体の軽鎖可変領域又は重鎖可変領域をコード化する核酸は、互いに組み合わせた場合に、十分な抗原結合特異性を有する抗原結合フラグメント又は抗体を形成する相補性鎖の同定に有用であり得る。一本鎖核酸(例えば、オリゴ)又は抗体の軽鎖可変領域若しくは重鎖可変領域をコード化する核酸と高レベルの配列同一性を有するその補体は、後者を検出するために、又は高レベルの配列同一性を共有する任意の他の核酸配列を検出するために、有用であり得る。
【0202】
したがって、さらなる態様において、本発明はさらに、本明細書中に記載するヒト化又はハイブリッド抗体の軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域をコード化し、本明細書中に記載する抗原結合フラグメント又は本明細書中に記載する単離された抗体をコード化する、単離された核酸も提供する。
【0203】
さらなる態様では、本発明は、本明細書中で記載する(単離された)核酸を含むベクター又は構築物を提供する。本発明によれば、ベクターは、例えば、ほ乳類発現ベクター、細菌発現ベクターなどであり得る。
【0204】
本発明はさらに、本明細書中に記載する単離された核酸又は本明細書中に記載するベクターを含む単離された細胞も含む。本発明の抗体又は抗原結合フラグメントを発現する単離された細胞も本発明に含まれる。好適な細胞としては、例えば、ほ乳類細胞、細菌細胞などが挙げられる。
【0205】
本発明のさらに別の態様は、ヒト化又はハイブリッド抗クラステリン抗体を作製する方法であって、クラステリンに対して特異的結合が可能な非ヒト抗体の非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基を天然ヒト抗体重鎖可変領域のフレームワーク領域中に導入することを含み得る方法に関する。
【0206】
本発明のさらなる態様は、ヒト化又はハイブリッド抗クラステリン抗体を作製する方法であって、クラステリンに対して特異的結合が可能な非ヒト抗体の非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基及び天然ヒト抗体重鎖可変領域のフレームワーク領域アミノ酸を含む重鎖可変領域(又は完全重鎖)をコード化する核酸で細胞を形質転換することを含み得る方法に関する。この方法はさらに、相補性軽鎖可変領域(又は完全軽鎖)をコード化する核酸で細胞を形質転換することも含み得る。
【0207】
別の態様では、本発明は、ヒト化又はハイブリッド抗クラステリン抗体を作製する方法であって、クラステリンに対して特異的結合が可能な非ヒト抗体の非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基及び天然ヒト抗体重鎖可変領域のフレームワーク領域アミノ酸を含む重鎖可変領域(又は完全重鎖)を発現することを含み得る方法に関する。この方法はまた、相補性軽鎖可変領域(又は完全軽鎖)を発現することも含み得る。
【0208】
ヒト化目的のために選択することができる天然ヒト抗体重鎖可変領域は以下の特性を有し得る:a)非ヒト抗体の重鎖に類似しているか、又は同一である(重ね合わせることができる)三次元構造、b)非ヒト抗体の重鎖フレームワーク領域に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域、及び/又は;c)非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基と同じであるか又は実質的に同じである重鎖CDR(例えば、3つすべてのCDR)中の(多数の)アミノ酸残基。
【0209】
方法は、したがって例えば、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRの非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基を導入することを含み得る。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRをコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される重鎖可変領域は、したがって、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRを含み得る。
【0210】
方法は、好ましくは、3つすべてのCDRの非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基を導入することを含み得る。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、非ヒト抗体の3つのCDRをコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される重鎖可変領域は、したがって、非ヒト抗体の3つのCDRを含み得る。
【0211】
方法は、したがって配列番号1、配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列を含む非ヒトCDRを導入することを含む。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、配列番号1、配列番号2及び配列番号3をコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される重鎖可変領域は、したがって、配列番号1、配列番号2及び配列番号3を含み得る。
【0212】
方法は、したがって、配列番号11、配列番号12及び配列番号13のアミノ酸配列を含む非ヒトCDRを導入することも含む。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、配列番号11、配列番号12及び配列番号13をコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される重鎖可変領域は、したがって、配列番号11、配列番号12及び配列番号13を含み得る。
【0213】
或いは、前記CDRの短いバージョンを天然ヒト抗体重鎖可変領域のフレームワーク領域に導入することができる。
【0214】
本発明の方法は、クラステリンに対して特異的結合が可能な非ヒト抗体の非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基を天然ヒト抗体軽鎖可変領域のフレームワーク領域中に導入することをさらに含み得る。
【0215】
本発明の方法は、クラステリンに対して特異的結合が可能な非ヒト抗体の非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基及び天然ヒト抗体軽鎖可変領域のフレームワーク領域アミノ酸を含む軽鎖可変領域(又は完全軽鎖)をコード化する核酸の発現を可能にすることを含み得る。この方法は、相補性重鎖可変領域(又は完全重鎖)をコード化する核酸で細胞を形質転換することも含み得る。
【0216】
別の態様では、本発明は、ヒト化又はハイブリッド抗クラステリン抗体を作製する方法であって、クラステリンに対して特異的結合が可能な非ヒト抗体の非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基及び天然ヒト抗体軽鎖可変領域のフレームワーク領域アミノ酸を含む軽鎖可変領域(又は完全重鎖)を発現することを含み得る方法に関する。この方法は、相補性重鎖可変領域(又は完全重鎖)を発現することも含み得る。
【0217】
ヒト化の目的で選択することができる天然ヒト抗体軽鎖可変領域は、次の特徴を有し得る:a)非ヒト抗体の軽鎖と類似しているか又は同一(重ね合わせが可能)である三次元構造、b)非ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域、及び/又は;c)非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基と同じか又は実質的に同じである軽鎖CDR(例えば、3つのCDR全て)中の(多数の)アミノ酸残基。
【0218】
方法は、したがって、例えば、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRの非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基を導入することを含み得る。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRをコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される軽鎖可変領域は、したがって、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRを含み得る。
【0219】
方法は、好ましくは、3つのCDR全ての非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基を導入することを含み得る。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、非ヒト抗体の3つのCDRをコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される軽鎖可変領域は、したがって、非ヒト抗体の3つのCDRを含み得る。
【0220】
方法は、したがって、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列を含む非ヒトCDRを導入することを含む。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、配列番号4、配列番号5及び配列番号6をコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される軽鎖可変領域は、したがって、配列番号4、配列番号5及び配列番号6を含み得る。
【0221】
方法は、したがって、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のアミノ酸配列を含む非ヒトCDRを導入することも含む。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、配列番号14、配列番号15及び配列番号16をコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される軽鎖可変領域は、したがって、配列番号14、配列番号15及び配列番号16を含み得る。
【0222】
或いは、前記CDRの短いバージョンを天然ヒト抗体重鎖可変領域のフレームワーク領域中に導入することができる。
【0223】
本発明のさらなる態様は、ヒト化抗クラステリン抗体を作製する方法であって、クラステリンに対して特異的結合が可能な非ヒト抗体の非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基を天然ヒト抗体重鎖可変領域のフレームワーク領域中に導入し、そしてクラステリンに対して特異的結合が可能な非ヒト抗体の非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基を天然ヒト抗体軽鎖可変領域のフレームワーク領域中に導入することを含み得る方法に関する。
【0224】
さらに、本発明のさらなる態様は、クラステリンに対して特異的結合が可能な非ヒト抗体の非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基及び天然ヒト抗体重鎖可変領域のフレームワーク領域をコード化する核酸を発現させ、そしてクラステリンに対して特異的結合が可能な非ヒト抗体の非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基及び天然ヒト抗体軽鎖可変領域のフレームワーク領域をコード化する核酸を発現させることを含み得る、ヒト化抗クラステリン抗体を作製する方法に関する。
【0225】
ヒト化の目的で選択することができる天然ヒト抗体重鎖可変領域は、次の特性:a)非ヒト抗体の重鎖フレームワーク領域に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域を含むこと、及び;b)非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基と同じであるか又は実質的に同じである重鎖CDR(例えば、3つのCDR全て)中に(多数の)アミノ酸残基を有すること、を有し得、一方、ヒト化の目的で選択することができる天然ヒト抗体軽鎖可変領域は、次の特性:a)非ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有するフレームワーク領域を含むこと、及び;b)非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基と同じか又は実質的に同じである軽鎖CDR(例えば、3つのCDR全て)中に(多数の)アミノ酸残基を有すること、を有し得る。天然ヒト抗体可変領域(複数可)は、好ましくは、非ヒト抗体可変領域(複数可)と類似しているか又は同一(重ね合わせ可能)である三次元構造を有する。
【0226】
本発明によれば、方法は、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRの非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基を導入することを含み得る。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRをコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される重鎖可変領域は、したがって、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRを含み得る。
【0227】
或いは、方法は、3つのCDR全ての非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基を導入することを含み得る。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、非ヒト抗体の3つのCDRをコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される重鎖可変領域は、したがって、非ヒト抗体の3つのCDRを含み得る。
【0228】
また、本発明によれば、方法は、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRの非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基を導入することを含み得る。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRをコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される軽鎖可変領域は、したがって、非ヒト抗体の少なくとも2つのCDRを含み得る。
【0229】
或いは、方法は、3つのCDR全ての非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基を導入することを含み得る。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、非ヒト抗体の3つのCDRをコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される軽鎖可変領域は、したがって、非ヒト抗体の3つのCDRを含み得る。
【0230】
本明細書中に記載する方法を使用して、配列番号1、配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列を含むCDRを、有利には、天然ヒト抗体重鎖可変領域中に移入する。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、配列番号1、配列番号2及び配列番号3をコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される軽鎖可変領域は、したがって、配列番号1、配列番号2及び配列番号3を含み得る。
【0231】
本明細書中に記載する方法を使用して、配列番号11、配列番号12及び配列番号13のアミノ酸配列を含むCDRを、有利には、天然ヒト抗体重鎖可変領域中に移入する。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、配列番号11、配列番号12及び配列番号13をコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される軽鎖可変領域は、したがって、配列番号11、配列番号12及び配列番号13を含み得る。
【0232】
本明細書中に記載する方法を使用して、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列を含むCDRを、有利には天然ヒト抗体軽鎖可変領域中に移入する。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、配列番号4、配列番号5及び配列番号6をコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される軽鎖可変領域は、したがって、配列番号4、配列番号5及び配列番号6を含み得る。
【0233】
本明細書中に記載する方法を使用して、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のアミノ酸配列を含むCDRを、有利には天然ヒト抗体軽鎖可変領域中に移入する。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で使用される核酸は、したがって、配列番号14、配列番号15及び配列番号16をコード化することができる。ヒト化又はハイブリッド抗体を作製する方法で発現される軽鎖可変領域は、したがって、配列番号14、配列番号115及び配列番号16を含み得る。
【0234】
別の態様では、本発明は、ヒト化又はハイブリッド抗クラステリン抗体を作製するための方法であって、本明細書中で記載される重鎖可変領域をコード化する核酸で宿主細胞を形質転換することを含む方法に関する。
【0235】
好適な重鎖可変領域の例示的実施形態は、配列番号1、配列番号2及び配列番号3のアミノ酸配列を有する3つのCDR及び非ヒト抗体の重鎖フレームワーク領域に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する天然ヒト抗体重鎖フレームワーク領域を含み得る非ヒト抗体の重鎖可変領域である。好ましくは、天然ヒト抗体は、非ヒト重鎖のCDR(例えば、3つのCDR全て)と同じであるか又は実質的に同じである(多数の)重鎖CDRアミノ酸残基を含み得る。
【0236】
好適な重鎖可変領域の例示的実施形態は、配列番号11、配列番号12及び配列番号13のアミノ酸配列を有する3つのCDR及び非ヒト抗体の重鎖フレームワーク領域に対して少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する天然ヒト抗体重鎖フレームワーク領域を含み得る非ヒト抗体の重鎖可変領域である。好ましくは、天然ヒト抗体は、非ヒト重鎖のCDR(例えば、3つのCDR全て)と同じであるか又は実質的に同じである(多数の)重鎖CDRアミノ酸残基を含み得る。
【0237】
本発明の方法は、相補性軽鎖をコード化する核酸で宿主細胞を形質転換することをさらに含み得る。
【0238】
望ましいならば、相補性軽鎖は、重鎖をコード化するのと同じ核酸によってコード化され得る。
【0239】
そのような相補性軽鎖は、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列を有する3つのCDR及び非ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域を含み得る非ヒト抗体の軽鎖可変領域を含み得る。好ましくは、天然ヒト抗体は、非ヒト軽鎖のCDR(例えば、3つのCDR全て)と同じか又は実質的に同じである(多数の)軽鎖CDRアミノ酸残基を含み得る。
【0240】
そのような相補性軽鎖は、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のアミノ酸配列を有する3つのCDR及び非ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域を含み得る非ヒト抗体の軽鎖可変領域を含み得る。好ましくは、天然ヒト抗体は、非ヒト軽鎖のCDR(例えば、3つのCDR全て)と同じか又は実質的に同じである(多数の)軽鎖CDRアミノ酸残基を含み得る。
【0241】
更に別の態様では、本発明は、ヒト化又はハイブリッド抗クラステリン抗体を作製する方法であって、軽鎖可変領域をコード化する核酸で宿主細胞を形質転換することを含み得る方法に関する。
【0242】
好適な軽鎖可変領域の例示的実施形態は、配列番号4、配列番号5及び配列番号6のアミノ酸配列を有する3つのCDR及び非ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域を含み得る非ヒト抗体の軽鎖可変領域である。好ましくは、天然ヒト抗体は、非ヒト軽鎖のCDR(例えば、3つのCDR全て)と同じか又は実質的に同じである(多数の)軽鎖CDRアミノ酸残基を含む。
【0243】
好適な軽鎖可変領域の例示的実施形態は、配列番号14、配列番号15及び配列番号16のアミノ酸配列を有する3つのCDR及び非ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%同一であるアミノ酸配列を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域を含み得る非ヒト抗体の軽鎖可変領域である。好ましくは、天然ヒト抗体は、非ヒト軽鎖のCDR(例えば、3つのCDR全て)と同じか又は実質的に同じである(多数の)軽鎖CDRアミノ酸残基を含む。
【0244】
本発明の方法は、相補性重鎖をコード化する核酸で宿主細胞を形質転換することをさらに含み得る。
【0245】
望ましいならば、相補性重鎖は、軽鎖をコード化するのと同じ核酸によりコード化することができる。
【0246】
抗体の医薬組成物及びそれらの使用
別の態様では、本発明は、例えば、本明細書中で記載するヒト化又はハイブリッド抗体、本明細書中に記載する抗原結合フラグメント又は本明細書中に記載する単離された抗体及び薬剤的に許容される担体を含み得る医薬組成物に関する。
【0247】
本発明の更に別の態様は、本明細書中に記載する単離された抗体又は抗原結合フラグメントの、疾患の治療又は診断における使用に関する。
【0248】
本発明のさらに別の態様は、本明細書中に記載する医薬組成物及び化学療法剤を含む併用療法に関する。
【0249】
本発明によれば、医薬組成物は、化学療法剤と同時に投与され得る(投与可能である)。
【0250】
また本発明によれば、医薬組成物及び化学療法剤は、異なる時間間隔で投与され得る(投与可能である)。
【0251】
さらに本発明によれば、化学療法剤を抗体又は抗原結合フラグメントに共役させることができる。
【0252】
活性成分に加えて、医薬組成物は、水、PBS、塩溶液、ゼラチン、油、アルコール、並びに活性化合物を薬剤的に用いることができる製剤に加工するのを促進する他の賦形剤及び助剤を含む、薬剤的に許容される担体を含み得る。他の例では、そのような製剤を滅菌することができる。
【0253】
本明細書中で用いられる場合、「医薬組成物」とは、薬剤的に許容される希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント及び/又は担体とあわせた治療有効量の薬剤を意味する。「治療有効量」とは、本明細書中で用いられる場合、所定の状態及び投与法に対して治療効果を提供する量を指す。そのような組成物は、液体又は凍結乾燥若しくは他の方法で乾燥させた処方であり、種々の緩衝液内容物(例えば、Tris−HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH及びイオン強度の希釈液、表面への吸収を防止するアルブミン又はゼラチンなどの添加剤、界面活性剤(例えば、Tween 20、Tween 80、Pluronic F68、胆汁酸塩)を含む。可溶化剤(例えば、グリセロール、ポリエチレングリセロール)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、増量物質又は張性修飾剤(例えば、ラクトース、マンニトール)、ポリエチレングリコールなどのポリマーのタンパク質に対する共有結合、金属イオンとの錯体形成、或いはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどのポリマー化合物の粒子状製剤中若しくは上へ、或いはリポソーム、ミクロエマルジョン、ミセル、単層若しくは多重層ベシクル、赤血球ゴースト、又はスフェロプラスト上への物質の組み入れ。そのような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、インビボの放出速度、及びインビボのクリアランス速度に影響を及ぼすであろう。制御放出又は持続放出性組成物には、親油性デポー(例えば、脂肪酸、ワックス、油)中処方が含まれる。ポリマー(例えば、ポロキサマー又はポロキサミン)でコーティングされた粒子状組成物も本発明に含まれる。本発明の組成物の他の実施形態は、粒子状保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤又は非経口、肺、鼻、経口、膣、直腸経路をはじめとする種々の投与経路のための浸透エンハンサーを組み入れる。一実施形態では、医薬組成物は、非経口、がん近傍(paracancerally)、経粘膜、経皮、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹腔内、心室内、頭蓋内及び腫瘍内投与される。
【0254】
さらに、本明細書中で用いられる場合、「薬剤的に許容される担体」又は「医薬担体」は、当該技術分野で公知であり、0.01〜0.1M若しくは0.05Mのリン酸塩緩衝液又は0.8%の食塩水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに、そのような薬剤的に許容される担体は、水性又は非水性溶液、懸濁液、及びエマルジョンであり得る。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、及びオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステルである。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョン又は懸濁液(食塩水及び緩衝化媒体を含む)が挙げられる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロース及び塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル又は不揮発性油が挙げられる。静脈内ビヒクルには、流体及び栄養補給剤、電解質補給剤、例えばリンゲルデキストロースをベースとするものなどが含まれる。防腐剤及び他の添加剤、例えば、抗菌剤、酸化防止剤、照合剤(collating agent)、不活性ガスなども存在し得る。
【0255】
本発明で利用される医薬組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、鞘内、心室内、経皮、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所、舌下、又は直腸手段をはじめとするが、これらに限定されない様々な経路により投与することができる。
【0256】
本開示のための「治療」という用語は、治療的処置及び予防的又は防止的手段の両方を指し、この場合、目的は、標的とされる病的状態又は障害を防止又は減速(低減)することである。治療を必要とする者としては、障害にすでに罹っている者並びに障害に罹りやすい者又は障害が予防されるべき者が挙げられる。
【0257】
抗体及び抗原結合フラグメントは、種々の疾患の治療において治療的に有用であり得る。ある例では、抗体又は抗原結合フラグメントは、対象の抗原を発現する細胞と相互作用し、ADCCを媒介することにより免疫学的反応を誘発することができる。他の例では、抗体又はフラグメントは、抗原とそのタンパク質パートナーとの相互作用をブロックすることができる。さらに別の例では、抗体又はフラグメントは抗原を隔離することができる。
【0258】
「化学療法剤」は、がんの治療で有用な化合物である。化学療法剤の例としては、アルキル化剤、例えばチオテパ及びシクロホスファミド;スルホン酸アルキル、例えばブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファン;アジリジン、例えばベンゾドーパ、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)及びウレドパ(uredopa);エチレンイミン(ethylenimine)及びメチルメラミン(methylamelamine)例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチロロメラミン(trimethylolomelamine);窒素マスタード、例えばクロランブシル、クロマファジン(chlomaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、酸化メクロレタミン塩酸塩、メルファラン、ノブエンビキン(novembichin)、フェネステリン、プレドニマスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;ニトロソウレア(nitrosurea)、例えばカルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチン;抗生物質、例えばアクラシノマイシン(aclacinomysin)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリケアマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルチノフィリン(carzinophilin)、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、クエラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝剤、例えば例えばメトトレキサート及び5−フルオロウラシル(5−FU);葉酸類似体、例えばデノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサート;プリン類似体、例えばフルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン;ピリミジン類似体、例えばアンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジン;アンドロゲン、例えばカルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン;抗副腎皮質剤(anti-adrenals)、例えばアミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン;葉酸補給剤、例えばフォリン酸(frolinic acid);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトレキサート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルチン;ジアジクオン;エルフォミチン(elfomithine);酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィドリン酸(podophyllinic acid);2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK7;ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’=−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタキセル及びドセタキセル(doxetaxel);クロランブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;白金類似体、例えばシスプラチン及びカルボプラチン;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;CPT−11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;及び前記のいずれかの薬剤的に許容される塩、酸又は誘導体が挙げられる。腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼを阻害する4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びトレミフェン(Fareston)をはじめとする抗エストロゲン剤;並びに抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリン;並びに前記のいずれかの薬剤的に許容される塩、酸又は誘導体もこの定義に含まれる。
【0259】
抗体共役体
本発明の抗体又は抗原結合フラグメントは、検出可能な部分と(すなわち、検出又は診断目的のために)又は治療的部分と(例えば、化学療法剤など、治療目的のために)共役させることができる。
【0260】
「検出可能な部分」は、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、化学的及び/又は他の物理的手段により検出可能な部分である。検出可能な部分は、直接的及び/又は間接的(例えば、これらに限定されるものではないが、DOTA又はNHS結合などの結合により)のいずれかで本発明の抗体及びそれらの抗原結合フラグメントと、当該技術分野で周知の方法を用いてカップリングさせることができる。様々な検出可能部分を、必要とされる感受性、結合の容易さ、安定性要件及び利用可能な器具類に応じて選択して、使用することができる。好適な検出可能な部分としては、これらに限定されるものではないが、蛍光標識、放射性標識(例えば、限定されないが、125I、In111、Tc99、I131であり、PETスキャナー用のポジトロン発光同位体等を含む)、核磁気共鳴活性標識、発光標識、化学発光標識、発色団標識、酵素標識(例えば、これらに限定されないが、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなど)、量子ドット及び/又はナノ粒子が挙げられる。検出可能な部分は、検出可能なシグナルを生成及び/又は産生させることができ、それにより、検出可能な部分からのシグナルが検出されるのを可能にする。
【0261】
本発明の別の例示的実施形態では、抗体又はその抗原結合フラグメントは、治療部分(例えば、薬剤、細胞毒性部分)をカップリング(修飾)させることができる。
【0262】
例示的な実施形態では、抗体及び抗原結合フラグメントは、化学療法剤又は細胞毒性剤を含み得る。例えば、抗体及び抗原結合フラグメントを化学療法剤又は細胞毒性剤と結合させることができる。本出願の別の箇所で記載されているものに加えて、そのような化学療法薬又は細胞毒性剤としては、これらに限定されないが、イットリウム−90、スカンジウム−47、レニウム−186、ヨウ素−131、ヨウ素−125、及び当業者により認識されている他の多くのもの(例えば、ルテチウム(例えば、Lu177)、ビスマス(例えば、Bi213)、銅(例えば、Cu67))が挙げられる。他の例では、化学療法薬又は細胞毒性剤は、当業者に知られているものの中でも、5−フルオロウラシル、アドリアマイシン、イリノテカン、タキサン、シュードモナスエンドトキシン、リシン、及び他の毒素から構成されていてもよい。
【0263】
或いは、本発明の方法を実施するために、また当該技術分野で公知のように、本発明の抗体又は抗原結合フラグメント(結合しているかどうかにかかわらず)と、本発明の抗体又は抗原結合フラグメントと特異的に結合することができ、所望の検出可能部分、診断的部分又は治療的部分を有していてもよい第2の分子(例えば、二次抗体など)とを組み合わせて用いることができる。
【0264】
治療法
本発明のさらなる態様は、クラステリンを発現するがん細胞の成長を低減するか、又はクラステリン発現細胞を含む腫瘍の容積を低減する方法に関する。この方法は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単離されたヒト抗体、ハイブリッド抗体及びそのフラグメントなどの抗クラステリン抗体を、必要とするほ乳類に投与することを含み得る。
【0265】
この方法は、化学療法剤を投与することをさらに含み得る。
【0266】
本発明はまた、そのさらなる態様において、増大したクラステリン発現又は分泌と関連する疾患の治療法にも関する。この方法は、本明細書中で記載するヒト化若しくはハイブリッド抗体、本明細書中に記載する抗原結合フラグメント又は本明細書中に記載する単離された抗体を、必要とするほ乳類に投与することを含み得る。
【0267】
そのような治療法から恩恵を受ける、必要とするほ乳類としては、例えば、がん腫を有するほ乳類、クラステリンレベルが上昇したほ乳類、血漿又は血液クラステリンレベルが上昇したほ乳類、上皮間葉移行が可能な細胞を有しているか又は有することが可能なほ乳類、クラステリン(プレクラステリン若しくは分泌されたクラステリン)又はクラステリン発現若しくは分泌(血液若しくは血漿クラステリンを含む)の増加したレベルに関連する疾患を有するほ乳類などを挙げることができる。
【0268】
本発明の別の態様は、本明細書中で記載するヒト化又はハイブリッド抗体、本明細書中に記載する抗原結合フラグメント又は本明細書中に記載する単離された抗体の、クラステリン発現若しくは分泌に関連する疾患の治療用医薬の製造における使用に関する。
【0269】
キット及びアッセイ
さらなる態様では、本発明は、例えば、本明細書中で記載するヒト化又はハイブリッド抗体、本明細書中に記載する抗原結合フラグメント又は記載される単離された抗体を含み得るバイアル(複数可)を含むキットを提供する。このキットは、検出目的又は治療目的で用いることができる。
【0270】
別の例示的実施形態では、キットは、本明細書中に記載する単離された核酸又は本明細書中に記載するベクターを含み得る。そのようなキットは、相補性核酸の検出、或いはコード化するタンパク質の発現に有用であり得る。
【0271】
本発明は、したがって、クラステリンを含むか又は含むことが疑われる試料を、本明細書中で記載するヒト化若しくはハイブリッド抗体、本明細書中に記載する抗原結合フラグメント又は記載される単離された抗体と接触させることにより、クラステリン(プレクラステリン及び分泌されたクラステリン)を検出する方法にも関する。検出は、抗原の抗体に対する結合を検出できる適切なセンサーを有する装置(例えば、BIAcore(商標)、マイクロプレートリーダー、分光光度計など)で実施される。そのような装置は、コンピュータシステムを備えていてもよい。
【0272】
本明細書中で用いられる場合、可変領域に関して「類似しているか、重ね合わせが可能な三次元構造」という用語は、コンピュータ処理されたモデルを使用すると、指定された可変領域が別の可変領域と類似した方法で抗原結合部位が暴露されるのを可能にする立体配座を有することを意味する。可変領域は、可変領域アミノ酸のコンピュータ処理された表示が別の可変領域の対応するアミノ酸と類似した空間での位置を占める場合、重ね合わせが可能であるとされる。
【0273】
本明細書中で用いられる場合、「モデル化された可変領域」という用語は、密接に関連する抗体可変領域の既知三次元構造から得られる可変領域のコンピュータ処理された表示を意味する。
【0274】
本明細書中で用いられる場合、「非ヒト」という用語は、齧歯類(例えば、マウス、ラットなど)、ウサギ又は非ヒト霊長類等を包含するが、これらに限定されるものではない。
【0275】
本明細書中で用いられる場合、「非ヒト相補性決定領域アミノ酸残基」という用語は、したがって、相補性決定領域のアミノ酸残基が、非ヒト、典型的にはマウスなどの齧歯類に由来することを意味する。
【0276】
本明細書中で用いられる場合、「非ヒト親抗体」という用語は、したがって、ヒト化手順の出発物質として用いられるヒト以外から得られる抗体を包含する。
【0277】
「宿主細胞を形質転換する」という用語は、所望の核酸を宿主細胞中に移すか又は導入するための当該技術分野で公知のいくつかの技術を含む。そのような技術としては、感染、リポフェクション、注入、形質導入、ヌクレオフェクション(nucleofection)、エレクトロポレーション、ソノポレーション(sonoporation)、熱ショック、マグネトフェクション(magnetofection)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0278】
非ヒト重鎖又は軽鎖CDRアミノ酸残基に関して「移入する」という用語は、物理的及びコンピュータ処理された方法、例えば、クローニング技術、核酸又はタンパク質の化学合成、コンピュータで生成させたヒト化抗体等を包含する。本明細書中で用いられる場合、アミノ酸の数に関して「実質的に同じ」という用語は、±3アミノ酸、又は好ましくは±2アミノ酸、又はなおいっそう好ましくは±1アミノ酸の変動が許容され得ることを意味する。
【実施例】
【0279】
実施例1
抗クラステリンマウスモノクローナル抗体の設計によるヒト化
マウス16B5モノクローナル抗体の可変領域の3Dモデリング
この作業は、2つの異なるマウス抗体(Protein Data Bank(PDB)コードはそれぞれ1Q9Q及び1TY7)の利用可能な結晶構造において3つの軽鎖残基及び7つの重鎖残基を突然変異させ、続いてテンプレート構造を重ね合わせることにより軽鎖及び重鎖をアセンブリすることによって、容易に達成された。CDR−H3ループの一部は、16B5の重鎖とも高い配列類似性を有するが、マウステンプレート構造とは異なり、CDR−H3ループに関して同じ長さを示す、別の抗体構造(PDBコードUJ3、ヒト化抗体)に基づいていた。結果として得られる構造をAMBER力場でのエネルギーの最小化により精製し、次いでその後の分析で使用した。この場合、利用可能な構造テンプレートに対してマウス16B5配列の高い相同性が与えられるならば、結果として得られる相同性モデルは良好な品質であることが期待される。それにもかかわらず、本発明者等は、Modeller又はComposerなどの一般的な3D相同性モデリングプログラム又はWAMソフトウェアで実施されるような抗体専門の3D相同性モデリングを用いることにより、マウス16B5可変領域をモデル化した平行対照相同性モデリング実験で、匹敵する結果が得られた。マウス16B5抗体のモデル化された可変領域を図1に示す。
【0280】
16B5源ドナー(マウス)アミノ酸配列及びモデル化構造の特性化
このステップを実施して、ヒト性指数を推定し、CDR、カノニカル残基、鎖間充填(VH/VL界面残基)、可変領域/定常領域充填(VH/CH及びVL/CL界面残基)、異常なフレームワーク残基、潜在的なN及びO−グリコシル化部位、埋没残基、バーニアーゾーン残基、並びにCDRに対する近接性を表した。インターネットで利用可能な資料及びローカルソフトウェアを使用して、これらの特性を評価した。
【0281】
マウスCDRに対する最良のヒト軽鎖及び重鎖フレームワークの選択
最良のヒト軽鎖及び重鎖フレームワークの選択は、ヒト生殖細胞系データベース(VBASE)の局所コピー、他の配列ライブラリ(Genbank及びSwissProt)、並びにヒトフレームワークコンセンサス配列の組に対する標準配列相同性比較によっておこなった。BLAST検索を実施して、CDRループの長さが一致している一方で、フレームワーク領域のみ(したがって、CDRを除外する)で最高の相同性での配列一致を読み出した。PDBから同定された16B5可変配列と最も類似したヒト又はヒト化可変配列の構造を、構造比較のために、16B5可変領域のモデル化構造上に重ね合わせた。突然変異の候補位置でのアミノ酸のばらつきを評価するために、またヒト化に際して万一親和性消失の場合のバックアップとして好適なフレームワーク配列のプールを提供するために、いくつかの最も類似したヒトフレームワーク配列をまず保持した。最も近いヒトフレームワーク配列を図2でネズミ16B5配列と整列させる。
【0282】
立体配座及び抗原結合に影響を及ぼし得るマウスフレームワーク残基の同定
立体配座及び抗原結合に影響を及ぼし得るマウスフレームワーク残基の同定は、特に注意して対応するヒト配列に変異させなければならないアミノ酸を標識する重要なステップである。これらの残基は、親和性消失の場合に備えてマウス配列に対する復帰突然変異の第1候補である。これは、特に抗体−抗原複合体の実験的構造の非存在下での設計によるヒト化ステップの最も困難で予測不可能なステップである。このステップは、以下の1以上のカテゴリーでの残基の同定に依存する:カノニカル、CDR−H3、バーニアーゾーン、異常、CDR近接性(5Å以内)、鎖間充填、及びグリコシル化部位残基。これらの残基は、抗原結合部位及び親和性に直接的又は間接的に影響を及ぼす可能性がある。16B5抗クラステリンmAbの最終ヒト化配列は、CDR領域を改変することなく、ネズミ配列に対して、軽鎖において13のフレームワーク突然変異、及び重鎖において22のフレームワーク突然変異を必要とする。驚くべきことに、慎重に構造及び比較配列分析すると、これら全ての突然変異を導入し、したがってCDRグラフト技術により可能な最高のヒト化の程度(すなわち100%、CDRを除外する)に達することを目的とすることにより、高い抗原結合親和性を保持する可能性が高いことが示された。デザインされたヒト化抗体の三次元モデリングは、この予測を支持する。それにもかかわらず、本発明者等は、CDR近接残基(CDRから5Å以内に、軽鎖では3、重鎖では9)、重鎖と接触した1つの軽鎖残基,並びにマウス配列に戻る可能性がある複数の埋没残基(したがって、免疫原性である可能性が低い)(軽鎖では4、重鎖では6)をはじめとする復帰突然変異の候補残基を特定した。変異残基及び復帰突然変異の候補残基を図1及び図2に示す。
【0283】
さらなる構造分析
ヒト化配列を組換え発現に付す前に、さらなる構造分析には、シグナルペプチドの選択、アイソタイプの選択、及び可変領域/定常領域接合点での構造適合性の分析が含まれていた。加えて、マウスとヒト化抗体との間の鎖間充填及び可変/定常領域充填の比較分析により、16B5ヒト化の場合、ヒト化及びキメラ(マウス可変領域)鎖、すなわち、マウス/マウス(M/M)、マウス/ヒト化(M/H)、ヒト化/マウス(H/M)及びヒト化/ヒト化(H/H)を軽鎖/重鎖対形成として組み合わせがハイブリッド抗体の生成が可能であることが示された。抗クラステリン抗体について選択されたアイソタイプはヒトIgG2であった。ヒトIgG2は、本明細書中で開示するような阻止抗体の特質である強力なエフェクター機能を有さない。加えて、ヒトIgG2は、タンパク質分解により切断されにくく、これによりこのアイソタイプの抗体はインビボでより安定になる。
【0284】
マウス21B12モノクローナル抗体の可変領域の3Dモデリング
21B12マウス抗クラステリン抗体のモデリングは、16B5について前述した教唆にしたがって実施した。結果として得られるヒト化21B12は100のヒト化であり、重鎖で18の突然変異そして軽鎖で14の突然変異を必要とした。変異した残基及び復帰突然変異の候補残基を図7及び図8に示す。
【0285】
実施例2
抗クラステリン抗体の動態分析
これらの研究の目的は、抗クラステリン抗体の動態学的パラメータを決定することである。特に、16B5及び21B12抗クラステリンモノクローナル抗体のヒト化がヒトクラステリンに対するその結合の動態学的パラメータに影響を及ぼすかどうかを判定することである。この目的のために、BIAcore 3000を用いた動態分析法を開発した。ヒトクラステリンをセンサーチップ上に固定した。完全長抗体又はFabフラグメントを注入し、固定されたクラステリンと相互作用させた。この実施例は例示的抗体16B5を記載したが、21B12例示的抗体を同様の方法で調製し、試験した。
【0286】
クラステリンの固定化
HBST(10mMのHepes pH7.4、135mMのNaCl、3.4mMのEDTA、0.005%のTween20)を全てのBIAcore実験についてランニングバッファーとして使用した。組換えモノマークラステリンをCM3チップ上に通常のアミンカップリング法で5μl/分の流速にて固定した。表面を50mMのNHS/0.2MのEDCの混合物35μlで活性化した。10mMの酢酸ナトリウムpH4.5中クラステリンを、所望の量が捕捉されるまで注入した(60RU未満)。未反応エステルを35μlの1Mエタノールアミン塩酸塩−NaOH pH8.5で不活性化した。NHS/EDC及びエタノールアミンを同じ方法で注入することにより、対照表面を調製した。
【0287】
ヒト化抗クラステリンIgG2抗体の調製
軽鎖及び重鎖免疫グロブリンをコード化するcDNAを含む発現ベクターを、当業者によく知られている一時的トランスフェクション法を用いて293細胞で発現させた。両方の免疫グロブリン鎖のアミノ末端で組み込まれたシグナルペプチドにより、成熟IgG2を細胞の無血清培地から収集した。細胞の成長はトランスフェクション後5日間続き、その後、IgG2キメラモノクローナル抗体の精製のために培地を収集した。タンパク質Aアガロースを製造業者(シグマ・アルドリッチ・カナダ社(オンタリオ州オークビル))による指示どおりに使用して、タンパク質を精製した。
【0288】
マウス16B5及びHH16B5Fabの調製
パパインを1:100のモル比で用いて、4時間、室温にてマウス16B5IgGを処理した。4:1モル比のパパイン阻害剤E64を添加することにより、消化を停止させた。1mlのHiTrap Protein Gカラム上クロマトグラフィーによりFcフラグメントからFabフラグメントを分離した。Fabフラグメントを0.1Mのグリシン、pH2.7でカラムから溶出させた。100μlの2M Tris、pH9を含む管中に1mlのフラクションを集めることにより、pHを直ちに中和した。Fab含有画分をプールし、30kDaのMWカットオフのAmicon Ultra4遠心濃縮器で濃縮した。試料を、Superose 12サイズ排除カラム(10×300mm)を通して、20mMのHEPES、pH7.5、200mMのNaCl中で通過させて、Fab及びF(ab’)2の画分を分離した。Fab含有フラクションをプールし、30kDaのMWカットオフのAmicon Ultra 4遠心濃縮器で濃縮した。
【0289】
HH16B5Fabの調製に関して、プロトコルは、消化時間が室温で20時間であり、Fab及びFcフラグメントをHiTrap Protein Gカラムの代わりにHiTrap Protein Aカラム上で分離する以外は、マウスFabのプロトコルと非常に類似していた。F(ab’)2の存在を除く目的で小規模の試験から得られた結果に基づいて消化時間を増加させた。サイズ排除プロフィールから、より長時間の消化によりF(ab’)2フラグメントの存在は減少したが、完全には除去されなかったことが示された。タンパク質Gではなくむしろタンパク質Aに切り替えて、Fabフラグメントをタンパク質Gから溶出るために必要な低いpHにFabフラグメントが暴露されるのを回避した。Fabフラグメントはタンパク質Aカラムを通って流れ、Fcフラグメントはタンパク質Aにより保持された。サイズ排除分離をHEPES緩衝液の代わりにPBS中で実施した。同じ方法を用いて、21B12Fabフラグメントを調製した。
【0290】
マウス16B5及びHH16B5並びにFabの動態学的分析
50μl/分の流速で動態学的分析を実施した。完全長抗体(マウス若しくはヒト化)又はFabをHBST中で希釈した。濃度範囲は、完全長抗体については1.953〜31.25nMの範囲であり、Fabについては15.625〜250nMの範囲であった。各濃度をクラステリン及び対照表面上に5分間注入し、続いて5分間分離洗浄した。クラステリン表面は各抗体注入間で、50μlの20mM HClで再生した。
【0291】
クラステリンに対する抗体結合の動態学的分析
図3は、16B5完全長及びFab抗クラステリン抗体の動態学的パラメータの決定について得られた結果をまとめる。
完全長ヒト化16B5(HH16B5)の動態学的パラメータは、完全長マウス抗体(16B5)の動態学的パラメータと非常に類似し、このことは、クラステリンに対する抗体の結合にヒト化が影響を及ぼさなかったことを示唆する。しかし、ヒト化16B5Fab(HH16B5Fab)の動態学的パラメータはFabマウス抗体(16B5Fab)の動態学的パラメータよりも若干良好であり、このこともクラステリンに対する抗体の結合にヒト化が影響を及ぼさなかったことを示唆する。固定化ヒトクラステリンとマウス16B5又はヒト化16B5との間の相互作用のKは低いnM範囲にある。開発された方法を用いて抗クラステリン抗体のヒト化プロセス中の動態学的パラメータを比較することができる。
【0292】
図9は、21B12完全長及びFab抗クラステリン抗体の動態学的パラメータを決定するために得られた結果をまとめる。16B5について記載したように、21B12(HH21B12)のヒト化の結果、親マウス21B12抗体と類似した結合パラメータが得られた。固定化ヒトクラステリンとマウス21B12又はヒト化21B12との間の相互作用のKは低nM範囲にある。開発された方法を用いて、抗クラステリン抗体のヒト化プロセス中の動態学的パラメータを比較することができる。
【0293】
実施例3
細胞ベースのアッセイにおけるh16B5の生物学的活性
これらの研究を実施して、h16B5の生物学的活性をマウス16B5の生物学的活性と比較した。h16B5を試験するために、クラステリンをモノクローナル抗体でブロックすることによりがん細胞系の遊走及び浸潤を軽減できることを以前に示した2つのアッセイを用いた。
【0294】
がん細胞遊走に対する抗クラステリン抗体の活性を試験するために、標準的創傷治癒、又はスクラッチアッセイを使用した。このアッセイでは、EMT6細胞(マウス乳がん細胞系)を高密度で蒔き、細胞層に擦過傷を形成することにより傷つけた。0時で、広い露出した領域が明らかであり、これは細胞を37℃で15時間インキュベーションした後に直ちに埋まった(図4中、上の左側の図を参照)。市販の抗クラステリンポリクローナル(C−18、サンタクルーズバイオテック(カリフォルニア州サンタクルーズ))又は元のハイブリドーマから精製されたマウス16B5のいずれかの存在下で細胞をインキュベーションすると、露出した領域中の細胞数が減少した(図4中の上の右側の図を参照、市販及びハイブリドーマ16B5と表示)。創傷EMT6細胞を、キメラ16B5(図4下側のパネルMMを参照)、キメラ軽鎖とヒト化重鎖を含むハイブリッド抗体(図4下側のパネルMHを参照)、キメラ重鎖とヒト化軽鎖を含むハイブリッド抗体(図4下側のパネルHMを参照)、又は完全ヒト化16B5(図4下側のパネルHHを参照)とともにインキュベーションすることにより、細胞の露出した領域中への遊走もブロックされた。実際、ヒト化16B5は最も有効な阻害剤であるように見えた。さらに、キメラ及びマウス−ヒトハイブリッド抗体が遊走を阻害する能力は、どの免疫グロブリン鎖が16B5抗体中に含まれるかに関係なくクラステリンとの相互作用は同じであったことを示す。
【0295】
本発明者らは次に、種々のレベルの内因性クラステリンを分泌する、ヒト前立腺PC3及びDU145細胞系などの他の細胞系が、それらの浸潤行動及び増殖においてh16B5により影響を受け得るかどうかを判定した。マトリゲル中に蒔いた場合(図5、上側左手のパネル)、PC3腫瘍細胞系は、マトリゲル中に伸びる突起を有する星状形態を示し、これは浸潤性の増大と相関づけられている特性である(Thompson et al., 1992)。h16B5での処理(図5、上側右手のパネル)は、この星状形態を著しく低減し、このことは、クラステリン分泌がPC3細胞の浸潤性の表現型に寄与することを強く示唆する。DU145細胞は、PC3細胞で観察される星状形態を示さず、むしろマトリゲル中で球状構造を形成し(図5、下側左手のパネル)、これはh16B5の存在下で小さく、数も少ないようであった(図5、下側右手のパネル)。これらの結果は、h16B5ががん細胞系の浸潤性を低減する能力は、元のマウス16B5に匹敵することを示し、またヒト化プロセスは、抗体が分泌されたクラステリンの活性と相互作用し、ブロックする能力を改変しなかったことを示す。
【0296】
4つの異なるヒト膵臓細胞系由来の腫瘍を得、これをホルマリン中で固定し、パラフィン中に埋め、そしてスライドガラス上に切片を載せた。免疫組織化学をh16B5抗体で実施して、このがん徴候由来の腫瘍がクラステリンを発現したかどうかを判定した。腫瘍は、Aspc−1、BxPC−3、PANC−1、及びMiaPaCa−2由来であり、これらはすべて膵臓がん患者由来であった(ATCC(バージニア州マナッサス))。パラフィン包埋上皮膵臓腫瘍試料をスライドガラス上に置き、15分間50℃で固定した。2回キシレンで処理することによりパラフィン除去を実施し、続いて連続して5分間、100%、80%、及び70%エタノール中で洗浄して脱水した。スライドをPBS中で2回、5分間洗浄し、抗原回復溶液(クエン酸−EDTA)で処理して、抗原を曝露(unmask)した。スライドをHとともにメタノール中でインキュベートすることにより内因性過酸化物反応性種を除去し、スライドを無血清ブロッキング溶液(ダコサイトメーション)とともに20分間室温でインキュベートすることによってブロッキングを実施した。一次mAb(対照IgG又はh16B5)を5μg/mlで1時間、室温にて添加した。ビオチン結合ヒト抗カッパと、続いてストレプトアビジン−HRP3次抗体とともにインキュベートすることによって、H16B5反応性クラステリンを検出した。スライドをDAB−過酸化水素基質で5分未満処理し、その後、ヘマトキシリンで対比染色することによって、陽性染色が明らかになった。図11で示すように、4つの腫瘍すべてがクラステリン発現について陽性染色された(図11の右手パネルを参照)。興味深いことに、化学療法に対して耐性であることが知られている腫瘍(PANC−1及びMisPaCa−2)は最高レベルの分泌されたクラステリンを含んでいた。PANC−1細胞系を前立腺がん細胞系について記載したようにして、マトリゲル中で培養し、成長させた(前記参照)。細胞をTGFβ、並びに上皮間葉移行のインデューサー及び成長因子で刺激し、それにより細胞は膜を越えてマトリゲル中に遊走する(図12、上側の右手パネルを参照)。刺激された細胞をh16B5で処理すると、遊走は高度に阻害された(図12、下側右手パネル)。この結果は、h16B5が膵臓がん細胞の遊走をブロックすることができることを示し、抗体はこのがん徴候でも治療活性である可能性を有することを示す。
【0297】
実施例4
がんの動物モデルにおけるh16B5の生物学的活性
これらの研究を実施して、ヒトがんのモデルにおいてh16B5のインビボ有効性を測定した。アンチセンスオリゴヌクレオチド及び低分子干渉RNAターゲティングクラステリンは、前立腺がん異種移植片において、アポトーシス及びインビトロ化学受容性を誘導することが報告されている[1−4]。使用したモデル系は、アンドロゲン非感受性であり、この疾患の最もよく特性化されたモデルのうちの1つであるDU145ヒト前立腺がん細胞系を含んでいた。したがって、200万個の細胞をSCIDマウスの脇腹に皮下移植し、腫瘍を約100mmまで増殖させた。第1日に始めて、h16B5を5mg/kgの投与量で腹腔内(i.p.)注射し、そして第4日から、タキソテレ(TxT)を10mg/kgの投与量でi.p.注射した。h16B5注入を1週間に2回続け、その間、TxTを毎週投与した。図6で表すように、(原発)腫瘍の成長は、h16B5治療を受けた動物では対照と比較して有意に減少した。この効果は、単独療法群(対照をh16B5と比較、P=0.0104)及びTxTとの併用群(TxTをh16B5+TxTと比較、P=0.0395)の両方で起こった。この結果は、h16B5でのクラステリンのブロッキングは、腫瘍成長減少を引き起こし、TxTに関する腫瘍の化学受容性を増大させることを示す。
【0298】
PC−3前立腺がん細胞を移植することにより、異なる腫瘍モデルにおいて、第2の前立腺がんモデル研究を実施した。PC−3細胞はホルモン非感受性でもあるが、DU145細胞よりも若干侵入性が高いことが文書に記載されている。上述のように、細胞をSCIDマウスに皮下移植し、腫瘍が約100mmの容積に達した時点で(第1日と指定する)、治療を開始した。h16B5注射を第1日に5mg/kgでi.p.投与し、その後、1週間に2回続け、一方、10mg/kgの1回のTxT注射を第5日にi.p.投与した。TxTスケジュールでこの変更を実施した。なぜなら、PC−3細胞はDU145腫瘍と比較してこの化学療法薬に対して著しく感受性が高いことが判明したからである。
【0299】
この研究の結果を図10に示す。前述のように、h16B5のみを受けた動物における腫瘍は未治療の動物と比較してほぼ即時の応答を有することが観察された。h16B5治療群において平均腫瘍サイズが有意に減少し、その結果、第43日で対照群と比較して、37%減少することが判明した。生存もモニタリングし、対照群で動物が残っていない日(第43日)に、AB−16B5治療群では60%を越えるマウスが生き残っていることが観察された。全体的な生存率におけるこの増加は、h16B5を受けた動物における47%増加に変換できた。
【0300】
前立腺がん細胞に対するTxTの細胞毒性効果が観察されたが、腫瘍は注射後約18日でこの治療から回復するように見えた。TxT群における腫瘍の成長は、AB−16B5を受けた群の腫瘍を上回ってさえいた(第50日、図10を参照)。しかし、h16B5とTxTとの組み合わせは、腫瘍の成長を有意に遅らせ、その結果、腫瘍はTxT単独群と比較して41%小さくなった。ここでも、h16B5の存在は動物の生存を延長した。まとめると、これらのインビボ研究から得られた結果は、腫瘍における分泌されたクラステリンの機能を阻害するh16B5ヒト化抗体は、固形腫瘍の成長を有意に遅らせることができることを示す。
【0301】
実施例5
H16B5はがん細胞における分泌されたクラステリンの内在化を阻害する
前記開示の結果は、上皮間葉移行(EMT)の誘導が、がん細胞によるクラステリンの分泌に至ることを示す。さらに、本発明者等のデータは、これらのがん細胞によって分泌されるクラステリンがEMTの強力なインデューサーであることも示す。これらの発見は、分泌されたクラステリンが細胞外マトリックスにおける他の腫瘍関連因子との相互作用により間接的に、又はがん細胞の細胞表面上の受容体との相互作用により直接的に、のいずれかでこの効果を媒介することを意味する。正常な血清中に存在する分泌されたクラステリンは、補体カスケードの成員、レプチン、種々のアポリポタンパク質などの多くの異なるタンパク質に伴うすることが知られているが、がん細胞中又は腫瘍微環境中の分泌されたクラステリンのタンパク質パートナーの存在は、まだ比較的明らかになっていない。数例には、Jo及び共同研究者らにおる公開された報告(Jo et al., 2008)があり、血清除去により誘導されるストレス条件下で腫瘍が分泌するクラステリンはIGF−1に伴ったことが示された。加えて、前立腺がん細胞系中に含まれるクラステリンは、COMMD1と呼ばれるタンパク質と相互作用することが見出された(Zoubeidi et al., 2010)。この相互作用の結果、NF−カッパB関連経路の活性化が増大し、これにより次に前立腺がん細胞生存が促進された。これらの知見により、分泌されたクラステリンが腫瘍形成に寄与し得る方法のいくつかを解明され始めているが、それがどのようにEMTを促進するかについての分子機構は知られていない。
【0302】
この問題に取り組み始めるために、細胞ベースの実験を実施して、分泌されたクラステリンが、がん細胞と直接相互作用するか、細胞培地中の他の分泌された因子を介してであるかを判定した。これを測定するために、分泌されたクラステリンを蛍光標識し、BRI−JM01マウス乳がん細胞とともにインキュベートした。処理に24時間後に、蛍光シグナルが細胞の内部に含まれているのが見出された。短い時点にわたるこれらの細胞の分析により、蛍光標識され、分泌されたクラステリンが細胞により内在化されたことが明らかになった(図13を参照)。示されるように、内在化は、受容体依存性エンドサイトーシス経路と一致して時間と共に増加する。さらに、24時間後に生じる染色の斑点状及び核周辺パターン(図13中の白色矢印を参照)が、エンドソーム経路に沿って内在化されるタンパク質中でしばしば観察される。類似の結果がDU145ヒト前立腺がん細胞で観察された。
【0303】
h16B5がこの活性をブロックできるかどうかを試験することにより、この分泌されたクラステリン内在化をさらに調べた。h16B5又はアイソタイプ対照IgGの存在下で分泌されたクラステリン−Alexa480で細胞を処理した。図14で示されるように、分泌されたクラステリンのJM01細胞中への内在化は、h16B5の添加によりブロックされた。分泌されたクラステリンの内部核周囲染色が、対照IgGで処理された細胞において依然として観察された(図14中の白色矢印を参照)。
【0304】
まとめると、分泌されたクラステリンの内在化がh16B5の添加によって阻害され得ることを示すこれらの結果から、これは、抗体が分泌されたクラステリンにがん細胞におけるEMTを媒介させない機構の一つであり得ることが示唆される。
【0305】
本明細書中で記載する実験は、(例えば、可変領域(複数可)、定常領域、フレームワーク領域又はCDR(複数可)における)抗体のアミノ酸配列における特異的突然変異がどのように抗体の生物学的活性に影響を及ぼすかを判定するために実施することができる。例えば、1以上の突然変異がh16B5の可変軽鎖又は可変重鎖のフレームワーク領域(又はネズミ16B5)中に導入され得、そして腫瘍成長を本明細書中で記載するようにして評価することができる。
【0306】
変異体抗体及び抗原結合フラグメントのヒト又はネズミクラステリンに対する結合は、例えば、ELISA、ウェスタンブロット、表面プラズモン共鳴などのいくつか当該技術分野で公知の方法によって試験することができる。
【0307】
実施例6
抗クラステリン抗体はクラステリン変異体と結合することができる
本発明の抗体及び抗原結合フラグメントは、クラステリンのヒト及びネズミ形態の両方と結合する。これらの2つのタンパク質は、77%のアミノ酸配列同一性及び89%の類似性を共有する(図15を参照)。ネズミ及びヒト形態のアミノ酸配列を比較することにより、抗体がおそらくは両タンパク質において保存される線状又は立体構造エピトープと結合することを理解できる。抗体及び抗原結合フラグメントは、ヒト又はネズミクラステリンと少なくとも75%のアミノ酸同一性(80%、85%、90%、95%、99%、100%を包含する)を有する他の天然に存在する変異体並びに合成変異体(組換えタンパク質を含む)と結合することができると予想される。例えば、抗体及び抗原結合フラグメントは、配列番号56(ここで、+は例えば保存的アミノ酸置換などのアミノ酸置換を表す)又は配列番号57を含むアミノ酸配列を有するクラステリン変異体と結合することができる。
【0308】
本発明は、抗クラステリン抗体がヒト腫瘍において発現されるクラステリンを標的とすることを示す。抗クラステリン抗体、例えばh16B5の、ネズミ腫瘍クラステリンとの相互作用を示すために、4T1マウス乳房腫瘍から調製した凍結切片をh16B5とともにインキュベートした。手短に言うと、凍結切片を氷冷アセトンで10分間固定し、非特異的結合を市販のキット(ダコ・カナダ社(Dako Canada, Inc.)、オンタリオ州バーリントン)中で供給される試薬でブロックした。H16B5をマウス腫瘍切片とともに1時間、5μg/mlの濃度でインキュベートした。洗浄後、特異的染色を、HRP共役抗ヒトIgGとともにインキュベートすることによって明らかにした。対照試料をヒトアイソタイプ対照IgGと同じ方法で処理した。図16で示すように、ホースラディッシュペルオキシダーゼ着色から生じる褐色の着色により明らかなように、h16B5は4T1腫瘍においてネズミクラステリンを検出した(右パネルを参照、4T1−AB−16B5として表示)。対照抗体は抗原を明らかにしなかった(左のパネルを参照、4T1−ctlとして表示)。この結果は、h16B5により例示されるような抗クラステリン抗体が、マウス腫瘍で発現されるネズミクラステリンと相互作用することを示す。加えて、免疫蛍光法を用いた他の研究により、h16B5が、別のマウス乳がん細胞系であるBRI−JM01細胞で発現されたネズミクラステリンを検出したことが示された。
【0309】
本発明の抗体及び抗原結合フラグメントの、天然に存在する変異体又はクラステリンの合成変異体に対する結合は、例えば、前記方法をはじめとする当該技術分野で公知の方法により試験することもできる。
【0310】
CLU遺伝子は、ヒト、チンパンジー、イヌ、ウシ、マウス、ラット、ニワトリ及びゼブラフィッシュで保存されている。これらのモデルにおける抗体及び抗原結合フラグメントの試験は、本発明に含まれる。
【0311】
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【0312】
[参考文献]


【特許請求の範囲】
【請求項1】
クラステリンを発現又は分泌している細胞を含む腫瘍の体積を縮小するための抗クラステリン抗体の使用。
【請求項2】
前記抗クラステリン抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単離されたヒト抗体、ハイブリッド抗体及びそれらの断片からなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ハイブリッド抗体又はその断片が、非ヒト抗体の軽鎖可変領域及びヒト化抗体の重鎖可変領域を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記ハイブリッド抗体又はその断片が、非ヒト抗体の重鎖可変領域及びヒト化抗体の軽鎖可変領域を含む、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記腫瘍が子宮内膜癌、乳癌、肝細胞癌、前立腺癌、腎細胞癌、卵巣癌、膵癌、結腸直腸癌からなる群から選択される癌腫である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記癌腫が前立腺癌腫である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記癌腫が乳癌である、請求項5に記載の使用。
【請求項8】
非ヒト親抗体由来のヒト化抗体又はハイブリッド抗体であって、前記ヒト化抗体が、非ヒト相補性決定領域アミノ酸残基及び天然ヒト抗体のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基を含む重鎖可変領域並びに相補的軽鎖を含み、前記ヒト化抗体又はハイブリッド抗体がクラステリンに特異的に結合する、抗体。
【請求項9】
前記天然ヒト抗体が非ヒト親抗体の可変領域と同様の三次元構造を有する可変領域を含む、請求項8に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項10】
前記ヒト化抗体がクラステリン発現細胞又はクラステリン分泌細胞の遊走、浸潤又は増殖を阻害する、請求項8に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項11】
4.49x10−9M±8.5x10−10又はそれより良好な親和性を特徴とする、請求項8ないし10のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項12】
前記相補的軽鎖が,非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%の同一性を有し,軽鎖相補性決定領域中に非ヒト親抗体の対応する軽鎖相補性決定領域のアミノ酸と同一又は実質的に同一であるアミノ酸を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域由来のヒトフレームワーク領域アミノ酸を含む、請求項8ないし11のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項13】
前記ヒトフレームワーク領域アミノ酸残基が、非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも80%の同一性を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域に由来する、請求項12に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項14】
前記ヒトフレームワーク領域アミノ酸残基が、非ヒト親抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも83%の同一性を有する天然ヒト抗体軽鎖フレームワーク領域に由来する、請求項13に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項15】
前記ヒト化抗体H鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基が,非ヒト親抗体のH鎖フレームワーク領域と少なくとも70%の同一性を有し,非ヒト親抗体の対応するH鎖相補性決定領域のアミノ酸と同一又は実質的に同一であるいくつかのアミノ酸をH鎖相補性決定領域中に有する,天然ヒト抗体H鎖フレームワーク領域に由来する,請求項8ないし14のいずれかに記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項16】
前記ヒト化抗体重鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基が、非ヒト親抗体の重鎖フレームワーク領域と少なくとも73%の同一性を有する天然ヒト抗体重鎖フレームワーク領域に由来する、請求項15に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項17】
前記ヒト化抗体重鎖のヒトフレームワーク領域アミノ酸残基が、非ヒト親抗体の重鎖フレームワーク領域と少なくとも80%の同一性を有する天然ヒト抗体重鎖フレームワーク領域に由来する、請求項16に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項18】
前記重鎖可変領域が少なくとも1つの非ヒト相補性決定領域を含む、請求項8ないし17のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項19】
前記重鎖可変領域が少なくとも2つの非ヒト相補性決定領域を含む、請求項18に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項20】
前記重鎖可変領域が3つの非ヒト相補性決定領域を含む、請求項19に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項21】
前記軽鎖可変領域が少なくとも1つの非ヒト相補性決定領域を含む、請求項8ないし20のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項22】
前記軽鎖可変領域が少なくとも2つの非ヒト相補性決定領域を含む、請求項21に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項23】
前記軽鎖可変領域が3つの非ヒト相補性決定領域を含む、請求項22に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項24】
前記クラステリン発現細胞が癌細胞である、請求項8に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項25】
前記癌細胞がヒト癌細胞である、請求項24に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項26】
前記ヒト癌細胞が、子宮内膜癌、乳癌、肝細胞癌、前立腺癌、腎細胞癌、卵巣癌、メラノーマ、膵癌、肺癌、膀胱癌及び結腸直腸がんからなる群から選択される癌腫に由来する、請求項25に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項27】
前記癌腫が前立腺癌である、請求項26に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項28】
前記癌腫が乳癌である、請求項26に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体。
【請求項29】
a.配列番号25に対して少なくとも80%同一である軽鎖可変領域及び/又は配列番号29に対して少なくとも80%同一である重鎖可変領域を有し、配列番号25又は配列番号29と比べて少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで前記アミノ酸置換が相補性決定領域(CDR)の外側にある、抗体又は抗原結合性フラグメント;並びに
b.配列番号33に対して少なくとも80%同一である軽鎖可変領域及び/又は配列番号37に対して少なくとも80%の同一である重鎖可変領域を有し、配列番号33又は配列番号37と比べて少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、ここで前記アミノ酸置換が相補性決定領域(CDR)の外側にある、抗体又は抗原結合性フラグメント、
からなる群から選択される、クラステリンに特異的に結合できる抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項30】
前記少なくとも1つのアミノ酸置換が軽鎖可変領域の中に存在する、請求項29に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項31】
前記アミノ酸置換が重鎖可変領域の中に存在する、請求項29又は30に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項32】
前記アミノ酸置換が保存的である、請求項29ないし31のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項33】
前記軽鎖可変領域が配列番号26の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項29ないし32のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項34】
前記軽鎖可変領域が配列番号27の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項33に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項35】
前記軽鎖可変領域が配列番号28の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項34に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項36】
前記軽鎖可変領域が配列番号8の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項35に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項37】
前記軽鎖可変領域が配列番号8に記載されている、請求項36に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項38】
前記重鎖可変領域が配列番号30の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項29ないし37のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項39】
前記重鎖可変領域が配列番号31の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項38に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項40】
前記重鎖可変領域が配列番号32の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項39に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項41】
前記重鎖可変領域が配列番号7の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項40に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項42】
前記重鎖可変領域が配列番号7に記載されている、請求項41に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項43】
前記軽鎖可変領域が配列番号26の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含み、前記重鎖可変領域が配列番号30の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含む、請求項29に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項44】
前記軽鎖可変領域が配列番号27の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含み、前記重鎖可変領域が配列番号31の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含む、請求項43に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項45】
前記軽鎖可変領域が配列番号28の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含み、前記重鎖可変領域が配列番号32の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含む、請求項44に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項46】
前記軽鎖可変領域が配列番号8の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含み、前記重鎖可変領域が配列番号7の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含む、請求項45に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項47】
前記軽鎖可変領域が配列番号8に記載されており、前記重鎖可変領域が配列番号7に記載されている、請求項46に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項48】
前記軽鎖可変領域が配列番号34の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項29ないし32のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項49】
前記軽鎖可変領域が配列番号35の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項48に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項50】
前記軽鎖可変領域が配列番号36の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項49に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項51】
前記軽鎖可変領域が配列番号18の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項50に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項52】
前記軽鎖可変領域が配列番号18に記載される、請求項51に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項53】
前記重鎖可変領域が配列番号38の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項29ないし32又は48ないし52のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項54】
前記軽鎖可変領域が配列番号39の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項53に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項55】
前記軽鎖可変領域が配列番号40の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項54に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項56】
前記軽鎖可変領域が配列番号17の少なくとも90個の連続するアミノ酸を含む、請求項55に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項57】
前記軽鎖可変領域が配列番号17に記載される、請求項56に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項58】
前記軽鎖可変領域が配列番号34の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含み、前記重鎖可変領域が配列番号38の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含む、請求項29に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項59】
前記軽鎖可変領域が配列番号35の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含み、前記重鎖可変領域が配列番号39の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含む、請求項58に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項60】
前記軽鎖可変領域が配列番号36の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含み、前記重鎖可変領域が配列番号40の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含む、請求項59に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項61】
前記軽鎖可変領域が配列番号18の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含み、前記重鎖可変領域が配列番号17の少なくとも90個の連続するアミノ酸配列を含む、請求項60に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項62】
前記軽鎖可変領域が配列番号18に記載され、前記重鎖可変領域が配列番号17に記載される、請求項61に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項63】
前記抗体が定常領域のアミノ酸を含む、請求項8ないし62のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項64】
前記定常領域のアミノ酸がヒト抗体に由来する、請求項63に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項65】
ヒトIgG2定常領域を含む、請求項8ないし64のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項66】
前記抗原結合性フラグメントがscFv、aFab、aFab’又は(Fab’)である、請求項8ないし65のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項67】
細胞毒性部分と共役している、請求項8ないし66のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項68】
検出可能部分と共役している、請求項8ないし66のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項69】
クラステリン又はクラステリン変異体を発現する腫瘍細胞を含むがんの治療に用いる、請求項8ないし67のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項70】
クラステリン又はクラステリン変異体を発現する腫瘍細胞を含むがんの検出に用いる、請求項8ないし68のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項71】
転移の予防又は治療に用いる、請求項1ないし68のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項72】
請求項1ないし68のいずれか1項に記載の抗体又は抗原結合性フラグメントと競合することができる、単離された抗体又は抗原結合性フラグメント。
【請求項73】
軽鎖可変領域及び重鎖可変領域に非ヒト相補性決定領域アミノ酸残基及びヒトフレームワーク領域アミノ酸残基を含み、クラステリンに特異的に結合し、非ヒト親抗体の抗原結合性フラグメントより良好な親和性を有する、抗原結合性フラグメント。
【請求項74】
前記抗原結合性フラグメントが請求項8ないし28のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体に由来する、請求項73に記載の抗原結合性フラグメント。
【請求項75】
17x10−8M±2.97x10又はそれより良好である親和性を特徴とする、請求項73又は74に記載の抗原結合性フラグメント。
【請求項76】
請求項73又は75のいずれか1項に記載の抗原結合性フラグメントのアミノ酸配列を含む、単離された抗体。
【請求項77】
請求項8ないし72のいずれか1項に記載の抗体、請求項73ないし75のいずれか1項に記載の抗原結合性フラグメント又は請求項76に記載の単離された抗体の軽鎖可変領域及び/又は重鎖可変領域をコードする、単離された抗体。
【請求項78】
請求項77に記載の単離された抗体を含む、ベクター。
【請求項79】
前記ベクターが哺乳類発現ベクターである、請求項78に記載のベクター。
【請求項80】
請求項77に記載の単離された抗体若しくは請求項78又は79に記載のベクター含む、若しくは請求項8ないし72のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体、請求項73ないし75のいずれか1項に記載の抗原結合性フラグメント又は請求項76に記載の単離された抗体を発現する、単離された細胞。
【請求項81】
前記細胞が哺乳類細胞である、請求項80に記載の単離された細胞。
【請求項82】
請求項8ないし72のいずれか1項に記載の抗体、請求項73ないし75のいずれか1項に記載の抗原結合性フラグメント又は請求項76に記載の単離された抗体及び薬理学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項83】
請求項82に記載の医薬組成物及び化学療法剤を含む併用療法。
【請求項84】
前記化学療法剤がタキサンを含む、請求項83に記載の併用療法。
【請求項85】
前記タキサンがパクリタキセル又はドセタキセルである、請求項84に記載の併用療法。
【請求項86】
前記医薬組成物が化学療法剤と同時に投与される、請求項83ないし85のいずれか1項に記載の併用療法。
【請求項87】
前記医薬組成物が化学療法剤と異なる時間間隔で投与される、請求項83ないし86のいずれか1項に記載の併用療法。
【請求項88】
クラステリンを発現するがん細胞の増殖を減少させる方法であり、抗クラステリン抗体を必要とする哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項89】
請求項8ないし72のいずれか1項に記載の抗体、請求項73ないし75のいずれか1項に記載の抗原結合性フラグメント又は請求項76に記載の単離された抗体を投与することを含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
化学療法剤を投与することを更に含む、請求項88又は89に記載の方法。
【請求項91】
前記必要とする哺乳動物が高レベルのクラステリンを有する、請求項88ないし90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項92】
前記必要とする哺乳動物が高レベルのクラステリンに関連する疾患を有する、請求項88ないし90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項93】
前記必要とする哺乳動物が上皮間葉転換可能な細胞を保有しやすい、請求項88ないし90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項94】
前記必要とする哺乳動物がクラステリンを発現又は分泌する腫瘍を有する、請求項88ないし90のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記必要とする哺乳動物が癌腫を有する、88ないし94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記癌腫が前立腺癌である、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記癌腫が乳癌である、請求項95に記載の方法。
【請求項98】
クラステリン発現に関連する疾患を治療するための方法であり、請求項8ないし72のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体、請求項73ないし75のいずれか1項に記載の抗原結合性フラグメント又は請求項76に記載の単離された抗体を必要とする哺乳動物に投与することを含む、方法。
【請求項99】
クラステリン発現に関連する疾患を治療するための薬物の製造における、請求項8ないし72のいずれか1項に記載のヒト化抗体又はハイブリッド抗体、請求項73ないし75のいずれか1項に記載の抗原結合性フラグメント又は請求項76に記載の単離された抗体の使用。
【請求項100】
クラステリンに特異的に結合できる非ヒト抗体の非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基及び天然ヒト抗体重鎖可変領域のフレームワーク領域アミノ酸を含む重鎖可変領域を発現すること、並びに相補的軽鎖可変領域を発現すること、を含むヒト化又はハイブリッドの抗クラステリン抗体を製造する方法。
【請求項101】
前記天然ヒト抗体重鎖可変領域が、a)非ヒト抗体の重鎖と同様又は同一の三次元構造、b)非ヒト抗体の重鎖フレームワーク領域と少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するフレームワーク領域及び/又はc)非ヒト重鎖CDRアミノ酸残基と同一又は実質的に同一な重鎖CDR中のいくつかのアミノ酸残基を有する、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
クラステリンに特異的に結合できる非ヒト抗体の非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基及び天然ヒト抗体軽鎖可変領域のフレームワーク領域アミノ酸を含む軽鎖可変領域を発現すること、並びに相補的な重鎖可変領域を発現すること、を含むヒト化又はハイブリッドの抗クラステリン抗体を製造する方法。
【請求項103】
前記天然ヒト抗体軽鎖可変領域が、a)非ヒト抗体の軽鎖と同様又は同一の三次元構造、b)非ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域と少なくとも70%同一なアミノ酸配列を有するフレームワーク領域及び/又はc)非ヒト軽鎖CDRアミノ酸残基と同一又は実質的に同一な軽鎖CDR中のいくつかのアミノ酸残基を有する、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
請求項8ないし72のいずれか1項に記載の抗体、請求項73ないし75のいずれか1項に記載の抗原結合性フラグメント、請求項76に記載の単離された抗体、請求項77に記載の単離された核酸又は請求項78又は79に記載のベクターを含む、1つまたは複数のバイアルを含むキット。
【請求項105】
必要とする個体におけるクラステリンを発現又は分泌する細胞を含む腫瘍の体積を縮小させる方法であり、抗クラステリン抗体を投与することを含む方法。
【請求項106】
前記抗クラステリン抗体が、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、単離されたヒト抗体、ハイブリッド抗体及びそれらの断片からなる群から選択される、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記ハイブリッド抗体又はその断片が、非ヒト抗体の軽鎖可変領域及びヒト化抗体又はヒト抗体の重鎖可変領域を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記ハイブリッド抗体又はその断片が、非ヒト抗体の重鎖可変領域及びヒト化抗体又はヒト抗体の軽鎖可変領域を含む、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記腫瘍が、子宮内膜癌、乳癌、肝細胞癌、前立腺癌、腎細胞癌、卵巣癌、膵癌及び結腸直腸癌からなる群から選択される、請求項105ないし108のいずれか1項に記載の方法。
【請求項110】
前記癌腫が前立腺癌である、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記癌腫が乳癌である、請求項109に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図5】
image rotate

【図7】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公表番号】特表2013−511288(P2013−511288A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540240(P2012−540240)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001882
【国際公開番号】WO2011/063523
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(507196491)アレシア・バイオセラピューティクス・インコーポレーテッド (7)
【出願人】(595006223)ナショナル リサーチ カウンシル オブ カナダ (25)
【Fターム(参考)】