説明

抗サイトカインレセプター抗体を用いる診断のための方法

可溶性サイトカインまたはサイトカインレセプターに結合する標識抗体、抗体フラグメントまたはペプチドが、患者が癌または自己免疫疾患を有するかどうかを診断するために使用される。好ましい実施形態において、sTNFR−1および/またはsTNFR2に特異的なペプチド、抗体または抗体フラグメントに化学的に結合された放射標識タグが、腫瘍を有するかもしくは腫瘍が疑われる患者、またはSTNF1/STNF−2に関連する任意の疾患を有する患者に注入される。次いで、患者は、標準的な放射線造影機器を用いて画像化されて、放射標識および/またはレセプター/インヒビターおよび/または抗原の集中する領域および部位が検出される。癌が産生する物質によって、その物質に注入された抗体をその抗体に結合するトレーサとともに用いて癌をスクリーニングすることによって、癌を非常に初期の段階で、潜在的には顕微鏡によってでさえ、検出し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、米国特許出願番号第60/590,400(2004年7月22日出願)に対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、概して、炎症応答に関連する抗原性組織、疾患組織、形質転換組織または新生物性組織を含む身体の領域を診断する分野である。これは、腫瘍壊死因子レセプターに対する放射標識抗体の投与および画像化によって達成される。この診断試験は、哺乳動物における疾患の早期診断に対して意図される。
【0003】
米国における2つの主要な死因は、心疾患および癌である。研究者は今日、これらの疾患が免疫系に関する炎症応答から始まることのますますの証拠を見出している。種々の応答器官(例えば、腸、皮膚、肺、骨髄、胸腺、および脾臓)は、マクロファージ、T細胞、B細胞およびNK細胞(すべてが他の生物ならびに毒素の浸潤から身体を保護する特定の機能を有する)を活性化/生じる特定のメッセンジャー物質の生成と反応する。いくつかのこれらのメッセンジャー物質としては、サイトカイン(例えば、TNFおよびC反応性タンパク質)、リンホトキシン、ならびにロイコトリエンが挙げられる。
【背景技術】
【0004】
腫瘍壊死因子(TNF)は、マクロファージによって産生される、前栄養性(pirotrophic)の炎症誘発性サイトカインである。TNFの量は、重要であり;多すぎる量は、悪液質および敗血症性ショックを引き起こし得る一方で、少なすぎる量は、感染および癌を許容し得る。身体の白血球は、癌細胞を認識し、その癌細胞に結合し(遮断/阻害されない場合)、そしてTNFによってその癌細胞を殺傷する。この反応は、身体の外側(薬物、放射線、環境性の毒素)または身体の内側(細胞表面TNFレセプター(sTNF−R1およびsTNF−R2)の腫瘍産生)のいずれかから、免疫抑制薬によって阻害される。正常な白血球の応答のインヒビター/遮断薬が、取り除かれ得る場合、免疫系は、影響を受けた細胞を攻撃し、そして殺傷し得る(Lentzら)。
【0005】
TNFレセプター(sTNF−R1およびsTNF−R2)は、全ての哺乳動物細胞上に存在する。これらのレセプターの過剰な産生および体液中へ流出(shedding)は、後天性の免疫寛容の原因である。これらの可溶性流出レセプター(shed receptor)は、抗原性組織および抗原性細胞の、接近した細胞の微小環境中に増加した量で見出される(非特許文献1)。この過剰産生および流出の結果は、抗原性の細胞または抗原を他の正常な炎症応答/免疫応答から保護することである。
【0006】
任意の癌の成功した処置における最も重要な局面は、早期発見である。同様に、組織および器官の破壊が生じる前に、慢性ならびに急性の炎症状態(すなわち、自己免疫疾患)を適切に診断することは、重要である。PETスキャン、MRIスキャン、およびCTスキャンは、それらの感度において制限される。
【非特許文献1】Lentz MR.,「The phylogeny of oncology」、Mol Biotherm.,1990年、第2巻、p.137−144
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、腫瘍および他の型の疾患組織の早期発見のための方法ならびにシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
可溶性サイトカインもしくは可溶性サイトカインレセプターに結合する、標識した抗体、標識した抗体フラグメントまたは標識したペプチドは、患者が癌または自己免疫疾患を有するか否かを診断するために使用される。好ましい実施形態において、sTNFR−1および/もしくはsTNFR2に特異的なペプチド、抗体、または抗体フラグメントに化学的に結合される放射性標識タグは、腫瘍を有するか、もしくは腫瘍が疑われる患者、またはSTNF−1/STNF−2に関連した任意の疾患を有する患者に注射される。次いでこの患者は、放射性標識および/もしくはレセプター/インヒビターおよび/もしくは抗原が集中した領域または部位を検出する標準的な放射線造影装置を使用して、画像化される。癌が産生する物質を用いた癌に対するスクリーニング(癌が産生する物質に対して注射された抗体をその抗体に結合するトレーザとともに使用する)によって、顕微鏡と等しく強力に、極めて早期に癌を検出し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
(I.組成物)
(抗体)
癌の早期発見のために患者に投与する組成物は、サイトカインもしくはサイトカインレセプターに対する抗体または抗体フラグメントから構成される。好ましい実施形態において、この抗体は、代表的に、このレセプターの可溶性形態および固定化形態の両方と反応性である。これらのレセプターとしては、可溶性腫瘍壊死因子レセプター(「sTNF−R」)(sTNFIまたはsTNR2のいずれか)、可溶性インターロイキン−2レセプター(「sIL−2R」)、可溶性インターロイキン−1レセプター(「sIL−1R」)、可溶性インターロイキン−6レセプター(「sIL−6R」)、可溶性インターロイキン−12(IL−12R)または可溶性インターフェロン−γレセプター(「sIFN−γR」)が挙げられる。これらの物質は、全て市販されており、そして文献において詳細に記載される。
【0010】
本明細書中で使用される場合、「抗体」とは、そのレセプター分子と免疫反応性である、抗体、抗体フラグメントまたは結合ペプチド(単鎖、組換え、またはヒト化)をいう。最も好ましい実施形態において、この抗体は、流出レセプター分子のカルボキシル末端と反応性であり、それによって細胞表面上になお存在するレセプターによるシグナル伝達に関する問題を回避する。
【0011】
抗体は、種々の商業的供給源(例えば、Genzyme Pharmaceuticals)から得られ得る。あるいは、レセプタータンパク質に対する抗体は、標準的な技術(代表的に、ヒトレセプタータンパク質を使用する免疫化)によって産生され得る。抗体は、代表的に、2週間から3週間の間隔で1週間にわたって投与される免疫原性の量のタンパク質と組み合わせた、アジュバント(例えば、フロイントアジュバント)を使用する動物の免疫化によって産生され、次いでその血清、または免疫化した動物由来の免疫グロブリン産生細胞から作製されるハイブリドーマから単離され、このハイブリドーマは、培養においてその抗体を発現する。
【0012】
動物を免疫化するための方法はヒト起源ではない抗体を生じるので、この抗体は、ヒトに投与される場合、有害効果を誘発する。抗体を「ヒト化する」か、または非ヒト抗体のより低い免疫原性のフラグメントを産生するための方法は、周知である。ヒト化抗体は、抗原認識部位、または相補性を決定する超可変領域(CDR)のみが非ヒト起源であるのに対して、可変ドメインの全てのフレームワーク領域(FR)がヒト遺伝子の産物である抗体である。これらの「ヒト化」抗体は、ヒトレシピエントに導入される場合、異種移植片の拒絶刺激について、より低い可能性を有する。ヒト化抗体は、マウスに由来する抗原結合領域(相補性決定領域またはCDRともいわれる)、ならびにヒトの供給源に由来する、残りの可変領域および定常領域のみによって構築されるモノクローナル抗体(「mAb」)として定義される(Reichert Nature Biotechnology 19:819−822(2004))。ヒト化抗体を構築するための手順は、以下の通りである。所望の抗体を発現するマウスハイブリドーマ細胞株を、適切な培養培地中で増殖させる。細胞は回収され、そして全RNAが単離される。ヒト化される抗体の可変領域についてコードする相補DNA(cDNA)が、生成される。これは、マウスリーダー配列の5’末端およびマウス定常領域の5’末端にハイブリダイズする、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーを使用して達成される。軽鎖可変領域および重鎖可変領域は、クローニングされる。このcDNAのPCR増幅は、軽鎖特異的プライマーおよび重鎖特異的プライマーを使用して達成される。このPCR産物は、ベクター中に直接クローニングされる。このベクターは、細菌中に形質転換される。この細菌は、マウス可変領域を有するベクターを含むコロニーに関して選択される。
【0013】
ヒト化抗体の構築は、発現ベクター中への好都合な挿入のための制限酵素部位を作製し、かつ可変領域および定常領域のRNAスプライシングのための接続部(splice)供与部位を組み込むために、PCRプライマーを使用してマウス可変領域をその5’末端および3’末端において改変する工程を包含する。次いで改変されたマウス可変領域は、ヒト抗体のフレームワーク領域中に挿入される。最終的なベクターは、ヒト可変領域およびヒト定常領域のフレームワーク領域中に「移植された」か、または「ヒト化された」CDRをコードする(Penichetら、Drug Development Research 61:121−136(2004))。これらのベクターは、多くの場合、転写のためのヒトサイトメガロウイルス(CMV)のエンハンサーおよびプロモーター、形質転換細胞(多くの場合に、ネオマイシン)の選択のための遺伝子、およびCOS細胞のためのシミアンウイルス40複製起点を含む。予備的な発現およびヒト化抗体の分析は、哺乳動物細胞のトランスフェクションによって達成される。産生される抗体の濃度は、酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)を使用することによって分析され得る。その抗体の結合活性は、競合的ELISAおよび/または平衡透析によって決定され得る。
【0014】
この方法でヒト化された抗体は、対応するマウス抗体より最大で3分の1大きい結合親和性を有することが示された(Adair Immunol.Rev.130:5−40(1992))。アレルゲン性はまた、ヒト化抗体を用いて減少される。20〜40%の患者はマウス抗体に対してHAMA反応を示す一方で、わずか7%の患者がヒト化抗体に対するHAMA反応を有することが、示されている(Vaughanら、Nature Biotechnology 16:535−539(1998);Maloney:Monoclonal antibody−based therapy of cancer.New York:Marcel Dekker p.53−79(1998);Berkower Curr.Opin.Biotechnology 7:622(1996);Brumleyら、AORNJ.62:343−355(1995);Estevaら:Monoclonal antibody−based therapy of cancer.New York:Marcel Dekker p.309−338(1998))。Daughertyら、Nucl.Acids Res.,19:2471−2476(1991);Clackson,T.ら、Nature、352:624−688(1991);およびKabat,H.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第4版(U.S.Dept.Health and Human Services、Bethesda、MD、1987)もまた参照のこと。Veldersら、Cancer Res.,54:1753−1760(1994)によって記載されるようにDNA組換え技術によってキメラモノクローナル抗体を作製する方法はまた、Vaquero、Appl.Biol.Sci.96:20、11128−11133(1999)、およびJaakkola、Amer.J.Pathol.157:463−471(2000)に記載される。
【0015】
あるいは、上記モノクローナル抗体によって示される免疫原性刺激は、その抗体の完全な抗原結合ドメインを組み込む単鎖Fvフラグメント(ScFv)を産生する、Pharmacia(Pharmacia LKB Biotechnology、Sweden)の「Recombinant Phage Antibody System(RPAS)」の使用によって減少され得る。RPASにおいて、抗体の可変重鎖遺伝子および可変軽鎖遺伝子は、ハイブリドーマmRNAとは別に増殖され、そして発現ベクター中にクローニングされる。この重鎖ドメインおよび軽鎖ドメインは、順応性のあるペプチドをコードする短いリンカーDNAと連結した後に、同じポリペプチド鎖上に同時発現される。この組み立ては、その抗体の完全な抗原結合ドメインを組み込む単鎖Fvフラグメント(ScFv)を産生する。インタクトなモノクローナル抗体と比較して、組換えScFvは、かなり低い数のエピトープを含み、したがってヒトに注射される場合、非常に弱い免疫原性刺激を示す。
【0016】
ヒト抗体を産生するXenoMouse株は、強力な完全ヒト抗TNFRモノクローナル抗体を産生するために使用され得る。これらのマウス株は、マウス抗体の産生が不足し、そしてヒト抗体遺伝子レパートリーの大部分を有するヒト重鎖遺伝子座およびヒト軽鎖遺伝子座由来の、一体化したメガベースサイズのフラグメントを有するように操作される。ヒト免疫グロブリン遺伝子座は、Mendezら、Nat.Genet.,15:146−156(1997)によって記載されるように、ヒト抗原を含む広い範囲の抗原に対する高親和性ヒトMAbsを産生する能力を有するXenoMouse株を提供する。Jakobovits、Exp.Opin.Invest.Drugs、7:607−614(1998)もまた参照のこと。
【0017】
抗体(モノクローナル抗体、キメラ抗体およびキメラ−変異抗体、または単鎖抗体(scAb))は、アフィニティークロマトグラフィーによって腹水の流体から精製され得る。抗体は、硫酸アンモニウムによって腹水(Amersham Pharmacia Biotech)から沈殿し、そしてプロテインA SepharoseTMで精製される。IgGは、クエン酸緩衝液(pH3.5)によって溶出され、中和され、そしてマウス宿主のIgGからキメラ抗体(HAS特異的)を分離するHSA−SepharoseTMカラムにロードされる。F(ab’)フラグメントは、酢酸緩衝液(pH4.6)中で対応するIgGのペプシン分解を行い、次いでSuperdexTM75カラム(高速タンパク質液体クロマトグラフィー(fast protein liquid chromatography))でクロマトグラフィーを行い、そしてプロテインA−SepharoseTMでアフィニティークロマトグラフィーを行うことによって得られる。抗体フラグメントおよびF(ab’)フラグメントの精製は、還元条件下および非還元条件下におけるSDS−PAGEによって検証され、そしてCoomassie Blue R−250(Sigma)による染色によって可視化される。
【0018】
(放射性標識)
上記ヒト化抗体は、検出可能な物質によって標識される。上記トレーサは、従来の核医学スキャニングデバイスによって検出され得るもの(例えば、131Iまたは125I)である。125Iは、主に、より簡単な検出のために、125Iの低エネルギーのγ線照射およびX線照射に起因して、免疫化学的分析に使用される。抗体タンパク質または他のタンパク質のヨウ素標識は、標識化の直接的かつ有効な方法である。このトレーサは、その後のインビボでの抗体に対する抗原(R1/R2)の反応を妨害しないように、この抗体のFc終末部に結合する。
【0019】
例えば、モノクローナル抗体は、Frakerら、Biochem.Biophys.Res.Commun.,80:849−857(1978)のヨードゲン法に従って放射性標識され得る。簡単にいうと、1.0mlの抗体(5mg/ml)および100μlの0.5 Mリン酸ナトリウム(pH7.2)が、ヨードゲン被覆チューブ(50μg)に添加される。次に、200μCiのNa125I(Amersham−Cygne、Hertogenbosch、The Netherlands)または8mCiのNa131I(Nordion、Fleurus、Belgium)が、添加される。室温における15分間のインキュベーション後、この反応混合物は、PD−10カラム(Pharmacia、Woerden、The Netherlands)に適用され、そしてリン酸緩衝NaCl溶液(pH7.4;8.2g/リットルのNaCl、1.9g/リットルのNaHPO−2HO、および0.3g/リットルのNaHPO−2HO)によって溶出される。PD−10カラムから溶出される第1の活性ピークが、回収され、そして寒冷抗体が添加されて、モノクローナル抗体1mgあたり10μCiの125Iの特異的活性またはモノクローナル抗体1mgあたり0.7mCiの131Iの特異的活性を有する、モノクローナル抗体溶液が得られる。ITLCは、Gelman ITLC−SGストライプ(German Sciences、Inc.,Ann Arbor、MI)、および移動相として0.15Mのクエン酸ナトリウム(pH5.5)を使用して、遊離放射性ヨウ素の存在を決定するために使用される(放出の基準:5%未満の遊離放射性ヨウ素)。
【0020】
上記抗体はまた、それぞれ、標準的なクロラミン−T法を使用して、I123およびI131によって標識される。簡単にいうと、100〜150μlの0.18mol/Lリン酸緩衝液(pH7.5)中の適当な量のI123またはI131および100μgの抗体が、0.15μgのクロラミン−Tと混合された。5分後、放射性標識抗体は、2%アルブミン/0.9%塩化ナトリウム移動相を伴うPD−10 SephadexTM G−25サイズ排除カラム(Pharmacia Biotech、Uppsala、Sweden)を使用して精製された。放射性標識免疫結合体の純度は、溶媒として20%トリクロロ酢酸を用いた即時型の薄層クロマトグラフィーによって決定される。
【0021】
(患者に対する投与のためのキャリア)
上記抗体は、その必要がある患者に対する投与のための標準的な薬学的キャリア中に処方され得る。これらとしては、当該分野で周知であるような、生理食塩水、リン酸緩衝液、および他の水性キャリア、ならびにリポソーム、ポリマーミクロスフェアおよび他の徐放送達デバイスが挙げられる。この抗体はまた、アジュバント(例えば、ムラミルジペプチド)またはヒトにおける使用が認可された他の材料と一緒に投与され得る(フロイントアジュバントは、動物に対する抗体の投与のために使用され得る)。
【0022】
(II.投与および検出の方法)
上記抗体は、腫瘍および炎症の領域に結合する有効量でその必要がある患者に投与される。例えば、0日目に、患者に、50μCiの125Iによって標識された5mgのモノクローナル抗体トレーサの第1のi.v.注入を与えた。その後、3.5mCiの131Iによって標識された5mgのモノクローナル抗体トレーサの第2のi.v.注入を行う。全身画像は、高エネルギーコリメーターを備える二検出器ガンマカメラ(Multispect 2;Siemens Inc.,Hoffman Estates、IL.)を使用して、第2の注入の1時間後、2日後、および4日後に記録される
最も好ましい実施形態において、非標識の抗体は、「バックグラウンド」の可溶性レセプターに結合するように最初に投与され、そして結合した抗体に対してコントラストを増大させる。あるいは、この抗体は、最初に、可溶性R1/R2(R1については750〜1750pcg/mLであり、そしてR2については1500〜3100pcg/mLであることが公知である正常レベル)を吸収するために、トレーサを伴わずに注射され、次いで別の用量の抗体が、クリーナースキャン(cleaner scan)のため、および癌周辺のR1/R2の曇り(cloud)への誘引を確実にするために、トレーサを伴って注射される。画像化実験のために、結合していないヒトキメラ抗体がまた、ネガティブコントロールとして使用され得る。
【0023】
好ましい実施形態において、上記スキャンは、骨のスキャンと同様であるが、PETまたは検出の他の方法がまた、使用され得る。放射線造影は、身体の細胞によって使用される化合物または腫瘍細胞を認識する化合物に結合される放射性物質の、低く、比較的に毒性のない用量を用いる。特別な検出装置を使用して、この放射性物質は、それらが集中する場所および場合をみるために、体内で追跡され得る。好ましい実施形態において、このデバイスは、磁気共鳴画像(MRI)デバイスであり、この磁気共鳴画像デバイスは、癌の領域と炎症または感染の領域との間の区別を可能にする明確なパターンが観察されるように、「ズーム」レンズおよび磁気トレーサを備える。放射線造影の2つの主要な領域は、放射性標識抗体およびPETスキャンである。SPECT(シングルフォトンエミッションコンピュータ連動断層撮影)透過スキャンは、放射性物質を検出し、そして腫瘍が位置する場所を示すために行われ得る。この方法において放射性標識モノクローナル抗体を使用する工程は、ときに免疫シンチグラフィーといわれる。
【0024】
可溶性R1/R2が癌の存在を伴わずに血中に存在することに起因する任意の「バックグラウンドノイズ」を決定するために、正常な被験体に対する上記抗体の投与から得たデータを有することが好ましい。このノイズの量はまた、個体の年齢および腎機能に依存する(より若い患者における大きいクリアランスのために、R1/R2値のより低い閾値が使用される)。この「ノイズ」の除去は、この検査の感度を増加させる。さらに、癌の全ての段階におけるこの抗体を用いたスキャニングは、病気分類のため、およびこの検査技術の妥当性/有効性を提供するために、より正確な情報を提供する。
【0025】
スキャニングに掛かる全ての費用は、一人あたり$1000未満である。この検査は、癌の初期(infancy)において、癌の診断および位置決定に役立つ。慣習的な最適化は、患者の画像化、およびスキャンが、最善の抗原−抗体反応を起こさせる(あるいは、洗い出しを完了するための最大フラッシュ(flush)から規定の間隔でスキャンし得る)ように実施される前に待つ期間の決定を増進するために使用され得る。標準的な医療が使用されて、このトレーサおよび/または抗体に対する任意の潜在的なアナフィラキシー様反応またはアナフィラキシー反応(皮膚検査によってこれらのリスクを同定することで減少されるリスク)に取り組み、そして放射線学的に測定可能な反応を誘発するが、患者の窮迫を生じるのに十分な免疫応答を引き起こさないために注射する抗体の量が理解される。
【0026】
腫瘍の検出に加えて、上記組成物は、炎症誘発性サイトカインおよび炎症誘発性ケモカインならびに特定の抗サイトカインおよび抗ケモカインを放出する、任意の組織の炎症領域を検出するために使用され得る。疾患の自然史の初期にこのプロセスの解剖学的部位を位置決定することによって、早期に介入し得、そして疾患のプロセスが臨床的に顕性になる前に、疾患のプロセスを停止するか、または阻害し得る。例えば、これらの物質の1つは(C−反応性タンパク質)は、脳卒中および心疾患に対する非常に敏感なリスクの指標であることが公知である。不運なことに、C−反応性タンパク質は、カチオン性タンパク質を放出する死んだ組織または死に掛けている組織に対する応答において、肝臓によって作られる五量体のタンパク質である。この分子が血中で上昇するまでに、組織は、既に死んでおり、そして死に掛けている。サイトカイン抗体および抗サイトカイン抗体およびトレーサをタグ付けすることによって、最も早い段階において、疾患の領域が、同定され得、そしてその領域は、組織が死ぬ前に処置され得る。アテローム性動脈硬化巣は、サイトメガロウイルス(「CMV」)、C.pneumoniae、またはH.pyloriの組織浸潤に対する応答において動脈に沈着すると考えられる。これらの生物体または結果的な炎症反応の局在に対する抗原−抗体(「Ag−Ab」)試験はまた、早期の決定的な処置を可能にすべきであり、そして感染因子との任意の関連を同定し、そして疾患の予後に対する療法の適切さを評価するための、その後の追跡検査を提供すべきである。この型の検査は、他の自己免疫疾患を検査するために使用され得、この自己免疫疾患としては、慢性関節リウマチ(RA)、多発性硬化症(MS)、および全身性エリテマトーデス(SLE)が挙げられる。
【0027】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによって、さらに理解される。
【実施例】
【0028】
(実施例1.癌の早期診断を可能にするsTNFR−1レベルおよびsTNFR−2レベルの測定)
50歳代の患者を、橋本甲状腺炎と診断した。橋本甲状腺炎は、免疫系が甲状腺を攻撃し、そして破壊する型の自己免疫性の甲状腺疾患である。甲状腺は、代謝の速度(身体がエネルギーを使用する速度)を整えるのに役立つ。橋本甲状腺炎は、甲状腺が身体のために正しく機能するのに十分な甲状腺ホルモンを産生することを妨げる。橋本甲状腺炎の共通した症状は、疲労、抑うつ、冷え性(sensitivity to cold)、体重増加、筋力低下、肌荒れ(coarsening of the skin)、乾燥した毛髪またはもろい毛髪、便秘、筋痙攣、増加した月経出血、および甲状腺腫である。数年後に、この患者を、1型糖尿病(1型DM)と診断した。1型DMは、ランゲルハンス島(膵臓の内分泌単位体)の浸潤および破壊によって特徴付けられる、T−リンパ球依存性の自己免疫疾患であると考えられる。1型糖尿病の症状は、多くの場合、多尿症(頻尿)および多渇症(増加した渇きおよび結果的に増加した水分摂取)である。体重減少(正常かまたは増加した摂食にもかかわらず))、増進した食欲、および解消されない(irreducible)疲労がまた、存在し得る。共通して存在する別の症状は、変化した視力である。糖尿病における特に危険な症状としては、患者の呼気におけるアセトン臭(ケトアシドーシスの徴候)、クスマウル呼吸(速くて深い呼吸)、および意識または覚醒の任意の変化した状態(錯乱および嗜眠であるように、敵意および躁病が両方ともあり得る)。1型DMは、意識消失を引き起こす糖尿病性昏睡を生じ得、初期症状としては、多尿症、悪心、嘔吐および腹痛が挙げられ、これらの症状は、処置されない場合、後に発症し、意識消失および死に進行する嗜眠および傾眠を伴う。インスリン療法を受ける他の1型DM患者とは異なり、本明細書中で記載される患者の血液グルコースレベルは、管理することが非常に困難であった。この患者のグルコースレベルは、15分間のスパン内で500mmol/L〜28mmol/Lの範囲であり、そして制御できなかった。グルコースレベルにおいて観察された変動およびこれらのグルコースレベルの管理における困難性は、極めて異例である。この患者にインスリンポンプを取り付けたが、これは、この問題を解決しなかった。その後この患者を、C−反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度(ESR)のレベルについて分析した。CRP試験は、急性の炎症または感染のエピソードの間に存在する、肝臓で産生される特別な型のタンパク質の血清中濃度を測定する試験である。高レベルのCRPは、数種の状態の指標であり得、これらの状態としては、慢性関節リウマチ、リウマチ熱、癌、結核、肺炎、心臓発作、および狼瘡が挙げられる。赤血球沈降速度(ESR)は、非特異的な炎症についての情報を与える別の試験である。ESR試験は、血液サンプルをチューブ内に配置する工程および赤血球が1時間でどのくらい速く底に沈むかを測定する工程を包含する。この患者は、CRPおよびESRの正常なレベルを有した。CRPおよびESRの正常なレベルにもかかわらず、この患者は、グルコースレベルにおける変動を、なお経験していた。癌細胞は、正常な細胞より、インスリンレセプターを6倍多く有し、そして成長ホルモン(GH)レセプターを10倍多く有する。したがって、癌細胞は、正常な細胞より、インスリンおよびGHを多く取り込む。これは、癌細胞が宿主の身体を犠牲にして増殖する理由である。これはまた、患者のグルコースレベルにおける制御不能な変動を説明する。したがって、次いでこの患者を、この患者が癌を有するか否かを決定するために、sTNFR−1レベルおよびsTNFR−2レベルについて、上に記載される方法によって分析した。TNF−αのレベルは、高かった。TNF−αレセプターIおよびTNF−αレセプターIIのレベルもまた、高かった。高レベルのsTNFR−1およびsTNFR−2は、この患者が癌を有することを示唆した。しかし、この患者のPETスキャンは、正常であった。sTNFR−1レベルおよびsTNFR−2レベルの分析によって、この患者を、癌と診断した。この患者は、増加したp53発現を伴う外陰部硬化症(vulvar sclerosis)(VS)を有した。VSに冒されたケラチノサイトは、増殖性の表現型を示し、そして新生物の発達の指標(例えば、増加したp53発現およびDNAの異数性)を示し得る。慢性的な瘢痕性の炎症性皮膚疾患のようなVSは、発癌の「イニシエーターおよびプロモーター」の両方として作用し得る。VSのケラチノサイトは、癌抑制遺伝子p53のタンパク質を顕著に発現するので、このp53遺伝子は、発癌のこの提案された経路の初期において必要とされ得る。sTNFR−1レベルおよびsTNFR−2レベルの分析前に、この患者は、癌について処置されなかった。VSは、「前癌性」であると診断され、そして制御されており、したがってVSは、処置されなかった。ここでこの患者は、癌について処置される。これらの結果は、腫瘍および他の型の疾患組織の早期発見のための本明細書中に記載される方法が、感受性でありかつ有効であることを示す。
【0029】
(実施例2.sTNFR−1およびsTNFR−2は、癌に対して高度に感受性の試験である)
62歳の患者に、あるとき3年間かけて発達した子宮塊を有することを見出した。この患者を癌と診断し、そして診査の腹腔鏡手術を有し、そして潜在的な癌のように見える全てのものを生検のために取り除く必要があることを説明した。癌は、腫瘍のサンプル(生検)を取得することによって診断され得る。生検の間、腫瘍物質は、病理学者(顕微鏡下でこの細胞を見ることによって疾患を診断することを専門とする医師)によって調べられる。腹腔鏡検査は、塊の存在を確認し、そして生検のための組織サンプルを得る、有用な第1の工程である。腹腔鏡下手術は、小さな切開および腹部または骨盤に進入するように特別に設計された器具を使用する。診査の腹腔鏡検査において、より大きい切開を皮膚および腹筋において行い、骨盤領域への通路を得る。診査の腹腔鏡検査を、癌の広がりの正確な程度を見出すための、十分な試みである。癌による考えられる侵襲を同定するために、サンプルを、骨盤ならびに横隔膜(胸部の器官と腹部の器官とを隔てる筋肉)、腹膜(腹部の内側を覆う膜)、網(腹部の器官を覆う脂肪性の膜)、リンパ節、膀胱、および腸を含む腹部における構造物から取得する。この目的は、可能な限り多くの癌性組織を取り除くこと(減量(debulking))である。これは、一方または両方の卵巣(卵巣摘出)、子宮(子宮摘出)、ファローピウス管(卵管切除)、および他の器官を取り除く工程を包含し得る。代表的に、外科医は、除去を必要とする器官および構造物を、前もって正確に知らない。したがって、手術の全範囲をこの手順に同意する前に外科医と議論することが、推奨される。この手順は、血管または器官を穿刺する若干のリスクを保有する、このことは、血液を腹腔に漏らし得る。腸の穿刺は、腸の内容物をこの腔に漏らし得る。これらは、深刻な合併症であり、そして大手術は、この問題の是正を必要とし得る。開放性の手術を必要とすることが明らかとなり得る可能性がまた、存在する。稀な合併症としては、出血、腹腔の内面の炎症、膿瘍、および一般的な麻酔に関する問題が挙げられる。したがって、癌を診断するための手段として、外科手術より低い侵襲性の方法は、不必要な外科手術を避けるために有用である。
【0030】
この場合において、この患者は、外科手術を受けず、そして第2の見解を得た。この患者を、この患者が癌を有したか否かを決定するために、sTNFR−1レベルおよびsTNFR−2レベルについて、上の方法によって記載ように分析した。sTNFR−1レベルおよびsTNFR−2レベルの両方は、正常範囲であった。これらの結果は、子宮塊は良性であり、そしてこの患者が癌を有さなかったことを示した。この患者を、この患者が癌でなかったことを示した第3の医師によって調べた。この患者は、3ヶ月間待ち、そして繰り返しPETスキャンを受けることを選択した。この患者は、癌を有さず、したがって、有痛性の外科手術手順を、回避した。これらの結果は、腫瘍および他の型の疾患組織の早期発見のための本明細書中に記載される方法が、感受性であり、有効であり、かつ診査の外科手術に対する実行可能な代替手段であることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症または癌を診断するための方法であって、該方法は、サイトカインまたはサイトカインレセプターに対する標識抗体または標識結合リガンドの有効量を患者に投与する工程、および該患者を画像化して結合した抗体または標識結合リガンドを検出する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記抗体または標識結合リガンドは、ヒト化モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サイトカインが、可溶性腫瘍壊死因子レセプター(「sTNF−R」)、可溶性インターロイキン−2レセプター(「sIL−2R」)、可溶性インターロイキン−1レセプター(「sIL−1R」)、可溶性インターロイキン−6レセプター(「sIL−6R」)、可溶性インターフェロン−γレセプター(「sIFN−γR」)、および可溶性インターロイキン−12(IL−12R)からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗体が、I125、I123およびI131からなる群より選択される標識で標識される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が癌を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記患者が自己免疫疾患を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記患者が、慢性感染症または急性感染症を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
静脈内投与のための薬学的に受容可能なキャリア中の、患者において癌または炎症を画像化するためのサイトカインまたはサイトカインレセプターに対する標識ヒト化モノクローナル抗体または標識結合リガンドの有効投薬量を備える、キット。
【請求項9】
コントロールとして使用するための非標識抗体またはリガンドをさらに備える、請求項8に記載のキット。
【請求項10】
添付文書中の指示をさらに備える、請求項8に記載のキット。

【公表番号】特表2008−507529(P2008−507529A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522656(P2007−522656)
【出願日】平成17年7月20日(2005.7.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/025588
【国際公開番号】WO2006/014646
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(507018687)アーリー ディテクション, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】