説明

抗コリン作用化合物及びβ−擬似剤に基づく新規医薬組成物

【課題】頻脈、動悸、狭心症様愁訴及び不整脈といった、β交感神経擬似剤の副作用を実質的に減少することができる新規医薬組成物及びその使用を提供すること。
【解決手段】本発明は、持続性抗コリン作用剤及び持続性β-擬似剤に基づく新規医薬組成物に関する。本発明はまた、該医薬組成物の製造方法及び気道の疾患の治療における該組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持続性抗コリン作用剤及び持続性β-擬似剤に基づく新規医薬、その製造方法及び呼吸性の病気の治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
β-擬似剤及び抗コリン作用剤は、喘息等の閉塞性呼吸性の病気を治療するための気管支痙攣解消剤(bronchospasmolytics)として首尾よく使用できることが先行技術から知られている。活性物質フォルモテロール等のβ-交感神経擬似作用を有する物質もまた先行技術から公知であるが、ヒトに投与したときに望ましくない副作用と関連し得る。
一般的に、中枢神経系の影響は、不安、興奮、不眠、恐怖、指の震え、突発的な発汗及び頭痛として現れる。ここで、吸入投与は一般的に経口投与又は非経口投与よりも苛酷ではないが、吸入投与によってもこれらの副作用は除かれない。
喘息剤として使用されるβ-交感神経擬似剤の副作用は、多かれ少なかれ、主に心臓への明白なβ1-刺激作用と関連する。それにより、頻脈、動悸、狭心症様愁訴及び不整脈が起こる[非特許文献1]。
【0003】
【非特許文献1】P.T. Ammon (Ed.), Medicament Side-effects and Interactions, Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft, Stuttgart 1986,S. 584
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
驚くべきことに、持続性β-交感神経擬似剤と持続性抗コリン作用剤とを組み合わせることにより、上述の副作用を実質的に減少させることができることが分かった。
また、非常に驚くべきことに、持続性抗コリン作用剤及び持続性β-擬似剤の気管支痙攣効果が付加的に増加するということが分かった。
従って、本発明の活性成分の組み合わせによると、個々の物質と比較して、また、先行技術から公知の組み合わせと比較して、COPD及び喘息のいずれの場合にも実質的に効果が上昇することを期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
持続性β-擬似剤としては、本発明の活性成分と組み合わせて、以下の活性成分を好ましく使用することができる:
バンブテロール(bambuterol)、ビトルテロール、カルブテロール(carbuterol)、セレンブテロール(clenbuterol)、フェノテロール、フォルモテロール、ヘキソプレナリン、イブテロール(ibuterol)、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール(reproterol)、サルメテロール、スルホンテロール(sulfonterol)、テルブタリン、トルブテロール(tolubuterol)、
4-ヒドロキシ-7-[2-{[2-{[3-(2-フェニルエトキシ)プロピル]スルホニル}エチル]-アミノ}エチル]-2(3H)-ベンゾチアゾロン、
【0006】
1-(2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、
1-[3-(4-メトキシベンジル-アミノ)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-メトキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、
【0007】
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-n-ブチルオキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-{4-[3-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]-2-メチル-2-ブチルアミノ}エタノール、
5-ヒドロキシ-8-(1-ヒドロキシ-2-イソプロピルアミノブチル)-2H-1,4-ベンズオキサジン-3-(4H)-オン、
【0008】
1-(4-アミノ-3-クロロ-5-トリフルオロメチルフェニル)-2-tert.-ブチルアミノ)エタノール又は
1-(4-エトキシカルボニルアミノ-3-シアノ-5-フルオロフェニル)-2-(tert.-ブチルアミノ)エタノール、
又はそれらのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物、及びそれらの薬理学的に適合できる酸付加塩であってもよい。
【0009】
以下のものが、本発明の活性成分と組み合わせて使用するのに好ましい持続性β-擬似剤である:
フォルモテロール、サルメテロール、
4-ヒドロキシ-7-[2-{[2-{[3-(2-フェニルエトキシ)プロピル]スルホニル}エチル]-アミノ}エチル]-2(3H)-ベンゾチアゾロン、
1-(2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、
1-[3-(4-メトキシベンジル-アミノ)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、
【0010】
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-メトキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-n-ブチルオキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール又は
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-{4-[3-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]-2-メチル-2-ブチルアミノ}エタノール、
又はそれらのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物、及びそれらの薬理学的に適合できる酸付加塩であってもよい。
【0011】
特に、以下の物質を本発明の医薬組成物におけるβ-擬似剤として使用するのが好ましい:そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物の形態であってよく、及び薬理学的に適合できる酸付加塩の形態であってもよいフォルモテロール又はサルメテロール。
上述したように、持続性β-擬似剤は、その生理的及び薬理的に適合できる塩の形態に変換して使用することができる。例として、以下の酸との付加塩をあげることができる:塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、乳酸、クエン酸又はマレイン酸。さらに、上述の酸の混合物も使用することができる。
【0012】
付加的な気管支痙攣効果の観点から、持続性β-擬似剤としては、フォルモテロールのフマレート(フォルモテロールFUと省略する)が特に好ましい。ここで、活性物質フォルモテロールは、エナンチオマー又はジアステレオマー混合物として、又は個々のエナンチオマー/ジアステレオマーの形態で使用することができる。本発明において、同じ好ましい有意性を有するサルメテロールもまた持続性β-擬似剤として使用することができる。サルメテロールは、そのラセミ体、エナンチオマーの形態であってもよく、(R)エナンチオマーが最も好ましく、薬理的に許容できるそれらの付加塩であってもよい。
【0013】
持続性抗コリン作用剤は、基本的に先行技術から公知のものであるが、グリコピロニウムブロミド及び二環式及び三環式アミノアルコールのエステル等が適当であり、そのような抗コリン剤としては、欧州特許公開第 0 418 716号及び国際特許出願 WO 92/16528から公知である。これらの文献の内容はすべて本明細書に含まれるものとする。
【0014】
本発明の枠内で、グリコピロニウムブロミドが持続性抗コリン作用剤として特に考慮することができ、及び以下の式(I)の化合物及びそれらのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物の形態であってよい化合物も二環式及び三環式アミノアルコールのエステルとして考慮することができる。
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、
Aは、一般式(II)の基を示し;
【0017】
【化2】

【0018】
(ここで、
Qは、二重に結合した基 -CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-又は以下の基の一つを示し、
【0019】
【化3】

【0020】
Rは、ハロゲン又はヒドロキシにより置換されていてもよいC1-C4アルキル基を示し、
R'は、C1-C4アルキル基を示し、及び
R及びR'はまた一緒になってC4-C6アルキレン基を示すことができ、及び
当量のアニオンXがN原子の正電荷に対応する)
Zは、以下の基の一つを示す。


【0021】
【化4】

【0022】
(ここで、
Yは、単結合、O又はS原子、又は以下の基;
-CH2-、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-OCH2-又は-SCH2-
の一つを示し;
R1は、水素、OH、ヒドロキシにより置換されていてもよいC1-C4アルコキシ又はC1-C4アルキル基を示し;
R2は、チエニル、フェニル、フリル、シクロペンチル又はシクロヘキチル基を示し、これらの基はまたメチル基により置換されていてもよく、チエニル及びフェニルはまたフッ素又は塩素により置換されていてもよい;
R3は、水素、又はハロゲンもしくはC1-C4アルキル基により置換されていてもよいチエニルもしくはフェニル基を示す。]
【0023】
本発明の枠内で、グリコピロニウムブロミドが持続性抗コリン作用剤として特に考慮することができ、及び以下に示す、上記式(I)の化合物及びそれらのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物の形態であってよい化合物も二環式及び三環式アミノアルコールのエステルとして考慮することができる。
【0024】
[式中、
Aが一般式(II)の基を示し、
【0025】
【化5】

【0026】
(ここで、
Qは、二重に結合した基 -CH=CH-、-CH2-CH2-又は
【0027】
【化6】

【0028】
のいずれか一つを示し;
Rは、フッ素又はヒドロキシにより置換されていてもよいメチル、エチル又はプロピル基を示し、
R'は、メチル、エチル又はプロピル基、好ましくはメチル基を示し、及び
クロリド、ブロミド及びメタンスルホネートからなる群から選ばれる当量のアニオンX、好ましくは当量のブロミドがN原子の正電荷に対応する)
Zが以下の基の一つを示す。
【0029】
【化7】

【0030】
(ここで、
Yは、単結合又はO原子を示し;
R1は、水素、OH、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルを示し;
R2は、チエニル、フェニル又はシクロヘキチル基を示し、これらの基はメチルにより置換されていてもよく、チエニル及びフェニルはまたフッ素又は塩素により置換されていてもよい;
R3は、水素、又はフッ素、塩素もしくはメチルにより置換されていてもよいチエニルもしくはフェニル基を示す。]
本発明において、以下に示す、上記式(I)の化合物が持続性抗コリン作用剤として使用される医薬組成物が特に有意である。
[式中、Aが、下記一般式(II)の基を示し;
【0031】
【化8】

【0032】
(ここで、
Qは、二重に結合した基 -CH=CH-、-CH2-CH2-又は
【0033】
【化9】

【0034】
のいずれか一つを示し;
Rは、メチル又はエチルを示し、
R'は、メチルを示し、及び
ブロミドである当量のアニオンXがN原子の正電荷に対応する)
Zが以下の基の一つを示す。
【0035】
【化10】

【0036】
(ここで、
Yが、O原子を示し;
R1が、水素、OH又はヒドロキシメチルを示し;
R2が、チエニル、フェニル又はシクロヘキチル基を示し;
R3は、水素、チエニル又はフェニル基を示す。)]
【0037】
上述の化合物のうち、本発明の枠内で、3-α配置のものが特に好ましい。
記載した抗コリン作用剤活性物質は、その純粋なエナンチオマー、それらの混合物又はそれらのラセミ体の形態で使用することができる。
チオトロピウム塩、特にチオトロピウムブロミド [(1α,2β,4β,5α,7β)-7-[(ヒドロキシ-2-チエニルアセチル)オキシ]-9,9-ジメチル3-オキサ-9-アゾニア三環[3.3.1.02,4]ノナンブロミド一水和物(チオトロピウムBRと省略する)] を抗コリン作用剤として使用するのが特に好ましい。
【0038】
アルキル基としては(他の基の一部である限りにおいても)、他に特に記載されていない限り、炭素数1〜4の分岐又は非分岐アルキル基があげられる。例えば、メチル、エチル、プロピル又はブチルがあげられる。他に命名されていない限り、上述のプロピル及びブチルの名称には可能性のある異性体全てが含まれる。例えば、名称プロピルとしては、n-プロピル及びiso-プロピルの2つの異性体が含まれ、名称ブチルとしてはn-ブチル、iso-ブチル、sec.-ブチル及びtert.-ブチルが含まれる。また、通常の省略形を使用して、上述のアルキル基を、例えばメチルについてMe、エチルについてEt等と示すことができる。
【0039】
アルコキシ基としては(他の基の一部である限りにおいても)、他に特に記載されていない限り、酸素原子を介して結合している炭素数1〜4の分岐又は非分岐アルキル基があげられる。例えば、以下の基があげられる:メトキシ、エトキシ、プロポキシ(=プロピルオキシ)又はブトキシ(=ブチルオキシ)。ここで、他に命名されていない限り、上述のプロポキシ及びブトキシの名称には可能性のある全ての異性体もまた含まれる。
【0040】
炭素数4〜6の分岐及び非分岐アルキレン橋がアルキレン基としてあげられる。例えば、以下の基があげられる:ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン。他に命名されていない限り、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレンの名称には可能性のある全ての異性体もまた含まれる。例えば、名称ブチレンは、n-ブチレン、1-メチルプロピレン、2-メチルプロピレン、1,1-ジメチルエチレン、1,2-ジメチルエチレン等の異性体を含む。
一般的に、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素をハロゲンと称する。
【0041】
他に記載がない限り、アニオンXは一般的にフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、メタンスルホネート、フマレート、シトレートと称される。
本発明の活性物質組成物は、投薬エアゾールの形態で投与されるのが好ましい。しかしながら、他のあらゆる形態又は非経口又は経口投与が可能である。ここで、投薬エアゾールの適用態様は、特に閉塞性肺疾患の治療又は喘息の治療において好ましい投与形態である。
【0042】
噴射剤ガスを介して操作するエアゾール形態での適用に加えて、本発明の活性物質の組み合わせはまた、高圧下で薬理的に活性な物質の溶液を噴霧でき、その結果吸入可能な粒子のミストを得る、いわゆるアトマイザーにより投与することもできる。これらのアトマイザーの利点は、噴射剤ガスを使用することにより完全に分配できることである。
吸入用医薬は、通常水性又はエタノール性溶液中に溶解される。活性物質の溶液特性によるが、エタノール又は水の溶媒混合物もまた適当である。
【0043】
そのようなアトマイザーは、例えば、PCT特許出願第WO91/14468及び国際特許出願PCT/EP96/04351に記載されている。これらの文献の内容は本明細書に含まれる。Respimat(登録商標)の名称でも知られている本明細書に記載したアトマイザーにより、小さな噴出口を介し、高圧において、活性物質を含有する所定量の溶液を噴霧し、1〜10μm、好ましくは2〜5μmの好ましい粒径を有する吸入可能なエアゾールを得る。
特に、例えば、溶媒としてエタノールを含有する混合物が医薬製剤用の溶媒として使用するのに適当である。
【0044】
水とは別に、溶媒の他の成分は他の補助溶媒であってよく、該医薬製剤はまた香味料及び他の薬理学的アジュバントを含有することができる。補助溶媒の例としては、ヒドロキシル基又はアルコール、特にイソプロピルアルコール、グリコール、特にプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリコールエーテル、グリセロール、ポリオキシエチレンアルコール及びポリオキシエチレン脂肪酸のエステル等の他の極性基を含有するものがあげられる。補助溶媒は、アジュバントの溶解度を向上させるのに適当であるが、活性物質の溶解度を適当に向上させてもよい。
【0045】
防腐剤、特にベンザルコニウムクロリド等の他の薬理学的アジュバントを添加することができる。防腐剤、特にベンザルコニウムクロリドの好ましい量は、8〜12 mg/100 ml溶液である。
複合体形成剤(complex formers)を本発明の活性物質の組み合わせに添加して、噴霧異常を防止することができる。適当な複合体形成剤としては、薬理学的に許容できるもの、特に医薬許可法(drug licensing law)において既に許可されているものがあげられる。EDTA、ニトリロ三酢酸、クエン酸及びアスコルビン酸、及びそれらの塩が特に適当である。エチレンジアミン四酢酸の二ナトリウム塩が特に適当である。
【0046】
最終的な医薬製剤中に溶解させた活性物質組成物の割合は、0.001〜5%、好ましくは0.005〜3%、特に0.01〜2%である。医薬の最大濃度は、溶媒中での溶解度及び所望の治療効果を達成するのに必要な投与量に依存する。
以下の製剤形は、処方例として記載したものである。







【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
また、活性物質の組み合わせを粉末形態で吸入することができる。そのような投与形態の製品は、先行技術から公知である。本発明の活性物質の組み合わせに加えて、薬理学的に適合できる担体又はアジュバント物質、例えば、微結晶ラクトース等を含有する。吸入のための投与量は、例えばカプセルに充填でき、例えば以下の組成を有する。
【0050】
【表3】

【0051】
実験結果
Respimat(登録商標)を使用して麻酔をかけたイヌに水性溶液を吸入投与した後の、チオトロピウムブロミド、フォルモテロールフマレート及びそれらの組み合わせが気管支痙攣及び心血管に与える影響
材料及び方法
体重27〜32kgの18匹の雑種犬。個別の又は共有のオリに入れ、ペレット状の標準的な食物を最後に試験開始約15時間前に与え、水は自由に飲めるようにしておいた。
【0052】
前もって2 mg/kgモルヒネ塩酸塩を筋肉内に投薬した後、30mg/kgペントバルビタールナトリウム(Nembutal(登録商標))をゆっくりと静脈内に注射した。1.0mg/kgスキサメトニウムを静脈内に投与することにより該動物を弛緩させた。
サーボ制御人工呼吸器900 C (ジーメンス)を介して挿管した後、該動物を、周囲空気及び酸素(4:1)、頻度15/分、呼吸量6〜8 l/分で人工呼吸させた。呼吸力学を記録するために、経口気管内チューブの直前に取り付けた、示差圧記録計及び増幅器DCB-4Cの加圧チューブ(flesh no. 1)により呼吸流量を決定した。カテーテルを気管に入れ、第二(バルーン)カテーテルを食道の肺部分に入れた。肺を経由する(transpulmonary)圧力を測定するために、いずれのカテーテルも示差圧記録計及び増幅器に接続した。呼吸力学コンピュータ(IFD-Muhlheim)により、記録された圧力値から肺抵抗(R)を決定した。これより、コンピュータプログラムVAS-1 LA (IFD-Muhlheim)により以下のとおり計算した:
【0053】
肺抵抗=肺を経由する最大の圧力/呼吸流量
心拍数(heart frequency)の記録は、ECG (extremity derivative II)及び心搏タコメーターを介して行った。
30分の平衡時間後、10μg/kgアセチルコリンクロリドを静脈内注射することにより(これを10分内に2〜3回繰り返した)、短時間の気管支痙攣を起こさせた。試験物質チオトロピウムブロミド、フォルモテロールフマレート及び両物質の組み合わせを、BINEBアトマイザー(Respimat(登録商標))を用いて水性溶液として投与した。組み合わせの適用は、およそ1分間隔で個々の組み合わせと共に行った。BINEBシステムにより、息を吐き出す段階の最後にトリガー機構を行い、霧状にした溶液を、次に続く呼吸ポンプの息を吸う段階において気管-気管支樹枝状分岐に押し入れた。
【0054】
投与量
チオトロピウムブロミド: 3及び10μg/15μl
フォルモテロールフマレート: 3及び10μg/15μl
チオトロピウムブロミド+フォルモテロールフマレート:
3+3μg又は10+10μg/15μl
表1〜6は、最初の値と活性物質で処理した後180分内での変化の値とを示す。180分からの時間を越えて、Achにより誘発される、肺耐性の%抑制は増加した。
【0055】
結果
結果を表及び図に示す。3及び10μgのチオトロピウムブロミド、又はフォルモテロールフマレートは明らかに、投与量を段階的に増加させてAchを静脈内注射することにより増加させた気管支耐性を抑制した。フォルモテロールFUの最大気管支痙攣効果は、いずれの量を投与した場合も迅速に起こり、チオトロピウムBRの最大気管支痙攣効果はおよそ60分遅れた。フォルモテロールFUの有効な持続時間は比較的短く、特に投与量が少ない場合に短いが、予想どおり、チオトロピウムBRの有効な持続時間は試験の終わりまで続いた(180分)。
【0056】
3μgチオトロピウムブロミド+3μgフォルモテロールFUの組み合わせにより、非常に迅速に気管支痙攣の90%が起こり、それは試験の終わりまで実質的に変わりなく続いた。組み合わせの保護作用は、実質的に個々の成分の保護作用を超え、3μgチオトロピウムブロミド及び3μgフォルモテロールFUの個々の作用を合わせた場合をも超えた。その作用は、10μgチオトロピウムブロミド又は10μgフォルモテロールフマレートの作用を超えた(図2参照)。
【0057】
チオトロピウムブロミドそれ自体は、3μg又は10μgのいずれを投与しても、心拍数に全く影響を与えなかった。一方、フォルモテロールFUは、投与量に依存して心拍数を段階的に上昇させ、とりわけ高投与量で最大値の90%を超えて上昇させた。試験の終わりにおいても80%を超える値が依然として測定された。3+3μg又は10+10μgチオトロピウムブロミド及びフォルモテロールフマレートの組み合わせにより、心拍数の影響は実質的に減少し、30%未満になった。
【0058】
評価
抗コリン作用剤とβ-擬似剤の個々の物質に対し、これらの物質の組み合わせについて、全く驚くべき結果が得られた。
1. 効果が迅速に現れた。
2. 効果が長続きした。
しかし、主に、
3. 付加的な気管支痙攣効果及び
4. 特にフォルモテロール投与量が高い場合、実質的に心拍数上昇が減少した。
心臓への副作用を最小にするという利点と関連して、COPD及び喘息の両方に対し、本発明の組み合わせ製剤により、実質的に向上した治療効果を期待することができる。

【0059】
【表4】






【0060】
【表5】














【0061】
【表6】















【0062】
【表7】















【0063】
【表8】














【0064】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、3μgフォルモテロールフマレート、3μgチオトロピウムブロミド及び3μgチオトロピウムブロミド+3μgフォルモテロールフマレートの組み合わせが、麻酔をかけたイヌの気管支耐性に与える影響を示す。n = 6
【図2】図2は、10μgフォルモテロールフマレート、10μgチオトロピウムブロミド及び3μgチオトロピウムブロミド+3μgフォルモテロールフマレートの組み合わせが、麻酔をかけたイヌの気管支耐性に与える影響を示す。n = 6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続性抗コリン作用剤及び持続性β-擬似剤を含有することを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
持続性抗コリン作用剤が、グリコピロニウムブロミド又は以下の式(I)の二環式及び三環式アミノアルコールのエステル(又はそれらのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物であってもよい)から選ばれることを特徴とする請求項1記載の医薬組成物。
【化1】

[式中、
Aは、一般式(II)の基を示し;
【化2】

(ここで、
Qは、二重に結合した基 -CH2-CH2-、-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-又は以下の基の一つを示し、
【化3】

Rは、ハロゲン又はヒドロキシにより置換されていてもよいC1-C4アルキル基を示し、
R'は、C1-C4アルキル基を示し、及び
R及びR'はまた一緒になってC4-C6アルキレン基を示すことができ、及び
当量のアニオンXがN原子の正電荷に対応する)
Zは、以下の基の一つを示す。
【化4】

(ここで、
Yは、単結合、O又はS原子、又は以下の基;
-CH2-、-CH2-CH2-、-CH=CH-、-OCH2-又は-SCH2-
の一つを示し;
R1は、水素、OH、ヒドロキシにより置換されていてもよいC1-C4アルコキシ又はC1-C4アルキル基を示し;
R2は、チエニル、フェニル、フリル、シクロペンチル又はシクロヘキチル基を示し、これらの基はまた、メチル基により置換されていてもよく、チエニル及びフェニルはまたフッ素又は塩素により置換されていてもよい;
R3は、水素、又はハロゲンもしくはC1-C4アルキル基により置換されていてもよいチエニルもしくはフェニル基を示す。]
【請求項3】
持続性抗コリン作用剤が、グリコピロニウムブロミド又は以下の式(I)の二環式及び三環式アミノアルコールのエステル(又はそれらのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物であってもよい)から選ばれることを特徴とする請求項1又は2記載の医薬組成物。
(式中、Aが、下記一般式(II)の基を示し;
【化5】

(ここで、
Qは、二重に結合した基 -CH=CH-、-CH2-CH2-又は
【化6】

のいずれか一つを示し;
Rは、フッ素又はヒドロキシにより置換されていてもよいメチル、エチル又はプロピル基を示し、
R'は、メチル、エチル又はプロピル基、好ましくはメチル基を示し、及び
クロリド、ブロミド及びメタンスルホネートから選ばれる当量のアニオンX、好ましくは当量のブロミドがN原子の正電荷に対応する)
Zが以下の基の一つを示す。
【化7】

(ここで、
Yは、単結合又はO原子を示し;
R1は、水素、OH、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピルを示し;
R2は、チエニル、フェニル又はシクロヘキチル基を示し、これらの基はメチルにより置換されていてもよく、チエニル及びフェニルはまたフッ素又は塩素により置換されていてもよい;
R3は、水素、又はフッ素、塩素もしくはメチルにより置換されていてもよいチエニルもしくはフェニル基を示す。]
【請求項4】
持続性抗コリン作用剤が、式(I)の二環式及び三環式アミノアルコールのエステル(又はそれらのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物であってもよい)から選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の医薬組成物。
(式中、
Aが、下記一般式(II)の基を示し;
【化8】

(ここで、
Qは、二重に結合した基 -CH=CH-、-CH2-CH2-又は
【化9】

のいずれか一つを示し;
Rは、メチル又はエチルを示し、
R'は、メチルを示し、及び
ブロミドである当量のアニオンXがN原子の正電荷に対応する)
Zが以下の基の一つを示す。
【化10】

(ここで、
Yが、O原子を示し;
R1が、水素、OH又はヒドロキシメチルを示し;
R2が、チエニル、フェニル又はシクロヘキチル基を示し;
R3は、水素又はチエニルもしくはフェニル基を示す。]
【請求項5】
持続性抗コリン作用剤が、チオトロピウムの塩から選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項6】
持続性抗コリン作用剤が、チオトロピウムブロミドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
持続性β-擬似剤が、以下の群:
バンブテロール、ビトルテロール、カルブテロール、セレンブテロール、フェノテロール、フォルモテロール、ヘキソプレナリン、イブテロール、ピルブテロール、プロカテロール、レプロテロール、サルメテロール、スルホンテロール、テルブタリン、トルブテロール、
4-ヒドロキシ-7-[2-{[2-{[3-(2-フェニルエトキシ)プロピル]スルホニル}エチル]-アミノ}エチル]-2(3H)-ベンゾチアゾロン、
1-(2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、
1-[3-(4-メトキシベンジル-アミノ)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-メトキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-n-ブチルオキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-{4-[3-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]-2-メチル-2-ブチルアミノ}エタノール、
5-ヒドロキシ-8-(1-ヒドロキシ-2-イソプロピルアミノブチル)-2H-1,4-ベンズオキサジン-3-(4H)-オン、
1-(4-アミノ-3-クロロ-5-トリフルオロメチルフェニル)-2-tert.-ブチルアミノ)エタノール及び
1-(4-エトキシカルボニルアミノ-3-シアノ-5-フルオロフェニル)-2-(tert.-ブチルアミノ)エタノール、
(又はそれらのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物であってもよく、及びそれらの薬理学的に適合できる酸付加塩であってもよい。)
から選ばれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項8】
持続性β-擬似剤が、以下の群:
フォルモテロール、サルメテロール、
4-ヒドロキシ-7-[2-{[2-{[3-(2-フェニルエトキシ)プロピル]スルホニル}エチル]-アミノ}エチル]-2(3H)-ベンゾチアゾロン、
1-(2-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、
1-[3-(4-メトキシベンジル-アミノ)-4-ヒドロキシフェニル]-2-[4-(1-ベンズイミダゾリル)-2-メチル-2-ブチルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-N,N-ジメチルアミノフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-メトキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール、
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-[3-(4-n-ブチルオキシフェニル)-2-メチル-2-プロピルアミノ]エタノール及び
1-[2H-5-ヒドロキシ-3-オキソ-4H-1,4-ベンズオキサジン-8-イル]-2-{4-[3-(4-メトキシフェニル)-1,2,4-トリアゾール-3-イル]-2-メチル-2-ブチルアミノ}エタノール、
(又はそれらのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー及びそれらの混合物であってもよく、及びそれらの薬理学的に適合できる酸付加塩であってもよい。)
から選ばれることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項9】
持続性β-擬似剤が、そのラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又はそれらの混合物、及び医薬的に適合する酸付加塩であってもよいフォルモテロール及びサルメテロールから選ばれることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項10】
持続性抗コリン作用剤がチオトロピウムブロミドであり、持続性β-擬似剤がフォルモテロールフマレートであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項11】
持続性抗コリン作用剤がチオトロピウムブロミドであり、持続性β-擬似剤がサルメテロールであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項12】
吸入により適用可能な医薬組成物であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項13】
それ自体公知の方法により、任意に他のアジュバント及び/又は担体物質と共に、持続性抗コリン作用剤及び持続性β-擬似剤を混合して製造することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項14】
呼吸性の病気を治療するための医薬を製造するための請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物の使用。
【請求項15】
喘息又はCOPDを治療するための医薬を製造するための請求項14記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−188534(P2006−188534A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−102070(P2006−102070)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【分割の表示】特願2000−617928(P2000−617928)の分割
【原出願日】平成12年5月3日(2000.5.3)
【出願人】(503137975)ベーリンガー インゲルハイム ファルマ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディトゲゼルシャフト (129)
【Fターム(参考)】