説明

抗コロナウイルス剤

本発明によれば、ネルフィナビルを代表とする化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗コロナウイルス剤、該抗コロナウイルス剤を有効成分とする抗SARS剤及び該抗SARS剤を用いるSARSの治療方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、抗コロナウイルス剤、抗SARS剤及びSARSの治療方法に関する。
【背景技術】
2003年、アジアの国々において重症呼吸器症候群(SARS;Severe Acute Respiratory Syndrome)が大流行した(感染症学雑誌 第77巻 第5号 第303〜309頁参照)。しかしながら、SARSの原因であるコロナウイルス(SARS関連コロナウイルス;以下、「SARSウイルス」という。)は、新種のウイルスであり、このウイルスに対する有効な治療薬は未だ見付かっていない。
Rockefeller大学のDavid Ho.教授らはHIVの侵入阻害剤T20(Fuseon)がSARSコロナウイルスに有効であるとの知見を報道している。
しかしながら、T20も含めて種々の抗HIV剤をSARSウイルスに適用してもほとんど効果が得られていない。また、グリチルリチンがSARSウイルスに対して有効であるという知見が発表されたが(Lancet,361,p.2045−46,2003参照。)、その効果は非常に弱い。
【発明の開示】
本発明の主な目的は、抗コロナウイルス活性の高い化合物又は薬剤を提供することにある。
本発明者は、CDCより解読されたSARSコロナウイルスのゲノムをバイオインフォーマティクスを用いて独自に解析した結果、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)がヒトに感染するメカニズムと、SARSウイルスとがヒトに感染するメカニズムとが類似しているという知見を得た。そして、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、抗HIV薬として知られている化合物のうち特定のものが高い抗コロナウイルス効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の抗コロナウイルス剤、抗SARS剤及びSARSの治療方法を提供するものである。
項1.一般式(1)

[式中、Rは一般式(2)又は一般式(3)

[YはS、O又はNHを示す。RはC−Cのアルキル基、C−Cのアルコキシ基、C−Cのアルキルアミノ基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子を示す。mは0又は1を示し、pは0又は1〜5の整数を示す。]

[Y、R及びmは上述したのと同一である。pは0又は1を示し、rは0又は1〜6の整数を示す。]
はC−Cのアルキル基、C−Cのアルコキシ基、C−Cのアルキルアミノ基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子を示す。nは0又は1〜3の整数を示す。]で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗コロナウイルス剤。
2.一般式(1)においてRが一般式(4)

[YはS、O又はNHを示す。mは0又は1を示す。]である項1に記載の抗コロナウイルス剤。
3.一般式(1)で表される化合物が一般式(5)で表される化合物である項1に記載の抗コロナウイルス剤。

4.コロナウイルスがSARS関連コロナウイルスである項1〜3のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤。
5.一般式(1)で表される化合物の薬学的に許容される塩がメタンスルホン酸塩である項1〜4のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤。
6.項1〜5のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤を有効成分とし、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有する抗SARS剤。
7.項6に記載の抗SARS剤を用いたSARSの治療方法。
【図面の簡単な説明】
図1は、ネルフィナビルの有無によるSARSウイルス培養の結果を示す。Aはネルフィナビル非存在下におけるベロ毒素の電子顕微鏡写真、Bはネルフィナビル存在下におけるベロ毒素の電子顕微鏡写真、Cはネルフィナビル非存在下における免疫蛍光抗体法により染色した結果、Dはネルフィナビル存在下における免疫蛍光抗体法により染色した結果、Eはベロ毒素中のSARSウイルスのRNA量(E)を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の抗コロナウイルス剤は、一般式(1)

[式中、Rは一般式(2)又は一般式(3)

[YはS、O又はNHを示す。RはC−Cのアルキル基、C−Cのアルコキシ基、C−Cのアルキルアミノ基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子を示す。mは0又は1を示し、pは0又は1〜5の整数を示す。]

[Y、R及びmは上述したのと同一である。pは0又は1を示し、rは0又は1〜6の整数を示す。]
はC−Cのアルキル基、C−Cのアルコキシ基、C−Cのアルキルアミノ基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子を示す。nは0又は1〜3の整数を示す。]で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とすることを特徴とする。
また、本発明の抗SARS剤は、本発明の抗コロナウイルス剤を有効成分とし、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有することを特徴とする。また、本発明のSARSの治療方法は、本発明の抗SARS剤を用いることを特徴とする。
一般式(1)において、好ましいRは下記一般式(4)で表される。

[YはS、O又はNHを示す。mは0又は1を示す。]
より好ましいRは下記一般式(6)で表される。
上記一般式(1)〜(5)において、それぞれRが複数存在する場合には、同一の置換基であっても異なる置換基であってもよい。R及びRが、各々、複数存在する場合も同様に、同一の置換基であっても異なる置換基であってもよい。
−Cのアルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が例示できる。
−Cのアルコキシ基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が例示できる。
−Cのアルキルアミノ基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。好ましくは、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基等が例示できる。
また、ハロゲン原子としては、F、Cl、Br又はIが例示できる。
本発明において特に好ましい一般式(1)で表される化合物は、下記の一般式(5)で表されるネルフィナビル(Nelfinavir)である。

一般式(1)で表される化合物又はその塩がコロナウイルスの増殖を抑制するため、SARSを治療又は予防することができ、特にSARSウイルスに効果が高い。SARSウイルスは、SARS又はそれに類似する疾患の原因となるコロナウイルス又はその近縁種であれば、その種類は限定されない。
本発明において、薬学的に許容される塩としては、その塩が抗SARSウイルス効果を示すことができれば限定されない。例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、スルホン酸塩、臭化水素酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩等の有機酸塩が例示できる。これらの中でも有機酸塩が好ましく、更に好ましくはメタンスルホン酸である。
一般式(1)で表される化合物又はその塩は、常法によって製造することができる(例えば、Journal of Medicinal Chemistry,1997,Vol.40,No.24,p.3979−3985等参照。)。また、本発明の化合物の一例であるネルフィナビル又はネルフィナビル・メタンスルホン酸塩は公知の化合物であり、常法(例えば、Journal of Medicinal Chemistry,1997,Vol.40,No.24,p.3979−3985等参照。)を用いて製造することもできるし、市販されているものを使用することもできる。
一般式(1)で表される化合物又はその塩を製造した場合には、通常の分離手段により容易に単離精製できる。該手段としては、例えば吸着クロマトグラフィー、プレパラティブ薄層クロマトグラフィー、再結晶、溶媒抽出等を例示できる。また、NMR等通常の確認手段により本発明の化合物が得られたことを確認することができる。
更に、一般式(1)で表される化合物又はその塩において、遊離のカルボキシル基を有するものは、これを常法に従いアルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、カリウム塩等、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等、その他銅塩等とすることができ、これらも遊離形態の本発明化合物と同様の薬理活性を有しており、本発明に包含される。
一般式(1)で表される化合物又はその塩は、必要に応じて、薬学的に許容される担体、賦形剤、希釈剤などと共に用いられてSARSの治療のための抗SARS剤(以下、「本発明医薬組成物」という。)として使用することができる。
担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤などの希釈剤又は賦形剤などを例示でき、これらは得られる製剤の投与単位形態に応じて適宜選択使用される。
該製剤形態としては各種のものが治療目的に応じて選択でき、その代表的なものとしては錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、カプセル剤、坐剤、注射剤(液剤、懸濁剤など)、噴霧剤、エアゾール剤、吸入剤、徐放性ミクロカプセル剤などを例示できる。
本発明医薬組成物中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択されるが、通常約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
また本発明医薬組成物中には、各種添加剤、例えば緩衝剤、等張化剤、キレート剤などをも添加することができる。ここで緩衝剤としては、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸及び/又はそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)などを例示できる。等張化剤としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリンなどを例示できる。またキレート剤としては、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸などを例示できる。
本発明医薬組成物は、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時水、生埋的食塩水などを含む緩衝液などで溶解して適当な濃度に調製した後に使用することも可能である。
また、本発明医薬組成物は、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤などの固体投与形態や、溶液、懸濁剤、乳剤、シロップ、エリキシルなどの液剤投与形態に調製されてもよい。これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤、経鼻剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、軟膏剤などに分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形乃至調製することができる。
例えば、錠剤の形態に成形するに際しては、上記製剤担体として乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、リン酸カリウムなどの賦形剤、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、クロスポビドンなどの崩壊剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリドなどの界面活性剤、白糖、ステアリン、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、グリセリン、デンプンなどの保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸などの吸着剤、精製タルク、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸塩、ホウ酸末、ポリエチレングリコールなどの滑沢剤などを使用できる。
更に錠剤は必要に応じ通常の剤皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング錠或は二重錠乃至多層錠とすることができる。
丸剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として例えばブドウ糖、乳糖、デンプン、カカオ脂、硬化植物油、カオリン、タルクなどの賦形剤、アラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノールなどの結合剤、ラミナラン、カンテンなどの崩壊剤などを使用できる。
カプセル剤は、常法に従い通常本発明の有効成分を上記で例示した各種の製剤担体と混合して硬質ゼラチンカプセル、軟質カプセルなどに充填して調製される。
経口投与用液体投与形態は、慣用される不活性希釈剤、例えば水、を含む医薬的に許容される溶液、エマルジョン、懸濁液、シロップ、エリキシルなどを包含し、更に湿潤剤、乳剤、懸濁剤などの助剤を含ませることができ、これらは常法に従い調製される。
非経口投与用の液体投与投与形態、例えば滅菌水性乃至非水性溶液、エマルジョン、懸濁液などへの調製に際しては、希釈剤として例えば水、エチルアルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びオリーブ油などの植物油などを使用でき、また注入可能な有機エステル類、例えばオレイン酸エチルなどを配合できる。これらには更に通常の溶解補助剤、緩衝剤、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤、分散剤などを添加することもできる。滅菌は、例えばバクテリア保留フィルターを通過させる濾過操作、殺菌剤の配合、照射処理及び加熱処理などにより実施できる。また、これらは使用直前に滅菌水や適当な滅菌可能媒体に溶解することのできる滅菌固体組成物形態に調製することもできる。
坐剤や膣投与用製剤の形態に成形するに際しては、製剤担体として、例えばポリエチレングリコール、カカオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル類、ゼラチン及び半合成グリセライドなどを使用できる。
噴霧剤、エアゾール剤、吸入剤、経鼻又は舌下投与用組成物は、周知の標準賦形剤を用いて、常法に従い調製することができる。
なお、本発明医薬組成物中には、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などや他の医薬品などを含有させることもできる。
上記医薬製剤の投与方法は、特に制限がなく、各種製剤形態、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度などに応じて決定される。例えば錠剤、丸剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤及びカプセル剤は経口投与され、注射剤は単独で又はブドウ糖やアミノ酸などの通常の補液と混合して静脈内投与され、更に必要に応じ単独で筋肉内、皮内、皮下もしくは腹腔内投与され、坐剤は直腸内投与され、経膣剤は膣内投与され、経鼻剤は鼻腔内投与され、舌下剤は口腔内投与される。
上記医薬製剤の投与量は、特に限定されず、所望の治療効果、投与法、治療期間、患者の年齢、性別その他の条件などに応じて広範囲より適宜選択されるが、一般的には、通常成人に対して有効成分量が、1日体重1kg当り、約0.01mg〜100mg程度、好ましくは約0.1mg〜50mg程度とするのがよく、該製剤は1日に1回又は数回に分けて投与することができる。
また、本発明の治療方法において、抗SARS剤は、例えば、他の抗ウイルス剤と併用することも可能である。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
フランクフルト大学のDr.Doerrから入手したベロ細胞を96穴プレートにまき、1日間培養してコンフルエントにした。その後、培養液を入れ替えて、種々の濃度(40nM、200nM、1μM、5μM、10μM、50μM)の市販されているネルフィナビル・メタンスルホン酸塩及び種々の濃度(1μM、10μM、100μM)の市販されているグリチルリチンをそれぞれ添加した。
ネルフィナビル又はグリチルリチンを添加して1時間後、SARSウイルスに感染させた。ベロ細胞にSARSウイルスを感染させて36時間後に、MTTアッセイを用いてベロ細胞の生存によって本発明の化合物の効果を確認し、EC50(ウイルス感染による細胞変性効果をコントロール値の50%抑制するのに必要な化合物の濃度)、CC50(ベロ細胞を50%死滅させる化合物の細胞毒性濃度)及びSI(=CC50/EC50)を求めた。結果を表1に示す。

この表から、ネルフィナビルはポジティブコントロールであるグリチルリチンよりも非常に高い抗SARSウイルス効果を示すことがわかった。さらに、ネルフィナビルの細胞毒性も、グリチルリチンに比し非常に低いこともわかった。
また、10μMの濃度のネルフィナビルを用いた際のベロ細胞の形態、死滅の様子を光学顕微鏡を用いて観察し、電子顕微鏡写真(図1A及び図1B)を撮影した。図1Aから、ネルフィナビルを投与しなかったベロ細胞はSARSウイルスの増殖により死滅していくことがわかった。また、図1Bより、ネルフィナビルを投与したベロ細胞は、SARSウイルスの増殖が抑制されたため、正常細胞と同じ形態を示すことがわかった。
また、同様の実験条件において、免疫蛍光抗体法により観察した。図1Cより、ネルフィナビルを投与しなかったものは、SARSウイルスの感染の広がりが顕著であることがわかった。
また、図1Dから、ネルフィナビルを投与したベロ細胞は、SARSウイルスの感染の広がりが有意に抑制されていることがわかった。
次に、同様の実験を行い、ベロ毒素中に存在するSARSウイルスのRNA量をRT−PCRにより測定した。結果を図1のEに示す。この結果から、ネルフィナビルはSARSウイルスの増殖を強く抑制することがわかった。
比較例1
ネルフィナビルの代わりに、一般式(7)で表されるサキナビル(saquinavir)

一般式(8)で表されるリトナビル(ritonavir)

一般式(9)で表されるクリキシバン(crixivan)

一般式(10)で表されるTYA5

一般式(11)で表されるTYB5

一般式(12)で表されるKNI−272

をそれぞれ用いた他は、実施例1と同様にして実験を行った。
これらのうち、どの化合物も、10μMの濃度を用いても抗SARSウイルス効果を示さなかった(データ示さず)。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、一般式(1)で表される化合物又はその塩を有効成分とする抗コロナウイルス剤、該抗コロナウイルス剤を有効成分とする抗SARS剤及び該抗SARS剤を用いるSARSの治療方法が提供される。本発明により、コロナウイルス、特にSARS関連ウイルスによる疾患を治療しうる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)

[式中、Rは一般式(2)又は一般式(3)

[YはS、O又はNHを示す。RはC−Cのアルキル基、C−Cのアルコキシ基、C−Cのアルキルアミノ基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子を示す。mは0又は1を示し、pは0又は1〜5の整数を示す。]

[Y、R及びmは上述したのと同一である。pは0又は1を示し、rは0又は1〜6の整数を示す。]
はC−Cのアルキル基、C−Cのアルコキシ基、C−Cのアルキルアミノ基、アミド基、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、ハロゲン原子を示す。nは0又は1〜3の整数を示す。]で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする抗コロナウイルス剤。
【請求項2】
一般式(1)においてRが一般式(4)

[YはS、O又はNHを示す。mは0又は1を示す。]である請求項1に記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物が一般式(5)で表される化合物である請求項1に記載の抗コロナウイルス剤。

【請求項4】
コロナウイルスがSARS関連コロナウイルスである請求項1〜3のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項5】
一般式(1)で表される化合物の薬学的に許容される塩がメタンスルホン酸塩である請求項1〜4のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の抗コロナウイルス剤を有効成分とし、薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤を含有する抗SARS剤。
【請求項7】
請求項6に記載の抗SARS剤を用いたSARSの治療方法。

【国際公開番号】WO2005/004868
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511613(P2005−511613)
【国際出願番号】PCT/JP2004/010352
【国際出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(501308753)アリジェン株式会社 (8)
【Fターム(参考)】