説明

抗ストレス作用を有するGABA高含有トマト由来組成物

【課題】生体において抗ストレス作用を発揮する新たな組成物を提供すること。
【解決手段】GABA高含有トマト由来組成物を含有する抗ストレス剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗ストレス作用を有するGABA高含有トマト由来組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現代病ともいえる心理的、社会的ストレスは、生体において種々の害を引き起こすとされる。
抗ストレス剤として、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬が知られている。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、γ−アミノ酪酸(GABA)の受容体の作用を亢進することで、不安や興奮を抑制すると考えられている。ベンゾジアゼピン系の抗不安薬は、比較的安全性の高い薬として、広範に用いられているものの、大量摂取による副作用として、逆に不安が増進してしまう奇異反応や、長期の服用による依存、離脱症状といった重大な問題が生じる可能性を含んでいる。
【0003】
GABAは、抑制性の神経伝達物質として働くアミノ酸である。GABAの作用部位であるGABA受容体が体内に広範に分布することから、GABAは、生理学的に極めて重要なアミノ酸であると言える。例えば、GABAを経口投与することにより、高血圧症のモデル動物である高血圧自然発症ラットや高血圧患者において、血圧降下作用を示すことが知られている(例えば、非特許文献1〜2参照)。
また、抗ストレス作用の指標となるマウスの強制水泳実験において、抗ストレス作用を示すことが知られている(例えば、非特許文献3〜4参照)。
そのため、GABAまたはGABAを豊富に含む食品等は、抗ストレス作用を有する新たな素材として期待される。
【0004】
GABAは、食品では玄米や茶、トマト等の一部の果実等に含まれていることが知られている。しかし、それぞれの含有量は微量であり、そのまま食品として用いた場合、生理機能を発揮することは困難である。そのため、例えば、玄米は発芽をさせ発芽玄米として用いることで(例えば、特許文献1〜2参照)、トマトは発酵(例えば、特許文献3参照)や窒素雰囲気下における追熟を行うことで(例えば、特許文献4参照)、あらかじめGABA含有量を高める加工工程を経た後に食品に応用する方法が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3891687号公報
【特許文献2】特許第4082989号公報
【特許文献3】特開2007−60990号公報
【特許文献4】特公平7−14333号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Eur J Pharmacol.438:107−113,2002
【非特許文献2】Eur J Clin Nutr.57:490−495,2003
【非特許文献3】Naunyn Schmiedebergs Arch Pharmacol.339:306−311,1989
【非特許文献4】Pharmacol Biochem Behav.86:62−67,2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜4に開示される従来の方法では、煩雑な加工過程を経なければならず、加工工程において微生物等の汚染や、GABA以外の栄養素の欠損、風味の劣化等の問題が生じているのが現状である。したがって、煩雑な加工工程を経ることなく、生体において抗ストレス作用を発揮する組成物の提供が望まれている。
本発明が解決しようとする課題は、生体において抗ストレス作用を発揮する新たな組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、GABA高含有トマト由来組成物が、生体において優れた抗ストレス作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、
[1]
GABA高含有トマト由来組成物を含有する抗ストレス剤。
[2]
GABA高含有トマト由来組成物が、GABA高含有トマトを凍結乾燥させて得られる、[1]に記載の抗ストレス剤。
[3]
乾燥物換算でGABA含量が8〜30mgである、[1]又は[2]に記載の抗ストレス剤。
[4]
乾燥物換算で総アミノ酸含量が8〜100mgである、[1]〜[3]のいずれかに記載の抗ストレス剤。
[5]
GABA高含有トマトが、DG07−1種またはDG03−9種である、[1]〜[4]のいずれかに記載の抗ストレス剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、生体において抗ストレス作用を発揮する新たな組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例における強制水泳実験時のマウスの無動時間の変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の抗ストレス剤は、GABA高含有トマト由来組成物を含有する。
【0013】
(GABA高含有トマト)
本発明におけるGABA高含有トマトは、GABAを高濃度に含有するトマト果実であり、例えば、DG03−9種またはDG07−1種等が挙げられる。
GABA高含有トマトとしては、GABA以外のアミノ酸を高濃度で含有することが好ましい。
【0014】
GABA高含有トマトは、GABAの生合成を制御する遺伝子を有する系統に、高酸度形質を有する系統を交雑し、GABAの蓄積性を中心に、収穫性や耐病性に優れる系統の育種選抜を繰り返し行った系統を育種することで得ることができる。
GABAの生合成を制御する遺伝子として、GAD1,2,3などのGABA生合成に関する遺伝子やGABAT1,2,3、SSADHA、SSR1,2などのGABA分解に関する遺伝子等が知られている。
GABAの生合成を制御する遺伝子を有する系統としては、例えば、S. chmielewskii由来のLA1500種、1501種、1503種およびシュガーランプ種からなる群から選ばれる少なくとも一種である系統が挙げられ、該系統を交雑して得られる系統を用いてもよい。
高酸度形質を有する系統としては、例えば、187−10種およびカロリッチ種からなる群から選ばれる少なくとも一種である系統があげられ、該系統を交雑して得られる系統を用いてもよい。
GABA高含有トマトを育種選抜するために、S. chmielewskii LA1500種、1501種および1503種、ならびにこれらの群から選ばれる少なくとも一種を交雑して得られる系統に、187−10種またはこの交雑系統を交雑して得られる系統を用いて育種選抜することが好ましい。さらに、上記工程を経て得られたGABA高含有トマト、さらにシュガーランプ種またはこの交雑系統を交雑して得られる系統を用いて育種選抜すると、より高濃度のGABAを安定して含有するトマトが得られことから、より好ましい。
【0015】
育種選抜方法として、両親姉妹系統間において、F1組み合わせ能力検定を行い、雑種の分離世代(F2以降)において、つねに個体選抜と選抜個体ごとの系統栽培をくりかえし、系統間の比較によって優劣を判定しながら、選択、固定をはかり純系をつくっていく系統育種法等の方法により、GABA高含有トマトを作出することができる。
【0016】
DG03−9種は、S.chmielewskii LA1500種、1501種または1503種から育種選抜した系統に187−10種から育種選抜した系統を交雑し育種選抜した系統に、シュガーランプ種から育種選抜した系統を交雑して得られる系統を片親とし、S.chmielewskii LA1500種、1501種または1503種から育種選抜した系統に187−10種から育種選抜した系統を交雑し育種選抜した系統に、シュガーランプ種から育種選抜した系統を交雑し、さらにカロリッチ種から育種選抜した系統を交雑して得られる系統を片親として交雑し、GABAの蓄積性を中心に、収穫性や耐病性に優れる系統の育種選抜を繰り返すことで作出した。
DG07−1種は、DG03−9種およびその両親姉妹系統間において、F1組み合わせ能力検定を行うことで作出した。
【0017】
トマトの育種方法は、トマト栽培で通常用いられる栽培方法であれば特に限定されないが、例えば、露地栽培、雨除け土耕栽培、雨除け水耕栽培、およびマルチ土耕栽培等が挙げられる。
DG03−9種、DG07−1種および上記の工程を経て作出された交雑種は、トマト果実1kgあたり800〜3,000mgのGABAを含有し、かつ、800〜10,000mgの総アミノ酸を含有し、生体に投与することで優れた抗ストレス作用を発揮する。
本発明において、総アミノ酸とは、GABAを含めたアミノ酸の総称を意味し、アミノ酸とは、生化学辞典(第2版,58頁,1998年)に定義されたアミノ酸を含む概念である。
【0018】
(GABA高含有トマト由来組成物)
本発明におけるGABA高含有トマト由来組成物は、上記のGABA高含有トマトに由来する組成物であれば特に限定されないが、例えば、常法により抽出される組成物であって、トマト果実の搾汁物、溶媒抽出物、破砕物、加工物、およびこれらの濃縮物等が挙げられる。
トマト果実の抽出法としては、例えば、搾汁法、溶剤抽出法、遠心分離法等が挙げられる。GABAを高濃度に含有する抽出物が簡便に得られることから、トマト果実の搾汁法、溶剤抽出法は、本発明において好適に使用できる。
【0019】
トマト果実の搾汁法としては、野菜や果実を搾汁する通常の方法が採用できる。例えば、洗浄および選別したトマト果実をクラッシャー等を用いて破砕し、チューブヒーター等で加熱殺菌および酵素失活後、エクストラクター等を用いて搾汁すればよい。必要により、ゲルろ過、溶剤抽出、遠心分離等によって搾汁物を更に精製し、GABAの含量を高めてもよい。トマト果実の溶剤抽出法としては、トマト果実を、トリクロロ酢酸やエタノール等の溶剤を水と混合して用いて抽出し、必要によりゲルろ過、遠心分離等によって更に抽出物を精製する方法が採用できる。
また、破砕物も好適に用いることができ、トマト果実を凍結乾燥した後に、粉末化する凍結乾燥法によって得ることができる。
【0020】
抽出に供するトマト材料としては、トマト果実(生トマト)、搾汁液(例えばトマトジュースなど)、搾汁液の濃縮物等の加工品(例えばトマトピューレ、トマトペースト、トマトソース、トマトケチャップ、トマトスープなど)、トマト乾燥物(例えば凍結乾燥物、スプレードライ物など)等が挙げられる。
抽出に用いる溶剤は、抗ストレスまたはリラックス促進の活性成分を抽出可能なものであれば特に限定されず、通常の極性溶媒、両性溶媒等が使用できる。溶剤としては、例えば、酸、有機溶媒、有機溶媒を含む溶剤、または水とこれら溶剤との混合液等が挙げられる。酸とは、例えば無機酸(具体的には塩酸、硝酸、亜硝酸、硫酸など)、有機酸(具体的にはギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸など)、有機溶媒とは、例えば、低級アルコール(具体的にはエタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなど)、エーテル類(具体的にはジエチルエーテルなど)、ハロゲン化炭素類(具体的にはクロロホルムなど)、ニトリル類(具体的にはアセトニトリルなど)、エステル類(具体的には酢酸エチルなど)、ケトン類(具体的にはアセトンなど)、ヘキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。作業性等の面から、有機溶媒としては、エタノール、メタノール、または酢酸エチルが好ましい。トマト抽出物が最終的に食品や化粧品等に添加されることを考慮すると、溶剤としては、エタノールがより好ましい。溶剤としては、酸または有機溶媒は2種以上を混合して使用してもよい。
【0021】
本発明のGABA高含有トマト由来組成物は、破砕、粉砕、磨砕、抽出、溶解、酵素処理、酸アルカリ処理等の加工法によって、各種加工品に利用することができる。
加工品としては、例えば、ジュース、果汁飲料、および清涼飲料水などの飲料、ケチャップおよびトマトソースなどの調味料、ホールトマト、カットトマト、トマトペースト、およびスープなどの缶詰ならびにトマト加工品、錠剤およびカプセルなどの栄養補助食品、ならびに菓子等が挙げられる。
【0022】
GABA高含有トマト由来組成物の摂取量としては、特に限定されるものではなく、適宜、摂取量を調節することができるが、例えば、GABA摂取量換算で、好ましくは10mg以上である。
【0023】
GABA高含有トマト由来組成物に含まれるGABA含量としては、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは乾燥物換算で8mg〜30mg、より好ましくは10mg〜30mg、さらに好ましくは20mg〜30mgである。
GABA高含有トマト由来組成物に含まれる総アミノ酸含量としては、特に限定されるものではないが、例えば、好ましくは乾燥物換算で8mg〜100mg、より好ましくは10mg〜100mg、さらに好ましくは20mg〜100mgである。
本発明において、乾燥物換算でとは、本発明のGABA高含有トマト由来組成物の乾燥重量1gあたりの含量を意味する。
例えば、GABA高含有トマト由来組成物が、GABA高含有トマトを凍結乾燥して得られた組成物である場合には、凍結乾燥物1gあたりの含有量を意味し、GABA高含有トマト由来組成物が、GABA高含有トマトの搾汁液である組成物である場合には、搾汁液を乾燥させた乾燥物1gあたりの含有量を意味する。
GABA高含有トマト由来組成物は、本発明において用いられるGABA高含有トマトが、好ましくはトマト果実1kgあたり800〜3000mgのGABAを含むので、例えば、そのまま凍結乾燥することにより、GABAを別途抽出することなくGABAを高含有する組成物を得ることができる。
【0024】
本発明におけるGABA高含有トマト由来組成物は、抗ストレス作用を有するため、飲食品、医薬品等として好適に用いることができ、飲食品として用いる場合には、抗ストレス作用を有するとの表示を付した食品とすることができる。
また、抗ストレス作用を有することから、特定保険用食品、栄養機能性食品、健康食品、機能性食品、健康補助食品等として用いることもできる。本発明の抗ストレス剤は、GABA高含有トマトに由来する組成物であるため、煩雑な加工工程を経ることなく、そのまま食品として用いることができ生体において抗ストレス作用を発揮する新たな組成物である。
【実施例】
【0025】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0026】
[実施例1]
<各種アミノ酸含量の測定>
DG03−9種および桃太郎種のトマト果実の重量を測定後、凍結乾燥処理を行った。凍結乾燥後の重量を測定し、得られた乾燥物に対し5%トリクロロ酢酸水溶液を加え、攪拌した後にメンブランフィルター(親水性PTFE膜0.45μm;ADVANTEC社製)の透過液を試料液として以下の測定に用いた。
試料液中の各種アミノ酸の定量は、アミノ酸自動分析計(L−8500;日立製作所製)の取り扱い説明書に従って行った。専用のバッファー液(PH1、PH2、PH3、PH4、カラム再生液;和光純薬社製)とニンヒドリン発色液(ニンヒドリン試薬L−8500セット;和光純薬社製)を用い、アスパラギン酸、スレオニン、セリン、グルタミン酸、グリシン、アラニン、シトシン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、GABA、オルニチン、リジン、アンモニア、ヒスチジン、アルギニン、プロリン(すべて、特級;和光純薬社製を用いた。)を2ng/20μLに調整したものを標準品として用いた。各標準品に対する相対濃度を求め、試料中の各種アミノ酸含量を定量した。各種アミノ酸含量を表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示すとおり、DG03−9種トマト果実1kgあたり約1,800mgのGABAを含有し、かつ、約5,600mgの総アミノ酸を含有していた。
【0029】
[実施例2]
<強制水泳実験における評価>
マウスの強制水泳実験モデル(Arch Int Pharmacodyn Ther.229(2)327−36,1977)を用いて、GABA高含有トマト由来組成物の抗ストレス作用について評価した。
マウスはICRマウス(雌、7週齢;日本クレア社)を用い、室温20〜26℃、湿度40〜70%、明暗各12時間、換気回数12回/時(フィルターにより除菌した新鮮空気)の条件下で飼育した。試験開始前には精製飼料(AIN−93G;オリエンタル酵母社製)を与え、馴化を行った。馴化1週間後、ペントバルビタールナトリウム麻酔下にて、卵巣摘出を行った。卵巣摘出の翌日に異常の認められなかった個体を選抜し、実験に供試した。
各種トマトのサンプルは、以下の方法により調製した。DG03−9種および桃太郎種を、凍結乾燥機(日本フリーザー社製)を用いて凍結乾燥後、フードプロセッサー(岩谷産業社製)を用いて粉末化した。各種トマト粉末を、5%メチルセルロース溶液(信越化学工業社製;以下、「0.5%MC」という。)に懸濁させ、10mLあたりの各種トマト粉末が生果実重量換算で20gとなる懸濁液を調製した。また、DG03−9種中のGABA含量と同当量(36.75mg/10mL)となるGABA溶液を、0.5%MCを用いて調製した。
各懸濁液は、1日当たり投与液量10mL/kgとなるよう、胃ゾンデを用いて2週間経口投与した。また、対照群として、0.5%MC 10mL/kgを投与した。投与開始14日目に、各投与サンプルの経口投与2時間後、マウスを水槽(直径:145mm、高さ:190mm、水深:100mm、水温:約24±2℃)に入れ10分間の遊泳時間を測定した。遊泳時間の測定は、掻痒測定システム(ニューロサイエンス社製)を用いて行った。
磁石をマウスの両側後肢に付け、マウスを水槽に入れてから10分間の後肢の動きを、両側後肢に付けた磁石を指標に、掻痒測定システムを用いて無動時間(秒)を測定した。無動時間は、マウスがストレスにより遊泳を断念し、動かなくなっている状態の時間を測定したものであり、不動時間が短いほどストレスを感じていないことを意味している。なお、統計処理にはTukeyのHSD検定を用い、有意水準を5%として有意差を算出した。無動時間の経時的変化を図1に、遊泳時間10分間の無動時間の累計を表2に示す。なお、結果は平均値±標準誤差で示し、表2では、異なるアルファベット間で有意差があることを示している。
【0030】
【表2】


表2および図1が示すとおり、サンプルとしてGABAを高濃度に含有するDG03−9種のトマトを投与したマウスの強制水泳実験における無動時間は、対照群のマウスに比べ、有意に減少した。さらに、サンプルとして桃太郎種のトマトまたは等量のGABAを投与したマウスいずれと比較しても、強制水泳実験における無動時間が有意に減少することが確認された。すなわち、GABAを高濃度に含有するDG03−9種のトマトは、強制水泳実験において無動時間が有意に減少することから、ストレスの緩和、心身のリラックス、鎮静化等の予防・治療効果を有する抗ストレス剤として用いることができる。
【0031】
[実施例3]
強制水泳実験におけるストレスマーカーの指標として、マウス脳内のc−Fosタンパク質を免疫組織化学的手法により可視化し、GABA高含有トマト由来組成物の有する抗ストレス作用について評価した。投与6日目および7日目の投与後2時間に強制水泳を行い、遊泳時間を測定した。投与7日の強制水泳終了後2時間後にマウスを断頭して脳を摘出し、4%パラホルムアルデヒド液で固定後にパラフィン包埋をした。パラフィン包埋したサンプルを、Bregma−0.94mm付近の切片を1枚作製し、抗c−Fos抗体(サンタクルス社製)を用いて常法によりc−Fosタンパク質を可視化した(Nature.21;266,730−732,1977およびJ Neurosci.13:3932−3943,1993)。染色した標本を目視で観察し、c−Fosタンパク質陽性細胞数をカウントした。なお、統計処理にはTukeyのHSD検定を用い、有意水準を5%として有意差を算出した。
マウスの強制水泳実験におけるc−Fos陽性細胞数は、GABAを高濃度に含有するDG03−9種のトマト投与群57.8±6.0、対照群(0.5%MC)84.5±9.3であり、DG03−9種のトマト投与群は対照群に比べ、有意に減少した。すなわち、GABAを高濃度に含有するDG03−9種のトマトは、経口投与することにより、生体において脳シグナル伝達に働きかけ、高い抗ストレス効果を示すと考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
GABA高含有トマト由来組成物を含有する抗ストレス剤。
【請求項2】
GABA高含有トマト由来組成物が、GABA高含有トマトを凍結乾燥させて得られる、請求項1に記載の抗ストレス剤。
【請求項3】
乾燥物換算でGABA含量が8〜30mgである、請求項1又は2に記載の抗ストレス剤。
【請求項4】
乾燥物換算で総アミノ酸含量が8〜100mgである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗ストレス剤。
【請求項5】
GABA高含有トマトが、DG07−1種またはDG03−9種である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗ストレス剤。

【図1】
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【公開番号】特開2011−144147(P2011−144147A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7738(P2010−7738)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年10月31日 社団法人日本農芸化学会主催の「日本農芸化学会関東支部2009年度大会」において発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)生物系特定産業技術研究支援センター「平成17年度生物系産業創出のための異分野融合研究支援事業」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【出願人】(000104559)日本デルモンテ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】