説明

抗チミジンキナーゼモノクローナル抗体の抗癌活性

癌の検出方法、診断方法および処置方法において有用な、チミジンキナーゼ1に対するモノクローナル抗体が開示される。本願発明は、1つの実施形態において、哺乳動物において癌を処置するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物において細胞の増殖を阻害するのに十分な量の、S期調節タンパク質またはそのフラグメントに対する抗体を含有する薬学的組成物を、哺乳動物に投与する工程を包含する。上記方法において、抗体は、好ましくは、抗TK1モノクローナル抗体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は、2004年5月21に出願された、米国仮出願第60/573,429号(その全体が、本明細書中に参考として援用される)に対する優先権を主張する。
【0002】
(本発明の分野の背景)
本発明の実施形態は、S期調節に特異的なタンパク質(特に、チミジンキナーゼ)に対するモノクローナル抗体を用いた、癌の処置に関する。本発明の実施形態は、TK1を合成し、発現する細胞(例えば、癌細胞)における細胞の増殖を阻害するための、抗TK1抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の記載)
S期は、細胞周期の一部であり、この間に、DNAの複製が起こる。DNAの複製に関与する遺伝子の発現は、S期の早い時期に最大となる。ヒストンmRNAは、S期の中頃で最大となり、そして、細胞増殖に関与する遺伝子は、S期の間に活性である。
【0004】
TK1は、DNA合成の「サルベージ経路」に関与する、細胞内の酵素である。正常に増殖する細胞において、チミジンキナーゼ1のmRNAは、G1−S期の境界付近で生じ、S期の早い時期に最大となり、そして、G2期には、G1期の早い時期のレベルとほぼ同じレベルに戻る。チミジンキナーゼは、細胞周期のG1/S期において活性化され、そして、その活性は、腫瘍細胞の増殖活性と相関があることが示されている。悪性の細胞は、正常細胞において観察される、TK1の厳密な調節が効かなくなっているようである。TKの活性は、細胞増殖の主要な生化学的マーカーであり、そして、いくつかの研究が、TKのレベルは、悪性腫瘍において上昇していることを示す。TK活性の上昇は、TK1アイソザイムの増加に起因する。悪性腫瘍におけるTK1レベルの上昇は、単に、細胞増殖の結果ではなく、癌細胞(TK1のmRNAを構成的に発現する)における調節機構の変化により直接生じるものである。
【0005】
悪性細胞を特異的に標的とするMAbの使用は、正常もしくは未感染の組織もしくは細胞を無傷なままにし得るアプローチである。MAbは、細胞の特定の集団に対する選択性を有する治療試薬(therapeutic reagent)を作製するために使用され得る。必要に応じて、MAbまたは他の細胞標的化タンパク質は、免疫結合体、免疫毒素または融合タンパク質と呼ばれる、生物療法因子を形成するために、生物活性部分に結合される。これらの生物療法因子は、標的化部分の選択性と、生物活性部分の効力とを組み合わせ得る。
【0006】
特許文献1(本明細書中に参考として援用される)は、Raji細胞に由来する精製哺乳動物チミジンキナーゼ1(TK1)と、TK1モノクローナル抗体とを記載する。このモノクローナル抗体は、TK1に結合し、そして、TK1の活性を阻害する。TK1モノクローナル抗体は、癌の診断に使用された。
【特許文献1】米国特許第5,698,409号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
本発明の好ましい実施形態は、哺乳動物において癌を処置するための方法に関し、この方法は、哺乳動物における細胞の増殖を阻害するのに十分な量の、S期調節タンパク質またはそのフラグメントに対する抗体を含有する薬学的組成物を、哺乳動物に投与することによるものである。好ましい実施形態において、抗体は、抗TK1モノクローナル抗体である。より好ましくは、抗TK1モノクローナル抗体は、CB001である。好ましい実施形態において、抗TK1抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または、完全なヒトモノクローナル抗体である。
【0008】
いくつかの好ましい実施形態において、上記薬学的組成物はまた、第2の抗癌剤を含有する。好ましくは、第2の抗癌剤は、ヌクレオシドアナログである。より好ましくは、ヌクレオシドアナログは、5−フルオロウラシル、フルダラビン、クラドリビン(cladribine)、シタラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、トロキサシタビン、ジドブジン/ラミブジン(Combivir(登録商標))、エミトリシタビン(Emtriva(登録商標))、エミトリシタビン(Epivir(登録商標))、ザルシタビン(Hivid(登録商標))、ジドブジン(Retrovir(登録商標))、アバカビル(abacavir)/ジドブジン/ラミブジン(Trizivir(登録商標))、ジダノシン(Videx(登録商標)、VidexEC(登録商標))、フマル酸テノフォビルジソプロキシル(tenofovir disoproxil fumarate)(Viread(登録商標))、スタブジン(stavudine)(Zerit(登録商標))、およびアバカビル(Ziagen(登録商標))である。
【0009】
いくつかの好ましい実施形態において、抗TK1抗体は、細胞傷害性薬剤に結合体化されている。より好ましくは、細胞傷害性薬剤は、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、リシン、アブリン、ゲロニン(gelonin)、サポリン(saporin)、またはα−サルシンである。
【0010】
いくつかの好ましい実施形態において、薬学的組成物を投与する前に、哺乳動物は、十分な放射線で処置されて、TK1の発現をアップレギュレートしている。
【0011】
好ましい実施形態において、薬学的組成物はまた、非経口投与に適合した、薬学的に受容可能な液体キャリアを含有する。好ましくは、液体キャリアは、等張性の生理食塩水を含む。
【0012】
本発明の好ましい実施形態は、哺乳動物において癌を診断するための方法に関し、この方法は、以下の工程を包含する:哺乳動物からサンプルを得る工程;このサンプルを、抗TK1抗体もしくはそのフラグメントと共にインキュベートする工程:抗体−TK1複合体の量を決定する工程;検出された抗体−TK1複合体の量を、公知の量のTK1を用いて作製した標準曲線と比較することによって、サンプル中のTK1濃度を定量する工程;および、サンプル中のTK1濃度に基づいて、哺乳動物における癌の存在を診断する工程。
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、TK1に対するモノクローナル抗体に関する。好ましくは、TK1は、ウイルスまたは哺乳動物のTK1である。より好ましくは、TK1は、ヒトのTK1である。いくつかの好ましい実施形態において、抗体は、活性なTK1に特異的である。代替的な好ましい実施形態において、抗体は、不活性なTK1に特異的である。いくつかの好ましい実施形態において、抗体は、TK1の多量体形態に特異的である。代替的な好ましい実施形態において、抗体は、TK1の単量体形態に特異的である。いくつかの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、TK1の100kDサブユニットと反応しない。いくつかの好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、TK1と結合し得るが、TK1の酵素活性に影響を与えない。好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、または完全なヒトモノクローナル抗体である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態は、TK1に対するモノクローナル抗体を作製する方法に関し、この方法は、抗原として使用するために、TK1またはそのフラグメントを化学合成する工程を包含する。好ましくは、化学合成されたTK1は、配列番号2として示される配列の少なくとも一部を含む。
【0015】
本発明の好ましい実施形態は、TK1に対するモノクローナル抗体を作製する方法に関し、この方法は、宿主細胞において、TK1をコードする遺伝子の少なくとも一部を発現させる工程を包含する。好ましくは、TK1をコードする遺伝子は、配列番号1として示される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態は、患者において新生物組織の位置および拡大を決定する方法に関し、この方法は、以下の工程を包含する:標識されたTK1抗体を患者に投与する工程;標識されたTK1抗体を可視化する工程;ならびに、患者において、新生物組織の位置および拡大の程度を決定する工程。
【0017】
好ましくは、可視化は、PET、MRI、CTまたはSPECTによるものである。好ましくは、TK1抗体は、蛍光色素、放射性色素、または放射線不透過性色素で標識されている。好ましい実施形態において、上記患者において新生物組織の位置および拡大の程度を決定する工程が、医師が、新生物組織と正常組織とを視覚的に区別することを可能にするために、外科手順において使用される。
【0018】
本発明のさらなる局面、特徴および利点は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明から明らかとなる。
【0019】
本発明のこれらの特徴および他の特徴が、ここで、好ましい実施形態の図面(本発明を例示することが意図され、そして、本発明を限定することは意図されない)を参照して説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
記載される実施形態は、本発明の好ましい実施形態を提示するが、修正が、本発明の精神から逸脱することなく、当業者に想到されることが理解されるべきである。本発明の範囲は、それゆえ、添付の特許請求の範囲によってのみ決定されるべきである。
【0021】
以下の定義は、明細書および特許請求の範囲におけるその用法の程度もしくは範囲に関して、明確さを提供するために、提供される。
【0022】
用語「精製チミジンキナーゼ1」または「TK1」は、本明細書中で使用される場合、正常な状態もしくは病的な状態のいずれかであり、そして、新鮮な生検もしくは保存された生検、細胞組織培養物、細胞株、ハイブリドーマなどとして与えられる、あらゆる生物、特に哺乳動物(哺乳動物の身体器官、組織、細胞、体液などを含むがこれらに限定されない)から単離されたTK1を指す。ウイルスもしくはウイルス感染細胞から調製したTK1もまた、用語「TK1」に明確に含まれる。TK1はまた、適切な宿主細胞において組換え法により調製されても、化学的に合成されてもよい。TK1の配列は、ヒトTK1についての配列情報を含めて、公知かつ利用可能である。本発明の精製TK1は、モノクローナル抗体の調製に十分な精製TK1の収量を提供する。
【0023】
用語「哺乳動物」は、本明細書中で使用される場合、ヒトまたは哺乳動物として分類される他の動物を指す。
【0024】
用語哺乳動物の「身体サンプル」は、本明細書中で使用される場合、哺乳動物に由来するサンプルを指し、そして、正常な状態もしくは病的な状態のいずれかであり、そして、新鮮な生検もしくは保存された生検として与えられる、身体器官、組織、細胞、体液などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0025】
用語「体液」は、本明細書中で使用される場合、哺乳動物から得られたあらゆる流体(例えば、血液、血清、尿、髄液、涙液など)を指す。
【0026】
用語「身体組織」は、本明細書中で使用される場合、哺乳動物から得られた、あらゆる正常組織もしくは病的な組織(例えば、器官組織、生検組織、腫瘍など)を指す。身体組織は、新鮮なもしくは保存された(例えば、凍結された)サンプル、組織学的切片調製物などとして与えられ得る。
【0027】
用語「抗体」または「免疫グロブリン」は、一般に、その供給源または免疫グロブリンの型(すなわち、IgG、IgE、IgMなど)にかかわらず、所望の結合特異性および結合親和性を示す、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、ならびに、それらのフラグメントを含めるために使用される。用語「TK1に対する抗体」、「TK1抗体」または「抗TK1抗体」は、本明細書中で使用される場合、TK1に結合する抗体またはそのフラグメントを指す。用語「モノクローナル抗体」は、細胞の単一のクローン(例えば、ハイブリドーマ細胞、同種の免疫グロブリンをコードするDNAで形質転換された真核生物宿主細胞、同種の免疫グロブリンをコードするDNAで形質転換された原核生物宿主細胞など)の増殖から生じる、同種の免疫グロブリンを示すために、通常の意味に従って使用され、そして一般に、単一のクラスおよびサブクラスの重鎖、ならびに、単一の型の軽鎖によって特徴付けられる。いくつかの用途において、本発明の精製TK1に対するポリクローナル抗体は、本発明の抗TK1モノクローナル抗体の代わりに利用され得ることが意図される。全てのエピトープが触媒部位にあるわけではないので、全てのTK1抗体が、TK1の酵素活性を阻害するわけではないことに注意すべきである。TK1に結合するが、TK1の酵素活性を阻害しない抗体も得られた。
【0028】
用語「治療適用」は、本明細書中で使用される場合、病的な組織を標的化するための、TK1、モノクローナル抗TK1抗体、または、ポリクローナル抗TK1抗体のあらゆる使用を指し、この適用において、上記病的な組織の増殖が標的化されるか、可視化されるか、減少されるか、または、排除される。本発明の治療適用は、現在知られているか、もしくは、まだ発見されていない他の治療適用と組み合せて、または、これらの治療適用とは別に使用され得る。
【0029】
用語「治療因子もしくは生物療法因子(biotherapeutic agent)」は、その通常の意味で使用され、そして、哺乳動物(例えば、ヒト)において疾患もしくは他の異常を処置もしくは予防するための、MAb、医薬品、タンパク質もしくはペプチド、核酸などの使用を包含する。
【0030】
用語「補体媒介性の溶解」とは、本明細書中で使用される場合、抗体−抗原複合体により活性化された血清タンパク質の系を指し、この系は、その溶解を直接引き起こすことによって、または、その食作用を促進することによって、選択された細胞を排除することを助ける。
【0031】
用語「キメラ抗体」、「ヒト化免疫グロブリン」、または「ヒト化抗体」は、通常の意味で使用され、少なくとも部分的に非ヒト哺乳動物において生成され、そして、少なくとも一部分がヒト起源である、免疫グロブリンもしくは抗体、またはそれらのフラグメントを含む。
【0032】
細胞の増殖に関与するS期のタンパク質(すなわち、サイクリン、腫瘍タンパク質(oncoprotein)、増殖因子、シグナル伝達およびDNAの修復に関与するタンパク質、ならびに/または、合成タンパク質)は、標的とするタンパク質に対するMAbを用いる癌の処置に対して、強力な標的を提供する。強力な標的としては、S期調節タンパク質(例えば、チミジンキナーゼ1(TK1)、デオキシシチジンキナーゼ、チミジル酸キナーゼ(TmpK)、アデニル酸キナーゼ(AmpK)、ウリジン一リン酸/シチジン一リン酸キナーゼ(Ump/CmpK)、グアニル酸キナーゼ(GmpK)、ヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDK)、エプスタイン−バーウイルスのチミジンキナーゼおよび1型単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSVI−TK))が挙げられる。S期調節タンパク質に対するモノクローナル抗体は、癌の処置を提供するために使用される。TK1のようなS期タンパク質は、癌細胞のような増殖性細胞の表面に見られる。正常な細胞はTK1を発現しないので、TK1に対するMAbは、癌細胞に優先的に結合する。抗TK1 MAbが一旦癌細胞に結合すると、細胞は、ADCCおよびCDCによる破壊に対して感受性となる。あるいは、癌細胞は、抗TK1抗体に結合した免疫毒素によって殺傷され得る。こうして、1つ以上のS期調節タンパク質に対するMAbを含有する生物療法因子の投与は、細胞の増殖を停止し、そして、癌の処置として有用である。記載されるMAbは、免疫毒素のような第2の因子、または、癌の処置のための第2の治療剤と組み合わせて使用され得る。好ましい実施形態において、S期調節タンパク質は、TK1である。
【0033】
抗TK1の生産のための以下に記載される実施形態は、あらゆる点で、例示的なものであり、限定するものではないと考えられるべきである。好ましい実施形態において、本発明は、活性なTK1に対して特異的な抗体、不活性なTK1に対して特異的な抗体、TK1遺伝子の成分に由来する合成ペプチドに対して特異的な抗体、多量体TK1に対して特異的な抗体、および単量体TK1に対して特異的な抗体を含む、種々の抗体の生産を企図する。さらに、好ましい実施形態において、本発明は、種々のTK1エピトープに対して特異的な、種々の抗TK1抗体の生産を企図する。従って、本開示の範囲は、限られた数の抗体またはTK1上の限られた数のエピトープに対して、本発明を制限するものと解釈されるべきではない。
【0034】
驚くべきことに、本願の発明者らは、TK1が、正常な細胞ではなく、癌細胞およびウイルスに感染した細胞のような増殖性の細胞の表面上に見られることを発見した。癌細胞およびウイルスに感染した細胞の表面上のTK1の発現は、これらの細胞を、ADCCおよびCDCに対して感受性にする。TK1の発現は、癌細胞において、そして、ウイルスの形質転換または哺乳動物細胞の感染の間に、6〜30倍増加する。これらの観察は、チミジンキナーゼに対する抗体を用いて癌細胞を処置するための、本明細書において開示される方法において利用される。ウイルスに感染した細胞の処置に関与する、この観察された機構に基づく方法は、2004年4月30日に出願された、米国仮出願第60/567,344号(本明細書中に参考として援用される)に開示されている。
【0035】
TK1のmRNAおよびタンパク質は、癌細胞のような形質転換された細胞において、アップレギュレートされ、そして、構成的に発現されていることが実証されている。TK1のレベルは、静止状態の細胞においては検出されない。本発明の好ましい実施形態に従って、抗TK1抗体を用いて患者を処置することによって、癌細胞は、補体依存性の溶解(CDC)または抗体依存性の細胞性細胞傷害性(ADCC)によって、選択的に標的化および殺傷される。
【0036】
いくつかの実施形態において、TK1抗体の細胞傷害性は、まず、放射線療法を用いて患者を処置することによって増強される。放射線療法は、TK1の発現をアップレギュレートすることが示されている(DNAの損傷は、DNAの修復のための新しいヌクレオチドの生成を必要とするため)。TK1の発現がアップレギュレートされた後、患者は、細胞表面上のTK1に結合するTK1抗体で処置される。放射線療法に焦点をあてることによって、本発明者らは、たとえあったとしても、抗体の毒性を腫瘍部位に制限することができる。
【0037】
さらに、本発明は、標的化された治療のために有用であり得る、抗TK1抗体を用いることを企図する。例えば、抗TK1抗体は、TK1レベルの上昇を抑制し、そして、正常なTK1レベルを復元するために使用され、これは、細胞の修復を減らすのに役立つ。抗TK1抗体は、腫瘍細胞において、TK1の酵素活性のレベルの上昇を抑制し、正常なレベルを復元するために使用され得、これは、細胞の増殖を減らし、そして、疾患の拡散を食い止め得る。
【0038】
この実施形態の一例は、治療因子として使用される抗TK1モノクローナル抗体の使用を包含し、この抗体は、癌患者においてTK1に結合し、そして、増殖を低減し得る。TK1は、サルベージ経路の酵素なので、抗TK1モノクローナル抗体を用いる処置は、正常な組織に軽微な影響しか与えず、そして、正常な経路によって増殖する全ての細胞が、正常に分裂し、そして、非増殖細胞を損ねないままにすることを可能にするはずである。チミジンキナーゼ(TK)によるdTTPの生合成は、DNA合成には必須ではない。dTMPのデノボ合成は、アスパラギン酸とカルバモイルリン酸とが、dUDPの生合成に対するスタート台となり、これが、チミジル酸シンテターゼによってdTMPに変換される、一連の複雑な反応により達成される。分裂細胞は、細胞の生存のために、dTTPのかなりの量の細胞内プールを必要とする。dTTPのデノボ合成は、入手可能な供給源の点から、細胞に対して高くつくものである。TKによるチミジンのdTMPへの直接的な変換は、デノボ経路を迂回する。ヌクレオチドのこのリサイクルは、「サルベージ経路」と呼ばれている。
【0039】
本発明の実施形態は、TK1に対するモノクローナル抗体である、生物療法因子を提供する。いくつかの実施形態において、この生物療法因子は、免疫結合体または免疫毒素であり、これらとしては、有効量の、生物学的活性を有するある部分(例えば、ポリペプチドまたは毒素)に結合された、TK1に特異的なモノクローナル抗体が挙げられる。有用な生物学的に活性な部分の例としては、リシンA鎖免疫毒素、サポリン、ゲロニン、Pseudomonas外毒素もしくはアメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、または、これらの活性なフラグメントが挙げられる。アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質の調製物の活性は、米国特許第6,372,217号(本明細書中に参考として援用される)に記載される方法によって決定され得る。しかし、TK1を免疫毒素に結合体化させる必要はないことを強調しておく。TK1に対するモノクローナル抗体の使用は、単独でも、補体媒介性の溶解を活性化することにより、癌細胞を特異的に殺傷する。
【0040】
本発明の抗TK1生物療法因子は、癌細胞のような活発に増殖する細胞の表面に存在するTK1に結合する、モノクローナル抗体TK1またはその生物学的に活性なサブユニット、フラグメントもしくは誘導体を用いることが好ましい。モノクローナル抗体の「生物学的に活性な」サブユニットもしくはフラグメントは、モノクローナル抗体の結合活性の、少なくとも約1%、好ましくは少なくとも約10%、そしてより好ましくは少なくとも約50%を有する。これらの生物療法因子は、インビトロおよびインビボの両方で活性であり、そして、特定の癌のような疾患を処置するのに有用である。本明細書中で使用される場合、用語モノクローナル抗体(MAb)は、そのフラグメント、サブユニットおよび誘導体を含む。好ましくは、MAbは、抗TK1 MAbである。
【0041】
本発明は、哺乳動物において癌を処置するか、または、癌細胞の増殖を抑制するための方法を提供する。この方法は、TK1に対する抗体か、または、TK1に対する抗体を含む免疫結合体のいずれかの有効量を用いて、ヒトのような哺乳動物、または哺乳動物の細胞を、インビトロもしくはインビボで処置する工程を包含する。
【0042】
いくつかの実施形態において、患者は、まず、免疫学的に不活性なTKに対するMAbを用いて処置される。このMAbは、癌細胞上のTKと結合し、そしてまた、TK1をいくらか発現する正常細胞上のTK1にも結合する。次に、この患者は、癌細胞におけるTK1の高いレベルの発現と、正常細胞もしくは分裂細胞におけるTK1の低いかもしくは存在しないレベルの発現との間の予想される対比に起因して、癌細胞の表面上のTK1にのみ特異的に結合する、免疫学的に活性な抗TK1抗体を用いて処置される。癌細胞は、次いで、CDCまたはADCCにより殺傷される。この方法は、抗TK1抗体が正常細胞といくらかの交差反応性を有する場合にのみ必要とされることを強調しておく。
【0043】
いくつかの実施形態において、抗TK1生物療法因子は、抗癌剤または抗ウイルス剤と組み合せて使用される。抗癌剤または抗ウイルス剤は、5−フルオロウラシル、フルダラビン、クラドリビン、シタラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、トロキサシタビン、ジドブジン/ラミブジン(Combivir(登録商標))、エミトリシタビン(Emtriva(登録商標))、エミトリシタビン(Epivir(登録商標))、ザルシタビン(Hivid(登録商標))、ジドブジン(Retrovir(登録商標))、アバカビル/ジドブジン/ラミブジン(Trizivir(登録商標))、ジダノシン(Videx(登録商標)、VidexEC(登録商標))、フマル酸テノフォビルジソプロキシル(Viread(登録商標))、スタブジン(Zerit(登録商標))、またはアバカビル(Ziagen(登録商標))のような、ヌクレオシド/ヌクレオチド逆転写酵素阻害剤(ヌクレオシドアナログ)であり得る。
【0044】
理論に束縛されることなく、上記の抗癌剤は、抗TK1 MAbに類似する機構により機能するという仮説が立てられる。すなわち、細胞の増殖は、複製を必要とする。抗TK1抗体と同様に、これらの抗癌剤は、形質転換された細胞の複製する能力と干渉し、それゆえ、癌およびウイルス感染の両方の処置方法において有用である。本明細書中に記載される方法は、一般に、特に、癌またはウイルス感染に起因する、異常な細胞の増殖を処置するために使用され得る。
【0045】
従って、代替的な実施形態において、ヌクレオシドアナログのような抗癌剤は、癌を処置するために使用される。これらの方法は、上述のものと同じ機構に基づく。すなわち、細胞の増殖は、複製を必要とする。抗TK1抗体と同様に、これらの抗癌剤は、形質転換された細胞の複製する能力と干渉し、それゆえ、癌およびウイルス感染の両方の処置方法において有用である。本明細書中に記載される方法は、一般に、特に、癌またはウイルス感染に起因する、異常な細胞の増殖を処置するために使用され得る。
【0046】
(モノクローナル抗体)
モノクローナル抗体(MAb)は、脾臓のリンパ球と、骨髄の原発腫瘍の悪性細胞(骨髄腫)との融合物により生産される。Milstein,Sci.Am.,243,66(1980)。この手順は、単一の融合した細胞ハイブリッドまたはクローンから生じる、ハイブリッド細胞株またはハイブリドーマをもたらす。このハイブリッド細胞株またはハイブリドーマは、リンパ球および骨髄腫の細胞株の両方の特徴を有する。(ヒツジ赤血球を抗原として初回刺激した動物から採取した)リンパ球と同様に、融合したハイブリッドまたはハイブリドーマは、抗原と反応性の抗体(免疫グロブリン)を分泌する。さらに、骨髄腫細胞株と同様に、ハイブリッド細胞株は、不死性である。具体的には、ワクチン接種された動物に由来する抗血清が、同様には再生産され得ない抗体の可変性の混合物である場合、1つのハイブリドーマにより分泌される単一の型の免疫グロブリンは、抗原上の1つおよび1つのみの決定基、抗原性分子の下部構造に多様性を有する複雑な分子、または決定基(エピトープ)に対して特異的である。従って、単一の抗原に対して惹起されたモノクローナル抗体は、その情報を誘導する決定基に依存して、互いに区別され得る。しかし、特定のクローンにより生産される抗体の全ては同一である。さらに、ハイブリドーマ細胞株は、無制限に複製し得、インビトロおよびインビボで容易に増殖し、そして、非常に高い濃度のモノクローナル抗体を生じ得る。
【0047】
モノクローナル抗体は、癌の診断および治療、そして、自己免疫疾患および移植片対宿主病(GVHD)の処置のため、ならびに、同種移植片拒絶の防止のための免疫抑制をもたらすための、免疫応答の調節に、臨床的に広く適用されている。ヒトのモノクローナル抗体はまた、乳癌、血液の癌、サイトメガロウイルス、Varicella zosterウイルス、ならびにPseudomonas aeruginosa、Escherichia coliおよびKlebsiella pneumoniaeの種々の特定の血清型に対して、臨床的に適用されている。
【0048】
本発明において有用なモノクローナル抗体は、周知のハイブリドーマ融合技術を用いて生産される(G.KohlerおよびC.Milstein,Eur.J.Immunol.,6,511(1976);M.Shulmanら、Nature,276,269(1978))。上述のように、本発明の好ましい実施形態は、TK1に対するモノクローナル抗体を使用する。
【0049】
TK1は、米国特許第5,698,409号(本明細書中に参考として援用される)に記載される方法により調製され得る。米国特許第5,698,409号は、Raji細胞に由来する、精製哺乳動物チミジンキナーゼ1(TK1)を記載する。Raji細胞は、細胞株#CCL−86としてATCCから入手可能な、不動化されているヒトのリンパ球細胞株である。米国特許第5,698,409号はまた、TK1に対するモノクローナル抗体を記載する。
【0050】
このタンパク質はまた、公開されているタンパク質配列の全てまたは一部を化学合成することにより調製され得る。例えば、ヒトTK1についてのタンパク質配列は、全長cDNAから決定されている(MGC Program Team,「Generation and initial analysis of more than 15,000 full−length human and mouse cDNA sequences」PNAS(2002年12月24日)vol.99(26):16899−16903)。公開されているタンパク質配列は、完全TK1タンパク質の全てまたは一部を含むペプチドを生成するために使用され得る。これらのペプチドは、次いで、本明細書中に記載される手段によって、MAbを生成するために使用され得る。
【0051】
あるいは、TK1タンパク質は、TK1ヌクレオチド配列を用いて組換え的に生成され得る。ヒトTK1についてのヌクレオチド配列および対応するタンパク質配列は、それぞれ、配列番号1および2として示される。
【0052】
いくつかの実施形態において、抗TK1 MAbをヒト化することが好ましい。ヒト化抗体は、従来技術(例えば、合成)によって化学的に一緒に連結されたか、または、遺伝子操作技術を用いて連続するポリペプチドとして調製された(例えば、キメラ抗体のタンパク質部分をコードするDNAが、連続するポリペプチド鎖を生じるように発現され得る)、必要な特異性を有する非ヒト起源(例えば、マウス)の免疫グロブリン、および、ヒト起源の免疫グロブリン配列(例えば、キメラ免疫グロブリン)に由来する部分を含み得る。本発明のヒト化免疫グロブリンの別の例は、非ヒト起源のCDRを含む1以上の免疫グロブリン鎖(例えば、非ヒト起源の抗体に由来する1以上のCDR)、ならびに、ヒト起源の軽鎖および/または重鎖に由来するフレームワーク領域(例えば、フレームワークの変更ありまたはなしの、CDRグラフト化抗体)を含む免疫グロブリンである。キメラ単鎖抗体またはCDRグラフト化単鎖抗体もまた、用語ヒト化免疫グロブリンにより包含される。
【0053】
また、本発明には、上張り(veneered)もしくは作り直されたヒト化抗体も含まれる。例えば、げっ歯類の可変領域が、その動物が属するタンパク質配列の血清群のコンセンサス配列と比較され、そして、選択されたヒト定常領域を受け入れるフレームワークが、そのファミリーのコンセンサス配列と比較される。固有の残基が、より一般に存在するヒトの残基により置き換えられる。
【0054】
このようなヒト免疫グロブリンは、所望のヒト化鎖をコードする遺伝子を調製するために、合成核酸および/または組換え核酸を用いて生成され得る。例えば、ヒト化可変領域をコードする核酸配列は、ヒト鎖もしくはヒト化鎖をコードするDNA配列(例えば、以前にヒト化された可変領域に由来するDNA鋳型)を変更するためのPCR変異誘発法を用いて構築され得る(例えば、Kamman,M.ら,Nucl.Acids Res.,17:5404(1989));Sato,K.ら,Cancer Research,53:851−856(1993);Daugherty,B.L.ら,Nucleic Acids Res.,19(9):2471−2476(1991);ならびにLewis,A.P.およびJ.S.Crowe,Gene,101:297−302(1991)を参照のこと)。改変体はまた、これらおよび他の適切な方法を用いることにより、容易に生成され得る。1つの実施形態において、クローニングされた可変領域に変異誘発を起こさせ、そして、所望の特異性を有する改変体をコードする配列が選択され得る(例えば、ファージライブラリーから;例えば、Krebberら,米国特許第5,514,548号;Hoogenboomら,WO 93/06213(1993年4月1日公開);Knappikら,WO 97/08320(1997年3月6日公開)を参照のこと)。
【0055】
あるいは、ヒト化抗体は、米国特許第号(その全体が本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、ヒト成人の末梢血白血球の異種移植を受けたSKIDマウスまたは他のSKID動物に、精製したTK1を注射することによって、簡便に調製され得る。この処置によって、ヒトの免疫機能が、SKID動物に導入され、この動物は、ヒト化抗体を生産するために使用され得る。
【0056】
(免疫毒素)
本発明の特定の実施形態は、抗TK1 MAbに連結された免疫毒素の使用を包含する。免疫毒素が有効であるためには、いくつかの要件が満たされなければならない。まず、免疫毒素は、特異的であり、そして、標的の哺乳動物に対して有害となる程度までは、標的抗原を発現しない組織とは反応すべきでない。Pastanら,Cell,47,641(1986)。抗原を発現しない組織への結合は、生物治療部分の非特異的な天然の細胞結合サブユニットまたはドメイン(例えば、植物の糖タンパク質毒素または抗ウイルス因子)を除去することによって減少され得る。さらに、植物の糖タンパク質毒素は、細網膜内系の細胞に結合するマンノースオリゴ糖を含み、そしてまた、ある場合には、肝細胞上のレセプターにより認識されるフコース残基を含むので、植物毒素の脱グリコシル化は、迅速なクリアランスと、これらの細胞に対する強力な細胞傷害性作用を回避させることを必要とし得る。次に、抗体に対する毒素の結合は、抗体の抗原に結合する能力を実質的に損ねるべきではない。第3に、免疫毒素は、エンドソームの小胞内に効率的に内部移行されなければならない。従って、モノクローナル抗体により正常に内部移行される表面レセプターへと指向される毒素は、内部移行しない細胞表面分子に向かうものよりもより活性であり得る。第4に、毒素の活性な成分は、細胞質内に転位しなければならない。最後に、インビボの治療において、MAbと毒素との間の結合は、免疫毒素が、遠敷動物の組織を通って、その細胞内の作用部位まで通過する間に、インタクトなままであるように十分に安定でなければならない。
【0057】
免疫毒素の活性は、最初に、その表面上の標的抗原を用いて細胞を殺傷する能力を測定することによって評価される。毒素は、細胞内で作用するので、通常エンドサイトーシスにより自然に細胞に入るレセプターおよび他の表面タンパク質は、免疫毒素のための適切な標的であるが、細胞表面上に固定される表面タンパク質は、適切な標的ではない。しかし、同じ細胞表面タンパク質上の異なるエピトープを認識するいくつかの抗体が利用可能な場合、これら全てを試験することが有用である。これは、いくつかの抗体が、おそらくは、標的タンパク質における立体構造の変化を生じることによって、より効率的に内部移行を誘導し得るか、または、毒素の転位のための適切な位置へと細胞内で経路を方向付け得るからである。Mayら,Cell Immunol.,135,490(1991)。また、レセプターが、効率的に内部移行する場合、免疫毒素を調製するために必要とされた化学的な修飾に起因して、このレセプターに強くは結合しない免疫毒素を使用することが可能である。Willinghamら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,2474(1987)。
【0058】
(毒素)
細菌起源および植物起源の毒素のアレイが、免疫毒素の生産のために、MAbと結びつけられている。ストラテジーは、自然界から細胞傷害性タンパク質を選択し、次いで、もはや正常細胞に無差別に結合せず、正常細胞を殺傷しないように、その代わりに、MAbにより結合される抗原を発現する細胞のみを殺傷するように、この細胞傷害性タンパク質に修飾を加えることである。最適に有効であるためには、このようなアプローチは、比較的少数の細胞傷害性分子の内部移行が、標的細胞に対して致命的であることを必要とする。なぜならば、特定のMAbに対する細胞表面上のレセプター部位は限られているからである。細胞内のタンパク質合成を不活性化する特定の細菌および植物により生成される毒素は、この基準を満たす。なぜならば、化学量論の様式で作用する大抵の化学治療因子とは異なり、これらは、その致命的な活動を触媒するからである。一般に、1つの細胞の細胞質において10個未満の毒素分子が、細胞を殺傷するのに十分である。
【0059】
タンパク質合成を不活性化する毒素の2つの分類は、免疫毒素の構築において広く使用されている。この第1の分類は、インタクトなリシンのような、インタクトな毒素から構成される。これらの毒素は、地名的な毒素に起因して、インビボで安全には適用され得ない。毒素の第2の群は、ヘミ毒素(hemitoxin)と呼ばれる。相補的な様式でタンパク質合成を致命的に阻害することにより、ヘミ毒素は、リボソームを共有結合性に改変し、その結果、リボソームは、もはや伸長因子2とは生産的に相互作用し得なくなる。この毒素の後者のファミリーとしては、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、リシン、アブリン、ゲロニン、サポリンおよびα−サルシンが挙げられる。リボソームを不活性化する植物に由来するタンパク質は、結合鎖および触媒鎖を含む2つの鎖(例えば、リシン)、または、単一の触媒鎖のみ(例えば、PAPまたはサポリン)のいずれかから構成される。
【0060】
特定の実施形態において、本発明の方法において使用するための抗TK1抗体免疫毒素は、抗TK1抗体の各分子に、有効な細胞傷害性量または抗癌量の免疫毒素分子を連結させることにより形成される。例えば、本発明の実施において有用な試薬は、1つの抗TK1抗体分子あたり、1〜2の免疫毒素分子を含む。好ましくは、本発明の組成物は、あ)1つの免疫毒素分子/1つの抗TK1抗体分子、およびb)2つの免疫毒素分子/1つの抗TK1抗体分子の約1:1混合物を含む。好ましくは、本発明の組成物は、主に、1つのインタクトな抗TK1モノクローナル抗体分子あたり1〜2の免疫毒素分子と、遊離抗TK1モノクローナル抗体と、遊離免疫毒素とを含む。
【0061】
(抗TK1 MAbまたは抗TK1抗体免疫毒素の投与様式)
本発明の抗TK1 MAbもしくは抗TK1抗体免疫毒素、または、これらの組み合わせは、薬学的組成物として処方され得、そして、好ましくは、1もしくは数種の抗TK1 MAbもしくは抗TK1抗体免疫グロブリンの有効量を、薬学的に受容可能なキャリアもしくはビヒクルと組み合せて、そして/または、他の治療因子と組み合せて含む、単位投薬形態として、癌を有するヒトまたは他の哺乳動物に投与され得る。
【0062】
(投薬形態)
本発明の抗TK1 MAbまたは抗TK1抗体免疫毒素は、非経口投与(すなわち、注入もしくは注射により、静脈内投与、または、皮下投与)されることが好ましい。生物療法因子の溶液または懸濁液は、水、または、等張性の生理食塩水もしくはPBSのような生理学的な塩溶液において調製され得、必要に応じて、非毒性の界面活性剤と混合され得る。
【0063】
抗TK1 MAbまたは抗TK1抗体の生物療法因子は、本明細書中に記載されるような液体組成物として投与されることが好ましいが、これらは、種々の他のキャリアと共に投与され得る。例えば、分散剤がまた、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、DMA、植物性油、トリアセチン、およびこれらの混合物において調製され得る。通常の保存および使用の条件下で、これらの調製物は、微生物の増殖を防止するために、防腐剤を含み得る。さらに、抗TK1 MAbまたは抗TK1抗体の生物療法因子の肺へのより特異的な送達が、エアロゾル送達システムによって達成され得る。
【0064】
注射または注入に適した組成物としては、滅菌の水溶液もしくは分散剤、または、滅菌の注射用もしくは注入用の溶液もしくは分散剤の即座の調製に適合された、抗TK1 MAbまたは抗TK1抗体の生物療法因子を含む滅菌の粉末が挙げられ得る。全ての場合において、最終的な組成物は、製造および保管の条件下で、滅菌、液体かつ安定でなければならない。液体キャリアまたはビヒクルは、溶剤または液体分散媒体であり得、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および、液体ポリエチレングリコールなど)、植物性油、非毒性グリセロールエステル、脂質(例えば、ジミリストイルホスファチジルコリン)、ならびにこれらの適切な混合物を含む。適切な流動性は、例えば、リポソームを形成することによって、分散剤の場合には、必要とされる粒径を維持することによって、また、非毒性の界面活性剤を使用することによって、維持され得る。微生物の活動の防止は、種々の抗微生物剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)によって達成され得る。多くの場合、等張性因子(例えば、糖、緩衝液、または塩化ナトリウム)を含めることが望ましい。長期にわたる注射用組成物の吸収は、吸収を遅らせる因子(例えば、モノステアリン酸アルミニウムのヒドロゲルおよびゼラチン)を組成物中に含めることによってもたらされ得る。
【0065】
滅菌の注射溶液または注入溶液は、上記の種々の他の成分と共に、適切な溶媒中に、必要とされる量の抗TK1 MAbまたは抗TK1抗体の生物療法因子を組み込み、その後、必要に応じて、ろ過滅菌することによって調製される。滅菌の注射溶液または注入溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、真空乾燥技術および凍結乾燥技術であり、これにより、以前に滅菌ろ過された溶液中に、活性成分の粉末および任意の追加の所望される成分をもたらす。
【0066】
さらに、本発明の抗TK1 MAbまたは抗TK1抗体の生物療法因子に適切な処方物としては、経口投与、直腸投与、鼻腔投与、局所投与(眼内投与および舌下投与を含む)、もしくは、膣投与に適したもの、または、吸入もしくはガス注入による投与に適した形態が挙げられる。処方物は、薬学の分野で周知のあらゆる方法によって調製され得る。このような方法は、生物療法因子を液体キャリアもしくは微細に分けられた固体キャリア、またはその両方と会合させる工程、そして次いで、必要な場合には、この生成物を、所望の処方物に成形する工程を包含する。
【0067】
経口投与に適した薬学的処方物は、各々が、所定の量の活性成分を含有するカプセル剤、サシェ剤または錠剤のような個別の単位として;粉末または顆粒として;溶液、懸濁液またはエマルジョンとして簡便に提供され得る。活性成分はまた、大量、舐剤、またはペーストとして提供され得る。経口投与用の錠剤およびカプセル剤は、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤または湿潤剤のような、従来の賦形剤を含み得る。錠剤は、当該分野で周知の方法に従ってコーティングされ得る。経口用の液体調製物は、例えば、水性もしくは油性の懸濁物、溶液、エマルジョン、シロップまたはエリキシル剤の形態であり得るか、あるいは、使用前に水または他の適切なビヒクルを用いて再構築するための乾燥製剤として提供され得る。このような液体調製物は、懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含み得る)、または防腐剤のような従来の添加物を含み得る。
【0068】
本発明の生物療法因子はまた、鼻腔内投与または眼内投与のために処方され得る。投与のこの形態において、活性成分は、液状スプレー、もしくは、分散性の粉末として、または、ドロップ(drop)の形態で使用され得る。ドロップ(例えば、点眼剤)は、水性または非水性の基材を用いて処方され得、そしてまた、1つ以上の分散剤、可溶化剤、または懸濁剤を含み得る。液状スプレーは、加圧型のパックから簡便に送達される。
【0069】
吸入による投与について、生物療法因子は、吸入器、噴霧器もしくは加圧型のパック、または、エアロゾルスプレーを送達する他の従来の手段から簡便に送達される。加圧型のパックは、適切な噴霧剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の適切な気体)を含み得る。加圧型のエアロゾルの場合、投薬単位は、計量された量を送達するための弁を提供することによって決定され得る。
【0070】
あるいは、ガス注入の吸入による投与については、生物療法因子は、乾燥粉末組成物(例えば、化合物の粉末混合物)、または、適切な粉末基材(例えば、ラクトースもしくはデンプン)の形態を取り得る。粉末組成物は、例えば、カプセルもしくはカートリッジ式の、または、例えば、ゼラチンもしくはブリスターパックの単位投薬形態で提供され得、ここから、粉末が、吸入もしくはガス注入の助けにより投与され得る。
【0071】
さらに、本発明の抗TK1 MAbまた抗TK1抗体の生物療法因子は、制御放出投薬形態での処方物として十分に適している。この処方物は、活性な乾燥成分のみを、好ましくは、特定の生理学的位置において、必要に応じて、所定の時間にわたって、放出するように構成され得る。コーティング、被膜および保護マトリクスが、例えば、ポリマー性の物質または蝋から作製され得る。この化合物はまた、経粘膜送達用のパッチ、皮下移植物、注入ポンプ、または、移植された蓄積持続放出投薬形態からの放出によっても送達され得る。
【0072】
(投薬量)
本発明の組成物における生物療法因子の投薬量は、哺乳動物の大きさ、年齢および状態、ならびに疾患によって、広く変動し得る。投薬量は、特定の患者における抗TK1 MAbもしくは抗TK1抗体の生物療法因子の血漿半減期に基づいた頻度で投与される。より高い用量が採用される場合もあり、この用量は、適切な量の生物療法因子を子供に提供するために容易に調節され得る。
【実施例】
【0073】
(実施例1 TK1活性についてのRaji細胞のアッセイ)
TK1およびTK1モノクローナル抗体を調製する1つの方法は、本質的には、米国特許第5,698,409号(本明細書中に参考として援用される)に記載される方法である。以下のようにして、粗細胞抽出物を、Raji細胞(ヒトバーキットリンパ腫、American Type Culture Collection(ATCC) CCL 86)から調製した。約1011〜1012個の指数関数的に増殖するRaji細胞を、遠心分離によって、増殖培地から回収した。ペレット状にした細胞を、上清から分離し、そして、0.02M Tris−HCl(pH7.8)、0.05M MgClおよび0.2mM KClを含有する抽出緩衝液(1〜2ml)に再懸濁した。この細胞懸濁物を、液体窒素と37℃の水浴中での3回の凍結−溶解サイクルに供した。次いで、この破裂させた細胞懸濁物を、4℃にて30,000×gで30分間遠心分離して、細胞砕片をペレット状にした。約50mg/mlのタンパク質(TKおよび他の可溶性酵素を含む)を含有する上清をペレットからデカントで移し、−20℃にて凍結保存した。
【0074】
TKアッセイを行なうために、0.2mlの粗抽出物を、0.02M Tris−HCl(pH7.8)、2×10−6M[H]−チミジン(85Ci/mmol)、0.002M MgCl、0.2M KCl、0.1M NHCl、0.005M メルカプトエタノール、および0.004M ATP(アデノシン三リン酸)を含有する等量(0.2ml)のアッセイ混合物と混合した。
【0075】
アッセイ反応物を、水浴中で37℃にてインキュベートした。30分および60分のインキュベーション時間の後、0.025mlのサンプルを取り出し、Whatman DE−81ディスク上にスポッティングし、そして、乾燥させた。このフィルターディスクを、0.01M ギ酸で毎回5分、3回洗浄し、蒸留水で5分リンスし、その後、メタノールでリンスし、次いで、Hの放射活性を測定するために、4mlのシンチレーション計数流体の入ったシンチレーションバイアルに移した。
【0076】
(実施例2 TK1の部分的な精製)
TK1酵素を、DEAE−セルロース陰イオン交換クロマトグラフィーによって、実施例1のRaji細胞の粗抽出物から部分的に精製した。TKタンパク質の最大収量を得るためには、細胞が、回収時に指数関数増殖期にあることが望ましい。粗抽出物のタンパク質含量を、周知のBradfordアッセイを用いて決定した。粗抽出物からの合計約1.0〜2.0gのタンパク質を、DEAE−セルロースカラムに加え、そして、重量測定フロー(gravimetric flow)を用いて、10の空隙容量(void volume)の0.1M Tris−HCl(pH8.0)で洗浄した。このカラムを、0.5M Tris−HCl(pH8.0)で溶出し、そして、1.0mlの画分を回収した。
【0077】
280nmにおいて測定した吸光度のクロマトグラムを、溶出時間の関数として求めた(produce)。回収した画分のアリコートを、ほぼ、実施例1に記載したようにして、TK1活性についてアッセイした。複数の泳動(run)をプールし、そして、Amiconタンパク質濃縮機を用いて濃縮した。
【0078】
(実施例3 FPLCによる精製)
FPLCカラム(Pharmacia MONO−Q 5/5陰イオン交換カラム)に、上記の濃縮したDEAE−セルロース画分(0.1ml、約1mgのタンパク質を含有)を充填し、10容量の緩衝液A(50mM Tris−HCl(pH8.0))で空隙を満たした(void)。計画した勾配を設定し、1.0ml/分の一定の流速で流しながら、20分かけて、0%から100%へと、緩衝液B(1.0M NaCl、50mM Tris−HCl(pH8.0))の濃度を次第に増加させた。
【0079】
280nmの吸光度により、カラムから溶出したタンパク質を検出した。280nmの吸光度ピークを含む画分を回収し、そして、本明細書において、先に記載したように、TK1活性についてアッセイした。
【0080】
複数回の実行からTK1活性を有する画分を回収し、プールし、そして、濃縮した。この部分的に精製し、プールしたサンプルを、次いで、低勾配のMONO−Qカラムに再び流した。約1mgのタンパク質を含有するプールしたサンプルのうち、10分の1の部分(ml)を、先に記載したように、MONO−Qカラムに充填した。この2回目の泳動に関して、勾配は、5%の緩衝液Bから開始して、1.0ml/分で35分かけて、40%の緩衝液Bまで泳動した。
【0081】
2回目の順次のMONO−Qの泳動について、溶出容積に対して吸光度のクロマトグラムを求めた。1.0mlの溶出液を含む画分を、再度回収し、TK1活性についてのアッセイにより決定した。
【0082】
3回目の順次のMONO−Qの泳動を、上記の2回目のカラムから沈殿し、プールしたタンパク質について行なった。泳動条件は、さらに、流速を遅くして変更し、そして、さらに、勾配も少なくした。5%の緩衝液Bから30%の緩衝液Bまでの勾配を、0.5ml/分にて泳動した。この泳動について、0.5mlの画分を回収した。
【0083】
(実施例4 TK1に結合するモノクローナル抗体の産生)
TK1に対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を、ある改変を加えた、当該分野で一般に知られる方法によって生成した。特定のハイブリドーマ細胞株を用いるモノクローナル抗体の作製についての説明は、単なる例示である。本発明の実施形態は、種々の手段(例えば、ハイブリドーマ細胞株の使用、および他の組換え技術)によって生成される一組のクローンを用いることを企図する。
【0084】
TK1を、上述のようにして調製した。50μlのリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)および50μlの完全フロイントアジュバント中に懸濁した、100μgのTK1の一用量を、一群の雌性BALB/cマウス(5〜6週齢)の各々に、腹腔内(I.P.)投与した。2週間後、1回目と同じ2回目の免疫を与えた。
【0085】
ある程度純粋な(semi− pure)TK1を用いた2回目の免疫から2週間後、100μlのPBS中に懸濁した10μgの純粋な活性TK1(上述のようにして調製した)を含む脾臓内注射を与えた。このマウスを、93.3mlのPBSに6.7mlを加えることによって希釈した、フェントバルビタールナトリウム(65mg/ml)で麻酔した。各マウスに、10μl/体重1gを腹腔内投与した。外科用メスおよび鉗子を用いて外科手術的なインターベンションを行い、そして、抗原を投与するために、脾臓を丁寧に引き出した。脾臓のいくつかの領域に注射して、抗原が均一に分布することを確実にした。金属製の縫合糸を用いて傷を閉じ、そして、マウスを、1〜2時間、加熱灯の下に置いた。
【0086】
脾臓内注射から72時間後、エーテルを用いてマウスを屠殺し、脾臓を取り出した。マウスが死ぬ前に、血液を採取し、そして、血清を試験して、そのマウスが、TK1タンパク質に対して免疫応答を高めていることを確認した。不死の骨髄腫細胞株との融合のために、脾臓からB細胞を単離した。
【0087】
融合パートナーに使用した細胞株は、ATCCから購入した、自己融合型のSp2/0株(FOという名前)であった。これは、P3−X63−Ag8の誘導体である。この細胞株は、増殖が速く、分泌性(重鎖免疫グロブリンまたは軽鎖免疫グロブリン)でない、不死の骨髄種マウス細胞株である。FOと、活性化された脾臓細胞との融合は、当該分野で一般に知られるようにして行った。約1×10個の細胞を含有する1つの脾臓を、1回の融合につき使用した。融合を終了した後、融合細胞の懸濁物を、1日前にフィーダー細胞として1ウェルあたり3,000〜6,000個のマウスマクロファージを播種した96ウェルマイクロタイタープレートに播種した。
【0088】
HAT選択培地を用いて、融合生成物のみを選択した。増殖したウェルに印を付け、HATから次第に離し、そして、通常の培地にした。この時点で、生存している細胞のみが、B細胞とFO細胞との融合により得られたハイブリドーマであった。各融合から、融合生成物を表す合計約500コロニーが得られた。
【0089】
患者のサンプルを試験に用いるために、選択した抗体産生細胞株を継代し、そして、3ヶ月にわたり、上清を無菌的に回収した。抗体を、硫酸アンモニウムを用いて上清を沈殿させることによって精製させ、その後、ゲル濾過クロマトグラフィーか、DEAE−セルロースクロマトグラフィー(ジエチルアミノエチルセルロース、SEPHADEXの商品名で、Whatman International,Maidstone,Kent,UKから入手した)のいずれかを行なった。この抗体を標準的な方法により精製し、そして、HRP−ペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ(Bio−Rad)のいずれかと結合させた。このような手順は、ANTIBODIES:A Laboratory Manual,Harlowe and Lane,1988に記載されている。
【0090】
上記の方法は、配列番号2により記載されるタンパク質配列のような公知のタンパク質配列から化学合成により生成されるか、または、配列番号1に示される配列のようなTK1のコード配列の全てもしくは一部を用いて、周知の方法により生成される組換えタンパク質から生成されるTK1を含めて、あらゆるTK1タンパク質を抗原として用いて使用され得る。
【0091】
(実施例5 TK1に結合するヒト化モノクローナル抗体の産生)
ヒト末梢血白血球を、米国特許第5,476,996号(本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、SCIDマウスに腹腔内注射する。約2週間後、SKIDマウスをヒトTK1で免疫する。次いで、実施例4において上述したように、または、組換え技術によって、MAbを得る。
【0092】
(実施例6 融合物からのハイブリドーマコロニーの予備的なスクリーニング)
1回の融合からの500のコロニーを、実施例2と同じように調製した、部分的に精製したTK1に対するELISAによる、予備的なスクリーニングに供した。ハイブリドーマ培養物から回収した上清を、まず、Raji細胞の粗抽出物を、DEAE−セルロースにて泳動し、TK1を部分的に精製することによって調製したある程度純粋なTK1を用いてスクリーニングした。こうして、この予備的なスクリーニングを、TK1と免疫反応性の抗体の最初の検出として使用する。
【0093】
マルチウェルプレートを、50μlのPBS中に懸濁させた、1ウェルあたり1.0μg(マイクログラム)の選択されたTK1タンパク質調製物でコーティングし、一晩乾燥させた。次いで、このプレートを、1ウェルあたり200μlのPBS−TWEEN 20(登録商標)−EDTA−1%乳脂肪で30分間処理し、非特異的な結合をブロックした。このプレートを、200μlのPBS−TWEEN 20(登録商標)−EDTA(PBST2E)で3回洗浄した。(TWEEN 20(登録商標)は、Bio−Rad Laboratories,Richmond,Calif.から市販されている陰イオン性洗浄剤であり、非特異的な抗体−抗原結合を減少させるのに有用である一方、一次抗体の抗原への結合も、抗原のニトロセルロースへの結合も妨害しない)。
【0094】
ハイブリドーマ細胞培養における増殖培地は、培地を抗体で飽和状態にするために、ハイブリドーマ培養の上清を回収する3日前は変えなかった。各ハイブリドーマについて、1ウェルあたり80μlの上清を、二つのウェルに加えた。次いで、このマルチウェルプレートを37℃にて1時間半インキュベートした。上清をデカントし、そして、ウェルを、PBST2Eで6回洗浄した。
【0095】
次に、ペルオキシダーゼ(Bio−Radから入手可能)に結合させ、PBST2E中で1:3,000に希釈したヤギ抗マウスIgG(重鎖および軽鎖特異的)を加えた。0.1mlを各ウェルに加え、そして、このプレートを、先に記載したようにインキュベートした。このウェルを、再度、PBST2E中で洗浄し、そして、200μlの基質、テトラメチル−ベンジジンを添加し、1時間インキュベートした。この基質の反応を、各ウェルに50μlの2M 硫酸を加えて停止させ、青色から黄色へと呈色を変化させた。このプレートを、プレートリーダー上、450nmにおけるO.D.の測定値について走査した。バックグラウンドのO.D.の少なくとも2倍のO.D.の読み取りを、陽性であるとみなした。50回の融合から得られた約25,000のクローンのうち、35のクローンが、この予備的なスクリーニングにおいて陽性であると決定された。この陽性のコロニーを、Hyclone,Logan,Utah(カタログ番号EK−5051)を用いてアイソタイプ決定し、そして、陽性のコロニーを、IgG1、IgG2a、IgG3およびIgMクラスの抗体を生成するものとして決定した。
【0096】
(実施例7 TK1特異的なハイブリドーマについてのさらなるスクリーニング)
最初のスクリーニングにおいて陽性であると決定された35のクローンを、より厳密なスクリーニングに供した。プレートを、以下のようにして、5対の再現ウェル(replicate well)でコーティングした:ウェルA、Bは、Raji細胞からのTK1の粗抽出物でコーティングし;ウェルC、Dは、DEAE−セルロースカラムから調製したTK1でコーティングし;ウェルE、Fは、実施例4と同じようにFPLCにより調製した、ピーク400からのTK1タンパク質でコーティングし;ウェルG、Hは、2回目のFPLC泳動の画分308、310からのTK1タンパク質でコーティングし;そして、ウェルJ、Kは、PETベクターにおいてTK1遺伝子を発現したE.coli細胞の抽出物でコーティングした。精製したサンプルについて、1ウェルあたり1.0μgのタンパク質を用いた。
【0097】
本質的に、予備的なスクリーニングについて記載したように、ELISAを行なった。決定した35のクローンのうち、1つが、活性形態のTK1にのみ結合することが分かった。プレート上で120のウェルについて405nmにて吸光度(ABS)を読み取り、このプレートにおいて、10のクローンをスクリーニングした。予備的なスクリーニングにより最も高く陽性であると決定されたクローンを、このプレートにおいてわざとクラスター化(cluster)した。4つのウェルからのバックグラウンドABSを平均化し、約0.058と求めた(ウェルJ11、J12およびK11、K12)。
【0098】
カラム2および5の全てのウェル;カラム1の第C、D列以外全てのウェル;カラム3、4および7の第J、K列;ならびに、カラム4および7の第A、B列において陽性の結合(吸光度が、バックグラウンドレベルよりも有意に高い)が観察されたことは明らかである。すなわち、カラム1〜5および7におけるクローンは、全て、TK1に対する結合について、陽性であると決定された。当然ながら、クローン2および5は、試験したTK1調製物の全てに対する結合について陽性であると決定されたが、クローン1は、ある程度精製されたDEAE−セルロース調製物を除く全てのTK1調製物に対して結合した。クローン4および7は、粗製Raji細胞TK1抽出物と、E.coliにおいて遺伝子操作により生成されたTK1とに結合した。クローン3は、E.coliから生成されたTK1にのみ結合した。残りの25クローンは、TK1に対する抗体として、陰性であると決定された。
【0099】
(実施例8 ウェスタンブロット分析)
ウェスタンブロッティングにより、さらなる特徴付けを行なった。ウェスタンブロットを、Current Protocols in Immunology,Vol.1,Wiley−Interscience,New York出版(1991)に記載される手順と類似する手順により調製した。図1は、クローン14F2のTK1特異性を示すウェスタンブロットアッセイを示す。ネイティブなサンプル、または、部分的に変性させたサンプルを、12%ポリアクリルアミドゲルを用いて分離した。次いで、ポリペプチドをニトロセルロースフィルタに移し、そして、クローン14F2からのMAbでプローブした。ヤギ抗マウスIgG(HIL鎖)西洋ワサビペルオキシダーゼを含有する結合抗体溶液を用いて、MAbの結合を可視化した。(a)レーン1、精製TK1、ネイティブなサンプル、Ponceau S染色;レーン2、精製TK1、ネイティブなサンプル、ウェスタンブロット、(b)レーン1、精製TK1、部分的に変性させたサンプル、Ponceau S染色;レーン2、精製TK1、部分的に変性させたサンプル、ウェスタンブロット;レーン3、Raji細胞抽出物、部分的に変性させたサンプル、ウェスタンブロット;レーン4、Hela細胞抽出物、部分的に変性させたサンプル、ウェスタンブロット。
【0100】
(実施例9 選択されたモノクローナル抗体によるTK1活性の阻害)
Raji細胞(1×10個)を、1500rpmにて10分間の遠心分離により回収した。上清を捨てた後、1mlの酵素ミックス(1:10 0.02%β−メルカプトエタノール:Tris−HCl(pH7.5))を細胞に加えた。この混合物を、液体窒素中で凍結させ、次いで、この細胞を、37℃の水浴中で溶解した。この凍結/溶解の工程を3回繰り返した。最終的に、この混合物を、4℃、14,000rpmにて75分間遠心分離し、細胞膜を除いた。ペレットは捨てた。
【0101】
25μlのRaji細胞抽出物を、6つのエッペンドルフチューブの各々に分注した。新しいハイブリドーマ培地の希釈:ハイブリドーマの上清を、以下の割合で、合計125μl調製した:1:2、1:4、1:16、1:32、および1:64。125μlのハイブリドーマ培地をコントロールとして用いた。希釈物またはコントロールのいずれかを、6つのエッペンドルフチューブの各々に加えた。このサンプルを、実施例1に記載したチミジンキナーゼ放射定量法(radioassay)を用いて、チミジンキナーゼ活性について評価した。ハイブリドーマの上清中の抗体による阻害が大きければ大きいほど、チミジンキナーゼの活性は低かった。
【0102】
(実施例10 メンブレン結合タンパク質染色プロトコール)
リンパ球および他の細胞型を染色するために、以下のプロトコールを用いた。リンパ球については、ヘパリンチューブに血液を採取し、そして、緩衝化食塩水(PBS)で1:2に希釈した。5mlのフィコール(phicol)を15mlのコニカルバイアルの底に入れた(希釈した血液7mlごとに1つのコニカルバイアル)。リンパ球を含むコニカルバイアルを、1300rpmにて20分間遠心分離した。遠心分離の後、フィコールの表面上に浮遊しているバフィー層をピペットで除いた。7mlまでのリンパ球溶液を、新しい15mlコニカルバイアルに移し、再度、PBSを用いて1:2に希釈した。このサンプルを、再度、1500rpmにて10分間遠心分離した。この洗浄工程を2回繰り返した。
【0103】
細胞株については、5×10〜1×10個の密度まで増殖している20mlの細胞を、コニカルバイアルに移し、そして、1500rpmにて10分間遠心分離した。この細胞のペレットを、2mlのPBSに懸濁させた。この洗浄工程を2回繰り返した。
【0104】
染色について、細胞を2回洗浄した後、細胞を、3%ホルムアルデヒド溶液に再懸濁させ、そして、氷上で10分間インキュベートした(この工程により、細胞を固定し、そして、細胞の活性化および相互作用を防止した)。10分後、これらの細胞を1500rpmにて10分間遠心分離した。この上清を吸引し、そして、細胞を含むペレットを2mlのPBSに再懸濁し、そして、再度、1500rpmにて10分間遠心分離した。これらの細胞を、2回以上PBS中で洗浄した。2回洗浄した後、上清をデカントで捨て、コニカルバイアルの底に少量の液体を残した。細胞に10μlのFCブロックを加え、そして、これらの細胞を、少量のPBSおよびFCブロックに再懸濁した。
【0105】
これらの細胞を、氷上で10分間インキュベートした。次いで、2mlのPBSを加え、これらの細胞を1500rpmにて10分間遠心分離した。この洗浄を2回繰り返した。2回目の洗浄の後、これらの細胞を、ハイブリドーマ細胞株からの上清10mlに再懸濁し、そして、暗所にて、氷上で1.5時間インキュベートした。これらの細胞を、1500rpmにて10分間遠心分離し、2回洗浄した。
【0106】
二次抗体を希釈し(例えば、820μlのPBS中に10μlの2mg/ml二次抗体)そして、200μlを、最終的な洗浄後の各細胞ペレットに加えた。二次抗体を、処理済みの細胞と共に暗所にて氷上で1時間インキュベートした。1時間後、細胞を、氷から取り出し、そして、2mlのPBSで希釈した。これらの細胞を遠心分離し、そして、上清を吸引により除いた。これらの細胞を3回洗浄した。これらの細胞を100μlのPBS中に再懸濁させ、そして、検鏡の準備ができるまで、溶液中に維持した。10μlを清潔な顕微鏡スライドに移し、そして、検鏡のために、カバーガラスで覆った。
【0107】
図3〜21および29〜30は、上述の免疫蛍光検査技術を用いて撮ったものである。図面に見られ得るように、Raji細胞、MD−MBA−435、MD−MBA−231、PANC−I(ヒト膵臓癌細胞株)、HEP−G2(ヒト肝臓癌細胞株)およびHELA細胞(ヒトパピローマウイルス16により形質転換された子宮頸癌細胞)のような癌細胞は、癌細胞の表面上のTK1の存在に起因して、抗TK1抗体で強く標識された。正常なリンパ球は、標識されなかった。
【0108】
(実施例11 フローサイトメーター)
さらなるアッセイが、選択したモノクローナル抗体が、TK1を産生する細胞に特異的に結合することを実証する。フローサイトメーターのプロットを利用して、抗TK1抗体の癌細胞を特異的に標的化する能力をさらに特徴づけする。
【0109】
当該分野で公知の方法を利用して、フローサイトメーターのプロットを行なった。試験管法を利用して、各サンプルを、2つの標識した12×75mmの試験管に入れ、一方をモノクローナル抗体、そして、もう一方を、適切なコントロールとした。その後、単核細胞調製物からの1×10個の細胞を、各試験管に入れ、そして、2〜8℃で、400〜450×gにて4分間遠心分離した。上清を吸引し、そして、捨てた。次いで、200μLのモノクローナル抗体作業溶液(working solution)または200μLのコントロール作業溶液を、適切に標識した試験管に入れた。反応物を、穏やかにボルテックスにかけた。反応物を、2〜8℃にて30〜35分間インキュベートした。インキュベーションした後、各反応混合物を、1mLの2〜8℃洗浄培地で洗浄し、そして、2〜8℃、400〜450×gにて4分間遠心分離した。各反応物を注意深く吸引し、そして、上清を捨てた。その後、ボルテックスを用いて、細胞ペレットを崩壊させた。インキュベーション後の洗浄工程を繰り返した。2回目の洗浄の後、サンプルを注意深く吸引し、そして、上清を捨てた。次いで、200mLのGAM−FITC作業溶液または(ビオチン標識したものについては)アビジンd−FITC作業溶液を、各細胞ペレットに加えた。細胞ペレットを、ボルテックスを用いて穏やかに崩壊させた。細胞を、2〜8℃にて30〜35分間インキュベートした。30分後に、細胞を、1mLの2〜8℃洗浄培地で3回洗浄した。各々、2〜8℃、400〜450×gにて4分間の遠心分離を行なった。次いで、サンプルを注意深く吸引し、そして、上清を捨てた。次いで、この細胞ペレットを、ボルテックスを用いて穏やかに崩壊させた。2回目のインキュベーション後の工程を2回繰り返した。3回目の洗浄の後、1mLの2〜8℃再懸濁用培地を各試験管に加えることによって細胞を再懸濁した。これらのサンプルを、フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡分析のための適切な容器に移した。最大の生存度を確実にするために、染色した細胞は、即座に分析した。
【0110】
癌に罹患していないコントロール患者から血液を採取し、基線レベルを確立した。この基線レベルに対して、正常細胞および既知の癌性細胞株を比較した(図22)。本発明者らは、まず、抗体なしのリンパ球コントロールをフローサイトメーターに流し、そして、合計44477個の細胞のうち10.1%すなわち4,510個の細胞が、フローサイトメーターによりカウントされ、これにより染色されていない正常なリンパ球を、抗体で染色されたリンパ球と比較するための基線レベルを設定した。結果は、正常なリンパ球をCB001モノクローナル抗体と共にインキュベートしたときに、20628個のうちのわずか12.1%(すなわち2494個)のリンパ球コントロールが、フローサイトメーターによりカウントされ、これは、10.1%というコントロールの数と有意には異ならないことを示し、TK1が、正常なリンパ球の表面上では、CB001モノクローナル抗体によって検出されないことを実証した。
【0111】
BJAB細胞についてさらなるフローサイトメータープロットを行なった(図23)。抗体なしのBJABコントロール細胞をフローサイトメーターに流し、そして、合計20302個の細胞のうち6.64%すなわち1,448個の細胞が、フローサイトメーターによりカウントされ、これにより染色されていないBJAB細胞を、抗体で染色されたBJAB細胞と比較するための基線レベルを設定した。結果は、BJAB細胞をCB001モノクローナル抗体と共にインキュベートしたときに、20302個のうちの34.8%(すなわち7055個)のBJAB細胞が、フローサイトメーターによりカウントされたことを示し、これは、6.64%というコントロールの数と比較した場合、TK1が、癌性のBJAB細胞株の表面上で、検出されることを実証する。
【0112】
ヒトバーキットリンパ腫(RAJI)細胞についてさらなるフローサイトメータープロットを行なった(図24)。抗体なしのRAJIコントロール細胞をフローサイトメーターに流し、そして、合計19920個の細胞のうち10.3%すなわち2,051個の細胞が、フローサイトメーターによりカウントされ、これにより染色されていないRAJI細胞を、抗体で染色されたRAJI細胞と比較するための基線レベルを設定した。結果は、RAJI細胞をCB001モノクローナル抗体と共にインキュベートしたときに、13,301個のうちの76.3%(すなわち10,144個)のRAJI細胞が、フローサイトメーターによりカウントされたことを示し、これは、10.3%というコントロールの数と比較した場合、TK1が、癌性のRAJI細胞株の表面上で、検出されることを実証する。
【0113】
また、TK1のC末端からの15アミノ酸から調製した、化学合成されたTK1フラグメントに対して惹起された2種類のTK1モノクローナル抗体を含む、他のTK1モノクローナル抗体についても、類似の結果が得られた。
【0114】
(実施例12 補体媒介性の溶解において利用される抗TK1)
抗TK1モノクローナル抗体についての1つの治療適用において、抗TK1抗体は、標的化された腫瘍治療に有用である。結合抗TK1抗体は、癌性細胞を破壊する、補体媒介性の溶解を開始するために利用される。この実施形態は、特に有効である。なぜならば、抗TK1抗体は、大量のTK1を発現する腫瘍細胞に特異的に結合するからである。抗TK1抗体は、大量のTK1を発現する腫瘍細胞に特異的に結合するので、腫瘍細胞に対して特異的に標的化され、従って、補体媒介性の溶解によるこれらの腫瘍細胞の殺傷は、正常細胞の殺傷と比較して、優先的に増強される。さらに、TK1は、1つの型の癌に対してのみ特異的である多くの他の癌マーカーとは異なり、多くの型の癌において有用な癌マーカーとして機能する。補体媒介性の溶解は、当該分野で周知のプロセスである。適切な補体の経路を選択することは、当業者の知識の範囲内であり、そして、過度の実験を伴うことなく達成され得る。
【0115】
抗TK1により標的化される補体媒介性の溶解についてのプロトコールの一例は、以下の工程を有する。第1に、1mlあたり5×10〜1×10個の細胞に維持した培養物から、2mlのRaji細胞を取り出した。これらの細胞を、1600rpmにて10分間遠心分離した。この上清を捨てた。その後、細胞をPBSで3回洗浄した。ハイブリドーマの上清を、1:2の希釈係数で、PBSで希釈した。これらの細胞を、次いで、氷上で1時間、希釈した上清中でインキュベートした。1時間後、これらの細胞を3回洗浄し、1mlのPBS中に再懸濁した。次いで、3mlの血清をこれらの細胞に加え、そして、コントロール細胞には3mlのPBSを加えた。これらの細胞を、37℃の水浴中に1時間置いた。その後、これらの細胞を、水浴から取り出し、そして、観察のために、顕微鏡スライドの上に置いた。図25および26は、前述のプロトコールを利用して撮影した写真である。
【0116】
図25および26は、TK1抗体が表面に結合した場合に、癌性のB細胞(Raji)が補体により溶解されることを実証する。図25は、コントロールのRaji細胞の写真であり、そして、図26は、補体媒介性の溶解により破壊された癌性のB細胞(Raji)の写真である。細胞の溶解は、96%を超えている。
【0117】
図27は、CB001抗体ありかつ血清なしの、非癌性ヒトリンパ球を示す。図28は、CB001ありかつ血清ありの非癌性ヒトリンパ球を示す。見られ得るように、細胞が癌性でない場合、血清および抗体の存在下でさえも、溶解は見られない。癌性細胞のみが、TK1の発現によって破壊された。
【0118】
(実施例13 癌性細胞を標的化し、破壊するために、抗TK1を利用する)
TK1が、癌性細胞の表面に見られるという知識に基づくと、種々の治療適用が可能である。例えば、抗癌剤は、細胞表面にTK1を発現する細胞を選択的に標的化および殺傷し得ることが可能である。この方策は、ウイルスTK1遺伝子をコードするプラスミドを含む細胞に感染させるためにアデノウイルスを使用し、次いで、この細胞が、DNA合成を妨害することによって殺傷されるように標的化され得るといった癌治療によって例証される。この実施形態は、さらに、抗腫瘍因子に結合体化された抗TK1抗体を含む、抗TK1抗体の治療適用によって例証される。抗腫瘍因子は、抗TK1抗体に結合体化され、これは、抗TK1抗体の細胞傷害性効果を増強し、従って、正常細胞の殺傷と比較して、腫瘍細胞の殺傷を増強する。
【0119】
(実施例14 治療部位指向型の外科手術)
本発明により企図される別の治療適用は、抗TK1抗体の使用であり、これは、部位指向型の外科手術に有用であり得る。色素および同位元素により方向付けられる外科手術は、当業者に公知の技術である。抗TK1抗体は、癌性細胞の表面に接着するので、本発明は、さらに、外科医(感染細胞が識別された後、最小侵襲性の外科技術を利用して組織を切除もしくは破壊し得る)によって、感染細胞が視覚的にか、もしくは、他の方法で識別され得るように、癌性組織を明確にマーキングするために抗TK1抗体を用いることを企図する。適切な色素が、抗TK1 MAbに結合される。例えば、抗TK1抗体は、PET同位元素(18F、124I、または76Br)または放射線不透過性色素(例えば、ヨウ素化合物、バリウムもしくは硫酸バリウム、または、ガストログラフィンなど)で標識される。
【0120】
注射可能な抗体もまた、診断および予後の用途を有する。1つの実施形態において、放射性色素または放射線不透過性色素にタグ化された抗TK1抗体が患者に注射される。抗TK1抗体は、新生物の組織に結合した後、PET、MRI、CT、SPECTなどのような周知技術を用いて可視化される(Molecular Imaging of Gene Expression and Protein Function In Vivo With PET and SPECT,Vijay Sharma,PhD,Gary D.Luker,MDおよびDavid Piwnica−Worms,MD,Ph.D.,JOURNAL OF MAGNETIC RESONANCE IMAGING 16:336−351(2002)を参照のこと)。疾患の位置および拡大の程度は、癌の型、位置および段階の医学的な診断を容易にする。
【0121】
(実施例15 治療目的のためにモノクローナル抗体を利用するキット)
さらに、本発明は、方法、および方法を行なうためのキットの使用を企図する。上記方法を行なうためのキットは、1種以上のモノクローナル抗TK1抗体を含み得る。1つの実施形態において、モノクローナル抗体は、使用した場合に目的とする患者に対して治療効果を有する他の因子(例えば、免疫毒素または市販の補体)に結合体化されるか、または、これと組み合わせてパッケージングされる。
【0122】
多数および種々の改変が、本発明の精神から逸脱することなくなされ得ることが、当業者により理解される。従って、本発明の形態は、例示の目的のためのものであり、本発明の範囲を制限することは意図されていないことが、明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1は、クローン14F2のTK1特異性を示すウェスタンブロットアッセイを示す。ネイティブなサンプル、または、部分的に変性させたサンプルを、材料および方法の節に記載したようにして、(MAbの生成と類似する方法を用いて)12%ポリアクリルアミドゲルを用いて分離した。次いで、ポリペプチドをニトロセルロースフィルタに移し、そして、クローン14F2からのMAbでプローブした。ヤギ抗マウスIgG(HIL鎖)西洋ワサビペルオキシダーゼを含有する結合抗体溶液を用いて、MAbの結合を可視化した;(a)レーン1、精製TK1、ネイティブなサンプル、Ponceau S染色;レーン2、精製TK1、ネイティブなサンプル、ウェスタンブロット、(b)レーン1、精製TK1、部分的に変性させたサンプル、Ponceau S染色;レーン2、精製TK1、部分的に変性させたサンプル、ウェスタンブロット;レーン3、Raji細胞抽出物、部分的に変性させたサンプル、ウェスタンブロット;レーン4、Hela細胞抽出物、部分的に変性させたサンプル、ウェスタンブロット。
【図2】図2は、TK1酵素活性についての、CB001 MAbのTK1に対する効果を示す。
【図3】図3は、10×拡大率の、CB001 Abで染色したRaji細胞を示す。
【図4】図4は、10×拡大率の、CB001 Abで染色したRaji細胞を示す。
【図5】図5は、50×拡大率の、CB001 Abで染色したRaji細胞を示す。
【図6】図6は、50×拡大率の、CB001 Abで染色したRaji細胞を示す。
【図7】図7は、40×拡大率の、CB001 Abで染色したMD−MBA−231細胞を示す。
【図8】図8は、40×拡大率の、CB001 Abで染色したMD−MBA−231細胞を示す。
【図9】図9は、10×拡大率の、CB001 Abで染色したMD−MBA−435細胞を示す。
【図10】図10は、10×拡大率の、CB001 Abで染色したMD−MBA−435細胞を示す。
【図11】図11は、40×拡大率の、CB001 Abで染色したMD−MBA−435細胞を示し、視野に気泡が入っている。
【図12】図12は、40×拡大率の、CB001 Abで染色したMD−MBA−435細胞を示す。
【図13】図13は、10×拡大率の、CB001抗体で染色したPANC−1(膵臓)細胞を示す。
【図14】図14は、10×拡大率の、CB001抗体で染色したPANC−1(膵臓)細胞を示す。
【図15】図15は、40×拡大率の、CB001抗体で染色したPANC−1(膵臓)細胞を示す。
【図16】図16は、40×拡大率の、CB001抗体で染色したPANC−1(膵臓)細胞を示す。
【図17】図17は、40×拡大率の、CB001抗体で染色したHep−G2細胞(肝細胞)を示す(視野にある細胞はかなり少ない)。
【図18】図18は、40×拡大率の、CB001抗体で染色したHep−G2細胞(肝細胞)を示す(視野にある細胞はかなり少ない)。
【図19】図19は、光学顕微鏡を用いて10×にした、CB001抗体で染色した正常なヒトリンパ球を示す。
【図20】図20は、蛍光顕微鏡を用いて10×にした、CB001抗体で染色した正常なヒトリンパ球を示す。
【図21】図21は、蛍光顕微鏡を用いて50×にした、CB001抗体で染色した正常なヒトリンパ球を示す。
【図22】図22は、フローサイトメトリーによるリンパ球の細胞カウントを示す。リンパ球コントロール;TK1に対するCB001 MAbで染色したリンパ球;および、TK1に対する14F2 MAbで染色したリンパ球。
【図23】図23は、フローサイトメトリーによるBJAB癌細胞の細胞カウントを示す。BJABコントロール;TK1に対するCB001 MAbで染色したBJAB細胞;および、TK1に対する14F2 MAbで染色したBJAB細胞。
【図24】図24は、フローサイトメトリーによるヒトバーキットリンパ腫(RAJI)細胞の細胞カウントを示す。RAJIコントロール;TK1に対するCB001 MAbで染色したRAJI細胞;および、TK1に対する14F2 MAbで染色したRAJI細胞。
【図25】図25は、CB001抗体ありかつ血清なしのRaji細胞を示す−1.1×10細胞/ml。
【図26】図26は、CB001 Abありかつ血清ありのRaji細胞を示す。
【図27】図27は、CB001抗体ありかつ血清なしのヒトリンパ球を示す。
【図28】図28は、CB001抗体ありかつ血清ありのヒトリンパ球を示す。測定可能な溶解はない。
【図29】図29は、10×倍率の、HELA細胞(ヒトパピローマウイルス16により形質転換された子宮頸癌細胞)を示す。
【図30】図30は、40×倍率の、HELA細胞(ヒトパピローマウイルス16により形質転換された子宮頸癌細胞)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において癌を処置するための方法であって、該方法は、該哺乳動物において細胞の増殖を阻害するのに十分な量の、S期調節タンパク質またはそのフラグメントに対する抗体を含有する薬学的組成物を、該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記抗体が、抗TK1モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗TK1モノクローナル抗体が、CB001である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗TK1抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体、または、完全なヒトモノクローナル抗体である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記薬学的組成物が、さらに、第2の抗癌剤を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の抗癌剤が、ヌクレオシドアナログである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ヌクレオシドアナログが、5−フルオロウラシル、フルダラビン、クラドリビン、シタラビン、ゲムシタビン、カペシタビン、トロキサシタビン、ジドブジン/ラミブジン(Combivir(登録商標))、エミトリシタビン(Emtriva(登録商標))、エミトリシタビン(Epivir(登録商標))、ザルシタビン(Hivid(登録商標))、ジドブジン(Retrovir(登録商標))、アバカビル/ジドブジン/ラミブジン(Trizivir(登録商標))、ジダノシン(Videx(登録商標)、VidexEC(登録商標))、フマル酸テノフォビルジソプロキシル(Viread(登録商標))、スタブジン(Zerit(登録商標))、およびアバカビル(Ziagen(登録商標))からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗TK1抗体が、細胞傷害性薬剤と結合体化されている、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞傷害性薬剤が、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質(PAP)、リシン、アブリン、ゲロニン、サポリン、およびα−サルシンからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記薬学的組成物を投与する前に、前記哺乳動物が、十分な放射線で処置されて、TK1の発現がアップレギュレートされている、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記薬学的組成物が、さらに、非経口投与に適合した、薬学的に受容可能な液体キャリアを含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記液体キャリアが、等張性の生理食塩水を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
哺乳動物において癌を診断するための方法であって、該方法は、以下:
該哺乳動物からサンプルを得る工程;
該サンプルを、抗TK1抗体またはそのフラグメントと共にインキュベートする工程;
抗体−TK1複合体の量を検出する工程;
検出された該抗体−TK1複合体の量を、公知の量のTK1を用いて作製した標準曲線と比較することによって、該サンプル中のTK1濃度を定量する工程;および
該サンプル中のTK1濃度に基づいて、該哺乳動物における癌の存在を診断する工程
を包含する、方法。
【請求項14】
TK1に対する、モノクローナル抗体。
【請求項15】
前記TK1が、ウイルスまたは哺乳動物のTK1である、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
【請求項16】
前記TK1が、ヒトTK1である、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
【請求項17】
前記抗体が、活性なTK1に対して特異的である、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
【請求項18】
前記抗体が、不活性なTK1に対して特異的である、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
【請求項19】
前記抗体が、TK1の多量体形態に対して特異的である、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
【請求項20】
前記抗体が、TK1の単量体に対して特異的である、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
【請求項21】
TK1の96kDサブユニットと反応しない、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
【請求項22】
前記モノクローナル抗体が、TK1に結合し得るが、TK1の酵素活性に影響を与えない、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
【請求項23】
TK1に対するモノクローナル抗体を作製する方法であって、該方法は、抗原として使用するために、TK1またはそのフラグメントを化学合成する工程を包含する、方法。
【請求項24】
前記化学合成されたTK1が、配列番号2に示される配列の少なくとも一部を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
TK1に対するモノクローナル抗体を作製する方法であって、該方法は、宿主細胞において、TK1をコードする遺伝子の少なくとも一部を発現させる工程を包含する、方法。
【請求項26】
前記TK1をコードする遺伝子が、配列番号1として示される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記モノクローナル抗体が、ヒト化抗体または完全なヒトモノクローナル抗体である、請求項14に記載のモノクローナル抗体。
【請求項28】
患者において新生物組織の位置および拡大を決定する方法であって、該方法は、以下:
標識されたTK1抗体を患者に投与する工程;
該標識されたTK1抗体を可視化する工程;ならびに
該患者において、新生物組織の位置および拡大の程度を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項29】
前記可視化が、PET、MRI、CTまたはSPECTによるものである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記TK1抗体が、蛍光色素、放射性色素、または放射線不透過性色素で標識されている、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記患者において新生物組織の位置および拡大の程度を決定する工程が、医師が、新生物組織と正常組織とを視覚的に区別することを可能にするために、外科手順において使用される、請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2008−500396(P2008−500396A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527534(P2007−527534)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【国際出願番号】PCT/US2005/017990
【国際公開番号】WO2005/113000
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506387052)ブリガム ヤング ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】